自衛隊をイラク・インド洋からもどせ 給油新法延長は認められない
国会闘争に決起
11日、参院外交防衛委員会に田母神が参考人として出席した。9条改憲を阻止する会をはじめ数十人が国会前に座り込み、終日たたかいぬいた。
午後3時ころ、傍聴した仲間から報告があり、「田母神は反省のカケラもない。沖縄の山内徳信さん(参院議員)が鋭い質問をしたが、田母神は言論の自由だと居直った」と怒りが表明された。
インド洋での米軍等への給油・補給、「後方支援」と称するアフガニスタン侵略戦争に参戦する新テロ対策特措法(給油新法)の延長法案は、18日にも参院委員会での採決が狙われている。採決阻止へ全力でたたかおう。
田母神発言を弾劾し、給油新法の延長阻止を訴える9条改憲阻止の会をはじめとする国会前座り込み(11・11国会前) |
民主党の裏切り
まったく許すことができない。自公与党の採決強行がまず許せないが、民主党の屈服、採決容認も同罪である。「自民も民主も同じ」などと言ってすまされる問題ではない。「給油法に(民主の)協力が得られない」と、安倍・福田両政権は政権を投げ出したのではなかったのか。
ここで徹底的に抵抗し、成立を阻止すれば、麻生政権は吹っ飛ぶ。解散・総選挙もできずに「死に体」となっている麻生を助けてどうするのか。
洋上給油は参戦行為
そもそも、対テロ特措法とは何か。
最初に成立したのは2001年。日本はアメリカの「対テロ戦争」という名のアフガニスタン攻撃、その後イラク侵略戦争にも参戦した。給油や補給がなければ戦闘、戦争はできない。法律に言う「給油」とか「後方支援」などは言葉の問題であり、実際は参戦である。米軍の艦船、空母は海上自衛隊から給油をうけ、その艦載機が連日、アフガニスタン空爆をおこなっている。03年3月、米軍がイラク侵略戦争を開始した際に、インド洋で海上自衛隊から給油をうけた米軍補給艦が米空母に再給油し、この空母部隊がイラク攻撃をおこなった。〔本来、同法ではイラクは対象外。03年イラクへの自衛隊派兵にあたっては、同法とは別にイラク特措法を強行成立させた(同年7月)。〕
自衛隊は、いまもイラクで米軍を支援し、参戦しつづけている。米軍は、シリアやパキスタンへの越境攻撃を始めた。いったん始めれば、何でもありだ。米軍に家族を殺された国境近くのシリア住民は「ブッシュこそがテロリストだ」と怒りをあらわにしている。
インド洋では、補給艦とイージス艦などの護衛艦が7年以上も展開を続けている。米軍を支援し共同作戦をおこなうとともに、派兵、交代を繰り返し、自前の海外展開・作戦能力を蓄積している。
10日には、補給艦「とわだ」(8100トン)が呉から、護衛艦「ありあけ」(4550トン)が佐世保から、交代のために出港した。
麻生首相と田母神は同じ思想
田母神を航空幕僚長に任命したのは安倍政権であるが、安倍も麻生も極右だ。この極右政権のもとで田母神は、自衛隊全体に田母神論文に現れた思想、歴史観を蔓延させていたのだ。麻生は、首相就任早々に「集団的自衛権の解釈は見直すべきだ」とぶちあげた。田母神問題は麻生問題でもある。極右=麻生政権を打倒しよう。
給油新法延長に反対して、国会前や全国各地で抗議活動がくりひろげられている。
「日本の自衛隊が米英軍を支援している、と言うと現地の住民は驚き、反発している。大事なのは水や食料の自給ができるようにすること。『治安回復』にも(自衛隊の派遣は)百害あって一理なし」(5日、参院外交防衛委員会でのペシャワール会・中村哲氏の陳述)と指摘されているように、海上自衛隊によるインド洋上での給油活動はアフガニスタン人民への支援ではなく、日本帝国主義の利害をかけた侵略戦争行為だ。
給油新法延長・自衛隊派兵継続と憲法改悪はつながっている。同法の延長を阻止し、自衛隊を直ちに撤退させよう。
改憲と戦争への衝動 田母神 論文・国会発言
田母神俊雄(航空自衛隊幕僚長=当時)による「日本は侵略国家ではなかった」とする論文は、何を言おうとしているのか。「侵略国家ではなかった」というのは、もちろん「かつておこなったことを、これからもやる」というためである。
衆知のとおり田母神は、今年4月に名古屋高裁が、自衛隊イラク派遣は憲法違反でありイラク特措法にも違反しているという判決を下した際に、お笑いタレントの口調をまねて「そんなの関係ねぇ」と言った輩である。
上記論文の一部を抜粋してみると―。
「日本は、朝鮮や中国に一方的に軍をすすめたことはない。国際法上、合法的に権益を得て、これを守るために軍を配置した」(それを侵略というのだ)。
「わが国は、蒋介石により日中戦争に引き込まれた被害者だ」
「多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している。わが国が侵略国家だったというのは、濡れ衣」。
国会発言で開き直り
田母神は、参考人として呼ばれた11日の参院外交防衛委員会で発言し、とんでもない開き直りを続けた。懸賞論文募集そのものが、日本会議などが関与する極右グループの自作自演だが、それに幕僚幹部として「応募を紹介した」と認めながらも、「指示はしていない。私が指示すれば、千は集まる(田母神以外にも現職自衛官97人が応募していた)」と、日頃から反動的な歴史観や、憲法違反の内容で隊内教育をおこなってきたことを開陳した。右翼「新しい歴史教科書をつくる会」の大学教授などを招きセミナーを開いたり、自衛隊全体を、侵略を積極的に是認する軍隊にしようとしていたことが明らかになった。 田母神は言う。「われわれにも言論の自由がある」「日本ほど文民統制が徹底した国はない。言論統制が徹底した自衛隊にはすべきではない」と。
民主党が「(集団的自衛権行使は違憲という)政府解釈は変えた方がいい、憲法改正した方がいいと世論喚起しようと思ったのか」と質問すると、集団的自衛権の行使ができない憲法9条は変えるべきという持論を持つ田母神は、「意見が割れているものは直した方がいい」と公然と改憲を主張した。まるで田母神に改憲を主張させるための、呼び水質問だ。
しかも、それにつづく追及はなされず、「更迭された感想は」と質問が変わると、「書いたものはいささかも間違っていない。日本(の方向)にとって必要なこと」と、言いたい放題であった。
右からのクーデター策動
今回の問題を、文民統制・更迭や「トップの条件欠如」「陳腐」「不適切」(『朝日』11/13朝刊「私の視点」)などに問題をずらしたり、歪小化してはならない。もちろん6千万円の退職金支給など論外だが。「集団的自衛権」や派兵恒久法をめぐる攻防は、改憲をめぐる攻防そのものである。
右からのクーデター的策動を許さず、全国各地で改憲阻止のうねりをつくりだしていこう。 (M・H生)
2面
11・2全国労働者集会開かれる 三労組を軸に労働運動の再生を
動労千葉・関西生コン・港合同呼びかけの、11・2全国労働者集会が開催された。11回目にあたる今年の集会は、意見の違いの表面化により開催自体が危ぶまれたが、呼びかけ三労組の懸命な努力により、多くの課題を抱えながらも開催され、日比谷野音を埋める5700人の結集でかちとられた。
三労組の呼びかけに応え東京・日比谷野外音楽堂に集まった5700人(11・2) |
突破すべき課題
今回の集会は、呼びかけ労組からのアピール(関西生コンと動労千葉が発言)といくつかの発言により、11月集会と日本階級闘争において何が問題となっており、何を突破すべきかが浮きぼりになった。
それは、三労組呼びかけの原点=三つの中心軸(三労組)を持ちながらも違いを認め、一致点を拡大し闘う労働組合の全国ネットワークを作っていく、その中味としての、国鉄闘争勝利(動労千葉支援)、反弾圧統一戦線(関西生コン支部弾圧許すな!)や、非正規雇用の組織化を進めていくにあたり、この一〜二年意見の違いが顕在化してきたことにある。この事は、三労組集会の中軸をなしてきた国鉄闘争の報告が今回は内容が大きく変わり、また「君が代」処分と闘う根津さんから「この集会には参加したくなかった」と表明されたことの中に示されている。
しかし、困難に直面すれば原点に立ち返り、「その闘い方の違いや意見の違いが見えた時ほど、団結を深めるチャンスであり、現在の社会情勢は私たちに闘いの条件をあたえている」(関西生コンの発言)という考えが承認された。われわれは、改めて二つのアピール(関西生コンと動労千葉)の立場で、今日の階級闘争の主体的危機を突破していかなくてはならない。
セクト主義を克服し階級全体の利害を
しかしながら、11月集会を発展させるために、関西生コンの高副委員長と動労千葉の田中委員長が懸命のアピールを行い、また根津さんから厳しい指摘がなされたにもかかわらず、これを全く踏まえない発言が沖縄の「命を守る会」批判という形でなされた。それは本集会開催に困難をもたらした問題と同根であり、階級的団結に分裂を持ちこむもので、断固克服されなければならない。
08年11月集会は、幾多の困難をこえかちとられた。そこで出された「呼びかけ労組からのアピール」(関西生コン・動労千葉)と根津さんの訴えを踏みにじるようなことがあってはならない。今後も三労組とともに、戦闘的労働運動の再生と、闘う労働運動の全国ネットワークづくりのために尽力していきたい。 (集会参加者・K)
皇軍復活と世論づくり打ち破る大江・岩波訴訟控訴棄却の判決 10・31大阪高裁
10月31日、大江・岩波―沖縄戦裁判の控訴審において、一審判決を上回る重大な勝利の判決がかちとられました。
法廷は、午後2時に開廷されました。裁判長は「原告の控訴を棄却する」と判決主文を読み上げただけで、そそくさと退廷していきました。わずか一分にも満たない開廷時間に一瞬あっけにとられていた80人の傍聴席から一斉に「やった!」「勝利だ!」と、喚声・どよめき・拍手がどっと湧き起こりました。閉廷後の法廷内は、手を握り合ったり、肩を叩き合ったりと、勝利の喜びに満ちあふれていました。早速、法廷内に入れず外で待機していたおよそ500人の支援者にも勝利判決の報が届き、大阪高裁の裏庭のあちこちで喜びの輪が渦巻いていました。
午後6時半から近くのエルおおさかで開かれた控訴審判決報告集会にも200人近くの人が会場いっぱいに詰めかけ、勝利の雰囲気がムンムンしていました。大江健三郎氏は講演先のドイツから喜びのメッセージを寄せました。弁護団をはじめ、発言者がそれぞれに良い内容で語ってくれました。特に、二つの講演のうち「高裁判決の意義」と題する平良宗潤氏(沖縄県歴教協委員長)の核心をついた話が印象的でした。平良氏は、大意「教科書改悪―改憲―戦争へと向かう今日の社会の流れの中で、これを喰い止めていく重要な勝利を切り拓いた。昨年の9・29沖縄県民大会12万人結集の力が大きかった。この力をさらに大きく発展させ、最高裁での勝利から憲法改悪を許さない、戦争を許さない力強い運動にしていこう」と訴えておられました。
大方のマスコミが表現の自由が守られた(これ自体も重要な勝利ですが)ことに力点を置いて報道していました。しかし、平良氏が言うように「日本軍=皇軍(天皇の軍隊)の復活とそれに積極的に協力する国民と世論をつくりあげていこうとする攻撃を打ち破る重大な勝利だ」という核心を鮮明にさせる必要があると痛感しました。
辺野古、高江の新基地建設反対の闘いと相結びながら、沖縄戦を歪曲する教科書の書き換えを許さない運動を押し拡げ、沖縄―「本土」を貫く改憲阻止の大きなうねりを巻き起こしていかなければならないと思います。
(島袋徹雄)
農地死守から労農コミューンへ 『農地収奪を阻む』をひろげよう
三里塚空港反対同盟事務局次長の萩原進さんの筆による『農地収奪を阻む』(発行:編集工房・朔)が出版された。私は71年いらい三里塚闘争にかかわってきたつもりだったが、グローバルな視点での昨今の農民・農業問題は知らないことも多く、新たな感慨で読んだ。
この本には、戦後の日本農民の生き様が全編にあふれている。萩原さんが空港反対闘争にたちあがった契機として、60年代にシルクコンビナートの夢が砕かれた事があるが、それ以降萩原さんの人生は国の農業破壊と闘い続けてきた人生であった。60年代の農業破壊・猫の目農政は私の田舎でも同じであった。萩原さん自身語っているように、「農業に愛着はなく、豚を飼って小遣いを稼ぎ、終末には東京・銀座のACB(アシベ)に通い、シティーボーイを気取った」とあるが、私の田舎でも養蚕をしたり、葉たばこやミカンを作ったり、豚を飼ったりと同じであった。農業に特に希望を持ったわけではないが、農地がある以上跡を次ぎ、他の者は都会に出た。三里塚ではこのあと66年から空港建設で、農地取り上げ・農業破壊が襲いかかる。全国の農村は90年代初頭までは、経済の成長・停滞と一体で、急激な農業破壊とはならなかった。
しかし、今日の農村には、三里塚の二期工事攻撃と軌を一にするように、95年の食管法の廃止・99年の新農業法の制定と、飼料や農薬の大資本による独占・高騰で、全面的な農業破壊が襲いかかっている。私の田舎でも20軒ほどの農家が百年にわたり、共同墓地・先祖祭り・相互扶助で地域社会を維持してきた。しかし今夏隣家の初盆に出た際、地区で唯一農業に未来をかける青年(父親が自民党員である)は、「あと10年たったら、この地区で農業をやっているのは僕だけだから、(年輩の)みんなが偉そうにできるのは今のうちだけよ」と私に語った。自作地と相互扶助で維持された農村社会が、今日の農業破壊により、このままでは10数年のうちに消滅していくのではないか。
昨年の参議院選挙では農村を地盤にしてきた自民党が地方の反乱で大敗し、政治的流動はその後も続いている。農地法を使って市東さんの農地を取り上げようとする、今日の三里塚農民にたいする攻撃との闘いは、このような全国農民の苦悩と反乱の始まりと繋がっている。
このことは7月サミット反対闘争でも痛感させられた。7月5日の札幌大通り公園では、新自由主義・グローバリズムに反対する日本各地の農民連の旗と海外からの農民の隊列がひときわ目をひいた。その農民がビア・カンペシーナであることは、『展望』3号(34頁)で知るのだが、実は萩原さんの本にも、ビア・カンペシーナや、フランスのヒョゼ・ボベの闘いが、第2部「崖っぷちの食と農」の3人の農民の鼎談に出てくる。萩原さんの農業破壊に対する鋭い目は世界の農民と一体なのだ。
三里塚の闘いは、これから市東さんの農地取り上げをめぐり新たな激突に入る。40年を越す三里塚闘争には、戸村一作さん、市東東市さんや羽仁五郎の思想が脈々と流れている。この本を手にした、全国の農民・労働者はわが闘いとして北総大地にかけつけ、闘う労働者・農民の共闘の砦=「三里塚コンミューン」を復活させるだろう。その声は全世界に響きわたるだろう。
闘いの武器『農地収奪を阻む』を大いにひろめよう。多くの人にこの本をすすめたい。(木戸健一)
「農地収奪を阻む」
著者:萩原 進 さん 1944年生。66年に反対同盟に参加。初代青年行動隊長。83年以降、反対同盟事務局次長。
定価:本体1800円+税 発行:編集工房・朔 発売:星雲社 |
3面
大統領選の結果とアメリカ革命の展望
ブッシュ路線の敗北
米大統領選で、民主党のオバマが当選した。まずそれは、ブッシュ路線の敗北であり、レーガン以来の内外政策の破綻である。
イラク侵略戦争の不正義性と多大な犠牲、住宅差押えと空前の失業率、組合つぶしと人権侵害の激化。その一方でアメリカの1%の富裕層が富の45%を独占している。このようなブッシュ路線への嫌悪が広がっていた。
そして金融恐慌が勃発し7千億ドルもの銀行救済の資金投入が行なわれるに及んで、労働者人民の憤激が一気にふきだした。青年層をはじめ労働者人民が、変革を求めて巨大なうねりとなって動きだした。そのうねりがオバマを押し上げた。
初の黒人大統領
黒人大統領が誕生した意味は大きい。
@直接的には、中南米をはじめグローバリズムによって経済を破壊された国々から、膨大な移民が流入しており、非白人(ヒスパニック・黒人など)が全人口の過半数に迫っているということが背景にあるが、A人種差別が支配の支柱をなしているアメリカ社会で、変革を求める労働者人民が、草の根の運動で、黒人であるオバマを押し上げ、かってない規模の投票行動で、大統領にまでしたことの意味を見逃してはならない。オバマそのものの階級的本質とは別次元で、歴史的な変革のうねりが大きく動き出しているのだ。
Bしかし、大統領制とは国家の統治機構で、選挙とは階級支配のやり方だ。そしてアメリカの支配階級がオバマを選択したのだ。つまりオバマを選択せざるを得なかったことの中にアメリカ社会の解体と内乱の危機が示されている。
オバマは帝国主義の立場
オバマは、シカゴの貧困地域での活動歴などをもって、労働者の味方のようなイメージを操作してきたが、6月3日、民主党の大統領選候補に確定して以降の発言は、アメリカ支配階級の立場にはっきりと立っている。
オバマは、@条件つき「イラクからの撤退」というペテンをいいながら、アフガニスタン侵略戦争の激化とイランへの拡大と合わせて、「テロとの戦い」の継続を明言し、A新自由主義とグローバリズムの推進を約束し、B世界規模の戦争による世界支配の再確立を訴えているのだ。【註1】
オバマは、アメリカ帝国主義の国益を守るという点で、その枠組みをいささかも外れていない。ブッシュが、露骨にウォール街の利害を追求する政策だったのにたいして、オバマは、「ひとつのアメリカ」と叫んで、あたかもウォール街と労働者の利害が一致できるかのような幻想を振りまいているだけだ。「チェンジ」の旗の下に、現実には、労働者にさらなる犠牲を要求しているのだ。
アメリカ社会の解体と内乱の危機
アメリカ帝国主義は、その成り立ちと歴史において、すさまじい人種・民族矛盾と階級矛盾を抱えている。それを差別と暴力と虚偽イデオロギーで抑え込み、国民統合を図ってきた社会だ。【註2】
いま、人種・民族矛盾と階級矛盾の極限的な拡大とともに、イラク侵略戦争の泥沼化とグローバリズムの破綻によって、国民統合のイデオロギー的な支柱が大きく崩れだしている。これは、社会が解体し、内乱に発展していく情勢だ。
そうした危機にたいする支配階級の恐怖と反動として、オバマが登場してきた。この危機を革命に転化させず、ブルジョア民主主義の枠内に吸収しようとして、支配階級が「ひとつのアメリカ」を叫ぶオバマを選択した。
矛盾の拡大
アメリカ帝国主義の危機の進行と、レーガン以来の内外政策の展開によって、アメリカ社会の矛盾は、もはや抑え込めないレベルに達している。
従来、保守の基盤をなしてきた白人の中間層は、大半が貧困層にたたき落とされた。黒人の貧困レベルは1960年代初期の水準に戻っている。サブプライムローンが、黒人やヒスパニックを食い物にした。一握りの富裕層が空前の富を手にする一方、大多数が医療や年金・雇用・住宅を失う危機にある。
支配の柱の破綻
とりわけ重大なのは、「自由の拡大」「中東の民主化」と称して強行されたイラク、アフガニスタンをはじめとするアメリカの侵略戦争政策が行きづまり、ベトナム戦争時以上の危機になっていること、および、「繁栄」を謳歌したアメリカ経済の崩落が始まり、グローバリズムの危機と矛盾があらわになっていることである。
その危機の深刻さは、直接の政治的経済的な意味以上に、「自由」「民主主義」「進歩」「繁栄」といった国民統合のイデオロギー的な支柱が瓦解していっている点にある。
内乱は不可避
こうした危機の中から、青年層をはじめとした労働者人民の巨大なうねりが始まっている。労働運動において、腐敗した指導部を打倒する闘いが始まっている。
さらに、60年代の黒人暴動を越えるような被差別・被抑圧人民の反乱は不可避だ。人種・民族・宗教・性・文化といった押さえ込まれてきたあらゆる問題が、階級矛盾と絡み合いながら、アメリカ社会の支配秩序を解体する内乱として爆発していくだろう。
始まったうねりは、さしあたりオバマを押し上げ、労働者階級をある種の幻想に引き込んだが、オバマの正体が明らかになっていくとともに、失望が怒りを増幅し、アメリカ帝国主義の打倒がテーマとなっていくだろう。
内乱情勢と共産主義
共産主義が求められている。それは、少なくとも“新自由主義が人種や民族を越えて社会を資本家と労働者に二極化しているから階級的に団結すればいい”という平板なものではないだろう。アメリカ社会が抑え込んできた人種・民族矛盾と階級矛盾の爆発にたいして、全身で向き合い、引き受ける中からしか共産主義は出てこない。
そしてこの内乱情勢と共産主義が結びついたとき、アメリカ革命が現実化する。それはアメリカ一国の問題にとどまらない。アメリカ帝国主義の世界支配崩壊と世界革命の問題に直結する。
【註1】大統領候補に指名以降のオバマの発言と態度
●「テロとの戦い」の継続
▽イスラエル支持・イラン敵視・アフガニスタンへの増派
・「イスラエル国家の建設は正当で必要です」(6月4日スピーチ)
・「われわれはイランに圧力をかけるために米国の力を最大限に発揮します」(6月4日スピーチ)
・「アフガニスタンでの戦争は、9・11を引きおこしたアルカーイダとの戦争で、われわれは勝たなければならない」(6月16日スピーチ)
イスラエルのパレスチナ抑圧を支持、イランへの新たな侵略と戦争を宣言、アフガニスタン侵略戦争の拡大を言っている。
▽「イラクからの撤退」のペテン
「イラクからの撤退」を言うが、正確には、「テロへの対抗」および「米国の利害を守る」ためにの主要な部隊は残すという留保が常に付いて いる。(6月3日スピーチ)
ブッシュのイラク戦争を批判しているが、その批判は、アメリカにとって戦費がかかり過ぎているという中身で、イラク人民の受けている被害と犠牲、その戦争責任ということについては一切語らない。(6月3日スピーチ)
▽バイデンとゲーツとエマニュエル
クリントン政権下でユーゴ侵略戦争の首謀者であったバイデンが副 大統領に。
ブッシュの下で「テロとの戦い」を担ってきた国防長官ゲーツが留任。ゲーツは、92年以来停止していた核実験を再開と発言。(10月28日)
親がシオニストのテロ活動に参加、本人もネオコン以上のネオコンのエマニュエルを首席補佐官に。
▽令状なしの監視・盗聴法に賛成投票
賛成した理由は「テロリストが行動を起こす前に見つけだす必要がある」(6月20日声明)
●新自由主義とグローバリズムの推進
ブッシュのやり方とは少々ニュアンスがかわるものの、新自由主義とグローバリズムの推進という本質は不変だ。
▽グローバリゼーションを肯定
・「(グローバリゼーションは)米国の経済、安全保障、消費者、労働者に利益をもたらす」(05年シカゴトリビューン紙・寄稿)
・「問題は、それ(グローバリゼーション)にストップをかけるかどうかではなく、それにどう対応するかだ」(同上)
・「労働者を競争からいかに守るかではなく、世界中の労働者と真向から競争できるようにするためにどうするかを考えるべき」(同上)
・失業者に言及するが実際に失業対策はない。
・ブッシュの財政出動による金融機関救済を支持。
▽大金持ちが支持
・億万長者の投資家ウォーレン・バフェットも、オバマを支持。
▽新自由主義推進の陣容
・オバマのメインアドバイザーのファーマンは、銀行家・経営者・ヘッジファンドなどのシンクタンクの人物で、財政赤字削減のため社会保障や医療費を大幅に削減すべきと主張。
・新自由主義とグローバリズムをクリントン政権の下で推進したサマーズや、レーガン政権時代にFRB議長だったボルカーなどが財務長官候補に名が上がっている。
●世界戦争も辞さず
・「われわれは、再び勇敢に、確信を持って自由世界への道を進まなければならない。これはルーズベルト、トルーマン、そしてケネディの残した遺産だ」(6月4日スピーチ)
この三者は、米国を第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争へ導いた民主党大統領である。アメリカ帝国主義崩壊の危機に対して、オバマは、「米国を再生する」ために、世界大戦級の戦争と国家総力戦を辞さないという腹なのだ。
【註2】アメリカ社会の階級支配の構造
@アメリカ先住民に対する支配・抑圧・絶滅化と、アフリカ人奴隷の強制連行の歴史を土台にしており、非アングロサクソン系の人びとに対して、言語や制度から生活・習俗に至るまで「アメリカ化」を強制した。
A資本の利潤追求運動が無制限に展開され、格差が常態化され、それが「自由」「競争」「放任」の名の下に合理化された。しかもそれが人種差別と結合しつつ、黒人や非白人に犠牲を集中させた。また、左翼運動に襲いかかり、腐敗した労働運動指導部を買収し、戦闘的な潮流の登場を阻んできた。
Bこのように人種・民族矛盾と階級矛盾を暴力的に抑え込みながら、「自由」「民主主義」「進歩」「繁栄」を至上の普遍的価値として押しだし、国民統合のイデオロギー的な支柱としてきた。
Cさらに、アメリカの世界支配とグローバリズムも、「自由」「民主主義」「進歩」「繁栄」を世界化する運動として、正当化された。
Dアメリカの世界支配が、また、国民統合のテコとして作用するとともに、世界支配の矛盾と重圧がつねに国内に跳ね返ってきた。
4面
大恐慌の突入をどうとらえるか 本紙18号HT通信員の論文への意見(上)
世界史的な大恐慌が勃発した。HT通信員の小論〔本紙18号掲載〕は、現代世界が労働者階級に提起する巨大なテーマに正面から取り組もうとする意欲的な論文として評価しうる。特に、極限的な投機資金の存在が重要な役割を果たしている点、レーニンの時代に比べて金融資本の実態が多様化し、〈銀行による産業資本の支配〉という古典的な規定だけで金融資本を捉えることが難しくなっている現実―これらのテーマを積極的に扱っている点を評価し、問題意識を共有する。
ただし残念ながら、HT氏の論考は問題を立てるにあたってマルクス主義経済学の基本概念が曖昧で、明確な間違いも含んでいる。 議論を喚起するため、以下、感想と意見を提起する。
60年代以降の展開の俯瞰
現在の恐慌で、サブプライム・ローンに投入された巨額の投機資金の存在が問題となっている。実体経済の5〜6倍にも達すると言われる世界規模の投機資金が原油や食料の高騰を引き起こし、世界中で人民の生活を破壊してきたが、その投機資金がついに破綻をきたし、大元である米帝金融資本、証券資本が軒並み倒産、世界恐慌が始まった。
現在展開している世界恐慌の全体像をとらえるためには、60年代末の世界的な過剰資本の露呈とドル危機→71年金ドル兌換停止→74〜75年恐慌という地点から振り返って全体像を俯瞰することが必要である。
特に巨額投機資金の存在は71年金ドル兌換停止=変動為替相場制導入を直接の契機に発生した点からみても、現在の世界恐慌が74〜75年世界恐慌の直接の帰結であり、その時以来蓄積された帝国主義の基本矛盾がついに爆発したものだと言えるからである。
金本位制
ところで、自由主義段階では、金(・銀)以外に貨幣は存在しない。銀行券は金兌換券という形で金と連動した形でのみ存在し、手形も一定期間後に金と引き換える保証書だと言ってよい。中央銀行の金兌換券発行量は自行が所有する金量に規制されており、市場で信用が崩壊していれば、恐慌時に金の全量を市場に投入したところで支払い手段としての必要額を賄うには到底足りない。つまり、「貨幣の追加投入」は原理論レベルではそもそも不可能である。
大戦中の一時期を除けば、資本主義経済における金の役割は戦後世界体制でも基本的に変わっておらず、金ドル兌換停止に至るまで固定相場制の下で各国通貨は金価格と連動する形で厳重に管理され、貿易黒字や貿易赤字を解消するための財政政策が厳格に実施されたのである。現在のような無制限の赤字国債発行による財政赤字や貿易赤字はたちまちインフレ→通貨切り下げを招くため、当時は実行不可能だった。固定為替相場制の下では恐慌といえども市場に「貨幣の追加投入」を行う余地はなかったのである。
71年金ドル兌換停止
60年代末の過剰資本(慢性的な過剰設備を抱えた利潤率の低下)という基調のもとでベトナム戦費の負担増に悩む米帝は、ドル垂れ流し政策で対応したところ、たちまちこれがドル危機となってはねかえり、ドルの信用低下→各国中央銀行がドル貨を金と兌換→米国内の金が大量に流出という事態となって米帝は金兌換停止に追いやられる。
こうして、74〜75年恐慌に至る過程で金ドル兌換が停止(71年)され、変動相場制が導入されることによって、はじめて金の保有量に制約されない形でドルの発行が可能となり、これに伴って国債の無制限の発行も行われるようになる。
経済の投機化
これが投機資金台頭の発端となった。変動為替相場制の下では、国際貿易で物を売買する際、リスクヘッジのために必ず売買当事者は為替相場で先物取引を行う。契約→商品引渡し→支払いに時間がかかるため、契約時点で一定期間後のドル相場を見込んで相互に取引を行うわけである。これ自体は通常の商取引で投機ではないが、膨大な先物取引がなされる点で投機を専門とする業者が台頭する実体的基盤となっている。このあたりはスーザン・ストレンジ「カジノ資本主義」がすでに1986年の時点で指摘している。
その後、80〜90年代を通じて、米帝主導で金融自由化、いわゆる金融ビッグバンが世界的に推進される。この過程で、金融・証券相互の境界が取り払われ、手数料なども自由化されて、ヘッジ・ファンドが台頭する基盤が政策的に準備された。また、株式市場から企業が資金調達する手法も発達し、銀行に依拠しない巨大資本も次々と現れた。
変動相場制の下での恐慌のメカニズム
この全過程を詳述する力量はないが基本的視点のみ提起したい。
恐慌とは
そもそも恐慌すなわち過剰資本の発現とは、賃金奴隷制度という生産様式の下では労働者の絶対的な過小消費・市場の峡溢が制約となってもはやこれ以上資本が利潤を上げることができなくなり、賃労働と資本の関係そのものを自己破壊するに至る、そういう現象である。
原理論の次元では、投機にもとづく生産の拡張→資金の不足(利子率高騰)、労働者の不足(賃金の高騰)→利子率と賃金の高騰で利潤率がゼロに→恐慌勃発、という契機で恐慌が生じるとされる。
信用の崩壊
ここで問題なのは、恐慌が必ず信用の崩壊、支払手段の絶対的不足を契機として発現することから、帝国主義の恐慌対策が一貫して貨幣と金との連動を断ち切り、貨幣の流動性を確保する、すなわち、無制限にドルを発行しながら一方ではドル暴落を防止する点にこだわって展開されてきたことである。
これと一体で巨額の財政赤字を伴う財政政策の発動も恐慌対策のもう一つの柱として推進されてきたが、これらの点が現在の恐慌を把握するうえで重要な視点になるのではないか。
現代の恐慌の特徴
通貨の流動性をある程度人為的に操作してきた点で、現代の恐慌は自由主義段階の恐慌と様相が異なっていることは確かである。厳密な検証を要するとは思うが、それでも概略次のように言えるのではないか。
帝国主義の下では過剰資本状態が慢性化する傾向をもつが、この矛盾を繰り延べするために帝国主義はたえず金融・財政政策を発動し、矛盾をさらに巨大なものへと膨らませてきた。その結果、資金は生産にたいして過剰となり、商品は市場にたいして過剰となり、生産は需要にたいして過剰となる―すべてがすべてにたいして過剰となる形で過剰資本状態が発現し、最後的にはこれが信用の崩壊、支払い手段の絶対的不足を契機として恐慌すなわち資本価値の全面的破壊が資本の変態過程のあらゆる局面で激烈に進行する。
過剰設備と過剰資金
従来、われわれは「過剰資本・過剰生産力」規定において“帝国主義段階での過剰資本状態すなわち利潤率の低下は、市場にたいする生産設備の慢性的過剰を伴う”と提起し、資本の生産部門に着目してきたが、今日的にみれば、過剰生産設備と一体をなすものとして、行き場のない過剰資金が資本の金融部門で膨大に蓄積されてきたのである。
とりわけ金融ビッグバン以降、90年代にはドル暴落を回避するため人為的に金融投機を奨励し、恐慌と紙一重の状態にありながら投機につぐ投機でさらに生産を拡大することで、過剰資本の矛盾を極限まで蓄積してきたと言えるだろう。
〔続く〕 (掛川徹)
【掛川氏より本紙18号掲載のHT論文への意見が寄せられました。10月下旬に届いたものです。長文のため上・下にわけて掲載します。重要な論争点がとくに下(次号)の部分で提起されています。
編集委員会としても、この議論を大いに発展させたいと考えています。議論の中心は、大づかみにいえば、「宇野経済学の批判的摂取」(革共同第三回全国大会〔66年〕)という確認を今日的にどうとらえ、どう総括するかです。そして、マルクスが『資本論』でどう論じているのかに立ち返るということではないかと考えます。 ―編集委員会】
星野文昭さんをとり戻そう 絵画展が盛況(兵庫)
「無実なのに獄中33年―星野文昭絵画展」が11月11日から17日まで、姫路市内のギャラリーで開かれました。昨年の宝塚、今年7月の神戸につづいて県内では3回目となりますが、県西部では初めての開催でした。平日にもかかわらず初日から5日目までで130人が訪れました。
星野さんの絵に見入る入場者(11月12日兵庫県姫路市) |
「障害者」作業所の人たちが、まとまって12人で来場し「こんな澄んだ絵を描く人が、悪いはずがない」「沖縄の基地に反対したから、報復で有罪にされたんや」と語っておられました。5日目までに絵画集は7冊売れ、カレンダーの注文も9部以上。再審請求署名は60筆をこえました。
14日は夕方から受付の人を残し、徳島で行われた「11・14星野ライブ」へ、関西・兵庫の仲間とともに参加しました。 (投稿/兵庫・H)