革共同通信・第16号

2008年9月2日発行

シリーズ 10・5三里塚へ(第2回) 農業破壊とたたかう三里塚

農地法で農地強奪の暴挙

成田空港建設の敷地内の農地で、市東孝雄さんは、親子3代、90年余り耕作している。 その市東さんの農地を、政府と空港会社が、いま、農地法によって、強奪しようとしている。農地法で農地を奪う―そんな理不尽なことがあるか。
農地法は、戦前の寄生地主制を否定し、「耕すものに権利あり」とした点が核心だ。戦後の農地解放の闘いでかちとられたものだ。
この法律に従えば、現役農家から農地を取り上げることなどおよそ不可能である。
この農地法が空洞化させられているのだ。
農地法第1条 この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、及びその権利を保護し、並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることを目的とする

「あと10年で農民はいなくなる」

高度成長期以来の産業政策は、工業用地と労働力の確保を主眼とし、農業・農村の疲弊をもたらしてきた。
日本の農業は、自然的諸条件も含めて耕作面積が小さく、小規模家族経営を主としている。収益性が低く、非効率とされてきた。その時どきのわずかな保護的対応措置をのぞけば、農業は、一貫して、破壊の対象とされてきた。主食である米の減反政策と、1995年の食料管理制度廃止はその最たるものだ。
成田空港建設を国策とする一方で、三里塚農民の農地を力尽くで奪いとる政府の姿は、それを象徴している。
日本農業は、食料自給率がカロリー計算で40%を割り込むという現実にある。農家軒数は3百万戸を割り込み、平均年齢は60歳代半ば、地域によっては70歳を超える。限界集落(65歳以上が全人口の半数を越える集落)と呼ばれる地域も現出している。
「あと10年もすれば、何もしなくても農民はいなくなる」といわれる。

小規模農家をつぶす「新農政」

小泉以来の構造改革路線の下で、「新農政」への大転換が狙われている。
06年の「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律」で、「3百万農家を40万に集約する」との目標が打ち出された。
4ヘクタール以上の農地を持ち、一定の条件を満たす「認定農業者」だけが補助金の対象となり、小規模農家への補助金を全廃する。農民の大リストラだ。この新法が、「新農政」のすべてを語っている。
07年の経済財政諮問会議では、さらに「3百万農家を14万経営体に絞り、この経営体が農地の8〜9割を経営する。そのために農地制度改革を断行」とまで述べ、農地法廃止の検討に入ったと報じられた。集落営農などの法人化や株式会社による農地取得・農業経営の「自由化」も進んでいる。

大資本の輸出市場確保のため

こうした国内法的整備と一体で進められているのが、二国間・多国間のFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)である。
FTA・EPAによって、「国内農産物を海外からの輸入」に置き換える。トヨタやキヤノンの大資本が輸出市場を確保することとバーターだ。「コスト高」の国内農業を放棄し、「安い」農産物輸入を自由化―強奪してくる―という政策である。日豪FTAは、酪農などが中心の北海道農業を壊滅させるといわれている。
しかし、先のWTO(世界貿易機構)における交渉決裂は、こうした日帝の延命策が絶望的であることを示している。世界各地で食糧暴動が激発し、日本でも農漁民のストライキや街頭デモが始まっている。
(囲み)北海道経済の崩壊も 日豪FTA締結で  損失1兆4千億円 離農・失職9万人  ―道試算 (日本農業新聞 06/11/29)

三里塚と全国の農民とともに

市東さんの農地強奪攻撃は、こうした農業破壊のなかで進んでいる。これとの闘いなくして日本の農業を守ることも、市東さんの農地を守ることもできない。三里塚を先頭に、全国の農民と共に農業・農地を守ろう。

三里塚の援農にはじめていった  労働者A

フェンスに驚き

三里塚のこと、何も知らなかった。ここ3〜4年、12月に三里塚の野菜をもらって、買って、家族でたべて、そのおいしさに驚いた。大根は梨みたい。広々とした畑、イメージした。 援農初日、市東孝雄さんの畑に行って見て驚いた。広くない。畑も道路も高いフェンスで覆われ、すぐ横に滑走路があり、圧迫されていた。警察の私服車が巡回、尾行してくる。おろかな。

収穫をまかされる

市東さんに教わり、野菜の収穫。たいせつな野菜を任せてくれた。すごい。
最初、エンサイ。市東さんや現闘の先輩は、前の方でポンポンといい音で折りとっていく。私は、どこまで切り取ったらいいのか、ハサミでもたもた。むずかしい。
次はキュウリ。いつも食べているのより少し大きいのが、収穫時。まだ摘んではいけないのを摘んだかも知れない。オクラは、盆休みで収穫がとんでいたので、育ちすぎていた。

豪華なごちそう・野菜

一日、働いて、夕方、市東さんが気づかって、「風呂に入ったら」。手もとに着替えを持ってきてなかったので、入れず。入りたかった。
夜、交流会。豪華なごちそう。とくに野菜。キュウリ、カボチャ、モロヘイヤ、トウモロコシ、トマト。そして、カツオ、タコ、おにぎりがテーブルにいっぱい。農家の人が客をもてなすときの振る舞い方、母の里でもそうだが、豪快さ。
市東さん、萩原さん、鈴木さん、永井さんが話していたとき、厳しい顔になっていたが、宴会ではみんな食べて、呑んで、歌って、笑って、しゃべって。

空港が降ってきた

翌日。援農なしで現地調査。開拓道路、東峰の村、東峰墓地。畑があって、森があって、自然が豊かで、開放感のある農村のはず。ここでも私服車につけ回された。
フェンスで見通せない閉鎖された村。伊丹空港でさえ、こんなフェンスはない。私服車の徘徊、尾行もない。
横堀要塞にのぼって、遠くに広い自然が見わたせた。空港の位置がよくわかる。森と畑、農家を踏みつぶして、まるで空から降ってきたような空港。あそこにのぼらないと空港の位置とか、正体とか、わからない。岩山鉄塔もそうだ。

国・警察のやり方ひどい

鈴木加代子さんの話。一番わかりやすい。
空港が来るまで、村人は、同じ地域で、楽しく、力を合わせて生きていた。
それが、他人以上の敵になってしまった。家の女の子たちが小学校で友達からいじめられる。警察が子供までいたぶる。生活や人格まで奪ってしまう。村に残った加代子さんたちの人間関係をみんな奪いとってしまった。そして、どんどん迫ってくる。精神的に追い詰めていくやり方、ひどい。

人から人にひろげる

私は、別に運動の中に入りたくない。個人的に三里塚の野菜が好き。3軒の農家が野菜を作るためにたたかっている。個人のレベルで広げられないか。党、集団、グループ抜きで、個人で個人に広げられる。援農、野菜の産直、それを食べる人びと。そこで広がっていくのではないか。援農にいったことで、わたしも、三里塚農民の現実、営農、生活がわかる。
特別なたたかいをずっと続けているが、根本は、生活を守ろうとしているだけ、単に生きようとしているだけ。ところがドカンと空港が降ってきた。空港こそが不利益。空港より、森や畑、農家が大切。空港が壊した自然は元に戻せるのか。
これは沖縄・辺野古にも通じる。

三里塚はわかりやすい

私は軽いノリで行った。畑仕事が楽しい。援農でいっぱい働いて、なんか楽しいところだけ、いいとこ取りした感じ。
三里塚、わかりやすい。だけど、これから行く人に、わかりやすく説明できる図とか、年表とか、簡単なチラシがあれば、もっと誰でも入りやすい。 (聞き取り・通信員RK)

2面

“生きさせろ”のたたかいを労働運動の力でささえ 労働者使い捨ての派遣法を撤廃させよう

派遣企業の廃業あいつぐ

派遣登録230万人にのぼる最大手派遣企業のグッドウィルが、7月末に廃業となった。「データ装備費」名目で1日200円をピンハネしていた同社を、派遣労働者が訴えて社会問題になっていた。さらに、違法とされている港湾業への派遣や、労働者が「どこに連れて行かれるか分からない」二重派遣(法的には労働力供給行為)などが発覚し、刑事事件となって廃業となったものだ。
これに続いて、中堅企業である仙台のオールテイク(派遣労働者2千4百人)が9月末で許可取消しとなる。
こういう資本がつぶれるのは当然だが、これで失業させられる派遣労働者と正社員の雇用を、国家の責任で絶対に保証させなければならない。

派遣労働者の労災が激増

2社の事件は氷山の一角にすぎない。そもそも労働者派遣制度は、労働者への二重搾取を合法化したものである。労働者保護法制の全体を掘りくずしていくものになっているのだ。
厚労省のまとめでは、派遣労働者の労災死傷者が、前年比で60%増となった。3年間では9倍に達する。とくに貨物取扱業で前年比2・4倍というすさまじさだ。死亡者は昨年1年で36人にのぼる。そのうち18人が製造業での事故であり、死傷者数全体も1・9倍化している。3年前に解禁された製造業への派遣の急増が、労災増加の大きな要因となっている。
厚労省の分析は、派遣労働者がそもそも増加しているためだとしている。しかし、この間の景気悪化を背景にして、派遣でまかなう作業の範囲が広がって、不慣れな労働者には危険な作業で労災が拡大しているとみるべきだ。派遣労働者の安全教育は派遣元の責任になるが、これがそもそも間違いだ。とくに製造業では、現場の派遣先でなければ徹底した安全確保などできるはずがない。低賃金ねらいの使い捨てにとどまらず、労働者の命まで使い捨てにされる時代になってきている。

日雇い廃止から派遣法撤廃、正規化へ

派遣労働者のなかでも、日雇い派遣労働者の問題がマスコミにも取り上げられ、社会問題となってきた。そのため、福田政権は秋の臨時国会でこれを原則禁止にするなどの法改定を準備している。厚労省の報告では、@30日以内の派遣を原則禁止(日雇い派遣含む)、A派遣会社のマージン公開、B直接雇用を避けるためのグループ内派遣の規制(8割以下に)、C偽装請負等の発覚時に、派遣先に直接雇用を勧告、D派遣先での労災事故に派遣先企業も費用負担、という内容だ。
短期派遣可能業種の定義の問題があるほか、グループ内派遣を認めること自体が法制度の建前に反するものであり、マージン(ピンハネ)を制限するのでもない、まったく不十分なものだ。
格差社会の元凶となってきた派遣法そのものの撤廃を要求し、正規雇用化をかちとり、新自由主義政策を粉砕していかなければならない。

ワーキング・プアの怒りの反乱

資本によって超低賃金・使い捨てにされてきた青年労働者の「生きさせろ!」の闘いがはじまっている。「反貧困ネットワーク」を中心として、賃金不払いや違法ピンハネにたいする派遣企業との闘いや、地道な生活支援活動が取り組まれ、社会をゆるがすまでになっている。
秋葉原や日本橋(大阪)の電気街で自由な発想のデモをし、釜ヶ崎暴動でも十代の青年たちが闘っている。この秋には反貧困全国キャラバンが取り組まれ、10・19明治公園での大集会が準備されている。
労働者の解放と社会の変革を求める新しいエネルギーが吹き出している。すべての労働運動は、これを全面的に支援し、日帝ブルジョアジーによる新自由主義攻撃と闘おう。

原子力空母ジョージ・ワシントン入港阻止 9・25横須賀現地へ

反対をおして原子力空母を配備

神奈川県の米海軍横須賀基地に、原子力空母が配備されようとしている。ジョージ・ワシントンである。9月25日前後に入港しようとしている。
米海軍は、現在11隻の航空母艦を保有している。うち10隻は米本土に、1隻だけが海外に母港がある。それが横須賀基地だ。その空母11隻のうち、原子力艦は10隻、通常動力艦は1隻。横須賀基地にいるキティホークだけが通常動力艦である。
これは、横須賀をはじめとする労働者人民の「原子力空母の配備は許さない」という反戦反核のたたかいが、これまで原子力空母の入港・母港化を阻んできたのである。これを破壊しようという攻撃なのだ。
「(通常動力艦にかえて原子力艦が就役することは日米間の)基地関連の合意よりももっと重要なことだ」。(ジェームズ・アワー元国防総省日本部長 05年11月)

先制攻撃の中心になう空母打撃群

なぜいま原子力空母の横須賀配備なのか?
「米空母及び艦載機の長期にわたる前方展開の能力を確保する」(「日米同盟―未来のための転換と再編」日米両政府の合意文書・05年10月29日)。
空母は、空母打撃群の中心をになう。空母打撃群は、1隻の空母とイージス巡洋艦、イージス駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦、給油艦など6隻で艦隊を構成し、先制的に殴り込みをしかける部隊だ。
しかも、原子力空母は通常型空母よりも戦闘能力が格段に高く、戦闘期間も2倍に延びたという。凶悪きわまりないということだ。
そして、ジョージ・ワシントンは、イラク侵略戦争に出撃し、04年のイラク・ファルージャでの大虐殺をはじめ、人民の血に染まっているのだ。
この原子力空母が、イラク、イラン、北朝鮮、中国など、アメリカが名指しした「圧政」「敵対国」への攻撃に、横須賀から出撃していこうとしている。

原子炉事故あれば100万人の犠牲者が

ジョージ・ワシントンには、熱出力60万キロワットの原子炉が2基積み込まれている。これは小規模の原子力発電所に相当する。
原子力空母が、人口密集地域である横須賀で、メルトダウン(炉心が熔融する大事故)をおこした場合の被害を、NGO「原子力資料情報室」が予測している。
それによれば、急性障害で全員死亡するという7シーベルトの全身被曝の範囲は、原子力空母から8キロメートルにおよぶ。165キロメートル離れた栃木県宇都宮市あたりでも、放射能降下の影響によって、120万人から160万人がガンなどで死亡するとしている。

九条改憲と一体の米軍再編

日本は、アメリカの「長期にわたる戦争」(06年度版QDR・3面参照)への参戦を開始している。
ジョージ・ワシントンの横須賀配備は、航空自衛隊の武山分屯基地(横須賀)へのPAC3(アメリカのミサイル防衛計画に基づく迎撃ミサイル)の配備とも一体である。イラクへの空自の輸送活動や、インド洋での海自の給油活動の継続、派兵恒久法の策動とも一体である。そして何よりも、憲法改悪と完全に一体である。
ジョージ・ワシントンが、労働者人民の激しい怒りとたたかいに迎え撃たれることは間違いない。われわれこそ、その先頭に立たなくてはいけない。
今秋の改憲阻止闘争の重要な突破口として、横須賀現地に結集してたたかおう。
(通信員DA)

行動提起

▼9月25日 入港阻止全国集会
▼9月20〜24日 座り込み行動
 ※詳細は、本紙4面の要項参照

9・14防衛省行動

(※主催者発出の行動要項 ―編集委員会)
▼日時:9月14日(日)午後1時30分〜2時30分
▼場所:防衛省正門前(JR有楽町線・南北線 市ヶ谷駅から 徒歩5分)
政府・防衛省は、米国ニューメキシコ州の演習場に浜松基地のPAC3システムを持ち込み、9月15日からの週より、現地でミサイルの実射訓練を行う予定です。訓練後、首都圏4基地に配備されたPAC3は「使用可能」になります。そのために23億円もの税金が費やされます。PAC3ほかの「ミサイル防衛」に総額6兆円もの税金が投入されるとの試算さえあります。福祉、医療という生活に密着した歳出を次々に削減しながら、利権にまみれた「防衛」には多額の税金を垂れ流す、こんな政府・防衛省の姿勢に、主権者、納税者として強く抗議しましょう!
◆防衛大臣あて要請書の提出行動と各地からの発言・アピール
◆個人・団体からの要請書を持ち寄ってください。
遠方からのものも読み上げて提出します。
横断幕・プラカードなども持参歓迎。
[主催] PAC3実射訓練に反対する全国実行委員会
[呼びかけ団体] 核とミサイル防衛にNO!キャンペーン/戦争に協力しない!させない!練馬アクション/横田行動実行委員会/平和の声・行動ネットワーク(入間)/埼玉市民行動/パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会/市民ネットワーク千葉県/船橋憲法を生かす会/イラク戦争に反対する市民と議員の会(千葉)/非核市民宣言運動・ヨコスカ/ヨコスカ平和船団/NO!AWCSの会(浜松)/不戦へのネットワーク(名古屋)(8月15日現在)
[連絡先] 核とミサイル防衛にNO!キャンペーン
TEL&FAX 03-5711-6478 e-mail: koji@agate.plala.or.jp

3面

米日の侵略戦争と改憲

07年5月、当時の安倍政権は国民投票法を強行成立させた。憲法を改悪するための国民投票法だ。同法の施行は2010年5月である。もともとのねらいは、施行までの3年間をつかって憲法審査会(新設)で改悪憲法案を作りあげ、施行と同時に一気に国会発議から国民投票にもちこもうというものであった。しかし、07年7月の参議院選挙で自民党が大敗し、安倍政権は崩壊した。憲法改悪の枠ぐみは作ったものの、人民の怒りの前に、それ以上踏み出せない状態が表面上は続いている。だが、このままでは日本帝国主義はたち行かない。改憲にむけた策動をくりひろげている。衆院解散・総選挙情勢の中で、改憲問題を焦点に、政党と労働運動の大再編がおころうとしている。
本稿では、改憲阻止闘争の前進のための視点を提起する。全国の職場・地域・学園・街頭で、改憲阻止のうねりをまきおこそう。

改憲の争点

本稿では、九条改憲を中心に展開する。もちろん、現下の攻撃は、全面改憲である。そのうえで、支配階級の意志として、攻撃の焦点が九条の破壊にあるという点を見誤ってはならない。
改憲を容認する次のような見解がある。
―現在の自衛隊を公認する改憲ならいいのではないか。
―解釈改憲を続けることの方が問題だ。軍事大国化しないためにこそ改憲すべきではないか。
―日本が侵略される危険がある以上、最低限の戸締まりは必要ではないか。
これらの見解に共通する問題点は、日本と世界をめぐる現実を見ていないことである。
アメリカが、イラクをはじめ世界130カ国で35万人の兵力を展開し、「長期にわたる戦争を戦っている」(06年QDR 注1)という現実。自衛隊は「米軍との統合運用」に踏み出し、「長期にわたる戦争」への参戦を開始している現実。これをさらに拡大するために、米国から「憲法問題の解決」(07年アーミテージ報告 注2)が強く要請されている。
改憲の是非とは、この「長期にわたる戦争」の是非と、そこに日本が参戦することの是非として争われなければならない。

「長期にわたる戦争」

「アメリカは長期にわたる戦争の中にある国家である」(06年QDR)「冷戦の初期に直面したのと同じ長い戦いの初期段階にある」(06年国家安全保障戦略 注3)
アメリカが、帝国主義としての存亡をかけた大戦争に踏み切ったということだ。
被抑圧民族の闘いを「テロリズム」と憎悪し、朝鮮民主主義人民共和国やイランを「圧政」と攻撃し、中国やロシアを「敵対国」と暗示し、次々と戦争を仕かけていく。しかも、その戦争の恫喝で、「途上国」を屈服させ、G8などの「主要国」を再編する。アフガニスタン・イラクで泥沼化している侵略戦争を、「グローバル・ウォー」に拡大・永続化するというのだ。
一体、この戦争は何なのか?
アメリカ帝国主義のグローバル化した蓄積構造と、それを支える世界支配が、土台から次々と破綻をきたしている。イラク侵略戦争の泥沼化と中東支配崩壊の危機、中国の階級矛盾と民族矛盾の激化と大乱の危機、南米まるごとの反米大陸化、反グローバリズム運動と労働運動の台頭、サブプライムローン問題と金融危機とドル危機。これらの総体をめぐる諸帝国主義との矛盾である。
そもそもアメリカは、恒常的な戦争態勢で世界を支配してきた。しかしいまやアメリカは、その世界支配の崩壊から逃れようと、戦争を全面化し世界化し永続化する―まさに究極の大戦争に踏み出したのである。
資本による賃労働の搾取という人間疎外を基礎にここまで巨大化した生産力が、恐るべき破壊力となって人間自身に襲いかかっている。それは資本主義の歴史的限界であり、プロレタリア世界革命と共産主義の現実性を突きだしている。

安保の世界化と米軍・自衛隊

日米は、「世界の安全保障環境」の維持・構築のために、 安保の対象地域を世界全体に拡大し、「安全保障環境」を乱す勢力や国家にたいして、米日共同で軍事行動を行なう。日米両政府は、このようなとりきめを、05年10月の日米安保協議委員会で行なっている。
そして中国を対象にした戦力配置を徹底的に行なっている―
在韓米軍の再編と在日米軍の強化。ミサイル防衛計画の一環をなすPAC3を、韓国西岸沿い、沖縄・嘉手納基地と嘉手納弾薬庫、北海道から沖縄の日本全土に配備。嘉手納基地と岩国基地を第一線正面基地として拡大・強化。沖縄・辺野古への新基地建設。イラクをはじめグローバルに展開する米陸軍第一軍団の司令部を米本土からキャンプ座間に移動。横田基地に全世界を一元的に射程に収める戦闘指揮センターを配置。米軍と自衛隊の陸海空のそれぞれの指揮を一元化。日本版海兵隊である陸自・中央即応集団の新設と米陸軍第一軍団との一体化
―などである。
さらに、イラクでは、空自が輸送活動で米軍の掃討作戦と完全に一体化し、インド洋ではアフガン空爆を行なう米空母に給油活動を行なうところまで実戦に踏み込んでいる。米日共同の侵略戦争はすでにここまできている。

「戦争放棄」から「安全保障」へ

しかし、支配階級からみれば、自衛隊はいまだ“戦えない軍隊”である。九条、とくに九条2項によって、自衛隊は、海外での武力行使を固く拘束されているからだ。それは単に文言の問題ではない。労働者人民・アジア人民の意識とたたかいがそれを強制しているのである。
いま、支配階級は、ここを正面突破しようとしてきている。

自民党「新憲法草案」

改憲試案はいろいろ出されているが、共通するねらいは、9条の破壊である。自民党「新憲法草案」(05年11月 以下、自民党草案)がそのことをはっきり示している。
自民党草案の9条破壊の手口は、九条1項〔戦争の放棄〕には手をつけず、9条2項〔戦力の不保持〕〔交戦権の否認〕だけを削除し、これに代えて、「9条の二」という規定を新設するところにある。
第1に、第二章のタイトルを「戦争の放棄」から「安全保障」に書き換えた。「戦争の放棄」と「安全保障」は、まったく正反対のものだ。
「安全保障」の名のもとで、アメリカが全世界で侵略戦争をおこなっている事実が示すとおりである。同じことを日本もねらっているのだ。
第2に、現行9条2項を削除した。〔戦力の不保持〕〔交戦権の否認〕を明記した現行9条2項を削除するわけだから、自動的に、〔戦力の保持〕〔交戦権の容認〕となる。
第3に、現行9条1項〔戦争の放棄〕には手をつけてない。労働者人民・アジア人民から猛反対がおこると判断しているからだ。
しかし、現行9条1項は、現行9条2項〔戦力の不保持〕〔交戦権の否認〕の縛りによって実質を持つ構造になっている。現行9条2項を削除することは、〔戦争の放棄〕をただのお題目にしてしまう。
第4に、9条の二を新設した。9条の二は、第1項で、「自衛軍」の役割を「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」と定めた。「平和と独立」を、「自衛軍」の武力行使によって「確保する」ということだ。これは、現行9条の完全否定である。
また、「国及び国民の安全を確保するため」というのも、グローバルに企業活動が行なわれている今日、「自衛軍」は、「国民の安全」のためと称して海外派兵を自由におこなうということだ。
第5に、9条の二の3項を新設した。「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行なわれる活動」を行なうという。
「国際的に協調して行なわれる活動」とはなにか。国連の枠ぐみでもない。アメリカの「長期にわたる戦争」に同盟国として参戦することだ。
第6に、9条の二の3項の後半部分で、「自衛軍」が、「公の秩序を維持」する目的で、労働者人民に、銃口を向け、武力を発動することを明記した。

改憲阻止のうねりを

このように、一般的に戦争の是非や自衛隊の是非が問題なのではなく、米日が共同して侵略戦争を行なうために、憲法を変えようとしているのだ。このことを明確にしよう。
それを、まず第1に、9条の改憲案の条文を、具体的に暴露・批判することで明らかにしよう。
第2に、「長期にわたる戦争」の全体像と階級的本質を暴露し、アフガニスタン、イラクで行なわれている侵略戦争の現実、これを自衛隊がになっている現実を暴露・断罪しよう。全世界の労働者人民・被抑圧人民と連帯して、国際反戦闘争としてたたかおう。
第3に、沖縄闘争、岩国闘争、横須賀闘争などが万単位の決起でたたかわれている。沖縄と三里塚を軸に、全国反基地闘争の高揚と結合して改憲阻止闘争をつくりだそう。
以上を三位一体ですすめるならば、かならず、階級的な怒りが組織され、大衆運動を作り出すことができる。
さらに第4に、労働運動の独自の領域を全力で進めるとともに、戦争と貧困の元凶がひとつであることを明確にしつつ、労働運動の前進を土台として、改憲阻止闘争を発展させよう。

注1 QDR(Quadrennial Defense Review)「4年ごとの国防計画見直し」:国防総省によって作成され、4年に一度議会に提出される。アメリカの国防方針・軍事戦略を表す。
注2 アーミテージ報告:シンクタンクによって作成された、超党派の政策提言。2020年までのアメリカのアジア戦略の概要をうちだしている。
注3 米国家安全保障戦略:ホワイトハウスが作成し、議会に提出する。アメリカの国家戦略を表している。QDRなどの土台をなす。

(日本国憲法と自民党新憲法草案の対比表)

日本国憲法 第二章 戦争の放棄

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党新憲法草案 第二章 安全保障

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第9条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。
2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。

4面

現場からの声 下水道事故―厳しいノルマが原因 大阪DL

水道局に勤めています。
先日、東京で、豪雨のために下水道が増水し作業員が死亡する事故がおこりました。ニュースは、局地的な豪雨は対応が難しいといっています。どうかなと思います。
東京と大阪は違うので一概にはいえませんが、下請・孫請でやっている人たちは厳しいノルマで仕事をしています。そういう問題があると思います。
大阪では、市の仕事は、大手ゼネコンが元請けとなり、それを下請に投げて、さらに孫請けに出します。それぞれ1割ぐらいのマージンをとっています。しかも大阪市が決める基本単価は下がっています。当然、現場で実際に仕事する孫請けはきついです。人間を使えば赤がでます。必然的に孫請けは、少ない人数で、数をこなして利益をだそうとします。1日4〜5件をこなします。雨とかいったことは、当然、計算外です。そして、元請けの大手はこういう現場のことなどまったく関心ありません。
こういう中で、大阪でも同じような事故がいつおこっても不思議でないと感じています。
なお、事故問題と別ですが、市の職員も賃金カットで苦しいです。私もはじめて賃下げになりました。30歳代の同僚は、3人目の子供ができたのにあきらめざるを得なかった。これが公務員の現実です。

読者からの手紙 飛田論文(『展望』創刊号)の安田派批判に深く同意TZ

先日はご多忙のところ、早速機関紙『革共同通信』をお送りくださいましてありがとうございました。よく読ませていただきました。
さて『展望』創刊号の飛田一二三氏の論文の中で、私は「・・・言いかえれば『労働者がすべて。被抑圧・被差別人民はその従属物』・・・というにひとしい主張を(安田派は)振りまいている」(P・113上から12行目から)という箇所に深く同意いたしました。(中略)
私は、マルクスの資本論のコレクターで、たくさんの出版社の資本論を読みました。マルクスは資本主義における労働者への資本の搾取を不条理としてとらえ、生産力の発展はやがて資本主義が音をたてて崩れ去るにいたることを明らかにしたものだと思います。そしてつまるところ言わんとせんことは「人はすべて平等」でなければならないという人類普遍の原理を説いたものと理解しています。
私は、私の住んでいるところで「在日」の方々への差別はないか、被差別部落の方々への差別はないか、常に監視し、あれば、それを大衆運動とし、公正で平等な社会の実現に邁進したいと思います。今後もよろしくお願い申し上げます。

読者からの手紙 「『京浜グループ事件』の総括と教訓」(『展望』第2号)を読んで B・M生(79歳)

貴重な資料を送っていただき、むさぼるように読みました。戦前の運動史の中で日本共産党の人たちが避けて通る事件は、「多数派」事件と京浜グループ事件です。くめども尽きぬ貴重な経験を、いま取りあげる意義を痛いほど感じながら一読させてもらいました。
現在の自分のちっちゃな活動の中にも生かしてたたかうべき指針としての価値は少しも減少しておりません。逆にますます光り輝いて進路を指し示しています。この一編に、心からの尊敬と感謝をささげます。

「06年3・14」とは何だったのか  党員が主体性をとりもどすたたかい

なぜ私は革共同関西地方委員会と共に歩む道を選んだのか。それは、3・14とは何かという視点を持ち続けたことです。
3・14とは何だったのかをひとことでいうのは容易ではありませんが、関西にとどまらず、全国の党の官僚主義的停滞状況を突破するのは、3・14が絶対に必要であったし、いまもそうだと私は確信しています。この観点があればこそ、安田派の「階級的労働運動路線」に取り込まれずにすんだのです。
振り返れば、遠山「指導」下の会議の有様は、まるで「御前会議」と思えるほど、遠山の前に多くの労働者同志が拝跪させられていました。こんな状態では革命は及びもつかない、革命党のメンバーがこんな有様で、どうして労働者階級を決起させられるのかとの思いがありました。私には、指導部と労働者党員との関係について、長良川の鵜匠と鵜の関係がイメージされ、綱を伸ばしたり引っ張ったりしてコントロールするやり方が、そのまま、極端に狭い、労働者「指導」にオーバーラップしていました。
号令の下に蟻軍団的に動くあり方は、フェーズ(T)、フェーズ(U)では通用しても、労働運動では通用しない。いつまでもこんなやり方を続けても党は大きくならないと。
特に私がこだわっているのは、党員の「主体性」の問題です。3・14以前の党は、「主体性」を育てる党ではなかった。逆に、それを奪ってしまうようなあり方ではなかったか。党細胞が、自分の頭で考え行動することは非常に重要なことだと思うのです。「自立した共産主義者」ということと「主体性」の問題は一体なのです。
「主体性」は決定的に尊重され、守り育てられねばならないのです。党細胞は、主体性を取り戻すことにより、細胞の活性化と拡大をつくりだすことができると思います。
なぜ91年5月テーゼ以降、この15年以上に及ぶ長い期間、機関紙を拡大し、党員を増やすことにおいて成功しなかったのか。やはり私は、党員の主体性を引き出し活かすことができなったことが大きな原因だと思う。人は正直な存在なのです。人を増やそうと思わないかぎり増えないのです。指導部がこの点になぜ気づかないのか私には不思議でした。
5月テーゼで路線転換をはじめたけれど、党の組織のあり方も、中央と細胞との関係も明確に転換しなければならなかったと思うのです。「中央と細胞の同格性」を実現しなければならなかったのです。中央が「雲上人」的あり方を続けていたからこそ、今日の困難が生まれたのです。(KT)