革共同通信・第7号

2008年4月15日発行

サミット粉砕 9条改憲阻止 −5・3共同行動 

「改憲阻止」と「G8サミット反対」の集会とデモ行進が、実行委員会からよびかけられている(詳細は下記の要項)。 「小異をのこして大同に」を原則に、「職場地域に根ざした広範な共同闘争」「本格的な大衆闘争」(以上、「呼びかけ文」からの引用)をつくろうと提起されている。これは、階級闘争の現状を打開していく提起だ。サミット闘争から改憲阻止の展望を大きくひらくものになる。この呼びかけにこたえ、「5・3共同行動」への参加と取り組みを訴える。

日帝の政治危機と大激動

「5・3共同行動」は階級的な大激動の中で開催される。
福田政権は倒壊の危機にある。日本帝国主義の政治危機は、07年参議院選挙の敗北いらい拡大の一途である。「給油新法」の再議決などの乗りきり策がさらに危機を深めている。小沢・民主党の動きも危機を加速している。
福田をおいつめているのは、新自由主義政策とイラク参戦、改憲の攻撃にたいする労働者人民の怒りである。とりわけ格差と貧困の拡大への怒りは根底的である。それが基地問題、改憲、イラク参戦への怒りと結びついている。こうしたなかで、08春闘では実力闘争やストライキの復権がはじまっている。
日本帝国主義は、一方で、新自由主義政策の破綻である世界的な金融危機にゆさぶられ、他方で、新自由主義政策にたいする労働者人民の怒りにおいつめられている。それがあいまって未曾有の政治危機として爆発している。 
それゆえ、日本帝国主義は、ますます侵略戦争への突進と階級戦争の激化に訴えるしかない。@4〜7月のG8サミットとA派兵恒久法・憲法改悪、Bそのための解散総選挙と政党大再編である。

G8サミット粉砕を労働者階級の正面課題に

侵略戦争を阻止し、格差・貧困をうち破るために、G8サミット粉砕を労働者階級の正面課題にかかげよう。
「戦争と貧困」の元凶=G8サミットは粉砕あるのみである。
G8は、世界の人口の14%でしかない8カ国の帝国主義列強の首脳たちが、利害をむきだしにしてぶつかり合い、その決定を全世界に強制する会議だ。
とりわけ08年のサミットは、侵略戦争の継続・拡大と経済危機打開をめぐる帝国主義列強のはげしい対立と協商の場である。
(1)金融危機とドル暴落にたいして、帝国主義同士が危機を他に転嫁しあい、結局、労働者人民へのさらなる増税とインフレによる収奪など、犠牲の強要につきすすむものだ。
(2)「環境危機」をあおりながら、「CO2 の排出量取引市場」をつくりだし、投機による詐欺と略奪をくり返そうとするものだ。
(3)「アフリカ開発会議」は、帝国主義列強が資源と市場を奪いあい、どこまでも搾取と収奪と戦争を強要していこうとするものだ。
(4)「テロ対策」とは、グローバリズムと新自由主義政策への全世界の労働者・農民・被抑圧民族の怒りとたたかいを、侵略戦争をもって粉砕しようとするものだ。
(5)帝国主義の危機と矛盾の激化にたいする絶望的な打開策として、イラク・アフガニスタン侵略戦争の激化と世界戦争的な拡大につきすすむものだ。全世界の労働者・農民・被抑圧人民と連帯し、サミットを粉砕しよう。

サミット闘争と一体で恒久法制定と改憲の阻止へ

改憲をめぐる情勢が緊迫している。サミット闘争と一体で、派兵恒久法制定阻止・憲法改悪阻止のたたかいを推しすすめよう。
3月4日、「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根元首相)が、与党の自民・公明のみならず、野党の民主党や国民新党の議員も参加して総会を開いた。「衆参両院の憲法審査会の早期始動の働きかけを強める」、「民主、公明の議員を拡大する」、「草の根の護憲運動に対抗し、地方に拠点をつくって国民運動をすすめる」などの活動方針を確認している。支配階級においては「憲法改正への意欲が充満している」(中曽根)。
これに呼応するように、日教組大会にたいする妨害、大江・岩波訴訟の提訴、映画『靖国』の上映にたいする妨害など、極右が、自民党議員と一体となって攻撃している。
さらに、秋の国会上程が予定されている「派兵恒久法」は、改憲の先取り法そのものだ。この法律が制定されれば、政府の判断で、いつでも、どこでも、イラクやアフガニスタンのような戦場に、米軍と一体となった自衛隊の派兵が可能となる。しかも米軍・自衛隊の武力行使を認め、自衛隊の武器使用も認めるというものだ。
日本帝国主義の危機と侵略戦争への突進が改憲情勢を加速し、イラクへの空自派兵継続、インド洋での給油活動継続、沖縄への新基地建設、在日米軍の再編、PAC3の配備などとともに、重大な段階をむかえている。

解散総選挙情勢と対決し本格的な大衆闘争を

日本帝国主義は、厳戒態勢の力でサミット翼賛を演出し、反対運動を圧殺しようとしている。それをもテコに、解散総選挙と政党大再編をしかけ、昨年来の「逆転国会」を、改憲に向かって一気に「翼賛国会」にひっくりかえそうとしている。実際、民主党が、「派兵恒久法」に賛成するのは確実である。街頭では、極右を動員し、改憲国民運動を組織しようとしている。
階級闘争の巨大なうねりの中で、右からの大衆運動と、左からの大衆運動とが競い合い、激突する情勢にはいった。一切の勝負が、議会や法廷ではなく、大衆運動の現場でつけれるときがきた。三里塚闘争や沖縄闘争とともにたたかうならば勝てるということだ。
これを歓迎し、促進し、「職場地域に根ざした広範な共同闘争」「本格的な大衆闘争」に全力をあげよう。「5・3共同行動」は決定的な位置をもとうとしている。
職場・地域でたたかうすべての運動家、グループ、仲間に「5・3共同行動」への大結集をよびかけよう。

「9条改憲阻止!戦争と格差・貧困を押しつけるG8サミット反対!5・3共同行動」

5月3日(土)開場 13:00 デモ16:30
会場:大阪市立北区民センターホール  地下鉄堺筋線・扇町駅、JR環状線天満駅
講演/発言/北海道現地からの訴え/ライブ演奏など
講演:「G8サミットをめぐって」本山美彦さん

『革共同通信』につづき、関西地方委員会が、理論機関誌『展望The Perspective』を発刊

「われわれは、マルクスやレーニンの事業をひきつぎ、本多書記長らがつくってきた革共同の理論体系と革命的左翼の運動、全世界の労働者階級・被抑圧民族のたたかいを継承・発展させるため、さらには極限的腐敗と搾取をつよめる現代帝国主義の新自由主義攻撃を根底から批判するための理論機関誌として『展望』を発行する。
『展望』は、革共同の奪還・再生の武器であるとともに、第二インターへの転落に比すべき日本階級闘争の総翼賛・総転向の流れを革命的に突破する武器でもある。たたかうすべての労働者・学生・農民・被差別民衆・革命的インテリゲンチャは『展望』の旗の下に結集し、プロレタリア革命の展望をともにうちたてる共同の事業に参加されることをこころからよびかける」(「創刊アピール」から)。
内容紹介
● 戦争と格差・貧困を拡大するG8 サミットを粉砕せよ!
 ―改憲阻止とサミット反対のために・・・・・・落合 薫
● 日本における新自由主義政策と「非正規雇用」―貧困の増大
 ―08春闘論のために・・・・・・・・・・・・森川 数馬
● 安田派中央とのたたかいと7 月テーゼへのさらなる批判
           ・・・・・・・・・・・・革共同・関西入管闘争委員会
●教基法決戦から沖縄教科書闘争まで―教労産別のたたかいから「階級的労働運動路線」を検証する・・・・ 立木 玲二
●安田派中央の日本帝国主義権力への投降と転向を断罪する―
    「TSG問題」、与田の二つの「自己批判書」、安田政治局員らの腐敗と転向 ・・ 飛田一二三
●2006年11月 関西党員総会第2 報告 「党の革命」の第2段階を戦取し、労働者自己 解放の新世紀を
   ・・革共同関西地方委員会理論機関誌
A5 180ページ1000円

2面

農地は命――3・30三里塚  市東さんの農地の強奪を許さない

3・30三里塚現地に1520人が結集し、全国総決起集会が開催された。
反対同盟の鈴木幸司さんは、「農地は命である。市東さんの農地の強奪を絶対に許さない」と開会宣言。
北原鉱治事務局長は、不正義の空港建設と30年前の開港阻止闘争の爆発のなかに「正義は勝利する」と確信したこと、市東さんの農地強奪とのたたかいは、正義と日本の将来がかかっており、「流血の惨事をおこすというのなら、受けてたってやろうではないか」とその決意をあきらかにし、全国の労農学の総決起を訴えた。

農地に手をつけさせない態勢を敷地内・萩原進事務局次長

基調報告に立った萩原進反対同盟事務局次長は、市東さんの農地取りあげをねらう裁判は、「本来ならば法は適用できず、門前払い」になるべきものと弾劾した。まさに改憲の先取りであることを明らかにし、農民殺し.にたいして、全国農民と労働者の総決起を訴えた。さらに、サミットやアジアゲートウェイ構想、FTA(自由貿易協定)などによって強行される日本農業の破壊と、三里塚への農地強奪攻撃にたいし、「農地を武器にしてたたかう」「自分たちのこの大地を民衆の力で取りもどし、民衆のものにしていく」たたかいを訴えた。市東さんの農地強奪にたいして、「形をかえた代執行だ。農地に手をつけさせない態勢をつくろう」と訴え、6・8現地闘争と10・5全国総決起闘争を呼びかけた。
また鈴木謙太郎さんから「農民アピール―低賃金・貧困と農民切り捨ては一体だ。FTAに反対しよう」とのアピールが発せられた。
1億8千万円の離作料でも私は心を売らない 敷地内・市東孝雄さん
市東孝雄さんは、「市東さんの農地取り上げに反対する会」と共に登壇し、日本農業の危機的現実と「私の農地問題はまったくいっしょの問題」、「離作料として提示された1億8千万で、私は心を売りません。消費者・支援者、人との絆・交流の方が大事です」ときっぱりと表明し、裁判闘争への支援を訴えた。
決意表明にたった三里塚決戦勝利・関西実行委員会の永井満代表は、「『三里塚のようにたたかって勝つんだ』を根本に、今年、大変なたたかいとなる市東さんの農地取りあげとたたかいぬく」と訴えた。

08年メーデーアピール

階級的労働運動を再構築し、G8サミット粉砕・改憲阻止へ

79回メーデーをむかえるにあたって、全国の、そして全世界の労働者に訴えます。
イラク・アフガニスタン侵略戦争の泥沼化と、昨年後半以来の金融危機のなかで、全世界の労働者人民は、米英日の戦争枢軸をなすブレア政権と安倍政権をうち倒しました。インド洋への海自再派兵を強行した福田現政権は、その統治能力を内外から疑われ、支持率も急落して政権崩壊の危機をむかえています。
ブッシュ政権もすでに命運は尽き、経済危機を打開する力もなく、イラク撤兵要求のたたかいが広がっています。

新自由主義の破産

戦争と経済危機はつねに一体です。帝国主義者たちは、経済危機ゆえに戦争をしかけ、戦争の泥沼化のなかで経済危機を激成させていきます。そして、労働者人民と被抑圧諸国人民にすべての犠牲をおしつけて延命しようとするのです。そのための理念と基本政策として、80年代以来、押したてられてきたのが〈新自由主義〉でした。
日本と全世界の労働者人民は、帝国主義諸国の新自由主義「改革」によって、〈貧困と格差〉を強制されてきました。ブルジョアジーは〈グローバル化〉した全世界を搾取の対象に、「途上国」の低賃金労働力めあての生産移転と帝国主義国内での賃金破壊・雇用破壊をおし進め、全世界を投機の対象として資源と農産物を買いあさり、生活物資の高騰とバブル経済をつくりだしてきました。労働者人民の生活を破壊し、社会と自然を荒廃させただけでなく、戦争によってすべてを破壊しつくそうとしてきました。

戦争か革命か

しかし、延命の道もいよいよ尽きるときがきたのです。日本でバブル崩壊と15年間の停滞を引きおこし、東南アジアと中南米諸国で経済破綻を引きおこしてきた〈新自由主義とグローバリズム〉が、基軸帝国主義としてあるアメリカ経済の決定的な危機を引きおこしているのです。これは、資本主義社会であるかぎりかならず逢着する危機であり、その打開は〈戦争か革命か〉以外にありません。
洞爺湖と全国で開催されるG8サミットは、侵略戦争の継続と拡大、経済危機打開策をめぐる対立と協商の場となるものです。わたしたちは、全世界の労働者人民と連帯して闘うとともに、イラク・アフガニスタン参戦を実績にして本格的な侵略大国への国家改造をねらう改憲攻撃を粉砕しなければなりません。

政権交代ではなく、全改憲勢力の打倒を

〈戦争か革命か〉の選択肢を前に、全世界の労働者人民がとわれています。わたしたちは、福田政権を労働者階級の力で追いつめ、打倒しなければなりません。しかし、民主党と連合幹部たちの解散・総選挙による政権交代論だけでは、民主主導の大連立による改憲情勢を引きよせかねません。階級的労働運動の再構築と〈G8サミット粉砕・改憲阻止〉の反戦政治闘争を両軸にたたかい、連合・全労連を下から現場からつくりかえ、極右から民主・連合幹部にいたる全改憲勢力と対決し、総反撃にたちあがりましょう。
08春闘では、〈貧困と格差〉にさらされてきた非正規雇用労働者たちが反撃にたちあがり、教育労働者が根津さんへの解雇攻撃をうちやぶりました。分割民営化と闘う国鉄労働者や三里塚農民も、沖縄・岩国も不屈にたたかいつづけています。怒りのメーデー・たたかいのメーデーを復権させるときです。ともにたたかいましょう。

東京・関西・広島など不起立つらぬく

根津さんの解雇をうちやぶる

東京都教委は、3月31日までに、根津公子さんら20人への「君が代」不起立による懲戒処分を行った。根津さん、河原井さんに6か月停職という重処分だが、解雇攻撃はうちやぶられた。根津さん自身の不屈のたたかいと、東京―全国をつらぬく「日の丸・君が代」闘争の広がり、とくに解雇だけは許さないという思いでワンデー・アクションが何度も取り組まれてきたことによる成果だ。
関西では、門真第三中学の卒業式で、担任団全員と1人をのぞく全卒業生が不起立をおこなうなど、各地でねばり強く「日の丸・君が代」強制を許さない闘いが取り組まれた。広島でも、12人が不起立をつらぬき、処分をうけた。
文科省は学習指導要領を改訂し、愛国心と「君が代」を歌えるように指導するという文言が土壇場で追加された。これとのたたかいが、全学校現場ではじまる。

大阪府教委 指導文書を出し職務命令

これをうけて、大阪府教委は全市町村教委に門真三中問題で徹底指導を求める文書を発し、門真では、入学式当日に2校で職務命令がだされた。大阪でははじめてである。しかし、たたかいはねばり強くつづけられている。全国から府教委・門真市教委への抗議を集中しよう。

大江・岩波沖縄戦裁判が勝訴

3月28日、大阪地裁には傍聴を求める人が500人もつめかけた。多くの人が外で判決を待っている。第一報の垂れ幕が開かれた。「大江・岩波勝訴」だ。歓声、拍手、笑顔があふれる。判決は、原告の請求をすべて棄却した。
1945年3月26日、米軍が、渡嘉敷島、座間味島、慶留間島に上陸を開始した。その戦闘の間に、日本軍は、住民に集団死を命令・強制した。
それを弾劾した大江健三郎氏の『沖縄ノート』と出版元の岩波書店を、渡嘉敷島の戦隊長であった赤松嘉次元大尉の弟と、座間味島の戦隊長であった梅沢裕元少佐が、「名誉毀損」で大阪地裁に提訴した。それは、皇軍の残虐行為と侵略戦争を正当化し、戦争への道をすすめる策動だ。

文科省は検定意見をただちに撤回せよ

判決は、元隊長の陳述は信用できない、「日本軍が深くかかわった」のは明白、部隊長の責任は重いとして、梅沢らの請求をすべて棄却した。
昨年9月29日の県民大会12万決起をたたかった沖縄の怒りが、今回の判決をここまで踏み込ませた。
文部科学省は、この裁判を口実にして、高校歴史教科書を沖縄での「集団自決」(強制集団死)に軍の関与はなかったと書き替えるように強制してきた。判決はこの論拠を完全に否定している。
胸のすくような勝利だが、たたかいはなかばだ。控訴審(原告は即座に控訴した)も勝利しよう。「検定意見」を撤回させよう。
判決当日の報告集会には250人が参加した。特に教育労働者が、「本土の教育労働者の責任として検定意見撤回までたたかう」と発言した。また、「検定意見の撤回を求める会・関西」のたたかいが報告された。

3面

史上最悪の医療制度「後期高齢者医療制度」を廃止せよ

全労働者にたいする社会保障制度の解体攻撃

08年4月から、75歳以上のすべての高齢者を対象とした「後期高齢者医療制度」の実施が、多くの反対を押し切って強行された。「後期高齢者」という呼び方自身にはげしい怒りが噴出している。福田は「長寿医療」などといいかえて怒りをかわそうとしている。
「後期高齢者」とは、65歳以上の高齢者を、74歳以下の「前期高齢者」と、75歳以上の「後期高齢者」とにわけてつくった厚労省の造語だが、ここには、高齢者を差別し分断する狙いがある。政府は、これをテコとして「国民皆保険制度」といわれる戦後医療制度の解体をさらにおし進めようとしている。

戦争・改憲と一体

日本帝国主義は、世界戦争危機の中で、新自由主義にもとづく社会福祉政策の原理的転換に舵を切っている。それは、戦争・改憲、労働運動絶滅・解体などの日本の戦争国家化政策と一体で展開されている。経済財政諮問会議の「日本21世紀ビジョン」(05年4月)は、「構造改革」の中心課題に社会保障制度改革、その焦点に医療をすえた。そして、050〜06年度をその「重点強化期間」、それを含む05〜10年代初頭を「革新期」と位置づけた。そのなかで、06年6月、「医療改革法」(12本の関連法案)を国会で強行成立させ、同年7月の「骨太方針Y」において「向こう5年間で社会保障給付1兆1千億円削減」を決定した。「自助と自立」「国民一人ひとりが痛みを分かち合う」をその基本思想とする。福田政権は、小泉−安倍を引き継ぎ、これらの本格的実施を開始したのである。「後期高齢者医療制度」の発動は、その決定的一環である。
そして、医療現場では、医師不足、看護師不足、介護労働者の低賃金による疲弊がすすみ、病院の倒産、資本による病院の買収があいつぎ、業務の外部委託化、医療・福祉労働者の賃下げ、過重労働の深刻化によって医療そのものが解体しはじめている。

高齢者と現役労働者を分断

「後期高齢者医療制度」は、直接には、高齢者の医療を制限し、高齢者にかかる医療費の抑制を狙うものではあるが、その本質は、現役の労働者をはじめとするすべての労働者人民にかけられた戦後社会保障制度の全面的な解体をねらう大攻撃である。
政府は、このたたかいをおさえ込むために、高齢者にたいする差別意識をあおり、高齢者と現役労働者を対立させ、たたかいを分断しようとする卑劣なやり方をとっている。これに負けることなくたたかいの高揚をかちとることがもとめられている。

高齢者にたいして差別医療を導入

この制度が、史上最悪の医療制度といわれる理由の第一は、診療報酬の改悪によって、75歳以上の「後期高齢者」といわれる人たちの受けられる医療がおおきく制限され、病気になっても必要にして十分な医療を受けることができなくなったことである。

医療機関を自由に選ぶ権利を制限

まず、外来診療については、4 日間の研修をうけた「高齢者担当医」(診療所の医師のみ)をつくり、その内から1人を主治医として選ばせるようにした。このことによって、高血圧、糖尿病、脳梗塞などの慢性疾患の患者が、医療機関を自由に選ぶ権利を制限された。
そこで受けられる医療は、定額制で月6000円の枠がはめられ(後期高齢者診療料)、その中に、検査や画像診断、処置などが丸められた(薬、注射は今のところ別)。したがって、枠をこえた検査などが必要になっても、その費用は診療所側のもち出しになるからできないことになる。
厚労省は「複数の医療機関にかかっていると検査や投薬が重複してムダが生じる」などといっているが、専門科目が分化している現代の医療において、これが国民皆保険制の柱のひとつであるフリーアクセス(自由に医療機関を選択できる権利)を制限し、後期高齢者から必要な医療を奪うことになるのは明らかであろう。これに対する反発があまりに強いものだから、厚労省はあわてて「どこにかかっても構わない。主治医を変えることもできる」などと矛盾したことをいいはじめたが、これがごまかしであることははっきりしている。
この制度については、山形や茨城県の医師会が反対を表明するなど、はやくも破綻がはじまっている。

早期に退院させる露骨な誘導

入院診療についても、できるだけ早期に退院させるよう露骨な誘導がおこわれている。たとえば、退院がむずしい患者について、退院させるための具体的な計画を作成すれば、1000円をつける(後期高齢者退院調整加算)などである。
末期のがん患者を退院させて在宅療養に移行させたときには、訪問看護ステーションに6000円をつけるというえげつない点数も新設された。
「終末期医療」についても、延命治療などについて家族と話し合い、文書にまとめたら2000円をつけることになった(後期高齢者終末相談支援料)。「延命治療はしない」という線で話をまとめろと誘導しているのである。

「いずれ死ぬ者」とする差別思想

全体として、「後期高齢者」については、入院ではなく、外来か在宅で診るように誘導している。そのほうが医療費が安くて済むからである。
その基礎には、「後期高齢者」について、@複数の慢性疾患をもっている、A認知症がある、Bいずれ死ぬ者であると定義し、「だから手厚い医療は必要ない」とする差別思想がある(厚労省「後期高齢者の心身の特性について」)。
これまでにも「老人に医療を施すのは枯れ木に水をやるようなもの」という自民党政治家の差別放言があったが、政府が公式にこのような露骨な高齢者差別を表明したことははじめてだ。

滞納すれば保険証を取りあげ

第二の理由は、1年間保険料を滞納すれば保険証を取りあげられることである。保険証が欲しければ、滞納分の全額をはらえ、ということだ。
保険料は、介護保険料と同様に年金から天引きされる。年金が月額1万5000円以下の人は、自主納付することになっている。介護保険料は自主納付の人のうち約2割が滞納しており、その数は大阪府内で約10万人と推定される。
この人たちをはじめ、「後期高齢者医療」の保険料の滞納者はさらに増えることになる。そうすれば保険証をとりあげられた病気の高齢者は、医療を受けられなくなるのだ。まさに「早く死ね」といわんばかりの仕打ちではないか。

あくまで廃止を要求してたたかおう

労働者は生涯労働者階級である。高齢者は労働者階級である。このたたかいは、労働者人民の生存権をかけたたたかいだ。第9条と一体の改憲阻止闘争そのものである。労働者階級こそ、このたたかいの基軸をになわなくてはならない。
後期高齢者医療制度の導入を柱とした医療制度の改悪にたいして、高齢者や医療・福祉労働者、医師など医療関係者を中心におおきな怒りの声があがっている。
政府は、保険料や一部負担金の減額など「激変緩和措置」をつけたり、診療報酬改悪については一切口をつぐんでごまかして押しきろうとしているが、民衆の怒りが爆発することは必至である。福田政権はこのことに戦々恐々としている。
追い詰められているのは政府の側である。労働者人民のたたかいで、この稀代の悪法の廃止をかちとろう。(山田 稔)

医療費負担増と重税

労働者と資本家と国・自治体の三者の医療費負担の支出全体にしめる割合の推移および所得税最高税率の推移
家 計 事業主 公 費  所得税最高税率
1975年 41・1% 25・1% 33・5% 年収8000万円超75%
1990年 44・2% 24・5% 31・4%
2004年 44・7% 20・6% 34・8% 年収1800万円超37%
 家計負担とは、労働者の負担で、保険料の本人負担と受療時の患者負担を合計したもの。
約30年で、労働者(家計)の負担が増加しつづけてきた。反対に資本家(事業主)の負担はへりつづけてきた。
他方、所得税の最高税率は、1974年には、年収8000万円をこえる者には、75%が課税されたのにたいし、2004年には、年収1800万円をどれだけこえても 37%しか課税されず、2007年でも40%でしかない。
この約30年間の間に、労働者は医療費負担と重税を課せられ、資本家にとっては軽 減された。

生活保護費の削減を許すな―厚労省が通院交通費の廃止を通達

いま、生活保護費を削減する攻撃がはじまっている。厚生労働省は、3月3日に通院交通費の改悪案をあらたにつくり、4月1日に局長通達を発した。いままで支給されていた通院の実費を原則廃止するというのだ。北海道滝川市でおきた、生活保護費詐取事件を口実にしている。
生活保護世帯の43・5%は高齢者世帯であり、37・5% は「障害者」「病者」世帯である。専門的な治療が必要な人は、遠くの病院に通院している人が多い。とくに「精神障害者」は医者とのデリケートな相性があり、遠方の医者にかかっている人は珍しくはない。私は一時間以上かけて通院している。
これまで支給されていた交通費が廃止されたからといって、信頼関係を築き、うまく治療方針がたてられている医者を簡単にかえられるわけではない。結局、通院費を日常生活費から捻出するしかない。ただでさえ最低限生きていくだけの額しか支給されていないというのに、そこからさらに差し引かざるをえないのである。
3月31日には、急な呼びかけにもかかわらず50人が参加して、厚生労働省への抗議と国会院内集会がたたかわれた。
現場で行政交渉をもって支給継続を求めるたたかいも必要だ。労働者や、当該でない「障害者」が、「自分は生活保護ではないから他人事」としていては、資本家達の差別分断攻撃とたたかうことはできない。通達廃止の中央政治闘争と、支給継続のための地域日常闘争を、労働者自らのたたかいとしてになおう。GT

4面

大阪港南の闘い(上) 戦時下、職場に拠点を築く
                   ―雑賀 一喜 

階級的労働運動と革命党建設をいかにすすめるか。今日、革共同中央の深刻な変質が進行している中で、これを乗りこえてすすむべき方向はなにか。その示唆を、1930代後半・戦時下のたたかいから得たいと考え、研究者の雑賀さんに寄稿をお願いしました。
大阪港南における和田や吉見らのたたかいは、侵略戦争下において労働者階級の反転攻勢がまったく可能であり、そしてそれがいかなる路線と戦術であるべきか、そして今日われわれがどうあるべきか、どうあってはならないかを教示してくれていると思います。紙面の都合により、上・中・下の3回にわけて掲載します。(編集委員会)
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大阪港南とは大阪市大正区のことで、金属・機械産業を中心に大工場がひしめく地域です。どの工場もストライキの洗礼を受けていると言ってもいいような労働運動発祥の地です。まわりを川と大阪湾に囲まれ、労働者は渡し船で通勤していました。地方から出稼ぎに来て定着した労働者の住宅が多く、沖縄出身者の集落もありました。
「満州事変」以後どの工場でも軍需生産に追い立てられて残業時間が増え、軍需インフレで実質賃金が低下して労働者の生活は厳しくなる一方でした。一九三〇年代の中ごろ再び重工業を中心にストライキが闘われましたが、いずれも敗北に終り、やはり力を結集して闘わなければ駄目だという声が、労働者のなかから自然に出てくるようになりました。
港南の労働組合は上部組織が総同盟(注1)と全労(注2)に分れて競合していました。双方とも大阪とりわけ港南が最大の基盤でしたが、いずれもボス的な幹部が執行部を握り、まともに闘いを指導しようとしないで、職場の労働者たちは不満を抱きブツブツ言いながらも、彼らに従っていたのです。
そのころ日本共産党とその指導下の全協(注3)は、相次ぐ弾圧と自らのセクト主義のため、全国的にほとんど壊滅に近い状態に追い込まれていました。

既成の労組全体を戦闘化する路線

そのようなとき、共産主義の立場に立つ二人の組織者が登場しました。
一人は港南消費組合の常任書記で事務局長格の和田四三四(しさじ) です。彼はかつて全労・大阪金属労組港南支部連合会の書記でしたが、自ら中心になって設立した港南消費組合に移りました。
消費組合は労働組合員などから出資金を募り、米やみそ、しょうゆ、乾物など生鮮品以外の食料品、薪炭などを扱い、物価高騰に苦しむ労働者の家庭から大いに歓迎されました。
もう一人は、共産党関西地方委員(三五年四月以降、責任者)で港南地区オルグの吉見光弘です。彼は京都消費組合の書記から三三年の秋ごろ港南に移り地下に潜行して活動しました。吉見は和田と毎日のように討論を重ねるようになりました。
現在の情勢の下では合法的大衆的な労働組合全体を戦闘化できると考えた吉見は、和田に対して次のような運動のすすめ方を提起しました。
「職場から労働戦線の統一を実現しよう」「ダラ幹排撃というスローガンではなく、彼らを相手にせず」「組合の自主化、つまり自主的に行動する」―というものです。
共産党は大阪砲兵工廠(しょう)のような戦略的大工場でも、同調者を獲得すると全協を名乗らせ、すぐに「砲兵工廠に赤旗ひるがえる!」「ゼネストに立ちあがれ」と機関紙で大々的に報道しビラをまきました。ただちに特高と憲兵が工場を包囲し、工場内の警戒も厳しくなって、職場に根を張る前に検挙されてしまうという犯罪的愚行を繰り返していました。共産党の幹部はこれを「革命の予行演習」と称していました。
つまり共産党にとって労働者は自己解放闘争の主体ではなく、党の動員部隊、貯水池として利用すべき対象でしかなかったのです。吉見の提案はこうした共産党・全協の誤りの反省を踏まえてなされたのです。
港南きってのインテリと言われた和田は、すでにマルクス主義の基本的文献を読んでいて、合法組合での活動の経験もあったので、吉見の考え方を吸収し賛同するようになりました。二人とも当時二三.二四歳で、和田は三四年五月ごろ吉見のオルグで共産党に入党しました。これ以降、絶妙なコンビの二人は微に入り細に入り打ち合せして、慎重に組織活動をすすめました。



日本共産党中央奪還全国代表者会議準備委員会機関紙(1935年6月1日第7号)

「何事も自主的にやっていくんや」

彼らの労働者工作のキーワードは「自主化」でした。全労幹部は争議の請負に終始しましたが、それさえもまともに果たそうとしませんでした。「何事も自主的にやっていくんや。運動を自主化していくんや」という和田の扇動が功を奏して、もう全労の幹部なんて話にならない、という空気が出来上がっていきました。
工作のポイントは、仕事の面でも人間的にも信頼の厚い熟練労働者を獲得することです。「それまでの全協の運動では、獲得した若い活動家が革命的空語に酔ってワクワクした気持で、その工場の労働者が今にも立ち上がりそうに思い込み、活動も知らず知らずに浮き上がってしまって、影響力を持つことも、まして組合の主導権を握ることもできない」と吉見は考えていました。
消費組合の理事がみな職場の中堅で、和田が彼らと日常的に接していたため、組織活動を有利に展開することができました。左翼的伝統のなかで育った彼らは、マルクス主義が正しいことはよく知っていました。しかし、全協が破産した過程も見ていて、共産党や全協に失望していました。
彼らの手によって、職場の労働者たちの切実な潜在的欲求を掘り起こし、要求にまとめ上げ、いかにそれを実現するかをめぐって大衆的な職場討議を組織しました。「要求のつらぬき方」において大衆的な経験を深めていく闘い方によって、運動の前進をかちとることができたのです。
このような闘いのなかで、一人一人の労働者が行動をつうじて自らの闘いであることを認識し、それによって一層ヤル気を起こし自信を深めて成長していきました。
さらに、解雇撤回をめぐって闘われた三三年の大阪鉄工所争議(総同盟傘下)では、全労の活動家が呼びかけて港南地区工場代表者会議を組織して支援し、翌三四年、同じく解雇撤回で闘った大阪機械製作所争議(総同盟傘下) では全労大阪金属労組港南支部連が応援委員会をつくって全面的に支援しました。
争議はいずれも敗北しましたが、職場の幹部たちが顔を合わせ、統一行動を何回も重ねるごとに親しくなっていきました。そして、「なんでわれわれはお互いに立場の同じ労働者同士が別々の組織に分かれているんや、労働者とは本来同じものやないか」という話合いが繰り返されて、「ほんなら合同しようか」という機運が出来上がっていったのです。

 注1)総同盟 日本労働総同盟の略称。最も歴史が古く反共右派。五万三千人。
 注2)全労 全国労働組合同盟の略称。総同盟から分裂した中間派。四万二千人。
 注3)全協 日本労働組合全国協議会の略称。非合法。三四年末に消滅。
    略年表
      (客観情勢)             (運動主体)
31・9・18  「満州事件」勃発     31この年、争議件数、戦前最高
33・3・27  国際連盟脱退       32・10・30共産党に大弾圧(熱海事件)
36・2・26  2・26事件         35・3・4 共産党中央部壊滅
37・7・ 7 日中全面戦争に突入  36 11月以降インフレで賃上争議激増

投稿 映画案内【第七藝術劇場】『今夜、列車は走る』(04年/アルゼンチン/110分)

本作は、民営化の嵐が吹き荒れた1990年代のアルゼンチンが舞台です(どこかの国とそっくりですね)。
鉄道で栄えた町に、路線廃止の決定が下されます。鉄道員仲間のカルロス、ブラウリオ、ダニエル、アティリオ、ゴメスたちも家族や生活のために、ひとり、またひとりと自主退職を余儀なくさせられるのです。失業者があふれる町で、誇りある仕事をうばわれた彼ら5 人の、何とか生き延びようとする怒りと喪失感が、それぞれの運命を予期せぬ方向へ導いて行くのです。
映画のオープニングの〈絶望〉が、映画のラストの〈希望〉につながる見事な構成は感動的です。
そう、どんなに絶望的な状況にあったとしても< 出口はきっとある> という監督の強いメッセージは、映画の原題の「次の出口」にこめられているのです。暗くなりがちなテーマを扱いながらも、どこかユーモラスな感じがただようあたりに、監督のセンスのよさを感じます。〔第七藝術劇場支配人〕
【料金】当日一般 1700円 学生 1400円 中・高・シニア1000円
 5月3日(土・休)〜9日(金)11:00〜18:50
 5月10日(土)〜 16日(金) 12:00〜18:50
 ★ 5 月17 日(土)以降も続映!上映時間は劇場にお問合せを

闘争案内

■ 5・24    「市民が提案するもうひとつの環境サミット」(神戸市内)
■ 6・13〜14 サミット財相会議粉砕闘争(大阪市内)
■ 6・25〜26 「戦争と貧困をおしすすめるサミット外相会議反対!」京都行動
■ 7・7〜9   洞爺湖現地闘争