未来・第44号


            未来第44号目次(2009年11月3日発行)

 1面  11・12〜13オバマ来日 日米首脳会談
     辺野古への新基地建設阻止 普天間基地を撤去せよ
     11・8沖縄県民大会と連帯し全国で行動を

 2面  11・8沖縄県民大会
     人民の未来を決する決戦のはじまり
     全国で日米軍事同盟粉砕のたたかいを

     「復興支援」はペテン 自衛隊を派兵するな
     アフガニスタン現地報告

     戦争挑発の貨物検査法
     10月30日に国会提出

 3面  NAA社長
     暫定滑走路「再延長」発言
     三里塚

     三里塚芝山連合空港反対同盟
     成田空港・暫定滑走路北延伸供用開始を弾劾

     10・25上関 地元民の訴え
     「全国に発信し共有してほしい」

 4面  派遣法の抜本改正へ 10・29日比谷
     労政審に怒りと危機感

     人民の行動が社会かえる
     10・17反貧困大集会

     母子加算復活で高校就学費は廃止?
     10・21緊急院内集会

 5面  紙上討論 「脳死」問題

     【翻訳資料】
     双龍車闘争の教訓と課題(下)

 6面  10・18京都集会 講演要旨
     民主党の安全保障政策と対決を
     纐纈厚さん

     辺野古新基地建設反対で共同闘争
     10・18京都

       

11・12〜13オバマ来日 日米首脳会談
辺野古への新基地建設阻止 普天間基地を撤去せよ
11・8沖縄県民大会と連帯し全国で行動を

「沖縄代表団にたいする侮辱だ」
岡田発言に沖縄の怒り
10・26外務省抗議

10月26日夜 外務省前

「普天間基地の県外移設は考えられない」―10月23日、岡田外相の発言だ。基地を沖縄県内でたらい回しにするというのだ。その日の午前中に、沖縄代表団が、武正外務副大臣に面会し、沖縄県民の想いを伝えた直後に、この発言がなされた。「沖縄代表団にたいする侮辱だ」と厳しい怒りの声があがった。
26日夜、外務省前には60人を超える人たちが集まり、抗議の声をたたきつけた(辺野古への基地建設を許さない実行委主催)。「岡田外相発言を糾弾する」「発言を撤回しろ」「普天間基地を即時閉鎖しろ」「辺野古基地建設を撤回しろ」「民主党の裏切り糾弾」「沖縄の全ての基地を撤去しろ」という発言があい次いだ。

10万人こえる大集会へ 沖縄代表団が訴え
10・22東京

2階席までうまり立ち見まで。450人が参加(22日 東京・星陵会館)

10月22日夜、東京・星陵会館ホールで、普天間基地の即時閉鎖と辺野古新基地建設の断念を求める緊急集会(基地の県内移設に反対する県民会議主催)が開催された。
集会には、沖縄からの代表団が参加・発言した。代表団は、県議会野党会派代表と沖縄平和運動センターなどの市民運動代表らだ。
代表団は、オバマ来日、鳩山・オバマ会談の前に沖縄県民大会(8日)を開催することを明らかにした。
照屋寛徳議員は、「政権に期待すれば裏切られる。大衆運動をしっかり作ろう」〔要旨別掲〕と訴え、ヘリ基地反対協共同代表の安次富浩さんは、「アメリカと喧嘩すればいいんだ」〔要旨別掲〕と訴え、会場からは万雷の拍手が起こった。
高里鈴代さん(平和市民連絡会の共同代表)は、「新たな基地をつくらせないとは、基地がよそに移ってよいということではない。グアムは100年余にわたって、米軍基地によって苦しんできた。人びとを収容所に入れ、その間に用地を囲って、ブルドーザーでならして、基地をつくった。沖縄と同じやり方だ。そんなグアムに基地を持っていってよいはずがない。すべての基地撤去のためにたたかおう」と訴えた。
辺野古への基地建設を許さない実行委員会からは、沖縄の11・8県民大会に呼応して、同日、東京・銀座でデモを行う方針が提起された。
民主党が公約を守れないなら民主党と闘う―こういう怒りの声が会場に充満していた。沖縄闘争の新たな発展の息吹を強く感じた集会だった。
11・8沖縄県民大会に連帯し、全国で行動を起こそう。

アメリカと喧嘩すればいいんだ
安次富 浩さん(ヘリ基地反対協共同代表)

安次富 浩 さん

国会議員のみなさん、なんでこんなにぶれるのか。不思議でならない。アメリカと喧嘩すればいいんだ。それが沖縄の民意であり、全国の民意だ。
11月8日は、沖縄は沖縄で万余のたたかいをやる。皆さんは、東京、大阪、広島などで、やってくださいよ。
なぜ、県民大会をやるのか。それは、オバマが来るからでしょ。オバマに沖縄の怒りを届けるためにやる。
在日米軍を減らす。そのために、大阪や、東京、神奈川で、集会をもってください。それが本当の意味での沖縄への連帯です。それでなくては、変革はできません。そういうたたかいを一緒にやりましょう。
私たちは、(辺野古で)13年たたかいをつづけてきた。75%の在日米軍基地を沖縄に押しつけてきたのは日本政府でしょ。それをだまって許してきたのは国民なんですよ。その被害を受けてきたのは沖縄なんですよ。私たちはもう我慢しない。たたかいます。

政権に期待したら裏切られる
照屋 寛徳さん(衆議院議員)

照屋 寛徳 さん

私は、社民党のなかの反主流派、沖縄頑固党という分派活動をやっている。政権に甘い期待をしたら必ず裏切られる。沖縄の歴史が証明している。沖縄は、世代わりによって、政権によって、翻弄されてきた。犠牲を強いられてきた。
私と沖縄県連、社民党の立場は明確です。普天間飛行場は即時閉鎖し、返還してもらう。辺野古への新基地建設は、絶対に容認できない。高江のヘリパッドも認めない。沖縄にこれ以上犠牲を強いられるのはだめ。
政権に甘い期待を抱かず、大衆運動の力をどうつくりだし、沖縄との連帯をどうつくりだしていくかだ。

2面

11・8沖縄県民大会
人民の未来を決する決戦のはじまり
全国で日米軍事同盟粉砕のたたかいを

沖縄が怒りにふるえている

普天間飛行場(宜野湾市)の「移設」と称して、名護市辺野古の海に米軍の新基地建設をはかる米日両政府の動きに、全島が憤っている。
12日のオバマ来日を前にした8日には、宜野湾海浜公園で、「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会」が開催される。
喜納昌吉参院議員、翁長雄志那覇市長、伊波洋一宜野湾市長、玉城義和県会議員を共同代表とする大会実行委員会は、3万人の結集を目指す。民主党沖縄県連代表でもある喜納昌吉氏は、「今こそ沖縄は民意をひとつにして日米両政府に県外移設の意志を示さなければならない」と訴えている。

米軍 グアムと日本を戦略拠点に

米政府は、8月30日の総選挙直後から、「辺野古新基地建設計画の変更は一切認めない」という態度を示してきた。とくに10月20日に来日したゲーツ米国防長官は、現行計画が「唯一の道で他の代替案はない」という強硬な態度で日本政府に迫った。
ところで、いま問題となっている新基地建設計画は、05年の日米合意(「同盟変革―未来のための変革と再編」05年10月)をベースにしたものだ。その内容は、従来の日米安保条約の地理的な制限を取り払い、世界的に進められている米軍再編に基づいて、日米の軍事的一体化(=米軍と自衛隊の合同化)を推進するというものだ。

大規模戦争を準備
こうした米軍再編の最重要項目の一つが、在日米軍基地とグアムの米軍基地の一体的な運用である。
日本とグアムは、米軍の中では戦略的展開拠点(パワー・プロジェクション・ハブ)と位置づけられている。これは、核兵器であれば敵国を壊滅させることができる能力を持ち、通常兵器であれば数十万の軍隊を短期間に敵国に上陸させ、占領する能力を有する軍事拠点という意味である。核戦争と大規模侵略戦争に備えて、日本とグアムの米軍基地を一体化して、機能の強化を図ろうというのである。
沖縄海兵隊のグアムへの移転もその一環だ。

負担軽減は大ウソ
日米両政府は、これまで沖縄海兵隊のグアムへの移転が沖縄の負担軽減になると言い続けてきたが、これは真っ赤なウソだった。グアムに移転した海兵隊の演習はこれまで通り沖縄で行われる。
こうしたことは、沖縄ではたびたびくり返されてきた。たとえば嘉手納基地では、騒音被害の軽減の名目で戦闘機の訓練の一部が本土に移転した。しかしその後、他地域からの米軍機の飛来が増大したことによって、かえって騒音は増大したのである。

沖縄の核基地化
この間、元外務省高官などが暴露している核密約問題は、米軍再編と重大な関連がある。
この問題にかんして、9月18日、キャンベル米国務次官補が、「米側の開示文書は約50年前の日米間の合意に関する史実を明確に描いている」と述べ、核密約は歴史的事実であることを認めた。さらに先述したゲーツ国防長官も、鳩山政権が行っている日米密約の解明作業について、「核の傘や日米関係に悪影響を与えないように」と要求している。
こうした一連の発言から、米政府の意向は明らかであろう。核密約の暴露を通して「非核三原則」をなし崩し的に空文化し、在日米軍基地への核兵器の持ち込みについて、日本政府に今後も一切口出しをさせないということだ。これは在日米軍基地、とりわけ沖縄米軍基地が核攻撃基地として存在していることを示している。

帝国主義おいつめる沖縄人民のたたかい

日米両政府が最初に辺野古新基地建設に合意したのは、1996年である。それから実に13年間、沖縄人民のたたかいによって新基地建設は阻止され続けている。このたたかいによって追い詰められているのは、アメリカ帝国主義である。いまや辺野古問題は世界的な米軍再編のボトルネックと化している。
オバマ大統領は、10月28日、国防予算の枠組みを定める2010会計年度の国防権限法案に署名し、同法を成立させた。ここには沖縄海兵隊のグアム移転に伴う施設建設費が計上されている。12日の来日では、「背水の陣」をしいて新基地建設を迫ろうとしている。
これと真っ向から対決して沖縄人民は、新基地建設阻止と普天間飛行場の即時返還をもとめて、島ぐるみのたたかいを組織している。このたたかいが沖縄人民の命運のみならず、日本のすべての人民の将来を左右する決戦のはじまりであることは明らかだ。
11・8県民大会の成功をかちとろう。沖縄人民と連帯して、全国で、米軍基地撤去・日米軍事同盟粉砕のたたかいをまきおこそう。

大阪で「普天間即時閉鎖・辺野古断念」を要求して1200人がデモ(10月12日 主催・戦争あかん!基地いらん!09関西のつどい実行委員会)

「復興支援」はペテン 自衛隊を派兵するな
アフガニスタン現地報告

10月29日に衆院第一議員会館で、服部良一衆院議員によるアフガニスタン報告会がおこなわれ、関係者30人が集まった。服部さんは、先頃(10月上旬の4日間)アフガニスタンを訪れた。
冒頭、現地での行動を報告するビデオが上映された。訪問中に大統領選挙の不正が明らかになり、抗議の武装闘争が頻発。政権の不安定さを実感したとのこと。
ビデオの後、服部さんから約1時間にわたってアフガニスタンの歴史と最新の状況が語られた。
とくにカルザイ政権下での「復興支援」は、カルザイ政権の不正・腐敗を支えるものであり、人民に敵対することであると語られた。インド洋での海上自衛隊による給油活動は中止あるのみ。補給艦のソマリア沖への転戦など論外で、撤退だけが必要と強調した。日本政府のいう「復興支援」は、アメリカとカルザイ政権を利するだけで、やるべきでない。すべての外国軍隊を撤退させ、アフガニスタン人民の選択に委ねるべきと語った。
ただ、現に飢えている人がいる中で、何もしないとはならず、あるとすればペシャワール会のような活動だけだろう。米軍の死者が1000人をこえ泥沼化しており、「オバマのベトナム」になろうとしていると語った。
報告ののち、日常的な支援に取り組む人との質疑応答があった。最後にタリバンの実効支配が拡大している中、そもそもアフガニスタン戦争そのものの意味も、もう一度問いたださなければならないことが訴えられた。
海上自衛隊によるインド洋での給油活動を、即刻やめさせ、アフガニスタン侵略への自衛隊参戦を阻止しよう。

戦争挑発の貨物検査法
10月30日に国会提出

政府は10月30日の閣議で貨物検査法(臨検法)案を決定し、同日、国会に提出した。
これは、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)に出入りするすべての船舶を対象に、「公海上で日本が船舶検査を実施」=臨検するという法律だ。
〈麻生政権が通常国会に上程していたが審議未了で廃案となった旧法案〉の一部を変更したもので、臨検法である内実は変わっていない。変更点は、臨検を実施するときに自衛隊ではなく、海上保安庁がおこなうという点だ。

海保ならいいのか

海上保安庁(以下、海保)は、事実上の軍隊だ。海保が保有する巡視船には海上自衛隊の護衛艦に匹敵する排水量や装備をもったものもある。満載排水量が7175トンもあり、35ミリ連装機関砲や、多銃身20ミリ機関砲などを搭載している艦船は、名前こそ巡視船だが、実態はどうみても軍艦だ。国際的には「世界最強の沿岸警備隊」とよばれている。他国からみれば、自衛隊も海保もどちらも軍隊だ。あくまで日本の法律上、自衛隊と海保が区別されているだけだ。
たとえば、米軍のイラク侵略戦争には、正規軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊)だけでなく、州兵も動員されているが、イラク人民からすれば、どちらも侵略軍だ。正規軍の派兵には反対するが、州兵ならよいといえるのか。

巡視船しきしま(7175トン)沿岸警備隊の船としては世界最大。船体は軍艦と同じ構造で、レーダー誘導・センサー誘導の対空・対水上攻撃能力を備える

臨検は戦争挑発

公海上を航行している日本以外の船舶には、日本の法律は適用できない。世界の各国が、公海上で、自国の法律を適用して他国の船舶を取り締まったら戦争になる。他国の船舶を日本が公海上で、強制的に停船させ、乗り込み、貨物を検査し、押収する行為は戦争行為そのものだ。
すでに北朝鮮は、貨物検査は「重大な軍事的挑発」、実施した場合「ただちにわが方の軍事的対応が伴う」と警告している(7月1日付、労働党機関紙)。
戦争挑発の貨物検査法を阻止しよう。

3面

NAA社長
暫定滑走路「再延長」発言
三里塚

成田空港・暫定滑走路の北延伸の供用を10月22日に開始したばかりの成田空港会社(NAA)が、暫定滑走路を再度延伸させるとぶちあげた。
「南側の地権者と根気よく話し合い、ご理解を得たいと思っているが、B滑走路をさらに北へ、東関東道の上まで伸ばし、3500メートルまで延ばすこともありうる」(森中NAA社長。発言は10月15日。報道は23日朝日)
これは、暫定滑走路を3500メートルにして、発着回数を年30万回(現在の1・5倍化)とし、その暴力で、反対農民を叩き出し、三里塚闘争を解体するという意味だ。
しかも南側の延伸にも言及した。「南側地権者」とは、島村昭治さん宅、東峰神社、萩原進さんの畑などで、東峰地区そのものだ。市東さんの闘いと並んで完全空港化を阻んでいる抵抗の拠点だ。この東峰地区にたいして、これまでも誘導路建設をはじめ数々の攻撃を加えてきたが、これは新たな攻撃の宣言だ。

治安問題化

経済的合理性や必要性からすればとっくに行きづまっている中で、なおかつ日帝が完全空港化に執着するのは、成田問題が、階級支配の根幹にかかわる治安問題だからだ。総選挙で示された労働者・農民の反乱と三里塚闘争の合流を恐れているのだ。
だからこそ、反対同盟の不屈の存在と、10・11全国集会で発せられた実力闘争宣言は、決定的なのだ。

現闘本部裁判の結審ゆるすな

当面の焦点は天神峰現地闘争本部をめぐる攻防だ。現闘本部裁判における、治安判事仲戸川の強権的な訴訟指揮と不当な結審策動を粉砕しよう。11・12千葉地裁包囲闘争と公判闘争にかけつけよう。

三里塚芝山連合空港反対同盟
成田空港・暫定滑走路北延伸供用開始を弾劾

10月20日、千葉地裁で行われた市東さんの行政訴訟と農地法裁判の終了後の記者会見・報告会で、反対同盟は、暫定滑走路北延伸前倒し供用にたいして、怒りの弾劾声明を発した。前原国交相や森田千葉県知事の暴言を強く弾劾し、闘う決意を明らかにした。

弾劾声明

わが反対同盟は、政府権力・国交省と成田空港会社による10・22暫定滑走路北延伸の前倒し供用を怒りをこめて弾劾する。
北延伸がもたらすものは欠陥空港のさらなる危険である。滑走路南端の航空機横断と東関東自動車道の航空保安区域通過、「へ」の字誘導路手前の停止撤廃など、民営化と利益追求による人命軽視は絶対に認められない。
だが問題はそればかりではない。国交省と空港会社は北延伸に続けて、天神峰現闘本部の破壊と市東孝雄さんの農地強奪を策動している。「第3の誘導路」で市東さんの家と畑を空港の中に囲い込み、東峰地区を追い出してコンクリートの下にしようとしている。飛行直下の住民の暮らしを同時並行離着陸でおびやかし、「年間飛行回数30万回」「24時間空港化」をねらっている。
まさに71年強制代執行と変わらぬ農地収用、騒音下住民への犠牲の強要だ。
反対同盟は10・11全国総決起集会で宣言したように、農地死守・実力闘争で敢然と立ち向かう決意である。

さらに、前原国土交通相の一連の発言と、森田知事や空港周辺首長の無責任な暴言を許すわけにはいかない。
10月13日、前原国交相は羽田を国際拠点空港(ハブ空港)とする考えを表明した。これに対して知事や周辺首長が「寝耳に水」「民主主義に反する」などと騒いでいるが噴飯ものだ。国の言うままに住民の声を踏みにじり、空港づくりを推進したのは当の首長たちではないか。「年間30万回」で経済波及効果が「1兆1388億円」(成田国際空港都市づくり推進会議)などという無責任なデマ宣伝はなんだ!
これに対して、反対同盟は空港建設の不当を訴え一貫して闘い続けてきた。その正しさが、今、明らかになったのである。成田空港の破綻は、農民を虫けらのように扱ってきた暴挙の結果である。
しかも前原発言は成田からの撤退を意味するものではない。成田空港の破綻は、住民への攻撃をいっそう激しくさせる。それが10・22供用攻撃であり、現闘本部破壊策動、市東さんの農地強奪攻撃、東峰地区の追い出し攻撃だ。
大恐慌は戦争をもたらす。航空需要が底なしに下がり続ける今、「年間30万回」「24時間空港化」を打ちだすのは、鳩山政権が鳴り物入りで掲げる「東アジア共同体」構想と軍事空港建設のためである。
成田空港は廃港あるのみ。反対同盟は闘いの正義と勝利を確信し不屈に闘う決意である。

2009年10月20日
三里塚芝山連合空港反対同盟

10・25上関 地元民の訴え
「全国に発信し共有してほしい」

1000人の予定が1200人も集まった(10月25日 田名埠頭)

山口県上関の原発建設にたいして、地元漁民・住民を中心に反対運動が粘り強くたたかわれている。中国電力が建設を強行しようとしているのは、137・3万kW2基という巨大原発。建設予定地の海面埋め立て免許有効期限が切れる10月21日を前に、9月10日から「着工」を示すブイ9基の設置に突っ込んできた。ブイが置いてある田名埠頭では連日、祝島漁民を中心に、漁船や支援の若者たちのカヤックで阻止行動をたたかってきた。
10月7日、台風18号の接近のなか、中電は「きょうは作業をおこないません」と言いながら、まったく別の場所からブイ2基を運び設置した。だまし討ちである。

連日の厳しい攻防
反原子力デーの10月25日、現地・田名埠頭で「原発いらん!in上関集会」が開かれた。「着工」無効と今後の闘争を宣言する集会だ。祝島の漁民、上関住民、各地の自治労や原水禁、環境がいちばんという人たち、カヤックで阻止行動をつづける若者たちが、次々に発言した。
山口県原水禁・岡本議長は「連日のたたかいに『阻止行動、ごくろうさま』と、簡単に言えることではない。9月以降の阻止行動は、いま本当にそういう状況。全国のみなさんに発信し、共有してほしい。中電は撤収、中止しか道はない」とあいさつ。
フォトジャーナリストの広河隆一さんは、「チェルノブイリでは人も村も町も食べ物も、あらゆるものが放射能に侵された。もっと知ってほしい」と原発の危険と反対運動の大切さを話し、情報を伝えないメディアの責任も追及した。
地元の女性の一人は「私はふつう人。ふつうに暮らしたいだけ」と小さな声で、カヤック隊の若者たちも自然体で反対運動に加わったことを話した。
集会前、田名埠頭でおこなわれていた広河さんらの「青空写真展」。祝島のおばあさんたちは、「わたしらぁ、デイズジャパンに載ったんよー」(『デイズジャパン』11月号に特集「祝島・原発を拒否する人々」)と誇らしげだった。(K・H)

田名埠頭で行なわれた広河隆一さんらの青空写真展(10月25日)

中電が仮処分申請 10/9

反対派の阻止行動に手を焼く中国電力が、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」や39人の反対派を相手取り、阻止行動の中止を求める仮処分を、10月9日付けで、山口地裁岩国支部に申し立てた。
この仮処分申請が認められると、反対派の排除のために機動隊の導入が可能になる。それがねらいだ。上関現地の攻防は重大な局面を迎えている。

またもだまし討ち 10/29

10月29日未明、中電はまたもや夜陰に紛れ、残り7個のブイを設置した。田名埠頭に仮置きされている9基とは別に、他所から中古のブイを運び込んだものだ。

4面

派遣法の抜本改正へ 10・29日比谷
労政審に怒りと危機感

10月29日、夜「労働者派遣法抜本改正まったなし! 10・29日比谷集会」が派遣法の抜本改正をめざす共同行動の主催で開催された。
今回の集会の特徴は、コミュニティユニオンや合同労組が札幌、山形、鹿児島など全国各地から集まったとことだ。
集会は全国一般東京東部労組の須田光照さんの若さあふれる司会で始まった。

全国から2500人以上が集まり100本をこえる幟旗が林立(10月29日 東京・日比谷野外音楽堂)

労政審めぐる危機的状況

鴨桃代さんが、共同行動を代表して主催者あいさつ。
労政審の公益委員や使用者側委員から「登録型派遣を禁止することは職業選択の自由を奪う。失業を拡大する。国内企業が海外に行ってしまう」と資本の利益を代弁する後退的意見が出されていることが怒りをこめて報告された。「このままでは派遣法改正案の内容は後退するか、見送られてしまうか、先送りされてしまいかねない危機的状況にある」とし、労政審を包囲し、労政審に派遣労働者の怒りの声を突きつけていくことが必要であり、資本の逆流を打ち破っていく労働者の側のより大きな運動が求められていると訴えた。
「登録型派遣を禁止すると失業が拡大する」とは資本の恥知らずなキャンペーンだ。登録型派遣が解禁されて大量の派遣労働者が生み出され、それが大量の失業を生んでいるのだ。登録型派遣とは仕事がある期間だけ契約を結び、仕事がなくなれば終わりというもの。そして仕事がしばらくなければ家賃も払えず、路上に放り出されていく。
共同行動・日本労働弁護団の棗一郎弁護士は基調報告で、労政審に派遣労働者の怒りを突きつけていくことの重要性を訴えた。
政党あいさつの後、各界からのあいさつ。日本労働弁護団の宮里邦雄弁護士、ルポライターの鎌田慧さんが発言。NPO法人もやい事務局長の湯浅誠さんは、日本の貧困率が15・7%になり、働いているのに年収200万円を超えない人の数は去年よりさらに増えて1067万人に達し、〈もやい〉の生活相談が去年の3倍になっていると報告。「貧困を減らすような社会の構造を作ること。働けば食べていける状況をつくること。セーフティネットがあって、路上に迷わなくてすむこと。それをどう作っていけるか、そこに政権交替の意味があるかないかがかかっている」と提起した。

現場から怒りのうねりを

神田香織さんの講談につづいて、現場からの報告が3本なされた。
全国一般東京東部労組の阪急トラベルサポート支部から。添乗員労働者は仕事があるときだけ契約を結ぶ典型的な登録型派遣。同分会が組合を結成してたたかい、労働条件改善を勝ち取ったことにたいし、分会委員長の『週刊金曜日』インタビューを理由に、事実上の解雇攻撃を加えてきた。派遣法をただちに廃止すべき―という訴えがあった。
資生堂鎌倉工場で働く全国一般神奈川アンフィニ分会の労働者。製造業への派遣が認められた01年から偽装請負の形で働いてきたが、契約期間途中で減産を理由に解雇された。資生堂資本は株主には201億円の配当をだすほど莫大な利益を上げている。労働者をなめきった資本の態度を強く弾劾し、派遣労働者の権利がきちんと守られる労働法制が必要だと訴えた。
グッドウィルユニオンの労働者。自らの体験に踏まえて登録型派遣労働者の労働条件が次々と下げられていることを指摘。もう二度と派遣労働はしたくないと発言。
集会アピールを採択し、シュプレヒコール、閉会あいさつの後、国会に向けてデモに出発した。「労政審は派遣労働者の声を聞け」「派遣労働者はモノではない」「派遣法の抜本改正をかちとろう」と熱いコールが国会周辺をとりまいた。

注:労政審 労働政策審議会。厚生労働大臣の諮問機関。公益、労働者、使用者の三者で構成。派遣法改正の政府案を出すには、まず労政審を通さなくてはならない。

集会アピールから

@労働者派遣法を労働者保護を目的とする法律に変えること、Aみなし雇用規定の創設や違法派遣への罰則導入等の派遣先責任を強化すること、B日雇い派遣の全面禁止と登録型派遣、製造業派遣を原則禁止することは急務であり、さらには、均等待遇の義務付け、現行専門業務の見直し、中間搾取率の上限設定など、より踏み込んだ議論も不可欠である。

人民の行動が社会かえる
10・17反貧困大集会

国際反貧困デーの10月17日、東京・芝公園で「反貧困 世直し大集会2009 ちゃんとやるよね!? 新政権」が反貧困ネットワークの主催で開かれ、700人が全国から集まった。

雇用状況の悪化

まず代表の宇都宮健児弁護士の開会あいさつ。昨年の全国キャラバンや特に年末年始の年越し派遣村が貧困問題を顕在化させ社会問題化したこと、全国で次々と反貧困ネットが結成されて交流もできていることなどが語られた。
しかし雇用状況は悪化しており炊出しは2倍化していると問題を提起。新政権にはたらきかけながら、今年は年越し派遣村を開かなくてもすむ状況を作り出し、貧困のない社会を目指そうとの訴えだった。
パフォーマンスの次に当事者発言。母子加算・労働者派遣法・障害者自立支援法・後期高齢者医療制度などによる困窮の体験や取り組みが語られた。その実相は、社会保障制度解体のすさまじさを突き付けるものだった。

先進的取り組み

各党議員からの発言、加藤登紀子さんの歌に続いて、全国のネットワークから。北海道から山口まで7団体が体験や活動状況を語った。特に、岐阜では常設施設があり、相談を受けたその日のうちに生活保護とアパートを確保してしまうという報告があり、先進的活動状況に驚かされた。
貧困削減目標作成の呼びかけがあった。これは、自公政権がひたすら拒んできた貧困率の算出がほぼ実現可能になり、その数値を下げる施策を求めていこうという訴えだった。人文字行動と集会宣言採択を行い、プログラムからもれた演奏を聞きながら閉会となった。
政権交代でも何も変わらないという態度とは無縁でありつつ、政権を信頼などしない、人民の行動こそが社会を変えるという意識をもつ人びとが集った集会だった。(首都圏 D)

母子加算復活で高校就学費は廃止?
10・21緊急院内集会

「えっ?! 母子加算復活で高校就学費は廃止?〜このままでは公約違反。鳩山総理の決断を〜」と題する院内集会が、10月21日衆院議員会館第1会議室で緊急に開催された。緊急にも関わらず参加者は50人を超え、5人の議員と15人の議員秘書も参加した。主催は、生活保護問題対策全国会議、しんぐるまざあず・ふぉーらむ等14団体。

厚労省と財務省が決裂

この集会は母子加算を復活する代わりに高校就学費などの生活保護費を削るというニュースが伝わってきたため急きょ開催された。
集会途中、《母子加算復活のために必要な60億円にたいして、財務省が32億円しか計上せず、残り28億円は高校就学費などを廃止して当てる案を譲らず、厚労省と決裂した》というニュースが飛び込んできた。
一方を増やして他方を減らすなら何の意味もない。参加していた民主党の議員からも「公約違反だ」という発言まで飛び出した。

公約破りの財務省案

高校等就学費は、月額平均1万5千円余が支給される。高校生が2人いれば3万円余支給される。他方、母子加算は月額2万円余である。
財務省案は、高校就学費を受給中の世帯には、復活される母子加算と高校就学費とを比較してどちらか額の多い方しか支給しないというものだ。
例えば高校生が1人の場合、母子加算2万円余が支給されるが、高校就学費はなくなる。高校生が2人の場合、高校就学費は支給されるが母子加算がなくなる。
それだけではない。財務省案は、母子世帯だけでなく全ての生活保護世帯の子供たちに、今後、高校就学費の受給を認めないという。
月額平均1万5千円余の高校就学費が支給されるから、生活保護世帯の中学生たちはかろうじて高校に行ける。これを支給しないのは生活保護の家庭の子どもは高校に行くなということだ。これは改革でなく大改悪だ。

一日に3食以下の生活とは

この財務省案を聞いた会場は怒りに包まれた。
「高校就学費は母子加算と別の理由から創設されたものだ。高校就学費を必要とする事情が解決していないのに廃止することは許されない」「母子加算と対立させるな」「公約違反だ。公約通り実行しろ」と次々と怒りの発言が行われた。
母子家庭の当事者からは「削れるのは食費しかない。一日、3食以下にしろというのか」と怒りの声が上げられた。
現場で苦闘するケースワーカーは「中学を卒業したら就職を指導しろというのか。中卒で就職して生活保護から抜け出せるだけの保障がどこにあるのか。これは貧困の連鎖を作るものだ」。
他のケースワーカーは「通学に着ていくYシャツも最低3枚は必要。体操服も必要。それも買えなくなる。保護世帯の高校生にきいたら『こんなのはイヤだ』と強い答だった」と生の声を伝えた。
高校就学費は全国で約4万人の生徒が受給している。中学生、小学生あるいはそれ以下の子どもたちは数十万人になると推定される。高校就学費が廃止されたら、この子どもたちの未来はどうなるのか。母子加算復活に名を借りた福祉切り捨てを許してはならない。

 この日の夜、財務省と厚労省の協議で、保護世帯への高校就学費と学習支援費は支給継続が決まったと報道されている。

5面

紙上討論 「脳死」問題

なぜ「脳死は人の死」に反対なのか

Rさんから、「『臓器移植法』の成立弾劾」(『未来』39号6面)の記事にたいする意見がよせられたので、要旨を紹介します。〔編集委員会〕

私は、「脳死」が人の死でよいのではと思っています。「脳死」を人の死とすることに、反対する理由が納得できません。
@本人の意志を知ることができないのに、「脳死」の子どもを何年も生き続けさせているのは、親のエゴではないでしょうか。
A「尊厳」を保てない者は死に至らしめるという考え方は誤りですが、「尊厳」が保たれなくなったら死を望むというのは本人の権利では。
B「脳死」が必要ない腎移植の問題も一緒に述べられていますが、生体移植や心停止後の移植が可能な臓器の移植にはどういう見解でしょうか。
C一般には、「脳死者」と「障害者」は別の存在だと捉えています。そういう人にもわかる形で、反対の論拠を納得させてほしいと思います。(R)

他人の死を期待する非人間性

Rさんの意見にたいする、Pさんの返事を掲載します。〔編集委員会〕

私は、腎不全で11年間、週3回の人工透析を受けており、「脳死」・臓器移植によって多大な恩恵を受ける立場にあるといえます。その私が、なぜ「臓器移植法」に反対なのかをお話することで、ご質問のいくつかの答になるのではと思います。

「脳死」・臓器移植法とは
腎不全という診断を受け、人工透析が必要になると告げられた直後から移植の話は出てきます。そこで改めて考えさせられました。
「脳死」・臓器移植は、他人の死を期待することで成り立つ「医療」です。移植を望んだ瞬間から、本人が自覚するしないにかかわりなく、他人の死を期待しながら生きることを強いられるのです。これほど非人間的な生き方があるでしょうか。私は、その一点で腎移植を受け入れることはできませんでした。
もちろん、現在、移植を望んでいる人のすべてが非人間的だと非難するつもりはありません。彼らも被害者なのだと思います。「脳死」は人の死であると教えられ信じこまされていれば、臓器を移植してほしいと思ったとしても一概に非難はできません。
そうした虚構を振りまき、臓器移植を推進しようとする国やマスコミ、医学関係者を問題にしなければなりません。

つくられた虚構の概念
「脳死」は臓器移植を合法化するために作り出された虚構の概念です。
あたかも現実に起こりうるかのように「科学的」粉飾がなされているだけです。したがって、「脳死判定」についても不正確で曖昧なものになります。そこには、関係者の恣意的判断の入りこむ余地が生まれます。

命の選別が不可避
さらに、仮に「脳死」を人の死として肯定しても、問題はあります。
臓器移植では、移植臓器が新鮮であればあるほど成功率が高くなります。
しかし、救命のために脳への治療をすればするほど、内臓に負担をかけることになり、(臓器移植推進の立場に立てば)新鮮さは失われます。本来徹底的に行われなければならない救命治療が、早い段階で打ち切られなければ、臓器移植は成立しないのです。
結局、助けるものとそうでないものという、命の選別が不可避になるのです。これはもはや医療ではありません。

死の概念を恣意的に拡大
もうひとつ大きな問題は、解決不能の臓器不足ということです。
臓器提供を希望している人の数にたいして、「脳死」に陥る人はきわめて少ないのです。しかも、「脳死」とされた人の持っていた持病や薬物使用の有無などによって、移植に適した人はさらに絞り込まれます。
アメリカではすでに、「臓器提供を『脳死』に限定していては移植が進まない」として、死の概念を遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)の人たちにまで拡大しようという動きが出ています。否、すでに何人もの「障害者」がそうした理由で死に追いやられているのです。「脳死」・臓器移植を推し進める限り、こうした動きは拡大していくことは明らかです。
そうして「障害者」が大量に殺されていくのです。

「死にたい」とは
「長期脳死」のお子さんのご家族にたいして、「本人は生きたくないと思っているかも知れないのに生かし続けるのは親のエゴではないか」という意見があります。
でも、「尊厳死」の議論にもつながりますが、本人が「死にたい」と思っていれば殺してもかまわないのでしょうか。
今、年間3万人を超える自殺者の問題が大きな社会問題になっていることを考えれば明らかです。そこには、大不況下で生きたくても生きられない現実があります。
「尊厳死」を推進する人たちは、こうした現実を変えようとはしません。「尊厳ある死」のみを主張するだけです。

優生思想が前提に
では、「尊厳ある死」とはどのようなものでしょうか。彼らは言います。「寝たきりになってまで生きていたくない」「さまざまな医療機器につながれながら生き長らえるのはいやだ」「認知症でわけがわからなくなったら死を望む」。
これらを言いかえれば「『障害者』になってまで生きていたくない」ということです。「障害者」差別そのものではありませんか。私たちは、「尊厳死」が優生思想に利用されるから反対なのではなく、優生思想を前提とした考え方だから反対なのです。

ケアの不足こそが問題
「それでは、末期ガンなどで激しい痛みに苦しむ患者が死を望むのも間違いだと言うのか」という反論があるでしょう。
その通り間違いです。医療スタッフが充分な対応を行い、患者を精神的に孤立に追い込むことを避ける努力をすれば、痛みは大幅に減じることが証明されています。もちろん、モルヒネなどの投与は必要です。こうした充分なケアをする体制も人員も圧倒的に不足していることこそが問題です。結局、国の医療制度、医療政策の問題なのです。

患者の皆さんとの連帯の可能性
移植推進派やマスコミは、臓器移植の対象となる病気を持つ多くの人が移植を望んでいるかのように宣伝していますが、実態はかなり違うのではないでしょうか。
腎不全の患者に限っていえば、透析を受けている患者は全国に28万人、そのうち腎移植を希望している人の数は1万1千人程度で、5%にもなりません。
もちろん、高齢や重症の合併症などで移植を受けたくてもあきらめざるを得ない人もいるでしょう。それにしても、それだけではこの数字は説明できません。
冒頭に述べたように「他人の死を期待して」生きていくことへの強い違和感を持つ人が少なくないことを示していると思います。この現実の中に、こうした患者の皆さんとの連帯の可能性があると私は考えます。〔「障害者」解放委員会P〕

【翻訳資料】
双龍車闘争の教訓と課題(下)
イ・チョンタク(産業労働政策研究所副所長)
翻訳=中村 猛

会議の壁を突き抜けられない「再生の可能性」

闘いの結果は力関係によって決まるという。その通りだ。そして力関係は一定の条件の中で変動する。力に働きかける条件を越える力はない。力が新しい質として前進しようとしても、条件が変わらない限り不可能だ。双龍車でのこのような条件は「再生の可能性」だった。
双龍車が再生可能だという認識は、不幸なことに殆どなかった。双龍車の当事者の中でも再生の可能性に関する会議は何回もされたが、社会的には双龍車の再生は難しいという認識の方がはるかに多かったと言える。再生の可能性に対する認識が否定的な状況で、人員の削減方式に反対はするが、そうでない別の方式に対する同意もまた素早く作ることができないのが現実だ。こういう条件で「清算の可能性」の話が流れ、部品会社などが早期に破産を申請しようとする動きが登場すると、支部と労働者に友好的だった社会の基調は、会社はひとまず潰してはならないのではないかという様相に急激に転換した。
労働運動と進歩陣営は、この与件を突破できなかった。その結果77日間の闘いにも拘わらず、無給休職と希望退職の比率を若干調整するといったやり方でストライキを終えるほかなかったのだ。
ストライキ以後、債権団と法定管理人、そして産業資源部長官まで出てきて、『売却』を最優先で進めると言った。今までの双龍車の処理問題で見せたように、政府は変わることなく売却を主張している。そして引き受けの対象者として挙げられた業者の面々を見ると、外国企業か国内の財閥だ。

物理力の限界と、まん延した無力感の克服のために

今回の闘いでは労働者が行使できる物理力の限界がハッキリと現れた。塗装工場を先に占拠したから、双龍車支部は長期闘争を闘うことができた。しかし労働者が塗装工場で、警察の兵力に対抗して無期限に抗戦できないのもまた明らかな事実だった。もっと長く闘うように要求するのも難しかった。負傷し、疲れたストライキの部隊に、これ以上の何かを要求するのは無理であった。
この地点で連帯運動の力が必要だった。ストライキの部隊を支持して援護すると同時に、「共に生きよう」という社会運動を展開することが、まさにそれだった。しかし連帯を標ぼうした進歩陣営の対応は「共に生きよう」を全面化して社会運動化するやり方よりは、「双龍車ストライキ」を解決するための政治的な解決と、仲裁の場を創り出すことに限定された。もちろん塗装工場の中で、心細くとも激しい闘いを行う労働者のストライキを守るために、必死に駆け付けてピョンテク工場の正門を守った連帯の意志は決して非難されるものではない。しかしピョンテク工場の前に集まった連帯は、それ以上のものではなかった。飲み水の支援をして医療スタッフを送り込むための努力は、それ自体としては必要だったが、資本の危機を労働者に転嫁する資本に対抗して、社会的な闘いにまで拡大できない進歩陣営の姿は、無気力そのものだったと言っても言い過ぎではないだろう。
すべての進歩陣営に、労働組合に、自分の日常と活動を放り出して双龍車問題に集中しろと言うのも、これまた別の暴力であり強要であるだろう。難しく辛い状況に直面した労働者に、小さな力ではあっても加勢することは、勿論必要だ。だがそれが連帯の全てであると言うことはできない。真の連帯とは自分の問題と他の問題の共有点を発見し、その中で一層高いレベルで共に力を合わせることだ。
こうした点で、進歩陣営は懸案について互いに「顔を出す」、そして「連帯挨拶をする」と言ったレベルの行動を越えなければならない。何より新自由主義的政策とメディア・警察(公権力)・資本(法定管理人)・委託業者のヤクザで構築された韓国社会の暴力的な恐怖に対抗する、具体的な行動プログラムが必要な時だ。単純な「反MB情緒」〔注〕に寄り添うより、「新自由主義と恐怖が連合した統治方式」に対抗して闘い、無気力から抜け出さなければならない。(了)

注:李明博大統領の名前の頭文字をとり、李明博政権を「MB政権」と呼ぶ
〔編集委員会〕

6面

10・18京都集会 講演要旨
民主党の安全保障政策と対決を
纐纈 厚 さん

熱弁をふるう纐纈さん(10月18日)

民主党政権をどう評価するのか。民主党政権は、幻影を振りまいている。私は、新政権に期待するものは微塵もない。

民主党の幻影

民主党政権の安全保障政策をどう見るか。

日米防衛分担体制
小沢も鳩山も、現在、日本の周辺に展開しているアメリカの軍事力を、相対的に減らすことによって、 自衛隊を前に出し、そうすることで日米同盟を再定義しようという考え方を示している。
民主党は、自民党と差異化するために、「自民党の路線を変えるんだ」という認識を国民に与えているが、その内実を見ると、日米同盟を実質的に強化しようとしている。
日米防衛分担体制―アメリカの戦力では届かない戦場に、日本が、自衛隊戦力をアメリカの代替戦力として、これまで以上に転用していく―ということを選択しようとしている。
アメリカは、これまでのように、単独で軍事支配を貫徹する能力を欠落させつつある。アメリカは、これまで以上に日本の軍事力・経済力にたいする依存を強化せざるをえない。
そうすると民主党政権は、日米同盟一本槍ではなく、いくつもの選択肢を用意しながら、日米同盟を強化していくだろう。

国連中心主義
民主党は、国連中心の国際貢献ということをうたいだした。
アメリカは、これまで国連無視を決め込んできた。しかし、ここに来て国連を使わなければ、アメリカの世界覇権を貫徹できないと読みはじめた。だから小沢のいう国連中心主義に、アメリカも乗ってきている。
アメリカは、国連という名で、朝鮮半島とアジア全域にたいする軍事的政治的経済的な支配権を貫徹しようとするやり方を、2009〜10年に、日本と手を組んでやろうとしている。

オバマの幻想

なぜオバマ政権がいま登場したのか。
アメリカ資本主義の生き残りのために、ブッシュ的人物ではなく、オバマ的人物を選ばざるをえなかった。それはアメリカの後退戦略ではない。オバマ的な手法で、世界のヘゲモニーを握ろうとしている。
オバマのプラハ演説で、あたかもアメリカが全面核廃絶を日程にのぼせようとしているかのような幻想が振りまかれている。全くのデタラメだ。
プラハ演説の英文と、日本で伝わっている内容には齟齬がある。
オバマは、広島・長崎への原爆投下について、反省は一言も言っていない。必要とあらば、オバマも、核の使用に踏み切ることは間違いない。
それを察知したのか、ロシアが、先制核使用を宣言した。ロシアとしては、核は持っている以上、先に使わなければ意味がない。
アメリカもロシアも核兵器を減らしていることは事実だ。核を小型化している。しかし小型でもこれまで以上の威力を持っている。核の数を減らすことで、核兵器縮小に進んでいるかのような幻想を振りまいている。しかし、核を持っている彼らにとって、核の必要性は高まりこそすれ減ることはない。
オバマのプラハ演説のもう一つのねらいは、核の拡散を防止して、核の独占をつくり上げることだ。インド、パキスタン、イスラエル、潜在的には日本、台湾、さらに韓国を含めて、核の拡散状況はとどまることを知らない。そうなるとアメリカの核戦力は、総体としてその力を減らしてしまう。それにたいする危機感から、プラハ演説になった。
日本の反核平和運動の中に、幻想があるかもしれない。私たちは幻想に惑わされてならない。

参院選と安保政策

民主党は、来夏の参議院選挙を見計らって、それ以後本格的な安全保障策を展開してくるだろう。
これからの半年間は、「失われた半年」になるやもしれない。私はそのことを大変危惧している。
どのような安全保障政策をとるか。小沢流の国連の名をかたった国際的な軍事貢献だろう。
民主党が、自民党に代わる本当の意味での「日米安保の相対化、日米安保の廃棄」というようなラインに踏み込むなどということは断じてない。

私たちの憲法を

民主党政権は、戦争責任について、一言もしゃべっていない。
政権が代るときに、記者会見などで「先の戦争をどう総括するのか」ということをやる。歴史認識として、首相は答えるべきだ。ところが鳩山さんは答えていない。
私は、護憲の立場を堅持するものだが、第1章に天皇条項がある限り、日本は侵略戦争を国家として、社会全体として、総括したことにははならないと考える。
第1章(第1条から第8条)をなくしたい。なくしたい意味は二つある。天皇制を解体しなければ、日米安保体制は解体できない。天皇制を解体しなければ、沖縄が本当の意味で返還されない。
天皇制を打ち破り、天皇制の縛りから解かれたときに見えてくるものが、日米安保解体だ。そして、もっと言えば、私たち自身の憲法をつくる運動をいずれつくり上げていかなければいけないと思う。
かつて明治憲法ができるまでの間に、実は、多くの農民や人民が知恵をしぼって、人民のための憲法をつくった。人間を主体においた社会、国家をつくるための憲法草案をつくった。あの時代と同じように、人民ための人民による憲法ができないわけがない。いずれこういう場で、「私たちの憲法を」という垂れ幕で、われわれの憲法草案集会というものをやろう。

辺野古新基地建設反対で共同闘争
10・18 京都

今年で3回目になる「このままでええの?! 日本と世界 反戦・反貧困・反差別共同行動in京都」は、円山野外音楽堂に各地から800人の仲間が集まり成功をおさめた。
集会は、前国立市長・上原公子さんと、世話人の小林圭二さんの司会で始まった。
はじめに、代表世話人の中尾宏さんから主催者あいさつがあり、つづいて、「時代と対峙するロックシンガー パンタ・頭脳警察」のライブ演奏。

民主の安保防衛政策との闘いを

つづいて、岡真理さん(京都大学教員)から「パレスチナの今」と題する特別アピールがあった。岡さんは、昨年12月〜1月の激しかったイスラエルの攻撃がいったん終息すると関心がうすれがちだが、その後のパレスチナは依然としてイスラエルの包囲・重圧、野外監獄の中にあることを忘れないでほしいと訴えた。
続いて纐纈厚さん(山口大学教員)の講演「このままでええの?! 日米安保」だ。纐纈さんは、政権交代が行われたが「鳩山政権にいささかの幻想を持ってはならない」とし、民主党の新たな安保・防衛政策との闘いをよびかけた。〔要旨別掲〕
国会報告をした服部良一さん(衆院議員、社民党)は、米軍再編・辺野古新基地建設を必ずとめるため、山を動かす気持ちで闘うと決意を語った。

民衆の力でかえる

特別アピールAとして、知花昌一さん(沖縄・読谷村議)が「政治を変えていく力を民衆が持たなければならないと」訴え、11月8日の県民大会に3万の結集をかちとろうと呼びかけた。
後半は連帯アピール・現場報告が、以下の8団体からなされた。@東九条CANフォーラム、A旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委、B門真三中への「君が代」処分をただす会、Cタウンミーティング不正国賠訴訟原告団、Dストップ・ザ・もんじゅ、Eアジア共同行動、F釜ケ崎日雇労働組合、G9条改憲阻止の会。
海外からの連帯アピールとして、ワールドマーチ(未来への架け橋)の8カ国10人の仲間が登壇し、すべての国からの基地撤去を訴えた。
浪速の唄う巨人・趙博さんのライブ、集会宣言、閉会のあいさつ、行動提起の後、会場全体でインターナショナルを唄いデモ行進に出発した。デモは、反戦・反貧困・反差別を訴えながら、多くの市民・観光客が注目するなか、京都の繁華街である四条通、河原町通を行進した。

会場全体でインターナショナルを唄う(10月18日 京都市内)