日本版海兵隊
(陸上自衛隊・中央即応連隊)
の派兵ゆるすな!
海賊対処法案の成立を阻止しよう
5月3日、大阪でも改憲阻止の行動が行われた(詳細3面) |
P3C派兵し日米共同作戦
15日、浜田防衛相が、海自P3C・2機への派遣命令を出し、5月中の出兵を狙っている。あわせて、陸自・中央即応連隊も派兵し、同時に、空自・輸送機C130によるジブチへのピストン輸送を開始するという。
海自P3Cは、米艦とデータリンクされており、P3Cの情報はリアルタイムで、米軍中心の第151合同任務部隊(CTF151)に共有される。海自P3Cの情報にもとづいてCTF151の艦艇が急行し、「不審船」を撃沈するといったことが日常的に行なわれる。
米軍は、海賊の根拠地を叩くという名目で空爆も検討している。海自P3Cの情報によって空爆が行なわれるのだ。
これまで訓練の世界だった日米共同作戦が、P3C派兵によって、実戦の世界に突入する。
対テロ戦争とも連動
最大哨戒半径4500キロのP3Cが、ジブチを基地に活動すれば、アラビア海からパキスタン、アフガニスタンまでを哨戒の対象にできる。
米軍が、「対テロ戦争」の主戦場にしている海域・空域だ。アラビア海には米軍中心の第150合同任務部隊(CTF150)が展開している。
そして、海自P3Cが米艦に伝達する情報は、海賊に限るわけではなく、「対テロ戦争」関連の情報も含まれる。
つまり、P3C派兵は、アフガニスタン・パキスタン侵略戦争への直接の参戦にほかならない。
ジブチに陸海空の拠点
海賊掃討作戦を直接担当する海自の艦船・航空機に、それを支援する陸自・空自が加わり、三軍統合拠点がジブチに設営される。
中央即応連隊が実戦に
拠点警備を担うのは、中央即応連隊(約50人)だ。
中央即応連隊とは、侵略の際に真っ先に殴り込みをかける海兵隊の日本版であり、日米軍事一体化と侵略派兵の本格化の中で新設された部隊だ。
中央即応連隊を派兵するのは、実戦を想定しているからだ。
ジブチは、ソマリア沖で海賊掃討作戦を展開する連合海軍の出撃拠点で、「海賊やテロリスト」の襲撃を想定して各国が警備部隊を駐屯させている。陸自・中央即応連隊は、そこに加わり、米海兵隊と統合軍を形成し、「海賊やテロリスト」をせん滅・撃退する共同作戦を展開する。
米日の軍事一体化とそれによる世界規模の侵略戦争の展開ということが、06年の日米安保協議委員会で合意されたが、それをここで実戦に移そうというのだ。
グアム協定と海賊対処法に反対する国会行動(5月7日) |
侵略派兵の恒久化ねらう新法
ソマリア沖で、海自の2隻の護衛艦が、船団護衛作戦や「不審船」対処を実行し、P3C哨戒機や陸自・空自の増派がねらわれている。そういう中で、国会では、海賊対処法案の審議が行なわれている。
海賊対処法案は、現に実行されている侵略派兵に法的追認を与え、これを制度化し、恒久化するための法案だ。
武力による威嚇
ソマリア沖の護衛艦は、5月6日までに、15回の日本関係船舶の船団護衛を行なっているが、ここでは「不審船」は出現していない。
しかし、護衛艦は、派兵の根拠であるとする自衛隊法からも逸脱して、外国船舶に接近する「不審船」に対処する行動にも踏み込んでいる。
・4月4日、シンガポール船籍のタンカーの通報で「さざなみ」が急行。サーチライトで照射、大音響発生装置で日本の海自の艦艇である旨を現地語で通告。「不審船」は現場を離脱。
・4月11日、マルタ籍の商船の通報で「さみだれ」が急行。大音響発生装置で告知、搭載ヘリを派遣。「不審船」は現場を離脱。
・4月18日、カナダ籍のクルーザーの通報を受けて「さざなみ」が搭載ヘリを派遣。ヘリは「不審船」の上空を旋回。「不審船」は現場から離脱。
・4月30日、他国海軍からの通報で「さみだれ」が搭載ヘリを派遣。「不審船」は確認できず。
護衛艦は、5千トン近い排水量で、速射砲や高性能機関砲を搭載した最新鋭の軍艦だ。「不審船」とされた側からすれば、サーチライトの照射やヘリの接近だけでも、武力による威嚇と感じる。
武力で威嚇し「敵」を排除するれっきとした軍事行動が行なわれている。
新法で撃沈も可能に
ここに海賊対処法が成立すればどうなるか。
停船命令を行なっても「不審船」が接近を続ければ、これを射撃し、それによって、「不審船」が撃沈されるということが現実化するのだ。
先の例で見れば、「不審船」が、海賊だという事実は確認できていない。それでも撃沈してしまえば終わりなのだ。
侵略と覇権の論理
「シーレーンの安全確保は、わが国にとって文字通り死活問題、生命線」
(小池百合子・自民党4月15日)「日本が憲法の制約をどう説明しようと、各国からすれば、それは日本の特殊事情。汗もかかないで金儲けだけやっていると映る」(中谷元・自民党4月15日)
権益護持のために、制海権の確保が死活的だという帝国主義の侵略と覇権の論理を公然と主張し、そのためには、憲法の制約を取っ払って、「汗をかく」―つまり侵略派兵と軍事力行使に踏み込めと叫んでいるのだ。
派兵の必要で一致する民主党
民主党「修正」案は、現に自衛隊が出撃し、さらに増強されようとしているときに、「海賊対処は海保で」、「国会承認を」というものだ。
これは、侵略派兵の必要性で一致し、既に行なわれている派兵に賛成した上で、その法的な手続きを少し丁寧にというものでしかない。
事態の急展開
2年前の参院選での与党大敗と安倍辞任で、一旦、改憲戦略を大きく押し返してきた。
しかし、3月に2隻の護衛艦が出航し、海賊対処法案が国会に提出されてから2カ月弱、事態は急展開している。
(行動提起)
★海自P3C(厚木)、陸自中央即応連隊(宇都宮)、空自(小牧)の派兵を阻止しよう。
★国会行動に立ち上がろう。参院外交防衛委員会の日程は、5月19日(火)、21日(木)、26日(火)、28日(木)。
憲法第9条改定を許さない
6・14全国集会へ
京都・円山公園野外音楽堂で開催された5・2憲法集会に5000人、東京・日比谷公会堂での 5・3憲法集会に4200人と、主催者の予想を超える人が集まっている。
支配階級が憲法破壊と侵略派兵に突き進み、情勢が急展開している中で、労働者人民の側の反撃がはじまった。
改憲阻止派の結集軸
6月14日、「9条改憲阻止の会」が、各界・各層に広く呼びかけた全国集会が開催される。
改憲派と改憲阻止派との競い合いが続いている。そういう中で、全国各地で憲法改悪反対の運動を担っている人びとが、6・14集会に集まる。広範な連帯を結び、改憲阻止の大きなうねりをつくり出そう。【3面に呼びかけ・要項など】
2面
門真三中(大阪)
「君が代」処分をただす会が発足
10日、大阪市内で「子どもの人権を守ろう 門真三中への「『君が代』処分をただす会」の結成集会がひらかれ、120人が集まった。
2月、門真三中での大量処分は、大阪府下で初めての「君が代」不起立にたいする処分であり、東京の「10・23通達」型攻撃の始まりだ。これに反撃するため「ただす会」準備会が活動を開始して、この日を迎えた。
戦争教育反対はゆずれない
「ただす会」を呼びかけた守口市議・三浦たけおさんと門真元市議・戸田ひさよしさん(ビデオメッセージ)の代表あいさつで集会は始まった。
被処分当該・門真三中教員の川口精吾さん |
このかん門真市教委交渉にも参加してきた代理人の太田健義弁護士が「君が代」裁判の争点を解説しながら、「裁判はあくまで闘いの手段であって、教育現場の力関係が大事。これを変えていくために裁判にも全力をあげていく」と発言。
「日の丸・君が代」に反対した結果、評価システムで不当なD評価を受けながらも元気に闘っている枚方市の福山さんは「なんでだろう」の替え歌を披露して、アピール。
停職6ヶ月の処分とたたかう八王子東特別支援学校教員の河原井純子さん |
東京で3ヵ月の停職処分と闘う渡辺厚子さんからも、同趣旨のメッセージが集会に寄せられ、停職6ヵ月処分と闘う根津公子さんからもメッセージが届いた。東京で、停職処分とたたかう三人全員から支援を受けることとなった。
つづいて、大阪の被処分者、不当処分と闘う郵政労働者、今春の卒・入学式で不起立を闘った保護者、兵庫の退職教員から激励の発言があった。
最後に、「ただす会」の代表に戸田さん、三浦さん、守口市元教員の陶山さんを選出した。
大阪府下の全教育労働者で反撃を
川口さんは、すでに門真市公平委員会に不服申立をしている(4・10)が、本格的な争いは裁判の場になる。ここを焦点に多くの支援を結集し、府下の教育現場で「日の丸・君が代」強制反対のうねりをつくり出していこう。
門真三中処分では、川口さんの所属する日教組だけでなく、全教や教育合同の組合員も処分され、非組の教育労働者まで処分されている。しかし、所属組合によって方針が異なり、統一した反撃が困難になっている。東京では、予防訴訟原告団の広がりを背景に、被処分者たちの取り組みによって、関係する教組の共闘が広がっている。大阪でも、橋下府政と闘って反撃していくためには、教組の枠を越え統一した闘いを追求しなければならない。「ただす会」を学校と地域に拡大しよう。
「ただす会」入会案内
・年会費
個人1口1000円
団体1口3000円
・裁判闘争への協力金
個人1口1000円
団体1口3000円
郵便振替口座 00950‐0‐281653
川口さんの発言
「日の丸・君が代」に反対するといったときに、もっと大きく広げて、侵略戦争を許さないと同時にアジアの人たちと連帯できる闘いをたたかっていきたいと思っています。
私たちの職場は、かなり厳しくなってきています。評価制度や免許更新制の導入、この攻撃は油断しているとだんだんと力を持ってきて、私たちを分断していくものになります。職場から民主主義を奪いさっていくものになります。この事と「日の丸・君が代」の強制が重なったときに、恐ろしい状況になっていくということを、みなさんに訴えたい。
僕は、今後も不起立をどんどん続けていきます。そして裁判闘争に勝つこと、この事は大きいです。立っている人も悔しいと思っています。その人たちに、闘えばやれるんだと言うことを伝えたい。
連帯の輪を広げていくことが、裁判にも勝ち抜いていく一つの大きなポイントだと思います。外へ訴え、職場の中でも訴え、勝つまで闘い抜きますので、ご支援よろしくお願いします。(抜粋 文責は編集委員会)
派遣法への怒り
5・14日比谷集会に1千人
「実現しよう今国会で! 派遣法抜本改正を求める5・14日比谷集会」が、労働者派遣法の抜本改正を求める共同行動の主催で開かれ、約1000人が参加した。初めて分会を結成した人たちや、様々な労働組合、反貧困の団体が参加した。
労組、ユニオンの旗が林立する(5月14日日比谷野外音楽堂) |
これで全てが解決するわけではないが、派遣法撤廃に向けての現実的な突破口である。私たちもこれらの要求を掲げてともに行動していくことが必要である。
よびかけ人のひとりとして発言した湯浅誠氏は「派遣村は、あれこそ本当の労働運動だったんだと思います」と自らの体験に踏まえ、実感を込めて述べた。「人がすりつぶされていく社会を変えるために、いっしょに声をあげていくために」、「(生活を支えるだけでなく)その後に闘えるようになっていくことができる場所」、「そういう空間を我々のような団体や労働運動の人たちが一緒に作り、社会的に増やしていく」必要性を、派遣村の体験に踏まえて提案した。
派遣労働者が次々発言
派遣村から2人が発言した。さらに、派遣切りに対して分会を結成しキャノンと闘い約1億円の解決金を払わせ勝利した大分キャノンの派遣労働者。三菱ふそう、阪急トラベルサポート、トルコ航空、マツダの派遣労働者などが発言。労働者の反撃が確実に始まっていることを感じさせるものだった。
集会参加者はその後、国会にむけて請願行動(デモ)をおこなった。
グアム移転協定の国会承認弾劾
グアム移転協定承認案が、5月12日の参院外交防衛委員会と、13日の参院本会議で否決された。しかし与党は、憲法の衆院優越規定を用いて、協定を成立させた。沖縄にさらなる犠牲を強制し、辺野古への新基地建設と米軍再編を強行するグアム移転協定承認を弾劾する。辺野古新基地建設を阻止しよう。
3面
改憲阻止へ 各地で取り組み
大阪 アジア民衆とともに9条改憲とめよう
ホールを埋め尽くす参加者(大阪中央会館 5月3日) |
3日、大阪市中央会館で「9条改憲を許さない! 5・3共同行動」が行われ、260人が参加した。
冒頭、急逝された呼びかけ人の川村賢市さんに黙祷を捧げた。
主催者として9条改憲阻止の会・関西の新開純也さんがあいさつを行い、6・14東京、10・12大阪、10・18京都の共同行動への取り組みや、総選挙では改憲に反対する政党、個人への投票などを提起した。
「東アジア・『在日』・沖縄から学ぶ平和憲法の創造―憲法改定の本質は何か―」と題して講演を行なった弁護士の丹羽雅雄さんは、憲法の「平和主義」の原点は、日本民衆の意思であるとともに、東アジア民衆から突き付けられた規範でもあると指摘し、自民党の改憲攻撃が、立憲主義の崩壊をねらったクーデターであると弾劾した。そしてアジアの民衆とともに9条改憲を阻止しようと結んだ。
闘いの現場から、松下プラズマディスプレイ偽装請負事件訴訟原告の吉岡力さん、「君が代」不起立で処分を受けた門真市立第三中学の川口精吾さんがアピールを行なった。社民党近畿比例区から出馬予定の服部良一さんは、グアム移転協定をめぐる国会の動きや、辺野古新基地反対の取り組みを訴え、来年5月の国民投票法施行を前に、すでに総務省が800万部のリーフレットを自治体に配布していることを弾劾した。
途中、替え歌や「憲法9条・24条・前文」をブルースで歌うユニークなアトラクションを交えながら、最後に参加者全員でインターナショナルを斉唱し、市内デモに出発した。(鈴木政志)
兵庫 沖縄の基地被害を生々しく報告
3日、神戸市内で「憲法62年―兵庫憲法集会」が自治労兵庫県本部などの呼びかけで開かれ、300人が参加した。
沖縄の基地問題を追い続けてきた琉球新報記者の松元剛さんが「米軍再編と平和憲法―沖縄から平和を考える」をテーマに講演を行なった。04年に沖縄国際大に米軍ヘリが墜落した現場を撮影したビデオも上映され、「入るな! 出ていけ!」「テープを出せ!」という米兵にたいし、急きょ集まった百数十人の市民や学生が猛然と抗議している場面が映し出された。松元さんは「コザ暴動(70年)を想起させた」と語った。また実弾射撃場や都市型戦闘訓練施設からの重機関銃弾と見られる流弾が住民の乗用車に当たっても、米軍は住民の抗議を無視して訓練を継続しているという。あらためて基地の危険、米軍支配の現実を知ることができた。
松元さんは「安保と地位協定の不公正・不正義は沖縄に集中しており、安保と地位協定は憲法より完全に上にある。平和憲法を平和、国際協調という『基本形』としてとり戻し、基地負担の解消を求めること。そのためにも9条改憲は絶対に阻止しなければ」と結んだ。
中国人「研修生」の労働条件をかちとるたたかい、ネット上などで頻発している部落差別への糾弾、日本軍慰安婦問題の解決を求める市議会決議の拡大など3本の報告もおこなわれた。(三木透)
京都 円山野外音楽堂に5千人が参加
2日、円山公園野外音楽堂で開催された「今、9条が輝くとき 生かそう憲法守ろう9条 5・2憲法集会in京都」には、会場からあふれる5千人が参加した。
作家の瀬戸内寂聴さんが「いのち」と題して記念講演を行い、「生きている限り戦争に反対しなくてはならない」と訴えた。ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんもスピーチを行なった。(溝田健二)
6・14全国集会 参加の訴え
【主催者のアピール文】 来年2010年5月、憲法第9条を変えるための国民投票法が施行されます。2009年度の各自治体の予算には、総務省の指示で18歳から19歳までの選挙人名簿作成費用がくみこまれ、憲法改定の準備が着々と進んでいます。海外でも武力を行使できる「海賊対処法」の採決が衆院で強行され、憲法9条を空洞化する動きがさらに強まっています。
憲法第9条改定を許さない国民的大運動は、いまやまったなしです。今求められているのは、政治的立場や思想の違いを認め合って手を結び、誰もが参加できる集会と行動です。国民投票が実施されても、大多数がそれに反対する力を準備することです。
私たちは2006年から、「6・15」の安保闘争記念日に、憲法9条を守る集会と行動にとりくんできました。今年は、来年に備え、各界、各層、あらゆる運動に広く呼びかけ、6月14日に全国集会を開催することにしました。
◆6月14日(日曜)
午後1時〜午後4時
午後4時半デモ出発
◆東京・社会文化会館 三宅坂ホール
地下鉄 有楽町線 永田町駅2番出口3分/半蔵門線・南北線 永田町駅3番出口4分/丸の内線・千代田線 国会議事堂前駅1・2番出口6分(右下地図参照)
◆主な講演・発言
○憲法第9条改定と国民投票への問題提起
伊藤成彦(中央大学名誉教授)
○沖縄から
知花昌一 読谷村議会議員
○派遣村から
安部誠 全国ユニオン事務局長
○日の丸・君が代強制と闘う
教育現場から
根津公子・増田都子
◆主催・連絡先:集会実行委員会
東京都新宿区四谷4‐23 第1富士川ビル302気付
◎6・14集会を呼びかけた「9条改憲阻止の会」とは
3年前、明文の改憲を政治日程にのせることを狙う安倍政権が登場した。この動きに対する危機感を共有する1960年の安保闘争世代の人びとが立ちあがった。それが、「9条改憲阻止の会」である。
それ以来、9条改憲阻止の一点を共通の目標にして、行動や集会を呼びかけ、改憲阻止の運動の大きな結集軸になっている。07年の国民投票法や、現在の海賊対処法案にたいする反対運動でも、国会前の座り込みの先頭に立っている。
「9条改憲阻止の会」が各界・各戦線の人びとに広く呼びかけ、06年から毎年、「6・15」の安保闘争の記念日に、改憲阻止の行動が行なわれてきた。今年はその4回目になる。
ソマリア問題 誰が本当の海賊か
〜帝国主義による略奪漁業〜
「海賊問題を言うばかりで、外国船によるわれわれの海岸と生活の破壊については何も言わない」―漁民が厳しい口調でこう語った。
地元漁民と不法外国船との戦争
1974年と86年の深刻な旱魃で何万もの遊牧民が、ソマリアの海岸に移り住んだ。彼らは沿岸漁業を営む社会を形成していった。
92年のバーレ政権の崩壊と沿岸管理の破綻に乗じて、外国の大型トロール船が、ソマリア海域に不法に侵入し始めた。アフリカの角の先端に沿った大陸棚で、豊富なエビと高価な魚を根こそぎにし、地元漁民の漁場を荒らした。
ここから地元漁民と不法外国船との戦争が始まった。
不法外国船は、カヌーの漁民にたいして、熱湯を浴びせ、網を切り、舟を壊し、漁民を殺した。
これにたいする自衛策として漁民も武装した。 ところが、不法外国船は、はるかに高性能な武器で武装し、漁民を圧倒した。 地元漁民も、自衛を強化するために、武器を近代化した。
地元漁民と不法外国船との戦争が現在まで続いている。そして、このように武装して抵抗している漁民が海賊のレッテルを張られているのだ。
外国資本の略奪漁業
05年だけで、800隻以上の不法外国船が、年間4億5千万ドル以上の魚をソマリアから持ち去っている。地元漁民への補償もなく、税金や入漁料の支払いもなく、漁業規制や環境規則も無視している。
不法外国船は、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャ、ロシア、ウクライナ、日本、韓国、台湾、インド、イエメン、エジプトなどの資本が所有するものだ。
EUが魚の繁殖のために漁業水域を閉鎖し、アジアでは乱獲で漁獲高が激減する中で、豊かで無規制で無保護のソマリアの海に、外国資本が殺到している。
外国資本は、自らの犯罪行為を自覚している。
だから、不法に獲った魚を運搬船に移し、そこで合法的に獲った魚と混ぜて、魚ロンダリングを行ない、莫大な利益をむさぼっている。
また、外国資本は、ソマリアの軍閥と組んで、インチキな漁業ライセンスを発行する会社をつくって、合法を装おうとしている。
さらに、産業廃棄物や核廃棄物を、ソマリアの海に投棄する犯罪も行なわれている。
沿岸警備隊が海賊へ転身の説も
内戦下の98年頃、地方有力者が、不法外国船の摘発と罰金の徴収を資金源にするということをはじめた。
これに目を付けたイギリスの軍事顧問会社が、地方有力者と組んで、摘発と徴収を行う沿岸警備隊の創設を手がけた。その後、軍事顧問会社は、取り分をめぐって地方有力者と対立し撤収しているが、このとき沿岸警備隊で訓練を受けた者が海賊に転身し、海賊ビジネスをやっているという分析もある。
それも事実だろう。だとしても、外国資本の略奪と破壊に事態の本質があることに変わりない。
帝国主義こそ海賊
ソマリアの海賊行為が騒がれているが、外国資本の犯罪は野放しだ。何十年にもわたる帝国主義による略奪と破壊こそが断罪されなければならない。そればかりか海賊を口実に侵略派兵を競い合うなどということは、もってのほかである。
4面
現代の保安処分=
「心神喪失等医療観察法」を撤廃させよう
「障害者」解放の当面する最大の政治課題として、「『障害者』自立支援法」の撤廃をもとめる闘いがあるが、いま一つの課題として、心神喪失等医療観察法(以下、「医療観察法」と略記)を撤廃させる闘いがある。
医療観察法の概要
正式名称は「心神喪失の状態で重大な加害行為を行った者の医療及び観察に関する法律」。刑事事件を起こした人が、心神喪失・心神耗弱を理由に、不起訴・無罪・執行猶予付き判決となった場合、検察官が申し立て、この医療観察法の手続にかけられる。3ヶ月ほどの鑑定入院の後、裁判官と精神科医による審判が行われ、入院処分・通院処分・処分なしのいずれかの決定がなされる。
入院処分・通院処分の決定がなされると指定医療機関への入院・通院となり、裁判所の決定がないと終了しない。入院は通常3年間だが、何度でも更新できる。指定入院医療機関は、精神科病院の中に厳重に施錠された新たな閉鎖病棟(保安病棟)を新設している。
成立の経緯
この法は、池田小事件をきっかけに、当時の首相・小泉が“保安処分が必要だ”と扇動したことでつくられた。
被疑者に精神科への通院歴があることから、“危険な「精神病者」が野放しにされている”といった世論形成が反動的精神科医を動員したキャンペーンで行われた。そして、支配階級にとってはいったんとん挫していた保安処分新設を、小泉は一気に推し進めた。
しかし、池田小事件の被告は、通常の刑事手続きで死刑にされた。
ちなみに、医療観察法ができる前の実態は、「野放し」だったのか? 強制入院制度で精神病院に送られていた、というのが実態である。
指定入院機関で初の自殺事件が起きた肥前精神医療センター。事件を調査した第三者委員会は、医療観察法下の「治療」に問題はなかったと報告した。 |
現代の保安処分=医療観察法
医療観察法は、現代の保安処分である。
保安処分は、社会防衛のために「犯罪を犯すおそれ」をもって身柄を拘束するものだ。19世紀のドイツで初めて提唱された。日本においては、1926年、61年、74年に答申された「刑法改正要領」で保安処分新設が盛り込まれていたが、すべて阻止してきた(戦前の治安維持法の下では、実質的保安処分がなされていた)。革共同も70〜80年代に、刑法改悪・保安処分新設反対の行動等を取り組んできた。
保安処分新設がとん挫した後、80年代後半に厚生省版の保安処分施設新設をもくろむ「処遇困難者専門病棟」新設の動きがあったが、これも「精神障害者」当該を先頭とした決起で阻止した。
90年代後半になると、精神保健専門家集団や弁護士会などから「精神保健改革」というかたちで、「触法精神障害者」対策の必要性が叫ばれるようになった。医療観察法の成立への動きを作った保岡元法相による私的勉強会が99年に発足。検討会を進めている過程で、01年6月池田小事件が発生、小泉の号令一下、一挙に医療観察法が成立させられた。
保安処分にたいする闘い
革共同は、保安処分を「精神医療の特殊な形態ではなく、いわば刑法の現代的形態」であり、帝国主義がその延命のために「精神障害者」にかけた隔離・分断・抹殺の差別攻撃であるととらえてきた。そして、帝国主義がその攻撃をかけてくる背景に、労働者人民の「精神障害者」差別への屈服があることを見すえ、保安処分粉砕・「障害者」解放、日帝打倒を、血債をかけて労働者人民が闘う課題としてきた。
70年代までの保安処分新設反対の闘いは、広範な労働者人民の決起として実現し、政府の思惑をとん挫させた。戦闘的「精神障害者」を先頭に、精神科医、弁護士会(途中から転向していったが・・・)も含めて広範な陣形が形成された。
80年代以降も保安処分新設策動との闘いは取り組まれてきたが、日弁連の屈服と、精神科医の戦闘的部分の少数化により、70年代までの広範な陣形はなくなった。
70〜80年代の刑法改悪保安処分新設の動きは、治安立法という面が露骨で、「精神障害者」だけでなく、革命党や労働組合運動も網にかけるものであることから、全人民的な取り組みの広がりを形成したという面があると思う(その初期においては、“精神病者と一緒にするな”といった差別的反対論があり、「障害者」の糾弾を契機に内実を深化してきた)。それが90年代以降に一定「後退」をみたのは、前述の弁護士会や精神科医といった主体の側の問題と同時に、「精神障害者」にマトを絞る形で攻撃が進められてきたことが大きいと思う。
保安処分の問題は、文字通り全人民の課題であることを、改めて強調したい。
医療観察法の批判
(1)立法の根拠はデタラメ
@再犯予測は不可能
「医療観察法」の対象とされるのは、重大事件を起こし、心神喪失・心神耗弱を理由に刑務所に行かなかった人で、再犯の「おそれ」があるとされた人である。しかし、精神科医の団体である精神神経学会は、「再犯予測は不可能」という声明を出している。
A「精神病者」の再犯率は高くない
政府やマスコミの言うように「精神病者」の再犯率は高いのか。
厚労省の研究では、ある1年に法を犯して不起訴か刑の減免になった「精神障害者」と薬物中毒者・アルコール依存者のうち、その後11年間に再犯した者は21・8%(一般では1年間で50%以上)。殺人に限定すると6・8%(一般では28%)。「精神病者」の再犯率は高くないのだ。
(2)手続き・運用上の問題
・対象は「重大犯罪」ということで、殺人・強盗・傷害・傷害致死・強姦・強制わいせつ・放火の6罪種に絞られているが、全治1週間程度の「傷害」でも対象になる。また、傷害以外の5罪種では未遂でも対象となる。
・手続が公開の法廷ではおこなわれない。通常の刑事裁判とちがい、被告人に充分な弁護は保障されにくい。裁判ではないので、事実関係を争えない場合もある。無実の主張をしながら鑑定入院させられた人も、実際にいる。
・保安病棟建設が進んでいないため、遠隔地の指定入院機関に入院が強制され、治療に必要な家族の協力などが不可能になる例が多発している。政府やマスコミによるデマ扇動の結果、指定入院施設の建設予定地の住民は「危険な者が近くに来ては困る」と建設に反対しており、施設建設が行き詰っているのだ。
・施設建設に行き詰った厚労省は、対象者を一般の精神科病院に引き受けさせるための省令変更を行っている。政府は国会審議の段階で「重厚な医療を施すから保安処分ではない」と言っていた。これらのケースでは特別な人員配置も予算化されておらず、「重厚な医療」とはほど遠い状態だ。
(3)保安病棟で行われるのは医療ではない
07年12月、医療観察法の手続で肥前精神医療センター(佐賀県)に入院させられていた患者が自殺するという事件が起きた。通院機関では9人が自殺し、入院機関でも肥前の事件以降さらに2人が自殺している。
肥前のケースでは、外出訓練中に逃走し、遠く横浜の元自宅の近くでの鉄道自殺だった。衝動的ではなく絶望の果ての自殺であると考えられる。医療観察法病棟では毎日、事件への反省を求められ、事件の背景にある事実が顧みられることはない。事件を再現しないことが重視され、患者の立場に立った治療は行われず、患者の絶望が形成されてしまうのだ。
医療観察法の撤廃を
帝国主義の体制的危機の深化と、侵略戦争激化の中で、30年代型「障害者」抹殺攻撃は強まる。改憲阻止の闘いの中で、医療観察法の撤廃をかちとろう。(立花 豊)
半田滋『「戦地」派遣で変わる自衛隊』
(岩波新書)を読んで
今、「田母神ブーム」だそうである。更迭された元航空幕僚長田母神俊雄のことだ。「朝まで生テレビ」などのテレビ番組ではゲスト席が用意され、各地の講演会にも引っ張りだこという。 安倍、福田政権の短期崩壊、そしてとんでもない歴史認識を持った麻生政権の誕生から今日まで、イラク・アフガン戦争と米軍再編、「北朝鮮」をめぐる核とミサイル問題、「拉致問題」という政治状況の中で進められてきた日米軍事一体化の現実。これに対して三里塚、沖縄や岩国などごく一部を除いて弱い抵抗しか組織しえず、押し返しきれていないというのは悲観的に過ぎるであろうか。
北朝鮮の人工衛星ロケット発射をめぐる自治体とマスメディアが煽った「国家総動員」の結果として、今年、ある町の統一メーデーでは日教組の分会が「北朝鮮経済制裁強化」、「北方領土早期返還」、「拉致被害者即時帰国」のデコレーションをだすまでになった。このような現象を、私たちは黙ってすませてはならない。
半田滋氏の『「戦地」派遣』を読むと、いかに私たちがイラク戦争の「現実」を知らずに来たのかという思いがある。「自衛隊が行くところが非戦闘地域だ」との迷言に代表される小泉政権下での自衛隊イラク派兵。日米軍事一体化の下で、私たちの血税が湯水のようにアメリカの侵略戦争のために投入されていることを、これでもかと思い知らされる。この現状に汲々としている限り、確実に「軍靴の音」は忍び寄ってくると危機感を覚えたのは私だけであろうか。『未来』読者のみなさんには、半田さんの訴えを受け止めてほしい。(杉山泰治)