未来・第32号


                       未来第32号(5月5日発行)目次
 1面  改憲への動きを阻もう 

      三里塚―現闘本部は同盟の財産
     北原事務局長が証言(4月23日) 

 2面  門真三中(大阪)の
     「君が代」処分撤回をかちろとう
     5・10 「ただす会」結成集会へ 

     上関原発(山口)中国電力が造成着工 4月8日 

     労組を否定する反動論告
     「5・27国労臨大闘争弾圧」裁判
     東京地裁 2月27日 

 3面  人の死を期待する「医療」
     「臓器移植法」は撤廃すべき 

     宝塚市「慰安婦」決議から1年
     尼崎市でも取り組み 

     新たな水平社の創立を宣言
     全国連 第18回大会に参加して 

     G7声明 「年内に回復」の空虚 

 4面  ”辺野古に基地をつくらせない“運動を 

 5面  環境アセス(辺野古新基地)への意見書を出そう 

     環境アセスメント準備書の問題点
     5400ページを費やして「環境に影響なし」
     海兵隊訓練基地の実態が明らかに 

 6面  直撃インタビュー(第4弾)
     中川ともこ・宝塚市政を生み出した「市民の会」のリーダー
     木下達雄さん(浄土宗大林寺住職)に聞く 

     映画案内「鶴彬(つるあきら)こころの軌跡」 
     
 

改憲への動きを阻もう

海賊対処法 衆院で採決強行

4月23日、衆院本会議で、海賊対処法案の採決が強行され、与党の賛成で可決した。
法案が提出されたのは3月13日だ。翌日、護衛艦2隻をソマリア沖に派遣した。そして4月14日に衆院本会議で代表質問が行なわれてから、わずか4回の委員会審議で採決が行なわれた。
民主党は、採決では政府案に反対したものの、基本線で政府案と何ら変わらない修正案を出し、与党に修正協議を持ちかけた。民主党の態度を見透かして、与党は衆院本会議の日程を繰り上げて採決を強行した。
共産党は、自衛隊の派兵には反対といい、民主党を批判しているが、「海賊は国際犯罪。その取り締まりは警察力で行うべき」と主張し、帝国主義の権益擁護の論理に加担している。
あいば野へのPAC3配備弾劾/空自・あいば野分屯基地(滋賀県)へ緊急抗議(4月30日)
連休明け参院闘争
4月22日、23日と緊急の国会行動が闘われた。たたかいはこれからだ。全国で法案の批判と暴露をすすめよう。グアム協定も参院で否決させよう。
国会前座り込みにかけつけよう 7日 正午〜
9条改憲阻止の会などが国会前で行動(4月22日)

憲法審査会の始動ねらう

与党 憲法審査会の規定案を提案
与党が、4月23日、衆院議院運営委員会で、改憲の前提となる憲法審査会を始動させるため、憲法審査会の「規程」を早急に定めるように求める動議を提出、審議を行なった。
憲法審査会は、07年5月成立の国民投票法により、衆参両院に設置するとされている。ただし、国民投票法公布(07年5月18日)後、3年間は改憲原案の国会への提出、審議は凍結されている。そもそも、国民投票法は施行が2010年5月であり、施行もされていないのに、国会での改憲発議や改憲案の審議はできない。審査会での改憲案の事前審査などもってのほかである。
憲法審査会始動のねらいは、改憲案の「違法な前倒し審議」である。もって、来年5月以降は、直ちに国会発議、改憲国民投票実施に突き進もうというのだ。

集団的自衛権の 検討再開
麻生が、連休明けにも、「集団的自衛権行使」にかんする憲法解釈の検討を再開するとうちだした。「ミサイル」デマキャンペーン、撃墜態勢発動や自衛隊のソマリア沖派兵など、憲法破壊を次々と強行しつつ、改憲も政治日程にのぼせている中で、集団的自衛権行使について、現行憲法の下でも大きく踏み込もうというのだ。
08年6月の安保法制懇報告書で、@公海における米軍艦艇の防護、A米国を狙った弾道ミサイルの迎撃、B国際的な平和活動における武器使用、CPKOでの他国部隊の後方支援―の4類型について、現行憲法の解釈変更で、集団的自衛権行使は可能であるとしていた。
日米の軍事一体化を水路に、世界中への侵略派兵と武器使用と武力行使を解禁することが狙われている。

アデン湾で展開中、補給艦「とわだ」(中央)から給油をうける「さざなみ」(手前)。奥は「さみだれ」
市区町村で国民投票の経費計上
総務省は、09年度予算(3月27日成立)に「国民投票制度準備等関係経費」として、46・9億円を計上。内訳は、投票人名簿システム構築交付金(市区町村が国民投票用投票人名簿を作成するためのコンピューターシステムを構築する費用を、国が全額交付する)、法内容の周知徹底のためのリーフ300万部(昨年度500万部印刷)とポスター5万部、投開票の速報体制の整備に要する経費など。
すでに、予算案が閣議決定された段階(昨年12月24日)で、総務省は全国の市区町村に対して、投票人名簿システム構築交付金の内示を行なった。
東京の中野区では1144万4千円、大阪市8817万5千円、高槻市1200万円など。
内示を受けて、市区町村は、予算に、投票人名簿システムの構築に要する費用を計上した。選挙管理委員会の費目にあり、一見しただけでは国民投票法にかんする予算だと気付かない。全国の市区町村の3月議会で一斉に通過している。 来年5月までに改憲のための国民投票法の準備を完了させようとしている。

衆院選の争点
中曽根元首相は「今度の衆院解散・総選挙は憲法問題にとって非常に重要な意義がある。各党が憲法を国民にどう訴えるかはっきりするからだ」と言い放った。
衆院選で改憲を争点にして、一大キャンペーンをくりひろげ、改憲翼賛体制に持ち込もうとしている。

JCが改憲でタウンミーティング
ブルジョアジーの集まりである日本青年会議所(JC)は、5月3日の憲法記念日に、全国47都道府県で「憲法タウンミーティング」を開催する。大分会場(大分市)では、「日本は侵略国家ではなかった」と公言する田母神俊雄前航空幕僚長を呼んでいる。
憲法審査会の始動を止めさせ、憲法改悪反対の大きなうねりを、全国各地でつくりだそう。

三里塚―現闘本部は同盟の財産
北原事務局長が証言(4月23日)

公判後の集会で勝利の報告をする北原事務局長(4月23日千葉市)

4月23日、千葉地裁において天神峰現闘本部裁判が行なわれた。
裁判の最大の争点は、現闘本部の建っている土地の地上権を、三里塚反対同盟が有しているのか否かである。これは、@現闘本部の実地検証と、A旧地主関係者の証人調べによって立証される。
ところが、実地検証を拒否し続けてきた仲戸川裁判長は、前回3月12日の公判で、反対同盟側証人の採用を取り消すという暴挙を行なった。この反動的訴訟指揮に、反対同盟と弁護団は連日の抗議行動に立ち上がり、これを全面撤回させた。
今回4月23日の公判で証言に立った北原鉱治反対同盟事務局長は、1966年11月に千代田農協の二階で行なわれた実行役員会で、当時副委員長だった石橋政次が「どのように使ってもいいから空港を追い出す闘いをやってくれ」と自分の土地の提供を申し出たことや、82年に副委員長を解任された石橋が北原事務局長に対して、「俺はもう闘いきれないが、現闘本部の土地は同盟に提供する。井戸も残す」と語ったという重要な事実を証言した。
そして、証言の最後に仲戸川裁判長に対して、「私が案内をするから、現場検証を行なえ」と厳しく迫った。
この日の勝利に踏まえ、現場検証と重要証人の再尋問を実現しよう。

2面

門真三中(大阪)の
「君が代」処分撤回をかちろとう
5・10 「ただす会」結成集会へ

5月10日、エルおおさかにおいて「―子どもの人権を守ろう―門真三中への「君が代」処分をただす会」が結成される。まる1年間におよんだ門真三中卒業式での不起立闘争があらたな局面を迎える。不屈に闘う教育労働者を守りぬき、大量処分の撤回をめざして、改憲阻止・「日の丸・君が代」強制粉砕へたたかいぬこう。

不起立の絶滅ねらう

09年の門真市における卒業式では、市教委が式の当日になって三中をはじめとする5校の教育労働者にたいして個別的に学校長名による職務命令を発し、不起立の絶滅をはかってきた。今回は、担任団全員ではなく、不起立が予想される活動家層や良心的な教育労働者をねらいうちにしてきた。右翼勢力による大キャンペーンと大量処分攻撃という重圧の中で、多くの教育労働者が起立をよぎなくされた。しかし、教育労働者の不起立闘争を絶滅するねらいはうち砕かれた。三中では、少なからぬ保護者たちが不起立をした。これは、教育委員会の大量処分にたいする批判の意志表明である。

公平委員会に不服申立

4月20日、門真三中の川口教諭が門真市公平委員会に不服申立を行った。これまでは、訓告処分を受けた場合、人事委員会や公平委員会の対象とはならなかったが、評価・育成システムにより一時金がカットされる現制度のもとでは、訓告処分も地公法上の「不利益処分」になるはずだ。ただし、初めての法解釈となるもので、受理させること自体、容易でなく、闘いは裁判闘争になっていくであろう。
この裁判闘争を支えるために、「ただす会」の準備会が重ねられ、10日に結成大会が開催されることとなった。会員を地域住民と教育労働者のなかに拡大して、長期にわたる処分撤回闘争の基礎をつくろうとするものだ。

改憲阻止の柱に

準備会では、門真三中への大量処分が、個々の教育労働者にだけかけられたものではなく、不起立をした卒業生たちや、学校とその教育活動にかけられた処分攻撃であることが確認された。
また、昨年3月の府教委通知では「このような事態は、当該中学校や当該市のみならず、府全体の公立小中学校の信頼を損なうものであり」、二度と府内で生じないようにすると言っている。これは、卒業生たちの人間としての尊厳を無視するものだ。このことから、ただす会は、「子どもの人権を守る」ためにも、当該の被処分者とともに闘う運動をめざしていくことが確認された。
この闘いは、東京での根津さん河原井さんへの解雇攻撃との闘いを中心とする全国の「日の丸・君が代」闘争の一環として、きわめて重要な闘いとなる。改憲阻止闘争の大きな軸にもなっていく。「ただす会」の呼びかけにこたえ、会員を組織しよう。(革共同関西教育労働者委員会)

上関原発(山口)
中国電力が造成着工 4月8日

中国電力(以下「中電」)は4月8日、上関原発(山口県上関町)の用地造成工事に着手した。雨水を処理する排水路の整備工事だとしているが、1982年に計画が浮上してからはじめての具体的な工事だ。
上関原発の計画は、国内最大級の137・3万キロワットの軽水炉2基を建設するというもの。最後の新規立地原発といわれている。ここで建設を阻止すれば、新たな場所での原発建設をほとんど不可能に追い込むことができる。山口県で中電は田万川、豊北、萩で建設しようとしてきたが、地元の強い反対でことごとく阻止された。中電にはもうあとがない。
上関でも計画は遅れに遅れている。現在、中電は、本年度内に国への原子炉設置許可申請を提出、1号機を2010年着工2015年運転開始としている。しかしまったく成算はない。建設用地全体は約160ヘクタール、建設を阻む未買収地が点在し団結小屋もある。中電は「原子炉やタービンなどの建物は造成地に設置するので影響ない」として工事を強行した。約33ヘクタールの造成地の内14ヘクタールは海面を埋め立てるとしているが、上関町祝島の漁民たち約70人が県を相手取り造成のための公有水面埋め立て許可の取消を求めて山口地裁で争っている。県知事も天然記念物カンムリウミスズメの調査継続などを要求しており、繁殖に影響がないことを確認しなければ、本格的造成には取りかかれない。今回の工事は、反対派を屈服させるための見切り発車だ。
祝島の住民は、今も約90%が反対しており、漁協も漁業補償金の受け取りを拒否してたたかっている。10日には本格的な阻止行動の準備として山頂の団結小屋から埋め立てが予想される海岸までの300メートルの草刈りを行った。17日には祝島の漁船30隻が並んだのを先頭に、原発予定地内海岸で造成工事着工抗議闘争がたたかわれた。海岸近くに新たな見張小屋建設もすすめられている。
上関(山口県)原発建設予定地

工事に先立つ6日には、原水禁山口県民会議など3団体が呼びかけて「上関原発計画に反対する全国活動者会議」の初会合が柳井市内でひらかれた。10月までに百万人署名を集める、10月に全国集会を開くことなどを申し合わせた。現地フィールドワークや中電への抗議を積み重ねよう。また今年8・6ヒロシマへ向けての重要課題として、上関原発阻止をたたかおう。 (鳥山 整)
抗議先:中国電力  〒730‐8701  広島市中区4‐33 FAX 082‐523‐6185

労組を否定する反動論告
「5・27国労臨大闘争弾圧」裁判
東京地裁 2月27日

弁論分離した7被告に対して、2月27日、論告求刑が行なわれた。求刑は国労組合員の被告6人に対して懲役1年、支援被告1名に対して懲役1年6月であった。以下、検察官の論告を批判する。
検察官は、暴力行為等処罰に関する法律(以下、「暴処法」)および刑法208条違反の構成要件として「多衆の威力を示しての暴行」を立証できたと言っている。その中身は「路上に結集した」「怒号した」「立ちふさがった」「誰それを押し返した」という個々ばらばらの行為の寄せ集めに過ぎない。この程度の行為をもって、「多数の威力を示しての暴行」にあたるとするならば、多数の労働者の団結した行動を基礎にする労働組合の活動はほとんどすべてが禁止されてしまう。これは労働組合の存在そのものを否定する暴論だ。

国会前に座り込む国労闘争団(4月22日)

「暴行」「事前共謀」を立証できず

そもそも「立ちふさがる」「押し返す」といった行為は、ピケッティング(阻止線)などの労働組合の活動で普通にみられるものだ。こうした行為は裁判においては「有形力の行使」と呼んで、「暴力行為」とは明確に区別している。弁護側も本裁判において、「暴力行為は存在しない」ということを徹底的に明らかにしてきた。これにたいして、検察官は一言も反論していない。
また、検察官は「遅くとも実行犯7名が本件暴行の実行に着手するまでの間に、本件ホテルから出てきた国労本部派組合員らを相手にひとたび上記工作を開始すればこれらの者に対して実行犯7名らが暴行に及ぶであろうことを確定的に認識」していたから「事前共謀」が成立すると主張している。しかし、「事前共謀」の成立要件である、いつ、どこで、誰が「暴行の意志一致」を行なったのかという事実は一つも立証されていない。
ただ“被告全員が中核派という同一党派に所属している”というだけで、「事前共謀が成立する」というのである。こんなことで「事前共謀」が成立するというなら、同じような本やパンフレットを読んでいたとか、集会で同じ演説を聴いていたというだけで“事前に共謀した”ということになってしまう。今回の論告は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」とした憲法21条をまっこうから踏みにじっているのである。
以上で明らかなように、この論告は、「暴行」「共謀」がまったくのデッチ上げであることを自己暴露するものとなった。しかし、弁論分離後、7被告側は「完全黙秘」と称して「事実問題は争わない」方針に転じ、検察官に“助け船”を出している。8被告全員の無罪を獲得するためには、弁論の統一が不可欠だ。松崎被告の裁判闘争を最後まで原則的に貫徹しよう。

3面

人の死を期待する「医療」
「臓器移植法」は撤廃すべき

国会では、与党と民主党が「臓器移植法」改悪案の採決に合意した。3本の法案(A案・B案・C案)が国会に提出されている。どれもニュアンスの違いこそあれ、「脳死」を前提とする臓器移植を認めている点では同じであり、反対すべきである。
そのなかでもとりわけ危険なのはA案である。現行の「臓器移植法」では、臓器移植のために「脳死」の判定がなされるという内容だが、A案では「脳死」を一般的な人の死の基準にしてしまうのである。また、家族の同意だけで、「脳死判定」も臓器摘出もできるとしている。

つくられた「脳死」

皆さんは、「脳死」と診断された方と会われたことがあるだろうか。
人口呼吸器は使っているが、体温もあり、体も動かす。子供なら成長もする。臓器摘出のためメスを入れたときに、体の動きや血圧の変動が起こることがあり、麻酔を使うことも一般的となっている。
国際的には、1960年代にはこの状態を「深昏睡」と呼んでおり、医療打ち切りの対象とするかどうかが議論されていた。60年代後半に臓器移植が人体実験的に開始されると、臓器摘出元とされ、医療も打ち切られるようになっていく。
そうした政策の中で、「脳死」という言葉が造られた。
臓器移植は、必ず移植用臓器の不足という状況に陥る。それが闇での臓器売買の要因ともなるのだが、他方では、新たな臓器摘出元を作り出そうとする動きともなる。「無脳児」とされる新生児がそうして殺されたこともある。 たとえばアメリカでは、「遷延性意識障害」(いわゆる「植物状態」)の状態を「人の死」とする州も現れている。生活保護の医療扶助などに当たるメディケイドは、全国的にこうした状態になれば打ち切られる。

「脳死」は死ではない

日本の「臓器移植法」が成立したのは、1997年だ。しかし、これ以後に明らかになってきたのは、「脳死」と診断された人たちが病院や自宅で生活している実態だ。アメリカでは、20年にわたって生活されたひとがおり、日本でも現に8年を超えて生活している人がいる。
現行「臓器移植法」成立過程での論議では、「脳死」と診断されれば数日で心停止になる、ということが前提にされてきた。この前提は、もはや崩壊した。
また、現行法に関する論議では、「脳死判定」の前提は、救命治療が尽くされる、ということだった。このところの救命救急体制の崩壊は、こうした前提を崩壊させた。さらに、現行法の下での「脳死判定」においても、救命治療が尽くされたとは言えないケースがある。
現行法こそが撤廃されるべきであって、さらにそれを改悪することなど絶対にみとめられない。
「生きる価値なき者」として命の切捨てを進める帝国主義体制こそ死すべきなのだ。 (大崎 正)

宝塚市「慰安婦」決議から1年
尼崎市でも取り組み

昨年3月、日本で初めて「日本軍慰安婦問題に関して政府の誠実な対応を要求する意見書」を宝塚市議会が可決し、日本政府に送りつけた。この宝塚発の「慰安婦」決議は日本全国を駆けめぐり、運動に携わってきた人びとを勇気付けた。このうねりはその後、東京・清瀬市、札幌市、そして福岡市へと波及し、今全国にひろがりつつある。
被害ハルモニの高齢化(韓国で名乗りでた被害者215人のうち、生存者は93人)が進むなかで、ハルモニには、日本の侵略戦争によって奪い取られた人間としての尊厳を取り戻すことを基本に、心底から戦争反対を願い、「若い女性たちに自分が味わった悲惨な体験はさせない」という固い思いがある。
862回を数えるソウル日本大使館前の「水曜デモ」に学び、関西では毎月、大阪市(JR大阪駅前)、京都市、兵庫県西宮市、そして神戸市で「水曜デモ」をおこなってきた。

ソウルでの水曜デモ(日本大使館前)

連続証言集会

〈「慰安婦」問題の一日も早い解決を実現させるため、韓国から被害女性キル・ウォノクハルモニを招いて連続証言集会〉が、大阪市(4月24日)、尼崎市(25日)、吹田市(26日)で開かれた。
私は、尼崎証言集会にとりくんだ。今年81歳となられたキル・ウォノクハルモニは、直前に体調を崩し入院されたため、お話を直接聞かせていただくことはできなかった。
ハルモニのビデオレターやDVDの上映、講師として参加された韓国挺身隊問題協議会のお話、宝塚で実際に発生した朝鮮人差別問題を題材として発足した「劇団水曜日」の熱のこもった演技、学校の総力を上げて舞踏に参加してくれた尼崎朝鮮初中級学校の生徒たちの軽やかで美しい踊りなどで集会は盛り上がった。
私たち「日本軍『慰安婦』被害女性と共に歩む大阪・神戸・阪神連絡会」のメンバーは昨年西宮での証言集会に続き、「慰安婦ゼミ」でがんばる女子大生の尼崎市議会への陳情が否決されたことへの怒りをもバネとして、尼崎市を中心に事前勉強会の実施、朝鮮総連や部落解放同盟各支部、兵庫県教職員組合など労働組合への要請、そして市内にある大学へのビラいれなどを行なって、この日を迎えた。
集会は、氷雨をものともせず、私たちの予想を上回る120人が参加した。(U)

新たな水平社の創立を宣言
全国連 第18回大会に参加して

4月11日・12日、大阪・荒本人権文化センターで部落解放同盟全国連合会の第18回大会が開かれた。一日目に参加の機会を得たので、私の感想と報告をお伝えする。
正午過ぎ、荊冠旗入場で大会は始まった。瀬川委員長のあいさつに続いて、三里塚空港反対同盟の伊藤信晴氏、三里塚・関西実行委員会の山本善偉氏、各地の地方議員・労働組合など来賓の挨拶、紹介、8・6広島への取り組み、争議労組のアピールが行われた。
1号議案として、楠木事務局長から活動報告がなされた。報告は、この一年の歩みを全面的に総括し、「新たな水平社」の旗手となる〈飛躍の1年〉として総括する内容だった。
続いて中田書記長から、2号議案=運動方針案の提起があった。書記長は、部落解放闘争を取りまく現状について、世界恐慌と自衛隊ソマリア派兵・ミサイル問題という戦争にむかうきな臭さから説きおこし、困難な中にも差別の攻撃に対して、住宅闘争はじめ、6千部落3百万の仲間に訴える新たな闘いが開始されている、全国水平社の荒々しい闘いをよみがえらせようと提起した。
特別報告は、狭山、広島、住宅闘争、西郡、全国連青年部のそれぞれの課題からなされた。 全体討論では、差別に怒る全国各地の生の声が次々と出された。全国連がいまだ組織されていないある県からの報告は、悪質な差別事件にたいする婦人たちの戦闘的な闘いが生き生きと語られ、未組織の所にも巨大なエネルギーがあることを実感させ、会場の共感を呼んだ。
今大会に参加して私は、世界恐慌が、戦争・失業と一体で差別・排外主義攻撃を激化させ、それにたいして、差別と闘う自主解放の闘いが全国各地でおこっていることを実感した。住宅闘争は、差別行政とのたたかいであると同時に、今日、すべての労働者人民に突きつけられた居住権・生存権を守る闘いでもある。新たな水平社の創立への全国連の意気込みを受けとめ、ともに闘っていきたい。   (芦田健一)

G7声明 「年内に回復」の空虚

G7(4月24日ワシントン)は、「世界経済は年内に回復基調に向かう可能性がある」との共同声明を採択した。銀行の3月期決算の黒字化や2月の住宅着工数のプラス化など、米国の経済指標の一部を好材料としている。しかし全く空虚だ。
@米の住宅着工数は、3月、再び前月比マイナス10・8%、前年同月比は48%減に落ち込んだ。3月の住宅着工数は、1940年代以来の低水準となった1月に次いで2番目に低い数値だ。
A自動車販売台数は、2月には前年同月比41・4%減。米自動車産業のビッグ3のうち、クライスラーが破綻し、GMも破局回避には国有化以外にないと、株式の買い上げを国に要請している。
B金融面でも、米金融大手シティが、株式の36%を米政府保有とする政府管理となった。昨秋、政府管理下に入ったAIGは、08年の赤字が993億ドル弱で、それ以前の22年間の利益合計を帳消しにする巨額だ。

麻生、資本救済の追加経済対策

政府は4月27日、追加経済対策の財政的裏付けとなる09年度補正予算案を閣議決定し、国会に提出した。総額13兆9256億円。追加経済対策の財政支出総額は14・4兆円。
政府は、昨年夏以降、すでに二度の補正予算で12兆円を投入。さらに09年度当初予算の一般会計総額が過去最大の88・5兆円。09年度当初予算と補正予算案の追加経済対策費を合わせると、初めて100兆円を突破。
これは、G20(4月20日ロンドン)合意「GDPの2%規模の財政支出」を履行するものだが、IMFの年間GDP予測で、世界がマイナス1・3%の中で、日本はマイナス6・2%と、G8で最悪という危機に駆り立てられている。
恐慌突入で日本の帝国主義的蓄積構造の脆弱性―対外的な要因に依存する以外にない―が深刻に露呈しているのだ。

資本家救済

エコカーや省エネ家電の購入補助など、自動車や電機資本の救済。太陽光発電の普及促進、企業の雇用調整助成金の拡充、研究開発減税拡充による法人税減税など大資本救済。空港・道路などの公共事業の推進。贈与税の非課税枠拡大などの富裕層優遇。
さらに産業活力再生特別措置法(4月22日成立)で、これまで金融機関に限られていた公的資金の注入が、一般の大企業にも可能になった。
また、15兆円の枠組みとは別で、株価を買い支えるための借り入れにたいして政府保証枠を50兆円も用意した。
追加経済対策の財源は、約10兆円の国債の追加発行だ。これで、新規発行額は、当初予算を含めて約44兆円で過去最大規模になる。
08年度末の国と地方を合わせた長期債務残高は787兆円に達し、帝国主義国の中で最悪だ。

消費税の大増税

政府は、税制改革の「中期プログラム」(昨年12月策定)や09年度税制改正法(3月27日成立)で、11年度までの消費税増税を打ち出している。
政府は、人民からさらに搾り取ることで、のりきろうとしているのだ。

選挙対策のバラマキ

支配階級は、この危機を、憲法改悪による統治の転換、人民への犠牲しわよせと侵略戦争推進で突破しようとしている。だがその前に衆院選という鬼門がある。だから支配階級はなりふり構わずバラマキに走っている。

4面

”辺野古に基地をつくらせない“運動を

グアム移転協定と辺野古アセス準備書を粉砕しよう

日米両政府は、2月27日に、「在沖海兵隊のグアム移転に関する協定」(グアム移転協定)に署名した。そして、4月14日に衆院本会議で可決し、参議院に送られた。条約の承認案であるため、参院で否決されても衆院優先で、5月中旬までには成立する。
日本政府は、グアム移転協定を国会承認とすることで法的拘束力を持たせ、強権的に推進していこうとしている。 協定の内容は、@「在沖海兵隊司令部要員のグアム移転と移転費用、および基地施設・インフラ等の費用、約61億ドルの日本政府による負担」、「嘉手納基地以南の4施設返還」などが盛り込まれているが、A最大の核心問題は名護市・辺野古への新基地建設を、法的強制力をもって推進することを宣言したことだ。グアム移転問題は、辺野古への新基地建設とパッケージになっている。

準備書で明らかになった、辺野古の米軍新基地の配置

デタラメなアセス準備書
辺野古に新たな基地建設を強行するための手続きとして、防衛省沖縄防衛局は、「普天間飛行場代替施設建設事業に係わる環境影響評価準備書」(以下、環境アセス準備書、5面に解説)を4月1日に沖縄県や名護市などに提出し、2日から5月1日までの公告縦覧を行なった。
環境アセス準備書(5面に解説)は、5千4百ページにもおよぶ膨大な量で、コピーも禁止されており、それをわずか30日間で読むことなど、一般の人にとってはほとんど不可能だ。実質的には、環境アセス準備書を読ませずに批判を封殺するということだ。
方法書にたいする知事意見でも複数年調査を求めているのに、実際の調査は1年しかやっていない。また、沖縄防衛局が自ら必要と認めていた台風時の調査もされてない。
さらに方法書に盛り込まれていなかった4つのヘリパット建設が記載されるなど、デタラメ極まるものだ。
内容に至っては、政府案を基本にし、沖合移動を求める県や市の案など6案を検討した結果、政府案が妥当だとしている。政府案以外の5案の検討なるものは、あくまでも政府案を有利にし、決定に導くためのペテン的方策でしかない。
要するに日本帝国主義は、2014年に辺野古新基地を完成させる計画を、何が何でも実現するという攻撃に出てきているのだ。
辺野古闘争は、本格的着工へ向けて、新たな段階に入った。環境アセス準備書にたいする抗議と反対の意見書を、提出期限の5月15日までに、全国から政府・防衛省に圧倒的にたたきつけよう。意見書運動を全国各地で展開して、グアム移転協定と環境アセス準備書を実質的に無力化し、辺野古への新たな軍事基地を絶対に作らせない運動を作りだそう。

「米軍再編粉砕・改憲阻止、日帝打倒」の戦略的要

グアム移転協定は、アメリカ帝国主義のグアム統合軍事計画と一体であり、その中心環をなしている。
それは、アメリカ帝国主義の世界戦争戦略としての米軍再編の最大の実体的な戦略拠点の構築だ。具体的には、アフガニスタン・パキスタン侵略戦争をエスカレートさせるオバマの新戦略に沿って米軍再編を推進しようとするものである。
米軍再編は、米軍と自衛隊の統合運用を促進・強化するものであり、自衛隊の実戦部隊としての質的飛躍なしには機能しない。当然にもそれは、日米安保同盟の質的な飛躍と転換・強化となっていく。
すでに、それは「極東の安全」から「世界の安全」へと、なし崩し的にエスカレートしている。

米軍再編と改憲
さらに、これまでの政府・自民党による憲法を歪曲した拡大解釈をもってしても、矛盾は覆い隠せなくなり、9条改悪を突破口とする全面的な改憲の衝動が噴出してきている。それは、海賊対処法案(実質上の海外派兵恒久法)の動きとして始まっている。そして、改憲のための国民投票法の来年5月施行に向かって、改憲攻撃が本格的に強まっている。
このように、アメリカ帝国主義の米軍再編と戦争展開は、日米安保の質的転換・飛躍的強化を媒介として、日本帝国主義の改憲攻撃を激しく促進している。

世界戦争危機と対決
帝国主義のこのような軍事的展開の拡大は、帝国主義相互の利害対立と体制的存亡をかけた動向としてとらえ返すことが重要だ。すなわち、帝国主義の戦争的エスカレーションと凶暴化は、その本質的脆弱性に規定された体制的危機の現れなのだ。昨秋から本格的に始まったアメリカ発の世界恐慌と各国の利害をかけた政治動向は、この過程を激しく促進するものとなっている。
全世界の労働者人民にたいして犠牲を強制する帝国主義の戦争政策と真っ向から対決していくことが求められている。
辺野古に新たな米軍基地をつくらせない闘いは、グアム移転協定=米軍再編と改憲の攻撃をめぐる最大の激突点として、真っ向から立ちはだかっている。まさに沖縄・辺野古闘争は、「米軍再編粉砕・改憲阻止、日帝打倒」の戦略的要をなしているのだ。労働者階級の未来がかかっている闘いだ。このことを鮮明にさせて、沖縄・辺野古闘争の全国陣形をつくりだそう。

日帝打倒こそ、沖縄問題解決の道

日本帝国主義が沖縄・辺野古に米軍基地の建設を押しつけていることは、沖縄に対する新たな差別攻撃である。
そもそも戦後沖縄の米軍基地問題は、基地問題一般には解消できない、日本帝国主義による伝統的な沖縄差別政策の最大の実体である。日本国家にとって、沖縄問題=沖縄差別は、その資本主義形成と帝国主義的確立のための不可欠な支柱となってきた。
第2次世界大戦末期の沖縄戦の地獄は、日本帝国主義のアジア侵略と日米間の帝国主義戦争の結果であると同時に、何よりも日本帝国主義の沖縄差別構造と沖縄差別政策が極限的に行きついた事態だった。そして戦後の米軍支配から72年5・15のペテン的沖縄「返還」を経て今日に至るまで、在沖米軍基地とそれがもたらすさまざまな被害こそ、日本帝国主義による沖縄差別(構造と政策)の最大の現実なのだ。
沖縄基地問題と並んで、小泉改革以来本格化し、昨年来の世界恐慌によって一挙に激化した非正規雇用労働者の問題の中で、沖縄の出稼ぎ労働者問題(沖縄での失業者の贈大と出稼ぎ先での首切り)も、新たな沖縄差別の激化として生み出されてきている。沖縄現地の闘いと連動して、在「本土」沖縄出身者の運動と闘いが新たな重要性を持ってきているのだ。

元凶は日本帝国主義
沖縄問題の元凶は、日本帝国主義そのものである。日本帝国主義が存在する限り、沖縄問題の全面的な解決はあり得ない。沖縄問題の解決=沖縄の歴史的解放は、日本帝国主義を打倒する以外にないのだ。日本帝国主義打倒こそ、沖縄問題の唯一の解決の道である。
そのための主体的条件は、沖縄人民が、日本帝国主義による沖縄差別にたいする糾弾を貫いて、「本土」の労働者人民と連帯し、「本土」の労働者人民は沖縄人民と血債をかけて連帯して、日本帝国主義の沖縄差別と闘っていくことである。
沖縄と「本土」の労働者人民が、こうして階級性を復権し、一体性を形成して闘う団結を強め、うって一丸となって日本帝国主義を打倒していくのだ。

沖縄問題を否定する安田派
安田派は、今日、沖縄問題が現実に存在していることを否定・隠蔽し、彼らのいう「階級的労働運動」の中に埋没させ、蒸発させてしまっている。
『前進』2386号の沖縄県委員会論文では、帝国主義論に踏まえた沖縄問題の把握という階級的視点が完全に欠落している。日本帝国主義との関係で沖縄問題として措定する視点が全くない。否、そもそも沖縄問題が現実に存在していることすら否定し、抹殺してしまっているのだ。
したがって、沖縄の様々な闘いを沖縄闘争として闘うのではなく、彼らのエセ「道州制粉砕闘争」に解消し、すり替えている。のみならず、沖縄「単独州」問題を「独立論」と同一視して、帝国主義の「大国主義」的傲慢さをもって「批判」し、実質的には帝国主義と同じ差別・分断の立場から、沖縄人民の闘いに敵対しているのだ。
実際、安田派は、辺野古闘争から完全に召還して、エセ「階級的労働運動」にのめり込むばかりか、辺野古闘争の破壊に血眼になっている。断じて許すわけにはいかない。

「環境影響評価」とは
「環境アセスメント」に同じ。略して「環境アセス」。
環境影響評価法(99年6月施行)は、環境アセスの手続き等を定めるとともに、その結果を事業内容に反映させることにより、事業が環境の保全に十分配慮して行われるようにすることを目的とする、とされている。
環境アセスの対象は、飛行場など大規模公共事業13が指定されている。
環境アセスは、以下の手順で進む。
・事業者は、環境アセスをおこなうための「方法書」を作成する。方法書とは 現地調査を行う前に、文献、聞き取り等から調査、予測及び評価を行う環境項目や、その手法等について、とりまとめたもの。
・調査、予測、評価を行った結果を「準備書」に取りまとめる。
・準備書にたいする住民の意見、及び知事意見を踏まえて、「評価書」が作成される。

(行動方針)

「5・15平和とくらしを守る県民大会」
 とき:5月17日(日) 15:00〜17:00
 ところ:宜野湾市 海浜公園屋外劇場
平和行進 5月15日(金)〜17日(日)
 本島 東・西・南の3コースおよび宮古・八重山コース

5面

環境アセス(辺野古新基地)
への意見書を出そう

沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団(東恩納琢磨代表)から、意見書運動が呼びかけられている。
沖縄防衛局が、4月2日から5月1日まで、辺野古への新基地建設に伴う環境アセス準備書の公告縦覧を、沖縄県内の5カ所とウェブサイトで行なった。 この環境アセスメントは、何が何でも基地をつくるための調査だ。だから都合のいいデータだけ記載し、都合の悪い事実は隠蔽している。しかも、5400ページもあり、たった1カ月ではほとんど読めない。デタラメをやっているから批判を恐れ、封じようとしているのだ。そして、これをもって工事に着手しようとしている。
ここで準備書に対して、多数の意見書が集中されることは、手続きをめぐる攻防において、「環境影響評価審査会」に対して力になる。
提出期限が15日に迫っている。アセス監視団が集約してから提出するので時間がない。大至急、意見書をアセス監視団に集中しよう。
以下に、アセス監視団からの呼びかけを掲載する。また左別欄に、環境アセス準備書の批判点を整理した。
◆ ◆ ◆
辺野古に基地をつくらせないために、環境アセス準備書への意見書を出そう。どうかみなさまの周囲に呼びかけをお願いします。
意見書は、事業主体である沖縄防衛局に対して提出するものですが、直接提出してしまうと、概要だけが環境アセス審査会に提出されます。これでは一人ひとりの意見が取捨されてしまいますので、意見書そのものを私たちで集約し、審査会委員の方に直接読んでいただくようにします。
意見書の用紙は指定されてはいません。「普天間飛行場代替施設建設事業に係わる環境影響評価準備書に対する意見書」という表題と、氏名・住所と共に、あなたの意見や思いを書いてください。数行の短い文章でも結構です。 意見書は次の宛先までお送りください。
沖縄ジュゴン環境アセス監視団が、すべてコピーをとらせていただいた上で、責任を持って沖縄防衛局に提出いたします。
郵送:〒905‐2171
名護市字辺野古 座り込みテント村 意見書係
FAX:098‐885‐0866(アセス監視団)
eメール:folkswind@yahoo.co.jp
※おそくとも今月10日までに、アセス監視団へ届けよう

環境アセスメント準備書の問題点
5400ページを費やして「環境に影響なし」
海兵隊訓練基地の実態が明らかに

民意に反し正当性なし

準備書は、06年日米合意に基づいているから正当だと繰り返している。しかし沖縄の民意は辺野古に新基地をつくることに反対である。民意に反する事業に正当性はない。

アセス前にシュワブ内で事業に着手

まだアセス手続き中なのに、キャンプシュワブ内では、5施設の建設工事が行なわれている。これは重大なアセス法違反だ。

アセス法違反の事前調査で評価

国は、反対運動を力で威圧しながら、事前調査を07年6月から08年3月まで実施した。この調査は、方法書が決定する前で、アセス法によるものではない。にもかかわらず、この調査の結果を準備書に持ち込むのはアセス法違反だ。

海砂採取をアセス対象外に

埋め立てのために1700万立方メートルもの海砂を使うとしている。これは06年度の沖縄県における海砂採取量の12・4年分に相当する。海砂の採取は、砂浜をやせ細らせ、台風時に災害をもたらす。ジュゴンの餌を減らし、漁業や観光業への影響も大きい。
それなのに海砂採取をアセスの対象にしていない。これではアセスメントにならない。

3個体のジュゴンで「影響ない」と断定

準備書は、調査で確認されたジュゴンが嘉陽沖の1個体と古宇利島沖の2個体であるとして、この個体への影響のみを検討している。
しかし、ジュゴンは個体群として生息するのであり、個体群の生息と再生産にどう影響するかを検討しないのは、非科学的である。

辺野古沿岸域の消滅について評価なし

辺野古沿岸域は、沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」で「厳正な保護を図る区域」に分類されている。新基地建設は、ウミガメ産卵場所やサンゴ、藻場などの辺野古の自然をことごとく消滅させる。沖縄県では、「復帰」後、すさまじい速度で埋立事業が実施された。しかも有効利用されず放置され、雇用機会も生まれていない。沖縄では、自然のままの海岸線や湿地は希少になった。その残された貴重なサンゴの海が消えようとしている。
辺野古沿岸域が、沖縄にとってどれだけ貴重な自然で、その消滅が沖縄に意味するものは何かという評価が必要だ。しかし、準備書は、その評価をしていない。

台風時の調査なし

準備書は、方法書で計画が示されていた台風時の状況把握がなされずに作成されている。しかもその把握なしになぜ準備書が作成できたのかについて説明がない。

海側滑走路のタッチアンドゴーの記述なし

準備書は、V字型の滑走路で周辺地域を回避するので騒音は軽減されるとしている。
しかし、普天間飛行場で1日300回も行なわれているタッチアンドゴー訓練を新基地でも行なうのは間違いない。それが、住民地域の上空を飛行しないというのはあり得ない。
しかも、準備書は、陸側滑走路でのタッチアンドゴーの騒音コンターは示されているが、海側滑走路については記述がない。

オスプレイ配備を隠ぺい

垂直離着陸機オスプレイMV22の沖縄配備が、「SACO最終報告草案」(96年12月)、米軍の「07年度海兵航空計画」などで明記されている。しかし、準備書には、オスプレイ配備の記述がなく、沖縄防衛局は「配備の情報は得ていない」としている。
欠陥機で危険なオスプレイの配備を隠してアセスが行なわれている。アセスの前提が間違っている。

200メートル岸壁は軍港

準備書では、約200メートルの岸壁を整備するとし、しかし「軍港建設は考えてない」という。全長200メートル前後の強襲揚陸艦や輸送揚陸艦が着岸可能だ。

ヘリパッドや護岸を後出し

準備書には、4つのヘリパッド、船舶が接岸できる護岸、給油エリアなど、方法書に記載のなかった新たな施設名が並んでいる。
準備書で見えてくることは、物資を運ぶ港湾と飛行場が一体化し、給油エリアや弾薬庫もあり、他の基地に頼らず独立で機能する基地だ。普天間飛行場よりも機能強化は明らか。 シュワブ、ハンセン、北部訓練場、伊江島飛行場と一体の訓練をおこなおうとしているのだ。米軍再編で沖縄は、グアムと一体で、戦闘要員のための訓練基地、訓練された戦闘部隊の兵力供給基地としての性格をますます強める。
ヘリパッドも護岸も事業内容の変更・追加で、アセス法に従えば、方法書からやり直さなければならない。

6面

中川ともこ・宝塚市政を生み出した「市民の会」のリーダー 木下達雄さん(浄土宗大林寺住職)に聞く


4月19日の宝塚市長選で、市民運動出身で国会議員でもあった中川ともこさんが、当選しました。この選挙運動のリーダーをつとめた、浄土宗大林寺住職の木下達雄さんにお聞きしました。
「慰安婦」決議・尼崎証言集会で発言する木下達雄さん(4月25日)

―二代の市長が汚職で逮捕された宝塚市で、市民運動出身の中川ともこさんが市長に当選しました。なぜ勝利することができたのでしょうか
二代続いた市長の汚職に対する市民の怒りが背景にある。表面的には「だれが市長になっても同じ」という一種のあきらめムードがあるようにみえるが、底流には「今度こそクリーンな市長を」、また、根本的に市政を変革したいという声の高まりがあることを見ないといけない。勝因は、@「終始楽しく闘えた」という中川候補本人の奮闘、A宝塚市長選初の取り組みといえる市民を前に出し、政党・市議が後で支える共同の陣形、B上原公子前国立市長、秋葉忠利広島市長など他市からの応援と市内勢力が渾然一体となって支援を拡大、C唯一の女性候補で「宝塚に女性市長を」のポスターが功を奏した、D本人の知名度に加え、宣伝カー、ビラの駅頭配布、ポスターはり、電話かけなど宣伝戦で他候補を圧倒、E保守票の分散―などだ。

―市民運動の力だけでは勝利はむずかしいと思いますが
宝塚市では、先々代の渡部完市長のとき、学校選択制の導入に反対する運動と「つくる会」の歴史教科書の採択を許さない闘いの過程で、「一致バラばらの会」「みらいネット」などの市民運動、社民党、共産党、「とめよう戦争への道! 百万人署名運動」などの共同行動が実現し、みごとに勝利へ導いた実績がある。その後、憲法改悪反対の共同行動のネットワークとして「憲法を改悪させない! 宝塚ネットワーク」(略称憲宝ネット)が21団体を結集して生まれている。憲宝ネットでは、市役所前の末広中央公園を憲法フェスティバルの催しに使えるよう前市長の時から交渉している。中川市長は、憲法を守り活かす考えなので、公園使用許可問題も近く決着をみることだろう。共同の力、ネットワークの力をさらに豊かなものにしていきたい。

―当選後の課題は多いと思います
駅前再開発失敗の問題、市立病院の赤字経営など問題は山積みだ。しかし、市民や市の職員と対話を重ね、市民の知恵を寄せ集めれば必ず解決の道は開かれる。とりあえずは、市長就任後100日以内に、弁護士や学者などをまじえ「外部調査委員会」を設置し、汚職を根絶する。同じく小学校区単位で市民との対話集会を開始する―など「市民といっしょに」の公約を守り、実施することだ。

―宝塚では市民運動が健在で、慰安婦問題でも全国で初めて市議会決議が上がりました
2008年3月に、宝塚市議会は、全国で初めて「日本軍『慰安婦』問題に対して、政府の誠実な対応を求める意見書」を全会一致で可決した。これが導火線となり、08年6月には東京都清瀬市議会で、同年11月には札幌市議会で、09年3月には福岡市議会で「慰安婦」問題に関する意見書が可決された。宝塚市では1980年代に「朝鮮問題を考える宝塚市民の会」が発足。その後、教組や市職労、解放同盟と共同で勉強会や映画会をしてきた。さらに1990年代には、在日韓国・朝鮮人の老齢無年金問題の署名活動を、総聯と民団の宝塚支部が一緒になって取り組んだ。2004年10月に起きた市制50周年差別事件が契機となりできた「劇団水曜日」のメンバーが主力になり「慰安婦」意見書可決を実現できた。ねばり強い活動の蓄積があってのことだ。この運動をさらに各地に広げたい。

―木下さんは死刑廃止の運動や、憲法9条を守る運動を行っていらっしゃるそうですが
私も多くの人々と同様、他人を殺すのも、他人から殺されることも御免こうむりたいと思う人間だ。だから戦争と死刑制度には、当然反対する。寺の住職だから特にこうしたことに関心があるわけではない。住職である以前に、一個の人間として、自らのいのちも、他のいのちもできるだけ大切にしたいと願う。一人一人にとって、かけがえのない、尊厳に満ちたいのちだからだ。いまの日本は、凶悪犯罪が実際は減っているのに、死刑や無期懲役刑は増加している。5月21日からは裁判員制度も実施される。裁判員制度は、市民に市民を裁かせるという仏教者としても承認できない希代の悪法(制度)だ。粉砕あるのみだ。憲法9条を守るということは、自衛隊の海外派兵を許さないだけでなく、平和な世界を築き上げていく、ということだ。
労働者階級の階級的な労働運動と連帯していく中で、死刑反対、裁判員制度反対、改憲反対の声を広げていきたい。

―「マルクス主義原典を読む会」の活動も、毎月行っているそうですね
2001年の9・11は、衝撃的だった。現代社会の解明と「何をなすべきか」を実践的に把握する上からもマルクス主義を学習し直すことが必要だと直感した。マルクス主義は時代遅れなのではなく、復権できていないだけだ。2003年から有志で『共産党宣言』『ゴータ綱領批判』『フランスの内乱』『ドイツ・イデオロギー』と読み進めている。ことし8月30日には、大林寺で『資本論』第一巻に関する講演会を計画している。住職として、念仏をひたすら称え、往生浄土を願い求めるとともに、階級社会の廃絶をこの穢土(浄土に対して、凡夫のいるけがれの多い国土。現世)で求めることは自分の中では矛盾しない。「お寺でマルクス主義の学習ってオモロソー」と思う人は、ぜひ参加してほしい。

きのした たつお氏

1949年生まれ。兵庫県宝塚市・浄土宗大林寺住職。平和憲法を広げる兵庫県民会議・阪神代表、日本軍『慰安婦』被害女性とともに歩む大阪・神戸・阪神連絡会代表などをつとめる。

映画案内

「鶴彬(つるあきら)こころの軌跡」

3月29日、石川県かほく市で「鶴彬 こころの軌跡」が、全国上映のトップをきって封切公開されました。この映画はプロレタリア川柳作家、鶴彬(1909〜1938)のたたかう一生を描いたドキュメンタリー(90分)です。神山征二郎が監督し、池上リョヲマ、樫山文枝、高橋長英、安藤一夫、角谷英次、河野しずかが出演し、日色ともゑがナレーターをつとめています。
3千万円の予算で、映画製作に賛同する人びとのカンパで作られました。まだ数百万円が不足しており、今後、全国的に上映運動を展開して、不足額(監督や脚本の支払い)を集めなければなりません。
この映画は鶴彬が詠んだ1300余句の川柳にその時代背景を織り込んで、当時の国家権力に抗して生き抜き、獄死を余儀なくされた人生を描いています。

激動期に生きた29年

鶴彬は、今から百年前、日露戦争(04年)から韓国併合(10年)へむかう09年に生まれ、8歳のときに父が病死し、5人の兄妹は伯父の養子になるという中で育ちました。
26年、鶴彬は17歳で大阪に出て町工場の労働者となり、2年後、一時帰郷して、全日本無産者芸術団体協議会(ナップ)高松支部(注)を結成し、特高警察につけ回されるようになりました。張作霖爆殺、治安維持法改悪(28年)、世界恐慌(29年)の時代です。
30年、21歳で徴兵され、金沢の歩兵七連隊に入隊しましたが、早々に連隊長質問事件を起こして営倉に入れられました。彼はひるむことなく隊内で日本共産青年同盟の機関紙『無産青年』を配布。2カ月目に発覚し軍法会議にかけられ、懲役2年の判決で、大阪の衛戍監獄につながれました。
獄中の4年間で、世の中は満州事変(31年)、5・15事件(32年)、小林多喜二拷問死(33年)、国際連盟脱退(33年)と、血なまぐさい時代を迎えていました。

治安維持法で逮捕・獄死

34年釈放後、活動を再開しましたが、時代はさらに悪化し、2・26事件(36年)、蘆溝橋事件、南京占領(37年)、国家総動員法(38年)、対米開戦(41年)へと向かっていました。37年12月、治安維持法で逮捕され、東京・野方署に拘留され、9ヵ月後に、腸チフスで、短い29年の人生を終えました。
29年の短い人生を送った鶴彬は、労働者階級としての闘いを実践し、侵略戦争に反対し、兵営の中でもたたかい、植民地支配に反対し国際連帯を詠いました。彼は川柳で表現するだけでなく、労働者の最先頭でたたかいぬいたために、治安維持法で逮捕され、獄死させられたのです。

鶴彬の川柳をいくつか紹介します。

肺を病む女工故郷へ死にに来る(1927)/血を吸うたままのベルトで安全デー(1935)/もう売るものがなく組合旗だけ残り(1936)/裏切りをしろと病気の子の寝顔(1936)/万歳とあげて行った手を大陸へ置いてきた(1937)
注:鶴彬の故郷、石川県河北郡高松町。現在は、かほく市の一部。