未来・第26号


                           未来第26号目次(2009年2月3日発行)
 1面  海自のソマリア沖派兵を許すな!海自に派兵準備を命令(1/28)
     自主営業中の京品ホテルに強制執行
     欧州全土で反失業・反政府のデモ

 2面  3・29三里塚へ闘いを開始 関西実行委旗開き(1/18)
     組合への支配・介入と闘う加古川郵便局・労働委審理はじまる
     関西合同労組が旗開き(1/18)

 3面  直撃インタビュー(第2回) 小多基実夫さん(反戦自衛官)に聞く
     助け合い力をあわせて闘おう 1・12被災地反失業集会

 4〜5面
     特集:オバマへの幻想をうち砕く
     世界支配と挙国一致(就任演説)
     侵略戦争すすめる布陣(閣僚人事)
     世界規模の戦争政策(軍事・外交政策)
     恐慌対策から戦争へ(経済政策)

 6面  (投稿)資本主義における戦争費用と経済危機
     (投稿)『中国における民族解放闘争の新たな段階』(『展望』3号)を読んで

 

海自のソマリア沖派兵を許すな 海自に派兵準備を命令−浜田防衛相(1/28)

政府は、1月28日、安全保障会議で、「海賊対策」を口実としたソマリア沖への海上自衛隊の派兵を正式決定した。これを受け、浜田防衛相が、同日、派兵準備命令を出した。
政府・与党は、@28日の決定を、自衛隊法82条「海上警備行動」に基づくとしている。A3月中の活動開始を目指して、広島県呉基地所属の護衛艦2隻(「さざなみ」、「さみだれ」)の派兵準備を進めている。B同時に、「海賊対策新法案」を、3月に国会に提出するとしている。

「海賊対策」は口実

「海賊被害」は針小棒大

国土交通省によれば、日本船舶関係の全世界での「海賊被害」は、07年にわずか10件、08年に12件(うちソマリア沖3件)。07年における被害船のうち、日本人が乗船していたのは1隻に過ぎない。
この程度の被害のために、重装備の自衛隊を派兵するというのだ。

イージス艦並の攻撃力

派兵準備に入っている「さざなみ」は、4650トンの巨大な護衛艦で、イージス艦並の攻撃力をもっている。主砲はイージス艦「こんごう」型と同じ127ミリ砲を搭載。また対空ミサイルと対潜兵器を一つにまとめた垂直発射装置を装備。また「さみだれ」は、4550トンで、ステルス性をもっている。
ボートで近づく「海賊」に、この攻撃力は不釣り合いだ。

自衛隊法からも逸脱

自衛隊法82条「海上警備行動」は、政府答弁でも「日本領海内を想定している」(河村官房長官・昨年12月24日)ものだ。しかも海上警備行動が発動されたのは過去に2回だけで、いずれも日本近海だった。
同法をもってソマリア沖まで派兵することはできない。とんでもない脱法行為であり、憲法違反だ。

対象は無限定

さらに今回の派兵では、「保護対象」を、「日本船籍」の船舶のみならず「外国籍船に積載されている日本の積荷」まで含むとしている。(※後注参照) 「日本の積荷」があるかどうかいちいち確認するわけではないから、事実上無限定だ。

武器使用の拡大

停止命令に応じない船舶にたいして攻撃をできるとしている。
派兵部隊の中には、海自の特殊部隊「特別警備隊(江田島)」を含むとされている。「敵」艦船を急襲し、乗員をせん滅し、制圧する部隊だ。そのために、防衛省は、実際の戦闘を想定し、ROE(交戦規則)を非公開で作成するとしている。
これは重大なエスカレートだ。PKO法やテロ新法、イラク特措法など、これまでの武器使用の基準は、「正当防衛・緊急避難」に限定してきた。今回それを一気に飛び越える。

撃沈・殺害も

さらに新法案では、「海賊船」を停止させるために船体を射撃する「任務遂行のための武器使用」にまで踏み出すという。船を撃沈し、乗員を殺害することを、法律で認めるというのだ。

ねらいは海外での武力行使と集団的自衛権の行使

激しい政治危機にあえぐ政府・与党が、ソマリア沖派兵に固執している理由はここにある。
@憲法の枠を越えるとしてこれまで抑えてきた「海外での武力行使」に踏み出すことだ。
Aしかも、「保護対象」を「外国籍船」に拡大することで、これまで憲法が禁じているとしてきた「集団的自衛権の行使」(個別的自衛権」の建前を超え、明確な侵略戦争の発動)に踏み切ろうということだ。

オバマの戦争に参戦

そして、政府・与党を突き動かしている大きな背景として、オバマの戦争がある。オバマは、「ソマリアからアフガニスタンまで」の地域・海域に、米軍の兵力を大規模に投入し、新たな戦争を展開しようとしている。【4〜5面参照】
日帝は現在、アフガニスタン侵略で、インド洋上に海自の艦船2隻を展開している。くわえて今回、ソマリア沖に展開することをも狙っている。
かつて帝国主義列強が、「権益保護」「邦人保護」を口実に、派兵を競い合い、それが世界戦争に発展していった歴史が繰り返されようとしている。
全国各地で「ソマリア沖派兵阻止・新法制定許すな」の闘いをまきおこそう。
※注:日本の商船は約2200隻あるが、ほとんどが「便宜置籍船」(船籍は外国〔パナマやリベリアなど〕だが船主は日本企業)で、日本籍はわずか95隻。自衛隊法の海上警備行動で対象にできるのは日本籍の船だけ。だから自衛隊は、早く新法を作れと要求している。

自主営業中の京品ホテルに強制執行
資本と権力の暴挙を許すな(1/25)

1月25日早朝、東京地裁執行官、警視庁の私服警察官、機動隊、ガードマンなど、約千人が、品川駅前の国道まで封鎖して、職場を守りぬいている京品ホテルの労働者に襲いかかった。
当該と支援の仲間は、前日から徹夜で防衛態勢をとってむかえ撃った。3百人近い労働者がスクラムを組み、体を張って、機動隊を押し返す。歩道も車道も人だかりで溢れた。30分も押し合いが続いた。
スクラムで機動隊を押し返す労働者(1月25日京品ホテル前)
攻めあぐねた機動隊が一人ずつゴボウ抜きにして、9時30分に突入してきた。
当該支部の金本委員長は、「これが日本の法律か。人を守るための警察がこんなことをして許されるか。このまま負けない。必ず戻ってきます」と、怒りと涙で訴えた。
強制執行は、身勝手な廃業と解雇の不当性を一層明らかにした。ユニオンをホテルの建物から排除しても、何の解決にもならない。闘いはますます激しさを増す。労働者はあらゆる創意と工夫で闘いぬき、必ず勝利する。

「ここで負けるわけにはいかない」

私たちは、あの千名の警察官や機動隊によって、まるで私たちが、たてこもっている凶悪犯のようにたたき出されて、悔しいです。まだ怒りが収まりません。しかし、私たちの後に続く、夢と希望をもって社会に出て行く若者のためにも、ここで私たちが負けるわけにいかないんです。京品支部組合員は、みなさんの力を借りながら、最後の最後まで命をかけて闘っていきます。世の中の正義とはなにか、人としての正義とはなにかをすべての人にわかってもらいたいと思います。みなさんの力が私たちの最大のパワーです。どうか私たちと最後まで一緒に闘ってください。
〔金本委員長(東京ユニオン京品ホテル支部)の「闘争100日突破!連帯集会」(1月28日 都内・総評会館)での発言〕

欧州全土で反失業・反政府のデモ

フランスでは250万人参加

フランス・トゥールーズのデモ(1月29日)

欧州全域で、反失業と反政府のデモが広がっている。各国政府がうちだす危機対応策に批判が噴出している。とくに中東欧では、デモが暴動に発展している。フランスでは、サルコジの三周遅れの新自由主義改革にたいし、巨大なノンがたたきつけられている。パリは、1968年5月の情勢に近づきつつある。(表の日付はすべて1月)

   主要な国・都市    デモ参加者数
  アイスランド(24日)    6千人
  ラトビア(13日)    1万人
  リトアニア(16日)    2万人
  ブルガリア(1月中旬)    フランス(29日)
    ・パリ    60万人
    ・マルセイユ    30万人
    ・トゥールーズ    10万人
  スペイン(18日)    3・5万人
  ギリシャ(28日)    数千人

2面

3・29三里塚へ闘いを開始 関西実行委旗開き(1/18)

参加者全員で反対同盟歌を合唱、09年のたたかう決意を固める(1月18日神戸市)

三里塚決戦勝利関西実行委員会(以下、関実)の09年旗開きが、1月18日、約80人が参加して、神戸市内で行なわれた。
14日に亡くなられた三里塚芝山連合空港反対同盟本部役員の三浦五郎さんに黙祷。安藤眞一・関実事務局次長の司会で、「久しぶりに三里塚から北原事務局長、そして市東孝雄さんに参加していただきました。市東さんに農地を明け渡せという裁判に対する闘いを開始しよう」と開会した。

関実の全力を傾けるとき

永井満・関実代表世話人は「今年は市東さんの農地をめぐる決戦です。皆さんとともに、私は全力をあげて三里塚の闘いに臨み、またそれぞれの闘いに全力を尽くします。関実30年の全力を傾けて闘うときがきたと決意をしております」とあいさつした。

北原さん・市東さんが決意と訴え

反対同盟の北原事務局長は、労農連帯を強調し、市東さんは、農地死守の魂を訴えた。三里塚闘争の原点が鮮明に提起され、勝利の展望がしめされた。(北原さん、市東さんの発言要旨=別掲)
88歳、元気な山本善偉・関実世話人が、「終始、三里塚をわが闘いとしてきた」と乾杯の音頭。さらに決意とあいさつが続く。
中田潔・部落解放同盟全国連合会書記長は、「北原さん、市東さん、お二人が来られるということで、ぜひともと駆けつけた。全国連は、三里塚闘争とともに進み、差別と闘い、部落解放をみなさんとともに闘ってきた。市東さんの農地取り上げに対する怒りと想いを聞き、関実の一翼を担って闘う。3・29現地集会に全力でとりくむ」とあいさつ。
被災地雇用と生活要求者組合の長谷川正夫さん、泉州住民の会の国賀祥司さん、百万人署名運動・兵庫県連絡会の梶原義行さん、関西合同労組・関西トランスポート分会の報告、全学連の決意と続いた。

3・29三里塚現地へ

元気なギターの演奏、劇団ほうき星による寸劇とつづき、最後は北原さんにも登場を願い、熱演、激演で盛り上がる。
80人が円陣を組み、「大地を打てば響きあり・・・空港阻止のむしろ旗・・・」の大合唱で締めくくった。  (三木博史)

三里塚芝山連合空港反対同盟事務局長 北原鉱治さん

労働者・農民が力を合わせて闘おう

14年前を思い出します。あの大震災で多くの人びとの命が奪われました。反対同盟は、わずかばかりの救援をおこなった。形は復興しましたが、いまの状況を見てほんとうにこれでいいのかという思いを新たにする。多くの労働者を非正規雇用に追いやりながら、政府は無責任きわまりない。民衆の命などまったく顧みない。労働者、民衆一人ひとりが決起しなければならない時代がきた。
労働者、労働組合も多く来ている。労働者と農民が結合しないかぎり、安定した社会・将来はない。労働者が機械を操作し、農民が命の糧である食料を生産する。そこにはもはや資本はいらない。政府は、もう信用できない。食料は輸入すればいいと言って農地を潰している。民衆が安心できる社会にするためには、自ら闘わねばならない。
私は、44年間、三里塚闘争をたたかってきた。労働者には労働者のたたかいがある。農民には農民のたたかいがある。そこに共通するものが必ずある。それがいま、問われている。
三里塚闘争をわがたたかいとして集まっている皆さんに会い、私はうれしい。これからも未来のためにたたかいぬく。労働者・民衆の皆さんとともに、必ず勝利を実現する。

反対同盟・敷地内農民 市東孝雄さん

農業と闘争を一つに

私は、三里塚(実家)に戻ってやっと10年。三里塚と関西実行委員会との繋がりを、常々、北原さんたちから聞いている。30年というのは、本当に長いたたかいの結びつきだ。私もまだまだ、これからやるぞと思っています。
私の農地問題の三つ目の裁判が2月3日から始まります。私は、これらの裁判を畑を耕しているときと同じ現地のたたかいと一つのものとしてやっています。いつも関西から傍聴にきてもらっているが、自分が関西にきてみると(距離の遠さを実感し)、関西から千葉へ来るのはなかなか大変なんだと思う。そのたびに勇気づけられる。
現地は、なかなかきびしい。しかし、だれも屈するものはいません。昨年、永井さんが「3千人の集まりを実現しよう」と檄を発せられた。今年も3・29、関西から遠いですが、よろしくお願いします。

民営化会社の組合への支配・介入と闘う 加古川郵便局・労働委員会公開審理はじまる

支店長の証人採用かちとる

加古川郵便局・労働委員会は、事前の調査が積み重ねられ、証人調べの日程が決まりました。
郵便事業会社加古川支店長の梅澤を証人として引きずり出しました。画期的なことです。
会社側は、処分を行った張本人の梅澤をかばい立てして証人には出さず、中嶋総務課長のみで済まそうとしてきました。処分権者ではなく、処分事案を見ていた訳でもない単なる伝達人に過ぎない中嶋では、証人として不適格なのは明らかです。
処分権者を証人に出さないというのは、民営化以前に不当処分を争う場だった人事院公平審査委員会で、当局側が通例としてきたやり方です。人事院は、いかにも処分追認機関らしくそれを認めてきました。
今回、申立人からの梅澤の証人申請に対して、労働委員会としても、梅澤を証人として出すように強く求めて、事業会社を説得したのです。

原則的な組合運動を認めない

事案は、梅澤が無理な集配ワンフロアー化をごり押ししたことに始まっています。
2つの階に分かれていた集配課(郵便を配達する部署)を効率化するのだと言って、1階に集中したのですが、狭苦しくなり、仕事もやりづらく、郵便事故が予想されたので、組合員の大半が反対しました。支店との意思疎通も不十分なので、組合は実施延期を求めましたが、梅澤は組合を無視したのです。そればかりでなく梅澤は組合役員にたいする挑発をくり返し、処分を乱発しました。
さらには、組合機関紙での梅澤批判をやめないならば、組合掲示板も事務所も取り上げると最後通告し、組合機関紙の配布までも制限しようとしたのです。労働組合にとって死活問題です。
民営化会社では原則的な労働組合運動など認めないということなのです。
神戸・長田局の「日本郵便非正規ユニオン」との労働協約締結を拒否していることにもそれは現れています。
いよいよ2月12日から証人調べが始まります。不当労働行為を弾劾する多くの傍聴参加をお願いします。 (通信員 MT)

審問予定

◆主尋問
○2月12日(木)13時30分〜15時40分
 ・申立人側証人
○2月24日(火)13時30分〜16時10分
 ・申立人当事者 江渡績前分会長
 ・会社側加古川支店 梅澤信義支店長
◆反対尋問
○3月23日(月)13時30分〜16時
 ・申立人側証人
○4月14日(火)13時30分〜16時30分
 ・申立人当事者 江渡績前分会長
 ・会社側加古川支店 梅澤支店長
◆最終陳述
○6月2日(火)13時30分〜14時
▼場所:兵庫県庁3号館8階労働委員会室(県庁の東端の建物。地下鉄兵庫県庁前すぐ。阪神、JR元町駅から徒歩で北に10分)

関西合同労組が旗開き(1/18)

1月18日、西宮勤労会館で、関西合同労働組合の09年旗開き・春闘討論集会が、組合内外から45人が参加して開かれました。

思い切り闘う

「百年に一度」と資本家自らが言う大不況と、それによる非正規雇用労働者の大量首切りが始まっています。
昨年の春闘は、一部の者の妨害で充分に取り組めませんでしたが、そのことを執行部が反省的に総括し、09春闘を、組合員が団結し、思い切り闘うための号砲を鳴らす集会になりました。

09年の新たなたたかいに向け集った関西合同労働組合の旗開き(1月18日兵庫県・西宮市)

春闘方針の提起

石田執行委員長の年頭挨拶の後、蒲牟田書記長から、09春闘方針案が提起されました。 資本のリストラ攻撃に対して、一律大幅賃上げを対置して闘おう。非正規雇用の労働条件改善、派遣法の廃止を要求して闘おう。阪神大震災の経験を生かして、失業に反対する闘いを強化しよう―などです。

講演と活発な質疑

休憩をはさんで、日本労働法学会会員の大野さんに、「職場に団結を 地域に連帯を」と題して講演していただきました。
講演で特に印象に残ったのは、@「労働災害は労働者の責任では起こり得ない」のであり、職場で誰かが怪我をしたときには、この観点で職場点検闘争を行うべきだ。A3つの「間」―「時間」「空間」「仲間」―を確保しよう。ここが今の労働組合運動に欠けている。これが再生の鍵である―ということでした。
質疑応答と交流会では、現場の活動家から次々と質問が出され、大野さんが回答されました。また、争議分会から現状報告と決意が表明されました。
最後に、渡海副委員長が、「自分自身、職場の仲間、そして全世界の労働者階級のために団結して闘おう」とまとめを行ない、ガンバロー三唱で締めくくりました。(関西合同労組 T)

3面

直撃インタビュー(第2回) 小多基実夫さん(反戦自衛官)に聞く

72年の沖縄返還にともなう自衛隊の沖縄派兵にたいして、自衛隊の中から防衛庁長官に中止要求を突き付ける。その翌日の沖縄闘争の集会に制服で登場し演説。懲戒解雇処分を受ける。以降、自衛官の人権擁護と隊内の民主化、反戦反軍闘争の先頭に立つ。著書『自衛隊の中に反戦のなかまを』など。(写真は04年2月)

―麻生内閣のもと、自衛隊のアフガニスタン本土・ソマリア沖への派兵がたくらまれていますが。
ソマリア沖への駆逐艦(自衛隊では護衛艦と呼称)派兵は、関心が高まらないうちにやってしまえと、現行法のまま強行しようとしている。アフガニスタンへの陸上自衛隊出兵はさらに大問題です。
小泉・安倍・福田・麻生と続く、侵略出兵のエスカレートを許してはなりません。
―ブッシュの8年が終わり、オバマの時代になりましたが、米国の世界戦略は変わるのでしょうか。
マスコミ等でオバマ政権への期待が煽られていますが、それは幻想だと思います。
オバマはイスラエルの蛮行にたいして、何のメッセージも送らなかったばかりか、大統領に就任するや即座にこれを、「自衛権の行使」と全面的な支持を打ち出しました。
泥沼に陥ったイラクからの地上軍の撤退は打ち出しましたが、その兵力をアフガニスタンに投入するという戦争拡大を公言しています。「テロとの戦い」などと称して、非戦闘員への無差別大量殺害を一つの特徴とするこの侵略戦争を、世界中に拡大するという点では、ブッシュ政権と本質においてそれほど違いはないと思います。
―ブッシュの時代に、自衛隊は多数の部隊をイラクに派兵しました。自衛隊内部の隊員の意識の変化をどうお考えですか。
ブッシュの戦争と一体となり、自衛隊を大量に戦場に派兵した「実績」をつくった小泉以降の自公政権を弾劾する必要があります。それまでのPKOという形式をとった小刻みの派兵から、戦場に大量に派兵したという事実は、自衛隊員の中に「海外に行くのは当たり前」という気運を作ったと思います。
戦時の軍隊へ現実的に踏み出したことは事実ですが、しかし、弱点も露呈しています。戦争を戦う思想、死生観というものが自衛隊ではいまだ形成できていない。その表れとして、自衛官の大量の自殺、PTSD、薬物依存、いじめ(虐待、リンチ)などが目立って増え、自衛隊当局ですら、問題解決に奔走せねばならないところに来ています。
―日米軍事一体化の実体としての、PAC3(ミサイル防衛ミサイル)の配備が進んでいますが。
イラク派兵と並ぶ最大の問題が、PAC3の全国への配備です。昨年は首都圏、今年は中部・関西、来年は九州へと配備が進みます。これを今後の反戦運動の基軸にする必要があります。
なぜかと言えば、このPAC3の配備は、ここ数年、執拗に行われてきた「北朝鮮の脅威」「北朝鮮によるミサイル発射」といったキャンペーンをさらにエスカレートさせ、実際に自衛隊が国民を戦争の論理で動員し、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を射程にした軍事作戦に具体的に入っていくからです。しかもそれが一時的なものではなく、日本と対立する関係で北朝鮮という国が存続する限り永遠に続けられるのです。
さらに、PAC3はMD(ミサイル防衛)計画の一環なのですが、このMD計画というのは、米軍の独占する偵察衛星情報が全システムの根幹をなしており、この戦争体制の発動は、米軍の指揮に組み込まれるということにほかなりません。
沖縄では、06年に米軍・嘉手納基地にPAC3が配備(米陸軍が運用)され、それ以降、自衛隊のPAC2部隊が米軍の演習に狩り出されるという、一体的運用が始まっている。
―昨年自衛隊内外を大きく揺るがした、田母神論文事件については。
田母神の論理はデタラメです。彼は航空自衛隊の最高指揮官である幕僚長で、空自の対北朝鮮最前線基地である小松基地(石川県)の元司令官でもありました。その田母神が、全国の幹部自衛官に働きかけ、97人(うち62人が小松基地所属)が同趣旨の論文を執筆・応募しています。
サマワで「駆けつけ警護」を画策した佐藤元隊長(現参議院議員)やこの田母神らを先頭に、自衛隊の政治行動・国軍化が画策されています。彼らの手口は、日頃から「仮想敵国」をつくり、一触即発の事態をあえて作り出して、政治のヘゲモニーを奪うやり方で、戦前の陸軍将校などにみられた政治的軍人の常套手段です。
シビリアンコントロールのことも、例えば守屋次官(元、汚職で逮捕)のような奴の言うままになっていればいいという訳ではありません。労働者の闘いと連帯した隊内からの兵士の闘い(監視、内部告発ということも含めて)こそが求められています。
―小多さんが72年に自衛隊内から決起して37年になります。一貫して反軍闘争に取り組んできた気持ちをお聞かせ下さい。
いま、田母神や佐藤らは自衛隊の実権をとろうとして焦っています。しかし、佐藤の「駆けつけ警護」が典型的ですが、彼らは、自分の出世や右翼的信条を満足させるために「戦争を作り出す」「国を戦争に引きずり込む」、そのためには自分の部下である自衛官を平気で「人柱」にすると公言してはばからない輩です。こんな奴等の下に20数万人の自衛官が一体化するわけがありません。
日本においては、自衛官とその家族こそがいま最も平和を望んでいるといえます。その人たちに呼びかけて、その危機感を反戦運動の中で爆発させていきたい。「兵士は立ち上がって、こういう戦争屋どもと闘わなくては、もう生きていけない時代なのだ」と、自衛官と家族に訴えたいのです。こういう戦争の時代にこそ、階級のために力を発揮したいと思って今まで闘ってきた、という思いです。

助け合い力をあわせて闘おう 1・12被災地反失業集会

阪神淡路大震災から14年目の1月12日、神戸市長田区で、被災地反失業総行動集会が140人の結集で開かれた。
集会の基調報告で、被災地雇用と生活要求者組合の蒲牟田宏事務次長は、この14年間を、「被災地の仲間は一番困っていて、助けを求めている闘う仲間を、みんなで支え合って共に生きぬいてきた」と総括した。

「家賃値上げやめろ」

被災地総行動の昨年の闘いの中心は、神戸市の番町と西宮市の芦原の住宅家賃値上げ反対の闘いだった。
番町の第二次裁判は、住民側敗訴という厳しい結果になり、芦原では、西宮市が家賃値上げに反対している住民を追い出す裁判をおこしている。
公営住宅をなくすという国と行政の攻撃だ。それを差別・分断を煽って強行している。
部落の同和住宅は、建てられた経緯が一般公営住宅とは全く違う。にもかかわらず、あたかも同和住宅が不当に安い家賃であるかのように、差別をあおっている。そうすることで、同和住宅の家賃の値上げにたいして、部落民と一般民が一緒に闘えないようにしている。そうしておいて、次には一般の公営住宅家賃を上げる。
神戸では、被災者が住む災害公営住宅もふくめ、4月から家賃値上げが実施されようとしている。
集会のメインスローガン「家賃値上げをやめろ」は、一般の公営住宅の家賃値上げにも反対しようという議論があって決められた。

寸劇「名月高取山」

神戸市外大名誉教授の家正治さんから、国際法の観点で居住権についての講演を受けた後、集会のハイライト、寸劇「名月高取山」が演じられた。

各団体から参加した老若男女の演者は、稽古時間も十分でないなか、力をあわせて演じた。台本から小道具まで、各団体の人びとの協力で作成した。演者の団結が感銘を与えた。 劇の最後の労働歌「がんばろう」に合わせた踊りでは飛び入りもあり、演者と参加者が一つになった。

全国の仲間に恩返しを

集会では、関西合同労組から、派遣切りなどによる失業者への炊き出しや、生活相談の取り組みの開始が報告された。
「被災地共闘の力が役にたつときがきた。受けた支援は、支援で返す。全国の仲間に恩返しをする」と被災地雇用と生活要求者組合の長谷川正夫代表は発言した。
失業反対の闘いを復権し、すべての闘いを憲法改悪反対の闘いに集約して、被災地共闘は前進する。 (関西合同労組H)

4〜5面

特集:オバマへの幻想をうち砕く

「チェンジ」を旗印にしたオバマが大統領に就任したが、その正体が早くもあらわになっている。オバマ政権は、グローバリゼーションを継続するとともに、世界規模の戦争を強行しようとしている。
ではチェンジはしないのか。いや、むしろブッシュの政策よりもエスカレートしている点で転換だ。挙国一致の国家総力戦で政策を遂行しようという点で、ブッシュより凶暴なのだ。

プロレタリアートが、オバマに期待できることは何ひとつない。全くの打倒対象だ。このことを、就任演説を中心に、閣僚人事、軍事・外交政策、経済政策から見てみよう

世界支配と挙国一致(就任演説)

就任演説の特徴は、@アメリカ帝国主義の没落とアメリカ社会の解体的危機に強い危機感を示し、A世界支配を再確立する意志を強く押し出し、B挙国一致の国家総力戦で内外の危機に対処する、とうちだした点にある。

危機を強調し挙国一致を叫ぶ

内外の危機をあげた上で、とりわけ、 「米全土に広まっている自信喪失」「米国の衰退は不可避という恐れ」という問題に、危機感を露わにしている。 アメリカ帝国主義による世界支配と階級支配のイデオロギー崩壊を問題にしている。
“アメリカのシステムと価値観こそが自由と繁栄をもたらし、それに優るものは世界中どこにもない”これをアメリカニズムと言う。アメリカ帝国主義は、このイデオロギーを、世界支配と国民統合の支柱としてきた。
しかし、イラク戦争敗勢とアメリカ経済破たんによって、支配の支柱をなしてきたアメリカニズムが崩壊し、アメリカ帝国主義は、社会の解体と内乱の危機、世界支配の崩壊と国際的な反米闘争の危機に、を叩き込まれているのだ。

責任のすりかえ

経済危機について、 「一部の人びとのどん欲さと無責任の代償」「新しい時代に準備をしてこなかった集団的な失敗」としている。
これは誰かを批判しているようでそうではない。危機の責任をごまかし、超階級的な問題にすり替えている。
この危機を作ったのは共和党ブッシュ以上に、民主党クリントン政権の下で金融の規制緩和を推進したルービンやサマーズなどであり、まさにその張本人たちが、いまオバマ政権の政策を立案し、閣僚になっているのだ。

挙国一致

「恐怖ではなく希望を、紛争と不一致ではなく目的の共有を」
挙国一致を訴えている。アメリカの危機を前にして、分裂や対立をしている場合ではない、国家の総力をあげて、「危機の解決」に当たるべきだと訴えている。
しかし、その危機をつくった張本人たちがその責任を全くとっていないのに、「目的の共有」などできるはずがない。

血塗られた歴史

アメリカ建国の歴史をひもといている。「無名の働く男女」が汗を流し、犠牲を払ってきたから成り立ってきたとしている。この建国の歴史と理念の下に、国民全体が、人種も階級も超えて再結集せよと扇動している。
しかしオバマの説く建国の歴史は、ウソで塗り固められている。
アメリカの歴史は、先住民の抹殺とアフリカ黒人奴隷の連行にはじまり、一貫して血塗られた歴史であり、それへの抵抗と闘争の歴史にほかならない。
虚偽の歴史観で国民統合を図ろうするのは、アメリカも日本も同じで、全く脆弱だ。

市場を賛美し新自由主義を推進

「新しい雇用を創造するだけでなく、成長の新しい基盤を築く」「市場が善か悪かではない。市場ほど富を生み、自由を広げる力を持つものはない」

柱は「成長」「市場」

オバマの経済政策の柱は、労働者の雇用や生活の防衛ではなく「成長」、すなわち、資本の利潤の増大だ。
「市場」を礼賛している。「市場」とは、実体経済から遊離したマネーが、投機と略奪をくり返し、利潤をむしり取りながら、世界中を駆け巡っている金融市場のことだ。これを、「富を生み、自由を広げる」として全面的に肯定している。
恐慌を引きおこしてもなお、金融を軸としたグローバリゼーションを推進するというのだ。

若干の弥縫策

「市場に対する監視」や「(雇用・保険・年金など)政府が手をさしのべる」「GDPの規模だけでなく、繁栄の広がり、意欲あるすべての人に機会を」とも述べている。
しかし、そこに具体性はなく、あくまでも市場の原理に任せ、資本の利潤拡大がうまくいけば、その恩恵も全体に広がるだろうという考え方が柱だ。それがあまりに格差・貧困・失業を広げすぎないように弥縫策はしておこうという話に過ぎない。

産業政策も経済理論も新機軸なし

「成長の新しい基盤を築く」というが、新しい産業政策や新たな経済理論をうち出しているわけではない。「道路、橋、送電網、通信網」などの公共事業は全く陳腐で、規模も小さい。財政危機の中でそれ以上出せない。

グリーン・ニューディール

「太陽、風、大地」という言及は、「グリーン・ニューディール」のことだ。これが新機軸のつもりなのだろう。
しかしそれは、「排出権(温室効果ガスを排出する権利)」を、市場で売買する環境ビジネスであり、世界中から余っているマネーを集めて、環境バブルを作るのが関の山である。

世界支配と世界戦争を決意

世界支配の再確立と世界戦争

「我々は再び先頭に立つ」「米国が新しい平和の時代をもたらすために、役割を果たさなければならない」
崩壊の危機に瀕している世界支配を立て直すのだという意志を強く押し出している。
そのためには、世界規模の戦争を避けることはできない。したがって、オバマの戦争は、ブッシュのそれよりも、質的にも量的にも大きく激しいものにならざるを得ない。
ブッシュは、支配階級内部の一致という点でも、国民の動員という点でも、同盟国の動員という点でも、全て失敗した。
そこからオバマは、以下に見るような事柄に言及しながら、ブッシュの失敗を必死になって乗り越えようとあがいている。

アメリカの憲章

オバマは、「建国の父たち」を語り、「憲章の理想」を語り、「その理想は今でも世界を照らしている」という。
「建国の父たち」とは、海賊や奴隷主、プランテーションのオーナーたちだ。彼らは、イギリス支配からの独立のために、「理想」を掲げてたたかった。しかし同時にそれは、殺戮と略奪、支配と抑圧を、その「理想」をもって正当化し、その「理想」を世界化する運動として展開された。
もはやそんな「理想」で、今日のアメリカ帝国主義の支配を正当化などできない。それは、プロレタリアートの運動とその思想である共産主義によって、すみやかに打倒・止揚されるべきものなのだ。

効果的な軍事力の発動

「深慮をもって力を行使すれば、その力が増す」
これは軍事力の発動に慎重なのではない。大義をはっきりさせて、軍事力を発動すればより大きな効果が得られるといっているのだ。

同盟国の動員

「国家間の協力と理解」、「強固な同盟」を、これまで以上に動員するといっている。
アメリカ単独の力では、世界を支配しきれないと見ている。だから、他の帝国主義を思い切って動員し、また、動員することで屈服させるということを戦略化している。

対テロ戦争の継続

「目的を達成するためにテロを使う者を打ち負かす」と「対テロ戦争」という名の侵略戦争を継続する決意をはっきり述べている。
しかし、オバマの戦争は、「対テロ戦争」という規模と枠をはるかに超えた戦争になっていくに違いない。

「多様性」の押しだし

「米国の多様性は強みだ」
アメリカの人種・民族や宗教・文化の「多様性」を、世界支配と戦争動員のイデオロギーにするとしている。
しかし、「多様性」とは、アメリカが世界中を侵略し支配してきた、その結果にほかならない。アメリカはそういう危機と矛盾を抱えこんでいる。 それを支配と動員のテコとして押し出したとき、むしろ、本格的な内乱と反米闘争に火を付けるのだ。

イスラムへの敵意

アメリカこそが「イスラム世界」を抑圧し、侵略してきた。にもかかわらずそのことを反省するどころか、「対立を助長したり、西洋に責任転換したり」していると、「イスラム世界」を非難している。
しかも、屈服すれば「手をさしのべる」が、そうでなければ力で叩き潰すと宣告している。

人民に犠牲と献身を要求

「政府ができることはやらねばならないが、結局は、米国のよりどころは、国民の信念と決意である」
オバマのいいたいことは、政府を当てにするな、自己責任でやれ、ということだ。
しかも、そのあとに、ハリケーン・カトリーナでの助け合い、ワークシェアリングを甘受する労働者、01年9・11のときの消防士の奮闘、子どもを育てる親の献身といった「美談」を挙げている。
しかし、これらの「美談」は、本当の原因や責任をごまかすものだ。この「美談」の背後には、帝国主義の侵略と戦争、資本の飽くなき利潤追求、政府による権利のはく奪と犠牲の集中という原因と責任が存在する。
オバマは、この原因と責任について追及も弾劾もしない。オバマは、資本家階級には何一つ犠牲も譲歩も献身も求めていない。労働者の献身性だけを称揚し、「アメリカにたいして、喜んで義務を引き受けよう」「それが魂を満たす」などと耳障りのいい言葉を並べている。
しかし、こんなご都合主義は、たちどころに化けの皮がはがれ、労働者階級の弾劾にさらされることは間違いない。

侵略戦争すすめる布陣(閣僚人事)

国務長官=ヒラリー・クリントン

「イランがイスラエル攻撃を考えるなら、イラン人を全員抹殺する」とインタビューで発言(08年4月)。イスラエルがヨルダン川西岸地区に建設した分離壁を、現地に赴いて礼賛(06年8月)。民主党内では、イスラエル・ロビーと軍需産業からの献金が飛び抜けて多い。

副大統領=ジョセフ・バイデン

上院外交委員会委員長時代、「フセインの大量破壊兵器」が事実無根であることを証言しようとした国連査察官を妨害し、イラク開戦の道を開いた。イラクを、クルド、スンニ派、シーア派の居住区に分割し植民地支配する論の主唱者。対ロシア強硬派で、ブッシュを弱腰と非難。グルジアのサーカシビリと反ロシアで意気投合。

大統領首席補佐官=ラーム・エマニュエル

イスラエルとの二重国籍。父親がシオニストのテロ組織に所属。下院でのイスラエル最強硬派の中心人物で、シャロン、ネタニエフといったイスラエルの極右政治家との関係が深い。パレスチナ人活動家にたいするイスラエルの暗殺作戦も完全支持。政府や議会でイスラエルに不都合な動きがあると、イスラエル・ロビーを動員して激しく行動。現在もイスラエル諜報機関との関係があるとされる。

国防長官=ロバート・ゲイツ

元CIA長官。レーガン政権では、旧ソ連の軍事評価を改ざんして軍拡の口実を作る。イラン・イラク戦争では、旧フセイン政権に化学兵器を供与した。ブッシュ(父)政権では、中南米の親米独裁政権を支え、パナマ侵攻、ハイチの政権転覆を指揮。インドネシアの反共スハルト政権を支える。91年湾岸戦争を推進。ブッシュ(子)政権で、イラク増派作戦を指揮。

国家安全保障問題担当大統領補佐官=ジェームズ・ジョーンズ

元海兵隊総司令官で、政治的には共和党大統領候補だったマケインに近い人物。NATO軍司令官当時、ロシアを包囲するNATOの東方拡大を推進。NATOの役割拡大を推進し、EU諸国をイラク戦争に引き込む。イラクからの期限を明記した撤退に強く反対。

国家安全保障次席補佐官=ジョン・ブレナン

CIA時代、イラク戦争の口実とした、「フセインの大量破壊兵器」のデッチ上げ工作に関与。CIAが世界中で実施している違法拘禁・拷問・(裁判所の許可もない)盗聴などについて、オバマにその「必要性の理解」を求めた。

中東問題顧問=デニス・ロス

オバマとイスラエル・ロビーをつなぐ仲介者。ネオコンとも緊密。「ワシントン中東政策研究所」の対イラン攻撃計画書の作成にも関与。オバマ政権の戦争政策の中心人物。

国連大使=スーザン・ライス

クリントン政権下で、国務次官補。シンクタンクの「ブルッキングス研究所」勤務時代、「国連憲章違反国には軍事力を一方的に行使する」として、対スーダン攻撃を扇動。「ワシントン中東政策研究所」の対イラン攻撃計画書の作成にも関与。対イラク経済封鎖を遂行したオルブライト元国務長官に近い。

外交顧問=アンソニー・レイク

ベトナム侵略戦争当時、キッシンジャーの下で、北ベトナム秘密破壊工作に従事。クリントン政権では、大統領補佐官として、ハイチのクーデターやユーゴ解体を指揮。

アフガニスタン・パキスタン特使=リチャード・ホルブルック

元国連大使。カーター政権時代、国務次官補として、マルコス、スハルト、全斗煥など、アジアの親米反共独裁政権を支えた。イランの脅威をあおる超党派グループ「団結してイラン核武装に反対する会」を立ち上げた人物。

中東特使=ジョージ・ミッチェル

元上院議員。クリントン時代のアメリカ中東特使。クロアチア・トゥジマン政権のセルビア人虐殺を支持。

世界規模の戦争政策(軍事・外交政策)

1、イスラエルによる大虐殺を完全支持

「はっきりさせよう。米国はイスラエルの安全を守るために全力を尽くす。イスラエルが自国を防衛する権利を常に支持する。民主主義と国際社会は、ハマスの脅威を容認できない」(オバマ1月22日 国務省演説)
食糧も医療も奪う封鎖を続けた上に、空爆と地上戦で、1300人以上を虐殺し、5400人以上を負傷させたイスラエルの行為にたいして、オバマがとった態度がこれだ。

2、イラクの半永久的占領を目指す

「イラクから撤退」のペテン

実は、撤退させるのは「戦闘部隊」だけ。イラク兵の訓練や補給支援、イラク国内の米国人保護を任務として「数万規模の兵員はイラクに残す」。(08年12月4日付 「ニューヨーク・タイムズ」)
さらに、ブラック・ウォーターなど、数万人いる民間傭兵部隊はまったく撤退しない。

「16カ月以内」は空約束

もともと「16カ月以内に撤退完了」という公約には、「現地司令官の勧告を聞いて」(08年12月4日付「ニューヨーク・タイムズ」)の条件が付いている。
1月21日のオバマの米軍への指示では、期限も明確にせず、「責任ある撤退」という曖昧な表現に後退している。

オバマはイラク戦争に反対してない

04年に上院議員になって以降、オバマは、ブッシュの提出するイラク戦争関連の予算・法案に反対した事実はない。
ブッシュのイラク戦争に対するオバマの批判は、「直面する真の敵からわれわれの目をそらすから」(08年7月3日選挙演説)。これは、アフガニスタンの戦局の方がイラク以上に危機的なのに、ブッシュはそれを見すえていないという意味だ。

3、アフガニスタン侵略戦争を激化・拡大

戦局に危機感

「現状は危機的だ。死をもたらす反政府活動が人びとに深く根を張っている。政府は基本的な行政サービスも行えていない。アフガニスタンとパキスタンに焦点を移し、本腰を入れて問題に取り組む覚悟だ」(オバマ 1月22日 国務省演説)。

アフガニスタンに2万人増強

米海兵隊司令官が、1月23日、イラクから帰還する2万2千人の海兵隊から、最大2万人をアフガニスタンに投入すると発表した。(アフガニスタン駐留の米軍は現在3万4千人、うち2千2百人が海兵隊)
また、アフガニスタンへの増派準備のため、米中央軍の幹部が、タジキスタン、トルクメニスタン、カザフスタン、キルギスタンを、最近、訪問している。

アフガニスタンで侵略作戦を遂行する米軍

パキスタンに攻撃を拡大

1月23日朝、パキスタンで、プレデター無人偵察機がミサイルで村を攻撃し、18人を虐殺した。ペンタゴンは、この作戦について、オバマ大統領も了解しているとした。

拷問禁止はウソ

グァンタナモ収容所の閉鎖や拷問の禁止の大統領令に署名したと大きく報じられているが、その大統領令には、“テロ阻止のための情報収集が必要な場合は、戦闘教範から逸脱した尋問方法も容認する”とある。つまり、拷問も認めるということだ。

ソマリアからアフガニスタンまで

オバマは、「ソマリアからアフガニスタンまで攻勢のために展開する21世紀型軍隊」の創設を提唱している。(『フォーリン・アフェアーズ』07年7月号に寄稿)
・世界中に介入できる米軍の能力をめざす。
・無人飛行機を追加配備し 電子戦能力を向上
・C−17長距離輸送機とKC−X空中給油機の増産
・石油供給の防衛のため、ホルムズ海峡などをパトロールできるように海軍戦力を再編

4、軍事・経済両面で対中国戦争を推進

「オバマ大統領は中国が為替操作をしていると信じている」ガイトナー財務長官は1月22日、こう述べて以下の方針を発表した。
・中国に対して、人民元切り上げ要求などのあらゆる外交手段に訴える。
・オバマ政権の経済チームが、為替相場の調整について統合戦略を構築する。
米国の対中貿易赤字の拡大にたいして、オバマは、選挙中から中国を批判している。
ブッシュ政権は、中国の「為替操作国」認定を見送っており、オバマのこの政策は「重大な政策転換だ」(中国問題専門米エコノミスト)。

対中国で米軍を再編

ゲーツ米国防長官は、1月27日、上院軍事委員会公聴会で次のように証言した。
・予測可能なあらゆる中国の脅威に対処する能力を有している。
・中国の脅威に対抗するために、沖縄、グァム、韓国の米軍再編計画を達成する必要がある。
・原子力空母ジョージ・ワシントンの日本配備(横須賀)が、中国に対する抑止力の強化になっている。
・米空母を危険にさらす中国の技術(中国の潜水艦戦力など)への対抗手段をいくつか開発しつつある。

恐慌対策から戦争へ(経済政策)

1、労働条件切り下げと首切りで資本の延命はかる

アメリカでは、08年に259万人の雇用が減少し、今年に入っても、1月26日までに18万1550人、26日には1日で欧米7万人の雇用削減が発表された。また米自動車3大メーカーでは、クライスラーが組合とレイオフ時の賃金払い廃止で合意し、GMも2千人削減追加を発表した。資本は、労働条件引き下げと首切りで延命をはかろうとしている。

大量首切りへのオバマの態度(1/28演説)
「企業も責任を」といいつつも、「政府にできることは、経済にとって好ましい環境を整えることに尽きる」と述べ、新自由主義を推進する立場を鮮明にしている。

2、73兆円の景気対策

公共事業を柱に、総額8250億ドル(73兆円)の景気対策で、3百万〜4百万人の雇用を創出・維持するとした。(1/24ネット演説)
これにたいしては、オバマ支持の経済学者、ポール・クルーグマンでさえ、「オバマの計画は、生産と需要のギャップを満たすにはほど遠い規模である」と失望している。

3、保護主義の台頭

議会で審議されている景気対策法案に、民主党の主導で、「バイ・アメリカン条項」が盛り込まれた。景気対策の公共事業には、米国製の鉄鋼しか使用を認めない保護主義の条項だ。

4、恐慌はまだ序の口

米政府は昨秋、銀行救済のための資本注入枠として25兆円を設定し、今年1月27日時点で、すでに317機関にたいして累計19.4兆円を注入した。しかし、底は見えない。不良債権の総額はまったく不明だ。しかも無限に資金注入を続けることもできない。

米国債のFRB買い入れへ(1/28)
そこでついに、FRBが印刷した紙幣で、財務省が発行する米国債を買うという禁じ手に踏み切った。
これは史上最大規模のドルの垂れ流しであり、基軸通貨としてのドルの地位が、さらに大きく揺らぐことは不可避だ。

ドル危機から戦争激化へ
しかしアメリカはどんな手段に訴えてでも、ドルの基軸通貨としての地位を手放すわけにはいかない。
さしあたり、中国、日本、EUなどにたいして経済的な攻撃をしかけることになるが、結局、ドルの地位を死守するための世界規模の戦争にのめり込んでいくしかない。
かつてルーズベルトが打ちだしたニューディール政策も、恐慌対策としては失敗したが、階級闘争を解体して戦時体制を作り、経済を軍事化して第二次世界大戦に突入し、そこで初めて経済の一定の回復をはかったという点で「成功」した。オバマもこの轍を踏もうとしている。

5、ルービン人脈の経済チーム

国家経済会議(NEC)委員長=ローレンス・サマーズ
元世界銀行チーフエコノミスト、クリントン政権下で財務次官、財務長官。ロバート・ルービンの子飼い。一貫して、新自由主義とグローバリゼーションの推進者。世界銀行時代、「有害廃棄物は途上国に移転したらコストがかからない。世界銀行はそれを推奨すべき」という論文を出した。05年、ハーバード大学長の立場で、「理数系の分野で活躍する女性が少ないのは男女に生まれつきの違いがあるからだ」という女性差別発言をして辞任。

財務長官=ティモシー・ガイトナー
財務省でルービンやサマーズの子飼い。アジア通貨危機の際、韓国のIMF管理を強く推進。日本にも不良債権処理などを強く迫った。

ロバート・ルービン
元ゴールドマン・サックス共同会長。クリントン政権下で、国家経済会議(NEC)委員長、財務長官。現在シティグループの経営執行委員会会長。クリントン政権時代、ルービノミックスと呼ばれる経済の金融化、「影の銀行システム」を主導。サブプライムローン問題の主犯。財務長官の本命視されていたが、入閣は断念。
オバマを大統領候補に押し上げたのも、オバマ政権の経済政策の基本を作ったのも、ルービンだ。オバマの経済チームもルービン人脈だ。

6面

(投稿)イラク・アフガニスタン侵略戦争と世界経済危機の連関―資本主義における戦争費用と経済危機

帝国主義・資本主義の経済危機は、「過剰資本・過剰生産(商品および生産力)」と言われるように、過少生産ゆえに起こるのではなく、過剰生産ゆえに生じます。また帝国主義の戦争も、古い時代の戦争とは逆に、過剰生産ゆえに市場争奪戦として生じます。
ところで、現代の戦争は、武器や装備を膨大に消費・消耗します。

過剰生産と戦争

『資本論』で展開されている再生産表式で言えば、過剰生産は、消費財生産の部門Uで過剰生産になります。他方、生産財生産の部門Tは過少生産なのです。
そして、部門Uに追加貨幣があれば制限が先延ばしされ、追加貨幣がなくなり過剰が顕在化した時には、先延ばしした分、生産の過剰部分が倍々的に拡大しています。
戦争の武器・装備等は消費財なので部門Uであり、戦争で武器・装備等を消費・消耗すればするだけ、部門Uの過剰生産は「解消」されたように見えます。 だから戦争中は、過剰生産という形では経済危機にならないのですが、問題は次の2つです。

戦争後のインフレ

一つは、部門Uの生産が武器・装備等に偏り生活必需品の生産が減少します(これは過剰生産の現れでもあります)。しかし、武器・装備等を大量に生産しなければならないので労働者人口が増え、兵士の増加とあいまって総額人件費は増えるのに、生活必需品は減少するので、生活必需品が高騰化するかあるいは割り当て制(配給)にせざるをえなくなります。
もう一つは、戦争費用が膨大化するので、税収だけでは足りず、必ず戦争国債が発行されます。その戦争国債つまり赤字国債によって膨大な架空の貨幣資本が生じ、過剰資本状態をより大きくします。国債は国の借金ですが、その国債を担保にお金を借りると架空貨幣資本が発生し、それが信用制度によって繰り返し貸し出されることで、数倍にもなります。
戦争が終れば、戦場にならなかった国では、戦争中「解消
」されていた過剰生産が再び顕在化し、過剰資本・過剰生産状態に突入します。戦場になった国では、戦争で破壊され生産は低下するのに、貨幣資本は増大したままなので、現実生産が背負うことができないほどの過剰資本状態になり、通貨の価値が下落しハイパーインフレを引き起こします。

第二次大戦後とベトナム後

アメリカは、第二次世界大戦の時もベトナム戦争の時も戦場にはなっていません。だからどちらの時も、戦争終了で過剰資本・過剰生産状態が顕在化するのですが、第二次世界大戦後は、マーシャルプランなど諸外国への「援助」で、過剰生産をしのぎました。
ベトナム戦争後は、各国の戦後再建過程が終了していて過剰生産のはけ口はなく、74〜75年世界同時恐慌に
至ったのだと思います。OPECが石油価格を倍にしたため、74〜75年恐慌の原因のように思われていますが、むしろ石油価格の上昇で世界的にインフレつまり価値革命(マルクス)が起こり、パニックや恐慌現象がそれほど目につかなかったのだと思います。(注:恐慌は必ず価値革命を引き起こします)

現在の戦争と恐慌

現在のイラク・アフガニスタン戦争と経済危機との関係では、@これまで米日欧各国が行った景気刺激策によって生じた膨大な貨幣資本の上に、A戦争費用として投入された貨幣資本が加わり、Bそれらが信用制度のもとで数倍化して儲けを求めて投機とサブプライムローンに殺到し、産業資本の利潤の分け前だけでは足りず、労働者人民の生活費まで貨幣資本=利子生み資本の直接の餌食にして、Cそれが当然のごとく破産することで、大恐慌突入状況が生じたのだと思います。 (松崎 五郎)

(投稿)『中国における民族解放闘争の新たな段階』(『展望』3号掲載)を読んで

『展望』3号所収の論文を読んだ中国人留学生の方から感想がよせられたので、掲載します。(編集委員会)

中国人の民族意識の形成

中国人が、民族解放闘争の意識を持ちはじめたのは、中国が日本帝国主義に侵略されてからです。極端だと言われるかも知れないですが、私はそう思います。
ここで、多くの日本人は、こう言うでしょう。
「中国を侵略したのは、日本だけではない。欧米が先だ」。
このような言い方は、まだマシな方で、最近は、日本が侵略国家ですらなかったと主張している田母神みたいな者も続出しています。
中国の若者に言わせれば、日中間の問題は、もはや侵略問題には限りません。日本帝国主義時代(私たちは今でも帝国主義だと考えています)に行われた侵略問題に対して敏感になっているのは、むしろ日本側だと思います。
中国における民族解放闘争というと、中国の人びとは、まず、抗日戦争を思いだすでしょう。それは、中国における民族解放闘争の勝利を意味しているからです。
なぜなら、中国は、1840年の鴉片(あへん)戦争から、帝国主義の侵略を受けてきていて、抗日戦争は、中国国民が百年近く、帝国主義の侵略に反対してきた民族解放闘争の完全勝利であるからです。
だから、民族解放というと、その言葉の結びつきは、中国国民対帝国主義の解放闘争です。私は、こう思います。
中国が、欧米と日本に同じく侵略されたのに、日本が最も憎いのは、決してやったことの残虐さや隣国であるからではありません。それは、中国国民に民族意識が芽生えた時期だからです。アヘン戦争のときは、まだ井の中の蛙で、やられてもしょうがないと思っていたけれど、それから百年たって、人びとに民族意識が芽生えた時期に打たれると、その反発と怒りは代々にわたってつながるでしょう。

少数民族は同化されていない

『展望』綾部論文にある、中国における民族解放闘争は、違う意味での民族解放闘争だと思います。その中で述べられているとおり、中国は、多民族国家で創立して以来、いろいろな問題を抱えてきています。もちろんさまざまな民族間の問題は、中国政府のメディア統制によって、闇に葬られて処理されているのですが、今回の北京オリンピックをきっかけにチベットの独立問題が表舞台に上がったのです。これでしばらく中国政府もあからさまにメディア統制をするのは無理でしょう。
中国の少数民族の民族解放闘争については、綾部論文で述べている通りです。でも、ちょっと違うと思った点が、ひとつあります。それは、中国の少数民族は漢民族に同化されていないことです。
綾部論文では、「中国の改革開放によって少数民族意識、民族自治は障害になりはじめている。少数民族を経済発展から外して市場統合を図り、漢語を強制し、出産優遇政策を廃止し、国民的統合を図ることは自決権どころか自治権すら奪うものになる」と書かれています。これは全部は否定できないものの、肯定もしがたいです。
外部から中国の現状をみると、漢民族が、他の少数民族より優れた生活をしているように見えるかも知れません。たしかに、9割以上の漢民族が、全国の住みやすい地域と海岸地帯を独占し、1割に満たない少数民族は、辺境地域、あるいは国境地域に住んでいます。地域の差から貧富の差が変わってくるかもしれないでしょう。

出産優遇と言語について

だからと言って、出産優遇政策を廃止したり、漢語を強制したりはしていません。
中国の少数民族は、今でも少数民族の出産優遇政策によって、子どもを基本的に2人持つことができるし、また地域や家系によっては、3人産むこともできます。
そして、漢語の強制については、まったくありません。今でも、中国語(=北京語=漢語)がしゃべれない人は、いっぱいいます。それは、少数民族が百万人を超える地域では、少数民族の学校があるからです。小学校から高校まで自分の民族の言葉ですべての授業を行います。漢語は、義務教育の科目として加えてあり、週に3〜4時間ぐらいです。だから、学校を出た少数民族は、いわば両文化を両立させることになります。
また、この10年間、大学入試では、少数民族には点数が加算され、募集の人数が増されています。私も、この優遇政策を受けた一人です。高校まで朝鮮語と漢語を習ったので、卒業して中国で就職するときは、少数民族だからこそ採用してもらうケースもあったのです。
改革開放30年がもたらした急速な経済成長、それによる貧富の格差は、民族を問わず全中国国民に影響を与えていると思います。
私自身が中国で学び、外国に来て感じたのは、中国政府が、本当に56の民族を、うまくまとめてきたなということです。 (留学生 YS)