未来・第424号


            未来第424号目次(2025年10月16日発行)

 1面  自民党総裁に高市を選出
     極右・排外主義派と対決を強めよう

     10・7 全世界でガザ虐殺抗議行動
     戦争放火者 トランプ来るな

 2面  祝園のミサイルが神戸から沖縄へ
     神戸港の軍事使用反対
     9・28 神戸

     長射程ミサイル弾薬庫建設反対
     10・19 祝園現地闘争へ      

 3面  《シリーズ 安保3文書研究 @》
     防衛3文書に見る戦略・戦術
     落合薫

     辺野古ブルーアクション

     アジア初の脱原発=台湾から来日(上)
     東京・大阪で講演会を開催       

 4面  革共同全国委 91年5月テーゼ以降の全面破産
     清水・中野による三全総路線背反

 5面  スパイ防止法の制定許さない
     海渡雄一弁護士が講演
     9月27日

 6面  塩川三十二さんの反論(『未来』bS22)に反論
     大谷美芳

 7面  9・18県庁行動での菅野完とドン・マッツの差別暴言弾劾

     県庁「侵入」弾圧結審
     判決は11月27日
     神戸地裁

 8面  大阪・関西万博 無惨に破産
     未払い踏み倒し無責任解散か

     11・30原発つづけるための乾式貯蔵NO!全国集会@高浜


           

自民党総裁に高市を選出
極右・排外主義派と対決を強めよう

10・7 全世界でガザ虐殺抗議行動
戦争放火者 トランプ来るな

10月7日ガザ虐殺弾劾闘争、全国で高揚

東京新宿に全学連の旗が(上) 関西では大阪・京橋にれいわが1000人(下)

高市反動と闘い抜こう

10月4日投開票の自民党総裁選で、大方の予想を裏切って高市早苗が小泉進次郎を破って選出された。10月中旬の臨時国会での首班指名までに連立の拡大が可能かは不明だが、少数与党でも高市が首相に選出されるだろう。その後、月末にはトランプ大統領との会談となる。トランプは日本の軍事費をGDP比5%に要求してくるが、市民生活の困窮をよそに軍事費拡大を許してはならない。10・19祝園全国集会を先頭に、沖縄・西日本の反基地闘争、労働者人民の生活防衛、軍事拡大反対が今ほど問われている時はない。
それでは高市極右政権は盤石にスタートするか。決してそうではない。
@まずは少数与党として連立の拡大が可能かどうかということだ。公明党との連立を「下駄の雪」と前提化してきたが、今は違う。「福祉と平和」を掲げてきた公明党も、長きにわたる自民党追随への批判から今は存続の危機にある。靖国参拝を掲げる高市に唯々諾々と従えば、公明党は消滅する。
Aさらに元々石破おろしの原因は昨年衆議院選、今年都議選、参議院選の3連敗にあったが、それは「失われた30年」からする物価高・生活苦に対する人民の反乱によるもので、これを高市が直ちに解決できるものではないことは明らかだ。株価は上がっても賃金は上がらない。年金は実質下落の一方だ。これを高市が解決できるわけがない。
Bそのために、今次自民党総裁選は、表紙を変えるだけではダメで「解党的出直し」が言われたが、そのような論議は何一つ起こらず、あらゆる政治課題を先送りした「空白の2カ月」となった。政策的争いもほとんどなく、仲間内の仲良し選挙で、敗れた4人も要職に就く茶番だ。
C選挙戦的には党員票争いになったが、その基数は100万(国民の1%以下)でしかない。新たに党員獲得bP・2の青山繁晴や高市早苗らが集めた党員(宗教派などから多数新入党)に、高市がアピール・工作したのである。わずか60万人の投票の4割を獲得するため櫻井よしこら極右派が全力投入した。それを国民的支持と勘違いしているのが高市・麻生ら極右派・新主流派なのだ。
D更に最終的には石破茂・古賀誠憎しの怨念の塊の麻生太郎が、唯一の派閥のボスとして権謀を振るった。勝利後の人事では麻生傀儡といわれるほどだ。さらに萩生田ら旧安倍派裏金議員も暗躍した。まさに「解党的出直し」どころか「古い裏金自民党」が権力を奪還したのだ。まだ首班指名もないのに麻生・高市会談で閣僚候補が次々露見する始末だ。
E株価だけは「積極財政」ということで爆上がりしたが、党・内閣の枢要は財務省関係者・緊縮財政派が押さえていて、減税などするわけがない。
Fそして10月末のトランプ来日と会談で軍事費GDP比5%要求が襲いかかる。
Gその後は、総裁選で隠していた靖国参拝や、外国人排撃と対アジア関係を緊張させ、軍備増強に一気に走ってくるだろう。

軍備拡張・排外主義と闘わない野党

テレビをジャックした総裁選での逆転劇に慌てた立憲、国民、維新らの「野党」各党は、高市自民党の前に戦意を喪失している。
野田立憲は、石破時代から内閣不信任案提出拒否を貫き、今や中道保守を宣言し、参議院選に続き今後の選択肢から外れた。維新は小泉前提の連立想定が外れ意気消沈。国民民主のみが「連合」の反対を押して、榛葉幹事長が麻生と会談し、連立に走ろうとしている。国民民主党は高市の唱える「スパイ防止法」にもすりよろうとしている。これでは市民から見放されるばかりだ。

生活防衛・軍拡反対、10・19祝園全国闘争へ

かかる野党の体たらくをよそに労働者階級は高市自民党に怒りを燃やし、生活防衛・軍拡反対、排外主義との闘いに陸続と決起しようとしている。10・7ガザ2年の闘いには全国各地で行動に立ち上がった。戦争放火者・トランプ来日には広範な危機感と怒りが渦巻いている。そして何よりも沖縄・西日本の各地に基地を新設し最新兵器を配備する攻撃に、怒りが高まっている。
10・19祝園弾薬庫に長射程ミサイル弾薬庫増設に反対する全国闘争は、沖縄・九州・愛知・神奈川など全国の反戦・反基地・反軍拡を闘う人々が総結集する。地元京都・関西全域からマイクロバス・大型バスで結集しようとしている。高市自民党に対する最初の反撃として、10・19祝園に集まろう。
我々は軍事費増大・生活防衛・排外主義反対の大衆運動に、組織をあげて取り組まなければならない。

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2面

祝園のミサイルが神戸から沖縄へ
神戸港の軍事使用反対 9・28 神戸

9月28日、「神戸港の軍事使用を許さない 市民集会」(主催:同実行委員会)が神戸市元町の学校厚生会館でおこなわれた(写真)。呉羽真弓さん(京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク・共同代表)が、「祝園分屯地に長射程ミサイル弾薬庫が造られる」問題について講演した。また、粟原富夫さん(神戸市議)が「神戸港の軍事使用を許さない」闘いについて訴えた。集会には、市民運動をしている人びとがたくさん参加した。会場は定員をこえる人びとであふれ、80人が講演に聞き入った。

祝園と神戸

呉羽さんは、「ミサイル弾薬庫、黙って見過ごしてよいの?」と題して、@祝園弾薬庫の歴史、A祝園ネットの闘いについて、わかりやすく講演した。このなかで、呉羽さんは「砲弾は車で祝園弾薬庫から神戸の海自阪神基地に運ばれ、南西諸島に運ばれる。神戸港が軍事使用される」と神戸市民に訴えた。
8月18日、新たな弾薬庫建設工事が祝園分屯地ではじまった。24日に現地で抗議集会をおこない、「申し入れ」をおこなった。呉羽さんは「政府は2032年までに全国で130棟の弾薬庫を造る計画にしている。各地の住民がつながって、反対の声をあげていこう。声を上げることは今を生きる者の責任、ともに行動しよう」と述べ、10・19祝園集会への参加を訴えた。
粟原さんは、「非核神戸方式の歴史と現実」について報告した。神戸市は外国軍艦にたいして非核証明書の提出を義務づけている。これは「核兵器搭載艦艇の神戸港入港拒否に関する決議」(1975年3月、神戸市議会で決議)を根拠にしている。粟原さんは「戦前、神戸港は軍港であった。戦後、この反省にたって港湾法が制定された。港湾法の精神にもとづいて、非核神戸方式がつくられた」と述べた。粟原さんは「今年3月、神戸市は例外をもうけて、非核証明書なしでアメリカの軍艦(掃海艦)を入港させた。今、非核神戸方式が危機に瀕している。神戸港を軍事使用させてはならない」と危機感を表明した。

新たな戦前

神戸港はかつて軍港として使用された。この反省にたって、1950年に港湾法が制定された。こうして、地方自治体が港湾を管理するようになった。また、この1カ月後に軍民法が制定されている。旧海軍の拠点であった旧軍港(横須賀、舞鶴、呉、佐世保)を民間で活用し、経済成長をとおして平和国家を建設する方針に転換した。
現在、呉港では日本製鉄が高炉跡地を自衛隊に売却し、自衛隊基地を拡張する計画が進められている。歴史は戦前にむけて逆回転している。
参加者から、戦前回帰の事態が報告された。@全国の自衛隊基地や司令部が地下化、強靭化されている、Aレゾリュート・ドラゴンでは住民を無視して演習がおこなわれている、B故郷の港が特定利用港湾に指定され、軍事利用される、C防衛白書の小学生版が学校に無料配布されている、など。
神戸港をけっして軍事利用させてはならない。軍事力で市民の生活を守ることはできない。平和は軍事力ではなく、市民の行動によってつくられる。10・19祝園現地集会に参加しよう。

長射程ミサイル弾薬庫建設反対
10・19 祝園現地闘争へ

2015年9月に安保法制が国会で成立して、まる10年がたつ。この時、集団的自衛権導入に反対して、人びとが国会前で声をあげた。2022年12月、岸田文雄政権は「安保3文書」を策定した。岸田は敵基地攻撃能力保持を明言した。こうして、国是であった専守防衛を捨てさり、外国の基地(司令部)を攻撃する。政府は「専守防衛は捨てない」と言っているが、これはウソの上塗りであり、言い逃れにすぎない。
以後、全国(とりわけ沖縄、九州)で戦争態勢が急ピッチで構築されている。防衛費は増大し続けている。トランプ米大統領からの圧力を理由にして、GDP比で5%超も検討されている。自衛隊基地は強靭化工事がおこなわれ、司令部は地下化されている。特定利用空港・港湾がすでに40カ所も指定されており、全国の港湾と空港が軍事利用されていく。

長射程ミサイルの弾頭が貯蔵される

京都・祝園弾薬庫に、長射程ミサイルが貯蔵されようとしている。12式地対艦ミサイル能力向上型は射程を1000q以上に延長した改良型で、今年度から導入される。2026年3月に健軍駐屯地(熊本県)にはじめて配備される。トマホークは海上発射の巡航ミサイルで、射程は1600qもある。今年度に200発、合計で400発をアメリカから輸入する。これらのミサイルが祝園弾薬庫に貯蔵されようとしている。しかし、防衛省は詳細を明らかにしていない。
8月18日、祝園分屯地で建設工事がはじまった。祝園に14棟の弾薬庫が増設される。これは全国で最大規模だ。2032年までに、全国で130棟の弾薬庫が新増設される。
祝園分屯地は精華町と京田辺市に広がり、関西文化学術研究都市の中央に位置する。周辺にはニュータウンや研究施設、大学もある。戦争になれば、ミサイル弾薬庫はまっさきに攻撃対象になる。
政府は「我が国をめぐる安全保障環境が抜本的に変わった。抑止力が必要だ」「抑止力を強化しなければ、我が国の平和は守れない」と言っている。これは軍備拡張のためのペテンであり、人びとにウソを宣伝している。

10・19祝園現地闘争へ

10月19日、祝園全国集会が〈けいはんな記念公園〉でおこなわれる。さまざまな地域で、いろいろな団体が自衛隊基地強化に反対している。この人たちが祝園に集まる。沖縄、九州、広島、関西各地、愛知、神奈川などから、たたかいの報告がおこなわれる。西日本で新たな反戦運動のネットワークがつくられる。
全国の人びとがつながって、政府の政策にたいして「ノー」の声をあげていこう。個別の闘いだけでは、絶大な権力をもつ政府には勝てない。「知り、つながり、行動する」を合い言葉にして、政府にたいして闘っていこう。

(おことわり)
好評連載の大庭伸介さんの「私が推す労働運動関係のほん」は紙面の都合で今号は休載とします

3面

《シリーズ 安保3文書研究 @》
防衛3文書に見る戦略・戦術
落合薫

@防衛3文書の3つの戦略

(1)インド太平洋戦略(FOIP)、(2)南西方面戦略配置、(3)敵基地攻撃論 3文書では「反撃能力」と打ち出すが、基地だけでなく敵の政治・軍事中枢や兵站面への攻撃を含み、先制攻撃になる可能性が大。3戦略を支える兵站・情報・経済・社会体制を究明し、大軍拡がどういう戦争を目ざすのか、どういう作戦(戦術)をもたらすのか、を究明することが課題となる。

A列島縦断のミサイル配備

長射程ミサイルの配備計画(朝日2025・8・30)
「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を実現するため」、主に敵の艦艇を狙う射程1千q程度の「12式地対艦誘導弾能力向上型」のうち、地上から発射する「地発型」を、25年度末と26年度の2回に分けて陸自健軍駐屯地に配備する。その教育用として陸自の富士駐屯地の特科教導隊にも27年度に配備する。艦艇から発射する「艦発型」は、横須賀市を母港とする海自の護衛艦「てるづき」で、航空機から発射する「空発型」は航空自衛隊百里基地に配備予定の戦闘機F2能力向上型で、いずれも27年度から運用する。

設置と配備の目的

弾薬庫の新増設は祝園が14棟で一番多い、北海道と琉球諸島(奄美を含む)が多く。首都圏はゼロと長射程のミサイル重視の体制となっている(赤旗2025・5・9)。弾薬庫→配備地→発射地点と移動する場合、距離と移動手段が問題となる。あまり距離があると障害が生じる。移動手段が確立していないと「役」にたたない。
琉球諸島には長射程のミサイルを恒常配備する計画はないようである。第1列島線内に中国の艦船などを封じ込める目的からすると長射程ミサイルはいらない。100q、200qの射程のミサイルの量が問題である。ということは現実の戦闘になれば、弾薬庫・配備地だけでなく狭い島内を壊滅する集中攻撃を受けることとなり、住民全体だけでなく自衛隊の部隊自体が壊滅させられることは必至である。防護や兵站を軽視する発想は旧日本軍と同じである。
長射程の弾薬庫は西日本と北海道に多く設け、全国に配備されている。北海道に多いのは、射程が1000q以上になれば中国大陸自体を狙えるからである。戦端を切る契機が何であれ、日・中が戦うとき現代の戦争が長射程のミサイルの発射合戦になることは確実である。現代戦のもう一つの「法則」として見ておかなければいけない点は、前方と後方の区別がなくなることである。ウクライナ戦争を見れば分かるように全土が攻撃対象となる。

B拡大する軍事演習

オリエント・シールド(9・16〜24)日米に豪軍も加わった陸軍の共同演習、国内7カ所でおこなう。
レゾリュート・ドラゴン(9・11〜25)過去最大の1・9万人が参加
米軍が、ネメシスやタイフォンなど新型ミサイルを登場させた。第1列島線内に中国を封じ込める狙い。
反対運動と住民との軋轢。8月6日、宮古島の陸自駐屯地で、拡声器で呼びかける清水早子さんに駐屯地司令の一佐が「許可を取ってこい」と怒鳴りつけ威嚇した。オリエント・シールドの実働訓練がおこなわれている米軍経ケ岬通信所に9月20日、住民団体が抗議行動(毎日2025・9・21)。

Cインド太平洋戦略(FOIP)の「発展」

英空母プリンス・オブ・ウェールズの日本寄港は、最大の係争地である南中国海で、日本の空母化した護衛艦「かが」と追悼式典をおこなう。先代のプリンス・オブ・ウェールズは第2次大戦のとき日本海軍によって南中国海で沈められている。対中国のためには「恩讐」を超えてというわけである。2015年の「安保法制」の「武器等防御」の規定で平時にも他国の艦船や航空機を守ることを可能にした結果、準同盟扱いする英国や豪州の艦船等を防衛することが「可能」になったことでFOIPにこれら諸国を引き入れる手段となっている。

D大軍拡の次は核武装

9月19日、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議(座長=榊原定征・経団連名誉会長)が中谷元防衛相に報告書を提出した。敵基地攻撃能力を持つミサイル垂直発射(VLS)搭載の潜水艦について、「次世代の動力」の活用を提言している。これは原子力潜水艦の導入を意味する。またそのために防衛装備移転の「5類型」見直しも提言している。防衛装備移転の運用指針で、武器輸出対象を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限定していることを指す。つまり原潜の開発・製造から輸出まで提起しているのである(朝日2025・9・20)。原潜の主要目的が核兵器を敵から察知されない発射点から発射することにあることを考えると、これは核武装そのものの準備に他ならない。
なお同報告では、太平洋の防衛強化策として、小笠原諸島上空の防衛識別圏の設定を掲げている。第1列島線外の太平洋を軍事制圧下に置くことを目的にしているに違いない。

辺野古ブルーアクション

10月4日、新宿駅南口で毎月恒例の「辺野古に新基地はつくらせない!! 新宿南口 連続辺野古ブルーアクション」(呼びかけ:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)がおこなわれた。(写真上)
多くの市民が集まって、沖縄の辺野古新基地建設の不当性、座り込みがなくなれば倍の速さで埋立てが進捗してしまうこと、成算のない工事に莫大な税金が費やされていること等々を訴えた。

アジア初の脱原発=台湾から来日(上)
東京・大阪で講演会を開催

5月17日、台湾の第3原発2号機が運転を終了し、台湾はアジアで初めて脱原発を実現した。9月21日に大阪で、22日には東京で講演会が開催された。
ここでは大阪の講演会を報告する。(写真上)

大阪講演会

大阪市内でおこなわれた集会は約60人が参加、台湾からの報告と活発な質疑がおこなわれた。主催は、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、共催は老朽原発うごかすな! 実行委員会。
集会では、崔 欣(緑色公民行動連盟事務局長)と林正原(緑色公民行動スタッフ)が、「アジア初の非核国家へ 非核国家・台湾の成果とその挑戦」というテーマで講演した。崔 欣さんは「今年8月23日におこなわれた国民投票で、第3原発2号機の再稼働が否決された。このことを1日も早く皆さんに伝えたくて、日本にやってきた」と語った。
台湾には、緑色公民行動連盟をはじめ、台湾環境保護連盟、台湾再生エネルギー連盟など、複数の環境保護団体が存在する。緑色公民行動連盟は2000年6月に設立され、おもに3つのテーマで行動している。それは、@原発を廃止するために原発を監視する、 A企業の情報を収集・分析し、市民にただしい情報を提供する、 B再生可能エネルギーを推進する行動、などをおこなっている。

台湾反原発運動の歴史

まず、崔欣さんは台湾の反原発運動の歴史について、次のように述べた。 「台湾の原発は、第1原発から第4原発まで4カ所に所在しており、合計で8基の原発がつくられている。国営企業の台湾電力がこれを所有している。台湾の首都・台北の近くに3カ所(第1、2、4原発)が立地しており、台湾の最南端に第3原発がある。
台湾の反原発運動は、第4原発の建設反対運動からはじまった。1988年4月に、第4原発建設反対のデモが地元でおこなわれた。2011年3月に東電福島第一原発事故が起きてから、反原発運動が大きくなった。2011年4月、ひまわり反原発デモには1・4万人があつまった。2013年3月、反原発行動に22万人が参加した。
2014年4月27日、林義雄さんの無期限ハンストに連帯して、台北駅前の道路に5万人の民衆が一晩中座り込んだ。この大衆行動をうけて、馬英九総統(当時)は第4原発1号機の稼働凍結と2号機の工事停止を表明した。
2015年には、蔡英文総統候補(当時)が「2025年までに非核国家を実現する」と宣言し、蔡政権(2016〜24年)は第4原発の工事を止めてきた。こうして、今年5月17日、台湾は「原発ゼロ」を実現させた。 (津田保夫・つづく)

4面

革共同全国委 91年5月テーゼ以降の全面破産
清水・中野による三全総路線背反

今年9月の35全総で革共同全国委(「前進」中央派)が、石田政治局員と中央学生組織委員会(SOB)メンバーを「一人残らずたたき出し」、全学連を失陥するという歴史的事態を迎えた。われわれは06年3月14日、当時の関西担当政治局員の官僚的独裁的組織運営と金銭腐敗などを糾弾し、それを排除し闘う革共同の再生を求めて決起した。当初清水丈夫議長と中野洋副議長はこの決起を承認したが、自らの官僚的組織運営が暴露されるのを恐れ、翌07年11月に関西党員総会に全国委員会総会をぶつけ、06年3・14決起を担った仲間を排除した。
翌08年1月には新たな機関紙を発行し、旧来の腐敗した革共同に代わり闘いを開始した。それから20年弱。清水・中野(安田)を中軸とする革共同中央は、労働運動をめぐる路線的混迷、女性差別事件の頻発、そして全国委員会総会を開くたびに反対派を除名するというおぞましいまでの腐敗と混迷を繰り返してきた。
中野洋動労千葉委員長の死(2010年)以降も革共同議長であった清水丈夫は今次35全総の無様な破産を前についに政治生活を終了することを宣言した。2006年決起以来の我々の闘いが彼らを万力のごとくしめあげ、ついには清水議長の引退・「白旗」を掲げるまでに至ったのだ。06年の関西、九州、15年以降の東北という地方拠点を失陥し、最後は革共同の行動隊としてマスコミ受けを狙って演出した全学連を最終的に失うことで、全面崩壊したというわけだ。1998年以降、年間最大イベントであった11月労働者集会も、今年は1労組集会でしかなく、11月2日以降は四分五裂していくであろう。

3全総路線を破壊した中野「労働運動路線」

1991年5月テーゼ以前はひとまず置くとして、91年以降の革共同の路線的混迷の最大の原因は、中野動労千葉委員長と清水革共同議長の結託による、革共同の出発点となった3全総路線(戦闘的労働運動の防衛、統一戦線戦術の駆使、地区党建設)からの背反ということに尽きる。動労千葉の委員長であった中野洋は、国鉄決戦を敗北としてとらえ、以降は動労千葉防衛を革共同の基軸とするため03年の新指導路線を提起し、それに反発する関西などの部分を清水と一体となって押さえ込もうとする。その先兵となった与田政治局員の強権的独裁的組織指導と、その暴力的先兵・遠山らが、06年3・14決起で打倒される。関西の党員の大半の実力決起に、現場にいた天田書記長は「諸君らの大義は判った」と自己批判。清水議長も何度も自己批判したが、中野洋だけは「俺は自己批判しない」とした。翌07年5月全国WOB会議を大原(辻川)に招集させ、関西の孤立を図る。そして11月関西党員総会にあとから全国委員会をぶつけ、関西派の排除を強行したのである。
これ以降、党内で異論をはさむものを次から次に粛清・排除していく。全国委員会が開催されるたびにその時期の指導者・政治局員が除名される。その間に何度も何度も女性差別事件が発生するが、それを隠蔽・圧殺して、被害者に「寄り添うこともなかった」。その集大成が24年11月関西の労組の人格的代表者であるOZの女性差別事件とその隠蔽、それと共謀した若手関西指導者の34全総での除名(25年3月)だ。さらに9月、35全総での「石田反革命」の除名と、路線的逸脱と女性差別と除名乱発が起こり、これらの弾劾も含め全学連矢嶋委員長の弾劾声明が出された。
06年〜07年に関西で決起した我々を排除した帰結が、34全総・35全総での「革共同の最終的崩壊」となった。
それぞれの時代に分断され除名・追放された仲間の皆さん。強権的・独裁的・スターリン主義的組織=革共同はついに崩壊した。自己を共産主義者として維持し闘い抜いてきたすべての仲間は、我々とともに「戦争前夜」の階級闘争を、労働者階級の解放と反戦平和を目指して、ともに闘おうではないか。(西村昌三)

革共同全国委の変質の軌跡 91年5月テーゼ・03年新指導路線以降

5面

スパイ防止法の制定許さない
海渡雄一弁護士が講演
9月27日

9月27日、都内で、「再び浮上してきたスパイ防止法」と題して「市民憲法講座」がひらかれた。主催は、許すな! 憲法改悪・市民連絡会。

海渡雄一弁護士の話

以下、膨大なレジュメと発言内容からごく一部をかいつまんで紹介する。
「(好評を博した朝ドラ『あんぱん』で『逆転しない正義』が言われているが)スパイ防止法案が守ろうとしているのは『逆転する正義』だ。(日本でコミンテルンのスパイとして処刑された)ゾルゲは今日のロシアでは英雄」
「参政党は『秋には議員立法で法案を提出したい』と言っている。参院法制局と相談している」「国民民主党の動きを最も警戒すべき」

ウソから始まった戦争

「国による隠蔽から始まった戦争がある。1971年、米国防総省職員ダニエル・エルズバーグらが、エルズバーグ自身が作成に関わった『ペンタゴン・ペーパーズ』(ベトナム戦争の実情をまとめた極秘レポートで、米の勝利が困難であることやトンキン湾事件が米軍のでっち上げだったことも記してある)をコピーしてニューヨーク・タイムズの記者などに手渡した。NYタイムズ社は特別チームを作って同年6月13日から連載。ニクソン大統領は司法省に記事差し止めを命じ、連邦地裁にNYタイムズを提訴した。同月30日、連邦最高裁は『政府は説明責任を果たしていないとして差し止め請求を却下』」「1971年6月、米連邦最高裁フーゴ・L・ブラック判事は『自由で拘束されない新聞のみが政府の欺瞞を効果的に暴くことができる、そして自由な新聞の負う責任のうち至高の義務は、政府が国民を欺き、国民を遠い国々に送り込んで異境の悪疫、異国の銃弾に倒れるのを防ぐことである』との意見を述べた」「イラク戦争も大量破壊兵器という米の嘘から始まった」
「(満州事変の発端となった柳条湖事件について)関東軍より、この爆破事件は中国軍によるものであると発表された。このため、日本では太平洋戦争終結に至るまで、爆破は張学良ら東北軍の犯行と信じられていた」「爆破を直接実行したのは(関東軍の)河本末守中尉ら数人の日本人グループである。関東軍は自ら守備する線路を爆破し、中国軍による爆破被害を受けたと発表するという、自作自演の侵略的行動であった」「半藤一利氏によれば、大阪朝日新聞は高原操編集局長の下で柳条湖事件について『この戦争はおかしいのではないか、謀略的な匂い、侵略的な匂いがする』と報道していた。結果的に正しい報道をしていたのである。その時、在郷軍人会などによる激しい不買運動を受け、部数を減らす。奈良県下では一紙も売れなくなる。そして、10月12日の役員会議で高原編集長は次のように述べたことが憲兵調書に記録されている(密告者がいたと思われる)。『今後の方針として、軍備の縮小を強調するのは従来の如くなるも、国家重大の時に際し、日本国民として軍部を支持し、国論の統一を図るは当然のことにして、現在の軍部及び軍事行動に絶対批判を下さず、極力これを支持すべきこと』。
大阪朝日の抵抗は5カ月も持たなかったことになる(半藤一利・保坂正康『そして、メディアは日本を戦争に導く』2014年東洋経済新報社51〜52頁より)」

帝大生 宮澤弘幸

「1941年5月、真珠湾攻撃の半年前の銀座通りは『防諜』のスローガンの看板ばかりになっていた」「日米開戦当日の12月8日、北海道帝国大学工学部2年生宮澤弘幸さんが、旅行先の港の様子など地元民なら皆知っていることや軍事関連の講習会で習ったことを、北大予科で英語を教わった外国人講師ハロルド・レーン及びその妻ポーリン・レーンに雑談の中で話したとすることを以て『軍事上の秘密を探知収集し、かつ漏えいした』罪(法定刑は無期または2年以上の懲役)を犯したとされ検挙。札幌・夕張・江別警察署で特高警察の手により『逆さ吊り』の拷問を伴う激しい取り調べを受け、翌年3月25日送検、4月9日起訴され、同年12月16日、札幌地裁で懲役15年の判決を受け、1943年5月27日上訴棄却により確定した」「レーン夫妻も宮澤から聞いた話を米大使館駐在武官に伝えたなどの虚偽の事件をでっち上げられ逮捕、激しい拷問を伴う取り調べがなされた」「1942年12月14日、札幌地裁は夫のハロルド・レーンに懲役15年の判決を宣告、同月16日、妻のポリー・レーンに懲役12年の判決を宣告(それぞれ翌年5月・6月上告棄却で確定)」「宮澤さんは網走刑務所で服役。レーン夫妻は札幌大通拘置所・苗穂刑務所で服役、1943年9月に共に最後の捕虜交換船で帰米することができた」「宮沢さんは1945年には栄養失調と結核で病舎へ移動、6月に網走から宮城刑務所へ移送された」「1945年10月4日のGHQ覚書に基づいて宮澤さんが10月10日に釈放されたが、その健康は拷問と寒さのために決定的に害されていた。1946年1月に東京のイタリア人の友人マライーニを訪ねて『たしかに裁判はあったけど全てお膳立てができているんだ。見たこともない証人が出てきて僕の言葉を否定する』と語っている。マライーニは、宮澤さんの歯が一本もなく50歳に見えるほど変わり果てた姿を描写している」「宮澤さんは自らの名誉回復のため北大に復学願いをおこない、自らの経験を本にまとめようとしていたが1946年12月末に喀血し、翌年2月22日に東京で死去」

自民・国民・参政・維新が推進

「自民党では高市早苗が会長を務める『治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会』が5月28日、『治安力≠フ強化に関する提言』を取りまとめ、石破茂首相に参院選公約に盛り込むことを求めた」「自民党の選挙パンフレットには載らなかったが、政策インデックスには闇バイト対策の隣にスパイ防止法の記載が忍び込まされている」
「国民民主党は『今の日本にはスパイ行為を包括的に処罰できる法律が整っていません…こうした現状を踏まえ、国家機密保護や安全保障体制の強化という観点から、サイバー空間を含めたスパイ行為全般を処罰対象とする、実効性の高い包括的な法整備を進めます』と公約に掲げている」,br> 「参政党は『インテリジェンス(諜報・防諜)能力を世界トップレベルまで向上させる』としている。神谷宗幣代表が7月14日に松山市の街頭演説で、公務員を対象に『極端な思想の人は辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法です』と述べた」
「立憲民主党の公約には『省庁横断的なインテリジェンス体制を強化します』とある。以前は謳われていた特定秘密保護法の廃止は公約に含まれていない。スパイ防止法についても書いてない」
「日本維新の会は『米国のCIAのようなインテリジェンス°@関を創設するとともに、諸外国並みのスパイ防止法を制定し情報安全保障を強化します』と掲げている」

冤罪を生むスパイ防止法反対を

「1985年の自民党が出したスパイ防止法に対しては谷垣禎一が『中央公論』に反対論を載せ、村上誠一郎も反対していた」
「秘密保護の強化は国際紛争の外交努力による解決を困難にする」「秘密警察活動によって冤罪が生まれ、秘密強化はその弁護活動にも大きな障壁となる」「経済安保法の制定のために、実例をでっち上げるために大川原化工機事件の冤罪が発生したことの教訓を忘れてはならない」
「秘密警察活動で仮装身分による活動を保障するという。偽の身分証・偽名で警察が活動するということ」
「日弁連は特定秘密保護法の時は反対の声明を出したが、スパイ防止法は『まだどんなものが出てくるか見えてないから出せない』と執行部が言っている」
「すでにスパイ防止法に反対する意見を公表しただけで、非国民・スパイのレッテルが貼られるような状況となっている」「反対の体制を作り上げる時間は限られている。すみやかに、共産党、れいわ新選組、社民党は旗幟を鮮明にしてほしい。そして、立憲民主党にも共闘を迫るべきだ。地域でも反対の声をあげていこう」 (巣鴨二郎)

6面

塩川三十二さんの反論(『未来』bS22)に反論
大谷美芳

直面する問題の中で2点に絞り、政治的思想的な立脚点に関わる方向で論じます。

(1)日本・米国と中国の帝国主義戦争および反戦闘争について

「中国の側からも帝国主義戦争」、「台湾『統一』は併合」、『前進』の「米日の中国侵略戦争」では、中国は「反侵略・祖国防衛」になり、日本人民の「正当な感情と矛盾」する、こういった私の意見に、塩川さんは「この部分は大賛成」と言っている。
ここからしても、この間のウクライナ戦争に対する態度からしても、『未来』は台湾問題で、中国を「帝国主義」「侵略」と批判する、台湾を「反侵略・祖国防衛」と支持する、「日米帝国主義の代理論」には反対する、こう理解します。
『未来』は中国を資本主義とは見ないが、帝国主義とは見るということになる(ロシアは塩川論文が資本主義的帝国主義と見ている)。帝国主義は、その経済的土台は資本主義だけではなく封建制や奴隷制もあるが、まずは他の民族や国家を抑圧・圧迫し侵略・併合する政治的上部構造である。中国を帝国主義と見ることは非常に重要である。
その上で塩川さんは、@「中国人民と台湾人民を主体として措定する展開がまったくない」、A「『世界戦争→世界革命』という旧ブント的ナデギリ」、と私に反論している。

@台湾と沖縄が自己決定権で闘争し連帯 それを支持して日中両国人民が闘争し連帯

これが反論に対する反論です。日本と米国でも中国でも、帝国主義を打倒する社会主義革命は前途遼遠だが、帝国主義戦争に反対する闘争の展望は見える。
台湾人民は、事実上の独立国家という現状を維持する意志である。中国による台湾統一に対しては反侵略・祖国防衛で闘争するだろう。それは自己決定権である。
台湾は、長く中国の統治下にはなく、清の時期に統治下に入った(1683年)。日清・帝国主義戦争(1894〜95年)で日本に割譲され、植民地支配された。1990年前後、人民が開発独裁(権威主義)と闘争してブルジョア民主主義が成立した(韓国と似る)。1989年天安門事件で共産党一党独裁(全体主義)を確立した中国とは、対照的である。こういう歴史の上に、台湾人民は自己決定権で闘う。日本人民も中国人民も支持しなくてはならない。
沖縄も、長く日本からは独立した国であり、日本に併合されたのは1872年である。1941〜45年の日米・帝国主義戦争で戦場にされ、米国に占領され軍事植民地支配された。その支配に反対して闘争し、日本との国家的結合を選択して1972年に「本土復帰」した。
今は非軍事化(米軍だけでなく自衛隊にも反対)で闘争している。それは沖縄のことは沖縄人民が決定する自己決定権である。今は分離・独立ではなく、広範な自治の要求である。
日本人民は、沖縄のこの自己決定権を、たとえ自治を越え分離・独立になっても、支持しなくてはならない。その意義は大きい。台湾統一=併合の中国には大きな打撃になり、中国人民には大きなアピールになり、祖国防衛の台湾には大きな支援になる。
沖縄の自己決定権は対日米で、台湾は対中であるが、似通った地位が必ず人民を結びつける。沖縄と台湾が自己決定権で連帯し、両方の帝国主義と覇権主義に反対する。そうなれば、反覇権が韓国・朝鮮とASEANへ、アジア・太平洋諸国へと拡大していく。

・現在のキーワードは「自己決定権」 1970年闘争の「沖縄奪還」をどう総括していますか?

第二次ブンドは「前線基地化反対」であった、それは肝心カナメな国家の問題から逃げていた。しかし、中核派の「奪還」や社共の「返還」には民族主義を感じていた。
沖縄は被抑圧民族、沖縄側の「復帰」(日本との国家的結合)は自己決定権である。しかし、日本側は抑圧民族、日本人民は「奪還」や「返還」ではなく、沖縄の「自己決定権支持」(沖縄の「復帰」の主張を支持)でなければならない。

A第二次ブンドの「世界革命論」は空論 赤軍派の「国際根拠地論」を総括したい

空論の原因はトロツキズムの一国社会主義否定であるが、赤軍派は「過渡期世界論」の問題がある。日本革命を、日本資本主義の内在的矛盾(内因)ではなく、ベトナムや中国の「民族解放・社会主義」の波及(外因)で展望していた。そこから「国際根拠地論」になった。
その実行がよど号ハイジャックや日本赤軍であった。それは実は国外逃亡であったが、同時に朝鮮革命とパレスチナ革命に対する利用主義でもあった。抑圧民族である日本の人民が、被抑圧民族の民族解放闘争に対してとるべき正しい態度ではなかった。

(2)アメリカ帝国主義の衰退と危機およびトランプ主義に対する闘争について

「危機を外部関係で見て国内階級関係で見ない」。「危機の要因はあくまで国内要因」。私の「『南北関係』の中で国際的に見なくてはならない」に、塩川さんはこう反論している。

・外因論ではない 先発資本主義の必然的な結果としている 内因論である

「工業の『南北逆転』が米帝危機をもたらしている」は塩川さんの誤解です。金融化・情報化と工業的空洞化が危機を(「南北逆転」も)もたらした、こういう論、内因論です。
先発資本主義の米国・西欧・日本は、第二次大戦後、工業的に発展してきたが、1970・80年代に過剰資本に逢着した。そこで、金融資本主義化し、対外的な資本輸出に向かい(グローバリズムの開始)、国内的には情報産業化し、工業が空洞化し衰退してきた。
その結果、階級支配がブルジョア民主主義の「包摂」から、新自由主義の「差別・分断」へ転化し、労働者階級が「没落」している。レーニンが『帝国主義論』で言っている「寄生性・腐朽性」である。ブルジョア民主主義は資本主義的階級支配の唯一の安定的国家形態であり、その危機は「体制的危機」と言える。

・しかし外因が内因に作用する 「南北関係」を見ないと排外主義と闘えない

ところが、米国にも西欧にも日本にも、トランプ主義をはじめ、極右勢力が登場している。それは現代のファシズム、早くも登場した予防反革命であり、「差別・分断」をテコに「没落」する労働者階級を反中国および反移民の排外主義に動員している(かつてのナチスでは反ソ連と反ユダヤ人)。なぜそうなるのか?
アジアを中心に、「南」が2つ(韓国・台湾式と中国・ベトナム式)の国家資本主義で、「北」からの資本主義の「移植」を「内在的発展」へ転化した(グローバリズムの展開)。「南」の後発資本主義が「北」の先発資本主義に対して不均等発展し(「グローバル・サウス」)、「南」の後発帝国主義=中国による、「北」の先発帝国主義に対する覇権闘争が勃発している。
同時に、中南米と中東・アフリカを中心に、国家の官僚制が弱く、国民統合力が弱い国々は、国家資本主義と開発=工業化を組織できず(民族・人種間の内戦など)、グローバリズムに乗り遅れ、ここから難民と移民が発生している。
この南北関係が「没落」に作用して、労働者階級が現代ファシズムと排外主義へ動員されている。労働者階級を奪還するには、まずこの南北関係を理解しなくてはならない。

・体制的危機だが革命は前途遼遠 労働者階級が排外主義へ動員されている

塩川さんは「米国が南北戦争以来の内乱に突入」、「政治・文化・思想を含めた危機」と言う。先発の「北」の危機、それは資本主義登場以来の危機である。しかし、革命情勢ではない。ファシズムの登場は予防反革命である。社会主義の革命は登場していない。
それどころか、労働者階級が大分裂し、その中の上層ではなく、「没落」している中層や下層がファシズムの排外主義に動員されている。塩川さんも同じ認識と理解できる。「労働者階級を排外主義へ動員している」には「大賛成」と言っている。

・労働者階級を奪還する社会主義の「ルネサンス」

これが体制的危機を革命情勢へ転化する主体的な動力である。やはり一番大きいのは「ソ連論」「中国論」である。なぜ官僚制国家資本主義へ変質・転化したのかという総括、そこから社会主義が「ルネサンス」される。塩川さんとの討論の終わりに改めて強調したい。
端的には言えば、「国有化だけでなく国有化と自主管理」である。コンミューン・ソヴィエト型国家の下で、労働者階級が様々な形態で生産手段を共有し、さらに生産を自主管理する。それが社会主義である。
もう一つは、トランプ主義の「保護関税で投資を呼び込み工業を再建する」。これが労働者階級をつかんでいる。社会主義はどうするのか? 帝国主義の国際分業とサプライ・チェーンは打破する。自己決定権と独立・自主の基礎として、各民族・各国家の内部で農業と工業の産業バランスを実現する。それによって、人間と自然の物質代謝のバランスも回復でき、地球の自然環境も保全できる。こうではないか? もっと考えてみたい。(おわり)

塩川・大谷論争 論点整理

@『展望32号』(25年4月)
・新しい共産主義のために 塩川三十二
A 未来421号(25.9.4)
・塩川三十二「新しい共産主義のために」(展望32号)を読んで(上) 大谷美芳 B 未来422号(25.9.18)
・塩川三十二「新しい共産主義のために」(展望32号)を読んで(下) 大谷美芳 C 未来422号(25.9.18)
・大谷美芳さんの批判に応えて(上) 塩川三十二
D 未来423号(25.10.2)
・大谷美芳さんの批判に応えて(下) 塩川三十二
E 未来424号(25.10.16)
・塩川三十二さんの反論(未来422号)に反論 大谷美芳



7面

9・18県庁行動での菅野完とドン・マッツの差別暴言弾劾

9・18兵庫県庁包囲行動は9月県議会開会日に、〈市民デモHYOGO〉が呼びかけるヒューマンチェーンと〈ひょうごデモ〉の2団体・数百人が県庁周辺で斎藤県政を弾劾する行動をし、大きな成果を上げた(写真下)
にもかかわらず、菅野完とドン・マッツ(正常化会)の差別暴言丸出しの〈市民デモHYOGO〉関係者への攻撃が執拗におこなわれ、市民デモ関係者は大きく傷ついた。彼らのYouTubeを見る中でこのような事実を確認し、この言動は放置できず、この種の差別暴言を一掃したい。

(1)菅野完のAさんへの「キチガイ(ママ)、人殺し」発言

まずは行動終了時、2号館階段下にいた菅野完がAさんに対し「キチガイ」なる暴言を乱発したことである。「障害者」である息子を懸命に育て、狭山・部落解放運動を生涯にわたり闘ってきたAさんは、菅野のかねてからの「キチガイ」発言に怒っていた。この日遭遇したので指摘すると、「お前はキチガイ、人殺しの中核擁護は同罪」などと面と向かってマイクで暴言を吐いた。「差別はやめろ」という指摘に「キチガイにキチガイと言ってどこが悪い」と開き直った。(この場面は菅野の取り巻きが撮った映像にはっきり残っている)
ちなみに法務省見解では「キチガイ・人殺し」発言は侮辱罪で、罰金10万円が科される。

(2)増山誠県議追及のBさんに対し、ドン・マッツは「極左・中核派・人殺し」の暴言

Bさんは本会議を終えた増山県議を追及。するとBさんを見かけたドン・マッツが、「Bは極左・中核・人殺し」の罵声を浴びせ、「Bがいるから警察が来る」と事実無縁のアピール。見かねて「関係ない」という人にも、「お前も中核か」「中核擁護は同罪」と毒ついた。

(3)更にドン・マッツは市民デモ関係者に所かまわず怒鳴り散らした。 

〈市民デモHYOGO〉の仲間がいる県庁2号館階段下にきたドン・マッツは所かまわず「市民デモは、極左・中核を抱えた年寄り暴力集団」と喚いた。集会準備中のスタッフ女性には「クソババア」なる下品な差別暴言。またCさんをはじめ2号館階段下にいる市民デモの人々にも「市民デモは老人極左左翼」と、昨年7月以降に継続的に斎藤県政追及闘争をおこなってきた〈市民デモHYOGO〉の仲間に、事実と異なる暴言を加えた。

(4)市民Dさんを取り囲み・追及行動

全体行動が終わった後、県庁2号館と1号館の間にいた反原発を闘う市民Dさん(女性)に対し、ドン・マッツが「Bを知ってるやろ」と詰問。「関係ないやろ」と答えると、数人で取り囲む。Dさんは毅然として小型マイクで反論するや、マイクを取ろうとする暴力的行為。10分ほどの論戦でマッツの論理が破綻するや、「はよ帰れ」という始末。

(5)菅野完の県庁1号館突入扇動と、「兵庫県警は偏差値30以下」の差別暴言

この日の菅野らの行動の狙い・本質を示したものはデモ終了後の、菅野の「県庁1号館突入」扇動だ。デモが終わると菅野はマイクを取り、「今日のデモはこれで終わりです。みなさんは1人の自由な市民です。これから1号館にいる斎藤知事に階段を駆け上って抗議に行こう」と、この日の「〈ひょうごデモ〉」とは無関係の行動を扇動した。これに呼応して20人ほどが階段を駆け上ったが、1号館中庭では「障害者」のマルシェがおこなわれており、大混乱が起こる前に県庁職員・警察官が阻止した。これに対して菅野は「兵庫県警は偏差値30以下のアホ」と、批判にもならない差別言動を浴びせた。

(6)ドン・マッツの学生Eさん批判と、正常化会の私物化

既に「県庁侵入」については学生Eさんが逮捕され裁判になっている。「逮捕の危険」(それがいかに不当であるとは言え)のある「突入」を無責任にも煽った菅野の罪は重い。
さらにドン・マッツは不当逮捕・長期勾留された大学生の人権など無視で、ドン・マッツは「県庁内で拡声器を使ったら捕まっても仕方ない」という権力の弾圧を容認する言辞を吐いてきた。さらにこの日の動画で、「今後正常化会メンバーは今後裁判に参加させない」と言明した。これまでも正常化会内部では、菅野・ドンに疑義を挟むものを「ガン詰め」して支配してきたが、ここまで弾圧と闘わないように「正常化会」を私物化することは許されない。

(7)黄テープをまいて味方と敵を識別

今回の菅野とドン・マッツの行動は、〈ひょうごデモ〉を利用しての〈市民デモHYOGO〉に対する計画的襲撃事件だった。ドンや菅野は〈市民デモHYOGO〉関係者に激しく毒ついてきたが、まずは「過激派・中核・Bは人殺し」とキャンペーンし、「極左・人殺しを容認する市民デモは同罪」と関係者を脅した。
その際〈市民デモHYOGO〉関係者と、菅野・ドンマッツらを区別するため左腕に黄色テープを巻かせた。巻いてないのが〈市民デモHYOGO〉だという目印をつけていた。組合大会などで激突が予想される時には区別する標識を付け、赤穂浪士の討ち入りや新選組の闇討ちでも「山、川」の合言葉を使った。今回あらかじめ敵味方識別のマークをつけていたということだ。

(8)少数の菅野信者以外、誰も菅野とドンを支持していない

「県庁突入」「〈市民デモHYOGO〉への暴言」というこの一連の「混乱」に対し、この間多くの市民を集めて斎藤追及運動を牽引してきた〈ひょうごデモ〉の呼びかけ人のFさんは「混乱が起こらないように、今後は原点に帰って1人で行動する」とXに投稿した。
菅野とドンに同調する人々は、Aさんにカメラを向けた人物や、Dさんを取り囲んだ数人、県庁1号館階段を駆け上ったごく少数の人々に過ぎない。
反ヘイトのカウンター行動に参加の人々が県庁包囲行動に参加していたが、〈市民デモHYOGO〉への批判はなく、「警官は帰れ」だけだ。菅野とドン・マッツだけが、「2号館近くにいる市民は極左を含む老人の過激派集団です」と誹謗・中傷を繰り返していた。

(9)差別・暴言を市民運動から一掃しよう

菅野とドン・マッツのYouTube、さらにはそれらの切り抜き動画には2人の犯罪性が事実をもって刻印されている。反斎藤の運動には、相手を人間として認めない「イヌ、ネコ、野菜」なる批判が今でも一部あるが、そのような批判は間違っている。兵庫県に民主主義と人権を取り戻す運動には差別暴言はいらない。菅野完、ドン・マッツの差別暴言を弾劾し、兵庫の市民運動から人々を不快にさせ、斎藤陣営を利する差別暴言を一掃しよう。(市川雄二)

県庁「侵入」弾圧結審
判決は11月27日
神戸地裁

9月29日神戸地裁で、今年の4月10日3人の若者が斎藤知事に面会を求めて兵庫県庁2号館を訪れ、逮捕起訴された学生の3回目の公判があった。
この事件は4月10日、誰でも入れる兵庫県庁の6階に行き、知事室受付前でトラメガを少し3分27秒使ったが、何事もなく県庁を出て、元町駅近くで2人が現行犯逮捕された事件だ。残り1人は18日に自宅で逮捕された。3人のうち2人は略式処分、学生のAさんが起訴され、この日3回目の公判で、結審した。
裁判で検察側は「罰金10万円」を求刑した。理由として、「県庁は社会通念上業務の場である、本件は平穏を害するため正当ではなかった。反省が不十分で、同種事案の発生を防ぐという意味で社会への影響もある」とした。それにしても10万円の罰金求刑で2カ月以上も勾留するとは誰が見ても不当な見せしめ的勾留だ。
これに対して中道一政弁護士は次のように反論した。Aは一次的には口頭での抗議を想定していたと供述しており、検察は証拠をつまみ食いしている。次に「相当な脅威を与えた」についての異議を申し立てた。脅威というが6階の職員は怖かったと供述していない。防犯カメラの映像では、3人が庁舎を出た後、2人の職員が愉快そうに話していた。
検察の論述は早口で聞き取れないことを目的化しており、裁判長からも注意される始末。これに対し弁護人と被告は堂々と無実を訴えた。
裁判後に報告会があり30人程が集まった。裁判の中でも述べたが、Aさんの勾留理由開示公判で検察は勾留理由を「抗議が目的だったから」としたが、本心はこれでなかったのか。「斎藤知事は支援者は歓迎していた。そもそも私たちは侵入していない、県庁は目的がなくても立ち入り可能である、請願目的の立ち入りがなぜ違法となるのか」と述べた。
次に中道弁護士が、立ち入った事実はあるが建造物侵入には当たらない。建物の性質や使用目的に反していなければ当たらない。逮捕手続き書にも「6階までなら一般人も入れる」とされている。1階正面玄関の管理規則掲示には「違反者の立ち入ることを禁じる」表示がない。立ち入り禁止を想定していないと言える。斎藤応援者の応援を斎藤知事は積極的に歓迎した。そして公人は中立で、憲法16条は請願の内容に基づく差別的対応を禁じている。管理規則に違反しようとする意志は認められない。よって無罪、とまとめた。
兵庫県庁弾圧市民弁論集会参加者からの意見は、県庁への立ち入りは自由だろう、注意を飛ばしていきなり刑事罰は重過ぎる。ある女性は「私たちの昭和時代は裁判所もどうせ国家権力だから、負けて元々みたいな感じだったが、今は違う。憲法を遵守する良い裁判官なら勝てる」と激励した。これに対しAさんは「法を信じてます」と応えた。 裁判はこの日で終わり、次回11月27日は判決となる。無罪確信し14時前、神戸地裁をうめ尽くそう。(高石学)

8面

大阪・関西万博 無惨に破産
未払い踏み倒し無責任解散か

矢野宏さんの報告をもとに万博、カジノ、祝園弾薬庫など活発な討論(10月5日 大阪市)

10月5日大阪市内で「社会・政治の流動化の中で運動のあり方を考える 10・5討論集会」があった。矢野宏さん(新聞うずみ火)がレポートしたテーマの1つ「万博・カジノ」について報告する。
大阪・関西万博は、前代未聞の海外パビリオン工事未払い問題を引き起こし労働者たちは路頭に迷い、下請け業者19社が訴えを起こし、倒産した企業もある。「命輝く未来社会」を唱う万博で労働者を酷使したあげくに見殺し。万博破産は明らかだ。

GLイベンツは6億7千万円踏み倒し

マルタ館の工事を請け負った京都の建設会社の場合。24年10月知り合いから懇願され、「国家プロジェクトだから」と思って引き受けた。12月マルタ館に着工、工期は4カ月しかない。元請けはフランスのイベント会社「GLイベンツ」の日本法人。契約では解体費も含めて2億3千万円。現場では「図面がない。図面を引いて作業を進めても変更は日常茶飯事」「やり取りはすべて英語。細かな意志疎通はできず」というメチャメチャな状況。現場に泊まり込み、朝から晩まで不眠不休で作業に追われ1カ月で7キロ痩せた。2月末工事代の6割が振り込まれ、4月13日開幕直前に完成させたが1億2千万円が未払い。ところが5月GLから請求書「遅延損害1億5千万円負担したから3千万円払え」が届く。6月被害者はGLに1億2千万円の支払いを求め東京地裁に提訴した。「差し出せるものは何もなく、残されたものは自分の命しかない」と言う。
未払い11カ国の内、セルビア、ドイツ、ルーマニア、マルタの元請けがGLで、6億7千万円の工事代金を踏み倒し、民事訴訟に。工期が短く、突貫工事。追加や変更の工事は契約書なし、口頭で請け負った作業だった。
5月〈万博工事未払い問題被害者の会〉を結成。万博協会と大阪府は「立て替えは難しい」「民間企業同士の契約」と言って、全く責任を取らず。被害者たちは、9月末には経産省に要請行動。

未払い問題はなぜ起きたのか

2023年日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設会長)は「本当に間に合うのか」と発言した。それは1年延長すべきという意味だった。夢洲の軟弱地盤とアクセスの悪さがあり、ウクライナ侵攻で資材は高騰した。しかし、吉村知事と万博協会は、聞く耳を持たず強行した。大手・中堅ゼネコンは、海外パビリオンからは撤退した。あせった万博協会は「海外パビリオン建設にかかるご協力のお願い」を出して中小企業に頼み込んだ。
広告大手電通の撤退がある。電通は、愛知万博では準備段階から社員を運営団体に出向させ、機運醸成、パビリオン建設、チケット販売などで主導的な役割をした。しかし五輪談合事件で大阪・関西万博から撤退し司令塔が不在となった。電通は「中抜き企業」であり、こんな会社に依存していることも問題だ。

「万博黒字化」のまやかし

運営費(1160億円)の8割をチケット収入でまかなう。黒字化の必要枚数1800万枚販売を達成したといっている。しかし建設費(2350億円)は入っていない。万博協会は、会計を公にする必要はないので実際のところはわからない。

ギャンブル依存症は「心のブレーキが壊れる病気」

万博会場の隣では、カジノの工事がおこなわれている。ギャンブルをやる人の2%が依存症にかかる。ギャンブル依存症は、ギャンブルでしか高揚感を得られなくなり、自分をコントロールできなくなる。「心のブレーキが壊れる病気」で治らない。夢洲カジノには6400台ものスロットマシンを設置する。こんな害のあるものをつくる維新は許されない。MGMとオリックスは、まず夢洲にカジノをつくり、次にオンラインカジノを日本に認めさせることが狙い。絶対にカジノを止めなければいけない。
レポートの後、意見交換があり、アルバイトも未払いであるという訴えがあった。
万博工事未払い問題を引き起こした吉村知事、国に責任を取らせ、維新を倒そう。(花本香)

11・30原発つづけるための乾式貯蔵NO!全国集会@高浜 主催:老朽原発うごかすな!実行委員会のチラシを紹介します

使用済み核燃料「乾式貯蔵」で原発延命を謀る関電に「NO」を!
自然エネルギーへの完全転換を求めよう!

(1)電力会社や政府は、使用済み核燃料プールに空きを作ることに躍起です。

原発を運転すると使用済み核燃料が発生します。発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。
そのプールが満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

(2)関電は、見せかけの「使用済み核燃料対策ロードマップ」を発表しました。

3〜5年後にその燃料プールが満杯になる関電は、2023年10月、日本原燃が運営する再処理工場(青森県)の活用、中間貯蔵施設確保などを盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけた「使用済み核燃料対策ロードマップ」を発表しました。

(3)関電は、福井県内での乾式貯蔵に向けての布石を打ちました。

関電は、この「ロードマップ」で、「使用済み核燃料搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討する」とし、福井県内での乾式貯蔵に向けての布石を打ちました。
乾式貯蔵は、満杯になろうとする燃料プールに空きを作って、原発の運転継続を可能にしようとする関電の策略です。

(4)関電は、約束期限が過ぎた現在でも、老朽原発を稼働させ続けています。

関電は、乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の搬出先として再処理工場の稼働を願望していましたが、昨年8月、日本原燃が27回目の再処理工場の完成延期を表明したため、関電の願望は破綻しました。
これを受けて関電は、「ロードマップ」を「2024年度末までに見直す。実効性のある見直しができなければ、老朽原発を運転しない」と、その場しのぎの約束をしました。
しかし、関電は「実効性のあるロードマップ」を示せなかったにもかかわらず、約束期限(本年3月末)が過ぎた現在でも、老朽原発を稼働させ続けています。
原発全廃が決定するまでは、原発延命に繋がる乾式貯蔵を許してはなりません!

(5)関電は、原発の新増設まで画策しています。

一方、関電は、7月22日、美浜原発の新増設に向け、中断していた地質調査を再開する方針を発表しました。
関電は、地震などの自然災害に脆弱で、行き場がなく子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料を増加させ、建設費、安全対策費が高騰し続け、電力消費者に負担増を強いる原発の新増設まで画策しているのです。

(6)世界は、原発縮小、自然エネルギーの利用に向かっています。

関電や政府が今進めようとしている3つの原発政策
@使用済み核燃料の乾式貯蔵、
A老朽原発稼働の拡大、
B原発新増設
は、いずれも「原発依存社会」を延命させるための政策です。
今、世界は、紆余曲折を経ながらも、原発縮小、自然エネルギーへと向かっています。自然エネルギーのみを利用すれば、

@大地震が発生しても過酷事故に至りません。
A燃料費はほぼゼロですから、コストは原発に比べて圧倒的に安いのは当然です。
B使用済み核燃料を発生させず、炭酸ガスを増やすこともありません。

使用済み核燃料の「乾式貯蔵」を阻止し、それを突破口に、老朽原発即時停止、原発新増設策動の撤回、原発全廃を勝ち取り、自然エネルギーのみで成りたつ社会を展望しましょう!