未来・第421号


            未来第421号目次(2025年9月1日発行)

 1面  強権的軍事路線走る石破政権
     反戦・反基地の力結集し10・19祝園へ

     8・24祝園弾薬庫 増設工事許さん
     抗議集会に150人     

 2面  検証
     自衛隊「南西シフト」の現状
     沖縄・九州・西日本での戦争遂行準備

 3面  具志堅隆松さんのお話を聴く会
     「新たな戦前」に抗するために
     8月14日東京

     沖縄日誌7月
     基地強化に抗う声
     タカラさちかさんが当選      

 4面  投稿
     沖縄スケッチ ヤンバル便り(第1回)
     辺野古レポート(新基地建設阻止闘争現状)
     2025年8月15日 名護市在住 島袋利久

 5面  投稿 宮古島紀行(下)
     進む最前線での基地強化
     西川雄二

     書評
     『沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか』林博史著 集英社新書 

 6面  通信KOSUGI(10)
     これ以上、差別と排外主義の跋扈を許すな!
     10月川崎市長選の候補者が「反ヘイト条例撤廃」を主張

     連載 私が推す労働運動のほん

     訃報 小西弘泰さん逝去

 7面  塩川三十二「新しい共産主義のために」(『展望』32号)を読んで(上)
大谷美芳      

 8面  ガザを飢えさせるな
     イスラエルに制裁を
     8月11日 大阪

     本の紹介
     『新しい階級社会』
橋本健二著
     講談社現代新書2025年      

     カンパのお願い

           

強権的軍事路線走る石破政権
反戦・反基地の力結集し10・19祝園へ

崩壊の危機を軍事路線で突破狙う

参議院選で歴史的大敗を喫した石破茂首相は、「石破おろし」=自民党総裁選前倒しを阻止するために、解散総選挙・反対派非公認の脅しを強めるとともに、強権的軍事外交路線につき進んでいる。
8月18日には祝園弾薬庫増設着工を強行し、23日には横須賀に寄港した英空母=プリンスオブウエールズと戦後日本初の実質空母=かがに乗船し軍事力強化を宣明した。イギリス・イタリア・日本で次世代戦闘機の共同開発をおこない、日英同盟を誇って見せた。8月21日からは自衛隊伊丹駐屯地で日米豪の指揮所演習(YS89)、9月16日からは米豪軍との実働訓練(オリエント・シールド25)をおこなう。沖縄宮古島では迷彩服で島内を行軍する自衛隊に抗議した住民に対し、威嚇・恫喝をおこない、これへの抗議に基地司令は「謝罪」に追い込まれた。
九州では佐賀空港にオスプレイ、新田原にはF35B、熊本健軍駐屯地には射程1000キロを超す12式ミサイル能力向上型が配備され、全島軍事基地の馬毛島の全面完成・自衛官配備が間近かだ。こうして与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・馬毛島に至る琉球弧は対中国包囲の軍事基地となり、九州全域の自衛隊基地が全面リニューアルされていく。この中では事故が発生し、基地外への実弾飛来(滋賀県あいば野)、自衛官の死亡(大分県日出生台)も発生。
つづいて中国・四国の補給基地化の上に、全国一の規模の祝園弾薬庫14棟増設工事が始まり、24日の緊急現地抗議行動には150人が集まった。祝園に貯蔵されるミサイル・弾薬は愛知県小牧市の三菱重工などで製造され、神戸港(海上自衛隊阪神基地)から沖縄に運ばれる。トマホークは日本海の舞鶴に運ばれイージス艦からの発射過程に入る。
安倍政権の残した集団的自衛権容認・敵基地先制攻撃能力の保持は、22年岸田政権の安保3文書の閣議決定に引き継がれ、「専守防衛」は放棄され、自衛隊は今全面的に変わっている。軍事予算は5年間43兆円と倍増し、市民生活の困窮をよそに軍需産業に多額の税金が投入される。最新鋭のステルス型「もがみ」護衛艦は1兆円でオーストラリア輸出が決まった。三菱重工・川崎重工・IHIなど武器商人が大手を振り、そこに幹部自衛官が天下る。徹底した反安倍姿勢の石破政権だが、軍備強化という点では安倍以上に反動的だ。こうして目の前でいま憲法体系が破壊されている。これを許してはならない。
この動きを止めようと、沖縄・西日本各地の基地と闘う住民団体がネットワークを作ってきた。10月19日にはその全国闘争として祝園弾薬庫闘争が闘われる。神戸港から運ばれることに神戸でも抗議の声が上がる。京阪奈丘陵から大阪市内を通って神戸に運ばれる戦争兵器の輸送に反対の声を上げよう。10・19祝園に総結集しよう。

選挙後も差別・排外主義をあおる参政党

参議院選では急激な物価高騰と生活苦、「失われた30年」と将来不安に対して自民党が大敗した。しかしこの生活苦を外国人労働者のせいにし「日本人ファースト」の差別・排外主義をあおった参政党が、選挙後も姿勢を改めない。梅村みずほは「差別でなく区別」と言うが、神谷代表の明白な朝鮮人差別用語の使用は差別ではないのか。外国人の犯罪は減少しているのに、犯罪集団化というデマ宣伝で多数を得たとして、胸を張れるのか。
差別やデマを居直る立花孝志や、議員在任中ヘイトだけをおこなった杉田みおは行く先々で抗議を受けた。そのたびに「警察を呼んでください」と言うが、札幌での「やじは無罪」の確定判決の前に、警察は介入できなかった。この抗議の広がりで立花も杉田も落選した。
そもそも街頭に排外主義というガソリンをまいて火をつけようとしていたら、それを阻止するのは当然の権利だ。川崎市ではヘイトには50万円の罰金が設定されている。梅村みずほらの行く道は、立花や杉田の道であることを実証しよう。
生活苦の中、軍備増強に走る石破政権と排外主義をあおる参政党を許してはならない。反ヘイト行動を強め、反戦・反基地闘争と合流し、憲法体系の破壊許さず命と暮らしを守っていこう。

8・24祝園弾薬庫 増設工事許さん
抗議集会に150人    

7月末、祝園駐屯地をかかえる京田辺市と精華町は、計3回の「住民説明会」を主催しました。しかし、拡張する14棟に入れる弾薬の種類も量も、自衛隊側は「軍事機密だから」と答えず、とても住民の納得いくものではありませんでした。
そうした中で8月18日、防衛局は朝から造成工事強行のための重機を搬入し始めました。祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワークは駐屯地正門入り口前で抗議の声をあげ、工事中止を申し入れました。隣接する旭地区の住民も駆けつけ、「こんなやり方はアカン」と怒りの声。
連日の抗議行動の上に、8月24日は、近畿一円から150人の人々が祝園駐屯地に集まり抗議集会の後、請願書提出に移ろうとしました。ところが責任者の吉野真澄祝園弾薬支処長は出てこず、正門前に私たちの代表を入らせません。自衛隊の態度は請願書受取を拒否するに等しい、憲法にも違反する無礼な態度です。 怒りのシュプレヒコールをあげ、再度の請願行動に来る事を確認しました。(T)

2面

検証
自衛隊「南西シフト」の現状
沖縄・九州・西日本での戦争遂行準備

はじめに

自衛隊の「南西シフト」が進んでいる。7月、佐賀空港にオスプレイが配備された。年内に17機を配備する予定だ。このオスプレイは水陸機動団(長崎県相浦駐屯地)の隊員を戦場に運ぶ。
同時に、宮崎県新田原基地にF35Bの配備が8月からはじまった。今年度中に8機を配備し、最終的に42機が導入される。F35B戦闘機は護衛艦から改修された空母「かが」に搭載される予定だ。F35Bはオスプレイと一体で運用される。占領された島嶼を奪還するためと言っているが、防衛省は他国にたいする上陸作戦を想定していることは明らかだ。
防衛省は12式地対艦誘導ミサイル能力向上型(射程は約1000q)を配備していく。今年、熊本県の健軍駐屯地に配備する。来年、湯布院に配備する。極超音速誘導弾の量産が2026年度からはじまる。 
また、武器輸出の動きが活発になっている。2014年に「防衛装備移転三原則」を策定して以降、その成果はフィリピンに防空レーダー2基を輸出しただけ。今年8月、オーストラリアに「もがみ」型の護衛艦(FFM)を輸出することが決まった。この艦は三菱重工が開発を担当しており、官民一体で売り込みをおこなった。これをバネにして、政府は武器生産と輸出にはずみをつけようとしている。
現在、「南西シフト」化する自衛隊基地に反対する闘いが新たな反戦闘争として持ちあがっている。以下、これらの課題をみていきたい。

(1)自衛隊の「基本戦略」(理念)

1957年、第1次岸信介内閣は、「国防の基本方針」を策定した。当時、圧倒的な人びとは自衛隊の存在を違憲と認知しているなかで、政府は「国民を守る自衛隊」を強調してきた。この基本方針のもとで、軍備を増強してきた。
2013年12月、第2次安倍晋三政権は国家安全保障会議を創設し、「国防の基本方針」に代わって、新たに「国家安全保障戦略」を定めた。「国民を守る自衛隊」は、おおきく「国家を守る自衛隊」に変わった。安倍政権は、2014年7月に集団的自衛権の行使容認を閣議決定。2015年9月に、「安保関連法」が国会で成立した。こうして、侵略戦争態勢づくりが進んでいった。
2022年12月、岸田文雄政権は従来の国家安全保障戦略を改定した。名前は変わらないが、内容的には新しい「国家安全保障戦略」になった。同時に、「国家防衛戦略」(防衛計画の大綱に代わるもの)と「防衛力整備計画」(中期防衛力整備計画に代わるもの)を策定し、これらは「安保3文書」とよばれている。
この「安保3文書」において、岸田政権は敵基地攻撃能力の保有を打ち出した。岸田首相は、23年1月の施政方針演説で「日本の安全保障政策の大転換」と言っている。このために、スタンドオフ・ミサイルを保有する。同時に、5年間で43兆円の軍事予算を投入し、GDP比で2%にする方針を決めた。岸田はこれらを閣議決定でおこなった。
敵基地攻撃能力保有は、相手国を侵略するということだ。ここで、攻撃対象は敵基地に限らず、敵司令部なども含まれている。これで専守防衛は名実ともになくなった。自衛隊の戦略が根本的に変わってしまった。

(2)自衛隊の「南西シフト」

2010年、民主党政権は「防衛計画の大綱」を改定し、従来の「基盤的防衛力」から「動的防衛力」を打ち出した。この大綱のなかで、「南西地域を含む防衛態勢の充実」があらたに示された。以降、陸上自衛隊の「南西シフト」がはじまる。
2018年6月、安倍はマティス米国防長官に「敵基地攻撃能力を持つ」と伝えている。2018年版「防衛白書」は、「南西地域の防衛態勢の強化」にふれて、「@離島の守りの充実、A有事などに速やかに対処できる部隊への改編、B空の守りの強化、C離島防衛への備え、D部隊をより遠くに、より早く輸送する能力の確保」をあげている。2018年12月、この方針にそって安倍政権は「防衛計画の大綱」を改定した。
この18大綱では、領域横断作戦能力に言及している。それは@宇宙・サイバー・電磁波の領域の強化、A従来の領域での能力強化、F35、P1哨戒機、KC46空中給油・輸送機、「いずも」型護衛艦の空母化、スタンドオフ防衛能力、機動・展開能力(オスプレイ、C2輸送機、16式機動戦闘車など)、B持続性・強靭性の強化、弾薬の整備などだ。
こうして、2022年12月、岸田政権は「安保3文書」のなかで「敵基地攻撃能力」保有を打ち出した。
南西諸島に陸自駐屯地が、与那国島(2016年)、奄美大島(2019年)、宮古島(2019年)、石垣島(2023年)と、つぎつぎに造られている。
ミサイルの測位と誘導は、測位衛星「みちびき」によっておこなわれる。2015〜16年にかけて、種子島、沖縄島恩納村、久米島、宮古島、石垣島に追跡管制局(アンテナ設備)が造られた。この電波局は、ミサイル測位の補正をおこなう。今後、「みちびき」4機体制から7機体制に増強する。ミサイルを誘導するために、これらの電波局が造られている。
電子戦部隊が、与那国島(2024年)、宮古島(2025年)、石垣島(2026年)に配備される。電子戦部隊は陸上総隊に所属し、2022年3月に発足した。本部は朝霞駐屯地(東京練馬)に置かれている。電子戦とは、電(磁)波を効果的・積極的に利用する戦闘を意味する。具体的には、電子攻撃(電波を発射して相手の通信を妨害)したり、電子防護(相手の妨害電波の影響を低減)したり、このために電子戦支援(電波を収集、分析)したりする。

(3)強化される九州の自衛隊基地

駐屯地前で銃をもって警備する自衛官(7月10日 宮古島市)

2018年、水陸機動団が長崎県相浦駐屯地に創設された。2025年7月、佐賀空港にオスプレイが配備され、同時に宮崎県新田原基地にF35Bが配備された。こうして、強襲上陸をおこなう部隊が九州に集約された。
湯布院駐屯地(大分県)には、2024年3月に「第2特科団」がつくられた。ここが自衛隊の「南西シフト」の司令部になっている。今年3月30日、陸上自衛隊湯布院駐屯地に「第8地対艦ミサイル連隊」が、隊員300人で発足した。
2011年、政府は馬毛島(820ヘクタール)の大部分を160億円超(評価額は約20億円)で民間業者から買収した。馬毛島は種子島の西にある小さな島で、かつて住民が暮らしていた。2023年1月から、自衛隊基地の建設がはじまっている。馬毛島の小高い丘は削られ、全体が航空母艦のようになっており、滑走路が造られている。
陸海空3自衛隊はここで実戦訓練をおこなう。馬毛島は「南西諸島防衛ライン」の後方支援基地になろうとしている。

(4)「多次元統合・領域横断作戦」

今年3月24日、陸海空の3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が市ヶ谷(東京)に発足した。約240人の体制からはじまり、今後280人に増強される。
組織改編は、敵基地攻撃能力を保持する、つまり対外戦争をおこなえる態勢をつくるためにおこなわれた。この方針は防衛力整備計画(2022年12月)に盛り込まれている。2006年に「統合幕僚監部」が発足して以来、大きな組織改変になる。
軍事力を抜本的に強化するにあたって、自衛隊はミサイル攻撃と電波領域を重視している。ここで7つの分野(@スタンド・オフ防衛能力、A統合防空ミサイル防衛能力、B無人アセット防衛能力、C領域作戦横断能力、D指揮系統・情報関連機能、E機動展開能力・国民保護、F持続性・強靭性)が強調されている。
現在、地対艦ミサイル連隊は全国に7カ所置かれている。北海道に3カ所(上富良野駐屯地、美唄駐屯地、北千歳駐屯地)、青森1カ所(八戸駐屯地)、九州2カ所(湯布院駐屯地、健軍駐屯地)と沖縄1カ所(勝連分屯地)になっている。すでに、健軍駐屯地(熊本県)には「第5地対艦ミサイル連隊」(1998年3月)、勝連分屯地(沖縄県)には「第7地対艦ミサイル連隊」(2024年3月)が発足している。
防衛省は、12式誘導弾能力向上型の艦上発射型を2026年度までに、空中発射型を2027年度までに開発する方針だ。さらに防衛省は地対艦・地対地精密誘導弾の開発(2024〜2032年)を始めている。今年3月31日に、三菱重工と契約を結んだ。
また、防衛省は、米国製の巡航ミサイル「トマホーク(ブロック4)」2百発を2025年度から配備開始。2026年度〜2027年度に「トマホーク(ブロック5)」2百発を配備する予定。これにあわせて、トマホークを貯蔵する弾薬庫が必要になってくる。(津田保夫)

3面

具志堅隆松さんのお話を聴く会
「新たな戦前」に抗するために
8月14日東京

講演する具志堅さん(右/8月14日 都内)

8月14日、文京区民センターで「具志堅隆松さんのお話を聴く会 『新たな戦前』に抗するために」が開かれ、会場だけで百人を超える市民が集まり、WEBで参加する人もいた。

具志堅さんの発言

「戦没者の遺骨を遺族に返すことをやっている。実現したかったことをほぼ実現した。(遺骨返還について)これまでやっていなかった国が責任を持ってやることになった。DNA鑑定もやることになったので、自分は引退しようと考えていた。だが、辺野古基地の埋め立てのために(遺骨がまだある)南部から土砂を運ぶという話が出て、『やめてくれ』という運動を始めざるを得なくなった。
もう一つ、『台湾有事』。(米政権が)バイデンの頃から『台湾を守る』と言われていたが、米と日本が守ると言っても誰がやるのかというと自衛隊。宮古・八重山に基地が作られている。反対する時間がないくらい速く進められた。(沖縄島の)うるま市にも作られようとしている。沖縄がミサイルの拠点になろうとしている。『ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会』を作った。
沖縄だけの話ではない。九州にも弾薬庫が作られ、全国に130カ所作ると発表している。
今どきの戦争はミサイルの撃ち合いが主だが、発射基地は作らないで車に載せる。撃ったら5分以内に離れる(※そうしないとそこに撃ち返される)。
『ノーモア…』の共同代表をさせられているが、戦争を止めるために、断るつもりはない。
(原点たる遺骨収集について)沖縄戦で那覇市でも激戦があって、子どもの頃は(ガマで遊んでいたら)鉄兜をかぶった骸骨があった。『家族は知らないのか』と考えた。28歳の時に本土から遺骨収集団が来た。戦友会が遺族を連れてきた。そこに誘われたのが最初。(収集を)自分がやってよかったのかと思った。遺骨の劣化が始まっているのがわかって、自分でやるようになった。
年寄り・小さい子どもの骨は民間人とわかる。『どうしてこの人たちが殺されなければならなかったのか』『戦争を避けることはできなかったのか』『人を殺すことは間違っている(※どの宗教でも共通)』『自分が殺されることは間違っている(※軍隊はそうなっていない)』『自分を殺すのは間違っている(※軍隊では自決と呼ぶ)』と言うことを考えた。
(カーチス・ルメイ叙勲取り消し運動について)東京大空襲で一晩に十万人を焼き殺した。そんなことになったら普通はおののくが、『効果があった』として日本全国に(焼夷弾による無差別爆撃を)広げた。
(沖縄戦を学びに来た)修学旅行生に『皆さんの地元にも戦争(被害)はありますよね。こういうことを調べるのも戦争を知ること』と言っていて、自分で調べたらどうしても(東京大空襲・ルメイに)行きあたる。
ここまでは戦争の話。国際法違反。私が問題にしたのは(日本が贈った)勲章。『航空自衛隊発足に貢献したから』としているが、だから何なんだ。3月8日に政府交渉をおこなった時、内閣府賞勲局は『外務省が推薦して瑕疵がないから認可した』と言っていた。外務省にも、今日の政府交渉で質問した。『互いに叙勲し合うのが慣例。閣議決定されている』としか言わない。広島・長崎の話もしたがかみ合わない。東京大空襲を指揮したのがルメイ。(ベトナム戦争時に空軍参謀長として)『ベトナムを石器時代に戻せ』とまで言った人物。
(戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワークについて)戦争になる危機感があり、『命どぅ宝の会』を作った。戦争が迫っているのがわかるくらいの状況。
(有事では)宮古・八重山の住民12万人は九州・山口に避難することになっている。沖縄本島では『屋内避難』することになっている。物理的に無理。本島の方が危険度は高い。米軍基地が集中していて全部攻撃目標。人間は都合の悪いことを考えようとしないということを感じる。
ハンストののちアピールする具志堅隆松さん(8月15日 都内)
(各地の基地の)あちこちの問題を結び付けたのが沖縄・西日本ネット。政府交渉は(国側は)軽く流す感じではなかった。『私たちが主権者である』というスタンスで臨んだ。
遺骨収集から出てきた『戦争を止めることはできなかったのか』という疑問を(本土から来た収集団に)言うと『当時は戦争に反対したり疑問を言ったりすると特高に捕まった』『本土でお坊さんが(出征兵士の)壮行会で〈命を大事にして生きて帰って〉と言って捕まって拷問で死んだ』という。(戦争中は)国に対してものが言えなかった。今は言える。
自衛隊が地域に馴染み過ぎている。基地が住宅地にもあるが、外国では許されない(※ジュネーブ条約違反)。
東日本の皆さんもみんな(ネットワークに)入ってほしい。
昨年12月5日・6日に『グローバルサウスアカデミックフォーラム』に呼ばれた。新しいパネル(研究班)として『(台湾海峡)両岸問題』が設けられた。 中国の地域紛争に日本からミサイルが飛ぶことで自動的に巻き込まれる。『出てってくれ』と呼び掛けた。自衛隊員が戦死するから。米軍も出ていくべき。外国の軍隊が80年間もいて、どれだけの被害があったか。それだけでも追い出す理由になる。
込み入った話は交流会で、と言われていて、参加したら『(南西諸島が)非軍事化されたら中国軍は来るか』『軍縮してくれ』というガチガチの国際会議だった。(中国側から)『中国軍が沖縄に行くという話を聞いたことがない』と言われた。」

沖縄日誌7月
基地強化に抗う声
タカラさちかさんが当選

7月3日 20日投開票の第27回参議院選挙が公示された。沖縄選挙区(改選1)に5氏・奥間亮氏(自民・公明推薦)、オール沖縄が推す・高良沙哉氏(立民・共産・社民・社大推薦)、和田知久氏(参政)、真喜志雄一氏(N党)、比嘉隆氏が立候補。また、比例区には山城博治氏が社民党から立候補。
高良氏は糸満市の喜屋武岬で第一声を発し「沖縄を再び戦場にしてはならない。民意を国政に突きつけるため、全力でたたかいぬく」と力を込め、20日の投開票に向け走り出した。

9日 陸上自衛隊は、佐賀駐屯地(佐賀市)に輸送機V22オスプレイの配備を始めた。九州、沖縄の防衛力強化と称する「南西シフト」の一環で、8月中旬までに暫定配備先だった木更津駐屯地(千葉県)から全17機が移駐する。陸自によると、佐賀駐屯地は隣接する佐賀空港の滑走路を使う。隊員数は約420人。目達原駐屯地(佐賀県)のヘリ約50機も移す。
西部方面総監の荒井陸将は「九州・沖縄の防衛の重要性は高まっている。佐賀駐屯地は戦略的に極めて重要だ」と述べた。駐屯地の正門前では配備に反対する市民100人が抗議活動を展開。8団体がオスプレイ配備反対の抗議文を提出した。
沖縄県民も反対の声を上げた。「戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク」の具志堅隆松さんは「配備に反対する佐賀の市民と連帯したい」と話し、声明も発出すると述べた。(15日に声明を発表)〈基地いらないチーム石垣〉代表の上原正光さんは「昨年、与那国駐屯地でオスプレイの事故を撮影した。機体そのものに危険性があるのではないかと思った」「佐賀に配備を押し付けて飛ばすのは異常だ」と批判した。

15日 石垣市北部の伊野田漁港内外で、米空軍が救難訓練を実施した。米軍は先島地域でのインフラ利用を重視し、たびたび石垣港も使用してきたが、民間漁港で訓練をおこなうのは極めて異例だ。市民からは「島の細部まで米軍がやりたい放題だ。島のインフラが軍事優先になっている」「ウミンチュにとって生活の場となる漁港が軍事的に使用されるのはいかがなものか」批判した。
中山義隆石垣市長の自動失職(市による専決処分議案の日付改ざんを受け、議会は6月18日不信任決議を可決。中山氏は解散か辞職・失職を選択)に伴う石垣市長選挙が8月17日投開票される。市議会野党の砥板芳行氏と中山前市長が立候補を予定している。

19日 参議院選挙の最終日、打ち上げ式がおこなわれた。高良沙哉氏は那覇市のおもろまちで最後の訴えをおこなった。高良氏が笑顔で現れると支持者から大きな拍手が送られ「必勝タカラ」コールが沸き起こった。山城博治氏はうるま市の十字路で打ち上げ式をおこなった。強まる排外主義を批判し「沖縄が声を出せば戦争は止められる」と訴えた。

20日 第27回参議院選挙が投開票された。沖縄選挙区(改選1)では、オール沖縄が擁立する高良沙哉氏が初当選した。高良氏は自民公認の奥間氏に約3万3千票の大差をつけ圧勝した。前回伊波洋一氏は約3千票差の辛勝だった、高良氏は今回の圧勝に、支持者らとガッツポーズで喜びを表した。比例区に立候補した山城博治氏は当選はならなかったが、社民党の1議席獲得に貢献した。(杉山)

4面

投稿
沖縄スケッチ ヤンバル便り(第1回)
辺野古レポート(新基地建設阻止闘争現状)
2025年8月15日 名護市在住 島袋利久

自公政権は沖縄の民意を踏みにじり、玉城デニー知事の権限を奪い、埋め立て工事設計変更の「代執行」を宣言。そして、2024年1月10日に埋め立工事を強行しました。
大浦湾には軟弱地盤の改良工事のためにトレミー船やサンドコンパクション船、ランプウェイ台船、デッキバージ船などの工事用船舶が16隻以上も大浦湾側に配置されました。更にA護岸並びに作業ヤード護岸付近に大型船舶が停泊しています。
この半年で大浦湾の海は一変してしまいました。しかし、この1年間軟弱地盤整備工事は進んでいるとは言えません。マスコミでの政府発表はいかにも工事が進み、もう基地建設に反対しても工事は止められないという印象操作され沖縄全体に諦めムードが広がっているように宣伝しています。しかし、不可解なことに石破政権は2025年6月9日からサンドコンパクション船(砂杭を打つ)6隻を「安全確保の為」と大浦湾から他の港に避難させました。更に、辺野古、大浦湾では「台風対策」と称して作業船も移動させました。そして、7月16日前後から8月5日まで大浦湾に停泊していた作業船の全てが「台風対策」と称して撤収されました。この10年間このような長期にわたる全ての埋め立て工事に関する作業船が撤収する事はありませんでした。
石破自公政権は、なぜ軟弱地盤の整備に欠かせないサンドコンパクション船6隻を2カ月間以上も辺野古、大浦湾から引上げさせてしまったのかを明確にしていません。想像するに、埋め立て海域に重大な問題や作業船におおきな欠陥があり砂杭を打つことが不可能になったか、あるいはマヨネーズ状の地盤が90メートル以上あり広い範囲にあるのではないか。それで、防衛局や工事を請け負う業者が再検討している可能性を排除できません。やはり、学者、専門家が当初から指摘していた通り完成は不可能だと思わざるを得ません。
石破自公政権は辺野古新基地の完成には12年かかると発表しました。しかし、軟弱地盤の改良工事には直径2メートル、長さ70〜90メートルの砂杭7万1千本を打ちます。
沖縄防衛局は大浦湾側の軟弱地盤改良工事の一環として砂杭を打ち込む作業を開始して8月29日で7カ月を迎えました。防衛局は7月28日までに約2900本の杭打ちが済んだと発表し、今後の作業日程を公表しました。7月29日の新聞報道によると砂杭を4700本打ち込む予定。半年で打ち込まれた砂杭は一カ月当たり483本と約8年かかるペースになります。
大浦湾の地盤改良全体で打設する杭は7万1千本で、そのうち砂杭は4700本となる。既に着手している地盤改良工法のうち、28日までにサンドコンパクションパイル工法で約1700本、「サンドドレーン工法」で約1400本打ち込まれた。これとは別に、浅瀬側埋め立て後に自然に分解されやすい性質の排水材を使用するペーパードレーン工法で約2400本打ち込む。これを含めて大浦湾の地盤改良全体で約7万1千本を打設する計画になっています。
砂杭だけで8年はかかるペースになっている。石破政権が説明する埋め立てなど全ての工事期間は9年3カ月と試算しています。
7月28日報道陣の取材に応じた玉城デニー知事は、大浦湾にいた作業船が台風の影響で撤退しているとした上で、「懸念している通り、工事がいつ終わるか、まったく明らかにできない」と述べ、国の工事の進行を疑問視した。(2025・7・29琉球新報)
新聞報道では9年3カ月としているが、この政府の試算は気候の変動や台風による影響などで工事が停止することは考慮されておらず完成の最短工期を試算しています。
沖縄は台風銀座と言われる県なので更に工期は伸びます。土木専門家、研究者は世界的にも例のない「90メートルの杭打ちは難工事で完成は不可能だ」と政府に訴えています。石破自公政権は「普天間基地の危険性除去には辺野古が唯一の解決策」と繰り返しています。基地完成までの工費は県試算では2兆5500億円かかり血税の無駄使いです。
石破政権は日米安保軍事基地強化拡大のために国民の血税を大手ゼネコン、日米の軍需産業に詰め込み、物価高により人びとの生活を更に圧迫しています。参院選挙では裏金問題や自公政権による「政治と金」など経済問題の失策により過半数割れが起こり政治基盤の脆弱性が露呈しました。
我々は声を大にして完成不可能な辺野古新基地を断念させなければなりません。そして、「普天間基地の危険性除去」の解決策は普天間基地の閉鎖、撤去であり、「辺野古移設が唯一」ではないことを沖縄と本土を貫き主張し続けていきましょう。

海上、陸上での闘い

我々は2025年1月10日「代執行」1カ年を糾弾する海上大行動をカヌー20艇、抗議船3隻、49人で海上集会を雨天と強風の中で決行しました。そして、この日は工事を完全にストップさせました。そして、4月25日埋め立て工事8カ年抗議、辺野古大浦湾海上大行動ではカヌー31艇、抗議船5隻を繰り出し、埋め立て工事現場にて海上抗議集会を60余人で開きました。石破自公政権はこの日も工事を一切停止しました。
6月28日恒例の年2回の「海のおまつり」は安和桟橋での死傷事故1カ年追悼集会と重なってしまい、私は安和桟橋の追悼集会にカヌー隊の仲間の了解をえて向かいました。
海上集会では歌あり、リレートークありカヌーを18艇、抗議船5隻を繰り出し海上でのステージはおおいに盛り上がりました。勿論、工事も止めました。ジャズシンガーの儀保貴子さんや海勢頭豊さん親子が素晴らしい歌を聞かせてくれ、フィナーレは「月桃」の歌で締め括りました。
現在のカヌーでの海上行動は月曜日、午前安和、塩川、午後、辺野古、火曜日は終日、水、木、金は半日。土曜日は終日です。我々は月曜日以外は朝7時半集合。全体でミーティングをして弾圧の心得がまえを確認してから辺野古の浜から大浦湾に向かいます。安和塩川からダット船が大浦湾に到着する前に船の出入りする開口部に迫り阻止行動を展開します。しかし、開口部には海上保安庁(以下海保)の大型ゴムボートが既にいますが身柄の拘束を恐れずに頑張ります。我々は拘束されるとGBボートに乗せられ辺野古、瀬嵩、あるいは他の場所で解放されます。そして、気を取り直して工事現場の大浦湾に向かい愚直に抗議行動をします。最近では熱中症に気をつけながら闘っています。
キャンプ・シュワブ前ゲートは朝9時、12時、15時の3回ダンプやコンクリートミキサー車が入構してくるので車両が出入りするゲート前に仲間達が座り込みます。そして、ある程度車両がたまって来ると機動隊がゴボウ抜きをして来ますので怪我をしないように抵抗します。
最近では直射日光がきつくアスファルトの照り返し及び、地熱が高くなるので熱中症対策をとり厳しい闘いを強いられています。

キャンプ・シュワブ県民大行動

毎月第一土曜日のキャンプ・シュワブゲート前の県民大行動(ブルーアクション)は県内の島ぐるみ会議や本土から参加する人もいます。因みに、東京の新宿駅南口では沖縄連帯行動として同時間に一坪反戦地主会を中心に「ブルーアクション」が展開されています。
2025年8月2日、第51回県民大行動は6百人が集まりました。はじめにオール沖縄会議の稲嶺進共同代表の挨拶で開始しました。そして、オール沖縄で立候補し、見事、参院選で初当選を果たした高良さちかさんが元気に参加しました。高良さんは6百人の参加者の前で「辺野古をはじめ、根深い基地問題をきちんと伝えるために、仲間を多く増やして国会で活動する必要がある」と決意表明しました。
県民大行動では県選出の国会議員の伊波洋一氏、屋良朝博氏等を始めとした県会議員及び市議会議員も多数参加しました。(発言内容は割愛)
ヘリ基地反対協の浦島悦子さんは3件の辺野古住民訴訟について報告し、8月7日の「埋め立て工事設計変更を不承認した知事を支持する住民訴訟」に多くの仲間が傍聴参加されることを訴えました。
三宅俊司弁護士は安和での死傷重大事故について報告しました。それは、事故で重傷を負わされたA子さんに対し、県警本部は「重過失致死罪」の容疑者として事情聴取を求めていることがわかりました。7月28日県警本部からA子さんに事情が聞きたいと連絡がありました。この事情聴取は事件発生から1年1カ月。安和での「抗議追悼集会」から1カ月になります。三宅弁護士は「本来の責任があるのは沖縄防衛局であり、現場を管理していた警備会社だ」と見解を示し、「被害者を加害者にしてしまうのは絶対許せない」と沖縄県警を厳しく批判しました。A子さんの事情聴取には弁護士の同席を条件にしたことに対し県警は「重過失致死罪の容疑者として調べるので弁護士の立ち会いには応じられない」と返答したという。
県民大行動に参加したA子さんのお姉さんも登壇しリハビリを続けるA子さんの現状を報告しました。A子さんも被疑者として事情聴取されることは納得できないと言っていた。集会中には事故で亡くなった警備員さんに参加者全員が黙とうしました。お姉さんは取材に応じ「白を黒と言いくるめられ許せない」と怒りを示しました。県警は琉球新報の取材に対し「捜査中の事案なので答えを控える」「本件は関係者が多い。慎重に捜査し、誰がどのような刑事責任を負うのかなど、あらゆる観点から事故原因を究明していく」とした。(2025・8・3 琉球新報)
玉城デニー知事はメッセージを寄せ、大浦湾の軟弱地盤改良工事に触れ「法律にのっとり厳正に審査し、問題があれば工事を中止させるという点はこれからも果敢に訴えて行く」と伝えました。最後にプラカードを掲げ気勢を上げ終了しました。(つづく、3回連載)

5面

投稿 宮古島紀行(下)
進む最前線での基地強化
西川雄二

サンエー前スタンディング(7月9日)

エム・シー・シー宮古島受信所の「怪しいアンテナ群」を見た後、宮古島市歴史文化資料館でおこなわれていた「戦後80年『慰霊の日』関連企画展 新たな戦争遺跡」を見に行った。(企画展は6月4日から8月31日まで)宮古島市教育員会が2017年度から市内の戦争遺跡の分布調査をおこない、今年の3月までに4冊の報告書をまとめたそうで、確認された戦争遺跡の総数は211にも上る。この企画展は、そのうち新たに発見・確認された戦争遺跡を中心にパネル等でそれらを紹介するとともに、過去に発掘された遺物「瓶や缶、医療器具、日用品など」を展示するものである。
宮古島にも米軍の上陸が予想されたため、3万人以上の日本兵が配備され、あちこちに陣地を作り、壕を掘っていた。海岸には上陸する敵を迎え撃つべく、特攻艇を秘匿しておく壕も構築され、島内には飛行場も3つ作られた(そのうちの一つが、現在の宮古空港になる)。また住民が避難する壕もあった。そうした壕の跡が調査・発掘され、記録に残し展示されている。宮古島に米軍が上陸することはなかったが、米軍機による空襲や艦砲射撃を受け、少なからぬ被害がでている。もし米軍が宮古島に上陸していれば、沖縄戦と同じような悲劇が起こり、さらなる住民が犠牲になったことであろう。この展示を見て改めてそう思った。このことを忘れず、記憶にとどめておこうとする宮古島市教育委員会はいい仕事をしている。再び沖縄戦を繰り返してはならない。なお、翌日帰る間際に、宮古島から伊良部大橋を渡る手前のところに、特攻艇を秘匿していた壕の跡が道路のすぐそばにあるので、案内してもらって写真を撮った。
その後、伊良部島に渡り、2023年4月に陸上自衛隊のヘリが墜落した海域を見に行った。ヘリ墜落を目撃した人もおり、大変「わかりやすい」場所でもあるのだが、なぜか機体発見や遺体収容が遅れたことについて、〈ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会〉の清水早子さんは、ヘリに米軍が同行していたのでそれを隠すためではないかと疑っていた。
宮古島訪問を7月8〜10日としたのは、ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会が毎週水曜日夕方におこなっている「サンエー前スタンディング」と、毎週木曜日の「千代田駐屯地(陸自宮古島駐屯地)ゲート前スタンディング」に参加するためである。いったん宿に帰ってから、夕方5時半から1時間ばかり、バスも通る県道沿いにあるサンエーショッピングタウン向かい側の歩道に行く。宮古島にサンエーを名乗るスーパーは他に、サンエー宮古島シティ(空港の近く)、サンエー宮古オリタ食品館があるので間違えないように。そこで横断幕を掲げ、スタンディングアピールをおこなう。人数は多くないが、にぎやかだ。ときどき通行する車から手を振ったり、ライトを点灯してエールを送ってくださる方もおられる。
翌日は、朝9時半からの千代田駐屯地(宮古島駐屯地)ゲート前スタンディングに参加した。千代田駐屯地のゲートは〈ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会〉共同代表・仲里成繁さんの畑のすぐ前にある。畑と道路の境界に横断幕を掲げ、のぼりを立ててスタンディングが始まる。道路わきを二週間前に草刈りしたにもかかわらず、あっという間に草が伸びてきたそうだ。この日は自衛官に呼びかけるような形のアピールが多かった。私も、昨日見た宮古島の戦争遺跡を思い浮かべながら、自衛隊、自衛官が戦争に行くことのないように訴えた。なお、駐屯地ゲートで警備する自衛官は、昨年から銃を持つようになった。戦争ができる、戦争をする自衛隊は、ますます市民に対し威嚇するような態度を強めている。8月5〜6日、宮古島で自衛隊は伊良部島・下地島において徒歩で長距離行軍する訓練をおこなったのであるが、6日の早朝にそれを監視していた清水早子さんらが「いらぶ大橋海の駅」の駐車場で自衛隊員に対しマイクでやさしく呼びかけをおこなったところ、宮古島駐屯地司令の比嘉隼人警備隊長が「許可を取れ」などと大声で詰め寄って恫喝するという事件が起こっている。この事件に対し清水さんらは19日に駐屯地で比嘉司令と面談し、抗議文と公開質問状を手渡したのであるが、比嘉司令は「威圧的だと捉えられたのなら私の本意ではなく、そのことについては申し訳ございませんでした」と紋切型の「謝罪」しかしていない。市民を恫喝し、威嚇する自衛隊を許すな。(おわり)

書評
『沖縄戦
なぜ20万人が犠牲になったのか』林博史著 集英社新書

今年(2025年)4月、林博史著『沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか』が集英社新書として出版された。これまでメディアを通して沖縄戦についていろいろ見聞きしてきた。しかし現在、日本帝国主義政治委員会によって対中国戦争政策が推し進められ、その最前線出撃拠点として琉球諸島が位置付けられ、琉球が新たな沖縄戦の戦場にされるような情勢にあって、改めて沖縄戦へのプロセスと沖縄戦の実態を捉え返し教訓を得る必要があると思っていたところ、この本が出版されたので読んでみたいと思った。
以下、書評に替えて私の読後感想を記すことにする。

まず、この本の特徴を3点挙げておきたい。
第1の最大の特徴が、日帝の対中国戦争政策が推進されている中にあって、これを阻止する立場から沖縄戦を捉え返していることである。これは私の問題意識とぴったり一致するので、私にとって格好の本だ。序文では、「いずれにせよ今日の日本に住む私たちにとって、人々の生命と安全を守るうえで、沖縄戦から何をくみ取り、現在、そして未来に生かしていくのか。その課題を今こそ考えなければならない。そのような切迫した状況が広がっているように思われる。沖縄戦から80年、今につながる問題として沖縄戦とは何だったのかを一緒に振り返って考えてみたい」と書かれている。本書を読むに当たって、この立場を堅持し、この視点を貫いて読み進めていくことが重要だ。
第2の特徴は、沖縄戦の諸事例について具体的な資料やデータ、証言などによって明らかにしていることである。この点は他の沖縄戦関係の書籍でも多少根拠にしているが、本書では逐一根拠を示している。これは極めて決定的なことだ。なぜなら、最近の自民党参院議員の西田昌司発言や歴史修正主義者らによる沖縄戦の残酷で悲惨極まる実態を歪曲・修正し否定するような暴論を根底的・全面的に打ち破るものとなるからである。
第3の特徴は、沖縄戦の諸事例を単に客観主義的に認識するのではなく、仮に自らがその現場にいたとしたらどのように感じ対応しただろうかという風にイメージを具体的に描き出して主体的な姿勢で読む必要があるということである。それは過去の歴史的事例として済ませるのではなく、今日的現在に引きつけて考えるということである。序文には、「自分がそこに巻き込まれていたらどうだったのだろうか、と想像しながら読んでいただければ幸いである。」と著者の読者に対する期待が示されている。

つぎに、本書から何を教訓としてつかみ取るかということを明らかにしたい。
これについても少々長くなるが序文から引用したい。「現在、日本全国では約300地区の自衛隊基地などの『強靱化』計画が進められようとしていることをどれほど多くの人が知っているだろうか。化学・生物・核兵器などによる攻撃にも耐えられるように司令部の地下化などが計画されている。・・・・・地上の基地施設が破壊されて司令部だけが地下にもぐって生き延びるような状況になった場合、その周辺に住んでいる人々はいったいどうなっているのだろうか。日本軍だけが地下の壕(ガマ)に潜んで生き延び、住民は壕から追い出されて砲爆撃にさらされた沖縄戦の状況と重なって見えてしまうのは考えすぎだろうか」「さらに米軍基地や自衛隊基地のみならず、日本全国各地の空港や港湾などの民間施設までも軍事利用が進められていることを考えると、沖縄だけの問題ではなく日本に住むすべての人々にも関わる問題なのである」こうしたことをリアルにしっかりとイメージして受け止めていくということである。,br> 最後に、日帝が対中国戦争政策とその最前線出撃拠点として琉球差別を貫いて位置付け、全国的な戦争体制構築を推進していることに対して、本書を実践的に活用することを訴えたい。日帝の対中国戦争政治粉砕!! 新たな沖縄戦=琉球諸島の戦場化を許さない!全国的な戦争体制構築阻止!≠フスローガンは琉球を含む日本の全ての住民にとって生活の安定と生命の安全に関わる現在的な課題である。このスローガンを単なるスローガンに終わらせてはならない。私たちの生活と生命を守るために、どんなことがあっても絶対に実現しなければならない課題なのだ。そのためには出来るだけ多くの人達がこの課題に自ら立ち上がっていくようにしていく必要がある。戦争になればミサイルや砲弾の嵐の中を仕事や生活をなげうって命からがら戦禍から逃げ惑うような状況を許せるのかということを多くの人達に問いかけていくことだ。このことを展開していくために、本書は絶好のよりどころとなる。本書を読み、活用して多くの人達と討論していくことの意義を強調しておきたい。

今ひとつ、本書の特質として2点を確認したい。
一つ目は、沖縄戦の全体像を八重山群島、宮古群島、奄美群島、さらに琉球からの移民先まで対象化し明らかにしていることである。これは他の多くの沖縄戦の著作が沖縄島とその周辺に限定していることと比べると、重要な着目点だ。
二つ目は、日帝の対中国戦争政治に対して中国・台湾・韓国・朝鮮・フィリピンなどアジア諸国の人民と連帯して闘っていくということについて、簡単ではあるがしっかりと提起していることである。これは極めて重要なことだ。なぜなら、戦争はそれぞれの国の人民を排外主義的に分断・差別し対立させることによっておこなうものだからである。わたしたちは各国の人民が分断・差別・対立と闘い、人間的共同性を形成していくために連帯し、それぞれの政府の戦争政治を打ち破っていかなければならない。(島袋純二)

6面

通信KOSUGI(10)
これ以上、差別と排外主義の跋扈を許すな!
10月川崎市長選の候補者が「反ヘイト条例撤廃」を主張

差別・排外主義を許さない! 8・11アクション(新宿アルタ前)

参政党をのさばらせるな!

党首が「ガンは戦後にできた病気だ」と平然と医療デマを語り、「医療費」を削減させようとしている。
「当面の課題はスパイ防止法の制定をめざす」と言っている。
自らの党を批判する記事を書いた新聞記者を公的な会見から排除した。
こんな政党を参院選で「勝たせて」しまった!
参院選比例区では参政党740万以上、日本保守党やN国党など得票を合わせれば1千万を超える人々が右翼・カルト・ヘイト・差別・排外主義集団に投票したのだった。
わが神奈川においても、公明党・共産党を圧倒して参政党が当選してしまった。その当選した初鹿野は選挙中、抗議に集った市民に対して「非国民」と叫び、その後も撤回しなかった。さらにその運動員は抗議する市民に対して、「10円50銭と言ってみろ」と叫んだのだった。

「日本人ファースト」に怒りの声

毎月やっている川崎市内駅頭での「沖縄署名」、7月27日のこの日は参院選が終わってすぐの署名行動だったので、チラシに「参院選挙 この国はどうなる? 日本人ファーストって? では外国人が恵まれているのか?」と書き、手すりには「差別にNO 参政党にNO」とステッカーを貼ってみた。
私のところに来た若い外国人の男性、こちらが「沖縄の署名を」と言ったのだが、首を傾げ、チラシにあった「日本人ファースト」のボードを持つ参政党の神谷代表の写真を指差した。
「よかった! 見てくれていた」と思って、「外国人がこの日本で優遇されていることはないですよね?」と話かけてみたら、「そのとおりだ」といって握手してもらった。在日の方がたはもちろん、日本に来ている外国人もこうした参政党などの跋扈を気にかけていることがわかった。
参政党の神谷代表も、朝鮮人に対して「馬鹿でも、・・・でも」などと、言うのもはばかられる差別発言を繰り返しており、これをみるだけでも議員の資格が全くないと言わざるを得ない。

「ヘイトは罰金50万円」のボードを掲げ抗議(8月3日川崎市)

部落差別主義者が市長選に立候補

そしてさらに許せないことに、10月25日におこなわれる川崎市長選挙に立候補することを表明した宮部龍彦という者。この宮部が経営している「示現舎合同会社」(川崎市内に所在)は、被差別部落の地名をウェブサイトに掲載し、これに抗議して部落解放同盟埼玉県連などから「差別されない権利の侵害だ」として記事の削除と損害賠償を求めて提訴されて敗訴となった。またその前には『全国部落調査』の復刻をホームページで発表、部落解放同盟全国連から糾弾状が出されている。
この宮部が「川崎市のヘイトスピーチ防止条例が表現の自由を侵害するから廃止をめざす」などと言っている。こんなヘイトスピーチを市内にバラまくために市長選に立候補するとは怒りがおさまらない。

8月3日は川崎駅前でもヘイトグループを圧倒

この日は猛暑のなか3時間にわたっての行動だった。
参政党らの差別排外主義が参院選挙で蔓延しそれが多くの得票につながってしまった。「外国人が優遇されている」というまったくのウソが「正当化」されたかのように「日本人ファースト」がまかり通ってしまった。この日も〈日の丸街宣倶楽部〉が登場、外国人差別の暴言を繰り返していた。しかし、彼らはたったの14人ほど、対してのカウンターは百人以上。みんな危機感を持ってか、いつもよりずっと多い人数で圧倒した。毎度の「多摩川太鼓」の大音声に加えて、ドラム隊も参加、コールもカッコよくヘイトの罵声が聞き取れないほどだった。またクルド人への差別を繰り返している埼玉県戸田市の市議会議員河合悠祐は、「日の丸街宣倶楽部」の渡辺賢一とケンカ別れしながらも川崎にあらわれ、河合の方は別の側に押し出され、カウンターに包囲され、ほとんどなにもできないまま退散させられていった。
私たち〈「ヘイトスピーチを許さない」かわさき市民ネットワーク〉は中央口でのマイクアピールとチラシまき、こちらも30人ほどで暑い3時間をがんばった。通行する人々は、チラシをいつもよりもけっこう取ってくれたと思う。
川崎で活動している私たち市民の運動が、在日当事者と協力して作り上げてきた「反ヘイト条例」、これが逆行されるようなことになってはならない。
東京では「レイシズムまみれの政党はいらない! 差別・排外主義を許さない8・11緊急アクション」が新宿アルタ前広場でおこなわれ、新宿歌舞伎町デモをおこなった。
参院選挙では、差別・ヘイト・排外主義を勢いつかせてしまったが、それをまた繰り返させてはならない。さらに取り組みを強めていこう。(神奈川・深津利樹)

連載 私が推す労働運動のほん

はじめに―労働運動に腰を据えて取り組もうとしているが、何か良い本はないだろうか? 若い人たちと労働運動の学習会を開こうと思っているので、適当なテキストを教えてほしい−こんな声にこたえて、何冊かの書を紹介します。大庭伸介

@『わたしの「女工哀史」』高井としを著(岩波文庫)

古典的な名作『女工哀史』の著者細井和喜蔵の連れ合いであり同志だった女性労働者の一生を綴った書。近代日本が健康と安全を無視した劣悪な環境のなかで酷使された若い女性労働者たちの犠牲のうえに築かれたことが、体験をとおして生々しく伝わってくる。
著者は戦後、ヤミ屋や日雇い労働で5人の子を育てながら、仲間たちと共に行政機関や暴力団と渡り合って生き抜いた。明るく逞しい生き方は、勇気と感動を与えてくれる。

A『在日朝鮮人運動史ー8・15解放前』朴 慶植著(三一書房)

日本の植民地とされて土地を奪われ、仕事を求めて玄界灘を渡り、さらに強制連行された朝鮮人労働者たちの闘いの記録。国家権力や経営者による搾取と虐待は凄惨を極めた。日本人労働者の彼らにたいする蔑視と差別は、二重の苦しみを与えた。
彼らは道路や飛行場・天皇の隠れ家などの建設現場や鉱山のタコ部屋で、奴隷的労働に従事した。血と汗にまみれて抵抗した彼らは、左翼労働運動の中心を担った。戦時下日本人労働者の闘いが封殺され姿を消しても、彼らは敗戦(光復)の日まで闘い続けた。
戦後日本労働運動は、朝鮮人労働者の決起から始まった。不屈に闘う彼らの姿は、私たち帝国主義本国の労働者に反省を強いる内容に満ちている。

訃報 小西弘泰さん逝去

70年の長きにわたり医療・社会活動に奮闘してきた元富田町病院長の小西弘泰さんが8月18日病気療養の末亡くなった。
小西さんは1937年京都に生まれたが、39年からは父親の職業のため中国の大連で育った。隣家の小林圭二さん(のち京大原子炉実験所)とは幼馴染だった。 敗戦後京都に戻り育ち、60年安保闘争の前に京都大医学部に進学。60年次は医学部学生自治会委員長としてデモの先頭に立った。大学を卒業後、1966年に大阪府高槻市の富田町診療所に入職。診療所の所長・理事長を務めながらも学生時代から継続で、週の半分は社会的な活動を続け、高槻市議も3期・12年務めた。2007年11月には総会に出席し、再建協選択を宣言した。
葬儀は家族葬でおこなわれ、8月21日病院を周回したあと荼毘に付された。後日偲ぶ会がひらかれる。

7面

塩川三十二「新しい共産主義のために」(『展望』32号)を読んで(上)
大谷美芳

「新たな戦争の時代に新しい共産主義の道を探る」が主旨。「共産主義論」よりも「現代世界論」である。@中国も帝国主義戦争と批判するべき、Aアメリカ帝国主義の危機は「南北関係」の中で見るべき、とコメントしたい。結局は「反帝・反スタ」の批判になる。
故・岩田吾郎さんにコメントを求められていた。追悼の意を込めてコメントしたい。

(1)日本・米国と中国の戦争 中国も帝国主義戦争 そう批判しないと反戦闘争は闘えない

これが第1点。塩川論文は、日本帝国主義が「対中国包囲網を強化する『アジア版NATO』を提唱し米帝を引きずりこもうとしている」、「対中国戦争挑発を煽りに煽っている」と批判している。「新たな沖縄戦」、第2次大戦の「沖縄戦をもっと大規模に再現」という危機感。それは同感。米国・日本の対中国の戦争は帝国主義戦争である。しかし、では中国の米国・日本に対する戦争は?塩川論文はそこをあいまいにしている。
ロシアに対しては、「スターリン主義の広範な残滓に覆われた特殊な」資本主義と規定し、帝国主義と、またウクライナ侵略戦争と批判している。中国論もそう期待する。
かつてのベトナム反戦闘争では、人民にベトナムの民族解放闘争に対する共感と支持があった。しかし、現在の中国は逆。台湾の「統一」は実は併合、近隣の国家を圧迫し、国内で少数民族を抑圧し人民を搾取。人民には正当な反感がある。『前進』の「米日の中国侵略戦争論」は、中国は「反侵略の祖国防衛」と言うに等しく、人民の正当な感情と対立する。
「対中国=反侵略」というデマゴギーの国防論、日本帝国主義は反中国・排外主義を煽っている。全人民的な反戦闘争を闘うには、そこを突破しなくてはならない。レーニンの「帝国主義戦争を内乱へ」は、第一次大戦でドイツもロシアも両方が帝国主義戦争であるという『帝国主義論』が基礎にあった。中国も資本主義であり、それが経済的土台と内在的な根拠になって帝国主義であり、帝国主義戦争である、こう批判しなくてはならない。

(2)アメリカ帝国主義の衰退と危機 「南北関係」の中で国際的に見なくてはならない

塩川論文はこう言う。「自動車産業におけるフォード・システムが崩壊」や「製造業における新自由主義の破綻」、これが「経済的衰退の本質的要因」。「日・独に対する争闘戦での敗北やIT化・金融化やサプライ・チェーンの行き詰まり」は「間接的原因」。「核心=階級支配の破綻」。「米帝危機の根源は米製造業の労働者支配が1990年代に崩壊したこと」。
これが第2点。「階級支配の破綻」で工業が衰退? 残念ながらそうなってはいない。階級支配は「破綻」ではなく「再編」。塩川論文自身も「トランプは…階級・階層の差別・分断を煽りとくに絶望状態にある製造業労働者の支持をかっさらっている」と言っている。
工業的衰退は、世界資本主義に占めるアメリカ資本主義の国際的な位置からきている。「北」=先発資本主義の中心として、金融資本主義化し、対外的には資本輸出、対内的には情報産業化している。資本主義の必然である。結果、工業が空洞化し衰退し、労働者階級が「没落」している。反対に「南」は後発資本主義化し、工業化している。その中心が中国。
「南北関係」を中軸に国際的に見なくてはならない。工業の「南北逆転」。塩川論文は、中国を資本主義と見ない。だから、世界資本主義から中国資本主義が捨象される。だから、アメリカ資本主義の見方が一国主義的になる。

(3)かってのソ連も現在の中国も官僚制国家資本主義 それがスターリン主義

「中国の現体制」は「共産主義への過渡期の歪曲」、「創成的歪曲」と「歪曲的創成」。これが塩川論文の中国論。まだ社会主義ではないが、もう資本主義ではない「過渡期」。それが「歪曲」されている。それがスターリン主義。これが「反帝・反スタ」の党派性になっている。しかし、哲学で言う「歪曲」は、政治経済学で言えば「資本主義化」である。
「最大の矛盾が農民工問題」、「もう一つの矛盾が少数民族問題」。前者が強調されている。「農民からの収奪をもって過渡期経済建設」。「世界最大の非正規労働力のプール」。「農民革命としての中国革命が農民を徹底的に搾取・抑圧」。「『社会主義建設』のために農民からの徹底収奪」。「農民工」は「世界最大の非正規労働者のプール」。
しかし、中国論は(ソ連論も)、第1に工業を基盤とする官僚主義の問題である。農業・農民問題と少数民族問題は第2、第3である。塩川論文は第1がない。

・官僚主義で工業化
・国有化と農業集団化が変質

中国で1949年に成立した「人民民主主義独裁」は、ロシアでは「プロレタリアートと農民の革命的民主主義的独裁」(レーニン)である(「戦時共産主義」から戦略的に退却して1921年に実行された「NEP」の実質がこれ)。その下、工業化・国有化と農業集団化が実行され、それが社会主義革命へ前進=プロレタリア階級独裁へ転化、とされた。
しかし、社会主義は実現されなかった。工業化・国有化を基盤に官僚主義が出現した。官僚が管理を独占し、労働者階級を管理から排除して搾取し(剰余労働の蓄積と拡大再生産を独占的に支配)、ブルジョア階級へ転化した。国家所有は官僚制国家資本主義へ、国家は官僚ブルジョア階級の独裁へ転化した。
国家所有の工業が体制を決める基幹。塩川論文はそこを見ていない。農業集団化は、農民の剰余労働を収奪して工業化する資本主義的原始蓄積へ変質した。資本主義は搾取(資本蓄積)を、経済外的強制による収奪で補完する(言わば「原始蓄積の継続」)。農業が集団所有でも私的所有でも農民を収奪する(少数民族や女性も)。これは塩川論文の通り。>
ただ、中国ではプロレタリア階級独裁と社会主義革命が企図された(ソ連にはこれがない)。官僚主義に反対する大衆路線の文化大革命である(この点で毛沢東はスターリンと真逆)。しかし、破綻した。その結果、変質し転化した。

・「反帝・反スタ」は生産関係の批判が欠落 宙に浮いた観念論

「過渡期」という生産関係はない。「反帝・反スタ」は政治的上部構造の官僚主義を批判するが、その経済的土台への反作用を見ず、生産関係からのスターリン主義批判がない。
「中国の政治権力を握っているのはブルジョアジーではない……中国共産党スターリン主義である」(『前進』2025年1/1号)。「中国共産党=官僚ブルジョア階級」なのである。
国家所有は、官僚制国家なら官僚による管理、官僚制国家資本主義である。社会主義はコンミューン・ソヴィエト型国家による大衆的自主的な管理である。「労働と所有の分離」が資本主義(賃金奴隷制)の基準、前者はそれ。社会主義は「労働と所有の再結合」が基準(共同所有で搾取を廃止)、後者はそれ。榎原均「資本主義批判」は、第二次ブンドに流入した「反帝・反スタ」の基礎にある宇野経済学=「労働力の商品化論」の批判であった。

(4)20〜21世紀の「南北関係」 「南」の民族解放・社会主義が後発資本主義・帝国主義へ転化

1917年ロシア革命後の20世紀の世界は、帝国主義から社会主義への過渡期である。帝国主義の植民地主義に対して被抑圧民族が民族解放闘争を闘う。ロシア革命をモデルに、民族解放・民主主義革命を共産党が指導し、資本主義の発展を経ないで、社会主義革命へ前進する。マルクス・レーニン主義と国際共産主義運動は、こう展望していた。簡単に言えば「民族解放・社会主義革命」、厳密に言えば「プロレタリア階級のヘゲモニー」=「主観的能動性」による「永続革命」=「二段階連続革命」である。
中国革命とベトナム革命、アジアが主戦場となった。それを反映して、「反帝反スタ」も第二次ブンドの「過渡期世界論」も、「大基本」は「帝国主義から社会主義への過渡期論」である。「ソ連論」を中心に「歪曲」と批判するか、「中国論」を中心に文化大革命を支持するか、これは「小党派性」に過ぎない。(つづく)

8面

ガザを飢えさせるな
イスラエルに制裁を
8月11日 大阪

8月11日、大阪駅前・人民広場において「ガザを飢えさせるな イスラエルに制裁を」を掲げたスタンディングアクションがおこなわれ250人が参加、途中から雨が降り出すなか多くの参加者がマイクをにぎりアピールした。呼び掛けは、関西ガザ緊急アクション。

雨の中250人がスタンディング(8月11日 大阪市)

イスラエルの軍事産業に日本が荷担

集会は、司会のシャープなコールから始まった。パレスチナの旗や思いおもいのプラカード、さらにガザの現状を伝える写真28枚、オタマとオナベを、太鼓やギターを手にした参加者は、駅の南口側の通り道をあけて、阪神デパートへの地下への階段まで、両側横並びに集まっていた。
冒頭、呼びかけ人のひとり、関西ガザ緊急アクションの役重善洋さんが発言。「2023年10月7日、ジェノサイドから675日め。6万1千人以上のパレスチナ人、1万8千人以上の18歳以下のこどもたちが殺され、今、こども28人、大人も含めて90人が毎日亡くなっている、自然災害ではなく、人為的なイスラエルの軍事作戦ホロコーストの餓死者。前代未聞の残虐なおこないに対し、世界は何の制裁もしないまま。ロシア、朝鮮民主主義人民共和国、イランなどにする経済制裁、禁輸措置などがイスラエルにはされていない。イスラエルには、米、独が大部分軍事支援し、日本のロボットメーカーが、製造ラインに協力し、軍事製品の部品など民生・軍事両様のものを取引している。日本人であるかぎりにおいて、こうしたパレスチナの異常事態への武器などの関与に無関心でいることはできない。28枚の写真を用意いたしました。声をあげつづけて、抗議していかねばならないと思います。」
コールの後、黙とう1分間。「写真を持っている方は、掲げてください」
英語の講師をしつつ、フィリピンでのNGO活動、路上生活の方への食支援などをおこなっている松中みどりさんがアピール。
ここでカンパのお願い。すべて、今日のカンパは、どんな形であれ、すべて事態の悪くなっているガザに送りますという呼びかけ。

封鎖された街の叫び

パレスチナ・ガザ出身の女性は、英語で、「皆様こんにちは! 今日私は、皆さんの前で、封鎖された街の叫び、この世界で涙以外に何も持たない子どもたちの声、そして、このがれきの中で、子どもたちを失った女性たちの声、そして日々亡くした親たちに抱きしめられる温かさを求めている孤児たちの思いを皆さんに届けたいと思ってここに立っています。・・・・・」。
その後もアピールが続き、最後に、主催者から、ガザ市に百万人、中部に30万人、ラファの南に60万人の人々が生活している。9月の国連総会でパレスチナ国を承認するG7などの英国、フランス、ドイツなどがパレスチナの国家認定をする(日本はまだしていない)運動を開始しているが、パレスチナの抵抗運動の骨抜き、敗北を前提にしている政治策動であることにつながってゆく懸念が語られた。
ガザを飢えさせるな、イスラエルに制裁を。一刻も早くジェノサイドを止めよう。

本の紹介
     『新しい階級社会』
橋本健二著
     講談社現代新書2025年

著者によれば、正規雇用労働者階級とは基本的に異なる階級としてアンダークラスが登場したことが、新しい階級社会の最大の特徴である。
従来のアンダークラスは戦後日本でいえば日雇い労働者、臨時工、住み込み店員などが存在していた。しかし、これらは比較的規模が小さい例外的な存在であった。
現代のアンダークラスは、他の階級と肩を並べるほどの規模で、階級構造の主要な構成要素として存在している。「プレカリアート」とも呼ばれる。
同じような下層階級が先進国共通に形成されている。

アンダークラス登場の意味

アンダークラスという新しい階級が出現したのは、現代資本主義が新しい段階に到達したことの結果の一つである。
アンダークラス=非正規雇用労働者は、その極端な低賃金、家族形成と次世代を再生産することの困難といった点から考えて、労働者階級の最下層であるというにとどまらず、伝統的な意味での「労働者階級」以下の存在とすら言うことができる。
アンダークラスの労働力の価値は、次世代を再生産する費用を含まない形で定義されている。すなわち消耗品として扱われている。

格差・貧困めぐる論争

階級のことを社会学では社会階級論と呼ぶことが多かった。
高度経済成長以降、格差と貧困の問題が「忘れ去られていた」が、橘木俊詔の『日本の経済格差』は、所得分配論の視点から所得格差拡大傾向を指摘し、結論として日本経済は80年代から格差拡大傾向にあり、今では欧米諸国と比べても大きいとした。これに対して「格差拡大は見せかけ」論は、高齢化が原因だとした。大竹文雄は、最近では自分を格差拡大否定論者だとするのは誤解だとし、若年層を中心に高齢化とは無関係の格差拡大が起こっていると主張するようになった。
格差拡大をもたらしたものとして1986年労働者派遣法施行、99年派遣の範囲が原則自由に、2003年製造業への派遣も解禁された経過がある。

伝統的マルクス主義の対応遅れ

1950年代、新中間層という新しい被雇用者の集群が生まれつつありといった見解に対して、共産党などのマルクス主義陣営はこれを認めず、一部管理者を除く被雇用者はすべて労働者階級というひとつの階級を構成する、その内部に基本的な利害対立はないと両極分解論に固執していた。
被雇用者の内部分化を軽視し、従来と異なる形態の貧困が拡大していると主張。宮本憲一の『現代の貧困』論は、その主張が「古典的貧困は解決して、現代的貧困だけが問題である」という受け止め方をされるようになった(もちろん彼は現代日本にも「古典的貧困」があることを認めていたが)。「一億総中流論」が左派的な政治分析においても前提とされていた。それによって対応が遅れた。
マルクスの階級理論では、階級構造は最終的には資本家階級と労働者階級へ二極化すると考えたが、その後、現代社会の階級構造を図式化すると、資本主義社会には、二大階級である資本家階級と労働者階級に加えて、新旧二つの中間階級が存在するという4階級図式は、現代の階級理論の最大公約数的見解である。そこにアンダークラスが登場するという大変化が起こったのである。

フレクシ・グローバル段階

資本主義のフォーディズム段階では、新中間階級は拡大し、労働者階級は最下層であるとはいえ、それなりの生活をおくれた。フォーディズム段階では技術水準と賃金水準が中間レベルの製造業が、先進国内に分厚く集積する。
グローバル化によって先進国の製造業は競争力を失って衰退し、安い労働力を求めて中枢を先進国に残して海外へ移転し、産業の中心は金融業と情報サービスに移行する。1980年代から始まった格差拡大は階級構造を一変させ、日本社会を新しい階級社会へ変貌させた。先進国の職業構造は、高度な技術や判断力を必要とする高賃金のものと、低賃金の単純労働とに分極化する。労働力の流動性が増し、労働力のフレキシブルな部分を担うのがアンダークラス。資本主義は1970〜90年代の過渡期を経て、フレクシ・グローバル資本主義段階という、新しい段階を迎えた。この段階では、労働力と生産手段が、グローバルにも一国内においても、流動的なものとなる。労働者階級は、安定した雇用や賃金を保障されなくなる。子孫を残さない。アンダークラスの出現拡大によってこの社会は持続不可能なものになる。
フレクシ・グローバル段階では全般的な格差拡大、アンダークラスの出現と拡大、旧中間階級の分解が進行する、とする。
この「フレクシ・グローバル段階」云々の論は、主にレギュラシオン学派の論に依拠していると考えられる。以上が要旨である。

また、少子高齢化と格差・貧困との関係、新型コロナ禍と階級間格差拡大も分析する。「貧困・格差」と「憲法、沖縄基地集中、所得再配分」との関係も考察している。後半部で、格差縮小と貧困の解消の社会的合意のもとでリベラルと伝統的保守の二大政党制への転換で今日の危機が解消されるような展望を記しているが疑問である。資本主義の発生過程の描写で、血と暴力による「資本の原始的蓄積過程」の言及が希薄で、大塚久雄の「中産的生産者層の両極分解」から資本主義が生まれたとする引用は物足りない。(山本昌二)

(カンパのお願い)

夏期カンパは未来社改装の特別カンパを

郵便振替
  口座番号 00970―9―151298
加入者名 前進社関西支社
郵 送  〒532―0002
大阪市淀川区東三国 6―23―16
未来社