未来・第413号


            未来第413号目次(2025年5月1日発行)

 1面  万博いらん・生活防衛・消費税廃止
    石破政権打倒へ人民決起を

     パレスチナ「土地の日」連帯集会&デモ
     イスラエルは恒久停戦せよ

 2面  投稿
     関生 加茂生コン事件差し戻し審判決 大阪高裁
     YD組合員に再び無罪判決!YI組合員に懲役6月、執行猶予3年の不当判決!
     4月17日

     沖縄日誌3月 基地増強すすむ
     宮城秋乃さんに有罪判決

 3面  石破政権の原発依存大暴走を止めよう
     6・8大阪うつぼ公園へ

     チェルノブイリ原発事故39年の集い
     医療従事者が被ばく語る     

 4面  日本の軍拡と軍産学複合体(上)
     武器輸出三原則撤廃と大学の軍事研究
     栗原瞳

 5面  ネット監視!サイバー先制攻撃法案を廃案に!緊急行動
     国会前に多数の団体の声

 6面  石川一雄さん追悼集会に参加して
     ―袴田さんの無罪勝利から学び、狭山再審の実現を誓うー
     4月16日

     『未来』411号3面石川一雄さん追悼文について
     訂正とお詫び 石川さんへの謝罪
     改めての決意を申し述べます

     治安維持法100年を問うB
     拷問と転向と「没落」
     闘う主体の内面的変革をこそ!

 7面  通信KOSUGI
     日韓条約60年を問う 今こそ、7・7思想の深化を
     日本軍「慰安婦」問題解決水曜行動in新宿に参加

     投稿
     マッサージボランティアで能登へ

 8面  無法・違法重ねる斎藤県政

     (本の紹介)
     『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』
     選挙ウオッチャー・ちだい 著 2022年1月 新評論

       

万博いらん・生活防衛・消費税廃止
石破政権打倒へ人民決起を

土砂降りの雨の中330人が集会とデモ行進(4月13日 大阪市)

コメをはじめとする物価の高騰で石破政権への怒りが拡大し、支持率は急落している。7月参議院選を前に追い詰められた石破は、トランプの関税攻勢を前に米国産コメの輸入拡大(日本農業の破壊)か、消費税引き下げか、給付金かの窮地にある。立憲民主党も同様だ。石破の同盟者・維新も万博破産も含め支持率下落だ。生活苦にあえぐ人民には消費税廃止しかない。5〜7月、石破政権打倒へ人民決起を作り出そう。

万博開幕日 現地でデモ

4月13日、大阪・関西万博の開幕日(初日)にあわせて、夢洲会場東ゲート前で「万博いらないデモin夢洲」が、大石あきこ(衆議院議員)事務所の主催でおこなわれた。このデモには、万博に反対するさまざまな団体と個人、330人が集まった。
この日は雨まじりで、午後からは風雨もつよくなった。まさに、今後の万博を予想するかのような天気だった。11時頃、地下鉄中央線はラッシュなみの超満員で、夢洲駅の出口は万博・東ゲートにむかう入場客で混雑していた。東ゲートとは反対に、デモ参加者はトラックターミナルの中にある集会場に向かう。
集会は、13時30分に始まった。大石あきこさんは「いろいろ妨害があった。いらないものはいらない。断固として万博に反対していこう」とあいさつ。その後、れいわ新選組の議員および議員候補、全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部、夢洲カジノを止める大阪府民の会がアピールした。
この大阪・関西万博には、さまざまな問題が指摘されている。@そもそもカジノのための万博。ここにガザ虐殺をおこなっているイスラエルが参加していることも許せない。とても「いのち輝く未来社会のデザイン」とはいえない。A会場建設費が2350億円に膨れあがっている。「大屋根」リング建設に344億円もかけている。これはカネと資源の無駄使いではないか。住民が物価高で苦しんでおり、このカネは市民の生活にまわすべきだ。Bアクセスは大阪メトロと夢咲トンネル、夢舞大橋、この2つのルートしかない。大阪メトロが止まれば、孤島になってしまう。C地震による津波の高さは5・4mを想定しているが、はたして大丈夫なのか。Dここはゴミの埋め立て地であり、つねに有毒ガスが発生している。4月6日にも、地下ピットでメタンガスが検知されている。安全対策に不安がある。E入場する際に不必要な個人情報を記入する問題、など。
午後2時、色とりどりの風船をもってサウンド・デモがスタートした。「万博 いらない」「ノー ノー エキスポ」「万博やめて 福祉にまわせ」「カネ 返せ」「万博・遠足 強制やめろ」「メタンガス〜 爆発するよ」「招致反対 イスラエル」「カジノも いらない」とコールを繰り返した。夢舞大橋の入口近くから道路を南下し、万博会場東ゲート前を通り、道路が夢咲トンネルに入るところをUターンして出発地点に戻った。
デモ終了後、大阪メトロの夢洲駅は人が多すぎて入れず、入場規制がおこなわれていた。諸条件は最悪だったが、「万博反対」デモは貫徹した。天候は最悪だったが、デモ参加者の表情は満足感で明るかった。

パレスチナ「土地の日」連帯集会&デモ
イスラエルは恒久停戦せよ

御堂筋を力強くデモ行進(3月30日 大阪市)

3月30日、大阪市内で、パレスチナ「土地の日」連帯集会&デモがおこなわれ、380人が集まった。
パレスチナ「土地の日」とはなにか? 1976年3月30日、イスラエルによる土地の収奪に抗議したパレスチナの6人が殺されたことへの追悼の祈りの儀式が、欠かさず、毎年、この日におこなわれる。ほぼ半世紀にもなろうとする年中行事になっている。
大阪の新阿波座公園には、午後3時を期して、人々がそれぞれ旗やプラカードをもって結集した。
冒頭、ヒデヨビッチ上杉さん(ジェロニモレーベル)がライブ演奏。イスラエルの侵略に抗議し、パレスチナ人民に連帯を表明する曲目を演奏し、会場全体を揺さぶった。『バラバラに吹き飛ばされても』は、この日にふさわしい一曲だった。以前ガザ地区へのジェノサイドに抗議する集会で語ってくれた女性の、爆撃で殺されることを想定して、自分の身体のあちこちに名前をかきつける家族の人々の悲劇をうたい上げた。
主催者あいさつをはさんで、スピーチをしたパレスチナ自治区ガザ出身で京都市に住むムハンマド・ハッジャージさんは「土地は私たちパレスチナ人のもの、私たちの中にあるもの」と訴えた。
つぎに、在日の方は、深いシンパシーをパレスチナの人々に持っていることを伝える発言をした。
続く、心のこもった数人のスピーチののち、Swing Masaさんらによる『不屈の民』で、中締め、この団結を歌う曲で押されるように、デモに出た。

御堂筋を長蛇のデモで

いつものように、沿道から、ジェスチャーや踊りやカメラで、熱心な声援がみられる。デモの内外の壁が乗り越えられる。ヴェトナム戦争の米軍の総括の一つが、戦場情報の公開だった。国際世論は、アメリカ社会をほとんど2分した。犠牲的にヴェトナムに出かけた青年たちは、国に帰っても白眼視されることになった。そして、傷病兵となって、優生思想の反共主義社会から干される。こうしたことは、湾岸戦争で、劣化ウラン弾で被ばくした青年兵士たちで再演された。そうして、傭兵制からドローン(無人攻撃機)の時代が来る。ガザ地区への攻撃には、劣化ウラン弾やクラスター爆弾などが使用され、レバノンには、バンカーバスター(地下で精密誘導されるミサイル)の弾頭に劣化ウラン弾が使われている報道もあった。ハマスなどをかくまったとしてレバノンの高僧たちが、爆撃で亡くなっていった。イスラエルのセトラーコロニアリズム(帝国主義の一局面。移住民の土地の乗っ取り)こそ他国への侵犯といえる。
思えば、ジェノサイドと言い、アパルトヘイトといい、戦争国家犯罪は、日本帝国主義によるアジア侵略、ヒトラーナチスから、広島・長崎の原子爆弾に継続されてきた。デモの内と外では、本当に心からの抗議がやりとりされた。
無差別空爆、虐殺の拡大を続けるイスラエルを国際的に追いつめ、ただちに占領・虐殺をやめさせよう。

2面

投稿
関生 加茂生コン事件差し戻し審判決 大阪高裁
YD組合員に再び無罪判決!YI組合員に懲役6月、執行猶予3年の不当判決!
4月17日

一部無罪のたれ幕をかかげる(4月17日 大阪)

勝利判決と不当判決

最高裁からの差し戻しを受けておこなわれたこの日の判決では、関西生コン支部のYD組合員が再び無罪となる勝利をかち取る一方、YI執行委員は懲役6月執行猶予3年の不当判決を受けました。

多くの支援が駆けつける

大阪高裁前の公園には正午を期して関西圏の支援が続々と結集、12時20分には裁判所を周回するデモを敢行。その後、公園に戻って前段集会がおこなわれ、反弾圧大阪実行委員会、京滋実行委員会、兵庫の会、東海の会、教育合同、なかまユニオン、関合労大阪、きょうとユニオン、兵庫ユニオン、大阪全労協、全港湾大阪支部、若狭の原発を考える会、米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会、全交、朝鮮総連大阪府本部と、支援団体から無罪判決を求める発言が続き、最後に当該2名の組合員が判決に臨む決意を語りました。
1時40分からの定員84名の傍聴抽選に並ぶ列は2百人弱に増え、2時半から201大法廷で1時間弱に渡る判決の言い渡しがありました。

事件と判決の経緯

加茂生コン事件は2017年、村田建材(加茂生コン)で「個人事業主」の形式で、実際には日々雇用されていたM運転手が関生支部に加入、10月16日に組合が団交を申し込むもこれに応じず、就労日数の差別に加え、子どもが保育園に通うための就労証明書の発行を会社が組合加入後拒否するという不当労働行為に対して、組合が抗議と団交の開催、就労証明書の発行を繰り返し求め、会社前での監視活動をおこなったことを強要未遂とされた事件です。普通の労組の活動であり、そもそも刑事事件で逮捕されるようなものではないのです。
しかし、2020年12月17日の京都地裁は、加茂生コン代表取締役の妻が急に体調不良を訴えた11月27日以降に要求行為を繰り返したことを強要としてYI執行委員に懲役1年(執行猶予3年)、YD組合員を懲役8カ月(執行猶予3年)としました。
他方、2021年12月13日の大阪高裁は、就労証明書発行は会社に信義則上の義務があるとして強要の成立を否定、また、11月27日に「仮病を疑ったことは無理からぬ面がある」と判断、YD組合員を無罪、村田建材が警察を呼んだ日のM執行委員(後に組合から脱落)の抗議は行き過ぎだと「脅迫」を認定、YI執行委員はその共犯として罰金30万円とされました。
ところが、23年9月11日の最高裁は、上告理由は当たらないとしながら、異例の職権による調査をおこなって上記大阪高裁判決が1審判決を十分に評価したものとは言えない等として上記大阪高裁判決を破棄しました。そのことで今回の判決は今一度、1審地裁判決が正当か否かを判決する場となったのでした。

裁判前に大阪地裁を一周するデモ(4月17日 大阪)

YD組合員の無罪判決を守り抜く一方、最高裁に忖度してYI執行委員を有罪に

判決終了後の集会で、片田真志弁護士が判決を解説。今回は12月4日の言動以外は、全て社会通念上認められる範囲を逸脱したとまでは言えないとしながら、12月4日の言動を強要行為とする。しかし、それはこの日に回答するという旨の約束を会社が反古にした等の事情を全く考慮していない不当なもので、傍聴席からも声が上がったように「最高裁の顔を立てた判決」というように私も感じたと述べました。久堀文弁護士は、「有罪になった方には申し訳ないが今日は無罪を維持した喜びに浸りたい、ただ、労組法の正当行為の判断がほとんどなされなかったことは残念だ」と語りました。森博行弁護士は直ちに上告の検討に入るとし、YD組合員が久堀弁護士への感謝を述べました。
有罪となったYI執行委員は、「YD組合員が無罪となって嬉しい。私たちの闘いは刑事事件だけではない。解雇無効に勝利したYD組合員は定年後再雇用を求めて争っているが、最高裁判決後は厳しい局面となっていた。今日の無罪判決を受けて、明日にでも団交を申し込む」と労組役員の鑑のような発言。最後に湯川裕司委員長が上告で無罪を勝ち取る組合の決意を述べて締めくくりました。
愛知連帯ユニオン

沖縄日誌3月 基地増強すすむ
宮城秋乃さんに有罪判決

3月1日 名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で、オール沖縄会議は「第48回県民大行動」を開催、市民560人が参加。市民団体や県選出国会議員らが発言。基地に向かって「新基地建設反対」とシュプレヒコールを上げた。

4日 沖縄防衛局は、うるま市宮城島からの土砂搬出について、同市平安座島の石油基地にある民間桟橋を使用して、辺野古への海上輸送を始めた。従来の中城湾港よりも短距離で輸送することを狙った。宮城島の鉱山から石油基地までは10分、中城湾港までは30分。海上ルートも短縮され工事は加速する。県は設計変更の留意事項にないものであり防衛局に詳細をただした。

6日 米軍北部訓練場返還地で米軍廃棄物を回収する活動をめぐり、公務執行妨害や火薬類取締法違反など複数の罪に問われている東村のチョウ類研究者、宮城秋乃さんの判決公判が那覇地裁(佐藤哲郎裁判長)で開かれた。
チョウ類研究者の宮城さんは、やんばるの自然と大切さを調査。その中で米軍の弾薬などを発見、県警に連絡するも県警が無視。そのため直接訓練場に持参し抗議を始めた。その結果7つの事案で起訴された。裁判では公務執行妨害は無罪、公選法違反など5つについて懲役3年、執行猶予4年、罰金30万円が言い渡された。判決について宮城さんは「(火薬の所持で)有罪になったことで米軍廃棄物が危険だと認められた」と述べ「わたしは変わらずたたかい続ける」と決意を語った。

7日 中谷元・防衛相は、宮城島からの土砂を石油基地の民間桟橋から搬出することについて「土砂図書の変更を要するものではない」と答え、搬出を続ける考えを示した。

13日 防衛省は、辺野古新基地建設で大浦湾の砂ぐいを1月29日から2月末までの1カ月間で3百本打ち込んだと答えた。単純計算だと約13年かかるペース。埋め立ての工事期間は9年3カ月の予定である、工事の遅れは否めない。

15日 政府は、長射程ミサイルを活用した反撃能力(敵基地攻撃能力)をめぐり、地上発射型の先行配備を大分県由布市と熊本市の駐屯地に地対艦ミサイル連隊を配備する予定。中国に近い沖縄には緊張を高める配慮から先行配備の対象とはしない方向。

24日 政府は、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する防衛省の常設組織「統合作戦司令部」を発足させた。司令官は米軍と運用・作戦面での調整も担当。日米の一体化をさらに進め、共同対処能力の向上をはかる。

同日 陸自宮古島駐屯地に電子戦部隊40人が配備された。県内では電子戦部隊の配備は宮古島が4例目、26年度には石垣島にも配備される予定。ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会はゲート前で「住民説明会をしない部隊配備に反対する」と抗議の声を上げた。

28日 政府は有事の際に自衛隊・海保が利用する「特定利用空港・港湾」に全国8カ所を追加。沖縄では宮古島の平良港が追加されることになった。平良港について、14日嘉数登市長が特定利用受け入れを表明した。11日野党市議7人が会見を開き抗議した。14日ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会が市に要請文を提出し抗議行動をおこなっている。
また、「特定空港」に決定している那覇空港では、那覇空港につながる3国道を整備・拡張する方向が26日に示された。(杉山)

3面

石破政権の原発依存大暴走を止めよう
6・8大阪うつぼ公園へ

大隊列でデモ(24年12月8日 大阪市)

(1)

関西電力は、またも約束を破った。 3月31日(年度末)までに、実効性あるロードマップを示せねば、老朽原発の稼働を止めると、福井県知事と約束をしながら、あいもかわらず青森県六ケ所村の再処理工場が26年に完成するから青森に持ち出すとか、フランスに搬出を増やすというペテン・詭弁をつかって、糊塗した。それを福井県知事が容認した。原発稼働のための出来レースであり、福井県民や関西圏・東海圏の住民の生命と生存に対する裏切りである。絶対に許せない。3月31日当日には、福井県美浜町にある関西電力原子力事業本部に対する抗議・糾弾のたたかいが200人でたたかわれた。

(2)

老朽原発うごかすな! 実行委員会は、来る6月8日に「もうやめよう危ない原発!大集会inおおさか」の開催を決定し、ひろく全関西・全国に6月8日大阪・うつぼ公園に集まろうと呼びかけている。全力で応えよう。
石破・自公政権は、原発依存社会へ向かって暴走をしている。この流れをとめなければならない。
政府は、23年5月に成立させたGX電源法をこの6月6日に完全施行しようとしている。
原発運転期間の認可規定を「原則40年、やむをえない理由がある場合、1回に限り20年延長」とした原子炉等規制法(原子力規制委員会の所管)から電気事業法(経産省・資源エネルギー庁の所管)に移行する。運転延長の認可権限を曲がりなりにも規制するというたてまえ(規制委員会)から、むき出しの原発推進の経産省に移すということである。
また、「40年ルール」について、原発が止まっていた期間について40年(60年)のカウントからはずすとしている。審査や定期点検などで原発が停止していた期間は40年(60年)に含まれないということ。本当に詭弁を使って、なんとしても、いまある原発をフル活用するということである。原発は、高温・高圧・高放射線にさらされており、仮に止まっていても条件は変わらないのである。この条件からするとたとえば、高浜原発1号機は、72年間動かすことが可能になる。60年超運転に道を開くのである。
こうした政府・電力会社の姿勢は、現存する原発をとことん物理的に損壊(原発事故発生)するまで使い切るというものであり、生命・生存など無視してもいいという最悪の資本の論理である。

(3)

さる2月18日には、第7次エネルギー基本計画を閣議決定した。
これまで曲がりなりにも、原発は縮小していくとしたたてまえを180度転換させ、「原発の最大限活用」を打ち出した。既存原発の徹底活用をはかり、建替え(リプレース)について、条件を緩和し便宜を図ろうとしている。また、既存の老朽原発を含む原発の再稼働を打ち出した。60年超え運転も積極的に進めるとしている。新設も視野に原発徹底活用を打ち出したのである。電源の2割を原発でまかなうということは、既存の原発をフル稼働して実現できる数字である。
がむしゃらに原発依存を進めるものであり、その結果、事故の危険性が、極限まで高まることになる。このような、第7次エネルギー基本計画を認めることは絶対出来ない。第7次エネルギー基本計画の撤回を断固要求しよう。

(4)

6・8大集会は、このような石破・自公政権の原発依存社会への暴走にストップをかけ、自然エネルギーで成立する社会への転換を求めてたたかわれる。自公政権の原子力に頼った政策を根本から打ち破り、人が人として、安全・安心にいきいきとくらすことができる社会への転換を求め、実現しよう。
同時に、7月に迫った、参議院選挙に対し、原発・エネルギー・核の問題を大きく焦点化させねばならない。原発推進暴走の石破・自公政権に対してNO! をたたきつけよう。 6月8日、うつぼ公園(大阪市西区)に集まろう。集会後の御堂筋デモ行進では道行く人々に原発反対を大きな声で訴えよう。万難を排して集まろう。(仰木明)

チェルノブイリ原発事故39年の集い
医療従事者が被ばく語る

4月20日、大阪市内で「チェルノブイリ原発事故39年の集い〜被爆80年 核も戦争もいらない〜」集会がひらかれ70人が参加した。主催は、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西。
集会では、村田三郎さん(阪南中央病院内科医師)が、「ヒバクシャの医療に携わって想うこと」という題名で講演した。また、アカリトバリが、故郷の福島に想いをこめて、歌と演奏をおこなった。

侵略戦争の反省

講演に先立ち、振津かつみさん(チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西共同代表)が事務局報告をおこなった。そのテーマは「ヒバク80年≠ゥらチェルノブイリ40年・フクシマ15年へ/ヒバクシャと連帯し核も戦争も許さない!」。
振津さんは次のように述べた。
「今年は広島・長崎『被爆80年』の節目になる。これは敗戦80年でもあり、核時代の80年でもある。この80年の意味を皆さんとともに考えていきたい」。
「政府は、一貫して被爆者にたいして国家賠償を拒否している。被爆者が求める被爆者救援法はまだ実現していない。被爆者は、なぜ国家賠償にこだわっているのか。政府が侵略戦争を真に反省していないからだ」。
振津さんは「朝鮮人被爆者が存在するのか」と問いかけ、朝鮮人被爆者の存在を強調した。われわれは植民地支配と加害の歴史を忘れてはならない。これは敗戦80年を問い直す意味でもある。
さらに、振津さんは「福島原発事故から15年目に入った。政府は原発事故などなかったかのようにふるまっている。〈核と人類は共存できない〉ことを確認し、核兵器も原発もない世界を実現するために、ともに行動していきたい」と提起した。

ヒバクシャの医療にかかわる

村田さんは、ひとりの医師として、この50年間ヒバクシャの医療にかかわってきた。そのなかで、ヒバクシャから学び、さまざまな原爆症にかんする知識を獲得してきた。村田さんはその体験を語った。
その内容は、@大学生の頃、被曝労働者・岩佐嘉寿幸さんに出会ったこと、A阪南中央病院で被爆者医療にかかわったこと、B在韓被爆者の渡日治療にかかわり、在韓被爆者との出会いがあった、C福島第一原発下請け労働者の実態調査、D内部被ばくの過小評価、原爆・原発における国家責任の放棄、Eヒバクシャの声を聞き、その実相にふれ、現場の実態から学ぶこと、などであった。どれも村田さんの体験に裏づけられたものであり、学ぶべきことが多かった。(村田三郎さんの講演要旨は次号に掲載。)
最後に、集会アピール(関西電力への申し入れ)を確認して、この集会は終わった。核兵器も原発もない、戦争のない平和に生きられる世の中を、私たちの手で作っていこう。(津田明夫)

4面

日本の軍拡と軍産学複合体(上)
武器輸出三原則撤廃と大学の軍事研究
栗原瞳

2022年12月岸田政権は憲法9条と専守防衛の国是を破って、「安保3文書」を改定し、「敵基地攻撃能力の保持」、軍事費5年間で43兆円、GDP比2%を打ちだし、政府は急速に軍拡と軍需産業育成・兵器開発を進めている。日本における軍産学複合体はどのような状況か。まず米国の軍産学複合体とはどんなものか調べて、日本の状況を考察した。

T アメリカの軍産学複合体

(1)軍産複合体

軍産複合体とは、軍事的組織と兵器産業が結合して生まれる軍事体制のこと。軍産複合体がアメリカで形成されるのは第二次大戦後の冷戦期(=米ソの軍事対抗)である。それまでは、戦争が起こる度に平時の産業を動員して兵器を造っていた。自動車産業が戦車を造り、航空機産業が戦闘機を造る。技術にデュアルユース(軍民両用技術)があるからである。
大戦終了間際に原子爆弾が登場すると、技術のデュアルユースでは兵器生産を支えることができなくなった。原子爆弾は工場の産物というよりも物理学者の頭脳の産物だから。ソ連が1949年原爆実験に成功、1957年人工衛星スプートニクの打ち上げと長距離ミサイルの発射に成功した。態勢挽回のために米・アイゼンハワー大統領が選択したのが軍産複合体である。技術のデュアルユースではなく新鋭兵器というシングルユースに特化する技術であり、戦争の有無に関わらず常に兵器を生産する産業。これをアイゼンハワーは、恒常的兵器産業と呼んだ。

(2)軍事的研究開発費 (軍事的R&D)

軍事に役立つ技術をひたすら追求するために、軍事費の一部を割いて研究開発費を設けた。これが軍事的研究開発費(軍事的R&D)の始まりである。米国は、50年代朝鮮戦争、60年代ヴェトナム戦争、80年代レーガンの軍拡、2001年〜アフガニスタン・イラク戦争と軍事費の4つの大きな山があるが、軍事的R&Dは一貫して増え続けている。
国防省の軍事的R&Dの配分は(1990〜2015年)、@基礎研究10〜16% A応用研究26〜40% B先端技術開発31〜60%。左表が受けとっている機関。 第1に基礎研究、応用研究、先端技術開発の全てにおいて、国防省内機関が重要な役割をはたしている。国防省内機関とは、DARPA(国防高等研究計画局)とミサイル防衛局のこと。DARPAは、軍産複合体の司令塔的な役割をはたしている。全国から集められた優秀な科学者たちが、兵器の選定と設計をおこない、実験で確かめた上で生産者に基礎的なデータを引き渡す作業をおこなっている。生産者の側はこれを受けてさらなる開発をおしすすめ、新鋭兵器の製造にいたる。
第2に、大学と連邦研究開発センターがいずれにおいても4位以内に浮上している。連邦研究開発センターは、連邦資金によって設置。運営を民間組織に委ねているゆえに国営ではない。そのミッションは軍事的な研究にあるが、多くは大学の附置機関としてキャンパスを共有し、大学との共同研究や学生指導をとおしてアカデミックな研究機関であるような印象を与える存在となっている。逆に大学は、基礎研究の枠をはみ出して、実戦に近い兵器の開発に乗り出している。
例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)とスタンフォード大学は軍事研究で有名である。第二次世界大戦の終わりには、MITは国防研究に関して産業界以外での政府の最大の契約先で、契約数75件、総額1億1700万ドル。キャンパス北端に放射研究所(レーダー開発)と称する軍事研究所を設置。この研究所は規模と重要性においてマンハッタン計画と競合関係にあった。彼らは「戦争を勝利させたのはレーダーで、原爆はそれを終わらせたに過ぎない」という。
MITの学科横断的研究所であるエレクトロニクス研究所、核科学工学研究所、リンカーン研究所に軍の資金を配分し軍事研究。

(3)レーガンの軍拡

軍事的R&Dが一段と増えるのは、レーガンの軍拡期(1983−89)である。ヴェトナム戦争の敗北とその後の経済停滞から抜け出すためにレーガンは「強いアメリカ」を取り戻すと訴えた。「強いアメリカ」とは、軍事的にソ連を凌駕することであったから、レーガンは戦争でもないのに軍拡を開始した。この結果、1988年に軍事費は5624億ドルに上昇。戦争のないところでの軍拡は、兵器の開発と調達が中心になり、軍事的R&Dは600億ドルに達した。これは軍事費の10%に相当。
レーガンは、軍事的R&Dを戦略的防衛構想(SDI)のために使用した。SDIは別名を宇宙戦争といわれるように、宇宙を利用して敵国のミサイルを発射地点で粉砕しようとするもの。科学者の協力をとりつけるために、レーガンは軍事的R&Dを米国中の大学にばらまいて、宇宙予算という名称を与えた。科学者がこれを受け入れたのは、この予算にはレーガンの野望とは別に、宇宙の征服という人類の夢が含まれていたためである。
宇宙予算の登場によって、それまでは兵器産業に独占されていた軍事的R&Dが、直接に科学者の手に渡るようになった。これによって兵器生産における科学者の役割は一段と大きくなり、科学者は軍と産業に並んで兵器生産のトリオを構成するようになった。「軍産複合体」に代わって「軍産学連携」という言葉が使われるようになった。

U 日本の軍産学複合体の状況

(1)武器輸出三原則

第二次大戦後の日本が兵器生産を再開したのは、1950年朝鮮戦争が始まったときである。ポツダム宣言によって日本の軍事力と軍需産業を解体したはずの米国が、朝鮮戦争に必要な武器を日本で調達する方針に転じたのが発端。兵器製造許可が発令され、米軍からの発注が朝鮮特需となって日本の武器生産をよみがえらせた。
1951年日米安保条約締結。1950年創設の警察予備隊は54年米国の後押しを受けて自衛隊に生まれ変わった。警察予備隊の武器はほとんどが米国から無償供与されていたが、自衛隊の武装は日本の責任となり、日本の兵器産業にとっては願ってもない展開となった。53年8月武器製造法公布。
1967年佐藤内閣が武器輸出三原則を定めた。日本の兵器生産が輸出を視野に入れるほどに成長していたことを示している。武器輸出を禁止する3つの地域として、@共産圏諸国、A国連決議によって武器等の輸出が禁止されている場合、B国際紛争の当事国、を特定した。
1976年三木内閣は、三原則の対象以外の地域への武器輸出も「慎む」との統一見解を表明し、武器全面禁輸が確立した。武器製造関連設備も「武器に準ずる」ものとみなされると明記。

(2)武器輸出三原則撤廃

武器輸出三原則の切り崩しが始まるのは1982年。米・レーガン大統領から中曽根首相に武器技術の相互交流について打診があった頃からだ。中曽根は、これを新鋭兵器の国産化に踏み出す好機と受け止めた。自衛隊の主力兵器の調達は米国からの輸入とライセンス生産に依拠していた。83年対米武器技術供与。武器輸出三原則については米国に限る例外措置とした。2005年小泉政権が弾道ミサイル防衛用の迎撃ミサイルの日米共同開発を決定。これも例外化措置。2011年12月野田政権による「武器の国際的共同開発・生産」の包括的例外化は、武器輸出三原則の最大の骨抜き。
2014年4月安倍政権が武器輸出三原則を撤廃し、防衛装備移転三原則を閣議決定。日本の武器輸出を国策とする大転換である。武器輸出の用途を、抑制的な5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)に限定した。但し、「共同開発・生産」という形をとれば、殺傷武器の輸出も排除されない。
この10年で完成品の武器輸出としては、三菱電機製の警戒管制レーダー4基のフィリピンへの輸出のみ。2020年に契約が成立し、これまでに2基納入している。2016年日本の潜水艦をオーストラリアに輸出しようとしてうまくいかなかった。

(3)防衛装備庁

2015年防衛省内に防衛装備庁が設置された。防衛装備庁は初期段階のDARPAに酷似している。防衛費から支出される安全保障技術研究推進費を軍事的R&Dとして大学や研究所や一部企業に配分するのが防衛装備庁のミッションである。日本の科学者は容易に軍事的R&Dを受け取ろうとしない。そこで用いられるようになったのがデュアルユースである。技術にはデュアルユースがあるのだから、それが軍事に使われるか民生に使われるかは基礎研究の段階では分からないというごまかしである。

(4)防衛装備庁の軍事研究に大学が参加

2015年防衛装備庁は「安全保障技術研究推進制度」を立ち上げた。軍事技術に応用可能な基礎研究に費用を助成するというもの。17年3月日本学術会議はこれを拒否した。1950年に出した「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない」と1967年の「軍事目的のための科学研究を行わない」という声明を改めて出した。その結果、助成を辞退、応募を躊躇する大学が相次いだ。20年秋、菅首相は、学術会議会員候補6人の任命を拒否した。
22年7月学術会議はデュアルユース(軍民両用)の先端技術研究について「そうでないものとに単純に二分することはもはや困難」などとする文書をまとめ、事実上容認する姿勢に転じ、「安全保障技術研究推進制度」への応募が増加傾向に転じている。
24年度の「安全保障技術研究推進制度」への応募数は203件、うち大学が44件。予算は約104億円。25件の研究課題を採択した。25件のうち代表者の所属機関が大学だったのは、北海道大2件、筑波大、玉川大、東海大、兵庫県立大、九州工業大、熊本大、各1件の計8件で過去最多。
23年度は応募件数119件、23件採択。うち、大学の応募は23件で、5件が採択。2回以上採択されたのは岡山大、大分大、豊橋技術大、熊本大、大阪市立大の5大学だけ。23年度の大阪公立大の応募・採択が前身の大阪市立大から通算して3度目の応募・採択である。

大学はどんな軍事研究

玉川大学は、「究極の暗号」とされる量子暗号研究で応募し20年度採択。年間最大1300万円の助成がでる。筑波大学は、カーボンナノチューブを使い衝撃に強い素材を開発する内容で19年12月採択。5年間で最大20億円という大規模な助成対象となる。
陸上装備研究所と九州大学との共同研究が、IED対処技術分野でおこなわれ、陸上装備研究所と帝京平成大学との共同研究もおこなわれている。これまで国産の防衛装備品開発は防衛省の技術研究本部(現在は防衛装備庁)と防衛産業に属する企業が担ってきたが、今や大学や民間企業が防衛装備庁の軍事研究をおこなっている。

(5)経済安全保障推進法の「Kプログラム」

2022年5月経済安全保障推進法が成立した。経済安全保障政策には4つの柱がある。@重要物資の安定供給(サプライチェーンの強靱化)、A重要インフラの安全性・信頼性確保、B先端重要技術(官民技術協力)、C機微技術(特許出願の非公開化)。
このB先端重要技術のなかに、内閣府の主導による経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)というのがあり、ここでも防衛省や防衛装備庁関連の軍事研究がおこなわれている。
「Kプログラムでは、民生利用のみならず公的利用につながる重要技術の実用化を強力に支援(これまでに計5千億円を措置、21、22年度補正予算)。研究開発ビジョン(第1次、第2次)により50の重要技術を特定。これまでに22技術に対して20件を採択・公表」としている。
「AI技術」「量子技術」「ロボット工学」「先端センサー技術」「先端エネルギー技術」の5つの技術と「海洋領域」「宇宙・航空領域」「領域横断・サイバー空間領域」「バイオ領域」の4つの領域に区分している。 宇宙・航空領域では、「衛星コンステレーション・ネットワークシステム技術、高性能小型衛星技術」「小型無人機」「超音速要素技術、極超音速要素技術」などがあげられている。
今年度の軍事予算の目玉は宇宙関連事業(5974億円)。敵基地攻撃などの目標探知などに使うため、多数の小型人工衛星を連携させる「衛星コンステレーション」の構築に3232億円。25年度末から段階的に打ち上げ、27年度中の運用開始を目指す。Kプログラムが敵基地攻撃のための軍事研究であることがわかる。
Kプログラムでは大学や企業、大手だけでなくスタートアップ企業や中小企業と、多様な技術者・研究者の参加を求めて、「官民技術協力」と称して軍事研究に総動員している。(つづく)

5面

ネット監視!サイバー先制攻撃法案を廃案に!緊急行動
国会前に多数の団体の声

緊急行動で国会前に(4月18日)

4月18日午前、参議院議員会館前で「4・18ネット監視! サイバー先制攻撃法案を廃案に! 緊急行動」がおこなわれ、数十人の市民が結集し、能動的サイバー防御法案反対の声を上げた。主催は、〈破防法・組対法に反対する共同行動〉〈共謀罪NO!実行委員会〉。
以下、参加者の発言を紹介する。

〈許すな!憲法改悪・市民連絡会〉高田健さん

「安保関連法によって敵基地攻撃能力が着々と準備されている中でのサイバー法。戦争の動きと一体」

〈解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会〉小川良則さん

「フェイクニュースにどう対処するか、という問題で日本維新の会がルーマニアの大統領選や兵庫県知事選のことを挙げて自分で都合よく論を組み立てているが、実際のサイバー法案は海外派兵なき戦争。論理のすり替えに対して、私たちの知性が問われている。衆院で他の法案との束ね法案で20時間しか議論していない。そんな雑な議論でいいのか」

〈出版労連〉前田能成さん

「私達は支持政党は自由だが『出版の自由』を守ることは絶対。サイバー攻撃とマルウェアは別。『安全保障』と言われるがこんな言葉に惑わされてはいけない」

〈軍学共同反対連絡会、経済安保法に異議ありキャンペーン〉小寺隆幸さん

「この法案には二つの問題がある。一つ目は通信の秘密を侵すこと。二つ目は先制攻撃であること。一つ目は言われてきたが、二つ目は手つかずだった。岐阜の風力発電反対運動の人たちの情報を警察が企業に垂れ流し、高裁判決で批判された。結局、公安は何でもやる。『発信元のアドレスをチェックするだけで内容はチェックしない』などありえない。特定秘密保護法からの流れのうちにある。学術会議法人化も同じ流れ」

〈戦争・治安・改憲NO!総行動実行委〉池田五律さん

「サイバー戦争法が戦争法だと思われていない。陸海空で戦争が起こったらサイバー空間でも戦争になるのが当たり前。自衛隊はすでにその部隊を2系統(陸海空共同の部隊と陸海空それぞれの部隊)を持っている。『攻撃の恐れ』の段階で(先制攻撃を)やることを考えている」

〈日本キリスト教団神奈川教区・秘密保護法反対特別委員会〉久保さん

「海渡双葉弁護士を招いて講演会をおこない、YouTube配信した」

〈JCAネット〉小倉利丸さん

「我々はサイバースパイ法案と呼んでいるが何故かというと、スパイの活動には違法な情報収集が盛り込まれていて、国際法上は違反ともされていない。各国は諜報組織を持っている。日本には明確にあるわけではない。実際にはあるが他国と肩を並べるようなものではない。今回の法案でそれを作っていく第一歩にするというのはあるだろう。攻撃は別の枠組みで捉えなければいけない。攻撃については違法であってもやる。サイバー攻撃は身元を明かさない。やっても『やりました』なんて言わない。平時のサイバー攻撃で米国がやったと思われるものがあるが米は認めない、中国も認めない。(第三者による)チェックは成り立たない。議員にとってもわかりづらい法案。その中で進んでいる。理解できる時間が必要」

〈東京・地域ネットワーク〉林さん

「誰かに頼って自分達の安全を考えるのは滅びの道。脅威に対抗するよりも脅威を作らないプレーヤーになることが大切。小倉さん、海渡双葉さんを国会の証人に呼んでほしい」

〈都教委包囲ネット〉

「国家がサイバーテロをやっていいんだという法案。『攻撃をやる恐れのあるPC』をどうやって調べるのか。通信の秘密を侵すしかない」

〈経済安保法に異議ありキャンペーン〉杉原浩司さん

「スパイウェア『ペガサス』を各国が導入している。イスラエルは既に(その種の武器を)持っている。2018年の国際見本市に出展していたので、抗議してソフトバンクに手を引かせた。デロイトトーマツ(コンサルティング会社)もイスラエルのサイバーセキュリティを売り込んでいる。日本の武器輸出のコンサルもやっている。この法案が通ればその流れは促進される。最悪でも法律の一つでも二つでも歯止めを掛けさせないと、(野党が)政権を取っても何も変わらない」

〈れいわ新選組〉上村英明衆院議員

「どう見ても怪しい法律。警察と自衛隊が関わって先制攻撃をやるということ。内閣府がどんどん拡大している。戦前は内務省が拡大した。世論を盛り上げるのが大事」

〈救援連絡センター〉三角忠さん

「救援連絡センターが発足して60年近く、一つの結節点を迎えている。治安維持法制定から百年。『能動的』というのは、先制的と言わないのがミソ。攻撃は最大の防御、先制的に叩くという治安当局の発想は変わっていない。警察が身分を偽って捜査するというのもやろうとしている。修正でお茶を濁すのではいけない。まだまだ遅くない。議員の体たらくを乗り越えていく」(品川元二)

6面

石川一雄さん追悼集会に参加して
―袴田さんの無罪勝利から学び、狭山再審の実現を誓うー
4月16日

会場いっぱいの参加者(4月16日 東京)

4月16日、全国から集いあった参加者は東京・日本教育会館の大ホール(800席)とサテライトスタジオ(200席)を埋め尽くしていました。
被差別部落に生を受け、権力の狡猾な罠によって「殺人犯」の汚名を着せられながら無実を叫び続けて62年。石川一雄さん86年の生涯とその「無念の死」を前にして、「無念の死」をもたらした一端を私自身が担っていたのではないかという疑念と後悔に胸をつまらせていました。
会場に飾られた石川一雄さんの写真
31年7カ月という獄中生活がどれほど石川さんの身体を蝕んでいたか。獄友が次々と無罪となり、袴田巌さんの再審無罪がかちとられたのに狭山が取り残されていることがどれほど石川さんを苦しめていたのか? 石川さんが「証拠を調べてくれたら無実は明らかになる」と訴えたとき「自らの命を削りながら生きられる時間との闘い」をしていると、なぜ気づくことができなかったのか?
己の非力さと、認識の甘さを思い知ることばかりです。
「狭山は特別だから」「部落差別の重さが」と言う敗北の言い訳をすることを私はやめます。袴田再審無罪の勝利には勝利した理由があります。@冤罪被害者・弁護団・支援者三位一体で闘ったこと、A「証拠の捏造などするはずがない」という検察・裁判所・弁護士三位一体の「神話」を突き崩したこと、B三者協議(弁護団・裁判所・検察)のやり取りを記者会見で公表し、マスコミを通して広く社会に知らせ世間の監視の下での裁判としたことです。
特に袴田さんに対する「ボクサー崩れ」という警察の差別扇動に対して、ボクシング協会が当事者として闘ったこと。また2014年静岡地裁の再審開始決定と袴田さんの釈放に対して検察が抗告、東京高裁が再審決定を取り消して袴田さんの再収監が取りざたされたとき、袴田ひで子さんがそうはいくかよ! 収監するなら私をやってみろ!≠ニ裁判所に迫った渾身の闘いは学んでも学びつくせないものです。
今、早智子さんが石川さんの「無念」を晴らすため、その遺志を次いで第4次再審請求の申立人となることを力強く宣言しています。春の訪れを告げる鶯のように自由に大空をとびまわって石川さんは無実を訴え、闘いを見守っています。早智子さんは決して一人ではありません。私たち一人ひとり、数百数千の鶯となって再審無罪の勝利まで共に闘いたいと思います。(平井康三)

『未来』411号3面石川一雄さん追悼文について
訂正とお詫び 石川さんへの謝罪
改めての決意を申し述べます

読者の方から、『未来』411号の私の記事の以下の個所について的確なご指摘がありました。
冒頭の、「1963年5月23日に女子高校生誘拐殺人事件の犯人にデッチ上げ、不当逮捕された石川さんは・・・」とありますが、重大な事実誤認です。
5月23日は「暴行・窃盗・恐喝未遂」容疑の別件逮捕。連日の拷問的取り調べで、6月13日「窃盗・暴行傷害」で起訴、6月17日に「強盗強姦殺人・死体遺棄」容疑で再逮捕。以降自白を迫られ、同年7月9日「強盗強姦・強盗殺人・死体遺棄・恐喝未遂罪」で起訴されます。よって、起訴罪名に「誘拐殺人」はありません。・・・ ・・・警察・検察も「誘拐」を立証できなかったことに狭山事件の冤罪性を明らかにしている、とのご指摘です。
厳しく言ってくださってありがとうございます。
かつては「誘拐」殺人事件の表記はありました。しかし今は、女子高生殺人事件が使われています。
あなたが言われているように、石川さんの闘いに深く学び、残された私たちがやらなければならないことは、正確な確実な内容を身に着けること。その過程をもって世論に訴え、石川さんの無実と狭山事件が部落差別による権力犯罪であることを明らかにして、再審無罪を勝ち取ることだと思います。
自分自身の責任と至らなさを痛感します。石川さんが獄中で書かれた最終意見陳述や上告趣意書の内容はじめ62年に及ぶ闘い、86年の人生を学び直します。
私はこの誤り・反省を深く心に刻み、今後の地域での闘いのうえに、第四次再審請求闘争の幕開けとなる5・23日比谷野音集会に参加する予定です。
お会いできたら改めてご挨拶できればと思います。今後とも宜しくお願い致します。
小山一彦

謝罪

本紙411号3面「石川一雄さん追悼」の記事(小山一彦さん執筆)に「女子高生誘拐殺人事件の犯人にデッチあげ」の文言がありました。この件について読者から「誘拐殺人」は起訴罪名にはなく明確な誤りだとの指摘がありました。
ご指摘のとおりで、編集過程でその誤りを正さず発行した責任を認め、ここに訂正・謝罪します。今後第4次再審請求闘争に『未来』は全力で取り組み、自己の誤りを克服していくことを表明し謝罪の言葉とします。
『未来』編集委員会

治安維持法100年を問うB
拷問と転向と「没落」
闘う主体の内面的変革をこそ!

治安維持法の下で、特高(特別高等警察)の残忍な拷問が横行した。その苦痛に耐え切れずに、転向したケースが少なくなかった。しかし、それがすべてではない。 「転向」という言葉は、取締り当局の造語である。転向者の多くは、その行為を「没落」と表現した。それは何を物語っているのか。
転向を国家の政策に組み込んだのは、日本だけである。天皇制に逆らう不心得者を改心させ、天皇制に忠誠を誓う真の日本人≠ノ立ち帰れば、罪一等を減じるという政策である。
外国では運動歴が浅く、階級意識の低い者から転向が始まった。逆に日本では、共産党の最高幹部から転向が始まった。1933年6月9日、中央委員の佐野学と鍋山貞親が共同声明を発して全党員に転向を呼びかけた。二人共、党の内外から声望が高かったので、社会に大きな衝撃が走った。
その内容はスターリン支配下の国際的指導組織であるコミンテルンから脱して、天皇制の下での社会主義をめざし、中国への侵略戦争を支持するという代物であった。
転向声明の影響は大きく、同年7月末までに未決勾留中の党員の30%、既決囚党員の35・8%が転向した。その後も雪崩を打つように転向者が続出した。
これに先立つ31年9月、中国東北地方への侵略(満洲事変)が始まった。そのとき国民の圧倒的多数は歓呼の声を上げた。残念ながら、労働者や農民、知識人の「反対」の声は、その前にかき消されてしまった。
これを見て東京地裁検事局思想部部長の平田勲の頭にひらめくものがあった。これこそ共産党がナショナリズムを克服するための大衆教育や宣伝を怠ったからではないかと。さらに共産党自身が自分たちの内面に巣食うナショナリズムに無自覚なのではないか、と気付いたのである。
事実、共産党は天皇制とそのイデオロギーについて、主体的に追究したことが全くなかった。だから満洲事変が勃発したとき、期待に反してほとんどの大衆が賛成したことに動揺し、自信喪失に陥ってしまった。
一方、逮捕されて長期の拘禁生活を強いられた一般党員は、初めて活動に明け暮れていた自分たちの運動をジックリと省みる機会を得た。その結果、次第に今までの運動の在り方に疑問がわき、内面から崩壊が始まった。そして最高幹部の転向を機に「没落」していったのである。
転向は共産党機関紙『赤旗』が口汚くののしったように、意志薄弱な「弱虫」が権力の圧迫に屈した結果として片付けられる問題ではなかった。
〈新たな戦前〉を迎えた現在、絶えず自己の内面と向き合ってナショナリズムの克服に努めなければならない。そして一般市民と日常的に話し合い、共に行動する中で自らを高める努力が求められる。(大庭伸介)

7面

通信KOSUGI
日韓条約60年を問う 今こそ、7・7思想の深化を
日本軍「慰安婦」問題解決水曜行動in新宿に参加

4月16日、日本軍「慰安婦」問題解決にむけた「第86回水曜行動in新宿駅南口」に参加した(写真上下)。主催は〈戦時性暴力問題連絡協議会〉。この日は天候も良く、多くの方々が集まってリーフを配っていた。
マイクでは「月間報告」、「日韓条約60年を問う」のスピーチ、そして「サバイバーを記憶する」として、この日は台湾からフィリピンに連行され「慰安婦」被害にあった陳蓮花さんのことなどの話が聞けた。
メインの「日韓条約60年を問う」とのスピーチでは 「今年は、日韓が国交を樹立して60年という節目の年、両国間の最も根本的な問題は、日本が朝鮮半島を植民地支配した責任をいまだに明確に認めていないこと、そして朝鮮民主主義人民共和国との間に国交が樹立されていないことだ。これはつまり、日本が過去の植民地支配に対する責任を未だに清算できていないことを意味する」として始まった。
「日韓条約を根拠に、植民地支配を合法とし、戦後補償にも応じない日本政府の姿勢は、人権の尊重を基調とする世界の趨勢に逆行するものだ。それは、旧宗主国が植民地支配の責任と向き合い始めた世界の潮流に逆行している。ドイツのシュタインマイヤー大統領が『歴史的責任に終わりはない』と語ったように、過去の過ちを率直に認め、深く反省し、その教訓を未来に生かす姿勢こそが国家の責務であるというのが今の国際的認識だ。近年では、イギリス、ドイツ、フランス、デンマークなどの国家が、自らの過去における重大な人権侵害を認め、謝罪し、その記憶を継承しながら和解を志向する人道的努力を進めている。日本もまたこの節目を機に、こうした国際的潮流に学び、過去の植民地支配に対する責任と真摯に向き合うべきである。
たとえば、日本軍『慰安婦』問題に関して、韓国の司法が日本政府に対して被害者への賠償を命じた判決に対し、日本政府は『主権免除』――『国家は他国の裁判権に服さない』という国際法上の慣習――を根拠に、国際法違反であると批判した。しかし近年では、重大な人権侵害に関しては主権免除が適用されないというケースが増えている。主権免除を盾に責任を回避する姿勢は、道義的に見ても恥ずべきことだ。
また朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化も、『拉致問題の解決』ではなく、何よりも植民地支配の過去を清算する一環として、早急に進めるべき課題だ。
4月4日韓国の憲法裁判所は尹錫悦大統領を罷免し、6月には大統領選挙が実施される見込みだ。野党の李在明氏が有力候補と見られているため、日本のメディアでは『再び反日≠フ大統領が誕生するのではないか』と懸念する報道も少なくない。しかし、こうした見方は韓国の民主化の意味を正しく理解しておらずその認識が誤っている。韓国では、過去の清算が民主化の一環として進められてきた。自らの政府による重大な人権侵害の真相を究明し、被害者の名誉を回復する取り組みがおこなわれてきたのだ。つまり、日本に対してのみ過去の責任を問うているのではなく、自国の過去とも真摯に向き合ってきたのだ。
日本軍『慰安婦』問題でも、以前の韓国政府は日本政府と政治的妥結を図ることを優先し、被害者の名誉回復に真摯に向き合ってきたとは言えなかった。2015年の日韓合意の際、『被害者を置き去りにした政治的妥結は許されない』という決意を持った多くの市民がこの合意に反対した。合意は被害者本人の意思を確認せず、当時の安倍政権と朴槿恵政権によって政治的に進められたものだった。その後文在寅大統領の時代に『和解・癒し財団』は解散となり、これに対し日本では『韓国は約束を守らない』と批判する声が上がった。しかし民意や被害者の意思を無視した政治的合意こそ、真に批判されるべきではないか。
韓国の保守政権は『北』を敵視し、韓米同盟を重視し、日本との歴史認識の問題を棚上げにして日韓関係の改善を進めてきた。一方で、歴史問題を軽視せず、『北』との融和政策を進める進歩派政権は、日本では『反日』と見なされがちだ。しかしヨーロッパにおいては、ナチスを批判することと現在のドイツを否定することは同じではない。変わるべきなのは過去を清算してこなかった日本なのではないか。今年を日韓条約の課題を克服するための契機にすべきではないか・・・・」などという貴重なスピーチだった。

7・7思想の深化を今こそ!

日本帝国主義によるアジアへの侵略戦争と植民地支配、それはアジア人民にいかなる苦しみと打撃をもたらしたのか。日本の労働者階級がこれに屈服し加担し先兵とさせられた事実。しかも戦後もなお植民地主義的支配が形を変えて継続し、日本人民はそうした歴史と現実に向きあう点で極めて不充分であり、基本的に無知・無自覚でありつづけてきたのである。そこから「7・7告発」をとおしてこうしたことを強烈に自覚し、「歴史と現実を知り」「存在と闘いに学んでたたかう」ということの大切さを自覚したのである(『展望』第6号中沢論文)。
自治労の職場では、指紋押捺拒否の支援、国籍条項撤廃のたたかい、また梶村秀樹氏(神奈川大学教授)の『排外主義克服のための朝鮮史』の学習をおこなって、入管法反対や徴用工や「慰安婦」問題も取り組んできた。
かつて旧安田派の故安田副議長が「労働者は十字架を背負って運動なんかできない。血債主義はもうやめてくれ」と言い、天田書記長は「川崎の職場活動では7・7自己批判の問題を出して組合員の支持が広がっている」と言いながら、結局安田に従ったとのことだ(『革共同政治局の敗北』)。
安田だけが労働運動をわかっていなかったということだ。 今、徴用工、「慰安婦」問題、また関東大震災時朝鮮人虐殺などの史実を否定する動きが強まり、全国でヘイトスピーチが蔓延し、「群馬の森・朝鮮人労働者追悼碑」の撤去、さらには金沢にある尹奉吉碑への右翼の攻撃が強まっている。
今こそ、7・7思想を深化させ、これらの取り組みを強化していきたい。(神奈川・深津利樹)

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マッサージボランティアで能登へ

何度もボランティアで能登に行っているグループに誘われて、4月はじめ、2泊3日で能登にマッサージに行ってきました。東京から車で行くと10時間かかるというので、それからマッサージをするのではこちらが持たないと思い、飛行機で入りました。
1日目。珠洲市のお寺の1室をお借りして、一人30〜40分で、6人の方々におこないました。
マッサージをしながら「地震の時はどうでしたか」と尋ねると、一様に「もうだめかと思った」、「覚悟した」、「お陀仏かと思った」という答えが返ってきます。
「豪雨の時はどうでしたか」と聞くと、「瞬く間に1メートル50センチぐらいまで水が深くなり、それが一気に流れていく。それとともに何もかも無くなった」、「畑はみんななくなった」という話をしてくれました。
今まで、新鮮な野菜を、お金を払って自然からとって来た人が、その後、徐々にスーパーに野菜が並ぶようになって、「駕籠に入れてレジに持っていくと、払えないほど高いので、また棚に戻しに行った」という方もいました。別の方は、「いわしやサバの缶詰とアルファ米だけの食事を1カ月以上も続けている。何より炊き出しがうれしい」と話してくれました。
また、他の方は、「地震の前からお父さんが脳梗塞で、お父さんを置いて逃げるわけにもいかず、何日か車中泊をしていたら眠ることもできず、そのうちにお父さんの具合が悪くなって亡くなってしまった。今は、やっと仮設に移ることができたが、一人で何をすることもできずに暮らしている」と言われました。仮設の広さは、畳2畳か3畳のワンルームで、押し入れは1畳分、あとの1畳半ぐらいでトイレとキッチンという作りだそうです。
中学生の息子さんがいるお母さんは、学校から「良ければ金沢とかに転校しても良い」と言われ、お母さんは「それでも良いかな」と思いながら「どうする?」と聞くと、「そんな簡単な問題じゃない。架設のシャワーの温度管理を誰がやるんだ。俺がやるよ」と言って、この地に残る決意を示してくれた。息子が誇らしく思えたと話してくれました。多くのクラスメイトが転校していったそうです。
2日目。珠洲市で4人ほどマッサージをして、輪島市に移って、「知的障碍者」の娘さんがいるお宅で、ご両親のマッサージをしました。
ニュースでは出てこない話を、マッサージをしながら直接聞かせてもらいました。聞きながら、「自分がこの状況になったらやっていけるだろうか」と思わずにおれませんでした。みんなが、1泊・2泊でも良いから、現地にかけつけて、ボランィアをしながら考え、「みんなで生きて行く」思いを新たにすることが必要だと思いました。(鷹林茂男)

8面

無法・違法重ねる斎藤県政

4月13日投開票の、宝塚市長選・伊丹市長選は、昨年11月兵庫県知事選以降、20万都市の首長を決め斎藤県政の今後を占う大型選挙であった。宝塚では4期にわたり革新系市長が続いてきたが、伊丹では5期20年の保守市政の継承と対決し、あわせて斎藤県政に対する賛否をも問うた。
結果は宝塚では従来から続く野党共闘を背景に勝利したが、伊丹では現職後継に1万3千の差をつけられ自公維の壁が崩せなかった。伊丹では斎藤派=躍動に連なる候補が短期日に9000票を集め、また選挙後は斎藤が当選候補にすり寄るなど、「斎藤県政問題」は依然として兵庫の民度を問う分岐点に他ならない。
無所属の高橋あこ候補は告示後10人を超す近隣女性市議(西宮、川西、兵庫県、大阪府、京都府各地)や、ママ友のボランティア、勝手連の老若男女の支援を受け、街頭では中田陣営を圧倒した。最終日は宝塚と一体で支援する泉房穂前明石市長や岸本聡子杉並区長の応援を受けJR伊丹駅前と、事務所前広場は大きく盛り上がった。特に11日の阪急伊丹駅前での退勤客相手のアピールではビラを多数が受け取るだけでなく、向こうから駆け寄り握手を求める退勤客・子ども連れの母親・高齢者が続出した。
この街頭での高揚に恐れをなした中田陣営は、公示後も自己の政治団体の「機関紙」と称する顔写真・名前入り・証紙ナシのチラシを所かまわずまき、全域でポスティングした。この立花2馬力選挙並みの脱法行為に伊丹市選管には抗議が殺到したが、機関紙での政治活動だから「いつでも何処でも」撒けるという始末。投票日当日投票所前でも撒けるかと問うと「通例の配布方法ならOK」で、「通例かそうでないかは判断できない」と言う始末。昨年11月知事選での立花2馬力選挙・デマ宣伝には選挙中も抗議が殺到したが、県選管は何の対応も取らず、その後も斎藤の違法・無法が続いている。
結果は当初は後継指名しなかった前市長が、高橋候補の立候補・台頭に急きょ中田の出発式に駆けつけ、高橋候補が市議時代厳しく批判した病院建設費用の高騰について言い訳がましく長口舌をうった。そして伊丹の自衛隊関連・酒造関連・中規模事業所経営者が一体となって後継候補支持に回った。
宝塚市でも「病院赤字問題」が争点だったが、長く国連勤務の小児科医を候補とし、254億円の病院建設費用・手術器具購入費を寄付した篤志家も支持を表明し勝利を収め、斎藤知事の支援を受けた候補を撃退した。

斎藤県政・N国との対決強めよう

阪神間では自民隠しの芦屋と藤原市長5期の伊丹を除き、大阪に隣接しながら非維新候補が宝塚、尼崎、西宮、川西の各市で勝利してきた。伊丹での反維新・反斎藤派市長の誕生はできなかったが、闘いは6月尼崎市議選に続いている。
尼崎市は斎藤派・立花派の憎しみを一身に受ける丸尾まき県議の地盤。丸尾さんは無所属市民派として尼崎市議・兵庫県議として当選を重ねてきた。この丸尾さんが斎藤県政問題を追及してきたことに、斎藤知事は憎しみを募らせ、百条委員会報告・第三者委員会報告が出てパワハラや公益通報違反が認定されても居直り、犬笛を吹くことをやめない。丸尾さんは昨年9月以降「斎藤追い落としの黒幕」とされ、ネットを使っての脅迫は1万件を超すメール攻撃が4月にも加えられている。この時、立花孝志を党首とする「N国党」(NHKから国民を守る党)が6月尼崎市議選に複数立候補しようとしている。
斎藤知事は3月5日と19日に、県議会百条委員会と元裁判官らからなる第3者委員会の最終報告が出されたが、百条委員会報告に対しては「一つの意見」と言いなし、第三者委員会のパワハラ認定には受け止めると言いながら、公益通報違反はいまだ認めず居直りを繰り返し、西播磨県民局長の尊厳を冒し続けている。さらに情報漏洩を調べる別の第3者委員会では、部下の犯罪行為を調べるのではなく、週刊誌の情報源を探索するという、言論の自由に公然と挑戦することを県としてやった。この件に対してはさすがに全マスコミ(新聞社、放送局、週刊誌など)が怒り、各新聞社は現場記者と社説でこれを追及している。
かくて兵庫県では違法・無法がまかりとおり、県庁職員・労働者は違法状態下での労働を余儀なくされている。
各地の選挙でも斎藤派=躍動の会やN国が立候補し、斎藤派を増やそうと必死だ。赤穂市議選では「躍動の会」が初当選(N国は落選)したが、この人物は居住実態がないことが判明。伊丹市長選にも斎藤派支援にきた姫路市議・Tは議員辞職勧告が出ても居直りをきめデマ宣伝を繰り返している。
兵庫県警は公正中立を装いながら、告発が受理された立花・斎藤・折田は逮捕せず、誰でも入れる県庁2号館に「侵入」したとして学生2人と労働者1人を逮捕した。兵庫県全体を無法状態に追い込み、民主主義と人権を侵害する斎藤・躍動・N国を許してはならない。このデマ宣伝を打ち破るため、N国の天敵である選挙ウオッチャーちだいさんの講演会が5月11日尼崎で開催される。N国らの無法・立候補、丸尾県議への攻撃を許さず、民主主義と人権を守る広範な陣形を築いていこう。(岸本耕志)

(本の紹介)
『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』
選挙ウオッチャー・ちだい 著 2022年1月 新評論

「NHKから国民を守る党」と称する奇妙・奇天烈な「政党」とその党首・立花孝志が乱暴狼藉を働いている。近くは昨年11月の兵庫県知事選と今年3月の千葉県知事選。兵庫では自分の当選を求めず、斎藤元彦候補のため2馬力選挙を展開した。千葉県知事選では県民のいない兵庫・大阪・東京で選挙運動をし、財務省前で襲われ負傷した。
兵庫での乱暴狼藉は、西播磨県民局長に対する「10年に10人と不倫」のウソを、選挙公報・掲示板ポスターで拡散。選管はこれだけで重大な警告を出さねばならないのに、立花らには何もしなかった。もう一つは選挙中に奥谷謙一兵庫県議の自宅・事務所に信者とともに押しかけ乱暴の限り。「自死したらアカンので今日はこれで帰る」という映像がTBSの「報道特集」に残っており、刑事告発を受理した兵庫県警はいまだ逮捕しない。また竹内県議に対しては「逮捕が怖くて自死した」と言ったが、県警本部長は「そのような嫌疑は一切ない」と県議会で答弁。さすがに謝罪したが、その後も選挙に出て事実無根の誹謗中傷を繰り返している。
この政党がどうしてできたのか。その秘密を克明に書き連ねたのが、選挙ウオッチャー・ちだいさんの『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』(2022年1月 新評論)である。
当初は「NHKの受信料不払い運動」のような形をとって登場し、地方選挙に出まくり、やがて一定の浮動票がある都市近郊で立花孝志らが当選する。2017年には尼崎市でも当選したが市議としては何もせず2期目は逃亡。2018年の川西市議選では徳島県教組襲撃で有罪判決を受けた「お鶴」こと中曽千鶴子がその正体を隠して当選するも、徐々にその正体がばれ2期目で落選。その後、立花やガーシーが参議院選で当選し政党交付金の受けとれる「国政政党」になるが、次々名前をかえて「みんつく」党になる。その党首・大津との裁判に敗北し、政党要件を失い「諸派」となって現在に至る。ここらあたりまでのことを事細かく書いたのがこの本だ。
ちだいさんの最大の功績は立花のスラップ訴訟(通例はこの訴訟攻撃に嫌気がさし闘いをやめる)に立ち向かい裁判に勝利し、「N国=反社会的カルト集団」の規定を社会的に定着させたことだ。その後も立花を著作と映像で追いつめる「天敵」ぶりを発揮している。5・11尼崎集会(14時、尼崎女性センター・トレピエ)では、この著作以降のN国と立花の悪行を余すところなく語ってくれるだろう。(M)