万博破産、トランプ関税で窮地
4・13開幕日 夢洲に反対の声
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万博・カジノに怒り 西谷さんと3人のパネリストの訴えに聞き入る(上)会場は満杯(下)(3月30日 大阪市) |
3月30日、大阪市内で 「行ってはいけない 万博・カジノ反対府民大集会」が開かれ、600席の会場は一杯になった。
西谷文和さん(路上のラジオ)進行のもとで、3人のパネリストがジョークをまじえて説明し、夢洲万博の危険性と、税金を使って企業は丸儲けであることを明らかにした。パネリストは、藤永のぶよさん(大阪市民ネットワーク)、桜田照雄さん(阪南大教授)、坂本篤紀さん(日本城タクシー代表取締役)。主催は、路上のラジオ。
最初に、西谷さんが「リングは2月中旬、海水注入からわずか2日で護岸が浸食され始めたが、公表は3月10日でギネス認定(3月4日)後」、「水上ターミナルに関わるトイレの給水とし尿くみ取り・運搬業務に2359万円」とあり万博にくみ取りトイレ。さらに「リングは、1万5千人に入場制限。人数を数えるのに5650万円。WTCビル(咲洲庁舎)の45階から夢洲が展望できたが、すり硝子にして見えなくし、1億3千万円もかけてレーザーアートにする」など税金の無駄を暴露した。
メタンガス、津波、台風、液状化、ヒアリなどの危険性については割愛するが、さらに次のような問題がある。
ライドシェア
坂本「タクシーが万博へ入るのに入構証がいる。タクシーは足りない状況をわざとつくっている。タクシーは足りているのに、吉村のオトモダチ企業newmo(ニューモ)のためにライドシェアをやる」
344億円の大屋根リング
桜田「リングの材料費だけで30〜50億円。建設関係の人に聞くと建設費は5倍の250億円くらいだと。100億円の中抜きになる。これはどこに行ったのか?」
藤永「建築家・山本理顕さんは当初予算は188億円だったという」
藤永「落雷があれば、一番高いリングに落ちる。アース線を下に引きますと言ってたのに、国交省の次官は『鉄の手すりが避雷針ですがな。雷が来たら皆降ろします』と言った。手すりにしがみつこともできない」「リングは福島の放射能を浴びた木を使う予定だったが、間に合わず、フィンランドの集成材(ベニヤ板を接着剤で固めたもの)を買ってきた。これが竹中平蔵の兄の会社(ミサワホーム)。利権がらみ」
企業によるぼったくり
桜田「ヘルスケアパビリオンは協賛金を出したら健康データをもらえる。また万博だからということで万博に使うお金は、法人税を計算する時の経費に認める。すると1億円の協賛金で3千万円位、10億だったら3億円くらいのプラスになる。あろうことか協賛金については税額控除。協賛金10億円出して10億円税金免除。どこが市民・府民まかなっていくためか。ぼったくり」。「万博協会幹部の月収は2百万円。しかも退職慰労金が出る」
「そば3800円、リングの模型52万円、ミャクミャクぬいぐるみ(特大)17万円、荷物預かり1万円」とぼったくり。
個人情報を盗まれる
西谷「チケット買うとき個人データ盗まれて、大阪ヘルスケアパビリオン見たら健康データを盗まれる。責任者・森下竜一は、安倍政権時の規制改革会議委員で機能性表示食品を導入した人。それで小林製薬が紅麹問題になった。ヘルスケアパビリオンでは肌年齢、髪年齢、血管年齢など測って25年後の自分が出てきて、サプリを飲もうかとなる。」
トイレ問題
藤永「『みんなトイレ』は危険。男女に分けたらいけないと、入り口は1つ。中は分けてあるけど誰が入ってもいい。夢洲駅のトイレは改札口からずっと奥にある。なぜならそこにIRの改札口ができるから。トイレは少なくトイレで困る」
熱中症
藤永「夢洲の夏は気温50度になり、熱中症の危険がある。救護施設は8カ所のうち医師常駐は3カ所だけ」「子どもを連れて行って事故になったら誰の責任か。教育委員会は校長先生だという。校長先生に中も見せず責任だけ取れと言う」
カジノのための万博
西谷「オンラインカジノはスマホでできる。夢洲MGMに限ってオンラインカジノができますという法律に変えればMGMは丸儲けできる」
桜田「日本はゲームについては先進国。すごい技術を持っている。それを博打に転用したらとんでもないことになる」
大阪市民の貯金はびた一文使うな
大阪市は、橋下時代から敬老パスを削ったり、市民病院を潰したりして貯め込んだお金がある。この貯金は全国で飛び抜けて大きい。2600億円くらい貯まっている。これを万博赤字の補填に使おうとしている。だから私たちの運動は、びた一文大阪市民の貯金を使うなということ。赤字のツケは謝って済むものではない。
最後に〈豊中市・万博校外学習を心配する親子の会〉は、「万博参加を強制しないで」署名を2万7646筆集めたことなど活動報告し、質疑応答があった。
全体として、危険な万博への子どもの強制動員に反対し、赤字の責任は吉村知事、横山市長がとれ、大阪市民の貯金や税金はびた一文使うなと運動し、維新を打倒しようという訴えだった。
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パレスチナに連帯し、土地の日に380人がデモ行進(3月30日大阪市 記事は次号) |
2面
3・31関電は約束まもれ!美浜集会
関電原子力事業本部に200人
福井県美浜町
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3月31日、関西電力の原子力事業司令塔である「原子力事業本部」がある福井県美浜町で、「関電は約束まもれ! 美浜集会」がひらかれ、地元福井県、関西全域、名古屋、首都圏などから平日にもかかわらず200人が集まり、関電原子力事業本部への抗議行動がおこなわれた。(写真上)
冬型の気候ではなく、うららかな天気で参加者はほっとした気持ち。やる気満々の表情だった。
事業本部前での抗議集会
この日の行動は、なぜ3月31日だったのか。
関電の社長が「25年3月末までに、実効性のある新たな(使用済み核燃料対策)工程表ロードマップを示せなければ、40年超運転の原発3基(この時点で、高浜1号機、2号機、美浜3号機)は止めるという不退転の覚悟で臨みます(24年9月5日、発言)」と言った、その期限日である。
この日までに関電は「実効性のない新ロードマップ」を発表していたが、「実効性のある新たなロードマップ」は示せなかった(詳細後述)。関電は約束どおり今すぐ3基を止めろの声は、地元や関西のみならず全国に広がっている。
午後1時、事業本部の目の前で抗議集会が始まった。
美浜町の隣(若狭町)に住む石地優さんは関電の示した新ロードマップの欺瞞性を怒りをこめて暴露。この30年間約束やぶりを繰り返して来た関電を糾弾した。
奈良から二桁の参加でかけつけた〈原発ゼロ・被災者支援奈良のつどい実行委員会〉溝川悠介さんは「一日で広島型原爆3〜4発分の死の灰を生み出す原発と人類は共存できない。とりわけ老朽原発は即時廃炉を」と訴え。首都圏からの参加者は、「若狭の美しい景色を残すために原発全廃を」。
福島県浪江町から兵庫県に避難している方は「私たち農業をやってきた者は、東電福島第一原発事故で土を耕すことができなくなった。それは福井の皆さんの明日の姿」。
首都圏からの参加者は、「若狭の美しい景色を残すために原発全廃を」。
日本共産党福井県原発担当委員は「金権腐敗の政府が、原発依存に舵を切った。福井県民は使用済み核燃料を他県に押しつけようとは思わない。日々の暮らしのなかで原発全廃を押し進めよう」。
兵庫県からの参加者は、昨年県内の9団体が〈脱原発兵庫ネットワーク〉を立ち上げたことを報告。
関電の老朽原発(高浜1、2号、美浜3号)の40年超え運転を国が認めたことの取り消しを求める行政訴訟(国が被告)を名古屋地裁でたたかってきた〈老朽原発40年廃炉訴訟市民の会〉は、3月14日、名古屋地裁で不当判決が出たが、28日控訴した。名古屋高裁で闘い抜くと決意表明。
福島県南相馬市から滋賀県に避難した女性は「今日は嬉しいことに、福島事故で避難した3女性が顔をそろえ、大きな力を感じた。原発の最悪の事故を福井で再現させてはならない」とアピール。
福島県富岡町から水戸に避難した方は、「原発は放射能で環境を汚染させるだけでなく、補償金などで人の心も壊し、親子関係も壊す」と悲しい経験を話した。
申し入れ
集会中に、代表団5人が、原子力事業本部内に入り、申し入れ書を読み上げ手渡した。同時に外では同文をマイクで読み上げ、あたり一帯に響き渡った。
集会中は、右翼が宣伝カーをまわして、妨害を試みたが、そのつど、参加者全員の大音響のシュプレヒコールで跳ね返し、意気軒昂と集会を続けた。
新ロードマップはいんちき
新ロードマップでは、福井県からの使用済み核燃料搬出先として、@フランスへ再処理実証研究として、A青森県六ヶ所村の再処理工場をあげた。
これは、前回ロードマップであげた対象と同じだが、搬出量を多少上乗せした数字となっている。計画の基本構造は変わっていない。
まず、フランスへの搬出は実際は搬出ではない。フランスに渡すのではなく、再処理実証研究をフランスでやってもらうという建前で、一時預けにするだけで、実証研究が終われば全て引き取るしかないのだから「搬出」ではない、一時移動に過ぎない。仮に再処理が完了してプルトニウムと高濃度排液(ガラス固化体)に分離できても、両方とも関電が引き取るしかない。
つぎに青森県の六ヶ所再処理工場は、完成の目処がたっておらず、ここに運び込むという話自体が荒唐無稽である。六ヶ所再処理工場は1993年に着工し、竣工は1997年の予定だった。着工してからすでに32年。完成延期を27回も繰り返している。
4年でできると言っていたものが、32年たっても完成しない、27回も「完成延期」を繰り返す物件など世の中では信用されるわけがない。こんなところへ、関電が使用済み核燃料を搬出するというのが実現性のない話であることは一目瞭然だ。
辺野古ブルーアクション
4月5日 新宿スタンディング
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4月5日、毎月恒例の辺野古ブルーアクション新宿スタンディング(呼びかけ/沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)がおこなわれ数十人の市民が参加した。(写真上)
「沖縄に基地を押しつけているのは誰なのか。私であり、あなたであり、本土にいる皆さんです」などの訴えが新宿駅南口に響き渡った。
飛び入りで参加したというランニング姿の市民がマイクを取った。「私はマラソンとトレイル・ラン(最低限の荷物を携帯して山の中などを走る競技)が好きなだけの市民。沖縄の山の中を走ろうとして調べてみたら、山の上はみんな米軍の基地で実弾演習がおこなわれている。眺めのいい場所が沖縄県民のものでない。あそこに米軍基地がある必要はない」。
終了後、4月27日15時から原宿駅表参道改札前で「沖縄・米軍人による性暴力を許さない」と題するアピール行動(沖縄・基地軍隊による性暴力を許さない関東の会、呼びかけ)、5月17日「『復帰』53年を問う 琉球弧を戦場にさせない 海も空も土も水もワッタームン!」と題する、14時新宿駅東口「アルタ前」集合、15時からデモ、16時から具志堅隆松さんの講演会という一連の行動への結集が訴えられた。
3面
検証
自衛隊「南西シフト」最新の動き
西日本全域が連携し軍事化
現在、自衛隊の「南西シフト」が一段と進んでいる。政府は専守防衛をかなぐりすて、敵基地攻撃能力の保有に邁進している。このなかで、基地周辺に住む住民は怒りの声をあげている。自らの居住地域で新たな反基地闘争を組織していこう。〈戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク〉に参加しよう。
2025年度の軍事予算
25年度の軍事予算は、8兆7005億円だ。昨年度より約7500億円増加した(9%増)。政府は2023年度から2027年度まで5年間で、総額43兆円を軍事費に投じる方針を決定している。
トランプ政権は、GDP比3%まで軍事費を増強するよう、日本政府に圧力をかけている。日本政府はこれを口実にして、ますます軍拡をすすめている。
以下、自衛隊「南西シフト」に関する最近の動向をまとめる。
統合作戦司令部
3月24日、陸海空の3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が市ヶ谷(東京)に発足した。約240人の体制からはじまり、今後280人に増強される。
組織改編は、敵基地攻撃能力を保持する、つまり対外戦争をおこなえる態勢をつくるためにおこなわれた。この方針は防衛力整備計画(2022年12月)に盛り込まれていた。2006年に「統合幕僚監部」が発足して以来の大きな組織改変になる。
東日本大震災などの大規模災害がおきたとき、統合幕僚長が陸海空の3自衛隊と調整し、臨時の統合任務部隊を編成していた。今回の組織改編で、統合幕僚長は防衛大臣を補佐することに専念する。こうして、ますます制服組の権限が強化されていく。
これとともに、在日米軍と自衛隊の指揮系統が調整されている。在日米軍の部隊指揮は、ハワイのインド太平洋軍司令官が担っている。米軍は在日米軍を再編し、部隊運用の権限を持つ「統合軍司令部」を新設する方針を示している。2024年7月の安全保障協議委員会(2プラス2)で、日本政府がアメリカに要請していた。
敵基地攻撃ミサイルの配備
陸上自衛隊・湯布院駐屯地(大分県)に2024年3月、「第2特科団」がつくられた。これが自衛隊「南西シフト」の司令部だ。さらに、今年3月30日、同駐屯地に「第8地対艦ミサイル連隊」が隊員300人で発足した。今年度から、防衛省は12式地対艦誘導ミサイル能力向上型(射程は約1000q)を配備していく。
現在、地対艦ミサイル連隊は全国7カ所に置かれている。北海道に3カ所(上富良野駐屯地、美唄駐屯地、北千歳駐屯地)、青森1カ所(八戸駐屯地)、九州2カ所(湯布院駐屯地、健軍駐屯地)と沖縄1カ所(勝連分屯地)。
防衛省は、12式誘導弾能力向上型の艦上発射型を2026年度までに、空中発射型を2027年度までに開発する方針だ。さらに防衛省は地対艦・地対地精密誘導弾の開発(2024〜2032年)を始めた。今年3月31日に、三菱重工と契約を結んでいる。
また、防衛省は、米国製の巡航ミサイル「トマホーク(ブロック4)」2百発を2025年度から配備を開始し、2026年度〜2027年度に「トマホーク(ブロック5)」200発を配備する予定にしている。これにあわせて、トマホークを貯蔵する弾薬庫が必要になってくる。
祝園分屯地、舞鶴基地にミサイル弾薬庫
祝園分屯地(京都府精華町)では、24年度予算に敷地の造成工事を含む整備費約102億円を計上し、8棟を新設する計画だった。ところが25年度予算案では、新たに6棟を追加する方針を示した。こうして、14棟が建設されることになり、本体工事費を含めて合計約192億円が計上されている。
海自・舞鶴基地では、政府は「舞鶴弾薬整備補給所」(舞鶴市長浜地区)内に弾薬庫3棟を整備する計画を示した。25年度予算案では、同補給所北側に新設するための調査費を新たに計上しており、3棟の設計費と合わせて約4億円を計上している。
特定利用空港・港湾
4月1日、政府は「特定利用空港・港湾」(8カ所)を新たに追加した。これで、11空港・25港湾、計36カ所になった。
今回、西日本では南紀白浜空港(和歌山県)、大分空港(大分県)、平良港(沖縄県)などが、新たに指定された。
戦後、政府が戦争をできないように、地方自治体が空港・港湾を管理することにした。現在、政府はこの制約をなくして、国の権限で空港・港湾を使用できるように改編しようとしている。
自衛隊海上輸送群
3月24日、「自衛隊海上輸送群」が、海自・呉基地(広島県)で新編成された。自衛隊海上輸送群は防衛大臣直轄の共同部隊で、陸自と海自から約百人で構成されている。
政府は南西諸島の防衛力強化を進めている。この「南西シフト」に伴い、約1200キロにわたって点在する島々をつなぐ輸送力が不可欠となり、新たな輸送部隊の創設が計画されていた。
現在、輸送艦2隻を保有し、小型級の「にほんばれ」(基準排水量2400トン)に約40人、中型級の「ようこう」(基準排水量3500トン)に約50人がそれぞれ乗り込む。28年3月までに、中型級2隻、小型級4隻、「機動舟艇」4隻の計10隻体制に整えられる。
「先島諸島」からの避難計画
2025年3月27日、政府は住民避難の「計画概要」を公表した。沖縄県の「先島諸島」から九州など8県に住民を避難させるという計画だ。避難計画の作成は、国民保護法にもとづく。
これは国家安全保障戦略(2022年12月)で打ち出されていた。「先島諸島」からの避難計画は、中国による「台湾有事」を想定している。
2024年、対象8県に施設選定を要請していた。政府が「武力攻撃予測事態」を認定すれば、「先島諸島」から住民11万人、観光客1万人、合計12万人を6日間で九州などに避難させる。この「避難計画」は型式的なものであり、現実的には不可能だ。
宮古島の基地増強
2025年2月26日、宮古島に電子戦部隊が配属された。26日の朝、電子戦装置を積んだ車両など合わせて15台が、宮古島市の平良港に到着した。
電子戦部隊は陸上総隊に所属し、2022年3月に発足した。本部は朝霞駐屯地(東京都練馬区)に置かれている。電子戦とは、電(磁)波を効果的・積極的に利用する戦闘を意味する。具体的には、電子攻撃(電波を発射して相手の通信を妨害)したり、電子防護(相手の妨害電波の影響を低減)したり、このために電子戦支援(電波を収集、分析)したりする。物質中の電子のふるまいによって、電(磁)波が発生することから、このように呼んでいる。
即応予備自衛官の処遇改善
自衛官は幹部自衛官(非任期制)と任期制自衛官のほかに、予備自衛官(定員47900人)、即応予備自衛官(定員7981人)、予備自衛官補(定員4621人)など、非常勤の自衛官制度が設けられている。いずれも社会で働きながら、有事や災害の際に陸上自衛官として任務に就く制度だ。充足率は、予備自衛官(約70%)、即応予備自衛官(約50%)、予備自衛官補(約55%)になっている。
予備自衛官は、後方支援や基地警備などの要員として任務に就く。即応予備自衛官は第一線部隊の一員として現職自衛官とともに任務に就く。この両者は、おもに退職した自衛官から任用されている。いっぽう、予備自衛官補は、自衛官未経験者から採用される。教育訓練が終了すれば、予備自衛官として任用される。
即応予備自衛官はなり手が不足し、人員の充足率は50%程度にとどまっている。政府は即応予備自衛官の大幅な処遇改善を2025年度にも予定している。
「防衛産業=軍事産業」の育成
政府は「防衛産業戦略」(仮称)を策定する方針を打ち出した。3月27日、軍事産業に関する議員連盟の会合がおこなわれた。ここで、政府は有識者会議を設置し、今年度中に取りまとめる方針を示した。
国家安全保障戦略(2022年12月)のなかで、武器輸出を官民一体で進める方針を明記している。政府は産官学の連携をはかり、軍事産業育成を進めている。企業も武器輸出を進める。両者の思惑は一致している。
新たな反戦・反基地闘争
トランプの登場は、アメリカの政治・経済的衰退を如実に示した。トランプの言動により、アメリカの国際的影響力はますます減少している。世界が激動している。
日本国内においても、石破政権は「戦後」を終わらせ、「戦争する体制」に社会を変えようとしている。
いっぽう、これに反対する闘いが全国でおきている。ひとびとは「新たな社会主義」のあり方を手探りで求めている。
自衛隊基地の建設や増強にたいして、具体的に闘っていこう。個別の闘いだけでは、国家をあげた攻撃に対して勝てない。このことは戦前の教訓が示している。〈戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク〉に参加し、連帯して闘っていこう。(寺田理)
4面〜5面
投稿 沖縄レポート
沖縄を日米軍事植民地支配から解放せよ!
占領軍による婦女、少女誘拐暴行事件を弾劾し米兵を断罪せよ!
2025年3月
「新しい女性主体」=安保・基地・辺野古ぬきの県民大会を検証する(下)
沖縄戦と朝鮮人強制連行を記録する会 金治明
政治的とは何か!
改めて問いかける
なぜ政党代表の発言やガンバロー三唱がないと政治色を排したことになるのでしょうか。沖縄の米軍基地は「日米安保条約」により、日本政府はアメリカ政府が陸、海、空、海兵隊の軍事基地を求めれば政府は調達し、提供しなければならないのです。沖縄の米軍基地はウチナンチューが求めたわけではありません。沖縄戦で軍事占領され復帰後も米軍が居座り、歴代の自公政権は全国の人口の1%、面積の0・6%の沖縄に、70%強の在日米軍基地を押しつけたのです。なぜウチナンチューはこのような不条理を引き受けなければいけないのか。どうして米軍基地があるが故の事件、事故、環境破壊、騒音などの迷惑極まる基地を、勝手に沖縄に提供している日本政府が責任を持ち解決しないのか。
そして、そのような異常な基地負担に異議を唱え、反対をする事がどうして「政治的」行為になるのか。またアメリカ追従の自公政権による不条理を黙認、容認することは政治的行為にならないとすること自体が日米両政府の政治的行為の積極的実行者になっているのではないか。
米軍基地反対が政治的で、容認、黙認、賛成が政治的でないと決めつけることは何を根拠にしているのでしょうか。そのような一方を「政治的」だと排除する事は民主主義に反し、国民主権の憲法違反であり、それを無視する日米両政府の意に沿った分断と利敵行為になります。
宮城公子教授と〈米兵による少女暴行に対する抗議と再発防止を求める県民大会実行委員会〉は明確に主権者である沖縄県民にこの説明を果たす責任があります。
米軍基地の整理縮小、負担軽減が闘いのスローガンから消えたこと
2024年5月26日 海兵隊キャンプ・シュワブ所属ジャメル・クレイトン(21才)が婦女暴行事件を起こし起訴されましたが、10カ月経っても裁判の日程すら決まっていません。
ご存知の通りキャンプ・シュワブは辺野古新基地建設を巡り岸田、石破自公政権が玉城知事の自治権を奪い「代執行」を強行し現在軟弱地盤の改良工事を進めている海兵隊基地です。
2024年6月21日 海兵隊キャンプ・ハンセン所属マイケル・ホフマスター(20才)は婦女暴行事件を起こしました。それは本人の申請ではなく事件直後に被害女性を診断した医療機関から警察に通報があったことで発覚したのです。
もし、県民大会で基地の整理縮小や負担軽減がスローガンに上がればいやがおうでも 辺野古新基地建設問題が課題になり玉城デニー知事の権限を奪い「代執行」で現在強行されている埋め立て工事の賛否が問われます。そして、7万本の杭が打たれ、貴重なサンゴがある大浦湾の環境を破壊する違法工事が大問題になります。沖縄の民意はこれ以上の米軍基地はいらないということは沖縄県民投票で示されています。米軍による性犯罪と基地問題は一つです。
辺野古新基地建設は米軍基地の拡大強化であり基地の負担増加になりますので「県民大会」では玉城知事が提唱する沖縄の「民意、自治、尊厳を守る」、新基地建設問題を意識的に避けています。
また、キャンプ・ハンセンはこの数年来、陸上自衛隊と海兵隊が合同で実弾軍事訓練を頻繁におこなっています。日米韓政府は陸、海、空、海兵隊が朝鮮脅威と「台湾有事」を想定しての軍事訓練が頻繁に中国、朝鮮半島、沖縄近海でおこない軍事桃発を繰り返しています。「キーン・ソード25」は自衛隊3万3千人、米軍1万2千人、日米艦艇40隻、航空機370機、計4万5千人の大規模軍事演習です。そして、何時でも戦争状態に突入できる体制です。
その海兵隊の主力部隊がキャンプ・シュワブとキャンプ・ハンセンです。その実動部隊の殺人兵士が沖縄の女性に対して性的暴行事件を起こしています。このような兵士を野放しにし、日米安保体制を問題外にして、ただ「女性の人権を守れ」等とお題目を上げ何が解決するだろうか。軍隊は国家が敵国と決定したら平気で老若男女や子ども、婦女子を強姦し、躊躇することなく生命を奪う殺人集団組織です。海兵隊は戦場に真っ先に乗り込む殴り込み部隊です。
人権を守るとは自らの命と意思を他者に踏みにじられず尊重され抹殺されないことです。
在沖米軍の米兵達はその人間性をかろうじて維持しているか破壊されてしまうかのぎりぎりのところに立たされているのかも知れません。それでも、命令があれば殺人を実行します。
宮城公子教授は、「懲役5年の判決を受けた被告は控訴し、被告の身柄の拘束は求めておらず、日米地位協定に沿って対処としている。被告にいかなる行動範囲が許容されているかも不明だ。」と記している。要するにブレノン・ワシントンは5年の懲役刑に服さずにいるということです。もしこの記事が事実であるのならば少女を晒しものにしてセカンドレイプに準ずる裁判に対して責任を問われます。そして、最高裁判決までワシントン被告は自由の身です。
では、あの裁判とは一体何であったのか。驚くべきことにワシントンは身柄を拘束されず、刑務所にも入れられず、5年の刑には服さずに日常生活を送っています。信じられますか。
「県民大会」で日米地位協定の改定を求めたのならば、いの一番にワシントン被告を日本の法律にのっとり刑務所に送還し服役させるべきです。その事を新聞紙上に訴え「日米地位協定の改定」を沖縄自民党、公明党及び自公政権に迫ってください。これが、県議会決議の一部を実行したことになります。しかし、残念ながらこの事実をマスコミは報道していません。そして、宮城公子教授も言葉をストレートに表現せずにワシントン被告の5年の服役が免除されている事を新聞紙上に載せていません。従って、多くの沖縄人、日本人はワシントン被告が判決通りに5年の刑に服して刑務所に収監されていると思っています。軍事植民地と言われる所以です。この事実を皆さんはどう受け止めるでしょうか。なぜ、沖縄のテレビ、新聞などは事実を報道しないのか。また女団協代表たちはなぜ沈黙を守っているのか不可思議です。
まとめ
昨年12月28日、自公政権は辺野古埋めて工事設計変更申請が玉城デニー知事の不承認を覆すために、沖縄防衛局が私人に成り済まし「行政不服審査法」を使い斉藤鉄夫(公明党)国土交通相に是正の指示を求め、県知事権限を奪い辺野古埋め立ての「代執行」を宣言しました。そして沖縄の民意を踏みにじり今年1月10日、大浦湾埋め立て工事を強行しました。しかし、2014年7月の工事開始から10年経過しても埋め立て工事は全体の17%弱です。更に軟弱地盤を整備したとしても政府試算で完成まで12年かかるとされています。そして、軟弱地盤工事の砂撒き工事を暮れが押し迫った12月28日、役所の御用納めの翌日と沖縄の旧正月で海の五穀豊穣を祝う日で海ンチューは仕事を休む日を選んで、石破政権は辺野古工事が進んでいるように見せかけアリバイ的に2時間ほど作業をして年内着工を演出しました。しかし完成のめどは立っていません。このような理不尽なことを強行できるのは、やはり少女誘拐暴行事件を県議選が終わるまで隠蔽し、沖縄県議会でオール沖縄20議席、自公維新28議席と大きく「勝利」したことにも起因しています。岸田自公政権は少女誘拐暴行事件を隠ぺい、情報操作によりまんまとウチナンチューを煙に巻いて県議会選挙に勝利したのです。それを報じないマスコミの責任も重大です。
改めて整理します。この自公維新の勝利をもたらした原因はどこにあるだろうか。冒頭にも紹介したように6月県議会選挙の前後に少女、婦女暴行事件の長期にわたる隠ぺい、情報操作により有権者は基地か経済などの選択になりました。岸田自公政権は「沖縄振興特定事業推進費」法を設けました。この悪法は翁長、玉城知事誕生後、辺野古新基地の公約実現に県政を進める沖縄県に対する沖縄振興事業費を毎年削りました。因みに仲井真県政の最高額は3794億円、現在の玉城県政では2678億円と実に1116億円減額されました。
その結果沖縄41市長村長は玉城県知事の頭越しに直接首相官邸に赴き沖縄振興事業費の配分を交渉し始めました。あからさまな利益誘導です。これは沖縄自治の破壊行為です。
沖縄県内の41市町村及び民間の事業に対して政府が「振興資金」を直接ばら撒き県予算を食い詰めるのです。このようにして沖縄に分断を謀り県会議員選挙は少女暴行事件を隠し「アメとムチ」で縛られました。そして県民は全体的に経済効果を選択したことになります。しかし、米兵等による一連のレイプ事件が6月16日の投票前に報道されていたら沖縄県民はどのような意思決定をしたでしょうか。明確に言える事は自公維新の議席は大幅に減少した事は確実です。このような政府の隠ぺい工作を「県民大会」では誰も問題にしませんでした。
6月28日少女暴行事件が発覚し県議会は直ちに抗議、再発防止の決議と意見書が可決されました。この決議に正面から反対できない自民、公明、日本維新の会は決議に賛成したのです。もし反対したら県民から総スカンを浴びることは必定です。その県議会決議を受けて沖縄41市長村議会が決議と意見書を可決し、玉城デニー知事は訪米しアメリカ政府に県議会決議を手渡し抗議しました。しかしアメリカ、バイデン大統領から謝罪はありませんでした。このように沖縄の世論は少女暴行に対して怒りが高まっていました。
女団協は7月13日に県議会へ県民大会の開催を要請しましたが、自公維新は県民大会を開くことに反対すれば宜野湾市長選や10月衆議員選挙に影響がでることを憂慮し、自公維新は党利党略を優先させその県民大会の是非の回答を伸ばし、衆院選が終わるまで態度を留保しました。自公勢力は衆議院選挙でも「米兵による婦女子暴行事件を許せない」とポーズを取り、選挙の争点から外し「沖縄経済振興」を表面に据えました。そして、玉城県政では政府から沖縄振興予算が削られる、自民、公明は「政府との太いパイプがあるから沖縄予算の増額が見込まれる」と誘導しました。その結果、小選挙区で自公2対オール沖縄2となり全国の自公に対する議席減少に比較すれば一定の勝利を導きました。
そして、衆院選終了後に「県議会決議と意見書を採択したから議会として意思表示はすでにしているから県民大会に参画する必要はない」とへ理屈を並べ「少女暴行事件はオール沖縄に政治的に利用される」等の理由をつけ女団協が提起した県民を代表する県議会が中心になる超党派の県民大会の開催要求を蹴ったのです。「鉄は熱いうちに打て」の時期を逃してしまいました。
12月22日の「少女暴行事件への抗議再発防止を求める県民大会」はこのような経過で開催されたのです。実に、事件発覚から約6カ月後になりました。
自公維新勢力は声を上げて「少女暴行事件に対する抗議大会の開催を反対する事はできず、オール沖縄に政治的に利用される」と言い、県民の分断を図ってきましたが、この手法は今回始まった訳ではありません。1952年4月28日サンフランシスコ条約により沖縄はアメリカの異民族支配に置かれました。この沖縄「屈辱の日」、2016年4月28日、島袋里奈(20)さんが米軍軍属に強姦殺人、死体遺棄されました。自公はこの時も事件に抗議する県民大会は「オール沖縄に政治利用される」と不参加しました。しかし、自公抜きでも、2016年6月19日「元海兵隊による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し海兵隊の撤退を求める県民大会」に6万5千人が結集し、「海兵隊の撤退と日米地位協定の改定」を強く求めました。
しかし、12・22県民大会での各発言者は米軍基地、基地負担の元凶である日米安保問題には一切触れず、米軍基地の撤収、整理縮小、負担軽減などの問題を県民大会から外しました。いわんや、基地負担軍事基地強化に繋がる「辺野古新基地建設」問題に対しては、辺野古のへの字も語りませんでした。そして、急激に戦争準備を進めている米軍、自衛隊の南西諸島のミサイル基地強化拡大についての軍事強化も話題にしませんでした。今までこのような県民大会、県民集会はまったくありませんでした。
これが、「女性主体の新しい大会」であるとしたら以後、沖縄の反戦反安保闘争は解体の道を走ることになります。2月6日「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会実行委」は国会内で被害者保護と地位協定の改定を百人の参加で訴える院内集会を開きました。そして、以下4項目の実現のために各政党に要請することにしました。
@被害者への謝罪と丁寧な精神的ケア及び完全な補償をおこなうこと。
A被害者のプライバシーの保護と二次被害の防止を徹底すること。
B事件発生時の県、市町村等自治体への速やかな情報提供を確実におこなうこと。
C米軍構成員等を特権的に扱う日米地位協定の抜本的改定をおこなうこと。
[注]沖縄の米軍基地の整理縮小、負担軽減などはすっぽり抜けてありません。そして、少女誘拐暴行犯のワシントン被告の懲役5年の収監も求めていません。
そして、翌日に県民大会実行委員会は被害者支援や日米地位協定などの決議の実現を各政党に対して要請行動をしましたが、自民、公明党とは「調整」がつかず、面会が出来なかったと新聞で報じられました。自民、公明党は「外交辞令」にしても県民大会実行委の伊良波純子共同代表とも面会しようとしませんでした。それほど「県民大会」の沖縄の声は無視され自公政権に対してインパクトがなかった事を証明しました。
昨年12月嘉手納空軍基地司令官のニコラス・エバンス准将は米軍機関紙星条旗のインタビューで「米軍と地域との関係者による性暴力事件は小さな一側面で、沖縄市、北谷、嘉手納(三連協)とは極めて良好な関係だ」と答えた、エバンス司令官は部下のブレノン・ワシントン被告の実刑判決をうけ「事件の発生に心から遺憾と思う、性的暴行は重大な犯罪であり、何千人もの米軍兵士の価値観を反映したものではない」と声明を出していた。率直に言えば性犯罪はたいした問題ではないと捉えています。これが戦後一貫して続いている沖縄を軍事植民地支配しているアメリカ帝国主義の姿です。また、石破は率先して軍事植民地支配の御先棒を担いでいるのです。
石破茂首相は自民党総裁選時にただ一人「日米地位協定の抜本的改正」を訴えていましたが、総裁選に勝利するや「地位協定」の改定について封印してしまいました。2月26日の衆議院予算委員会で、頻発する米兵事件に対しての質問に「米軍が駐留することによって、この犯罪が起こっているという因果関係を私は存じ上げない」と答弁しました。まるで、米軍駐留が米兵による事件事故と因果関係が無いかのような口ぶりです。一方、「事件根絶のために沖縄県民の心を一つにして、政府として取り組んでいかねばならない」とも言及しましたが、ほとんど実効性のない口先の答弁に過ぎません。このような「指導者」にこれ以上沖縄の未来を預けることはできません。自公政権は完全に沖縄の民意を見くびって軽んじているのです。
自公政権は「県民大会の少数参加を見越し前回の大会スローガンである海兵隊の撤収も整理縮小もなく「米軍基地」問題を「人権問題」に矮小化されたことで安堵し乗り切りました。しています。
沖縄自民党、公明党、維新はウチナンチューの生命と財産、人権よりも、「日米軍事同盟」を最優先させ大手ゼネコン、建設、土木産業の利権を守り軍需産業の利益誘導に成功しています。
自民、公明、維新は沖縄の犠牲を顧みずアメリカの軍事植民地支配下に置く最悪な政権です。早期に政権から引き降ろさなければなりません。石破自公政権は「台湾有事」を煽り、琉球諸島を軍事要塞化し朝鮮、中国への侵略戦争をアメリカの尻馬に乗って沖縄を戦場にしようとしています。それら反動攻撃に対して我々は本土沖縄を貫いた連帯と団結で辺野古新基地建設を断念させ世界の平和を脅かす日米欧帝国主義の目論む中国、朝鮮への侵略戦争を止めましょう。
その前提として日本人民はアジア、朝鮮、中国に対しておこなった侵略植民地戦争を反省し二度と過ちを犯さぬよう朝鮮、中国に対する民族排外主義を克服しなければなりません。驚くべきことに辺野古で反基地闘争を闘っている人の中に真顔で「朝鮮や中国が攻めてきたらどうするか」と言う仲間がいます。残念ながら朝鮮中国民族排外主義に侵されたヤマト、ウチナンチューが「辺野古新基地阻止闘争」にいる否定的な側面を乗り越え差別排外主義に抗して辺野古新基地阻止、侵略戦争阻止するために反戦反安保沖縄闘争の発展強化が急がれています。
朝鮮や中国を攻め虐殺の限りをした日本人は天皇の兵士達です。現在、皇軍兵士は自衛隊に姿を変え堂々と「一撃必墜、闘魂」の幟旗を掲げ迷彩服姿で沖縄の街頭で行進し街中に出てきています。もはや、戦時体制そのものになってきているのです。我々は更なる沖縄の自衛隊、米軍基地の機能強化を阻止する為に繋がることが重要です。その力で国際主義の旗を高々と掲げ日朝中人民が団結、共闘、連帯し日米帝国主義の野望を粉砕しましょう。
最後に「県民大会実行委員会」の建設的な真摯な闘いの総括を期待しています。勝利は我等に!(おわり)
追記
2020年11月、仲井真弘多元沖縄県知事(現沖縄自民党最高顧問)は辺野古新基地建設の埋め立て承認、基地建設を推進した功積により最高位の旭日大授賞を天皇ナルヒトから受賞しました。沖縄自民党はこのような人物を頂き天皇に忠誠を誓い沖縄人を置き去りにしています。
6面
治安維持法100年を問うA
昭和天皇こそ治安維持法に死刑を導入した張本人
治安維持法を初めて本格的に適用した3・15事件(前号参照)の直後、同法をさらに改悪する動きが始まった。その要点は、@最高刑が10年以下の懲役または禁固であったものを死刑にする、A「ためにする行為」(後述)をも取り締まりの対象に加える、というものであった。
死刑は〈国体の変革〉つまり天皇制の廃止を主張する団体の構成員のみを対象とし、もうひとつの柱である〈私有財産制度の否認〉を唱える者には適用しないとした。
「ためにする行為」とは、〈国体の変革〉や〈私有財産制度の否認〉をめざす団体の機関紙などを一時的にせよ預かったり、そのメンバーを一晩でも泊めたり、たとえわずかな金額でもカンパしたりする行為である。
つまり現体制に逆らう行動には、いささかでも協力してはいけないというわけである。これが次第に拡張解釈されて、自由にモノを言ったり、特定の宗教を信じたりすることまで弾圧するようになっていく。
さすがにこの「改正」案には反対の声が強くて、帝国議会でも容易には決められなかった。当時の帝国議会の党派別内訳は、立憲政友会342、立憲民政党342、実業同志会31、革新党15、無産政党82、諸派・無所属153であった。まがりなりにも労働者・農民の立場に立つ者が全体の10%にも満たず、資本家や地主の利益を代表する勢力が圧倒的な議席を占めていた。
極刑=死刑の導入に対していかに抵抗が強かったかがうなずける。たとえどんなに長い時間をかけて審議しても、「改正」案の可決が見通せないなかで、支配階級は伝家の宝刀を持ち出して緊急勅令の発動に踏み切った。
緊急勅令とは大日本帝国憲法下で、帝国議会の閉会中、緊急な必要により天皇が発令する法律に変わるべき命令か、帝国議会を招集できない場合に天皇が発令する財政処分命令をいう。
両者とも、帝国議会の次の会期での承諾が必要とされていた。
翌1929年2月、衆議院で治安維持法の改悪が可決された。
それに先立って、「山宣」の愛称で親しまれていた労農党の代議士・山本宣治が札幌刑務所を訪れた。3・15事件の被告である九津見房子が女性なるが故にうけた卑劣極まる拷問の実態を聴取したのである。
彼は帝国議会における治安維持法改悪案の審議の場で、おぞましい弾圧の実態を生々しく暴露し糾弾した。その夜、宿舎に帰った山宣は右翼の凶刃に倒れた。
以上に述べた事実は、天皇制を守護することが治安維持法の核心であり、天皇その人が治安維持法体制の直接の最高責任者であることを示している。そして今、昭和天皇を範として生きると公言する天皇が君臨している。私たちはこのことを片時も忘れるわけにはいけない。(大庭伸介)
戦争あかん!ロックアクション
4・6御堂筋デモ
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4月6日、日曜日、大阪市内で「戦争あかん!ロックアクション」がひらかれ、集会と御堂筋デモがおこなわれた。風は少し冷たいが、うららかな気候で絶好のデモ日和。(写真上)
桜満開の公園で集会
桜が満開の公園でデモ前の集会がひらかれた。発言トップは、〈共謀罪に反対する市民連絡会・関西〉。今現在、「能動的サイバー防御法案(インターネット監視・先制サイバー攻撃法)」が国会で審議されており、戦争に突き進むこの法律を阻止しようと呼びかけた。
続いて〈狭山事件の再審を求める釜ケ崎住民の会〉が、3月11日に亡くなった石川一雄さんを悼み、第3次再審請求闘争はいったん打ち切りとなるが、石川さんの無念を引き継ぎ、第4次再審請求審を開始するとアピール。
サックスでのライブ演奏の後、森友学園問題を考える会が「森友問題は終わらない・終わらせない」と最新情報を交えて報告。いままで隠蔽されていた公文書(事件関係文書)の開示をめぐる裁判で赤木雅子さんが勝訴した。現在、隠蔽文書の開示が始まっている。黒塗りをさせず全面開示を求めていく。さらに、今回の開示予定文書が「すべて」ではない可能性もあり、追及していくと訴えた。
注目と飛び入り参加
集会後、音楽隊を先頭に御堂筋をにぎやかにデモ行進。途中で飛び入りもあり、手を振る人、スマホカメラをむける人など、圧倒的注目をあびて歩いた。
(書評)
『コミンテルン−国際共産主義運動とは何だったのか』
佐々木太郎 著 中央公論新社刊 2025年2月
本書の扱うテーマは「コミンテルン通史=等身大のコミンテルン像を描く」とある。
解散後80年を経過しているとはいえ、国際階級闘争、世界革命運動の壮大なテーマはなおも今日的な課題ではないか。
本文や巻末の参考文献をみると真面目な書である。
本書の構成は、「まえがき」によれば、
序文:第1および第2インターを経て第3インター(コミンテルン)が誕生するまでの経緯。
1章:コミンテルンがヨーロッパ各国の労働運動に対して、第2インターとの決別を迫り、各国に共産党が結成される過程。
2章:ヨーロッパ各地の革命が次々と頓挫する中、『民族植民地テーゼ』でレーニンがヨーロッパとアジアを結びつける形で構想した独自の国際革命論について。この最初期の東方革命、1920年代初頭の中東での革命の顛末。
3章:レーニンのヘーゲル哲学への接近について。
4章:20年代初頭からのヨーロッパでの「労働者統一戦線」戦術をめぐるコミンテルン動向。このとき「社会ファシズム論」によってファシズムとの闘いに後れをとった。最終的にこの統一戦線戦術放棄への過程。
5章:スターリンの民族理論と彼のコミンテルンおよび国際共産主義運動との関係性の形成、20年代後半の中国革命の失敗とポーランド・イギリスとの関係悪化、ウクライナ政策めぐるコミンテルン内の混乱。各国共産党にソ連防衛を第一任務とさせた経緯。
6章:満州事変やヒトラー政権登場など国際情勢の激変のなかで30年代コミンテルンが着手したフロント組織活動。第7回大会(1935年)「人民戦線」戦術の成り立ちとスターリンの「大粛清」によるコミンテルンの大打撃。
7章:独ソ不可侵条約(1939年)と独ソ戦開始(1941年)などにほんろうされるコミンテルンとスターリンによるコミンテルン解散の決断とその後、とある。
主要な結節点でいくつもの分岐、論争点が存在した。
@コミンテルンの本来のインターナショナリズムとソ連のナショナリズムの葛藤。
A民族植民地問題と階級闘争の論理の葛藤。
Bソヴィエト(評議会)と党の関係。
Cプロレタリアート独裁の是非。
Dマルクスとレーニンの関係。
E一国社会主義と世界革命の立場。
Fパリコミューンとロシア革命(ソヴィエト)の比較。
Gソヴィエトと議会主義
Hローザの批判と前衛党組織論(「プロレタリアートの前衛」としての党と「プロレタリア独裁」としてのソヴィエト権力。)
Iヨーロッパ中心主義志向の是非。
J労働者階級自己解放の思想と労働組合、政党との関係について、等々があげられる。
著者の見解は評者の考えと隔たりはある。
コミンテルン(共産主義インターナショナル)規約に「国際ブルジョアジーを打倒し、国家の完全な廃止への過渡段階としての国際ソヴィエト共和国」「単一の世界共産党でなければならない」という序文の提起にあるように、当時としては、ロシア革命の命運と世界革命運動・とりわけヨーロッパ革命の成否は一個二重の課題であることはボリシェヴィキの共通認識だったと思う。
ローザは、『ロシア革命』(1918年、ブレスラウ監獄において執筆)で、ロシア革命のボリシェヴィキ独裁を批判し、また民族自決を批判しているが、ロシア革命が「プロレタリアート独裁」を任務としていることは大いに擁護している。また、ロシア革命の運命を世界革命の上にすえた点を見事なことと評価している。
前衛党組織論については、レーニン独自の論と言われているが、専制国家ロシア帝政下で職業革命家を軸とした革命党から出発した。ロシア共産党の一党支配は、複数政党の共存を不可能にした過酷な内戦の状況に強いられた結果であった。それが既成事実化していった点は問題だが。ドイッチャーの『武器なき予言者』によれば、「ボリシェビズムは労働者民主主義と権威主義のふたつの伝統から成り立っていたが、革命初期には前者がきわだっていたのに対して、労働者階級が解体したとき後者の伝統に依存して、自らを労働者の利害の唯一の代弁者とする習慣をおしだした」と述べている。こうして党は、「党の独裁」と「労働者階級の独裁」との等値化を政治政策の基調に据えた。それでも、はじめは階級がなくなるとともに党の消滅が展望されていた。
他にも論点はあるが、本書を鵜呑みせず、批判的に読むことだと思う。(川上五郎)
7面
フィールドワーク・川内原発
玄海原発と並ぶ九州の拠点
2月24日、野村昌平さん(脱原発川内テント&蓬莱塾)の案内で、九州電力川内原発周辺のフィールドワークをおこなった。野村さんは、川内原発の再稼働に反対して、2015年に東京から鹿児島県に移ってきた。現在、薩摩川内市に家を借りて、川内原発反対運動を続けている。
野村さんは「友好ギャラリー川内」を2021年12月に開設。ここには、吉野山隆英さんの東京大空襲の体験を絵に描いた作品が展示されている。野村さんは吉野山さんと同じ高校出身。
わたしたちは「ギャラリー川内」を車で出発し、川内川南岸を走り、川内河口大橋へと向かう。ここから、風力発電を見学したのち、川内原発の敷地に向かった。
風力発電
笠山から柳山の山稜にそって風力発電がつくられている(柳山ウインドファーム風力発電所)。川内原発は笠山の裏側にあり、ここからは見えない。
風車を造るため、山肌を切りそぐように道路がつくられている。この道路建設のために、樹林が切り倒されており、自然破壊がいたましい。地球にやさしい風力発電ではなく、このように地球環境を破壊している。
風力発電は風力という自然のエネルギーを利用して、風車で発電機を回して発電をおこなう。太陽光発電は半導体によって太陽光を電気に変換する。いずれも自然エネルギーを利用している。
風車は山稜にそって、メガソーラーは山肌を切り開いて造られる。両方ともに自然破壊がすさまじい。地球環境を守るという点では、わたしたちは電力消費を最小限にする社会を構想するべきではないか。
川内原発について
川内原発1号機(加圧水型軽水炉、89万kW)は、1984年7月から発電をしている。新規制基準に合格した原発のなかで、2015年8月に、この原発が国内で最初に再稼働した。2024年7月には40年超えの運転延長をおこなった。2号機(同、89万kW)は、1985年11月から発電を開始し、今年で40年をむかえる。2010年当時、3号機(改良型加圧水型軽水炉、159万kW)の建設計画が持ちあがっていた。しかし、福島第一原発事故によって、この計画は凍結されたままになっている。
現在、川内原発の敷地内では、さまざまな工事がおこなわれている。駐車場や道路があたらしく整備されている。また、新系統の送電線鉄塔が建設されていた。これらの工事は、3号機建設の準備ではないか。
第7次エネルギー基本計画が閣議決定された(2月18日)。このなかで、原発の「依存度を低減する」文言を削除して、「最大限利用」する方針に転換した。また、このなかで「廃炉を決めた原発を持つ電力会社は、別の自社原発で次世代革新炉に建て替える」ことを認めている。九州電力は玄海1、2号機を廃炉決定しており、この条件にあてはまる。地元住民にとって、建て替え≠ヘ原発増設以外の何ものでもない。
九州電力は、川内原発3号機の建設を狙っている。政府内で、新設を前提にした動きが加速している。こうして、川内原発3号機建設に反対する闘いは始まっている。
運転差し止め訴訟
2012年5月、47都道府県の住民3036人(鹿児島県在住は1100人)が、川内原発の運転差し止めを求めて鹿児島地裁に提訴した。この判決が今年2月21日にあり、住民の訴えは認められなかった。13年近くにわたって争われてきたにもかかわらず、判決内容はまったく論議に踏み込んでいない。
判決では、地震や火山による原発事故について「具体的危険性があるとは認められない」と断じた。だから、「避難計画の実効性の欠如にかかわらず、原告らに具体的危険性があるとはいえない」と述べている。つまり、重大事故はおきないのだから、原子力防災訓練などはおこなうまでもない、判決はこういうことを言っている。
また、原発の安全性について「どの程度の危険を容認するか、社会通念を基準として判断すべき」と述べている。この「社会通念」はだれが決めるのか。政府や電力会社が決めているのではないのか。判決は「政府の方針に従え」と言っているにすぎない。
裁判所の判断は、東電福島第一原発事故以前の「原発安全神話」に戻ってしまった。福島第一原発事故はなかったことにされている。わたしたちは怒りをもって、反原発運動のさらなる発展で応えていきたい。
監視テント
川内原発監視テントは、川内原発の敷地の北側、久見崎海岸に面した砂丘のなかに建っている。現在もカマボコ型のテントが一張り建っており、物置として使用されている。わたしたちは、この地にたたずみ、2014年9月以降の闘いを想いおこした。
2014年9月26日、川内原発再稼働阻止のテント(本部テント1棟、個人テント5棟、簡易トイレテント1棟の計7棟)が建てられた。9月27日には「テント宣言」を発表している。この宣言は次のように述べている。
〈テントは、当面する再稼働の情勢の中で、川内原発再稼働阻止に耳目を集め、再稼働反対の世論を喚起し、行動に現す人々の持続的な拠点です。この拠点を維持拡大し、全国に「再稼働阻止」を合法的に呼び掛ける発信の拠点です。テントが張られる場所は、公共空間であってテントの設置は、敢えて非合法であるとの認定下にはないものです。〉
闘いは、現在も継続されている。ここは3号機反対の闘いの前線基地でもある。新たな闘いが始まろうとしている。この決意を胸に、わたしたちは帰路についた。(津田保夫)
紹介 展望32号
世界的激動に立ち向かう
各テーマ論文を収録へ
トランプ政権の相互関税発動による世界貿易戦争とブロック化の危機と米中対立の激化が現実となった。ウクライナ「停戦」をめぐる米ロ一体の動向、米・イスラエルによるガザジェノサイドとパレスチナ人民のガザからの追放キャンペーンなど、この数年間で21世紀最大の事件が起こっている。階級的激動もだ。
『展望』32号は〈世界的激動と日帝・石破打倒闘争〉と題して発行した。
▼巻頭論文は25年年頭アピールを加筆訂正したものである。
世界的激動の最弱の環=日帝として大軍拡と戦争準備へ走る石破を弾劾する。とくに新たな安保・沖縄闘争を闘うとともに、政治・社会・司法における反動化を阻止する人民の闘いを階級形成と階級闘争を一個二重の闘いとしていくと提起する。
▼塩川論文は、〈新しい共産主義のために〉として、21世紀の共産主義の道を探るものだ。「未来」400号記念論文の大幅加筆である。内容的には、トランプ登場の背後にアメリカ人民の総貧困化と製造業における階級支配の崩壊をアメリカ危機の核心としている。また、階級形成と民族解放の一体的遂行のためベネディクト・アンダーソン批判をテコに論旨を展開。イスラエルを「入植植民地国家」と規定し、パレスチナ解放の究極的目標をイスラエル国家の「解体」とすべきと確認している。中国・台湾問題に踏み込んだ視点を提起した。
▼沖縄報告では、昨年12・22県民大会で明らかとなった課題について、「未来」411〜412号掲載の沖縄レポートと突き合わせて、検討してもらいたい。米兵による女性暴行事件との闘いは、在日米軍基地があるからこそという視点をおさえて闘っていくことだと思う。
▼大阪・関西万博が4月13日開幕するが、カジノ=万博の問題性、赤字や環境不安などの破産性を見切り発車する維新=石破政権にNOの声をつきつけよう。
▼岡田論文は、後を絶たない女性差別事件を断罪し、女性解放への決起を求める。中居=フジ事件については、第三者委員会報告が出され、事件のおぞましさとフジ経営陣の犯罪性が明らかになった。さらに、マスコミ界にそれを容認する土壌があることが指摘されていたが、社会における女性差別の全面的断罪と闘いが問われている。
▼新たな安保・沖縄闘争をとりくむ柱として反基地闘争西日本交流会報告を生かし、南西諸島・全土基地化と戦争国家への道を阻止しよう。
新安保・沖縄闘争にとって〈中国―台湾〉を政治テーマに据えることは不可避になっている。琉球弧の戦場化を許さぬために中国・台湾・沖縄・日本・朝鮮・フィリピンの東アジア人民と連帯して闘っていこう。
▼戦後80年は、今年の重大政治テーマである。石破は早々に戦後80年談話を放棄した。被爆80年の今年、被団協の取り組みを引き継いで反戦・反核・反原発の闘いが問われている。原発全面回帰と「核武装は合憲」と主張する石破打倒をやり抜こう。(O)
8面
(映画評)
『マリウポリの20日間』
監督:ミスティスラフ・チェルノフ 2023年
ロシアがウクライナに侵略をはじめて、まる3年が過ぎた。当初、プーチンは「この戦争はすぐに決着がつく」と考えていた。しかし、ウクライナ人民は不屈に戦い続け、戦線は膠着状態になっている。
2022年2月24日、ロシア軍がマリウポリ攻撃を開始した。ウクライナ出身のAP通信の取材班(2人)がマリウポリ市内に駐留し、市民の情況を撮影しつづけた。3月2日、マリウポリはロシア軍に包囲される。3月15日、取材班は撮影映像を持って、命からがらマリウポリを脱出する。
このドキュメンタリーは、チェルノフらがマリウポリ現地から配信したニュース、マリウポリ市内で撮影した映像をもとに制作された。2月24日から20日間の記録だ。戦時下のなかで、取材地域は限られているが、ロシア軍はアパートや病院などを無差別に爆撃し、ジェノサイドをおこなっている。この歴史的事実が、鮮明に映しだされている。
マリウポリ市内の様相
マリウポリはドネツク州にあり、重工業の中心地であり、ウクライナ最大のロシア語圏都市でもある。また、アゾフ海沿岸で最大の都市だ。ロシアにとっては、アゾフ海の支配権を得るためにも、ここは戦略的に重要な地域。
当時、アゾフスタリ製鉄所はアゾフ連隊が防衛していた。ウクライナの「非ナチ化」というイデオロギー面において、ここは象徴的な地域でもあった。
映画には、次のようなシーンが映されている。2月27日、6才の少女がロシア軍の砲撃をうけて、救急車で病院に運び込まれるが、助からない。3月2日、ロシアの砲撃によってサッカーをしていた少年1人が死亡、2人が負傷。3月9日、産院や小児病棟が攻撃され、病院は多くの死傷者で混乱している。ロシア軍が市内にせまってくる。Zマークをつけたロシア軍の戦車がアパートに砲撃をしている。映像はここで終わっている。
4月になると、マリウポリの戦いはアゾフスタリ製鉄所内での攻防戦に移る。この戦いは5月20日まで続くが、アゾフ連隊の降伏によって戦いは終わる。この3カ月の戦いによって、マリウポリの市民約2万5千人が死亡し、少なくとも市街の95%が破壊された。
ウクライナでロシアがおこなったこと
この作品の監督であり撮影者であるチェルノフは 「これらの映像は、マリウポリの人びとがどのように傷つき、亡くなっていったかを忘れないようにするために撮影した。映画は記憶を形成し、記憶は歴史を形成する。この映像によって、歴史の記録をねじ曲げられないために、真実を明らかにしたい」と語っている。
無差別に人を殺し、恐怖心を与えて、住民を街から追い出す。ガザにおいて、イスラエル軍がおこなっている。これと同じことが、ロシア軍によってウクライナでおこなわれている。
軍事力によってウクライナ人民の民族主義を叩きつぶし、ロシアに忠誠をつくさせる。これがプーチンの戦争目的なのだ。だからこそ、この戦争がどのような形で停戦になったとしても、ウクライナ人民の戦いは終わらない。(鹿田研三)