原発反対を社会の隅々まで
12・8関西電力本店包囲大集会へ
関生京都事件、25年2月26日の判決を前にシンポジウム(11月12日 京都市) |
衆議院選挙は、自公が過半数に届かず、215議席と惨敗し、いわゆる大物といわれている候補者も、議席を獲得できなかった人や、公明党代表が議席を獲得できず、就任早々辞任に追いやられた。他方、立憲民主党が議席を伸ばし、また、国民民主党、れいわが議席を伸ばした。
今回の衆議院選挙は、自民党の裏金問題があたかも焦点であるかのように宣伝され、その逆風をうけて自民党が敗北したかのように取り上げられている。しかし、本質的には、これまでの支配のあり方が問われたのであり、それにたいして自民党支配への「NO!」を突きつけたのである。
原発問題をめぐっては、真正面から取り上げ論議されることがなかった。そういう中で、原発再稼働ばかりか、原発新設をかかげた国民民主が議席を伸ばした。いまや原発問題をそれとして真っ向からかかげて、原発反対を貫く勢力の登場が待ったなしに問われている。
「12・8とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会」は、われわれの声を大きく上げる場である。今こそ大きな声、大きな行動で「原発反対」を社会の隅々までつげ知らせることが必要だ。
女川原発2号機の再稼働を弾劾
女川原発2号機は、2011年3・11で深刻なダメージを受けた原発であり、また、福島原発と同型の沸騰水型原発である。3・11以後稼働した原発は、すべて加圧水型原発である。
女川原発2号機は10月29日に再稼働したが、計画では、発電再開後、定格出力に達した後、原子炉をいったん停止し設備や機器を点検するとしていた。そして異常の有無を確認し、再度原子炉を起動するということであった。これは、今までの原発再稼働時に聞いたこともなく、起動した原子炉を停止し点検するということは、電力会社の対応として、まったく異常な対応である。これは、東北電力が安全性に何の確信をもてない、ということを示している。そのうえ女川原発2号機は、11月4日トラブルのため、緊急停止した。再稼働からわずか6日目である。
女川原発をめぐる動きを見ると、3・11で被災し、長期間とまっていた原発を再稼働するという策動がいかに安全性を無視し、万が一にも事故を起こしてはならないということを軽視しているかということを示している。二度と女川をうごかすな、全ての原発をうごかすなという声を大きく上げていこう。
美浜3号機 配管に穴
また、美浜原発3号機で、1次系の配管に穴が開いていることが判明、原発を停止した。1年前の点検時には異常は発見されていなかったという。配管の肉厚測定の結果、配管内側に直径3ミリと6ミリの穴が2つ開いており、その周辺で配管が減肉(12ミリの厚さが約2・7ミリ〜6・2ミリに削られていた)していた。典型的な老朽化にともなうトラブルであり、即時老朽原発の運転は停止すべきだ。
また、中国電力が、同じく沸騰水型原発の島根2号機を「12月7日に再稼働させる」と発表した。さらに、東電・柏崎刈羽原発の再稼働も狙われている。
なんとしてもこの流れを打ち破ろう。
原発依存社会への回帰が進もうとしている。第7次エネルギー基本計画も策定中である。この流れを打ち破らねばならない。今こそ大きな声、目に見える行動に立ち上がろう。
使用済み核燃料を増やす原発稼働
「12・8とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会」は、2024年の反原発闘争を集約し、25年を展望するたたかいである。
青森県・六ヶ所村の再処理工場について、日本原燃は、24年の早い時期の完成をうたっていたが、27回目の延期を発表し、今度は26年完成をめざすとした。特に関西電力の若狭にある原発は深刻である。使用済み燃料プールは満杯に近く、数年で運転できなくなる。関電が発表したロードマップでは、六ヶ所再処理工場が24年に完成するということを前提にしていたが、それが不可能になった。そのため、使用済み核燃料を乾式貯蔵方式で原発構内に貯蔵しようと狙っている。これは乾式貯蔵に移し、使用済み核燃料プールにあきを作り、あいた部分に新たな使用済み核燃料を入れようとするものであリ、危険極まりないことである。
また乾式貯蔵された燃料はそのまま原発構内におかれ、事実上永久貯蔵となる。使用済み燃料を増やす原発運転は、もうやめよ。
第7次エネルギー基本計画は、いま策定中であるが、原発の増設・新設を打ち出し、原発の徹底的活用を進めようとしている。これまでのあり方を180度くつがえそうとしている。経団連や電事連などは、積極的に働きかけている。
石破政権は、岸田政権の原発回帰のエネルギー政策を引き継ぐと公言している。いっそう原発依存社会への暴走がはっきりしてきた。この流れを止めるのは、私達の行動にかかっている。
原発回帰の先頭に立つ関電を許してはならない。大きな声で、原発反対の声を上げよう。12月8日午後1時、関電本店前に総結集しよう。
関生弾圧許すな
2・26 無罪判決を
11月12日、京都市内で「関西生コン京都事件シンポジウム 労働組合活動を犯罪扱いさせてはなりません」が190人の参加で開かれた。シンポでは竹信三恵子さんを進行役に山田省三(労働法)、金平成紀(ジャーナリスト)、海渡雄一(弁護士)の3氏がそれぞれの立場から、潮目が変わりつつある関生弾圧を粉砕する決意を述べた(詳報次号)。
2面
10・13三里塚全国闘争
市東さんの農地裁判勝利を
う! 石破政権打倒」をかかげて三里塚全国総決起集会が開かれた(写真下)。
集会では18年続いた市東さんの農地をめぐる耕作権裁判が9月30日に結審したが、千葉地裁・斎藤顕裁判長は動揺し判決日を指定できなかったことが報告され、内容で勝利した裁判を判決でも勝利しようという訴えが全体の基調となった。
その市東孝雄さんは昨年2月の強制執行によって自宅前の天神峰農地(40アール)を奪われ、東一さんから受け継いできた営農手段も奪われ、強奪された農地は何の整備もせず放置中であることを弾劾した(写真上)。
集会は萩原富夫さんの基調報告を中心に、市東さんの発言、動労千葉、関西住民、顧問弁護団、沖縄代表などの発言が続き、また川口真由美さんの力強い歌声が会場全体に鳴り響いた。基調報告では、沖縄・南西諸島をはじめ、全国の軍事空港建設・要塞化が強まっている。その一環として成田空港B滑走路1000m延伸=3500m化を軸に、1000haもの用地を拡大し成田空港を巨大軍事空港にしようとする策動がある、と弾劾した。また8月のコメ不足=「令和のコメ騒動」に見られる自公政権による一貫した農業破壊を弾劾した。またイスラエルのガザ・パレスチナ人民虐殺を弾劾し、高まる全世界の反戦闘争と連帯して闘い、巨大軍事空港を粉砕しようと宣言した。さらに10月27日の総選挙で、戦争を起こすしかない資本主義を倒し、人間が人間らしく生きられる社会をめざし、闘う労働者・学生・市民、沖縄・福島・三里塚を一体として闘うことを全発言を通じて確認した。
集会終了後、会場から成田ニュータウンを力強くデモ行進して、10・13全国闘争をおえた。
辺野古ブルーアクション
新宿スタンディング
11月2日
11月2日、毎月恒例の沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックよびかけの「辺野古ブルーアクション新宿スタンディング」がおこなわれ、肌寒い雨天の中、数十人の市民が参加した。
マイクを握った人々は口々に、沖縄県の不許可を押し切って何の成算もなく強行される辺野古新基地建設工事を弾劾した。
終了後、参加者に11月20日18時半から東京・文京区民センターで開催の「辺野古・大浦湾を埋め立てるな! 今どうなってるの? 11・20集会」(〈辺野古の海を土砂で埋めるな! 首都圏連絡会〉と〈辺野古への基地建設を許さない実行委員会〉の共催)と、11月30日14時から国会正門前で開かれる「沖縄の闘いに呼応して『本土』でも声を上げよう! 11・30国会前アクション」(主催「止めよう! 辺野古埋立て」国会包囲実行委員会)と、12月14日14時半から東京・日比谷コンベンションホール(日比谷図書文化館)でおこなわれるイベント「くとぅば じんじげー 〜琉球・島じまのナラティブ〜」(主催 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)への参加が呼びかけられた。
沖縄日誌10月 全域が演習場に
沖縄を前線に日米共同統合演習
10月4日 石破茂首相は、就任直後の所信表明で、自民党総裁選期間中に言及していた日米地位協定の改定には触れなかった。辺野古新基地建設は推進する考えを示した。
5日 名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で「第44回県民大行動」が開かれ、市民650人が参加。新基地建設阻止の抗議の声を上げた。大浦湾ではボーリング調査の作業船が地質調査を続けている。市民は「調査で大変な数値が出た場合、防衛局は設計変更しないといけなくなる、工事を止める手段はまだある」と訴えた。玉城デニー知事は「9月訪米活動の成果」のメッセージを寄せた。
7日 日米共同統合演習「キーン・ソード25」が23日からおこなわれる。沖縄では3空港(新石垣、与那国、宮古島)4港湾(那覇、中城湾、石垣、平良)でおこなわれる予定。各地で抗議行動が始まった。
与那国町の「与那国島の明るい未来を願うイソバの会」は糸数健一町長に「訓練の即時中止」などを求める要請書を手渡した。
16日 〈ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会〉〈沖縄平和市民連絡会〉など県内外19団体は日米共同演習の中止を求める共同声明を発表した。
18日 中城湾港に自衛隊のチャーター船が寄港し、車両や人員が陸揚げされた。市民10人が「南西諸島の軍事化反対」と抗議の声を上げた。
19日 新石垣空港に航空自衛隊のC1、C2輸送機が着陸、米軍関係者や米軍の大型車両などを降ろした。市民は「沖縄を再び戦場にするな」などの横断幕を掲げ抗議した。
21日 〈ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会〉は陸上自衛隊宮古島駐屯地で、「合同訓練中止」などを求める要請文を手渡した。市内での軍事訓練をおこなわないことや宮古空港と下地島空港、平良港を軍事利用しないことなどを要請した。
23日 日米共同統合演習「キーン・ソード25」が本格的に始まった。11月1日までの予定で自衛隊3万3千人、米軍1万2千人の計4万5千人参加。全国で自衛隊の艦艇や航空機が利用する民間空港は12カ所、民間港湾は20カ所。沖縄では、3空港(那覇、新石垣、与那国)と5港(那覇、中城湾、石垣、平良、久部良)の8施設を使う。さらに宮古島空港や沖縄島の公道も使用する。
訓練開始に各地で抗議の声が上がった。宮古島駐屯地前では30人、石垣駐屯地前で20人が「統合訓練やめろ」とシュプレヒコールを上げた。
26日 2023年12月に発生した米兵少女誘拐暴行事件の第4回公判が那覇地裁(佐藤哲郎裁判長)で開かれ、検察側は犯行が「身勝手で自己中心的」として懲役7年を求刑した。弁護側は「誘拐も性的暴行もしていない」として無罪判決を求めて結審した。判決言い渡しは12月13日。
27日 第50回衆議院選挙が投開票された。沖縄では4選挙区に「オール沖縄会議」の4人が立候補。結果は「オール沖縄会議」2勝(赤嶺政賢氏、新垣邦男氏が当選)自民2勝となった。
同日 「キーン・ソード25」訓練の与那国駐屯地で陸自のV22オスプレイが離陸時、地面と接触し機体が損傷する事故が起こった。陸自は同型機の飛行を見合わせ、28日には今訓練での使用中止を決めた。
28日 全港湾沖縄地方本部は「キーン・ソード25」で県内の港湾が使用されることに抗議する集会を那覇港埠頭で開いた、5百人の港湾労働者が参加。(杉山)
3面
検証
石破自民党の戦争政策
沖縄を軍事要塞化し全土を基地化
10月27日におこなわれた衆議院選挙で、自公政権は過半数に達しなかった。新たに首相になった石破茂は、自衛隊を帝国主義軍隊にすることを夢見ている人物だ。来年1月、アメリカでは再びトランプが大統領に就任する。トランプのもとで、ウクライナとパレスチナの情勢はさらに泥沼化していく。今後、世界はどのようになるのだろうか。日本人民は鮮明な展望をもって、この情勢に立ち向かっていく必要がある。
自民党政権による戦争政策の推進
2014年7月、安倍晋三政権は集団的自衛権行使を容認する閣議決定をおこなった。安倍政権は国会と主権者の意志を無視して、この基本政策を政府だけで決定した。これはナチスのやり方(全権委任法)と同じであり、まさにクーデターであった。
2015年になって、安保関連一括法案が国会に提出された頃から、大衆的な反対運動が盛りあがっていった。しかし、この法案は9月に国会で強行採決された。このようにして、安倍政権によって解釈改憲がおこなわれ、集団的自衛権行使が可能になり、日本は「戦争できる国」になった。
2022年12月、岸田文雄政権は安保関連3文書(「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」)を閣議決定した。ここで岸田政権は実質的に専守防衛を棄てさった。しかし政府は「専守防衛政策にいささかの変更もない」と言っている。これは事実を隠蔽して、国民的議論にさせないためだ。>
新たな「国家安全保障戦略」のなかで、岸田政権は「敵基地攻撃能力」(反撃能力)保持を打ち出した。文書では「敵基地」ではなく、「相手の領域」となっており、攻撃範囲が広くなっている。内容的には「相手国攻撃能力」であり、この点に留意しておきたい。かつて石破は、防衛庁長官の時に「相手がミサイルに燃料を注入した段階、あるいはミサイルを屹立した段階で、相手の基地を攻撃できる」(2003年)と答弁している。これでは先制攻撃と区別がつかない。こうして、いまや日本は「戦争する国」になろうとしている。
ここで「敵基地攻撃」論の流れを歴史的に振り返っておこう。
1956年、鳩山一郎首相が敵基地攻撃について「法理論的には自衛の範囲に含まれ、可能である」と国会で答弁している。
1959年、政府は「憲法の観点から、実際にはそういう兵器は持たない」と言っている。以後、政府はこの方針を踏襲してきた。
2020年9月、安倍は敵基地攻撃能力の保有を提言した(安倍の置き土産)。
2022年4月、自民党安全保障調査会が「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」を出す。
2022年12月、有識者懇談会の報告をへて、岸田政権は国会論議をへることなく、安保関連3文書を閣議決定した。
石破首相は、今まで「安全保障基本法の制定」、「日米地位協定の改定」、「アジア版NATOの創設」などを言っている。石破は、軍事的合理性を追及する自衛隊制服組と同じ思想の持ち主だ。地位協定の改定を言っているが、辺野古の新基地に反対する人びとが言っていることとは正反対であり、石破は自衛隊をアメリカと対等な「普通の軍隊」にしたいと考えている。安保問題では、石破はきわめて危険な政治家である。
南西諸島の軍事要塞化
現在、自衛隊は「南西地域の防衛体制強化」を打ち出している。民主党政権の時に、「防衛大綱」(2010年)において、「動的防衛力」が打ち出された。この時、政府文書ではじめて「南西諸島」に言及した。その後、南西諸島にミサイル基地がつくられてきた。南西諸島の軍事要塞化は、以下のような経緯。
●沖縄・奄美
・与那国
2016年、陸上自衛隊与那国沿岸監視隊
2022年、航空自衛隊第53警戒隊の一部を配備
2024年、陸自電子戦部隊
・石垣島
2023年、陸上自衛隊八重山警備隊、地対艦誘導弾部隊、地対空誘導弾部隊
・宮古島
2019年、陸上自衛隊宮古警備隊
2020年、陸自第7高射特科群移駐、陸自地対艦誘導弾部隊
2025年、陸自電子戦部隊
・沖縄島
2016年、航空自衛隊第9航空団
2017年、空自南西航空方面隊、空自南西航空警戒管制団
2022年、陸自電子戦部隊
2024年、陸自第7地対艦ミサイル連隊
・奄美大島
2019年、陸上自衛隊奄美警備隊、地対艦誘導弾部隊、地対空誘導弾部隊
2022年、陸自電子戦部隊
・馬毛島
2023年1月、自衛隊基地建設に着工(完成は2030年3月頃)
●九州
2018年、陸上自衛隊水陸機動団(相浦駐屯地)
2021年、陸自電子戦部隊(健軍駐屯地)
2022年、陸自電子戦部隊(相浦駐屯地)、陸自地対艦誘導弾部隊(健軍駐屯地)、陸自地対空誘導弾部隊(竹松駐屯地)
2023年、陸自電子戦部隊
2024年、第2特科団・司令部(湯布院駐屯地)、陸上自衛隊水陸機動団・第3水陸機動連隊(竹松駐屯地)
2025年、オスプレイ配備(佐賀空港)、陸自地対艦誘導弾部隊(湯布院駐屯地)、第8連隊を創設(湯布院駐屯地)
●広島(呉)
2025年、海上輸送群を創設
ミサイル弾薬庫の建設・増設
ミサイル反撃能力の強化にともなって、西日本を中心にミサイル弾薬庫の建設が計画されている。西日本で、左記の地域で新たな弾薬庫建設が計画されている。
・奄美大島瀬戸内分屯地(3棟)
・鹿児島県さつま町で住民説明会が開かれた。
・宮崎県えびの駐屯地(2棟)
・大分県大分分屯地の敷戸弾薬庫(9棟) 2023年11月、2棟の建設を開始。2026年頃に完成する。
・京都府舞鶴(3棟)
・京都府祝園分屯地(8棟)〜住民説明会はおこなわれていない。
このように、西日本(九州、南西諸島)を中心にして、自衛隊のミサイル部隊が新設され、弾薬庫が強化されている。関西では、あいば野で自衛隊基地が強化され、舞鶴ではイージス艦にトマホークが配備され、祝園分屯地に新たに8棟のミサイル弾薬庫がつくられようとしている。
世界の軍事情勢が不安定に
現在、ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザとレバノン民衆への無差別攻撃などがおきている。核兵器が使われるかもしれない、世界大戦になっても不思議ではない、このような情勢になっている。
この根底には、アメリカの政治的没落と中国の経済的台頭がある。第1次トランプ政権の時に、アメリカは台頭する中国を経済的に封じ込めて、自国の権益を守る戦略に転換した。2025年、アメリカでは再びトランプ政権が復活する。政治的にも経済的にも、世界はおおきく変わろうとしている。ますます戦争の危機が深まっている。
この情勢のなかで、日本の支配者は「国権の発動たる戦争」をふたたび準備している。没落する日本資本主義は、これ以外に生き延びることができなくなっている。具体的には、中国との戦争を準備している。その道筋として、台湾危機を意図的にあおり、中国の軍事的対応を引き出す。日本は「重要影響事態」から「存立危機事態」へとエスカレートさせていく。アメリカの戦争に巻き込まれるのではなく、支配階級は「自国のための戦争」をおこなおうとしている。
戦後、日本は東アジア地域に経済進出をおこなってきたが、軍事力を向けることはできなかった。それは憲法第9条の制約があったからだ。安倍政権は解釈改憲によって集団的自衛権行使を可能にして、軍事力を行使できる法的範囲を拡大してきた。
現在、政府は「わが国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」(防衛白書)と称して、「抑止力の強化」を主張している。強い軍事力を持てば、「抑止力」が強化され、攻撃されない。こういう短絡的な思考で、政府は軍事力の強化につき進んでいる。
あらたな反戦運動を
政府は、「国家安全保障戦略」のなかで「国民が我が国の安全保障政策に自発的かつ主体的に参画」することを強調している。これは国民を戦争態勢に引きずりこまなければ、現代の戦争は成り立たないからだ。
戦前、軍産一体の政治態勢は、じっさいに戦争をおこなっていくなかでつくられていった。戦争に勝利することによって、民衆は戦勝にあおられ、政府の扇動によって、ますます戦争に動員されていった。このように、挙国一致体制は戦争の中でつくられるのだ。この歴史の教訓をしっかり認識しておきたい。
2022年、政府は専守防衛という安全保障政策の根本を変えた。歴史的な転換をおこなったにもかかわらず、このことが国民的議論になっていない。「2015年の集団的自衛権が容認されたときの危機感が、反対運動側には少ないように見えます」(高作正博さん)という現状なのだ。
いっぽう、自衛隊基地強化の動きにたいして、地域住民の反対運動が各地でおきている。個別に闘われている情況をのりこえ、反対運動のネットワークが模索されている。この取り組みは重要なことだ。
この情勢のなかで、革命派は新たな侵略戦争に反対しなければならない。戦争にむかう日本帝国主義と闘い、このなかで「新たな共産主義」を提示していく。われわれは新たな社会を実現するために、その先頭にたつ必要がある。(津田保夫)
4面
11・3大阪憲法集会
憲法とジェンダーで1200人
中之島中央公会堂満杯の憲法集会(11月3日 大阪市) |
11月3日、「輝け憲法! 平和といのちと人権を」集会が大阪中之島中央公会堂大ホールで開かれ、会場は2階席も含めて満杯になる1200人が参加した。主催は、おおさか総がかり行動実行委員会。
主催者あいさつでは1000人委員会の近藤美登志さんが、今回の衆院選で改憲勢力が3分の2を下回った。しかし、今後の政治状況は流動的で憲法をめぐってもそうだ。恒例の11・3総がかり集会としては初めての屋内集会。2つの講演(憲法とジェンダー)をおこなうと述べた。
正義にかなっていない法は破ってもよい
清水雅彦さん(日本体育大学・憲法学)は「憲法入門〜その歴史・意義と改憲論議を考えよう」として講演した。以下、あらすじを紹介する。
憲法とは何か。封建社会では力の強いものが、神話で支配を正当化していた。毎日新聞(10月7日)で、経団連の選択的夫婦別姓意見に対して、自民党がヒアリングをおこなった。そこで、自民党議員の反対理由は「神武天皇による国つくりの基礎から反している」というものだった。
フランス革命、市民革命によって支配者は憲法で支配するようになった。
憲法の元の意味は「組織」「構成」で、大部分は統治規定で人権規定は3章のみ。
日本国憲法の規定の特徴は戦争と軍隊。国家権力は常に憲法を破る可能性がある。そこで、権力を3つに分け硬性憲法は簡単に変えられないようになっている。ヨーロッパは第二次大戦の教訓から多くの国でこの制度を導入した。なぜならナチスは選挙を通じて権力をとったから。多数派は間違ったことをする可能性がある。
違憲審査制はアメリカ独特の制度。日本国憲法にも違憲審査制はあるが、機能していない。内閣が握っている権力の悪が最高裁人事にもかかわっている。その点で国民審査は今日、生かされてないのではないか。
〈法の支配と立憲主義〉
法治主義は、かつて「悪法も法なり」ということだったが、正義にかなっていない法は破ってもよい。フランス革命でもそうだ。放送法も違憲だ。私はNHK受信契約をしたことがない。
〈民主主義と立憲主義について〉
橋下元大阪市長は49対51でも多数なら白紙委任を意味するといったが、単純多数決主義は勘違いしている。ったから。多数派は間違ったことをする可能性がある。
民主主義は憲法が「権力をしばる」ことと「多数の暴走を止める」ことになっている。
〈平和主義について〉
憲法の戦争放棄(9条1項)について、憲法学では〈A説〉で、「国際紛争を解決する手段」としての侵略戦争を認めない。〈B説〉では「自衛戦争」も認めない。これらの2説がある。戦力の不保持(9条2項)については、〈甲説〉は、自衛のための戦力保持は許される。〈乙説〉は、自衛のための戦力保持も許されないとする。
私は、〈B説〉プラス〈乙説〉の立場に立っている。
〈安保法〉
安倍の安保法制以来、日本は「普通の国」を標榜している。軍隊のない国はコスタリカ以外にも世界で26カ国ある。「普通の国」か「軍隊のない国」になるのかだ。
安倍は「積極的平和主義」を唱えて戦争体制を強化してきた(中身からは「積極的軍事主義」だ)が、これは日本国際フォーラムの提言に沿ったもので、この方向にすすんできた。
こうした「戦争する国」に対抗するものとして憲法には消極的平和と積極的平和がある。消極的平和は、9条。積極的平和は、憲法「前文」に書かれている。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」。この平和的生存権の主体は全世界の国民となっている。2012年自民党改憲案は、前文に注目し、削除しようとした。
政府の9条解釈はヘリクツをつくった。「戦力」といいたくないから「実力」という概念をつくった。
政府は9条を形骸化してきた。安保3文書で反撃能力といっているが、これは敵基地攻撃能力どころか敵基地攻撃に限定してない。相手の領域でもっと全面的に戦争することを意味することを強調してほしい。開発中の戦闘機まで輸出できることにした。防衛費GDP比1パーセントから2パーセントへ大幅にアップしようとしている。
9条と自衛隊の矛盾が拡大し、矛盾の解決のために9条を変えようとしている。従来の9条改憲案は、9条2項を変えたいと。安倍が「加憲」論を出して、2項をそのままにして自衛隊を明記する。これは日本政策研究センターの提案の影響だ。本当は2項を変えたい。
2018年自民党4項目の改憲案では、「自衛隊明記」条文案で「内閣の首長たる内閣総理大臣」として首相の判断で集団的自衛権行使可能な方向へ。
また、石破改憲論は、2018年自衛隊明記案ではなく2012年改憲案+αで、国防軍設置や徴兵制合憲など2018年以上に危険な発想の持ち主だ。
憲法にかかわる基本法も議論すべきだ。
安保3文書の具体的阻止の運動が大事になってくる。2015年安保法の時、国会前に立ったが、12万人があつまったが足りなかった。韓国では朴槿恵打倒へ百万人集会が何度もあった。表現の自由を行使しないと。組合の弱さが問題だ。労組と市民と野党の共闘をよびかける、としめくくった。
ミソジニー、制裁欲
小川たまかさん(フリーライター)は、「ミソジニーは家父長制に抗う女性への制裁欲」と題して講演。大阪地検トップ(当時)による性暴力事件。この裁判の初公判と被害者の記者会見、フェミ科研費裁判、沖縄米兵による性暴力事件の初公判と本人尋問などを例に挙げた。
憲法14条条文の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」にかかわる問題であると述べた。
日本のジェンダーギャップは146カ国中118位。国連の女性差別撤廃委員会は日本の夫婦同姓問題について民法改正を勧告した。
ミソジニーは日常にある。「女性嫌悪」だけではない。女性への制裁欲で女性を2つに分断する。ミソジニーを感じる発言が政治家から相次いでいる。自らはケア労働=無償労働の上に立ちながら、「女性は政治に向かない」と発言するなど。
杉田水脈は「女性はいくらでもうそをつく」(2020年)発言。
また、メディア・マスコミの罪が大きいとも。これらは社会の構造の問題である。ミソジニーの論理についてはケイト・マンの著作『ひれふせ、女たち』を紹介した。
閉会あいさつは、大阪憲法会議幹事長の丹羽徹さん。2014年(集団的自衛権合憲の閣議決定)から10年、来年は戦争法から10年。ジェンダー問題で構造的暴力は戦争につながる。そういうものとして憲法とミソジニーをテーマに集会を構成したと述べた。
講演の前には、川口真由美さんとカオリンズのライブがあった。集会後、西梅田までデモ行進をおこなった。
女性を子生み道具と考える
日本保守党代表 百田尚樹弾劾
今回の総選挙で3議席を得た日本保守党の代表・百田尚樹の女性差別暴言が大問題となっている。
11月8日YouTube番組で少子化対策として「若い娘にどういうふうに子どもを生ますかやね」、その為には「やっぱり社会構造を変えるしかない」として、「女性は18才から大学に行かさない」「25才を超えて独身の場合は、生涯結婚できない法律にするとか。そうしたらみんな焦るで。はよ結婚したらな、って」。さらに「30才を超えたら、子宮摘出手術をする」と発言した。「いやこれSFやで」と言いながらこの発言をした。
直ちにSNS上で批判が殺到し、9日には百田は「不快に思われた人に謝罪します」とXに投稿したが謝罪にはなっていない。
百田は人権意識が最低で女性差別が根深いことを露呈した。日本国憲法も全く理解していない。女性の人権も学問の自由、結婚の自由も認めず、女性を単なる子産み道具におとしめている。結婚しても、生む生まないは女性の自由であり、女性が決定権を持つのだ。
少子化の原因を「女性の意識を変えんといかん」と女性の問題にすりかえている。女性の問題ではなく社会・政策の問題だ。結婚しない、子どもを生まないというのは、男女共に低賃金な上に、子育てや教育にお金がかかるという経済的理由が大きい。国が、子育てや教育にお金を増やせばいいのだ。
百田は徹底した男系天皇論者だ。家父長制社会に逆流させる保守党を許してはならない。
5面
万博キキクル
避難困難の夢洲万博もカジノも中止
10月14日、「あかんやろ!カジノ女性パレード」第14弾が大阪市内でおこなわれ、御堂筋をデモ行進した。沿道からは声援があり、若者2人が飛び入りし、幟旗を持って最後までデモ行進した。 |
10月13日「万博キキクル―大阪カジノに反対する市民の会2024年度総会」が豊中市内でおこなわれた。記念講演「万博・カジノを止める展望」中山徹さん(奈良女子大名誉教授)、特別講演「夢洲住民訴訟・住民監査請求について」馬越俊佑弁護士(豊中総合法律事務所)、パネルディスカッションなどがあり万博・カジノの問題点が明らかにされた。
特に、松井前大阪市長が万博会場を夢洲に強引に決めたことの問題性が指摘された。主催は大阪カジノに反対する市民の会。以下、中山徹さんの話を紹介する。
すでに破綻している万博
安全性(ガス爆発、地震津波、避難、落雷、豪雨など)、アクセスの脆弱さ(他地域への悪影響)、事業の進捗状況、採算性(チケットの売れ行き)、行政の財政負担など、冷静に見れば関西万博は破綻している。いつガス爆発するかわからないような所で大規模イベントをするというのはありえない。南海トラフ地震、この30年以内におこる確率が70%。地震が起こったら2時間後に5〜6mの津波が夢洲に来る。防潮堤が傾いたらあの島は逃げるところがない。
行政の財政負担が増えている。万博を止めるのが一番の重要な改革。しかし維新は、これを止めるとカジノのためのインフラ整備ができない。万博関連事業ということで、税金でインフラ整備して、それを使ってカジノを運営していく魂胆。だから破綻しているのがわかっていても万博は強行するでしょう。
亡国の3大経済政策
日本を滅ぼす経済政策は3つある。軍事産業、原発、カジノの3つ。
1つは軍事産業に日本経済が頼ろうとしている。先だって戦闘機輸出を決め、殺傷能力のある武器輸出を解禁した。軍事産業に頼り出すと、どこかで戦争が起こらないと経済が回らなくなる。
2つめは原発。これだけ地震の多い国で原発に依存していくのはきわめて危険。電力会社だけじゃなく、原発を造っている企業も、早く次の原発を造れと、海外にも輸出していく企業もある。
3つめ、カジノは、そこで大損をする人がいないと成り立たない。人の不幸をたてに儲けようなんて早い話が賭博。博打に依存して大阪経済を進めていくなんてまともな政治ではない。カジノが来たら地域経済が活性化するなんてことはありえない。今まで地域に落としていたお金が吸い上げられるだけ。カジノが繁栄すればするほど周辺地域は落ち込む。経済をよくするには、実質賃金を引き上げて、皆に物を買ってもらうこと。日本だけ30年間実質賃金が上がっていない。
次に、維新の動向(支持率は2023年4月の統一地方選がピークで以降は低下)の話があったが、割愛する。
[注]キキクル
気象庁が解説しているWEBサイトの名称。土砂災害や洪水災害からの自主避難の判断に役立てていただくための「大雨・洪水警報の危険度分布」のこと。(花本香)
1兆円近い万博事業費に多額の税金投入
夢洲のインフラ整備 530億円
JR桜島線延伸 1700億円
地下鉄延伸 610億円
淀川左岸線二期工事 2957億円
IR及び万博跡地の土壌改良費 1576億円
万博会場建設費 2350億円
万博運営費 1160億円
合計 10883億円
(大阪カジノに反対する市民の会の議案書より作成)
自公過半数割れを招いた「裏金」問題 11・2豊中
ウソと隠ぺいのデタラメ政治を終わらせよう
11月2日、森友事件の現場である大阪府豊中市内で、「市民集会 ウソと隠ぺいのデタラメ政治を終わらせよう」がひらかれ、雨のなか、関西一円から多くの市民が参加した。主催は、森友学園問題を考える会。
政治とカネの闇
冒頭講演に予定されていた高橋純子さん(朝日新聞編集委員)は大雨で新幹線がストップし、到着が遅れたため、順番を入れ替え、まず上脇博之さん(神戸学院大学教授)の講演から始まった。
上脇さんは「大学の講義のときに、拍手などもらったことがないので、今日は来てよかった」と聴衆を笑わせて始まり、「私は話がうまくないので、今日はレジュメを用意いたしました」。それは、A4横書きのレポートで、『赤旗』スクープ報道などと本人の自民党派閥・政治資金規正法違反事件の刑事告発の経過と内容が、時系列で克明に記録されたもので、12ページに達している。「事実だけを書いていますが、いま大切なのは、これでしょう」とそのレポートに沿って語った。
赤旗日曜版は、2022、23年パー(ティ)券収入脱法的隠蔽とレポートにあります。最後のページは、「自民党本部の政治資金における『翌年への繰越額』2022年、203億5706万」とあります。それが、参議院選挙につかわれたということでしょう。今回萩生田、世耕は、上脇さんが政治資金規正法違反容疑で告発しましたが、10月9日不起訴相当と第5検察審査会が却下し、さらに審査を申し立てた。
石破首相のもとでの改革案には、企業献金(企業の申告義務は甘い)規制、パーティ券の販売禁止、政策活動費の透明性など、「裏金」を封じることはできない。憲法改正の国民投票のときのために、「裏金」を準備している節があると警告を発しました。こうして、上脇さんは、「食事と入浴時間以外は、仕事を別にして、告発状を日夜書いています。僕の青春を返してください」と嘆いた。
安倍1強体制の崩壊
新幹線運行が再開され、なんとか間に合った高橋純子さんが登壇。「新幹線が止まったので、主催の木村真さんに電話したら上脇さんがおられるのでご心配なくとのことでしたが、列車内に、1時間50分ほど閉じ込められました。
「さて、今度の衆院選の結果は、安倍1強体制の崩壊と言えます。小選挙区制度は、例えば、ある国で、9選挙区に9人が立候補していれば、過半数の5人で制圧できる。すると、有権者が81人だとすれば、45票獲得すればよく、あと36人は死に票。さらに、投票率が50%であれば、20人強で勝利できます。
安倍一強体制は、安倍首相の投票者サービスが秘策。この体制の崩壊は、安倍―菅―岸田と続きますが、選挙に関しての安倍流の政策は変わらなかったといえます。さらに、マスコミ対策としては、総理の独占記者会見を産経、夕刊フジに限定しましたが、このやりかたは安倍以前にはありえませんでした。
今回の投票率の低さは、おもに、若者たちがこなかったことにありますが、安倍の独裁政治が圧倒的で、改革を志向するよりも、現体制内で落ちこぼれないようにという内面を形成してしまっていることにあった。それにしても、自公の過半数割れは喜びますが、これからさらに、どうすべきかは、主権者こそこの国の主、ということを忘れずに」と意気軒高な講演だった。
伸びしろがある
休憩ののち、講演者二人の対談。司会進行は地元豊中市議であり、森友学園問題を考える会で活動している木村真さん。
対談では、「モリ、カケ、桜」の情報隠蔽、資料改ざん、あげくのはて廃棄など、国民の知る権利、民主主義を冒涜し、国のためではなく国民のために働くという信条の公務員を死に追いやった責任を政治権力が果たしたということは、全く言えない状況にある。裏金事件にまつわる政治改革もいまのところ、同じようにされていないと3人は共通の認識だった。
最後に、こうした政治の側の無責任を告発してゆくことをあきらめてはならない。これから、参議院選挙も来年あるし、情勢によっては、衆議院の解散もありえないことではない。政界は激しく動揺している。選挙での投票率の53・85%というのは、まだ伸びる可能性ともいえる(伸びしろがある)と上脇さんが力説。今後、市民運動をさらに充実させたい。政治への絶望から希望への運動を進めてゆきましょう、とそれぞれ、3人が様々な角度から語り、万雷の拍手で終了した。(南方史郎)
6面
狭山事件の再審を求める市民集会
袴田事件の勝利に学ぶ
11月1日
壇上でアピールする石川一雄さん、早智子さん(11月1日 東京) |
「袴田さん再審無罪勝利! 次は狭山だ!東京高裁は事実調べ・再審開始を!」のスローガンのもと、狭山事件の再審を求める市民集会が東京・日比谷野音で開催されました。石川一雄(再審請求人)・早智子さんをはじめ、袴田事件の袴田秀子(巌さんの姉)や菅家利和(足利事件)青木恵子(東住吉事件)西山美香(湖東記念病院事件)さんたち冤罪被害者(獄友)や弁護団、再審法改正を闘う政党(立憲民主・社民・れいわの国会議員)・市民などが会場を満杯にして集いました。
無罪を勝ち取った袴田秀子さんは静岡県警の本部長が謝罪に訪れたこと、巌さんが衆議院選挙の投票に行ったことを紹介するとともに「91歳だが元気なので再審法改正、冤罪被害者救済に張り切っていきたい」と明言。獄友のみんなも「自分だけ無罪になればよいとは思っていない。すべての冤罪被害者の無実が晴らされるまで闘う」と力強い連帯を表明、結束の強さを示しました。石川早智子さんは「検察の不正義に激しい怒りを覚える・・生きている間に再審がなければ死んでも死にきれない」と訴え、一雄さんは今日狭山駅に行くまでに2回転んだとあかしながら「冤罪が晴れるまで私は自分の信念を曲げない・・次の5・23集会はないと確信している」と必勝の決意を披歴するとともに「(袴田さんの)無罪判決を聞いて、涙を流した。皆さんの力添えがなければ狭山を動かすことはできない」と訴えています。
この石川さんの想いに応える道。それは袴田事件の勝利の地平から学ぶことです。その一つは冤罪被害者(当該)を主人公(中心)にして弁護団・支援が一体となって闘うこと。二つ目は、それぞれ(一人一人)が意見を出し合い論議を尽くし・創意工夫してできることに取り組むこと。最後にいちばん大切なことは、偽り(歪められた)法の枠を打ち破り広く社会に真実(無実)を伝えて市民感覚(世論)をもって法のゆがみ(権力犯罪)を糺すこと。そのためには、節目節目で記者会見などを開いて問題点をあきらかにしていくことが重要だということです。
11.1狭山市民集会(東京) |
投稿
村上周成さんと共に
狭山と私B
兵庫 山本俊彦
9月27日、大切な友が亡くなった。9月23日の狭山現地調査の報告が出来ないまま、あなたは逝かれました。
28日の、私と村上さんのLINEに次のように記した。
村上さん、山本です。
大変遅くなり、本当にすみません。
23日に直ぐにライン送信出来なかった私の悠長さをお許しください。
訃報をお聞きして、村上さんとのお付き合いを振り返り、周成さんが私にとって、大切な人でいたことが偲ばれます。
未熟者の私ですが、これからも話し相手になってください。
生前の作られた部落解放の資料を基に、少しずつ学習を深める気持ちです。これからも見守り続けてください。
順子さん、深いお悲しみの中、失礼いたします。
私は、本当に周成さんに導かれてここまで生きてこられましたことを、深く感謝しております。 します。
解放運動の素晴らしさを常々語ってくださいました。改めて闘い続けることをお誓いいたします。
少し離れていますが、何かあればおっしゃって下さいませ。これからもよろしくお願いいたします。合掌
29日のお通夜。
正信偈の読経が流れ、ご縁さんから周成さんとの深いお付き合いが語られ、浄土真宗の『み仏に抱かれて』が、むせび泣くようにうたわれた。原発反対の現地で撮られた凛々しい遺影が私の行く手を導いてくれている。
荒本の地元に深く根ざし、部落解放の行く手に必要な闘いは先頭を切って頑張ってきた人でした。
30日の告別式
最後のお別れをさせて頂きました。
お連れ合いが気丈にふるまわれ、悲しみを堪えられる姿をみて、長い闘病を支えられてきた素晴らしい夫婦のあり方を感じました。
「むらで生きることは、闘うことです。これがなくては何も始まらない。両親を呼び寄せ暮らすことは大事なこと。そこから君のやるべきことを見つけ出して」
狭山・尼崎市民の会を昨年始めだすきっかけの村上さんの言葉です。
周成さんたちがはじめられた「世直し研究会」にその晩参加して、彼の闘いの日々を感じました。「辛くとも、思い通りにならなくとも、人生一路で生きていこう」
一緒に呑んだら口癖でした。その言葉の意味が少しだけ分かったお別れの日でした。私の弱さを指摘するのではなく、自分の革命家としての生き様で語ってくれる人でした。
「泣き虫の涙に真実が宿っている時もある。石川さんを真ん中にした運動をして行こうじゃないか。山本君が考え、やりたいようにやっていく中で、必ず道は開かれていく」といつも励まし導いてくれた周成さんと共に、この道を行きます。 狭山・尼崎市民の会を昨年
ぜひ、忌憚ない意見を出し合い、狭山の再審を実現し石川さんの無罪をかちとるために、今後ともよろしくお願い致します。
毎月の23日狭山デーを。11月26日までの奈良県御所市の水平社博物館の狭山特別展を見学してください。
―――――――――
村上周成さんの略歴
1951年富山県五箇山に生まれる。関西大学で部落解放運動に取り組み、76年文学部史学科を卒業。荒本闘争を闘い、のちに部落解放同盟全国連荒本支部長の任を担う。24年9月27日逝去。
国境内植民地化とアイヌ民族の抵抗闘争
世直し研究会に参加して(上)
9月30日、大阪市内で、第58回世直し研究会がひらかれ、出原昌志さん(先住民族アイヌの声! 実行委員会・事務局長)が、「国境内植民地化とアイヌ民族の抵抗闘争」というテーマで講演した。
本稿では、出原さんの講演をベースに、筆者が考えたことをまとめてみた。
天皇を中心にした統一国家
1868年以降、明治政府は天皇を中心にした統一国家を形成していく。この天皇制国家はアイヌからアイヌモシリを奪い、琉球を版図に取り込んでいった。同時に、朝鮮と台湾を侵略し、植民地にしていく。その後、「満洲国」をでっちあげ、ソ連(当時)に軍事的圧力をかけつつ、中国を侵略していった。
アイヌにたいする「国境内植民地」は、侵略の出発点でもあった。それは「満洲国」で実施された「入植植民地」の建設に受け継がれていくことになる。その結果は、日本帝国主義の敗戦という形で決着をむかえた。
今日、日本政府は「戦争する国」づくりをおこない、再び中国にたいする侵略戦争を準備している。この情況のなかで、アイヌモシリ侵略とアイヌ抵抗の歴史を振り返っておきたい。
アイヌモシリの国境内植民地
アメリカは建国(1776年)とともに、先住民族(侵略者はインディアンと呼んだ)を追い出し、領土を拡大していった。19〜20世紀にかけて、ヨーロッパの帝国主義国は資源を求めて、アジアやアフリカ地域を植民地にしていった。
明治政府は欧米に国費留学生を派遣することによって、早くから植民地政策を学んでいる。この「近代化」政策によって、日本資本主義は周辺地域を侵略し、帝国の版図をアジアに拡大していった。
アイヌモシリの国境内植民地は、次のようにおこなわれた。
・1869年、明治政府は開拓使を設置して、アイヌモシリを一方的に併合する。いままで「蝦夷地」と呼んでいたが、これを「北海道」に変え、「皇国の北門」とした。
開拓使は太政官直属であり、絶大な権力をもっていた。屯田兵制度がしかれ、開拓にあたる士族兵が北方警備と憲兵の役割をはたした。1899年、第7師団に編成され、日露戦争ではアイヌも徴兵されている。
・1871年、アイヌを平民籍(戸籍)に編入し、皇国臣民化していった。
・1872年、「北海道土地売貸規則・地所規則」を制定する。アイヌから土地を奪い、土地私有制度を導入した(1人10万坪以内)。
・1876年、「創氏改名」がおこなわれた。
いっぽう、明治政府はアイヌから生業を奪い、食べていけなくすることによって、アイヌを土地から追い出していった。
・1877年、「北海道地券発行条例」を導入して、アイヌの土地、宅地はすべて国有化された。こうして、北海道の面積の20%が御料地・皇室財産になった(1886年)。
・1883年、十勝川上流の鮭漁を禁止した。アイヌ民族は、これを唯々諾々と受け入れたのではない。
和人による北海道移民
1886年から「殖民地撰定事業」が始まった。奈良の十津川村民600戸(2489人)が、最初に移住(新十津川村)した。このように、貧しい農民は政府の植民地政策に動員されていった。この政策は、さらに「満洲国」建設に継続されていくことになる。
1897年、「北海道国有未開地処分法」を制定。ひとりについて、開墾用に150万坪、牧畜用に250万坪、植樹用に200万坪を無償で貸し付けた(成功時には無料付与)。アイヌモシリの大地はアイヌの生業と生活の拠点だが、アイヌはこの土地から排除されていった。アイヌは「保護地」(荒地)に強制移住させられた。こうして、30年間で北海道に190万人が移住していった。当時、アイヌの人口は1万7千人だった。この時点で、アイヌ人口比は1%に減少している。
「滅びゆく民族」観
1859年に、ダーウィンが『種の起源』を出版し、このなかで独自の生物進化論を展開した。これを人間社会に適用したのが「社会ダーウィニズム」だ。資源と市場を求めて海外に進出する資本家にとって、「弱肉強食」の論理は好都合だった。この理屈を用いて、資本主義国は植民地を拡大していった。
日本では、「滅びゆく民族」という概念が、アイヌを追放するイデオロギーとして民族学的につくりだされた。アイヌは生存競争に敗れ、淘汰されるべき「劣等民族」であり、その存在は無価値なものとされた。「北海道旧土人保護法」は1899年に制定されたが、中身はこの優生思想でつらぬかれていた。この法律は、なんと1997年まで存在していた。(鹿田研三)(つづく)
7面
健康保険証を使おう
マイナンバーカードは不要
11月6日、大阪市内で「そうだったのか! マイナンバーカードの大誤解!」という集会が木村真さん(管理・監視社会化に反対する大阪ネットワーク)を講師としておこなわれた。市民の関心は高く会場は一杯になり質問も多数あった。主催は〈戦争あかん! ロックアクション〉。講演要旨を紹介する。
現行の健康保険証「廃止」とマイナ保険証への「一本化」とは
政府は「12月2日からマイナ保険証を基本とするシステムに移行します。医療機関にはマイナ保険証をご持参下さい。マイナ保険証をつくって下さい」と宣伝している。
しかし、いま手元にある保険証は、有効期限(国保なら来年10月31日、自治体によって期限が異なる)まではそのまま使える。マイナ保険証を持っていない人(マイナカードを作ったけど健康保険証として使う登録をしていない人も含む)に対しては、手元にある保険証の期限が切れる少し前に、申請不要で「資格確認書」が交付(郵送)される。資格確認書で、普通に保健診療ができる。機能としては保険証と全く同じ。実際問題としては「保険証→資格確認書に名称変更するだけ」と思って良い。
マイナ保険証を持っている人の場合、手元にある保険証が期限となっても、資格確認書は自動的には交付されない(後期高齢者はマイナ保険証を持っていても申請不要で交付される)。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するための登録は解除できる。登録解除の申請は保険者へ。国保・後期高齢なら市町村。
登録解除すれば、保険証が期限切れとなったら、自動的に資格確認書が交付されるようになる。
マイナンバーカード利用拡大に躍起の政府
政府は、2万円分のマイナポイント(予算額2兆円)付与や自治体が特設窓口を設けたりする費用を全額国費負担するなど、湯水のように税金を使ってマイナンバーカード取得を促してきた。これにより、カードの保有率は75%まで上昇した。保険証としての利用登録はその内の8割、全人口比では約6割。
ところが、マイナポイントに釣られて申請・取得した人は、実際にはほとんど使っていない。そこで、何としても使わせるために、「健康保険証廃止・マイナ保険証への一本化」という強引な策に打って出た。また医療機関・薬局に対する「アメ」と「ムチ」の政策で、なりふり構わず利用を促してきたが、マイナ保険証の利用率は、9月時点で13・87%にすぎない。これで12月に健康保険証を廃止するとは無謀。
マイナンバー制度
マイナンバー法とは、行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律である。2012年民主党野田政権がマイナンバー関連法案を国会に提出(衆院解散により廃案)。翌13年第二次安倍政権でマイナンバー関連法が国会で成立した。>
マイナンバーは、長期滞在の外国籍の人を含む日本国内に在住する全ての人に、原則生涯不変の12桁の個人番号を振り当て、別々の行政機関(国の省庁、自治体など)がそれぞれに収集・保有する多種多様な個人情報を名寄せ・紐付けする。マイナンバーは名寄せこそが目的。
マイナンバーカード
マイナンバーカードには、ICチップがついており、公的個人認証(署名用電子証明書、利用者証明用電子証明書)が入っている。
マイナンバーは、利用できる分野は「税・社会保障・災害対策」に限られているが、マイナンバーカード(公的個人認証機能のシリアルナンバー)の取り扱いには、強い制限がなく、あらゆる分野で利用可能。自治体での独自利用(図書館カード、印鑑登録カードなど)、民間利用(スーパーやドラッグストアのポイントカード、鉄道系のカード等々)も推奨している。カードが生活の様々な場面で使われるようになれば、様々な企業・機関にシリアルナンバーと紐付けられた個人情報が蓄積されていく。
ゆくゆくは現行の保険証を廃止することは方針化されていたが、あくまで併用だった。『骨太の方針』2022(22年6月閣議決定)には「2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入をめざし、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」とある。
しかし22年10月河野デジタル相が唐突に「2024年秋の廃止を目指す」と表明。国民皆保険が原則の日本で、現行保険証を廃止しマイナ保険証に一本化することは「マイナンバーカードは申請により取得」(取得は任意)というマイナンバー法に反する。
『医療DXの更なる推進について』(厚労省 2024年7月)では、@医療情報の「二次利用」が明確に打ち出されている。Aマイナ保険証が医療DXの基盤と位置づけられている。医療・介護の公的データベースをつくる。仮名化情報の利用・第3者に提供。公的データベースを研究者・企業等が一元的に利活用できる。製薬会社、生命保険会社にとってこんなありがたいことはない。個人情報を様々な「二次利用」によって民間営利企業の「商売のネタ」として新たなビジネス創出につなげるという財界の要望がある。
政府にとっては@社会保障費を極限まで切り詰めること、A戦争体制・国民総動員態勢をつくるための基盤、B治安管理、のためである。
「管理と監視のディストピア」を回避するために
@マイナ保険証を使わず(有効期限までは)現行の保険証を、その後は資格確認書を使う。すでにマイナ保険証を持っている人は登録解除し資格確認書を使う。Aマイナンバーカード自体を持たない・つくらない。すでに持っている人は、返納する。
政府の方針は、カードの利用を拡大し、個人情報を管理する方向なのでこれは対抗策になりうる。
本の紹介
『戦争ではなく平和の準備を』(下)
青井未帆??他 地平社 2024年7月刊
死の商人国家への道
7章は、9月22日に大阪で開かれた杉原浩司さん講演会とほぼ同じ内容で重複するが再論する。
武器輸出三原則の例外化が、中曽根政権の対米武器技術供与(1983年)を皮切りに、小泉政権の弾道ミサイル防衛の日米共同開発(2005年)と積み重ね、2009年野田民主党政権の「武器の国際共同開発」などの包括的例外化と空洞化し、2014年安倍政権が武器輸出三原則を撤廃し、「防衛装備移転三原則」閣議決定で大転換した。このかん、武器輸出は解禁したものの、実際の輸出は惨たんたるものだった。
岸田政権は安保3文書で武器輸出を積極的に位置づけ、なりふりかまわぬ暴挙に打って出た。2023年には軍需産業強化法を野党(立憲民主党)まで賛成して成立させ、武器輸出や武器工場の設備増強に税金を投入し、破綻的な軍需産業の工場や設備の国有化も辞さない。自公の密室審議で殺傷武器の輸出を解禁した。
次期戦闘機の第三国輸出も大問題だ。岸田は「戦闘機の第三国輸出は国益」と断言し、「死の商人国家」宣言をした。ガザで虐殺を続けるイスラエルへの日本企業の産業ロボットの提供などに対し、三菱重工、三菱電機、川崎重工などの軍需産業に対する市民の闘いが反撃のために重要となっていると訴える。
軍産学複合体をつくらせないために経済秘密保護法や統合作戦司令部設置法、次期戦闘機共同開発の調整機関設置条約に賛成してしまった野党(立憲民主)などへの批判を強めなくてはならない。(おわり 左伸二郎)
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少数与党=第2次石破内閣打倒へ
自民党を分裂・解体に
危機深める石破内閣
10月27日総選挙で、石破自公連立政権は、会わせて215議席という過半数を大きく割りこむ歴史的敗北を喫した。自民党・公明党は議席においても比例得票数においても惨敗し、1994年の羽田内閣以来30年ぶりの少数政権となった。
野党は、立憲民主党は大幅議席増ながら比例は微増。維新の会は議席は少数減だが比例票は300万規模で減り、馬場代表らの交代が確定した。共産党は2014年を頂点に毎回2議席減が続き得票数も336万で最低を記録した。この中で今回躍進・健闘したのは国民民主党とれいわ新選組だ。国民は議席の4倍増、れいわは3倍増。国民はキャスティングボートを握り、れいわは共産党を上回る議席・得票を獲得し、新たな左派の骨格になろうとしている。
自民敗北の要因は何よりも裏金問題であり、選挙期間中に非公認候補に2000万円を支給したことは決定的ダメージとなった。そのうえ自民党内野党として正論を吐き国民的人気を得てきた石破茂新総裁がが、総裁選での言動を豹変させ「総裁選での疑似政権交代=表紙替え」が失敗した。
国民・れいわの躍進の原因は、国民の「手取りを増やす」「103万円非課税を178万円に」と、れいわの「失われた30年を取り戻す、消費税廃止」の訴えであった。近くは23年10月からの物価高騰・賃金減少(長くはこの30年)に苦しむ市民にとって、国民の「103万円以下非課税を178万円に」は具体的な数値を示し、20代・30代の若者の多数を獲得し支持基盤を大きく拡大し、300万票を超す得票増となった。れいわの「失われた30年を取り戻す、消費税廃止」は、れいわが一貫して訴えてきた「この30年の賃金下落グラフ」は圧倒的説得力を持ち、他の政党もこのグラフを盗用するほどだ。全国的な支持が広がり、ほぼどこのブロックでも共産党を上回る得票を獲得した。
2012年体制(安倍一強)は終焉
11月11日特別国会において石破自民党総裁が首班指名された。しかしながら少数与党政権は30年前の羽田政権以来で、絶えず「内閣不信任案」におびえる弱体政権でしかない。議会運営においても衆議院予算委員会・法務委員会の委員長を立憲に明け渡し、憲法審査会会長も枝野立憲元代表が就任するなど、厳しい対応が続く。この危機の中で支配階級は玉木雄一郎の「国民民主党」を連立に引き込もうと必死である。しかしながら、国民民主党の得票増は明確に反自民として獲得したもので、安易に連立を組めば国民の支持は一気に離れるであろう。
また維新はもともと野党と言えない政党であったが、大阪・関西万博の破産と兵庫県知事問題で失速し馬場代表は今回の敗北で交代するが、後継執行部が安易に連立に走れば、かつての「みんなの党」のように一気に壊滅の速度を速めるであろう。
今一つ与党・公明党の危機も深刻である。最高時900万票の得票が今回は600万票を切った。これは一人公明党自身の議席減だけでなく、自民党選挙区をかさ上げしてきた2〜3万票が漸減するので、自民党自身の危機に直結する。さらに「常勝関西」と言ってきた大阪4選挙区の落選は、宗教的結集軸の崩壊の端緒となり、また次世代執行部が形成できないことも併せ、ほぼ挽回するすべがなくなった。
総選挙後も続く自民党政治からの離反
10・27総選挙敗北と11月11日首班指名で少数政権の成立による日本帝国主義の支配の危機はまだ終わったわけではない。自民党裏金問題は終わっておらず、また能登半島地震救援を放置したこと、引き続く物価高、軍事費増=大増税などが襲いかかる。また支配階級の中の分裂が公然化した「選択的夫婦別姓」問題(経団連など資本家たちは賛成、高市を先頭とする保守派・宗教勢力は反対)も大きく党を揺さぶるだろう。25年7月参議院選にむけ、24年10月敗北の支配の危機は続く。
さらに地方の離反も激しい勢いで進んでいる。総選挙後のこの11月各地で首長選挙がおこなわれているが、各地で自民党・保守系の敗北が続いている。11月9日投開票の愛知県豊橋市(人口37万人)市長選では、スポーツアリーナ建設問題を争点に保守系現職を打ち破り41歳の無所属新人が勝利した。同日の改選4人の市議補選(10人立候補)でも長坂市長と連携する候補の2人が当選する画期的事態が起こっている。
また東京荒川区長選でも自民・公明推薦候補が敗北して、三重県伊賀市でも元社民党で地域政党代表の稲森市長(40歳)が誕生した。さらに17日投開票の兵庫県知事選、その後には名古屋市長選があるが、いずれも自民党は独自候補が出せず、兵庫では自民党は3分裂、名古屋は国民元代表候補に相乗りする始末だ。この一連の地方の危機に自民党は国会攻防で手いっぱいで、地方からの反乱に手が回らない始末だ。
軍事費削減 反戦・反安保・生活防衛で全国に左派の拠点を
この流れが25年7月参議院選まで続ければ、自民党はさらに解体的危機に追い込まれる。総裁選で極右性を示した高市は総選挙で安倍派裏金議員が次々落選し、「今動けば自民は分裂」と悲鳴を上げている。石破政権と総務省・財務省などは「103万円」の大攻勢に値を上げ、例によって財源論でこの怒りを封殺しようとしている。これに対し我々の回答は、「財源はある。岸田内閣が決定した軍事費2倍化5年で43兆円を、もとに戻せ」である。
最低でもかつてのように軍事費をGDP比1%にすれば、5兆以上の財源が生まれる。これを既成野党に任せるのではなく、軍事費倍増反対・全国基地化阻止の国民運動でつくらなくてはならない。
「アメリカファースト」のトランプが米大統領に再当選し、日本の軍事費をGDP比3%に増大を要求してくるのは目に見えている。これをも真っ向から跳ね返す「生活防衛・軍事費削減」の闘いと、沖縄を先頭にする全国基地化反対の闘いを大きく発展させよう。
既に全国各地の反基地闘争は、8月沖縄、9月広島・呉に集まり、この11月30日・12月1日には大分に集まり、全国反基地闘争のネットワークを強化しようとしている。関西・京阪奈丘陵の祝園ミサイル弾薬庫拡張反対の闘いも、25年1月現地説明会開催を求め新たな段階に入ろうとしている。
石破内閣の危機を議会内の闘いに任せず、生活防衛(「税金控除103万を178万円に、失われた30年を取り戻そう」、能登半島被災者救援など)、軍事費削減・全土基地強化許すな、軍需産業・原発産業に依拠するな、現憲法の破壊許さず「人らしく暮らせる生活を」などを掲げて全国で闘おう。その力を東京杉並型の地域主権運動(子育て支援、高齢者の居場所づくりなど)と連携し、今回の豊橋(徹底的に子ども!)、伊賀(草の根運動伊賀)など新たに各地に拡大していこう。
国政選挙・自治体選挙・戦闘的大衆闘争(戦争反対・生活防衛・持続できる社会へ)が一体で進む時代が始まろうとしている。石破政権打倒から、自民党を壊滅的に解体状況に追い込み、1930年代的激動の時代に労働者・人民が政治と社会を奪還していく時代を切り開こう。