未来・第398号


            未来第398号目次(2024年9月19日発行)

 1面  タカリ・パワハラの斎藤兵庫県知事
     万博もろとも維新政治一掃へ

 2面  ポピュリズム化が進む自民党総裁選
     疑似政権交代=表紙書き換えを許さない

     軍事費8兆5389億円
     9・22武器輸出反対集会へ

 3面  ロボットの軍事利用と
     ジェノサイドに反対
     関西ガザ緊急行動

     沖縄日誌8月
     強権T来な基地建設・訓練進む     

     辺野古ブルーアクション
     新宿スタンディング
     9月7日東京

 4面  投稿
     複合危機の世界と反資本主義左翼
     佐藤隆

 5面  大庭伸著『レッド 先人たちの闘いの成功と失敗に学び、現在に生かそう 』を読んで
     『新たな戦前』においても労働者が闘える革新と展望を与える書
     野田浩二(東京・労働者)

 6面  核燃料に触れた汚染水
     海洋投棄をやめさせよう

     アトミック・エイジ(核時代)の欺瞞と不正義

 7面  シンポジウム
     健康保険証廃止方針は撤回を

     狭山再審求め学習会
     9・23現調  10・21報告会
     尼崎      

 8面  略

     お知らせ

     カンパのお礼

           

タカリ・パワハラの斎藤兵庫県知事
万博もろとも維新政治一掃へ

9・8緊急県民集会に650人。別室・通路・立見で人があふれた(9月8日 神戸市)

緊急県民集会に650人 350人のデモ

斎藤知事問題は「兵庫の恥」として全国に知れ渡り、9月8日の緊急県民集会は県民会館の主会場・別会場が満杯で、通路をあふれ一部舞台上に上がる650人が参加した。集会後のトアロードを経て兵庫県一の繁華街=センター街を三宮までのデモ・パレードでは、「斎藤いらん、維新もいらん」のコールに多くの通行人が手をふって呼応するなど、通例では考えられない事態が起こった。
集会では、評論家の佐高信さんの濃い目の斎藤知事・維新批判(維新は安倍・菅×橋下・松井で作られた、吉本興行と在阪マスコミが率先して支えた)のあと、ジャーナリストの西谷文和さんが百条委員会の事実経過をビデオにコンパクトにまとめ、斎藤知事が今でも見解を変えない「ウソ八百」のウソを完璧に粉砕し尽くした。おねだり(タカリ)では、カニやワインやロードバイクや姫路城レゴブロックなど(40万円の皮革製品以外は)すべて貰っていたこと・食べたことが百条委員会でも確定した。もはや退陣しかないが金に汚い維新=斎藤だから12月1日まで在職し冬期一時金をせしめる(吉村も1日在籍で文書交通費100万を入手した)だろうと推測。最後は安倍以降の自民党の悪行の数々と維新・斎藤の悪行を「買い物ブギ」の歌に合わせて批判。満場の拍手と笑いをとった。

県議会百条委員会内での奮闘

次いで丸尾まき県会議員は、事件発覚後ただちに県庁職員にアンケートを取り事実究明をし、百条委員会の設置に注力した。7月29日の百条委員会以降は県庁職員全員からアンケートを取り証言を求めると、タカリは淡路玉ねぎ、兵庫ノリ、ズワイガニ、牡蠣、ゆかた、ネクタイ(播州織)、丹波木工製品などなど100点以上の兵庫県各地の特産品をせしめていたことが次々に判明。パワハラも有名なエレベータースイッチ事件、博物館20m手前下車激怒事件だけでなく、怒鳴り、付箋投げ、夜中(時間外)のチャットなど枚挙にいとまがない。この段階で斎藤知事が今でもしがみつく(告発文は)「嘘八百・公務員失格、居酒屋の噂話」の根拠は失われたのだ。
県議会は当初は数十年ぶりに設置の百条委員会に懐疑的だったが、全会派から委員(委員長は第一会派・自民党、副委員長は第二会派・維新)を出し、通例なら考えられない無所属(会派ナシ)の丸尾さんを委員に選び、事実確定に全力をあげてきた。9月6日の委員会では片山前副知事が証言。県官僚であった片山は、斎藤知事の3月29日の「嘘八百、公務員失格」の記者会見(事前に中身は知らされてなかった)にはさすがに違和感をおぼえ、また「捜査」段階では、告発文にパワハラがあり、パワハラは感じた方が基準で、以前教育委員会でいじめの問題を扱った件で、一方的決めつけは難しいとの感想を持った(要旨)と証言。片山前副知事ら「牛タンクラブ」4人組は斎藤と一体でありながら、9月6日段階で3人は辞職・降格などで部署を変わり登庁せず、9月5日の証言を6日に訂正した商工部長は「頭がまっ白」と動揺し、今や斎藤知事は孤立無援となった。とはいえ告発文7項目の5項目の解明も残っており(優勝パレード資金集めで信用組合からキックバック・職員自殺、震災機構副理事長2人の解任など)、知事を辞めさせても事実究明をおこなうと丸尾まき議員は発言した。

公益通報制度知らずは、交通法規を知らずに運転

県庁前に勢揃いし三宮までのデモに出発(9月8日 神戸市)

またこの間最大の問題となった「公益通報者つぶし」の実態も、ほぼ解明された。斎藤知事は3月21日に告発文を入手し激怒し、片山副知事らに「犯人探索」を指示。3班に分かれ疑わしい人を捜査。片山副知事は西播磨県民局長に会い脅しとガサをかけ、局長のパソコンのプライバシー部分も押収した(1年分、A4で300枚)。そのうえで、ごく親しい部下・県会議員(維新)らに情報を漏らし、県民局長の定年退職を認めず配転し追い詰め、その後懲戒処分を下し、最後は自殺に追いやったのだ。公益通報制度の専門家の上智大学教授は百条委員会での証言で、あってはならない「独裁者の粛清」と証言したほどだ。職場内に不正やパワハラがある時に、それを告発する通報者の権利を守るために制定されたこの法律の意味を、自らの犯した事件から半年もたっても理解できない人物が県行政のトップにいることは、交通法規を知らずに車を運転し、違反を指摘されると「俺は知事だ」と怒鳴っているわけで、これだけで一発アウトだ。

斎藤知事と維新を政界から追放へ

さすがにこの悪行には、県議会の自民・公明・県民連合(立憲など)など4会派が不信任を表明し、9月議会には不信任決議案が出されるだろう。しかし斎藤知事の「製造責任者」の一部維新議員はいまだに斎藤知事を擁護する部分がおり、法的拘束力のない辞任勧告・知事辞任・知事選で終えようとしている。しかし斎藤は県議団や吉村維新代表から辞任勧告されても辞めない。最終的には不信任案が通り、知事が議会を解散すれば選挙になり、維新議員の大半は落選となる。しかし同時にこの問題が長引けば兵庫県斎藤知事問題は維新の疫病神となり、国政での維新没落は必至だ。
もともと維新は、橋下・松井と安倍・菅が作った関西自民党の安倍派別動隊で、橋下・松井時代は、職員基本条例、教育基本条例など勝手な「ルール」を作り公務員攻撃・府政私物化・私服肥やしをしてきた。斎藤知事は条例など作らず、自らの利権をパワハラ・タカリ・脅しで分捕ってきたわけだ。少し前に市長室にサウナを持ち込み、市長室を自宅がわりにしていた市長がいたが(池田市)、「身を切る改革」でなく、パワハラ・タカリ・脅しは維新の体質・本質・お家芸なのだ。

県内左派・市民運動の総括かけて

集会でアピールする丸尾まき県議(9月8日)

この維新の兵庫進出にあたり、2021年7月の兵庫県知事選を前に市民運動(みなせん=各地の市民連合に相当)側は激しい危機感を表明し、4月段階で県内野党によりベターな候補(井戸知事後継の副知事・金澤候補)の選択を求めた。しかし県内野党は「維新は大阪の事」「共産が井戸後継に対して独自候補を立てるのは判る」として、反維新統一戦線ができなかった。6月末に共産を除く野党(立憲、社民、新社会、みどり、れいわ)が井戸後継の金澤を推したが、時すでに遅かった。その後は22年参議院選からは野党2陣営合わせても定数3の1議席にも届かず、23年県議選で維新が躍進し、さらに斎藤の横暴・増長に輪をかけ今回の事態に至ったのだ。在阪マスコミと県内野党の責任は重大である。その間大阪に近い西宮・尼崎・宝塚では維新議員は増えたが、市民の奮闘で市長選ではいずれも維新候補を撃退した(22年3月の西宮市長候補だった増山は県議の中で今も斎藤を擁護している)。
県内野党と市民運動はその反省・総括も含め、想定される県議選、知事選を反維新統一戦線で闘い抜いていかなくてはならない(定数86人の県議会で2議席ながら、党勢拡大のため早々と県知事選独自候補の擁立を表明をした日本共産党は、この期に及んでもそのセクト主義・独善性に反省がないことは、一連の経過を知るものとして指摘しておく必要がある)。
大阪万博の破産必至を前に、斎藤兵庫県政問題でも維新は支持率を下げており、8月25日投開票の箕面市長選でも現職維新市長がダブルスコアに近い形で大敗した。次に兵庫県で衆議院選、県議選・知事選で維新を大敗させ、府知事・市長と、過半数の議席を持つ大阪府議会・市議会の独裁的政治打倒への道を切り開いていかなくてはならない。
斎藤・維新の兵庫県政私物化許さず、民主主義を取り戻す怒りを持続させ、不信任、議会解散・選挙、再度の不信任で斎藤知事を失職させるまで頑張ろう。9・8集会は市民デモHYOGOなど市民団体5団体の共催で実現された。無党派市民が、中央政界の自公政治の裏金問題に対する怒りと、大阪・兵庫での維新政治に対する怒りで、短期日のうちにかつてない結集を実現した。ここから兵庫県下の大阪・関西での維新打倒・自公政権打倒の新たな運動が始まる。斎藤知事を引きずり下ろすため、県議会内の良心的議員たちとも連携し、最後まで闘い抜こう。(岸本耕志 9月9日記)

維新政治はもう終わり〜万博・カジノ・斎藤知事問題
講師:西谷文和(ジャーナリスト)
丸尾まき(兵庫県会議員)
とき:9月29日(日)午後2時
ところ:尼崎中小企業センター(阪神尼崎駅、北東5分)
主催:市民の力で社会を変えよう!連続市民講座実行委員会



2面

ポピュリズム化が進む自民党総裁選
疑似政権交代=表紙書き換えを許さない

裏金問題で追い詰められた岸田首相の総裁選不出馬会見(8月14日)を受けて、自民党は9月12日告示、27日開票の総裁選に突入した。いち早く出馬表明した小林鷹之はじめ、石破茂、河野太郎、小泉進次郎、茂木敏充、林芳正、高市早苗などが次々と立候補表明し、その数10人近くの乱戦になろうとしている。しかしその内実は政権政党・国民政党の国家像をめぐる政策論争というより、裏金問題を曖昧にしながらみそぎをつけ、統一教会・日本会議など宗教勢力に媚び、党員・議員の人気取り=ポピュリズム選挙で表紙を変える「表紙替え選挙」と言わねばならない。また岸田政権下での閣僚が、不人気の政策(マイナンバー制度で不人気の紙の健康保険証廃止延期など)を否定する混迷ぶりもさらけだしている。先行は小泉進次郎と言われているが、独特のパフォーマンスと「選択的夫婦別姓」を争点にし(賛成の経団連十倉会長とも会った)逃げ切りを策している。しかしながらその裏には「憲法に自衛隊書き込み」も狙っており、気を許してはならない。
10人の乱立・多様な争点ということは、岸田で陥没した政権の後継は決して安泰ではなく、短命政権が早くも想定されている。30年にわたる政治的混迷での生活破壊と戦争のための軍備拡張・大増税路線の継承を許してはならない。
他方同時期におこなわれる立憲民主党代表選も「昔の名前の2人」と「駆け込み立候補の2人」で何とも意気が上がらない。本来なら大軍拡・原発推進を止めるべく自民党をも巻き込んだ論争が必要だが、正面切って軍拡反対・原発廃止を訴える候補は1人もおらず精彩を欠く。
自民党総裁選後は早い段階での解散・総選挙が言われている。9月反戦・反原発・生活破壊阻止を闘い、大軍拡・大増税を進める自公政権を、万博・斎藤知事問題で混迷の維新ともども、総選挙で打倒していこう。

軍事費8兆5389億円
9・22武器輸出反対集会へ

2025年度の予算編成に向けた各省庁の概算要求が8月30日締め切られ、総額117兆円と過去最高となった。その中で防衛省は過去最大の8兆5389億円を要求した。
8兆円台は初めてで、憲法9条下での専守防衛に違反する敵基地攻撃能力(反撃能力)用の長距離ミサイル、攻撃型ドローンなどの取得費も初めて計上した。その額は24年より2500億円多い9700億円だ。
また人工衛星で目標を探知・追尾し攻撃の精度を高める「衛星コンステレーション」に3232億円、迎撃困難な「超音速攻撃弾」の開発・製造体制拡充に3161億円、英伊と共同開発する次期戦闘機開発に1127億円を計上し、他国に届く複数の長距離ミサイルの取得費や、ミサイル配備に必要な火薬庫・弾薬庫の増設費用も盛り込まれている。30億円かけて調達する予定の攻撃型ドローンは、自ら目標にぶつかる「自爆型」を想定。将来的には人を介さず兵器が敵を峻別し、攻撃することができる人工知能(AI)の搭載も検討するという。
さらに対中国戦を意識して、さらに宮古八重山地域、奄美諸島に新たに訓練場や補給拠点を設置するための調査費用も入った。この予算額は文教関係予算の要求額(4兆3838億円)の約2倍に達する。12年、民主党政権時の約4兆7000億円の1・8倍、対GDP比1・53%という天井知らずの大増額となる。敵基地攻撃・軍事大国化予算を許してはならない。
この膨大な予算は当然にも、三菱重工、三菱電機、川崎重工やNEC、IHIなどの国内軍需産業を育成していくものとなる。ここ数年、武器輸出関連法案の改悪がなされ、ミサイルなど殺傷武器の輸出に踏み切ると、日本は文字通り武器製造大国になる。またこの武器輸出先は、武器が消耗される「紛争地」(イスラエルなど)が対象地となり、戦争で儲ける「死の商人国家」への道を歩むことになる。
9月22日大阪で、武器輸出反対ネットワーク代表の杉原浩司さんを迎えて「武器輸出は死の商人国家の道」と題した講演会が開かれる。8兆5000億円もの軍事予算と琉球弧への軍事基地のさらなる建設、西日本を中心とする空港・港湾の整備、祝園など全国弾薬庫網の拡大、武器製造業の育成、武器輸出などに反対する運動を新たに創り出すため、9・22講演会に参加しよう。

3面

ロボットの軍事利用と
ジェノサイドに反対
関西ガザ緊急行動

川崎重工・ファナックなどのイスラエル取引業者・軍事ロボット技術を弾劾(9月3日 大阪)

9月3日、大阪工業大学(梅田キャンパス)で第42回日本ロボット学会学術講演会が開かれた。関西ガザ緊急アクションは、20人が会場前に陣取り、講演会参加者にたいして、パレスチナの旗を掲げてスタンディングをし、「ロボットの軍事利用に反対しよう」と訴え、ビラを撒いた(写真上・下)
役重善洋さんは「ファナック社のロボットは、ガザ虐殺に用いられている155ミリ砲弾などの兵器を製造するイスラエルや米国の軍需工場の製造ラインで使われています。川崎重工は、イスラエルの軍需企業IAI社と契約を結び、攻撃型ドローンを防衛省に輸入販売しようとしています。日本ロボット学会に関係する学生・研究者・企業人は、日本ロボット学会学術講演会のスポンサーとなっている両企業に対し、虐殺加担をしないよう働きかけ、またそのための議論を早急に開始してください」とマイクで訴えた。参加者や通行人は注目し、ビラの受取も良かった。
また、関西ガザ緊急アクションはじめ7者による文書『ロボットの軍事利用とジェノサイド加担に関する憂慮とお願い』(8月26日付)を日本ロボット学会理事会と上記講演会実行委員会宛に送付している。












沖縄日誌8月
強権T来な基地建設・訓練進む

8月1日 沖縄市の陸自沖縄訓練場への補給拠点化に向けた弾薬庫の整備計画をめぐり、沖縄防衛局は設計業務について入札公告を始めた。陸自沖縄訓練場の補給拠点化は2022年の安保3文書で閣議決定され、23年度に基本検討を実施し24年度の予算を計上している。住民の説明会開催の求めに応じることなく、弾薬庫や隊庁舎の建設に着手する段階に入った。

同日、日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン24」が与那国町で、公道や与那国空港を使用しおこなわれた。空港には市民らが駆けつけ中止を訴えた。

2日 久米島町では、米軍鳥島射爆撃場で訓練を実施。住民は鳥島を臨む久米島町から「島々を戦場にさせない」などのプラカードを掲げ抗議した。

5日 陸自宮古島駐屯地の部隊は、多良間村の公道で徒歩「防災」訓練を実施した。住民は「防災を前面に出した軍事訓練だ、村内でやらないでほしい」と訴えた。陸自宮古島駐屯地は、今後も宮古島市や多良間村で公道を使用して同様の訓練を実施する方針を示した。

7日 うるま市ではキャンプ・コートニーゲート前で「『日米共同作戦計画』に反対する集会」が開かれ市民110人が参加。「沖縄を戦場にするな」と抗議の声を上げた。

10日 宜野湾市で「『欠陥機オスプレイの飛行停止と普天間飛行場の閉鎖・返還』を求め『米兵の少女暴行と政府による事件隠ぺい』を糾弾する8・10県民大集会」が開かれ、2500人が参加。
沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故から13日で20年。参加者は、変わらぬ沖縄の現状にも「あきらめず気持ちを一つに」と米軍基地の縮小を訴えた。 オール沖縄会議共同代表の稲嶺進さんは「相次ぐ米軍関係の犯罪の発覚に怒りに燃える日々だ。少女暴行事件は6カ月以上も公表されず情報隠しが発覚した。まさに植民地と言わざるを得ない」と怒りをぶつけた。玉城デニー知事は、名護市辺野古での工事が進んでいる現状に触れ、辺野古新基地反対を改めて強調した。

8・10県民大会(宜野湾市)
20日 名護市辺野古の新基地建設で沖縄防衛局は、大浦湾側の3カ所で護岸工事に着手した。着工したのは、埋め立て予定地北側の外周を形成する「A護岸」・中仕切り護岸「N1」・「N2」。「A護岸」では金属製のくいを打ち込んだ。「N1」「N2」では石材を投下した。市民は海と陸の双方で抗議した。

22日 沖縄防衛局は、名護市安和桟橋で土砂の搬出を再開した。土砂の搬出は6月に起きた「市民と警備員にダンプカーが衝突した死傷事故」の発生を受けて中断していた。防衛局は事故の原因究明も進まない中で再開を強行。この日は警備員がネットを広げて「人のバリケード」をつくり、機動隊が市民を排除した。防衛局は、従来のやり方(入口は3方向からダンプを入れる。出口は2列2台出す)から、入口は1カ所、出口は1台に変えた。北上田毅さんは「わたしたちは、これまでのやり方が事故原因と指摘してきた。防衛局が非を認めた」と語った。

23日 2023年12月に発生した米兵による少女誘拐暴行事件の第2回公判が那覇地裁(佐藤哲郎裁判長)で開かれ、検察側証人として被害にあった少女が出廷し、「逆らうのが怖かった」などと証言。地裁は少女のプライバシー保護のため遮蔽板を設置、少女の母親にたいする証人尋問もおこなわれた。
8・18大阪で「辺野古は今」集会










辺野古ブルーアクション
新宿スタンディング
9月7日東京

真夏と変わらない猛暑だった9月7日、毎月恒例の辺野古ブルーアクション新宿スタンディング(呼びかけ:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)がおこなわれ、約80人が参加した(写真)
沖縄辺野古現地の行動に参加した方がマイクを握り、緊迫する現場の空気を伝えた。また別の方が、繰り返される米軍関係者の性犯罪で「若い人がジョギングもできない状況を私達本土の人間が強いている」と訴えた。
行動終了後の集約で、9月13日、午後1時から参議院議員会館講堂でひらかれる「沖縄で相次ぐ米兵による性犯罪事件 隠蔽した日本政府の責任を問う 政府交渉・院内集会・抗議行動 〜基地があるかぎり性犯罪は起き続ける〜」(主催:基地・軍隊はいらない4・29集会実行委員会)に高里鈴代さんが参加することが報告され、参加しようと呼びかけがあった。

4面

投稿
複合危機の世界と反資本主義左翼
佐藤隆

1 帝国主義の世界支配の破綻とグローバルサウス

21世紀は世界のパワーシフトが進み、世界のGDP占有率は先進国のG7が1990年代初頭に70%近くであったものから約40%に低下。他方、BRICSはG7とほぼ同じ規模の経済圏となっている。20世紀初頭に確立された帝国主義の世界支配(レーニン)であったが1990年代から本格化したグローバリゼーションと新自由主義の30年を経て大きな後退をしているのである。
これは旧植民地諸国の一定部分が豊かになるという積極面を持つ一方、各国国内の貧富の格差が拡大する、米中対立が激化する、サヘル・中米・南アジア等の国家機構と経済が脆弱な国々が崩壊的状況を呈するといった不安定な状況を現出させている。
中国は1978年に改革開放政策を取って以来、驚異的な経済成長を実現してきた。中国名目GDPの推移は、1978年から50倍以上になり、21世紀の20年では約14倍となった。20世紀、左派右派問わず、経済学者で中国が世界経済の主要なプレーヤーになると予想した者はいなかった。中国がこの驚異的な経済成長を実現した背景としては、米ソ冷戦構造と中ソ対立の中での1979年米中国交正常化以来の米帝国主義との「平和的な」外交関係があった。しかし、その共存関係から今や米帝国主義としては中国の台頭を抑えなければ自らの覇権を失うという段階に至ったのである。
「グローバルサウスの台頭」と言われるものの実態は単純な様相ではない。コンゴ・スーダンなどのサヘル諸国、ハイチ等の中米諸国では脆弱な国家機構が崩壊し、帝国主義や周辺諸国が武装勢力と連携して利権に介入するという事態となっている。スリランカやバングラディシュといった南アジア諸国の経済的混乱も深い。
政治的にみても「グローバルサウスの台頭」は1966年の反帝国主義・反植民地主義を掲げたアジア・アフリカ・ラテンアメリカ人民会議結成とも違っており、むしろグローバルサウスでの新自由主義の拡大という面を持つ。先進帝国主義諸国の世界支配は破綻しているが、現段階では、それに代わる民衆の新しい秩序が構築されようとしているわけではないのである。
インドのGDPは来年には日本を抜いて世界第4位になると言われている。それは1990年からの30年で12倍と急成長を実現している。しかし、インドの若者の失業率は約45%と世界で最も高い水準と言われ、90%の労働者がインフォーマルセクターで雇用されているといい、労働力の半数近くを雇用する農業はGDPの20%弱でしかない。水道の普及率は都市部でも70%、農村部ではさらに低く16%ほどにとどまっている。政治的にはヒンドゥー至上主義を掲げるモディ政権は極右に分類される。

2 戦争が絶えることのない21世紀

21世紀は、第2次世界大戦以来最大の500万人の犠牲者を出しアフリカ大戦と称される第2次コンゴ戦争の中で幕を明け(コンゴはスマホに使用するレアアースの供給国)、2001年9・11以来の米国が主導する「テロとの戦争」では、2021年8月の米軍のアフガン撤退までに100万人以上の犠牲者を出した。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵略に始まった戦争はウクライナ兵3万人以上の死者をもたらして終結のめどがたたず、2023年4月に始まったスーダンでの軍と武装勢力の衝突は500万人の難民を生み出し、2023年10月7日に始まったイスラエルのパレスチナガザ地区への攻撃では死者が4万人に達し、その半分以上が子どもや女性である。世界で戦争・紛争が絶えることなく続き、拡大している。
核兵器使用や原発への攻撃の危険性はリアリティーを帯び、核の拡散が進み、核の終末時計は「残り30秒」とされている。

3 絡み合うポリクライシス

2023年は産業革命以来の気温上昇がパリ協定で定めた上限の1・5度を超えたと言われ(ポイントオブノーリターンは2度)、気候変動は世界各地で深刻な自然災害をもたらしている。また、COVID19に続く、人獣共通感染症によるパンデミックが発生する間隔は短くなっているとされている(マラリア・エイズ・結核の3大感染症は未解決のまま)。それに加えて、AIの登場によりICTを人類がコントロールできなくなる危険も指摘されている。
上記の危機はグローバル化と新自由主義の破綻の中で互いに影響しあっており、世界は複合的な危機(ポリクライシス)の時代に入ったと言っていい。
グローバルなパワーシフトが地政学的な危機を生んで紛争と戦争を拡大している。当然、現代の戦争は核戦争の脅威を引き寄せる。
20世紀以来の先進帝国主義国の化石燃料の大量消費と肉食文化は帝国主義の独占的世界支配の上に成立したものであり、そもそも人類全体が共有できるようなしろものではなかった。セルジュ・ラトゥーシュは「米国の生活水準を全人類に普遍化すれば地球6個、ヨーロッパの水準なら地球3個が必要」と『脱成長論』で論じていたが、グローバルサウスの経済成長はこのテーマを現実化し俎上に載せ、資本主義的成長と地球の自然的限界の矛盾を突き出したといえる。
グローバル化がインターネットやソーシャルメディアの発展を生み出し、インターネットやソーシャルメディアがグローバル化を促進したが、人類がそれを統制できなくなる危険が指摘されている。ICT兵器は、火薬と核に続く第三の兵器革命をもたらすと言われる。その特徴を一つ挙げれば、戦時と平時、軍と民間の境界線を不鮮明にすることである。平時に利用するプラットフォーム・ICT環境はそのまま有事に使用される。情報戦・サイバー攻撃に宣戦布告はない。情報化社会では、政治的経済的対立と軍事的対立の境界は容易に飛び越えられてしまうのだ。

4 極右の台頭と反資本主義左翼

米国のトランプ共和党、フランスの国民連合、イギリスのリフォームUK、イタリアの同胞、ポーランドの法と正義、ハンガリーの市民同盟など排外主義を扇動する極右が世界で台頭している。昨年来のイスラエルによるガザで続くジェノサイドは、「宗教シオニズム」や「ユダヤの力」といった内閣における極右政党の存在が大きな動力となっている。これら極右は移民や異教徒、マイノリティーを仮想敵に仕立て、ネットを使って排外主義・差別主義を暴力的に扇動し、虚構の解決策を提示している。
他方、反資本主義左翼は、現在、時に中道左派勢力や民主化勢力と連携して政治的なプレゼンスを確保することに成功しているが、総体としては、かつてのように独自の民衆の政治的選択肢として登場できていない。
しかし、世界は、資本主義の継続か、人類の存続かの二者択一的に迫られる地点に差し掛かっている。そして、反動的な戦争と独裁、排外主義・差別主義、そして環境の破壊に対して、世界中で多くの人々が合法的手段を駆使し、あるいは実力的な方法で、命がけで立ち上がっている。これを一つの力にしていこう。グローバルな民衆の連帯に基づく平和、新自由主義的な経済的膨張からの脱成長、真の公共の復活、資本主義に変わる世界の構築を実現しよう。(8月11日)

5面

大庭伸著『レッド 先人たちの闘いの成功と失敗に学び、現在に生かそう』を読んで
     『新たな戦前』においても労働者が闘える革新と展望を与える書
     野田浩二(東京・労働者)
4月14日

私の著者との出会いは、2015年5月、早稲田大学名誉教授だった佐藤昭夫先生の最後の著作『「武力信仰」の悪夢の再現を憂える―戦後労働法を学んだ陸軍将校生徒(米寿の記)』の東京都内の出版記念パーティーの場でした。私が場違いな感で所在なくしているところ、港合同の故・大野ひろ子さんに声を掛けられ、すぐさま大庭さんを引き会わせてくれました。
そこで、大庭さんの著作『レフト 資本主義と対決する労働者たち 論集・左翼労働運動の総括と展望』(2012年7月31日発行、以下『レフト』と略)を購入しました(実際は大野さんに「この本、絶対買いなさいよ!」と強く勧められたからですが)。それが後に、東京・多摩地域の独立系労組などで結成されている2018年の多摩地域メーデー実行委員会主催の「京浜グループ事件」(山代吉宗・巴夫妻のたたかい)に学ぶ講演会に結実することになりました。大庭さんの講演会には労組活動家だけでなく、戦後に作家として活躍した山代巴の愛読者も含めて多様な人々の参加があり成功を収めました。以降、大庭さんとさまざまな交流が続くことになります。

ここで、本著作である『レッド 先人たちの闘いの成功と失敗に学び、現在に生かそう』(以下『レッド』と略)の紹介の前に、前作である『レフト』に若干触れさせていただきたい。『レフト』に貫かれているのは、中国侵略戦争下の山代夫妻のように徹底して工場労働者の日常に接しながらひたむきに青年・女性労働者を組織化していこうとする姿に投射されている大庭さんの「労働者階級自己解放」の確信に他ならないと私は思います。同時に、工作者としての労働者革命家のあるべき姿の追求であり、それを次世代に絶対に継承しなければならないとの彼の強い信念ではないか、と感じました。それは、日本労働運動の「悪しき伝統」である〈継承性の欠落〉を何とか自身の手で埋めようとする大庭さんの人生をかけた執念の試みでもあります。
その思いは本著作である『レッド』にも通底しています。「はしがき−宝の山に分け入ろう」のなかで、著者は、なぜ日本の労働運動がダメになってしまったのか、との問いに〈継承性の欠落〉を挙げています。「戦前・戦後の労働者たちの苦闘を主体的に総括し、その教訓を生かそうとしないことが、今日の体たらくを招いた大きな理由の一つ」だからこそ、「労働運動の歴史を主体的に総括し、私たちの共有財産として継承・発展させることが求められている」と強調されています。そして、たたかいの中で「不可欠の前提として〈革命の子〉を育てること」を呼びかけます。それが、この著作タイトルの『レッド』に込められているのではないか、と推測します。
その上で、大庭さんが「先人たちの闘いの成功と失敗に学ぶ」との思いで、「成功」例と「失敗」例を具体的に検討し、客観的に分析している点に着目する必要があると思います。ありがちな「戦前の日本共産党のスターリニズム偏向ゆえ必然的に敗北したのだ」とのアプリオリなレッテル貼りではなく、戦前の弾圧下での個々の貴重な成功例にも真摯に学ぶ必要がある、との鋭い視点です。

『レッド』は、「戦前編」、「戦後編」、「米騒動から百年」、と戦前から現代までの労働運動、民衆運動を俯瞰し、運動内部における女性差別、民族差別、部落差別の問題点を具体的に摘出します。とりわけ重要な指摘は「無数の朝鮮人の労働者の血と汗にまみれた闘いのうえに、現在のわれわれが存在している」、「排外主義を克服し彼らの奮闘を継承して闘うこと」です。差別・排外主義の主体的な克服が日本労働運動の歴史的・階級的課題だと改めて気付かされます。
私は、著者の最大の仕事であろう「浜松・日本楽器争議」の大闘争の詳しい描写よりも、正直言って、1932年「満州事変」直後の東京・三河島から始まった「米よこせ運動」に強く惹きつけられました(「全国で米よこせ運動 「満州事変」下で左翼が柔軟に対応」)。
1929年世界大恐慌以降、失業者はあふれ、貧乏人は米が買えず苦境に陥っている中、1932年スラム街の失業者と主婦たちが米よこせ運動に立ち上がりました。関東消費組合連盟は、反動的な産業団体の政府への請願運動の成功から学び、農林省に米の払い下げを要求し、既にデモが禁止されていた当時、400人のデモ隊が農林省前に座り込み、そうした大衆闘争を背景に代表者が交渉し、米の払い下げを約束させることができました。
この勝利について著者は、共産党の方針をストレートに掲げるのではなく「社会民主主義系の団体にも参加を呼びかけ、賛同した団体とは分け隔てなく一緒に行動した」こと、「指導部が長い間計画を練り、目標を国家権力や議会におき、大戦前夜の厳しい弾圧下でギリギリのところまで合法性を利用して目的を達した」ことが勝利の要因だと総括します。 現代に引き付けて考えれば次のことが重要でしょう。当時の共産党中央が「反戦を第一に掲げなければならない」と指導したことに対し、激しい討論の末、党指導部も「米よこせ」要求一本に絞ることに応じた、という点です。
数十年を隔てた私たちの活動経験でもずいぶんと既視感のある議論だと言えます。「経済主義ナンセンス、政治闘争がなければ革命的でない」と何度も繰り返されてきたやりとりです。
「新たな戦前」の時代の到来のなか、どう「生きるためのたたかい」と社会変革のたたかいを結合させられるのか、どう具体的な反撃の闘いを組織するのか、今日個々の活動家は極めて思想的・実践的に問われているのではないか、と考えさせられました。

大庭さんが着目し、活写する先人たちの闘いは、具体的な〈闘いの戦術〉への強いコダワリに溢れています。「戦術において思想を語る」―それが大庭イズムの核心と言えるのではないでしょうか。それは、あらかじめ党の「路線の正しさ」「正しい戦略」に基づいて、労働運動が形成されるのではなく、あくまでも労働者の現実のたたかいの中で、勝利するための戦略が求められ、緻密な戦術がたたかいの中で編み出されていく、という徹底した〈現場の思想〉ではないか、と私は捉え返しました。
最後に。『レフト』を未だ読んでない労働運動活動家がいたら、その読了と咀嚼を強くお薦めしたいと思います。『レフト』と『レッド』は2部作であると考えますので。

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核燃料に触れた汚染水
海洋投棄をやめさせよう
津田明夫

この8月24日で、東京電力が福島第一原発でALPS処理汚染水の海洋投棄を始めてから1年が経過した。福島地裁では、ALPS処理汚染水差止訴訟がたたかわれている。本稿では、この核汚染水海洋投棄の現状について報告する。

正体は核汚染水

ALPS処理汚染水は、メルトダウンした原子炉に流れ込んだ水が、核燃料デブリにふれることによって発生した核汚染水を、ALPSで処理したとして、政府や東電が「処理水」と強弁しているものであり、実態は「核汚染水」というべきものだ。
汚染実態としてトリチウムが取り上げられるが、ふくまれている核種はトリチウムだけではない。海洋投棄されている物質(核種)とその総量が明確にされるべきだ。
東京電力は、今年の9月1日までに合計で8回、海洋投棄をおこなっった。これによって、核汚染水6万2631?、トリチウム10・2兆ベクレルが太平洋に投棄された。核汚染水貯蔵タンクは、6万トンが投棄されたことになり、残りの量は131万トン(8月1日現在)になっている。
この海洋投棄によって、東電と日本政府だけが利益を得ており、世界中の人びとが被害を受けている。地球環境を破壊するな。

トラブルが絶えない東京電力の体質

東京電力・福島第一原発では、今年に入ってからもトラブルが続出している。2月、ALPS(多核種除去設備)配管を洗浄中に、作業員2人が廃液で被ばくした。4月、配管の補修工事中に、作業員が電気ケーブルを切断し、停電した。8月、2号機の使用済み核燃料プールから25トンの水が建屋内に漏えいした。
また、8月22日、2号機燃料デブリの「試験的取り出し」作業において、作業ミスによって、またしても取り出しが延期された。原発事故から13年を経て、いまだに燃料デブリの形状さえもわかっていない。

損害賠償は難航

この海洋投棄で生じた損害賠償をめぐって、漁業水産関係者は東電と交渉をおこなっているが、交渉は難航している。
これまでに約550件の請求があったが、このうち支払いが決まったのは約180件で、約3分の1にすぎない。東電は業者側に因果関係を証明するように求めている。このハードルが高くて、証明が難しいのだ。
北海道では、中国政府によるホタテの禁輸措置によって、甚大な影響が出ている。しかし、損害賠償はほとんど認められていない。

ALPS処理汚染水差止訴訟

「ALPS処理汚染水差止訴訟」が福島地裁でおこなわれている。昨年9月と11月に、合計で363人の原告が提訴した。原告たちは、「東京電力のALPS処理汚染水海洋放出と国の許可」差し止めを求めている。現在、第2回口頭弁論が終了している。
第2回口頭弁論において、裁判長は原告本人の陳述を認めなかった。裁判所は原告のナマの声を聞かないで、準備書面だけで済まそうとしている。これは民意を無視する行為だ。裁判長の策動を許してはならない。10月1日に、第3回口頭弁論がおこなわれる。「ALPS処理汚染水差止訴訟」に注目していこう。

海外の対応

中国政府は、「核汚染水」と正しく表現している。中国政府は海洋投棄に反対し、日本産水産物の全面禁輸措置をおこなっている。これにたいして、岸田文夫首相は「科学的根拠に基づかず、きわめて遺憾なことだ」(8月24日、福島県いわき市)と述べた。しかし、科学的根拠に基づかないのは、日本政府のほうだ。
韓国の李元栄さんたちのグループは、6月8日に京都市で世界市民大会をおこない、「核汚染水STOP! 世界市民宣言書」を採択した。
海洋投棄に反対する声は、世界中でおきている。海洋投棄に反対する運動が、ますます重要になってきている。

アトミック・エイジ(核時代)の欺瞞と不正義

昨年9月6日、ロイターは「米国防総省は9月6日、ウクライナに対する最大1億7500万ドル相当の新たな安全保障支援策を発表した。主力戦車エイブラムス向けの劣化ウラン弾が含まれる。この支援は、ブリンケン米国務長官がこの日、訪問先のウクライナの首都キーウ(キエフ)で発表した総額10億ドル超のウクライナ追加支援策の一角。同支援策には6億6500万ドル超の新たな軍事・民生安全保障支援やウクライナの防空向け支援などが含まれる。劣化ウラン弾の使用を巡っては健康面でのリスクなどを踏まえ、激しい議論がある。英国は今年初め、劣化ウラン弾をウクライナに供与したが、米国による供与は今回が初めてとなる。」と報じた。
劣化ウラン弾が、ロシア及びウクライナの占領地帯で、使われたとはっきりした報道はないが、ロシアの一方的侵略から始まるウクライナの抵抗へのイギリス、アメリカの支援が、ここまできた。

体内被ばく

「一日5千体は、無理です」「総統の命令だ」『ショア』という映画の中の、ユダヤ人殺戮工場のなかでの工場長と軍人監督の会話。数字は、正確に覚えていない。しかし、それでは、一日3万体ならいいのか? これは、広島で原爆投下で、一日に亡くなった方々のおおよその数字。さらに、80年後には、原爆病関連で亡くなる方は、世界にどれほどだろう。30万人はかるく超えているだろう。
イラク湾岸戦争では、劣化ウラン弾の被ばくで、戦場は、敵味方双方の墓場となった。生還できたアメリカ退役軍人は、50万人がホームレスとなった。ヴェトナム侵略では、戦場情報を公開したがイラク侵略については隠した。劣化ウラン弾は、原爆と異なり、人体に有害ではないとアメリカ政府、軍は、強弁し、何らの賠償も受けられない兵隊が圧倒的だったようだ。戦術的核兵器の定義は、さだまっていない。ウラン被ばく、体内被曝で、生命を失う危険はあるが、軍の責任ではないということだ。福島での、米軍「トモダチ作戦」も同様。

アメリカのハンフォードをモデルに

東電福島第一原発事故に関するドイツでの総括会議の結果、ドイツでは、原発を事業化しないと決めた。日本と違う方向性だ。今後の原発に関しての会議の規制委員会の上には、倫理がついている。日本にとっては、原子力はハイテク産業であり、福島県浜通り地域は、アメリカのハンフォードをモデルとした、イノベーションコースト構想の町とされた。東京の政界の人々は、ピンチをチャンスに、などと甘いことを言う。被ばく者も避難者のことも、身内にない。
ハンフォードは、原爆が成功してのち、手工業的プルトニウム製造を工業的大量生産工場にしたところだが、40年で事業停止している。『リッチモンド』(アメリカ製のドキュメンタリー映画。リッチモンドは、ハンフォード工場で働く人のための人工的ベッドタウン。残念ながら、地元先住民を排除して、アメリカ有数の財閥モルガン、デュポン系ジェネラル・エレクトリック社などが造成したリッチなモダン都市)
その上手、ハンフォードは、もう2度と誰も入れない場所と映画では語られている。この町の、紋章には、キノコ雲があしらわれ、この町のフットボールチームは、BOMBERSという。長崎の原爆を製造したことが誇りなのだという。アメリカの政府キャンペーンでは、戦争を早期に終わらせ、兵隊の被害を少なくした、原爆は良いものなのである。
ナチスヒトラーの第三帝国は、二度と復権してはならない国家モデルだが『原爆帝国主義』(ジェームズ・S・アレン著)のアメリカは、イノベーションを繰り返し、太陽と同じエネルギー活動を地上化する(ありえない?)研究に、大資金をつぎこみ、日本の辞任表明したばかりの岸田首相は、GX構想として、量子革命を推進する構えであった。
こうしたアトミック・エイジ(核時代)の欺瞞と不正義を倫理的に、民衆の側から切断しよう。(南方史郎)

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シンポジウム マイナ保険証の実害
健康保険証廃止方針は撤回を

8月31日、「2024年秋の健康保険証廃止方針は撤回」を掲げて、シンポジウム「マイナカードと保険証の一体化による実害を考える」が明治大、神奈川大、専修大の各キャンパスと大阪弁護士会館でおこなわれた。主催は地方自治と地域医療を守る会。3つの講演と1つの報告があり、パネルディスカッションがあった。

講演1

「マイナンバーカードを保険証として利用における技術的問題(ママ)」
講師=佐藤一郎さん(国立情報学研究所教授)

マイナンバーカード(以下マイナカード)を保険証として利用する場合、カードに書き込まれた識別子(ICチップ)とパスワードにより本人確認と医療保険の資格確認をする。カード自体には、個人情報は入っていない。外見的偽造への対策は皆無に近いので、偽造マイナカードによる他人に成りすましてのスマホ乗っ取りや電子決済サービスでお金が使われたりする「SIMスワップ詐欺」がおきている。
保険証をマイナカードで置き換えることにしたため、乳幼児もマイナカードを持つ必要がある。乳幼児は顔写真による認証が難しく、乳幼児には顔写真なしマイナカードを発行することになった。
マイナカードは、電子的読み取り装置かつ通信ができない地域(山間部や離島など)では、資格確認ができない。能登半島地震では、マイナカードは役に立たなかった。本人同意による第3者(医療機関等)への診療・薬剤情報の開示ができ便利とされているが、情報開示が悪用されることを考えるべき。電子証明書の識別子は、マイナンバーとは独立であり、個人情報としても扱われない。識別子で名寄せすれば、マイナカードの電子利用に関わる履歴を作れる。民間におけるマイナカードの利用が広がれば、広範囲な行動が補足できる。

講演2

「マイナ保険証が地方自治体にもたらす問題」
講師=保坂展人さん(世田谷区長)

保坂さんは自治体の現場から報告。デジタル化は反対ではなく賛成の立場だが、マイナ保険証は信頼・信任がないところで進んでいる。マイナカード自体には取得義務はないのにポイントを付与するとアメを配り、一方で今使っている保険証を廃止するというムチの政策。自治体にはそのたびに電話が殺到し窓口には長蛇の列ができる。
高齢者施設の問題。従来の保険証はまとめて預かっているが、マイナ保険証は財産を狙われたりプライバシーを覗かれたりするなどで預かれない。そこで暗証番号なしのマイナ保険証も作ったが、健康保険証と同じで電子的に繋がらない陳腐な物で使われていない。
健康保険証が廃止されると、「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」などの発行の事務が増える。マイナ保険証のある人とない人の区別ができないという問題がある。マイナ保険証の利用率は10%程度、これを50%に引き上げるのは至難の業。

講演3

「医療機関の現場から見る保険証廃止・マイナ保険証の問題」
講師=山崎利彦さん(全国保険医団体連合会理事)

河野太郎デジタル担当相が暴走し、マイナ保険証の「使用促進」を強引なスピードで進めている。現行の保険証廃止を唐突に言い出したのは河野大臣。そして@「利用が進まないのは医療機関が『保険証をお持ちですか?』と聞くからだ」 A「マイナ保険証を使えない医療機関は通報しろ」と医療機関に責任転嫁し、今や「マイナ保険証を出せ」と必ず言えと医療機関に言い出した。
12月2日健康保険証が廃止されても、マイナ保険証を持っていない人には「資格確認書」が送られてくる。これは現行の保険証と同じ役割。マイナ保険証の人には「資格情報のお知らせ」の紙が発行される。通信インフラがない所の診療やカード読み取りができない時に使うもの。12月2日以降も現行保険証は1年間は使える。それが周知されていない。医療機関にマイナ保険証のメリットはない。
マイナ保険証のトラブルは、現在も7割あり1年たってもずっと続いており、資格確認ができない。既に「診療情報提供書(紹介状)」とお薬手帳がある。直近の薬が書いてあるお薬手帳の方が便利。マイナポータルでは1カ月以上前の薬しか見られない。

「顔認証カードリーダーは早くて便利」?

現行保険証なら「見せるだけ」ですむ。マイナ保険証は、毎回カードリーダーにかざし、顔認証か暗証番号か選択し、手術/診療・薬/特定健診の3情報について医療機関に提供するか否か3回も選択しなければならず時間がかかる。
医師から、情報を提供する必要性について何の説明も受けないうちに「同意」を求められると言うことであり、患者は情報提供範囲の選択ができない。自己の医療情報のコントロール権をないがしろにしたシステムである。

誰にメリットがあるのか?

全国医療情報プラットホームの構築と利活用。マイナポータルとの連携で個人の医療情報を閲覧可能にする。ガバメントクラウドの構築−2025実施に向け「政府共通のクラウドサービス」→情報の中央集権化をはかる。

マイナ保険証・DXは誰の為か?

患者にメリットはなく医療機関にとっても(少なくともここ数年は)デメリットのみ。ガバメントクラウド完成時には全国民の情報が集約済みとなる。医療に限定されない全ての国民の情報を一括管理可能になる。支払い基金は全力を挙げて医療費を抑制する。大変なことになる。

報告

「マイナ保険証を巡る国会質疑等の問題」
報告者=赤石あゆ子さん(弁護士/群馬)

河野大臣の国会答弁を具体的に取り上げ、命と医療の場面で命を軽視する姿勢、質問に正面から答えず、論理のすり替えやはぐらかしの発言に終始する。民主主義のルールを完全に無視し、強権的に誤った政策を推し進めていると批判した。

パネルディスカッション

講演者の他に、江沢岸生さん(長野県飯山市長)、小島延夫弁護士(筑波大大学院非常勤講師)が加わりパネルディスカッション。
小島さんは「マイナ保険証の法的問題点」として4点提起。
@国が市区町村と協議せず、市区町村の業務である健康保険業務の変更を迫るのは、地方自治の侵害。
A「国民皆保険」制度の下、マイナンバーカードの取得を事実上強制するもの。任意取得の原則に反する。
Bマイナンバー(個人情報)という秘密情報が記載されたカードに、外部に示すための機能を統合するのは矛盾 
C健康保険法の改正なく、療養担当規則という省令で、保険医療機関に対して、オンライン資格確認に応じること及びその体制の整備を義務付けるのは、法律の根拠を欠くもので、憲法41条(国会は唯一の立法機関)違反。
強引な手法は許されない、現場(自治体や医療機関)の意見を聞き取る姿勢がないことが問題。それで混乱がおきている。健康保険証を残せば何の問題もない。世界中でこんな制度をやってる所はない。G7、リトアニア、台湾も個人情報カードに保険証機能を持たせていない。オンライン化の財政負担に耐えられず廃業する医者も多数。救急搬送時のマイナ活用は足枷になる。実証実験で救急到着から出発までの時間がマイナ利用なしより6分29秒遅れた。現行保険証が使えることを広め、使ってもらうために正確な情報を発信しよう。マイナ保険証は止めさせよう。(花本香)

狭山再審求め学習会
9・23現調  10・21報告会
尼崎

内容の濃い学習会にみんな集中(8月23日)

昨年8月「狭山市民の会」が結成された兵庫県尼崎市で、8月23日に1周年を記念して20人の参加で狭山学習会が開催された。講師は10年前から〈狭山再審を求める市民の会・こうべ〉で活動している斎藤成二さん。
斎藤さんは1960年代の狭山事件発生時の商業新聞記事の酷い差別性を指摘しながら、また70年代高揚期の狭山闘争、石川さん仮釈放後の闘い、そして「証拠にもとづく事実調べ」という今の市民の会の活動。それぞれの闘争段階を語りながら、自己の家族も含めて、残念ながら差別が連綿と続いていることを批判した。
また昨今は「ダイバーシティ」などという言葉を使う東京都知事が、9・1朝鮮人虐殺に決して追悼のメッセージを送ろうとしないという現実からも、60年代よりも悪くなっているかもしれないとした。しかしピンチはチャンスで、袴田事件などと連携する市民の会運動には大きな可能性があると結んだ。
9月23日には各地の市民の会が連携した、埼玉県狭山市での現地調査がある。なかなか外に出られなくなっている石川一雄さんにも会う。9月26日は袴田事件の最高裁判決。10月21日には尼崎で現調報告会がある。今こそ第三次再審請求の勝利に向け、地道な闘いを進めていこう。

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