1〜2面
政治危機を軍備拡大で突破狙う岸田
新安保沖縄闘争・反原発の人民決起を
住宅地への自衛隊訓練場計画の
断念を求める市民集会に1200人
能登半島地震後に原発再稼働すすsめる関西電力原子力事業本部(後方ビル)を包囲する400人のデモ隊(3月31日 福井県美浜町) |
岸田政権・自民党の政治危機が激しく進む。世論調査は全マスコミで毎回下落。4月28日の補選全敗なら早期退陣は必至だ。その中で唯一の突破策は外交=訪米と軍備拡大だ。5年間に43兆円の軍事予算を既成事実化し全土基地化が進む。これに対し沖縄で祝園で全国で反対の炎が。とりわけ沖縄県うるま市の闘いは決定的だ。沖縄在住の金城佳宏さんの報告を分割掲載する。『未来』編集委員会
ミサイル配備・軍事強化をめぐる動き
・2022年2月〜3月、国内初の実施となる「アイアン・フィスト」を皮切りに離島防衛作戦に関する日米共同訓練が繰り返され、連携を強めている。更に、市民を巻き込んだ訓練も実施され、1月21日には那覇市では弾道ミサイルを想定した住民避難訓練も強行された。沖縄県庁でも3月17日、他国(中国)の武力攻撃から先島諸島(石垣、宮古、与那国)の住民等を九州へ避難させるための図上訓練が初めて実施された。
・2022年12月岸田政権は、国会での審議もなしに「安保三文書」=国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画を閣議決定し、「専守防衛」から「敵基地先制攻撃」を認める自衛隊軍備力機能強化の拡大に踏み切り大転換した。
・2023年4月22日、岸田政権は朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)の人工衛星発射に備え「破壊措置準備命令」を出し、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)などを宮古、石垣、与那国島に配備。更に、朝鮮からミサイル攻撃があるかのように口実をでっち上げ、沖縄人民とりわけ先島諸島の住民に危機感を煽りパトリオットミサイルを継続的に現在も配置。
岸田政権は朝鮮が世界の各メデアに公開し、発射実験日まで予告しているにも関わらず、朝鮮の人工衛星を「弾道ミサイル」と決めつけ脅威を作り上げ先島諸島にデマを流し、パトリオットミサイル(P3C)配備強化を正当化した。
因みに同年5月24日に韓国が朝鮮とほぼ同じルートで「人工衛星」を発射しても国際社会(アメリカに追従する国々)は「制裁措置も安保理決議違反」も人工衛星=弾道ミサイルの「破壊措置命令」も出さなかった。そして、岸田は沈黙を守り容認している。このダブルスタンダードに異議を唱えることのない「民主主義国家」を標榜する日本の民主主義とは世界的に通用するのか。これを容認するマスコミの責任は重大だ。
・2023年4月6日、宮古島沖で南西諸島の防衛を担う第8師団(熊本県)の陸自ヘリコプターが視察訓練中に墜落し、自衛隊幹部ら10人全員が死亡する事故が発生。更に、11月29日、米空軍CV22オスプレイが嘉手納基地に向かう途中、鹿児島県屋久島沖に墜落し搭乗員8人全員が死亡した。
・10月の日米軍事共同訓練(対中国、朝鮮戦を想定した)ではオスプレイが民間の新石垣空港に初めて着陸。これらの軍事訓練、オスプレイ墜落事故などを受けて自衛隊の「南西シフト」による戦争が引き起こされることに不安を感じた市民団体は11月23日、那覇市で「沖縄を戦場にするな。闘うよりも愛しなさい」をスローガンに県民平和集会を1万人規模で開いた。
沖縄人民はこの集会で日米両政府による沖縄の軍事強化に反対する意思を沖縄内外に表明。この沖縄を二度と戦場にさせない、ミサイル配備に反対する闘いに連帯する集会が国会前、首相官邸前を始めとした本土の首都、関西圏にも広がり同時多発的に全国で集会が開かれた。
・23年12月28日、岸田政権は「辺野古埋め立て工事設計変更申請」を不承認した玉城デニー知事の権限を奪い、沖縄の地方自治を破壊する強権的な「代執行」をした。
・24年1月10日、12日に工事を開始すると宣言したにも関わらず、10日は海が荒れ海上阻止行動の出来ない日を選び前倒しして姑息にも辺野古、大浦湾の埋め立て工事に着手。
・24年3月11日、米海軍ミサイル駆遂艦の石垣港への寄港に対して全港湾沖縄地方本部は「職場の港湾施設を戦争や軍事目的に使わせない、港湾労働者の安全が保証できない」とストに突入した。しかし、驚いたことに石垣市議会与党会派の自民党、公明党は「政治ストライキにより、離島住民の生活を脅かした事に、渾身の怒りを込めて抗議する」と全港湾労働組合に対して抗議声明を発した。因みに石垣市長中山義隆(日本会議沖縄県本部)と石垣市議会は「陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票」を否決し続け、ミサイルの自衛隊配備を進めて来た。
・3月14日防衛省は、反対する市民の抗議活動を恐れ、中城港に陸揚げしたミサイル発射機及び関連資材を、こそこそと早朝未明に公道を使い自衛隊車両12台やトレーラー5台で陸上自衛隊勝連分屯地に運び込んだ。
・米軍はオスプレイ墜落事故を受けて1週間は普天間基地からオスプレイの飛行を続けていたがアメリカ全土及び千葉県木更津、岩国、普天間等に配備されたオスプレイの飛行停止を発表した。しかし、事故後約3カ月の飛行停止措置を実施した日米両政府は事故原因を特定し、安全対策を施したとして3月14日以降の飛行再開を発表した。飛行再開は、墜落事故の原因を明確に公表しないまま、米軍の恣意的判断で強行された。
木原稔防衛相に至ってはオスプレイの不具合が発生した部品の名称や不具合の詳細を伏せる理由を「米国内法の制限」と明らかにし「大きな事故なので米国内での訴訟の可能性があることから、つまびらかにできない」とし、「米軍の事情もあり、在日米軍としては島しょ防衛、あるいは日本の安全保障に資する為に必要性がある」として、全く主体性のないアメリカ追従の「国民の生命と財産」を軽視する答弁を繰り返した。もちろん岸田首相は沈黙容認している。
・沖縄を取りまく軍事優先、人権人命無視を続ける日米両政府の傲慢不遜な戦時体制の押し付けに対して、新たな「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める集会」は中国侵略戦争に突き進むミサイル配備や軍備強化、戦争体制構築を進める岸田政権に対して、真っ向から抗う沖縄人民の反戦、平和と民主主義、住民自治、地方自治を実現する為の画期的な集会になった。
住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会に1200人
自隊訓練場設置計画の断念を求める集会 3・20うるま市
保革をこえた人々が新基地反対で広い会場をうめつくした(3月20日 沖縄県うるま市) |
・3月20日、沖縄県うるま市市民会館で〈自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会〉主催で、市民1200人参加のもとに全会一致で市内石川のゴルフ場跡地への陸上自衛隊訓練場整備計画の断念を求める決議を採択し、防衛大臣及び沖縄防衛局長に対して近日中に提出し「計画の断念を求める」事を確認した。
昨年12月、岸田政権は「陸上自衛隊の訓練場整備計画」を地元住民に一切知らせることもなく進めていた事実を地元住民はマスコミ報道で知る事となった。そこで急遽、今年1月に地元の旭区の自治会住民が全会一致で反対決議を上げた。この反対決議を皮切りに周辺の自治会も次々と反対の声を上げ、大きなうねりに。
3月20日の「断念を求める」集会で採択された決議文に、この間の事実経過が簡単明瞭に記述されているので紹介したい。
〈県民の総意を尊重し、住宅地への自衛隊訓練場設置計画を断念することを求める決議(一部略)〉
去る2月17日、玉城デニー沖縄県知事は、石川地区自治会長連絡協議会の要請を受けて、石川東山のゴルフ場跡地への自衛隊訓練場設置計画を白紙に戻すよう、来沖した木原防衛大臣に訴えた。つづく2月27日には、自民党沖縄県連が白紙撤回を表明。さらに3月1日、うるま市自治会長連絡協議会は理事会で反対決議を全会一致で採択。
3月7日、沖縄県議会は本会議で白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決した。
昨年12月、うるま市石川の旭区という一自治会から始まった今般の自衛隊訓練場建設反対の声は、かくしてうるま市全体へと広がり、大きなうねりとなって、県民の総意となったのである。この世論の高まりをバックに、私たちは3月10日、主にうるま市石川地区に在する17団体の結集のもと、〈自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会〉を結成した。
そして、本日の集会を圧倒的な県民の参加のもと、ここに成功的に実現することができた。このことは、政府防衛省が一方的に進めてきた住宅地に隣接した自衛隊訓練場の建設計画に対する県民の怒りが、いかに大きなものかを如実に示している。
この期に及んで、政府防衛省がなおも「白紙撤回はしない」と頑な姿勢を取り続けるならば、県民の政治不信は取り返しのつかない事態になることは論を待たない。そもそも、今回の計画は、住民の視点を完全に欠落したずさんな計画と言わなければならない。「土地取得後の利用のあり方を、住民生活を重視する観点から見直す」という木原防衛大臣の弁は、裏を返せばこれまでは「住民生活を重視」してこなかったことの表明でしかない。今や保革を超えて、沖縄の民意が住宅地への自衛隊訓練場に反対し、計画の白紙撤回を求めるという形で示されている以上、これを尊重し、それに寄り添うことこそが、国民の命と暮らしを守る政府の取るべき態度ではあるまいか。よって、私たちは、「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」の名において以下のことを決議する。
1、うるま市石川のゴルフ場跡地への自衛隊訓練場設置計画をただちに断念すること。
2024年3月20日 住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会
宛先 防衛大臣 木原稔殿 沖縄防衛局長 伊藤普哉
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という保革を乗り越えた住民本位の画期的な決議が採択された。
保革をこえた人々が新基地反対で広い会場をうめつくした(3月20日 沖縄県うるま市) |
地元住民の発言要旨
まず集会の前に子どもたちによる見事に鍛え上げられた「ブレイクダンス」のアトラクションがあり、場内の興奮がさめやらぬ中、伊波常洋共同代表の開会あいさつがあり、伊波洋正事務局長の経過報告があった。(登壇者全員の発言内容は割愛)
伊波常洋〈断念を求める会〉共同代表
降って湧いたような国の横暴だ。私はこれまで保守として、自民党として、市議4期、県議2期を務めた。翁長雄志知事は辺野古のことで、保革を超えて闘った。私たちは今、保革を超えて立っている。12月にいきなり新聞報道で計画が出た。地元の旭区には一言もなかった。それからわずか80日でこのような闘いが展開された。先日、自民党県連の島袋大幹事長、沖縄3区選出の島尻安伊子衆議院議員が木原稔防衛大臣に対して直談判した。事態は大きく動いたが、完全に断念するまで油断せず、力を結集して断念を目指そう。翁長知事が言ったように「うちなー、うしぇーらってーならんどー」(沖縄県民を蔑ろにしてはいけませんよ)お願いします。
※うるま市は人口12万人、那覇、沖縄市に次ぐ3番目の都市で、在日海兵隊の司令部7カ所や海上自衛隊、陸上自衛隊那覇駐屯地勝連高射教育訓練場等が4カ所ある。軍事基地面積はうるま市の7・7%を占める。集会終了後の3月21日勝連ミサイル部隊が発足した。
中村正人うるま市長
予定地周辺には、住宅地や県立石川青少年の家などが隣接している。生活環境などの悪化が懸念されるなど、旭区や東山区の住民をはじめ、石川地区自治会会長からも計画に反対する声が増してきている。さらに市議会定例会でも計画の断念を求める請願が全会一致で採択された。これ以上地域住民が不安を持って生活することを避ける為、市長として政治判断し、沖縄防衛局長に計画の白紙撤回を申し入れた。訓練場は造らせないという強い反対の意思を伝えておく。皆様と力を合わせ頑張っていく。
玉城デニー知事からメッセージ
演習の内容や頻度などについて事前に十分で詳細な説明がないまま、計画ありきで物事が進んでいく状況に対して、地域住民が反対を訴えるのは至極当然のことだ。政府は地元が示している一連の意思表示を真摯に受け止めて、計画を断念するべきだと考える。
県としても皆様の思いを受け止め、あらゆる機会をとらえ、政府に対し、用地取得を含めた自衛隊訓練場整備計画の白紙撤回を求めていく。
引き続き各代表からの挨拶。全部の招介は紙面の関係上出来ないので4人に。
山内末子(オール沖縄うるま市選出県議代表)
スタンスを超えて多くの皆さんに後押ししてもらった。国、特に防衛施策に対してノーと言う勇気ある行動はなかなかできない。憲法で保障された住民自治。自治会は一番基本的な自治で、自治会が上げた決議は重い。自治会の決議が議員、議会を動かし、市長が知事が断念を求めた。防衛相は「住民の声を重く受け止める」と言う。政治家と住民が一丸となり、断念の2文字を勝ち取る。
冨着志穂(旭区代表)
なぜ静閑な住宅街に訓練場を造るのか。宮森小学校への米軍ジェット機墜落の悲劇を決して忘れてはいけない。子どもや孫、地域の子どもたち、未来の旭区を守る為に意思を表明しようと決意した。子育て世代の私たちが声を大にして訴えたい。住宅の中に訓練場はいらないと、将来の子どもたちの安全を守るために訴えていく。
※1959年6月30日、米軍機が宮森小学校に墜落し、死者17人(うち小学生11人)地上での負傷者210人を出した米軍機墜落事故で、米軍飛行士は脱出し無傷で生還した。
山城暁(うるま市自治会連絡協会長)
うるま市にはホワイト・ビーチ、キャンプ・コートニー、キャンプ・マクトリアス、石川のすぐ北にはキャンプ・ハンセンがある。正直、負担が大きいと常々感じていた。「石川青少年の家」には皆さんも、親戚やお子さん、お孫さんも、お世話になっていると思う。小さい時から慣れ親しんだ施設の隣に自衛隊施設があるのは、青少年健全育成の立場から容認できない。(つづく)
3面
うるま市と祝園陸自基地に反対
新たな安保・沖縄闘争を(上)
島袋純二
現在、日本政府は「台湾有事は日本有事だ」とデッチ上げて危機のないところに危機をつくりだし、対中国戦争に向かって突き進んでいる。そして、「南西諸島の防衛力強化」と称して琉球(「沖縄」)を対中国戦争の最前線攻撃拠点として位置付け、琉球弧にミサイル配備を基軸とする軍事施設を建設して陸上自衛隊の部隊を配置した。
既に、与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島は軍事施設と部隊配置を完了している。沖縄島の勝連駐屯地への配備は現在進行中であり、馬毛島も基地建設中である。与那国島や宮古島には、さらに電子戦部隊の配置も目論まれている。また、現在およそ200キロ射程の12式ミサイルを改変して1000キロ・2000キロ・3000キロの長射程ミサイルの研究・開発が進められており、敵基地攻撃能力の強化が進められている。
さらに、日米・日米韓の共同軍事演習の激化やインド・太平洋戦略による中国包囲網の下における日豪共同訓練や日印共同訓練などが展開されている。昨年末に閣議決定された防衛力整備計画では、23年度から27年度の5年間で軍事費を43兆円としている。
うるま市の陸自訓練場建設反対運動
今年3月、沖縄島のうるま市の勝連分屯地に12式地対艦ミサイル部隊が配備された。勝連分屯地のミサイル部隊は石垣島や宮古島、奄美大島に配備されているミサイル部隊を指揮する役割を担う。第15旅団の師団への格上げは26年度に調整中だ。
昨年12月、陸上自衛隊訓練場建設計画が沖縄県や地元のうるま市に何の連絡もないまま突然、新聞報道された。直近のうるま市旭区の住民は寝耳に水の計画に驚愕しながらも、直ちに怒りを持って計画断念を求めて立ち上がった。これに続いて石川地区の15の自治会長連絡協議会も建設計画反対など大きな流れに発展した。他方では石川地区選出の市議会議員7人が結束し、沖縄防衛局に建設計画に反対する意思表示をした上で要望書を手交した。保守革新を問わずこのような動きになるのは、うるま市が合併して以降初めてのことである。さらに石川地区では、元石川市議会議員OB会が結成され、26人の元職が反対の活動を支えることを表明した。玉城デニー知事は木原防衛大臣に建設計画の在り方について白紙撤回を求めた。さらには自民党沖縄県連も白紙撤回を国に求め、沖縄県議会は計画の白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決した。これまで賛否を明らかにしていなかった中村正人うるま市長も、ついに3月2日に白紙撤回を表明した。うるま市議会も3月19日に、計画を白紙に戻し断念する意見書を全会一致で可決した。さらに、隣町の金武町を網羅する区長会も反対を決議するなどの声が広がった。このように訓練場建設計画に反対の声が急速に広がったのは、建設予定地が住宅地や「石川青少年の家」に隣接していて住民生活に深刻な影響を与える恐れがあるからである。何よりも石川地区の住民が、1959年6月30日に起こった宮森小学校への米軍ジェット機墜落事故の悲惨な思いを胸に悲痛の声を上げたことは察するに余りある。
3月10日には〈自衛隊訓練場建設計画の断念を求める会〉(以下、断念を求める会)が17の団体で結成された。そして3月20日には、断念を求める会の呼びかけで「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」が開催された。集会には住民と自治会関係者のほか、市長や市議、県議らも参加し、1000人の会場に1200人が結集し、通路や廊下にまで溢れ、まさにうるま市民の怒りが爆発した。うるま市民の怒りの総決起に恐怖した防衛省は用地取得後の「利用の在り方を改めて検討する」とこれまでの「計画の見直しはしない」から一歩後退したものの、あくまで計画の「白紙撤回」はしないとしている。断念を求める会は市民総結集の陣形を維持・強化しながら、計画断念まで諦めないと宣言している。
この陸自訓練場建設断念を求める闘いや辺野古新基地建設阻止の闘い、琉球各地のミサイル基地を基軸とする対中国戦争の最前線攻撃拠点化反対の闘いなどの琉球住民の闘いと連帯する「本土」における運動と闘いが求められている。
対中国戦争を食い止める祝園弾薬庫増設反対運動
祝園で200人が集会(3月20日) |
関西における祝園弾薬庫増設反対の闘いは極めて重要である。言うまでもないことだが、近代戦には弾薬が不可欠である。弾薬がなければ戦争を継続できない。弾薬は弾薬庫に維持・保管・管理される。弾薬庫がなければ弾薬を保管する場所がないので、弾薬の生産そのものが出来なくなる。したがって、弾薬庫とその中に貯蔵される弾薬の量によって戦争が継続できるか否かが決定される。そのため、日本政府は対中国戦争に向けて安保3文書で「継戦能力」の確保・維持のために弾薬庫を増設する方針を打ち出した。
防衛省は全国で2027年度までに約70棟、その先10年でさらに約60棟、合計約130棟を整備するとしている。そして、2024年度の予算案に全国14カ所に弾薬庫を新設するための建設費など222億円を計上した。京都では、祝園分屯地での整備費と共に、海上自衛隊舞鶴基地でも建設に向けた調査費が計上されている。祝園分屯地は本州の陸上自衛隊弾薬庫施設では最大級の規模だ。海上自衛隊と共同使用することで琉球諸島や九州だけでなく、本州でも有事に備えた補給拠点が整備されることになる。2024年度の予算案では祝園で弾薬庫を8棟増設する設計・工事費102億円が計上された。安保3文書に基づく個別の弾薬庫整備費の予算としては、これまでで最高となる。(つづく)
沖縄日誌3月
陸自新訓練場許すな
うるま市 保革こえて反対
3月1日 うるま市に陸自訓練場を新設する計画。中村正人うるま市長は沖縄防衛局に白紙撤回を要請した。中村市長は「多くの市民が行動する中、政治決断をした」と判断を示した。また、うるま市全63自治会で構成する市自治会長連絡協議会は全会一致で計画への反対を決めた。
同日、名護市辺野古の新基地建設の設計変更の代執行訴訟で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は県の上告を受理しない決定をした。代執行訴訟で県の敗訴が確定した。(決定は2月29日付)
2日 名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で、第1土曜日の「県民大行動」に1021人が参加。前日の最高裁判決に通常を上回る怒りの決起となった。稲嶺進共同代表は「門前払いは許されない、新基地建設は認めない」と訴えた。
7日 県議会は、うるま市の陸自訓練場計画について「白紙撤回」を求める意見書を退席者なしの全会一致で可決した。意見書は首相、防衛相、沖縄担当相宛て。南西諸島への防衛力強化が進められる中、自衛隊施設の新設に対して県議会で与野党が一致して「白紙撤回」を求めるのは初めて。
10日 うるま市の陸自勝連分屯地へのミサイル部隊配備に向けてトラックやトレーラーが中城湾港へ陸揚げされた。中城湾港ゲート前では市民150人が「戦争につながるミサイル配備はいらない」と怒りの声を上げた。勝連分屯地にはミサイル部隊2百人が配備され、現在の90人から290人に。勝連分屯地の部隊は、奄美大島、宮古島市、石垣市の地対艦ミサイル部隊を束ねる「連隊本部」となり南西諸島の司令塔として機能することになる。12式地対艦ミサイルが沖縄島に配備されるのは初めて。12式地対艦ミサイルは将来的に長距離化し、敵基地攻撃能力を担う可能性がある。抗議する住民は「標的」になることへの不安を口にした。
11日 石垣市の石垣港に沖合停泊という形で、米海軍のミサイル駆逐艦「ラファエル・ベラルタ」が入港した。午前8時過ぎ市民は港の前に集まり抗議の声を上げた。駆逐艦は午前9時前、いかりを下ろした。全日本港湾労働組合(全港湾)沖縄地方本部は11日午後、同港でストライキを実施した。
午後には米兵が小型船で上陸した。上陸しバスに乗る米兵の前に立ちはだかり抗議する市民の姿もあった。全港湾は12日もストを実施、駆逐艦出港の13日午前9時過ぎに解除。
14日 在日米軍は、昨年11月屋久島沖で墜落して全世界で運用を停止していたオスプレイの飛行を再開。事故原因と再発防止策の説明もなく強行。
20日 うるま市の石川会館で、「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」が開催され、1200人以上が参加。参加者は市内外から集まり、会場からあふれモニター越しに集会に参加する人も。玉城デニー知事はメッセージを送った。登壇者の「断念」「白紙撤回」の怒りの発言に大きな拍手が巻き起こった。「断念を求める」決議文を全会一致で採択。
30日 うるま市の陸自勝連分屯地で第7地対艦ミサイル連隊新編の記念式典がおこなわれ、12式地対艦ミサイル発射機が公開された。式典に反対する市民は分屯地前で市民集会を開催、150人が参加。「ミサイル反対」と声を上げ、抗議文を手渡した。
4面
4面 最高裁判決を待たず政治解決を
3・21日 強制不妊訴訟
原告 弁護団 支援団体が国会で院内集会
木々繁
最高裁判決を待つまでもない! 優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3・21院内集会が衆議院第一議員会館大会議室で開かれた。
主催は優生保護法被害全国原告団、同全国弁護団、優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(略称・優生連)
旧優生保護法(以下旧法、1948〜96)の下、障がいなどを理由に不妊や中絶を強いられた被害者で初めて、飯塚淳子さん(仮名、70代、仙台市)が1997年、強制不妊の国家犯罪を告発する声を上げた。その闘いを受けとめ引き継いだ知的障がいをもつ佐藤由美さん(仮名、60代)が全国で初めて提訴(18年1月、仙台地裁)した強制不妊訴訟は6年目に突入した。あわせて同日開かれた兵庫会場(神戸市総合福祉センター)に送られた院内集会と各地の状況について、概要を以下に記す。
院内集会の冒頭、熊本弁護団の弁護士が熊本の原告・渡邊數美さんが今年2月1日に亡くなられたことを報告、悼む言葉を述べた。 渡邉さんと連絡が取れなくなったためご自宅に伺ったところ、倒れておられ、驚いて病院に救急搬送したが亡くなられた。転倒が原因と思われるとの医師の所見でした。不妊手術されずに渡邊さんにご家族がおられたら助かっていたかもしれない。享年73歳でした。
昨年1月の地裁判決の勝訴を喜びあったばかりなのに、無念にも国の謝罪を見ぬまま亡くなられた。もう会えないという現実を今も受けとめ切れません。
(参加者全員で黙とう)
渡邊さんは幼い頃から変形性関節炎を患い、10歳のころ血尿が出たため母親が病院に連れて行ったところ、医師の強い勧めに母親が同意して睾丸摘出の不妊手術をされた。
提訴(18年6月)したその日から被害者で初めて実名と顔を公表して、ホルモンバランスの崩れによる2メートル近くにも伸び続けた身長と骨粗しょう症で人工関節を5カ所に埋めた不自由な身体にもかかわらず、国を告発してやまない不屈の精神を発揮して闘い続けられた。
渡邊さんの追悼のあと、出席した原告や障がい者、支援者は原告39人(*)のうち6人が亡くなったと指摘、「被害者の大半は高齢で全面的政治解決は一刻の猶予も許されない」「提訴した人や一時金(**)を申請した人は全国2万5千人以上の被害者のごく一部だ。声を上げられない人たちのための新たな仕組みを」と訴えた。
(*)23年3月、知的障がいをもつ60代と70代の女性が大分地裁に提訴したことで、全国の原告は計39人となった。
(**)19年4月に成立した被害者に一律320万円を支給する「一時金支給法」は、今年4月23日の請求期限切れを前にして、5年間延長する改正案が3月29日、参院本会議で成立した。
東京訴訟の北三郎さん(仮名、80)は「お金ではなく、まずは国が責任を認めて謝罪してほしい」とコメント、同弁護団長の関谷直人弁護士は「法律の内容は非常に不充分。国に賠償を命じたこれまでの判決を踏まえて改正をすべきだ」と批判。
北三郎さんがアピール文を読み上げ、超党派議員連盟に手交
最高裁が今夏にも初の司法判断を示すとされる中、集まった原告、支援者たちはアピール文で、国に「最高裁判決を待たずに、早期の政治的な全面解決を」と訴え、原告・被害者に直接の謝罪と十分な補償、差別思想や優生思想のない社会づくりを求めた。出席した超党派議連の国会議員たちは「最高裁判決を待つまでもなく、長く多くの苦しみを与えてきた国が責任を認めすべての被害者に謝罪と補償を行うよう、早期の決断を促す努力をする」などと述べた。 各政党の議員らも挨拶した。 原告団がアピール文を手交した。
新里宏二全国弁護団共同代表&仙台弁護団長の挨拶
2013年8月、飯塚淳子さんが生活保護の相談に来られた際、強制不妊を打ち明けられた。大変な人権侵害に驚きましたが、手術記録がなく「除斥期間」という難題もあって当初は訴訟の見通しが立ちませんでした。思案のあげくに、日弁連に人権救済の申し立てをしてはと飯塚さんに提案しました。15年6月の申し立てに対して、日弁連が国・厚労省宛てに「補償等の適切な措置を求める意見書」を出し、飯塚さんの訴えが報道されました。強制不妊手術を受けた佐藤由美さんの義姉の佐藤路子さんは飯塚さんの闘いを知り、16年に相談に来られた。路子さんは宮城県に開示請求を行って、由美さんの手術記録を入手しました。そうして、由美さんは18年1月30日、被害者で初の国賠訴訟を仙台地裁に起こしました。飯塚さんの手術記録は無責任にも廃棄されていましたが、宮城県が不妊手術の事実を認定し、18年5月、仙台地裁に提訴しました。このように、強制不妊国賠訴訟は大きな困難を乗り越えてこのお二人の闘いから始まりました。原告は全国で39人になりましたが、約2万5千人とされる被害者のごくわずかにすぎません。国がすべての被害者に正式の謝罪を表明し、十分な補償を行うことが被害者が名乗り出ることができる不可欠の条件です。
国賠訴訟は飯塚さんと佐藤さんの仙台地裁判決(19年5月)以来、全国で「除斥期間」を理由とした敗訴が続きました。しかし、原告の方々の訴えが必ず司法を動かし、いい判決が出る日が来ると信じて闘ってきました。22年2月大阪、3月東京の両高裁判決はその大きな転換点になりました。昨年11月、最高裁大法廷での審査が公表されました。国は裁判では一貫して旧法の違憲性について認否を回避してきましたが、今回最高裁が憲法判断を出します。また、5月29日に大法廷で口頭弁論を行う方針が出ました。弁護士ではなく、原告の声を裁判官が直接聞いて、憲法はじめ重要な諸問題について判断を出すと思われます。旧法とそれに基づく強制不妊手術という大問題をめぐる弁論の場です。出席する原告の方々を励まし、支えるための傍聴をはじめ最大限の努力を尽くしましょう。
院内集会――原告の発言
飯塚淳子さん(仮名、70代。18年5月仙台地裁に提訴、19年5月敗訴、24年6月仙台高裁〔裁判長・石栗正子〕でも敗訴)
「障がいはなかったけれど知的障がい児の施設に入れられた。16歳の時、何の説明もないまま手術を受けさせられた。幸せな結婚や子どもを持つというささやかな夢をすべて奪われた。優生保護法によって人生を狂わされた。私の人生を返してほしい。〈優生手術に対する謝罪を求める会〉と出会って、97年から被害を訴え、謝罪と補償を求めてきた。厚生省からは『当時は合法だった』の一点張りで門前払いされた。各地の裁判で勝訴が続いているけれど、私と佐藤(由美)さんだけ敗訴した。最高裁の判決の結果がどうであれ、それがすべてを解決するわけじゃない。今も声を上げられずにいる被害者がたくさんいる。国が私たちに直接心からの謝罪と十分な補償をすることなしに何も始まらないです」
佐藤路子さん(全国で最初に提訴〔18年1月、仙台地裁〕した知的障がいをもつ佐藤由美さんの義姉)
「由美は遺伝性ではないのに精神薄弱の病名で、15歳のとき、不妊手術をされた。地裁の判決(19年5月)は、違憲としながら除斥期間を理由に請求棄却だった。仙台高裁判決(23年6月)で裁判長の石栗正子は、72年に手術された由美は92年に除斥期間によって請求権を失っているとする一方、「権利行使が客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかったとまでは言えない」などと、手術時15歳の未成年だった由美が当然にも権利行使のすべも機会も持たなかったことが明々白々であることを百も承知で、こんな詭弁を判決文という公文書に書いた。ほんとうに許せない。
23年6月の石栗判決とその年の10月の「除斥期間」を否定し時効を適用して国に賠償を命じた小林裁判長、同じ仙台高裁の判決で天国と地獄のような違いだ。
石栗とはどういう人生を歩んできた人間なのか。まったく人間を疑います」。
千葉広和さん(知的障がい者。76歳。18年12月仙台地裁に提訴、23年10・25仙台高裁判決で勝訴)
「18歳のとき、施設にいた仲間と突然ライトバンに乗せられ、診療所で不妊手術を受けさせられました。小さい頃から大人になるまでずっと親や周りのいいなりだったけれど、裁判は自分の意思で決めた。親や施設の職員にもウソをつかれて、内緒にされて手術を受けさせられた悔しさを分かってほしい。誰にも分かってもらえず、誰にも守ってもらえずに生きてきた。自分たちの苦しみを分かってほしいです」石栗とはどういう人生を歩んできた人間なのか。まったく人間を疑います」。
尾上敬子さん、夫の一孝さん(夫妻は聴覚障がい者で、入籍直後に敬子さんが不妊手術を受けさせられた。22年9月名古屋地裁に提訴、24年3月勝訴)
敬子さん「名古屋地裁の勝利判決はほんとうに皆さんのおかげです。国は、かならず謝罪と補償をしてほしい。実名と顔を公表したのは正々堂々と闘いたいから。それと、私たちと同じ苦しみを抱えた多くの人が勇気をもって被害を打ち明けられるようにと願ってです」。
一孝さん「優生保護法のもとで何があったのか、優生思想とはどんなものなのかを国民みんなに知ってほしい」
朝倉典子さん((仮名。聴覚障がいをもつ80代女性。聴覚障がいの夫・彰さん〔仮名〕とともに19年12月福岡地裁に提訴。
「夫が断種手術を受けさせられ、二人で50年以上暮らしてきましたが、21年5月、夫が亡くなりました。私の人生を返してほしいと言いたい。高齢で人生残り僅かだけれど、国が謝るまで天国の夫とともに闘って、うれしい報告をしたいです」
日田梅さん(仮名、聴覚障がいをもつ70代女性。同じくろう者の夫・由雄さんが不妊手術を受けさせられ、23年6月夫妻で福岡地裁に提訴)
「私たちは仙台や朝倉さんの裁判を知って提訴した。結婚式の1週間ほど前、結納の日、夫の家族から不妊手術を受けることを結婚の条件にすると言われた。私たち聞こえない者は聞こえる家族の言いなりにされてきた。ここに夫といっしょに並んでいられないのが残念です。私たちの叫びを聞いてください。国が謝るまで皆さんといっしょに闘います」
大阪会場から加山まり子さん(第1子を出産直後、何の説明もなく不妊手術を受けさせられた。同じく聴覚障がいの夫・徹さん〔いずれも仮名、70代〕とともに19年大阪地裁に提訴、一審で敗訴するも、24年1月大阪高裁で逆転勝訴)
「地裁の裁判の前は手術の資料がなかったが、沢山の病院を回ってお腹の手術痕が不妊手術によるものという診断書を手に入れて、高裁で勝って長いトンネルから脱け出せました。国に謝ってほしい」
兵庫会場――原告の発言
小林寶二さん(兵庫訴訟原告。ともにろう者だった妻・喜美子さんと18年9月提訴、22年8月の神戸地裁判決で敗訴するも23年3月大阪高裁の控訴審で逆転勝訴)
「おとどし(22年)妻の喜美子が亡くなりました。不妊と中絶の手術を受けさせられてから苦しみを抱えたまま亡くなった。寂しい、悲しい、悔しい。これは差別そのものです。
私は92歳になりました。身体の不調がありますが、喜美子の遺志を継いで頑張ります。一日も早い全面解決を願っています」。
鈴木由美さん(60代の脳性まひ者。12歳のころ、子宮摘出を強制された。以後、後遺症で約20年間寝たきりの生活を余儀なくされた。)19年2月神戸地裁に提訴、一審敗訴するも23年3月大阪高裁で逆転勝訴)
小さい頃から就学の年頃になっても長い間、差別されてきた。12歳の時、母に連れられて行った病院に何の説明もなく入院させられ、手術台に連れていかれた。大きなライトでキラキラ光るナイフがあった。看護師に言われて手術台に上がった。周りは白衣を着た医師がいっぱいいて、お椀みたいなマスクを顔にかぶせられて気を失った。・・・。障がい者が何でこんな目に遭わなければいけないのか。もっともっと普通に暮らせる社会がほしい。私たちの長い闘いを助けてほしいです」
連帯メッセージ
芥川賞作家・市川沙央さん、元国連女性差別撤廃条約委員会委員長・林陽子さん、IDF代表・阿部一彦さん、全国手をつなぐ育成会連合会会長・佐々木桃子さん、反貧困ネットワーク世話人・雨宮処凛さん、群馬大学教員・高井ゆと里さん
オンラインで参加した兵庫、大阪、福岡、仙台の原告、支援者を結んでアピール文が採択された。
優生連共同代表の藤原久美子さんから院内集会参加者は359人、ZOOMをあわせて600人以上と報告された。
最後に、優生連事務局長の松本さんが「今日、東京訴訟原告の北三郎さん、弁護団の関谷さん、優生連の仲間たちと最高裁に3回目の要請行動を行い、署名を提出してきた。計26万9969筆になったが、3月末までに30万を超えるようがんばりましょう」、「5月29日の最高裁弁論には傍聴席を埋め尽くし、最高裁を分厚く取り囲むほどの大勢の参加を」と訴え、集会を終えた。
5面
原発賠償ひょうご訴訟 不当判決
最高裁判決コピペの「国に責任なし」
兵庫県内へ避難した30世帯78人が東電と国に計約7億円を求めた損害賠償請求訴訟(2013年9月提訴)の判決が3月21日、神戸地方裁判所(第2民事部、龍見昇裁判長)で言い渡された。
判決は、最高裁判決(22年6・17)に追随して、国への賠償請求は棄却、東電の賠償責任は認めたものの損害賠償金額は非常に低額な不当判決でした。
原告団と弁護団、関西・京都はじめ全国各地からの訴訟団・弁護団の代表、支援者など総勢120人余が合流し、判決前のJR神戸駅での街宣行動に始まり、傍聴、法廷内外での裁判所への抗議行動、報告集会を闘った。
またも最高裁判決に準じた判決を出した神戸地方裁判所(3月21日) |
ひょうご訴訟の争点と判断
ひょうご訴訟は、「子どもたちの未来・あたりまえの日常、認めよ! 避難の権利!」のスローガンのもと、強制避難区域と避難区域外からの避難者が原発事故に対する、@国の責任(津波の予見と結果回避)、A避難の相当性(現在も続く放射能汚染と内部ひばくの危険性)、B平穏な生活を奪われた損害の完全補償、を主な争点にし、原告本人尋問で今日までの苦悩や避難生活、被害の実態を具体的に明らかにしてきた。最高裁判決後にも実質審理が続き、最高裁判決批判も含めた最終弁論(2023年5月)で結審して迎えた第1審判決故に全国からも注目されていた。
判決で龍見裁判長は、@地震予測の長期評価(政府地震調査研究推進本部2002年公表)は「すぐに津波対策を義務付けるほどの知見とは認められない」と長期評価の信用性を判断し「国が津波による原発事故を防ぐための適切な措置を講じるよう東京電力に義務づけたとしても、事故は避けられなかった可能性が高い」と国の責任を否定した。
A「居住地域からの避難は事故による放射線被ばくの影響を避けるためのものであり、一般人から見てもやむをえない」としながら避難対象期間は国の方針通りで内部被ばくについては「呼気吸引や経口摂取による危険は認められない」から避難継続の合理的な根拠にならないと(内部)被ばくを避けるための避難の相当性を否定した。
B東電に対しては、「原子力損害賠償法」による賠償責任とわずかな精神的慰謝料のみで被害実態を無視し、既に支払われた賠償金などを差し引き、原告の一部22世帯50人(8世帯28人は、請求棄却)に計約2424万円(20万2千円〜319万3520円)の極めて低い損害賠償金に抑えた。
判決直前集会と3・21報告集会
判決前日、裁判で内部被ばくについて専門家証言をおこなった郷地医師の講演学習会と、弁護団から訴訟概要の説明、原告の想い、全国の訴訟団からのエール交換の集会を持ち判決に望んだ。
判決後の報告集会は、弁護団からの判決概要説明があり、橋本原告団長は「三権分立!? 最高裁からのトップダウンが如実に見られた」「腹をくくる・・・・裁判にケリを付けて、骨になってからかもしれないが、ふるさとに戻る」と怒りと控訴審への決意を述べ会場のみんなで「ふるさと」を合唱した。原告の皆さんの「とっても残念」「住民票もまだ福島にあるし、86歳の母は今も1人で福島にいる。原発事故さえなかったら……」「裁判をしていくことの大変さ、ゆっくり過ごしたいが事故の責任を追及して負の遺産を残さず大人の責任として闘う」等々、悲痛な叫びと決意が続いた。
「司法は人権救済の場」なのにこのひどさ、司法との闘いを。「勝つまで諦めない」。全国30余の訴訟団や他の原発関連裁判とともに「6・17最高裁行動」反撃の闘いを! の呼びかけ等々、京都・関西・東京・愛知・神奈川・広島・愛媛・生業訴訟の仲間から熱いエールが続き不当判決への怒り、今後の控訴審を含めた闘いへの熱気あふれた決起集会として報告集会を終えた。(高橋裕子)
美浜3号機運転差止仮処分申し立てを却下
3月29日
関電・老朽原発「美浜3号機」の運転差し止めを求めた仮処分で、福井地裁(加藤靖裁判長)は、3月29日、住民側の申し立てを却下した。この仮処分は昨年1月に福井県内の住民9人が申し立てていたもの。(写真)
弁護団長の井戸謙一弁護士によれば、決定の内容は、関電の主張をそのまま取り入れたり、原子力規制委員会の言い分を引き写したりしたものだという。
1月1日の能登半島地震の現実をまのあたりにして、なお具体的危険性はないと言い切る司法の姿勢に住民は怒りと不信感をあらわにしている。住民側は名古屋高裁(金沢支部)に即時抗告する。
6面
6面 万博止めて吉村退陣・維新解体
ヒトモノ・カネを被災地へ
4月6日、大阪市内で「万博止めて維新を止めよう!〜ヒト・モノ・カネを被災地へ〜」と題する学習会がひらかれた。主催は、共同テーブル近畿。
カジノ・万博反対の集会、行動が次々おこなわれている |
2025年「大阪・関西万博」の中止を求める運動について
司会のあいさつの後、〈どないする大阪の未来ネット〉事務局・運営委員の寺本勉さんが報告した。寺本さんは「イベントを使って経済を活性化させるというのはうまく行かないことは先の東京オリンピックで明らかになった。万博中止の署名は遅まきながら昨年9月中旬から始めたが、集まりがよくて昨年11月と今年2月の2回で13万4402筆の署名を提出した。子どもたちにとって貴重な体験である遠足を、上からの指示で万博に2回も行かされることになる。経済効果というのはまやかしで、万博に人が集まれば集まるほど他の所にカネが回らなくなるだけ。
維新は2025年大阪万博を焦点に2020年に大阪スマートシティ戦略を掲げ、維新の前豊能町長・塩川は4億円規模のスマートシティ事業をやろうとした。国からの補助金が半分で、半分は企業が寄付でまかなうとしたが寄付金は6千万円しか集まらず1・3億円の穴が空いた。住民監査請求し、監査結果が出た。4億円かけてやったのに町に残ったのは、200頁に及ぶ国に出した事業報告書だけ。他のソフトとかシステムというのは全部企業が所有し、何1つ町には残らなかった。前町長には3900万円を支払うよう勧告が出た。維新のデタラメなことを暴露しながら、万博を破綻に追い込んでいく」
万博工事現場でメタンガス爆発
フリージャーナリストの西谷文和さんが講演。万博の問題点をジョークをまじえて語った。その中で新たな問題は3つ。
1つは、万博工事現場で、3月28日溶接作業中に発生した火花が、地面と床の隙間にある配管ピット内にたまっていたメタンガスに引火し、ガス爆発。コンクリート製の床の一部が壊れた。場所は夢洲1区。生ゴミの埋め立て地で一番危険なところ。79本のガス抜き管を敷設しメタンガスを抜いている。PCBの袋1万袋が野積みされていて、その上に土とコンクリートをかぶせて駐車場にし、レストランを造る。レストランのトイレを造っているときにガス爆発がおこった。
2つめは、韓国のカジノでは、経済効果プラス2兆円であるが、ギャンブル依存症対策や犯罪対策、中小企業の経営者がギャンブルにのめり込んで倒産して生活保護利用者が増えるなどでマイナス7兆円。差し引き5兆円のマイナスである。
3つめは、夢洲に来る予定のカジノ業者MGMリゾーツについて。大谷の通訳・水原一平は野球賭博で6億8千万円負けて、大谷の口座からお金をボウヤー(元マイナーリーグ選手)に送っている。ボウヤーの上にニックス(マイナーリーグの元選手)という親玉がいる。ニックスが儲けたとして、このお金は汚れたお金。このお金を洗わなければいけない(マネーロンダリング)。この金を洗うために使ったのがカジノ。10億円稼いだとしてカジノに行って、全部チップに替えて、1回ルーレットをして、後全部カネに戻したら綺麗なカネになる。ニックスがマネーロンダリングしていた所はMGMリゾーツだった。夢洲にカジノができたらマネーロンダリングし放題になる。メキシコで麻薬取引をして儲けた奴は夢洲に来てマネーロンダリングする。世界の犯罪の後押しをするような人たちが大阪に来る。絶対に止めさせなければあかん。
そして維新が単独過半数を占める大阪において、野党共闘しなければ野党は勝てないと訴えた。質疑応答では、ガス爆発の問題がありどうやって万博を止めるかなど質問があった。(花本香)
ハレンチ 自民党青年局懇談会
政権担当能力喪失示す
嫌悪の書き込みが殺到
昨年11月18日、和歌山市内のホテルで自民党青年局近畿ブロック会議の後におこなわれた懇親会は、「グラマーダンサーズ」による「余興」と称して、下着のような衣装で肌を露出したダンサー5人が踊り、議員たちがダンサーに口移しでチップを渡したり、ビキニにチップを差し込んだり、議員の膝の上にダンサーが座ったり、お尻にさわったりの破廉恥パーティだった。SNSには「気持ち悪い」など嫌悪の書き込みが殺到している。「セクシーキャバクラか」という書き込みがあるがその通りだ。
男性議員たちは経済的優位に立ち、お金によって女性たちに性的行為を強制しているのだ。お金による「同意」は、真の「同意」ではない。彼らは、女性を物と見なして、男性が自分の好きなように女性をもてあそび性支配して良いとする女性差別・女性蔑視にどっぷりと浸っている。女性たちは、低賃金で貧困であるがゆえに性産業に追いやられているのであり、そこでは女性の尊厳が踏みにじられている。
直ちに議員辞職せよ
懇親会に参加したのは、近畿6府県の若手地方議員と国会議員2人など約50人で全員男性。女性差別をなくし女性の人権を守るべき議員が、性的行為の強制=「究極の女性差別」をするなどもっての他である。
余興企画したのは、世耕弘成前参院幹事長(安倍派)の秘書を務めた経歴を持つ和歌山県連青年局長・川畑哲哉県議(3/8辞任、3/11離党)。川畑は、「グラマーダンサーズ」(大阪市)の代表と旧知の仲で、このようなパーティは以前にも開いている。川畑はこれが「多様性をテーマにした」と言うのだからあきれる。チップを口移しで渡したのは世耕の秘書。参加した国会議員は、自民党本部青年局長・藤原崇衆院議員(裏金議員でもある)と局長代理・中曽根康隆衆院議員。藤原議員は、「ダンサーの体を触っていないか」と問われてもはっきり否定せず「当時の記憶では触っていない」と歯切れの悪い答えしかできていない。これらの議員たちは、役職を辞任しただけで何の責任もとっていない。直ちに議員辞職すべきだ。青年局の会議でありながら、参加者50人の中に女性議員が1人もいないという「多様性」のなさが引き起こしたともいえる。
会議・懇親会費用約120万円は党本部からの助成金、県連の一般会計、個人負担5千円から支出している。自民党の予算の大半は政党交付金(税金)なのだから、税金が使われているのだ。
埼玉県連青年局でもSM緊縛パーティ
2016年1月5日自民党埼玉県連青年局の新年会のあとの二次会が、蕨市のバーで県議15人が参加しておこなれた。その時の写真には、田村巧実県議はAKB48のコスプレ姿でカラオケに興じ、その隣にはパンツ一枚で縄で縛られた同僚の県議(当時)がいる。主催者は、埼玉県議団団長の田村県議で、昨年猛批判を受けて撤回に追い込まれた「虐待禁止条例」改正案(「子どもを家に残してゴミ捨てすることを禁止」などのトンデモ改正案)の成立を主導した人物。
自民党議員はここまで腐敗し、人権意識が欠如している。自民党は、麻生太郎副総裁の「(上川大臣に対して)そんなに美しい方とは言わんけれども」「このおばさんやるねえと思った」や森喜朗元首相の「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」などの女性差別発言を繰り返しており、男性中心の女性差別の党である。
ジェンダーギャップ指数が最低ランクの日本
この恥ずべき状況は、自民党が安倍政権以来、「家制度強化」を狙い統一教会・日本会議などと一体でジェンダーフリー攻撃を強め、世界の流れに逆行した結果である。ジェンダーギャップ指数は、日本は、2006年80位から23年は146カ国中125位と過去最低に転落。世界各国の議会に占める女性議員の割合は26・9%(24年1月)だが日本の女性国会議員の割合は10・3%で、186カ国中165位という低さ。労働者人民の側に立つ女性議員を増やし、女性の声を法律や政策に反映させていく必要がある。男女賃金格差も日本は21・3%でOECD平均(11・9%)の2倍もある。
選択的夫婦別姓がないのは世界で日本だけだ。選択的夫婦別姓制度に賛成は70%(2020年早大などの調査)で、必要ないと答える主要企業はゼロだが、自民党や維新が強硬に反対して成立していない。反対理由は家父長制維持の女性差別・女性蔑視にある。
自民党は、統一教会との一体化、違法な裏金づくりと脱税の犯罪、究極の女性差別の党に堕落した。自民党員3万3千人以上が離党し瓦解が始まっている。自公政権と維新を打倒して、女性の性抑圧からの解放、選択的夫婦別姓やジェンダー平等を実現しよう。(平野綾)
7面
秘密保護法の拡大版
今国会で成立ねらう
悪名高い秘密保護法の拡大版が国会に提出され、3月19日から衆議院で審議されており、今会期での成立が狙われている(4月9日衆院可決)。この法律は「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」といい、略して「経済秘密保護法」「重要経済安保情報法」「経済安保版秘密保護法」「身辺調査法」などと呼ばれている。ようするに秘密保護法の適用対象を飛躍的に拡大する秘密保護法拡大版である。
秘密保護法で「特定秘密の対象」となっていた4分野(外交、軍事防衛、テロ、スパイ活動)に加えて、この法律で機密情報の範囲を「経済・技術分野」に拡大する。こうした情報を秘密扱いとすることで、秘密保護法体制を拡大し、市民の知る権利を大幅に制限する悪法である。
法案の中身
法案の概要は、
@重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏洩が、わが国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要があるものを「重要経済安保情報」として秘密指定する。
A当該情報にアクセスする必要がある者(政府職員と民間人)に対して政府による調査を実施し、信頼性を確認してアクセス権を付与する(セキュリティ・クリアランス=適性評価)。
B漏洩すると安全保障に「著しい支障」を与える恐れのある経済分野の情報を機密性の特に高い「特定秘密」として、漏洩した場合には、既存の特定秘密保護法を適用する(10年以下の拘禁刑)。一方、この法案では、安全保障に「支障」を与える情報を「重要経済安保情報」に指定し、漏洩や取得行為について5年以下の拘禁刑や5百万円以下の罰金刑などを科す。共謀、教唆、煽動でも処罰する。
問題点
(1)秘密指定の定義が不明確で、権力者が恣意的に拡大適用することが可能。
(2)そのため冤罪の温床になり、また報道・研究への萎縮効果(なんでも自粛、自己規制、危ないものには近寄らない)を狙う
(3)秘密保護法の改定は大仕事となるため、変化球として、この法で「秘密保護法の実質拡大」を狙う。
(4)広範な民間人が対象となり、家族も含めて身辺調査(セキュリティ・クリアランス=適性評価)を実施する。秘密保護法の適性評価は主に公務員が対象であったが、この法律では広範な民間人(労働者や研究者)が対象となる。元から国家機密を扱うことが想定されている政府機関に就職する場合と異なり、中小企業を含め、一般の民間企業で働く国家機密と無縁のはずの人たちが、突如、適性評価の対象となる。犯罪、懲戒の経歴、飲酒の節度、借金の状況などの調査を受け、対象は本人だけでなく、配偶者、父母、子、兄弟姉妹にまでおよぶ。こうして、調査対象者は飛躍的に増え、数十万人規模になるといわれる。
集められた膨大な個人情報は、内閣総理大臣のもとに設けられる新たな情報機関に蓄積されていく。
(5)国会への報告制度がない。行政権力の一部がやりたい放題しても、誰も止められない。
戦争準備の法律
「経済安全保障」という分野を広く秘密のベールで覆い、一般市民は、意見を形成する前提となる情報を得ることができず、経済安全保障について意見を言えなくなる。政府や、政府からお墨付きを得た特定の専門家が一方的に判断し、それを市民が検証できないという独裁国家化がすすむ。
こうして経済の国家統制が強化され、軍産学共同の軍事体制が飛躍的に進む。
個人情報は丸裸に
実施される身辺調査(セキュリティ・クリアランス=適性評価)はどのようなものになるのか。この点で、『赤旗(24・4・9)』の報道によれば、日本共産党国会議員団が2013年に入手した防衛省・自衛隊の「身上明細書」とその記入方法を記した「記入要領」がヒントになる。
この文書は、2009年から国の行政機関でおこなっている「秘密取扱者適格性確認制度」という職員選別制度で使われていたという。
具体的には、◇親族欄に記入した者以外の者で「交友関係にある者で申請者のことをよく知る者」を記入する。◇関係交友程度欄には「高校時代の同級生」「釣りクラブ仲間」のように記入する。◇所属した団体について、政治、経済等の団体及び出身学校関係の親睦団体からスポーツクラブその他あらゆるものについて、現在過去を問わず記入する。以下、略。
こんな悪法は許されない。廃案に追い込もう。
シネマ案内
『アダミアニ 祈りの谷』
(監督:竹岡寛俊021年)
黒海とカスピ海に挟まれて、コーカサス山脈が東西に走っている。チェチェンは山脈の北側に、ジョージア(グルジア)は南側に位置する。
この地域に、たくさんの民族が混住している。ジョージアではキリスト教徒が多数派をしめるが、パンキシ渓谷にキスト人が住んでいる。かれらはムスリムだ。19世紀にチェチェンから山を越えて移ってきた。現在、1万人弱の人びとがここに住む。気候は乾燥しており、小麦を作り羊を飼って生活している。
第2次チェチェン戦争
ソ連邦崩壊後、チェチェン人民は独立を求めた。しかし、ロシアは第2次チェチェン戦争(1999年)をしかけ、チェチェン独立を阻止する。プーチン首相(当時)の狙いは「独立を考えればどうなるのか」を示すことであった。ほかの民族への見せしめだったのだ。ウクライナへの侵略(2022年2月)は、この延長戦上にある。
チェチェンの土地と社会は徹底的に破壊しつくされた。戦争による難民がコーカサスの山を越えて、パンキシ渓谷に逃れてきた(約8千人)。
ロシアは「難民に武装勢力が混じっている」と主張、これを口実にして2002年8月、ジョージアの主権を無視してパンキシ渓谷を空爆した。9月には、ロシア軍とアラブゲリラがここで軍事衝突をおこしている。また、2004年にはジョージア政府の治安部隊によるゲリラ掃討戦もおこなわれている。こうして、キスト人は「イスラム過激派」の仲間とみられ、パンキシ渓谷の名前は世界に知られるようになった。
2015年頃に、キストの青年たちは聖戦(ジハード)としてシリア内戦に参加した。かれらはイスラム国(IS)の義勇軍として闘い、多くがここで命を失った。
アダミアニ=人間
この映画はドキュメンタリーであり、題名の「アダミアニ」はジョージア語で「人間」という意味だ。レイラさんは敬虔なムスリムで、パンキシ渓谷に住んでいる。彼女は自宅をゲストハウスにして、この地域を観光で復興させようとしている。女性仲間を集めて、補助金をもらうために行政とも交渉している。
チェチェン独立戦争がはじまった時(1994年)、レイラさんはグロズヌイ(チェチェンの首都)で難民になり、パンキシ渓谷に移ってきた。レイラさんは2人の息子を戦争から遠ざけようとした。しかし、ふたりはシリア内戦に参加し、シリアで亡くなっている。2人の息子を失ったことで、レイラさんは息子を偲び、涙を流す。いっぽう、2人の息子を亡くした母親として、キスト人の集会ではしっかりと発言する。
アボ(レイラさんのいとこ)は、ここで山々を案内するガイドをやっている。彼も精神的トラウマに悩んでいる。シリアで多くの仲間が命を落としている。自分はここに残って、のうのうと生きている。このジレンマにさいなまれている。
ジョージア政府とキスト社会との緊張もある。ジョージア政府はキスト人を「イスラム過激派」の支援者とみている。ジョージア正教徒の権力者は、ムスリムにたいして差別意識をもっているのだ。
抑圧国による被抑圧国への民族差別、ネオ植民地主義
映画はこの人たちの人間的苦痛をうけいれ、その原因はどこにあるのかを見つめようとする。ジョージア正教徒とムスリムは共存して生きている。ここに宗教的な対立は存在しない。政治的な不公平、民族的な差別があるのだ。
ロシアによるウクライナ侵略には、民族的差別が根底にある。ガザでは、右翼シオニストはパレスチナ人を「ヒューマン・アニマルズ」と呼び、人間とみなしていない。抑圧民族による政治的差別、植民地主義が、世界をおおっている。いま、世界はこの問題に直面している。
8面
老朽原発ただちに廃炉! 美浜全国集会
反動判決連発に怒りの現地デモ
3月31日
会場一杯の参加者がメッセージボードをかかげる(3月31日) |
この3月、関電の原発運転差し止め仮処分(3件)について、裁判所の判断が示された。住民側の主張は、全て退けられた。ひとつは、老朽原発(40年超原発)美浜3号機の運転差し止め仮処分について、3月15日に大阪高裁に即時抗告していた件(申し立て人7人)が棄却、3月29日に福井地裁の件(申し立て人9人)が却下された。
さらに、高浜1〜4号機(1、2号機は老朽原発)申し立て人2人の件について、福井地裁で却下された。
美浜で全国集会
この一連の不当決定を受けて、関電原子力事業本部(関電の全原発の司令塔)がある、福井県美浜町で〈3・31老朽原発ただちに廃炉! 美浜全国集会〉がひらかれた。主催は、老朽原発うごかすな!実行委員会。全国から400人が参加した。
中嶌哲演さん(原子力発電に反対する福井県民会議)が主催者あいさつ。中嶌さんは「美浜3号機を動かせば、1日に約3億8千万円の電気料金が関西電力に入ってくる。仮処分〈決定〉の背景に、わたしはこの点をひとつ指摘したい。本集会を新たな出発点にして、大阪で開かれる6・9全国集会に突き進もう」と決意を語った。
井戸謙一弁護士が特別報告
集会では、井戸謙一弁護士が「老朽原発運転差止仮処分について」というテーマで特別報告した。2点(仮処分闘争の意義と内容、能登半島地震を教訓に地震と原発の問題)について、わかりやすく解説した。
井戸さんは「仮処分は短い期間で結論が出ること、即時に効力が発生する。だから、本訴よりもハードルが高い。われわれは、一日でもはやく老朽原発を止めたいので、仮処分闘争を選択した」と語った。について、わかりやすく解説した。
仮処分裁判の争点は、次の5点だ。@老朽化による事故の危険性がおおきくなること、A基準地震動が低すぎる(美浜原発3号機は993ガル)こと、B震源ごく近傍地振動の問題(美浜原発のみ)、C経験式のばらつきを考慮していない問題、D地震と原発事故で複合災害がおきたとき避難計画は「絵にかいた餅」であること。今回の〈決定〉では、裁判所はことごとく関西電力の主張を認めている。
また、井戸さんは「能登半島地震の教訓として、現在においても地震のことはよくわかっていない。いつ・どこで・どのような事故がおきるのか、まったく想定できない」ことを強調した。能登半島地震で、2つの事実(地震で海岸が隆起している、20q離れた2つの活断層が連動して動いたこと)がわかっている。地震の危険性はもっと強調されるべきだ。井戸さんは「日本列島は活断層の巣になっており、こんな所に原発を造ってはいけない。もっと人びとに知らせて、世論を変えていくべきだ」と訴えた。
美浜町をデモ行進する長蛇のデモ隊(3月31日) |
申し立て人が思いを
次に、3件の仮処分裁判をたたかった申立人がそれぞれ登壇し、今後の闘いについて、決意を述べた。大阪高裁決定については最高裁に特別抗告はしないで、本訴訟を準備している。2件の福井地裁決定は即時抗告をおこない、高裁で闘っていくと明らかにした。
能登での反原発の闘い
次に、全国からの発言。まず、北野進さん(志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団長)が「能登での反原発の闘い」について語った。
北野進さんは、珠洲原発建設を阻止したたたかいと、志賀原発を廃炉にする闘いについて述べた。珠洲原発計画は1975年10月からはじまった。3電力(関西電力、北陸電力、中部電力)が共同でこれを計画していた。2003年12月に、電力会社は撤退を表明した。住民による反対運動が強くて、原発建設を推進できなくなったのだ。北野さんは次のように語った。「能登群発地震は3年間続いてきた。最近、収束にむかっていると言われていた。しかし、今年1月に能登半島地震がおきた。珠洲原発立地地域であった寺家と高屋は、今回の能登半島地震で1〜2メートルも隆起している。原発がなくて、ほんとうによかった。しかし、能登群発地震はこれで終わるのだろうか。それはだれにもわからない」。
「1993年2月に能登半島沖地震がおきた。この時、わたしたちは地震問題を訴えて、珠洲原発建設に反対した。4月の市長選挙では、投票不正がおこなわれた。われわれは裁判に訴え、1996年5月に最高裁で選挙無効を確定させた。このように、電力会社は民主主義を無視してなんでもおこなう」。
「能登半島地震で、海岸が隆起している。能登半島は、この12〜3万年で20mも隆起を繰り返している。また、2つの活断層が連動して、150qの距離で動いている。志賀原発はこんな危険な場所に造られている。志賀原発は廃炉にしよう」。
6月30日に、金沢市内で〈さよなら志賀原発・全国集会〉がおこなわれる。北野さんは、参加を訴えた。
老朽原発40年廃炉訴訟
老朽原発40年廃炉訴訟市民の会・共同代表=草地妙子さんが、「老朽原発40年廃炉訴訟の現状」(名古屋地裁)について報告した。
草地さんは「私たちは、高浜1、2号機と美浜3号機について、運転許認可取り消しを求めて、国を相手に行政訴訟をおこしている。原子力規制委員会はいいかげんで無責任な審査をしており、これはとても規制とはいえない。このことを裁判で主張している。今まで裁判所は〈そこまでする必要はない〉とか、〈事業者が検査しているから大丈夫〉というような主張を繰り返しており、怒りにたえない」「裁判は8年を経過して、証人尋問になっている。これが終われば最終弁論、結審になる。能登半島地震で、原発の危険性がまざまざと示された。志賀原発でおきたことは、どこの原発でもおきる。老朽原発を動かす政府にたいして、抗議の声をあげていこう」と訴えた。
関西電力に抗議申し入れ
集会後、参加者は美浜町内をデモ行進し、関西電力原子力事業本部に「抗議・申し入れ」をおこなった。住民たちは道路に姿を現し、デモ隊に応えてくれる。その人たちは今までよりも増えており、手を振る動作が今までよりも大きくなっている。老朽原発の再稼働に反対する住民が増えている。
私たちのデモに対して、右翼団体が街宣車6台を連ねて、「原発賛成」「反対する者は福井から出ていけ」と叫んでいた。
〈6・9とめよう!原発依存社会への暴走 大集会〉にむかって、老朽原発廃炉の闘いは続いていく。住民、市民による反対運動の力によってのみ、原発は止められる。珠洲原発を阻止した闘いを教訓にして、岸田政権に反撃していこう。