万博中止・吉村知事はヤメロ
生活破壊の自公・維新に終止符を
関生弾圧粉砕・大阪府警本部包囲元旦行動に500人(1月1日 記事8面) |
維新の目玉=大阪万博に赤信号が灯り始めた。70年万博と違い、万博そのものに誰も関心がない。建設費はウナギのぼりでパビリオン建設のめどは立たない。そこにきて能登半島大地震で、「万博より能登復興」の声が財界からも出始めた。さらにノーギャラで万博アンバサダーを務め、吉本芸人・テレビ界を睥睨する松本人志がセクハラで活動休止に。橋下・松井が維新から撤退し、維新本体も不祥事続発・支持率下落。民の声は「万博中止・吉村ヤメロ」だ。24年前半で万博・維新を追いつめ、併せて人民生活破壊の自・公政治に終止符を。
「不祥事」絶えない維新
「古い政治」に挑む自己像を演出しながら、じつは維新そのものが古い体質に支えられている。維新には長年「ハラスメント」「政治とカネ」のスキャンダルが絶えない。群を抜いて多い。維新は党勢拡大を重視し、チェック機能が甘く、野心はあっても公人としての資質を欠いた有象無象を粗製乱造している。
橋下徹があれほど外には押しつけたくせに、党内では「ガバナンス」が機能しない。維新の内在的な強さの源泉は、徹底した上意下達、自民党仕込みのドブ板選挙にある。
「身を切る改革」は維新の看板政策である。だが建て前と本音が違う。足下からは異論が続出。ついには内紛に発展するケースも出てきて、脱党が続出している。ざっとみただけでも以下のものがある。単なる不祥事ではなく、党を離れるものが相次いでいるのだ。
◇11月、川崎市議離党2人
「党勢拡大ばかりを目指し、新人教育を現場任せにする党のやり方に疑問を感じる」と。
◇香川県議離党
香川県議が12月14日に離党した。党が所属議員らに義務づけている「身を切る改革」などに関し、対立した
◇和歌山市議2人 和歌山県議、2期目の林隆一県議が離党
林県議の妻は昨年4月の衆院和歌山1区補選で自民党元職の門らを破り初当選を果たした林佑美衆議院議員だが、 馬場伸幸代表と自民党二階俊博元幹事長の間に密約があったといわれている。次期衆院選で1区の議席を自民の鶴保庸介参議院議員に譲ろうという。見返りは、問題山積の大阪万博に対する政権与党の協力。
◇大阪府議笹川>
維新の牙城である大阪で、「大阪維新の会」府議団代表の笹川理府議が後輩女性議員に対し、2015年にパワハラやストーカー行為を繰り返していたことが昨年5月週刊文春で報じられた。
2015年に被害女性から相談を受けながら、当時の松井幹事長は笹川への注意で済ませていた。今回も、週刊誌報道が出てなお、吉村代表は口頭厳重注意で済ませ、笹川に府議団代表のポストを続投させていた。
だが翌週になって、笹川が当該女性議員に性的行為を要求していたことが報道され、笹川はおおむね事実関係を認めた。
5月25日、松井一郎元代表が「除名やね」とすると、吉村は29日になって「除名処分が相当。議員辞職を求める」と対応を変更。維新の会は6月3日に笹川を除名処分。
◇6月3日、「大阪維新の会」の橋本和昌府議も党から離党勧告を受け、5日に離党届。
◇6月3日、福岡県飯塚市で藤間市議が厳重注意処分。市議会の委員会で女性議員を名指しし「セーラー服を着てしゃべれば(動画再生回数が)3千、5千回いくんじゃないか」と発言。
◇西藤あきこ尼崎市議 日本維新の会の県組織「兵庫維新の会」は7月21日、尼崎市の西藤市議から提出されていた離党届を受理した上で、議員辞職勧告をおこなったと発表。
西藤市議は「執行部との方向性の違い」を理由に離党届を提出していた。
◇習志野市議会の市瀬議員が8月下旬、他市の元市議の女性に対し卑猥なショートメッセージを送信していたことが報道された。女性からの訴えを受けて千葉維新の会は8月31日付で市瀬議員に辞職勧告、9月5日に除名処分。
◇9月25日、前川清成衆院議員(比例近畿)が議員辞職。前川の辞職によって、本来は日本維新の会の比例で次点だった直山仁(滋賀3区)が繰り上げ当選になるところ。だが、直山も21年の選挙で大学生らに現金を渡した買収で大津簡易裁判所から罰金50万円の略式命令を受け、公民権が停止されている。そこで次々点だった中嶋秀樹(京都6区)が繰り上げ当選になるという。現職は公選法違反で議員辞職。次点候補も公選法違反で公民権停止中。不祥事続きの日本維新の会を象徴するような話である。
◇大阪維新の会が、松浪健太大阪府議を政治資金収支報告書を期限内に提出しなかったとして、離党勧告処分にしていた。松浪は離党した。
◇富山維新の会副代表になった呉松福一射水市議が、会派の新体制への不満を理由に離党。呉松は富山県内の党員で唯一の地方議員。離党届を受理せず除名等の処分にする意向という。
◇奈良県警は、斑鳩町議だった大森恒太朗容疑者を業務上横領の疑いで逮捕した。大森は現職町議でありながら、自身が会計係を務める地元自治会の会費を横領していた。除名。>
◇光本圭佑尼崎市議 兵庫維新の会は光本市議を除名処分にし、市議会は辞職勧告決議を可決した。
◇中村美香は日本維新の会で埼玉南1区から県議に当選したが、その後居住実態がなかったことが発覚して選管から当選を取り消された。
かばいきれない不祥事
公職選挙法違反、買収、性的暴行、横領と、不祥事が連続して噴出する政党。そして党内は地方から国会までガバナンスが効かずに内紛が続く。そもそも公職に就く資質の欠落した人物が維新では候補者となり、維新という看板の人気だけで当選してきている。
大阪の笹川のように維新中央は議員の行為を隠蔽し、犯罪ですらかばおうとするが、無理になったら切り捨てる。
「身を切る改革」のウソ
議員定数を減らすことは、国民・住民が政治に国民・住民の声を反映する回路を切断するということにほかならない。大阪の地方議会で議員定数を減らすというのは、単に維新以外の会派が当選しにくくなるというだけのことだ。維新にとっては身を切る改革ではなく、身を守る改革でしかない。
「身を切る改革」という撒き餌で有権者を釣り上げて、地方行政を維新が牛耳ることを可能にする議員数を確保した後は、自治体の予算を維新の利益のために使う、というのが維新の手口。兼職による歳費の二重取りは維新が言う「身を切る改革」が嘘であることを証明している。日本維新の会の池下卓衆院議員が「詐欺」。現役の男性市議2人を公設秘書に採用、法律に違反して兼職未届けで給与を二重取りしていた。本当に歳出を減らすことを考えているのなら、議員歳費や秘書給与の二重取りをするはずがない。
議員定数削減や報酬カットで得られる財源は、大阪市でも年間2億円程度。全国でも数十億円にとどまるだろう。定数や報酬を減らしたからといって減税ができるような話ではない。一方で維新は所得税や法人税の「フロー大減税」を掲げるが、法人税を1%下げるだけで4千〜5千億円の財源が必要になるとされる。
建前と実態があまりに違うと腐敗しかない。
幹部はぼろもうけ
あたかも維新は「政治とカネ」にクリーンであるかのように言うが、実態はまったく逆だ。維新は企業・団体献金を禁じる一方で、維新の幹部連中は1回1000万円以上の大規模政治資金パーティを開いている。
藤田文武幹事長は2022年11月23日に「藤田文武を応援する会」を開催。2022年分の政治資金収支報告書を確認すると、この日だけで1518万円の収入を得ている。会場費や食事代などの支出は510万9825円だったため、利益は1007万8215円(利益率66・3%)にものぼる。
遠藤敬国対委員長も、2022年12月12日に「議員活動10周年記念パーティ」を開催し、1227万9615円の収入に対して支出は263万8640円。964万975円の利益を得ている(利益率78・5%)。
それでも党員には「身を切る改革」を押しつけようとする。ガバナンスが効かなくなるのは当然だ。
全国展開は「落とし穴」
昨年4月の統一地方選・衆参補欠選挙での大躍進で、「次は野党第1党になって、自公政権打倒の足掛かりをつかむ」と意気込んだ。自公政権打倒に目標を定めた維新が狙うのは、「脱大阪による全国政党化」だが、現状では、その前途に多くの落とし穴が待ち構える。党内で顕在化するいわゆる「東西対立」に加え、セクハラ・暴言などによる「問題議員」が続出しているからだ。
◇梅村みずほ参院議員、党員資格停止6カ月。入管施設でいのちをうばわれたスリランカ人女性ウィシュマさんへの「詐病」や「ハンストで死んだ」などの差別暴言。
音喜多駿政調会長は「問題提起だ。間違ったことはしていない」と梅村を擁護。藤田幹事長も当初は慎重姿勢で、約2週間後にようやく党員資格停止処分に踏み切った。梅村の主張はもともと維新の考えだったのだ。
◇維新国会議員団副代表鈴木宗男参院議員が離党。鈴木は、ロシアのウクライナ侵攻をめぐってロシア寄りの発言を繰り返し、結局10月に渡航した。維新の内部では「除名」という強硬論が強まった。離党という形になったとはいえ、内部では幹部の強権的あり方に非難が起こっている。
今回の内紛は起きるべくして起きた。もともと石原や旧太陽系との合流をはじめとして他地方、他組織との合流は政策抜きの野合であり、国会審議や具体的政策課題が発生するたびに、対立が顕現化する。
党の中核を占める大阪出身議員と東京などを地盤とする非大阪組との確執も表面化してきた。党の路線や政策をめぐるいわゆる「東西対立」も党内の不協和音を拡大させている。
連敗
強いはずの選挙にも陰りが見えている。昨秋以降の各市長選で維新が推した候補はすべて落選した。9月牛久市、10月橿原市、11月は八幡市、海老名市、東西ともに連敗が続いている。12月の江東区長選では5人の候補者中最下位だった。万博失敗、カジノ破産、選挙も敗北。維新に恥じ多き野垂れ死にを強制しよう。(剛田力)
あかんやろ!カジノ 女性パレード
1月8日、大阪市内で「あかんやろ!カジノ 女性パレード」第9弾がおこなわれ、「万博より能登半島被災地支援」「万博中止」「カジノはいらん」と訴えて100人が御堂筋をデモ行進した。沿道からは、デモへの飛び入り参加や、手を振ったりスマホ撮影などの声援があった。(写真)
1日に能登半島地震が起き甚大な被害だ。万博協会副会長が「万博より被災地支援」と言いだした。万博関連費用10兆円は被災地復興に回すべきだ。建設業界調査で、万博の工事参画に「興味はない」は89・4パーセントにのぼる。その理由には「人手不足で工期が短い。働く人たちに極度の負担がかかる」「万博を開催する意義があるのか疑問。中止すべき」というのがある。万博を中止させ、被災地を支援しよう。
2面
沖縄日誌23年12月 不法工事やめろ
辺野古 国の代執行に怒り
12月2日 名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で毎月第1土曜の「県民大行動」に市民800人が参加。鹿児島県屋久島沖の米軍オスプレイ墜落事故後も、県内ではオスプレイが飛び続けている。参加者は「私たちの力でオスプレイの飛行を止めよう」と怒りの声を上げた。
4日 嘉手納町の沖縄防衛局前で、オール沖縄会議は「オスプレイ飛行停止を求める緊急集会」を開催。市民300人が参加。「日本政府は、墜落の危険性がある欠陥機オスプレイの飛行を即時停止せよ」と訴えた。
5日 沖縄防衛局は、辺野古新基地建設で大浦湾側での護岸・軟弱地盤の工事4件を大手ゼネコンなどと契約したと発表。
7日 米軍は、鹿児島県屋久島沖のオスプレイ墜落事故を受け、全世界でオスプレイ飛行停止を発表した。全世界で運用が停止されるのは初。米軍は全世界で470機以上のオスプレイを保有している。
14日 ヘリ基地反対協は、辺野古新基地建設で辺野古側の土砂投入から5年となるこの日、海上抗議行動を展開、抗議船6隻、カヌー38艇に60人が参加。工事の即時停止を訴えた。また、設計変更承認の代執行を許すなと抗議の声を上げた。
15日 木原稔防衛相は、12式地対艦ミサイルの射程を延ばし、敵基地攻撃能力を担えるミサイルの配備を2026年度から1年前倒しし、25年度にすると発表。現在の射程距離百数十キロ型から千キロの能力向上型に順次置き換える。現在従来型は、宮古島市、石垣市、奄美大島に配備されているほか、23年度中に沖縄島うるま市の勝連分屯地に配備される計画だ。
20日 辺野古新基地建設で、大浦湾側の軟弱地盤改良に伴う設計変更承認を巡り、国が承認を代執行する訴訟の判決が福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)であり、国の請求通り県に承認するよう命じた。これにより県の敗訴が確定した。県は25日までに承認を求められ、県が承認しない場合は、国が承認を代執行する。県は27日までに上告できるが、最高裁で逆転勝利しない限り工事は止まらない。
玉城デニー知事は「到底容認できない」とコメントした。裁判所前に結集した市民から「不当判決だ」と怒りの声が上がった。キャンプ・シュワブゲート前で座り込みの市民は「三権分立が壊されている、日本の恥だ」と拳を突き上げた。夕方には県庁前の県民広場に市民300人が集まり、不当判決に抗議の声を上げ、「新基地は造らせない」と決意を新たにした。
25日 福岡高裁那覇支部が県に命じた設計変更の承認期限のこの日、県は「承認せず」と表明。市民は「当然の判断」と知事の判断を支持した。
27日 玉城デニー知事は、設計変更承認の代執行訴訟で、県の訴えを退けた福岡高裁那覇支部の判断を不服として最高裁に上告した。
28日 斉藤鉄夫国交相は、県に代わり防衛省が出した設計変更申請を承認した。これにより大浦湾側の軟弱地盤の改良工事の着手が可能となった。防衛省は承認を受け1月12日にも大浦湾側の工事に着手するもよう。市民からは国の強行策を批判する声が相次いだ。キャンプ・シュワブゲート前では市民80人が「不法工事はやめろ」と怒りのシュプレヒコールを上げた。(杉山)
釜ヶ崎越冬闘争で連帯行動(12月28日 西成区三角公園) |
3面
イスラエルはガザ攻撃やめろ
市民デモHYOGOが行動
1月4日
壊すな憲法! 命とくらし! 市民デモHYOGOの2024年第1回木曜行動は、パレスチナ連帯・ガザへの攻撃許すなを掲げて1月4日14時から15時半まで三宮・マルイ前でおこなわれた。
通例は1月第1週は休みなのだが、今年はもうこれ以上ガザ市民を殺すなの行動が必要と行動をおこなった。
恒例の大横断幕、メッセージボードにパレスチナの旗、シール投票の代わりにイスラエル大使館あてのメッセージも。6人のアピール、チラシ配布、スタンディング、カンパ箱設置(能登震災への救援の箱も別途設置)に多くの市民が関心を寄せた。
途中、飛び入り参加の青年のコールや、アラブ系の英語が不得意の青年がアピール。アラビア語なのでほぼ誰もわからなかったが、真剣な訴えの表情と「Thank you」は伝わった。
1人でスタンディングをしている人や、前市議なども参加し総計50人弱が行動。即時「停戦」を求めた新春第一波行動となった。(写真下)
軍事費増税を許すな
消費税は廃止
消費税廃止をかかげデモする「れいわ新撰組」(10月6日 大阪市内) |
岸田政権は、経済対策の柱として2024年6月からの所得税と住民税の減税を打ち出し、物価高に苦しむ国民生活を支援するというが、目先の「アメ」の先には、数多くの負担増が待っている。政府は、2027年度までの5年間で43兆円もの軍事費確保に向け、いったん先延ばしにしたが増税する方針は変えていない。
自民党政治資金パーティー券収入をめぐる裏金疑惑(明白な政治資金規正法違反・脱税)などの政治資金疑惑への広範な怒りを受けて25年度の軍事費増税を先送りしたが、27年度には、今回の所得税減税を含めても1兆円強に達する負担増となる。
減税のあとに増税が
今後、実施や想定される国民負担は次のようである。
@軍事費増額のための法人、所得、たばこ税の増税
A少子化対策財源で社会保険料に「支援金」上乗せ
B後期高齢者の医療保険料引き上げ
C国民年金保険料納付期間の65歳までの延長
D介護保険料の増額
E退職金の所得控除額見直し
F生前贈与の加算期間の延長
「異次元の少子化対策」では、社会保険料に1人当たり月500円程度を上乗せする「支援金」創設を検討。
75歳以上の後期高齢者は、公的保険料が24年度から段階的に引き上げられ、25年度には年金収入153万円超で後期高齢者の約4割が対象となる。
国民年金保険料の納付期間が、現行の20歳以上60歳未満から65歳になるまで引き上げを議論している。
また、厚労省は24年4月から65歳以上の介護保険料について年間所得420万円以上はアップすることを決めた。
総務省は郵便料金を1994年以来30年ぶりに30%以上も引き上げる方針(24年秋にも)。は年金収入153万円超で後期高齢者の約4割が対象となる。
12月15日、最高裁は、年金引き下げは違憲との訴えに対して「違憲ではない」と不当判決。
少子化対策を言いながら、与党税制調査会方針では、高校生扶養控除が縮小される(12月14日報道)。
減税は一瞬だが、その後は延々と増税に苦しめられる。さらに、賃上げにもかかわらず物価高騰によって19カ月連続で実質賃金は下落。
インボイス撤回、消費税廃止
かつては国税の大半は所得税と法人税といった直接税であって、この両者で国税収入の51%(1955年)、59%(1965年)、70%(1970年代)だったが、2022年度の税収の最大項目は消費税となっている。
1930年代には、軍事力の急速な近代化による軍事費の増大、公共支出政策の展開、社会保障費が増大したため現代資本主義国家の財政規模は、それ以前の帝国主義成立期とも比較にならないほど拡大した。
そのために租税負担率は著しく高まり、2022年の国民負担率は47・5%と言われる(※ 国民負担率=〈租税負担額+社会保障負担額〉÷〈国民所得〉)。北欧は高福祉・高負担だが、日本は低福祉・高負担だ。財政赤字を勘案すればもっと大変なことになる。一貫して資本蓄積を優先した税制度がおこなわれ、大企業・高所得者に有利になっている。サラリーマン・フリーランスや低所得者には不利な税制になっている。
一般に、現代税は3つの機能をもつとされている(金子宏『租税法』)。
@財源調達機能――国家の活動を支えるための財源調達
A所得再配分機能――所得格差を是正する
B景気調節機能――景気の変動をならし安定化する
消費税は、この項目の@のみであって、他は関係ない。むしろ消費税の逆進性が指摘されるように格差を助長するし、税負担に苦しむ庶民にとって全く不当なものだ。さらに、消費税はインフレ下では実質税収がアップし、インフレ税として税率アップと同じ意義を持つ。物価が上がれば消費税額も増えるので二重の打撃だ。このような反人民的な消費税は直ちに廃止すべきだ。(大井拓)
石川一雄さんの新年メッセージ
10・31狭山闘争(東京日比谷野音) |
新年おめでとうございます。
すでにご承知のように先般、私の第3次再審請求を担当する東京高裁第4刑事部の裁判長が大野裁判長の定年退官によって新しい裁判長に変わりました。期待していた大野裁判長は、インク鑑定や事実調べについて積極的な姿勢を示さないまま、また、弁護団が求めていた証拠開示の勧告についても何の結論も出さないまま退官してしまい、残念無念でなりません。何のための黒い法服を着ているのか。黒はどんな色にも染まることがないことから裁判官の公正さを象徴しているのではないのか。との思いがこみあげます。
幾度も三者協議を重ねる中で、私、石川一雄に対する無実性を示す証拠の存在をつぶさに熟知していた筈であり、またこの間、鑑定人尋問を要請した52万筆を超える署名も提出されました。52万筆の署名の後ろには、多くの人々の「鑑定人尋問を行え」という熱い思いが込められています。新たに就任された家令和典裁判長には、ぜひ、私の無実を示す科学的証拠を精査され、事実調べ・再審開始を求める52万筆の署名の重みを受け止めて、インク資料の科学的鑑定の実施と鑑定人尋問、そして、証拠開示勧告をおこなっていただきたいと強くお願いしたいと思っています。
一生懸命署名集めに奔走して下さった多くの方たちや、長い間支援して頂いた方々が、がっかりされたかもしれませんが、もう一度再審闘争にお骨折り下さいますよう、伏してお願い申し上げます。私も再度出直す心境で取り組んでまいります。
また昨年末には、狭山弁護団事務局長として、長年狭山闘争勝利に向けご尽力頂いた中北龍太郎弁護士がご逝去されました。闘い半ばで亡くなられたことは悲しく、また残念無念でなりません。一日も早く、先生に勝利の報告ができるよう、精いっぱい闘い抜きます。
支援者皆様方にありましても、何卒ご協力の程心よりお願いいたします。
まずは年頭に当たり私の決意といたします。
越年し今年こそはと自分に問う
支援者有っての光輝来たる越年し今年こそはと自分に問う
2024年1月 石川一雄
各地で市民の会が活動(11月23日 尼崎) |
4面
2024年『未来』情勢アピール
世界危機・世界戦争の3大焦点
国際連帯強め、日帝・岸田打倒へ(上)
落合薫
はじめに
激動する2024年の冒頭にあたり、世界戦争・世界危機の焦点が3つ現れている。ウクライナ・パレスチナ・台湾の3地域で、帝国主義とスターリン主義の世界支配の破綻が浮き彫りになっている。被抑圧民族・労働者人民が、百年を超える抑圧、差別、隔離、追放から怒りと誇りをもって起ちあがっている。帝国主義足下の人民として受け止め、学び、支援、連帯していかなければならない。
とくに台湾人民に対しては、日本帝国主義50年の植民地支配の責任が日本人民に問われている。日本軍軍隊「慰安婦」問題、強制動員・強制労働させられた人々、日本軍兵士として動員された人たちとその家族への補償問題など、多くの問題が問われている。それとともに台湾の社会運動の力は、アジアで初めて原発の廃止を決め、同性婚を合法化したうえ、共生社会の目標のもと、原住民族(台湾では「先住民族」という言葉はいまは滅亡した民族のニュアンスがあるため「原住民族」と呼ぶ)への政権・国としての謝罪と言語・教育・選挙権上の同権を実現している。この台湾人民の自決権を国際労働者階級は断固支持しなければならない。
中国人民に対し、日本の労働者人民は、731細菌作戦、重慶爆撃、強制労働など、帝国主義の侵略責任が問われている。「7・7自己批判」の原点からするそのあらゆる血債にもかかわらず、現在の習近平指導部の台湾人民の自決権を踏みにじる政策は許されない。台湾人民を、日本・米国・中国の対立の中の将棋のコマのように扱うことは許されない。「台湾危機」を演出・利用する日帝・岸田政権の軍事的突出と闘おう。
T ウクライナ戦争―ロシアの侵略に断を
ロシア軍の激甚な損耗
米・独の政府・情報機関の推定によると、開戦以来のロシア軍では兵員の死亡ないし再動員が不可能な重傷を負った者が30万人(米の推定では31万5千人)、失った戦車と歩兵戦闘車は数千両という。ただしロシアは「受刑者の動員」を含め、必死に新兵を確保している。プーチンは先日、今年は48万6千人が入隊し、来年には兵力の増加を加速させると表明した(以上AFP2023・12・29)。ロシア軍は補い難い物的損失を人的戦力で補うために、前線で歩兵の単独突撃に訴える場面が増えている。使い捨ての肉弾である。他方で、ロシアの最大の軍事力である黒海艦隊は度重なるウクライナのゲリラ攻撃で戦闘能力を失っている。
ウクライナの反転攻勢が「失敗」ないし「膠着」
これは対ロ優位を保ったまま膠着状態に持ち込もうとする米帝・米軍の「謀略」宣伝である(読売2023・12・29)。米国のベトナム戦争やアフガニスタン戦争と比較すればよく分かる。ベトナム戦争は10年、アフガニスタン戦争は20年かかって米帝・米軍の撤退、完全な敗北に持ち込んだ。それに対してウクライナ戦争はまだ2年にも達していない。ベトナムでは国土の半分を米帝支配のかいらい政権に支配されている状態、アフガニスタンでは国土全体をかいらい政権に支配されている状態から反撃・反抗を始めた。それに対してウクライナ戦争では現時点でロシアが占領・支配している面積はクリミアを含めてウクライナ全土の18%に過ぎない。10年、20年越しの長期戦を構えて、まず内線防御の態勢を講じて、敵占領地域でのゲリラ戦と結合すれば最後には必ず勝利できる。そのために犠牲をいとわない抗戦意欲と全人民の団結が必要である。
この問題に、ウクライナの代表的なメディア「ウクライナ・プラウダ」のセワヒリ・ムサイエワ編集長(クリミア・タタール人)は言う。ロシアの侵攻当初、ウクライナは3日間しか抵抗できないと言っていたではないか。しかし、ウクライナはすでに2年間近く戦っている、と(東京2024・1・2)。
革共同全国委機関紙『前進』新年号の犯罪性
ロシアのウクライナに対する侵略戦争という本質を認めない。米帝のロシアに対する戦争と規定する。これに基づけば、ロシアは防衛戦争を闘っていることになるし、ウクライナは米帝のカイライとしてロシアを攻撃していることになる。正逆を転倒させたこの理解から、現在の戦局に関して、「ウクライナの『大規模な反転攻勢』は惨憺たる失敗に終わった」と総括する。欧米の研究者や情報機関の分析に依拠して、ロシアに反撃するためには、「火力で圧倒することが必要」などとブルジョア的軍事評論家張りのデタラメを言いつのっている。すべてがプーチン・ロシアを擁護する論建てである。彼らにとって「侵略を内乱へ」「自国政府の敗北を」とは(彼らの表現によれば「戦争を内乱へ」)、プーチン政権を倒すことではなく、ゼレンスキー政権を倒すことを意味する。おおよそ転倒の極みである。
U パレスチナ―自己解放の蜂起戦
10・7蜂起が全情勢を決定している
パレスチナ人民の10・7蜂起を自己解放闘争の極限的発露と見ることができないで、ただイスラエルの残虐な市民虐殺を弾劾し、国際法違反を糾弾するだけではだめである。
また1993年のオスロ合意を認め、その枠内での「和平」や「停戦」を主張する立場もダメである。
オスロ合意とはイスラエルとパレスチナの2国家併存とそのために過渡的にパレスチナの自治を認めるという合意である。アメリカが仲介してアラファトPLO議長とラビン・イスラエル首相が結んだこの協定の直後にラビン・イスラエル首相は暗殺され、イスラエルは国家としてこの協定を破り続ける。そもそもこの協定自身がパレスチナ人を追い立て、排除し、ないし隔離して成立させたイスラエル国家の存続を前提としている。この協定の一方の当事者であるアラファトとPLOはパレスチナ人民の信認を失い、この協定に反対し、イスラエル国家そのものの成立を認めないハマスが自治区全体で圧倒的支持を得た。
しかし2017年に至ってハマスは綱領を変更し、この協定を承認するに至る(おそらく自治区の選挙に参加するため)。それ以降、ハマスに対するパレスチナ人民の支持は後退し、とくに若者はイスラム国支持に走った。10・7蜂起はハマスが実力でイスラエル支配を打ち破る立場を回復し、2年間準備に準備を重ねた乾坤一擲の蜂起である。ハマスに対するパレスチナ人民(ガザだけでなくヨルダン川西岸や東エルサレム居住者も含めた)の支持が直前の9月の世論調査で22%にすぎなかったのに、10・7以降の調査では43%に達していることを見れば、パレスチナ人民の根源的要求がどこにあるかが明らかである。
イスラエル軍のガザ住民殺害が拡大
イスラエルは10月下旬にガザ北部で地上侵攻を始め、その後、南部ハンユニスなどでも地上部隊を展開。12月26日地上作戦を中部にも拡大している。対象は中部の複数の難民キャンプだという。
イスラエル軍はガザやヨルダン川西岸でもパレスチナ人民を追い立て殺害しながら、軍事目的として掲げるヤヒヤ・シンワルをはじめとするハマス指導者の捕捉ないし殺害には成功していない。住民の犠牲のみが拡大している。
ガザでは人口の約85%に当たる190万人の人々が避難生活に追い込まれている。軍事衝突が始まってから2カ月半で死者は2万1672人、約7割を女性と子どもが占める。負傷者数は5万6165人に達する。避難所内では妊婦や子どもの半分が栄養失調や医療ケアの不足に苦しんでいる。地区内の30カ所の病院のうち、部分的にでも機能を保っているのは13カ所だけ、うちガザ南部で稼働している9つの病院では収容能力に対する入院患者の数は2倍、集中治療室の患者数は1200人以上とされる(朝日2023・12・31)。
イスラエル軍はガザの病院や難民キャンプを選んで空爆している。そこにハマスが潜んでいるからとか、地下トンネルの出入り口があるからということを口実にしているが、真の理由は住民を恐怖と絶望状態に陥れるためである。
V 台湾「危機」―台湾人民に連帯を
世界的には今年は選挙の年
1月台湾総統選、3月ロシア大統領選、4月韓国総選挙、4〜5月インド総選挙、6月欧州議会選、9月自民党総裁任期、11月米大統領選の中で、1月台湾総統選+立法院選が直近で一番の焦点となる。
1月13日投開票の台湾総統選挙をめぐって、最終的に立候補が確定したのは、民進党・頼清徳、国民党・侯友宜、民衆党・柯文哲の3人。三者鼎立となるのは24年ぶり。台湾メディアが12月20日に発表した世論調査の結果では、頼氏35・9%、侯氏34・7%、柯氏19・6%。台湾中央テレビ局TVBSが12月下旬に調査したところによると。頼氏33%、侯氏30%、柯氏24%。
習近平と蔡英文の年頭の辞
2023年12月31日、中国・習近平国家主席が新年演説、台湾に関し、「祖国統一は歴史的な必然」とし、「両岸の同胞は手を携えて心を合わせ、民族復興という偉大な栄光を分かち合わなければならない」と訴えた。また香港に関して、「「国家発展の大局により良く融合する中で、長期的な繁栄や安定を保てるよう引き続き支持する必要がある」との考えを示した。
2024年1月1日、蔡英文総統は新年談話を発表。「台湾の唯一の選択肢は民主主義と平和だ」「できるだけ早く(中国との)健全で秩序ある交流の再開を望む」。「(台湾海峡の平和と安定の維持は)両岸(中台)の共通の責任であり、台湾の与野党の共通の使命だ」と指摘、台湾は「挑発も屈服もしない。自信と冷静さをもって中国に立ち向かう」と強調した。
習近平・中国は、台湾の政治・経済的自立を主張する民進党を落とし、対中国融和を掲げる国民党を支持するため露骨な選挙介入をしてきた。中国軍機が台湾海峡の中間線を越えたり、軍艦が接近したりすることを繰り返す軍事的威嚇、台湾産品の輸入を禁止したりする経済的圧力(12月21日、台湾から輸入している化学製品など12品目の関税の優遇措置を2024年1月1日から停止すると発表)、さらには直接の選挙介入などを繰り返してきた。11月には国民党のブレーンを直接北京に呼び寄せて2、3位連合を組んで民進党に対抗することを図ったり、4番目の候補者として名乗りを上げていた郭台銘・鴻海精密工業創業者を、在中国の生産拠点に対するアメとムチの政策で立候補断念に追い込んだりしてきた。しかしあまりの露骨な選挙介入が台湾人民の反発を呼び、2、3位連合工作は失敗に帰した。
支持候補なしの無党派層は民進党に流れるので、世論調査では僅差の優位しか持っていなくても、頼候補が勝利すると考えられるが、同日におこなわれる立法院(国会に相当する)選挙では民進党が過半数を維持するのは難しいと予測されている。台湾の立法院は1院制で全113議席を入れ替える。民進党の現有議席は62で、6議席失えば頼氏が勝っても少数与党に転落する。
台湾の対中国経済依存度の低下
英国の統計資料によれば、台湾の輸出総額に占める中国市場向けの割合は21%程度(2008年リーマンショック以来最低)。台湾資本による外国向け投資に占める中国の割合も13%にまで低下している(選択2024・1月号)。
工場の新設や買収など台湾の対外直接投資に占める中国向けの比率は2010年のピーク時に8割強に上ったが、2023年には1割強に激減する見通し。それに対して米国向けは前年の9倍に膨らみ、投資先で初めて米中が逆転する。中国の台湾経済制裁などで経済的に苦境に陥るのは中国の方だ(日経2023・12・29)。
『前進』新年号の犯罪性
『前進』は現在の世界情勢の基調として、「米帝の中国侵略戦争」を据える。世界情勢の一切を米帝が1極覇権を維持するために動かしているとみる。彼らの言い分では、ウクライナ戦争も、パレスチナ戦争もその延長でしかない。何よりも、米帝が「3正面の戦争」を展開する能力と意志を持っているとみなす驚くべき米帝万能論である。
結果として、日帝の対中国包囲、戦争挑発の突出性を見ることができない。また台湾・韓国の内部の階級関係、社会運動を内在的に分析する視点もない。結果として台湾・韓国は米帝のカイライ国家のような扱いとなる。安倍=岸田の戦争を阻止するために連帯すべき台湾・韓国の労働者人民を無視する。
W 日帝・岸田自民党と維新
辺野古代執行
12月28日、国は区域の埋めたてに必要な設計変更を県に代わって承認する「代執行」をおこなった。完成の展望がなく、米軍自身も不要と言い、2019年県民投票で7割超が反対した辺野古の埋め立てを強行しようとしている。
24年度政府予算案(12月22日閣議決定)
軍事費(防衛省所轄)は7兆9496億円と8兆円に迫る。10年連続で過去最大を更新。前年度比で計1・2兆円(17%)増。2年連続で1兆円をオーバー。
ただしこの額は、港湾・空港の軍事利用のための整備費(国交省所轄)、軍事研究(文科省所轄)、軍人恩給(総務省所轄)など他省庁所轄分を含まず、欧米並みにこれらを含めると、すでに2%をオーバーしている。
「防衛力整備計画」で27年度までの5年間で総額約43兆円の軍事費を投じる方針。内訳では過去に購入した兵器の支払い(兵器ローンの返済額)=「歳出化経費」が3兆9480億円で軍事費全体で約半分。
残りの歳出で目立つものは、
(1)「敵基地」攻撃能力の手段となる長射程ミサイルの開発・取得に巨費
*射程を1000qにした「12式地対艦誘導弾」の能力向上型取得に961億円
*「超音速誘導弾」の開発に725億円、量産に86億円
*「高速滑空弾」の開発に967億円
*艦艇や地上目標を攻撃する新たな「精密誘導弾」の開発に323億円
*ノルウェー製の「JSM」(射程500q)の取得に352億円
*米国製の「JASSM」(射程900q)の取得に51億円
(2)英・伊と共同開発する戦闘機に640億円+国際共同機関の運営費42億円
(3)「統合作戦司令部」の設置に向け、ソフトウェアの整備だけで98億円
(4)米軍再編経費2130億円、うち辺野古・新基地建設に726億円
(5)全国に弾薬庫建設
九州(沖縄)や北海道・京都などに計14カ所の弾薬庫を新設する建設費222億円を計上した。「敵基地」攻撃能力の保有や「継戦能力」の強化のためで、「敵」から第1次的に攻撃される目標となるため、全国が戦場化する。京都府南部精華町の陸自祝園分屯地(460haの敷地)には8棟と全国最大の弾薬庫建設の102億円が計上された。
(6)空母化艦艇の運用開始
護衛艦「いずも」と「かが」は垂直離着陸できる戦闘機(VTOL機)を搭載できるように改修して「空母化」することを決定し、すでに第1次改修は終えている。昨年8月南中国海や南太平洋で米比豪などの海軍と共同訓練する「インド太平洋方面派遣(IPD23)」で、「旗艦」としての役割を果たした。その過程で、南中国海・フィリピンのパラワン島西方で中国海軍のジャンカイU級フリーゲート艦と接近し、にらみ合いの状況になった。
原発全面推進
◇柏崎刈羽原発の運転禁止解除
世界最大の発電量をもつ柏崎刈羽原発にたいし、「トラブル」続出で原子力規制委員会が出していた事実上の運転禁止命令を12月27日、解除した。今後は「地元同意」が焦点となる。
◇核融合発電で50社が提携する新組織が3月に発足
IHIなど素材メーカー、商社などが参加して開発を進め、開発に成功するかどうか不明な段階から販路開拓を進める。原発に比し、安全性が高いというが、放射性物質を発生させることには違いがなく、原型炉すら2050年頃完成のめどしかたっていない代物。
ソロモン諸島とジブチへの「能力構築支援」
>政府は2024年度に「安全保障」分野での協力強化を目的とした自衛隊による能力構築支援を実施する方針を固めた(産経2023・12・31)。「インド太平洋戦略」の東の端と西の端への軍事展開である。いずれも最近中国の経済的関与が進んでいる国である。中国が「一帯一路」構想のもと経済的関与を深めているのに対し、露骨な軍事展開である。
日本の経済的衰退と労働者人民の困窮
内閣府が12月25日に発表した日本の1人当たり名目国内総生産(GDP)がドル換算で3万4064ドルとなり、OECD加盟38カ国中21位となった。比較可能な1980年以降で最低順位となり、G7でも08年以来の最下位となり、イタリア20位、韓国22位の間となった。22年の日本の名目GDPは4兆2601億ドルで、米・中に次ぐ3位の地位は維持した。しかし世界全体に占める割合は4・2%で前年から0・9ポイント低下し過去最低となった。
維新は万博で「失速」始まる
大阪・関西万博の建設費(だけで)の2350億円への増額を発表。その後、維新支持率は後退。9月時点では9・2%だった支持率が、増額が発表された直後の11月には6・6%に急落した。
当初、「万博は国の事業」としてかわす姿勢をとっていた維新もその後は「積極PR路線」に転換、しかし失速は止まらず、維新万博クライシスがすすんでいる。
首都圏進出の目玉であった12月の江東区長選挙では、単独で擁立した推薦候補が5人中最下位で落選し、得票率も10%に満たず、供託金が没収された (FNN 2023・12・29)。
維新打倒への追撃はいまがチャンスだ。(つづく)
(別表)
昨年の軍事大国化、とくに琉球列島の要塞化(日誌)
1.12 鹿児島県西之表市の馬毛島で、防衛省が自衛隊基地の本体工事に着手
2.13 原子力規制委が、原発の60年超への新規制制度を異例の多数決で決定
3.28 総額114兆円の国の予算が成立(11年連続で過去最大を更新)
4.06 陸自ヘリが宮古島沖で墜落。第8師団長ら10人の幹部が死亡
4.21 昨年度の消費者物価は前年度比3%上昇(41年ぶりの伸び)
6.09 入管法改悪成立。難民認定申請中でも母国に送り返せるようになる
6.16 軍事費増額の財源を裏付ける財源確保法が国会で成立
7.28 関電の高浜原発1号機が再稼働。運転開始から48年超の老朽原発
8.02 中国電力が上関町に対し、使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設検討を関電と共同提案
8.18 上関町が中国電力の調査受け入れを決めた
9.04 辺野古新基地建設計画につき、最高裁が県の上告を棄却、県が敗訴
11.29 屋久島沖で8人搭乗の米空軍横田基地所属の輸送機オスプレイが墜落
12.22 防衛装備移転3原則(武器輸出3原則)と運用指針を改悪。殺傷兵器完成品の輸出を解禁
12.28 辺野古新基地建設をめぐり国が県に代わる「代執行」を強行
6面
2024年核なき世界の実現を求めて
原発依存へ暴走の岸田政権を倒そう
津田保夫
核(核兵器と原発)問題をめぐって、2023年には新たな動きがあった。ウクライナ侵略戦争において、プーチンは核による恫喝を繰り返している。イスラエルによるガザ攻撃においても、イスラエルの大臣は同じような発言をした。今日、核戦争の危機が一段と増している。
また、地球環境危機のなかで、原発推進が世界ですすんでいる。国連気候変動会議(COP28)では、化石燃料に代わる代替エネルギーとして、原子力がはじめて成果文書に盛り込まれた。
本稿では、「核のない社会」を実現していくために、核問題という視点に立って反核運動をみていく。昨年の闘いを振り返り、今後の闘いを展望していきたい。
(1)「核なき世界の実現」をもとめて
広島と長崎そして福島、そして世界中に被ばく者が存在する。被ばく者は、核のない世界の実現を求めている。その思想は「核と人類は共存できない」に表現されている。
その成果は核兵器禁止条約に反映されている。この条文には、「核兵器の使用による被害者(ヒバクシャ)と核実験によって影響を受けた人々にもたらされた受け入れ難い苦しみと危害に留意する」と刻まれている。
昨年12月、核兵器禁止条約の第2回締約国会議がおこなわれた。核戦争の危機という情勢のなかで、会議はあらためて核抑止力論の正当化を批判した。第1回と同様に、日本政府はオブザーバー参加もしていない。被爆者が参加しているにもかかわらず、政府はこれを無視しつづけている。
岸田政権の核政策
いっぽう、岸田首相は「核兵器のない世界」を提唱している。この発言は広島出身を売りにする宣伝文句であり、政治的アドバルーンにすぎない。岸田は核兵器をなくす気持ちなど持ちあわせていない。
歴史的にみれば、日本政府は「核の平和利用」の名のもとに、原発を稼働させることによって核保有を追求してきた。日本政府の本音は「潜在的核保有」にある。今日においても、政府は高速炉建設という理由をつけて、「核燃料サイクル」を保持している。岸田政権が原発を積極的に推進するのも、ここに理由がある。
G7「広島ビジョン」
岸田政権は、広島サミット(G7)に向けて政治的宣伝を準備をしてきた。22年8月に、岸田は国連で演説し、「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表した。これをもとにして、昨年5月にG7サミットが広島で開催されたときに、G7の共同文書として「広島ビジョン」が発表された。ここには「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」と書かれている。日本政府は「核抑止力」(核の恫喝による平和)を肯定しているのだ。
(2)核汚染水の海洋投棄
福島の漁業者は、核汚染水を海洋に投棄することに反対してきた。漁師にとって、海は生業の場であり、いのちの海が核物質で汚染される。これはとうてい容認できない。原子力市民委員会は「原発建屋周辺の地下に遮水壁を構築すること、建屋地下内部からの水の漏出を止めること、デブリの空冷をおこなうことなど、汚染水発生防止のための抜本的対策」を提言している。
政府は燃料デブリを回収して、福島第一原発を30年で廃炉にする方針だ。そのために、「タンクに貯蔵する処理水を海洋放出する」と言っている。岸田政権は、昨年8月に核汚染水の海洋投棄を開始した。海洋投棄は「まず結論ありき」であった。その後付けに「専門家の提言」やIAEA報告をつけているにすぎない。
福島第一原発事故の記憶はなんとしてもなくしたい。政府にとって、福島の復興とは「福島第一原発事故をなかったこと」にするということ。事故後の原発建屋と汚染水の入ったタンクは原発事故を記録する証拠になっている。原発事故のモニュメントを消し去ろうとしている。
海洋投棄に反対するうごき
このとき、元・水原大学教授の李元栄さんが、海洋投棄反対を訴えて韓国のソウルから東京まで1600キロを歩き、衆議院議長宛ての請願書を提出した。李さんの闘いが日本の反原発運動に衝撃を与え、8月になって闘いはもりあがった。
李元栄さんがソウルを出発したのは6月18日。ソウルから朝鮮半島を徒歩で5百キロ南下し、7月15日、釜山に到着した。釜山から下関にフェリーで入り、その後、広島や大阪を通過し、9月11日に東京に到着した。
韓国の漁業関係者も、太平洋フォーラム諸国の住民も海洋投棄に反対している。日本政府は、経済援助金などをちらつかせて、各国政府を買収している。中国政府は投棄に反対している。この事によって、核汚染水投棄は国際問題になっている。海洋投棄問題は終わっていない。闘いはこれからだ。
(3)岸田政権の原発推進政策
原発の設備容量を3倍に?
昨年12月、COP28がひらかれた。この会議にあわせて、アメリカが「原発の設備容量を3倍に増やす」ことを呼びかけ、日本を含む22カ国が賛同した。日本政府はこれを歓迎している。これにたいして、環境保護団体は「原子力は気候危機対策を妨げる」と批判している。
22年4月に、第6次評価報告書(第3作業部会)が出されている。ここには「原子力は、低炭素エネルギーを大規模に供給することができる」と書かれており、発電時に二酸化炭素を出さない原発が気候変動危機対策として有効であることが示唆されている。このうごきは、各国政府がおこなう地球環境問題の本質をよく示している。
GX(グリーン・トランスフォーメーション)
岸田政権の原発回帰政策は、COPの流れに沿っている。22年12月に、岸田政権はGX(グリーン・トランスフォーメーション)を策定した。これは再生可能エネルギーの推進をかかげているが、GXの核心はむしろ原発回帰なのだ。昨年5月にGX推進関連法案が国会で成立したが、これをみれば明らかだ。原子力基本法が改定され、原発推進を叫んでいる。また、老朽原発の運転を容易にできるように改悪し、60年超運転も可能にした。
岸田政権は、地球環境問題を利用しながら「原発は発電時に二酸化炭素を出さない」を売り言葉にして、原発回帰に走っている。原発は再生可能エネルギーではないし、地球温暖化以上に地球環境を破壊する。これに危惧するならば、なによりも原発に反対するべきなのだ。しかしCOPでは、このようにはなっていない。今年、議論をおおいに巻き起こしていくべきだろう。
(4)核兵器と原発に反対する
被ばく者の闘い
広島では、「黒い雨」裁判の勝利によって、「黒い雨」降雨認定地域が拡大された。被爆者があらたに認定されている。このヒバクシャの運動は「核兵器禁止条約」をつくりだした。しかし核兵器保持国はこれを批准しないで無視している。日本政府も同様だ。広島と長崎の被爆者は、日本政府にたいして批准させる運動を展開している。
福島では、被ばく者が裁判をおこしている。それは「311子ども甲状腺がん裁判」だ。現在、原告は7人。また、原発事故避難者の裁判では、国の責任をめぐって争われている。
40年超の老朽原発うごかすな
関西では、老朽原発に反対する闘いをつくりあげてきた。それは原発立地地域の若狭と電力消費地の京阪神地域住民が連携して闘っている。昨年の12・3集会は、その集約点として位置づけられるだろう。今日の情勢にあわせて、反対運動のすそ野を広げていこう。
破綻した「核燃サイクル」
国はなぜ使用済み核燃料を再処理するのか。核開発の歴史において、この目的はプルトニウムの生産であり、それは核兵器をつくるためであった。この歴史は、日本においても同様だ。日本政府は原発(平和目的)のために「核燃料サイクル」をおこなうと言っているが、これは口実にすぎない。
再処理工場は「核燃料サイクル」の中心施設だ。現在、青森県六ケ所村にある再処理施設がうごかないから、「中間貯蔵施設」が必要になっている。昨年、「中間貯蔵施設」問題がひとつの争点になったが、そもそも「核燃料サイクル」自体が破綻しているのだ。
六ケ所再処理工場は、アクティブ試験中にガラス固化施設で事故をおこして、操業停止状態になっている。この事故によって、ガラス固化施設が高濃度に汚染されている。ガラス固化過程に問題があることははっきりしているが、日本原燃は、くわしい理由を明らかにせず完成延期を繰り返している。
最終処分場建設に反対
昨年8月、最終処分場の候補地に長崎県対馬市議会が名のりをあげ、その後、市長が撤回。このことで、「核のゴミ」最終処分場があらためて問題になった。現在、原発は「トイレなきマンション」であり、将来においても最終処分場建設の展望はない。日本は地震列島であり、活断層がいたるところに存在し、地下水が充満している。日本列島のなかで、最終処分場にできる地層はないのだ。
日本政府は核(核兵器と原発)を積極的に推進している。「核兵器のない世界」、「原発のない世界」の実現は、この政府との闘いだ。原発立地地域と消費地住民がかたく連携して、ともに闘っていく必要がある。今日の情勢に対応して、反核運動と反原発運動を強化していこう。
7面
能登半島地震で甚大な被害
すべての原発を止めろ
仰木明
美浜3号機差し止め仮処分入廷行進(23年10月11日) |
(1)マグニチュード7・6
1月1日、能登地方を襲ったマグニチュード7・6の大地震は、甚大な被害をもたらした。いまなお被害の全容がわからない状況が続いており、余震と思われる地震が繰り返し起こっている。
これまで能登地方では地震が頻発していたが、今回の地震は最大級の地震であり、恐れていたことが現実になったのである。こうした地震多発国の日本で、原発依存社会に向かって暴走する岸田政権の危険な姿が鮮明となった。能登半島には、北陸電力志賀原発が存在し、今回の地震の震源地である珠洲はかつて、関西電力と中部電力がそれぞれ原発をつくる予定地であった。住民の粘り強い反対運動で、原発建設を断念させたところである。
近隣の新潟県には、世界最大の原発である柏崎刈羽原発がある。さらに福井県嶺南地方には日本原電・敦賀原発(停止中)、関西電力・美浜原発3号機、大飯原発3、4号機、高浜原発1、2、3、4号機がある。
志賀原発では外部電力を取り込むための変圧器から2万リットルのオイルが漏れており、外部電力が一時ストップするというアクシデントが発生した。また柏崎刈羽原発でもトラブルが起こっている。
志賀原発や柏崎刈羽原発は、2011年以後停止していたため、使用済み核燃料が一定冷えており、仮に電源喪失がおこっても、時間の余裕が比較的あったが、今現在稼働中の美浜原発や、大飯原発、高浜原発で同じことが起こった場合は、大惨事に直結する(「3・11」を見よ)。にもかかわらず、関西電力や原発推進勢力はどこも、安全のためにまず原発を止めるという決断をせず、平然と原発を動かし続けている。
(2)関電が約束破り
関西電力は、「23年末までに使用済み核燃料の中間貯蔵地を県外に見つける。万一見つけられない場合は、稼働中の老朽原発3基を停止する」と福井県に約束し、老朽原発再稼動への地元同意を得たのである。
しかし23年年末までに貯蔵候補地を明らかに出来なかった。関電は、ロードマップなるものを打ち出した。しかしなに一つ具体的な展望を持った使用済み核燃料の解決の方策ではない。26年に青森県六ヶ所村再処理工場の稼働がはじまり、使用済み核燃料の搬入が開始できることを前提に計画されている。しかし、六ヶ所再処理工場はこのかん26回も稼働を延期しており、完成は夢物語である。この夢物語を前提にしたプランなど何の展望も現実性もない。
フランスへの持ち出しは、わずか5%の搬出であり、しかも中間貯蔵ではない。2030年までに、候補地を見つけて貯蔵を開始するとしているが、これはそもそも論理矛盾もはなはなだしい。30年に貯蔵できるためには、今の時点で候補地が決まり、地元の了解や事前の手続きが全て終わり、着工されていなければならない。ところがなにひとつクリアされていない現状を見ると、結局使用済み核燃料について解決できない、しかし原発発電は続けたいという願望と将来の世代に負の遺産を残しても今が大事(よく言われる、「今だけ、カネだけ、自分だけ」)ということである。
こういうペテン、マヌーバを許してはならない。このような関電の詐欺的手法を福井県知事は「一歩前進」といって直ちに受け入れた。しかし、関電の老朽原発を止めると言う約束は県民との約束であり、単に県知事が受け入れたから、約束などなかったということにはならない。
関電は、原発推進に埋没する姿をいっそう露骨にしている。定期検査で止まっていた美浜3号機をこの1月中旬にも再稼働しようとしている。美浜3号機は老朽原発であり、そういう意味でも重大である。さらに、関電は定期検査までの運転期間延長を検討しようとしている。これまで13カ月ごとに原発を停止して定期検査は実施されてきた。この運転期間、方法などは、すでに改悪され、最大24カ月の運転が出来るようになっているが、実際は様々な事情があり、運用されていない。関電は、さしあたって15カ月運転に延長しようと狙っている(昨年11月15日の説明会)。また、原発のリプレースや新設を公言している。
能登半島地震による大被害を目の当たりにしながら、なお稼働中の原発を止めず、1月中旬には美浜3号機の再稼働をしようという関電を許してはならない。美浜3号機の再稼働に反対しよう。
(3)運転差し止め仮処分
美浜3号機、高浜1〜4号機運転差止を求めた仮処分について、この3月にも決定が出る。美浜3号機の運転差止を求める仮処分が福井地裁、大阪高裁で闘われている。また高浜1〜4号機の運転差止を求める仮処分も福井地裁で闘われている。この決定がいずれもこの3月に出る。福井地裁で闘われている美浜3号運転差止と高浜1〜4号運転差止は、同じ裁判長が担当しており、同日に決定が出るものと思われる。
能登半島地震をあらたに経験した今、運転差止決定が出なければならない。毎日のテレビ報道で目にする状況は、道路の陥没や隆起、土砂崩れなどで、通行できない道路や孤立した集落など、今回の地震の影響で原発事故を想定した場合、避難など絶対不可能だということが明らかだ。どのひとつをとってみても原発は運転してはならないものである。この仮処分の闘いを、実際の反原発の闘いの一翼として、大きな決起を作り出そう。
この仮処分の結果にかかわらず、3月31日には、福井県美浜町で大集会が開かれる。主催は、老朽原発うごかすな! 実行委員会。
24年に岸田政権・電力資本は、女川、東海第二、島根の再稼働を狙っており、高浜3、4号、川内1、2号の40年超運転を狙っている。すべての原発廃炉に向け全力で闘おう。
パレスチナ人民との連帯のために(下)
消滅めざすイスラエル国防省
三船二郎
ガザ攻撃やめろとデモ(23年10月28日 大阪市内) |
(承前)
ガザは12月から3月がもっとも雨の多い季節だ。今、エジプトはガザからの避難民受け入れを拒否しているが、冬へと向かう中、イスラエルはさらに飢餓や不衛生な状況を避難民に強制し、「人道支援」という名目でエジプトに「国際的」圧力をかけてガザの避難民を「自分の意思」でエジプトに避難したという形にすることが画策されている。つまり、ガザのパレスチナ人は「自分の意思」でガザを出たのだからガザには二度と戻らせないというのである。
ガザ地区から住民を一掃し、ガザにはパレスチナ人は残さない考え方なのだ。連日、激しい空爆を繰り返しているのは、ガザを人が住めないような更地にし、完全に「ガザ地区」を消滅させる計画なのだ。
イスラエルは12月12日、ガザのトンネルへ海水注入を開始した。トンネルはガザ全土に張りめぐらされており、そこに海水が注入されればガザのほとんどの土地で農業ができなくなる。イスラエルはそれでもかまわないとして海水注入をおこなっている。土地もそこに住む人間も皆殺しにしてかまわないという考えだ。
同様にヨルダン川西岸地区を「消滅」させて「パレスチナ問題の最終解決」とするのがイスラエルの考え方である。
イスラエル閣僚の差別発言
◇イタマル・ベングビール国家安全保障相
「私と妻と子どもたちの道路を歩き回る権利は、アラブ人の移動の権利よりも重要だ」。 「私の生きる権利は、彼らの生きる権利よりも優先される」。
◇アミハイ・エリヤフ文化遺産相
「ガザに無罪の人などいない」。
「ガザ地区には居場所はない、ガザ地区北部にも居てはならない。ハマスの旗を掲げる者は、この世に生き続けるべきではない」。
インタビュアーが、イスラエルはガザに原爆を落とすべきか尋ねると、エリヤフは「それも選択肢の一つだ」と答えた(日刊IWJガイド 2023/11/7)。
◇ヨブ・ギャラント国防大臣
「私はガザ地区の完全包囲を命じた。電気も食料も燃料もなくなり、すべてが閉鎖される。
私たちはhuman animals(IWJの注:人間動物、人畜、人獣)と闘っている」。
これは、かつての南アフリカでのアパルトヘイトやアメリカの黒人差別以上のものである。イスラエルのギャラント国防相が使う「human animals=人畜、人獣」は、ナチスが使った「ウンター(下等)メンシュ(人間)」と変わらない。ウンターメンシュは「亜人」とも翻訳されている。つまり、ナチスが、ユダヤ人や障害者等を「人間に似て非なるもの」として殺戮したように、イスラエルは、パレスチナ人は人間ではない家畜や獣だから殺してもよいというのである(日刊IWJガイド2023/10/11)。
いうまでもなくパレスチナ人は私たちと同じ人間だ。そのパレスチナ人が次々と虐殺されていっている。マルクスが指摘したように「人間的なことで自分に関係ないことはない」という立場が死活的に求められているのだ。
根本問題は何か
ガザ住民の皆殺し、ジェノサイドとの闘いが根本問題である。「ガザの解放なくして自己の解放なし」(12/16リレースピーチでの宣言)の闘いをわれわれ自身の自己解放の闘いとし、イスラエルを支援する岸田政権を打倒しよう。(おわり)
8面
関生闘争2024年
元旦行動に500人 大阪府警本部前
団体行動強化し裁判闘争勝利へ
力強く決意表明する湯川祐司委員長 |
500人が結集
1月1日、午前10時、労働組合つぶしの大弾圧をゆるさない元旦行動が大阪府警本部前でおこなわれ、関西や東海地方から500人が集まり、元気よく今年の第1声をあげた。主催は、労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会。
府警本部前には怒りのシュプレヒコールが響きわたった。
労働組合への弾圧を許さないぞ!
憲法28条を守れ!
大阪府警は謝罪しろ!
労働組合は団結して闘うぞ!
勝利するまで闘うぞ!
主催者あいさつ
実行委員会代表の小林勝彦全港湾大阪支部委員長は、最高裁が大阪高裁に差し戻した加茂生コン事件にも触れながら、労働組合は委縮するのではなく、さらに団体行動を強化していくことが世の中を変える力になると強調。ストライキを当たり前にできるように社会を変えていこうと訴えた。
関生・湯川祐司委員長あいさつ
湯川さんは、和歌山事件で産業別労働組合の団結権を全面的に認めた判決を書いた大阪高裁の裁判官は依願退職し、加茂生コン事件で一部無罪判決を出した大阪高裁の裁判官は定年で退職したことを明らかにし、やめる前でないと本当のことを書けないのかと、日本の裁判の現状を弾劾した。
検察は組合を弾圧するために事実に基づかない主張をしているが、裁判官はわかっていても無罪を書けない。これが、今の司法の現実だ。こういう社会には人権など一切ない。ガザもウクライナもそうだ。そこに住む人たちが命を落としていく。
私たちの先輩たちがつくりあげた社会は、権力が主体ではなく、そこに住む人たちが主体となる国づくりであり、それはかならずできる。私たちがその礎にならなくてはならないと訴えた。湯川さんは最後に、関生支部は確かに組合員は減ったが、逆に互いの信頼関係は深まり、笑顔が絶えない組合になっていることも報告した。
各地域の支援する会など
兵庫の会、滋賀勝手連、東海の会や朝鮮総連大阪府本部委員長などが発言。その後、再度シュプレヒコールや法円坂55による替え歌やインターナショナルが歌われた。カンパの訴えは全国金属機械労働組合港合同の中村吉政委員長がおこない、最後のまとめは同労組昌一金属の木下浩平委員長がおこなった。
重要な裁判が続く
昨年3月6日、和歌山事件の控訴審で大阪高裁は、資本との具体的労使関係の有無に関わらず産業別労働組合には団結権があることを真正面から認め、関生支部の組合員の行動は、その団結権に基づく正当な行為であるとして組合員3人全員を無罪とした。検察は上告せず和歌山事件判決は確定して現在に至っている。
しかし昨年9月11日、大阪高裁で一部無罪判決をかちとった加茂生コン事件について最高裁は、一部無罪判決を破棄し、大阪高裁に差し戻す判決を出した。この差し戻し審をめぐる闘いは今後の帰趨を決していく重要な裁判闘争になっていく。
2月6日には大津地裁で「コンプライアンス(ビラまき)2次事件」の判決がある。抗議行動をさらに大きく強くし、裁判所への行動を強めていこう。
今年は関生弾圧を打ち破る正念場だ。最高裁による加茂生コン事件の大阪高裁への差し戻し判決をみすえ、この差し戻し審になんとしても勝ち抜いていこう。その力は我々の団結の力にこそある。
(シネマ案内)
『メンゲレと私』(2021年)
監督:クリスティアン・クレーネス フロリア・ヴァイゲンザマー
原題は「A boy’s life」。証言者のダニエル・ハノッホさんは、少年時代にアウシュビッツ強制収容所に送られたが奇跡的に生き延びた。映画は、ダニエルさんの語りとその表情を記録している。
ダニエルさんは、リトアニアのカウナスでユダヤ人一家に生まれた(1932年2月2日)。カナウスには、当時4万人のユダヤ人が住んでいた。1940年、リトアニアはソ連(当時)に併合され、41年6月にはドイツに占領された。この頃、リトアニア人によるユダヤ人虐殺がおきている。ダニエルさんが9歳の時に、一家はカウナス郊外のゲットーに送られ、その後、強制収容所に送られる。こうして、家族はバラバラにされた。
ダニエルさんは12歳の時、アウシュビッツ強制収容所に送られた。ここでは、悪名高いメンゲレ医師が「この人間は使えるか」を決定する。その判断で、生死が決まるのだ。ダニエル少年は「どうすればいかに生き延びることができるか」を考える。実践した事は、感情を表に出さないこと、そして体が強そうに見せることだった。結果、ダニエルさんはメンゲレ医師に重宝されて、死体を運ぶなどの仕事を与えられた。
ダニエルさんは、強制収容所でのユダヤ人虐殺について、国際赤十字の欺瞞性を指摘している。「彼らはドイツがやっていることを知っていた。協定をしていたのではないか」。また、戦争末期、食料がなくなり、強制収容所では人肉を食べることもおこなわれたようだ。ダニエルさんは、「これは人間としての一線を超えている」と語り、これをきびしく批判している。
戦後、ダニエルさんはパレスチナに移住し、現在もイスラエルに住んでいる。パレスチナのキブツで生活すること、これは小さいときからの夢であった。アウシュビッツにおいても、このことが生きる希望でありつづけた。ダニエルさんはユダヤ人差別のない、希望の地を求めてパレスチナに移った。しかし、パレスチナには、アラブ人が住んでおり、ダニエルさんの求めたキブツは理想とは違っていた。
ダニエルさんが寝る前に聴く歌は、小さいころに聴いたロシア歌曲だ。ちなみに、映画の最後に流れるのは「さらば恋人よ」。イタリアのパルチザンをたたえる歌だ。ダニエルさんにとって、これは思い出深いものなのだろう。リトアニアで住んでいたころ、兄はパルチザンにかかわっていた。戦後、イタリアでダニエルさんは兄と再会している。この曲を聴いたのは、おそらくこの時たったのではないだろうか。
戦後、アウシュビッツなど強制収容所で生き延びたユダヤ人は、パレスチナに移住している。ヨーロッパ諸国は、自国でのユダヤ人問題を「解決」するために、ユダヤ人をパレスチナに追いやった。カトリック教が強い南アメリカ(アルゼンチンなど)では、キリスト教におけるユダヤ人差別を隠蔽するために、ナチス幹部を積極的にかくまった。
ダニエルさんは、イスラエルで体験を語り、戦争に反対をしている。ネタヤネフ政権のガザ攻撃にも反対している。ネタニヤフ政権について、ダニエルさんは「こんな右翼政権が生まれるとは夢にも思わなかった」と述べている。「ユダヤ人差別」は、なにも解決されていないのだ。