未来・第380号


            未来第380号目次(2023年12月21日発行)

 1面〜21面  自民党長期政権の危機が進行
怒りの人民決起で岸田政権打倒

     大阪・関西万博は今すぐ中止を

     沖縄も日本も戦場にさせるな!
       3面  沖縄日誌11月
     オスプレイが墜落
     知事先頭に飛行停止を求める      

     沖縄を再び戦場にさせない
     11・23沖縄県民平和大集会&全国交流会に参加して     

     国家上げての玉城県政つぶしに反転攻勢
     辺野古基地建設阻止闘争の現段階(下)
     金城宏(沖縄在住)

 4面  米軍Xバンドレーダー基地を撤去せよ
     京丹後市で大集会
     11月12日

     川崎市で自衛隊統合演習
     病院を外傷再建センターに
     深津利樹

     11・23にあわせ奈良で集会
     琉球諸島全体が軍事要塞に

 5面  強制不妊10月25日仙台高裁判決(下)
     国の控訴を棄却し、一審に続き国賠命令
     木々 繁

     <投稿>
     国立大学法人法改悪許すな
     大学人・学生が連続的に決起

       6面  原告全面勝訴 名古屋高裁判決
     いのちのとりで裁判
     11月30日

     ミャンマー国軍に制裁を
     堺市で抗議行動10・28

 7面  「国際人権ンから見た関西生コン弾圧」講演集会
     12月3日 名古屋      

     本の紹介
     『カテリーナの伝えたい5つのこと』
     

 8面  パレスチナの人民の闘い(下) 津田保夫
     中東支配のくさび=シオニズム

     本の紹介
     『天井のない牢獄ガザの声を聴け』パレスチナの人々の解放を


     冬期カンパのお願い

           

自民党長期支配の危機が進行
怒りの人民決起で岸田政権打倒

自民党長期支配体制に内在する政治資金不正=裏金・脱税事件が、リクルート事件以上の大問題になっている。岸田は安倍派「5人衆」らの「しっぽ切り」で延命を図るがそれは不可能だ。多額の政党交付金・議員報酬を受けながら、金権派閥政治に回帰し、自民党独裁を維持してきた安倍=岸田体制(2012年体制)が断末魔の危機に逢着した。大軍拡・大増税、格差・貧困、原発回帰、沖縄前線基地化の岸田政権を、怒りの人民決起で打倒しよう。

12・3 反原発闘争が高揚

12月3日「とめよう! 原発依存社会への暴走 大集会」が大阪市西区のうつぼ公園でひらかれ、地元関西をはじめ、全国各地の原発立地から1600人が参加した。
オープニングライブのあと、オール福井反原発連絡会の林広員さんの司会で集会が始まった。

「とめよう!原発依存への暴走」ポテッカーを一斉にかかげる(12月3日 大阪市内)
福井の中嶌さんを先頭に全国各地の反原発団体がつづく(12月3日 大阪・御堂筋)

原発を三度退けた

主催者あいさつを中嶌哲演さん(原子力発電に反対する福井県民会議)がおこなった。哲演さんは、「水上勉は、若狭の男は丁稚奉公で、女は女中奉公で京都・大阪の台所を支えていたが、現在は原発の電気で奉公しているらしいと。若狭はわずかの電気しか消費しないが、原発マネーファシズム、国内植民地支配をうけてきた。子孫に負の遺産を招き寄せてしまった。大事故リスクをはらむ老朽原発、汚染水、使用済み核燃料、この末期的現象をもたらした背景は何か。高度経済成長・バブル経済・現代都市文明、これを支えてきた原発依存社会に私たちも無縁ではない」「三度原発を退け、1万4千人の署名を集め、二度にわたって貯蔵施設を拒否してきた小浜市民の一人として訴える。もう原子力はいらない」と述べた。

「原発安い」はウソ

次に、特別アピールとして原子力市民委員会座長で龍谷大学教授の大島堅一さんが「原子力回帰は許されない」と発言。
大島さんは、「福島第一原発事故から12年9カ月がたった。広い範囲が放射性物質で汚染され、20万人近い人が避難。未だに数万人が故郷へ帰れない。このような大事故がおこったからには原発ゼロ社会をめざすのが当然。岸田政権は暴走に暴走を重ねている。アラブ首長国で開かれたCOP28(国連気候変動枠組み会議第28回締約国会議)でアメリカなどの『2050年までに原発の発電能力を3倍に増やす』とする有志国宣言に日本政府が賛同したことを怒りをもって弾劾した。安倍や菅すら原発依存度を引き下げるといった。ところが岸田は原発拡大へ突っ走った。その理由として挙げているのが、@電力需給ひっ迫、A地球温暖化対策に役立つ、B原発は料金が安い、という『口実』を論破した。
電力は足りていないと言うのは全くの嘘。去年、東電エリアでひっ迫があった。これは原発が動いてないから起こったわけではない。多くの発電所がどんどん休んで修理しているさなかに十年に一度の異常気象で電力使用が一時的なピークになった。もしこの時、原発が動いていたとしても電力ひっ迫は起きた。電力使用のピークは一瞬で、仮に原発を稼働させても発電までは1〜2週間くらい必要で何も効果はない(対策にはならない)。
地球温暖化についても、国際的研究によれば、原発が増えてCO2は減ったかといえば減らなかった。再生可能エネルギーを増やした国のCO2排出は減る。原発と再生エネの関係は、原発を増やしてしまうと再生エネが減る。そしてCO2が増えてしまう。気候変動問題にかかわる若者も強く反対している。
電気料金は円安の影響とか化石燃料の価格アップが原因で、原発を動かしたからと言ってエネルギー価格が下がるわけではない。
福島事故後12年で原発に金をいくら払ったか。原発まわりの自治体に立地交付金が12年で5兆円払われた。一人当たり4万円。また、電気料金から原発に関していくら払われているか。全日本人あわせて20兆円で、一人当たり17〜18万円。両方合わせて20万円。
これから福島第一原発の廃炉費用をまかなうのにどうするか。事故は続いている状況。放射能性廃棄物が大量に出てくる。
大きな原発1基廃炉にすると低レベル廃棄物(L1)2百トン。福島原発事故で廃棄物が何トン出てくるか。28万トン。1400倍出てくる。日本は原発を約60基つくってきた。この放射性廃棄物はほとんど処分しない。それが千基分以上が出てくる。このコストたるやどれぐらいになるか。全く計算されていない。処分方法も決まっていない。これは大きな負の遺産であって、原発によって経済的利益は全くない。マイナスだけ。8月ALPS汚染水を放出した。あの対策で政府は1千億円つかった。政府に聞いた。その1千億円は誰が払うのかと。本来、東電が始末するのが当たり前。なのに、なぜ国民が払う必要があるのか。一人当たり800円とられる計算だ。原発は、政府にとっては安い。なぜなら皆さんから取ってるから。国民にとっては高いんです」。

全国各地から発言

第2グループ京都・兵庫・和歌山(12月3日)

ついで全国各地からアピールがおこなわれた。 青森から〈核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会〉、新潟から〈さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト〉、首都圏から〈とめよう! 東海第二原発 首都圏連絡会〉、福井から〈オール福井反原発連絡会〉、愛知・岐阜から〈老朽原発40年廃炉訴訟市民の会〉、山口県上関から〈原発いらん! 山口ネットワーク〉、鹿児島から〈ストップ川内原発! 3・11鹿児島実行委員会(メッセージ)〉の各代表が発言。
青森の中道雅史さんは、「福島原発からの汚染水放出に反対して粘り強く闘う福島現地の闘いに青森は強く連帯する。六ヶ所再処理工場が稼働すれば現在の比ではない膨大な放射能汚染水が垂れ流される。福島原発汚染水海洋投棄は再処理工場稼働・全原発再稼働の露払いだ。断固、中止に追い込もう」「再処理工場の着工以来、26回も完成延期が繰り返され、操業のめどはたっていない。六ヶ所のプールは満杯で、全国からの搬入は止まっている。断末魔の核燃料サイクルにとどめを」「再処理工場、中間貯蔵阻止の闘いは立地一地方の課題ではありません。全国の課題です」
新潟の小木曽茂子さんは、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働が日程に上っている。来年9月頃知事は再稼働を容認して再選に打って出るという。歴代知事が進めてきた技術・避難・健康と生活の3つの検討委員会を立ち上げながら総括委員会を開かず委員をやめさせた。9月県議会で再稼働を検討するという。市民から、事故が起きた時のマイナスを検討すべきとの声。5年かけた検討委員会の課題解決の道が示されていない。県民は市民検討委員会を開催する。県議会は反対14人。賛成29人。住民の意向を反映するべき。柏崎刈羽原発は中越沖地震で3800カ所以上のキズがついた。金の亡者にノーを。
東海第二原発反対をたんぽぽ舎の柳田真さんが発言した。首都圏では2週間前に東海第二原発とめよう! と大きな集会をやった。かつて福井地裁の樋口裁判長は「大飯原発は私のうちより地震に弱い。原発の耐震度は700ガル。私の家は耐震度が3500ガル」と指摘した。首都圏唯一の原発で出力110万キロワット、福島事故基と同じ沸騰水型原子炉の再稼働を許すなと述べた。
福井の宮下正一さんは、今日福井からはマイクロバス3台と列車で参加した。関電は10月10日に使用済核燃料の中間貯蔵について、@フランスへの持ち出し、A青森県(むつ市)への持ち出し、B上関への持ち出しととんでもないことを言い出した。反対するむつ市の市長が今度青森県知事になったので青森県が引き取る展望はない。またMOX燃料再処理はどこの国でもやってない。そこで関電は福井県に「使用済み核燃料を乾式貯蔵にしたい(使用済み核燃料プールを空けたい)」と言い出した。火事場泥棒的なとんでもないことだ。しかし、今やっている福井県議会はこれを認め、知事も認めた。15基の原発が集中する上に貯蔵施設が加われば、福井県は原発の墓場と言っていい。福井県を原発の墓場にするな。
名古屋の草地妙子さんは、運転延長認可取り消し裁判で7年半一審を闘ってきた。裁判で来年最終弁論。老朽原発の本格的裁判は全国で初めて。争点はたくさんある。60以上あったが30に絞った。例えば、美浜原発3号機の活断層、全く検討していない。緊急時避難も検討していない。それを裁判所がどう見るかが大事。何を守るための規制委員会か。電力会社の主張を規制委員会が一緒になって主張するのはおかしい。規制委員会は国民の生命・財産・環境を守るべきではないか。
伊方の近藤享子さんは、伊方原発をすぐやめてもらいたい。人間は生まれてすぐ人権がある。私たち10キロ地点の人間には人権がない。被曝したくなくても逃げられない。1企業の為に私たちの命を犠牲にするな。命かけても原発を最後までとめる。
山口の小中進さんは、上関原発・中間貯蔵施設をストップする。山口県は歴代首相が日本の政治をデタラメにした。上関で42年間、祝島と一緒にストップさせてきた。突然8月に町長が中間貯蔵施設誘致を発表。周辺の町が反対の声をあげたため、いま事態は動いていない。子どもの為に原発のない社会を。
九州川内原発については向原祥隆さんのメッセージが代読された。6、7月、県民投票の会が県民投票を実施する条例制定を求める署名運動をおこない、法定数2万6千筆のところ5万4千筆集めた。しかし臨時県議会はこの条例制定要求を否決した。だが運動は頑張っている。
各参加政党(社民党、新社会党、日本共産党、緑の党グリーンズジャパン、立憲民主党、れいわ新選組)が登壇し、紹介された。

安全な所に住む権利

第4グループ大阪の先頭部分(12月3日)

カンパアピールのあと、福島第一原発事故被害者・福島県郡山市住民の郷田みほさんが発言。
郷田さんは、なんとか苦しんでいる福島周辺の人たちを法律で守ってもらわなきゃということで、ぜひチェルノブイリ法・日本版、条例を作ろうということで頑張っています。福島県民は何度も何度も国から裏切られています。知る権利があるはずです。でもメディアがほとんどその権利を無視しつづけ、報道をしていません。「福島は復興した」「食べ物は安全だ」とかそういうことだけは報道します。県庁に行って何度も要請してきた。でも、知事は一度も会ってくれません。帰還困難地域が次々と解除されております。「大丈夫だから福島に戻れ」とか。でもそれは違います。この土地にいる人たちは本当に先祖代々、必死に開拓・開墾し切り開いた土地です。その魂のこもった土地を奪われてしまった。3〜7マイクロシーベルトあります。そんなところに子どもたちを連れて戻ると言うのはどういうことなんでしょう。土壌汚染度は40万ベクレル以上。浪江町・大熊町、そういう場所に行こうとすると周りの山をこえて行かなくてはなりません。そこはほとんど除染されていない。子どもが病気になったらどうするんでしょうかと聞きました。国は何の責任も持ちません。「関係ありません」といってます。自分たちの犯した罪に責任もとらず、これ以上どうしろというのか。
避難している人たちは権利があるから避難しているんです。私たちは安全な所に住む権利があります。人権を無視した国に対して自分達の権利を守るためにもチェルノブイリ法・日本版の条例をつくって頑張って生活しようとしていますので声援よろしくお願いしますと述べた。
関西の市民団体から、原発のない社会へ2024びわこ集会実行委員会(滋賀)、原発ゼロの会・大阪(大阪)、ストップ・ザ・もんじゅ(大阪)、原発をなくし自然エネルギーを推進する兵庫の会(兵庫)、原発ゼロ・被災者支援奈良のつどい実行委員会(奈良)が発言。労働組合からは、フォーラム平和・人権・環境、全国労働組合総連合近畿ブロック、おおさかユニオンネットワーク。
『集会宣言』が提案され採択された。カンパは46万円を超えた。集会のあとナンバまで御堂筋デモをおこなった。発言者の熱意と迫力が今までにも増して大きかった。また若者が増えたこと、街頭での反応・呼応する人、とび入りデモ参加者が多かった。

大阪・関西万博は今すぐ中止を

万博は破産の危機

たった半年間開催の大阪・関西万博に莫大な税金を投入することに批判と中止を求める声が高まっている。共同通信の世論調査で約7割が「不要」と回答。当初建設費1250億円が、大屋根(リング)の建設や資材・人件費の高騰で2350億円に倍増し、更に日本館の建設などに837億円、運営費は1160億円に上昇。世界最大級の木造建築というリングは、350億円もかかり、終わったら壊してしまう。
25年4月の万博開催まで1年4カ月と迫ったが、海外パビリオンの建築許可を取得したのは11月末でチェコ、ベルギー、モナコなどの6カ国。着工は、まだゼロ(12月11日現在)という有り様。これからパビリオン建設では、人手不足もあり工期が間に合わないと言われる。来年4月には建設業界でも残業規制が始まる。万博協会と維新は残業規制を外させようとしているが、認めてはいけない。

IRカジノと万博は一体

夢洲は、産業廃棄物などのゴミで埋め立てられた人工島で軟弱地盤。だから建物の下に50mの杭を打ち込む。終わったらその杭も抜かなければならない。これも費用を嵩上げする要因だ。夢洲へのアクセスは、夢舞大橋と夢咲トンネルの2ルートしかなく、大阪メトロ中央線を延伸して夢洲駅(仮称)の造成やシャトルバス運行のために阪神高速淀川左岸線2期工事をはじめ万博の総事業費は1兆円超。
維新の看板「大阪都構想」は2015年と20年の2度の住民投票で否決された。それに代わるものとして「IRカジノ(賭博)と万博」がある。2014年に維新はカジノ誘致を決め、15年末に当時の安倍首相と菅官房長官、松井、橋下の忘年会で維新は大阪万博開催を取りつけた。16年松井は万博予定地にはなかった夢洲案を万博の第1回目の会合にいきなり提出した。夢洲の最大の難点はインフラ整備。そこで国の事業・万博でインフラ整備をしてカジノにつなげるのが目的。カジノではインフラ整備に税金は使えないが、万博なら税金が使える。
維新は「企業・団体献金の禁止」を掲げているが全くのウソ。大和ハウス工業、乃村工藝社、リーガル不動産などは吉村知事のパーティ券を何十万円と購入し、こぞって万博事業を受注している。
万博を隠れみのに巨額の税金を食い物にすることは許されない。
万博は今すぐ中止にし、2010年から大阪支配を続けてきた維新政治を終わらせよう。

2面

3面

沖縄日誌11月
オスプレイが墜落
知事先頭に飛行停止を求める

11月1日 名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局は大浦湾側の軟弱地盤の存在を2007年に認識していたことが明らかになった。防衛局は2013年の埋め立て申請の段階で調査せず、埋め立て承認を得た。防衛局は14年にボーリング調査を開始。結果、軟弱地盤が確認され改良工事が必要だとしたのは、土砂投入を始めた後の19年だった。工期は当初の5年から9年3カ月に延長、総工費は2・7倍の9300億円(県の試算は2兆円を越える)に膨れ上がった。

5日 名護市辺野古の新基地建設をめぐり、オール沖縄会議は北谷町の屋内運動施設で「国による代執行を許さない! デニー知事と共に地方自治を守る県民大集会」を開催。市民1800人が参加。設計変更「不承認」の知事を支持し、新基地建設阻止へ一丸となることを誓った。玉城デニー知事は「わたしたちは、絶対負けてはいけませんよ」と最後まであきらめない姿勢を示した。
7日 在沖米軍幹部は辺野古新基地建設の完成が「早くて2037年になる」「軍事的な観点からは(辺野古より)普天間のほうがいい」と述べ辺野古新基地完成後も普天間基地を使用することをほのめかした。

10日 「自衛隊統合演習」が始まった。県外から沖縄に部隊を展開する訓練では、中城湾港から陸揚げした車両が公道を通って移動した。中城湾港のゲート前では市民60人が座り込み、抗議の声を上げた。

21日 朝鮮民主主義人民共和国は人工衛星を沖縄県先島上空を通過する太平洋上空に打ち上げ、軌道に進入し成功したと発表。人工衛星打ち上げは今年5月、8月に続き3回目、防衛省は今回もPAC3を県内に展開、今後も継続する方針。PAC3の先島諸島への展開は常態化している。 23日 「11・23県民平和大集会」が那覇市の奥武山公園陸上競技場で開催され県内外から1万人以上が参加。幅広い年代が「対話で平和を」という思いをひとつにした。瑞慶覧長敏共同代表は「平和をつくるためにひとつになろう」と呼びかけた。玉城デニー知事は「子どもの未来を守ろう」とあいさつ。
集会と同時間帯には、全国各地で連帯集会が開かれた。
石垣市では〈島を戦場にさせない市民の会〉主催の集会に120人が参加。「ミサイルより戦争回避の外交を」の横断幕を掲げパレードした。

28日 辺野古新基地建設の設計変更をめぐる抗告訴訟で、県は福岡高裁那覇支部に控訴した。抗告訴訟は15日那覇地裁で県の訴えが「門前払い」で却下され29日が控訴期限だった。

29日 鹿児島県屋久島沖で、米空軍横田基地所属のCV22オスプレイが墜落した。8人が搭乗しており、1人の死亡を確認(12月3日現在乗員全員死亡)。オスプレイの死亡事故は日本国内初。県内では2016年12月名護市安部沿岸に普天間所属のMV22オスプレイが墜落2人負傷。県内には普天間飛行場にMV22オスプレイが24機配備されており、訓練の際に住宅地を通過している。県民は「怖い」「即時撤退してほしい」と怒りの声を上げた。玉城デニー知事は政府に対し、オスプレイの飛行停止を要求した。

同日 名護市辺野古の新基地建設の設計変更の代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は判決期日を12月20日に指定した。代執行裁判は10月30日に結審し判決期日を「追って指定する」としていた。(杉山)

沖縄を再び戦場にさせない
11・23 沖縄県民平和大集会&全国交流会に参加して

(月2日)

秋晴れの暖かい日差しの下、沖縄県那覇市の奥武山公園陸上競技場で、「全国連帯11・23県民平和大集会〜対話による信頼こそ平和への道〜」が1万人余の参加者で開催された。
午後2時からのメイン集会に先立ち、正午頃から平和を願う様々なミュージシャンたちが演奏を繰り広げ、ブースやキッチンカーも設置されて、この集会に多くの人たちが参加しやすいような雰囲気が作り出された。
それでもまだ会場には2〜3千人ほどしか集まっていなくて、目標の1万人結集が実現できるのか心配だったが、メイン集会が始まる直前の1時半頃から続々と人々が集まり出し、メイン集会の演壇前を埋め尽くしていった。参加者には多くの若者たちや子ども連れの家族も目立った。

台湾有事は政府の印象操作

メイン集会では県内各地からの報告、戦争体験者や若者からのメッセージ・歌、来賓スピーチがおこなわれた。基調報告をした前泊博盛さん(沖縄国際大学教授)は、台湾有事は日本有事だとして戦争情勢を作り出している政府の「印象操作をはねのけなければならない」と強調した。
登壇した玉城デニー知事は沖縄を差別抑圧する政府の「不条理にひるまない」「平和の思いを全国共有に」と発言し、参加者からとりわけ大きな力強い支援と激励の拍手が送られた。
ガマフヤー(沖縄戦で亡くなった人の遺骨を掘り起こし収集する人)代表の具志堅隆松さんは、沖縄を再び戦場にさせない闘いは「日本を戦場にさせない」闘いと一体だと、その意義を明らかにした。
集会の最後に、参加者のメッセージが書かれた魚型の紙を貼り合わせて大きな魚を描き、小魚が集まって大きな魚に立ち向かっていく縦3メートル・横10メートルの巨大アート「スイミーバイ」が披露された。
集会宣言が読み上げられて全体の拍手で確認された。集会参加者は木陰の人たちも含めて1万人超、カンパは2百万円余と発表された。

全国交流会

(月2日)

午後6時半から、パレット市民劇場で全国交流会が開かれ、約2百人が参加した。主催者を代表して瑞慶覧長敏さんが昼間の集会を総括し、「若者の感性もあり、これまでにない特別な集会だった。私たちは序章でスタートラインに立ったばかり。今後、さらに5万〜10万人の結集をめざし、子や孫に戦争を引き継がせない」と力強く語った。
集会では14の市民団体が挨拶し、それぞれの地域における闘いを強化して全国的な闘いに結びつけていくことなどが話された。集会には米国、ハワイ、台湾、韓国からもメッセージが寄せられた。(山田健吾)

国家あげての玉城県政つぶしに反転攻勢
辺野古新基地建設阻止闘争の現段階(下)
金城宏(沖縄在住)

琉球諸島の軍事要塞化を止め、再び戦場にさせるな

昨年12月、安保関連3文書の閣議決定以降、沖縄では「専守防衛」から、先制攻撃=「敵地攻撃」に向けたミサイル配備、軍事強化が「台湾有事」を口実に進んでいます。与那国、石垣、宮古島等に自衛隊基地が強化増設され、ミサイル配備が進んでいます。そして、日米韓合同軍事演習が頻繁に繰りかえされています。10月14日から31日まで日米合同訓練(レゾリュート・ドラゴン23)が始まり嘉手納弾薬地区、キャンプ・コートニー、嘉手納基地、キャンプ・ズケラン、普天間基地やホワイトビーチなど県内外の基地が使用される。また、新石垣空港や那覇軍港、宮古などの民間港湾施設を使用している。更に軍用車両が我者顔で公道を頻繁に走り県民生活を脅かしています。これらの軍事演習は中国、朝鮮国に圧力をかけ一触即発の戦争挑発をおこない非常に危険な演習です。直ちに、軍事挑発を停止し、武力によらない相互理解を深める為の対話が必要です。現在、「国民保護訓練=ミサイル避難訓練」がおこなわれ、まさに「戦時下」を思わせる状況が作られています。辺野古新基地建設は琉球諸島に急激に進む「軍事要塞化」の動きと一体のものです。岸田政権のこのような危険な動きに対して、宮古、石垣、与那国などではミサイル配備、軍事強化反対の闘いが始まっています。軍事訓練では陸自オスプレイが初めて飛来、嘉手納基地には偵察用無人機(実は攻撃用)が配備されます。
沖縄を二度と戦場にしない、「捨石」にさせるなと、多くの市民団体が立ちあがり反転攻勢に出ています。まずは、11月23日「沖縄を再び戦場にさせない! 県民大集会」を県内外の結集をもって成功させましょう。国際主義で武装し、朝鮮、中国民族排外主義を乗り越え、日朝中人民は連帯し侵略戦争を阻止しましょう。(おわり)

4面

米軍Xバンドレーダー基地を撤去せよ
京丹後市で大集会 11月12日

11月12日、米軍Xバンドレーダー基地反対の現地行動&集会が京都府京丹後市でおこなわれた。2014年、京丹後市に国内2つめの米軍Xバンドレーダー基地として運用が始まって以来、毎年春と秋に全関西から集まって現地集会がおこなわれてきた。

米軍Xバンドレーダー基地ゲート前行動

午後からの大集会「いらんちゃフェスタ」に先立ち、米軍Xバンドレーダー基地反対・近畿連絡会がよびかけた米軍Xバンドレーダー基地ゲート前抗議集会がおこなわれた。あいにくの豪雨のなか、近畿各地から集まった人々は、道路を挟んで基地正門と対峙する向かい側の空き地で、抗議集会をおこなった。
集会は京都連絡会共同代表の司会で始まった。本日の行動の位置づけとして、@米軍基地撤去を求める直接の抗議行動、A日米安保の強化、岸田政権の戦争政策と対決する本土の基地現場からの行動として、B沖縄での11・23県民大集会と連帯する行動として、取り組むことが提起された。その後、京丹後市議の永井友昭さん、京都、大阪、兵庫、滋賀、奈良からの発言があり、基地にむけてシュプレヒコールをたたきつけ終了した。

いらんちゃフェスタ2023

バスや車に分乗し約30分の距離にある丹後文化会館に向かう。西日本から動員された右翼の妨害行動による車の渋滞で、到着したときには会館での「米軍基地いらんちゃフェスタ2023」は始まっていた。
報告に立った永井友昭さんは、「土地利用規制法の特別注視区域と注視区域の指定が9月にあり、第3次指定は180カ所だった。このなかにはいよいよ米軍基地が顔を見せている。京丹後市経ヶ岬には米軍Xバンドレーダー基地と自衛隊基地との両方があるが、すぐに次の指定が来るのではないか」。「日米地位協定は、いらない。われわれは憲法に依拠して考える。それを世界に発信する。私たちは、アメリカの手下(テゴ)ではない」と発言。

前泊さん講演

前泊博盛さん(沖縄国際大学大学院教授)が記念講演。前泊さんは骨折事故のためZOOMでの講演となった。「辺野古の基地問題は軍事的合理性、環境的合理性、行政的合理性のすべてが欠落している。」「米軍筋から聞くと、辺野古はお願いしていない。普天間のままでいい。逆に迷惑している。大手ゼネコンや族議員がからんでいる。」、「辺野古では弾薬庫の建て替え工事が進んでいて、核ミサイル配備まで進めるのではないかというくらいの大規模な工事だ。あらたな核基地になりかねない」と警鐘を乱打した。

協賛3団体

米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会から共同代表の瀧川順朗さんが発言。「何かあれば、この米軍Xバンドレーダー基地が最初に攻撃される。このXバンドレーダー基地が東アジアの軍事緊張を拡大し、日米軍事一体化のもと、日本による集団的自衛権行使に関連するそのものだと理解して、基地に反対する。アジアの民衆への加害の歴史を断ち切って戦争につながる基地をなくす闘いの発展をつくりだそう」と訴えた。
つづく協賛2団体から発言のあと、閉会あいさつがあり終了した。集会には350人が参加。大雨も止み、元気よく町内をデモ行進した。

川崎市で自衛隊統合演習
病院を外傷再建センターに

(月2日)

11月13日、川崎市麻生区にある新百合ヶ丘総合病院で、自衛隊の実動演習があり、抗議の行動がおこなわれた。
11月10日から20日まで全国各地でおこなわれた陸海空自衛隊3万人と米軍1万人による「統合演習」。「軍事要塞」としての琉球弧で与那国、奄美などでもすさまじい実動演習をおこなった。
今回は、市民の生活と直結している「民間の利用」がテーマのようだ。
自衛隊築城基地が攻撃を受けて使えなくなったとの想定で、近くの民間の大分空港にF2戦闘機が4機着陸する演習がおこなわれた。同様に岡山空港などの民間空港を自衛隊機が演習として使用した。
また原発防護として、柏崎市(柏崎刈羽原発)、御前崎市(浜岡原発)、東通村(東通原発)、楢葉町(福島第二原発)、東海村(東海第二原発)でも演習をおこなったという。
「自衛隊基地が攻撃されて使用不能になったから民間空港で」、「原発が攻撃されている」、「戦争で重傷者が出ている」、そうした想定での実動訓練だ。
もう「自衛隊は防災のため」とか「災害救助」などという言葉は使用しない。戦争のための演習ということを隠していない。普通に生活している市民の目の前で、堂々とおこなっている。
川崎市麻生区新百合ヶ丘駅から徒歩で15分ぐらいの木々に囲まれた広い静かな病院、新百合ヶ丘総合病院。昼前から緊急車両が入る駐車場のその奥にあるところに自衛隊車両が1台駐車している。
14時前ごろから動きがあり、付近にトラックなど4台が入場。降りて来た若い兵士と話を交わす。「これからヘリが来ます」とていねいに説明してくれた。
15時ちょうどにヘリコプターが到着。相当の騒音だった。こちらの後方からの屋上ヘリポートへの着陸だった。その後に旋回している音もなみ大抵ではない。緊張させる音だ。
(月2日)
そこから「戦争によっての重傷者」を降ろして病院に搬送するという演習。これは戦争が私たちの日常社会に入ってきたということにほかならない。
新百合ヶ丘総合病院、なぜこの民間病院に「戦傷者が自衛隊のヘリで運ばれて」きたのか? この病院に新設されたという「外傷再建センター」。おそらく自衛隊にとって、戦場で負傷した隊員の「後送先」として、これほどうってつけの病院はないのだろう。「後送作戦」の主目的は負傷した自衛隊員をふたたび戦場へ戻すこと、急性期を脱して命が救われ、さらに機能の回復を促進して再び戦場に戻すための病院として選ばれたらしいと後から聞いた。
問題は、こうしたことがほとんど話題になっていない。川崎市危機管理本部も直接連絡を受けなかったと言っている。私たちから川崎市長への申し入れに対して、市からは「回答しない。その理由も言わない」と連絡が来た。自衛隊の災害派遣に伴うものではなく戦傷者の運搬だから、川崎市に全く協議や連絡がなくてもいいのか。それでは地方行政は何のためにあるのか。
この「川崎市内での実動演習」に対して35人もの市民が抗議行動に参加した(写真上)。もっと大きな声をあげていきたい。戦争国家化は許さない。

11・23にあわせ奈良で連帯集会
琉球諸島全体が軍事要塞に

(月2日)

11月23日、沖縄で「11・23県民平和大集会」がおこなわれた。この集会に連帯して、全国各地で集会がもたれた。奈良においては、〈11・23「沖縄を戦場にするな! 戦争をさせない、しない白旗運動」奈良県集会〉が、JR奈良駅前でひらかれ、県内から市民150人が参加した。主催は、奈良―沖縄連帯委員会など4団体。(写真上)
集会がはじまり、崎浜盛喜さん(奈良―沖縄連帯委員会)が、主催団体の代表あいさつをおこなった。崎浜さんは次のように述べた。「沖縄戦で兄と祖父が奪われた。故郷の北中城村瑞慶覧は、今も米軍基地になっています。故郷が戻らないうちに、ふたたび沖縄に戦争が襲いかかろうとしています」「日本政府は台湾有事≠あおって、琉球諸島−奄美、宮古、石垣、与那国にミサイル基地をつくっています。今年中には、沖縄島にミサイル基地司令部ができます。琉球諸島全体が軍事要塞になろうとしています」「日本政府・岸田政権は、日米安保条約−戦争のための条約を守るが、日中平和友好条約−平和のための条約は守らない。こんなことは断じて許されない」「戦争をさせない、しない。われわれは沖縄を戦場には絶対にさせない。全国を戦場にさせない。この思いをこめた白旗を高々とかかげて、人間の尊厳を守りつつ、平和をつらぬいていこう。」
この夏、奈良の代表団が石垣島と与那国島を視察した。その参加者が軍事要塞化の現状を報告した。奈良県内で、三上智恵監督「沖縄、再び戦場へ」のDVD上映会がおこなわれている。その取り組みなども報告された。また、イスラエルによるガザ攻撃に抗議して、「ガザのジェノサイドを許さない! 緊急アピール」が読みあげられた。
集会後、三条通りをあがり猿沢の池までデモをおこなった。奈良を訪れている外国人観光客は「沖縄を戦場にするな!」のコールに手を振って共感を表していた。

5面

強制不妊 10月25日仙台高裁判決(下)
国の控訴を棄却し、一審に続き国賠命令
89年最高裁判例を批判、「除斥期間」適用は「権利の乱用」と断じ、請求権に「時効」適用の画期的判断
木々繁

(承前)

強制不妊をめぐるこれまでの国賠訴訟は大部分、上記89年最高裁判例を踏まえつつ、除斥期間の適用を例外的に制限するかどうかが争点となってきた。それゆえ、原告勝訴の場合でも、「一時金支給法の施行日から提訴まで5年以内の猶予期間を与えるのが相当」(22年3月東京高裁判決)や「訴訟提起が困難な状況の解消から6カ月間は、除斥期間の適用は制限される」(同年2月大阪高裁判決)など、救済対象には期間の限定が伴った。
今次仙台高裁判決は、「権利の乱用」があった場合は期間の経過に関わらず請求権が消滅しない「時効」と解釈するという立場をとった。その上で、被害者が請求権を行使できない状況をつくった国に対しては、時の経過に伴う「時効の消滅」を主張することも認めなかった。
今次判決によって「請求権は消滅した」という国の主張自体が成り立たなくなった場合、もはや救済期間の制限は生じない。事実上今後提訴する被害者はすべて救済される道筋を大きく切り開いたと言える。原告が勝訴したこれまでの高裁・地裁判決は、除斥期間という「時の壁」を期間限定によって一定制約することで、被害者を救済してきた。今次仙台高裁判決は、「壁」そのものを根こそぎ取り払い、事実上「除斥期間」を解体したと言える。まさに、画期的である。

不法行為の賠償請求権を消滅させるまでの時間の経過を「除斥期間」とみるか「時効期間」とみるかは、89年最高裁判例以前から学説の対立があり、89年最高裁判例に対する批判も存在したといわれる。それでもこれまでの強制不妊訴訟国賠裁判が示すように、地裁や高裁など下級審はほとんど例外なく最高裁判例違反を回避した。今次判決は、そうした現状に大きく重い一石を投じたものと言えよう。
ところで、今日の民法学においては、改正前の旧民法724条後段を「除斥期間」ではなく、時効と解するのが多数意見となっていると言われる。つまり、724条後段を『除斥期間』とした89年最高裁判例はいまや時代遅れの遺物となりつつあり、これにしがみつくことは時代逆行であり、被害救済の最悪の足かせとなることを意味する。国家の下僕に成り下がった裁判長・石栗正子らによる本年6・1仙台高裁判決はそのもっとも雄弁な証左であった。

今次判決は、こうした法理論の漸進的深化・発展とそれに対応する司法の流れを踏まえつつ、法の基本原則である「正義・公平」に立脚して、損害賠償の請求権は時効によって消滅しないと認めたものである。
小林裁判長は最高裁判例を率直かつ鋭く批判し、次のように判示した。「損害賠償請求権は20年で消滅すると定めた改正前民法724条後段の規定は、最高裁の判例とは異なり、正義・公平の観点から考えて、『除斥期間』ではなく、期間を伸ばせる『時効』と解釈する」と。

判決理由で裁判長は、民法の不法行為制度に関し「規定の究極の目的は正義・公平であり、それが制度の根本理念である」と強調、国による不妊手術の強制は憲法が定める個人の尊厳の尊重(13条)や法の下の平等(14条)などに反し違憲と判断した上で、「手術は適法な公権力の行使であるかのような形で強制され、被害者が違法な行為と認識することは極めて困難だった」と指摘した。そうして、「権利の濫用は、これを許さない」と規定した民法第1条(基本原則)に照らし、「国が請求権の消滅を主張することは許されない」とし、原告の権利は消滅せず、請求は有効と認めたのである。

以上から明らかなように、今次仙台高裁判決は、旧法とその下での強制不妊手術という戦後最大の人権侵害と真正面から向き合い、対決した司法の姿を示した。それは、飯塚淳子さん、佐藤由美さん(その闘いを支える義姉・路子さん)、千葉広和さんをはじめとした仙台訴訟の原告の方々、そして、全国の原告・被害者の方々の長年の言葉に尽くせない苦闘が闘い取った到達地平に他ならない。

最高裁に正義・公平解決を求める100万筆署名を集中し、「旧法=違憲」判断と全面解決を促し、強制不妊国賠訴訟運動の新たな発展を

旧法のもとで不妊・中絶手術を強いられた全国の原告が国に損害賠償を求めた5件の上告審で、最高裁は旧法の違憲性や、「除斥期間」適用問題等を巡る審理を大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)で行い、最高裁としての初の統一判断を来年中にも示す見通しとなったと報じられている。
5件は東京、大阪、神戸、仙台、札幌の高裁判決だ。全国弁護団の関哉直人事務局次長は「最高裁は戦後最大の人権侵害に対し、全ての被害者を救済するため職責を果たしてほしい」と声明を発した。

優生連(優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会)が呼びかける「優生保護法裁判に正義・公平の理念にもとづく最高裁判決を」の100万筆署名運動を老若男女すべての人々に熱く訴え、推し進めよう。

優生保護法はなくなったが、優生保護法問題は終わっていない。原告・被害者の不屈の自己解放的闘いに学び、連帯して、優生保護法問題の早期全面解決に向かってともに前進しよう。(おわり)

国立大学法人法改悪許すな
大学人・学生が連続的に決起

国立大学法人法の改悪に反対して、大学人・学生の決起が続いている。学生からの投稿を掲載する。

(月2日)

〈投稿)
大学自治の破壊許すな
谷風遼(関西A大学)

岸田政権により今国会で国立大学法人法の改悪が狙われている。特定の大規模国立大学(東北・東京・名古屋+岐阜・京都・大阪)に新たに「運営方針会議」なる経営の為の合議体を設置し、大学債発行や土地貸付に対する規制緩和もおこなうことで、大学運営への政治支配強化と産学融合とを同時に推し進めようとする法案だ。
 合議体の設置では、04年の独立行政法人化や14年の学校教育法改悪などで確立された学長独裁ともいうべき体制からさらに一歩踏み込むものだ。大学の「経営方針」を議決する委員の過半数を大学外から招き、産業界・財界の意向をより色濃く反映させる。委員の任命は文科大臣の承認を必要とし、政府・文科省が大学を国策に沿う形でコントロールすることが可能となる。日本学術会議の任命拒否問題は記憶に新しいところだ。
 学生どころか教員・研究者すら議論から排除し、拙速な国会審議が進められており、教育・研究の現場からは教職員組合など怒りと反対の声が高まっている。受益者負担の原則、教育サービス論によって不利益を被ってきた学生からもより強く反対を訴え、「公共財」としての大学を取り戻す闘いが必要だ。
 学問の自由よりも金儲けを優先する新自由主義的な「稼げる大学」に反対しよう。国策による軍事研究推進の企てを打ち砕こう。大学自治へのこれ以上の介入を許さず、学生・教職員・労働者・市民の連帯で国大法改悪に反対し廃案へと追い込もう。

6面

原告全面勝訴 名古屋高裁判決
いのちのとりで裁判
11月30日

11月30日、生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)控訴審判決で名古屋高裁(長谷川恭弘裁判長)は原告全面勝訴判決を言い渡した。高裁では2例目の判決であり、高裁での勝訴は初。この名古屋高裁判決の影響はきわめて大きい。

慰謝料の国家賠償まで認める

生活保護基準引き下げ違憲訴訟の判決は地裁、高裁あわせて13あるが、そのいずれにおいても慰謝料としての国家賠償まで認めた判決は皆無だった。国家賠償まで認めたということは国の引き下げの違法性をきわめて強く認定したということである。
判決はいう。「違法な改定を行った厚生労働大臣には重大な過失がある。過去に例のない大幅な生活扶助基準の引き下げの影響は生活保護受給者にとって非常に重大であり、原告らはもともと余裕のある生活ではなかったところを、支給額の引き下げ以降、9年以上にわたりさらに余裕のない生活を強いられ、引き下げを取り消しても精神的苦痛はなお残る」として引き下げを取り消すとともに、国に対し、原告13人全員に慰謝料として請求額通り1人1万円の賠償を命じた。

健康で文化的な生活とは何か

判決はいう。「人が3度の食事ができているだけでは、・・・生命が維持できているというにすぎず、到底健康で文化的な最低限度の生活であるといえないし、健康であるためには、基本的な栄養バランスのとれるような食事を行うことが可能であることが必要であり、文化的といえるためには、孤立せずに親族間や地域において対人関係を持ったり・・・自分なりに何らかの楽しみとなることを行うことなどが可能」でなければならないと判示した。
憲法25条に規定されている「健康で文化的な生活」とは具体的に何を指すかは、実は、この裁判で争われてきた最大のテーマなのだ。
国の主張は端的にいえば「生命が維持できてい」ればそれでよいとするものであるが、名古屋高裁判決はこれをきっぱりと否定した。生活保護利用者の社会的存在としての人間的権利を真向から認めたのである。

国の訴訟態度を厳しく批判

たとえば生活保護基準部会が検証した「ゆがみ調整」の結果を国が勝手に一律2分の1にしていたことを北海道新聞がすっぱ抜くまで国が隠し続けてきたことを厳しく批判した。
判決はいう。このような処理が「長らくブラックボックスにされていたということは、・・・判断過程の極めて重要な部分を秘していたもの」であり、こうした国の隠ぺい主義の「訴訟態度も、口頭弁論の全趣旨としてしん酌されるべきである」と弾劾した。
また判断過程を「ブラックボックスにしておいて、(厚生労働大臣には)専門技術的知見があるから検討の結果を信用するよう主張することは、許されない」と批判し、国の主張を「極めて不誠実なもの」「全く説得力がない」と厳しく断罪した。

原告、喜びの声

Aさんは「うれしかった。やっと勝てたという思い。この判決でおかしいことはおかしいと言うことが広まることを願う。生活保護は最低限の生活のベースラインなので、これを機にみんなの生活が豊かになってほしい」、Bさんは「感無量。判決を機に制度を元に戻してほしい」と訴えた。

駆けつけた多くの人たち

翌12月1日に東京の弁護士会館でおこなわれた緊急集会には多くの人たちが駆けつけた。れいわ新選組から山本太郎参議院議員、天畠大輔参議院議員、舩後靖彦参議院議員秘書、社民党の大椿ゆうこ参議院議員、共産党の各議員、雨宮処凛さんなどが祝福の言葉を述べた。〈怒っているぞ! 障害者きりすて! 全国ネットワーク〉の古賀典夫さんも、連帯してともに闘っていきたいと発言した。

判決ラッシュ

この11月30日の名古屋高裁の判決に続き、12月14日に那覇地裁、2024年1月15日に鹿児島地裁、1月24日に富山地裁、2月22日に津地裁と続く。さらに勝利を重ねていこう。

次は東京高裁での勝利を

東京高裁での勝利は名古屋高裁判決以上に最高裁に決定的影響を与える。東京地裁、横浜地裁、さいたま地裁、千葉地裁の各控訴審は東京高裁に係属している。名古屋高裁に続いて東京高裁での全面勝利をかちとろう。

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大阪高裁での原告逆転敗訴に対してはすでに最高裁に上告している。最高裁は見たらわかるが、分厚いコンクリートで囲まれた異様な建物であり、少しばかりの爆撃を受けてもびくともしない要塞のようになっており、日本の治安の砦そのものである。
分厚いコンクリートは動かすことはできないが、判決を書くのは生きた裁判官たちである。この裁判官たちを動かすことである。
原告勝訴にむけての否定できない筋の通った法的論理を裁判官たちに突きつけ、原告の存在と訴えによって裁判官たちの心を動かし、治安の砦としての最高裁を動かすほどの多数の署名が求められている。

署名活動に全力を

東京高裁、そして最高裁での勝訴判決をかちとるために署名活動に全力をあげよう。

ミャンマー国軍に制裁を
堺市で抗議行動 10・28

10月28日、29日、大阪府堺市で「G7大阪・堺貿易大臣会合」が開催された。29日は、ミャンマークーデターから千日めにあたる。
その前日28日、在日ミャンマー人を中心に約30人が南海電車・堺駅東口に集まり、ミャンマー国軍支援をやめるように求める抗議行動をおこなった。

ミャンマー民衆への支援を

抗議行動を呼びかけたアウン・ミャッ・ウィンさんは「今日、G7の貿易担当大臣の会議が開催されていますが、私たちは簡単にいうとミャンマーに経済制裁をするように、そして各国がミャンマー国軍と貿易しないように求めたいのです。ミャンマーは世界一長い内戦が起きている国です。ミャンマーの問題はアジアの問題であり、世界の問題でもあります。
今、ウクライナとロシアの問題や、パレスチナとイスラエルの問題が起き、アメリカはイスラエルへの支援をおこなっています。日本を含む世界の多くの国々はウクライナへの支援をおこなっていますが、ミャンマー民衆への支援はほとんどありません。今、国軍は村々を空爆し、焼き討ちし、たくさんの人たちが殺されています。避難民は200万人を超えています。
ウクライナやパレスチナも大事ですが、同じように大切なミャンマーのことを忘れないでください、ミャンマーを助けてくださいとお願いしたいのです。ウクライナへの支援の100分の1でもミャンマー民衆に渡されたら、私たちミャンマーの民衆は国軍を打倒して民主的な国をつくれるでしょう」と訴えた。

ミャンマーの現実

続いて発言した人は、「私の妻はミャンマー人でクーデターが起きてから母国に帰れない状態になっています。クーデターに反対しているからです。財政危機にある国軍は国外にいるミャンマー人に対して国軍に税金を払え、払わないとパスポートを取り上げるぞと脅しており、多くのミャンマー人は生活が苦しいのに国軍に税金を払わざるをえなくなっています。日本の与党も野党もミャンマーについて本気で取り組んでくれません。ミャンマーのことはミャンマー人だけで頑張っている状況です。どうかミャンマーのことを忘れないでください。ミャンマーへのご協力をお願いいたします」と訴えた。
次に発言した人は「ミャンマーの少数民族の和解担当≠ニいう肩書を日本政府から受けている日本財団の笹川陽平会長がカンボジアのフン・セン前首相とミャンマーに行き、国軍が画策している偽の総選挙を実行しようと暗躍している。日本政府の本当の姿は国軍を支えミャンマー民衆を殺す側にいることだ」と弾劾した。

駅前に響く声

日本人だけでなくミャンマー人の技能実習生や留学生たちも参加していた。
フリー、フリー、ミャンマー!
日本政府は国軍に経済制裁をしろ!
入管はもっと難民を認めろ!
笹川陽平を許すな!
アウンサンスーチー解放!
ミャンマーを忘れないで!
コンビニで働くミャンマー人がいることを知ってください!
英語交じりの訴えにも関わらず、道行く人たちは募金箱の中に「少ないけれども」と言って5百円玉や千円札を入れていった。(三船二郎)

7面

投稿
「国際人権から見た関西生コン弾圧」講演集会
12月3日名古屋

(月2日)

名古屋市の東別院会館で〈関生弾圧を許さない東海の会〉が主催したこの集会では、エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんの講演がおこなわれました(写真左)。藤田さんは特定秘密保護法案(2013年)、共謀罪法案(2017年)を英訳して国連に通報し、その危険性を周知、2016年の国連特別報告者(表現の自由)日本調査の実現に尽力した方。
本年7月28日に国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家2名が連帯ユニオン関生支部事務所を訪問し、「国連ビジネスと人権の作業部会ミッション終了ステートメント」中で関生弾圧を念頭に「労働組合員の逮捕や訴追の事例などについて、懸念を抱いています」と指摘されたことの意義などを解説しました。
今回の集会はこれまで関西生コン弾圧をテーマにした集会には参加したことのない人も多く、また、テレビ局の取材も入り、運動の広がりを感じさせるものでした。

労働法を知らない裁判官

集会冒頭、主催者として石田共同代表が、「これまで弁護士や労働法学者、この問題を取材しているジャーナリストをお招きして集会をもってきたが今回は少し離れたところから講師をお迎えした。裁判だけでは限界があり、これをどう超えていけるのか、一緒に考えていきたい」と集会の趣旨を説明しました。
続いて、関生ビラまき弾圧事件の当該組合員が発言に立ちました。組合員は、「コンプライアンス違反を指摘するビラを撒いたことが恐喝だとされ、組合つぶしのために2019年2月に被告となっている4名が警察に不当逮捕された。テレビドラマで裁判官が両方の意見を聞くシーンがあるが、実際の裁判では検察側証人10数名が延々と証言し、弁護側は労働法学者の証人が却下されて数名しか採用されず、労働法を知らない裁判官が憲法を無視して刑法だけで判断しようとしている。これは労働者・市民の武器を奪うものだ」と発言しました。

現場を潰させてはならない

ビラまき弾圧当該でもある関生支部の西山執行委員は日頃の支援に謝意を表明、「現在、地裁ではビラまき弾圧など2件が残っている。証拠はビラを撒いている映像だけで、撮影したのは元大阪府警警察官。組合を離れていくメンバーもいたが、役員でもない組合員が最後までこの弾圧に頑張りぬいたことは大きな成果。警察は組合員の家族を訪問して黙秘を止めるように言ってくれと頼むなど無法な弾圧だった。検察調べでは組合を辞めたら刑を軽くする、不起訴にする等と言った。組合脱退を強要する取り調べの証拠も残っている。裁判だけをやっていても前には進まない。現場を潰させてはならない。政治の影響も大きい。民主党政権時代の139日間のストへの弾圧と安倍政権の2017年12月ストの弾圧は全然違う。裁判所も追随し、「法律は同じでも時代状況によって解釈は変わる」と判決している。現在、労働委員会の行政命令を履行させる取り組みをしているが、使用者側弁護士が労働委員会に勝利命令の損害賠償を請求することまで起きている。ゼロから、何年かかるか解らないが、産別労働組合運動を再建していく。未組織の労働者が労働組合に悪いイメージを持っていることも変えていかなければならないと思う」と発言しました。

国際人権を使う

藤田さんは冒頭、「今、イギリスはストライキブーム。教員・鉄道労働者・弁護士・医療労働者までストライキをおこなっている。人々はもちろん迷惑も被るが、彼らの権利だから、と理解を示す。日本ではストライキ権は死語になっている。帰国後、沖縄を出発点に講演会をおこなっている。沖縄戦で多くの犠牲者を出したチビチリガマと犠牲者を出さなかったシムクガマがある。シムクガマではハイチ移民だった人が国際法規の交戦規程に一般市民の殺害をおこなってはならないとあることを知っていて集団自決を思いとどまらせた。国際人権が使えることを理解してもらいたい。シングルイシューについて頑張っている人もいるが、全体が繋がっていて根底が一緒だと言いたい。木をみて森を見ないではいけない」と講演の趣旨を説明されました。
続けて、藤田さんは国際人権に関する概要を説明しました。日本では人権は「思いやり」のように言われるが、国際人権基準では、人権は人間らしく生きるのに不可欠なもので、政府は尊重・保護・充足の義務を負うと考えられている、闘争的な側面があることも認められているとしました。国連には人権条約機関と人権理事会とがあり、人権条約には社会権規約と自由権規約があり、日本も9つのうち8つを批准しており、締約国は条約機関から実施状況の審査を受け、審査では政府からの報告と共に市民団体からの報告も参考にする。条約機関には個人通報制度もあり、多くの国がこれを利用できるようにしているが選択議定書に調印していない日本は個人通報制度が利用できず、最高裁の「次」を争うことができない。人権理事会にはボランティアの専門家からなる作業部会や独立報告者が権威あるものとして認知されている、と説明されました。
日本政府は憲法98条で条約順守義務を規定しているが、様々な機関・報告者から勧告を受けながら、不誠実な対応を続け、国連人権機関の「クリティカル・フレンド」としての役割を理解してこなかった等、解説しました。
今回の「ビジネスと人権」作業部会の関生支部訪問は、日本政府も「ビジネスと人権」原則の受け入れを対外的に表明する中で迅速に進んだ経緯があり、様々の努力が実を結んで実現したと思われると解説しました。

権利を行使する行動

質疑応答に入り、多くの質問が出され、熊沢誠共同代表は「産業民主主義は制度ではなく権利を行使する行動であって、その行動が免責されることで保障されているが、日本ではピケが認められず免責がなされていない」と発言しました。
最後に司会の植木事務局次長が集会後5時半からの「ガザ緊急アクション名古屋」が呼びかける「STOP イスラエルのジェノサイド」デモを紹介し、集会を準備した多くの仲間がこのデモに参加しました。(佐藤隆)

小見出しは本紙編集委員会

『カテリーナの伝えたい5つのこと』
(2023年5月 ナイデル)

11月12日、いたみホールでの「第12回さようなら原発1000人集会」で、開演すぐカテリーナさんが登場。いきなり、ウクライナ戦争の痛みを痛切に感じることになったが、ご本人は、相変らず気丈でしっかりされていた。
「母への道」「夕焼け小焼け」「母なるウクライナ」「ふるさと」と4曲めりはりがきいた素晴らしい演奏と唄だった。たが、ご本人は、相変らず気丈でしっかりされていた。
今回は、最後の歌にも、観衆の拍手しかなく、コンサートの後の「アンコール」や「ブラボー」の喝采がなく、カテリーナさんがかわいそうだった。開場開演のかわきりなので、観衆もすこし反応に窮していたのだろうか。たが、ご本人は、相変らず気丈でしっかりされていた。
前回、小生は「ブラボー!」と叫んだが、bravoは例のビキニの水爆実験への呼称でもあり、もうこれは辞めようと思っていた。
ウクライナと日本の観衆のため、ことにウクライナの戦争と窮状を伝えるために8sのバンドゥーラという伝統楽器を抱え、年間300回のステージをつとめている彼女に熱烈な応援の声が欲しかった。
ロシアでは、帝政の時代ではなく、スターリンの時代に、ヴァンドゥーラの優れた演奏家をコンサートに招待すると称して、全員殺害した歴史がある。これは、一種の文化伝統継承家に対するジェノサイドだった。そして、限られた文化人、芸術家ではなく、ウクライナにロシアは全土攻撃を仕掛けている。
チェルノブイリ大事故の時は、一家そろって、事故現場から2・5qのところから、荷物を持つこともゆるされず、退避命令が出て、未だに、家郷へは帰れない。そして、今度は戦乱である。お母様を日本に引き取るにも、結構なご苦労があったようだ。
この世界にまたとないウクライナ12世紀から伝えられている、弦楽器を紹介するのに、カテリーナさんは、日本の琵琶法師のことをお話になる。平家物語などを弾き語りした目の不自由な演奏家だったが、ウクライナにもそういう方が、いたそうなのだ。
2022年2月からともいわれるロシアの侵攻は、いまもやむことがない。カテリーナさんは、この本の中で、ロシアとウクライナは、はっきり違う国と述べ、戦争はクリミヤのロシア化に始まっているとも、述べている。印欧語族の起源は、ウクライナに近く、キーウ公国は、モスクワ公国より前からあった。日本と同じような、起源の隠蔽をプーチン大統領はしていると思われる。
ついに「ふるさと」は、ウクライナのみならず日本ともなったが、ウクライナにいず、一見幸福に暮らす、サバイバーズ・ギルト、ヤスパースの言う形而上的苦痛についても、さりげなく語っている。
華麗なる芸能人の苦悩とそれへの闘いは、なにかしら、偉大な何かを感じさせている。(くま)

8面

パレスチナ人民の闘い(下)津田保夫
中東支配のくさび=シオニズム

インティファーダ(民衆蜂起)のたたかい

1987年12月8日、ガザで交通事故が起きた。パレスチナ人労働者を乗せた車がイスラエル軍の大型トラックと衝突し、パレスチナ人4人が死亡、7人が重傷をおった。この夜、1万人のパレスチナ人が労働者の葬儀に集まった。
なぜ、われわれは占領軍の横暴に我慢しなければならないのか。ついに、占領軍にたいする怒りが爆発した。若者たちは古タイヤを燃やし、禁じられているパレスチナの4色旗をかかげて、実力デモをおこなった。占領軍のトラックや警察署、イスラエル系の銀行に火炎瓶を投げた。これがきっかけになって、広範な闘いが展開されていく。闘いは収束することなく、ヨルダン川西岸地区にもひろがっていった。その要求は個別政策への抗議にとどまらず、「占領状態をなくせ」「占領軍は撤退せよ」というものであった。
インティファーダ統合司令部は地下指導部で形成されていた。助け合い組織である「人民委員会」がパレスチナ各地に張りめぐらされており、これが直接に闘争を指導した。パレスチナの地から追われたパレスチナ人、イスラエル国内に住むパレスチナ人(「48年アラブ人」)、占領地に住むパレスチナ人が一体になってたたかった。高校生や中学生があらたな闘いの隊列に参加した。この闘いはパレスチナ人の根底的な決起であった。このパレスチナ人民の自己解放闘争は、現在まで繰り返し・繰り返し闘われている。

「アルアクサ洪水作戦」の背景

昨年12月、極右勢力と手を組むかたちで、ネタニヤフ政権が発足した。ネタニヤフは司法改革をおこなおうとしたが、イスラエル国内ではげしい抗議行動がおきている。この右翼政権は、パレスチナ全土をイスラエルの領土にしようとしている。スモトリッチ財務大臣は「パレスチナ人など存在しない。パレスチナの言語、通貨、歴史や文化もない」と述べている。国内危機を打開するためにも、攻撃的に突破する以外になくなっていた。
こういう情勢のなかで、10月7日に「アルアクサ洪水作戦」がたたかわれた。広範なパレスチナ解放勢力がこの作戦に参加している。これはハマスだけの闘いではなく、全パレスチナ人民による自己解放闘争だ。
パレスチナ人民のたたかいによって、「オスロ合意」はすでに破綻している。パレスチナ人民の要求は「2国家共存」ではない。「占領状態をなくすこと」は、国連の「パレスチナ分割決議」を無効にすること、すなわちイスラエルの国家としての解体以外にはありえない。イスラエル革命という観点でみれば、これは可能なのだ。

日本人民の闘い

世界の国々の思惑によってパレスチナが3分割された。ここで、アラブの意思はまったく無視された。パレスチナ問題の原点はここにある。今日、ハマスの攻撃、イスラエルの攻撃について、世界の国々がいろいろコメントを出している。それは真にパレスチナ人民の立場に立って発言しているのではなく、自国の利害から発言している。
岸田政権はパレスチナ人の闘いを支援することなく、「バランス外交」と称して、自国の利益のみを追求している。これは石油を失いたくないからだ。大資本家はイスラエル産業と密接に結びついている。
第1次世界大戦後、サン・レモ会議(1920年4月)が開かれた。これは主要戦勝国による領土分割会議だ。日本はこれに参加し、中東の勢力圏分割に加担している。日本は、ドイツ領であった南太平洋の島々を委任統治の形で植民地にした。この歴史からも、日本人民はパレスチナ問題と無関係ではない。
われわれはパレスチナ人民とともにたたかうことだ。日本政府は中東に深くかかわっている。この権益を確保するために、政府は周辺事態法をつくり、戦争をかまえている。日本人民はこの政府を打倒すること、これが最大の共闘なのだ。(おわり)

本の紹介
『天井のない牢獄 ガザの声を聴け!』
清田明宏(集英社新書)

著者は、医師として国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に勤務している。医療現場で、ガザ市民と日常的に接している。本書は2017年から18年にかけて書かれたもので、ガザ市民の声を紹介している。また、ドキュメンタリー映画『ガザ/素顔の日常』(監督:ガリー・キーン、アンドリュー・マコーネル)は、本書と同じころに撮影されており、ガザ市民の日常を知るうえで貴重な映像だ。

ガザの日常

1993年「オスロ合意」が成立した。その内容は「イスラエルがパレスチナ解放機構(PLO)をパレスチナ自治政府として認め、PLOもイスラエルを国家として認める」というもの。このオスロ合意によって、ガザの封鎖がおこなわれ、ガザの戦争状態が日常的に繰り返されている。
2007年、ガザの自治政府をハマスが握った。これ以降、ガザはイスラエルによって経済封鎖されている。2008年12月から2009年1月にかけて、イスラエルはガザをはげしく爆撃した。ガザは日常的にイスラエルの爆撃を受けている。ガザを知るうえで、これらの事実を押さえておく必要がある。
ガザの陸路は完全に封鎖されている。ガザで唯一の空港は破壊されたままだ。ガザは地中海に面しているが、海洋封鎖をされている。イチゴが主要輸出産業であったが、経済封鎖によって輸出できなくなった。漁業は5qまでしか操業できないので、沿岸漁業も成り立たなくなっている。漁師は漁業をあきらめている。
ガザには発電所がひとつあるが、燃料不足によって停電することが多い。1日に3〜4時間しか電気がこない。上下水道も破壊されており、衛生状態がよくない。生活排水(汚染水)は海に垂れ流されている。
ガザ市民は、このような状態におかれている。こうして、ガザは「天井がない牢獄」と言われている。ガザ市民は人間の尊厳を奪われた状態で、日々の生活を余儀なくされているのだ。

ガザ市民の生活

ガザの市民は、仕事に行くときにも警察官や警備員に持ち物検査(検問)をされている。これが日常的におこなわれている。封鎖されているため、自律的な経済活動がなりたたない。働きたくても仕事がないのだ。ガザの失業率は44%であり、特に若者の失業率は60%をこえている(当時)。看護師の女性は「わたしには子どもが6人いる。大学をでた2人も職に就くことができず、家でぶらぶらしている。子どもたちは、仕事をして価値を認めてもらえる場をあたえられていない」と言っている。
ガザでは、糖尿病や肥満など、生活習慣病が蔓延している。野菜や肉類の値段が高くて手に入らないため、安いパンを食べ過ぎるのが原因なのだ。著者は「健康問題の背景には社会問題がある」ことを指摘している。
イスラエルは放射線治療用の機器使用を禁じており、ガザやヨルダン川西岸地区では放射線治療を受けることができない。

人間としての尊厳

起業家の若い女性(アマルさん)は、次のように言っている。「わたしはガザの難民キャンプで生まれ、育った。今もキャンプにある家に住んでいる。でも、ここを故郷と思ったことはありません。今の家は仮の住まいで、避難場所なのよ」「人間としての尊厳がほしい。人間として、世界中から認めてもらいたい。そのためには、自分たちの故郷であるパレスチナの地に戻る権利を獲得することなのかもしれない。」
ガザの若者を中心にして、2018年3月から「帰還の大行進」がはじまった。これは「自分たちの土地に帰ろう」という帰還権を示威する行動だ。タイヤを燃やして、イスラエル軍に石を投げつける。分離壁に近づけばイスラエル軍が発砲してくる。このことはわかっているが、それでもイスラエル軍と闘うのだ。参加者は「そこに自分の人生を探しに行くのだ」と言っている。
腹部を銃撃された男性の親は「すでに息子の手術代に2千ドルを使い、あちこちに借金をしている状態だ。これ以上、治療させられない」と述べる。入院が必要であっても、入院するカネがない。
新聞記者の女性(ドーアさん)は「誰にも自分が生まれた場所に帰る権利があります。私たちの場合は、ナクバからすでに70年もたっています。もう、そろそろ帰る時でしょう。帰らなければいけない。大行進に参加する人たちは、みんなそういう意思を持っていると思います」と語る。

なぜガザに住み続けるのか

ガザを完全封鎖することによって、イスラエルはパレスチナ住民を追い出そうとしている。おおくの市民は「第2のナクバ(大災厄)がおきるのではないか」と不安に思っている。「ガザに希望がない」とも言っている。そうであるにもかかわらず、どうしてガザに住み続けるのか。
マジドさんは言う。「ガザを出るなんて、それは逃げるということよ。わたしは認めない。自分にできることを続けながら、ガザを良くしていく。必要なことはそれしかない。」
ガザ市民は、不安と不自由のなかで生活を余儀なくされている。しかし、多くの市民は「ここから逃げることはシオニストにたいする屈服」と考えている。ガザ市民にとって、ガザの地に住み続けることが闘いなのだ。イスラエルは、無条件でガザの封鎖を解除すべき。撤退せよ。

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