大軍拡・大増税の岸田政権打倒
大阪府知事大阪市長選先頭に統一地方選勝利へ
関生元旦闘争に460人
3・2大津地裁 勝利判決を
大阪府警本部をとり囲む組合員・支援者元旦から弾圧粉砕の気運が大きくもり上がった(1月1日、大阪市内) |
1月1日、午前10時から大阪府警本部前で「労働組合つぶしの大弾圧を許さない元旦行動」がおこなわれた。主催は、労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会。
主催者あいさつ
主催者を代表して、全港湾大阪支部の小林勝彦委員長があいさつ。小林さんは、「本当に喜べるまでおめでとうとは言わないと決意して5回目の元旦行動だ。元旦行動は、いろんな労働組合や市民団体や個人が一つの思いをもって結集できる数少ない場所になっている。そのため、昨年、反弾圧実行委員会でこの元旦行動の定例化が決まり、2023年の元旦行動は定例化した形での最初のスタートになる。いろんな仲間が集まる元旦行動だが、京都の野村貴さんや滋賀の田中徹さん、兵庫の小西純一郎さんという偉大な先輩が志半ばで亡くなった。黙とうをささげることを考えたが、彼らはまだまだ私たちと一緒に闘っていると思うので黙とうは控えることにした。ここに集まった仲間、ここに来れなかった仲間、全国の仲間がかなりいる。今年は大津地裁などさまざまな地裁で判決を迎える。どういう結果になろうとも、我々は間違ったことはしていないという思いでこれからも闘っていきたい。参加した皆さんと大きな声をあげて、『笑いながら』勝利に向けて闘っていきたい」と決意を表明した。
次いで関西生コン支部の細野直也書記長が大阪府警とその後ろにいる権力や労働組合をつぶそうとするすべての勢力に対して怒りを込めてシュプレヒコールをおこなった。
湯川委員長が報告
関生支部・湯川裕司委員長も「おめでとう」ではなく、「本年もよろしくお願いします」というあいさつで口火を切った。冒頭、弾圧はあと2年くらい続くが、今年は非常に大きな局面が来る、と指摘。湯川さん自身が被告となっているコンプライアンス活動をめぐる3月2日の大津地裁判決が今年早々に到来するからである。
警察・検察による事実無根の弾圧を「ようこんだけウソとデタラメをつくれるな」「ほんまに人間としての常識というものが一切欠落している」と弾劾した。さらに湯川さんは今の情勢について戦争へと日々進んでいることを実感するという。だからこそ「ウソも百ぺんいえば『事実』となる」ようなことは許すわけにはいかない。その一つ一つを糺して関生支部は徹底して闘っていくと語った。
支援団体からの発言
〈関西生コン労組つぶしの弾圧を許さない東海の会〉は総勢6人で結集したこと、関生は絶対つぶしてはいけないと訴えた。
〈労働組合つぶしの大弾圧を許さない! 京滋実行委員会〉は映画『ここから』の上映会をおこなったことを報告し、労働運動の躍進のために、戦争への道を突き進むこの国に対してどうやってストップをかけるのか、自分の足元を見すえなおして闘おうとアピール。
〈労働組合つぶしを許さない兵庫の会〉共同代表の全港湾神戸支部委員長があいさつし、兵庫の会を立ち上げた小西純一郎さんが昨年亡くなったことに触れ、弾圧粉砕を訴えた。
大阪全労協、なかまユニオン、関西合同労組、改憲・戦争阻止大行進、港合同が発言。関西合同労組は、3月2日に判決がある大津地裁に結集して、なんとしても無罪判決をかちとろうと訴え、23春闘をアピールした。
若狭の原発を考える会は、3月21日に関電本店前を出発して高浜原発に至るリレーデモを提起。京都の学生、Xバンドレーダー基地反対京都連絡会などが発言。
大石あきこ衆議院議員は、世界標準の労働運動をやっているのが関生支部であり、それを違法とする政府、警察、国家権力こそが最大の反社(反社会的団体)であり、都構想やカジノを「ええもんや」と言い、小学校をつぶそうとする維新こそ大阪最大の反社と弾劾。4月に予定されている統一地方選について、派遣労働者の当事者としての堀口こうすけ予定候補(大阪府吹田市)、冷凍倉庫でフォークリフトに乗って働いていた前島かずき予定候補(大阪市淀川区)、創価大卒で創価学会3世のたかはしいちろう予定候補(大阪市東淀川区)を紹介し、それぞれが思いを語った。
戸田ひさよし関生議員ネット代表は門真市議への復活の決意を熱く語り、木村真豊中市議は地域を大切にし、地域で生活できるように現場で取り組む決意を語り、大阪市城東区の山川よしやすさんも決意を語った。
法円坂55の歌とシュプレヒコールの後、港合同の仲村吉政委員長がまとめをおこなった。本日の元旦行動は460人が集まり、14万円を超えるカンパが集まったことを報告し、関生弾圧との闘いは我々の将来を決める闘いであると弾圧粉砕を訴えた。
不当弾圧を弾劾する大石あきこ衆議院議員(中央)と統一地方選予定候補者(1月1日、大阪市内) |
元旦行動に参加して
京滋実行委員会は映画『ここから』の上映会をしたと報告しているが、この映画は関生支部のあるがままの姿を知るためには大切な映画である。
この映画の監督は土屋トカチさんで、関生支部が作成したものである。この映画には等身大の関生の組合員の姿が描かれている。
湯川委員長は大津コンプライアンス事件で8年の求刑をされ、3月2日に判決を迎えるが、動ぜず確信に満ちているのは関生支部がつくってきた仲間との絆を大切にしていくあり方が激しい弾圧にも関わらず息づいて生きているからである。これこそが関生を再生していく力であり、日本の労働運動を再生する力になることを確信しているからだと強く感じた。さらに多くの仲間と闘っていきたいと思う。(米村泰輔)
2面
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総がかり行動での重要な提起
統一教会、防衛3文書、給食無償化など
一読者
〈戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会〉は、安倍の国葬に反対する闘いの後も、臨時国会の開会日の行動、毎月の19日行動や街宣行動をおこない、臨時国会終盤の11月30日には、日比谷野外音楽堂での集会とデモをおこなった。こうした中で、発言者からは、重要な提起がおこなわれてきた。それを紹介したい。
11・30日比谷集会
11月30日、同実行委員会主催による、「軍事費増やして生活壊すな! 改憲反対! カルト癒着の政治をただせ! 11・30集会」は、日比谷野音を会場に1500人が結集した。冒頭、主催者あいさつ。その後、国会議員から連帯の挨拶があり、続いてジャーナリスト・有田芳生さんによる、元統一教会と自民党政治についての問題提起が。
「岸田政権は軍事の問題、社会保障の問題のうえに、統一教会の問題で非常に苦境に陥っている。自民党政治と統一教会の問題、霊感商法、信者の人たちの過大な献金による2世3世の悩み・苦しみの解決が必要だが、それは統一教会問題の中の極極一部。統一教会は、1968年には2500丁の散弾銃を輸入し国会で問題になり、それができなくなると、1973年には、厚さ2センチの鉄板に穴を開けることができるほどの空気銃を1万5千丁輸入していた。統一協会は、経済組織をもっていて、政治にも関わり、準軍事組織をもっている。文鮮明機関の全体像を明らかにし、統一教会の問題を考えることは、戦後史の闇を暴くことにつながる」。
続いて鹿児島から、米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転、自衛隊基地整備計画に反対する会の5人の代表団が登壇し、山口代表がアピール。
馬毛島問題
「防衛省は、米軍離着陸訓練を、厚木基地・岩国基地でも騒音問題でできなくなり、今は硫黄島で暫定的におこなっている。硫黄島の250キロ圏内には誰も住んでいない。計画は陸上離発着訓練を、種子島の沖合にある馬毛島に移転するというもの。今年(2022年)1月7日の日米安全保障協議会(「2+2」)で公表。九州防衛局・熊本防衛支局は18日、環境影響評価の最終まとめとなる評価書を防衛省に送付した。防衛省は今後、防衛大臣・環境大臣の意見を聞き、修正を加えた補正評価書を作成して報告する。報告後は早ければ年内に発行する見込み。
基地建設で馬毛島海域の環境が大きく変わる。馬毛島への移転に地元住民の半数以上が反対している。西之表市の八板市長はまだ賛否を表明していないのに、防衛省は、最初から地元抜きで工事に取り掛かっている。訓練は午前10時から夜中の3時までおこなわれる。激しい騒音による健康被害が起き、島民の平穏な生活が根底から壊される馬毛島を、米軍の陸上訓練場として提供することは絶対に容認できない。12月1日、防衛省ヒヤリングをおこない、白紙撤回を要求する。岸田政権は、中国や朝鮮民主主義人民共和国の軍備拡大が、東アジアの緊張を煽っているとして、軍事費GDP比2%確保をめざし、すでに増税を考え、大軍拡をしようとしている。馬毛島基地建設は、有事の際の兵站基地や補給基地として作られようとしている。地元・鹿児島だけの問題ではない」。
学校給食を無償に
最後に、学校給食無償化の運動を進めている女性からの発言が。
「子どもたちの食事は、コロナ禍の下、貧困格差の拡大や、保護者の長時間労働、物価高騰もあり、危機にさらされている。揚げ物をする油の値段が2倍になり、回数減少が余儀なくされている。給食はただ食べるものではなく、調理員が作った栄養バランスがあり安全な食べ物を食べる教育の一環。義務教育は憲法26条で保障されている。教科書が無償であるように、学校給食も無償であってほしい。子どもの給食費は親が払うのが当然という声もあるが、それは日本の伝統的な家で子どもの食事を十分に用意できないのは母親のせい、という呪いに私たちは長く苦しんできた。命の元となる給食に真っ先に予算を使うのは当然のことだ。小・中の子どもが2人いると、給食費は年間10万円を超す。給食費は国の責任で無償にと文科省に訴えたが、無償化には4400億円かかると言う。こども家庭庁に行くと文科省と言う。省庁間の縦割りをなくし、一元化はなんだったのか。一方で防衛予算は倍増。声を上げ続け行動することが必要だ」。
その後請願デモをおこない、国会議員と共に闘う思いを確認した
12月の「19日行動」
12月の19日行動には、国会議員会館前に、1100人が結集した。16日の「防衛関連3文書」の閣議決定に、危機感を持っての結集だった。国会議員発言の後、韓国の民族問題研究所・植民地地域史博物館・対外協力室長=キム・ヨンファン氏からのメッセージが読み上げられた。
「東アジアの平和のために、闘う日本のみなさん。韓国から、熱い連帯の挨拶をお届けします。わたしたち韓国の市民は、東アジアの平和を深刻に脅かす岸田政権の安保関連3文書の閣議決定を強く糾弾します。東アジアの軍事活動を煽る岸田政権の軍拡政策は、この地域に住むすべての人々の平和と安全を深刻に脅かすものです。防衛と反撃能力という名で飾られた軍事力は、けっして平和を守ってくれないことは、植民地支配と侵略戦争で染まった東アジアの歴史が証明しています。数多くの人々の犠牲によって生まれた平和憲法が守られてこそ、日本の平和、朝鮮半島の平和も実現できると思います。朝鮮戦争の停戦70年を迎える今、あの戦争を終わらせ、東アジアに真の平和を実現するために、わたしたち市民が手を取り合わねばなりません。東アジア平和連帯の道で、これからも力強く闘っていけば必ず平和が勝ちます」。
沖縄からの訴え
沖縄からは、電話で山城博治さんが発言した。「防衛3文書の閣議決定を断じて許さず、そのような暴挙によって、戦場にされることを許さない。中国敵視を鮮明にし、その中国に先制攻撃をも辞さない恐るべき攻撃能力保有だ。沖縄には、自衛隊の師団格上げによって、これまでの兵員を8千人・9千人と倍増するだけでなく、嘉手納基地やキャンプシュワブの米軍弾薬庫を共同使用して、大量の武器弾薬を持ち込むことを宣言している。ミサイルの射程を千キロから1500キロに延長し、直接、中国・朝鮮の中枢をも攻撃することを可能とする体制に入ると明言している。
他方で、米軍の対中戦略の骨子となる遠征・前進基地作戦を支援するため、県内各離島の空港、港湾を整備し、有事に備えると言っています。恐るべき大軍拡であり、わたしたちの島々の要塞化だ。第二次大戦中の沖縄守備隊第32軍を彷彿とさせます。政府は、南西諸島を戦場にして、対中国政府に構えるつもりなのでしょう。政府の発意発動によって、再び沖縄が戦場になることを、わたしたちは許さない。そのために奮闘し、政府と対峙していきたい。このように敵の中枢を攻撃すると宣言した以上、日本の東京をはじめ、大都市圏が攻撃の対象とされることを認識しないといけない。無謀な岸田内閣の暴走、軍拡の道を止めて、人々のいのちと暮らしを守ってまいりましょう」。
ミャンマーから
在日ビルマ市民労働組合のミンスイ会長からは、次のような発言がおこなわれた。
「ビルマで、日本政府が支えている国軍が市民への攻撃を続けて、今日の時点で、犠牲者が2700人ぐらいになっています。なぜ、ミャンマー国軍がやっていることを、日本政府は、いまだに止めないのでしょうか。その代わりに、軍事力を拡大する、その狙いはなんでしょうか。
わたしたちは、戦争は絶対にいらないです。ミャンマーでも、日本でも、世界中でも、戦争反対です。日本人でも、外国人でも、命は一つです。戦争のシミュレーションだけやって、平和のシミュレーションは、なんでやらないのですか。軍備を拡大するために、国民に十分な説明をしないで、自分たちで勝手に決めるということは、民主主義じゃない、それは独裁者の道です。皆さんと共に、外国人でも、平和をめざして、一緒に闘いたいと思います」。
国会議員会館前行動
安保3文書反対・軍拡やめろ
12・19
12月19日の夜、国会前で「『安保関連3文書』反対! 軍拡やめろ! 改憲発議反対!辺野古新基地建設中止! 統一協会癒着徹底追及! いのちと暮らしを守れ! 12・19国会議員会館前行動」がおこなわれ、1100人が集まった(写真上)。主催は、〈戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会〉、〈9条改憲NO! 全国市民アクション〉。
立憲民主党の近藤昭一衆院議員、社会民主党の福島瑞穂参院議員、日本共産党の山添拓参院議員が口々に、16日に岸田内閣が閣議決定した安保3文書を弾劾した。
〈沖縄の風〉伊波洋一参院議員はメッセージを寄せ、「沖縄のミサイル基地は自衛隊に米の代理戦争をさせるものだ」と批判した。
菱山南帆子さんが新年1月8日14時からの総がかり行動実行委員会青年PTによる新宿駅東南口の新春街頭宣伝、12日18時からの総がかり行動の同じく東南口での署名街頭宣伝、19日18時半からの総がかり行動=国会前行動への参加を訴えた。
3面
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決戦の三里塚へ! 年内強制執行阻止(上)
市東さんの農地を守る沖縄の会・事務局長 金治明
2022年11月1日、三里塚芝山連合空港反対同盟は「NAAの強制執行申し立て・市東さんの農地強奪を許すな! 農地取り上げ強制執行実力阻止へ! みなさんの総決起を訴えます」と全国の三里塚勢力に緊急アピールを発しました。
1月8日団結旗びらきがおこなわれた(反対同盟ブログより) |
東京高裁は10月18日、新やぐら裁判控訴審判決での仮執行宣言(判決確定前に執行できる)に対する反対同盟の強制執行停止申し立てを却下しました。
NAAは間髪を入れずに同日、千葉地裁に対して「建物等収去命令」を申し立てました。(翌19日にはマスコミ各社を集め、成田空港機能強化のB滑走路北延伸準備工事の着工を発表)〜私たち反対同盟は、戦争に動員されて傷ついた苦しみ、侵略戦争に加担された苦痛の反省を踏まえ、闘いの当初から「成田軍事空港絶対反対」を掲げ闘って来ました。「国民を飢えさせず、戦争を二度とやらない」と誓ったはずの日本政府は今、「他国の脅威」をあおって軍事費2倍化、大軍拡、改憲・戦争への道をひたすら走っています。市東さんの農地を守りぬき、成田軍事空港建設を粉砕しましょう。
農地は私の命です。「安全でおいしい野菜を作るためにこの土を守る」「三里塚、福島、沖縄を一つの闘いとして体の続く限り農地を耕して闘う」と宣言する市東さんと共に、私たち反対同盟56年の闘いの歴史全てをかけた決戦に必ず勝利する決意です。(略)
反対同盟の提起に応える
私たち〈市東さんの農地を守る沖縄の会〉は反対同盟と、魂を揺さぶる市東孝雄さんの呼びかけに応える為に急遽、共同代表の安次富浩(ヘリ基地反対協顧問)、知花昌一(僧侶)、金城実(靖国合祀取り消し原告団長、彫刻家)、沖縄の会員、川野純治(名護市議)、知花盛康(はるさー)氏等に、反対同盟、決戦本部ニュースと緊急アピールと強制執行反対緊急署名用紙を送り、コロナ禍で事務局会議が開けなくとも電話で意思疎通をはかり、三里塚現地に事務局長・金治明を12月19日〜29日の10日間派遣することを決めました。
三里塚反対同盟は、緊急行動として11月13日緊急現地闘争(集会とデモ)、11月27日天神峰現地闘争(集会とデモ280人)、11月28日耕作権裁判&千葉地裁包囲デモ。12月11日220人参加で芋煮会等が闘われました。
反対同盟の決戦本部は11月24日から強制執行実力阻止24時間座り込み闘争に突入し、市東さんを先頭に「来るなら来い」と闘魂を燃やし決戦態勢に入りました。
このような緊張した中でも12月4日は天神峰カフェが開かれ盛り上がりました。
私は11月25日から28日まで岩国・労働者反戦交流集会及び、国際連帯集会と岩国基地撤去闘争に参加し、市東さんの農地強制執行反対を訴え、参加者から多数の署名を頂きました。
12月14日、年内最大の辺野古海上行動をたたかいました。辺野古埋め立て工事強行5カ年糾弾にカヌー38艇、船団8隻を繰り出し、埋め立て工事の進むK8護岸付近での海上集会、及び抗議行動がハイライトでした。しかし、当日は海が大荒れで海上集会を辺野古浜に切り替え、コロナ禍で160人の参加のもとに成功裏に終了しました。そして三里塚現地の状況については、事あるごとに仲間達から知らせがありました。
4日間決戦突入
成田空港会社(NAA)は市東さんに12月26日をもって「離作保障を供託する」と最後通知をして来ました。即ち、27日からはいつでも強制執行するという脅しです。決戦本部は年末27日〜30日までを「強制執行阻止! 天神峰を守ろう! 4日間決戦」として、全身全霊で阻止闘争を宣言しました。12月23日の三里塚弁護団の会議では27日から、市東さんの農地、やぐら、家屋の強制収用は必至と結論を出しました。
決戦本部は26日から畑前道路の強制収用実力阻止やぐらから反対同盟旗、強制執行反対の旗を乱立させ、「市東さんの農地を守ろう、成田空港を軍事使用するな!」と市東さんと大木よねさんの写真入りの横断幕を設置し、座り込み用のテントを張りました。市東さんの畑入口を完全に封鎖し人垣で完全制圧して、敵権力を一歩も引き入れない態勢を構築しました。そして、午前、午後に農地死守防衛決起集会を決戦本部長の司会のもと開き、労農学の若い力の声が響き渡りました。
27日、早朝5時より多数の仲間が座り込み、一方で機動隊駐屯場ゲートを監視し、車両の出入りチェックを強化して機動隊の襲撃に備えました。そして、午後6時からは体力の消耗を避ける為に車中監視に切り替え、午後10時以降は3時間交代で朝5時までおこない、緊急事態時には笛を合図に一斉に行動を開始することになっていました。
畑付近に車、2、3台を駐車させ権力の襲撃に対応しました。朝7時に飛行機の初着陸があります。一日始めの緊張時は5〜7時の間です。権力は農地,家屋を取り囲み、封鎖するには約1キロにわたって一般車両の通行を止めるはずです。従って、この時間帯の車の流れがあるかないかがその目安になるので私たちは機動隊車両の出入りと機動隊の人数に監視をそそぎます。平凡ながら、4日間決戦はこのようにおこなわれました。
12月19日、沖縄から三里塚に向かう時は半そで半ズボンで気温は20度でした。しかし、三里塚は霜柱が立ち、歩くとサクサクと音がしました。そして、吐く息は真白、沖縄では息が白くなる経験は無く、ましてやこの20年間は氷点下の世界を知らない私にとって「大変な所」でした。権力の弾圧に負けることは無いと自負していますが、さすがにこの寒さには…
改めて自然と共に生き、農業を営む市東孝雄さんの偉大さを知ることになりました。この10日間、早朝の氷点下の寒さに耐え、眠るのも闘いでした。12月28日は4日間決戦の真っ最中でしたが、反対同盟、市東さんのはからいで、短時間ながらの「忘年会」=食事会で無農薬、三里塚野菜の手料理を食べて栄養を蓄えました。この、優しさと、仲間に対する気づかいが長い厳しい闘いを耐え抜いている三里塚闘争の精神の源だと思いました。(つづく)
沖縄の金治明さんからの投稿を(上)(下)にわけて掲載します
12月の宮古島行動に参加して
琉球弧を戦場にするな
12月10日から2泊3日の日程で6月につづき2度目の宮古島行動に参加してきました。
今回の行動は12月11日に予定されている空自のブルーインパルス展示飛行に下地島空港を使わせない抗議行動であった(写真)。下地島空港は県営でありパイロット訓練目的で作られたものだ。1971年8月、日本政府と当時の屋良琉球政府主席と交わされた「屋良覚書」において軍事使用はしないというものであった。それは50年経た今も生きている。その間、住民の粘り強い反対運動もあって宮古空港での展示飛行に追いつめた経緯であった。
宮古、石垣、与那国3島を先制攻撃基地にするな
1月13日に日米首脳会談がおこなわれる。その中で何が合意されるのか注視している。安保関連の3文書閣議決定を前後して、軍事費を5年間で43兆円に。教育、福祉予算は大幅に削られるだろう。それでも足りず大増税が日本列島で生活する在日を含めすべての人に襲いかかる。
特に糾弾しなければならないのは敵基地攻撃能力を明記していることだ。トマホーク5百発を2027年を目途に2千億円余りで購入すること。陸自第15旅団を師団に格上げして展開すること。与那国、石垣、宮古3島にミサイル基地を建設すること。宮古島、保良弾薬庫前で座り込みをしている人に聞いたところ全長18メートル直径3・5メートルのミサイルを格納するとのこと。
報道によれば、海自潜水艦の魚雷発射管にトマホークを装填することは技術的に可能だとする艦長の発言もあった。また石垣島にミサイル基地を建設するという報道もあり文字通り鹿児島、馬毛島から南西諸島までの「第一列島線」はすべて軍事基地になる。
今回宮古島に行って成果だったことは、12月10日に開かれた集会に3島の闘う団体を中心にあわせて206人が結集し、その人たちと合流し交流し、逆に闘う勇気をいただいたことだ。いざ交戦が始まったら避難する場所はまったくない。そのようなことを断じて許してはならない。
忘れてならないのは、日本が中国と戦争する理由はひとつもない。「台湾有事は日本有事だ、危機だ」と騒ぎまくり、歴史を一変する大軍拡に突き進む岸田政権を打倒し、負の連鎖を断ち切ろう。(伊藤十三)
4面
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狭山第3次再審請求闘争
キャラバンスタート集会
河内次郎
22年3月の狭山集会(大阪市内) |
12月17日、釜ヶ崎「ふるさとの家」を会場に、2022年度狭山事件の再審を求める関西キャラバンスタート集会が開催されました。「狭山事件の再審を求める釜ヶ崎住民の会・釜ヶ崎日雇い労働組合」をはじめ関西各地から狭山事件の再審を求める人々が集いました。
本田哲郎神父の開会あいさつに続いて「ひょうご夜間中学をひろげる会」の桜井克典さんの「狭山事件の再審を実現し、石川さんを夜間中学へ」の講演がおこなわれました。桜井さんは、夜間中学のない社会をめざしているが、今は必要とする人(義務教育未修了者)が全国で90万人います。文字を獲得できないことは人生を奪われることに等しい。自らの生い立ちに誇りを持ち、自己実現できる生き方を取り戻す、夢を抱ける学びを育むのが夜間中学。石川さんが犯人にされたのも石川さんが非識字者であったことが大きい。石川さんの近く(埼玉県川口市)にも3年前に夜間中学が開校した。狭山事件の再審を実現し、石川さんが望む夜間中学に通うことを実現してほしいと力強く訴えられました。
狭山弁護団の小野順子弁護士は、8月29日に11点の証拠・証人調べを請求したことによって狭山第3次再審請求の闘いが最後の局面に入ったことを明確にし、石川さんの無実を証明する11点について解説。脅迫状が石川さんの筆跡ではないこと(識字能力)、万年筆が被害者のものでないこと(インクが違う・発見が不自然)、スコップが死体の埋設に使ったものではない(土壌)、自白の問題をはじめ11点すべてが専門家の意見を聞くことなしに判決を出すことなど許されるものではないことを指摘。裁判所に対する民衆の大きな声を届けてほしいとのよびかけがおこなわれました。
これをうけて、狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西実行委員から2022年度の狭山キャラバンの行動提起がおこなわれ、三木、宝塚、こうべ、茨木、高槻、日本基督教部落解放センター、狭山を闘う郵便労働者などの決意と報告がありました。熊本の代表は寺尾確定判決以来、毎月23日に朝から夕刻まで500回を上回る座り込みを続けてきた。関西に続いて熊本でもキャラバンをおこなうことを宣言。全体で第三次再審請求勝利に進むことを誓いました。
11月24日にひらかれた第52回三者協議で、検察官はタオル(被害者の目隠しに使われた)について不見当(見当たらない)。スコップ関連資料も「開示の必要なし」と証拠隠しの姿勢をつづけています。大野裁判長も開示の勧告をするだけで開示命令にまで踏み込もうとはしていません。
9月からスタートした再審を求める署名の年内20万筆達成を受けた早智子さんの「来年三月まで署名活動は続きます。裁判所を包囲する闘いを!」「後ひと踏ん張り。お力をお貸しください」という訴えに応えよう。
「涙涙も苦難乗り越え六十年 我が世の春ぞ芽吹け再審」(「冤罪 狭山事件」より)
石川一雄さんの新年メッセージ
今年は私が不当逮捕され、冤罪に陥れられて60年であり、ウソの「自白」を強要され、騙されたというものの、このように長期間に及んでも未だ解決の目途もたてられず、自責の念に駆られ、同時に自分を励まし、今年こそ、冤罪を晴らすとの一念で、元気に2023年の第一歩を踏み出しました。
特に昨年、弁護団は、冤罪の真相を究明し、再審開始・無罪判決をめざして11人の鑑定人の証人尋問と、万年筆インクの鑑定の実施を強く求める事実取調請求書を裁判所に提出したこともあって、第3次再審も大詰めの闘いと心に留め新年を迎えた次第であります。
裁判所が、弁護団の求めに真摯に対応し、鑑定人尋問とインク鑑定を実施すれば、立ちどころに真実が解明されることでありましょう。真実は一つであり、裁判所が如何に真相究明に向き合い、公明正大に狭山事件を取り上げて頂けるか否かであり、偏見を持つことなく実務を全うされるよう心から願っています。
裁判所に客観的事実に即して精査して頂ければ、最早、諸々の新証拠に因って私の冤罪性は動かし難いものとなっています。裁判所には速やかに鑑定人尋問を行って頂けるものと確信しております。 一方、昨年を振り返って、一番うれしく、心に残ったことは、短期間で、目標の10万人以上の署名を集めて頂いた事でありました。組織、支援者皆様方に奔走して頂いた御蔭でありました。一次署名集約日である10月26日、連れ合いは眠れなかったようで、遅い時間に部落解放同盟中央本部に電話をかけて確認したようです。その時「10万筆を超えた」との返事を頂き、二人で感激し、涙とともに、感謝の気持ちで一杯でした。多くの皆様に、ご支援・ご協力を頂きましたが、あの夜の感激はひとしおでした。ほんとうにありがとうございました。
1月下旬には第53回目の三者協議が開かれ、2月末までには、検察から鑑定人尋問等についての意見書も出されてきます。引き続き署名活動に取り組んでいただきたく、心よりお願いいたします。
今年も何かとご協力を賜らなければなりませんが、本年こそ再審開始が実現し、私、石川一雄の冤罪が晴れるよう、可能な限りご協力を賜りたく切にお願い申し上げます。
末尾になりましたが、皆様にとって最良の年になりますようご祈念申し上げて年頭に当たってのご挨拶といたします。
沈黙の司法に突き付け科学が証 無駄な抵抗 検察機構
2023年1月 石川一雄 全国の狭山支援者各位
水平社創立の思想を学ぶ
駒井忠之(水平社博物館・館長)さんが講演
2022年11月14日 大阪
1922年3月3日、全国水平社が結成された。昨年は、その百周年だった。11月14日、第47回世直し研究会において、駒井忠之さん(水平社博物館・館長)が、「人の世に熱と光を―水平社創立の思想に学ぶ―」というテーマで講演した。
行政は「差別をしてはいけない」という。しかし、倫理的な掛け声だけで、差別はなくならない。なぜ差別がつくられ、なぜ差別をしてはいけないのか。この構造の解明と、解放にむけた思想的な内容を理解することが重要なのだ。駒井さんは「そのヒントが水平社宣言のなかにある」と述べる。
全国水平社は、突然ではなく、歴史の連続性のなかで生まれた。1912年に全国組織として大和同志会が結成され、部落民は自主的部落改善(融和)運動をおこなってきた。しかし、全国水平社の創立は、従来とはまったく違った思想的内容をもっていた。
綱領・宣言・則・決議は一体
駒井さんは、「水平社の宣言が有名だが、綱領・宣言・則・決議は一体であり、ひとつのものとして理解するべきだ」と言う。綱領には、つぎのように記されている。
一、特殊部落民は部落民自身の行動によつて絶対の解放を期す
一、吾々特殊部落民は絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以て獲得を期す
一、吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向つて突進す
駒井さんは「ここで主語の違いに注意するべきだ」とコメントする。1・2番目は「特殊部落民」が主語であり、3番目は「吾等」が主語になっている。「吾等」は、すべての人にむかって発せられている。水平社宣言においても、「吾々」と「吾等」はこのように使い分けられているのだ。
ここで、「人類最高の完成に向かって」とは何を意味しているのだろうか。それは差別のない・戦争をしない世のなかを作りあげることであり、共産主義社会ではないか。
部落民自身による行動の重要性
水平社宣言のなかに、「人間を勦るかの如き運動」とある。ここで「勦る」とは、「殺す、滅ぼす、かすめる、奪い取る」というような意味だ。今まではこのような運動であった。だから、これからは「吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集団運動を起こせる」といっている。駒井さんは、「差別をなくす運動をするうえで、この文章がポイントだ」。「吾等」とあるから、すべての人にむかって発せられているのだ。
これが「吾々がエタである事を誇り得る時が来た」とつづいていく。ここでは部落民アイデンティティが積極的に肯定され、部落民自身による自己解放の重要性が高らかに叫ばれている。この手段として、全国水平社による徹底糾弾闘争があった。
人の世に熱あれ、人間に光あれ
では、宣言の末尾の言葉、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」をどのように理解したらよいのだろうか。駒井さんは「個人それぞれで解釈することが重要だ。英語訳では熱はheat、光はlightだがわたしは違和感をもっている。むしろwarmth(「好意的な、誰かを心地よくし・くつろがせる」)がよいのではないか」。
水平社宣言は被差別部落民による人権宣言であるとともに、社会を変える、新しい世の中をつくる革命宣言でもあった。そのために、差別する側(社会)を変えることが必要なのだ。全国水平社に集まる人たちは、当時の共産党にも接近していった。部落解放と革命の問題は、深くつながっている。今日、このテーマで語られることは少なくなったが、駒井さんの講演を聞いて、あらためてこのことを再確認した。
なお、水平社博物館は奈良県御所市柏原の地に建てられている。運動体が主体的に運営し、行政から独立している。(津田和夫)
5面
投稿
カリフォルニア大学ストライキ
アカデミック労働者ストのインパクト
カリフォルニア大学労組出身 愛知連帯ユニオン ジョセフ・エサティエ
2022年のカリフォルニアでは、高インフレ、高住宅費、高医療費、高学生ローンの問題があった。(日本とは異なり、米国には国民皆健康保険制度がない)。2020年以降、多くの労働者がSARS―CoV―2に感染することを心配していた。大学内では大学院生が対面式の授業を担当することが多く、また、大学院生がそうした対面式の仕事を危険な労働条件と考えても、研究室での仕事を依頼されることがあった。そのような対面式の作業は危険な労働条件であると考えられていた。
労働教育研究部長であるコーネル大学のケイト・ブロンフェンブレナー氏によると、米国の大学院生を労働組合の組織化に駆り立てたのは、パンデミックの間、危険で健康に悪いと感じる仕事に対して低い賃金が支払われていたからであるという。「労働者は我慢して働いているが、死ぬために働いているわけではない」と。つまり、「学生に対面授業で教えるのは危険だ」という認識が、彼らの正義への情熱を強めたのである。幸いなことに、アメリカの大学で教える大学院生たちが、労働条件の改善や労働に対する報酬の増額を求めてきたこともあり、最近のアメリカでは労働組合に対する世論は肯定的である。2021年のギャラップ世論調査によると、18歳から34歳までの若者の77%が、労働組合は重要で価値があると信じている。そして、これらの若年層は、様々な年齢層の中で最も労働組合に対して肯定的な態度を示している。
2022年、アカデミック労働者は様々な労働運動に取り組んだ。例えば、コロンビア大学のアカデミック労働者は10週間のストライキをおこない、マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院生が労働組合を立ち上げた。コロンビア大学やMITでこれらの労働運動が始まった直後、プリンストン大学は大学院生の「奨学金」(stipend)を25%増額した。
このように他大学の労使関係に大きな変化が生じた後、「2022年カリフォルニア大学アカデミック労働者ストライキ」が発生した。ストライキは11月14日に始まり、12月23日に終了した。記録的な高インフレと州全体の住宅危機の中で、アカデミック労働者たちは生活賃金、持続可能な交通費、雇用保障、子を持つ研究者や外国人研究者への支援強化を要求していた。
彼らは成功し何を手に入れたかというと、@いじめや嫌がらせに対する画期的な保護、A育児に対する財政支援、一部の労働者の扶養家族に対する医療(特に健康保険)、そしてBほとんどの組合員に対する大幅な賃金の向上である。2024年10月までに、「UAW2865」という 組合の労働者の9カ月のパートタイム労働の最低賃金(年収)が23250ドルから34000ドルへ引き上げられる。2024年10月までに、「SRU―UAW」という組合員である大学院研究者のパートタイム労働9カ月分の最低賃金は、34564・50ドルになる。そして、UAW5810のポスドク研究員や学術研究者の最低賃金は7万ドルに引き上げられる。
これは大きな勝利であるが、特に雇用の安定や外国人研究者への支援強化の面では、大学側はアカデミック労働者の要求に応じなかった。彼らが望んでいたのを全て勝ち取ったわけではないといえる。
彼らがカリフォルニア大学以外で他の大学の労働者に与える影響は、おそらく大きい。他大学の労働者たちは、自分の大学で労働条件や賃金の改善を要求する際に、より良い、より強い立場に立つことができるだろう。
カリフォルニア大学でのストライキは、すでに他の大学院生労働者が立ち上がるきっかけとなった。企業を守る弁護士であるメリッサ・アトキンス氏は、カリフォルニア大学は大きな大学であり、アカデミック労働者はストライキを通じて、生活できる賃金と手当を得たので、他の大学の大学院生も自分の大学に生活できる賃金と同様の手当を要求するだろう、と説明している。
これは、南カリフォルニア大学(USC)ですでに起こっていることである。南カリフォルニア大学は、ロサンゼルスにある私立大学で、スポーツや学問などの分野でUCLAとライバル関係にある。カリフォルニア大学のストライキを聞いて触発された南カリフォルニア大学の大学院生たちは、組合結成の努力を強めている。
パサデナ市(同じロサンゼルス地区)にあるカリフォルニア工科大学では、カリフォルニア大学のストライキ後すぐに、大学院生の給与が17%引き上げられた。
ワシントン大学では、博士号取得者の最低賃金を53760ドルから65000ドルに引き上げると申し出たばかりだ。その大学の労働組合員は、カリフォルニア大学のアカデミック労働者がストライキが成功したことに注目しており、ワシントン大学は、おそらくカリフォルニア大学で起こったことを考えながら、今回の65000ドルへの引き上げを提示したのだろうと、ワシントン大学の労働組合のリーダーは述べています。
2022年の1年間に、少なくとも7つの大学の大学院生たちは全米労働関係委員会(NLRB)に組合選挙を要請した。その7校とは、南カリフォルニア大学、ノースウェスタン大学、イェール大学、ジョンズ・ホプキンス大学、シカゴ大学、ボストン大学、マサチューセッツ工科大学である。
カリフォルニア工科大学、アラスカ大学、ウェスタン大学、国立衛生研究所、シンクタンクなどの学術研究者が、現在、労働組合の設立に向けて動き出している。
つまり、科学者、学者、弁護士、発行人など、米国の将来の知識人の多くが、カリフォルニア大学のアカデミック労働者の成功を見て、労働組合の価値を学んでいるといえる。マスメディアの新聞では、Los Angeles Timesがカリフォルニア大学労働者のストライキについて比較的質の高い報道をしている。ストライキを終わりにするプラス・マイナスについてのインタビュアーの録音がhttps://kboo.fm/media/113492-uc-academics-strikeにありますが、これを聴くことによって、多くの学生がストライキ終結に反対した理由の優れた説明を聴くことができる。(2023年1月8日)
ストライキの現段階とその意義
12月20日
カリフォルニア大学当局とアカデミック労働者は、12月16日、労働協約に達したと暫定的に発表しました。しかし、組合員の中でまだ意見の一致に至っていない状態だそうです。その理由は大学から提示された内容は不平等であり、社会的弱者らの要求は無視されているからです。
アカデミック労働者には、ティーチングアシスタント(TA)、研究者、チューターなどさまざまなタイプが含まれています。彼らの多くは安い給料で、高級取りの教授と同様に授業を担当し、試験の監督や採点、成績評価までおこなっています。
カリフォルニア大学は、30万人の学生が在籍する大規模な公立(州営)の名門大学であり、UCLAやバークレー校など、カリフォルニア州の各地に10のキャンパスから成り立つ大学です。この全米でも有数なカリフォルニア大学での今回の激しい労働争議は、労働条件の改善を強く要求した4万8千人の職員が1カ月以上のストライキを継続した歴史的な偉業と言っても過言ではありません。
UAW(全米自動車労組)は、もともと自動車産業で働く労働者の組合ですが、今回のカリフォルニア大学でのストライキに共感し、経済的正義という共通の目的のために、彼らを支援しました。工場労働者と大学研究者という2つのグループは、主に労働者階級と中流階級という別の階層に属し、アメリカの歴史的にもこれらの異なる階層の人々が共に行動するという事はあまりないことです。
大学当局から提示された協約をアカデミック労働者側はまだ同意していませんが、この協約が締結されれば、大学労働者の受け取る報酬は大幅に改善される見込みです。
最も低所得の教職員の年収は約2万3千ドルから、今後2年半の間に55%の賃上げ、物価高騰の激しいロサンゼルスやサンフランシスコ地域のキャンパスで学び働く一部の労働者もさらに多くの給与と健康保険、育児手当なども大幅に増額されることになります。
アメリカでは過去50年間に労働組合に所属する組合員は大幅に減少し、現在では、労働者の10%程度に過ぎません。しかし、アメリカ人の労働組合に対する意識は、近年変わってきています。今年2022年、労働組合に関する世論調査の結果を見ると、多くの人が組合の価値を信じ、労働者には組合に加入する権利があるという意見を持ち、約70%のアメリカ人が組合に対して肯定的な態度を示しています。1965年以降、今年2022年ほど人々が労働組合の価値を再認識し、また組合活動に意義を見出した時はないと言えます。(2022年12月20日)
[注] 日本の大学院生との違い
アメリカの大学院生の中には学生として授業に参加するだけではなく、教授の見習いとして授業をし、試験の監督や採点もします。私の時代(1990年代)のアカデミック労働者は殆どこのような教授と同等の仕事をこなす大学院生、ティーチングアシスタント(TA)でした。
TAという言葉は、最近日本の大学でも使われていますが、私の時代はまだアメリカでも「労働者」という定義には含まれず、「実習生」と位置づけられており、大学院生が授業を受け持つことは、「教育」や「トレーニング」の一貫として、安い賃金で教授と同等の仕事を任されていました。裕福な親を持つ学生が豊かな生活をしている一方、労働者階級出身の白人や、黒人、女性、障害を持つ学生らは奨学金とTAの安い賃金では生活が成り立たず、経済的に困っている人が多かった。
6面
ジェンダーの視点から安倍政治を斬る E
「歴史戦」=歴史改ざん主義の先導者・安倍
石川由子
「歴史戦」の最前線差別主義者杉田水脈
杉田水脈への批判を福島瑞穂や塩村あやかなどが国会で舌鋒鋭く繰り広げていたが、一つ決定的に大事なことが抜けている。それは日本軍「慰安婦」問題だ。安倍にとっての杉田水脈の存在価値は、「慰安婦」問題に対して女性でありながら国連にまで押しかけて否定できることにある。核心は「慰安婦」問題なのだ。国会で杉田の擁護に終始した岸田にもそれは継承されている。杉田水脈の講演会はいつも「歴史戦の最前線」と題するものらしい。この歴史戦とは何なのか。
「歴史戦」とは何か
「歴史戦」とは産経新聞が言い始めた言葉で、右派による歴史の改ざん運動のことである。
産経新聞は2014年から連載を始めた。彼らの主張は「中国、韓国、および『朝日新聞』が日本を貶めるために歴史問題で日本を叩こうとしている。その核心は『慰安婦問題』だ。日本においては基本的に世論を誘導することに成功した。しかし、世界においては日本は負け続けている。主戦場はアメリカと国連である」ということだ。(『海を渡る「慰安婦」問題』(著・山口智美他 岩波書店 2016年)
彼らは当初南京大虐殺事件の否定をくわだてたが、事実を示す証拠が多い上、アメリカにおいて、戦後世代の中国系アメリカ人による南京大虐殺・レイプ事件を告発する本がベストセラーとなり、彼らにとって不利な条件がそろってしまった。そのため方向を変え「慰安婦」問題の否定に焦点を絞ったのである。
「歴史戦」の経過
金学順さんが自らの日本軍「慰安婦」被害を告発し提訴したのは1991年である。その時日本の右派はとっさの反撃に出ることができなかった。内容の衝撃力と、おそらくは被害者は永遠に名乗り出ることはないとタカをくくっていたのだろう。またその後も新たに多くの被害者が顔を出して名乗り出るなど想像もできなかったのではないだろうか。
ハルモニたちのたたかいは燎原の火のように広がりアジアの被害者たち、ヨーロッパの被害者たちの告発も相次いだ。日本においては1993年の河野談話を引き出した。また国連をも動かし1996年クマラスワミ報告が出たのである。このような状況に危機感を持った右派が〈新しい歴史教科書をつくる会〉を結成し反撃に出た。これが「歴史戦」の前哨戦である。安倍は議員になった当初1993年から日本軍の性暴力否定、歴史改ざんに異常な執着を示し、1997年、故中川昭一らと〈日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会〉を結成した。彼らの勉強会の講師は「つくる会」の藤岡信勝、高橋史朗、「現代コリア」西岡力など右派の有名人である。関心事は歴史教科書、「慰安婦」、南京事件であった。同年、日本会議も設立された。
公共放送に公然と介入
2000年、日本において女性国際戦犯法廷が開かれた。模擬裁判ではあるが判事、検事らはみな正式な資格を持つ人々が各国から集まり、旧日本軍の性暴力について「日本国と天皇有罪」を判決した画期的なものだった。この様子をNHKが三日間連続で放映したのであるが、安倍らはこの放映中に内容を右派的なものに変えさせるという暴挙に出た。安倍のマスコミ攻撃の開始であった。
諸外国への介入
2013年、アメリカのグレンデール市での平和の少女像設置に関し、日本の右派や在米日本人が反対運動を起こし訴訟にまで発展した。また日本外務省はアメリカの教科書の「慰安婦」記述の訂正を要求し、諸外国から猛烈な反発を食らった。自国=日本の侵略戦争を反省せず、女性の人権を踏みにじる態度は世界の怒りをかったのである。また国連にも押しかけるようになりひんしゅくをかった。
映画『主戦場』は、右派が主戦場と定めたアメリカで仕掛けられたこの頃の「歴史戦」の姿を日系アメリカ人が監督したドキュメンタリーである。在米保守の主張は「少女像の設置により日系アメリカ人や在米日本人の子どもへのいじめが激化している」という内容だ。
杉田水脈はわざわざアメリカにまで行き、学校や警察などへのいじめ調査・電話相談・公開相談会などを大々的に開いたが、ただの一件も発見できなかった。そのような事実は全くなくウソだったのだ。杉田はそれでも日本の国会において「日本の子どもがいじめられている」と国会で発言した。
「アメリカ人が日本人をいじめている」というウソはアメリカ人への侮辱でもあった。そんなことすら彼らは思い至らなかった。そういえば夫婦別姓への反対理由の第一は「夫婦別姓だと子どもがいじめられる」という右派の自分の心象風景を反映するものだ。(つづく)
マイナンバー制度は廃止
個人情報を国家が一括管理
河野太郎デジタル大臣は、昨年10月13日、現在の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバー(個人番号)カードに統一すると発表した。マイナンバーカードの取得は任意であり、事実上の義務化は違法だ。日本医師会や全国保険医団体連合会、日本弁護士連合会などが抗議声明を出し、反対署名は18万9千筆と反対の声が圧倒的だ。マイナンバーカードの普及に2兆円以上もかけて利益誘導しても、マイナンバーカードの交付率は22年12月末時点で64・8%。誰もが「必要性はなく、危険性を感じている」からだ。
マイナンバー制度は、あらゆる個人情報の国家による一元管理であり、日本を監視国家にするものだ。岸田政権の大軍拡・増税策のもとで、戦時の徴兵や徴用、徴税の強化、社会保障費や医療費の削減、思想・人権弾圧などに使われる。
岸田政権は、今通常国会にマイナンバー法改悪案を提出し、公金受取り口座の紐付やマイナンバーの利用拡大を狙っている。しかしマイナンバーの利用は、マイナンバー法9条「別表第1」で規定する事務に限定されている。規定外の事務を新たに加えるにはその都度法改正が必要だが、これを骨抜きにし、規定された事務に「準ずる事務」であれば法改正なしでもできるようにする。さらに「社会保障・税・災害対策」3分野以外にマイナンバーの利用を拡大し、「国家資格」「自動車登録」「在留外国人の行政手続き」などもマイナンバーを利用できるようにする。国家資格は、保育士、行政書士、教員など多数。これらを昨年11月29日デジタル庁の有識者会議「ワーキンググループ」で方針化した。規制を外して、際限なく個人情報を掌握しようとしている。
マイナ保険証義務化・法改悪を阻止し、プライバシー侵害合法化のマイナンバー制度は廃止しよう。
マイナンバーで個人情報の名寄せ
2013年5月安倍政権(当時)は、マイナンバー関連4法案を、わずか2カ月の審議で可決・成立させた。在留外国人を含む、日本国内に住民票を置いている全ての人に、生涯不変の「背番号」となる12桁の番号がつけられた。これによって、それまで各行政機関に別々に記録されていた各人の個人情報を名寄せし、プロファイリング(その人物像を仮想的に作り出すこと)が可能になった。
所得税、住民税、年金、健康保険、雇用保険、預貯金口座(任意だが義務化へ)、特定健診(メタボ健診)や予防接種の履歴、32の国家資格(医師、歯科医師、薬剤師…税理士)などをマイナンバーに紐付け、戸籍の紐付けも始まる。24年秋健康保険証、25年運転免許証(前倒し検討)、教員免許、お薬手帳などもマイナンバーカードに一体化し、マイナンバーカードを「万能の身分証明書」にする計画である。
マイナンバーカードの交付申請をすると、地方公共団体情報システム機構(J―LIS、総務省傘下の行政機関)に、顔写真がマイナンバーと紐付けられ記録される。国は顔写真まで入手する。この個人情報と顔写真データが、警察に提供され捜査に利用されている(17年5月参院総務委員会での質疑)。
マイナンバー制度が恐いのは、マイナンバーを使って、私たちの個人情報が名寄せされ、プロファイリングされ、評価、分類、選別、等級化され、誘導や制限、排除、優遇などを受けることだ。プロファイリングは、政府や大企業が合法的におこなう。マイナンバーは、1億2700万人の中から確実に1人を特定でき、名前や住所、性別がたとえ変わったとしても、生涯に渡って正確な名寄せができる。
EUの「プロファイリングされない権利」
かつてナチス・ドイツは、国民の個人情報を集積して、ユダヤ人の選別や徴兵に活用したという負の歴史がある。その教訓から、ドイツでは、日本のマイナンバーのような共通番号制度だけでなく国勢調査も憲法違反として禁止している。
英国にも共通番号制度はない。仏には社会保障番号はあるが、共通番号としての利用をしないというのが国の方針。
EUはすべての加盟国に個人情報保護を義務付ける一般データ保護規則(GDPR)を施行(2018)し、「プロファイリング(自動処理・決定)されない権利―明確な本人同意が必要」を明記している。
欧米では、監視カメラや顔認証技術の利用への規制が進み、米・サンフランシスコ市やボストン市では、行政機関が顔認証技術を利用することを禁じている。これに学び闘おう。(花本香)
7面
杉田水脈の「歴史戦」批判
「慰安婦」問題抹消が核心
―政府が加害の歴史改ざん
水曜行動in新宿
第59回目の「水曜行動in新宿」が12月21日におこなわれた(写真左)。主催は戦時性暴力問題連絡協議会で、日本軍「慰安婦」問題の解決をめざしての毎月の行動だ。
最初のスピーチはWAM(女たちの戦争と平和資料館)共同代表の池田恵理子さん。「滅びへの道」という石川逸子さんの詩を朗読、「安倍元首相の下で歴史否定のバックラッシュがおこなわれ、教育・メディアをコントロールして国民の意識が変えられてきた。それが菅、岸田政権に引き継がれている。『慰安婦』サバイバーたちや、加害の事実を反省し証言をおこなってきた元兵士たちは戦争に強く反対してきた。いまこそ残された多くの反戦平和の言葉を思い起こして私たちも立ち上がろう」と発言。
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の梁澄子共同代表が「12月16日は日本社会に『慰安婦』問題を知らせてくれた金学順さんと宋神道さんの命日」としてスピーチ。「金学順さんは『しっかりしなさい。しっかりしなければまたやられます』と私たちに警告をし、『私はまだ死ねない。100歳まで生きて、日本政府の謝罪を必ず受けてみせる』と言っていたが、謝罪を受けることなく1997年12月16日に亡くなった。それからちょうど20年後の2017年12月16日に宋神道さんが亡くなった。在日で日本政府に訴訟を起こした唯一のサバイバーでした。宋さんは、裁判を通じて自らの被害を訴え、耳を傾けてくれた仲間たちを信じることができ、最後には『裁判は負けたがオレの心は負けてない』と語ったのです。日本政府も被害事実を語るサバイバーの声に耳を傾け、調査し謝罪していれば、すでに問題は解決していた。政府が被害者を黙らせようとしても被害者は黙らない。聞き続けた私たちも決して黙らない。政府が事実を認めて心から謝罪し、再犯防止の取組みを率先しておこなうことでしか『慰安婦』問題は解決しない。改めて市民もまた政府に対して求めよう!」とスピーチ。
また差別発言を繰り返す杉田水脈議員についてアピールした方は、「杉田議員の差別発言の発端は『慰安婦』問題から始まっている。世界各国で建設されている『慰安婦』問題を象徴する平和の碑や平和の少女像について『爆破すればいい』とヘイトクライムを呼びかけている」と。
さらに最後に発言された方は「国連自由権規約委員会で、日本政府は『慰安婦』問題でも3度目の厳しい勧告を受けている。被害者の人権を一日もはやく回復させ、人権尊重の社会をつくっていこう」とアピールした。昼1時間のこの行動、チラシの受け取りもよかった。
国連に乗り込んだ杉田水脈
国連から常に批判、「勧告」や「問題指摘」を受け続けているのが歴代の日本政府だ。総務大臣政務官にまでなった杉田水脈は、議員落選中の2016年2月、スイス・ジュネーブでひらかれた国連女性差別撤廃委員会に「審査を監視するため」として乗り込んだ。その委員会では、日本国家が、日本軍「慰安婦」問題を始めとしてアイヌ・部落・障がいのある女性・移住女性などマイノリティ女性への取り組みに問題があると指摘されていた。
「慰安婦」問題では、その審査会の前年の12月にいわゆる「日韓合意」がおこなわれたため、日本政府を代表して派遣された杉山普輔外務審議官は「慰安婦問題は日韓の2国間で解決済み」と発言し、「他の件も指摘にはあたらない」と釈明を繰り返した。言うまでもなく「日韓合意」とは、実際には「慰安婦」被害当事者をまったく無視したアメリカ政府が仲介しての日韓2国間政府だけでの、文面もない「合意」にすぎなかった。杉田はその杉山発言をたたえ、日本政府が正しいと言い張り、日本政府を批判する委員やNGOを罵倒、その際にチマチョゴリなどを着て参加した人たちを「コスプレおばさん」と言い、NGOの人々に対して「小汚い」「日本国の恥さらし」と暴言をはいてみせたのだった。
杉田は2013年にも米グレンデール市を訪れて、平和の少女像の撤去を求め、帰国後には「慰安婦」問題での「河野談話」が反日の情報発信源だとして河野洋平元官房長官の証人喚問を求める国民運動まで提唱している筋金入りの極右だ。
こうした国連内外での言動を安倍首相(当時)らが評価し、帰国後、杉山普輔は事務次官に昇格、杉田は安倍の「お気に入り」となって堂々と国会議員となり、さらに岸田政権では政務官にまでに成り上がったのだ。
「歴史戦」と日本政府・外務省
2020年9月、独ベルリンのミッテ区に少女像が建てられた。当時から「反対」の動きもあったが、「日本軍『慰安婦』問題は否定できない」とされ区議会において承認されていた。
しかし、22年4月の日独首脳会談で岸田首相はショルツ首相に対してこの少女像の撤去を要請した。なぜ当該の区議会で確認された少女像について外国の首相が「撤去せよ」と要請できるのか。この時ミッテ区役所や区議会議員、市民団体にまで、ドイツ人や韓国人になりすました「慰安婦は売春婦」「手を引け」などという脅迫メールが届き、ミッテ区議会内外で困惑が広がったとのこと。さらに「少女像撤去デモ」のため右派韓国人までがベルリンに動員されていた。韓国内でも『反日種族主義』などを書いている極右がソウルの大使館前での水曜行動を妨害している。
こうした状況のなか、日本政府外務省が中心となって、世界各地に建設されている「平和の碑」「少女像」など日本軍「慰安婦」に関連するものに対して、「日本政府の立場と相容れない」として事実上撤去を呼びかけ、総領事館などによる物量を通じての大きな圧力をかけており、フィリピンなど実際に撤去されたものも多い。最近ではアルゼンチン・ブエノスアイレスにある「記憶の博物館」に設置が予定されていたが、その除幕式が中止となってしまった。日本政府が博物館のユネスコ世界遺産への登録を阻止すると圧力をかけたからだと言われている。
「佐渡の金山」の世界遺産推薦を契機に「歴史戦」という言葉が飛びかっている。安倍晋三や高市早苗など自民党右派も発言し、岸田首相が官邸内に「歴史戦チーム」をつくったと報道された。昨年1月、安倍に近いとされる岩田明子NHK解説委員が「歴史戦チームは、政権の歴史認識に基づき歴史的事実を集めて検証を進め、国際社会の理解を得る目的だ」と説明した。つまり、「国際的には韓国や中国などの日本に批判的な歴史認識が通用しており、日本側がもっと主張するべき」として、実際には事実に基づく研究の成果でなく、国対国の政治の戦いにして歴史を捏造しようとしているのだ。
あったことをなかったことにはできない
「慰安婦や徴用工問題、南京大虐殺などはなかった」と、歴史を改ざんする「戦い」を世界中で日本政府がやっている。「歴史戦」とは、歴史認識についての中国や韓国からの「批判に対抗」しようとして右派・ネトウヨなどが打ち出している「戦い」である。元々は産経新聞が使った言葉だが、安倍派など右派が用い、それを政府や官僚が実行している。歴史研究による史実などをまったく無視して、かつての日本帝国主義の侵略と植民地主義による加害行為を正当化するものだ。「あったことをなかったことにする」という政治による歴史改ざんだ。
外務省は「国民の皆様からの御意見」という項目のなかに「海外における、我が国の立場と相容れない、又は我が国に関する事実誤認に基づく記述についての情報提供を」求める窓口を昨年7月まで自身のホームページに開設していた。杉田など右派議員の要請を受け、「一般から情報をいただく」という形をとって、上記のような歴史認識についての「国際世論」を取り上げ、それを都合の良い方に勝手に捻じ曲げようとしているのである。
まさに「歴史戦」のためにつくったのだった。しかも「国内外からの情報に基づいて対応する」という自らの責任逃れのあざとい方法を取っている。
一国の政府が勝手に歴史を偽造してはならないのは当然だ。平和の碑や少女像撤去の策動を断念せよ。外務省は歴史偽造の先頭に立つな。あったことをなかったことにはできない。(深津利樹)
8面
(連載)
長期・読み切り連載 大庭伸介
先人たちの闘いの成功と失敗を学び現在に生かそう
資本の横暴に抗う女性たち
「泣きの涙」から闘う主体へ @
日本最初のストライキは女性の決起
14時間半の労働と罰金制度に抗して
「私たち、人間なんでしょうか」――これは中国人技能実習生の言葉である。2005年暮れ、深夜0時にノンフィクション作家安田浩一は、岐阜市郊外の縫製工場の寮で若い中国人女性6人に会った。彼女たちは暖房のない部屋でダウンジャケットのまま、湯を入れたペットボトルを抱えて布団にくるまっていた。朝7時から深夜まで休憩なくミシンを踏む毎日。基本給は月5万円、残業手当は時給300円。休日は月1回。パスポートも貯金通帳も経営者にとりあげられていた(2022年11月24日、「朝日新聞」夕刊)。これは氷山の一角にすぎない。
明治維新以来日本資本主義は、これとほとんど同じような労働環境で働く女性労働者たちの犠牲の上に発展してきたのである。
1886年6月12日、甲府市の雨宮製糸所の女性労働者がストライキに立ち上がった。それ以前にも各地の鉱山などで奴隷労働に抗して暴動が頻発していたが、工場労働者のストライキとしてはこれが最初である。
1868年に誕生した明治政府は欧米先進諸国に追い付き追い越そうと、「富国強兵」「殖産興業」を掲げ、労働者人民大衆を無茶苦茶に搾取し収奪した。とりわけ明治初期に輸出の60%以上を占めていた生糸の生産現場では、国家ぐるみの非人間的な労働が強制されていた。
争議当時、甲府市内には73もの製糸工場が存在し、4400人の女性労働者が働いていた。製糸業の盛況は農村の過剰人口と政府の奨励政策によるものであった。製糸業者は農商務省の強力な指導の下に、製糸組合をつくり同盟規約を定めた。この規約は山梨県庁の許可を得て実施された。
労働者はこの規約によって、自分の希望する工場で働くことができなくなった。工場間の移動も禁じられた。自分の都合で退職した場合は6カ月間、事業主に嫌われてクビにされたら1年間は、他の製糸工場に就職できなかったのである。
さらに、ささいなことで過料を課された。この罰金制度で、1カ月働いても手取りは半分程度になってしまう場合が少なくなかった。さらに賃金の50分の1が強制的に社内貯金に回された。
労働時間は1日14時間。朝4時30分から8時間働き、1時間昼休み、13時30分から19時30分まで働いた。甲府市外から通勤する人が多く、朝3時半ごろ家を出て、夜8時半ごろに帰宅する毎日であった。12歳から20歳ぐらいまでの女性たちが、10人20人と同じ製糸工場に通勤し、なかには4キロから8キロも暗い道を歩いて、途中で暴漢に襲われることもあった。
出勤時間に少しでも遅れると容赦なく賃金を差し引かれ、子持ちの人は時間どおりに出勤しても20分ほどの賃金がカットされた。トイレに行ったり水を飲む時間さえも差し引かれた。これらはすべて同盟規約に基づくものであった。
雨宮製糸所では実働14時間30分で、他の工場より30分長く働かされた。農村の自宅から通勤する場合、止むを得ず遅刻や早退するケースが少なくなかったが、工場主は官許の同盟規約に基づいて容赦しなかった。
198人の女性労働者は、ついに過酷で理不尽な労働環境に耐え切れず立ち上がった。誰言うとなく不満を語り合い、近くの寺院に集まって同盟休業をおこなったのである。
戦前の労働争議では寺など多人数を収容できる場所に立て籠るケースが珍しくなかった。労働者同志が結束を固め、切り崩しに備えるためである。
彼女たちは1人も家に帰らず、ひもじい共同生活を耐え抜いた。5日間のストライキを経て、ストの中心人物と工場主が協議した結果、@出勤時間を遅くする、Aその他何らかの方法で優遇措置を講じる、という内容で解決した。労働者側の大勝利である。
日本最初のこのストライキは、一見あっけなく解決したかのようである。しかし、まだ封建的雰囲気が色濃く残り、御主人様に楯突くなど人の道にもとる恐るべき危険分子の所業であるとみなされ、まして女性にたいする差別と蔑視が支配するなかで、彼女たちの勇気ある行動は、もっと歴史のなかで光を浴び高く称えられるべきである。
女性労働者の犠牲で稼いだカネで軍艦や大砲を購入しアジア侵略へ
雨宮製糸のストライキを契機に、甲府の製糸工場ではストライキや同盟逃亡が相次ぎ、いずれも労働者側に有利に解決した。
なぜ甲府で製糸工場の労働争議が頻発したのか。当時、山梨県は長野県や岐阜県に次いで器械工場の比率が高く、労働者の集中度も高かった。そのため労働者の団結の基礎である階級意識の萌芽が自然に醸成されつつあったからである。
以上述べてきたことは、日本資本主義の原始的蓄積の有りのままの姿である。日本はこのようにして生産された生糸の輸出で得たカネで、軍艦や大砲などを購入して、朝鮮や中国への侵略態勢を構築し、アジアで唯一の帝国主義国に成り上がった。私は高校の社会科で不十分ながらこの構造を学んだが、今回の原稿執筆の過程でより具体的に理解を深め、改めて日本資本主義にたいする怒りをかみしめた。(つづく)
(シネマ案内)
リトアニアの独立へ決死の闘い
『ミスター・ランズベルギス』
監督:セルゲイ・ロズニツァ 2021年
1988年頃から、ゴルバチョフによるペレストロイカとともに、リトアニア独立運動が激しくなっていく。しかし、ゴルバチョフはソ連邦の枠組みを守ろうとして、リトアニアの独立をけっして認めることをしなかった。ゴルバチョフがリトアニアを訪問したとき(1990年1月)、民衆から「ミスター、なぜリトアニアの独立を認めないのか」と質問され、ゴルバチョフは「私はミスターが復活することを望まない」と応えている。ゴルバチョフにとって「ミスター」とは、「西側の人間=階級的な敵対者」を意味していたのだ。
91年8月、リトアニアが独立をする。それはソ連邦の崩壊が原因なのだろう。このように私は長らく考えてきた。事実はその逆で、「リトアニアの独立がソ連邦の崩壊を促進していった」というのが歴史的事実だ。
このドキュメンタリー映画は、この事実を実証している。リトアニア独立運動の中心人物であったランズベルギスによる回想にあわせて、当時のニュースなどのアーカイブ映像をかぶせていく。88年8月、ソ連によるリトアニア共和国占領反対集会から国連総会での加盟演説(91年9月)まで、ほぼ時系列で展開していく。その映像は当時の人びとの表情を生々しく伝えている。
リトアニアは、バルト三国の最南部にある小さな農業国(人口は約280万人、面積65300u)。ロシアやドイツなどの大国に翻弄されてきた。ロシア革命によって、1918年2月にリトアニアは独立を実現した。しかし、39年、ヒトラーとスターリンによる独ソ不可侵条約が結ばれ、その秘密議定書によって、リトアニアは40年にソ連邦に併合されることになるのだ。また、44年から52年にかけて、敵性民族とみなされたリトアニア人はシベリアに強制流刑になっている。これらはリトアニア人民にたいするスターリンの裏切りによるものだ。
サユディスは、リトアニアの主権とソ連邦からの独立を主張する政治組織だ。1988年10月、サユディス第1回会議が開催された。ランズベルギスは、国立音楽院の教授であり、ピアニストでもあったが、この組織の創設にかかわっている。1990年、ランズベルギスはリトアニア共和国最高会議・議長に選ばれた。
1991年1月11日、ついにソ連軍が軍事介入を開始した。ヴィリニュスが戦車によって占拠された(「血の日曜日事件」)。ランズベルギスは、死を覚悟して最高会議ビルに立てこもる。ビルの周りは民衆が包囲しており、ソ連軍の戦車と対峙した。民衆はソ連軍の威嚇射撃にもひるまず、一歩も引き下がることなく、実力で闘いぬいた。また、KGB特殊部隊のアルファ部隊はヴィリニュスのテレビ塔を攻撃し、13人の市民が殺されている。ソ連軍は、これ以上流血の事態を拡大することはできなかった。
現在、ロシアによるウクライナ侵略が起きている。この時、リトアニアの事態はスターリン主義の問題をするどく突き出している。ランズベルギスは、最高会議ビルの攻防にたいして、「自由への希求と未来への希望を抱いていたから、その決断に迷いはなかった」と語っている。民衆が立ち上がり、実力で闘いぬくとき、侵略者がいかなる手段を取ったとしても、これを押しつぶす事はできないのだ。ウクライナの事態も、おそらくこの事実を示すことになるだろう。(鹿田研三)