未来・第354号


            未来第354号目次(2022年11月17日発行)

 1面  統一教会とゆ着切れない岸田
     原発新増設、60年超運転許すな

     老朽原発動かすな
     12・4 関電包囲全国闘争

 2面  武力による威嚇はダメ
     野党共闘の強化を
     11・3大阪憲法

     生活保護引き下げは「違法」
     10月19日 横浜地裁で勝利

 3面  関生コンプライアンス弾圧
     無罪判決をかちとろう
     10月24日大津地裁      

     TYK高槻生コン闘争
     工場再開めざし勝利するまで闘う     

 4面  NAAの強制執行申し立て・市東さんの農地強奪宣言を許すな!
     農地取り上げ強制執行実力阻止へ!みなさんの総決起を訴えます
     三里塚芝山連合空港反対同盟の訴え

     投稿
     「女性、命、自由!」(下)
     マフサ・アミニさん死亡事件に大衆決起続くイラン
     佐藤隆

 5面  優生保護法問題の解決へ
     10月25日 日比谷野音で全国集会

     防衛省抗議・申し入れ行動
     山城博治さんが電話でアピール
     11月7日

     現場実践を地域に還流
     連続市民講座 前半終わる

     10月24日 滋賀県大津市で
     田中徹さんとのお別れ会

 6面  ジェンダーの視点から安倍政治を斬るB
     日本的家父長制=家制度の根幹は戸籍
     石川由子

     科研費裁判判決批判
     杉田水脈の主張は歴史修正主義

 7面  連載「プーチン論文」(本紙349〜353号)を批判する
     侵略戦争をプーチン体制打倒に

 8面  長期・読み切り連載
     先人たちの闘いの成功と失敗を学び現在(いま)に生かそう
     大庭伸介

     (冬期カンパのお願い)

           

統一教会とゆ着切れない岸田
原発新増設、60年超運転許すな

11・3憲法集会に3000人(大阪市)

岸田政権は統一教会とのゆ着を断ちきれず、支持率の下落が止まらない。「反日」右翼の統一教会が自民党に浸透した根本矛盾が岸田政権を締め上げる。しかし危機に陥れば陥るほど反動を強めるのが歴代自民党で、岸田政権は軍事費増大と原発新増設・60年超え運転に全力をあげる。階級的激突は不可避だ。物価高騰で生活苦にあえぐ人民の怒りの先頭に立ち、統一教会とゆ着した岸田=安倍政権、2012年体制打倒に総決起しよう。

統一教会と政策協定

今年の参院選と昨年の衆院選で、統一教会と政策協定にあたる「推薦確認書」に大串正樹デジタル兼内閣府(消費者担当)副大臣、山田賢司外務副大臣など多数が署名し、木原誠二官房副長官は推薦状を受け取っていたことが判明した。推薦確認書の内容は「憲法改正、家庭教育支援法、青少年健全育成基本法の制定に取り組む、LGBT問題・同性婚の合法化に関して慎重に扱う、日韓トンネルの実現を推進など」である。また、統一教会は自民党議員後援会を各地に「少なくとも数十」つくり選挙応援をしていた。統一教会は、宗教産業複合体として韓国や米国では、多数の企業を経営して金儲けをしながら、日本では献金ノルマを課し、霊感商法で高額な商品を売りつけたり、高額な献金をさせたりして年に数百億円を韓国に送金している詐欺・犯罪集団である。このような反共カルト集団を、自民党は庇護し長年にわたって結びついてきた。
1990年「思想新聞」に公表された「勝共推進議員」が、現職国会議員に105人もいた。勝共推進議員とは、統一教会の教義を学ぶため韓国で開かれるセミナーに出席し、勝共連合系の議員であることを認め、統一教会を支持することを求める文書に署名した議員のことで、中曽根元首相、安倍晋太郎、麻生太郎、細田博之など名前があげられている。

第2次安倍政権で最大の癒着

2007〜10年に統一教会は、全国の統一教会系の霊感商法店舗が特定商取引法違反(畏怖・困惑・不備書面の交付)や薬事法違反の容疑で摘発された。09年渋谷の印鑑販売会社「新世」事件では、社長・営業部長らが逮捕され、南東京教区本部事務所や2つの教会への強制捜査がおこなわれ、本丸である教団の松濤本部への家宅捜索も秒読み段階であったが、教団は解散命令を恐れ警察官僚出身の国会議員に庇護を求め、家宅捜索はされなかった。統一教会は、違法行為の罪を逃れるためにも政治家に接近をはかっていく。
文鮮明の発言録によれば、06年10月第1次安倍政権成立の一週間後に文鮮明は、安倍の「秘書室長」と面会するように信者に指示している。安倍は、民主党政権時の10年と12年、統一教会の関連政治団体・世界戦略総合研究所が主催した特別集会とシンポジウムで講師とパネリストを務めている。教団への接近を始めた安倍は、民主党から政権を奪取した第2次安倍政権において最大の癒着を深めた。改憲実現のため長期政権を狙い、選挙の票になり選挙ボランティアを引き受けてくれる教団と裏で手を結んだのだ。
選挙の支援を強力に受けるようになり、2015年下村文科大臣の時、統一教会の「世界平和家庭連合」への名称変更を認めた。安倍の側近や自民党国会議員は、頻繁に統一教会や勝共連合主催の講演やイベントに参加し、信者かとみまがうほどの発言をしている。
昨年安倍のビデオメッセージをはじめ、統一教会関連のイベントに参加した国会議員たちは「韓鶴子総裁に敬意」「家庭の価値」「家庭は大事」と異口同音の挨拶をしている。しかし、統一教会は信者の家庭を一番壊している。合同結婚式は、文鮮明が選んだ相手と結婚させるもので多くの家族が破綻している。個人の尊重や人権、自由な恋愛も認めず、憲法24条で否定した家父長制を固持するものだ。
安倍や山谷えり子、統一教会・日本会議の右派たちは、「ジェンダーという文言を使用させない」とジェンダー平等や性教育を攻撃し逆流させた。福井県では統一教会員が男女共同参画関連本150冊を排除させた。12年に全国初の家庭教育支援条例を熊本県が制定したのをかわきりに、22年2月までに10県6市で同条例を制定。これは統一教会の運動で文面は同じだ。

「反日」右翼・反共産主義の統一教会

統一教会は、植民地統治をおこなった日本(エバ国家)は、被植民地国である韓国(アダム国家)に従わなければならないという教えである。2019年年末には約1200人の大学生信者が韓国への謝罪ツアーをおこない、日本政府・安倍政権に過去の歴史への謝罪を要求する会見を開いている(一方では、彼ら2世信者は改憲支持、安倍政権支持の運動をするという矛盾)。また教団の狙いは世界各国で統一教会を国教にすることだ。自民党とは決して相いれない思想だ。しかし反共産主義では一致しているため、自民党は選挙の支援欲しさに教団を利用しているのだ。
世論調査で、宗教法人法に基づく解散命令を「請求すべき」が69%になり、岸田政権の支持率が最低の39・6%となった。信者から強収奪し人生を奪う統一教会は許されない。それを支持基盤とする岸田=安倍政権は断じて許されない。被害者救済新法と解散命令を急ぐべきだ。

老朽原発動かすな
12・4 関電包囲全国闘争

岸田政権は、電力の安定供給と脱炭素化を口実としてますます原発への依存を強めている。岸田の嘘とペテンの論理を使った原発依存の政策にたいして、真っ向から「老朽原発うごかすな!」「全原発の廃炉」をかかげて、たたかわなければならない。

トラブル続き

関西電力は、定期点検のため停止中の高浜4号機について、10月20日「明日21日、起動(再稼働)をおこなう」と発表した。点検中に伝熱管の一部が極度に減肉していることが発見され、これらの伝熱管について、閉止栓を施工し、使用しないことで再稼働しようとした。しかし、圧力逃がし弁異常で再稼働できず、結局11月4日未明に再稼働した。この間関電の原発は、再稼働しようとするとトラブルが発生し再稼働できない事態が続発している。8月30日に再稼働した老朽原発美浜3号機では、8月1日7トンもの放射能を含む水漏れというトラブルなどが頻発し再稼働ができない状況が続いた。それに続いて、今回の高浜4号機をめぐる事態である。関電には原発を安全に運転するという姿勢や、原発を運転する資格はないことが白日の下にさらされている。こんな関電の暴走を許してはならない。

老朽原発うごかすな! でデモ行進
(2021年12月5日、大阪市内)

40年ルール撤廃ねらう

11月2日、原子力規制委員会は原則40年という原発の運転期間のルールに代わり、運転開始から30年を起点にして、10年を超えない期間ごとに建物や原子炉の劣化具合を審査する案を示した。これは、60年超の原発運転を可能とすることだ。
そもそも、現行の「原則40年」ルールは、3・11フクシマの教訓から原発のない社会の展望をはらんだものとして打ち出されていた。その40年ルールを変更するということは、未来永劫原発の存在を認めようとするものであり許されない。このかん規制委員会の山中委員長は、経産省が打ち出そうとしている、エネルギーの安定供給を理由として、40年ルールを取っ払おうとする動きにたいして、「利用者側の問題で、規制当局はタッチしない」とこの動きを容認する姿勢を示していたが、規制委員会として、40年ルールに変わる新たなシステムを作ろうとするもので、早ければ年内にもまとめるとした。
山中委員長は、「現行制度よりもはるかに厳しい規制」と自画自賛しているが、とんでもない。40年ルールを変更するということは、曲がりなりにも原子力を規制しよういう立場を放棄するということであり、経産省や電力会社の判断で原発を無限に運転し続けることが可能になるということである。10年ごとの審査というが、原子炉本体は調べようもなく、原子炉の安全性を担保するものではない。また、これまでも横行している、電力会社によるトラブル隠しや、隠蔽、さらにはデータ改竄などを引き起こすことはあきらかである。

12・4関電包囲全国集会へ

さらに、原発新増設や新型炉の開発が声高に叫ばれている。山口県の上関では町長選挙で、原発推進の候補が当選した。また、中国電力が新規稼働を目指している島根原発3号機の審査を4年ぶりに再開した。
今こそ、「老朽原発うごかすな」「全ての原発を廃炉に」の声と行動をたたきつけていかねばならい。
いよいよ「12・4老朽原発うごかすな! 関電包囲全国集会〜超危険な美浜3号、もう廃炉」が迫ってきた。美浜3号をめぐっては、大阪地裁で運転差止を求める仮処分がたたかわれており、近々決定が出されようとしている。裁判闘争をも武器に「老朽原発うごかすな」の声を上げていこう。
来年は反原発をめぐって、節目の年である。岸田や経産省などの原発推進勢力と激突する年である。また、6月、7月といわれている老朽原発高浜1・2号機の再稼働をめぐっても激しくたたかわれることになる。
12・4関電包囲集会は、このたたかいに向かっておおきな位置を持っている。総力で結集しよう。

2面

武力による威嚇はダメ
野党共闘の強化を
11・3大阪憲法集会

川口真由美さんとおもちゃ楽団が力強いライブ演奏で3000人の参加者を激励(11月3日 大阪市内)

11月3日、「かがやけ憲法! 平和といのちと人権と おおさか総がかり集会」が大阪・扇町公園に3千人を集めてひらかれ、集会後、2方向にわかれてデモをおこなった。主催は、おおさか総がかり行動実行委員会。
大阪憲法会議・共同センターの丹羽徹さんが開会あいさつ。同志社大学大学院教授の岡野八代さんがスペシャルゲストとしてアピールした。

私たちは国のために生きているのではない

岡野さんは、私たちは国のために生きているのではないとキッパリ言い切った。人は生きているだけで価値がある。国は、一人一人の尊厳を輝かせるための道具にすぎない。戦争を放棄することは日本が弱い国であることと同じではない。武力による威嚇、武力の行使をおこなわないという憲法前文の精神とそれを可能にする能力こそ日本が持つべきものなのです。そうしてこそ健康で文化的な最低限度の生活を保障する憲法25条に光があたる。抑止力や敵基地攻撃能力などという主張はとんでもないものです。軍事費を2倍にし日本を世界第三位の軍事大国にするのではなく、戦争を放棄し、私たちの生活こそが大切だと考える人たちを国会に送り出しましょうと訴えた。
この後、岡野さんと若者2人とのトークセッションがおこなわれ、川口真由美さんとおもちゃ楽団のライブ演奏があり、高良鉄美さん(沖縄選出・参議院議員)からのメッセージが代読された。

自公・維新を打ち破る野党共闘を

立憲民主党大阪府連幹事長・野村いくよ枚方市議、共産党・宮本たけし衆議院議員、社民党・大椿ゆうこ副党首がアピールし、れいわ新選組・大石あきこ衆議院議員のメッセージを前島かずき大阪淀川区政策委員が代読した。このメッセージでは、最大野党の立憲が維新と手を組んでいることを「悪魔合体」と痛烈に批判した。
しかし、この批判には根拠がある。立憲の枝野幸男前代表は野党共闘の最大の目玉政策だった消費税5%減税は間違っていた、二度と消費税減税は言わないと表明している。さらに野党共闘を推進してきた市民連合の中心メンバーの1人は「安倍元首相を追悼する野田演説を批判する人々とは共闘体制をつくれない」と言い始めたのだ。
今、野党共闘と立憲には明らかに異変が起きている。マスコミで報道されているように自公・維新、そして、これにすり寄る立憲の4党でものごとを決めていこうとする流れが始まっているのだ。これは大政翼賛会化であり、それこそ「悪魔合体」である。立憲を支持してきた人たちを含め、すべての人たちに自公・維新をうちやぶる闘う野党共闘を訴える大石あきこさんのメッセージには会場から大きな拍手が起こった。(三船二郎)

生活保護引き下げは「違法」
10月19日 横浜地裁で勝利

10月19日、横浜地裁(岡田伸太裁判長)は国による生活保護基準引き下げは「裁量権を乱用」しており違法と認定し、引き下げ処分を取り消した。大阪、熊本、東京に続き4例目の勝訴判決である。

安倍政権が強行した引き下げ

戦後70年間、どの政権においても憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生活保護基準は不十分きわまりなかったが引き下げできなかった。しかし、2012年、生活保護基準の10%引き下げを公約に掲げて第2次安倍政権は政権に復帰し、翌13年、保護基準は最大10%引き下げられ、今も底なしの引き下げがねらわれている。
全国29都道府県で1000人近い生活保護利用者が原告となって8年に及ぶ長期の裁判をたたかってきた。生活保護制度は最低賃金等ともリンクしており、保護基準の引き下げは日本社会を底なしの泥沼に引き込むものとなる。原告、弁護団、支援は生活保護利用者の利害だけではなく、格差貧困にあえぐ全ての人たちのためにたたかうことを表明してきた。

安倍政治の破綻

13年、安倍政権におもねった厚労省は公約通りの引き下げを実現するために無理に無理を重ねた。東京、大阪、横浜、熊本の各地裁は、厚労省が総務省の物価データをあえて使わず、生活保護利用者がほとんど使わないパソコンなどの値下がりを取り込んだ厚労省の独自データを使ったことを「統計等の客観的な数値との合理的関連性を欠く」と指摘している。原告、弁護団、支援の正攻法の闘いが8年の闘いを経て実を結び、今、こういう形で安倍政治の破綻をつくりだしてきているのだ。

生活保護制度の破壊を許すな

安倍政治を引き継ぐ岸田政権は、保護基準の引き下げだけでなく、生活保護制度の根幹をなすケースワーカーを民間に委託するという生活保護制度の破壊を進めている。ケースワーカーとは生活保護の開始、廃止等を決定する生殺与奪の権を持つ重要な立場の公務員である。しかし、これを部分的に民間に委託することがすでに始まっている。
今、物価は急激にあがり続け、格差貧困にあえぐぼう大な人たちの生活はかつてなく苦しいものになってきている。生活保護制度は「命の砦」である。安倍・岸田政権による生活破壊攻撃と対決し、「命の砦」を守り、生きるための闘いに多くの人たちとともに行動し、安倍=岸田政権を打倒していこう。

3面

関生コンプライアンス弾圧
無罪判決をかちとろう
10月24日大津地裁

10月24日10時から終日、関西生コン弾圧の中心の一つであるコンプライアンス(法令遵守)事件に関する最終弁論が滋賀県大津地裁でおこなわれた。
それに先立つ8時30分から大津地裁前で50人が集まって抗議集会が開かれ、4年の歳月をかけてたたかわれてきたコンプライアンス裁判について、反弾圧京滋実行委員会、同大阪実行委員会、滋賀勝手連などが、負けるわけにはいかない、無罪をなんとしても勝ち取ろうと決意を表明し、シュプレヒコールをおこなった(写真上)

裁判の争点

大津地裁で争われている内容は、関西生コン支部のコンプライアンス活動と生コン業界全体のためにおこなってきた「アウト対策」の正当性である。

アウト対策は正当

旧通産省は1993年2月の『通産省調査報告書』で、生コン業界の「従業員の福祉の向上」に関わって「生コン企業に働く従業員の給与水準、労働時間、休日等の労働条件をはじめ福利厚生面については一般社会水準に比べてかなり低い状態」であり、その原因につき「生コン企業は中小零細であり、生コン価格も長期に亘って低迷を続けている状況下では、これらの労働環境の充実や改善を図りたくとも、多くの企業にはその余裕が無く、容易なことではない」とし、「このようなことから、何としても協組共販体制の充実、再構築をはかり、組合員企業の経営を安定させることが最優先である」と述べている。
しかし、生コン業界の中には協同組合に加入せず、自分さえよければと安売りに走る業者もいる。こういう業者を「アウト」という。「アウト対策」とはこのような業者を説得して協同組合に加入させ、共同の購買・受注・販売・宣伝・研究等をおこない、旧通産省が指摘するように「協組共販体制」の「充実、再構築」をはかることをいう。
関生支部の「アウト対策」は旧通産省の趣旨に沿うものであり、業界全体の向上のためのものであることを弁護団は理路整然と明確にした。

コンプライアンス活動の正当性

コンプライアンス活動(以下、コンプラ活動)とは、法令遵守を施工業者や行政機関に求める活動である。関生支部は、建設工事現場で、法令や品質管理基準等の遵守状況を監視し、その是正を求める活動を何年もおこなってきた。

コンプラ活動は憲法が保障

関生支部のコンプラ活動は憲法21条が保障する表現の自由の一環である。それだけでなく、コンプラ活動は、違法行為の根絶を労働基準監督署や市役所等の行政機関に求めるものなので、憲法16条が保障する請願権によっても保障されている。
ちなみに、憲法16条は「何人も・・・法律、命令又は規則の制定、廃止または改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」と定めている。

判例が指摘

弁護団は、無罪の証拠として、星山生コン事件の大阪高裁判決を提出している。星山生コン事件では6カ月間、60回以上継続されたコンプラ活動を「社会通念上相当と認められる範囲を超えているとまではいえず、営業権を侵害する違法なものとまではいえない」と大阪高裁は判示しているのだ。

「連帯を削る」ための逮捕・起訴

弁護団は本件逮捕・起訴は違法であり、被告人らは無罪であると強く主張した。事件を担当した多田尚史副検事は「連帯〔は〕、これからどんどん削っていきます」と発言している。つまり、検察官は、犯罪があるから逮捕・起訴したのではなく、関生支部を「削り」、破壊するために逮捕・起訴したことをあけすけに語っているのである。
また、横麻由子検事は「このまま続けても良いのかという気持ちがちょっとでもあれば、今回捕まったことがきっかけ。今後の事を考えるきっかけ」と許しがたい脱退工作をおこなった。

被告人最終陳述

湯川裕司委員長をはじめとする各被告人は、それぞれ自己の信念に基づいて堂々と最終陳述をおこなった。傍聴席からは深い感動と拍手が沸き起こった。
湯川委員長は、取調べの検事から「企業の外で活動するからだ。君はまだ間に合う」と脱退工作を受けたことを明らかにした。コンプラ活動は、星山生コン事件でも社会的相当だといわれているのだから、関生支部のコンプラ活動が威力業務妨害になるという検察官の主張は納得できない。企業の枠を超えた産業別労働組合運動は労働者のためにも、生コン業界のためにも必要であり、さらに発展させていかなければならない。団結権を保障する労働組合法の観点から判決を出してほしいと述べた。
他の被告人もそれぞれの観点から無罪を主張し、傍聴席から大きな拍手が沸き起こったが、裁判長は阻止することもできなかった。

判決公判に結集を

来年3月2日13時15分から大津地裁で判決が出される。多くの人たちの結集を訴える。

関生闘争

大阪府警抗議元旦闘争
とき:1月1日(日)午前10時
     ところ:大阪府警本部前
主催:労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会

関生コンプライアンス裁判 判決
とき:3月2日(木)午後1時15分
ところ:大津地方裁判所



TYK高槻生コン闘争
工場再開めざし勝利するまで闘う

10月28日、大阪府高槻市内で「大阪広域生コン協組による関生支部つぶし粉砕、TYK高槻生コン闘争勝利、10・28集会&ナイトサウンドデモ」が開催され170人が集まった(写真)。道行く人たちから大きな注目を浴びた。

必ず道は開ける

集会では、最初に関生支部の湯川裕司委員長が主催者あいさつ。TYK生コンの集会は今日で2回目になるが、さらに継続して宣伝活動、監視活動をやりぬき、かならず勝利していく。私たちが連帯し、一致団結すればかならず道は開けると力強く発言。さらに、昨日(10月27日)、うれしいニュースがあったとして、加茂生コン事件控訴審で逆転無罪判決をかちとっている吉田組合員の解雇撤回裁判が奈良地裁(民事部、寺本佳子裁判長)で勝訴したことを報告した。しっかり共闘し、徹底して闘い、結果を出していきますと決意表明した。

私たちは負けない

次に、高槻生コン分会から闘争報告と決意表明があった。去年10月に雇われ社長から仕事を止められ1年が経過し、昨年の春闘で合意した冬の一時金も業績が悪化したとウソをついて会社は支払っていない。雇われ社長と大阪広域協の大山副理事長が手を組んで、私たちから仕事を奪い、工場を売却・解体してきた。私たちの生活を奪う目的は組合つぶしだ。私たち高槻生コン分会は負けません。関生支部とともに闘い、勝利するまで頑張ります、ご支援とお力をお願いしますと熱く訴えた。

勝利するための大きな波を

全港湾大阪支部の小林勝彦委員長は、1年も仕事を干され、職場の工場を解体されても、さらに頑張るという姿をみると10倍、20倍の声をあげ、勝利するための大きな波をつくっていきたい。関生とともに勝利しようと訴えた。

韓国から連帯あいさつ

関西空港に到着したばかりの韓国民主労総希望連帯本部の組合員8人が連帯のあいさつをし、激励の寄せ書きをした横断幕を寄贈した。訪問団の代表は「日本の仲間のみなさんに韓国式のあいさつをしたい」と拳を突き上げて「トゥジェン」と大きな声で叫ぶと集会参加者も「トゥジェン」と大きな声で返した。集会場には韓国で闘われているかのような熱気が生まれた。
代表は、空港からここまでくるときにいろんなものが見えたが、闘っている仲間に出会えたことが一番うれしい、光栄です。韓国でも保守政権と資本は労働者を弾圧しています。資本は国境を越えても同じ。労働者と市民の安全を守り、労働者の権利を向上させるのが労働組合です。そして、この社会を変えるのが労働組合だと思います。韓国の労働者たちもいっしょに闘います。「トゥジェン」と大きな声で締めくくった。

4面

NAAの強制執行申し立て・市東さんの農地強奪宣言を許すな!
農地取り上げ強制執行実力阻止へ!みなさんの総決起を訴えます
三里塚芝山連合空港反対同盟の訴え

10・9集会で発言する市東孝雄さん

市東孝雄さんの農地取り上げ問題に心を寄せて下さっている全国の仲間のみなさん。成田空港会社(NAA)はついに、市東さんの農地取り上げ強制執行のための具体的かつ最後的な手続きを開始しました。事態は風雲急を告げています。あらゆる手段を駆使して農地取り上げを阻まなければなりません。ぜひとも力をお貸しください。
東京高裁は10月18日、新やぐら裁判控訴審判決での仮執行宣言(判決確定前に執行できる)に対する反対同盟の強制執行停止申し立てを却下しました。NAAは間髪を入れずに同日、千葉地裁に対して「建物等収去命令」と「工作物収去命令」を申し立てました。(翌19日にはマスコミ各社を集め、成田空港機能強化のB滑走路北延伸準備工事の着工を発表)
NAAの田村明比古社長は20日の記者会見で、「どこかの時点で執行する必要はある。円滑かつ確実に実施するため、関係各方面と検討している」とコメントしました。市東さんの天神峰農地、その上に建つ営農と生活に必要な作業場・ビニールハウス・トイレ等、反対同盟の看板・やぐら、南台農地の一部まですべて奪うと公然と言い放ったのです。大木よねさんへの代執行以来阻んできた農地強奪にふたたび手を染めるという宣言を絶対に許すことはできません。
そもそも空港公団(現NAA)は1993年、機動隊による暴力的強制収用を謝罪し、「平行滑走路の用地取得にあたっては、あらゆる意味において強制的な手段はとらない」「あくまで住民との話し合いで問題を解決する」と誓約し、「社会問題としての三里塚闘争は終わった」などと一大キャンペーンを行いました。さらに黒野匡彦NAA社長(当時)は2005年、東峰区住民に「皆様の生活環境や人間としての尊厳を損なうようなことは二度とやらない」と謝罪しました。その舌の根も乾かないうちに新たな強制執行に踏み切ることは不正義極まる暴挙と言うほかありません。
しかも、対象となっている農地は市東家が3代100年にわたって耕し続け、豊富な微生物を含み多種多様な品目を育てることができる代替不可能な農地です。この農地を強奪し、手塩にかけて育てた完全無農薬有機野菜で多くの産直会員の命と健康を支えている市東さんの誇りと生きがいを奪うことは、何人にも許されるものではありません。
農地を奪わずともすでに飛行機は飛んでおり、訪日外国人客と成田の利用者数が過去最高を記録した2019年の段階ですら成田の発着回数は26万回に過ぎず、現状可能な30万回にも達していません。しかも、それは新規就航便の着陸料金を免除するなどして無理やり需要を創出したバブルでした。そのバブルがコロナショックではじけ、社会全体のオンライン化が進む中で、ビジネス客は戻らないと航空会社の社長ですら認めています。さらに気候変動を促進する飛行機の利用を忌避する「飛び恥」運動の拡大などで、旅行客も戻りません。
あるのは、軍事的な要請にもとづく需要だけです。政府は安全保障関連3文書の改定に向けた「有識者会議」の第2回会合で、平時からの自衛隊による民間空港の軍事利用について検討を始めると宣言しました。防衛省関係者は「有事に備え、滑走路の延伸が必要」とし、さらに、かつてのB滑走路北延伸の首謀者・北側一雄元国交大臣は「自衛隊が利用する局面も想定した上で滑走路の長さなどを検討して整備を」とたきつけているのです。(朝日新聞10/21)
成田の軍事空港化が現実のものとなろうとしている今こそ、改めて戦争反対の一環として市東さんの農地を守る全力での取り組みを訴えます。
私たち反対同盟は、戦争に動員されて傷ついた苦しみ、侵略戦争に加担させられた痛苦の反省をふまえ、闘いの当初から「成田軍事空港絶対反対」を掲げ闘ってきました。「お国のため」として人や物資、土地などあらゆるものを徴用・徴発・収用した結果がヒロシマ・ナガサキ、沖縄の惨劇ではなかったでしょうか。さらに、「経済発展のため」として乱開発した結果が原発事故、気候変動、食料危機の現実ではないでしょうか。
「国民を飢えさせず、戦争を二度とやらない」と誓ったはずの日本政府は今、「他国の脅威」をあおって軍事費2倍化、大軍拡、改憲・戦争への道をひた走っています。市東さんの農地を守りぬき、成田軍事空港建設を粉砕しましょう。
農地は私たちの命です。「安全でおいしい野菜をつくるためにこの土を守る」「三里塚、福島、沖縄を一つの闘いとして体の続くかぎり農地を耕し闘う」と宣言する市東さんとともに、私たち反対同盟は56年の闘いの歴史すべてをかけた決戦に必ず勝利する決意です。闘いはここからが本番です。それぞれの現場で市東さんの農地決戦について訴え、ぜひ現地に駆けつけてください。市東さんの農地を守るための十重二十重の陣形をつくろう。援農・カンパ・現地座り込みなどへの総決起を心から呼びかけます。
2022年11月1日
三里塚芝山連合空港反対同盟

◎当面する行動方針

11・27天神峰現地闘争
とき:11月27日(日) 午後1時
    ところ:市東さん宅中庭集合 集会〜デモ

団結街道裁判
とき:11月18日(金)午前10時半開廷
ところ:千葉地裁

耕作権裁判&千葉地裁包囲デモ
と き:11月28日(月)午前9時
ところ:千葉市葭川公園 ※集会後、デモ行進
午前10時半開廷 千葉地裁



投稿
「女性、命、自由!」(下)
マフサ・アミニさん死亡事件に大衆決起続くイラン
佐藤隆

抗議活動の先頭には、どこでもスカーフを外した女性たちが立っている。街頭に出られなくても、家の中から抗議の声を上げ、警察の弾圧を窓から弾劾する動画がいくつも投稿されている。車を街頭に乗り出して抗議活動への連帯の意志をクラクションで示す人たちもいる。
これらは全て命がけの行動だ。クラクションを鳴らしていて車内で頭部を警察に銃で撃ちぬかれ死亡した青年の動画がSNSにアップされている。
イランで全国的に広がっている抗議デモではこれまでなかった行動が相次いでいる。10月3日にSNSに投稿された動画には、首都テヘラン西に位置するカラジで、10代の女子学生たちが宗教教育関係者に「恥を知れ」と叫び、水の空ボトルと思われるものを、教育関係者が校門から出て行くまで投げつけていた様子が映っている。学生たちが「団結しなければ、1人ずつ殺される」と声を張り上げているのが聞こえる。南部の都市シラーズでは3日、女子学生数十人が主要道路の通行を妨害。スカーフを振りながら、「独裁者に死を」と声を合わせた。イランの最高指導者アリ・ハメネイ師に向けたものだ。4日には、カラジ、テヘラン、北西部のサケズ、サナンダジュでも、女子学生の抗議デモが報告されている。また、多くの女子学生が教室で、頭部を覆わずに立っている場面の写真も出回った。学生たちは、ハメネイ師と、かつての最高指導者ルホラ・ホメイニ師の肖像画に向かって、中指を立てるひわいなしぐさで弾劾している。
ライシ大統領は10月8日、首都テヘランの大学で演説し、そのなかでデモの参加者をハエに見立てた詩を朗読した。このライシに対して女性の学生らが集まり、「ライシは失せろ」「聖職者は失せろ」と繰り返し叫ぶ動画がSNS上で広く拡散している。
イラン政府が抗議活動の期間のインターネットを遮断する中、間隙の接続時間帯にはテレグラムに抗議活動や警察の弾圧を撮影した動画が溢れかえる。弾圧に加担する者たちの住所・氏名も公開されている。他方、デモや抗議活動の連絡は、SNSを使わず、ゲリラ的に突然、おこなわれるものも多いという。
イランの国営テレビがハッキングされ、暴動の犠牲者の画像と政府に立ち向かうよう訴えるメッセージが流された。
9月17日、クルド人都市サケズで開かれたアミニさんの葬儀で始まった反政府抗議行動で、抗議者たちは最高指導者の失脚を呼びかけた。イラン革命防衛隊は24日、隣国イラク北部にある反イランのクルド人武装勢力の拠点を砲撃した。ライシ政権はデモの背後に反体制派がいると非難して攻撃をおこなった。
イランで政府を転覆させようとした罪などに問われて6年間拘束され、今年3月に解放された英国とイランの二重国籍を持つナザニン・ラトクリフさんは「マフサのために」とつぶやきながら、自身の肩の下くらいまである髪をはさみで次々と切った動画をアップした。動画の最後では「母国の女性たちのために」「自由のために」「正義のために」と語った。米国やシリア、ギリシャなど、世界各地の路上で、女性たちが抗議の意思を示すため、髪を切り落としている。SNS上にも、「#mahsaamini」や「#mahsa」などをつけた投稿が相次ぎ、髪の毛やヒジャブを切って抗議の意思を示す女性たちの動画や画像が多く投稿されている。女優のジュリエット・ビノシュさんら50人以上のフランスの俳優やアーティストたちが、カメラの前で髪の毛を切った。
日本国内ではイラン大使館に向けて9月28日、全国から集まった約300人のイラン人たちによるデモがおこなわれ、10月1日、渋谷駅前にイラン人たちが全国から約300人集まり、抗議行動がおこなわれ、10月9日には霞ヶ関の外務省前には在日イラン人らおよそ200人が集まり、日本政府にイランに駐在する大使の召還などを求めている。
「我々は死ぬ覚悟でここへきている」「(この抗議行動により)もうイランには戻れない。帰ったら死刑になる」「ヒジャブ(スカーフ)だけが取り上げられているけど、女性に対する負担が他の国よりすごく大きい」「イスラム体制による数千もの犯罪のうちの1つにすぎない」「アミニさんの件は今回が初めてではない。私のいとこもヘジャブの件でいちゃもんをつけられて、顔をボコボコにされた。日本人にも関心を持ってほしい。日本だって、いつこういうことになるかわからないのだから」等、訴えたという。
(10月10日、愛知連帯ユニオン)

5面

優生保護法問題の解決へ
10月25日 日比谷野音で全国集会

10月25日、優生保護法問題の全面解決をめざす10・25全国集会が日比谷野外音楽堂で開かれ、小雨のぱらつく中、1300人が集まりオンラインを含めて2500人が参加した(写真)
集会では仙台、北海道、東京、静岡、大阪、兵庫、福岡、熊本、愛知の各原告、支援者が発言した。「東京と大阪の高裁で原告の主張を認める判決が出ましたが、裁判はまだ終わりません。被害者はみな高齢化しています。国は、一刻も早く全面的解決をしていただくよう強く求めます」(仙台・飯塚淳子さん/仮名)、「東京高裁で勝利の判決をしてくれました。国が上告してしまい、暗闇の中に放りこまれました。私は79になります。被害者は高齢者ばかりです。もう時間がありません。北海道で一人、宮城で一人、神戸で二人、福岡で一人。(原告が)無念のうちに亡くなっています。一日も早く全面解決することを求めます」(東京、北三郎さん/仮名)、「母親が悪いと思って過ごしてまいりましたが、国がそういう法律を作ったということに後で気づきました。皆さんと一緒に闘っていきます」(兵庫の小林さん/代読)。元宮城県知事の浅野史郎さん、前衆議院議員の尾辻かな子さん、雨宮処凛さんから連帯のあいさつを受け、旧優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟事務局長の福島みずほさんが発言した。
集会の最後に、優生連(優生保護法問題の全面解決を目指す全国連絡会)共同代表の利光恵子さん、藤原久美子さん、被害弁護団の新里宏二弁護士、松浦恭子弁護士をパネリストに、コーディネーターとして優生連の藤井克徳共同代表という形で「優生保護法問題の全面解決に向けて」というテーマで特別シンポジウムがおこなわれた。また、指定発言として、及川智さん、山本秀樹さんが発言した。集会決議を採択し、国会への請願デモをおこなった。(次号に詳細報告記事掲載)

防衛省抗議・申し入れ行動
山城博治さんが電話でアピール
11月7日

11月7日、毎月恒例の「辺野古新基地建設の強行を許さない!防衛省抗議・申し入れ行動」(主催・辺野古への基地建設を許さない実行委員会)がおこなわれ、多くの市民が集まった(写真)
沖縄現地からのアピールとして、山城博治さんが電話で11月10日から予定されている「離島防衛」を掲げた日米共同の大規模演習「キーン・ソード23」を弾劾した。
主催者は、辺野古埋め立て工事・設計受注企業である大成建設・五洋建設・日本工営への抗議はがきキャンペーンを訴えた。
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックが「与那国の町道で装甲車を走らせるな!戦争を前提にした日米共同統合演習を中止せよ!」と題した申し入れ文書を読み上げ、受付担当者に手渡した。

現場実践を地域に還流
連続市民講座 前半終わる

「第9期市民の力で社会を変えよう! 連続市民講座」は、@10月16日尼崎での中川智子前宝塚市長、A11月3日伊丹での久保敬前木川南小学校校長、B11月6日宝塚での小野元裕日本ウクライナ文化交流協会会長を迎えて、それぞれの講演会を好評のうちに開催した。後半は12月に2講座が開かれる。
中川智子さんは3期12年の市長だけでなく、自分の子どものころからの差別を許さない、みんなで運動を作り政治を変えていくという基本姿勢を縦横に語り、土井たか子さん時代からの政治家・運動家をはじめとする各界からの60人の参加者に改めて元気を与えた。またこの日は11月尼崎市長選に立候補予定の松本眞前教育長のあいさつもおこなわれた。
久保敬さんの講演は、昨年4月に維新の松井大阪市長のオンライン一斉授業通知に単独で提言という「反乱」を起こし、その勇気に多くの人が喝采を送るとともに、処分攻撃への危惧を持った。しかしその正義の行動は多くの人に支持され、処分も「文書訓告」という処分に当たらない処分となった。また久保さんの実践は、人気お笑いタレント「かまいたち」の濱家の小学時代の先生として朝日新聞に大きく紹介され、あたらめて維新の上からの教育行政に対して、大阪の教育関係者が子どもと向き合いながら教育実践してきたことの大切さがクローズアップされた。伊丹の教職員組合の若手組合員や部落解放運動関係者など100人近くが集まり、大きな感銘を与えた(写真)
小野元裕さんは、もう30年になるロシア・ウクライナとの係わりのなかで、何十回もウクライナに行き、ほとんどウクライナ人になりきり、日常の生活の中からウクライナと日本の関係を語る貴重な人。ロシアとウクライナの長い関係を、高校教員が日本史を語るように、細部にわたり地域の実情・人情まで分け入り語り、その中で今回のロシアの侵略戦争の残虐さを語った。1時間近くの質疑応答では、アメリカやNATOの戦争関与やネオナチの存在を問題にする質問なども出たが、あくまでウクライナという家に、隣から強盗 (ロシア軍)が入ってきて家族を殺している戦争で、これに武器を持って抵抗することは当たり前と説いた。第二次大戦でキエフ郊外のバビ・ヤールで数万人のユダヤ人を殺したナチスの系譜のネオナチはウクライナでは多数にならない。最後に日本から武器を送るわけにはいかないから、避難所シェルターを建設し募金活動もしていると訴えた。

10月24日 滋賀県大津市で
田中徹さんとのお別れ会

8月に逝去された田中徹さんとのお別れ会が10月24日、滋賀県大津市内の県教育会館でひらかれた。当日朝から大津地裁でおこなわれた関生弾圧コンプライアンス裁判の最終意見陳述を闘いぬいた関生支部や、支援の人たちをはじめ50人が参加した。
反弾圧京滋実行委員会代表の開会あいさつをはじめに、かんなま勝手連しが・稲村さん、関実・松原さん、若狭の原発を考える会・木原さん、関生支部湯川委員長、医師仲間の小西さんらが発言した。
その後、参加者一人ひとりが、田中徹さんとの出会いや、思い出などを語った。2016年5月の原発全廃! びわ湖一周リレーデモ(田中さんは同実行委員会委員長であった)や、京滋での関生弾圧粉砕のたたかい、大阪での〈STOP原子力★関電包囲行動〉、〈辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動〉での出会い、若狭の原発を考える会での若狭での行動、東大阪荒本の平和診療所の医師としての田中さんなど、それぞれのエピソードを含め語られ、決して、現場で目立つことなく、黙々と、スタンディングやビラ配布などをおこなっていた田中徹さんの人となりを語った。
書斎での理論活動よりもあくまでも実践に重きをおき、「行動の人」を貫いて人生を全うした田中さんの生き様が参加者に深い感銘を与え、共有された。 最後に、全員で記念写真を撮り、お別れ会を終えた。(仰木明)

6面

ジェンダーの視点から安倍政治を斬るB
日本的家父長制=家制度の根幹は戸籍
石川由子

選択的夫婦別姓問題とは

昨年の衆議院選挙で「選択的夫婦別姓」がテーマの一つになった。「選択的夫婦別姓」とは夫婦別姓を選択できるということであり、夫婦同姓を否定するものではない。「選択的夫婦同姓」といっても意味は同じだ。日本の制度は「強制的夫婦同姓」である。現在96%の法律婚夫婦が男性の姓を選んでおり、女性に対する「強制的改姓」と断言できる。民法750条では「夫または妻の氏を称する」とありどちらでも選べるはずだが、ジェンダー差別があるので、女性は夫と社会から自らの名前の放棄を強制されているということだ。
世界でこの制度を採っているのは今や日本だけだ。かつては欧米も夫婦同姓を慣習としたり、強制したりする国が多かった。1970年ごろまで夫婦同姓に疑問を持つ人すら少なかったという。
しかし、その後女性の権利意識の向上により、強制的夫婦同姓が問題になってきた。名前を変えるということは、それまでの人生とアイデンティティを否定されるということである。だからこそ日本帝国主義は朝鮮人に「創氏改名」を強制したのである。
結婚により強制的に名前を変えさせることは女性のアイデンティティを壊し、男性への吸収合併を象徴するものである。結婚は男性にとって人生の通過点に過ぎないが、女性にとってはそれまでの人生の中断になってしまうことのシンボルなのだ。男性が改姓することと女性が改姓することは全く意味が違うといえる。
国連の勧告により欧米においても1990年代から夫婦別姓を選択できる国が出てきた。中国は革命時に別姓は女性の人権を尊重するものだという考え方に変更された。お隣の韓国では 日本帝国主義(以下、日帝)が植民地支配していた時代に強制した戸籍制度そのものを2005年に廃止した。
日帝は戸籍制度を朝鮮に強いたが、儒教思想による「絶対的夫婦別姓」である。つまり同姓は選択できない。女性は婚家から「外部の人」扱いをされていたので差別的な夫婦別姓制度であった。日帝は日本人には「一戸一姓」の家制度を支配の礎としたのに、朝鮮人には儒教的支配体制をそのまま温存し戸籍には夫婦別姓で記載されていた。
日本における選択的夫婦別姓の論議は、世界に決して後れを取るものではなく、1996年内閣法制審議会でまとめられた。しかし当時政権与党であった自民党の強固な反対にあい国会に上程されることはなかった。法制審で決定されたことが国会で討論されなかったことは極めて異例である。その後、論議を封殺して、いまだ選択的夫婦別姓は実現していない。

選択的夫婦別姓獲得運動

選択的夫婦別姓を要求する運動はこれまで多くの裁判などでたたかわれてきたが、2015年最高裁においては「夫婦同姓は違憲ではない」という判決が出た。原告は「氏の変更を強制されない自由」「男女の差別」を訴えたが、最高裁は「氏の変更に同意することが婚姻である」「男性の姓を選ぶことを強制していない」とし、「強制的同姓は合憲」判決を下した。2021年もこの判決を踏襲している。「しかし国会での論議に期待する」と国会に論議を促した。
これらの原告の多くは「選択的」について問題にしている場合が多く、「同姓強制は差別である」「別姓であっても婚姻の利益を得たい」といっているのであって、そもそもの戸籍制度に反対しているものは見当たらない。確かに結婚前に何らかのキャリアを積んだ女性にとっては結婚による改姓は多大な損害を与える。
例えば学者や外資系の会社で働くキャリアウーマンは、改姓によりそれまでの実績が散逸する可能性がある。また、改姓手続きもまともに取り組めば膨大で、その負担も軽視できない。女性官僚たちは自己のキャリアの継続性のために旧姓を使用している人が多い。 現在、70%の人が(結婚世代である20代30代女性だけなら80%)選択的夫婦別姓に賛成している。「自分は同姓を選んでも、他人に同姓を強制することはできない」という考え方が今の世論のスタンダードだ。また、民間においては改姓が悪用されるケースは多々ある。なぜ自民党は夫婦同姓にこだわるのか。次回に書いてみたい。(つづく)

科研費裁判判決批判
杉田水脈の主張は歴史修正主義

〈国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判(フェミ科研費裁判)〉の控訴審が大阪高裁で始まった。この記事が、『未来』352号(8面下段)にとりあげられていた。フェミ科研費裁判のいきさつについて、簡単に捕捉説明をしておきたい。
2018年3月、杉田水脈・衆院議員たちは、牟田和恵さん(当時、大阪大学人間科学研究科教授)などを標的に、フェミニズム研究者にたいして攻撃をはじめた。SNSや雑誌などで、「牟田のおこなっているジェンダー研究はねつ造であり、科研費の使用に不正があった」と執拗に語っている。
この行為にたいして、2019年2月、牟田さん及び共同研究者計4人(岡野八代同志社大学教授、伊田久美子大阪府立大学教授、古久保さくら大阪市立大学准教授=いずれも提訴時)が名誉毀損による損害賠償を求めて、京都地裁に提訴した。
2022年5月25日、その判決が京都地裁であった。判決は全面的に杉田被告を擁護する反動判決だった。特に、日本軍「慰安婦」問題について、判決は「政府見解」にそって判断をだしている。

杉田水脈の発言内容

杉田は、この時期にフェミニズム研究をなぜ攻撃の対象にしたのか。その理由は、日本軍「慰安婦」問題にある。杉田はつぎのように言っている。「『慰安婦』は個人による商売行為にすぎない。『慰安婦』が強姦されたといえば、それは事実に反するから、ねつ造に当たる。牟田や岡野は『慰安婦』制度は戦時・性奴隷制だという結論ありきで研究をしている」と。
牟田さんにたいして、杉田は 「国益に反する研究に公金を使っている。これは学術研究ではなく、反日研究だ。(反体制)活動に金をつかっている。ジェンダー研究をしている牟田和恵は1775万円もこれに使っている」とも言っている。
杉田の主張を理解するためには、ここで注釈が必要だろう。杉田はつぎのように考えている。科研費は公金なのだから、それを使った研究は「国益」のためであるべきだ。国策を批判するような研究は学問ではなく、これは左翼活動にあたる。学術研究は国益に合致するべきであり、科研費を反体制的な研究に使ってはならない。
この理屈からすれば、反体制行為をおこなう者はすべて左翼活動家であり、社会的に許されない対象となる。特に、日本軍「慰安婦」問題について、その研究をやめさせたいのだ。
杉田にとって、国とは「天皇を頂く国」ということであり、「反日」はこの「天皇の国」にそむくという意味だ。したがって、国策に反対する反体制活動家は「国賊」になる。
歴史修正主義者の発言は、右派雑誌に毎月掲載されている。杉田も歴史修正主義者だ。しかし、杉田は国会議員であり、このような差別発言をまき散らすことは許されない。この理由から、原告たちは杉田を名誉毀損で告訴した。

京都地裁の判決

京都地裁判決は、すべての争点において杉田を擁護している。判決文は、「一般読者の読み方などを基準とすると、批判的な意見や論評を述べたに過ぎない」として、「原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものではない」と言っている。
判決で問題なのは、国連における杉山晋輔・外務審議官発言を「本件見解」としていることだ。この発言は、国連の女子差別撤廃条約政府報告審査で、杉山が日本政府見解をのべたもの(2016年2月)。内容は、「『慰安婦』を強制連行したという事実はない、『性奴隷』という表現は適切ではない、募集は軍の要請を受けた業者がおこなった」というもの。
この杉山発言は、とうてい世界で通用するものではない。しかし、判決では杉山発言の内容を検討することもなく、日本軍「慰安婦」問題に関する判断の基準をここに置いている。日本軍「慰安婦」問題について、裁判官も杉田と同じ立場なのだ。

控訴審はじまる

これはもはや裁判ではない。原告は当然にも控訴した。この控訴審第1回口頭弁論が10月7日、大阪高裁で開かれた。(津村保夫)

7面

連載「プーチン論文」(本紙349〜353号)を批判する
侵略戦争をプーチン体制打倒に

侵略戦争開始に各地で反対行動(4月5日 尼崎)

ロシアの敗勢が始まった

9月21日プーチンは予備役30万人を召集する「部分動員」を発令した。ウクライナに投入されたロシア軍20万人のうち、戦死傷者と行方不明者あわせてすでに9万人以上(10月12日独立系メディア『バージニエ・イストーリー』)と、戦力が半減している。対するウクライナ軍は訓練を経て、現地の地理に習熟した現役兵だけで70万人が戦線に配備されている。戦車や航空機の基本的戦力ではいまだ10対1程度の差があるが、寸土を争う侵略戦争では人的地上戦力が勝負を決する。しかもクリミアや東部・南部の占領地では、非正規のパルチザン戦争が始まった。
対するロシアはすでに百万人以上に召集令状を発しているが、徴兵を忌避して国外避難した者がすでに30万人を超え、手足を自ら撃って徴兵逃れをする者が続出している。数合わせのために、ブリヤートやダゲスタンの少数民族地域で無差別の大量召集をかけ、刑務所の囚人を恩赦の約束で召集したり、占領地でウクライナ人を強制召集したりしている。ロシア人民の反戦闘争はふたたび燃え上がり、プーチンを決定的に追い詰めている。
情勢をさらに激化させたのがプーチンによるウクライナ東部・南部のロシアへの併合宣言である(9月30日)。約6割しか占領していないドネツクを含め4州が「永遠にロシアになる」というプーチンの宣言にもかかわらず、現状では国境さえ確定できていない。

侵略に導くプーチンの思想

プーチン論文に表れた思想は、(1)大ロシア主義、(2)スラブ主義、(3)ユーラシア主義、の3層構造をなしている。大ロシア主義とは、ロシア民族を他の一切に対する支配民族とする思想である。スラブ主義とは、西欧に対抗してスラブの統一を図るため、ウクライナとベラルーシを抱え込んで「新しいロシア」を建設することを狙いとする。ユーラシア主義とは、非スラブ民族、とくにアジアのムスリム系民族をも抱えこんで、世界帝国としてのロシアの再生ないし復活を狙う思想である。
スラブ主義を核として、すべては帝国の復活イデオロギーに行きつく。この3つの思想のカギを握るのがウクライナを民族としてロシアに従属させることである。それはこのプーチン「統一性論文」で、「真のウクライナ国の主権が、ロシアとパートナーシップを結ぶことによってのみ可能になる」という言葉につくされている。美辞麗句を省けば、「ウクライナがなくなり、大いなるロシアが復活する」ことである(侵攻2日目に誤ってロシアの国営放送で放送された予定稿、2日目には首都キーウを陥落させて、ゼレンスキー大統領を殺害、ないし捕虜として傀儡政権をつくるというプランに基づいてあらかじめ配られていた原稿に基づいている)。
これは、プーチンの思想が何よりもウクライナ人民の自決権の否定、独立ウクライナの抹殺にあることを示している。
プーチンが第2番目に支持しているのはソビエト期の大ロシア主義である。ウクライナの労働者・農民が自発的に結集し、社会主義を切り開く権力としてうちたてた中央ラーダを、1918年に赤軍を外部から導入して粉砕したこと、および1932年から33年に農業の強制集団化で5百万とも8百万人とも言われる餓死者を出したという、2度にわたる民族抹殺事例を、プーチンは無視するか誤魔化している。しかもプーチンは、レーニンがウクライナの独立共和国としての成立に努めたことを非難しているが、スターリンが犯した前記大飢餓について何の批判もせず、独ソ戦の勝者としてソ連領を広げたことを賛美している。

プーチン論文の歴史認識の犯罪性

プーチンは2004年のオレンジ革命と2014年のマイダン革命というウクライナ人民が2度にわたって腐敗した政権を乗り越え、あるいは打倒して勝ち取った地平を否定しようとしている。ウクライナ人民が「革命」と呼ぶものをあえて「西欧派のクーデタ」、「反ロシアの陰謀」、「ネオナチが主体」と呼ぶ。首都の広場を10万から20万の民衆が数カ月間も占拠し闘うことが親ナチ分子にできるなどと言う者は、革命に対する恐怖をナチス恐怖にすりかえている。
ロシアから離れることによって、ウクライナはヨーロッパの最貧国に転落したとプーチンは言う。ソ連解体、ウクライナの独立後、ロシアは旧ソ連の対外資産を独占し、原油と天然ガスの供給と価格(ヨーロッパへの中継料を含めて)を恣意的に操作してウクライナ経済を困難に追い込んだ。それだけではなく、旧ソ連時代の最大の工業地帯であるドンバスに対して、原料と販路の産業連関を破壊した。独立国家共同体で統一軍をつくり指揮権をロシアが独占するなどという提案はベラルーシを含む加盟国のどの国も受け入れなかった。
ミンスク合意2をロシア・ウクライナ間の停戦を実現したと賛美するが、これはクリミアとドンバス2州の分離・併合を独・仏を共犯として認めさせて、ウクライナに押し付けたものである、同停戦合意のもっとも重要な、国境の尊重、外国軍隊の撤兵を何度も破っているのはロシアではないか。
古代以来の歴史に関して、プーチンは、モスクワ大公国こそ古代ルーシの正当な継承者であるという。地理的・民族的にあえて言えば、ウクライナこそ正統な継承者であろう。プーチンが、ロシアの民族的・国家的起源を古代キエフ・ルーシ王国に置くのに対し、ウクライナはロシア以上にそれを主張する権利を持っているのに、それをせず、コサックの自治共同体に起源を求めている。奴隷交易によって成立していたような古代国家を起源とすることを良しとせず、「国家というよりは、戦闘集団のコミューン」(中井和夫・前掲書)であったコサックの自由で平等な共同体に起源を求めているのである。

プーチンの「偽旗作戦」

侵略したロシア軍の蛮行が目立つ。略奪して性的に暴行して家財を奪って「戦利品」として家族に送るなどが頻発する。軍事施設でもない集合住宅や学校、病院などをミサイル攻撃するのも同様である。チェチェンやシリアのように、住民に恐怖を与えて侵略と併合を認めさせることを意図しているのである。
「ウクライナが抵抗するから殺される」「NATOやアメリカが戦争を仕掛けている」「アメリカとロシアの代理戦争」「ウクライナに武器を送るな」といった無謀な意見が乱れ飛ぶ。ついには、「停戦を求めるが、ロシア軍の撤退は要求しない」という暴論まで登場している。これらの意見は、ウクライナ人民の民族的誇り、人間的な権利、いな生存権すら一顧だにしないのであろうか。いわく「民族的解放よりも階級的解放の方が優先する」という。ロシアによって踏みにじられ、奴隷の道を歩ませられようとしているウクライナ人民に、階級的解放を説教するのは「民族ニヒリズム」であり、「階級還元主義」ではないか。
またロシア系住民を保護するためという名目で軍事介入が繰り返されている。バルト3国や中央アジアの旧ソ連圏諸国にはいずれもかなりの比率でロシア系住民がいる。これはエカチェリーナ2世以来のロシアの軍事介入と領土併合の常套手段であり、イレデンティズム(失地回復運動)として知られる。ウクライナが特殊なのは、ウクライナ語が150年間にわたり禁止されたり、不利な扱いを受けてきたため、民族的出自はウクライナ人でありながら、ロシア語を母語とする人がかなりの割合でいることである。プーチンはそれらの人々をロシア人として扱い、軍事介入と領土併合の口実としている。
最後に、「ウクライナにはアメリカの生物兵器施設が30カ所以上ある」とか「アメリカの後押しで核兵器を開発している」「ウクライナはアメリカが裏から操っている傀儡政権である」、さらには最近の「ノルド・ストリームのガスパイプラインを爆破してガス漏れを起こさせたのはアメリカが高価格でガスを販売するためである」といったデマ宣伝が、軍事作戦としての「偽旗作戦」の主要手段になっている。これらのデマの最初の発信源をたどれば、ほとんどが、RT(ロシアテレビ)や「スプートニク」などのロシアの公営謀略メディアに行きつく。それがQアノンなどのトランプ支持のSNSなどを通じて世界中に拡散している。ネットを通してしか現実を見ないことで、プーチンのワナに陥るべきではない。(落合薫)

参考文献

黒川祐次著『物語ウクライナの歴史』中公新書
服部倫卓著『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』(ユーラシア・ブックレット170)東洋書店
塩原俊彦著『ウクライナ・ゲート』社会評論社
塩原俊彦著『ウクライナ2・0』社会評論社
東アジア共同体研究所編『ウクライナ危機の実相と日露関係』花伝社
アンドレイ・クルコフ著『ウクライナ日記』ホーム社
オリガ・ホメンコ著『ウクライナから愛をこめて』群像社
下斗米伸夫著『プーチンはアジアをめざす』NHK出版新書
佐藤親賢著『プーチンとG8の終焉』岩波新書 岡部直明編著『EUは危機を超えられるか』NTT出版 真野森作著『ルポ プーチンの戦争』筑摩選書 服部倫卓・原田義也編著『ウクライナを知るための65章』明石書店 小野元裕著『ウクライナ丸かじり』(ウクライナ・ブックレット1)ドニエプル出版 小野元裕著『ウクライナ侵攻に至るまで』(ドニエプル出版)

8面

長期・読み切り連載
先人たちの闘いの成功と失敗を学び現在(いま)に生かそう
大庭伸介

はじめに―宝の山に分け入ろう

今、日本の社会はぶっ壊れている。「保育園落ちた、日本死ね!」と、若い母親が怒りの声を上げたのは数年前の話だ。あれ以後さらに女性の自死が急増し、殺人事件の半数が親族殺人で占められるまでになった。この痛ましい事実が示しているように、社会の矛盾は深刻化する一方である。
旧統一教会と自民党のズブズブの関係は、底無し沼のような様相を呈している。なのに内閣打倒の声は、彼らを退陣に追い詰めるまでに至っていない。
かつて社会運動を力強くリードした労働運動は、一体どうなってしまったのか。改めて考え直してみよう。
〈継承性の欠落〉は、日本の社会運動の悪しき伝統であり、労働運動も例外ではない。しかし先人たちの闘いの成功と失敗から学ぶことは、いっぱいあるはずだ。それを怠るのは、宝の持ち腐れというものではないだろうか。
さあ、宝の山に分け入ってみよう。格差と貧困、差別と分断がすすみ、戦争ができる国へとつきすすんでいる日本社会を根っこからひっくりかえすために! 人間解放をめざす労働運動を甦らすために!
以上の観点から戦前・戦後の労働運動を、時系列にこだわらず、「読み切り連載」風に書いていく。長期に及ぶが、諸兄姉の感想や意見をお寄せいただければ大変ありがたい。

第1回
怒涛の如き労働者の進撃
悔やまれる〈革命の逸機〉@

うろたえる支配者たち
労働者を基盤にする政党が登場

1945年8月15日、大日本帝国は15年に及ぶアジア太平洋戦争に敗北し、崩壊した。支配者たちは呆然自失し、動揺はその極に達した。
とりわけ皇族たちは、パニックに陥った。そこにつけこんで景勝地にある彼らの別邸を超安値で買い漁り、跡地に高級ホテルを建てた男がいる。西武コンツェルンの創始者で、後に衆議院議長になった堤康次郎である。ホテルの名前は「プリンスホテル」。
旧徳川御三家筆頭だった名古屋の徳川侯爵家は、資産の一部を日本社会党愛知県連に寄贈したいと申し出た。名古屋の古参党員から聞いた話だ。この一族は岐阜・長野の両県にまたがる日本一広大な檜の美林や、源氏物語絵巻など国宝・重文級の名品を大量に所有していた。生き延びるため、保険をかけようとしたわけである(この話は社会党がためらっているうちに立ち消え)。
戦前、特高(特別高等警察)は社会運動や「危険思想」の持ち主とみなした者にたいする弾圧の先兵であった。「貴様は天皇陛下のために殺してもいいのだ」と、欲しいままに拷問を加え、非常に恐れられていた。しかし敗戦が近づくと、手のひらを返すように卑屈な姿勢に転じ、かつての左翼活動家に「これからどうなるのでしょうか」と尋ねて来るようになった。
敗戦の年の11月2日、日本社会党が結成された。戦前からの社会民主主義の諸派を寄せ集めた大会では「天皇陛下万歳!」を三唱した。
日本共産党は「獄中18年」の「英雄」をトップに、GHQ(連合国最高司令官総司令部)が入ったビルの前で「解放軍万歳!」を叫んだ。彼らは政治犯釈放の占領軍命令が出ても、拘禁されたままであった。彼らが出所できたのは、在日朝鮮人活動家たちの強力な働きかけの結果である。出獄歓迎大会に結集した人たちの7割以上が朝鮮人労働者であった。

戦後日本の労働運動は朝鮮人労働者の蜂起から始まった

1945年9月1日、北海道の赤平茂尻炭鉱で朝鮮人労働者1100人が食料増配と待遇改善を要求して蜂起した。戦前、彼らは日本の植民地だった朝鮮半島から大量に移住させられ、鉱山や建設現場などで危険な奴隷的労働を強制された。彼らは敗戦(彼らにとっては解放)と同時に、堰を切ったように決起したのである。
それをキッカケに日本人の炭鉱労働者が労働組合を結成し、続いて他産業の労働者も立ち上がった。1945年12月現在、全産業の労働組合の組織率は3・2%に過ぎなかった。しかし炭鉱労働者の場合は全国で35・4%、北海道では74・7%にも達した。ここから労働者の怒涛の如き快進撃が始まったのである。

労働者が自主編集した「民主読売」全国の注目を浴びる

戦時中、すべてのマスメディアが軍部に奉仕した。最も悪質だったのが読売新聞で「肉弾3勇士」などのデッチアゲ記事を扇情的に書き立て、国民の戦争熱を駆り立てた。
10月23日、読売新聞の全社員大会が開かれ、戦争責任者の社長・正力松太郎以下全役員の退陣を決議した。そして労働組合を結成し、社内の民主化と待遇改善を要求した。要求が拒否されると、労働者は直ちに自主生産闘争に突入した。正力がGHQから戦争犯罪人として公職追放されて、争議は完全に勝利した。
労働組合が編集した「民主読売」は、多くの人びとから注目され、組合結成の相談が全国から殺到した。(つづく)

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写真は前進社関西支社の垂れ幕

国葬反対闘争〜臨時国会で明らかになったことは何か。岸田政権は、統一教会問題を解決する能力はない。安倍=岸田政権はいまや統治能力を失い、岩盤右翼=統一教会と日本会議に依拠することで政権を保っているに過ぎない。また、物価高・円安対策・生活危機問題やウクライナ・安全保障問題など、混迷の危機にある。
他方で、原発依存回帰や防衛力大増強の動きが急である。にもかかわらず、反対勢力の陣形は不十分である。この情勢を転換しなくてはならない。
まず第一に、反原発闘争―老朽原発再稼働阻止と岸田の原発回帰粉砕の大爆発をかちとることである。その上に沖縄闘争の再構築だ。米中対立と「台湾(海峡)有事」キャンペーンの中で、戦争準備を進める岸田政権・日米帝国主義に対して辺野古新基地建設阻止と結合して、自衛隊南西拠点化と闘い、「沖縄戦の再来を許すな」の闘いを全国で巻き起こそう。
この間、戦闘的大衆運動を担いつつも、「れいわ」ともリンクして、衆参選挙闘争を「勝手連」で闘うなかで議会闘争にも足がかりを求めてきた。
その上でわれわれの課題としては、今のような地方政党的あり方を脱却して、全国政治の担い手として登場しなくてはならない。
そのために、関生闘争に学び、連帯しつつ、労働運動の階級的再形成の一翼を担うことが問われているし、地区党を軸に革命的左翼の組織の建設が必要だ。
ウクライナ反戦闘争については、理論闘争をおこないつつ、今日における反戦闘争を闘わなければならない。
また、ミャンマー情勢は軍事政権と闘う人民との連帯が急務だ。国民統一政府(NUG)はじめ民主勢力は蜂起宣言を発出しているのに、現状では世界も日本も連帯の闘いが小さ過ぎる。
改憲阻止と軍事大国化阻止など課題は大きい。物価急騰と円安の進行に生活危機が深まっているのに賃金は上がらず、自公政権はウクライナや台湾情勢を名目に大軍拡や敵基地攻撃能力まで言い始めた。その犠牲は人民に押し付けるのだ。もはや岸田に「黄金の3年間」はない。2023年決戦の過程で政権打倒へ追い込もう。闘う勢力の建設は急務だ。冬期カンパを訴えたい。(写真は前進社関西支社の横断幕)

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