未来・第353号


            未来第353号目次(2022年11月3日発行)

 1面  安倍政治の要=統一教会解体
     軍拡反対・生活防衛 岸田退陣を

     関生弾圧 大津コンプライアンス裁判
     弁護団被告 感動的に無罪を主張
     10月24

 2面  2022秋 関西のつどい
     沖縄・アジアと連帯強める

     維新の兵庫首長取り戦略
     11月尼崎市長選で阻止を

     変えよう!日本と世界
     重信房子さんがあいさつ
     10月16日京都

 3面   10・23通達撤回!
     学校に自由と人権を      

     辺野古新基地反対
     防衛省へ行動     

     堺 水掛祭 ミャンマー平和の祈り
     私たちは仲間 決して負けないで

 4面  9・9緊急集会 18人がアピール(下)
     国葬粉砕闘争うけつぎ岸田打倒へ

     投稿
     シルバー産業新聞社はIさんを職場に戻せ

 5面  ウクライナ戦争テーゼへの意見A

     『未来』352号 郷田意見への反論
     闘うべき相手はロシア・プーチン
     『未来』編集委員 寺田理・大久保一彦

     ゴルバチョフとプーチン
     ロシアの大衆の考え方をどうとらえるか(下)
     田中和夫

 6面  ジェンダーの視点から安倍政治を斬る A
     「ジェンダーフリー」の語をめぐる攻防
     石川 由子

     投稿
     「女性、命、自由!」(上)
     マフサ・アミニさん死亡事件に大衆決起続くイラン
     佐藤隆

     投稿
     異次元緩和の総括
     アベノミクスは失敗
     花山道夫

 7面  連載
     侵略と併合を合理化 21年7月12日付プーチン論文
     「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」D

 8面  (シネマ案内)
     『バビ・ヤール』
     監督:セルゲイ・ロズニツァ 2021年制作

     (投稿)
     盗掘されたアイヌの遺骨
     返還求めて行動

     (書評)
     『「黒い雨」訴訟』
     小山美砂著(集英社新書)

           

安倍政治の要=統一教会解体
軍拡反対・生活防衛 岸田退陣を

憲法9条を変えさせず、アジアの平和をめざして大阪市内を力強くデモ行進(10月22日)

遅きに失した山際大臣辞任

10月24日、山際大志郎経済再生大臣が、ついに辞任に追い込まれた。統一教会と自民党の癒着発覚以降、初めての大臣辞任である。山際は2019年、統一教会・韓鶴子総裁との記念写真に収まりながら、資料は1年で破棄している、集会参加は何千回、写真撮影など数えきれないと、シラを切ろうとしてきた。
しかし、ここ数年の間に統一教会の海外イベントに何回も参加したことを「記憶にない」という人物が、国会議員・大臣など務まるわけがない。今後はしないというが、何がどう間違っているか一切説明できない。辞任は遅きに失したが、岸田内閣の無責任ぶりと混迷は浮き彫りになり、「黄金の3年間」は吹っ飛び、政権末期を呈している。しかしこれで統一教会問題が終わるわけではない。

安倍自民党と統一教会の癒着

7・8安倍銃撃死から統一教会の犯罪的姿が白日の下にさらけ出されている。もともと国際勝共連合と一体で、宗教を装った資金収奪の反革命カルト集団=統一教会の犯罪行為は、安倍健在中は政治の力で抑えてきたが、7・8以降は霊感商法、高額献金、2世問題、恫喝記者会見などそのカルト的犯罪性が余すところなく露顕し、世論の8割が忌避し、もはや自民党でも擁護できなくなった。
さらに統一教会と自民党議員との間の「政策協定」が発見され、自民党の反動的政策に食い込んでいたことが暴露された。2018年の憲法改悪案は統一教会案(緊急事態条項の創設、9条に自衛隊を明記)の丸パクリであった。それ以前から統一協会は、国会周辺だけでなく地方議会のロビー活動においても、男女平等の否定、家庭教育の推進など、統一教会の思想・政策を自民党へ激しく浸透させていた。
その頂点に立っていたのが安倍晋三で、統一教会と安倍は2006年の教育基本法の改悪を先導し、改悪後はその反動的実現のため、統一教会流の家庭教育、性教育・ジェンダー平等否定、LGBTQ否定などを唱え、東京都立七生養護学校などの教育現場にも介入し、悪逆の限りを尽くしてきた。その先頭にたってきた山谷えり子らの自民党議員は、現在統一教会と無縁を装っているが、統一教会の先兵・突撃隊である山谷らを許してはならない。

被害者救済と、宗教法人格はく奪が必要

10月3日からの臨時国会はこの統一教会問題が最大の焦点ながら、岸田政権は統一教会救済のため、これをうやむやにしようとしたが、教団2世や家庭を破壊された人々の勇気ある決起が続き、被害者救済のための法律の制定が超党派で進められようとしている。文化庁の質問による解散請求でも、当初岸田は刑法犯の累積が必要としていたが、民事の違法行為でも可能と朝令暮改するなど追い詰められている。また宗教法人格のはく奪は「信教の自由」を奪うものではないことも判明している。
いまや統一教会問題は自民党のアキレス腱となった。そうだ、安倍・菅・岸田政権は、統一教会や日本会議という岩盤右派と小選挙区制という選挙制度に支えられ2012年体制を維持してきた。アベノミクスの失敗を恫喝的に封殺し、モリ・カケ・桜の政治腐敗や、反動法案の強行が続きながらも、安倍の支配が維持できたのは、統一教会ら岩盤右派による選挙勝利・清和会(安倍派)支配があったからだ。それが安倍の死亡後、大きく揺らぎ始めている。今こそ安倍政治を支えてきた統一教会の解体を闘いとろう。

市民生活破壊の軍事拡張・原発推進

10月に入り政治の無策により猛烈な物価高が庶民を襲っている。生鮮食品だけでなく、パン・食用油・食料品などの大幅値上げ、電気・ガスの高騰に生活苦が急激に進んでいる。スーパーでは夕方50%割引の食品に人々が群がる。賃金は上がらず消費税は10%のままだ。円安による外国人観光客収入など焼け石に水で、1カ月で3%の物価高に打つ手なしの岸田政権に愛想がつき始めている。生活できる賃金・年金をよこせ。最低賃金を時給1500円に。高額所得者へ累進課税を。大企業の内部留保を吐き出させろ、などの要求を掲げて行動を起こそう。
かかる生活危機のなかでも軍事予算を5兆円から10兆円に2倍化し、その財源を福祉・医療・教育費に求めようとしている。アジア近隣諸国との外交・友好関係を破壊し、近隣に「敵国」を作り軍備拡大と排外主義をあおり、年末までに防衛3文書を仕上げようとしている。電力危機などと言って原発新増設、40年超え老朽原発を「合法化」しようとしている。
もはや今秋、今冬岸田政権への怒りは爆発不可避だ。維新の改憲を容認する立憲一部指導部と既成野党の屈服を許さず、国会での闘いと連携し、生活防衛・軍拡反対の行動を巻き起こそう。統一教会救済と生活苦強制を許してはならない。
山際辞任につづき、細田博之衆議院議長の辞任を。山谷えり子・杉田水脈ら統一教会の先兵を国会から追放し、安倍派の解体から自民党の総瓦解を実現していこう。

関生弾圧 大津コンプライアンス裁判
弁護団被告 感動的に無罪を主張
10月24

裁判後の報告集会

一連の関西生コン支部弾圧の頂点にある「大津地裁コンプラ活動裁判」の最終意見陳述が、10月24日午前10時から午後5時まで休憩をはさみ5時間半にわたりおこなわれた。
永嶋靖久弁護士、太田健義弁護士、森博行弁護士をはじめとする弁護団は、関西生コン支部を暴力集団のように扱い労働法の適用外に置こうとする検察を徹底弾劾し、それよりも関生支部が業界全体の社会的地位向上のために率先してコンプライアンス(法令順守)活動をしてきたことの意義と正当性を堂々と主張した。また検察・警察の時間をずらしての系統的な逮捕・起訴・長期勾留は、「連帯(労組)を削る」(多田副検事の言辞)ためで、不当弾圧以外の何物でもないと説得力ある主張をおこなった。
最後に30分ほど湯川裕司委員長を先頭とする6人の被告が、それぞれの立場から自分たちは無罪であることを訴えた。この胸を打つ弁護団と被告たちの訴えに、法廷では思わず拍手が起こり、裁判長もそれを止めることはなかった。
歴史に残る関生弾圧大津コンプラ裁判の判決公判は、2023年3月2日、午後1時30分、大津地裁でおこわれる。(詳報次号)

2面

2022秋 関西のつどい
沖縄・アジアと連帯強める

10月22日大阪市内で「とめよう! 戦争への道 めざそう! アジアの平和 2022秋 関西のつどい」が600人の参加で開催された(写真左)
集会は大阪平和人権センター理事長の米田彰男さんの主催者挨拶に続き、最初の講演は沖縄選出の社民党衆議院議員の新垣邦男さんが登壇した。新垣さんは北中城村長4期目の時、照屋寛徳さんの後継として国会議員になり、現在国会で奮闘中。本来自治体職員・首長として地元住民のために働いてきたが、強い要請のもと照屋さんの後継に。国会に行ってつくづく保守系議員が沖縄のことを全く理解していないことを実感したと語った。沖縄では4回にわたる選挙で辺野古新基地反対の民意を示しているのに、辺野古新基地建設が前提で話が進められる。マスコミも軟弱地盤の問題などないかのように報道。私は少数でも正しいことを言い続けて行くと述べた。
次に連帯挨拶として、大阪大学名誉教授の藤本和貴夫さんがウクライナ戦争が始まってから中立国に停戦仲介を求める申し入れをおこなった。簡単に成果は出ないが諦めずに活動していくと発言。
続いての講演は、新潟国際情報大学教授の佐々木寛さんで、「大軍拡、改憲を撃つ」と題して話した。佐々木さんの話はまずウクライナ戦争はロシアによる侵略戦争であることは間違いないが、ゼレンスキーは国内の徴兵適齢男子の出国を禁止している、これはある種の軍国主義といえる。またバイデン大統領の息子がウクライナの天然ガス会社の役員でもあるという関係もある。しかしこの戦争から世界各国の軍拡競争が拡大すると、敵国よりも強力な武器をと考えると際限がなくなる。特に核兵器はもし使用されれば、全世界が破滅することは明らかだ。また原発は原爆を抱えているようなもので、これへの攻撃は許されないとした。
さらに佐々木さんは「地域分散ネットワーク型社会」へを提唱している。「民主主義の下部構造」を再構築するために、地方に発する大きな可能性として「コミュニティ・パワー」を挙げる。再生可能エネルギーによる地域開発を探求する「コミュニティ・パワー」は、すでに日本国内に大小300以上存在するが、従来の「反原発」から歩みを進め、地球温暖化問題を克服し、「脱原発」「卒原発」するための経済的・社会的な基本条件を、市民自らが作り出す試みである。地域に存在する自然エネルギーを活用し、地産地消のエネルギー開発を促進することで、地域から首都圏に流出する資金や雇用を地域内に再循環させる仕組みを創り出す必要があると訴えた。
後でレジメをじっくり読んだら、佐々木さんはただ講演するだけの学者ではなく、2016年の新潟県知事選挙で米山隆一氏を当選させ、森裕子さんらと野党共闘を進めるなど、今一番元気な新潟の野党共闘で活動する知識人だと分かった。ここらの話が聞けなかったのは残念だったが、集会後は扇町公園まで皆で元気にデモ行進をした。(大北健三)

維新の兵庫首長取り戦略
11月尼崎市長選で阻止を

昨年衆議院選と本年参議院選で「躍進」した維新だが、大阪以外では参議院選京都での敗北など限界も見せた。そのため維新は、大阪型の自治体選挙(市議選、市長選)での勝利の積み上げの上に党勢を拡大し、全国制覇に向かうことを今一度基本戦略と措定しなおした。その際の最大のターゲットが、得票数ではすでに自民党を上回り国会議員8人を擁する兵庫県である。このため1月維新塾で馬場幹事長(当時)は、3月西宮市長選をその突破口として位置付けたが、その強引な政治手法が西宮市民の拒絶にあいダブルスコアで敗退し、10月川西市長選では独自候補を立てることができなかった。
11月尼崎市長選(20日投開票)では、当初から維新は候補者擁立を準備してきたが、その予定候補が会派の政務活動費を個人的に流用し維新を除名に。もともと尼崎では、維新の国会議員・県議と市議団が激しく対立し、市議団の代表格人物の除名でさらに混迷。他方現職市長も前市長後継として労働福祉会館の廃止・市役所業務の外注化などをすすめるなど労働者軽視・新自由主義の色彩もあり、4期目立候補を辞退し後継を前教育長とした。この期とばかり西宮での失敗に懲りず、維新は大阪に隣接する自治体の首長取りに政治経験なしの新人を擁立。
兵庫県東部の阪神間では、得票数では維新が第一の市が多いが、その政治的稚拙さ(21年4月宝塚市長選、22年西宮市長選敗北など)により維新の実績は何もない。しかしながら市役所業務の民営化・外注化、公共施設の統廃合、幼稚園・保育所の統廃合などは、尼崎・伊丹・川西などどの市でも進められており、新自由主義の基盤は横溢している。ここを狙っての今次尼崎市長選への維新候補の擁立である。
私たちは反維新での全勢力の結集とともに、反維新陣営は選挙活動だけでなく、子育て支援の具体化(子どもの居場所確保、中学校給食の更なる充実など)、地域自治の取戻しなどの政策を反維新市長に実行させる地域基盤づくりを進めていかなくてはならない。この間の各地の市議選でも、新自由主義派・右派の跳梁は激しく、「市民派」の苦闘も続いている。地域に根差した自治の創設の中から、一部保守・中間派も糾合し、11月尼崎市長選で松本眞候補の勝利で維新を敗退させ、23年統一地方選勝利へ地歩を進めていこう。

変えよう!日本と世界
重信房子さんがあいさつ
10月16日京都

10月16日、京都円山野外音楽堂で450人が集まり「変えよう!日本と世界」集会がおこなわれた。毎年、国際反戦デーに合わせてひらかれている「反戦・反貧困・反差別共同行動in京都」で、今回で第16回目。

2012年体制

開会あいさつの後、代表世話人の新開純也さんが基調提起。安倍政治を継続する「2012年体制」を断固として粉砕し、岸田政権・自公政権を打倒すると訴えた。ウクライナでの戦争は、プーチンの大ロシア主義に基づいた侵略戦争である一方、これを口実にした世界的な軍拡を許してはならない。ウクライナ、ロシアの人々と連帯して戦争を止めないといけない。新自由主義に対抗するオルタナティブ、新たな「社会主義」を掲げる政治勢力が必要である。自治体で公共性や自治を取り戻す運動に注目するとともに、新しい労働運動の復権との結合だ、と提起した。

自民党の解体を

「しないさせない! 戦争協力」関西ネットワークの中北龍太郎さんが連帯のあいさつをおこない、続いて、木戸衛一さん(阪大教授/ドイツ現代政治・平和研究専攻)が講演をおこなった。
木戸さんは「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し保護することは、あらゆる国家権力の義務である」というドイツ連邦共和国基本法第1条は世界的な普遍性を持っていると紹介。
現代のドイツは社会民主党・緑の党・自由民主党(これはネオリベ)の連立政権なのだが、ウクライナへの軍事支援が始まり、武器輸出もおこなわれている。「軍拡をやれば福祉や教育にお金がまわらない。ドイツでも国民の16・6%、8人に1人が貧困に陥っており、子どもの貧困は5人に1人である。
ドイツのみならず、世界もまた転換期である…格差・貧困、気候危機、パンデミック、戦争、インフレ、食糧・エネルギー危機など、文明に起因する問題に直面している。日本の状況は「2012年体制」という捉え方に賛成である。「安倍国葬」は安倍政治の継続だ。安倍、菅、岸田の「日本型オリガルヒ」は「(半)カルト国家」「無責任の体系」…「無責任の体制」を完成させたのはヒロヒト天皇であり、安倍は21世紀の無責任体制の象徴的人物である。そして合理的思考を停止させるための装置としての反共主義がある。自民党を解体していく…そのためには、政治のフェミナイゼーション(女性化)と若い人たちを取り込んでいくことが、民衆運動の課題であると訴えた。

資本主義を肯定しない抵抗の拠点

つづいて、菅孝行さんが「モリ・カケ・サクラの仕上げが統一教会問題だ。資本主義を肯定しないアジール・抵抗の拠点をつくっていこう」と述べた。さらに、「ウトロを守る会」副代表の、斎藤正樹さんが特別アピール。
趙博さんなどによるミニライブに続いて元日本赤軍・重信房子さんが登壇。5月に刑を終えて出所してから、初めて公的な場で講演をするということで、マスコミ各社も取材に来ていた。重信さんは「政治を変える、自民党を変えないといけない。これから、私もその一人として参加したい」と、再出発についての思いをおだやかに語られた。さらに娘さんの重信メイさんも登壇。
集会後、観光客もかなり戻って結構にぎわう京都の街を市役所までデモ行進した。(千田徹)

3面

10・23通達撤回!
学校に自由と人権を

10月23日、都内で「憲法を変えさせない! 誰も戦場に送らせない! 〜『日の丸・君が代』強制反対! 10・23通達撤回! 〜 学校に自由と人権を!10・23集会」が開かれ、127人の労働者・市民が集まった。主催は、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会など10団体。
冒頭、〈被処分者の会〉近藤徹さんが主催者あいさつ。「10・23通達から今日でちょうど19年。述べ484人が処分された」「コロナで卒業式を短縮しても、君が代の演奏はおこなわれる。歌わないのに起立させられる」「7月12日の安倍家の家族葬に合わせて都教委から『特段のご配慮』を求める通達が来た。強制ではないとしていたが、こちらが注意して見た所(※学校)は全て半旗が上がっていた」

危機感が足りない

小澤隆一さん(憲法学、日本学術会議のメンバーとしての任命を菅内閣によって拒否された六人のうちの一人、東京慈恵医大教授)が講演。
「20数年間、憲法改悪に向けた動きが続いてきた。皆さんが10・23通達に抗して闘ってきたからこそ、一方的な国葬決定への抵抗の声が湧き起こった。様々な法改定を安倍政権の成果として、それを引き継ぐと岸田総理が弔辞で述べた。改憲を国葬で進めようとしたが、すぐにはできない」「自民党は改憲を前面に出した『緊急事態』の想定についてはごまかしているが、維新は(緊急事態条項創設を公約とし、その想定として)『他国からの武力攻撃・内乱』を挙げている」「(2018年3月26日付自民党憲法改正推進本部『憲法改正に関する議論の状況について』に示された改憲案で)緊急事態では国会は開会し、解散禁止、不信任決議禁止」「敵基地攻撃能力を使うのはまず防空能力を叩くから、全面戦争になる。まだまだ(世論の)危機感が足りない」「『9条に自衛隊を明記する』ことに賛同が多いのは問題点が広まっていないから」「自民党改憲案で『指揮権』を明示している」「(有事を理由とした)選挙の繰り延べを図っている。(現行制度で)参院については任期切れは半分しかいないから任期延長の必要がない」「改憲案で謳われる『教育の充実』は巧妙。教育への国家の介入が狙われる。親と教師の教育内容の決定権が『教育は国の義務』とすることで奪われる」

被処分者が特別報告

「演歌師」(川上音二郎が始めた本来の演歌)の岡大介さんが「カンカラ三線」(沖縄戦で収容された住民が空き缶等で作った三線)を弾きながら風刺の歌を歌った。
特別報告として、東京「君が代」裁判五次訴訟原告団がステージ登壇、鈴木毅さんが発言。「第三次訴訟が終わって再処分が出され、第四次訴訟が終わって雇い止めが出ている。減給処分以上の処分は取り消しになったが、再処分で戒告となった。ランクを下げて処分してくる」「(再任用拒否ができなくなって)年金支給開始の65歳まで再任用されるが、支給開始の早い人に切り込みを入れてくる」
原告の川村佐和さんは「職場の過半数が10・23通達を知らない。都教委から『年金支給年齢から(再任用で)採用しない』と事前告知されながら、毎年、再任用の研修を受け続けた。面接・面談はなかった。研修申込書を出し直してくれと(管理職に)言われて用紙をもらったら、処分歴の欄があった」と語った。

ILO・ユネスコ勧告

同じく特別報告として、ILO・ユネスコからの勧告について被処分者弁護団が発言。「ILO・ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会(CEART)から2019年に国旗・国歌をめぐる処分について是正勧告が出ていた。1966年に定められた教員の地位に関する勧告に抵触すると。『国際基準からすれば教員の地位は認められる』『国旗国歌強制は(間接的ではなく直接の)制約』『(不起立等は)式典を妨害するものではない』とした。日本政府は、『(指導・命令や処分が)合法である』『国連の勧告には法的拘束力はない』と言っている。交渉で都教委は勧告について『コメントする立場にない』とした。これらをまとめて報告したら再勧告が出た。日本政府への指南として『勧告を翻訳して教員団体と話し合うように』『自治体教育委員会とも情報共有を』としている」「8月と10月に文科省に申し入れした。文科省は『検討中』と言っている」
会場全体で、「何よりも『子どもたちを再び戦場に送らない』ために!」として広範な教職員、保護者、労働者、市民に共に闘うことを呼びかける集会アピールを採択して集会を終わった。(町田透)

辺野古新基地反対
防衛省へ行動

10月3日夕方、東京・防衛省前で「辺野古新基地建設の強行を許さない! 防衛省抗議・申し入れ行動」が行われ、多くの市民が駆けつけた(写真上)。神奈川・横田・練馬等の地域で闘う人々がアピールし、沖縄現地から電話で山城博治さんがアピールした。主催は、辺野古への基地建設を許さない実行委員会。

堺 水掛祭 ミャンマー平和の祈り 私たちは仲間 決して負けないで

9月24日11時〜17時、ミャンマー平和の祈りとして堺水掛祭がおこなわれた。主催は、堺水掛祭実行委員会と堺国際市民劇団で、堺市と堺市教育委員会が後援した。

開催に込められた思い

堺水掛祭のホームページには次のように記載されている。
「水掛祭は、4月ごろの東南アジアの伝統的新年に先立って、古い年の罪や穢れを洗い流すお祭りです。ミャンマーは水掛祭が最も盛んに行われる国の一つですが、クーデター以降まともに行われていません。私たちは同じアジアの仲間として、今大変な思いをしているミャンマーの人たちのために、平和への祈りを込めて水掛祭を堺で開催することにしました。文化は国境を越えて人々をつなげ、芸術こそ人を踏みつけにする暴力に対抗する力をもつと私たちは確信しています。」

画期的な開催

2021年2月1日のクーデターから1年8カ月。日本政府が事実上国軍を支持する中で、「平和への祈り」を込めたミャンマーの水掛祭が開催されたことは画期的なことである。同祭りには国民統一政府(NUG)駐日代表のソー・バ・ラ・ティンさんとロヒンギャの日本代表が参加する予定だったが、台風の関係で来れなかった。ソー・バ・ラ・ティンさんやロヒンギャの日本代表の声を直接聞けなかったのは残念だった。

多彩な演目

最初に、在日ミャンマー人のChoChoAyeさんたちと堺国際市民劇団による歌と踊りが披露された。次に、家族用に「未来流忍者」のショーがあり、その後、「春の革命」と題する歌と踊りがあった。「春の革命」とはクーデターに対するミャンマー民衆の抵抗闘争のことである。ミャンマーでも日本でも、全世界で「春の革命」というさまざまな闘いがおこなわれている。
クライマックスは、レミゼラブルの中で歌われる革命歌「民衆の歌」とミャンマーの抵抗・革命の歌である「カバーマチェブー」の全員での合唱のときだ。
レミゼラブルの「民衆の歌」の「戦う者の歌が聴こえるか 列に入れよ、我らの味方に 流す血潮が潤す祖国を 屍を越えて拓け」という詩(岩谷時子訳)は「カバーマチェブー」の詩と重なる。「カバーマチェブー」は「我らの血が刻んできた歴史、革命という名の民主化運動で命を落とした勇者たちよ、殉難者が宿るわが国家、勇敢なる国家よ、たとえどんなに離れていても、いつだってみんなの心は一つ、いっしょに戦おう、私たちは仲間、けっして負けないで」という詩だ。この歌は1988年の民主化運動の中で広がり、歌いつがれてきたものである。

トークショー

「ミャンマーの今」と題するトークショーでアウン・ミャッ・ウィンさんは概略以下のように述べた。
「クーデターされてむしろよかったと思う。それまでのミャンマーはニセの民主国家だった。だから僕は選挙には一度も行ったことがない。今回のクーデターで敵は誰なのかという線を若い人たちははっきり見たんだと思う。これまでロヒンギャやラカイン族に対する偏見もあったが、自分たちにやられていることはロヒンギャやラカイン族等に対してやられていることと同じと気づいたんです。敵はテロ軍隊としての国軍だと。みんな肌でわかったんだと思います。だから、僕たちは、団結して独裁・軍事政権を倒すしかない。」

日本での闘いを

まず、日本政府の許しがたい対応を多くの日本人に知らせていくことが必要だ。クーデター後、国軍は在日ミャンマー大使館に職員を派遣して民主派政府の外交官を追い出し、日本政府は国軍派遣職員に外交官ビザを発給している。今、この国軍職員が「ミャンマー大使」と名乗り、安倍の国葬に参加するというのだ。
9月26日18時30分から神戸三宮センター街東口でミャンマー国軍招致に抗議する行動がおこなわれる。連帯して日本での抗議行動を拡大していこう。(三船二郎)

4面

9・9緊急集会 18人がアピール(下)
国葬粉砕闘争うけつぎ岸田打倒へ

9月9日大阪市内で、やめろ! 安倍国葬緊急集会が、会場あふれる250人で開かれた。今後につながる主要な発言を本紙351号につづき掲載する。(文責:本紙編集委員会)

〈「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク〉

事務局長の山田光一さんが発言。大阪府、市は、「君が代」斉唱時、不起立3回で免職にするという。しかし、いままで免職させていない。事実上(免職は)できない。裁判でも一定の勝利だ。
今回の問題は同根の問題と思う。文科省・府教委へ〈半旗・黙とうやめろ〉と要請している。吉村知事、43教委・市に回答を求めている。回答の多くは情勢をみて判断すると、まったく主体性がない。箕面市は「なんら判断していない」。国葬批判が高まった中で雰囲気が変わり、教育委員会は「強制しない」と言わざるを得ない。文科省も「強制しない」と通知。摂津市は、「今後も通知出すことは検討していない」となった。大阪市は官僚的で、今回、注目しているのは吹田市。安倍家葬儀の時に、弔旗をかかげているが、国葬については、「対応をみたい」だったのが、本日の市議会で「やらない」ということになったと聞いている。住んでいる自治体で声を届け断念させていく。

 

〈大阪全労協〉

 事務局長の竹林隆さんが発言。大阪全労協は、労働組合ナショナルセンターの地方組織。連合や全労連と比べると小さいが、様々な取り組みをしている。コロナ危機で労働相談の電話がたくさんかかってきた。コロナ1年目の時、4月緊急事態で「出勤するな」、「子どもが学校に行けない」「とにかくお金がない」と。「会社は手続きしてくれない」「涙が出てくる」・・等々の相談の中でわかってきたのは、働いている人の多くは法律がない。法律が機能してない。就業規則を見たことがない、始業・終業時間とか、手当、残業など、労働基準法が多くのところで守られてない。何の援助も行政はしていない。9割以上は非正規。日本全体の中で40%。最近、その数字に出てない人が多くいる。6〜7割がそうなっているのでは。安倍の新自由主義、第2次政権、団交を申し入れても対応に出てくるのは弁護士。労働委員会で勝利しても、相手は守ることをしない。安倍のような人間を国葬にするわけにはいかない。

〈日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク〉

 私たちの運動の立場から国葬反対の声を伝えていきたい。安倍元首相は嘘つきで2000年の女性国際戦犯法廷が開催されたとき、これを取材したETV特集に対して、NHKに恫喝をかけて改ざんさせた。憲法改正と戦争のできる国を目指して、かつての侵略戦争や慰安婦問題の歴史を消し去ろうと日本軍の関与や強制性を認めた河野談話の「見直し」に執念をもやした。
2007年には慰安婦問題について「強制連行を直接示す証拠はない」と閣議決定。アメリカのワシントンポストへの「慰安婦は嘘」というヘイト的な意見広告に歴史修正主義者とともに名を連ねた。
2014年に朝日新聞バッシングでは安倍によるメディアを思いのままに支配したいという意図的な狙い撃ちだった。過去に産経も含めて各紙が取り上げた吉田清治氏の証言報道を理由にして朝日新聞を「慰安婦問題をねつ造し世界に広めた」「日本を貶めた元凶」とこんな無理筋な主張を右派論壇を使って宣伝し、植村記者バッシング。こうした恐ろしい出来事があり、メディアでは慰安婦問題がタブー視される事態が起きた。
2015年12月日韓外相によって日韓合意が発表され、一方的に慰安婦問題の最終的・不可逆的解決が宣言された。この時、安倍は朴槿恵大統領に電話で謝罪したというものの、国会で謝罪の言葉を促されても拒否して「二度と口にしない」というむしろ被害者を侮辱する姿勢だった。
15年8月、安倍は戦後70年談話を発表。河野談話の3倍の長さに慰安婦の言葉は一言もない。子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないとした。加害の歴史に向き合うことを拒否し、人々の記憶からこの問題を消去しようとすることは、次世代から平和と人権のあるべき未来を奪うことに他ならない。韓国政府に「性奴隷」という言葉を禁じ、各国に建てられた少女像の撤去を公然と要請する姿勢は現首相=岸田にも引き継がれている。過去の戦争を美化し加害の歴史の事実と責任から目をそむけ、次の戦争へ準備をつづけてきた安倍元首相の死を政治利用する国葬に反対する。

会場いっぱいの参加者(9月9日、大阪市)

〈とめよう改憲! おおさかネットワーク〉

松岡幹雄さんが発言。第一次安倍政権が発足し、改憲の危機だということでネットワークがスタートした。それからもう16年間、安倍改憲との闘いが続いている。安倍元首相は倒れた。しかし、安倍改憲路線がこれで終わったのかといえば、全くそうではないと思う。今回の国葬強行は、8年8カ月の安倍政治の偉業ということでなされて、そして、安倍なきあとの安倍改憲を岸田政権が引き継いで継承していくという宣言に他ならないのではないか。清和会も実はガタガタで改憲派というのは、今すごい困難に直面している。
実は、統一教会=勝共連合によって自民党の改憲案がつくられてきた。勝共連合の改憲案は実は一つ目に緊急事態条項の創設。二つ目に9条に自衛隊を明記する。自民党の改憲4項目と全く同じです。
2018年自民党の改憲草案は完全に勝共連合の改憲案のパクリであった。このことを暴露していきながら、新たな反改憲の闘いをつくっていく必要がある。岸田首相も今年の5月3日の憲法集会で真っ先に言ったのは、緊急事態条項の創設だった。
安倍国葬というのは、法的根拠も一切なくて、内閣が、岸田首相の一存で決めた。まさに緊急事態条項の先取りではないか。しかも、閉会中審査の中でも、国葬は「時々の政権の判断だ」というふうに言った。これは非常に恐ろしい、危ない判断だと思います。こういう岸田政権が進めようとしている改憲路線というのは、まさに緊急事態条項の問題も含めて改憲の先取りとしての国葬ではないか。このことを強く反対を訴える必要があると私たちは思っている。
最後に、閉会中審査で「ていねいな説明をやった」と言いましたがこれで本当に市民、国民は納得したのかということです。してないですよね。国葬中止の闘いから秋の反改憲の運動、そして野党共闘を再構築し、改憲派がいう「黄金の3年間」を阻止する。そのために力をあわせていきたい。

投稿
シルバー産業新聞社はIさんを職場に戻せ

10月21日、大阪市中央区に本社があるシルバー産業新聞社に対する申し入れと社前抗議行動が50人の結集でたたかわれた。東京から争議当該のIさんと所属組合の全国一般労働組合東京南部も結集してたたかわれ、ユニオンネットワークの呼びかけに応えた京都、兵庫、大阪の仲間が参加した(写真)
Iさんは今年4月、新卒で無期雇用の正社員として福祉・介護業界の専門紙であるシルバー産業新聞社に入社し、東京支社に勤務していた。しかし、会社はIさんに一方的に退職勧奨をおこない、会社は7月の団交の場で不当にも3カ月の契約社員への契約変更にサインすることをIさんに強要し、Iさんが契約社員への労働条件の変更は無効であると主張すると10月末までの自宅待機命令を出してきた。9月30日の団体交渉では、会社はついにIさんに対する雇い止め解雇を通告してきた。

解雇撤回を求める要求書

10月21日の申し入れ行動で、当該のIさんは会社に対して解雇撤回等を求める要求書を提出し、会社に誠実かつ誠意ある対応を求めた。しかし、不在の社長に社員が電話すると「今、取材中」というのみで社長はIさんに誠実に対応しようとしなかった。

謝罪し、解雇を撤回せよ

Iさんは「社長の気分一つで社員の身分が変えられ、事実上のクビにできる先例ができてしまうことになれば、職場環境がこれまで以上に不安なものになるのは明白です」と職場の仲間に訴えている。
Iさんの闘いはIさんだけでなく、職場の働く仲間全体のものでもある。今、「社長の気分一つ」でクビにされる職場があまりにも多い。Iさんの解雇撤回闘争をとおしてIさんだけでなく、社会にあふれる働く者の無権利状態の改善をなんとしてもかちとっていこう。

勝利するまで闘う

Iさんは社前行動でマイクを握り「こんな不当解雇は許せない、勝利するまで闘う」と決意表明し、全国一般労働組合東京南部は労働争議への突入を宣言し、おおさかユニオンネットワークは勝利するまでともに闘うことを宣言した。私たちはシルバー産業新聞社に対する闘いをさらにとりくんでいく決意である。(今里章)

5面

ウクライナ戦争テーゼへの意見A

『未来』352号 郷田意見への反論
闘うべき相手はロシア・プーチン
『未来』編集委員 寺田理・大久保一彦

『未来』352号に、郷田剛さんの意見が掲載されている。郷田さんは、ウクライナ国内の階級矛盾をとりあげ、「ウクライナ人民はプーチンの戦争と闘うとともに、ゼレンスキー政権とも戦うべきだ」と述べている。この間の『未来』の論調、「ウクライナ戦争テーゼ」に対する代表的反対意見なので、以下これにたいする反論をしたい。

(1)ロシアによる侵略戦争

まず議論にあたって、共通の認識として、以下のことを確認しておきたい。この戦争はロシアによる侵略戦争であり、ウクライナ人民の抵抗闘争であることだ。ウクライナは資本主義体制であり、ゼレンスキーは資本家階級を代表する政治家で、欧米の武器援助はウクライナを勢力圏に取り込むためであること。これらの点では一致できると思う。
そのうえで最初に帰るが、この戦争は、プーチンの「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」論文を根拠にした侵略戦争であるということだ。プーチンは「ロシアとウクライナは一体で、全体を統括するロシア政権に歯向かうことを許さない」と言っているのだ。またプーチンは原発攻撃や核の恫喝を繰り返している。ミサイルでの無差別攻撃や市民への虐殺行為。住民の主体を無視した「住民投票」と「ロシアへの併合」。これらの一連の行動は断じて認めるわけにはいかない。
何故にこんなことが起きているのか、この理由を革命運動の立場から解明すべきだ。一部にはウクライナに問題があるからのような議論もある。それは「ロシアは経済大国で、理由もなく一方的に侵略戦争をするはずがない」とか、ソ連崩壊後のロシアに対し、未だ社会主義の幻想を持ち、「社会主義国は平和勢力」という意識があるからではないか。2月24日の戦争開始直前まで「戦争はない」と機関紙1面で論じていた「国政政党」もあったほどだ。

(2)階級対立と民族問題

郷田さんは、次のように言っている。ウクライナは資本主義体制であり階級対立がある。だからウクライナ人民の闘いは「ゼレンスキー政権にも反対」でなければならない。階級対立を重視すべきであって、ウクライナ民族主義を優先するべきではない。まとめれば、こういうことになると思う。
民族問題を理解するうえで、この議論は重要なところだ。階級対立論と民族抑圧論は重要なテーマだが抽象的に議論されるべきではない。公式的に不等式が成り立つわけでもない。現実を見て具体的に考えていく課題なのだ。今回の戦争でウクライナ人民は多くの犠牲者を出しながら、ロシアに反撃している。ウクライナ人民は、ロシアの横暴な侵略行為にたいして、戦わなければ殺されるから、土地と命を守るため戦っている。ゼレンスキー政権のために戦っているのではない。国外に避難する人たちも心の中は同じ思いだろう。
戦前日本の中国侵略にたいして、蒋介石(国民党)軍が武装抵抗した。この時蒋介石は民族資本(資本家)の代表だから、中国労働者階級は、日本軍とも蒋介石軍とも戦え、というのだろうか。中国人民は当初蒋介石軍の下にあったが、日本軍との闘いの中で中国人民を裏切る蒋介石軍とは別個の解放勢力=毛沢東(八路軍)を育てた。
現在ウクライナにもロシア軍とパルチザン戦争を戦う勢力は存在し、社会主義勢力も声明を発している。この勢力は解放に応じて、ウクライナの右翼・民族主義者や、資本家たちと闘うだろう。我々は断固この立場に立つ。しかし今の段階で、ロシア軍と同列にして「ゼレンスキーにも反対」のスローガンは、当事者に受け入れられるであろうか。日々殺されているウクライナ人民にとってみれば、「君たちのやっている戦いはまちがいだから、戦いをやめろ」と同等ではないか。ウクライナの解放主体を否定する「傲慢」な主張ではないのか。

(3)ウクライナ人民はロシアの被抑圧民族

民族主義はやっかいだ。抑圧国の民族主義は排外的であり、日本をはじめ帝国主義国の民族主義には無条件に反対するべきだ。ロシア国内の大国主義的民族問題は存在し、プーチンの「大ロシア主義」は革命以前のロシア帝国並みである。他方で被抑圧民族の民族主義は排外的でない限り、全否定されるべきものではない。諸民族が混在する国の民族問題においても、被抑圧民族の自己決定権は認められなければならない。
郷田さんは歴史的にウクライナの民族主義を認めている。しかし、現在においてどうなのかは必ずしも明確でない。階級矛盾を主題とすると、どうしても民族問題は消えてしまう。ロシアとの関係において、現在でもウクライナは被抑圧民族であることは、21年の「プーチン論文」で、プーチンが大ロシア主義的に明らかにしている。

(4)日本人民はこの戦争に反対する

岸田文雄首相は、ウクライナ侵略について「他人事ではなく、自分の国の事として受け止めよ」と叫び国会決議を上げ、「台湾有事は日本有事」と言い、戦時体制構築・軍事力2倍化を狙っている。これにだまされてはいけない。台湾は中国内部の問題で、その将来は中国人民が決めることだ。日本人民は、台湾・中国に戦争を仕掛けようとする日本帝国主義と闘うことだ。ウクライナ人民の解放の戦いに連帯し、正しい意味で自分の事として受け止めて、核兵器使用恫喝もおこなう、この侵略戦争に反対していくことだ。
現実に、ウクライナで住民が無慈悲に殺されている。共産主義者であればこそ、このことを正面課題にすえて、この事態を問題にする必要がある。民間人をも殺戮してやまないロシアを徹底的に批判し、この戦争をやめさせよう。日本においてもウクライナで戦っている人民と連帯していこう。ロシア国内での、戦争動員を拒否し、戦争に反対する人民と連帯し、プーチンの不正義にたいして怒りをぶつけよう。闘うスローガンは、「プーチン政権もゼレンスキー政権にも反対」ではなく、「ロシアの侵略戦争に反対。プーチンはただちにウクライナから撤兵せよ」となるのではなかろうか。

ゴルバチョフとプーチン
ロシアの大衆の考え方をどうとらえるか(下)
田中和夫

(承前)

そのことによってのみ、西欧は「豊かな国」になった。決して白人が勤勉で、知的で、優秀だったからではない。

4 「21世紀のレコンキスタ」は正義か

欧米は今、とりわけ中国などの追い上げにあい、軍事的経済的にどん詰まりに陥って、今までの優越した地位から転落しかかっている。その最後のあがきとして、ユーラシアの征服により活路を見出そうともがいている。アゾフ(とその背後の英米支配層)は「21世紀のレコンキスタ」として完遂する、と息巻いている。

注:「レコンキスタ」
失地回復運動、800年頃からイスラム勢力が北アフリカからジブラルタル海峡を越えてイベリア半島に侵入、ヨーロッパを席巻しようとしたが、ピレネー山脈で欧州キリスト教勢力が食い止め、1450年頃ようやく、イスラム勢力をイベリア半島から駆逐した。これに倣って、今、窮地に追い込まれつつある欧米白人勢力が、世界を再征服する構想を「21世紀のレコンキスタ」という。その足掛かりとして東欧をイスラエルのような白人国家の拠点にする構想「インテルマリウム」を一部、現実のものとする活動が「3SI」(3海洋イニシアティヴ)として2015年から開始されている。

しかし、その理念を実現する経済的実力を持っているわけではない。ユーゴ紛争で味を占め(ユーゴ紛争ではプロパガンダでセルビアを崩壊させることに成功した)欧米のマスコミ支配によって、プロパガンダで軍事的劣勢を跳ね返そうとしている。しかし、今回は相手がロシアであり、最初から解体しかかっていたユーゴスラビアとはわけが違いすぎる。軍事的実体を伴わないものがプロパガンダだけに頼って勝利することは、所詮無理である。
欧米の悪行は、何百年も前のことではなく、ベトナム戦争当時のことでなく、今現在も中東を中心に変わっていない。また、ウクライナ紛争は連日、マスコミで目いっぱい報道されるが、その陰でパレスチナではイスラエルによる空爆で多数のパレスチナ市民が殺害されている。しかし、欧米のマスコミは、パレスチナの惨状をほとんど伝えようとはしない。今も世界のあちこちで欧米による不当な軍事行動が継続されている。先日もアフガニスタンで、「アルカイダの後継者」をドローンで殺害したとさも当然のごとく報じられた。西側諸国では、これら欧米の不法行為を何ら咎めようとはしない。
つい数週間前にも、カナダの先住民の子供が強制的に親から連れだされ、「寄宿舎」に入れられていたが、性的暴行、虐待等々で、少なからぬ子どもが殺害されていたことが報道されている。「寄宿舎」はカトリック教会が主体で運営していたことからローマ法王がカナダを訪れ謝罪したことが報じられていた。先住民族の絶滅政策は、北米、オーストラリア等々、共通している。
(ちなみに米国大統領は今に至っても、原爆の使用を「たくさんの人命を救った人道的行為であった」と正当化し、まったく謝罪する気配はない。)

6面

ジェンダーの視点から安倍政治を斬る A
「ジェンダーフリー」の語をめぐる攻防
石川 由子

結合点は「ジェンダー」

日帝支配の根幹は天皇制イデオロギー、日本的家父長制=家制度であり、ジェンダー平等は受け入れられない。一方で統一教会はジェンダー解放=人間の解放を「共産主義だ」と決めつけ悪罵を投げつけてきた。もちろん我々共産主義者はジェンダー平等は当然の課題としてとらえているが、これは普遍的な人権の問題なのであり、すべての人間が取り組まなければならないのである。ジェンダー差別の一点で自民党と保守的宗教が一致したのである。つまり、現代の自民党政治のキーワードの一つは「ジェンダー」だ。
1975年の国際女性年から20年、1995年は北京で国際会議がおこなわれ画期的な北京綱領が採択されたことは前号ですでに述べた。日本はこの頃まだジェンダー平等に少しは向かっていたのである。例えば夫婦別姓については、1995年に法制審議会民法部会が中間報告を出し、翌年には民法改正案を答申するなど、あと一歩にまで来ていたのにつぶされてしまった。1997年に日本会議が設立されるなど、この頃からバックラッシュが始まっていたのだ。〈新しい歴史教科書をつくる会〉が日本軍「慰安婦」問題をめぐってうごめき始めたのもこの頃だ。それでも1999年、男女共同参画社会基本法はジェンダー平等推進の基本法として成立した。

バックラッシュ時代

2000年代初頭の男女共同参画社会基本法に基づく各自治体の男女共同参画条例の成立の頃、統一教会や宗教右翼は妨害を試み、「バックラッシュ」時代と呼ばれている。日本のフェミニズム運動において「バックラッシュ時代=反動の時代」といえばこの時期であることを覚えておいてほしい。彼らは各地で議員に働きかけ、上部機関である勝共連合の機関紙『世界日報』は各地の情報を細かく報道してきた(『社会運動の戸惑い フェミニズムの〈失われた時代〉と草の根保守運動』山口智美 斉藤正美 荻上チキ著 勁草書房 2012年)。
例えば宮崎県都城市おいては2003年、男女共同参画社会づくり条例が制定された。内容は「性別又は性的指向に関わらず人権を尊重する」という文言を盛り込んだ画期的な内容だった。しかし、統一教会らが反対運動を開始し、『世界日報』は「このままでは都城市は同性愛解放区になる」と攻撃。結局、2006年「性別又は性的指向」は削除され「すべての人」という包括的条文にかえられた。

自民党プロジェクトチーム

2005年、第二次男女共同参画基本計画改定を前に自民党は「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム(以下PT)」(座長=安倍晋三党幹事長代理、事務局長=山谷えり子参議院議員)を立ち上げ、ついにむき出しのジェンダーバッシングを開始した。政府が作った計画に反対したのだ。
このPTの報告(2005年7月7日)を読むと隠そうともせず差別的内容を書いている。基本になる考え方は「家制度の強化」である。そのためには性的役割分業に執着している。例を挙げると「男女の差別は良くないが、恥じらいとたしなみ等、女らしさ男らしさは失われぬよう区別をはっきりさせるべきだ。わが国には立派な家族制度の下に夫婦愛、兄弟姉妹愛、愛国心が育ち自国を誇りに思うのだ」と怒髪天とはこれだといいたい言葉が羅列されている。またPTは「ジェンダー」「ジェンダーフリー」の用語の削除を要求している。
筆者がある意味驚いたのは、内閣が作った基本計画にフェミニズムが編み出した概念を採用していることだ。内閣府案に「育児・介護等における無償労働について実態把握に努める」と明記されているのだ。「無償労働(アンペイドワーク)」論はマルクス主義フェミニズムの功績だといわれているからである。実際、PT報告書では「育児・介護等の無償労働とは、近代家族は妻の家内奴隷制の上に築かれているという視点(エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』)だ」と内閣府案にかみついている。
結局、2005年第2次男女共同参画基本計画では「ジェンダーフリー」の用語は使われず、「ジェンダー」の語は残った。筆者は「ジェンダー」の語はカタカナ語である上に、行政用語のようでこれまで使わなかったが、この攻防を知りフェミニズム運動が死守した概念であるので使うことに決めた。
第一次安倍内閣が成立した2006年、日本のジェンダーギャップ指数はまだ世界80位だった。以後下がり続け22年には146カ国中116位。先進国ではぶっちぎりの低位だ。06年、フランスは70位。日本と大した差はなかったが今や15位。分岐点は安倍の首相就任だった。(つづく)

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「女性、命、自由!」(上)
マフサ・アミニさん死亡事件に大衆決起続くイラン
佐藤隆

9月13日、イランで、マフサ(ジナ)・アミニさん(22歳)が「へジャブ(スカーフ)の付け方が不適切」だとして警察に逮捕され、3日後に死亡した事件を受けて、イラン全土と世界中で抗議の声が上がり、イラン各地でデモや抗議行動が続けられている。街頭を制圧し、あるいは各地で散発的に発生し、ここ数年で最大規模のものとなっている。それは様々な創意によって、2011年の「アラブの春」以来、最も強力な民衆運動となりつつある。
アミニさんは9月13日、西部クルディスタン州から家族とともにテヘランの親戚を訪ねた際、道徳警察のパトロール隊に逮捕された。当局はアミニさんが16日に心臓発作を起こして死亡したと発表。これに対して遺族は、アミニさんに心臓の持病はなかったと明らかにした。家族の弁護士は「名誉ある医師は、(アミニさんが)勾留中に殴打されたと信じていると述べた」としている。イラン国営放送が公開した編集済みの防犯カメラ映像には、アミニさんが服装に関する指導を受けたとされる「再教育センター」で倒れる場面が映っている。アミニさんの頭部の出血を認める病院のCT画像が流失しているとの情報もある。
更に、9月20日のテヘランでの抗議行動に参加してアピールをしていた少女・ニカ・シャカラミさん(16歳)が、治安部隊に追われていると話して連絡が途絶え、その後、死亡する事件が起きている。
SNSには、アミニさんやニカさんが生前、無邪気に楽しむ動画がアップされ、イランの人々は悲しみと怒りに打ち震えている。若い世代にとっては友人が殺されたのであり、その上の世代にとっては子どもが殺されたのと同じなのだ。
「少なくとも19人の子どもを含む少なくとも185人が、イラン全土の全国的な抗議行動で殺害された。殺害件数が最も多いのはシスタン州とバルチスタン州、その半数が記録されている」とノルウェーに本拠を置くイラン人権団体は10月10日に発表している。 イラン全土で抗議活動が続けられている。(つづく)

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異次元緩和の総括
アベノミクスは失敗
花山道夫

一言で言えばアベノミクスの失敗である アベノミクスの「三本の矢」とは、@大胆な金融政策、A機動的な財政政策、B民間投資を喚起する成長戦略。最後の財政政策(需要の拡大)が安倍氏の国葬だったとは皮肉である。主な支出が警備費では波及効果は小さい。機動隊が登場する財政政策というのもアベノミクスらしい。

@大胆な金融政策というのがおかしい

金融政策は臨機応変でなければならない。資本主義経済というのは、好景気の時もあれば不景気の時もある。その時々の状況に応じた金融政策をすることこそが本来の姿である。景気が悪くないときも緩和を続けてきた、それによって何が起こったか。ゼロ金利や超円安でなければ収益を上げられない企業が増えたことで、実質賃金や潜在成長率の低迷という結果をもたらした。

A機動的な財政政策

2021年度予算から新型コロナ対策予備費というのが組まれている。額にして5兆円、予算に占める比率は4・7%。防衛費5兆3969億円(比率5・0%)に次ぐ額である。予備費5000億円(比率0・5%)が計上されている。「財政法第24条 予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる」。これは、風水害や地震等を想定しているので、内閣だけで決めていいわけである。つまり、迅速に対応が必要なのである。安倍元首相の葬祭費は緊急性がない。この一点においてもアウトである。つまり、機動的ではなく恣意的な財政政策(私的流用)である。

B民間投資を喚起する成長戦略

アベノミクスの3本の矢というが、本質的には@がすべてなのである。金利を下げれば、政府が支出を増やしても、景気がよくなって物価が上がれば返済が楽になる。オリンピックでも何でもいい、お金を使え。
しかし、民間の投資は伸びなかった。労働者の賃金が伸びなかったからである。住宅ローンは、空前の低金利だが、新築の着工数は伸びていない。住宅については賃金だけの問題ではない。価値観、生活スタイル等々。しかし、婚姻数の減少は賃金の問題が大きく関係していると考えられる。特に就業形態(非正規雇用)等は、統計的には計上されていないが関連が推測される。このことは出生率にも影響している。
アベノミクスとは何だったのかといえば、日本経済の分析を全く捨象して金融政策ですべてが解決するという、リフレ派の企みに乗って大破産しただけのことである。まさに「笛吹けども踊らず」である。

7面

連載
侵略と併合を合理化 21年7月12日付プーチン論文
「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」D

ミンスク合意の到達点

ロシアは、この兄弟姉妹殺しをとめようと、すべてのことを試みた。ミンスク合意は、ドンバス紛争を終結させるための平和な居留地を創ることを謳っている。これに代わる代案は皆無だと私は確信する。いかなる場合でもミンスク停戦合意パッケージの署名から撤退することはできない。同様に、ノルマンディーフォーマット上の各国首脳による声明を撤回した国はない(注13)。2015年2月17日の国連安保理決議の見直しに着手した国もなかった。
公式の交渉の間にも、西欧のパートナーによって押しとどめられた後、ウクライナの代表陣は、ミンスク合意を順守する旨、決まって宣言するが、実際には、「うけいれがたい」という立場で行動することになった。ウクライナ側は、ドンバスの特殊な地位についても、そこに居住する人々のための安全に関しても、まじめに話し合う気がない。
「外国からの侵略による受難」というイメージを身に着けることを好み、ロシア恐怖症を売り歩いている。ドンバスで、血なまぐさい挑発を手配する。つまるところ、ウクライナは、あらゆる手段で、外国のパトロンと旦那たちの気を引こうとやっきになっているのだ。明白に、私は、少しずつ、次のように確信するに至った。キエフはまったくドンバスを必要としない。なぜか?なぜなら、まず第一に、力、封鎖、脅しによって押しつけたりしても、この地域の住民たちは決して受け入れない。2番目に、ミンスク合意の1と2の双方の出現はウクライナの領土保全を平和裏に実現する本当のチャンスであり、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国とロシアが直接合意し、仲介役としてドイツとフランスが入ったことは、「反ロシア計画」の論理とは正反対なのだ。そして、内外の敵の姿を常時、育てることによってのみ支えられ得るものなのだ。さらに付け加えれば、さもなければ西欧列強への保護と支配下に陥ることを意味する。
これは実際に何が起こっているだろうか。まずなによりも、ウクライナ社会において、恐怖の雰囲気、攻撃的なレトリック、ネオナチへの甘やかし、国家の武装強化が顕著になっている。それとともに完全な依存だけではなくて、ウクライナ政権の諸機関や特殊部隊および軍隊に対する外国人顧問の監督、ウクライナ領土の軍事的開発、NATOのインフラ施設の配備、などを含めた直接の外国による統制も実施されている。前に述べたような「先住民族」に対する破廉恥な法律が、ウクライナにおける大規模なNATOの軍事演習の隠蔽に適用されたことは、単なる偶然の一致と言って済ますわけにはいかないだろう。
これもまた、ウクライナ経済を乗っ取るための擬装工作、ウクライナの自然資源を巡る開発=搾取である。農地の販売は遠い先のことではない。それを誰が買うかは明白だ。時代から次の時代へ、ウクライナは、まさしく財政的資源を与えて、貸付する。自分なりの条件のもとで、利殖を追求する。そうして、優先権と利益は西欧の企業にとなる。ところで、誰が借りをかえすのだろうか?それは、現在のウクライナの世代が背負うばかりでなく、その子、その孫、またそのひ孫へと継承されるのだ。
西欧の反ロシア計画の作り手たちが、大統領、国会議員、大臣がかわっても、ウクライナ流の政治システムを伝える。ロシアに対して別だという気構えと敵意だけは残り続ける。現職の大統領にとって、平和に至ることは、主要な選挙スローガンである。彼はこのことによって、権力の座に就いた。約束が、反古となる。何も変わらなかった。そしてある意味では、ウクライナの情勢もドンバス周辺も、退歩している。
反ロシア計画では、主権国家ウクライナも真の独立を守り切る政治勢力も居場所がない。ウクライナの人々の社会ともう一度和解しようと、対話しようと、現在の袋小路の突破口としようと語り掛ける人々は、「ロシア万歳」のひも付きエージェントというレッテルを貼られる。
もう一度言うが、ウクライナの多くの人びとにとって、反ロシア計画はまったく受け入れがたい。そういう人は、何百万人もいる。しかし彼らは、頭を挙げることは許されない。彼らは、自分自身の主張を守るための法的な機会を奪われてしまった。彼らは、脅かされて、地下へ追いやられる。信念をもって、言葉を発し、立場を公然と表現をすることによって、迫害を受けるのみならず、殺される。殺人は、概して、裁かれないのだ。
今日、ウクライナの「本当の」愛国者はただひとり、ロシアを憎む者とされる。それ以上に、ウクライナが完全な独立国家であることは、われわれが理解するところでは、この理念の上にのみ打ち建てられるとされる。憎しみと怒りは、世界の歴史が繰り返し証明するところでは、主権の基盤としては非常に不安定なもので、多くの深刻な危難と悲惨ななりゆきに満たされている。
反ロシア計画に関係するすべての策略はわれわれには明白だ。そして、われわれの歴史的領土とそこに密接に生きている人々をロシアに対立して使わせるわけにはいかない。そうした企図をよしとする人々に対して、こうしたやり方は自分の国を亡ぼすことになると言いたい。
ウクライナの現政権は、西欧の経験を参照したがり、ついてゆくべきモデルとみなしたいのであろう。オーストリアとドイツ、米国とカナダという、隣り合って暮らす国々を一瞥してみよう。民族構成や、文化が密接で、実際、一つの言語を共有しつつ、自身の国益、独自の対外政策をもって、主権国家として、生き残っている。しかし、親密なる統合、同盟関係をそれぞれ排除することはない。両国家は、条件に恵まれた、分かりやすい国境を持っている。これらの国を通過するとき、市民は、みずからの家庭にいるかのような気分になる。彼らは、家族を創り、学び、働き、ビジネスをする。ついでながら言うと、何百万ものウクライナで生まれた人々が、現在、ロシアで暮らしている。われわれは彼らを自分の親しい人のように感じる。
ロシアはウクライナと対話する場合、胸襟を開くし、最も複雑な問題でも、議論する余地はある。われわれの友邦が自国の国益を守るが、われわれに敵対するために誰か他人の手助けをすることはないということを理解するために、大事なのである。
われわれは、ウクライナの人々の言葉と伝統に敬意を抱いている。われわれは、ウクライナの人々の、自由で、安全で、繁栄したいという気持ちを尊重する。ウクライナ国の真の主権は、ロシアとパートナーシップを結ぶことによってのみ可能になるということを確信している。われわれの精神的、人間的、文明的な結びつきは何世紀もかけて形成され、同じ根源からの起源を持ち、共通の挑戦、達成、勝利を錬成してきた。われわれの親族関係は世代から世代へ伝えられてきた。それは、現代のロシアとウクライナの人々の生活の中で心と記憶の中にあり、何百万ものわれらが家族を結び付けている血の中にある。ともにわれわれはあり、これからも幾度も強くなろうとし、さらに成果をあげてゆく。というのも、われらはひとつの民族だからだ。
今日、これらの言葉は、あるひとびとにとっては、敵意をもって迎えられるだろう。彼らは、あらゆる形で違った意味に取る。しかし、多くの人たちは聞いてくれる。そこで私は一つのことを言いたい――ロシアは、決して「反ウクライナ」であったことはないし、「反ウクライナ」にはならない。そして、ウクライナがこれからどうなるか、それはウクライナ市民が決めるべきことなのだ。

(注12)カチンの殺戮:1940年、スターリンの命令でソ連の秘密機関がポーランド人捕虜、おもに軍の将校2万2千人余りを虐殺して現在のベラルーシのカチンの森に埋めた事件。戦後発見されたが、ソ連当局はドイツ軍の仕業だとして認めなかった。ゴルバチョフが初めてソ連の責任を認めて調査を開始した。2004年プーチンは大統領になって、「スターリンの犯罪」と認めたが、国家としてのロシアの謝罪を拒否している。本論文では、下手人をウクライナであるかのようにすり替えている。ウクライナとポーランドは、第2次大戦とそれ以前の相互の住民殺しについて、歴史的に検証したうえで許し合う関係を形成している。そのためにポーランドは、今回のロシアの侵略戦争に対してもっとも多くのウクライナの避難者を受け入れている。しかるにロシアはいまだカチンの虐殺に対する謝罪を拒否し、本プーチン論文のように事実すらあいまいにしている。

(注13)ミンスク合意:2014年6月、1944年のノルマンディ上陸作戦70周年記念の際、非公式に開かれた会合に集まったウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコ、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン、フランスのフランソワ・オランド大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相がウクライナ東部での武力衝突の収拾について話し合った。この枠組みを「ノルマンディー・フォーマット」と称して、以降この紛争解決の枠組みとなった。2014年9月にウクライナとロシア、それと2つの「自治共和国」を名のる分離主義者の代表が、欧州安全保障協力機構(OSCE)の仲介で話し合い、停戦合意に調印した(これを「ミンスクT」と呼ぶ)。しかし現地での戦闘が続いたため、ノルマンディー形式の首脳会議が再度開かれ、2015年2月「紛争の総合的解決」のための合意がなされ、独・仏の首脳を含め全当事者が調印した(これを「ミンスクU」と呼ぶ)。合意の内容は、@包括的な停戦、A全外国部隊の撤収、B違法な武装集団、装備、傭兵の撤収、C東部2地域に「特別の地位」を与えることを憲法・法律で保障する、Dウクライナ政府による国境管理の復活、などである。ところがこの停戦合意も守られず、2021年6月までに双方で計1万3千人の死者、3万人の負傷者、ウクライナ人の避難者は150万人に及んだ。ロシアは、ウクライナがこの「紛争」でドローンを使用したことを停戦合意違反というが、ロシアはこの戦闘にロシア軍を参加させ、傭兵・特殊部隊を大量に投入している。ウクライナの国境管理を無視するだけでなく、2つの分離主義者の「人民共和国」にはウクライナの主権を認めていない。
2015年7月には、ウクライナの上空でマレーシア旅客機が撃墜され、乗員・乗客計298人が全員死亡した。その後の調査で、ロシア軍が分離主義者の領域に発射装置を運びこみ、ミサイルを撃ったのちに即撤収したものであることが判明している。全停戦条件を破っているのはロシアである。ミンスク合意、とくにミンスクUは、クリミアに続いて、ウクライナ東部2州にウクライナの主権の及ばない地域をつくり、ロシアに併合する準備としたものであり、ロシア人が居住しているからその保護のためと称して介入を公然と認めるロシアの不当・不法な行為を容認し、「紛争仲介」と称して、プーチンのさらなる侵略の糸口を与えたのは当時の2国の首脳である独メルケルと仏オランドである。同様の事実として、1938年9月、チェコスロバキアのズデーテン地方をそこに住むドイツ人の保護という名目で、ドイツへの割譲を要求したヒトラーの恫喝に屈し、自国への戦争の波及に恐怖した英ネヴィル・チェンバレン、仏エドゥアール・ダラディエ両首相は、ヒトラーのこの不当な要求をチェコスロバキア政府に飲ませた(ミュンヘン会談・ミュンヘン協定)。「何が何でも戦争を防ぐ」ためと称して、他国の領土を切り売りしたことは、今も昔も歴史的犯罪というべきである。(おわり)

汚染水を海に流すな! 6月着工中止を求める!アクション 5月13日

5月13日、福島の市民団体が東京へ足を運び、原子力規制庁と東京電力に、福島第一原発で貯水されている放射能汚染水を海洋に放出する計画を中止するよう要請した。
東電前でおこなわれた抗議行動には各地に避難している被災者も参加。口々に東電の無責任体質を弾劾した。福島県漁連に対しては同意なしに放出しないと約束しながら、準備は(放出とは)別と工事を問答無用に進めている。また、計画に変更はないとも公に明言。本日の交渉でも、福島の美しい海を守ってほしいという要請に対して、そんな約束は出来ないと言い放つ始末だった、と報告された。,br> 貯水タンクが満タンというのは放出の理由にはならない。政府と東電が責任を持って解決すべき問題だ。放射能汚染水の海洋投棄は原発災害を上塗りするものでしかない。絶対に阻止しよう。

8面

(シネマ案内)
『バビ・ヤール』
監督:セルゲイ・ロズニツァ 2021年制作

ウクライナのキエフ近郊にバビ・ヤール渓谷がある。ここは、第2次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下で、7〜10万人におよぶユダヤ人が虐殺された場所だ。しかし、この事実は、今日ではすっかり忘れ去られている。どうしてなのか。この記録映像は当時の記録フィルムを編集したもので、2021年に制作された。衝撃的な事実は、ウクライナ人が少なからずユダヤ人虐殺に関与していることだ。また、多くのウクライナ人はナチスに協力をしている。ウクライナにおいて、これらの歴史はあまりふれたくないことなのだ。この映画は、このウクライナの負の側面をえぐりだしている。この映画はバビ・ヤールにおけるユダヤ人虐殺を中心にして、その前史と後史から構成されている。
1941年6月、ドイツは独ソ不可侵条約を破棄して、バルバロッサ作戦を展開しソ連領に侵略を開始する。9月、ドイツ軍はキエフに侵攻する。ドイツ軍の捕虜になったソ連軍兵士たちの長い隊列が映しだされる。果てしない平原のなかでおこなわれる戦闘。農家を焼き払うドイツ兵たち。キエフ市民はスターリンの肖像をはがし、ヒトラーのポスターを貼っていく。ナチス・ドイツの勝利パレードには、ウクライナ民族主義者たちも積極的に参加している。
9月24日、キエフのビルが何者か(ソ連の秘密警察が仕掛けた爆弾による)によって爆破された。ドイツ軍はこれを「ユダヤ人がおこなった」と決めつける。29〜30日にかけて、ドイツ軍は近郊に住むユダヤ人をバビ・ヤールの渓谷に集め、全員射殺した。この時の死者は3万3771人に及ぶ。虐殺の映像は残されていない。虐殺の翌日、ひとりのドイツ人によって写された写真がこの惨状をあますことなく示している。
1943年、ソ連軍がキエフを「解放」する。この時、キエフ市民はヒトラーのポスターをはがし、スターリンの肖像画がふたたび持ちこまれた。多くの市民は赤軍を「解放軍」として歓迎する。こうして、ウクライナはふたたびソ連邦にもどった。1952年12月、キエフ市執行委員会はバビ・ヤールを埋める決議を採択し、ユダヤ人虐殺の歴史を抹消してしまった。ソ連にとっても、ウクライナとの関係で、ユダヤ人虐殺の事実はふれたくなかった。ナチス・ドイツはユダヤ人虐殺をおこなった。ソ連はユダヤ人虐殺の歴史を抹殺してしまった。ウクライナ人民は時々の支配者に協力を繰り返すだけだった。ロズニツァ監督は、これら3者それぞれの責任を今日に問いかけている。
2022年の現在、この映画を語るとき、ロシアによるウクライナ侵略を考えないわけにはいかない。映画のなかで、ロズニツァ監督はウクライナについても批判的にみている。このことにたいして、ヨーロッパでは「親ロシア派とは知らなかった」というような批判もおきているようだ。今年9月、NHKのインタビュー番組で、ロズニツァは「ロシアが旧ソ連時代におかした罪を総括しなかったため、今このような事態になっている」と語っている。
このように、ウクライナはたびたび国土が戦場になってきた。侵略者にたいして戦わなければ生きていけなかった歴史と、追従していった歴史。どちらを選ぶのかは、ウクライナ人民が決めることだ。今日、ウクライナ人民はロシアの侵略者にたいして戦っている。今日のウクライナ戦争においても、われわれは殺される側に敬意をもって事態をみていく必要があるのだ。(津田保夫)

(投稿)
盗掘されたアイヌの遺骨
返還求めて行動

10月3日午前、東京・本郷の東大本部棟前で、盗掘されたアイヌの遺骨の返還を求める行動があったので参加しました。
都合で前日の「遺骨の国家管理反対! アイヌ民族の遺骨の返還を求める東京全国集会」(主催・ピリカ全国実行委員会)には行けなかったのですが、会場定員に達する来場者が詰めかけたそうです。
行動には、朝に駒場キャンパスで置きビラをしてから合流したという東大生も参加していました。
対応した担当者(前年度までの担当者が異動でいなくなっていた)が、事前に東大に送られていた文書にも目を通さずに上司から対応を命じられたとだけ言っている無責任な態度(※よく聞いたらこれまでの経緯については頭に入っているらしい)を弾劾し、本部棟前でイチャルパ(慰霊祭)をおこなって、全体は午後の参議院議員会館の学習会と対政府交渉のために移動しました。(村山 孝)

(書評)
『「黒い雨」訴訟』
小山美砂著(集英社新書)

「黒い雨」被爆者は、なぜ75年以上ものあいだ置き去りにされてきたのか。本書はこの点を解明している。「黒い雨」被爆者の苦しみは、病気だけでなく貧困との闘いでもあった。筆者はこの被爆者の訴えに耳を傾け、原爆投下直後から訴訟に至る過程を検証していく。ここで「黒い雨」は雨滴だけでなく、塵や灰を含んだ放射性降下物の総称として使われている。

被爆者の闘いアメリカは第2次世界大戦後の世界支配を優位に進めるために、広島と長崎に原爆を投下した。将来の核軍事政策を推進するために、アメリカは「原爆による残留放射能はない」とする必要があった。こうして1945年9月、アメリカ陸軍ファーレル准将は、政治的意図をこめて「9月上旬現在において、原爆放射能のため苦しんでいる者は皆無だ」と述べた。日本政府はこれに従った。
第5福竜丸事件においても、1955年1月、アメリカは日本政府にたいして2百万ドル(7億2千万円)を支払うことで決着させた。こうして第5福竜丸乗組員の内部被爆問題は消されていった。
「黒い雨」被爆者は、1970年代から援護地域の拡大を要求してきた。78年に広島県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会を結成し、この運動をおこなってきた。被爆者援護法における「第3号被爆者」(原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者)は、「黒い雨」による被爆を認定している。この存在自体が被爆者の闘いによるものなのだ。
しかし、政府は被爆者数を減らすために、この「黒い雨」の地域をきわめて狭くした。「原爆被爆者対策基本問題懇談会」報告書(1980年12月)では、「被爆地域の指定は科学的、合理的根拠のある場合に限定する」と書いている。この「報告書」は、被爆地域の拡大に歯止めをかけることを意識して出されたものなのだ。被爆者の闘いは、この被爆地域を拡大するところにあった。

「黒い雨」訴訟

2015年、広島県内の男女64人(最終的に84人)が「原告たちを被爆者と認めよ」という訴訟を広島地裁に提訴した。国にたいして援護対象地域を拡大するように迫ったものであり、これが「黒い雨」訴訟だ。
2020年7月、広島地裁判決において原告は全面勝利を勝ち取った。最大の意義は、内部被爆を認めさせたところにある。しかし、安倍政権の圧力によって、広島県・市と厚労相は広島高裁に控訴した。2021年7月14日、広島高裁の判決でも地裁判決を上回る内容で、原告が勝利した。26日、国は控訴を断念し、住民側の勝利が確定した。

内部被ばく問題

本書では、核による内部被ばく問題のなかに「黒い雨」被爆者の闘いを位置付けて、ヒロシマ・ナガサキとフクシマを一体で論じている。これはきわめて重要な視点である。日本政府は、「100ミリシーベルト以下で被害はおきない」論を根拠にして、一貫して内部被ばくを否定してきた。さらに、福島第一原発事故においては「年間20ミリシーベルト以下では健康被害はおきない」として、これを避難の基準にした。
広島高裁判決は内部被爆の存在をひろく認めている。これは福島第一原発事故による被曝者の闘いの成果でもある。しかし、長崎の「被爆体験者訴訟」は内部被爆を認めていない。長崎でも「黒い雨」が降っている。長崎の「被爆体験者」も広島の「黒い雨」被爆者と同等に認められるべきなのだ。闘いは終わっていない。(鹿田研三)