未来・第351号


            未来第351号目次(2022年10月6日発行)

 1面  国葬失敗、支持率急落
     安倍=岸田打倒へ追撃を

     ウクライナ東南部併合弾劾
     ロシア人民の戦争動員許すな

 2面  沖縄県知事選 玉城デニー氏圧勝
     ゆるぎない基地撤去の思い

 3面  関生弾圧 9月13日
     大津地裁コンプラ活動裁判
     求刑8年に怒り      

     関電の原発マネー不正還流
     大阪地検に「起訴」要請行動
     9月6日     

     「黒い雨」被爆者・高東征二さんが意見陳述
     伊方原発広島裁判

 4面  

全国で国葬反対のうねり

     安倍国葬反対の行動は、東京の武道館・国会周辺はじめ、全国各地で大きなうねりとなった。

     大阪 国葬当日に400人のデモ
     前夜 総がかりが1000人の集会

     東京 9・19 代々木公園
     1万3000人が結集

     府中市でパレード 9月23日

     神戸 第2波デモ 9月17日

     尼崎でスタンディング  

 5面  

市民の決起、野党の奮闘で岸田倒せ

     大阪で3つの集会 2つのデモ

     白井聡・紀藤正樹さんが訴え
     統一教会と一体の安倍政治

     9・9緊急集会
     18人がアピール

     高作正博さんが講演
     PLP会館あふれる300人
     9月19日

 6面  強制不妊手術裁判第三次訴訟
     またも「除斥期間」で棄却
     大阪地裁9月22日

     フジ住宅ヘイトハラスメント裁判
     最高裁で原告勝利が確定

     セックスワーク論批判E―下
     人間の人間的解放かかげるマルクス主義は買売春と非和解
     石川由子

 7面  連載 侵略と併合を合理化 21年7月12日付プーチン論文
     「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」B

 8面  『ファシズムの教室』を通して考えたこと
     〜差別・排外主義を許さない

     国葬反対のバナー

     〈投書〉一推しの本
     山本義隆著
     『リニア中央新幹線をめぐって 原発事故とコロナ・パンデミックから見直す』

     訃報 尼崎地区労前事務局長 小西純一郎さん急逝

           

国葬失敗、支持率急落
安倍=岸田打倒へ追撃を

安倍の国葬反対で国会前をうめつくす1万5000人

(9月27日)詳報次号

沖縄知事選挙での玉城デニー知事の勝利と安倍「国葬」の大破産によって、岸田政権は風前の灯になっている。にもかかわらず、軍備大増強や新増設を含む原発の全面的推進を打ちだした。それだけではない。生活物資の値上げで塗炭の苦しみにあえぐ労働者人民に対して、その声をきくどころか、投機者と利権まみれの大企業だけを優遇する金融の大幅緩和を続行する凶悪路線をひた走っている。岸田は変質したのか、それとも元からその路線なのか。それを解くカギは「安倍=勝共」としか言えない体制を岸田が継承していることにある。

安倍=勝共体制とは何か?

安倍=勝共体制は、まず安倍・自民党と勝共連合の強度の癒着、一体性のうえに成立する。思想的・路線的には、勝共連合と安倍自民党の改憲案(2012年草案)がほとんど同一になっている。9条改憲と緊急事態条項の新設、さらには、夫婦別姓、同性婚に反対するイデオロギーなど共通の特徴がある。
安倍自民党は統一教会を重要な権力基盤にしてきた。この間、暴露されているように選挙の支援(投票・運動員・資金)を安倍首相個人が割り振り、逆に、閣僚などの人事では、文科・法務・警察などの権力機構とイデオロギー支配の要を統一教会支援者・同調者で固めてきた。朝日新聞のアンケート調査によれば、3千人の回答があったうち、統一教会と接点があったのは、国会議員150人、都道府県議290人、知事7人である。
安倍晋三と統一教会の直接関係が公的に確認できるのは、2005年10月に官房長官に就任する直前に天宙平和連合(UPF)の創設記念広島大会に祝電を送ったことである。このころ、UPF作成の小冊子に、ジェンダー平等という言葉を使わせないために、官房長官の安倍晋三、内閣府政務官(後の法務大臣)山谷えり子に働きかけるという記述がある。自民党自己点検の結果でも、衆参両院議長と死亡した安倍晋三を除く自民党国会議員379人中179人が統一教会と接点があったとしている。また、現在、信仰を隠したまま自治体議員になっているものが判明しているだけで30人はいる(有田芳生『統一教会とは何か』)。統一教会は1954年に韓国で生まれたが、国際勝共連合という形で積極的な政治活動を始めるのは1968年、韓国と日本と同じ年である。
統一教会は、韓国で創設されたにもかかわらず、韓国では、「キリスト教の異端」とされて、日本から合同結婚式で渡韓した日本人を含めて2万人程度から広がっていない。逆に「サタンの国」と位置づける日本では政治・官僚・権力機構に食い込み、霊感商法や献金などで膨大な資金を集めている。資金集めは韓国・米国ではほとんどできていない。

国葬当日、御堂筋を北上するデモ隊(9月27日、大阪市内)

反共にして「反日」?

統一教会の教祖・文鮮明は、1991年朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)を訪問し、金日成と意気投合し、義兄弟の契りをかわしたという。これを根拠にDPRKで事業をおこない、他の韓国企業が撤収させられたにもかかわらず、唯一現存している。日本で集めた資金から5千億円を投入しているという(白井聡「戦後日本の支柱だった旧統一教会」、『サンデー毎日』10月2日号掲載)。この金がDPRKの核・ミサイル開発に使われていることは間違いない。
統一教会の教義では、「韓国=アダム国」「日本=イヴ国」と規定し、「サタンの罠に落ちた結果、植民地支配という非道を犯した日本はその罪を償うために、韓国(当然DPRKを含む)に貢がなければならない」とする。その現れとして、統一教会の「4大名節」という記念日には、久保木会長(当時)が天皇役を演じて、文鮮明教祖にひざまずく儀式がおこなわれていたという(有田、前掲書)。これによれば統一教会は「反日」右翼にほかならない。
勝共連合=統一教会はこれによって「反共主義」を捨て去ったのであろうか。いな、本来の反共主義に戻ったのである。旧ソ連や現中国の体制に反対するだけの反共主義、日本共産党に対立するだけの反共主義は終わった。しかし、人間の人間的あり方や、他の人間との共同性の回復、自然との有機的関係の実現を目指して現代社会の根底的変革を目指す真の共産主義を敵として、日本・アメリカ、南北朝鮮の現体制を右から支えるものが、現代の反共主義である。
また安倍自民党がこのようなカルト的「反日」右翼を基盤とせざるをえないのはなぜか。アメリカでは、2001年の反米ゲリラと2008年リーマン・ショックの後、世界1強的覇権を喪失し、クリントン時代を頂点とした新自由主義は全面破綻している。労働者人民が生きる意味、共生の条件を失っている中に、カルト的なものを基盤に、右翼ポピュリスト・トランプが台頭した。
他方、日本では、敗戦帝国主義、没落帝国主義の上に、1980年代を頂点として米帝の日帝叩きで、没落をいっそう深めた。日本と韓国を1人当たりの名目GDPを比較すると、コロナ前の2018年の数値で日本は4万2725ドルに対して、韓国4万3001ドルとわずかに追い抜かれ、かつて世界のトップ集団にいたものが今や28位になった。本来の没落帝国主義であり、新自由主義の破綻の影響を受け、米帝に叩かれ続けた結果、旧植民地国に追い抜かれるほど、危機と衰退に陥っているのである。「反日」右翼を体制の支柱の1つにせざるをえない、ねじれにねじれた日帝の危機、人民支配の破綻がここに表れている。

国葬反対ののぼり旗かかげ、西梅田公園までデモ行進(9月261日、大阪市内)

安倍継承の軍事大国化

岸田政権は、軍事大国化・改憲路線では安倍継承を鮮明にしている。防衛3文書(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画)の年内改定方針を打ち出している。改憲についても、安倍・菅政権を継承し、森英介衆院憲法審査会長、古谷圭司党憲法改正実現本部長を続投させている。
安倍元首相が打ちだした「敵基地攻撃論」を現実化すべく防衛予算の2倍化に向け、23年度から省庁横断で「国防関係予算」をたてる検討を始めた。浜田靖一防衛相はこの9月1日に、イージス・システム搭載艦の建造計画をぶち上げた。全長210メートル、基準排水量2万トンの超大なものを代替艦を含め3隻建造するという。建造費が膨大になるだけでなく、敵ミサイルの格好の目標となる「現代の戦艦大和」と酷評される代物である。琉球諸島の要塞化をダメ押しする馬毛島―種子島における基地建設に向け、9月西之表市議会において、これまで2期、自衛隊基地建設反対を掲げて当選してきた八板俊輔市長が、市有地の(基地建設のための)売却などを提案、怒りの反対運動が盛りあがっている。
また9月20日には、基地・原発・国境の土地を軍事的使用・監視の下に置く土地利用規制法を全面施行した。そして8月24日、岸田政権は既成の原発17基を全面再稼働させるうえに、建て替えと新増設を推し進めると発表した。3・11フクイチ事故の教訓を消し去り、ロシア軍による原発を武器と標的にする新たな攻撃の中で人類史的な破壊行為である。
これら一切の攻撃は、安倍元首相が退任後に打ちだした「敵基地攻撃論」、「核共有論」、「防衛費倍増論」などを継承・現実化するものである。すべて安倍路線を実現するのが岸田なのである。
九段下で右翼(左)と対峙し進むデモ隊(9月27日)
経済政策では、「アベノミクス」の効果はどこに表れているか。
第1に、株価は日経平均で約2・3倍に、通貨は2、3割の円安になり、輸出大企業は暴利を挙げるが、労働者人民は物価高で苦しんでいる。
第2に、完全失業率が4・3%だったのが2・2%に「改善」したが、それは非正規雇用が増えたためだ。逆に賃金は実質賃金指数で見ると、第2次安倍政権の8年間で5・8ポイントも悪化した。1人当たりのGDPで見ると、18・5%も減少、G7の中でも上位にあったものが、イタリアに次ぐワースト2に転落している。
第3に、第2次政権の任期中に2度にわたり消費税を引き上げ、5%→8%→10%にした。結局、アベノミクスとは、最大の目標である「成長戦略」をも潰し、破綻国家化に一路まい進するものでしかなかった。
岸田首相が掲げる「新しい資本主義」とは、「貯蓄から投資へ」と宣言し、安定雇用・安定収入の道を奪い、労働者人民に投機を勧める(そんな転換ができる人は限られている)。またGX(グリーン・トランスフォーメーション)では原発推進の全面化、さらに雇用の流動化のためとして、安定雇用を奪う「ジョブ型雇用への転換」を図っている。アベノミクスからの転換どころか、その破綻をさらに拡大し、資本主義としても衰滅の道をひたすら進むものである。(つづく)

ウクライナ東南部併合弾劾
ロシア人民の戦争動員許すな

9月21日、ロシアのプーチン大統領は予備役などの「部分的な動員令」を発動し、同時に、ウクライナ東部・南部の親ロシア派が「ロシアへの編入」を求めて実施する住民投票を支持すると表明した。9月27日、親ロシア勢力はロシア軍占領地で「ロシアへの編入」を問う「住民投票」を終えた。
ウクライナ東部のルハンスク州、ドネツク州と南部のへルソン州、ザポリージャ州の4州内ロシア軍占領地域で20日に発表、23日に実施。最初の4日間は、各戸を係員が回って票を集めるか、街頭に投票箱を置く、27日のみ投票所を開くというが、係員に武装兵がついて各戸を回るという強制的なものだ。一部地域で「投票率90%と、賛成92%」とする暫定結果を発表したが、全く乱暴なものだ。ロシアのマトヴィエンコ上院議長は4州併合する法案の上院審議について「10月4日にも準備ができている」と語った。これが侵略=併合だ。
一方、動員令発表以来、ロシア国内で反戦の決起が全土で巻き起こっている。21日、ロシア各地で動員令への抗議が闘われた。人権団体「OVDインフォ」によると、モスクワや地方都市で1400人近くが当局に拘束。25日にはダゲスタン共和国で女性たちが動員に反対する集会・100人以上が高速道路を封鎖。警察が発砲・拘束。シベリアのヤクーツクで女性たちが「ジェノサイドにノー」と唱えて抗議し、警察に拘束。25日までに放火は全国で16件。徴兵事務所などの建物に火炎瓶。動員拒否=国外出国も。ウクライナ東南部併合弾劾=動員令許すな。

2面

沖縄県知事選 玉城デニー氏圧勝
ゆるぎない基地撤去の思い

進む辺野古基地建設(9月14日)

▼9月11日 任期満了に伴う第14回県知事選が投開票された。現職の玉城デニー氏(共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦)が、佐喜真淳氏(自民、公明推薦)、下地幹郎氏(前衆議院議員)を破り再選を果たした。
即日開票の結果、投票が締め切られた午後8時ちょうどに、玉城デニー氏の当選確実が報道された。接戦が予想され、大勢判明は午後11時ごろとの報道があり、8時ちょうどというあまりの速さの結果に、驚きと喜びの歓声が選挙事務所に響き渡った。
投票率は、台風などの影響で前回より5ポイント余り低かったものの、玉城氏33万9767票、佐喜真氏27万4844票、下地氏5万3677票と、玉城氏は他の2人の得票を合計した票を上回った。佐喜真氏には約6万5千票の差をつけ圧勝した。
今回の選挙の最大の争点となった米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に、明確に反対の姿勢を示した玉城氏が当選したことで、辺野古新基地建設反対の民意が改めて示された。
玉城氏は記者会見で「間違いなく今回、辺野古の新基地建設は大きな争点だった。過去2回の知事選挙、県民投票の7割以上の反対の声、そして、今回わたしの2期目の再選。県民の思いが1ミリもぶれていない結果だと受けとめている」と述べた。
佐喜真氏は、会見で「旧統一教会との関連が報道されたことも若干影響があったと思う」と述べた。旧統一教会と政治の関係が議論になる中、7月下旬に佐喜真氏の旧統一教会関連団体会合への出席が表出した。
また今回、県議補選が重要な選挙として注目を集めた。那覇市長選に出馬する翁長雄治氏の県議辞職に伴う県議補欠選挙(那覇市・南部離島区、欠員1)に4人が立候補。オール沖縄勢力が支援した上原快佐氏が当選した。県議会与野党構成は議長を除き与党が1議席上回り、玉城氏は安定した県政運営が見込まれる。
そして、今回の選挙は統一地方選が重なり、同じ日に投開票された。辺野古新基地建設が進められている地元の名護市議選には、定数26人に対し33人が立候補した。これまでの議会構成は、欠員2人、与党会派12人、野党会派12人と拮抗している。今回、与党17人、野党12人、中立3人(2人は野党会派に属している)、ほか1人が立候補した。野党側は全員当選しなければ過半数の確保は厳しい。
名護市議選の投票結果は、与党が15議席を獲得し過半数を占めた。野党は10議席、中立1議席(野党会派に所属)。野党は現職が落選するなど4年前の前回選挙より2議席減らし苦杯をなめた。しかし、辺野古移設反対は与党の公明党(2議席)を含め13議席と半数を占めた。
▼14日 知事選の結果、辺野古新基地建設反対の民意が示されたにもかかわらず、辺野古の埋め立て工事は続けられている。埋め立て工事の現状は、K4護岸側の上部構造物(コンクリートブロック)がほぼ完成し、そこに向かって土砂が投入されようとしている。(杉山)

3面

関生弾圧 9月13日
大津地裁コンプラ活動裁判
求刑8年に怒り

大津地裁に公正な審理を求める(9月13日)

9月13日13時15分から滋賀県大津地裁で、関生支部のコンプライアンス(法令順守要求)活動に対する関生の組合員6人に対して論告求刑がおこなわれた。論告求刑は通常、結論だけを述べて、どんなに長くても1時間もかからずに終わるものだ。そのため、私たちは14時から報告集会、16時からデモを予定していた。

3時間におよぶ論告求刑

しかし、検察側は論告に3時間以上かかると裁判所に要求し、1時間ごとに休憩を入れて論告求刑がおこなわれた。このため報告集会は中止せざるをえなかったが、16時からのデモは断固として敢行した。
デモが出発する16時になっても論告はまだ延々と続いていた。若い検察官が聞き取れない小さな声でぼそぼそとしゃべっていたとのことである。検察側の主張は概略「関生支部のコンプライアンス(法令順守要求)活動によって会社の信用は失墜した。法令順守を要求する被告人らの活動は『悪質』であり、矯正施設(つまり、刑務所)で矯正すべき」というものである。

武副委員長が核心をつく指摘

デモ出発時の武洋一副委員長のあいさつは核心を突いていた。論告を傍聴していた同副委員長は「会社が法令違反をおこない、これをビラにして出されたから会社の信用がなくなり、次の仕事を断られるかもしれないから営業妨害だという。罪を犯したことを公表されてそれで信用なくした? 当たり前じゃないですか」と弾劾すると集まった人たちから笑いと、そうだという声が上がった。労働者の安全のために会社の違法行為をビラにして公表することは憲法に保障された労働組合の当然の権利である。

求刑8年に怒り

デモは14時からおこなわれ、裁判所をぐるぐる包囲するかたちで進み、17時頃、JR大津駅前に到着。そのころ、ようやく検察の論告求刑が終了し、法廷からの人たちと合流した。集まった人たちは永嶋靖久弁護士から湯川裕司委員長に8年、他の執行委員5人に4年6月等々が求刑されたことを知らされると怒りの声があがった。
同弁護士は「要求実現に向けて団体行動をすることは当然のこと。これを犯罪だという論告を聞いていると、検察は公益の代表ではなく大企業の代弁者の立場になっている」と弾劾した。
太田健義弁護士は「論告は(ただ)長いだけで、証拠に基づかないで書いている。すでに(別の被告で)無罪が確定しているタイヨー生コンについても無理やり有罪にもっていこうとしているが、ずさんなものだ」と弾劾した。

コンプライアンス活動は必要なこと

全日建連帯労組本部・小谷野毅書記長あいさつの後、湯川委員長が決意表明。同委員長は「私たちは労働組合としてなんら間違ったことはしていない。コンプライアンス活動は当然必要なこと。阪神淡路大震災以来、われわれはこれを地道に取り組んできた。ヨーロッパでは当たり前の活動が日本では犯罪とされる。こんなゆがんだ状況を変えていかなくてはならない。求刑は8年でしたが、なんら動揺していることはありません。ひとつの試練としてこれからも運動をしてまいります」と力強いあいさつ。

最終弁論に結集を

関生弾圧は団結権を否定・破壊することに本質がある。団結権は生存権に由来する。貧困が拡大し、生きることすら否定される今の日本社会において、人らしく生きるために声をあげるには団結権が不可欠である。
弁護団は、ずさんな論告を打破するため10月24日10時から17時まで時間を取り、検察を弾劾する最終弁論をおこなう。10月24日、大津地裁に全力で結集しよう。

最終弁論

とき:10月24日(月)午前10時〜午後5時
ところ:大津地方裁判所(JR「大津」駅北3分)



関電の原発マネー不正還流
大阪地検に「起訴」要請行動
9月6日

関電の旧経営陣が福井県高浜町元助役や、その関連会社から多額の金品を受領していた事件、並びに金品受領を収入とみなされ追加納税した金額や役員報酬減額分を、役員退任後に闇で補填していた事件について、8月1日に公表された大阪第2検察審査会の議決は、昨年11月9日に大阪地検がおこなった不起訴決定について「起訴相当」「不起訴不当」とし、「強制捜査や関係者からの再度の事情聴取や独自のデジタル・フォレンシックの実施など、更なる捜査を十分に行って事実を明らかにしてほしいと期待する」と述べている。
この件について、〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉は9月6日、大阪地検を訪れ、「ただちに強制捜査等に着手して、捜査を尽くし、真相を究明して、被疑者を起訴するよう」要請した。

2件の追加告発も

不起訴決定後の今年4月20日に関電が設置したコンプライアンス委員会は、新たにデジタル・フォレンジック調査等をおこない、@土砂処分、A土地賃借、B倉庫賃借の3件で、元助役関連会社の吉田開発などに便宜をはかるためにコンプライアンス違反があったと認定した。
今回、〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉は、右記@Aの件で追加告発をおこなった。Bは準備が間に合わず、追って告発することに。関電が地元対策のために高値発注していた実態が暴かれ、「特別背任」にあたるとして告発。
地検前に集まった40人は、抗議の声をあげ、申入れ代表団4人を送り出した。

記者会見&報告集会

その後、近くの別会場に移動し、記者会見&報告集会がおこなわれ、80人が参加した。

「黒い雨」被爆者・高東征二さんが意見陳述
伊方原発広島裁判

9月14日、広島地裁(大浜寿美裁判長)において第29回口頭弁論期日の取り組みがおこなわれました。
伊方原発運転差止広島裁判の原告団、応援団、支援者らは、午後1時40分に地裁前で記録撮影をおこない、午後2時30分からの法廷に臨みました。法廷にはNHK広島放送局のカメラも入り、開廷前の様子を撮影しました。
弁護側からは準備書面51(立証責任について)が提出され、原告意見陳述に立った「黒い雨」被爆者の高東征二さんは「四国電力の伊方原発3号機は今でも運転を続けています。環境に放射能を放出するような事故が起こったらどうなるでしょうか。その放射能は、さえぎるもののない瀬戸内海を挟んでわずか100qしか離れていない広島を確実に内部被曝に晒します。『黒い雨』被害、福島原発事故被害の二の舞、三の舞です。これだけは絶対に阻止しなくてはなりません。そのためにはまず運転を止めることです。私が当裁判の原告となった理由でもあります」と力強く訴えました。

記者会見・報告会

午後3時から広島弁護士会館で記者会見・報告会がZOOM併用でおこなわれ、弁護団による前回期日提出の準備書面の一部の解説などがおこなわれ、高東征二さんが法廷での原告意見陳述を再現しました。
また、ZOOM参加した「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分場としない条例」制定を求める県民の会共同代表で核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団代表・弁護団長でもある浅石紘爾さんが、請願署名運動の報告と広島の署名運動への協力への感謝と今後の闘いの決意を述べました。
広島県三原市の本郷産廃処分場建設に反対して闘っている岡田和樹さん、川田龍平参議院議員からも共に闘う決意がZOOMで述べられました。
この日の伊方原発広島裁判の様子はNHK広島放送局が放送しました。次回本訴期日は12月14日。

岩国でも伊方裁判

9月15日には山口地裁岩国支部で伊方原発差止訴訟の弁論が開かれ、法廷では原告側から「火山事象に対する安全の欠如〜準備書面(28)(29)の補足説明@」が、パワーポイントのスライドを映写しながらおこなわれた。
〈伊方原発をとめる山口裁判の会〉による報告会では原告側弁護団による準備書面の解説、質疑応答の後、中国電力による上関原発を建てさせない祝島島民の会妨害予防請求の調停が申し立てられたとの報告があり、参加者から怒りの声があがりました。(松田 忍)

4面

全国で国葬反対のうねり

安倍国葬反対の行動は、東京の武道館・国会周辺はじめ、全国各地で大きなうねりとなった。

大阪 国葬当日に400人のデモ
前夜 総がかりが1000人の集会

中之島公園水上ステージに集まりボテッカーをかかげる参加者(9月27日)

9月27日大阪では〈やめろ! 安倍国葬 実行委員会〉の呼びかけで、中之島公園水上ステージに400人が集まり、御堂筋を北上し梅田までのデモ行進をおこなった。集会は実行委の主催者あいさつのあと大椿ゆうこ社民党副党首などの発言を受け、デモに出発。途中アメリカ領事館あたりから雨に見まわれたがものともせず、梅田OS劇場前まで抗議の声を上げ続けた。集会・デモには小さな市民グループが3人・5人と集まり、それぞれの旗とプラカードを持ち寄った。平日昼間ながら多数の結集に意気上がる行動となった。
『未来』の旗も
国葬前夜の26日、大阪中之島公園ではおおさか総がかり行動実行委員会の主催で、関西で最大規模の集会・パレードがおこなわれた。集会は主催者あいさつののち、立憲・共産・社民・れいわの4政党代表から国葬反対のアピールを受けた。7時10分からのパレードは先頭を〈戦争させない1000人委員会・大阪〉の労組。特に退職教員がそろいのゼッケンで多数参加。第2グループは政治団体、沖縄・原発などを闘う市民団体が300人で隊列をつくり意気軒高とデモ行進。最後尾を大阪憲法会議・共同センターが西梅田公園までデモ行進した。
この日『未来』編集委員会は、『未来』の旗をたて国葬反対特別号を500部配布し、デモ行進にも参加した。

東京 9・19 代々木公園
1万3000人が結集

9月19日は例年この時期に取り組まれるさようなら原発集会だが、この日代々木公園野外音楽堂には、国葬反対で最大規模の13000人が集まった。集会名称は「安倍元首相国葬反対! 改憲発議と大軍拡やめろ! さようなら戦争 さようなら原発 「戦争法」強行から7年 福島原発事故を忘れない9・19大集会」で、主催者を代表して鎌田慧さんのあいさつののち、各界からの発言が続いた。広い代々木公園を埋め尽くす人波は壮観で、国葬反対の盛り上がりを実感させた。
午後3時30分から2コース(渋谷コース、原宿コース)のデモ行進に出発した。
また9月25日18時から新宿駅南東口で、総がかり行動ユースの集会が数百人の参加で開かれた。(写真左)









府中市でパレード 9月23日

9月23日、都下府中市で、安倍の国葬に反対して「9・23府中市民怒りのパレード」が120人の参加で開催された。都内23区だけでなく三多摩地方でも国葬に反対の声は充満している。主催は〈選挙で変えよう! ふちゅう市民連合〉で、国葬後の闘いを継続し岸田政権を追い詰めていくことを誓った。(写真上)

神戸 第2波デモ 9月17日

9・17兵庫デモは、8月27日の第1波につづく国葬反対行動。この間兵庫県各地で集会やスタンディングがおこなわれ、市民デモHYOGOのマルイ前でのシール投票は毎回100人を超える投票がおこなわれ、関心の高さと日に日に反対意見が増える中での2回目の闘争となった。集会は市役所南の東遊園地に400人が参加。ゲストスピーカーの内田樹神戸女学院大名誉教授は「国葬反対の世論が過半数を超えても、岸田首相は、安倍元総理が国葬に値する立派な業績を残したとも立派な人物だとも国民に強く訴えないのは、彼自身がそう思っていないからでしょう」と語り、国葬に抗する中に民主主義再生の芽があると訴えた(写真上)。集会後元町駅前まで4つのグループに分かれデモ行進。三宮センター街では市民の注目を集めた。 デモ終了後、元町駅前ではスタンディングと、憲法・反原発・労組・生協運動などの団体、大学生など15人のアピールがおこなわれた。(写真下)

27日も行動

国葬当日の9月27日13時から三宮マルイ前で国葬に抗議するアピール行動。14時過ぎから土砂降りの雨になったが、参加者は80人に。自由なスピーチ、ギター・ジャンベ演奏、コールを織り交ぜ国葬に抗議した。(写真左)

















尼崎でスタンディング

9月22日尼崎では、9月2日に続き2度目のスタンディング。地区労の呼びかけのもと、関西合同労組や市民団体、立憲民主党の元県議、新社会党の尼崎市議など30人が参加し、阪神尼崎駅前で国葬反対の訴えをおこなった(写真)。尼崎で武庫川の自然を守る市民運動を長くしてきた仲間からは、国道43号線公害問題も含め、尼崎市民の怒りが土壇場で爆発すると訴え、国葬反対ののぼり旗を持って駅前広場を駆け回った。
尼崎共同行動は19日に集会・デモを企画していたが台風の接近で中止。かわりに23日にJR尼崎駅前でスタンディングが。各地の行動でほぼ最後、他の集会と重なったが100人以上が参加した。ここでも赤字白ヌキの「安倍国葬やめろ!」の横断幕(関西、全国に多数出回っている)と、「国葬反対」ののぼり旗が道行く人を引き付けた(写真左)

(お詫びとおことわり)

全国各地から国葬反対の報告が寄せられていますが、紙面の都合で限定選択となりました。次号にも掲載予定ですが掲載しきれない可能性もあります。 また反原発や優生保護法や、ミャンマー情勢、ウクライナ反戦をめぐっての意見なども寄せられていますが、次号以降になることをお断りします。 本紙編集委会

5面

市民の決起、野党の奮闘で岸田倒せ

大阪で3つの集会 2つのデモ

白井聡・紀藤正樹さんが訴え
統一教会と一体の安倍政治

「異議あり国葬! 9・23緊急シンポ〜安倍銃撃死と統一教会問題」集会が大阪市内でひらかれ、280人が参加(写真)
集会では、政治学者の白井聡さんが基調講演、弁護士の紀藤正樹さんが特別報告(リモート)をし、パネルディスカッション、討論、アピールがあった。
▼白井さんは、「安倍銃撃死と2012年体制の行方」と題して、安倍銃撃死と国葬をめぐって明らかになったことを述べた。安倍が死んでなかったら違う展開になり、統一教会、オリンピック汚職などの問題は明らかになっていない。忖度の中心が消えたが、まさに紙一重。日本の国はそこまで来ている。国葬を決めたのは岸田の大失態。〈統一教会を片づけられない自民党〉として、国際勝共連合と戦後史の関係の裏面史を暴いた。いま戦後が立ち行かなくなった事実を見たくない。この体制を無理やり持たせようとするのが2012年体制だ。国葬で岸田は体制を正当化しようとしたが無理。反対の声の大きさに日本の未来がかかっている。今が勝負の時だ。
▼リモート講演で紀藤弁護士は「統一教会と政治の癒着」として、32年間この問題を追及してきた経過を報告した。80年代に問題になったが、警察の捜査が終結して、一見終息。メディアも報道しなくなった。だが勝共連合と関係が深かった金丸らが文鮮明を日本に呼び、米国で有罪となり入国できない文鮮明を入国させた。統一教会を捜査していればオウム事件は起きなかったのでは。オウムは統一教会のミニチュア。まねた方は解散や教祖逮捕で破綻。統一教会だけが生き残った。
30年で被害件数は3万4千余件。被害額は1237億円。消費者庁の統計では相談件数の20倍くらいの実数があるといわれている。昨日、統一教会が記者会見したが、政府・国民に謝罪しているが被害者にはない。被害者に向き合わない理由は、被害額が1兆円超えるかもしれず、返済すると統一教会が崩壊する。安倍は06年に統一教会関連行事に祝電を出した。被害弁護団が経緯説明を求めたら、「担当者に注意した」と返事。その後は21年まで質問状を無視。まとめとして、@政治家は、統一教会と関係を断つこと。広告塔になってほしくない。A職務権限を持つ人は関係を持たないことと述べた。
討議では、国葬を認めてはならないと大石あきこ衆院議員、木村真豊中市議らの発言が。
アピールとして〈やめろ! 安倍国葬 実行委員会〉の古橋雅夫さん、学生、来年の統一地方選候補予定者の発言があった。最後に司会のつじ惠さんが、「9・27国葬粉砕は入口。自民党は統治能力がなくなって日本会議系や統一教会が支えている。秋の臨時国会から、衆院解散に追い込んでいく」とまとめた。

9・9緊急集会
18人がアピール

やめろ! 安倍国葬 9・9緊急アピール集会が大阪市内でひらかれ、250人が参加した(写真)。主催者代表・古橋雅夫さんのあいさつ後に17人が発言。一部を紹介する。
▼〈辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動〉西川雄二さんは、「大阪行動は18年以上前から大阪駅前で反対行動をやってる。沖縄では今選挙をやっている。玉城デニーさんの勝利で辺野古に基地をつくらせない。
沖縄に基地を押し付ける工事を始めたのは安倍政権。キャンプ・シュワブゲート前に機動隊を導入。海でもカヌー隊や船を出すと海保が弾圧してくる。翁長知事になり工事は止まるが、16年参院選でオール沖縄が勝利した翌日に、高江でヘリパッド工事を始めた。この時、大阪の機動隊が差別暴言を吐いた。高江のあと、18年12月、護岸工事土砂投入を始めた。軟弱地盤がわかってもやめない。科学的知見を無視するのはコロナのPCR検査抑制と一緒。次の政権の時も海自艦艇派遣。何でこんな奴を国葬にしないといけないのか。ともに頑張ろう。」
▼〈脳性まひ者の生活と健康を考える会〉古井正代さんは、「1996年まであった優生保護法を知ってますか。日本が基本的人権を認めた2年後にできたんです。優生保護法は私たちのことをいらない者として子孫をつくったらいけないと避妊手術をした。親をだまして連れて行って何の説明もなく避妊手術され…。黙って、子どもは殺されたんです。それはハンセン病の人も同じです。
安倍政権では経済成長の中には私たちはいらないものとされ、私たちのことをなかったこと(存在)にする。しかしいつか皆さんも年取った時にいらない人にされる。そういうことをやってきた安倍が国葬なんてとんでもない。上下関係作るようなもの(国葬)に絶対反対しましょう」。
▼〈若狭の原発を考える会〉木原壯林さんは、「これまで悪い政治は物価高、インフレ、格差を招く、人民の権利を制限、戦争準備、立場を利用して私利私欲、長く政権に座った安倍は悪をすべてやった大罪人」。「原発でも、原発全電源喪失に関わる警鐘を無視して福島原発事故を招いた。福島汚染水を『完全にコントロールされている』と嘘をつきオリンピックを招致。退陣後も、ウクライナ戦争に乗じて核共有を主張。避難者支援を打ち切り、福島帰還を強制」。さらに岸田の従来の姿勢を変更した原発60年超え延長、次世代原発推進など安倍追従の方針を弾劾し、美浜3号機完全廃炉へ、安倍や岸田の政治と決別しようと訴えた。(つづく)

高作正博さんが講演
PLP会館あふれる300人
9月19日

9月19日、大阪市内で「安倍元首相の国葬反対! 大阪集会」が〈とめよう改憲! おおさかネットワーク〉など5団体が主催、おおさか総がかり行動実行委員会が協賛してひらかれた。参加者は300人を超え超満員で廊下にも人が溢れ、熱気に満ちた集会だった。台風接近のためデモは中止。
主催者あいさつは、〈しないさせない戦争協力関西ネットワーク〉中北龍太郎さん。
次に高作正博さん(関西大学法学部教授)が「国葬(儀)問題は私たちに何を問うているか」と題して講演。@銃撃事件直後の違和感と国葬の決定過程、A国葬の問題点、B国葬に反対する理由という3本柱で、国葬の問題点を分かりやすく話した(写真左上/内容は次号)。護憲団体アピール、政党あいさつ(立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党)があり、市民団体4団体から熱いアピールがあった。

安倍国葬反対のあらゆる行動を!

〈戦争あかん! ロックアクション〉山下けいきさん(共同代表)は、「2013年秘密保護法以来、悪法を成立させ、安倍によって日本は平和国家から戦争国家への道に。南西諸島の40の島に射程1千キロのミサイルが1千発以上配備されている。安倍の国葬なんてとんでもない」。〈とめよう改憲! 大阪ネットワーク〉の家門和宏さん(事務局)は「安倍元首相が死去して改憲が遠のいたともいわれるが、決して楽観視できない。改憲をすすめる維新、参政党、NHK党などが増えている。改憲阻止の運動をさらに強めていこう」。関西共同行動の古橋雅夫さんは、「旧統一教会との関係を明らかにしないまま、安倍元首相に最上位の勲章を与え全国に弔意を強制することは、戦前の国威高揚の価値観を再現すること。私たちは広く市民団体に呼びかけ9月9日に集会を開いた。安倍自身が数を通して民主主義を破損してきた。その結果が今回の事件だったのではないか」。
松岡幹雄さん(とめよう改憲! 大阪ネットワーク)が、最後まで国葬反対の声を上げ続け、9月27日には国会前を、武道館6千人を上回る人で包囲しようと行動提起をした。

6面

強制不妊手術裁判第三次訴訟
またも「除斥期間」で棄却
大阪地裁9月22日

9月22日、おおさか強制不妊手術裁判第三次訴訟の判決があり、大阪地裁(横田典子裁判長)は、旧優生保護法を違憲としたものの、国の賠償責任は認めず、原告の請求を棄却した。今年2月の大阪高裁、3月の東京高裁判決に逆らうのかと怒りを覚えた(写真)
旧優生保護法について、立法目的は非人道的で差別的であり、違憲であるといいながら、「除斥期間」によって時間の経過で賠償を求める権利が消滅しているとして、棄却するという不当判決なのだ。
閉廷後、弁護士会館に移り、「優生保護法被害の全面解決を求める関西集会〜謝罪せよ! 補償せよ! 繰り返すな!〜」がひらかれた。関西各地で闘う仲間が発言。兵庫の小林寶二さん(聴覚障害者、90才)と鈴木由美さん(脳性まひ)、大阪高裁で闘った野村さん夫婦(聴覚障害者)が発言した。東京から、東京高裁で闘った北三郎さんが参加した。
さらにZOOMで、仙台から佐藤由美さん(知的障害)、福岡から朝倉典子さん(聴覚障害者)が亡くなった夫の分まで頑張ると発言した。これまでに提訴した25人のうち5人が亡くなった。兵庫の小林さんのお連れ合いも6月に亡くなったばかりだ。もう時間の猶予がない。
全日本ろうあ連盟・大竹浩司さんが、2月大阪高裁、3月東京高裁の判決の後、5月に優生保護法問題の全面解決をめざす連絡会が結成されたと報告。10月25日に東京日比谷公園大音楽堂で全国集会を開くので是非参加してくださいと強く訴えた。
集会決議では、絶対に許せない不当判決だ、不当判決に抗議する。私たちがこれからどのような社会をめざすのかを照らしだす課題だ。すべての人の尊厳が守られ、差別のない社会をめざすことを決議するとして、集会を締めくくった。(草川けい子)

優生保護法問題の全面解決をめざす10・25全国集会

とき:10月25日(火)午後12時半〜15時
ところ:東京・日比谷野音
共同開催:優生手術被害者・家族の会
全国優生保護法被害弁護団
優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)



フジ住宅ヘイトハラスメント裁判
最高裁で原告勝利が確定

フジ住宅ヘイトハラスメント裁判で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、9月8日付けで同社側の上告を退ける決定をした。
被告は東証一部上場企業(現プライム市場)フジ住宅株式会社と同社代表取締役会長・今井光郎である。
この裁判は、大阪府岸和田市に本社をもつフジ住宅が、従業員の在日コリアン3世の女性にたいして会社ぐるみでおこなっているヘイトハラスメントに対して被害女性が訴えていたもので、損害賠償及び(ヘイト)資料配布の差し止めを求めている。
フジ住宅は、在日朝鮮人民を非難するヘイト本及びヘイト文書を全従業員に配布し、感想文を提出させるなどを繰り返していた。また2015年には、日本の侵略戦争を肯定する育鵬社教科書が採択されるよう大阪市や大阪府内の教科書展示会に従業員を動員し、アンケート用紙に育鵬社教科書を採択するよう書かせていた。
当該女性がそうしたヘイト行為をやめるよう何度も会社に訴えたが、組織的ヘイト行為は止まらず、逆に彼女に対して退職勧奨などをおこなった。さらに彼女が裁判に訴えると、彼女を非難する資料を社内で配布し続けた。1審、2審とも原告が勝訴。今回の上告棄却により原告勝利が確定した。

原告がメッセージ

原告の女性は「判決は出て終わりではありません。まずは、この裁判で判決を受けたフジ住宅と会長が、この結果を真摯に受け止めることは勿論、判決の結果だけでなく、判決の中で示された問題点を理解し実行につなげてこそ意味を持つものです。残念ながら一審判決後に、真逆の行為が繰り返されたことを思うと、心から喜べない気持ちになり不安になっています。早く、ちゃんとした謝罪と過去に私に対して向けられた多くの酷い言葉により壊れた職場での人と人との関係を企業として責任を持って回復できる環境を作っていただきたいと切に願っております。」「2013年の労基署へ救いを求めたことに始まり、弁護士会への救済申し立て、その後に退職勧奨をうけた私にとって、裁判は最後の希望でした。だからこそ、厳しい状況に耐え続けた貴重な7年を、そして裁判制度の意味を蔑ろにしない会社であることを示していただきたいと思います。」とメッセージを寄せた。

報告集会

9月11日、勝利確定報告集会が大阪市内でひらかれた。主催は、ヘイトハラスメント裁判を支える会。原告、弁護団長、支える会の関係者などオンラインを含めて90人が集まり、喜びにあふれた集会となった。
裁判自体は終了したが、フジ住宅の態度は変わっておらず、課題は山積。今後の支える会の在り方については、これから議論していきたいと司会がまとめた。

レイハラ解雇と闘う人々からあいさつ

集会には、東京から「モルガン・スタンレー」レイハラ解雇とたたかう原告Aさん(韓国籍)が参加し、典型的なレイシャルハラスメント解雇にたいして裁判で闘っていると報告、支援を訴えた。

セックスワーク論批判E―下
人間の人間的解放かかげるマルクス主義は買売春と非和解
石川由子

(承前)

 

性産業で働く人々は、資本主義社会の矛盾を一身に担わされている底辺の労働者、シングルマザー、在日・滞日、部落民、障害者らだ。当事者にとことん寄り添うという意味で、私たちは断固としたセックスワーク派でなければならない。しかし日本の左翼はこの地点で停滞しているように思う。もちろん旧態依然とした性買売当事者の存在を軽んじる風潮が無きにしもあらずだが。
今のセックスワーク派は内容が、変わってしまっている。
1990年代、性買売当事者が警察権力から逃げ回り、そのつらい仕事さえ遂行できない事態を問題視したヨーロッパにおいて、@廃止主義=北欧モデルと呼ぶ。当事者を罰せず、転職を支援し、買売業者と買春者のみを処罰する立場、A合法主義=当事者、業者、買春者いずれも犯罪にならない法体系で、現在ではセックスワーク派と呼ばれる立場、この二つの考え方が激しく論争され、それぞれ2000年を前後して法制化された。前者=廃止主義を代表する国はスウェーデン。後者=合法主義を代表する国はドイツ。壮大な社会実験がおこなわれたのだ。
その後、20年が経過し、軍配は廃止主義に上がったというべきだろう。ドイツにおいては性買売の需要が拡大し、際限のない性搾取の地獄絵となっている。念願の社会保険に加入した人は当事者全体の1%で、通常の女性就業支援のほうがはるかに加入率は高かっただろう。合法化で売春「地下」組織は無くならなかった。というより本来「地下」でしか存在できなかった暴力的な業者と業態が、合法化されたことで大量に「表」で堂々と営業するようになったのだ。合法化された業者の陰に隠れて「地下」で営業している業者は多数存在する。「地下」の世界の住人が「表」の成功者として地元の有力者となり、女性への福祉政策は削減された。合法化国オランダでは廃止主義に方向転換せよという声が、若い人を中心に大きくなっている。

ここで本を二冊紹介する。

◆『マルクス主義、フェミニズム、セックスワーク論』(森田成也著 慶応義塾大学出版会 2021年) 
筆者は第4インタートロツキー研究所幹事。1965年生まれ。マルクス主義、トロツキー関係のたくさんの翻訳をしているが、フェミニズム関係の翻訳の功績は大きい。理論的セックスワーク論批判。

◆『性売買のブラックホール 韓国の現場から当事者女性とともに打ち破る』(シンパク・ジニョン著 監訳金富子 ころから株式会社 2022年)
筆者は性買売当事者の支援者として韓国で長年活動してきた人。かつてはゴリゴリのセックスワーク論者であったらしいが、ドイツなど合法化国の当事者や支援者との交流の中から廃止主義に意見を変え、今回初めて満を持して著書を発表した。日帝支配の爪痕が色濃く残る韓国の性買売の実態も良くわかり心が痛む。(つづく)

7面

連載 侵略と併合を合理化 21年7月12日付プーチン論文
「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」B

ボリシェビキの犯罪

という次第で、現代ウクライナは、完全に、ソビエト時代の産物である。ウクライナは、その重要な点で、歴史的なロシアの大地の上に形づくられたことを、われわれはよく知っているし、よく覚えている。このことをはっきりさせるためには、17世紀にロシア国に再統合された国土の境界と、ソビエト連邦を去った時のウクライナ・ソビエト社会主義共和国の領土を見れば明らかである。
ボルシェビキはロシアの人々を、社会的実験のための無尽蔵な資源のように扱った。彼らは、国民国家を消滅させる世界革命を夢想した。彼らが国境を線引きし、領土という贈り物を与えるのに寛大なのは、そのためだった。ボルシェビキの指導者たちが、国家を細切れにしていった時の思想はもはや重要ではない。ある決定の背後にあるあれこれの詳細、背景、論理に関して、意見を闘わせることはできる。ひとつはっきりしていることは、ロシアがまさに強奪されたということである。
この論稿を書くにあたって、何らかの秘密の記録よりも、よく知られた事実を含む公開の資料に依拠していることをことわっておきたい。現代ウクライナの指導者たち、その外国の庇護者たちは、この事実を無視したがる。
しかしこうした人々は、国の内部であれ外部であれ、「ソビエト体制の犯罪」を追及するチャンスを見逃さない。そのためには、ソビエト連邦共産党であれ、ソ連邦であれ、何ら関係のない現代の事件であろうが、おかまいなしのようである。
それと同時に、ロシアからその歴史的領土を分割するボルシェビキの努力については犯罪と考えない。その理由は、ロシアの弱体化につながりさえすれば、われわれに対して悪意あるものたちにとって好都合だからである。
もちろん、ソ連邦の内部では、共和国間の境界は、国家間の国境ではないとされた。ちいさな1国内であれば、国境は、名ばかりのもの、連邦としてすべての力を結集する時が来れば、高度な中央集権化が起こる、こうして再び、ソビエト連邦共産党の指導的役割が求められる。ところが、1991年、すべての領土内で、そして、より重要な場所で、民衆が、一夜のうちに、自分自身の居場所を失い、今度ばかりは本当に、歴史的な祖国から、引き離されてしまったのである。
これを何といったものだろう?すべては変化する。諸国家、諸社会も例外はない。もちろん、発展過程の1コマの中で、1部の地域のある人々が、多くの理由から、歴史的状況から、一夜にして、別の民族に属すると自覚することがありうる。われわれはそれとどう取り組めばいいのだろうか?答えはただひとつだけ、「敬意をもって」、である。

現ウクライナ指導部の誤り

あなたは、思い通りに、国を創りたいと思う。結構だ!しかし、その条件とはなにか?新しいロシアの典型的な政治家、サンクト・ペテルブルクのアナトーリ・ソプチャーク初代市長を私は思い出す。法律の専門家として、すべての決定は、合法的でなければならないと信じる彼は、1992年、次のような意見を共有していた。連邦を創設した諸共和国は、1922年の連邦条約を廃棄した後は、国境は、ソビエト共和国連邦に加盟した以前の状態に戻らなければならない。他の獲得した領土は、根拠が無効になっているので、交渉に託される。
言いかえれば、あなたが立ち去るとき、持ってきたものを持っていきなさい。この論理は、論駁不能である。ボルシェビキが、ソビエト連邦成立以前に、人民の意見を聴かず、恣意的に、人民の領有する土地に手を入れ、境界線を書き換えていたと、私は言いたいだけだ。
ロシア連邦は、新しい地政学的リアリティに気がついていた。気づいていたばかりではなく、実際にウクライナが国家として成り立つよう多くのことを成し遂げた。困難な1990年代を通して、新たな世紀においても、ウクライナには、考えられる限りの支援をした。キエフは独自の「政治的算術」を使うが、それを使って、1991年から2013年の間に、USドルで820億以上の予算を節約できたのに、今日では、ヨーロッパへのガス輸送のための15億のロシアの支払いにしがみついている。われわれの国家の間の経済的きずなを維持していれば、ウクライナはすでに100億ドルの恩恵を受けたはずである。
ウクライナとロシアは単一の経済システムの下で、何十、何百年と過ごしてきた。30年間の手厚い協力は、今日EUから瞠目されるほどである。われわれは、よく言えば、真に自然の補完的経済的なパートナーだ。こうした密接な関係は、競争しつつ相互に利益を上げ、両国の潜在的力能をひきあげることができる。ウクライナは、つねに、大きな潜在能力を保ち、強力なインフラ事業を伸長しつつ、ガスの輸送技術、進歩した船の建造、航空機、ロケット、工業製品のエンジニア産業など、世界に肩を並べる科学、設計、工学などを持っている。こうした遺産を譲り受け、独立を宣言したときに、ウクライナの指導者たちは、約束した。ウクライナ経済は、指導力を持つ先進国となり、生活水準は、ヨーロッパの最良のもののひとつとなる、と。ウクライナとソ連邦全体の誇りとひとたび言われていたハイテク産業の大企業群は、今日、衰退している。機械産業の製造では、ここ10年で42%下落、ウクライナの電力生産量はここ30年で、半減していることから、産業面の伸び悩み、経済全体の低落が見られる。結局、2019年のIMF報告によれば、コロナ・パンデミック発生以前の2019年で、ウクライナの1人当たりのGDPは4000USドル以下。これは、アルバニア共和国、モルドバ共和国、または未承認のコソヴォを下回っている。今では、ウクライナは、ヨーロッパで、もっとも貧しい国である。
ウクライナ貧困化の原因は誰に責めがあるのであろうか?これは、ウクライナ人民の失策なのか?もちろん違う。ウクライナが幾世代もかけて達成したものを、ウクライナの政府当局者たちは、蕩尽し浪費したのだ。ウクライナの人民は、つらい仕事にも堪え、高度な才能も備わっていることをわれわれは知っている。ウクライナ人民は、辛抱と決断によって、成功を勝ち取り、傑出した結果を残してきた。かれらの開明さ、生得の楽観主義、そして、親切なもてなしの精神は、消え去ってはいない。何百万もの人々のロシアとの交際に流れる心情は、単に良いものという程度ではなく、親愛の情に満ちている。それは、ウクライナに感じるロシア人のものと同じであり続けている。
2014年までに何百もの契約履行を果たし、ジョイント・プロジェクトを企図し、経済、ビジネス、文化的きずなを発展させ、安全保障を強化し、共通の社会的あるいは環境の諸問題を解いてきた。ロシアとウクライナ双方に、的確な恩恵をもたらしてきた。これこそが、もっとも重要なことだと、われわれは信ずる。それ故に、すべてにわたり、ことのほか強調したいのは、ウクライナの指導者たちとともに、実り多い相互交流ができたということだ。
2014年のキエフの出来事の後でさえ、私は、適切な省庁、機関とわれらの経済的きずなを続け、保持してゆくための選択肢を練り上げるべく、ロシア政府に要請してきた。しかしながら、ともに事をなそうとする意志は見られず、いまだにない。それでもなお、ウクライナはロシアの通商上のトップ・スリーのパートナーの位置を保ち、何十万ものウクライナの人びとが、働きに来ており、歓待と支援を受けている。なにが「侵略国」なのだろうか。
ソ連邦が解体した時、多くのロシアとウクライナの人々が真剣に、親密な文化的・精神的・経済的きずなはきっと続くだろうと信じ、維持してきた。それは、心の底から一体感をつねに感じてきたわれわれ双方の人民の共通性についても同様である。しかしながら、初めは徐々に、そしてのちに、さらに急速に、事態は違った方向へ動き始めた。
本質的に、ウクライナ支配層は過去の否定を通して、彼らの国家的独立性を正当化する決断をした。しかしそれは、国境問題を除外していた。かれらは、神話化と歴史の書き換えをはじめ、すべてをロシアと結び付ける歴史の編纂をはじめ、ウクライナが、ロシア帝国とソビエト連邦の部分であったころの時代を占領時代として規定する。1930年代の集産主義化、集団農場化と飢饉の共通の悲劇の時代は、ウクライナ人民へのジェノサイドとして描かれた(注8)。 過激派とネオナチ(注9)は公然と、そしてますます、その野心を、傍若無人なものにしていった。彼らを甘やかす公権力と地方のオリガルヒーの双方は、ウクライナの人民を略取し、西欧の銀行へ隠し金を積み込んだ。彼らは、資本蓄積のためには、彼らの母国を進んで売った。このことに、国家機関のぬぐいがたい弱点が加わって、誰か他人の地政学的企図へのおのずから人質となる立場ともなる。

(注8)大飢餓:1932年〜33年の大飢餓。スターリン治下で農村を強制集団化して飢餓輸出によって工業化のための蓄積元本を確保することが目的で、農村に最大の餓死者が出た。ウクライナではこの飢餓の時に200万人から800万人近くの餓死者が出たとされ、とくにスターリンによる「ジェノサイド」として「ホロドモール」と言われる。プーチンはロシアでも死者が出たということを理由にこの飢餓を自然現象のように描いている。以上は、小山哲・藤原辰史著『中学生から知りたいウクライナのこと』によった。
(注9)ネオナチ:欧州では政敵をナチスと絡めてよく批判する。ロシアでは第2次大戦の独ソ戦の勝利が民族アイデンティティとなっているため、この傾向が強い。ほかに誇るべきものがないということがある。このことからプーチンは、2014年の「尊厳の革命」(後出)の主体や「アゾフ連隊」をネオナチとか親ナチスと批判することが多い。前者についてはマイダンで首都の広場を20万に及ぶ民衆が取りまいて、腐敗を極めるヤヌーコヴィッチ大統領を打倒した事態があり(ウクライナでは「尊厳の革命」と呼ばれる)、その中に数10人の親ナチを自称する右翼がいたことは確かであるが、その勢力は議会選挙では合わせても5%条項を満たせず、議席を失っている。アゾフ連隊はドネツク地方の内戦において、親ロシア勢力を自称するロシアの傭兵、特殊部隊、ヤクザなどの偽装部分と闘った郷土防衛隊的義勇部隊であり、中に右翼セクターなどの思想の持ち主がいたことは事実であるが、内務省管轄の正規部隊に編入され、そのような思想的右翼は排除されている。プーチンは、ドネツク2州への軍事介入の理由をロシア人の防衛のためというが、東部2州で民族的出自がロシア民族のものはせいぜい2割程度、ただウクライナ語が禁止されるか、不利な扱いを受けたため、ウクライナ語を喋れずロシア語を母語とする人はところによって半数を超えている。双方の集団とも、ウクライナからの分離やロシアへの編入を支持する者はほとんどいない。ちなみに前記アゾフ連隊に所属するものは全員がロシア語話者であり、プーチンからすれば、ナチス規定をするしかなかったのである。プーチンは、一時期、ゼレンスキー大統領も、ネオナチ規定したり、2014年の革命を「ナチ支持者のクーデター」と呼んだりしているが、最近ではロシア内部でもそのようなレッテルが通用しなくなり、「ナショナリスト」という批判に変えている。ところでプーチンがクリミヤの併合やドンバスの内戦に使っている傭兵は「ワグネル社」という傭兵会社が提供しているが、この中心的実体は、「ロシア帝国運動」という極右団体がプーチン側近のオリガルヒと組んで設立したものであり、この連中はドイツのAfD(ドイツのための選択肢)と直接連携しており(だから名称までドイツ語である)、AfDは隠すところなしのネオナチ政党であるが、議会に議席を持つためにナチスとの関係を隠している。(つづく)

8面

『ファシズムの教室』を通して考えたこと
〜差別・排外主義を許さない

9月18日、「差別・排外主義を許さない!連続講座 Part3 〜『ファシズムの教室』を通して考えたこと〜」が都内でひらかれ30人が参加した。講師は甲南大学教授・田野大輔さんで、主催は、差別・排外主義に反対する連絡会。
まず司会が、十数年活動を続けている当連絡会の活動の柱の一つとして学習会を続けてきたが、「連続講座」としては最終回とすると紹介。昨年いただいた多田瑶子反権力人権賞の賞金を運動へ還元する意味も持っていること(毎回のことですが今回は特に赤字額が膨らみました)と説明。田野さんへは『ファシズムの教室』が出版された直後にアプローチしたかったがドイツ在住であったために叶わず、帰国を心待ちにしていたことを報告。われわれが対峙するヘイト勢力を異様な人間と片付けるのではなく、普遍的な人間のあり方から理解する助けになると講演へ繋げました(写真左上)

講演と質疑

講演は質疑を含めて、以下の様な話でした。
30年間ナチス・ファシズムの研究をしてきたが、それとは別個に教育者として社会学にも携わってきた。その二つを繋げたいという思いで始めたのが『ファシズムの教室』で紹介した授業。
授業では250人程の生徒に、教師の自分を指導者に見立て忠誠を誓わせるところから始める。敬礼や行進の練習をおこない集団の力の大きさを体験させる。生徒のレポートによれば、この時点でもう一体感や高揚感という意識の変化が見られる。
次の日には服装を統一させ、授業を妨害する出席者(サクラ)を糾弾。屋外へ移動し、隊列行進をしたり、カップル(これもサクラ)を糾弾するなど、より具体的行動を実践。レポートには、達成感や優越感まで感じるようになっていくことが見て取れる。
終了後には、指導者への服従や集団行動により自分の意識がどう変化したかを考察し、レポートを提出させている。単なる受講による受動的な認知ではなく、実際の体験によるファシズムの危険性を主体的に認識することになり、今後の人生の中での緊張感を高める効果を持っていると思う。
授業の前後では十分な説明をおこない、レポート等による事後の自己検証も求め、授業以上の逸脱が生れないようにしている。にもかかわらず、右翼政治家の圧力に大学が屈してしまい、10年で終了となってしまった。
近年の研究では、強力な独裁者による上意下達によってファシズムが形成・維持されるという従来の通説は誤りで、動員された民衆の忖度・主体的行動がより大きな原動力となったことが分かってきた。集団の力・指導者へ従属することによる責任感の麻痺・等を通して、これまでの自分の規範から外れた行為まで違和感なくおこなえるようになる。権威を背景により強く自分を肯定するために、行動は過激化する傾向さえ見られる。
これらは、ポピュリズムやヘイトにも通じる問題。更には、宗教やイジメにもその要素が含まれている。権威への服従・異端の排除の二大要素で分類するのであれば、文化大革命・レッドパージ・連合赤軍も広義のファシズムと言える。
一般的な左翼的運動の中にもファシズムの要素を感じはするが、内省が強い傾向があれば熱病的になることは稀だろう。但し、同質性が強まるだけで異端排除の欲求が生れてくるので、内部で多様性を維持するのは重要だと思う。強いリーダーの存在が物事を円滑に進めるという利点があるので否定はしないが、それが暴走しないようにするためにはどうするべきかは考えなければならない。また、ポピュリズムの強さをこちら側に取り入れる必要もあるのではないかと思っていて、より深く分析していきたい。

身を引き締めて聞いた

集会は、武蔵野五輪弾圧当該からのメッセージ紹介、反国葬行動の呼びかけ、ウトロ放火事件判決確定の報告を受け、終了した。
ある参加者は、「田野さんの話は、われわれ自身の自己分析を求める要素まで含む有意義なものでした。そういう意味での緊張感があり、身を引き締めてお聞きすることができました。また、コロナでの隔離生活の体験談や、諸外国と日本とのコロナ対策の違い等緩急を付けた聴きやすさを配慮したお話だった」と語りました。

国葬反対のバナー

9月中旬、前進社関西支社ビルに「安倍国葬やめろ」の6メートルのバナーがかかげられた。







〈投書〉一押しの本
山本義隆著
『リニア中央新幹線をめぐって 原発事故とコロナ・パンデミックから見直す』

著者は元全国全共闘代表である。本書は科学者の透徹した眼で、あらゆる角度からリニアの超危険性を具体的に指摘している。原発推進政策との関連や、安倍元首相が深くコミットした着工許可に至る経過もリアルに追及している。リニア計画とコロナ禍の急激な拡大が無縁でないことも明らかにしている。
そしてさらに、「成長」を最優先する資本主義の行きついた現代文明が人類の生存と相容れないことと、目指すべき社会の在り方を分かりやすく提起している。
衝撃的な内容の一部を紹介すると―JR東海の環境影響評価書によれば、リニアの1人あたりの炭酸ガス排出量は、従来の新幹線「のぞみ」の約4倍である。使用電力が新幹線の40倍と見積る元国鉄技師もいて、リニアは原発推進の動きと不可分の関係にある。
経済効率の面からも、自然環境や人体への影響の面からも激甚なリスクが確実に予知できるリニアを建設しようとする背景に、一体何があるのか。
「磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)の技術は世界が注目する新技術」であることを、全世界に向けて発信したい大国主義的ナショナリズムが存在すると、著者は喝破している。
リニアに関心の有る無しの次元を超えて、私たちが追求すべき新しい社会について、深い洞察にもとづく説得力と示唆に富む必読の書である。(みすず書房 1800円+税)(一読者)

訃報 尼崎地区労前事務局長 小西純一郎さん急逝

反弾圧集会で発言(2019年3月)

9月19日午前9時、尼崎地区労、武庫川ユニオンの運動を生涯にわたって担い続けた小西純一郎さんが急逝した。享年70。
1カ月前には地区労事務所で懇談したのに、その後「体調を崩している」と聞いていたが、こんなに早く亡くなるとは思いもしなかった。痛恨の極みである。
小西さんは1970年代後半に大学を卒業後、尼崎の労働運動の世界に飛び込み、尼崎総評事務局員として最末期の総評運動を担った。総評解散・連合発足の過程では、地区労運動の継承と、地域合同労組の草分けとして武庫川ユニオンの運動を創設し、以降35年にわたって奮闘してきた。尼崎市役所窓口の民間委託問題では1カ月以上にわたり市役所橘公園にテントをはり勝利を実現した。労働福祉会館の廃止でも稲村尼崎市政と激しくわたりあった。地区労として郵政はじめ各種争議に奮闘し、関西合同労組成友印刷分会争議にも協力を惜しまなかった。数年前に地区労事務局長を後任に譲りながら、その後もボランティア専従として地区労・武庫川ユニオンの運動を支え続けた。
また関西生コン支部への大弾圧には困難をこえて兵庫の取り組みを進めた。ウクライナ戦争の勃発には心を痛め、阪神尼崎駅前で数回にわたり抗議のスタンディングを組織した。そしてこの9月、尼崎地区労は安倍の国葬反対の行動に労働組合として立ち上がった。そのさなかに病に倒れ、帰らぬ人となった。
葬儀は家族葬として営まれたが、最後のお別れに多数の人が駆け付けた。労働運動の不屈のリーダー、小西純一郎さんのご逝去を、心から悼みたい。
阪神社会運動情報資料センター 松田耕典