ロシア軍は直ちに撤兵せよ
軍拡・改憲強める岸田政権と対決を
対ドイツ戦勝記念日の5月9日、プーチン・ロシア大統領は、ウクライナ戦争での勝利宣言か、新たな戦争宣言・国家総動員宣言をしようとしていたが、ウクライナ人民の抵抗に追い詰められ、いずれもできなかった。そればかりか「ウクライナ」という言葉を一度も発せず、戦死した兵士に言及するなど、2月24日開始した戦争が、ますます不正義で展望のないものであることを自認した。
しかしゼレンスキーとウクライナ全体をナチスとみなして「やむを得ない、唯一の正しい選択だった」と侵略戦争を正当化した。さらに演説の力点は愛国心高揚におかれ、引き続きナチス勢力と闘うという、無謀な戦争の継続を宣言した。全世界の労働者・人民は、ロシアがこの戦争を直ちにやめ、ウクライナから撤退することを求めている。
ロシア国内では、言論弾圧で表面的なデモは沈静化しているが、プーチン忌避の気運は強まり、プーチンのロシアと未来をともにしたくないという20万人の若者が国外脱出を図っている(この間旅行も含め海外に出た人は1〜3月で388万人)。
プーチンに残された選択は、ウクライナ軍・人民との東部地方での軍事的衝突をこれ以上続けるのではなく、ウクライナ全土から直ちに撤退することである。核の威嚇をやめ、最低限2月24日以前の事態に戻すことである。そうでなければロシアはさらに孤立化し、ロシア人民にも途端の苦しみを与えることになる。
プーチン擁護、虐殺をフェイクとする論調を許さない
大阪梅田の繁華街で戦争反対の訴え(9日) |
憲法集会でも「侵攻をやめろ」(5月3日、神戸) |
市民デモHYOGOは2回目のデモ(5月7日、神戸) |
ウクライナ戦争の長期化で人民に危機感が広がる中、左翼・リベラル勢力内に様々な見解が流布されているが、その中で極めて反動的で危険な姿勢を示している勢力がいる。
一部の運動体は、「戦争の原因は米帝・NATO拡大である」「ウクライナはネオナチに支配されている」と言い、さらには「市民や民間施設攻撃のニュースはフェイクだ」として、現に今進行しているロシアの侵略戦争に反対せず、ロシア軍の蛮行を擁護するという勢力がいる。とりわけ革共同全国委の発行する『前進』(春季特別号 第3242号 5・2付)は、ブチャの民間人殺害を「何の調査も根拠もなく『ロシア軍の虐殺』とするのは、『西側メディア』の典型的な『戦争プロパガンダ』」と言っている(さすがにフェイクとまで言ってないが同じだ)。
市民や民間施設攻撃をフェイクとするロシア(大使館)に対し、現地に入って取材した日本人ジャーナリストが、「自作自演」という駐日ロシア大使に対し自らのチームが撮った映像で論破したことは広く知られている(彼はロシアを擁護するベラルーシの大統領を激しく追及した映像でも知られる)。このような事実を否定し、プーチン・ロシア大使館・ロシア国営放送と一体となってフェイク・プロパガンダと擁護する「日本の左翼」とは何だろう。
また彼らは、今回のロシアの侵略戦争を米帝バイデンの世界戦争戦略が根本原因で、「米帝・バイデンとロシア・プーチンの代理戦争」と言い、さらには「米帝主導の『米帝の戦争』だ」とまで言う。そこには米帝の巨大さへの屈服はあっても、ロシア・プーチンの侵略戦争への批判は一切ない。さらに、古くはロシア帝国時代、近くはスターリンのソビエト連邦時代に民族抑圧・収奪・飢餓を強制され数百万人が犠牲となり、それからの解放=独立を求めて苦闘してきた、そして今再びロシアの属国になれというプーチン・ロシアからの解放を求めて闘うウクライナ人民の主体を全く無視している。彼らの「代理戦争」の論理は、帝国主義とスターリン主義の争闘戦の前に、労働者階級や被抑圧民族は無力だという帝国主義と同じ立場、同じ目線であるということだ。ロシア・ウクライナ関係、ウクライナ内部にも存在する民族抑圧・分断支配に接近し、マルクスのアイルランド問題への肉迫、レーニンの「帝国主義と民族植民地問題」を導きの糸に解決していこうとする姿勢はない。「7・7自己批判」の立場を顧みなくなったこのような勢力の跋扈を許してはならない。
戦争に便乗し、軍拡・改憲を狙う岸田政権
このプーチン・ロシアの戦争を奇貨として、軍事大国化・憲法改悪の動きを一挙に強めているのが岸田政権である。岸田首相はこの連休中にも国際的な対ロシア制裁網を強めるため、東南アジア・欧州の5カ国(インドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、イギリス)を歴訪した。
他方で自民党国防族や安倍元首相らは、火事場泥棒よろしく核共有・軍備拡大・防衛費の対GDP比2%を公言し、さらには敵基地攻撃能力を「反撃能力」と言い換え正当化しようとしている。これは「専守防衛」や「非核三原則」を破棄し、憲法改悪の道を掃き清める道で許されない。
それと一体で岸田首相は5月1日の討論番組で、憲法に対し「時代にそぐわない、不足している部分もある」とし、安倍内閣から引き継ぐ「自衛隊明記」などの「改憲4項目」は「基本的なたたき台」とし、改憲への意欲を示した。
さらに5・15沖縄「復帰」50年を前に、沖縄人民の基地撤去の願いをことごとく踏みにじるため沖縄を訪れ、沖縄米軍基地の強化、南西諸島(琉球弧)への自衛隊地対艦ミサイル配備を次々とすすめていこうとしている。台湾海峡有事を煽る安倍と一体となり、ことあらば沖縄を再び戦場の島にし、沖縄人民を戦争の楯にすることをいとわない態度を強めていることを許してはならない。
これらの政治・軍事・外交攻勢の頂点として、5月22日からのバイデン米大統領の来日・日米会談と、米・日・豪・印のクワッド首脳会談の5月24日開催こそ、対ロ制裁で独自の道を取り自衛隊機派遣の中継を認めなかったインドを取りこみ、アジア太平洋諸国を軍事的・経済的に対中国包囲網に組み込もうとするもので許されない。
他方で、ウクライナ危機と円安の進行で、小麦や食料品や石油の値上げがおこなわれ、労働者・人民の経済生活を直撃している。消費税廃止やコロナ給付金を求める闘いが必要だ。この中でコロナ危機をすり抜け、既成野党の屈伏のなかで7月参議院選を乗り切るならば、憲法改悪へ大きく舵をきることは火を見るより明らかだ。
5・15沖縄闘争、5・29反原発闘争から7月参議院選勝利へ
5月15日、1972年のペテン的返還から50年、変わらぬ基地の島としての沖縄の現実が改めて明らかとなった。これに対して沖縄現地と全国各地で新たな基地撤去の闘いが始まった。また欧州の原発推進のうねりを助け船とばかりに、3・11福島第一原発事故を無かったかのように汚染水の海洋投棄を策し、原発推進を進める岸田政権に、「5・29原発のない明日を 老朽原発このまま廃炉」の闘いの高揚をぶつけよう。カジノ推進の維新をうちやぶり、立憲民主党らの果てしなき屈伏を許さず、「生活防衛・反戦平和・憲法擁護」を掲げて闘う、れいわ・社民・野党共闘と連帯して7月参議院選に勝利しよう。ウクライナ反戦・改憲阻止のうねりをつくりだそう。
改憲の動きに各地で反撃
東京では15000人 ストップ憲法審強行
憲法施行75周年の節目の5月3日、「改憲発議許さない!2022憲法大集会」が東京都江東区の有明防災公園で開催され、15000人が集まった。主催は〈平和といのちと人権を! 5・3憲法集会実行委員会〉。
このかん憲法集会はコロナ禍で規模が縮小されての開催を余儀なくされてきたが、今年は有明防災公園で3年ぶりの開催となった。今年は7月に参議院選挙が予定されており、今後3年間は解散がなければ国政選挙はない。これを機に自民党が改憲作業を一気にすすめていくと言われている中での非常に重要な時期での開催となった。
政党からは立憲民主党、日本共産党、社会民主党が登壇し(れいわ新選組も参加)、立憲民主党の衆議院議員で衆議院憲法審査会幹事の奥野総一郎さんが登壇、「絶対に9条を守る。国民に今の与党の改憲案のひどさを訴えていきたい」と発言した。
市民連合の中野晃一上智大教授は、「自衛権の名のもとにフルスペックの集団的自衛権の行使までやるということになると抑止力に頼るしかなくなる。これは9条がないのと同じ。9条を守って安心供与(戦争と軍備の否定)とするのが安全保障となる。まずは、参議院選挙」と訴えた。
大阪は3500人
カジノ反対も目立つ
扇町公園に3500任。カジノ反対ののぼりが目立った(5月3日、大阪市) |
「輝け憲法! 平和といのちと人権を! 5・3おおさか総がかり集会」が大阪市北区の扇町公園でおこなわれ、3500人が集まった。
開会あいさつを1000人委員会大阪の米田彰男さんがおこない、次に各政党からのあいさつとして立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の各代表が発言した。ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)国際運営委員の川崎哲さんはビデオメッセージで「核兵器は戦争を阻止していない。(それどころか)戦争を促進している」と訴えた。
メインスピーチの湯浅一郎さん(NPO法人ピースデポ代表)は、概略3点について述べた。
第一に、米ソ冷戦終結後、大きな戦争は起こらないとしてきたが、(ウクライナ侵略戦争に関連して)コモンセキュリティの価値を改めて訴えた。すべての国は安全へ正当な権利を持つ。軍事力は国家間の争いの正当な手段ではない。軍事力によらない安全保障が重要。(起きていることは)ジュネーブ条約第1追加議定書第51条違反の戦争犯罪である。コモンセキュリティーが30年間機能してこなかった。91年にワルシャワ条約機構が解散。なのに、NATOは拡大強化してきた。ロシアを含めてOSCE(欧州安全保障協力機構)をより強めて、ヨーロッパの安全保障をつくっていけばよかった。アメリカ・NATO側にも大問題はある。共通の安全保障は今後もきわめて重要。
第二に、ウクライナ危機を利用して世界中で軍拡に拍車。ドイツが軍事費GDP比2%へ。日本も安倍・維新が「核共有」を提唱。ヨーロッパ百発の「戦術核」は冷戦の産物。そうなれば日本はNPT(核拡散防止条約)から脱退するしかない。自民党は「敵基地攻撃」や防衛費GDP比2%へや、改憲を本気で言いだしている。世界中で軍拡となる。平和を、9条に依拠して外交で。北東アジア非核条約ビジョンを。
第三に、地球を外から眺めると800万種の動植物が共存している。生物の多様性をもっている地球は奇跡のような存在。憲法75年の今、9条によって軍事力によらないでいける社会を。核兵器廃絶・軍事力によらない平和を、と述べた。
市民アピールでは、@ウクライナに友人がいるという市民が、ウクライナに平和をと、歌の紹介、Aカジノあかん住民投票を求める会、Bくらしと貧困として、主にシングルマザーの困難についてアピールがあった。
集会宣言を確認し、閉会あいさつを大阪憲法会議・丹羽徹さんがおこなった。
集会後、3カ所に移動して、街頭スタンディングをおこなった。
2面
5・3ヒロシマ多彩な催し
市民の草の根的運動が大切
5月3日午前10時から、広島弁護士会館3階大ホールで、戦争させない・9条壊すな! ヒロシマ総がかり行動実行委員会の主催による「2022平和といのちと人権を! ヒロシマ憲法集会」が開催されました。(写真)
市民連合@新潟共同代表で新潟国際情報大学教授の佐々木寛さんが「憲法を活かす 私たちの選択 市民がつくる新しい社会」と題して講演をおこないました。
佐々木さんは、新潟県知事選挙や国政選挙などでの新潟における野党共闘の実現に新潟の市民連合がどのような役割を果たしたかを具体例をあげながら話し、市民の草の根的な運動がいかに大切かを訴えました。
また、民主主義の下部構造をつくる「脱原発型社会」へ、沖縄の米軍基地問題と新潟の原発問題をつなぐ「民衆の安全保障」という視点を「国家安全保障」に対置する市民運動のありかたとして論じました。
原爆ドーム前で街頭行動
12時45分からは〈憲法を活かすヒロシマ女たちの会〉の女性を中心にシール投票やチラシ配布をして広島市民や観光客に「自民、公明そして維新、国民が狙う改憲(壊憲)は戦争への道」とうったえました。
高校生らによるミュージカルも
午後2時からは関連行事として同じく広島弁護士会館で2022年広島憲法集会実行委員会の主催で広島高校生平和ゼミナールの後援による「マイライフ マイ憲法」が開催され、第1部の「学校が変わる?誰もが大事に! 〜憲法13条個人の尊重とは〜」と題する福岡弁護士会の後藤富和弁護士の講演がおこなわれ、第2部は高校生らによる憲法ミュージカル「世にも憲法な物語」が演じられました。
参院選で改憲勢力、3分の2阻止を
5月3日の一連の行動を通して、広島は来たる参議院議員選挙で改憲勢力3分の2を絶対に阻止するという決意と態勢を固めつつ市民運動の草の根的な活動を一気に開始しています。戦争反対! 核の使用も核による威嚇も許さない! 人類と核は共存できない! のスローガンを掲げて、共に闘いましょう。
(松田 忍)
3面
関生弾圧はねかえし開催
闘う仲間が総結集
中之島メーデー
争議組合が決意表明(5月1日、大阪市) |
5月1日、それまでの雨がウソのように晴れ上がった大阪中之島公園剣先ひろばで第93回中之島メーデーがひらかれ、600人が参加した。
大阪全労協による主催者あいさつの後、大阪労働者弁護団、しないさせない戦争協力関西ネットワーク、政党や各自治体議員から連帯のあいさつがあった。
新社会党の山下けいきさん、社民党副党首の大椿ゆうこさん、泉大津、箕面、豊中、伊丹等の各市会議員のあいさつがあった。
大椿ゆうこさんは、自身が非正規雇用労働者であったことにふまえ「労働組合がなければ闘うステージにすらあがることができないのが非正規雇用労働者。労働組合がなければ非正規雇用労働者は生きていけない、労働組合の力を信じ、闘いましょう」と熱く訴えた。
れいわ新選組衆院議員・大石あき子さんは「1年前のメーデーのときに働く者の最先頭で国会でガチンコで闘うことを宣言しましたが、ふたたびみなさんの前に立っていることに胸が熱くなっています。7月の参議院選挙は維新なのか、れいわなのかが争われると思っています。また、カジノ推進かこれを止めるのかが争われます。私はカジノを止めます」と決意表明した。
若いエネルギー
川口真由美&おもちゃ楽団の熱のこもったパフォーマンスに会場からアンコールの声が沸き起こった。れいわの若い人たちが旗を持って演壇近くまで行ってアンコールの歌と演奏にあわせて旗を力強く振る姿は、ものおじしない若いエネルギーを感じさせた。
一斉にボテッカーをかかげる(5月1日、大阪市) |
労働3権を争う
団結権をはじめとする労働3権は人らしく生きるための生存権に由来する。各争議当該からは人らしく生きるための闘いが激しく闘われていることが報告された。
東リと闘うLIA労組、非正規雇用の仲間の権利のために闘う郵政ユニオン、反社会的勢力規定と闘う関西合同労組、会計年度任用を導入して再度の団交拒否を狙う大阪府と闘う教育合同、労働運動に学んで闘おうとする関西学生メーデー実行委員会、コロナ禍の下、命がけで働きながら会社の不当労働行為をはねのけて闘うケアワーカーズユニオン、12年4カ月の長期闘争を闘うJAL被解雇者労働組合、担当執行委員が入った団交を拒否する会社と闘う全港湾の分会。いずれも一歩も譲れない闘いだ。
土台を強化し
全日建・関生支部の湯川委員長は「2018年8月からのかつてない弾圧で、多くの仲間の生活が奪われ分断されてきた。きびしい地獄絵図のような中でも闘っている仲間がどのように活動し、行動しているのかを久々に関生主催で開催する5月28日の集会で皆さんに聞いていただき、理解していただき、ここにおられる皆さんとともにもう一度、土台を強化し、さらに大きな運動をつくっていきたい」と決意を表明した。
自民党にすり寄る連合の道を拒否し、弾圧を打ち破り、働く者の生存権を守る闘いと運動の展望がここにあることを確信させたメーデーだった。(三船二郎)
ウクライナ反戦で盛りあがる
多彩な参加でメーデー尼崎に150人
5月1日
ウクライナ反戦の横断幕が目立つ(5月1日、尼崎市) |
メーデー尼崎は開始の11時には雨もあがり参加者も例年を上まわる150人。開会のあいさつは尼崎地区労の酒井浩二議長。ウクライナ反戦と格差・貧困の打破を訴え、全体を引き締めた。参加の労組・団体は、園田学園中高教職員組合、武庫川ユニオン、兵庫土建、関西合同労組、全港湾大阪支部、連帯ユニオン関生支部、阪神合同労組、JP労組、国労、大阪労働者弁護団、阪神社会運動センターなど多士済々。
参加の議員も社民党からは大島淡紅子宝塚市議、新社会党・都築徳昭尼崎市議、緑の迫田敬一尼崎市議。それに尼崎地区労の行事にはあまり参加したことのない丸尾牧兵庫県会議員まで参加し、こちらも広がりをみせた。
ウクライナ反戦問題では関西合同労組の佐々木伸良委員長がロシアの侵略を弾劾し、阪神尼崎駅前ですでに3回取り組んだ反戦スタンディングを発展させようと訴えた。最後に武庫川ユニオン飯田政志委員長の音頭でシュプレヒコールを唱和し、阪神出屋敷までのデモ行進に出発した。
兵庫憲法集会に3000人 ジャーナリスト 金平茂紀さんが講演
3000人を前に講演する金平茂紀さん |
5月3日、兵庫憲法集会が、国道43号線南のみなとの森公園を会場に開かれ3000人が集った。主催者を代表して羽柴修弁護士が、ウクライナ戦争や総選挙後の厳しい状況に警鐘を鳴らした。それでもウクライナ戦争の現地取材から帰り各地を回っている金平茂紀さんの話を聞こうと多くの人が駆けつけた。
金平さんは、ロシアの侵略戦争を弾劾するとともに、ロシアのマスコミが統制され真実を伝えず、人民虐殺をフェイクと言い張っていることの恐ろしさと、だからこそジャーナリストとしての使命を今こそ果たさなければならないことを、穏やかな口調での短い講演のなかでも鋭く提起した。政党あいさつののち、集会宣言が提案され、神戸市内の繁華街を元町まで元気よくデモ行進した。
改憲ありきの審査会
4・28緊急集会
4月28日、現状や問題点を広く周知する目的で「憲法審査会で何が語られているか。4・28議員会館前緊急集会」が総がかり実行委と法律家6団体により取り組まれ、百人が参加した(写真下)。
これまで開催が簡単ではなかった審査会が、自公に国民・維新が加担し、毎週のように開催を許してしまっている。議論の進め方も、結論ありき改憲ありきの横暴なあり方で、少数意見の尊重等の従来の慣行が無視されている等々の報告を受けた。
少数とはいえ野党の闘い方いかんで阻止できるのではないという疑問を持った参加者もいたようだが、あらゆる手段でこの状況を打開し改憲を阻止する点で一致を見て行動を終えた。
経済の冠をつけた安保
参院での採決許すな
4月28日
「経済安保法案」の参院内閣委員会採決が危惧されていた4月28日、参議院議員会館前で「経済安保法案の参議院採決を許さない!緊急アピール」が「経済安保法案に異議ありキャンペーン」の呼びかけにより取り組まれた(写真上)。
「経済」と冠をつけつつも、あくまで「安保」。5千億円の予算を投入して軍産学複合体を作ろうとするものだ(ちなみに、軍事研究に否定的な日本学術会議への予算は約10億円)。もちろん政府主導で、企業や研究者に守秘義務を課し囲い込むことになる。また、敵と認定した国への制裁を今以上に民間に強要できることになる。これでは経済活動の制約に繋がるとの声が経済界からも上がっているが、要は挙国一致で外国と対決しようというものだ。付帯決議で妥協しようとの姿勢を見せている立民への批判の声も上がった。運動の盛り上げで阻止しようと確認しこの日の行動を終えた。
4面
侵略戦争と核威嚇をやめよ
神戸で180人が集会・デモ行進
5月7日
5月7日、神戸市・東遊園地花時計前で「ロシアのウクライナ侵略やめよ! 市民デモ」がひらかれ、集会後、参加者は東遊園地〜三宮センター街〜JR元町駅東口手前までデモ行進をした。主催は、〈壊すな憲法! 命と暮らし! 市民デモHYOGO〉、〈憲法改悪ストップ兵庫県共同センター〉。
ロシアのウクライナ侵攻(2月24日)から2カ月半経つが、戦火は収まる気配がなく、5月9日の「対独戦勝記念日」にはプーチンが「戦争宣言」を発し、ロシアで「国家総動員」をかけるかもしれないなかでの闘争となった。行動には、事前に反戦スタンディングを阪神尼崎駅前でおこなった仲間や、三宮・マルイ前での辺野古行動を終えた仲間など、姫路・淡路など兵庫県下各地から180人が参加した。(写真上)
司会者は、一昨年秋に、日本学術会議問題で3回共同闘争をおこなって以来、兵庫県下の多くの市民団体がつどう共同闘争だとの意義を説明し、ウクライナへのロシアの侵攻を止め1日も早い停戦の実現を求めて行動していこうとあいさつ。
その後、憲法共同センター側と、市民デモHYOGO側の1団体がそれぞれ発言。市民デモ側は、元べ兵連神戸で闘った人が、市民運動の中に色々意見があるが、まずは戦争で人が死ぬことに向き合い、それをやめさせること、そのための行動を起こしていこうと発言した。
続いてプーチン大統領への抗議要請文を提案し、全参加者の賛同が得られ、後刻ロシア大使館あてに投函した。要請文では「ブチャの悲劇はウクライナの演出だ」「民間施設を攻撃していない」とのロシアのウソの説明を弾劾するとともに、公然と核先制使用の脅しをかけていることを弾劾した。
連休中の人通りの多いなか、現に今おこなわれている戦争に反対する行動があることを目の当たりにして、デモ隊に手を振ってくれる買物客や若い人もかなりあった。両団体は今後ともウクライナ反戦行動を粘り強くおこなうとともに、時宜を得た共同行動を重ねることを約して、解散した。
広島でウクライナ反戦集会 4月10日
原爆ドーム前で750人
原爆ドーム前でNO WARの叫び(4月10日、広島市) |
4月10日、カクワカ広島(核政策を知りたい広島若者有権者の会)の呼びかけでロシアのウクライナ侵攻反対と、ウクライナ戦争での核兵器の使用や核による威嚇をやめるよう求める集会が、広島市の原爆ドーム前に約750人を集めて開催されました。
集会は長崎に原爆が投下されたとされる午前11時2分に参加者は1分間の黙祷をおこなってから開始され、カクワカ広島共同代表の田中美穂さんは「いま私たちが立っているこの場所から、原爆で亡くなった多くの人々の怒りや無念、悲しみを感じずにはいられません」「広島の市民がこの場所から戦争反対・核兵器反対の声をあげることは、世界に極めて大きなインパクトになると思います。戦争で解決できることは何もない。核兵器の使用も脅しも許されない」と涙ながらに、しかし、力強く訴えました。
広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長は「広島や長崎の被爆者が訴える核兵器の怖さがまだ届いていない」と訴え、もうひとつの広島県被団協の佐久間邦彦理事長も「命を大事にしない戦争は絶対にしてはならない」と訴えました。
さらに、こうした情勢の中で安倍元首相や維新らから「日本も核保有を検討すべきではないか」などと発言が相次いだことへの批判も、他の発言者からあがりました。
母親がウクライナ出身でロシアにもルーツがある広島市の高校2年生(16)は「親戚同士が争っているのを見ているようでつらい。一刻も早い停戦のために広島から声を上げることが大切だと思う」と訴えました。
本の紹介
ウクライナ戦争の背景を探る(下)
真野森作『ルポ プーチンの戦争 「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか』(2018年筑摩選書)
本のタイトルから誰しも、今回の2022年2月24日開始のロシアのウクライナ侵略戦争を扱った著作と思うだろう。そして中身も東部ドンバス地方やクリミア半島での、覆面をしたロシア軍・親ロシア部隊の侵攻とウクライナ軍との戦闘、逃げ惑うウクライナ人民と、今起こっている戦争と同じ光景が4百ページ近い著作に延々と続く。わずか2カ月余でその種の著作が書けるはずはなく、発行も2018年12月。そう、実はこの本は2013年末からの、ウクライナでの戦争を扱った本なのだ。
著者は2013年10月から毎日新聞モスクワ特派員として17年3月までロシアに駐在し、たびたびウクライナ現地に足を運び観察し続けた。取材姿勢は「理想とするのは現場主義」で、ベトナム戦争を従軍取材した開高健の取材姿勢に学び、「たとえ断片であっても事実に近づき、記録し、伝えたい」とする。キエフで政変が起きた2014年以降ウクライナ各地を飛び回り17回訪れ97日間滞在した。クリミア半島は3回・23日、戦火の東部は7回・50日にわたり現地取材した記録である。
中身は「クリミア半島と東部というウクライナ危機における2つの現場を通して、プーチン政権によるハイブリッド戦争の姿を報告する」ものである。ハイブリッド戦争とは戦車・航空機・軍艦などでの戦争だけでなく、民間人に紛れ情報収集、民心かく乱などを駆使し、戦争目的を達成する複合的戦争戦略をいう。
本文は、「謎の覆面部隊」=「クリミア半島の空港に出現した覆面部隊(実はロシア軍、2014年2月28日)から始まる現地状況の取材・インタビュー集である。戦火に苦しむ市民だけでなく、親ロシア派武装市民、反ロシア派市民、政党関係者・政治指導者、労働組合指導者など、実に百人規模の人々へのインタビューが続き、それを通じて「皇帝」がなぜウクライナを狙ったかを解き明かしていく「ルポ」だ。
この間ウクライナ戦争を注視する多くの人は、プーチンの「ネオナチ排除」の論理や、ドンバス地方の「人民共和国」、マリウポリでの戦闘を見るにつけ、プーチンの侵略戦争の非道さを知るが、他方でこの戦争が、ロシアの侵略とそれに呼応する東部の親ロ派住民、西部の民族主義者や、さらには遥かシベリアまで移住させられたクリミアタタール人などの、複雑な民族問題を抱えていることを知る。そして1991年の独立以降、それが暴力的事態に至ったのが2014年2月のマイダン革命であることまでは共通の認識になっていると思う。今回の戦争に先立ち2014年の戦争は、いったんは沈静化したものの2022年2月24日に、それをはるかに上回る規模で、この先いつまで続くかわからないときに、先だった戦争ルポがこの書籍だ。
著者は「戦争が始まった」「謎の覆面部隊」、「親露派の武装占拠」「マレーシア航空機の撃墜現場」「タタール、蹂躙された歴史」「親露派支配地域の人々」「裏切られた戦争」などと事実を追い、最後は「皇帝プーチンの戦略」に至る。特に「タタール、蹂躙された歴史」と「親露派支配地域の人々」の章では、歴史に翻弄された人々を、危険を冒しながら粘り強く取材していき、そこから証言を得ていく。22年の戦争では東部地域は激しい戦闘状態にあり取材は不可能で、戦闘後の事後取材は勝者の側にそれなりの配慮・脚色がなされるのは想像に難くないのに比し、14年の取材は微妙な雰囲気の中での真実・本音が出されているだけに、この戦争の真実に迫っているのではと思う。
「裏切られた戦争」と、終章「皇帝プーチンの戦略」のインタビューは、各証言から歴史の真実を言い当てている。未承認国家「ドネツク人民共和国」では、人民共和国とは名ばかりで人民はどこにもおらず、ソ連時代を丁寧に引き継いだ言論統制・検閲・プロパガンダの実態を、親ロ派の証言から描きだしている。終章ではクレムリン内部の大統領特別代表や、フルシチョフの次男(在米)や、ウクライナ初代大統領にまでインタビューする。初代大統領は、「ロシアは侵略国」だと言うとともに、ロシアと西欧(EU、NATO)との間で揺れ動くウクライナ人民(本人は西欧志向)、とりわけ若い世代の政治的成熟に期待を寄せる。また国立戦略調査研究所の副所長は、ドンバス・クリミアというソ連スターリン時代に深く撃ち込まれた楔からの脱却を課題とする。
著者自身はゴーストタウンとなった海辺の保養地で、「希望は平和」と結ぶが、これは今日的にも未解決の課題だ。そしてわれわれが唯一灯りを見るとするなら、著者などによって与えられる「希望は真実」で、それを探しながらの反戦活動ということになるのではと思う。一読を勧める。(おわり)(岸本耕志)
5面
侮辱罪の法定刑引き上げの狙い
与党議員への批判が対象
講演する山下幸夫さん |
5月9日、〈政治家をSNSで揶揄したら逮捕される?! 知っていますか?「侮辱罪の法定刑引き上げ」法案〉と題する集会が東京・練馬区内で開かれ、日弁連刑事法制委員会委員長の山下幸夫弁護士が講演した。主催は、東京・地域ネットワーク、憲法骨抜きNO!ねりま、戦争に協力しない! させない! 練馬アクションの3団体。
山下幸夫さんが講演
「侮辱罪の法定刑引き上げを求める意見が、少年法改正等と合わせ、3年ほど前から法制審に出されていた。少年法が先に改正された。去年、侮辱罪についての法制審答申が出された」「侮辱罪は名誉棄損罪とセットで考えられてきた。元々軽い罪だった(※自殺したプロレスラーの木村花さんを侮辱して告訴された男性たちには一人九千円の科料)。
(刑法・刑事訴訟法等の改正案が)一つだけ出されると目立つ。いくつもある改正案の一つとして出してきた。他に禁固刑を廃止して懲役刑と合わせて『拘禁刑』としようとしている(※いずれも今年3月8日閣議決定)」
「労働運動のビラが名誉棄損に問われて逮捕や家宅捜索がされるようになってきていたが、今回は侮辱罪を(権力側が)使いたい時に使えるものにする。重罰化はそういうこと(※これまでの侮辱罪は名誉毀損罪と比べて適用のハードルが低いが量刑が軽いので弾圧には使われてこなかった)」
「明治時代に名誉棄損罪ができた時には本当のことを言っても罪に問われたが、現行憲法で言論の自由が定められてそれができなくなった。刑法第230条の2で真実ならば罰しないとされた。侮辱罪にはそれがない」「名誉棄損をめぐる裁判では『(被告側が)信じるに足る』もの(資料・情報など)があれば罪に問われないとされた。今回の侮辱罪の改正案ではそういう例外規定がなく重罰化される。法案を出している側が『(ネットでの侮辱等の)抑止を狙う』と言っている。今後は見せしめ的な弾圧を狙ってくる。(捜査機関が)SNSを監視できるようになる」
「与党議員への批判が対象になる可能性がある。歴史修正主義批判に対する批判が対象になり得る。法制審でも日弁連から出席した委員が『政治家への批判に適用するのは問題』と言っていたが他の委員は『仕方ない』と、多数決で押し切られた」「緊急事態条項を含めた改憲案が準備されているが、それへの批判自体が『侮辱』になってしまう」「立憲民主党からの対案には『刑法第230条の2』的な反論の機会を出している。国際的には『刑罰で表現を罰するのは許されない』とされているが日本は逆行している」「一旦できたら独り歩きする。」
「この法律を使うのは警察や検察」「プロバイダ責任制限法改正案が出され本年10月には施行されようとしている。IPアドレス開示請求が、これまで2回の裁判手続きを要していたのを1回にする」
ついで衆議院法務委員会の米山隆一議員(立憲民主党・無所属の会)と本村伸子議員(共産党)がリモートで発言した。
米山隆一さんの発言
「立憲民主党の対案の筆頭提出者として名前を出させてもらっている」「(現行刑法で)名誉毀損も侮辱も罰せられるが、誹謗中傷は罰せられない。木村響子さん(花さんの母)の被害感情もある(重罰化を求めている)が、20人告発して『三人しか侮辱罪に問えない』と警察に言われたとのこと。何故なのかは不明。『死ねばいいのに』というのは侮辱に当たらない。現行刑法で、侮辱で処罰されるのは年間30人。『範囲を変えればいいじゃないか』と提案しても、頑として変えようとしない。(響子さんが告発しても罪に問えなかった)残りの17件がほったらかしになるのは変わらない。政府の言っているのは論理矛盾」「立憲民主党案は誹謗中傷を罰するシンプルなもの。(要件に)『加害目的』をつけている。この問題で世論を盛り上げていただきたい」
本村伸子さんの発言
「私の地元の愛知県の憲法集会でジャーナリストの青木理さんが『口をつぐむ状況を作ってはいけない』と発言されたのが印象的だった」「誰が逮捕するのか。私人逮捕もあるが、大抵は警察官。2019年の参院選で野次った人を排除した事件では、『安倍やめろ、増税反対』と叫んだ人が十秒も経たずに排除され、裁判で北海道に88万円の賠償が命じられた。『警職法の要件を満たしておらず違法』『言論の自由は民主主義に不可欠の基本的人権であり特別に尊重されなければならない(ので違憲)』とされた。この時の警察官の行動が適切だったのかと二之湯国家公安委員長に聞いたら『正しかった』と答えた。『不当な弾圧はあってはならない』とは言っているが、私たちと(実際に逮捕にあたる)警察は考えが違う。」「木村響子さんに『花さんが死ななければならなかった一番の理由は?』と問うとテレビ局に『何があっても否定しない』という誓約書を書かされていた。裁判費用には1千万かかったとのこと」「この改正案は可決から20日経ったら施行される。廃案目指して共に頑張る」
辺野古新基地許さない
新宿スタンディング
米軍基地がコロナ・クラスターとなっており、米兵はノー・マスクで街を闊歩している。この状態に対して、日本政府は申し入れどころか、苦言を呈することもない、等々の声があがった。
5月7日、東京新宿駅南口
琉球遺骨返還訴訟 不当判決
判決理由示さず退散
4月21日京都地裁
4月21日、琉球遺骨返還請求訴訟で京都地方裁判所は原告の請求を棄却する不当判決を出した。裁判長はわずか5秒程で判決主文のみを読み上げ、裁判官は全員、そそくさと法廷から立ち去った。傍聴席からは「裁判長、間違っています」「理由をお願いします」などの怒号が飛んだ。
判決後の記者会見で、原告団の代表である松島泰勝・龍谷大教授は「許し難い判決だ。非常に残念で悲しい」と涙を拭きながら語った。そして、「京大は自らの歴史を直視せず、その対応は今も続く植民地主義を表している」「私たち(琉球人)は文化や言葉だけでなく、遺骨まで奪われて返してもらえない。負けるわけにはいかない」「控訴して、遺骨が元の島に戻るまで闘っていきたい」と新たな闘志を湧き立たせた。
さらに、判決内容について「遺骨返還の声を無視し続けた京都大の姿勢を、司法が追認したに等しい」と断じ、遺骨を京大が保管することを認める判決に、「遺骨は墓にあってこそ意味がある。沖縄県が本土に復帰して50年になるが、裁判所は私たち(琉球人)を人間と認めないのか」と怒りを叩きつけた。
この裁判は1929年と33年の2回にわたり、京都帝大医学部の助教授だった金関丈夫や講師の三宅宗悦が百按司墓などから遺族の承認を得ることなく、県や警察の上層部の許可だけで持ち出した遺骨を、遺族らが元の墓に返して欲しいと訴えていたものである。1879年に琉球国は強権的に日本に併合されて沖縄県となり、本土から来た役人が幹部を占める国内植民地体制だった。そうした琉球の社会状況の下で、金関らは遺骨を人類学の標本として盗掘したのだ。判決は原告を祭祀承継者とは認めず、遺骨の返還を求める権利がないとした。これはまさに琉球人の尊厳を認めず、琉球の伝統的な祭祀・文化を踏みにじる琉球差別そのものであり、「学知の植民地主義」を容認するものだ。
この琉球人遺骨返還問題にどのように立ち向かうのか、ウチナンチュ(琉球人)とヤマトンチュ(日本人)のそれぞれの立場からの人間性が問われている。原告は当然の事ながら、大阪高裁に控訴した。原告と共に、遺骨を元の墓に返すまで断固として闘っていこう。(武島徹)
6面
宝島社裁判 第3回口頭弁論(4月27日)
女性差別にまみれた出版物
4月27日、大阪地裁において宝島社裁判の第3回口頭弁論がおこなわれ、支援者が多数かけつけた。
◇宝島社裁判とは
2021年2月に『大阪ミナミの貧困女子』という本が宝島新書から出版された。村上薫さんは、コロナ禍のミナミで働く人々の困難を訴えると同時に、ミナミの街の活性化のために出版に協力したが、原稿が改ざんされ「コロナ禍で値崩れした女性を買って応援しよう」という差別的な内容になっていたことから、絶版と謝罪を求めて同年10月12日に宝島社を提訴した。村上さんは、1月にゲラをみて抗議したにもかかわらず「直せない」と言われ、「それでは出版から下りる」と要求すると「損害賠償1千万円を要求する」と脅され、差別的な内容を改めることで合意したが、最終稿は見せられず改めていなかった。また、宝島社は、共著の女性ライターへ恒常的にパワハラ・モラハラをおこない、彼女を精神的に不調にさせることで抵抗の意思を削いだ。大きな出版社が、力関係を利用してライターを押さえつけ強引に出版することは許されない、ヘイト本を流布させてはいけないと、村上さんは裁判に立ち上がっている。
これまで宝島社側は、一度も出廷せず被告席は空席という異様な裁判。今回は参加すると言っていたのに、またもや欠席した。
◇87カ所もの問題点
本には87カ所も問題点があり、上林惠理子弁護士は、具体的にどの表現が問題かを明らかにした。例えば、本の帯に「カラダを売るしかない女子たちの物語」と書かれている。ミナミで働く女性たちは身体を売っているのではない、サービス業だとして闘ってきた。「本当はキチンと旦那さんがいて」という記述は、夫がいなければちゃんとした家族ではないような偏見にまみれた家族観である。「レベルの低い店に身を落としていき」「北新地、銀座の高級ホステスになれば『勝ち組』となり」という記述は、人にランク付けして分断するもの。コロナ感染拡大の責任を、「中国人観光客」になすりつけるような中国人差別や蔑視の記述もある。書いてないことを書き足され、男性の性欲をあおるような文言をつけ加えている。「男は女を求め、女は男を求める」というのは、LGBT差別。さらに、女性ライターが書いているから「男性にはない視点」があるというのは、虚偽である。
実際はこの本は角田という男性が書いた記事を「川澄恵子」名義の記事にしたものだ。中味も、男性が女性を性欲の対象として「買う」商品として見る目線で書かれている。
差別と闘っている村上さんが、こんな文章を書くわけがなく、差別的な改ざんであり、著者を詐称までしていることを明らかにした。
これまで裁判は小法廷だったが、次回から大法廷になる。弁護士と支援の力で勝ちとった。
◇次回は被告が出廷
裁判後、弁護士会館で集会。富ア正人弁護士は、宝島社側から書面が出ており次回、出廷して反論すると報告。仲岡しゅん弁護士は、裁判所は、正しいか否かではなく違法か否かで判断する。従って〈表現〉の問題と〈プロセス(手続き)〉、この2つを両輪として闘う必要がある。元凶は角田という人物。彼は現在、被告になっていないが巻き込んでいく。〈村上さんを支援する市民の会〉や〈ミナミのホステス専門相談所Cure〉代表などから発言があり、支援の輪を広げて行くことが確認された。
次回口頭弁論は6月21日、午後3時、大阪地裁・大法廷。
聴覚障害児童交通事故裁判を傍聴して(4月25日) アメリカADA法も武器に
ろう弁護士が手話で陳述
聴覚障害児童交通事故裁判が4月25日、大阪地裁で開廷された。裁判官が3人とも代わっていて、裁判長が女性である。
原告側から松田崚弁護士が手話で、男女格差、障害者差別解消を20分間にわたって強く訴えた。アメリカでは30年前にADA法(「障害をもつアメリカ人法」注1)が制定され多くの障害者が管理職についているが、日本ではまだまだ少ない。先日、公開された映画『コーダ あいのうた』(注2)がアカデミー作品賞を受賞したこと、助演男優賞にろうの俳優が受賞したことも報告した。
その後、裁判長が被告側に「反論はないのか」と聞いたら「ない」という。次回は原告側から証人尋問をおこなう予定だが、まだ日程は決まっていない。
優生思想のない社会を
裁判長が女性ということで期待できそうだが、何としても男女格差のない、障害者差別のない判決を強く望んでいる。そして、松田弁護士の奮闘もすばらしい。私たちも優生思想のない社会を建設しよう!(草川けい子)
注1:ADA法
ADA法(Americans with Disabilities Act of 1990)は、障害を持つアメリカ人法と呼ばれる。差別を禁止する適用範囲の広い公民権法の一つ。1964年の公民権法には障害者に対する差別に関する規定がなかったが、ADA法の成立により、公民権法によって保護されていた者と同様に差別からの保護を与えられた。
注2:『コーダ あいのうた』
コーダとは障害者を親に持つ健常者の子どものこと。2021年アメリカのコメディドラマ映画。聴覚障害者の両親をもつ子ども(コーダ)である10代の少女を描いている。2021年のアカデミー作品賞を受賞し、助演男優賞をろうの俳優が受賞した。
シネマ案内 ドキュメンタリー映画『私はチョソンサラムです』を見て
韓国に住む金哲民は、『不安な外出』(2014年)で有名な映画監督だ。彼は、2020年に在日朝鮮人に焦点をあてたドキュメンタリー映画『私はチョソンサラムです』をつくっている。
4月24日(1948年阪神教育闘争で戒厳令が発動された日)、この映画上映会と、出演者によるトークが大阪市東成区民センターでおこなわれた。
在日朝鮮人が「民族性を保持する」とは、どういうことなのか。トークでは、ここのところが3人の発言者から具体的に語られた。映画の内容と、パネリストの発言を紹介する。
在日朝鮮人のなかでも、「わが民族」にたいする思いはさまざまだ。1世、2世、3世、4世でも違ってくる。映画のなかでも、2世以降の若い在日朝鮮人は、自己のアイデンティティーに悩んでいる。朝鮮学校に通うことによって、朝鮮語を覚え、朝鮮の文化を知ることによって、自己の民族性を自覚し、目覚めていくのだ。
金監督は、「在日朝鮮人がどのように生きてきたのか、どのような思いで生活しているのか、韓国ではほとんど知られていない。だから、この映画を作った」と述べている。これらの人びとにインタビューをして、その思いを聞きとり、映像にした。
在日朝鮮人にとって民族性とは
在日朝鮮人は、たんに「日本で暮らしている朝鮮人」をさす言葉ではない。朝鮮は日本によって36年間の植民地支配をうけた。その後、朝鮮戦争が勃発し、2つの国に分断された。その結果として、日本に住まざるをえなくなった朝鮮人とその子孫、これを意味する言葉なのだ。
日本の排外主義者は、「そんなに日本がいやだったら、朝鮮に帰れ」と叫び、他方で「日本国籍をとって、日本人になれ」とのたまう。いずれにしろ、「朝鮮人としての民族性を棄てろ」と言いたいのだ。この点では日本国家も排外主義者も共通している。したがって、民族性の主張は、これらの勢力と闘うことを意味する。
3人のパネリスト
李さん(在日3世・女性)は主婦で、4人の子どもを朝鮮学校に通わせてきた。大阪府庁前「火曜日行動」に参加している。ある時、府職員に「いつまでこんな事をやっているんや。民族差別なんか、もうないやろ」といわれ、ビラを持つ手を振り払われた。彼女は「在日朝鮮人の存在が無視されていることに、悔しくて涙が止まらなかった」と言う。さらに、「70年前におきた阪神教育闘争となにも変わることなく、今も朝鮮学校にたいする差別は続いている」と語った。
金さん(在日2世・男性)は、韓統連の活動家だ。「朝鮮人への蔑視は、過去の植民地支配からきている。日本政府は、今も植民地支配を合理化している。これがなくなったときに、朝鮮人差別はなくなるのではないか。そのためには祖国の統一なくしてあり得ない」と語った。
李哲さん(在日2世、1948年生まれ)は、韓国留学中に「在日留学生スパイ団捏造事件」(1975年)で逮捕され、死刑囚として13年間を獄中で過ごした。李さんは朝鮮人としての民族意識について、つぎのように述べた。
「韓国留学中、社会のなかでは民族に出会わなかった。獄中に入って、学生、青年、知識人、さまざまなかたちで民族に出会った。非転向長期囚の方々は、この分断の犠牲を背負って生きている」「北とか南とかはどうでもよい。在日朝鮮人は民族の誇りと尊厳をけっして忘れてはならない。わたしは、民族の根っこにこだわって、生きていきたい」。(つづく)(八木正志)
7面
核兵器による威嚇を許さない
反原発=核廃絶を一体で
津田保夫
ロシアによるウクライナ侵略戦争
2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始した。その日、ロシア軍は即座にチェルノブイリ原発を制圧した。その後、ザポリージャ原発を攻撃し、制圧した。人類の歴史で初めて、原発が攻撃をうけた。さらにプーチンは、ウクライナ人民に「核兵器使用」をちらつかせて、恫喝をくりかえしている。
この事態をみるにつけ、「原発=核」問題であることがあらためて認識させられた。原爆は1945年8月に、広島と長崎で人類史上はじめて使われた。以後、アメリカは朝鮮戦争とベトナム戦争においても原爆の使用を検討している。今回、プーチンはウクライナで原発を標的にした。
戦略爆撃はゲルニカ爆撃で知られるように、住民を恐怖に落とし込み、敵の戦闘意志をくじくことを目的にしている。ロシア軍はウクライナ人民へ無差別爆撃をおこない、これと同じことをおこなっている。
また、ロシアによるウクライナ侵略をテコにして、安倍晋三や橋下徹は「核共有」論を言いはじめ、核武装をあおっている。自民党は「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えて、基地に限定しないで、敵の指揮系統も攻撃する策動をおこなっている。また、ウクライナ人民の民族主義を利用して日本ナショナリズムをあおり、「国を守る」思想を植えつけようとしている。
反核闘争
広島・長崎の被爆者は「ノーモア・ヒバクシャ」を闘いつつ、「核と人類は共存できない」という思想をつくりあげた。これは圧倒的にただしい。その根拠は「被ばく」という問題から解明できる。
生物は炭素・水素・酸素・窒素を主成分とする原子が化学結合することでつくられている。その結合エネルギーは、数電子ボルト(eV)だ。これにたいして、原子核の結合エネルギーは、数メガ電子ボルト(MeV)であり百万倍程度おおきい。したがって、生物のDNAは、原子レベルでばらばらに解体される。もちろん、DNAは修復されるが、さまざまなダメージをうける。だから、「被ばくを避ける権利」は生存権としてはじめから与えられている。
広島、長崎の被爆者、福島の被曝者。原水爆実験により被爆した太平洋諸島と中央アジアの住民。ウラン鉱山で働く労働者、原発労働者、各種核施設と原発周辺の住民。これら被ばく者は、核のない世界をせつに願っているのだ。また、核兵器撤廃条約は、ウクライナ情勢下でますます重要になっている。
ウクライナ反戦と核廃絶が原爆ドームの前で訴えられた(4月10日) |
福島原発事故から11年
福島第一原発事故の問題は一切終わっていない。たまり続ける汚染水の海洋投棄策動にたいして、住民は断固として反対している。今年2月からIAEA専門家による現地調査がおこなわれ、4月29日に報告書が発表された。IAEAは対策に好意的な評価をあたえている。この調査は、海洋投棄にたいして国際的な「お墨付き」を付与しようとするものだ。海洋投棄を絶対に許してはならない。
今年6月にも「特定復興再生拠点区域の避難指示を解除する」と言っている。政府はこうして帰還困難区域の存在を消そうとしている。原発事故の記憶を消し去ることで、原発事故をなかったことにしたいのだ。記憶されない歴史は忘れ去られる。大地は声をあげないが、人間は声をあげることができる。
避難者集団訴訟は全国で約30件争われており、原告は総計で1万2千人以上に及んでいる。避難者の存在は原発事故の生きた証人だ。森松明希子さんは、避難者訴訟で「被ばくを避ける権利」を主張している。この裁判を支援しよう。
老朽原発を廃炉に
40年超え老朽原発が稼働させられようとしている。その首謀者は日本政府(経済産業省)と電力会社だ。政府は原発政策を維持するためであり、電力会社は企業利益を得ようとしている。事故が起きなければ、原発は1日あたり約1億円(100万キロワット原発1基)を荒稼ぎできる。
世界を見渡すと、1980年までに稼働した原発は、現在95基が40年超え運転を続けている(2021年1月時点)。それ以降にできた原発が、今後つぎつぎと40年超をむかえる。40年超え運転を強行している原発を含め、これから40年超を迎える老朽原発の稼働を許さず、「老朽原発を廃炉に」の声を世界に届けよう。5月29日「老朽原発このまま廃炉」集会(大阪市うつぼ公園)に集まろう。
日本のエネルギー政策
政府は「2050年CO2実質排出ゼロ」を打ち出している。昨年、第6次エネルギー基本計画が閣議決定された。CO2排出は産業革命以降に、資本主義の発展とともに増加していった。その原因は大量生産と大量消費を本質にする資本主義体制なのだ。それは新自由主義でも変わらない。
ウクライナ侵略戦争で、化石燃料(石油、天然ガス)が高騰している。日本政府はますます原発をキャンペーンしている。政府は「電気エネルギー確保のために原発が必要」と言っているが、それは口実にすぎない。原発推進の目的は潜在的核保有にある。これは戦後一貫しており、支配階級による国家意思なのだ。
反核=原発闘争の発展のために
最後に、ウクライナ侵略戦争下での反核=原発闘争の課題を確認しておきたい。ロシアと中国は、「社会主義国」であった。その国が原爆を保有し、原発を推進している。このことをどのように考えるべきなのだろうか。
それは「スターリン主義」という問題を解明することなのだ。共産主義社会建設の過渡期において、国家(官僚)体制がガン細胞のように悪性化し、肥大化していった。その国家体制を問題にする必要がある。官僚体制、民族問題、農民=農業問題などが再検証されるべきだ。これは資本主義でも「社会主義」(スターリン主義)でもない道をさぐろうとする人たちにとっても必要なことではないだろうか。
原爆も原発もない、被ばくのない社会をつくること。これがわたしたちの課題なのだ。政権を変えるだけでは実現しない。国家の問題を解決するために、社会のあり方を抜本的に変革する必要がある。資本主義とスターリン主義を打倒し、わたしたちの手で新しい社会をつくりだそう。
米核実験に抗議の座り込み
核は廃絶しかない
4月13日広島
アメリカが昨年に臨界前核実験を実施していたことが分かり、4月13日、「核兵器廃絶広島平和連絡会議」が平和公園の原爆慰霊碑前で抗議の座り込みをおこないました。
座り込みには広島県被団協など12団体でつくるメンバー45人が参加。核実験に抗議する横断幕を掲げて座り込み、最後に原爆犠牲者を追悼し1分間の黙祷をしました。
座り込みはアメリカが去年の6月と9月、ネバダ州の実験場で核爆発を伴わない「臨界前核実験」を実施していたことへの抗議としておこなったもの。
広島県被団協の箕牧智之理事長は、米国が陰で実験をしているならロシアもこの際ウクライナで核兵器を使っても良いことになれば大変なことになる。核は廃絶しかないと危機感を持って訴えました。
韓国の原爆被害者を救援する会が集会 長崎の高校生も参加
4月17日、「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」結成50周年記念集会が広島市のまちづくり市民交流プラザで開催されました。
元中国新聞記者で元広島市長の平岡敬さん(94)が記念講演で、韓国人・朝鮮人被爆者問題の略年表を示しながら、記者時代から市長時代も含めて、これまでの運動へのかかわりと運動の歴史を詳しく説明しました。
続いて韓国の原爆被害者を救援する会の会長市場淳子さんが韓国原爆被害者協会の活動目標と市民の会の課題と題して基調報告をおこないました。さらに在韓被爆者問題市民会議の小田川興さん、韓国の原爆被害者を救援する市民の会・長崎支部長の平野伸人さん、広島の在韓被爆者支援について豊永恵三郎さんが報告をおこないました。
また、長崎の高校生平和大使の若者、長崎高校生平和大使を卒業して新たに「市民の会・長崎支部」に加わる人、韓国に留学する人など7人の若者が登壇して、それぞれ思いを述べました。なかでも今回韓国に派遣される高校生らは「これまで長崎の原爆の被害について学んできたが、これからは加害の歴史についても学んでいきたい」と決意を表明しました。
8面
(シネマ案内)
ドキュメンタリー映画『牛久』
監督:トーマス・アッシュ 2021年
この映画では、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容されている人たちが、素顔をさらして登場している。2019〜20年にかけて、本人の了解のもとに、アッシュ監督が面接の際に隠しカメラで被収容者の訴えを撮影した。事実を訴えるために、9人があえて実名をあげて登場する。その訴えは切実で、生命をかけて入管の実態を告発している。出入国在留管理庁の収容施設内では、収容されている外国人は人間として扱われていない。
クルド人のデニズもその一人。2007年に来日したが、難民申請が認められず、約3年半も入管に収容されている。「収容所内で、精神的な暴行やいじめがおこなわれている。仮放免になったいまも精神的に不安定な状況が続き、自殺したくなる衝動に襲われる」と語る。
カメルーン出身のルイスは、家族が中央アフリカでのクーデターに巻き込まれた。2002年に日本に逃げてきて、日本人女性と結婚した。しかし、入管当局は「これは在留資格をとるための偽装結婚だ」と決めつけ、「不法滞在者」として収容している。彼は入管収容所ですでに7年間も過ごしている。
2021年3月、名古屋出入国在留管理局の収容施設内でスリランカのウィシュマ・サンダマリさんが病死する事件がおきて、入管の実態が人びとに知られるようになった。法務省出入国在留管理庁の収容施設は全国に15カ所、入国管理センターは2カ所ある。
ここには入国手続きで国外退去を命じられた外国人が収容されている。しかし、かれらは難民としてやって来たのであり、難民申請をしている。日本で難民に認められるのは0・4%程度にすぎない。トルコ系クルド人は、今まで一人も認定されていない。明らかに差別がおこなわれている。
また、在留資格を失った外国人が、「不法滞在者」として強制的に収容されている。長く日本で生活してきたにもかかわらず、在留資格を失っているという理由で家族から強制的に引き離される。かれらはたとえ仮放免が認められても、就労は認められていない。居住する都道府県外へ移動できないし、健康保険に加入できず、市民生活ができない状態におかれている。
戦後日本の入管体制は、1951年からはじまる。植民地支配と侵略戦争のなかで、朝鮮人や中国人が日本国内で生活を余儀なくされた。敗戦後、日本政府はこれらの人たちを「やっかい者」として扱い、国外に追放するか、国内で管理してきた。戦後の入管体制は、戦前の天皇制国家を引き継いでいる。なかでも、入管当局がすべての裁量権をにぎっており、外国人の人権が無視され、被収容者は「煮て食おうと焼いて食おうと自由(1965年、法務省入国参事官・池上努)」という状態におかれている。この事が最大の問題点になっている。
政府は収容施設内の実態を知られると困るから、メディアにずっと隠してきた。また、一般市民は自分に関係ないとして、あまり関心を示さないでいる。しかし、これは他人事ではない。外国人の人権が無視されている。これは自分の人権が無視されていることなのだ。ひとりでも多くの人がこの映画をみて、入管の実態を知ってもらいたい。(鹿田研三)
投稿
中国の現在についてのメモ(上)
佐藤隆
@中国の現在の実相
中国は現在、米国に次ぐ世界第2位の大国となった。GDPでは米国が世界全体の約24%を占め、次いで中国が約16%で、因みに日本は約6%である。
しかし、1人当たりのGDPとなると、米国は約6万3千ドル、日本は約4万ドルに対し、中国は東欧以下の64位で約1万ドルに過ぎず、個人所得ではまだまだ貧しい国である。
A中国台頭の経緯
中国は1978年の改革開放政策を取って以来、驚異的な経済成長を実現してきた。中国名目GDPの推移は、1978年から50倍以上になり、21世紀の20年では約14倍となった。20世紀、左派右派問わず、経済学者で中国が世界経済の主要な要因になると予想した者はいなかった。おそらくケ小平もこのような結果をめざして改革開放政策を取ったわけではないであろう。
中国がこの驚異的な経済成長を実現した具体的な背景としては、1972年の米中共同声明―1979年の米中国交正常化以来の米帝との「平和的な」外交関係があった。米ソ冷戦構造と中ソ対立の中、中国は朝鮮戦争やベトナム戦争のような米帝からの直接な軍事的介入や、あるいは体制の転覆をめざすような経済制裁を受けることなく「平和共存」に向かうことができたという歴史的経緯があった。
B中国は帝国主義か
21世紀の中国を20世紀の帝国主義と同視することはできない。20世紀に形成された帝国主義体制は、金融独占資本を形成した欧米列強による世界の植民地支配としてあった。21世紀の中国の台頭は、むしろこの20世紀の帝国主義支配体制の綻びの中から生まれたといえる。
中国の台頭は、国家の政策や、ましてや個人の野望がもたらしたものではなく、世界システムの歴史的な変容の中で生まれた。
もちろん、現在の中国が帝国主義に類似の覇権的政策を取っていないということではないが、中国は同時に従属的な経済構造も残しているのである。
C米中対立の原動力
現下に発生した米中対立は米国の側が仕掛けていると考えられる。何も中国スターリン主義権力の「善意」を信じようというのではない。
上記で見たように、中国にとっては、もし仮に、昨今までの米国との平和共存的状態が継続できるならそれに越したことはないからである。その状態が続くのであれば、いずれ米国と対決しなければならないにしても、今日対決するよりは明日、明日対決するよりは1年後、1年後対決するよりは力関係が逆転する10年後に対決した方が有利なことは子どもでも分かることだ。逆に米帝としては、今、中国の台頭を抑えなければ自らの覇権を失うことに気がついたといえる。
130万人を数える米軍は、約45万人が国外に駐留する。そうやって米帝の世界経済展開を支える。他方、中国軍は米軍を超える2百万人を擁するが、ほとんど国外に展開しておらず、中国経済が世界規模に至った現在、自らの軍事力でそれを支えるには大きな矛盾を抱えている。南沙諸島の領有問題もこのような矛盾から発生しているという評価もある。(つづく)
松崎五郎さんを送る会開く
『資本論』と『わいわい通信』
4月29日、大阪市近郊で「松崎五郎さん(絹川總同志)を送る会」がおこなわれた。大雨の中、40人が集まり、松崎さんのコロナによる突然の死を悼み、マルクス『資本論』に学び、革命に情熱をかけ、優しかった人柄を偲んだ(写真)。
黙祷を捧げたのち、闘病の経過報告で「保健所に電話しても1度も繋がらず、自宅待機SOSは、病院を紹介するだけで入院措置はとらないというなかで、重症化した」と話された。献杯の後、8人の仲間から思い出などが語られた。『わいわい通信』のライターは「ガチガチの中核派のイメージとは全然違う人だった。柔軟で誰にでも優しいので、色んな人が集まってきた。倭国の話など新しい話をしてくれた。高齢で基礎疾患のある松崎さんを入院させないなんて、維新によって殺されたと言っても過言ではない」。
高対(革共同高校生対策部)時代の仲間は、「昔は官僚的だったが、最近、社(前進社関西支社)で会議をしたら、お菓子を準備してくれ優しい人に変わっていた」。同じくもう1人の男性は「67年10・8羽田、山ア博昭君の死を知らせてくれたのは松崎さん。『わいわい通信』を、街宣現場に毎月持って来てくれ、みんな愛読者だった。彼は死ぬまで革命のことを考えていた人」。
反軍担当時代の仲間は「いつもニコニコと迎えてくれる人だったが、椿たちの党破壊に対しては、毅然と反対する姿にびっくりした」。遠方からかけつけた方は、「松崎ブログをずっと見ていて2月のが載らないので心配していた。いろいろお世話になった。要点を押さえている人だった」。
古参の仲間からは「彼は頭のいい人で、『わいわい通信』は読み応えがあった。維新によって殺されたも同然。維新と闘い、早期発見・早期治療体制をつくっていく」。同年代の仲間からは、「彼は、親分的存在だった。当時高校生たちを集め、カンパも集め、社を維持してきた。党にとって大変重要な人を失った。維新との闘いを復讐戦として闘う」と決意が述べられた。
松崎さんの小冊子『資本主義の終り論』を買い求める人も多かった。カッパさんの愛称で親しまれた松崎さん。偉大な革命家であり、聡明で明るく優しかった松崎さんは、死してなお私たちを見守り励まし続けてくれるだろう。(花本香)