ウクライナ侵攻に乗じた日本の軍拡・改憲
先制攻撃・大軍拡・憲法改悪狙う
自衛隊の南西諸島配備を阻止しよう
毎回参加者が増えるウクライナ反戦スタンディング。小学生とその子の絵(左端)とベビーカーの子も参加。次は第4回、5月7日(4月5日、兵庫県尼崎市) |
戦火拡大許すな、ロシア軍は撤退を
2月24日のロシア軍のウクライナ侵攻から2カ月になる。用意周到な準備のうえに突然国境を越えてウクライナになだれ込んだロシア軍は、空からビル・住宅や病院・学校を破壊し、戦車で町を占領し、そのうえ拷問・虐殺など暴虐の限りを尽くしている。国外に脱出した難民は5百万人をこす。短期日で首都キーウを陥落させ、親ロシア政権を樹立することに失敗し、5月9日の「対ドイツ戦勝記念日」までにマリウポリを陥落させ、東部に「人民共和国」を作ろうとしている。「ネオナチからウクライナを解放する戦争」とは真っ赤なウソで、ウクライナをロシアの従属国とし、NATO(北大西洋条約機構)との緩衝地帯にするための戦争に他ならない。
ウクライナ人民は長きにわたるロシア帝国・ソビエト連邦の民族的抑圧を受けてきた。ロシア革命後の内戦を経てソビエト社会主義共和国連邦に結集するも、スターリン時代にはその豊富な穀物資源を徴集され、抵抗すれば民族移住を強制され5百万人もの死者をだした(うち350万人が餓死)。第二次世界大戦では一時期ナチスドイツに占領され国土が蹂躙された。1991年のソ連崩壊後、350年の悲願として独立したが、今またスターリンの系譜をひくプーチンにより、自らの家や町を破壊・蹂躙され、東部地方を割譲されようとしている。NATOの東方拡大に追い詰められ、バイデン政権の直接介入がないことを見越して始めたプーチンの戦争だが、一片の正義もなく多くの無辜の民が犠牲になり、またロシア兵の犠牲もおびただしい。これ以上の市民の被害をなくすには、ロシア軍は武器をおき、ウクライナ全土から撤退することだ。
帝国主義軍事同盟の解体を
それではアメリカ帝国主義・西欧帝国主義の軍事同盟であるNATOは正義であるのか。そんなことはない。2003年のイラク侵略戦争は、フセイン政権の「大量破壊兵器」を理由に軍事行動でフセインを打倒したが、「大量破壊兵器」はなく、今回のプーチン以上の悪行を繰り返した。コソボ紛争へのNATO軍の介入・空爆も許されない。また国連での拒否権発動をアメリカ等は非難するが、イスラエルの度重なる悪行を拒否権発動で救済してきたのはアメリカなどではないか。
西欧帝国主義が「民主主義」をいうなら、ソ連崩壊時にNATOも解体すべきであった。依然としてグローバル資本主義の世界支配と、それに異を唱える者への支配の暴力装置であるNATOをはじめとする軍事同盟こそ、人類を戦火に引き込む最悪の暴力装置だ。東アジアでも「中国の脅威」を必要以上にわめきたて、日米同盟やアメリカの巨大な軍事力とクワッドの連携を強めようとしているが、インドの離反などうまくいくわけではない。ベトナム戦争で敗退し、イラクでも失敗、アフガンでみじめな撤兵と、アメリカは「世界の警察官」をやめざるをえなかった。今またアジアで日本軍(自衛隊)を先兵にしようとしている。「民主主義VS専制国家」の対決と正義者ぶるなら、自らの軍事同盟解消・軍備削減を堂々と中国に呼びかけるべきだ。
戦争に便乗し軍拡・敵基地攻撃・憲法改悪をたくらむ
このウクライナ戦争を奇貨として、日本の軍備拡張、核武装、敵基地攻撃論などを強め、憲法改悪を狙っているのが、安倍元首相や維新=橋下徹や自衛隊の反動幹部どもと岸田政権だ。日本がすべきことは、難民受け入れ、医薬品・食料などの人道的支援だ。自衛隊機派遣はインドからも拒否された憲法違反だ。外交的努力をせず戦争をすれば、「戦争で得ようとする人的・物的資源の数倍・数十倍の損失」も明らかになった。軍備増強競争からは戦争と人的・物的損失以外結果しないことを知るべきだ。
とりわけ自民党防衛族と自衛隊幹部たちはこの機に乗じて、対中国敵対意識をあおり、自衛隊の南西諸島(琉球弧)配備強行や、軍事費のGDP比2%への拡大を目論んでいる。また「専守防衛」を破棄する「敵基地攻撃能力」という憲法違反行為を、言葉だけ「反撃能力」に変えようとしている。彼らは安倍と一体となって頻繁に秘密の会合を持ち、「相手国のミサイル基地」だけでなく「指揮系統」破壊をも企んでいる。
テレビに防衛省研究者が頻繁に出演し戦況解説をおこない、「日本と台湾は運命共同体だ」とする渡辺悦和(元陸将)らまで登場させ、市民権を得ようとしている。ウクライナ戦争に乗じての帝国主義勢力圏獲得のための軍拡・改憲攻撃と対決しよう。戦争の危機に対し、闘うべき相手は戦争挑発をする自国政府である。アジア人民に決して銃を向けてはならないことは、8・15敗戦を結果し、再び戦争を繰り返さない日本人民の歴史の教訓だ。
立憲らの屈伏を許さず、改憲阻止の参議院選を
「戦争が始まった時代」に、政府の軍拡・憲法改悪攻撃に果てしなく屈伏しているのが立憲民主党だ。昨年衆議院選敗北以降、国民民主党や維新や連合芳野会長らの攻撃に屈服・後退し果てしなき右展開をおこない、直近の各種選挙でも敗北を繰り返している。戦争が始まった時代だからこそ、「反戦平和」「平和国家」「憲法擁護」をかかげ戦争に反対し、生活危機と闘う政党と連携していかなくてはならない。代表を先頭に背水の陣を敷き奮闘するれいわ新選組や社会民主党、野党共闘と連携し闘おう。維新に完敗を強制した兵庫県西宮市長選のように市民主導で野党との連携を実現しよう。
もし改憲3分の2議席を与えるなら、向こう3年は反動の嵐が吹きすさび、人民の闘いが壊滅させられ、岸田にとっての「黄金の3年」になる。5・15沖縄闘争、5・29老朽原発うごかすな闘争の高揚から7月参議院選勝利へ全力で闘おう。
2面
原発・核兵器とは共存できない
老朽原発廃炉 5・29大集会へ
原発銀座若狭の老朽原発をとめれば、原発は廃炉へむかう |
(1)
ロシア・プーチンのウクライナ侵略戦争は、反原発=反核闘争に重大な局面を引き起こしている。ウクライナに侵攻したロシア軍は、1986年の大事故を受け、廃炉に向けて準備作業中のチェルノブイリ原発を制圧した。また、ヨーロッパ最大級のザポリージャ原発を攻撃し制圧した。そこでは原発敷地内で火災が発生している。
原発は、こと戦時下においては、第一級の攻撃目標になるということを現実の問題として突き出したのである。またロシアは、「核の使用」をも公言している。
他方、この事態に対して、安倍や自民党の一部、維新などは、「核共有論」や「非核三原則の見直し」を声高に叫んでいる。また、杉本福井県知事などは原発立地に自衛隊の配備を求めている。戦争になれば原発は攻撃されるという事態に対して、原発そのものをなくそうというのではなく、軍事強化で原発防衛を願うという本末転倒した論を唱えている。
いまわれわれは、あらためて「人類と原発=核は共存できない」という原点に立ち帰らなければならない。今こそおおきな反戦闘争、反核=反原発闘争のうねりをまきおこさねばならない。
(2)
いま政府、電力会社などは、原発はCO2を排出しないクリーンなエネルギという大キャンペーンをはっている。地球温暖化を防ぐ最大の柱が原子力の利用にあるというのである。CO2が地球温暖化の元凶というのはなんら科学的に証明されていないのであり、多くの反対意見もある。よしんばCO2が地球温暖化をもたらすとしても、CO2を吸収する大地を破壊し、コンクリートで覆いつくすあり方を根本的に見直すことが求められている。 また、原子力という閉じ込められてきた巨大なエネルギーを現実のものとしたとき、どれほど大きな影響を与えるのか考えなければならない。また、使用済み核燃料は何万年にもわたって、保管せざるを得ないのである。政府、電力会社の「原発クリーン」、「地球温暖化防止の切り札」というペテンとごまかしの論理を許してはならない。
(3) 「5・29原発のない明日を〜老朽原発このまま廃炉! 大集会inおおさか」の大成功を勝ち取ろう。
反原発闘争において、この数年がおおきな節目になる。
日本や、世界の原発の多くが運転開始以来40年を迎えようとしている。
ドイツや台湾は脱原発に向かって進んでいる。他方、あくまで原発に固執する国も多く存在する。その中で、それらの国においても、「40年問題」が存在する。フランスしかり、韓国しかりある。それらの原発が、この数年から10年のうちに40年を迎えるのである。世界的に「老朽原発うごかすな」が焦点になろうとしているのである。そのとき、日本の美浜3号機、高浜1・2号機が実際に稼働され運転されるということは、決定的な影響を与えるものとなる。国内だけでなく世界的にも大きな影響を与えることになる。
また、政府が進める原発推進政策にも大きな影響を与えることになる。昨年閣議決定した第6次エネルギー基本計画において、原発の新増設こそ打ち出せなかったが、20〜22%を原子力でまかなうという基本方針を達成するためには、老朽原発の再稼働や、新設原発(島根3号機や大間など)稼働、稼働中の原発の過酷運転が必要になる。美浜3号機、高浜1・2号機の再稼働を阻止することは、政府のエネルギー基本政策=原発推進政策を根幹においてうちやぶるものである。
老朽原発美浜3号機、高浜1・2号機の再稼働を阻止することは、原発全廃の道をきりひらくことでもある。関西電力が狙う今秋、美浜3号機再稼働を止めよう。
「3・11」直後全国で巻き起こった反原発の高揚を引き継ぎ、それを超える決起を実現しよう。
10月とも言われている美浜3号機の再稼働を阻止するために総決起しよう。5・29大阪うつぼ公園に集まろう。「美浜3号機動かすな!」「老朽原発このまま廃炉!」の声を御堂筋デモでとどろかせよう。
4・10みなせん集会 参議院選挙 野党統一へ討論集会
大阪・兵庫でバーター共闘を
各地区みなせんの報告と野党との討論で参院選勝利を確認(4月10日、神戸市) |
4月10日、神戸市内で、参議院選挙野党候補統一に向けて討論集会が開かれた。連帯兵庫みなせん代表・事務局長の松本誠さんが経過報告。衆議院選兵庫1区、6区、7区の総括報告や、兵庫野党5党(立憲、社民、れいわ、新社会、みどりが出席。共産、国民民主は欠席)からの決意が語られ、さらに大阪の市民連合〈大阪アピール〉から梅田章二さんらが参加し挨拶した。
経過報告では、衆議院選では12選挙区のうち9区で野党共闘が成立したが、結果は小選挙区で1人当選、比例で1人復活、その上に維新は8人比例復活で9人全員が当選という二重に厳しい結果だったが、野党共闘が間違っていたのではなく、より地域に根ざした日常的共闘の積み上げが必要と確認した。とくに7区では立憲民主党の内部の問題もあり最有力候補が敗退したが、その問題の解決を図りながら迎えた3月27日の西宮市長選・市議補選(定数2)では、市長選も市議補選も維新候補を3人全員落選させるという完ぺきな勝利を実現した。
参議院選では、大阪・兵庫は4人区・3人区だが、維新・公明・自民が3年ごとの2回の選挙で14議席を独占しており、実質1人区という認識に立つべき。それなら大阪で1、兵庫で1をたてるしかなく(それぞれ2人をたてて、2019年、2016年は共倒れで落選)、それに向けて大阪府と兵庫県の府県を越えたすみわけ共闘以外ないというのがみなせんの結論だ。この日は、この間討論を進めている大阪の市民連合〈大阪アピール〉からも参加、何とか勝利を実現していきたいとなった。
会場からの意見でも、西宮市長選を闘った仲間から「反維新の運動を大きく巻き起こす」「ベストでなくてもベターな候補に投票を集中することが勝利の道で、政党はこの立場に立つべき」との訴えや、5区=丹波から参加した仲間から、「今回負ければ向こう3年選挙のない黄金の3年を自公政権に与え、憲法改悪は不可避。その道を大阪・兵庫で与えてはならない」との訴えがなされた。
最後にアピールが採択され、兵庫・大阪で府県を越えた共闘を積み上げていこうと、70人弱の参加者は確認した。なお欠席の共産党兵庫県委員会は、その理由を「1人区は共闘・統一候補だが、複数区では切磋琢磨。このことは市民連合でも確認されている」と返事してきたが、市民連合の方針は「複数区でも可能な限りの共闘・統一候補」とあることも報告された。
政党中央へ要請
4・10討論集会の成功を受けて、連帯兵庫みなせんでは、兵庫と大阪のバーター共闘実現ため、立憲民主党、共産党などの中央に要請署名運動をおこなうことを決め、5月3日兵庫憲法集会でビラまき。政党のセクト主義を打ち破り、大阪・兵庫で必ず議席を奪還するための唯一の方策だ。署名を広げよう。
3面
宮古島住民迎え 5・15大阪集会
南西諸島へのミサイル配備反対
50年前、沖縄の施政権が米軍から日本に「返還」されました。沖縄の人びとは、軍隊を持たない「日本国憲法」がある日本への「復帰」により「基地のない沖縄」が実現すると希望を抱きました。しかし沖縄に集中する米軍基地は撤去されず、それどころか日本政府によって新しい米軍基地の建設が進められています。
今「中国の脅威」に対抗するためと称し、米軍基地だけではなく、与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島、馬毛島に自衛隊基地を建設し、ミサイル部隊等を配備することが進められています。また辺野古新基地をはじめ、自衛隊が沖縄の米軍基地を共同使用し、共同で演習・訓練を行うことも明らかにされています。琉球弧の軍事要塞化が進められています。これは島々が戦場になることを想定しています。
ロシアによるウクライナ侵攻は、軍拡と軍事同盟の強化は戦争への道であることを改めて示しました。そして犠牲になるのは民衆です。狭い島が戦場になれば住民は避難することもできず、多くの人が犠牲になります。再び沖縄戦が繰り返されることになるのです。
沖縄の人びとが望んだ「基地のない沖縄」を私たちは未だ実現させることが出来ていません! それどころか、再び沖縄戦を繰り返す愚かな政策を続けさせています。50年経って、このような状況が許されるでしょうか?
この度、宮古島から「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子さんからお話をお聞きする機会を設けました。宮古島でのミサイル基地反対の闘いから学ぶとともに、どうすれば私たちが琉球弧の軍事化を阻止し、基地建設をとめることができるか考え行動しましょう。多くのみなさまの参加を呼び掛けます。(集会チラシから引用)
つじ恵さん(参院比例)全国行脚
7月参院選へ闘い始まる
昨年衆議院選を兵庫8区(尼崎)で闘い惜敗したつじ恵さん(比例近畿で大石あきこさんが当選、つじさんは次点)は、その後も尼崎を拠点に政治運動を継続し、3月西宮市長選勝利の一翼を担った。4月7日にはれいわ新選組比例区の公認第一号として、7月参議院に挑戦することに。
参議院比例区は、全国どこからでも投票できる。そのため4月16日には京都で「若者と政治を語る」集会を開催(写真上)。4月23日には尼崎で、やはた愛大阪予定候補や丸尾牧兵庫県議の応援をうけ集会。それぞれ白井聡京都精華大教員から安倍継承の岸田政治を切る講演を受け、参議院選への抱負を、「ウクライナ戦争がはじまり、物品の値上げと円安で庶民の暮らしは崖っぷち。この機に乗じて岸田政権や維新は敵基地攻撃論や核共有発言。こんな政治を許してはならない」と語った。
その後、4月末は名古屋・豊橋で、5月初めには札幌・帯広で集会。ついで東京集会から、岡山・沖縄へと全国行脚をおこなう。自公政権に改憲議席を与えないために、つじ恵を全国で押し上げていこう。(尼崎・久保井)
辺野古新基地建設 果敢に反撃
4月25日 70人が海上抗議行動
久しぶりにカヌー36艇などが瀬嵩の浜に勢揃い(4月25日、名護市) |
▼3月28日、沖縄防衛局は「K8護岸」の延伸工事に着手した。「K8護岸」は全長515mのうち、2019年3月に250mを造り、埋め立て土砂搬入の「桟橋」として使用している。今回新たに190mの延伸工事に取り掛かった。「K8護岸」の延伸上には軟弱地盤があり、「設計変更」が必要である。防衛局は、県の「設計変更不承認」のため今できる工事を進めていると思われる。工事は、護岸の先端を消波ブロックで覆っているため、ブロックの除去から始まっている。ブロック除去後、砕石が投下される模様。
▼4月8日、国交相は、辺野古新基地建設を巡り、沖縄防衛局が提出した埋め立て工事の「設計変更」を「不承認」とした県の行政処分を取り消す裁決をした。国交相は防衛局の主張を支持し、県に、防衛局の設計変更を20日までに承認するよう求めた。県は「裁決書」を精査して対応するとしている。
「設計変更」について、辺野古新基地建設の埋め立て工事は、大浦湾に広がる軟弱地盤を改良しなければ完成が見込めないことから始まった。2020年4月防衛局は地盤改良に必要な「設計変更」を県に提出。県は工法や安全性の根拠など改良工事の現実可能性に疑問符をつけ、2021年11月「不承認」とした。防衛局は、本来は私人権利救済を目的とする行政不服審査制度を利用して、「私人」になりすまし国交相に行政不服審査を請求した。これまでも、内閣の一員同士による手続きで県の行政処分を取り消す決定を乱発している。キャンプ・シュワブゲート前で抗議行動の市民は「国の横暴を許すな」と怒りの拳を突き上げた。
▼16日、4月30日に予定していた、復帰50年の県民大会が見送られることとなった。沖縄の新型コロナウイルス感染拡大が収束せず、さらに拡大の傾向にあることから、1万人集会規模の市民の参加はリスクがあると大会実行委員会は判断した。[注]その後、同日のリモート開催を決めた。午後1時から。
▼20日、県は、辺野古新基地建設の「設計変更」申請を巡り、国交相の20日まで承認勧告に対し「裁決書の内容を精査する必要があるので20日までに判断できない」と国に文書で回答した。
国交相の勧告に法的拘束力はない。国側は対抗措置として、拘束力のある是正指示などを出すことが想定される。国側は当面は県の対応を待つ方針。
今後、県の対応をうけ、国側は是正指示に踏み切り、県が不服として国地方係争処理委員会に申し立て、その後に指示の違法性を訴えて訴訟に至る展開が想定される。
国が県の不承認を無効化して設計変更承認を得ても、工事着手から完成まで12年かかる見込み。総工費も9300億円に。普天間飛行場の返還はさらに遅れる。
▼25日、沖縄防衛局が2017年に護岸工事に着手してから5年となった。この日、最初に砕石が投下された「K9護岸」付近海上で、ヘリ基地反対協・海上行動チームによる海上アピールが行われた。抗議船7隻、カヌー36艇に70人が参加。「工事をやめろ」「大浦湾を守れ」など抗議の声を上げた。(杉山)
4面
ウクライナ反戦闘争を発展させ岸田政権の改憲・軍大化と対決を
落合薫
プーチン・ロシアの侵略戦争
プーチンの狙いは何か。プーチンは、2021年7月に、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題した論文を出している。そこでは、ウクライナの民族としての独自性、一体性を否定し、ソ連時代の民族政策の誤りが、不必要な国家形成を招いたとして、国家としての抹殺を明言している。
侵略戦争にウクライナ人民は強固な民族意識をもって抗戦している。ロシアでは、開戦が分かると即日に、全土60都市で数十万の反戦デモが起こり、千人以上の人々が逮捕された。新しい反戦闘争が全世界で始まった。
他方で、この明白な侵略戦争に混乱を極めた対応が見られる。『世界』5月号で神保太郎は、「ウクライナは民族・宗教・言語のモザイク地帯である」として民族的一体性を認めず、国家形成さえ否定するプーチンと同じ認識を示している。ウクライナの民族構成はウクライナ人が75%で、残りの25%はロシア人をはじめとする少数民族である。
一方、ロシア連邦は、ロシア人が8割いるが、残りは少数民族で、21の少数民族の自治共和国を含む。たとえばイングーシ自治共和国にはロシア人は人口の1%しかいない。民族構成を見てもロシアの方がモザイク国家である。ロシアがウクライナと異なっているのは、大ロシア人の大国主義・排外主義であり、プーチンの強権的国家支配である。
また鳩山由紀夫元首相は、自らのブログで、「この戦いはウクライナが舞台のロシアVS米国の戦争」であると言う。ウクライナ人民が戦争と平和の主体としてどこにも存在しない。このような独善的な認識で闘いを歪めてはならない。ウクライナ人民は350年間の大ロシアによる民族抑圧を振り払い、1991年に旧ソ連でもっとも早く独立した。ロシアのツァーリ専制体制、スターリン主義の農民絶滅政策、ナチスによる占領と抑圧という三重の抑圧をはねのけたのである。新しい反戦闘争は、ウクライナが被抑圧民族であることを明確にし、その自決・自己決定権を断固として擁護することから始まる。
新たな沖縄戦を許すな
岸田政権は、ウクライナ侵略戦争を口実として改憲・軍事大国化の動きを一挙に強めている。ウクライナ支援と称して自衛隊機を派遣し、ドローンの提供まで決めた。民生品といっても、攻撃のための偵察や監視などにも使える。
「ロシアの次は中国が侵略してくる」と対中国排外主義と戦争挑発も激しい。5月24日には日本で米・日・豪・印のクアッド首脳会談が開かれ、米バイデン大統領が初めて来日する。これも岸田政権が仕掛けている。
これら一切は、新たな沖縄戦に向かう琉球列島をめぐる軍事的緊張の激化となって表れている。2月に米軍は1万人以上が活動する大規模訓練「ノーブル・フュージョン」を沖縄周辺で実施。同時期に陸海空3自衛隊もそれぞれ日米共同訓練を実施している。ロシアと中国の戦艦や航空機が日本周辺で動きが激しいと盛んに報道しているが、実は日・米に英・仏・独も加わった軍事動向がはるかに激しい。「台湾危機」を煽りたてながら、琉球弧に陸上自衛隊を配備する基地がつぎつぎに建設されており、「新しい沖縄戦」がリアルに切迫している。辺野古新基地建設も、米軍の普天間代替を名目に自衛隊を配備する琉球諸島最大の基地建設が狙いである。その中で政府は4月13日、今後10年間の指針となる「沖縄振興策基本方針」をまとめた。その序文には、「沖縄の安全保障上の機能を重視し、領海や排他的経済水域(EEZ)を保全する役割をもつ」ことが明記されている。軍事機能が大事で、住民の生活や負担は2次的扱いである。
沖縄戦が現実の危機となることを前にして、〈ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会〉が山城博治さんらの呼びかけで発足している。全国各地でこの会を結成しよう。沖縄への差別的軍事支配を廃絶し、中国・台湾・韓国・朝鮮人民と連帯し、国際反戦闘争で日米の対中国戦争挑発を阻止しよう。
岸田政権の改憲・軍事大国化
安倍元首相は、ウクライナへの侵略開始以降、改憲・軍事大国化発言を繰り返している。2月27日には「核共有」論、4月3日には敵基地攻撃能力は「敵の中枢(指揮統制機能)も攻撃できるようにすべきだ」と発言、4月14日には防衛費を「対GDP比1%程度から2%に引き上げるべきだ」と述べた。これらの発言は、従来の政権が世界と国民に対して誓約した「専守防衛」「非核3原則」をことごとく破棄し、対中国の戦争挑発を図るものである。
経済的に新自由主義が破産し、株価維持だけを目的としたアベノミクスの付けが回って、労働者人民を塗炭の苦しみに投げ込む悪性インフレの火がついた。その中で軍事・治安強化が目的の経済安全保障推進法案が強行成立されようとしている。法案の運用138カ所にわたり国会審議を経ない政令や省令で定められ、いくらでも拡大解釈ができる代物である。
岸田政権はすでに、「核共有」論にかじを切っている。岸田首相は3月7日の参院予算委員会の答弁で、非核3原則の「持ち込ませず」をめぐり、有事に際して例外的な対応を取る可能性があるとの認識を示した。また自民党安全保障調査会は4月20日、3日間の連続討論を経て、次のような提言を決めている。
@防衛費はGDP比2%以上を目指す(「5年をめど」を「5年以内」に変えて)
A敵基地攻撃能力は「反撃能力」と言い換え、「指揮統制機能」も対象にする
B「防衛装備3原則」を見直し、殺傷能力ある武器も提供できるようにする
欧州4カ国(独・伊・オランダ・ベルギー)の「核共有体制」(nuclear sharing arrangement)とは、フランスを除くNATO加盟29カ国の承認と米大統領と英首相の認可があって初めて核兵器を使用できるというものである。運搬手段だけでなく、通常戦闘機による支援、防衛、給油などが必要で、そのための詳細な協定を米国と当該国の2国間協定で結んでいる。それによって、核兵器の保管場所、運搬手段(爆撃機の機種)が容易に推定できる。敵国は、核兵器と運搬手段を事前攻撃によって破壊できる。つまり「核共有体制」とは米・英が上記4カ国に核兵器を使わせないで、危険負担だけは押し付ける「体制」なのである。危険極まりない「核共有体制」を何としても阻止しよう。
(シネマ案内)
『親愛なる同志たちへ』
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー
2020年 ロシア映画
1962年5月、ソ連東南部の都市ノボチェルカッスクでは、フルシチョフのデノミ政策により日常品が不足し、物価が上昇。追い討ちをかけるように工場労働者の賃金がカットされた。この街には、電気機関車を造る大規模な国営工場があった。6月1日、この工場労働者がストライキにたち、「肉、バター、賃上げ」を求め、5千人が市政委員会庁舎に押し寄せていた。
当局は内乱に発展することを恐れ、共産党中央の指示をうけて、軍とKGB(ソ連国家保安委員会)がこの事件に介入した。軍(映画ではKGB)は市民を銃撃し、暴力で鎮圧をはかった。外部に事態が漏れないように街は封鎖された。市民百人以上(非公式)が銃撃で死亡。百人以上が懲役刑をうけ、7人が首謀者として銃殺された。これが「ノボチェルカッスク事件」であり、1992年になって明らかになった。
映画は当局の対応に焦点をあてながら、この事件の真相を描く。シングルマザーのリューダは共産党市政委員会の課長で、根っからのスターリン主義者だ。市民が日常品を求めて食料品店に行列していても、裏口から入り店長に食料を調達してもらう。これを何とも思わない。彼女は18歳の娘と父の3人家族で生活。看護師として独ソ戦を戦い、娘を妊娠し、相手はこの戦争で死んだ。その娘は機関車工場で働き、「民主主義の社会なのだからデモをするのは当然でしょ」と、ストライキに参加。リューダの父は革命戦争を白軍として戦い、ドイツから鉄十字勲章をもらい、イコンを大事にしている。今もドン・コサックを誇りにする。このように1人ひとりが複雑な歴史を背負っている。
映画の前半は、この事件への党・軍・KGBの対応を追う。ハンガリー事件から5年半。官僚体制が硬直化して、党と労働者との接点は存在しない。党官僚のリューダは、「全員を逮捕するべきだ」と対策会議で提言する。だが娘がこの銃撃事件に参加しており、リューダは娘の行方を捜し求める。映画の後半では、さらに隠された事件の内実が描かれる。ノボチェルカッスクの街は、ドン河の下流、アゾフ海の北東にある。国境は人為的なものに過ぎず、ここに住む住民にとって、この地域はドン・コサックなのだ。社会主義では、労働者が主体的に政治に参加し、社会を建設していく。しかしソ連はこういう社会ではなくなっていた。これが「ソ連型社会主義」の実態だった。市民はたがいに口を閉ざし、本心をあかさず、表向きは当局に同調をふるまう。
監督は、「私が目指したのは、ソ連の1960年代という時代を丹念に、細部まで再現すること。第二次大戦を勝利するまで粘り強く戦ったソ連の人々の純粋さをたたえ、共産主義の理想と現実の狭間に生じた不協和音を注意深く見つめる映画」と言っている。ロシアの支配者(党官僚)の思惑、ウクライナ住民の思いなどをよく描いた映画で、ロシアのウクライナ侵略を理解するためにこの映画をすすめる。(鹿田研三)
5面
生活保護基準引き下げ違憲訴訟
4月21日大阪高裁 証人尋問で国策打破を
新たに参加の西田陽子弁護士が報告会で発言(4月21日、大阪市) |
大詰めにきた控訴審
4月21日、大阪高裁で控訴審第4回口頭弁論がひらかれた。マスコミは10社が傍聴にきていた。この控訴審が重要な裁判であることを皆認識しているのだ。
今回の弁論で原告と国の双方の主張がほぼ出そろった。次回(7月13日)は国の反論がメインになるが、それが終わると次々回(9月27日)から証人尋問に入ることが予想されている。証人尋問が終わるといよいよ判決となる。昨年9月14日から始まった控訴審は7カ月が経過した今、いよいよ佳境に入る。
証人尋問をかちとろう
裁判所はまだ証人採用を決めていない。しかし、この控訴審では証人尋問がきわめて重要になる。本件訴訟の重要な争点は国の物価下落の計算のデタラメさである。弁護団はこの点についての有力な証人を考え、すでにその人の内諾を得ている。
生活保護基準引き下げ違憲訴訟は、大阪地裁の勝訴判決以外、国に忖度して名古屋、札幌、福岡、京都、金沢、神戸などすべての地裁で敗訴判決が出されている。しかし、それらの判決はきわめてずさんで判決文中に記載されている「NHK受信料」を「NHK受診料」と記載する誤記が二度ならず三度まで繰り返されている。裁判官たちが如何に国に迎合して敗訴判決を書き続けているのかよくわかる。
国策を打ち破ろう
自公政権は保護基準を引き下げるだけでなく、生活保護制度の中心を担う大切なケースワーカーを法改正までして民間に丸投げしようとしている。これは自公だけでなく維新も同じ考えだ。新自由主義の推進にとって生活保護制度はじゃまで仕方がないのだ。
新たに弁護士加わる
今回から西田陽子弁護士が新たに加わりパワーポイントを使って国家賠償請求に関する弁論をおこなった。パワーポイントを使うのは初めてとのことだったが、わかりやすかった。
傍聴の新たな広がり
今回は関西大学の法科大学院の学生も参加していた。また大阪府堺市の耳原総合病院のソーシャルワーカーも参加していた。同病院では保護基準の1・5倍までの収入の患者に無料低額医療をおこなっているが、コロナ禍で収入の道を断たれた人が急増しているという。
保護費が国のいいなりに下げられ、ケースワーカーまで民間に丸投げされていけば、最後のセーフティネットは土台から破壊される。なんとしてもこの裁判闘争に勝利しよう。
第8回定期総会に参加しよう
5月28日午後1時15分から大阪府社会福祉会館で〈引き下げアカン! 大阪の会〉の第8回総会がおこなわれる。第1回総会は2015年だ。以来8年になる。思えば長い道のりだったが、大阪地裁の勝訴判決は本当にうれしい限りだった。控訴審になんとしても勝利し、コロナ禍で貧困が急拡大している中、「健康で文化的な最低限度の生活」、つまり、人らしく生きる権利の確保・拡大のためにさらに闘っていきたい。
次回口頭弁論は7月13日午後3時、大阪高裁大法廷(202法廷)でおこなわれる。多くの方々の傍聴をお願いしたい。(三船二郎)
(本の紹介)
ウクライナ戦争の背景を探る
黒川祐次『物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国』(2002年 中公新書)
ロシア軍のウクライナ侵攻から2カ月。連日の報道で残虐な戦場映像を見て、21世紀になっても軍事大国による侵略戦争から人類は自由でないことを思い知らされる。とともに、「戦争は他の手段をもってする政治の継続」である以上、その原因・背景をつかまないと、残虐行為を批判しても不十分だ。何が真実で何がフェイクかを見極めるためにも、ウクライナのことを知る本を紹介する。
ヨーロッパの穀倉地帯
中学・高校の教科書で学ぶウクライナといえば、ウラル山脈の西側でヨーロッパ中央部にある「穀倉地帯」、旧ソ連のコルホーズ・ソホーズの典型的地帯だ。またソフィア・ローレン主演の『ひまわり』の果てしなく続くひまわり畑=穀倉地帯の映像か。ついで黒海に面したオデッサ(オデーサ)は、ロシア革命発端の『戦艦ポチョムキン』の舞台で、あとは原発事故のチェルノブイリくらいが今年2月24日までの私の基礎知識である。そのためウクライナのことを知ろうと手にしたのが『ウクライナの歴史』と、2014年のクリミア併合以降の戦争を知るルポが『プーチンの戦争』である。
前者は元ウクライナ大使の書くウクライナの歴史入門書だ。面積は日本の1・6倍で、ヨーロッパではロシアに次ぐ大国(フランス、ドイツより広い)。人口は5200万人でスペインより多く、ドイツ8200万、フランス6300万、イギリス6200万、イタリア6000万につぐ。穀倉地帯=農業国と思いきや、今問題となっている東部=ドンバス地方は大工業地帯で科学技術の水準は高く、旧ソ連時代のミサイルなどはウクライナで作られ、港湾都市オデッサは横浜と姉妹都市である。
歴史的には遊牧の民・スキタイから始まり、キエフ・ルーシ公国は中世ヨーロッパの大国(キエフは京都と姉妹都市)だった。15世紀ころからウクライナやロシア南部のステップ地帯に住みついいた自治的な武装集団をコサックと呼ぶ。この時代の英雄的人物が1595年にドニエプル川中流に生まれたフメリニツキーだ。この時代にキエフを根拠地にし、西のポーランドなどと闘い、最後はモスクワ公国側につく。この時期に現在とほぼ同じ領域(ドニエプル川の東西、南は黒海、北はモスクワ、西はポーランド)がウクライナとして形成される。18世紀以降、周囲にロシア帝国やオーストリア・ハンガリー帝国やオスマン帝国が形成されるが、ウクライナは国家を形成できず「小ロシア」としてロシア帝国の版図に入る。
350年の独立への悲願
1800年代中盤から資本主義が発達し帝国主義の時代へ突入し、1853年〜56年のクリミア戦争から帝国主義による領土分割、革命と戦争の現代が始まる。この時代にロシアに住むユダヤ人は520万人で、うち200万人はウクライナにいた。帝国主義はユダヤ人を含むウクライナの民族問題を分断・支配に使う。革命家トロツキーはウクライナ東部出身のユダヤ人だ。
第一次大戦と17年ロシア革命はロシア・東欧の地図をすっかり変える。大戦ではウクライナ人は露軍に350万人が、墺軍には25万人が動員され戦火を交える。この過程で独立機運が強まり、2月革命後に「ウクライナ中央ラーダ」を結成し、10月革命後はウクライナ国民共和国の創設を宣言。しかしウクライナを不可欠の存在とするボルシェビキはラーダのナショナリズムを分離主義とし武力的に掌握。その後ブレスト・リトフスク条約で45万の独墺軍が進駐し、のちにラーダと決裂し傀儡政権を立てる。その後ウクライナは赤軍、白軍、ドイツ軍、マフノ軍などの激しい内戦過程に入り、最後にボルシェビキ(赤軍)が勝利し、ウクライナは独立に失敗し、ソ連の一翼となる。
1924年のレーニン死後に権力を掌握したスターリンは、ウクライナを工業化と農業集団化のモデルとし、第一次5カ年計画(1928年〜32年)で1400の新規工場のうち400を作り、ドネツク炭田はスタハノフ運動のモデルに。農業集団化では強制的集団化の上に、比較的豊かな農民がクラークとされ土地を没収・収容所送り・シベリア移住とされた。1928年には3・4パーセントの農家が、35年には91パーセントが集団化に。結果32年〜33年の大飢饉で350万人が餓死。我々が知るスターリン主義の非道の主要な舞台はウクライナだったのだ。
第2次世界大戦・独ソ戦により、ウクライナは再び三度戦火にさらされ、人口の約6分の1=530万人が死亡。45年2月クリミア半島のヤルタ会談で、戦後処理の基本方針が決められるが、悲願の独立はならず、版図を拡大してソビエト共和国となる。スターリン・フルシチョフ・ブレジネフ時代を経てソ連は崩壊。1991年に350年の悲願の独立を達成した。
2002年刊行の新書を駆け足で追った。通読して思うのは長きにわたり国家形成できなかったウクライナ人民の独立への悲願である。古くはロシア帝国時代、少し前のソ連時代、1991年独立後の時代。それぞれ近隣大国に従属させられ戦火にあうが、どこかの国に従属・援助されると必ず独立・自由を削がれる。ある時期大国に従属して「自治共和国」を作ると間もなく併合される。
今回の戦争で米・露の代理戦争という意見もあるが、ウクライナ人民はNATOから武器は受けても軍隊の直接介入を要請しない。そうすれば一時期ロシア軍を撃退できても、その後はNATO軍の傀儡国家となることは必定だからだ。ウクライナ人民の独立精神を讃えたい。われらは全世界の反戦勢力と連帯し、ロシア軍の撤退と、軍事的介入を狙う日本の戦争加担と闘う。(下)では、2018年刊『プーチンの戦争』を扱う。(つづく)(岸本耕志)
6面
寄稿
イオン幹線便 トラックドライバーの労災認定裁判
労働者を17時間拘束
名古屋高裁4月21日
新認定基準後、初の裁判
昨年、脳心臓疾患の労災認定基準が改められ、ヨーロッパ並みの勤務間インターバルが11時間未満であることを業務起因性を認める要素として取り上げられたことが話題となっている。
本件は2013年12月に原告が脳梗塞を発症、行政が労災認定を棄却したため、その取り消しを求めた裁判である。原告の勤務間インターバルは裁判所が平均8時間22分と認定している。しかし、控訴審判決は、「11時間未満のインターバルの回数が6カ月で47日と少ない」ことを理由に業務起因性を否定した。この判断は出鱈目である。そもそも勤務間インターバルは出勤日より毎週1日少ない(週初め前と週終わり後には存在しないから)。さらに、本件では脳梗塞発症前6カ月に延べ3日に跨る連続勤務が16回ある。連続勤務は終業と始業が続いているのであるから、本来は勤務間インターバルがゼロ時間とされなければならない(労働局見解)が、この判決では勤務間インターバル11時間未満から除外された。
控訴審は内容の判断を行っていない
控訴審は1回審理― 原審棄却は20数%
本件の控訴審判決文は、10年に及ぶ長期の審理がおこなわれた裁判にも関わらず、高裁の判断を述べた部分はわずか3ページ弱、「控訴人は縷々主張して原審を非難するが、原審は全面的に是認できる」と無内容に断定。後は事件の概要や語句の訂正、通達や証拠の引用を添付して約30ページの判決書にして体裁を整えている。裁判長は検事上がりの土田昭彦裁判官。
名古屋高裁では控訴審が1回の期日で終了するケースがほとんどである。この日の判決も7件の判決が同時に読み上げられ、原審を破棄したのは離婚を求めた1件だけであった。日本の民事控訴は約20〜25%、原審が破棄される、上告ではその数は約2%となるといわれている。
日弁連のパンフレットによると、日本の裁判官数は他の先進国と比べると人口比で極端に少なく、都市の裁判官は常時、単独事件を約2百件、合議事件を約80件抱え、毎月約45件の新件が配置されているという。
情報化社会の今日、一つの裁判には膨大な証拠が提出される。本件でも原告は様々な角度から本件原告が脳心臓疾患の認定基準に合致するものであることを主張・立証した。1審判決もそうであるが、控訴審判決はそれらの観点について全く触れずにいる。実際問題、上記のような裁判官数と事件件数であるならば、裁判官は1審破棄の事件以外は、一つ一つの事件内容を検討していないであろうし、検討することもできないであろう。
数字に弱い裁判官
脳心臓疾患労災認定基準として、1カ月前に百時間の時間外労働、または、前6カ月に連続して80時間以上の時間外労働がある場合に業務起因性を認めていることは良く知られる。これは、専門検討会報告で長時間労働と脳心臓疾患の関連を唯一定量的に実証されているものとして「1日6時間未満の睡眠、5時間以下の睡眠が脳心臓疾患の発症率を上げる」とし、算定されたものである。その際、国民生活調査の結果として労働者の勤務と睡眠以外の生活時間は5時間であるという算定がある。即ち、1日4時間残業をすると拘束時間は1時間の法定休憩を入れて13時間、勤務インターバルが11時間、勤務インターバルが11時間だと5時間の生活時間を除外して睡眠時間が6時間というラインが引かれているのだ。
本件の原告は、裁判所が認めた平均拘束時間が1日17時間、先にも言及したようにインターバルは平均8時間22分(1日は24時間だからインターバルの平均は7時間でなければおかしいが、24時間以上の連続勤務が16回ある)。誰がどう考えても認定基準に合致しているのであるが、1審はこれを否定、控訴理由書では詳細にこの算数を説いて明らかにしたが、控訴審は無視した。裁判官は数字に弱いと断ぜざるを得ない。文系大学生の数学理解の後退が問題になっているが、裁判官もそうなのであろう。
4時間の残業代、労働者を17時間拘束できるのか!?
それでは労働者は 生きていけない!
勤務実態に即していえば、イオンの物流センターでは物量はその日に決まり、スーパーで売られている様々な荷物を混載、そのために積み込み作業はよく中断する。判決でも10トン車への積み込み時間は1〜3時間の幅があることは認めている。原告らドライバーは事前に荷積みの順番を知らされず、三重県四日市にあるイオン物流センターに到着してから荷積みの直前に呼び出されるのであるが、原告は4番車が多かったという記録であるという。
判決は、「順番が知らされていなかったとしても現場に到着してから自分で聞けば積み込み時間は予想できた」として、工業団地にある物流センターにおいてトラックで待機した時間を労働時間から除外した。1番車は15時積み込み開始であるから、理屈上でも4番車なら積み込み開始予想時間は18時から24時と6時間の幅がある。その上で、それは実際の時間の統計的処理とも合致していない。
裁判所は17時間の拘束時間のうち、74・5%、約12時間が労働時間だとする。拘束時間は会社の点呼を受けて始まり、業務が終わって会社の点呼を受けて終了している。即ち使用者の管理する時間である。そうすると裁判所が認めた法解釈に従えば、使用者は4時間の残業代を支払って、労働者を17時間拘束できるということになる。
これで労働者が生きていけるであろうか?
司法の劣化に怒りの声を叩きつけたい。
4月24日
愛知連帯ユニオン
投稿
プロ野球・ストライキ・戦争
一読者
プロ野球が百パーセント有観客で始まった。それにつけて思い出すのは2004年9月、労働組合・プロ野球選手会が前代未聞のストライキを打ったことである。悪質なオーナーたちの1リーグ化の企てを、2日間全ゲームを中止させて見事に粉砕した快挙であった。
球団の数を減らすことに反対した選手会にたいして、読売新聞のドン渡辺は「たかが選手風情が・・」と罵倒した。オリックスのオーナー宮内は「選手が会社の経営方針に口をはさむなんてトンデモナイ!」と息巻いた。
そのころ既に、労組がストを打つのは珍らしくなっていて、世間の注目を集めた。しかし涙ながらに支持を訴える古田選手会長(ヤクルト・スワローズ捕手、現解説者)の決断をファンも世論もこぞって応援した。
古田は高校や大学で前近代的な上下関係の強い野球部の中で育てられ、年俸に天と地ほどの格差がある選手たちをまとめた手腕を高く評価された。
選手会の松原事務局長は古田について、「彼は歴史を知っていたから、歴史を動かせたんです。彼はいろいろな問題を自分の言葉で話すために勉強する」と語った。
プロ野球の歴史には選手を人間扱いしない傍若無人な経営者たちの姿勢が刻まれている。
プロ野球の草創は、現在「沢村賞」に名をとどめているジャイアンツの若きエース沢村栄治を抜きにして語ることはできない。宿敵タイガースの主将で首位打者に輝いた松木謙治郎は後年、「我々は沢村を何とかして打ち崩そうと必死になって練習した。彼の存在があったからこそ、プロ野球の今日の隆盛がある」と語っている。
その沢村は2度徴兵された軍隊で、手榴弾の投擲競技に駆り出されて肩を壊し、得意の速球を投げられなくなってしまった。それでも練習に励んでいる彼にたいし、ジャイアンツは契約更改時に何も連絡して来なかった。つまりクビにしたのである。失意の沢村は3度目の徴兵で、ついに南の海の藻屑と消えた。
戦後、沢村の生誕の地である三重県伊勢市に、彼を顕彰する銅像が建立された。しかし除幕式にジャイアンツの関係者は1人も参加しなかった。
タイガースと覇を競い交互に優勝した後、ジャイアンツは第1期黄金時代を迎えた。そのときのエースは白系ロシア(正確にはウクライナ)人のビクトル・スタルヒンであった。しかしアジア太平洋戦争の激化に伴い外国人をスパイとみなす風潮が強まると、彼はクビにされてしまった。 「敵性外国人」を抱えていると非難されることを恐れた非情な仕打ちである。
戦後プロ野球の再開に際し、ジャイアンツはスタルヒンに復帰を呼びかけた。しかし彼は「ジャイアンツには絶対戻りたくない」と言って弱小球団を渡り歩き、通算302勝をあげた。後年、彼の故郷である北海道旭川の市営球場がリニューアルオープンしたとき、スタルヒン球場と命名され、記念の銅像が建てられた。そこにジャイアンツ関係者の姿はなかった。
プロ野球の歴史をよく知っている古田は、恐らく上記の事実を承知していただろう。このような球団が「球界の盟主」と呼ばれて大きな顔でのさばり、他球団の経営者がそれに追随しているプロ野球界の悪弊を断ち切ろうという思いが、古田の胸のなかに激しく燃えていたことは想像に難くない。
あらゆる闘いは敵の過去をよく知り尽くし、その横暴に耐えることを強いられてきた自らの弱さとそれを克服する方途を見出した者が勝利を得るのである。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という金言は、すべての社会運動にも当てはまる。
18年前、経営者にたいする積年の不信と怒りをバネに、圧倒的な世論の支持を得て勝利したプロ野球選手会のストを想起し、さまざまな社会運動がその教訓を継承発展させ、飛躍的な前進をかちとることを期待する。
7面
放射能汚染水排出に抗議行動
全世界にばらまく暴挙
昨年4月13日、政府は「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」を開き、福島第一原発事故後、貯まり続ける放射能汚染水の海洋投棄を決定した。2年後(2023年)をめどに実施するとした。
海洋投棄決定1周年にあたる「4月13日」を中心に全国20数カ所で8日から14日にかけて、〈海洋放出に反対する全国一斉行動〉がおこなわれた。東京では国会前、有楽町駅前、渋谷駅ハチ公広場などでおこなわれた。
大阪では4月13日午後3時から1時間、梅田のヨドバシカメラ前でスタンディングとマイクアピールをおこなった。主催は、若狭連帯行動ネットワークで35人が参加した。横断幕、旗、のぼりや、「汚染水を海に捨てないで」「海洋放出方針撤回」のプラカードをかかげ道ゆく人々に訴えた(写真)。
約束やぶり
政府と東電はいままで「関係者の理解なしにはALPS処理水のいかなる処分もおこなわない」と文書等で約束を交わしてきた。それを一方的に反故にし、「放出までに理解を得る」「(放出でなく)準備だから約束違反ではない」などと開き直っている。
政府と東電の計画では2023年から30年間以上にわたって、放射能汚染水を400倍以上に薄めて太平洋に投棄するという。
福島県漁連をはじめ、茨城県、宮城県、岩手県の各漁連、さらに全国漁連も反対を表明している。福島県の農協、森林組合、生協連も「遺憾」の共同声明を出した。さらに県内の6割を超える36自治体議会が海洋放出方針に対して「撤回、反対、懸念」を表明する意見書を可決している(昨年7月現在)。
政府や東電は「原発の通常運転でも廃水にトリチウムが含まれている(だから問題ない)」と強弁する。しかし、原発が日常的にトリチウムを含んだ排水を垂れ流すことで成り立っていること自体が大問題である。
そのうえで、通常運転の原発から出る汚染水と事故炉の汚染水は「同じ」ではない。
通常運転の原発から出るトリチウムなどを含む液体廃棄物は、福島第一原発を例にとれば、1基あたりトリチウム0・3兆ベクレル/年で、温排水に溶け込んだ濃度は、0・20ベクレル/リットル。福島第一原発から海洋投棄が狙われている汚染水は平均62・4万ベクレル/リットルを4百倍以上に薄め、1500ベクレル/リットル未満にして最大22兆ベクレル/年を投棄する。これを30年から40年にわたって続けるという計画だ。通常運転時の排水とは量も濃度も桁違いである。
さらに福島事故炉から出る汚染水は、ALPSで除去できなかったトリチウム以外の核種も含まれている。トリチウムだけではないのだ。
海は日本だけのものではない。全世界につながっている。放射能を全世界にばらまく暴挙を認めてはならない。
タンクを増設せよ
もうタンクを増設する場所がないから海に投棄するしかないというが、それはウソ。増設する場所はある。海に投棄する差し迫った理由など存在しない。海洋投棄ありきのプロパガンダ、放射能安全神話を打ち破ろう。
福島原発事故から11年
4・16さよなら原発首都圏集会
亀戸中央公園に2300人が集まりデモをした
新たな脱原発運動 滋賀・湖東
昨年10月、びわ湖の東側、いわゆる湖東エリアに新たな脱原発運動が立ち上がった。関西電力の老朽原発=美浜3号機が22年秋にも再稼働を強行するという動きがあるなかで、美浜3号機から直線距離で約60キロメートル南にある滋賀県近江八幡市の市民が声を上げた。毎月1回JR近江八幡駅北口で集会を開き、その後、市役所前までデモ行進している。
4月9日、第7回目のデモがあるというので参加した。午後2時、JR近江八幡駅北口に20人ほどが集まり、共同代表があいさつ。老朽原発うごかすな! 実行委員会、関生支部、などが発言。
集会後、汗ばむポカポカ陽気のなかを市役所前までデモ行進した。
台湾で国民投票
第四原発建設再開を否決
原発建設をめぐって国民投票
昨年12月18日、台湾で第四原子力発電所の建設再開を求める「公民投票」(国民投票)がおこなわれた。この間、原発推進勢力が第四原発を動かす目的で運動を推進してきたのだ。しかし、民意によって否決される結果となった。第四原発稼働の可能性は、ほぼなくなった。住民の力によって原発をなくすことに台湾は成功したのだ。日本の反原発運動でも、この闘いを教訓化することは重要だ。
日本の住民投票は、憲法改正や市町村合併、地方議会のリコールなどを除いて、法的拘束力をもたない。これにたいして、台湾の「公民投票」では投票結果が出てから2年間、行政は民意に反する動きをしてはいけないことになっている。台湾では民意が政策に反映されるようなシステムになっている。これは1987年以降の台湾民主化運動のなかで闘いとったものだ。特に、2014年3月に、学生が立法院(国会)を占拠して闘った。この「ひまわり学生運動」がおおきな成果をもたらしている。
第四原発をめぐる闘い
台湾には、第一原発から第三原発まで、それぞれ2基、計6基の原発が存在する。現在の蔡英文・民進党政権は反原発を政治方針としており、原発の稼働年数を40年に制限している。3基はすでに廃炉になっており、残り3基も2025年までに運転を終了する。日本では、自民党政権が例外規定を悪用して40年超え運転を推進しているありさまだ。台湾のように、権力者の横暴を許さない民衆の闘いが必要だ。
第四原発は、首都・台北市から東に40キロメートルの地点、新北市貢寮区に建設されている。1980年に2基の設置計画が出され、1999年から建設が始まった。2010年末に、ほぼ完成した。当時、国民党政権は11年に運転開始を予定していたが、福島第一原発事故がおきたために稼働できなくなってしまった。日本の原発メーカー(原発は日立と東芝、発電機は三菱重工)が、第四原発に電気出力135万キロワット改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を供給している。日本と台湾の間に原子力協定が結ばれていないため、日本のメーカーがゼネラルエレクトリック(GE)社から「下請け」している形になっているが、GE社は主契約をしているにすぎない。台湾の住民はこれを「(日本による)第2の台湾侵略」と呼んでいる。日本にとっては唯一の原発輸出が破産することになる。日本の原子力産業にとってもダメージが大きい。
第四原発の建設をめぐって、推進派と反対派の激しい攻防があった。1990年代、台湾の反原発運動のなかで、「非核家園」(原発のない郷土)という言葉がつくられた。また、このなかで原発建設に反対する住民団体が台湾ではじめて結成された。
福島第一原発事故後の2013〜14年、第四原発計画に反対する運動が「我是人、我反核」行動として大きくもりあがった。13年3月9日には、台湾全土で22万人が行動にたちあがった。台湾の人口は2300万人であり、この数字は日本にあてはめると120〜130万人が立ちあがったことになる。
14年4月、ついに国民党の馬政権は第四原発の建設を凍結した。さらに17年には、蔡英文政権が「25年までに脱原発を実現」することを法律で決めた。反原発運動がこれを切りひらいたのだ。
原発推進派の動き
その後、原発推進派のまき戻しがあった。2018年11月に国民投票がおこなわれ、「2025年原発廃止」法が否決されてしまったのだ。この年8月におきた火力発電所の事故で、大規模な停電がおきたことが投票におおきく影響した。
原発推進派は環境問題に力をいれ、「以核養緑」(原子力発電で空気をきれいにし、緑を守ろう)をスローガンに運動をすすめてきた。今回の国民投票はこの流れのなかで原発推進派が計画した。日本でも、「原発は発電時に二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー」というキャンペーンがおこなわれている。台湾でも再生可能エネルギーをテコにして、原発を推進しようとしている。
2025年脱原発、この実現にむかって
こうして、第四原発をめぐる闘いは、ひとまず幕をおろした。「公民投票」の法的拘束力が2年間なので、原発推進派は第四原発の稼働を求める動きをしてくるだろう。今回の勝利で闘いの手を緩めることなく、さらに反原発の運動を強めていく事が重要だ。(津田保夫)
8面
書評
鎌倉孝夫著
『資本論エッセンス T・U』(下)
松崎五郎
(2) 第V巻15章「恐慌論」
恐慌論はいま見たように、第U巻第21章の拡大再生産論でけりがついています。私が第V巻第15章で確認したかったのは、恐慌過程を論理的に描写した3節は(貨幣)資本の過多から始まっていますが、マルクスはなぜ過多になるかは「後段で説明する」と書いているのですが、宇野は「どこにも書いてないではないか」と疑問を呈していたわけです。私は、「後段」は第30章〜第32章の「現実資本と貨幣資本」を指していると明らかにしたのですが、その点で鎌倉氏がどう述べているかです。
鎌倉本から抜粋します。UのP141
C 「この『資本過多』は、第5篇後半部分(特に第30章〜第32章の『貨幣資本と現実資本』)で説明される問題で、ここでは多くの小資本の『冒険』―投機、信用思惑、株式思惑等―に関連して、指摘されている。」
なんと、私の指摘と同じことを述べているではありませんか。宇野派の重鎮が、宇野の
理解は間違っていたと認めたのですから、実に画期的なことです。
だが、鎌倉氏の要約Cの「ここでは」以降は、第15章の抜粋としてはその通りですが、「連関して」と述べているので、論理的には第30章〜第32章で説明せねばなりません。
第30章〜第32章のテーマは、資本過多つまり追加の貨幣資本がなぜできるのかです。預金に利子が支払われるようになり、すぐに必要としないお金が企業=資本も個人も銀行に預けるようになり、特に今日賃金が銀行振り込みになってより大きくなっています。
もう一つが、流通手段としての必要貨幣量は、総取引額を同一貨幣が何回取引に使われるかで割った量ですが、手形取引等で貨幣の使用が節約されることや、同一貨幣の取引回数(貨幣の回転数)を上げることで、好況時・平時には流通手段としての必要量が減り、追加の貨幣資本が生み出され増大します。
その上で今日では、政府が国債発行で創った膨大なお金が景気対策と称して投入されています。公共事業などで一度使われた後は、請け負った業者をとおして銀行に預けられ、膨大な貨幣資本が形成されていきます。その膨大な貨幣資本は、利子生み資本なのですから、なにも生産していないのに当然利子・配当を要求します。それが今日の格差を激化させているのです。
労賃高騰による恐慌論は間違い
マルクスは 第15章3節で「資本過多」に続いて「資本の絶対的過剰」を仮定の話として述べています。ここは、宇野派が労賃高騰説の根拠にしているところです。当然鎌倉氏も抜粋しているので、鎌倉本からコピペします。UのP141〜
D 「マルクスは、『資本制生産を目的とする追加資本がゼロになれば、そこには資本の絶対的な過剰生産があることになろう』とし『追加資本ゼロ』はそれはどうして生じるかを説明する。『労働人口に比べて資本が増大しすぎて、この人口が供給する絶対的労働時間も延長できないし、相対的剰余労働時間も拡張できないようになれば、つまり増大した資本が、増大する前と同じかまたはそれより少ない剰余価値しか生産しえなくなれば、そこには資本の過剰生産が生じるわけであろう』。この場合利潤率はひどく低下するが、これは生産力の発展によってではなく、賃金の上昇による剰余価値率の低下によって生じる、と。」
第1に、マルクスは「仮定の話」として展開しているのであって、論理的あるいは現実的話として述べているのではありません。だから宇野派の労賃高騰による恐慌論は仮定の話を現実だとした無理があります。
第2に、『資本論』第T巻と第U巻は価値の運動として展開しており、本質論であり、第V巻は「それが資本主義でどう表れるか」を明らかにしたもので、現象論または現実論です。だから、労賃高騰による恐慌論は、現象・現実(第V巻)で本質(第U巻)を否定するもので、間違っています。
第3に、マルクスの資本主義の人口法則は「資本は相対的過剰人口(失業者)を生み出す」ですが、労賃高騰説はつきつめればそれを否定することになると思います。
これまでは第U巻第21章が理解できなかったから仕方がなかったかもしれませんが、鎌倉氏は、今回少なくともT・Uの部門間矛盾論をその核心で認識したのだから、第U巻第21章の論理(本質)で第V巻第15章(現象・現実)を検討してほしかったと思います。(おわり)
食と農業の今 4・10藤原辰史講演会
大規模農業方式でなく
4月10日、大阪市内で「食と農業の今 〜食料自給率37%から見えること」集会がひらかれ60人が参加した(写真)。主催は、三里塚関西実行委員会。
安藤眞一さんの主催者あいさつの後、三里塚芝山連合空港反対同盟の萩原富夫さん、部落解放同盟全国連合会、若狭の原発を考える会・木原壯林さんがあいさつ。全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部からメッセージがあった。
反対同盟の萩原さんは、「3・27芝山現地闘争を闘った。成田空港の南側にある山武郡芝山町では第3滑走路が作られようとしている。成田空港会社は気候変動対策として2050年排出CO2が半分になるようにすると言いながら、一方で空港機能強化=発着回数は2倍にするという。どれだけデタラメか。空港敷地内で農地取り上げに抗して耕作している市東孝雄さんの闘いの正義性・確信を強めるためにも空港機能強化を止めなきゃいけない。国や成田空港は旧来の考え方。経済成長のための観光立国をいまだに進めようとしている。この政策を撤回させなくては。今後、国を相手に気候変動阻止のためには機能強化を止めなきゃという論で署名運動をやります」と語った。
藤原辰史さん講演
食の歴史に詳しい京都大学准教授の藤原辰史さんが「食農問題の基本的考察」と題して講演した。
冒頭、「私は体を張って運動している人間ではないが、ことばの力を信じていろいろなところへ発信しつづける。人間と生物、人間と土壌、人間と空気・水とか、自然環境と人間関係から歴史を見ないと20世紀の歴史はよくわからないという立場からものを考える」として、ナチスの農業政策やウクライナの飢餓、アメリカの農業政策などにふれた。
なぜいま食と農が喫緊の課題なのかについて。国内の問題として農業は大事だけど一方で地球の問題。世界の農業は地球に非常に負荷のある農業をパッケージとして欧米が作ってきた。とくに戦後、グリーン革命と称して、地球破壊型農業が世界を席巻する。4つのパッケージ(品種改良、農薬、化学肥料、機械化)によって、農民をそこから抜け出せない状態に。ずっと同じ欧米の化学肥料を使わなければいけない。このような農業は、環境破壊が激しく、膨大な生水を必要とするからダムを作り、地域の生態系が破壊される(インドのパンジャブ地方とか)。化学肥料も農薬もトラクターもすべて欧米の工業国・大企業と結びついている。
世界の食糧問題では大規模農業でメジャー(世界でも10社くらい)が生産物を支配する。種子も大種子会社のものしか使えない。ウクライナ戦争で食料が値上がりし不足気味になるとメジャーは先進国へ流す。低所得国はそれで飢餓に。
世界的には、本来食料は足りているのに、一極集中が逆に貧困問題をおこしてしまった。大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムに先進国の私たちは入り込んでいる。
日本では
日本的問題としては、カロリーベースの自給率が37%、生産額ベースでは66%という先進経済国では珍しい(低水準)。農業漁業林業の就業人口が壊滅的に減少し、農村の荒廃が激しい。
子どもの貧困も食と農の問題に近い。新自由主義のもと、福祉が崩壊していく中で子ども食堂が増えている。他方でコミュニティの拠点として自治の試みとして子ども食堂が生まれている。
2015年国連の「家族農業年」がいわれ、大規模農業に対して小規模農業を日本が世界に先駆けていたのに、そうではなくなった。
新自由主義の人はなんというか。小さな農村はつぶれても仕方がない。総務省は農村を取捨選択し、農村の地域開発をやっていこうとしたが、あくまで都市中心の農村開発で終わった。補助金、道路、ゴルフ場で都市が吸収する形でしか農村開発できなかった。原発依存の農村・地方開発も同じ構図だ。
戦前日本において「農本主義」が軍国主義と植民地主義を支えたのは確かだが、村落の自律的システムがどれだけ軍国主義を支えたかは疑問だ。
いま、若い人が農村に入ってきている。V字回復の例はある。単なるマネタリーベースの分析でなく、食べること=人間独自の文化。個食でなくオープンな共食が人間関係をつくりあげる意義がある。
小さな所から変える。小さな流通をつくる(経済成長主義の観点からでなく)。
農福連携
質疑応答では、農福(農業・福祉)連携がホットなテーマになっている。『イタリアの農業と福祉の連携』などの本を紹介し、経済中心主義でやっていけない人が、「ぶどうを摘み取る」仕事で生き生きできる。農業の担い手を作ることと「障害者」の働く場をつくれないかと試行が続いていると述べた。