未来・第331号


            未来第331号目次(2021年12月2日発行)

 1面  総選挙総括深め岸田政権と対決を
     反維新の共同行動・共同戦線作ろう

     MOX燃料搬入に抗議
     老朽原発このまま廃炉 12・5うつぼ公園へ

 2面  総選挙総括深め岸田政権と対決を
     反維新の共同行動・共同戦線作ろう(続き)

 3面  文通費問題で吉村にブーメラン
     強まる維新のれいわ攻撃      

     東京8区からの報告 10月総選挙の結果と展望(上)
     多数独裁型=改憲をめざす岸田政権
     境野幸宏     

     大阪9区
     維新のデマやぶる野党共闘を
     ―奮闘した大椿ゆうこさん

 4面  沖縄レポート(11月6日〜10日)
     6日 ブルーアクションに160人

     生活保護基準引き下げ違憲訴訟
     弁護士が4地裁判決批判

     ヘイト勢力がしゅん動
     相模原市で90人が抗議行動
     11月14日

     〈寄稿〉不都合なことは聞かないで口を塞ぐように(下)
     (脳性まひ者の生活と健康を考える会)古井正代

 5面  大阪支店に抗議行動 11月16日
     サンケン電気は勧告に応じろ

     関西合同労組が定期大会 11月14日
     闘いへの決意を固める

     検証シンポジウム 11月12日 東京
     「ジャーナリズムの視点から見た関西生コン事件」

 6面  寄稿
     「大深度地下」工事で陥没事故(上)
     トンネルは掘ってみないと分からない!?
     西川雄二

 7面  論考
     パレスチナ解放闘争への接近(下)
     帝国主義とパレスチナ人民
     鳥居強右

     老朽原発このまま廃炉へ 大津集会
     美浜3号機差し止めで井戸謙一さん講演

 8面  『左翼エス・エル戦闘史』読後感想あるいは「ロシア革命正史」(1)
     高見元博

     本の紹介
     『奈良発 ふまじめ教師の市民教育運動』
     田村隆幸・著(かもがわ出版)

     冬期特別カンパのお願い

                 

総選挙総括深め岸田政権と対決を
反維新の共同行動・共同戦線作ろう

立憲野党勢力の敗北となった総選挙から1カ月。岸田政権は「新しい資本主義」を掲げ、維新は改憲国民投票に言及した。左派勢力は総括を深め、新自由主義の継続と格差・貧困、改憲政治を許さない新たな運動を構築することが求められている。再生のため、非力ながら辛口の総選挙総括を提起する。論議の深化と共闘の前進の一助たらんことをのぞみたい。

(1)立憲民主党の根本的変革を求める

10・31総選挙の結果について、野党各党・政治団体・雑誌・新聞・運動家などが様々な総括を出している。最大野党である立憲民主党は敗北の責任をとって枝野幸男代表が辞任し、代表選が4氏で争われている。マスコミや連合は「野党共闘」に敗北の原因を押し付けようとし、4氏とも否定しているが、論戦内容はその敗北の根底的総括とはほど遠いと言わざるをえない。11月21日の朝日新聞によれば党員参加の討論会で「ボトムアップ型の政党」をめぐる論議がおこなわれたというが、何を今さらである。本紙330号で指摘のとおり、この4年ただの一度も「ボトムアップの政治」はなされなかった。党員やサポーターの意見や権利が保障されない政党が、総選挙で人々の支持を集めることなどできるはずがない。原発では18年のタウンミーティングで「ゼロ」法案をめぐり熱気があったというが、総選挙の隠された最大の争点=地球温暖化とエネルギー問題=原発をどうするかを争点にできなかった。この2つに典型的な後退の結果、総選挙に「競り負けた」のだ。代表選4氏は、これへの自己総括抜きに、政策的多様性を語ろうと説得力を持たないだろう。

岸田政権の改憲発動の動きに対し、ただちに国会前で行動(11月19日)
 

 また10万人党員というが、筆者周辺には、議員以外の党員はほぼ皆無である。19年統一地方選や今次総選挙でも選挙中枢を立憲以外の人が担った所は多い。20年には「代表選の投票権」と言い、労働組合員OBら(党費立て替え)とパートナーの一部が入党した。10万の大半は労組関係者と議員後援会員で、広く市民大衆に開かれた党ではないのだ。この実態を見ずに150人の国会議員の塊りから右派すりよりの政権交代を夢想し沈没したのが辻元清美氏であった。
 立憲民主党の病は深い。地域に根ざし頑張る自治体議員もいるが、県議クラスになると「国会議員になりたい人」が多い。兵庫県下では有力な女性候補に対し、自己の衆議院議員の芽を残すためあらゆる手だてで妨害した県連幹部の県議がいたことは選挙通なら誰でも知っている。この実情に枝野代表が手を入れることは無かった。この種の膿を出さないかぎり、立憲民主党の未来はないだろう。
 日本共産党は野党共闘を「一定の効果」としているが、これまた志位―小池執行部の責任逃れの言辞で、中間幹部層は中央総括をそのまま流すだろうが、真面目な党員・支持者は納得しない。かつて09年都議選時には自共対決時代を煽り、明確な総括もないまま15年以降は野党共闘になり、ここ数年は「本気の共闘」としたが、唯一前衛主義は変わらず、日常的な地域共闘への下支えの努力は見えない。
7月の兵庫県知事選では自民党は維新を推薦し自民党県議団が分裂したが、4月段階で他野党に先駆け「県政野党は自分だけ」と、「当選するとは思っていない」(候補者本人の弁)独自候補を出し、自民・維新VS自民県議多数派+全野党の対決構図をいち早く破壊した。この4年内でも西宮・尼崎市長選に独自候補を出し惨敗。宝塚市長選のみ全野党共闘で勝利したが、直後の(2面へ続く)

MOX燃料搬入に抗議
老朽原発このまま廃炉 12・5うつぼ公園へ

高浜原発に接近するMOX運搬船(右上/11月17日、福井県高浜町)

9月にフランス・シェルブールを出港したMOX燃料を積んだ輸送船が、11月17日早朝、高浜原発に到着した。シェルブール出港に当たって、環境保護団体グリーンピースなどが激しい闘いをした。その後2カ月をかけて秘密裏に運航されてきたものである。
 11月17日にも高浜到着との報をうけて、老朽原発うごかすな! 実行委員会が抗議行動をよびかけた。前夜から関西一円、福井などから人々が結集し、午前6時過ぎには、夜の闇が白み始めた高浜原発対岸の音海岸壁に30人が集まった。
 ただちに、旗やのぼり、「MOX燃料搬入をゆるすな」「プルサーマル運転反対」の巨大なバナーが用意され、MOX輸送船を迎え撃つ体制が準備され、集会が始まった。海上には海上保安庁の巡視船や警備艇が多数配置されている。
 7時半、輸送船が内浦湾に入ってきた。巡視船を従えて、ゆっくり高浜原発岸壁に進行していく。声を限りに、反対の声を上げ続けた。反対の声に包まれながら、8時ごろ高浜原発岸壁に接岸した。
 その後、抗議団は音海展望所に移動。同所から高浜原発北ゲートに向かってデモ行進。北ゲート前で抗議集会をおこなった。福井や関西から結集した人々が関電に対する怒りを表明した。小浜市の住職・中嶌哲演さん、県民会議事務局次長で「美浜3号機運転差止仮処分」申立人の石地優さん、福島から兵庫に避難されている菅野みずえさんなどが発言。 
 木原壯林さんは、プルサーマル運転の危険性について、わかりやすく説明した上で、「自分は、大学を出たあと原研に所属し、そこでプルトニウムの研究をしてきた。自慢するのではないが自分の研究は世界的にも評価されている。今の岸田政権の核政策はでたらめ極まりない。原子力推進勢力の言葉にのっかり、うそとでたらめで原発推進を図っているが許してはならない」と述べ、11・23〜27リレーデモと「12・5老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」の大成功を勝ち取り、来年には、万を超える大集会を実現しようと檄を発した。最後に全体でシュプレヒコールをあげて行動を締めくくった。
 12月5日、大阪・うつぼ公園を埋め尽くす大結集を勝ち取ろう。御堂筋デモで、行きかう人々に、「老朽原発このまま廃炉」「美浜3号うごかすな」を大きな声で訴えよう。

老朽原発このまま廃炉! 大集会inおおさか
とき:12月5日(日) 正午・オープニングライブ 午後1時・集会
ところ:うつぼ公園(大阪市西区)
主催:老朽原発うごかすな! 実行委員会



2面

総選挙総括深め岸田政権と対決を
反維新の共同行動・共同戦線作ろう(続き)

維新の攻撃をはねかえし、文書通信費問題で国会報告をおこなう大石あきこ議員。聴衆は200人を超え、駅構内にもひろがった(11月20日、阪急三国駅東口)

(1面からの続き)
県議補欠選挙(2人欠員)では3人選挙区で現職共産県議がいるのに、立候補させ立憲・共産の共倒れを招いた。あとは野党共闘の名を使っての組織拡大だ。これでは政権を倒す闘いなど出来るはずがない。それもあり毎回選挙で10%の得票減をくり返している。自民が恐れる組織力を持つ政党なのだから、裏方に回り大衆運動を懸命に支え、その蓄積に応じて信頼構築は進むことを自覚すべきだと思う(共産党・立憲民主党への綱領的・路線的批判はここではしない)。

(2)左派・リベラルの再生をめざそう

社会民主党の総括は沖縄で1議席をとった事の評価はあっても、なぜ昨年立憲合流派と分裂し、その上でどのような潮流・共同闘争をめざすのかの具体的道筋は見えず、大会での照屋寛徳氏の苦言に応えようとしているとは思えない。近隣の社民党市議を応援してきた者たちへの説明も不十分で、9・20PLP会館集会が今後の起点とされると嘆息しかない。
また「比例は社民」として「比例を伸ばした」と機関紙上で総括する新社会党の今後の展望も見えづらい。兵庫では県知事選(当初)や神戸市長選などで共産党に追随し、総選挙では一部は立憲を押しながら「比例は社民」と言う。また「れいわ」への冷たい対応の説明もない。
全国では自公政治、関西ではさらに維新政治に対して、新自由主義反対、格差・貧困反対、反原発・沖縄基地反対の共同戦線を重層的に構築し、選挙戦では可能な限りの共闘・相互支援を組み、同じ選挙区で競合する時は互いにリスペクトしながら(比例復活)当選を目指すという事ではないか。
れいわ新選組は19年都知事選出馬を批判され、20年秋の都構想反対運動では山本太郎代表が大阪で長く活動し、さらに今次東京8区問題では撤回・謝罪・共闘で一定の信頼を取りもどし、当初1の予測をくつがえし3議席210万票を獲得した。ここには左派・リベラルの後退の中でも競合・共闘していく在り方があると思う。
これらの政党には、あらためて、反自公・反維新の共同闘争の土壌を、小さな声を無視せず、広く・深く掘り起こしていくことを望みたい。

9月20日、大阪PLP会館で「新たな政治勢力の結集をめざす」集会があった。元々、佐高信さんらが呼びかけた「非正規雇用をなくす共同テーブル」を、政治戦線に援用したもので、22年参議院選挙を前に「日米安保容認の立憲民主党とは違う新たな政治勢力を、社民・新社・みどりを軸に目指す」(服部良一社民党幹事長の訴え)であった。非正規雇用や格差・貧困をなくす広範な統一戦線には異論はないが、衆議院選を前にあえて「れいわ」を協議対象から外し「新たな政治勢力」をめざすことへの疑問を筆者は発言した。衆議院選結果は比例近畿でれいわが30万弱で1議席確保、社民党は10万票でしかなく、本紙上でれいわと社民の候補を推し、れいわも含む野党共闘を望む筆者らの危惧は悪い方に当たってしまった。
社会民主党の総括は沖縄で1議席をとった事の評価はあっても、なぜ昨年立憲合流派と分裂し、その上でどのような潮流・共同闘争をめざすのかの具体的道筋は見えず、大会での照屋寛徳氏の苦言に応えようとしているとは思えない。近隣の社民党市議を応援してきた者たちへの説明も不十分で、9・20PLP会館集会が今後の起点とされると嘆息しかない。
また「比例は社民」として「比例を伸ばした」と機関紙上で総括する新社会党の今後の展望も見えづらい。兵庫では県知事選(当初)や神戸市長選などで共産党に追随し、総選挙では一部は立憲を押しながら「比例は社民」と言う。また「れいわ」への冷たい対応の説明もない。
全国では自公政治、関西ではさらに維新政治に対して、新自由主義反対、格差・貧困反対、反原発・沖縄基地反対の共同戦線を重層的に構築し、選挙戦では可能な限りの共闘・相互支援を組み、同じ選挙区で競合する時は互いにリスペクトしながら(比例復活)当選を目指すという事ではないか。
れいわ新選組は19年都知事選出馬を批判され、20年秋の都構想反対運動では山本太郎代表が大阪で長く活動し、さらに今次東京8区問題では撤回・謝罪・共闘で一定の信頼を取りもどし、当初1の予測をくつがえし3議席210万票を獲得した。ここには左派・リベラルの後退の中でも競合・共闘していく在り方があると思う。
これらの政党には、あらためて、反自公・反維新の共同闘争の土壌を、小さな声を無視せず、広く・深く掘り起こしていくことを望みたい。

(3)維新と闘う共同戦線を

今次総選挙結果に対し、新左翼各派の機関紙や活動家の見解が表明されている。それは自公勝利、立憲敗北、共産後退、維新躍進への言及であるが、その大半は選挙戦に身を置かない客観的評論が多いと思わざるをえない。われわれはある種少数派で、小選挙区では勝利し得ない所からスタートする。候補者も選対中枢も常に崖っぷちで、夜も寝られない日が続く。ギリギリの地点で1日1日を闘い、総括も主観的要素を多分に含むが、それでいいと思う。
この点で白川真澄氏や新開純也氏らの見解は、多分に正鵠を射ている所は多いが、しかし9・20PLP会館的場所から、どう反撃し勝利していくのかの立論がされてないかと思う。両氏とも維新への記述が少ないのも気になる。今や安倍―高市的潮流と岸田的潮流と維新・松井的潮流が改憲や経済再生(分配)、対中国姿勢・憲法改悪をめぐり右からのヘゲモニー争いを始めている中、維新打倒戦略を打ち立てるのは喫緊の課題だと思う。
その上で総選挙総括を「維新躍進への反省」と題する『未来への協働』の請戸耕市論文は最悪の総括と言わねばならない。確かに維新は安倍政治の継続に対する自民批判票を、対決点を示さない立憲から「改革」を看板にかすめ取った。大阪では全勝、兵庫も8人が比例復活、全国的にも浸透した。しかし石原慎太郎と組んだ時の最盛時54議席、1200万票よりも少ない。都構想に敗北し橋下は引退し、一度は衰退しながらも自治体議員・首長を増やし、今回全国制覇へのスタートを築いたことを松井は冷静に受け止め、次の攻勢を国民民主党と連携し踏み出そうとしている。今あらためて大阪・兵庫の政治勢力は維新との攻防を正面課題にし、その強さを見すえ弱さを暴き、反維新共同行動を強めなくてはならない。
だがこの10数年維新との選挙戦を一度も闘ったことのない請戸耕市氏は維新をどう倒すのかから論を立てるのではなく、維新が「人々の不安・焦燥を組織した」とする敗北感丸出しの総括を開陳する。そこでは「結果に驚いている」「がっくりきた」「私たちの方が戦後的思考で停止していた」とまで言う。大阪で13の首長を押さえた維新が伸張するのはある種は想定できたが、大阪の全勝と兵庫の全員比例復活との落差、そこにある左派・リベラルの「ていたらく」を論難せず、維新が人々を組織した原因を探るというのは敗北主義以外の何ものでもない。
維新の「強さ」は大阪府下の首長を取り市政運営・予算執行で利権網を構築し、選挙では維新市議を総動員し自民党以上のノルマを課しどぶ板選挙をやる。それと一体でマスコミや芸能人を使い翼賛キャンペーン・情報操作をする。これに勝つには論戦的勝利だけでなく、地域制圧戦を「ミュニシパリズム」的展望もかけて実践しながら、選挙戦に総決起することだ。小選挙区・首長選では小異を捨てて反維新統一戦線を形成する必要を、21年4月宝塚市長選勝利や7月兵庫県知事選敗北は示している。維新政治に打ち勝つ戦略・戦術・人物をどう作りだしていくかだ。
その上で維新との闘いは、文書通信費百万円での維新の立ち回りの裏で、実は吉村その人が大阪市長選に立候補する際、わざわざ10月1日に国会議員を辞め文通費百万円をせしめた確信犯であることを徹底弾劾し、「身を切る改革」は、資金移しかえの「維新焼け太り」であることを暴露しよう。さらに、@維新の新たな結集軸=万博・カジノ批判を強め、A吉村のコロナ対策失敗の事実をさらに刻印し、B「教育無償化」などの施策のペテンを暴き、C大阪・堺での首長の奪還を目指し、D兵庫の首長取り(22年3月西宮、11月尼崎)を阻止し、F22年7月参議院選での維新伸長を阻止することだ。
大阪府職員だった大石あきこさんは橋下知事に対する単身決起から維新との対決を始め、19年府議選敗北後は都構想反対を含め3年間地域をはいまわり、維新の「教育無償化」のペテンなどを具体的に暴き、今次衆議院選に勝利した。そして勝利後も文通費問題をはじめ、連日維新を相手に獅子奮迅の闘いをしている。請戸氏は敗北感丸出しの評論を書く時間があったら、大石さんの実践を少しでも見倣うべきではないか。

(4)新自由主義と対決し自公政権・維新政治を打倒しよう

今次総選挙の本質的争点は、新自由主義政治のもたらす格差・貧困の拡大と、中国敵視・憲法改悪を狙う反動政治の継続を許すかどうかだった。後者についていえば2015年戦争法反対闘争以降の闘いの継続だけでは政権交代に届かない事を示した。前者は、沈みゆく日本、消費税は上がり賃金は下がる生活苦からの脱出の道を左派・リベラルは示せなかった。この敗北をそそぐ道は、選挙時だけでなく日常的な新自由主義政治に対する反撃を、社会的矛盾の噴出する全分野で闘いを構築しつつ、また粘り強い統一行動・統一戦線の構築の中から、社会変革を求める広範な人々を輩出していくことである。
政党や政治団体、労働組合、市民団体の中に、小さな声を押しつぶさない広範な民主主義を取り戻し、高市=安倍的国家観の極右政治や、「新しい資本主義」(そんなものはあるはずがない)の岸田政治や、松井維新政治に代わる、人間性豊かな社会運動・政治運動の姿を示さなくてはならない。それ抜きに政治的スローガン・政策(らしきもの)で政権交代や政治変革は不可能だ。反原発や沖縄の闘いへの連帯を担い、差別・排外主義との闘いを自己の課題とできるような重層的な社会運動体の形成の上に、初めて選挙戦もあるのだ。
選挙戦では、22年7月の参議院選では全国比例では戦闘的に競合し、1人区では統一候補、3人区以上の選挙区では共闘・競合を進めることだ。特に大阪選挙区で、前回ゼロの敗北をのりこえ、単なる野党共闘・候補者一本化ではない全野党・全社会運動の力で1議席取れるかにすべてがかかっている。これに敗れる時、格差貧困はますます広がり、憲法改悪の衝動は決定的に強まり、差別・排外主義は暴力的な猛威をふるうであろう。
あらゆる市民運動、労働運動、社会運動は独自の領域を深く掘り下げ、21年五輪闘争のように的確な反撃をおこない、自己の課題を政治的課題とリンクさせ、自公政権・維新政治を打倒しないと、運動そのものが抹殺されることを肝に銘じよう。新自由主義を終わらせる運動を自覚的・系統的に闘うことが今次総選挙の実践的総括ではないかと考える。粘り強く共に闘っていこう。
岸本耕志

3面

文通費問題で吉村にブーメラン
強まる維新のれいわ攻撃

地元大阪市淀川区で国会報告をおこなう大石あきこ議員(11月20日)

れいわ新選組から立候補した大石あきこさんは11月1日の午前4時すぎ、比例区で全国最後の議席を3千票の差をつけて維新を蹴落として当選した。これに対して維新は橋下徹や吉村洋文大阪府知事を先頭に大石攻撃に出てきた。その材料に使ったのが文書通信交通滞在費(文通費)だ。
橋下は11月14日のフジテレビ系のテレビ番組で初当選した新人議員や元職議員に対して「わずか数時間の在職期間しかないにもかかわらず、10月分として1人につきキャッシュでまるまる100万円が出ている」「コロナ禍で困っている世帯がいっぱいあって10万円給付で大激論しているのに、夜8時に当選してからわずか数時間で百万円の給付を受け取っている国会議員はおかしいですよ」と批判した。
大石あきこ議員は翌11月15日、2015年に吉村知事が大阪市長選挙立候補のため衆議院議員を辞職し、1日だけの在職で10月分の文通費を受け取ったのかを衆議院の担当部署に問い合わせたら「100万円受け取った」「返金していない」との回答を得た。
吉村の「1日で百万円全額丸取りはおかしい」の批判はブーメランとなって吉村自身に突き刺さったのだ。吉村は言葉を失い「(6年前のことだが)全額寄付する。そうしないとけじめがつかない」と言い訳に終始した。

議員活動費が脆弱な日本

山本太郎れいわ代表は11月15日に横浜市の集会で、文通費に関する質問に、概略以下のように答えている。
アメリカの連邦議会の議員スタッフは下院で常勤のスタッフ(秘書)は18人まで、非常勤は4人まで国庫から賃金が支出される。その額は年間1億円を超える。上院はスタッフの数に上限はなく、年間2億数千万円から3億数千万円相当の賃金が国庫から支出される。日本とは雲泥の差だ。本当に政策立案や運動を成功させようとすれば、最低でもこれくらいのスタッフが必要なのだ。山本代表は「選んでくれた人たちの思いに応える仕事をすればよい」という考え方である。「1日でもらえるのはおかしい」という橋下の批判は民衆の思いを否定しているのだ。さらに、山本代表は、日割りも議論すればよいが、本筋はその透明性だと指摘。
『日刊ゲンダイ』は、「(維新の)馬場伸幸幹事長の7月分の文通費の使途を見ると、自身が支部長を務める『日本維新の会大阪府第17選挙区支部』に72万4543円を寄付している。つまり、言い方を変えれば財布の中身を『移し替えた』だけ。ある意味、流用だ」と批判する(11月16日付)。
私たちは2度にわたる都構想の住民投票で勝利し、維新を追い詰めてきた。今回も維新を蹴落として維新批判の先頭に立つ大石あきこさんを国会に送り込むことができた。私たちが先頭に立ち維新批判の論陣を張り、運動を作っていこう。(三船二郎)

東京8区からの報告 10月総選挙の結果と展望(上)
多数独裁型=改憲をめざす岸田政権
境野幸宏

@465人の衆議院議員総数のうち過半数233人を超えた自公293人(自民マイナス15議席、公明プラス3議席)(63%)という結果を得て衆院の議席が決まった。立憲が14議席を減らした96議席になって、マスコミでは与野党第1党が互いに議席を減らした「勝者なき結果」という評が大半だが、果たしてそうか。
今度の総選挙で47議席しかなかった女性議員が45議席(9・7%)に減らしたことの問題は稿を改めることにして、41議席を取った維新(プラス30議席)と11議席を取った国民民主党(プラス3議席)に注目したい。そして案の上、この二党で第三極(戦後政治の中で一度としてうまくいってない)を形成し、自公の第一極、立憲・共産など4党の第二極に「対抗」するとし、11月4日には国民民主党は野党国対から離脱することを決めた。
A自民党岸田政権は、コロナ下での危機にこそ力を発揮しなければならない右派突出政権のうそと隠蔽でやり過ごすことができなかった安倍・菅政権の失速を得て誕生した。党内第4派閥として安倍・麻生を後ろ盾として誕生し、その党的基盤の脆弱さから宏池会という「保守本流」ながら安倍継承政権といわれて当然の路線をしいている。
だから本質的に、経済的には大企業優先の格差社会の推進と日米安保同盟に束縛されて推進している軍事大国化を継承してゆくミニ「安倍政権」といってよい。だが、その方向は、もっと政治的にはシビアーな課題を負っている。改憲への道の推進である。岸田は政治手法的にはソフトだ、国民の声をより聴いてゆく人物だ…が喧伝されているが、それこそ電通を先導役にしたマスコミによる虚偽の喧伝そのものである。
B改憲の音を立てながらその都度モリカケや桜、学術会議会員任命拒否問題など自己本位の腐敗の極が露呈し挫折してきた安倍晋三、そこに音を立てないで挑戦する第三極(維新、国民)の両者をつないで静かな国民総動員的な改憲を狙うのが岸田政権といったら言いすぎか。だが往々にして歴史の中では反動がこういうところから始まっているのである。そして、声高に政治性を絶叫する連合(主流派)が重なる。
こことどう対決していくか。これが何一つ安倍政治を払拭できない岸田政権を批判してゆくとともに我々の当面する大きな課題であると思われる。そういう点で大きな教訓を今度の総選挙は出している。
Cなによりも労働者・民衆の側からの課題の鮮明化である。コロナ禍克服を課題として、安保戦争法撤回、共謀罪廃止、原発廃炉〜東北震災早期復興、格差拡大の是正、労働者の最低賃金の向上、法人税のアップ、福祉の充実、女性の社会進出力の向上、外国人労働者の待遇、軍事大国化弾劾、諸外国民との連帯などなど、資本家本位のアベノミクスの下で民衆が負わされてきたものの奪還である。
さらには「小選挙区制度」の中で失ってきた民衆の政治の奪還である。これは権力問題とメディアを俎上に載せて執拗にやってゆくことが必要となる。戦後で下から3番目の投票率の低さに現れているのはよってたかっての民衆からの政治のはく奪が長く続いたからである。(つづく)

大阪9区
維新のデマやぶる野党共闘を
―奮闘した大椿ゆうこさん

私は10月31日の衆議院議員選挙で、大阪9区(池田市・茨木市・箕面市・豊能郡)から立候補した野党統一候補で社民党副党首の大椿ゆうこさん支援のため、阪急茨木市駅近くの選挙事務所を拠点にして活動しました。結果は残念ながら当選はできませんでしたが、4万2165票は前回の総選挙で社民党が獲得した票数とほぼ同じでした。
今回の総選挙の核心的争点は、自民党・公明党、維新の会の新自由主義による格差・貧困の激化・拡大や、憲法9条の改憲につらなる敵基地攻撃力の検討も含めた戦争政治に対して、労働者階級・人民大衆が自覚的に決起して痛打を与えることが出来るかどうかだったと思います。市民団体を媒介に野党共闘を実現し、統一候補で選挙戦を闘う上で、有期雇用を理由にした自らの解雇攻撃と闘い、それを契機に労働組合運動に参加して執行委員長も経験してきた大椿さんは、野党統一候補として適任者でした。
私は選挙ボランティアとして、ハガキの宛名貼り、チラシのセット作業、街頭でのチラシ配りなどをしました。選挙事務所にはいろんな労働組合や市民団体の方たちが入れ替わり激励に来てくれ、チラシ配布では、通行する市民から「頑張って」と激励されました。また「もう大椿さんに投票しました」という声も多数聞きました。チラシの受け取りでは子ども連れのお母さんたちの反応が良かったと思います。
選挙結果は、自民が前回よりも大幅に票を減らしたものの絶対安定多数を獲得、公明は現状維持、維新の躍進、野党共闘の苦闘と善戦を示しましたが、これは新型コロナ禍も含めた現下の日本の階級情勢の反映と思います。維新の躍進は、苦しい生活の中で現状変革を求める人たちが維新に幻想を持ち投票したのだと思います。
マスコミは野党共闘の不振といいますが、大阪9区では市民団体の運動を基礎・媒介にした野党共闘の善戦ということが実体でした。今後、維新のようなファシズム的デマゴギーとペテン的行動を暴露し、現状変革を求める多くの民衆の心をわしづかみにするような野党共闘の在り方を創意工夫し、強化・発展させることが課題だと思います。
大椿さんは敗北にもかかわらず打ちひしがれることなく、3日後には駅前の朝立ち演説を開始し次なる挑戦に立ち上がっています。このような不屈の精神力と対話を粘り強く継続・発展させるなら、次の勝利をつかめると思います。私も統一戦線の拡大・強化のため、新自由主義による貧富の格差拡大、社会福祉の削減・貧困の深刻化、戦争政治と闘っていく気持ちを新たにしています。(大嶺幸夫)

4面

沖縄レポート(11月6日〜10日)
6日 ブルーアクションに160人

辺野古テントの中で発言する赤嶺政賢衆議院議員(右端 11月6日)

11月6日 オール沖縄会議は辺野古の浜テントで第1土曜日の集会「ブルーアクション」を開いた。当初、辺野古の浜で開催される予定であったが大雨のため急きょ浜テントでの開催になった。テントに入りきれない人も含め160人が参加。
集会は、糸数慶子共同代表の開催あいさつで始まった。糸数さんは「衆議院選挙では2勝した、県民の強い思いを出発点に新たな運動を作り上げていこう」と宣言した。続いて、厳しい選挙戦を戦い抜いた4人が登壇してそれぞれに決意を語った。赤嶺政賢さんは「政府は辺野古が唯一と言うが、県民の思いはそうではないことが選挙であらわされた。『オール沖縄』への県民の信頼が広がっていると手ごたえを感じた。辺野古中止のためにもこれからも頑張っていきたい」と力を込めた。
その後、県議、島ぐるみ会議、市民団体などの発言があり、それぞれに辺野古新基地建設阻止の決意を語った。集会の様子はネットで生配信され県内外に発信された。また、玉城デニー知事は「今後も、政府に辺野古移設の断念と対話を強く求めていく」とメッセージを寄せた。
8日 小笠原諸島の海底火山噴火よる軽石が、沖縄県内に大量漂着して、フェリーの欠航や漁業にも被害が出ている。辺野古新基地建設の工事にも影響が出始めた。軽石は辺野古の浜や、浜テント前の浜にも打ち上げられた。大浦湾にも軽石が帯状に連なっているのが確認された。辺野古漁港では、オイルフェンスを張って軽石の侵入を防ぐ措置をとった。この日は漁港からの出港はなく警戒船は出なかった。防衛局は工事を中断した。辺野古では昼前に漁港内のオイルフェンスを閉じ、完全に封鎖した。
9日 防衛局は、大浦湾海上での土砂の陸揚げ作業を中止した。しかし、それ以外の工事は続けられた。サンゴの移植作業は、様子を見ながら午前の作業はなく、昼前に辺野古漁港からダイバーなどを載せた漁船4隻が現場に向かった。安和桟橋、塩川港での作業もなかった。
10日 防衛局は大浦湾海上で土砂の陸揚げや、サンゴの移植作業を再開した。防衛局は「軽石を避けるよう注意して作業をしていく、現状を十分に確認しおこなう」とし、今後、軽石の影響により作業が中止されることを示唆した。
また、キャンプ・シュワブゲートからは工事車両など約百台が搬入された。市民30人は早朝より座り込み、抗議の声を上げた。(杉山)

生活保護基準引き下げ違憲訴訟
弁護士が4地裁判決批判

大阪の生活保護基準引き下げ違憲訴訟の控訴審第2回口頭弁論が11月17日大阪高裁でひらかれた。
冒頭、原告・中川信子さんが意見陳述をおこなった。遊び人の夫と別れるために、昼も夜も働き毎月20万円を夫に渡していた。49才で脳内出血で倒れ、生活保護を利用するようになった。生活保護切り下げによって、数万円も下がり、月末になったらお金が足りなくなる。前はおつきあいがたくさんあり中元・歳暮を贈ったが今はできない。趣味の映画や旅行にも行けない。裁判所には、生活実態を考えて判断していただきたい。

法規範から外れている

次に伊藤建弁護士が、パワーポイントを使用し、請求が棄却された4つの地裁判決(名古屋、札幌、福岡、京都)の問題点を述べた。
まず4つの各棄却判決はコピー&ペーストで全く同じである。名古屋と京都の判決は、「NHK受診料」(正は、受信料)という誤字までコピペされている。
次に老齢加算廃止訴訟の最高裁判決(2012)は、原告敗訴の判決であるとはいえ、引き下げるときは、ちゃんとしないといけないというルールを作った。大阪地裁判決は、老齢加算最高裁判決に基づいているが、各棄却判決は、同最高裁判決を改ざんしている。
第1に厚労大臣の裁量権の対象は、生活保護法8条2項にもとづき「最低限度の生活の需要を満たすものである」ことと、「改定後に、健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か」である。棄却判決は、厚労大臣の裁量権の対象を「生活扶助基準の改定の必要があるか否か」に書き換え、国の財政事情、他の政策、政権与党の公約、国民感情も考慮可能としている。「生活保護法8条2項所定の事項を考慮することが義務付けられるいうことはできない」(名古屋、京都)と生活保護法を否定さえしている。
第2に、裁判所は判断過程審査において、統計等との客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等を審査しなければならない。本件改定の争点は、厚労大臣の判断過程の「調査・検証」である。専門家による検討も答申もなく、厚労大臣が、不正な生活扶助相当CPI(厚労省が独自に作成した消費者物価指数)に基づき、生活保護受給者世帯には4・78%もの可処分所得の実質的な増加があったと判断し引き下げたことについて、各棄却判決は追認し司法の職務を放棄している。生活扶助相当CPIは、生活保護法8条違反であると批判した。

報告会

裁判終了後、場所を移し報告会がひらかれた。物価偽装を暴いた白井康彦さん(元中日新聞記者)は「不正統計をやってもいいという判決を許してはいけない。YouTubeで情報発信している」とアピール。埼玉の原告も参加しており「大阪に続いて勝利判決を勝ちとりたい」と発言。
弁護士からは、経済学の先生3人に意見書提出と証人尋問をお願いし、生活扶助CPIがいかにデタラメか明らかにしていくという提起があった。 次回期日、1月27日に集まろう。

ヘイト勢力がしゅん動
相模原市で90人が抗議行動
11月14日

旭日旗を掲げるヘイト集団6人を90人近くの市民が包囲し抗議(11月14日、神奈川県相模原市)

大阪市、観音寺市(香川県)、川崎市など、地方自治体にヘイトスピーチを禁止する条例の施行が広がっている。これに危機感を抱くヘイト勢力は、現在検討段階にある相模原市(神奈川県)をターゲットに置き、しばしばヘイト街宣をおこなっている。
11月14日には、相模大野駅で強行。ヘイト側が動員できた6人に対して、90人近くの市民が集まり、思い思いに包囲抗議や通行する人々へのアピールに取り組んだ。ヘイトスピーチは物理的にかき消され、1時間での終了を余儀なくさせた。 

〈寄稿〉不都合なことは聞かないで口を塞ぐように(下)
(脳性まひ者の生活と健康を考える会)古井正代

どの様な人も排除していく社会ではなく、同じ社会の構成員としていっしょにやっていける。ハイテンションになって喋る人の言い分も、頭ごなしに否定しないで、それを聞くゆとりがある。そのような社会にしたいですね。
イタリアでは、バザリア法と言う法律ができて、精神病院(かつての精神病院だった建物は、現在立派な五つ星の最高級ホテルになっています)を廃止して、地域保健センターで話せる、話しを聞いてもらえる場所があって対応できているそうです。
はじめは精神病院を無くす事については、犯罪者が増えると反対していた人も多かったようですが、実際そのようなことはなく、今は「自由こそ治療だ」と言っています。ちなみに養護学校や支援学校もイタリアにはありません。イタリアは、やろうと思えば出来るという良い例です。人々の偏見が隔離する精神病院を作っているのです。
この顛末は彼女の身の上におきたことですが、実は私たちのまだ気が付いていないところでの、優生思想による排除や分断は、身の周りに起っていることかも知れません。(おわり)

5面

大阪支店に抗議行動 11月16日
サンケン電気は勧告に応じろ

支社に向けて抗議の声(11月16日)

11月16日、サンケン電気大阪支店前で韓国サンケン労組と連帯する抗議行動がおこなわれた。おおさかユニオンネットワークが主催し、60人が集まった。

労働委員会勧告を無視

シュプレヒコールの後、全労協の竹林さんが経過報告。韓国慶南地方の労働委員会がサンケン電気争議をこれ以上放置するわけにはいかないと今年5月、労使が話し合って和解するようにという勧告を出したにもかかわらず、日本のサンケン電気本社は韓国のことは知らないと勧告を無視するきわめて不誠実な態度をとり続けていることが報告された。

大阪支店への抗議申し入れ

おおさかユニオンネットワークは、サンケン電気大阪支店に対し、サンケン電気労働者の解雇を撤回し話し合いに応じるようにと申し入れたが、大阪支店はインターホン越しに対応し、文書は一切受け取らないというかたくなな、かつ不誠実な対応を1年以上取り続けている。
そのため、おおさかユニオンネットワークの代表団が再度、大阪支店に対して抗議申し入れ書を手渡しに行ったが、大阪支店は今回も一切受け取らないという不誠実な対応に終始した。しかも、大阪支店の警備員は代表団が乗るエレベーターにまで乗り込んできたという。

韓国からライブ中継

韓国の尹美香国会議員からライブ中継で連帯の生の声が届けられた。同議員は概略、1年前、日本軍「慰安婦問題」解決のための活動家から国会議員活動家になったこと、毎朝、韓国の国会に行くたびに、まだ夜もあけていない時間から国会入口でデモをしているサンケン電気の労働者をみると胸が痛む、日本と韓国が連帯してサンケン電気の闘いに勝利しようと訴えた。

現場の力で変える

最後に、おおさかユニオンネットワーク代表の西山直洋さんが、労働者市民の現場からの力で世の中を変えよう、サンケン電気が労働者の声をきちんと聴き、韓国のサンケン労組の仲間の解雇が撤回されるまで闘いぬこうと訴えた。

勝利するまで闘う

サンケン電気本社のかたくなな態度は、会社が追い詰められている証拠だ。さらに闘いを継続し、日韓の運動の力で勝利しよう。

関西合同労組が定期大会 11月14日
闘いへの決意を固める

11月14日、関西合同労働組合の第28回定期大会が西宮市内で開催された(写真)。

委員長あいさつ

冒頭、あいさつに立った佐々木伸良委員長は、10月31日に投開票がおこなわれた第49回衆議院選挙について「関西合同労組は兵庫8区においてれいわ新選組のつじ恵さん、大阪5区において同じくれいわ新選組の大石あきこさん、大阪9区において社会民主党の大椿ゆうこさんの3人を組合推薦候補として選挙戦を闘ったが、大石あきこさんが比例区で当選を果たし、私たち労働者のために働いてもらえる議員を送り出すことに成功しました。たいへん喜ばしいことだと思います。来年は参議院選挙があります。労働者市民のために働いてくれる議員を一人でも多く当選させるためにこれからも選挙も重視しながら、がんばりたい」と述べた。さらに組合の現状については微増・微減だが、コロナ禍において解雇されたり、雇い止めにされた人たちは厚労省の調べでも10万人、実際にはこの10倍といわれている中で、個人加盟方式の合同労組が活躍できる場はますます重要だ。関西合同労組は前面に出て労働者を組織し、働きやすい世の中をつくっていきたい。そのために今大会で活発な議論で方針を形成し、組織拡大のためにこの一年間闘えるようにがんばっていこうと訴えた。
関生支部の西山直洋執行委員が、弾圧を打ち破っていくアピールをした。また大石あきこ衆議院議員を含めて労働組合、団体、個人あわせて18通のメッセージがあったが、全国金属機械労働組合港合同からのメッセージを読み上げて紹介した。

大会議論・決議

1号議案(総括)の質問討論では、給付金やホームレスのことについて質問があった。執行部からは「給付金の内容はまだ固まっていないが、安倍政権のときは住民票のないホームレスの人たちには給付されなかったため、住民票の有無に関わりなく受給できるようにしていく必要がある。それだけでなく、大石あきこさんが国会で述べたといわれているが、一時のお金ではなく1000万人の安定雇用、何十年と非正規雇用がつくられてきた日本社会の根本的構造を根っこから変えていき、貧困、生活苦等々を解決していくことではないか」という答弁があった。
その後、サンケン争議支援に関する特別決議、生活保護基準引き下げ違憲訴訟に関する特別決議が満場の拍手で採択された。

レクや旗開き

11月のレクレーションや、来年1月23日、韓国サンケン労組を支援する大阪市民の会の濱本満夫さんを講師に、沖縄の心を歌う牧志徳さんも参加の旗開きが提起された。最後に団結がんばろうで闘いへの決意を固めた。(米村泰輔)

検証シンポジウム 11月12日 東京
「ジャーナリズムの視点から見た関西生コン事件」

2018年7月から権力が総力をあげて開始した関西生コン支部弾圧。現在組合は8件の刑事裁判(4件は控訴審へ移行)、16件の労働委員会案件・20件近くの民事訴訟に取り組んでいる。他方では、不当な長期勾留や保釈条件に対し国賠訴訟を東京地裁でしている。
 11月12日東京で、第3回 検証シンポジウム「ジャーナリズムの視点から見た関西生コン事件」(主催・関西生コンを支援する会)が開かれた(写真)
 集会では、関生のような海外では主流の産業別組合こそが労働者の権利をより有効に守ることが出来ることが説明された。だからこそ、権力は労働者を企業別組合に押し込めておきたい。産業別組合が広がっては困ると決断して始まった弾圧、と解説。
 産経新聞の悪意ある報道は論外だが、これほど大規模な事件をマスコミはほとんど報じていない。ジャーナリズム組合自身が企業別組合であるため、産業別組合が何かを理解できないことが一因。特にマスコミは警察を大きな情報源としているため逆らえない。ジャーナリズムを改革するのか新しいメディアを作るのかが問われている、と。
 集まった約90人の参加と多くの動画視聴者は、この件が今後の労働運動の帰趨を決する意味を持つことを理解し、絶対に負けられない決意を固めた。

6面

寄稿
「大深度地下」工事で陥没事故(上)
トンネルは掘ってみないと分からない!?
西川雄二

2020年10月、東京都調布市東つつじが丘2丁目の住宅地において道路が陥没した。東京外かく環状道路建設工事において、地下40〜50mの深さでシールドトンネル工事を施行中に地盤がゆるみ、土砂を取り込みすぎたことで空洞が発生したためである。
この工事は「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(以下、「大深度法」)に規定される「大深度地下」でおこなわれる工事であることから、同様の工事がおこなわれるリニア中央新幹線工事について事故発生が懸念されるのみならず、大深度法そのものが問われている。

大深度法とは何か

都市部において地下鉄や道路、上下水道のインフラを整備するにあたっては、地下にトンネルを掘って構造物を構築することが多い。その際にトンネルの上部は、浅い所は用地買収をおこない、少し深い場所は区分地上権設定をして土地使用の権利を制限する必要がある。それらの手続きには時間と補償金がかかるし、浅い部分のトンネル工事は上から開削する方が容易なことなどから、都市部のインフラ設備は大きな道路や河川の下など公共用地に構築されることが多い。
ご存じのとおり地下鉄は大部分が道路の下にあり、例えば大阪で2020年に事業認可された梅田となんばを結ぶ鉄道新線「なにわ筋線」もなにわ筋の地下を走る。ただし一部区間で民有地の地下を通る計画であるが、そこは区分地上権が設定され、上載荷重の制限(新たに建物を建てる場合、階高等が制限される)もおこなわれる。そのことで土地の使用価値が下がる場合、それに対しても一定の補償がおこなわれることになっている。
だが道路や河川の下でないとトンネルが掘れないというのでは、インフラ整備において路線設定などへの制約が大きい。一方で山に鉄道や道路トンネルを掘る場合、トンネルの上部をすべて買収することや、区分地上権を設定しているわけではない(おおむね地上権設定はトンネルの上30m程度までである)。
そこでバブルの頃から地下の深い場所については、山岳トンネルのように上部の土地所有者が持つ権利を制限しなくても工事が出来るよう法整備する検討がなされ、その結果2001年に施行されたのが「大深度法」である。この法律で規定される「大深度地下」とは、(A)地下室の建設のための利用が通常おこなわれない深さ(地下40m以深)、(B)建築物の基礎の設置のための利用が通常行われない深さ(支持地盤上面から10m以深)、(A)(B)のいずれかの深い方をいい、ここを利用する道路、河川、鉄道、通信、電気、ガス、上下水道等の公共事業は、国土交通大臣の認可を受けた上で、上部の用地買収や地上権設定をおこなわずともトンネルを掘ることができるというものだ。もちろんトンネルを掘ることで井戸枯れなどの損害が起こる場合は、それに対する補償が必要である。また大深度法の対象地域は首都圏、近畿圏、中部圏の三大都市圏であり、どこが当てはまるかは政令で定められている。


リニアも「大深度地下」工事

最初に大深度地下を利用しておこなわれたのは神戸市大容量送水管整備事業のうち270mで、その後、今問題となっている東京外かく環状道路(関越道〜東名高速)のうち14・2q、リニア中央新幹線のうち、東京と名古屋付近の50・3q、大阪の一級河川淀川水系寝屋川北部地下河川事業のうち2・2qである。寝屋川北部地下河川事業については、都市計画道路の整備事業と合わせて施工する予定であったものを、道路の用地買収が進まず施工が遅れていることから、大深度法を適用して用地買収をおこなわずに先行整備しようとしたものだ。そのため当初計画では地下45mのものが、支持地盤上面より10m以上深い、地下70mに設置されることになっている。大深度法を適用することで、事業をより早くおこなうことが出来るのだ。

「地上に影響はない」はずが

大都市の地下には深さ30〜40mぐらいまで多くのトンネルが掘られている。都営地下鉄大江戸線は六本木駅の1番線ホームが地下42mにあり、飯田橋〜春日駅には地下49mの地点がある。先のなにわ筋線では(仮称)中之島駅付近で、地下40mぐらいになっている。大深度トンネル掘削の技術はあるし、地下鉄大江戸線を掘っている時に地上で大きな変状や事故が起こったということはない。
だが東京外かく環状道路の工事では、住民説明会で「その時は『大深度だから地上には影響ない』と聞いていた。だけど外環の工事による陥没や空洞を見ると信じられない。安全と思える根拠を示してほしい」という話や、2015年3月の衆議院国土交通委員会で、当時の国交省道路局長が「外環の本線トンネル工事は大深度地下を使用したシールド工法を採用しており、地上への影響は生じない」と説明。太田昭宏国交相(当時)も「シールド(トンネル)自体が壊れることがなければ地上への影響は生じない」と答弁していた(東京新聞WEB「大深度なら地上に影響ない」はずだったのに…リニア工事は大丈夫?〈調布陥没〉)。なんだこりゃ?

地上陥没事故は多発

地下鉄のトンネル工事で地上が陥没する事故は発生している。2016年11月、福岡市の博多駅前で、地下鉄七隈線延伸工事のトンネル内で地盤崩落が起こり、道路が大規模に陥没するという事故が発生、全国に報道されたことは記憶に新しい。2020年6月には横浜市で、相模鉄道とJRを短絡する新線工事のトンネル工事により、直上の環状2号線が陥没する事故が起こっている。
では地下深く掘る山岳トンネルではそのような事故がないかというと、2003年9月、長野県飯山市の北陸新幹線飯山トンネルで崩落が起き、地上に陥没が生じている。2017年9月に、福井県あわら市内の北陸新幹線柿原トンネルで崩落が起き、上のグラウンドが陥没している。また2021年3月には北海道八雲町内の北海道新幹線野田追トンネルで崩落が起き、上の山林がすり鉢状に陥没している。
トンネル掘削前の地質調査は、直接穴を掘ってコアを採取し、土砂や岩盤の状況を確認するボーリング調査と、電流や弾性波(火薬で振動を起こす)探査、地盤内部で常時発生している振動をキャッチする方法等で面的に調査する物理探査とを組み合わせておこなう。だがボーリング調査で深い位置を調べるためには、同じ深さまで掘らなければならないし、何本も調査するわけにもいかない。トンネルと平行に掘る水平ボーリングというのもあるが、これも何百メートルも掘るわけにはいかない。
よって地質調査によってトンネル掘削する全線の地質をあらかじめ正確に認知することは出来ず、トンネル工事は「掘ってみないと分からない!?」のが現状である。

トンネル難工事

東海北陸自動車道の飛騨トンネルは、飛騨の山奥にある籾糠山を貫く10712mのトンネルである。先進坑(避難用トンネル)を掘削するにあたり、固い岩石の山が続くことからTBM(トンネルボーリングマシン、シールド掘削機のようなもの)で掘り進める予定であったのだが、数多くの破砕帯(断層等で岩が砕かれたりしているところ)に阻まれ、大量の湧水もあってTBMは何度も停止した。工事計画では最後までTBMで掘り進める予定であったが、貫通まで残り310mの地点でTBMがぶっ壊れて埋もれてしまう。
飛騨トンネルが難工事であったのは地質が複雑であったためでもあるのだが、今回の外環のトンネルにおいては同じような地質が続いていた。ただしその地質はこれまでのシールドトンネルで掘って来た土とは違っていたようで、地上に振動が伝わりやすいため住民から苦情が来た、住宅の外壁に亀裂が入るケースもあったようだ。そのため夜間は掘削を休むことにした(通常、トンネル工事は昼夜連続でおこなう)。掘削を休んでいる間に土砂と掘削のため添加した気包材が分離し、土砂性状が変化することでシールドカッターの回転不能が起こる、カッターを再回転させるための作業をおこなった際に地山が緩んで煙突状に拡大すると共に、土砂の取り込み量が多くなって陥没が発生したということだ。ちなみに変状が「煙突状に」伝わりやすいというのも、当該地質の特徴であり、別の地質だと変状が斜め上に伝わり、トンネルから離れたところで陥没が起きるという可能性も否定できない。(つづく)

7面

論考
パレスチナ解放闘争への接近(下)
帝国主義とパレスチナ人民
鳥居強右

第3章 ユダヤ人問題の本質

@ アシュケナジムとセファルディム

ヘブライ語で、ドイツにいたユダヤ人をアシュケナジム、スペインにいたユダヤ人をセファルディム、中東やアジア地域にいたユダヤ人をミズラヒムと呼ぶ(すべてヘブライ語の複数表現)。中世までは世界のユダヤ人の9割がミズラヒムであった。ところで、ユダヤ人とは、ユダヤ宗教法・ハラーハーでは、「ユダヤ人の母親から生まれた者、あるいは正式な手続きを経てユダヤ教に入信した者である」と規定されている。イスラエルの国籍を規定した「帰還法」でも同様の規定が置かれている。つまりユダヤ人とは人種や民族ではなく、宗教によって規定される文化的共同体に属するものを指す。西欧ではユダヤ人の家系でキリスト教に改宗した者や無神論者も含めてユダヤ人と通常言われる(前者の例はメンデルスゾーンとハイネ、後者の例はマルクスやフロイト)。
アシュケナジムとセファルディムの両者を民族的ないし人種的違いと考えるのは疑問である。アシュケナジムを白人、セファルディムを有色人種というのも誤解である。ヨーロッパの人種規定ではアラブ人やユダヤ人のすべて、クルド人もコーカソイド(白人)である。逆に、インド・アーリア人やクルド人には外見上黒人と見まがう黒い皮膚の人がいる。
アシュケナジムをハザール王国の末裔とするのも疑問がある。7世紀から10世紀前後にカスピ海の北方にあったハザール王国は、周りのキリスト教、イスラム教国に対抗して国教にユダヤ教を採用したが、ハザール人はトルコ系で、言語もトルコ語系であった。それに対しアシュケナジムの固有言語であるイディッシュ語は古いドイツ語の方言が変化したものであり、トルコ語とは無縁である。
アシュケナジム=シオニスト=反動ないし反革命とするのはさらに疑問が多い。マルクスもレーニン(母親がスウェーデン系のユダヤ人)もアシュケナジであり、民主社会主義者と称するアメリカの上院議員・サンダースもアシュケナジである(ポーランド系のユダヤ人)。

A ユダヤ人差別の起源

キリストの処刑を当時のユダヤ人の指導者たちが主張したという新約聖書の福音書の記述が根拠となっている。しかし本当に処刑を命じたのはローマの代官であったピラトである。ローマがキリスト教を国教にするにあたり、都合の悪い事実を隠蔽するために福音書を書き替えたか、都合の良い記述だけを集めたと思える。ちなみにローマがキリスト教を国教にしたのも、新約聖書が現在の形で完成したのもどちらも4世紀の末頃である。さらに最近の発見と研究によれば(「死海写本」の発見など)、福音書は80編ほどあり、その中から4編だけが新約聖書に盛られたという。

B ユダヤ人迫害の歴史

ヨーロッパでは、十字軍やポグロムなどの激しいユダヤ人差別があった。その頂点がナチスによるホロコーストであり、第2次大戦直前には世界中に1100万人いたイディッシュ語の使用者が、1948年には5百万から6百万人になっている。ナチスによって5百万人以上が殺害されたのである。
しかしヨーロッパでも中世にはそうではない事実も多い。西暦9世紀のフランク王国では商工業の振興のためにユダヤ人が尊重された。これがドイツ・フランスのユダヤ人の起源であろう。フランク人でユダヤ教に改宗、ないし入信した者がかなりいたのではないか。それに通婚によってキリスト教徒の子孫がユダヤ教徒(ユダヤ人)になったこともありうる。容貌がゲルマン人の者がいることになんら不自然はない。
また13〜14世紀以降、とくに16〜18世紀のポーランド・リトアニア共和国は同じく商工業の発展のためにユダヤ人を歓迎した。これが多くの東欧アシュケナジムの起源であろう。
最後は、中世のイベリア半島である。15世紀末まではイスラム王国があり、半島の大部分を支配していた。ここでは商工業や文藝が発展し、遅れたヨーロッパから学者や商人が盛んに来て交流した。ユダヤ人もその中で比較的自由に活動することができた。これがセファルディムの起源であろう。その後、キリスト教王国のレコンキスタ(再征服)によって、ムスリム王国がアフリカに後退したのち、迫害されたユダヤ人が中東・北アフリカやヨーロッパ各地、とくにユダヤ人を歓迎したオランダに向かった。哲学者のスピノザはこのセファルディの代表例である。
ヨーロッパで、ユダヤ人への迫害は11世紀の英国から始まった。十字軍でキリスト教世界の結集とムスリムおよびユダヤ人への排外主義がそこから始まった。
ユダヤ人差別こそ、西欧近代文明の最大の汚点である。あらゆる人を公民として解放したと称するフランス大革命は、しかし複雑で陰湿な人種差別、ユダヤ人差別、女性差別を再生産した。サルトルは、次のように言っている。「ユダヤ人を創造したのは、キリスト教徒である」「反ユダヤ主義は、ユダヤ人の問題ではない、われわれの問題である」「反ユダヤ主義を絶滅するためにも、社会主義革命が必要である」(J・P・サルトル『ユダヤ人』)

老朽原発このまま廃炉へ 大津集会
美浜3号機差し止めで井戸謙一さん講演

 11月13日、滋賀県大津市で、井戸謙一さんの講演会がひらかれた。これは、「老朽原発このまま廃炉!キャンペーン」の一環として、さいなら原発・びわこネットワークが開催したもの。この日の主題は、大阪地裁での「美浜3号機運転差し止め仮処分」を弁護士として担っている井戸さんに具体的に語っていただくことだった。
 本質的な法廷闘争は本訴が待っているが、びわ湖が放射能に汚染されれば、関西一円水が飲めなくなるという緊迫した情勢のもと、いかに早急に美浜3号機を止めるかを優先させる戦術を構築したという。この仮処分の申立人は9人(福井県民7人、京都府1人、滋賀県1人)、相手方は関西電力。6月21日に申し立てた。
 老朽原発が、チェルノブイリ、東電福島第一原発事故のような大事故になれば、全電力会社のみならず、全国、全世界の社会問題となる。その現在的焦点が、美浜3号機20年延長阻止ということで、この裁判の意義を全国的にひろめることと差止決定仮処分を急がせる2つの難問をのりこえねばならない。
 老朽原発は、日に日に事故確率を上昇させている。40年超えを許すかどうかという今後の全体的方向を決める重要な意義を持つ仮処分なので、はじめは、10月25日(美浜3号機の特定重大事故等対処施設完成期限)までに決定を出させる方針で争点を絞り込んだが、関電の抵抗にあい10月4日、12月1日の2回の審尋でとりまとめ、来年春か初夏には、大阪地裁決定となる。
 関電は、安全点検中という名目で広報しているが、実際は特定重大事故等対処施設の完成期限が間に合わず、22年10月まで停止。米日豪印に対抗する中国・ロシアなどの軍事的対抗行動が危惧される現在、原発稼働は軍事上最大の弱点になりかねない。
 井戸さんが金沢地裁裁判長時代の北陸電力志賀原発2号機差止判決も、敷地内地震断層への認識と対策が甘すぎる、というのが核心だった。今回も短期決戦である以上、先行判例を参照して闘うという。

 以下は、井戸弁護士の講演の一部。

 美浜原発は活断層の巣の中にある。これへの認識と、安全稼働のための具体的対応など迫っているのが第1回審尋のやりとり。
 絞りぬいた争点は、大きく以下の3点。
1、活断層の震源が原発敷地に極めて近い
@震源が近い場合の特別配慮は新規制基準の規則(設置許可基準規則解釈〔別記2〕4条5項二号E)に従わねばならない。A地盤変位問題(耐震重要施設は変位が生ずる恐れがない地盤に設けなければならない/設置許可基準規則第3条第3号)。
2、新規制基準策定後の新知見
 @繰り返し地震、Aばらつき問題、B避難計画問題
3、安全余裕の喰いつぶし問題
 代表的な応答例を以下に。 
 震源が近い場合の回答がないのはなぜか?と質問したところ、「美浜原発においては震源極近傍の特別配慮をする必要がない」という回答。これは、関電の調査自体が、「浦底断層の露頭が1号機、2号機からおよそ250メートルの至近距離にございます」と報告し(審査を取り下げたらと調査中、規制庁に言われていたという。関電に、あきらめなさいということか?)、設置許可基準規則に違反していることを改善できなかった妄言。  この3大課題への回答、それへの反論、さらに追及と追い込めば追い込むほど、関電側の回答が蕪雑粗暴となる。総じてこの申し立ては、この一点だけをみても司法は受け入れざるを得ないものだ、と納得。原告側勝利の展望が開けている。

関電滋賀支社へデモ

 講演会終了後、同所から〈脱原発市民ウォーク in 滋賀 実行委員会〉のデモに参加した。さまざまなアピール・キャンペーン、デモ行動を12・5大集会に結実させよう。(南方史郎)

8面

『左翼エス・エル戦闘史』読後感想あるいは「ロシア革命正史」(1)
高見元博

『未来』投稿にあたっての序文

この文章は、僕の個人ブログ『マルクス主義2・0』に掲載したものをほとんど変更していない。僕たちが学んできた「ロシア革命史」は勝者であるボリシェヴィキの、さらにはスターリンによって改作された偽史にすぎないことが『左翼エス・エル』の側から書かれた歴史を読むことによって僕には明らかになった。僕たちは『左翼エス・エル』がロシア革命において果たした役割について考えたこともなかった。スターリンによってまとめられたロシア革命史においては「ボリシェヴィキが単独でおこなった革命」が10月革命のすべてだった。
スターリンによって『マルクス=レーニン主義』にまとめ上げられたものしか、ほとんどのマルクスもレーニンも読めない僕たちにとっては、レーニン主義の「プロレタリアート独裁」のみがマルクスの「プロレタリアート独裁」を引きつぐものと信じてきた。(マルクスも読めないとは例えば晩年の膨大な量のノートの存在を最近まで知らなかった。『マルクス=エンゲルス全集(大月版)』には主旨を捻じ曲げた解説がつけられている。)
ちょっと考えたらわかったことなのだが、当時のロシアの人口の8割は農民だった。地主・ブルジョワジー・中間階層を除けば工業プロレタリアートは2割にも満たなかったことになる。8割の農民のうちの多数から支持を受けていた『左翼エス・エル』の支持と協力なしにロシアで革命が可能であったとは信じがたい。
ましてや2割に満たないプロレタリアートによる独裁が、マルクスの描いた「パリ・コミューンのようなプロレタリアート独裁」とは似て非なるものであることは容易に想像できたはずだった。しかし、僕たちは革共同の歴史においてそのような考えを持つことができなかった。再建協においてもマルクスの主張した「プロレタリアート独裁」とロシアにおける「プロレタリアート独裁」の差異について論じられたことはない。僕たちはちっとも自分の頭で考えたことがなかったのだ。僕たちはスターリンによってまとめられた『マルクス=レーニン主義』「基本文献」を丸暗記はしても、それが真にマルクス主義の発展であるかを考えてこなかった。レーニン自身が本当に考えたことであるのかも分からない代物が現代において伝わっている『マルクス=レーニン主義』なのだ。僕たちはレーニンが本書の主人公の『左翼エス・エル』の創始者のひとりである「マリア・スピリドーノワ」のことを「尊敬すべき革命家だ」と言っていたという事実を知ってきただろうか。そのような考えが僕たちが学んできた『マルクス=レーニン主義』から導き出されるだろうか。僕たちがマルクス主義を発展させ、そしてレーニンたちボリシェヴィキや『左翼エス・エル』によって実現されたロシア革命によって開始された世界革命過程を「反帝国主義・反スターリン主義」世界革命の完遂へ発展させるためには、僕たちが信じてきた『マルクス=レーニン主義』を疑ってかかる必要があるのではなかろうか。
この論文はそのような意図をもって書かれたものである。

勝者の歴史

『左翼エス・エル戦闘史』(スタインベルグ著・鹿砦社・1970年刊)を読んだ。レーニンの「労農同盟下のプロレタリアート独裁」と『左翼エス・エル』(『左翼社会革命党』という社会主義政党)の主張した「労農独裁」はどこで一致できて、どこで一致できなかったのかを研究したかったからだ。著者スタインベルグは『左翼エス・エル』の幹部で、ボリシェヴィキとの連立内閣の司法委員(大臣)でのちに西欧に亡命した。
カール・マルクスの主張した「プロレタリアート独裁」は西欧の先進資本主義国で圧倒的多数者であるプロレタリアートによる少数者のブルジョワジーに対する専制的侵害のことだった。僕はこの「プロレタリアート独裁」を断固支持する。マルクスは存命中にナロードニキ革命家に対してマルクスの理論は西欧に限定して適用できるのでありロシアにはそのままでは適用できないと言っていた。(『ザスーリチへの手紙』)ロシアでは多数者である土地を持てない農民と少数者であるが資本主義の廃絶によってしか解放されない工場労働者との「労農独裁」の方がマルクスの主張に沿ったことではないのか。
実際にはレーニン=ボリシェヴィキは少数者である工場労働者による多数者である農民への「無慈悲な」独裁体制をしいた。当時のロシアでは人口の8割は農民だったのに、工場労働者だけによる独裁がなにを意味するかは想像がつこう。それは実質的には労働者による独裁でさえなくてボリシェヴィキの独裁であったし、党組織論の「民主集中制」によって一握りの党指導部による独裁だった。帝政ロシアにおいて革命を実現するために必要だったこの党組織論を権力掌握後も継続することは必要だったのだろうか。それはカール・マルクスの描いた「パリ・コミューンのようなプロレタリアート独裁」とは似ても似つかぬものだったのではないか。レーニン=ボリシェヴィキと『左翼エス・エル』が、どこで一致できてどこでは一致できなかったのか、ということを知りたいと思ったのはこのためだ。(つづく)

本の紹介
『奈良発 ふまじめ教師の市民教育運動』
田村隆幸・著(かもがわ出版)

著者の田村隆幸さんは、〈沖縄の高江・辺野古につながる奈良の会〉の事務局長をつとめ、現在は〈市民ひろば なら小草〉の事務局長をしている。この2つの団体の集会は本紙でもたびたび報告してきた。
1983年に、田村さんは奈良市の中学校社会科教師についた。2001年、春日夜間中学校(正式名は奈良市立春日中学校夜間学級)に移った。11年間、夜間中学校にかかわっていくなかで、田村さんは夜間中学校のなかに教育の本質をみいだす。そして、市民教育運動に発展させてきた。本書は、その実践記録である。

システム化された学校制度と夜間中学

教育とは何か、学ぶとは何か。この問題について、われわれはとかくシステム化された学校制度のなかで考えてしまう。しかし、本書を読めば、夜間中学校にその原石があることに気づく。この問題を理解するために、本書で紹介されているエピソードを紹介しよう。
文今文さんは在日朝鮮人で、70歳をこえてから春日夜間中学校で学んだ。文さんは、果物や朝鮮料理をもってきては、生徒たちにふるまった。ある時、みんなで枇杷をたべ、文さんはその種を校舎の裏庭に埋めた。その種が芽を出し、枇杷の木はおおきくなった。
田村さんがこの夜間中学校に着任した頃、この枇杷の木はたくさん実をつけるようになっていた。田村さんたちは、その果実をとって、教室で生徒さんたちとともに楽しく食べた。その後、春日中学校長は「学校の敷地内に実のなる木を植えてはならない」と指示して、この木は切られてしまった。

前川喜平さんとの対談

もうひとつは、前川喜平さん(元・文科省事務次官)と田村さんの対談にあるエピソード。2014年4月、前川さんが初等中等教育局長をしている時、参議院の文教科学委員会で教育勅語について答弁をせまられた。あらかじめ「教育勅語には今日でも通用する普遍的な内容が含まれており、学校の教材として活用することは差しつかえない」という答弁をするように根回しされていた。前川さんは抵抗し、あいまいな形で答弁したが、2017年3月、この内容で政府見解として閣議決定されてしまった。
この二つのエピソードから、政府の側と市民の側で、教育の目的が180度異なることがわかる。田村さんは人間解放のための「学びの場」として、学校を考えている。その実践は奈良の夜間中学のなかに育まれていた。田村さんは、夜間中学校で中国から来た子どもたちやその保護者をみて、「彼らの学びの場が必要だ」と考え、「小草」をつくった。さらに、経済的困難をかかえた子どもたちの存在をみて、無料で学べる「すみれ塾」を立ち上げた。

市民の力による「学びの場」を

本書では、国家や支配者がつくる教育ではなく、この社会に生きる当事者による教育が語られている。市民の力によって「学びの場」をつくる運動、これが市民教育運動なのだ。人間が真に解放される社会が実現されるまで、このような運動がさまざまな地域で取り組まれることだろう。その経過報告として、本書を読んでいただきたい。また、この運動に参加してもらいたい。(津田和夫)

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