未来・第328号


            未来第328号目次(2021年10月21日発行)

 1面  安倍・菅継承の最悪政権
     菅につづき岸田も退陣へ

     市東さんの農地を守ろう
     10・3三里塚全国総決起集会

 2面  10月23日 美浜3号機停止
     老朽原発そのまま廃炉に

     政権交代にむけ市民と野党が共闘
     10月4日 国会開会日に集会

     ロックアクション 大阪
     政治を変えようと行動

 3面  岸田政権を打倒する総選挙闘争へ
     関西で奮闘する予定候補者
     全国で自民・公明・維新を倒そう

     19日公示31日投開票
     れいわ山本太郎代表も立候補      

     つじ恵マニフェスト20万配布
     ボランティアが続々決起     

     大阪5区大石あきこ
     大阪9区大椿ゆうこ

 4面  イオン幹線便トラックドライバー
     労災認定を退ける不当判決
     労働者に生活時間はいらないのか

     サンケン電気は団交に応じろ
     大阪支店に60人で抗議行動

     差別・排外主義許すな! 新宿ACTION
     排外主義と闘う仲間が結集

 5面  ストップ維新!市民連帯集会
     人間に尊厳を合言葉に

 6面  マルクスの反差別解放理論、またはマルクスの労働者革命実現論(下)
     高見元博

 7面  寄稿
     岸田核依存内閣を打倒しよう!
     10月23日停止の老朽原発・美浜3号機を廃炉に追い込み、原発全廃に前進しよう
     若狭の原発を考える会 木原壯林

     福島原発事故帰還困難区域
     除染しないで避難指示を解除     

 8面  『時代はさらに資本論』を読んで(上)
     ベーシックインカムの原資は
     松崎五郎

     運動つぶしの重要土地利用規制法(中)
     築紫 健      

     (本の紹介)
     『長東日誌― 在日韓国人政治犯・李哲の獄中記』
     李哲 東方出版     

              

安倍・菅継承の最悪政権
菅につづき岸田も退陣へ

国会開会日に市民と野党が共闘(10月4日、衆院議員会館前 記事は2面)

スカスカのコロナ対策

10月8日におこなった所信表明演説では、第1・2章で重点的に新型コロナ「対応」を掲げたが、具体性はまったくない。「病床と医療人材の確保、在宅療養者に対する対策を徹底」すると言う。新自由主義「改革」で感染症病床が、1996年の9716床から2019年の1758床と、5分の1以下にまで削られた。部分的「確保」や補強策で何とかなるものではない。「在宅療養者対策の徹底化」などと在宅放置を前提にするのは許せない。岸田自身、新型コロナに対する対策を「危機管理」=支配の維持の問題としてしかとらえていない。  
「新しい資本主義の実現」を掲げる経済政策(第3章)では、アベノミクスの「3本の矢」論をそのままの言葉で繰り返している。総裁選で打ちだしていた「令和版所得倍増」は消え去った。

軍事・外交、改憲で安倍継承

第4章で、「自由で開かれたインド太平洋」や「日米同盟基軸」など、完全に安倍継承である。「敵基地先制攻撃」論や沖縄戦を前提にした国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定に取り組むと表明した。「日米同盟の抑止力」維持を名目に、「辺野古沖への移設工事を」進めると明言し、被爆地広島出身でありながら、核兵器禁止条約への参加はおろか、言及さえしない。「所信」の結論を、安倍と同様、「憲法改正」に充てている。
軍事外交政策面の人事も安倍・菅継承である。茂木敏充外相と岸信夫防衛相の再任がそれである(再任はこの2人だけ)。岸田首相は「ハト派」とされるが、安保法制に基づく「台湾有事」での軍事的対応に言及し、改憲推進の「日本会議国会議員懇談会」に所属するなど、まぎれもない「靖国派」である。

原発推進の反動的人事

党財政や選挙指導の要を握る自民党幹事長に甘利明を据えた。岸田政権の重点政策担当にすべて甘利の息のかかった人物を配置している。閣僚人事は実質的に甘利が全部仕切った。
経済産業相に安倍晋三(原発の建て替えを推進する議員連盟の最高顧問)の最側近である萩生田光一を据えた。萩生田は10月5日のインタビューで、原子力発電は脱炭素に「欠かせない」と述べている。菅首相がまとめたエネルギー基本計画案は大きくは修正せずに月内に閣議決定するとも言っている。
さらに原発推進の一角を形成する首相秘書官(8人体制)のトップになった嶋田隆は経産省出身で、一貫して原発を推進してきた人物である。安倍首相の秘書官だった今井尚哉と甘利明が強力に推薦したと言われる。

「溺れる狗は叩け」

岸田が「奇襲」というべき衆院選挙日程を決めたのは、「選挙が始まったら『政治とカネ』問題どころではなくなる」ことが狙いである。つまり「モリ・カケ・サクラ」の追及をかわすためである。
朝日の世論調査では、発足時の支持率は、現在の方式で調査が始まった2001年以来、岸田内閣が45パーセントと最低であった。今までで一番低かった麻生内閣の48パーセントより低い。菅内閣ですら、昨年9月の発足時には同調査で65パーセントの支持率があった。3A(安倍・麻生・甘利)に対する国民的反発の多さと、岸田内閣が安倍・菅継承政権であることへの正しい認識が、「国民的に」形成されている。
魯迅は『阿Q正伝』で、反動的なもの、反革命的なものに対する人民の態度として「溺れる狗は叩け」(打落水狗)と言った。安倍・菅継承の岸田政権に臨む労働者人民の態度は、「岸田内閣を叩きに叩け」に尽きる。(落合 薫)

市東さんの農地を守ろう
10・3三里塚全国総決起集会

全国総決起集会で発言する萩原富夫さん(10月3日、成田市)

市東さんの農地を守ろう! 空港機能強化粉砕! 改憲阻止・菅政権打倒! 10・3三里塚全国総決起集会が成田市栗山公園で開催された。この公園は、三里塚闘争の歴史を刻む旧成田市営グランド。1968年2月26日、反対同盟と砂川基地拡張反対同盟、全学連の三者共催で5千人以上が結集、実力闘争への重要な転換点となったあの場所である。全国からの結集は490人、カンパはこの集会だけで28万円以上が集まった。

反対同盟の固い決意

最初に主催者あいさつを伊藤信晴さんがおこなった。新自由主義が地域社会を破壊したうえに、NAA(成田国際空港株式会社)が、農地を奪おうとしている。今こそ成田軍事空港粉砕を、と発言。
基調報告は萩原富夫さん。菅内閣が打倒され、岸田・安倍再来内閣が登場したいま、陸上自衛隊の大演習がおこなわれている。成田は、国際線はガラガラで、貨物は2倍になった。軍事兵站と貨物だけの空港になりつつある。機能強化は必要ない。今こそ廃港に、と提起。
市東孝雄さんは農地取り上げにたいする怒りをみなぎらせ、決意を語った。最高裁判決も想定内だ。それによって私の気持ちは変わっていない。農民にとって土地がすべて、反対同盟56年の闘いを、今まで通り、福島・沖縄・三里塚一体で闘う。ウソをつかない、あきらめない、を信念に。市東さんの決意を参加者全員が拍手で共有した。

最高裁決定弾劾、国策との対決を

連帯のあいさつは、国鉄千葉動力車労働組合から執行委員長の関道利さん、三里塚関西実行委員会から牧師の安藤眞一さん、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部から執行委員の西山直洋さんが、それぞれの思いを込めて反対同盟と市東さんへの熱い連帯の発言をおこなった。
沖縄と福島からのアピール・メッセージにつづき、住民・市民団体からのアピールの最初に部落解放同盟全国連合会から、市東さんの決意をわがものとして狭山第3次再審闘争を闘う決意が表明された。
〈若狭の原発を考える会〉木原壯林さんから、老朽原発の再稼働を許さないメッセージが寄せられた。
すべての発言者は、6月8日の最高裁決定を弾劾し、農地死守、強制執行実力阻止体制をとる反対同盟との連帯を確認した。
この日の三里塚闘争は、成田空港が旅客空港としてはもはや無用の存在になり、対中国戦争のための一大拠点として日米帝国主義に位置づけられつつある現実と鋭く対決するものとなった。いま、全国の農民は、農業では生きることができない。食糧自給率37%、米価は農民からの買い取り価格が1俵(60s)1万円を切った中で、生産費は1万4千円はかかる。これは、日本の全労働者人民が問われている現実でもある。「食糧は輸入すればよい」、「農業は高価格の輸出農産物で扱う大規模の工場式農業に変える」という安倍政権以降の日帝・資本家政府を打ち破り、三里塚闘争の永続的発展を勝ち取ろう。
(園田 栄)

2面

10月23日 美浜3号機停止
老朽原発そのまま廃炉に

再稼働に抗議(6月23日、美浜原発前)

(1)
6月23日に「老朽原発うごかすな!」の大きな声に包まれて、再稼働を強行した老朽原発美浜3号機は、7月下旬営業運転にこぎつけたが、10月25日に、「特定重大事故等対処施設(特重施設、いわゆる対テロ施設)」の完成期限を迎え、工事未完成のため10月23日に停止する。工事完成予定は22年9月(あくまでも関電の希望的観測)で、1年近く美浜3号機は止まることになる。ちなみに老朽原発高浜1、2号機は、本年6月に特重施設未完了で、再稼働もできないままで、施設完成まで2年かかると発表している。
この10月で老朽原発の稼働はなくなる。わずか3カ月しか運転できなかったのである。今こそ、「老朽原発うごかすな!」「老朽原発このまま廃炉!」の大きな人民的決起を。

(2)
他方、大阪地裁に「美浜3号機運転差止仮処分」が福井や滋賀、京都の住民から申し立てられている。その第一回審尋が10月4日におこなわれ、第2回審尋が12月1日に、来年の3〜4月には何らかの決定が出る。また名古屋地裁では「老朽原発廃炉訴訟」が愛知、岐阜、福井、滋賀、京都の住民の手で粘り強く闘われており、国(行政訴訟のため当事者は国)を追い詰めている。
さらに、関電は、老朽原発再稼働の同意にあたって、福井県に「23年、年末までに使用済み核燃料の県外保管候補地を決める」と約束し、「もし決められなかった場合は、稼働中の40年超え原発を止める」としている。これまで関電は、たびたび約束を裏切り、県外保管の候補地を示すことはできなかった。青森県・むつ市にある東電・日本原電施設を共同使用する腹であろうが、むつ市長は共同使用には強く反発している。関電の度重なる約束違反を許さず、「決まらなければ原発の稼働を停止する」という約束の実行を迫らなければならない。

(3)
岸田政権と自民党体制は、とんでもない「原発推進内閣」である。
当面この秋に予定されているエネルギー基本計画の改訂において、基本計画原案での再生可能エネルギーに軸足を置くという方向性や、原発の新増設には一切触れられない状況を、反動的に突破しようとしているのである。このような策動を許してはならない。

(4)
いよいよ「老朽原発このまま廃炉! キャンペーン」と「12・5老朽原発このまま廃炉! 大集会inおおさか」の成功は必須。12・5は、うつぼ公園に確定。関西・全国で「老朽原発このまま廃炉」の行動を大きく作り出し、そして、その全てを12・5うつぼ公園に集中しよう。
「老朽原発うごかすな! 実行委員会」は美浜3号機の停止にあわせて、10月25日、「美浜3号もう動かすな! 現地集会」を開催し、美浜原発と原子力事業本部に対する行動をおこなう。12・5に総決起しよう。
この1〜2年の「老朽原発動かすな!」「このまま廃炉!」を掲げた闘いは、今後の反原発闘争の帰趨を決する闘いである。「老朽原発廃炉!」を突破口に全原発の廃炉に突き進もう!

政権交代にむけ市民と野党が共闘
10月4日 国会開会日に集会

10月4日の臨時国会開会日、「自公政権交代! 政治を変えよう! 総選挙勝利! 10・4臨時国会開会日行動」に3百人が集まった。主催は、戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会。憲法共同センターの油原通江さんの司会で市民と国会議員がアピールした。
▼戦争をさせない一千人委員会の竹内広人さんが主催者挨拶。「9月29日の自民党総裁選で岸田が総裁に。与党は(臨時国会召集を拒否し)政治空白を作った。感染拡大のなかオリパラを開催した。安倍政権以降、国の政治の仕組みが壊されている。パンデミックに対応できていない。市民連合と野党との政策合意6項目は(自公政権に対する)もう一つの選択肢。19日公示、31日投開票の総選挙を総がかり行動も闘う」
▼日本共産党委員長・志位和夫衆院議員
「自民党の岸田新体制に期待できない。安倍政権の継承で、甘利氏を幹事長に据えた。この政治を変えるためには政権交代しかない」「野党の共通政策合意の6つの柱・20項目に安倍・菅政権の問題点が入っている。日本の政治を変える政権交代を始めよう」
▼社会民主党党首・福島瑞穂参院議員
「(臨時国会で)予算委員会すらやらない。補正予算をつけて(コロナ禍で困窮している人・事業者を)サポートするのが必要だ。」「幹事長が甘利氏で、自民党は政治とカネの問題を何とも思っていない」
▼立憲民主党・近藤昭一衆院議員
「命を守るためのコロナ対策と給付をやらなければいけないのに、自民党は総裁選をやっている。(閣僚人事は)安倍氏・麻生氏の影ばかり見える。命を守る・生活を守る政治を実現しよう」
▼沖縄の風・伊波洋一参院議員
「平和な日本・平和な沖縄を作り出すために参加している。沖縄でも1区から4区までオール沖縄の予定候補が頑張っている」「宮古島では今年市長を奪還」「2日、1年ぶりに辺野古のブルーアクションをした。辺野古を止めるために頑張ろう」
▼市民連合運営委員・山口二郎法政大教授
「(前回の衆院選から)4年経って政治の景色が変わった。野党はまとまった。(岸田の総裁就任あいさつで)『民主主義の危機』と言うが、その危機を誰が作ったのか」 ▼反貧困ネットワーク・瀬戸大作事務局長
「この1年半、(コロナ禍で)20代・30代の困窮が進んでいる。外国人のシェルターも作っているが、使う人は全て仮放免の人。生活保護も医療も全て(行政の)支援を受けられない。選挙で与党をひっくり返して、日本で生きられるようにしていただきたい」 ▼改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長・大江京子弁護士 「岸田氏はモリカケの再調査拒否、甘利氏の幹事長任命(で安倍・菅政治をそのまま引き継いだ)」「9月30日『法律家団体のアピール』を発表」
最後に総がかり行動・高田健共同代表が行動提起した。

ロックアクション 大阪
政治を変えようと行動

10月6日、大阪市内で、戦争あかん! ロックアクション御堂筋デモがおこなわれ50人が集まった(写真)。冒頭、〈戦争あかん! ロックアクション〉共同代表・山下けいきさんが「10月31日投票の衆院選では、政権交代を実現しよう」と開会あいさつ。
つづいて、以下4人が発言した。
「大阪維新による教育への政治介入、蹂躙」について、〈子どもをテストで追いつめるな! 市民の会〉から、チャレンジテストで学校を格付けし5段階の内申点に反映させているのは大阪だけ。すくすくテストの本当の狙いは子どものデータ化。文科省は小・中学校の学習履歴や試験の成績をマイナンバーに紐づけし、オンラインで管理するしくみに着手と危険性を訴えた。
「オリンピック・パラリンピック開催強行」について〈東京オリンピック・パラリンピック反対! 実行委員会〉喜多幡佳秀さん。10月29日にオリンピック反対の最後の集会をおこない、この間の過程で何が明らかになったのか共有していく。
〈釜ケ崎日雇い労働組合〉三浦俊一さんは「沖縄の今」について報告。沖縄のコロナ感染の10%以上は米軍関係だ。米軍は入国時に検疫なし、PCR検査もなしで最大の感染源は米軍。来年1月名護市長選を前に県の許可もない美謝川の水路切り替え工事を始めた。工事には毎日5百人、これが集票マシンになり、基地建設を買収に使う。沖縄のオバアに電話したら「大丈夫だ。私たちは23年間闘っている。座り込みを公式に再開して欲しい」という声が。
〈市民のちからで政治を変える! 大阪アピール〉山元一英さんが総選挙にむけてアピール。自公政権を続けるか、政権交代か。野党4党は市民連合と6項目の政策合意をした。@憲法 Aコロナ対策 B格差是正 C原発のない脱炭素社会 Dジェンダー平等 E政治とカネ(行政の透明化)。市民が下から政治を変えようと発言。集会後御堂筋をデモ行進。沿道からスマホ撮影や手を振る声援があった。(花本 香)

3面

岸田政権を打倒する総選挙闘争へ
関西で奮闘する予定候補者
全国で自民・公明・維新を倒そう

19日公示31日投開票 れいわ山本太郎代表も立候補

9月菅政権の退陣をうけて成立した岸田政権は、その反動性が暴かれる前にと、当初予定の11月7日投開票を1週間繰り上げて、10月14日解散、19日公示、10月31日の投開票を決定した。
国会では代表質問だけで野党の要求する予算委員会を開催せず予算審議もないまま、ご祝儀相場のうちの総選挙に打って出てきたのだ。
他方野党は、9月8日の共通政策合意をバネに、消費税切り下げや原発推進反対を掲げ攻勢を強める時にもかかわらず、連合中央や国民民主党などが立憲民主党に右から制動をかけてきている。
我々は安倍政治を継承し、改憲や中国・アジア敵視、コロナ無策、原発推進を狙う岸田政権の出鼻をくじく大衆闘争と選挙闘争をたたきつけよう。
地域で共同闘争をつみあげてきた、れいわ新選組や社民党、オール沖縄の4候補、核兵器廃絶をめざす広島の3候補の勝利にむけて力を集中しよう。

つじ恵マニフェスト20万配布
ボランティアが続々決起

兵庫8区で立候補予定のつじ恵さんは、10月3日に阪神出屋敷駅東スグに選挙用事務所を開設。駅前の公園での開所式では高原周治後援会長(元尼崎市医師会会長)や、丸尾牧県会議員が激励し(写真下)、各種ボランティアが130人集まった。特に40歳代の女性たちは連日ポスター張り行動に決起、事務所仕事もどんどん引き受け、学生の決起も続き、事務所は日に日に活気を増してくる。
そして最大の作戦は「つじ恵マニフェスト」の全戸配布。このマニフェストはれいわの政策とつじさん個人の思いと、さらには支援する尼崎の障がい者運動など様々な市民運動家たちの思いを取り入れたもの。尼崎の町々を背景にA4判8ページで「何があっても心配するな」「そんな尼崎を目指そう」と訴えるものだ。
3月立候補表明以来半年だが、支持は広がり、喫茶店・パチンコ店チェーンの会長や老健施設の理事長なども賛意を示してくれ、それらの施設のフェンスにポスターがどんどん貼られていく。
とはいえ大きな労働組合の支援があるわけではなく、すべてはボランティアの力だけが頼り。自公政権という巨大組織を相手のアリの軍団の闘いだが、日に日に確実に勢いを増している。
このマニフェストが全市民に届けられるとき、勝利が手繰り寄せられるのではないだろうか。(Q)

大阪5区大石あきこ
大阪9区大椿ゆうこ

総選挙の投開票が10月31日と決まり、大阪5区の大石あきこさん(れいわ)と、9区の大椿ゆうこさん(社民党)の活動も一気に勢いを増してきた。
大石さんは公示日まで連日モニター・プロジェクターを使っての駅頭宣伝。公示日以降は連日、午前10時から夜19時半まで事務所を開け活動。情宣隊は「塩の行進隊」として、チームで辻立ち、一人で行進するなど工夫を凝らす。
事務所は大阪市淀川区木川西2―1―11。阪急「十三」と地下鉄「西中島南方」の中間にある。証紙貼りなど事務所仕事は多いので、どんどん応援に駆け付けよう。
大椿さんは、16日〜17日の土・日、福島みずほ社民党党首と一緒に街宣キャラバン。池田市、箕面市、茨木市などのターミナルと住宅地をくまなく回り、公示からは一気にスパートだ。
連絡先:茨木市永代町5―116 ソシオ1―1(阪急茨木市駅前ソシオビル1階)

4面

イオン幹線便トラックドライバー
 労災認定を退ける不当判決
労働者に生活時間はいらないのか

9月29日、名古屋地裁民事1部で、イオン幹線便・トラックドライバーが長時間労働により2013年に脳梗塞を発症した事件で、労災認定を退ける不当判決がありました。
原告のドライバーは、スーパーイオンの商品を、四日市の物流拠点から関西の物流拠点へ、10トントラックで配送する業務をおこなっていました。13時から15時に始業し、翌朝未明5時前後に終業するという業務を毎日繰り返していました。被災前6カ月の拘束時間は平均で月280時間、長い時は月323時間を超えていました。

驚くべき非常識

ところが裁判官は、この最長の拘束時間323時間の時でさえ、時間外労働は50時間未満しか認めず、約百時間の待機時間は休憩としたのです。運送業界では、様々な荷物を混載する雑貨輸送の長時間の待機時間が社会的問題になっているにもかかわらず、裁判官はこれを全て休憩時間としたのです。驚くべき非常識です。
極めつけは、判決が次のように言っていることです。「原告が朝6時半から7時半に就寝していたとしても、13時の当日の業務連絡の電話があるまで、5時間30分から6時間30分の睡眠をとることができたというべき」と。原告の業務は当日にならなければ決まらないのです。裁判官は、労働者は昼食をとる必要も、洗面やトイレに行く必要も、着替える必要がないというのでしょうか? 

労災認定基準

現在の脳・心臓疾患の労災認定基準の「連続した月80時間の残業、あるいは1カ月に100時間を超える残業」という考え方は、80時間の残業では1日6時間の睡眠を割り込み、100時間の残業では1日5時間の睡眠を割り込むことが、脳・心臓疾患の危険を高めるという考え方が基本にあります(『脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告』86〜98ページ)。そこでは、拘束時間と睡眠時間を除く労働者の生活時間は約5時間という生活調査の結果が前提になっています。今回の判決は、労働時間について認定基準を踏まえるかのように装っていますが、その内容は、国の認定基準の医学的な見解すら踏みにじるものなのです。

人間生活を無視

なお、裁判では、原処分庁(労基署)が「ドライバーにあらかじめ順番を伝えていたので、自分の積み込み時間を予想できた」という認定の根拠になった会社関係者の証言が、会社関係者自身の陳述書や証言で、全て覆っていました。にもかかわらず、裁判官は、長い時には100時間にも迫る郊外の物流拠点構内でのトラック待機について、「適宜、仮眠や休憩を取ることも可能」とこじつけました。裁判官は人間の生活を何と心得るのか!
私たちは、このような出鱈目な判決を許さず、控訴審を闘います。
(愛知連帯ユニオン)

サンケン電気は団交に応じろ
大阪支店に60人で抗議行動

9月30日、大阪ユニオンネットワークの呼びかけでサンケン電気大阪支店への抗議行動が60人を超える結集でおこなわれた(写真)
サンケン電気(本社:埼玉県新座市)は資本金2百億円を超える東証一部上場の半導体メーカーで、韓国だけでなく中国(大連、上海、深?、台湾、香港、タイ、フィリピン、インドネシア、さらに北米、欧州にも海外事業所をもつグローバル企業だ。韓国サンケンは百%出資の子会社で、馬山自由貿易地域にある。1973年、韓国で最初に馬山自由貿易地域がつくられたとき、サンケン電気は真っ先に進出。同地域では、労組結成制限による労働者への過酷な弾圧の下、数々の優遇税制を受け、低賃金かつ劣悪な労働条件で搾取し続け、サンケン電気は肥え太ってきた。

第一次争議

16年、サンケン電気は労働組合の存在を理由に韓国サンケンを閉鎖し全員を解雇した。しかし韓国サンケン労組は工場前にテントを張り、24時間体制の籠城・座り込みをおこない、日本の支援運動とも結合し、韓国の地労委、中労委はともに「解雇は不当」との裁定を出した。会社は17年6月、遺憾の意を表明し、労組は解雇撤回・全員現職復帰を勝ち取った。また「今後重大な雇用問題が発生した際は労働組合と合意の下におこなう」との事前協議合意約款を労使で締結。組合が全面勝利した。

第二次争議

しかし、サンケン電気は昨年7月9日、事前協議合意約款を破り、同社のホームページで韓国サンケンを廃業し、労働者を整理解雇すると発表。ただちに抗議行動が日韓で開始された。サンケン電気は廃業の理由として韓国サンケンの赤字を挙げたが、これは韓国サンケンに発注すべき業務を別の会社に発注して意図的に作り出した赤字だ。
このひどさに、馬山自由貿易地域がある韓国慶尚南道の昌原市議会が「韓国サンケンの廃業中断(撤回)を求める」決議を満場一致で可決。慶尚南道知事、道議会もサンケン電気を非難。KBSやMBCなどのテレビや各新聞もとりあげ、韓国中労委はサンケン電気に対し「誠実に話し合え」という和解勧告を出した。しかしサンケン電気はいまだにこれに従おうとしていない。

刑事弾圧

日本の支援運動は、6月25日に開催予定のサンケン電気の株主総会での取り組みを強めていた。韓国サンケン労組を支援する会のOさんがサンケン電気に申し入れにいくと、警備室に待機していたサンケン電気の総務課職員が埼玉県警に通報、駆けつけた警察官が何もしていないOさんを逮捕した(5月10日)。株主資格を得ていたOさんは株主総会で韓国サンケン廃業・全員解雇を問いただす予定だったといわれている。
この弾圧を知った韓国サンケン労組、民主労総をはじめ各労組や、韓国の国会議員41人の抗議・嘆願書が日本に届けられている。

会社は話し合いに応じろ

9月27日、韓国サンケン労組からサンケン電気本社宛の「韓国中労委裁定にふまえた話し合いをしよう」という申入書が支援の側に届き、サンケン電気に対応するよう電話で申し入れたが、それすら途中で切ってきた。さらに警備員を大動員して一切対応を拒否。支援運動を広げ、サンケン電気を話し合いのテーブルにつかせよう。

釈放署名運動に取り組もう

Oさんの釈放を求める署名が提起されている。これに取り組むとともに、韓国の仲間とともに勝利するまで闘おう。(三船二郎)

差別・排外主義許すな! 新宿ACTION
排外主義と闘う仲間が結集

10月10日、「差別・排外主義を許すな! 新宿ACTION」がおこなわれた。主催は、〈差別・排外主義に反対する連絡会〉で、新宿・アルタ前には120人の市民が集まった。
 リレーアピールの冒頭、主催者が「学生向け給付金の対象から朝鮮学校の学生が排除され、朝鮮幼稚園の児童が幼児対象のマスク支給から排除されている」と弾劾。
 練馬区を中心に基地反対運動を闘う仲間が9月15日から11月にかけて、全国の陸上自衛隊が九州に結集して「南西地域の防衛」を掲げて2カ月余りの大演習をおこなっていることに警鐘を乱打するアピールをした。
明大生協労組は、5月にサンケン電気本社前で逮捕されたOさんが5カ月も勾留されていることを弾劾した。
〈沖縄への偏見をあおる放送を許さない市民有志〉は、「『ニュース女子』の放送が今年3月でなくなった」「愛知県警機動隊の沖縄への派遣が違法であるとの逆転勝訴判決が出た(10月7日、名古屋高裁)。10月29日には警視庁機動隊派遣について控訴審判決が出る」と報告。
 多摩地区で生活困窮者の支援をおこなうNPO法人さんきゅうハウスの方が、生活保護基準引き下げを認める反動判決が続いていることを弾劾した。
 武蔵野「聖火」セレモニー弾圧救援会は、被告が立川拘置所に移されたこと、差し入れが入りにくくなっていることを弾劾し、10月31日13時半から武蔵野芸能劇場小ホール(三鷹駅北口)でおこなわれる「武蔵野五輪弾圧裁判に勝利しよう! 五輪弾圧をふっとばせ! 10・31集会」への結集を訴えた。
 アピールの最後に、両親が朝鮮半島出身だという女性が差別との闘いを訴えた。
 1時間のアピールの後、デモ隊がアルタ前から北上して職安通りを通って、日本語と韓国語で差別を許さないシュプレヒコールをあげながら柏木公園(※近年、新宿区が集会に使うことを許可しない)まで行進した。(写真上)

5面

ストップ維新!市民連帯集会
人間に尊厳を合言葉に

9月17日、大阪市内で「ストップ維新!住んで良かったまち大阪をつくる市民連帯集会」がひらかれ180人(プラス、リモート百人)が参加した。集会は、梅田章二、桜田照雄、西谷文和、趙博、中野雅司、平松邦夫さんなど25人が呼びかけたもの。
 冨田宏治さん(関西学院大教授)が基調講演「維新政治を終わらせる展望」。リレートーク、西谷文和さんの「パワポで見るアベ・スガ政治の終焉と維新政治の実態」などがあった。

「維新政治を終わらせる展望」

 冒頭、冨田宏治さんが「維新政治を終わらせる展望〜人間に尊厳を合言葉に政治を変える〜」と題して基調講演。
 新型コロナウイルス感染症が2年近く続き、その中で多くの人たちが色んな事に気づき、目覚め、意識が変わり、意識の変化の中で、世界が、日本が、確実に変わり始めている。その変化に確信を持つことから、維新政治を終わらせる展望を見いだしていきたい。
 今世界で470万人以上がコロナで命を失っている。その中で人の命は大切だ、人間の尊厳は大切だ、ということについて皆思いを馳せている。でもその命が決して平等には扱われていないんだということに皆気づいた。米国で白人と黒人では、黒人の方がはるかに死亡率が高く、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)という運動が起こった。日本でも、正規・非正規の労働者の間に格差があり、いの一番に首を切られるのは女性、特にシングルマザー。そういう状況下で、去年1年間で多くの女性が自殺した。
 新自由主義による市場万能主義、官から民へという政策・イデオロギーが、格差・貧困をもたらした。新自由主義が、医療・介護・福祉・教育といった分野を、もろいものに変えてしまっていた。大阪維新が10年間で大阪の医療・介護・福祉・教育をボロボロにした。おかげで大阪は、百万人当たりの死者数が330人位で全国平均の2・5倍、ダントツトップで、失われなくてもいい多くの命が奪われてきた。
 もう1つマッチョイズム、力への信奉というものが、トランプ筆頭にコロナ感染を悪化させてきた。軍事力によって安全を確保しようという愚かさに多くの人たちが気づいた。今世界では2百兆円もの軍事費が無駄に使われている。その一部でも医療に使えば失われなくてもいい命が失われずにすむ。保健所・医療現場は人手不足で悲鳴を上げている。
さらに、何の説明責任を果たすことなく思いつきで科学を無視して、コロナに対応しようとするリーダーを持っていることが、いかに痛いか、悲しいかと皆さんが思った。アベノマスク、GoToトラベル、オリンピック強行。大阪でも雨合羽、イソジン、野戦病院。わけのわからないことをやって多くの人たちの命を危機に陥れてきた。それと対照的にニュージーランド、フィンランド、ドイツの首相たちのように、本当に科学的な根拠にもとづいて国民をしっかりと説得して対策をとってきた所では、コロナが封じ込められてきた。
 この中で「安倍政権ふざけるな」(日刊スポーツ)という言葉が新聞の一面を飾る様な事態が進行し、安倍は政権を投げだし、菅政権もコロナ対策に失敗し支持率が下がり政権を投げ出した。
 一方、核兵器禁止条約の発効(21・1・22)が勝ちとられ、「大阪市廃止」の住民投票で2度目の勝利を収めた。トランプ政権は米大統領選でバイデンに敗北した。

医療崩壊の原因

松井、吉村のコロナ対策は、トランプと同じ「ただの風邪」路線で、20年3月連休明けから大阪・兵庫で大変なコロナ感染が起こった。そこで松井・吉村の失敗を何とかカバーしようと橋下徹が突然テレビに乱入し、それ以降出ずっぱりになっている。橋下は、今の医療崩壊の原因を作ったのは自分の「徹底的な改革断行」であると認めているが、「平時のときの改革の方向性は、間違っていたとは思っていない。ただし有事の際の切り替えプランを用意していなかった」とほざき居直っている(20年4月ツイッター)。
維新の10年間でどう変わったか。第1に、大阪における公務員の医師・看護師の数を半分に削減した。今コロナ対策の先頭で汗を流しているのは公立病院だ。第2に、保健所は大阪市に1カ所しかなく、その職員を24%削減した。第3に、大阪府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所を統合・縮小し、感染症と最前線で闘うべき研究所の職員を3分の2に減らしてしまった。こうしたことが、大阪のとんでもない感染爆発を招いた。「#大阪維新に殺される」という投稿が一時期たくさんみられた。
維新とはどんな勢力か。新自由主義政策によってもたらされた格差・貧困をテコにして、人々を分断し、その分断を組織化して選挙に勝ち続けてきた勢力。維新を支持している人々、その勝ち抜いてきた感覚を現しているのが長谷川豊(衆院選に維新から出馬し落選)の言葉。「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ」。自分たちが払っている税金を食いつぶしている。皆殺してしまえばいいというような嫌らしい感覚、弱者への剥き出しの憎悪。最近はDaiGoというメンタリストが「ホームレスや生活保護の人たちを救う位なら猫を救ってやってくれ」と発言し問題になった。
 維新は、選挙では投票率が高かろうが低かろうが同じような得票数しか出せない。だから2回目の住民投票では、維新はあまり宣伝をおこなわず「もぐる」戦術をとり投票率を下げようとした。逆に私たちは、投票率が上がれば、維新を上回る可能性を持っている。そのことを見事に示したのが住民投票でした。路地裏を主戦場とした徹底した対話で投票率を上げるなら、維新に勝つことができると提起した。

リレートーク

 次の〈リレートーク〉では、5人が発言した。
 @コロナ第4波で入院できずに亡くなった方の遺族から。保健所の指示もなく、夫は6日間自宅に放置され、娘が自力で病院に運んだが助からなかった。英BBCが、日本でこんなことが起こるなんて信じられないと取材に来た。
 A維新が廃止した住吉病院元院長・舟本さんから。住吉病院には、人工呼吸器になれた医師が多かった。敷地も広く臨時医療施設を造ることもできた。
 B〈池田市の未来を考える市民の会〉松岡幹雄さんから。8月末の池田市長選挙で反維新候補をたてて闘ったが負けた。敗因は、反維新候補を一本化できなかったこと。
 C「表現の不自由展・関西」を実現するために奮闘した弁護団から。エルおおさかは会場利用承認を取り消す暴挙にでたが、裁判で執行停止を勝ちとった。公文書開示で、取り消しには吉村知事が関わっていることがわかった。
 D大阪市に対して教育にかかわる提言をした大阪市立学校の校長から。学校選択制やチャレンジテストの問題点をあげ、学力向上面だけを重視するようになる。競争を強いられる。人との繋がりが大切。

アベ・スガ・維新

 最後にフリージャーナリストの西谷文和さんが力作の『パワポで見るアベスガ政治の終焉と維新政治の実態』を報告。
 菅は、恐怖人事で反対者を押さえ込む。伊藤詩織さんをレイプした山口敬之の逮捕状を握りつぶした中村格を警察庁長官に前倒しで就任させた(9/22)。内閣官房機密費を毎年11億円も使用。
政府のコロナ感染症対策の専門家は、臨床経験のない医系技官が中心。「感染症ムラ」が初動を誤る。尾身茂会長の犯罪的役割。全国で13万人もの自宅待機患者がいるのに、自身が理事長を務める都内の5つの公的病院では、132億円の補助金が出ているのにコロナ患者を受け入れていない。
吉村知事はサラ金大手・武富士の元弁護士で、犯罪行為を隠蔽するスラップ訴訟に関わっていたことなどを明らかにし、政権交代を訴えた。
人の命・尊厳を大切にする政治に変えるために、次の衆院選挙では、自公政権、維新をうち負かそう。

6面

マルクスの反差別解放理論、またはマルクスの労働者革命実現論(下)
高見元博

1869年まで、マルクスは被差別・被抑圧人民がプロレタリア革命に合流すべきだと考えていた。しかし、「深い研究」(それは全集16巻に収められている)をへて考えを180度ひっくり返した。プロレタリア階級は差別・抑圧と闘い、自らの差別を乗り越えて、それらの解放を勝ちとることで被差別・被抑圧人民の信頼をえることが、プロレタリアート解放の「前提条件」だとマルクスは考えるにいたった。差別分断をこえなければ階級として団結し、ブルジョワジーに刃を向けることはできない。そのためには被差別人民に譲歩をせまる過去のマルクス、それはちょうどいまの日本共産党のような立場だが、そうではまったくなくて、差別人民が被差別人民のためにまず闘うことで、被差別人民からの信頼をえることが必要だとマルクスは提起するにいたった。この転換を内在的にとらえることができるかどうかは大事なことではないだろうか。
まさに今日的な、「プロレタリアートの階級意識」がなぜくもらせられているのか、その覚醒はいかにして組織されるのかをとらえ、明らかにしたものではないか。アメリカ合衆国における白人プロレタリアートと黒人の関係にも言及しており、プロレタリアート間相互の差別分断支配にいかにして闘うべきかを示すものだ。社会的マイノリティー、障害者、部落民、在日人民、技能実習生=移民労働者、女性などの差別からの解放に拡張することが可能な考えではないか。
その場合、被差別民衆の具体的な闘争課題に労働者が取り組むことで、はじめて被差別民衆とプロレタリアートの敵対的な関係性を乗りこえることが可能だということ。具体的な闘争課題への労働者の取り組みぬきには、団結はありえないということが提起されている。この立場からすれば、日本共産党のように被差別人民の誤った考えを正して、差別人民の「科学的」思想に合流させるという考え方が、まったく転倒したものだということはあきらかだ。そもそも、『マルクス・エンゲルス全集(大月版)』を編集した「ドイツ社会主義統一党中央委員会付属マルクス=レーニン主義研究所」は、これらのマルクスの叙述とエンゲルスの手紙をまとめて、アイルランド人民が社会主義者と合流できなかった原因は、アイルランドの民族主義にあるとしている。これはマルクスの立場とは相容れない大国主義的な民族排外主義的主張というほかない。日本共産党の主張はここに源流をもつものかもしれない。
今日的なプロレタリアートの階級形成論についてはいろいろな議論がなされてきたが、マルクスのこの提起のなかには、その具体的・現実的な課題は何であり、コミュニストはいかに闘いを提起するべきかという問いへの答えがあるように思う。

アイルランド独立闘争の高揚

1880〜83ごろアイルランドの解放運動は再度、高揚した。(マルクスは1883年3月に亡くなった。)マルクスは変わらずにアイルランド問題が「イギリスの政治支配も崩壊する」問題だと言っている。そしてブルジョワジーの介入によって、ブルジョワジーの意図に反してその過程が促進されると言っている。かに闘いを提起するべきかという問いへの答えがあるように思う。

1880・11・4『マルクスからジョン・スウィントン(在ニューヨーク)』(全集34巻)

「当地の政治的関心は、今のところアイルランドの『土地問題』に集中しています。ではなぜでしょうか? 主としてそれがイングランドの『土地問題』の先ぶれだからです。」
「これらの原則散布者たちの背後には、他の群れの人たち、抜けめのない、吝嗇(注)な、打算的な資本家たちがかくれており、彼らを使っておいつめさせているのであり、そのイデオローグたちが提案しているやりかたでのふるい土地法の廃止は、土地を商品に転化させないわけにはおれず、結局資本の手に集積されるにちがいないということを十分に知っているのです。
他方で国民的存在として考察すれば、ジョン・ブルは、アイルランドにおける貴族的イングランドの土地所有の牙城が崩壊しはしないかという不吉な予感をもっているのです。そうなれば――イギリスの政治支配も崩壊することになるでしょう!」
(注)ひどく物惜しみすること。

マルクスは、晩年にもアイルランド問題がイギリス革命の支点であることを疑っていなかった。アイルランドの独立運動の高揚に大きな関心をもっていた。おりからのロシア対トルコ戦争が始まっていた。これにどのような態度をとるかということに、階級形成論の重点は移っていた。このころマルクスはナロードニキによるロシア革命の可能性に大きな関心を示していた。ナロードニキは19世紀末から20世紀初頭のロシアの革命家たち。「ブ・ナロード」(人民のなかへ)をスローガンにしたことからこう呼ばれた。彼らは農村共同体からの社会主義への移行を展望し農民のなかに入ろうとした。当初、農民は彼らを受入れなかったので、皇帝を暗殺するなどの直接行動をおこなった。1917年のロシア革命当時は社会革命党(エス・エル)となって農民の強い支持を受けるまでになっていた。(のちにエス・エルはロシア共産党〈ボルシェビキ〉によってせん滅された。)マルクスはナロードニキと親しくつきあい会食したり手紙を書いたりしていた。ロシアで革命がおきれば、革命の波がヨーロッパに波及するということをこのころのマルクスは言っている。
1878・2・7〜8イギリス議会における戦費の支出の議決で、イギリス労働運動指導部はブルジョワジーに同調した。ロシア対トルコ戦争にさいして、ロシア軍によるトルコ領内深くの占領を防止するために参戦する目的の莫大な追加予算に賛成投票したのだ。のちの第二インターナショナル諸党の転向を思わせる。民族排外主義に転落したイギリス労働組合指導部をマルクスは許せないと思っていた。しかし、そのなかでもロンドンの労働組合協議会に拠点をもっていた革命的プロレタリアートが反戦集会を開いたことを高く評価した(前述)。プロレタリアートの階級形成が具体的反戦闘争を闘うことをつうじておこなわれることをマルクスは強く意識していた。

1970年7・7思想とマルクスの思想

のちの帝国主義国のマルクス=レーニン主義者は大国主義的な民族排外主義に染められた。日本でも日本共産党に典型的な「共産党員は差別しない」、資本主義は封建的差別諸関係を解消したから「労働者は差別しない」という差別排外主義理論が満展開した。革命的共産主義者同盟・全国委員会も、民族排外主義から自由ではなかった。おおよそ日本人であってあらかじめ民族排外主義から自由な人など存在しないのではないか。そもそも、日本人としての「豊かな」生活と存在そのものが民族差別の上に乗っかっている。それは植民地人民の犠牲の上に成り立っている。『ユニクロ』がウイグル人民の奴隷労働のうえで低価格を実現していることは広く知られているが、パキスタンの女工やチリの農民などでも事態は同じことだ。彼女ら、彼らの低賃金と生活破壊がわれわれの「豊かな」生活の原資だ。その事実のとらえかえしがなければ、プロレタリアートの階級としての自己形成などできない。
日本人左翼にとってそのことを突き付けられたのは、1970・7・7の華僑青年闘争委員会の糾弾だった。宗主国プロレタリアートにとっての「ありのままの」国際連帯など、思いあがった差別的立場の上ぬりでしかなかった。7・7自己批判はそののりこえの思想であり、日本人左翼が忘れてはならない原点だ。
しかしその革共同による理論化の過程でマルクス主義の原理を使うのではなくて、魯迅の文学的表現である「血債の思想」を借り物してきたことから、中身が「道徳」「倫理」の問題と理解された傾向が強くあった。しかものちには革共同内の官僚的独裁の道具化されてしまい、労働者党員の呪詛の対象となっていった。正しい立場に立った指導部が、誤っている下部党員を指導という名のもとに支配するための道具に変えられてしまったからだ。結局、革共同は7・7糾弾に対して正しくマルクス主義的に自己批判することはできなかった。「華僑青年闘争委員会は毛沢東主義だから」という奇妙な理屈さえ言われていた。毛沢東思想のなかからも正しい立場をくみとるとは提起されていなかった。それは、1869年11月以前の古いマルクスの立場ではあっても、まず最初に被差別・被抑圧人民の信頼をえるためにプロレタリアートは具体的な連帯行動に取り組むべきだという転換をしたのちのマルクスの思想ではまったくなかった。「7・7糾弾」で突きつけられたものに具体的に応える、入管闘争とか生活防衛闘争を支える思想的内容は欠如していた。その結果、それらは「諸戦線」だけがになう問題に矮小化され、「労働者階級本隊」にとっては道徳や倫理、「踏まえるべき立場」の問題に矮小化された。のちには「血債の思想」は文学的表現だからと切りすてようとする部分も生まれた。これは、マルクス主義への無知であり、裏切るものだ。
われわれはもう一度、華僑青年闘争委員会の糾弾の原点に戻り、マルクス主義思想による「7・7自己批判思想」を確立しなければならないと思う。本論考がその一助となれば幸いである。(おわり)

高見元博の個人ブログ:『マルクス主義2・0』で検索

7面

寄稿
岸田核依存内閣を打倒しよう!
10月23日停止の老朽原発・美浜3号機を廃炉に追い込み、原発全廃に前進しよう
若狭の原発を考える会 木原壯林

核依存をますます強める岸田自民党

3A(安倍、麻生、甘利)の強い影響下での論功行賞的人事を行い、安倍・菅路線を継承して、破局に突き進む政権が誕生しました。看板だけを書き換えて、さらに巧妙に国民に犠牲を強いる岸田政権です。岸田首相は、温室効果ガス削減を目指すとして、原発再稼働、新型炉開発、核融合開発を含めた「クリーン・エネルギー戦略」の策定を掲げ、「再生可能エネルギーの一本足打法ではない」と述べています。脱炭素政策には消極的であるにも拘らず、原発には前のめりです。
岸田自民党総裁は、「原子力ムラのドン」の一人・甘利明氏を幹事長にすえ、エネルギー基本計画を見直すと明言し、小型新型原子炉の開発を標榜する高市早苗氏を党の政策立案を仕切る政調会長に就任させました。福井2区選出で国対委員長についた高木毅氏も原発推進派で知られています。
内閣では、甘利氏の一番弟子であり「原発を使い倒さなければカーボンニュートラルはできない」と主張する原発推進の急先鋒・山際大志郎氏を経済再生担当相とし、安倍元首相の最側近で、原発推進の萩生田光一氏を経済産業相とする一方、原発推進に異論を唱える河野太郎氏、小泉進次郎氏を閣外に追放しています。これによって、「原発推進のエネルギー基本計画」を全会一致で閣議決定する魂胆は見え見えです(10月中か?)。

6・6集会で訴える木原壯林さん

再処理、高速炉推進の岸田政権

岸田首相は、核燃料再処理と高速炉運転を骨格とする「核燃料サイクル政策」を進めれば、使用済み核燃料の放射線レベルを300年程度で天然ウラン並みに低減できると主張しています(直接処分すれば、10万年を要します)。「原子力ムラ」の主張を鵜呑みにし、彼らの展開する巧言(レトリック)のみを信用し、自らは何の検証もしない、科学・技術の現実に全く無理解な発言と言わざるを得ません。再処理工場や高速炉が稼働したとしても、使用済み核燃料の放射線レベルの大幅低減を実現することは不可能です。その再処理工場は、1997年に完成を予定していましたが25回も延期を繰り返し、すでに建設費だけでも3兆円超を投じたにも拘らず、今でも本格稼働の見通しは立っていません。1兆円以上を費やした高速増殖炉「もんじゅ」は、トラブル続きで、政府も技術的困難さを認めざるを得なくなり、廃炉に追い込まれています。

経済界の先棒担ぎ・岸田政権

一方、4カ月前に就任した十倉経団連会長は、岸田総裁誕生に際して、「一番大切なのはエネルギー政策、小型モジュール炉などの開発にも力を入れるべき」とし、福島原発事故以降、原発の新設・立て替えを凍結してきた安倍・菅政権の政策の転換を岸田政権に期待しています。
今、電気は十分に足り、省エネ機器の発達、蓄電法の進歩も著しく、省エネ・節電の気運も盛り上がり、エネルギー需要は減少に向かっています。危険な原発や核融合を推進する必要は何処にもありません。これらによって、エネルギーを生産すれば、地球温暖化も進みます。

税金の無駄遣いを加速する岸田政権

60年以上も前から膨大な予算を投下して開発を続けてきた「地上につくる太陽」・核融合、「夢の原子炉」・高速(増殖)炉、原子力製鉄を目指した高温ガス炉、核燃料サイクルの実現を目指した再処理工場、何れも、未だに実現の見通しは見えません。それでも、いま岸田政権は、新しいテーマのごとく取上げて、さらに膨大な予算を投下しようとしています。それは、これらを進めてきた大企業や「原子力ムラ」を救済するためであり、税金の無駄遣いです。(なお、「原子力ムラ」や政府はこれらの研究を「基礎研究」と言いふらし、ここに予算を投下することが「基礎研究重視」と宣伝しているが、これらの課題に関する「基礎研究」は半世紀以上も前に終わっています。「基礎研究」の成果は、人間の都合によって実用化できるとは限りませんし、全てを人間が利用してよいとも限りません。それでも、膨大な予算を注ぎ込むのが「原子力ムラ」とそれを支える政府です。)
こんなところに使う予算があれば、自公政権が自らの失政で招いた福祉や医療の崩壊を修復し、国民が今もっとも必要としている、福祉、医療の充実に使うべきでしょう。とくに、コロナ禍を通して実感した医療崩壊の建て直しは急務であるはずです。
     なお、自民党や経団連がいかに願望しようとも、それによって原発の危険性が減少するわけではありません。万が一にも重大事故を起こしてはならない原発を、不安なく運転できるほど現代科学技術は進歩していないのです。しかも、原発が重大事故を起こせば、事故炉周辺の住民だけでなく、50q以上も離れた地域の人々にも避難を強いること、避難は困難を極め、長期におよび、多くの関連死を招き、人々に塗炭の苦痛を与えることを福島原発事故が教えています。
原発の推進を掲げる政権を許してはなりません。

「老朽原発このまま廃炉!」行動で岸田政権の出鼻をくじこう

12・5「老朽原発このまま廃炉! 大集会in おおさか」および「10・23(美浜3号機停止日)〜12・4老朽原発このまま廃炉!キャンペーン」行動を成功裏に実行し、岸田政権の出鼻をくじき、老朽原発を廃炉に追い込み、それを突破口に原発全廃を実現しましょう。
関電は、重大事故の確率が高い老朽原発・美浜3号機を再稼働し、高浜1・2号機の再稼働を画策し、高浜3・4号機のプルサーマル運転を強行しています(そのために、11月後半にMOX燃料をフランスから搬入)。危険極まりないこれらの原発の運転を許してはなりません。「老朽原発廃炉!」を勝ち取り、プルサーマル運転を阻止し、原発全廃へと前進しましょう!

福島原発事故帰還困難区域
除染しないで避難指示を解除

政府(復興推進会議と原子力災害対策本部)は8月31日、福島県の原発事故による帰還困難区域について、避難指示解除の見通しが立っていない地域について、「2030年までに、除染しないで避難指示を解除する」方針を決定した。一応、「希望者を対象にする」という条件をつけてはいるが、これはまやかしであり、だまされてはいけない。
当初、帰還困難区域は少なくとも30年間、ここに住む事ができないといわれていた。それがどういう事情で、10年も早く帰還できることになったのだろうか。予想よりも放射線の減衰が早かったのか。そうではない。それは住民の命と健康を無視した、政府の勝手な思惑にあるのだ。

取り残される帰還困難区域

政府は被ばく線量に応じて、2013年までに避難指示区域を3つの区域にわけた。それは、@避難指示解除区域(年間20ミリシーベルト以下)、A居住制限区域(年間20〜50ミリシーベルト)、B帰還困難区域(年間50ミリシーベルト以上)だ。現在、@とAの区域について、除染をおこなったうえで、避難指示が解除されている。しかし、帰還した住民は30パーセントにすぎない。いっぽう、帰還困難区域は除染もおこなわれないで、放置されたままだ。この帰還困難区域は、7市町村337kuに及んでおり、原発事故前に約2万2千人が住んでいた。
2017年、政府は福島復興再生特別措置法を改正して、帰還困難区域のなかに「特定復興再生拠点」を設けた。この復興拠点は27・5kuで、帰還困難区域のたった8%にすぎない。現在、この地域について除染したうえで住民を帰還させようとしている。ただし、政府は住民の健康に関してはいっさい責任をとらない。
また、2020年12月、「年間20ミリシーベルト以下で、個人線量計での被ばく管理」という条件をつけているが、政府は除染しないで避難指示を解除できる仕組みを設けている。現在、「住民からの強い要望がある」という理由のもとに、飯舘村長泥地区に適用されている。

現代の棄民政策

これらの一連の政策を考えると、次のような事が見えてくる。政府は、帰還困難区域についても、できるだけ早く住民を帰還させたいと考えている。それは「帰りたいという住民のつよい願い」というような口実をとっているが、住民を帰還させて、「福島復興を早く終わらせる」というのが本音なのだ。政府はこうして福島第一原発事故を終わらせようとしている。けっして住民の安全を考えて、住民のために帰還政策を決定しているわけではないのだ。さらに、長泥地区の例にみるように、帰還困難区域について、除染をしても効果がないから、除染しないで帰還させたいとも考えている。長泥地区で実証したうえで、これをすべての帰還困難区域に適用しようとしている。
戦前、国策による満洲移民政策によって、東北地方などで、貧しい農民たちは政府の手によって満洲に送られていった。今日においても、同じ棄民政策が福島でおこなわれようとしている。また再び、国家にだまされるようなことをしてはいけない。こんな人民をないがしろにする政府は、人民の力によって粉砕してしまう必要があるのだ。
(津田保夫)

8面

『時代はさらに資本論』を読んで(上)
ベーシックインカムの原資は
松崎五郎

本紙322号(7・15)に、愛知連帯ユニオンの佐藤隆氏が、『時代はさらに資本論』の書評を寄稿されていました。佐藤氏の評論では意味がよく掴めないところがあったので、本屋に買いに行ったのですが在庫がなく、図書館から借りて読みました。感想・意見を述べます。
本書は、佐藤氏が紹介するように、全13章を13人がテーマを分担して書いていて「資本論のそれぞれの内容を簡潔・的確に解説、同時に当該項目について現代を分析するという内容」になっています。概ねそうだなと読めたのですが、3つの章は間違っていると思いました。4章の青柳和身氏の人口再生産論、8章の松尾匡氏の拡大再生産論、終章の小沢修司氏のベーシック・インカム論です。

(1)小沢修司氏のベーシック・インカム論

いまどうなっているのか知りませんが、コロナ禍が始まった頃スペインでベーシック・インカムを実施するというニュースが流れました。
現在、維新の会がベーシック・インカム(BIと略)を提案し、竹中平蔵も月7万円の支給を提唱しているそうです。彼ら新自由主義との違いを、小沢氏は「現行の社会保障制度のうち現金給付部分、例えば公的年金、生活保護、児童手当、失業保険などを[BIに]置き換えるものですが[ここは同じ]、現物給付部分、例えば医療、介護、福祉などいわゆる社会サービスを[BI]支給に伴って廃止する構想[新自由主義の主張]とは違っていることです」と書いています。
現在イギリスでは医療費は無料です。社会サービスを利用している人には、小沢氏が言うように、必要な経費なども支給せねばなりません。完全なベーシック・インカムは高齢者や病人・障がい者・妊婦など働けない人には、必要な経費を超えて上積み支給するものでなければなりません。
私は、現在の複雑な社会保障制度を一本化することは お役所仕事をスリム化する点でベターと思います。上積み分を認可・承認する人は別途いりますが、生活保護の家庭を訪問し調査する人やバイト費の報告を受け支給額の計算をおこなう人など不要になります。
だから、新自由主義のベーシック・インカムへの批判として、社会福祉の切り捨てと批判することは重要ですが、制度の違いとしてはそれほど違いがないので、批判は目的の違いとして展開すべきだと思います。

給付の原資をどうするのか

ベーシック・インカムの問題点は、給付の原資をどうするのかです。小沢氏は「税方式に変更します」とサラッと述べていますが、どれだけの増税になるか、考えたのでしょうか。1人月10万円支給とすると、10万×12×人口で年約160兆円。上積み分を加算すると200兆円はいるでしょう。おそらく現人件費(賃金や役員手当)や配当・企業の内部留保の半分を税金として集めねばなりません。「現収入の半分を税金として納め、ベーシック・インカムを実現しよう」と言わない限り、詐欺だということです。
実際、維新は「原資はさておき…」としています。だから彼らの目的は、皆の賃金を政府に出させて、その分まるまる資本の儲けにしようというモノです。また原資は、増税ではなく国債発行で賄おうと考えているのだと思います。だが、その結果がどうなるかは考えていないようです(国債乱発による国家の破産)。彼らは、かつて「小さな政府」を主張していましたが、いまは政府や自治体からどれだけ金を引き出せるかを考えています。「公」の私物化です。竹中は自治体や政府への人材派遣業でぼろ儲けしています。そして政府は、オリンピックだけでなく、コロナによる休業補償の支払いまで民間に丸投げしています。当然予算には、丸投げされた企業(資本)の儲け分がプラスされています。これが新自由主義の政治です。
その上で『資本論』、つまりマルクス主義としての一番の問題は、ベーシック・インカム論は、分配・消費だけを論じていて、生産が考えられていないことです。分配・消費のあり方は生産様式によって決まります。根本でマルクスの考えと違うことになります。(つづく)

運動つぶしの重要土地利用規制法(中)
築紫 健

機能阻害行為の無規定は、もはや事実(ファクト)の彼方の虚構(フィクション)の世界に属することになる。なぜなら危険の判断は、客観的な事実や事例ではなく、政府の想像または創作した物事に基づいて下されるからである。基地周辺でスマホ操作をする行為も政府が「機能阻害行為」と判断すれば監視と処罰の対象になりうる。
ファクトとフィクションの合成語で「ファクション」という言葉は「事実と虚構を織り交ぜた作品」という意味であり、ノンフィクションとフィクションの中間に位置するものである。今回成立したのは、まさにファクトとフィクションの見分けがつかないファクションから誕生した粗悪な法律といえる。

「例外状態」の恒常化

ではこれが何をもたらすか。イタリア人の批評家ジョルジョ・アガンベンによれば、これは「例外状態」の恒常化につながる法律である。どういうことか。通常、国家の主権権力と市民の諸権利は緊張状態を保っている。国家はそう簡単に個人の財産や生命に手を出せないし、それが守られるからこそ市民も国家の法の支配に同意する。教科書的な社会契約説が守られている状態をステージ1とする。
このバランスが崩れるのが「例外状態の布告」である。国家の安全保障に対する危機が迫っており、それを回避するという大義の下に、政府は通常の法秩序を「宙吊り」にして私権の制限を正当化する。そして政府のみが唯一自由に動ける状況を創り出すのが例外状態の布告である。
1850年に発布されたプロシア法に「保護拘留」という措置がある。これは国家の安全を守るという名目で特定の個人を監護下に置くことを可能にするもので、普通法ではなく、戒厳令を法的根拠にして成立した。その後に保護拘留は廃止されるどころか、ドイツのほぼ全土に拡張され、第1次世界大戦中および後の社会混乱ではさらに適用範囲が拡大された。そして世界で最も民主的と評されたワイマール憲法に盛り込まれ、帝国大統領が国家の安全を確保するために必要な決定をおこなうことができ、その際に個人の基本的権利を宙吊りにできると定めた(同憲法48条)。実際にワイマール政府は、1919年から1924年の間に数回にわたり例外状態を布告し、長いものでは5カ月に及んだ。23年には何千人もの共産主義活動家が収容所に保護拘留された。ここで例外状態の布告によって、法秩序の一時停止と私権の制限がおこなわれ、公的安全に反する人物を拘留できる状態をステージ2とよぼう。(つづく)

(本の紹介)
『長東日誌― 在日韓国人政治犯・李哲の獄中記』
李哲 東方出版

本書は在日韓国人政治犯の獄中日誌。著者が出獄後に体験を回想し、獄中の日々を克明に記す。李哲さん(以下、敬称は略)は、本書を書く理由として、「父が生きたあかしとして、自分の子どもたちに記録を残したいと思った」と言っている。
 李哲は在日韓国人2世として、1948年10月に熊本で生まれた。72年に中央大学を卒業し、73年に高麗大学院に留学している。75年11月22日、朴正煕政権によるデッチあげで「在日同胞留学生スパイ団事件」で結婚式を1カ月後にひかえていた12月11日逮捕される。婚約者の閔香淑も逮捕された。
 南山の地下調査室で、はげしい拷問をうける。拷問にたえかねて自殺をはかるが未遂におわった。以後、この悔しさをばねにして、獄中闘争を展開。しとして、自分の子どもたちに記録を残したいと思った」と言っている。
 獄中仲間は、指でハングルをつくって仲間と会話をおこない、モールス信号音を「打電」して獄中通信をするなど、長期獄中政治犯との交流が生き生きと描かれている。
 死刑囚たちは、いつ死刑が執行されるのかわからない緊張の中で日々をすごす。79年8月15日、李哲は突然の呼び出しをうけ、決意を固めて歩いていく。死刑執行ではなく、無期懲役に。こうして、死刑囚の苦しみから解放された。
 感動的なのは、閔香淑の闘いとオモニ李粉義の闘いだ。閔香淑は、ほう助罪で3年6カ月の懲役刑を受け、その後ふたりは獄中の李哲を支え続けた。閔香淑は支援集会で「スパイがどうしたというのだ。祖国の統一を望む者がスパイなら、スパイこそが本当の愛国者ではないのか」と述べている。また、李哲が一審で起訴内容を認めた事にたいして、オモニは「友人たちが一生懸命救援運動をしてくれているのに、肝心なお前がそんなことでどうするの」と面会ではげます。
李哲は処遇改善を求めて獄中闘争をおこなうが、圧巻は大邸矯導所での85年7月のハンガー・ストライキで、最後は所長に謝罪をさせる。「私はこの事件を機にその後の在獄期間を戦闘的に生きることになった」と総括している。
 88年10月、獄中生活13年後に李哲は自由の身に。在日朝鮮人の元政治犯は60〜70人に達する。これまでに36人の無罪が確定している。なかには、過去をいっさい語らず、痛ましい記憶を忘れ去ろうとしている人もいる。この犠牲のうえに、今日の闘いがあることを記憶に留めたい。なお、李哲は自分の愛称を「長東」としている。この理由については本書のなかで述べられている。是非とも一読をすすめる。(鹿田研三)

(本の紹介)
展望27号発刊

展望27号