未来・第322号


            未来第322号目次(2021年7月15日発行)

 1面  緊急事態宣言下で五輪強行
     命が大事 五輪中止 菅は退陣

     都議選 自公あわせて過半数取れず
     重要選挙で敗北つづく菅政権

     美浜3号機再稼働も10月停止
     6・23行動高揚 廃炉へ向け攻勢を

 2面  7月3日 大飯3号機 再稼働を強行
     若狭の原発 再稼働くりかえす関電

     関電の原発マネー不正還流事件
     起訴を求めて地検前で行動

     美浜3号機運転禁止求めて
     福井・滋賀・京都住民9人が仮処分申し立て

 3面  大阪で五輪反対デモ 6月27日
     リバウンド下の開催許すな      

     6〜7月 あいば野で日米合同軍事演習
     別部隊が演習場外に迫撃砲弾     

     関生弾圧 7・13無罪判決を
     淀屋橋で50人が街宣活動

     連載 介護労働の現場からE
     大阪医療崩壊の中懸命の介護労働続く
     唐住日出男

 4面  連載 #Me Too運動に学ぼう
     党内性暴力事件 真の謝罪のためにL
     革共同の女性解放闘争の検証
     藤野かな子

     ミャンマークーデター抗議セミナー
     全土に広がる不服従運動

     読者の声
     金洙榮さんを偲んで
     大阪 草川けい子

 5面  〈寄稿〉
     書評 『時代はさらに資本論』
     基礎経済科学研究所 編 昭和堂

     「8・6ヒロシマ―平和の夕べ―」の紹介

 6面  兵庫県知事選 維新、自民連合を阻止しよう
     県民党・金沢和夫さんの勝利を

     書評 『災害からの命の守り方』
     ―私が避難できたわけ
     森松明希子/著

     8・3兵庫訴訟 判決前に集会
     優生思想の残る社会を変えよう

     カンパアピール

       

緊急事態宣言下で五輪強行
命が大事 五輪中止 菅は退陣菅退陣

五輪中止を求めて都庁前で集会とデモ行進(6月23日)

東京は第5波の感染拡大

尾身茂会長ら専門家26人の有志による、五輪は「無観客開催」という提言を無視して、五者協議は観客を「上限1万人」と決めた。五輪中止を拒み、有観客での開催を強引に推し進めているのが菅首相本人だ。しかし東京都は、第5波の感染拡大に転じ、人口10万人あたりの直近1週間の新規感染者数は26・49人で緊急事態宣言の目安とされるステージ4相当(25人以上)を超え、10万人あたりの療養者数も32人でステージ4(30人以上)を上回る(6・30時点)。京都大や感染研によると、デルタ株の影響が小さく、五輪開催の影響がないとする「最も楽観的なシナリオ」でも7月中に東京の1日の感染者数は1千人を超える。
五輪を強行するなら、尾身会長らが指摘するように、8月に感染が爆発し重症者数が増え医療体制の逼迫が起こることは明らかだ。最悪のシナリオに向かって突き進む暴挙をとめよう。
世界は今感染力の強いデルタ株が猛威を振るっている。インドネシアでは1日の新規感染者が2万人を超え、酸素と人工呼吸器が不足し死者が増大している。ワクチン接種が進んだ欧州やイスラエルでも、デルタ株が増え感染が再び拡大し、規制を強化している。
ウガンダの選手は2人陽性が判明した。入国時に陽性が判明した1人は隔離したが、残り8人は濃厚接触者であるにもかかわらず、泉佐野市に移動させた。国は入国時の水際対策を放棄し、濃厚接触者調査は受け入れ先の保健所がおこなうと主張したが、受け入れを中止する自治体や批判が続出。ホストタウンまで車で5時間以上かかる場合に限り、濃厚接触者の疑いがある人をホテルに隔離するに変えた。すでに入国選手団から計7人のコロナ感染が出ている。

五輪貴族はVIP用のラウンジで

小池都知事や橋本組織委会長が「無観客も」と口にし始めたが、IOCや競技団体の関係者らについては「大会の関係者であって観客ではない」(武藤事務総長)と特別扱い。学校の五輪観戦も1万人の枠外だが、千葉、埼玉、神奈川の三県だけでも6割が中止した。 これまでの大会では「五輪貴族」がラウンジで豪華な料理と酒を楽しみながら競技を観戦するのが通例で、今大会は酒の提供は見送られるが、組織委は「予定通り運営」と回答。23日の開会式には、最大で1万人程度の大会関係者がいるとされる。

「命よりカネ」に怒り

放映権をもつ米NBCは、史上最高額となる12億ドル(約1320億円)超の収益を見込んでおり、「公衆衛生上の災害は、日本人に最も大きな打撃を与える」「モラルハザード(倫理観の欠如)」だと米国で批判が殺到している。パソナ(竹中平蔵会長)も、コロナ禍で純利益は67億円と前年の5億9400万円から約11倍に増やし、五輪でも43の競技会場の派遣スタッフを全てパソナが独占し、ピンハネ疑惑も浮上している。
7月4日東京都議選で、自民党は公明党とあわせても過半数に届かず、五輪とコロナ対策への批判がたたきつけられた。オリ・パラに使う莫大な税金をコロナ対策と医療の充実に使うべきだ。利権まみれのオリ・パラを中止させ、菅首相を追い落とそう。(花本 香)

都議選 自公あわせて過半数取れず
重要選挙で敗北つづく菅政権

7月4日投開票の東京都議選で、政権与党=自民党・公明党は127議席の過半数を取れず敗北した。09年の政権交代前の都議選より少ない33議席で、公明党23議席とあわせて56議席で過半数を大きく下回った。これで菅政権は今年1月山形県知事選以来の与野党対決大型選挙で、3月千葉県知事選、4月の3国政選、6月静岡県知事選とすべて敗北。理由はコロナ失政、五輪第一、金銭腐敗、核心的課題について逃げ回り説明を回避する姿勢そのものが批判された。
眼前の東京五輪でリスクは一切説明せず、「安全・安心」をくり返すだけの手法が民心の離反を招いたのだ。五輪での高揚感の内に解散・総選挙をおこない政権維持の策に赤信号が灯った。衆議院議員の任期は10月21日だ。今こそ五輪反対・菅退陣の大衆行動の中で菅を打倒しよう。

美浜3号機再稼働も10月停止
6・23行動高揚 廃炉へ向け攻勢を

原子力事業本部に抗議(6月23日)

6月23日、関西電力は40年超・老朽原発の美浜3号機(福井県美浜町)を再稼働させた。政府は、40年超え稼働は「例外中の例外」として、原則として認めないとしてきた。老朽原発はいつ事故をおこしても不思議ではない。再稼働を許してしまえば、危険な老朽原発が次々に動かされていく。これに危機感をいだく人びとが全国から美浜現地にあつまった。
 正午、美浜町役場の隣にある「はあとぴあ」駐車場に350人が集合した。ここから関西電力原子力事業本部までデモ、原子力事業本部に申し入れをおこなった。その後、美浜原発前の町営公園・シーパーク丹生に移動して、午後2時から美浜原発3号機の再稼働に抗議する集会がおこなわれた。

地元住民は合意していない

 集会場は美浜3号機を正面にみすえる海辺の公園で、主催は、老朽原発うごかすな! 実行委員会。主催者あいさつは、〈オール福井反原発連絡会〉が「私たちがおこなった住民アンケートでは、『想いは同じ』という声がよせられている。一部の人間と合意をしているだけで、地元住民はけっして合意していない。あきらめないで、これからも闘っていく」。
 地元住民を代表して、美浜町に隣接する敦賀市在住の山本雅彦さんは、「21日に、美浜3号機の運転禁止を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。争点を2点にしぼって、年内に決定をかちとりたい。何としても美浜3号機を止めたい」と決意を語った。

世界に迷惑をかける

 福島から、黒田節子さん〈原発いらない福島の女たち〉がアピール(別掲)
 ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン代表は、「老朽原発を動かすことは、世界にたいして加害者となることだ。世界でも、40年超原発が増えてくる。美浜3号の再稼働を認めてしまうと、世界に迷惑をかけることに。何としても止めなければならない」と述べた。伊方、東京、近畿圏から大阪、兵庫、奈良、京都などから発言がつづいた。

人の命などどうでもいい?

 釜ヶ崎日雇労働組合の三浦俊一さんは、「2004年に、美浜3号機で蒸気配管の破断事故があり、5人の労働者が亡くなっている。28年間、1回も点検していなかった。この時、現場に60人の下請けの労働者がいたが、関電社員はたった1人。関西電力は安全を軽視している。原発で働く人たちの命を守るには、ただちに原発を止める以外にない」。
 きょうとユニオンの服部恭子さんは、「新自由主義は、どれだけ人の命を粗末にしているか、労働現場で実感してきた。その典型が老朽原発再稼働だ。関電や菅政権は、資本の儲けのために人の命などどうでもいい。わたしたちは原発より命、カネより命なのだ。原発のない、当たり前に安心して生きていける社会を」。

さらに闘いを大きく

 集会まとめで、〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉木原壯林さんは「今日の闘いは、新たな出発点にすぎない。今日の闘いが歴史的な日になるように、さらに闘いを大きくしていこう」とアピールした。集会後、水晶浜近くにある原子力防災センターまでデモ。原子力PRセンターは美浜原発に渡る橋の入り口で、ものものしい警備に。美浜原発を右方向にみおろしながら、「美浜3号機をすぐさま止めろ」と叫んだ。この闘争は廃炉を実現する新たな闘いの出発点なのだ。反原発の闘い、ヒロシマ・ナガサキの闘い、フクシマの闘いとつながり、原発のない世界、人間の命が尊重される世の中をつくりあげていこう。

<黒田節子さんの発言>

(関電原子力事業本部前と原発前での発言をひとつにまとめています。)
 3・11以降、フクシマの問題は何も解決していません。福島では、今でも季節の山菜は食べられません。先日、政府は汚染水の放出を決めました。これにたいして、原発立地地域の土地所有者は「汚染水貯蔵タンクを造るために自分の土地を提供する」と言っています。しかし、東電と国は、これをまったく無視しています。カネがかかるので、やろうとしないのです。福島では、今でも震災関連死が増えています。ほとんど原発事故関連でなくなった方です。10年がたち、PTSDを発症する人も増えています。福島の現実は何も変わっていないのです。こういう状況のなかで、老朽原発を再稼働させることなど、絶対にあり得ない。福島に住んでいる者からすれば、傷口に塩をぬられるような思いです。再稼働は絶対に許せない。ともにがんばっていきましょう。

2面

7月3日 大飯3号機 再稼働を強行
若狭の原発 再稼働くりかえす関電

大飯原発ゲート前で抗議集会(7月3日)

7月3日、関西電力は大飯原発3号機の再稼働を強行した。当日、福井県おおい町には、地元福井をはじめ、東京、関西一円などから60人を超える人々が集まり、「再稼働反対」、「全ての原発を廃炉に」、「決してくじけない、関電に負けない」と声をあげた。主催は老朽原発うごかすな!実行委員会。
大飯原発3号機は、昨年7月に定期点検入りしたが、加圧器スプレイライン配管が大きく損傷していることが発見され、長期にわたって運転できない状態が続いていた。また、大飯原発3、4号機について、大阪地裁森鍵一裁判長は昨年12月4日、「大飯原発の基準地震動は、平均値のバラつきを考慮しておらず、過小評価している」として大飯原発の設置許可を取り消した。この判決に対して国は控訴しているが、国や関電は大阪地裁の一審判決をなんら受け止めることなく、一方的に再稼働を強行したのである。

デモでゲート前へ

午後1時、大飯原発から1・5qほどのところにある「はまかぜ交流センター(しーまいる)」横の公園に集合。短時間の出発集会ののち、大飯原発ゲートに向かって町内をデモ行進。集会では、7月2日、再稼働を強行した老朽原発美浜3号機でトラブルが発生したことが報告され、関電に対する怒りが倍加する。
大飯原発ゲート前に到着後、その場で抗議集会。大飯原発の対岸にある小浜市(おおい町に隣接)の中嶌哲演さんが冒頭あいさつ。その後、各地からの発言や、コールなどが続いた。6月21日、大阪地裁に、老朽美浜3号機運転差止めを求める仮処分を申し立てた原告の一人、敦賀市の山本雅彦さんは「大阪地裁から7月中旬以降7月中に第一回目の審尋をおこないたいと連絡があった。また、大阪地裁の合議でおこなうことも決めた。早期の運転差止め決定を勝ち取りたい」と報告。

12月、大阪市内で大集会

〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉木原壯林さんは、「6月23日に再稼働を強行した老朽原発・美浜3号機が、10月23日に停まる。それをうけて、老朽原発の息の根を絶つたたかいとして、12月5日に「老朽原発このまま廃炉! 大集会(仮称)」を大阪市内で万をめざす大集会として開催することを報告した。抗議集会の途中、ゲート前で関西電力に申入れをおこなった。(仰木 明)

関電の原発マネー不正還流事件
起訴を求めて地検前で行動

6月28日、「起訴を求める大阪地検前行動」がおこなわれた(写真上)。このかんコロナ禍で中断していて、数カ月ぶりの再開。5月、一部で不起訴が決まったかのような報道がなされたが、依然「起訴」「不起訴」の処分は決まっていない。
〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉は、「今回、明らかになった原発マネーの不正還流事件、このお金はどこから生まれたのか。闇のお金が、原発の地元工作に使われている。このお金を断ち切ることが必要だ。そのためには、随意契約ではなく、競争入札の比率を上げていくべきだと言ってきた。競争入札比率を上げることは、関電が今後、業者選定で透明性を高めることになる。しかし、美浜3号の再稼働への同意取り付けにあたって、美浜町を何度も関電幹部が訪問した際に、『今後も美浜町内の業者に対しては特命発注(競争入札ではない、随意契約)によって、地元企業に工事を出す』と言って、利益供与を約束している。そうして地元同意を取り付けている。まさに関電の闇のお金を使って、高止まりの契約で地元に利益供与を約束するなかでしか原発は動かせないということを実証するようなことを、関電は今もやっている」とアピールした。次回は7月26日、午後1時から。

美浜3号機運転禁止求めて
福井・滋賀・京都住民9人が仮処分申し立て

関西電力が老朽原発・美浜3号機の再稼働を強行した6月23日の2日前、福井、滋賀、京都3府県の住民9人が、美浜3号機の運転禁止を求めて大阪地裁に仮処分を申し立てた。弁護団11人の共同代表は井戸謙一、河合弘之の両弁護士。
 当日、申し立てに先立って、12時半から大阪地裁南側の公園で集会をひらいた。

申し立て人の思い

 集会では、申立人のひとりで美浜町に隣接する若狭町の住民・石地優さんが思いを述べた。
私は美浜原発3号機からは15キロ圏内に入るところに住んでいます。大学のとき以外はずっとそこに住んでいます。大学を出て地元に帰ってきた1976年に、美浜原発1号機が燃料欠損事故を3年半も隠していたということが大きく報道されたのを覚えています。記事には、ちょうどその年に、この美浜3号機が営業運転を始めたということも書いてありました。
 その後、美浜原発では、2号機で蒸気発生器の破断事故が起きて、日本で初めて緊急炉心冷却装置が動くという事故(91年)があり、美浜3号機では2次系配管が破裂して蒸気が噴き出し、11人もの方が死傷する非常事故(04年)を経験しております。
 そして、福島事故が10年前にあり、にもかかわらず今度老朽原発=美浜3号、高浜1号、2号を動かそうとしていることに対して、今日この申し立てをするに至りました。
 2つ理由がありまして、ひとつは二度とふるさとを追われて逃げ惑うことがない、そういうことをおこさない。もうひとつは、これ以上、使用済み核燃料、核のゴミを増やさないということ、この2つが申し立てをした理由です。(中略)
 福島事故の教訓を学んでないということは、事故がまた起きるということで心配しております。特に美浜原発は、避難計画のなかでは約28万人の人が30キロ圏内に入っていまして、ほとんど逃げる道はなく、事故で寸断されれば逃げるルートが失われます。
 もうひとつ忘れてはならないことは、30キロ圏内には琵琶湖があります。琵琶湖は避難するわけにもいきませんので、(近畿全体)1400万人の飲み水にも影響すると言われています。こういう事態を考えてみれば、美浜3号機は絶対動かしてはいけない原発だと思います。そういうことを強く思って、この申し立てに参加しました。止める決定が出ることを望んで私からの発言を終わります。

争点は地震と避難問題

 集会後、裁判所に向け入場行進をし、申し立てをおこなった(写真上)。その後、場所を移し、記者会見と報告会がおこなわれた。今回の申立は、早急に決定を得るために争点を絞っている。申立人共同代表の木原壯林さん〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉によれば、
@原子炉直下に破砕帯4本など活断層多数に囲まれ、地震によって重大事故を起こしかねない美浜3号機の危険性。この中で、過小な基準地震動を想定して設計された原子炉では、さらに大きな基準地震動が想定されている現在、安全確保(耐震性)に余裕がなくなっていること(安全余裕の食いつぶし)、規制委が原子炉敷地の地盤変位のリスクを考慮していないこと、原子炉至近に震源があること、繰り返しの地震が発生する可能性、基準地震動策定に用いた経験式で得られた平均値は、過小評価であること(昨年12月4日の判決で大阪地裁が指摘)、などを訴える。
A美浜原発3号機が重大事故を起こしたとき、住民避難は不可能。この中で、合理的な避難計画は立てられていない。避難は不可能で、重大事故は深刻な人格権侵害となる。多重防護第5層(重大事故時の避難対策)は不可欠で、予防的なものではない。屋内退避は不合理である。(入江吾郎)

3面

大阪で五輪反対デモ 6月27日
リバウンド下の開催許すな

6月27日、大阪市内で五輪反対デモがおこなわれ90人が参加。難波の元町中公園で集会。デモは休日の人出でにぎわうアメリカ村、御堂筋を練り歩き、出発地点にもどった。主催は、〈東京オリンピック・パラリンピック反対! 実行委員会〉。
集会の最初に、AWCユースが、午前中におこなわれた大阪入管への抗議行動を報告。大阪入管には長い人で7年近くも収容。仮放免でも就労を禁止され、医療も十分受けられず、移動制限も課され、人らしく生きるための社会保障からも排除する日本の入管体制の非人道的な現状を指摘。外国人を犯罪者、テロリストとして排除するのは日本の植民地支配の時代からのもので、その観点からもオリンピックに反対していきたいと訴えた。
次に、連帯労組関西地区生コン支部・武洋一書記長が特別報告。関生に対して戦後最大といわれる89名の逮捕、67名の起訴という大弾圧は関生が国の政策に反対し、大企業の収奪の仕組みを変えていこうとしているからだ。コンプライアンス活動に弾圧を加え、労働者が生きるための退職金を要求すると「恐喝」と言い、労働条件の向上のためにストライキをすると弾圧してくる。ストライキは人らしく生きる権利だ。これが否定されたら我々は生きていけない。こんな状況でオリンピックを強行するなんて許せないと訴えた。発言はさらに〈3・11東北・関東 放射能汚染からの避難者と仲間たち(ゴーウェスト)〉、リニア市民ネット大阪など。最後に集会宣言が読み上げられ、デモに出発した。コロナ感染者のリバウンドが現実の中、多くの人たちの命を犠牲にして、金がもうかればよいという東京オリンピックなど絶対許すわけにはいかない。

6〜7月 あいば野で日米合同軍事演習
別部隊が演習場外に迫撃砲弾

高島市内をデモ行進(6月27日)

6月27日、滋賀県高島市で「先制攻撃の日米合同軍事演習反対!憲法改悪阻止! あいば野集会」がおこなわれ、100人が参加した。主催は、〈平和フォーラム関西ブロック〉と〈2021あいば野に平和を! 近畿ネットワーク〉。
今回の日米合同演習は「オリエント・シールド21」と銘打ち、北は北海道・矢臼別演習場、南は鹿児島県・奄美駐屯地まで、そして近畿ではここ饗庭野演習場、伊丹駐屯地、京都・経ヶ岬の米軍Xバンドレーダー基地も対象に、陸上自衛隊と米陸軍の合計3千人が参加する大規模な実動訓練=合同演習で、期間は6月18日から7月11日。
滋賀県高島市の饗庭野演習場では、上記日米合同演習とは別に実射訓練をおこなっていた陸自が、6月23日、120ミリ迫撃砲を演習場外に打ち込むというあってはならない事故が起きた。目標を大きくそれて演習場を飛び越え、国道367号線近くの山林に着弾した。当時国道367号線上の着弾地付近では道路工事がおこなわれており、一歩間違えば、作業していた労働者を直撃しかねない事態であった。饗庭野演習場では事故が頻発しており、2018年には、駐車していた乗用車の直近に着弾し、車が破損した。市民の安全をおびやかしながら日々演習という名の戦争のための訓練を強行しているのだ。
集会は、滋賀県平和・人権運動センターの司会で、主催者挨拶、連帯の挨拶がおこなわれ、〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉永井友昭さんが、京丹後の米軍Xバンドレーダー基地の状況を報告。沖縄の山城博治さんからメッセージが。
今回の合同演習の発表は演習開始1週間前で、抗議集会準備の時間も取れない中で、戦争のための日米合同軍事演習反対の声をあげた。6月23日の陸上自衛隊による迫撃弾の誤射を許してはならないという思いを強く感じさせられた集会、デモであった。

関生弾圧 7・13無罪判決を
淀屋橋で50人が街宣活動

7月5日夕方、淀屋橋で関生支部への不当弾圧とたたかう〈労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会〉による街頭宣伝がおこなわれた。多くの労働組合から参加があり、50人近い仲間が集まった(写真)
アピールは〈労働組合つぶしを許さない兵庫の会〉から武庫川ユニオン、大阪市職の仲間、大阪全労協、関生支部の武洋一書記長、なかまユニオン、関西合同労組、全港湾大阪支部など。
武書記長は、阪神大震災のとき水増しした生コン(通称/シャブコン)などによって阪神高速を支えるコンクリートの柱がたくさん折れ、調べたらコンクリートの柱の中から自転車や長靴など通常では考えられないものが出てきたことを指摘し、関西生コンの企業への監視活動、安全問題を順守させる活動(コンプライアンス活動)は私たちの生活と安全を確保するためのものであり、これを違法として逮捕・起訴するのは私たちの安全をないがしろにすることである。また組合ができる前には保育所に提出する就労証明を何の問題もなく出していたのに、組合ができると就労証明を出さなくなり、出すように求めると強要として逮捕・起訴してきた。人らしく生きるためのストライキを弾圧されたら私たち労働者は生きていけない、と弾圧の不当性を訴えた。

7月13日の判決公判に集まろう

7月13日には、関生支部・武建一委員長の大阪ストライキ事件と滋賀コンプライアンス事件(威力業務妨害・恐喝未遂)の判決が出される。検察は、殺人罪に匹敵する8年もの求刑をしている。こんな弾圧はぜったい許せない。
判決は7月13日、午前10時。9時半から傍聴券の抽選。当日、8時半から公判終了まで、大阪地裁南側(西天満若松浜公園)で座り込み集会がある。ぜひ参加しよう。

連載 介護労働の現場からE
大阪医療崩壊の中懸命の介護労働続く

唐住日出男

感染爆発と介護

 4月中旬、筋ジストロフィーを生きるKさんの介護者が、コロナウイルスに直撃された。
深夜、Kさんのおつれあいからメール。「ヘルパーAさんの介護相手の方が、PCR陽性。Aさん、PCR結果待ち」。
毎週金曜日夜21時から、私がKさんのベッドへの移乗と就寝準備を手伝ってAさんに引き継ぎ、彼が朝まで介助。5日前も。
 彼が「陽性」だったら、Kさんは。私は、その後、2人の重症者との介護。どこまで崩されるのか。怖い。結果、Aさんは「陰性」。だが、「濃厚接触者」となり、2週間勤務不可。私がカバー。1週間後、Kさんにかかわるヘルパー多数が、「濃厚接触者」となった。すぐに、皆でカバー。
私は4月21日午後4時間半、Kさんにかかわり、夜、別の方の泊り介護12時間、翌朝Kさんのところに戻って4時間半。これが、2週間。

他者と自分の体

 たちまち、私の体が変調。左足指に痛風。鎮痛剤(ロキソニン)をのむ。深夜自宅で喘息発作、目覚める。吸入薬使用。「今すこしがんばってくれ」自分の体に脳に頼む。
「自宅睡眠は、週4日ある」。何とか自分と折り合いをつける。コーヒーを飲む。CDを聴く。ブルース・スプリングスティーン『ネブラスカ』。詩はアメリカ労働者階級の状態。また眠る。
 月曜日、泊り介護。先輩とふたり体制。Kさんが目覚める。「難儀やぞ」ギョロッと目が合う。痰を吐く。お茶。薬。尿。
 Kさん「映画で見た。剣が岳に仙人が居るというので、若者が会いに行くんやが…会えたんやったかな」。私「ふたりで仙人になりましょか」。彼「あなた、もう、なってる」笑う。Kさん、ベッドの背をたおす。私、ふとんをかける。灯を消す。Kさんの浮腫んだ足裏・甲を揉む、15分、呼吸器の音が安らかになる。私も眠る。

医療逼迫というが

 コロナ禍で大阪は医療崩壊というが、現実は、大阪の医療体制がコロナウイルス感染拡大に対して貧弱すぎるのだ。生命とテンビンにかけて、経済を優先した政策の結果である。
そして今、多くの民衆が感染爆発にのみこまれ、生命を落としているのだ。富裕者と貧窮者、それぞれの人口に対する死者の比はどうか。連日50人余の死者。誰が死んでいるのか。
 5月16日の新聞――感染者と死者の比率は、第3波が2・6%。第4波が1・0%。貧弱な医療体制の中、医療・救急スタッフは多くの生命を守り抜いているのだ。それでも入院できた人は、発症者の10%である。
3年前から、私は介護職だけでは食っていけず、学童保育の仕事もしている。6月はじめ、ある少女を2カ月ぶりに送迎車に乗せた。私「丸くなったな」。少女「食った、寝た、太った」。さらに「お父さん、お母さん、コロナに感染。けど入院でけへんで、ずっと家に。私(うち)らも外にも学校にも行かれへんかった」。 
 両親は何とか、子ども達への感染をくい止めたというのだ。

コロナ、五輪、命

 そんなある日、私たちヘルパーは、ALS (筋萎縮性側索硬化症)を命がけで生き抜いている方の外出支援。車を走らせる。
滋賀県琵琶湖大橋で異様な車列にでくわした。真ん中の大型トラックに荷台はなく、巨大な五輪聖火のトーチが2本交叉、鎮座している。同僚ヘルパー「あした、ここで聖火リレーがある」。
 どの車もケバい色彩。大きな文字『日本生命』。五輪で人の命を踏みしだき、奈落に突き進む日本総資本、スガ、小池。
6月下旬になり関西は、コロナ感染は下がった。だが、より強大な波(ピーク)が来る。その時、介護者は、強くなった結束でKさんたちの命を守り抜く。ともに生きる。
4月21日、私は『後期高齢者』となった。(つづく)

4面

連載 #Me Too運動に学ぼう

党内性暴力事件 真の謝罪のためにL
革共同の女性解放闘争の検証

藤野かな子

(1)清水丈夫論文(71年)

リブ派の糾弾を本質的に否定

1973年の田島優子論文に先立つ71年に、清水丈夫の「女性解放闘争をめぐる諸問題」(清水選集第3巻)が出ている。ここで清水は、リブの糾弾を積極的に評価すると言いながらも、その思想的弱点を逆に批判し、最後は党派であったことを総括せよと切り返し、その糾弾を本質的には否定している。そして革共同の革命的女性解放闘争の創成が必要だとしている。
帝国主義支配階級の男性と被支配階級に属する労働者階級人民の男性を階級的に区別することなく「男」と一括りにして打倒対象とするようなリブの糾弾はたしかに没階級的であり、糾弾至上主義的誤りを含むものだった。

男性の女性に対する血債は?

しかし重要なことは、清水がここで「便所からの解放」というリブの性暴力に対する糾弾をうけたにもかかわらず、これを正面から受け止めなかったことである。
清水論文で「女性の抑圧・差別からの解放」に触れながら、性奴隷化という階級社会の成立以来数千年にわたる女性差別の歴史を対象化することなく無視している。リブにはアジア人民に対する血債の立場がないと批判しながら、数千年来の男性の女性に対する血債については明言することを回避した。
血債の立場とは、日本の労働者階級が本来は日本帝国主義にむけるべき銃を、侵略戦争に加担することによってアジア人民に向け強制してしまった流血、すなわち血の債務を今度こそ日本帝国主義打倒の闘いにおいて流血を恐れず闘うことによって返済するという立場である。それは同時に謝罪と償いという意味をもつと私は考えている。男性の女性に対する血債の立場は革共同において確認されているものと私は漠然と前提化してきたが、H事件の後「障害者」の女性の仲間に指摘されて改めて気がついた。ふりかえってみると田島論文にもひと言もないのだ。
また性の人間的共同性を回復するために不可欠な、性において女性が主体性を奪還する闘いに対しても「プロレタリア家族の即自的解散やフリーセックス論」をとりあげて「反撃」している。しかしフリーセックス論は、それが間違っていたとしても女性の性における解放の要求、主体性の奪還をかけた決起を含む。その核心点に向き合うことが革共同には求められた。
「健常者は敵だ」と、支配階級と被支配階級に属する「健常者」の区別なく差別者を糾弾する所から始まった「障害者」の糾弾を、革共同が真っ向から受け止め自己批判したのとは対照的な対応だ。
被差別者が当初、階級概念をもたず目の前に立ち現れる差別者を支配階級と被支配階級の区別なく敵としてとらえるのは当然であり、たとえそれが理路整然とした主張でなかったとしても、その人間としての叫びや悲鳴にも似た糾弾のなかにある核心点を受け止めることこそ革命党には求められていたはずだ。
女性が被差別者の立場から感性を解放し怒りをとき放つこと、男性が問われることに対する清水の恐怖がそこに感じられる。しかし、それではある意味で女性差別のなかで最も苦しく、まただからこそ声をあげること自体が困難で長きにわたって涙をのんできた性被害の苦しみを、共産主義者でさえ理解し共有することができない。

男性の自己解放の視点

まさにその結果、女性差別との闘いを男性自身の主体的課題として位置づけ、その自己解放闘争として提起することが清水にはできなかった。とは言え少なくとも男性の女性差別に対する自覚、自己変革の努力の必要性については認めている。具体性も実践性もないが抽象的な決意はわずかながら語られている。しかし2年後の田島論文ではこれさえ完全になくなっているのである。

(2)田島優子論文(73年)

田島論文は70年7・7の後、リブの糾弾をうけるなかで、71年全学連30回大会を契機に始まった党内の女性党員や大衆の決起をリブをはじめとする他潮流との「党派」闘争にうちかって、対権力の武装的決起と対カクマル戦のための軍団生活への決起、とりわけ党建設に集約することを課題としてだされたと思われる。
それは女性差別を私有財産制と家父長的家族制度のもとでの女性の家内奴隷化と子産み道具化、これを補完する公娼制度と規定し、ブルジョア社会では女性は賃金奴隷と家内奴隷の二重の抑圧下におかれているととらえ、女性解放は帝国主義を打倒するプロレタリア革命のなかにあると「女性解放・日帝打倒」の路線を提起した。

性暴力と性奴隷化が欠落

この田島論文を、いま#MeToo運動の地平からとらえ返してみると、いろんな問題点が見えてくる。
まず、女性差別の歴史における性暴力と性奴隷化についての把握が、決定的に抜けていることだ。性の商品化についても、資本主義以前の階級社会のもとでの歴史には触れず、商品化は資本主義から始まったとしている。売春以外の巷にあふれる非合法な性暴力については、まともにふれていない。

女性解放が女性だけの闘いに!?

したがって男性の女性に対する血債も対象化されない。血債は清水論文と同じく女性の抑圧民族としてのアジア人民に対するものとしてのみ強調されている。また女性解放の実現をプロレタリア革命、現在的には党建設に解消している。日本共産党やカクマルの解消主義を批判しながら自らもまた解消しているのである。さらに7・7にふまえるとしながらも差別する側の変革の課題は対カクマル戦下の軍団生活の問題におきかえられている。 差別を廃絶するもう一方の主体である労働者階級と革命党の男性の自己解放闘争が忘れ去られている。女性の闘いだけが一面的に強調され、党生活における男女の性と生殖、とくに結婚および性生活も「自己変革即対象変革」として女性が一方的に闘いとるものであるかのように位置づけている。この点では清水論文より後退している。(つづく)

ミャンマークーデター抗議セミナー
全土に広がる不服従運動

6月20日、神戸市内で〈ミャンマークーデター抗議西日本実行委員会〉の主催でクーデターに抗議するセミナーがおこなわれた。セミナーのテーマは「殺されても殺されても抗議を貫いてなぜ軍政に反対するのか」。会場は満杯になった。マスコミも取材に来ており、セミナーの様子はMBSの報道番組で放映された。会場では3人のミャンマー人青年が自分の経験を話した(写真)
最初に司会のミャンマー人女性は、「ミャンマーには80の民族があり、民族が違うと本当に言葉が通じない、中国国境に近い所の民族は中国的な顔立ちであり、西のインドに近い所の民族はインド的な顔立ちであるが、こういう多民族国家が私たちミャンマーの現実です」と話した。
最初に流された映像の中で、ミャンマーの一部地域はすでにゲリラ戦になっており、ミャンマーの状況は韓国光州とも重なっていることも指摘された。負傷した市民を運んでいた救急車を国軍が停車させ、救急隊員を銃の台尻で殴っている凄惨な場面や、デモ隊を銃撃している場面等が流された。
カレン族の青年は「クーデターは新しい世代の未来と国民の希望を破壊した。なんとしても軍政を倒したい、勝利すると信じている」と話した。
次のカチン族の女性は軍政になぜ反対するのかを話した。女性のいた村は電気もないところだが、そこに国軍が来て村の茶畑やバナナ畑などを勝手に奪い、そこに国軍の施設をつくった。また村の大切な牛や馬等を盗み、食べてしまった。さらに私たちカチン族にとって忘れられないことがある。それは2015年1月19日、国軍が村の家に押し入り、そこにいた二人の若い女性を暴行し虐殺したことだと話した。カチン族の女性はそこまで話したとき涙で話ができなくなった。しばらくして落ち着いたとき、私たちは生活レベルで軍政に反対しているのですと話した。
3番目に、医師でミャンマー人の青年は不服従運動(CDM)に参加している他の医師たちの声を紹介した。「私は絶対に軍事政権の下で働きたくない」(20代医師、女性)、「不当(クーデター)に加担したくなかったので、クーデターの朝、仕事を辞めることにした」(20代医師、男性)、「旅は長いが、私たちは、決してあきらめずに前進する」(30代医師、男性)。ミャンマー全土に広がる不服従運動は国軍に対する大きな抵抗闘争の基盤になっている。
ミャンマー民衆の思いに応える日本の運動を強めていきたいと思った。(三船二郎)

読者の声
金洙榮さんを偲んで
大阪 草川けい子

5月の初め、在日外国人「障害者」の年金訴訟を支える会から「めざす会ニュース」が送られてきた。2019年12月14日に開催された〈めざす会〉決起集会、同日におこなわれた「金洙榮さんを偲ぶ会」などの報告である。
 京都の在日無年金「障害者」訴訟の原告団長として闘われてきた金洙榮さんは、2019年8月11日に肺ガンのため亡くなられた。
 京都大学でおこなわれた「外登法・入管法と民族差別を撃つ研究交流集会」で、金洙榮さんが初めて登壇し、「一人芝居」のように大きな身ぶりを交えて、在日として、「障害者」として二重も三重も差別されている悔しさ、怒りを表していた、その姿を目にした方も多いと思う。その後、在日無年金「障害者」の仲間との交流を始め、さらに全国の在日「障害者」の仲間と出会うことができた。
 2009年10月、京都の在日無年金「障害者」の仲間と共にいった7泊8日(内2泊は船で)の韓国旅行の思い出も大きい。大阪港からプサンへいって、韓国の「障害者」二人が車で案内してくれた。又、他の韓国の「障害者」とも交流できた。
 金洙榮さんが亡くなられたと聞いて、まだまだ若いのに残念な思いで通夜にいった。棺に納められた金洙榮さんの顔は穏やかで、入管集会での悔しさ、怒りに満ちたあの表情も忘れられない。
 今一度、在日「障害者」の闘いを支え、共に闘っていきたい。金洙榮さんの意志に応えるために「在日無年金障害者・高齢者への救済措置を」の署名をお願いできればと思う。

[注]2021年現在、58歳以上の在日「障害者」、93歳以上の在日高齢者は無年金のまま。

5面

〈寄稿〉
書評 『時代はさらに資本論』

基礎経済科学研究所 編 昭和堂

筆者の一人である松尾匡先生からこの本を送って頂き、ほとんど一気に読んでしまいました。本書は序章・終章を含めて全13章を13人の経済学者・研究者が、資本論全3巻のそれぞれの内容を簡潔・的確に解説、同時に当該項目について現代を分析するという内容になっています。昨今の資本論関係の書籍では、資本論の論理の一部を取り挙げたものや、第1巻を中心とした解説本が多い中で、全3巻をトータルに、その経済学理論の後を正確に追った点で秀逸な書籍であると思います。
また、資本論の理論の発展として、ユニークな提起もなされています。本書第2章では、情報の非物質性(物質への非固着性)と非所有性を取り上げ、労働の物質代謝労働から情報労働への「労働の有機的構成の高度化」を提起しています。本書第11章では、現実の農業(世界の70〜80%が小規模家族経営)の観点から差額地代論と資本論の論理を再評価しています。
本書にご関心のある方は、是非、読んでみて下さい。以下、率直に私の読後感を記してみます。

社会変革とそれを実現する階級闘争こそ重要

本書は、資本主義が人間の発達・社会の発展の潜在力をもたらしながら、個々の労働者と労働者階級の貧困と停滞を作り出しているという矛盾を資本論の視点として提起しています。しかし、その潜在的な発展の力を、現実の人間と人類の発展に転嫁するのは階級闘争を通した社会変革に他なりません。そのことを本書はもっと端的に強調すべきであったと思います。その点は、斎藤幸平氏や白井聡氏の本に比べてインパクトが弱く、もったいないと思いました。

世界体制についての視点の欠落

宇野弘蔵は、資本論を論理的に構成された純粋な資本主義の経済法則であるとし、現実の歴史過程としては、資本主義は商業資本主義―産業資本主義―帝国主義という段階をもって発展したと整理しました。産業資本主義の自由主義段階において純粋な資本主義の経済法則が典型的に展開したとしたのです。本書『時代はさらに資本論』は「資本論を過去の文献としてではなく、現代に生きる分析の書として読む」とするのですから、やはり、帝国主義の時代であった20世紀の末期に登場した新自由主義、また、21世紀冒頭での世界経済のパワーシフトといった背景事情は、最低どこかで押さえておくべきであったと思われます。

利潤率の低下と資本の有機的構成の高度化

本書第9章第10章は、現実に利潤率の低下が続いていること、そこから起こる現象が資本論の指摘そのままであること、現代の金融化と言われる金融資本の過剰も金融資本の展開に完結するものではなく、資本論の「架空資本」の論理に基づき、実体経済の利潤率の低下からもたらされている現象であること(平均利潤率が下がれば、同額の利子が表現する架空資本の価額は大きくなる)が鋭く指摘されています。
しかし1975年以来の、あるいはバブル崩壊以来の利潤率の停滞は、資本論第3巻第13章にある資本の有機的構成の高度化からくる利潤率の傾向的低下であるかと言えば、そうではありません。資本論第3巻の利潤率の傾向的低下の法則については、「置塩の定理」でそれが必ずしも必然でないことが明らかにされ、また、ピケティの「21世紀の資本」でも実証的には否定されているところです。本書第9章でも日本の需要の半数以上は個人消費であることが明らかにされており、資本の循環を考えると、その有機的構成が高くないことは明らかです。また、本書第2章が指摘する「情報化による資本の有機的構成の高度化に依存しない生産力の上昇」も現実的な事象であると思います。
利潤率の低下が資本論第3巻第13章にある資本の有機的構成の高度化からくる利潤率の傾向的低下でないとすると何が原因でしょうか。私は、1975年以来の、とりわけリーマンショック以降の世界的な慢性的な生産過剰状態が原因であると思います。食品は3分の1が廃棄され、アパレルや書籍の廃棄、住宅や粗鋼の過剰も大きな問題になっています。粗鋼の生産設備が廃棄され、期限内に売れなかった自動車やパソコンはモデルチェンジの度に安売りされています。
仮に30%の商品が売れ残って廃棄される、あるいは同じことですが商品が平均で30%の値引きで販売されていると仮定すると、商品が販売できた時の利潤率が43%以上でないと実際の利潤は生まれないのです(販売成就率と利潤率の積が、廃棄率を超えないと実際の利潤を生まない)。

過剰生産=供給が需要を超える原因としての労働人口問題

本書の中では松尾先生が執筆した第8章が数式も多く最も難解でした。そこで指摘されているように、資本論第2巻第21章の再生産表式は商品が全て売れることを前提にしたモデルであること、また、資本の部門間移動や利潤率均等化の法則に基づく資本の移動が捨象されていることは留意しなければならない点です。それに踏まえた上で、やはりこの再生産表式は資本の再生産の条件、逆に言えばその資本の流れの中断としての過剰生産を理解する上で重要な概念整理であると思います。そしてここでは、資本自身が直接生産できない労働人口の問題がボトルネックになることは、歴史的にも幾人かの論者が様々な観点から指摘してきたところです。
資本の有機的組成が一定ならば、一般に成長は労働者の雇用の増大に比例します。ケインズの弟子のロイ・ハロッドとエブセイ・ドーマーは(1930年〜40年代の大恐慌の最中)は、国民所得に対する資本(資産)の比率は所与の技術的な関係に固定されているので経済成長率は人口成長率に等しくなければならない(ナイフエッジの均衡)とし、他方、ソロー(1950年代の大戦後の景気回復の中)は、国民所得に対する資本(資産)の比率は長期的には経済の構造成長率にあわせて調整されるとしました。宇野弘蔵は、資本の有機的組成は好況期にはその現物形態に規定されて不変であるとし、恐慌によって古い生産手段が廃棄されて組換えが進み、新たな生産水準が獲得されるとしました。それでも、いずれにせよ、労働人口の増大が資本の拡大再生産に不可欠であることは言えるでしょう。
置塩の「均衡蓄積軌道」では、一方的に失業者を蓄積させる軌道も、一方的に人手不足が進行する軌道も再生産が持続できないとされるとのこと(本書第8章)ですが、産業資本主義段階では、労働人口を牽引する好況期が、周期的に発生した恐慌を挟んで、労働人口を反撥する不況期に転換するという景気循環をもって資本の蓄積が進んだと思われます(資本論第1巻第23章第3節)。
労働人口については、本書第3章第4章で論じられています。資本論では相対的過剰人口の3つの類型として、流動的過剰人口、潜在的過剰人口、停滞的過剰人口が挙げられています。本書第4章では、家父長的一夫一婦制の家族形態が資本主義の労働人口の再生産の根幹になったことが指摘されています。それでも人口の生殖による増加は資本の再生産の成長軌道にはとても間に合わない水準です。現実には、植民地・従属国への資本の輸出と、そこからの移民の流入、植民地・従属国における圧倒的な停滞的過剰人口の存在が20世紀の資本主義=帝国主義の成長を支えてきたといえるでしょう。
現在、世界のGDPの25%を占める米国は移民によって形成された国家であり、世界のGDPの15%を占める中国は20世紀末になって周辺国から中心に引き込まれた国家です。これだけみても、単純に産業革命以来の資本の同心円的拡大再生産で現在の資本主義の巨大な生産力が形成されたわけではないことは明らかだと思います。

世界のパワーシフトが始まった21世紀は長期停滞が続く一方で、資本の拡大再生産が自然的限界と衝突するに至っています。エコ社会主義と脱成長へ人類史を転換できるのか、それが新しい課題であると思います。

2021年6月12日
愛知連帯ユニオン 佐藤 隆

「8・6ヒロシマ―平和の夕べ―」の紹介

 被爆76周年の今年1月、核兵器禁止条約が発効しました。核兵器のない世界をめざし血のにじむような努力をしてきた被爆者たちの大きな喜びです。(中略)
 「8・6ヒロシマ平和の夕べ」平和講演は、核兵器禁止条約を巡る世界の状況と声、「核と人類」の取材を続ける田井中雅人さんに。被爆証言は「黒い雨」被爆者認定訴訟の原告の方。10年目の福島から、いわき市民訴訟原告団長の伊東達也さん、核兵器廃絶に向け行動する若い人たちの話も。
 8月6日、暑く熱いヒロシマにおいでください。オンラインにご参加ください。「核なき世界」をめざし、ともに考え、行動しましょう。
◎賛同のお願い 個人1口=1000円 
◎郵便振替:01360−0−100176 
◎口座名:8・6平和の夕べ
8月6日(金)開会14時 
 広島RCC文化センター7階大会議室

要予約 
参加申し込み E-mail:86h@heiwayube.org
オンライン参加は oki1121@me.com
主催/8・6ヒロシマ平和の夕べ

6面

兵庫県知事選 維新、自民連合を阻止しよう
県民党・金沢和夫さんの勝利を

川西市内で市民に手をふる かなざわ候補(7月2日)

7月1日から始まった兵庫県知事選。大阪維新の兵庫県政乗っ取り作戦に自民党(菅―二階体制)が呼応し、自民党の支援をはずされた金沢和夫前副知事が「県民党」を名乗り、自民党県議団多数派や立憲民主党、連合などの支援を受け、県下のあらゆる職域団体などを二分する激しい選挙戦となった。
告示日、金沢候補は、午前中は神戸・大丸前の選挙戦定番スポットでの出発式の後、姫路をへて午後3時に尼崎入りをした。阪神尼崎駅前には阪神間の自民党、立憲民主党、無所属などの県議や市議、連合傘下の労組、土地家屋調査士会などの職域団体の人々や商店街の人々などに加え、衆議院選尼崎選挙区(8区)で立候補予定のれいわ新選組の候補者や支持者も合流しその数300人の多種多彩な出発式となった。
冒頭あいさつで黒川県議(自民党・尼崎)は自民党の知事候補選考過程で、国会議員が県議団の決定を転覆した不透明さを訴え、兵庫のことは兵庫で決めるとした。各界の挨拶のあと金沢和夫候補本人が、長く副知事として県下を回ってきたことでの繋がりと、県下各地域の特色を生かした「共にかがやく兵庫を」と訴えた。最後は連合東部地協議長の「団結がんばろう」で締めくくられた。自民党県議から、立憲や無所属の県議、阪神間の自治体議員、地元中小業者、行政書士、私立保育所連盟、連合民間労組、自治労、教組、れいわ新選組など多種・多彩な連合軍の混成部隊だが、「兵庫5国(摂津、播磨、丹波、但馬、淡路)の特色ある自治を!」を体現する出発式だった。
2日目午後、金沢候補は大阪に隣接する兵庫県東部の猪名川町・川西市・伊丹市を駆け巡った(翌日はさらに宝塚も)。いずれも兵庫東部での大阪維新との闘いが勝負を決めるとの思いでの連続行動だ。夕方5時過ぎ阪急駅前での集会で、司会は北上哲仁県議、応援演説の桜井周衆議院議員は、「お隣の池田市のサウナ市長が維新首長の典型」と批判。金沢候補は「日本一の里山=黒川の里山を守ろう」など地域の課題も取り上げアピール。 つづく伊丹市では阪急伊丹駅前に100人近くの市民を前に、3人の市議は保守系の大物と19年春初当選の女性市議(立憲民主)らが並んでアピール。聴衆も教職員組合や、私立幼稚園職員、行政書士会など多士済々。ついで7月5日には神戸で地元中小業者・神戸商工会議所の関係者が総決起集会。
ある種、この「呉越同舟」の「県民党」がだんだんヒートアップし、全県下をゆり動かし金沢候補が勝利するなら、兵庫の政治は確実に変わる。新聞インタビューで「当選度外視」と答えた共産党候補とその支持者は、デッドヒートを競う金沢候補に投票を集中すべきだとの声が高まっている。大阪維新直結の新自由主義政治か、「違いを認める地方自治か」が18日の投票で決まる。金沢勝利へすべての力を結集しよう。(岸本耕志)

書評 『災害からの命の守り方』
―私が避難できたわけ
森松明希子/著

森松明希子さんは、2011年3・11東日本大震災で被災し、福島原発事故で被ばくした。このとき、子どもは0歳と3歳だった。森松さんは2人の子どもを守るために、この年5月に福島県郡山市から大阪に自主避難を決断した。
原発事故から、すでに10年。今日においても、福島は生活できる情況になく、森松さんは現在も避難を続けている。
森松さんは、放射線被ばくからの「避難の権利」・「被ばくからの自由」を求めて「原発賠償関西訴訟」原告団の代表として闘っている。この9年間、さまざまなところで語ってきたことを1冊の本にまとめた。本書は、その9年間の行動と闘いを記録している。森松さんは映像としても記録を残している。こういう形で当事者の叫びが記録され、歴史に残されることは重要だ。
森松さんは、次の言葉を大切にしている。憲法前文にある「われらは全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存する権利を有することを確認する」という文言だ。国連人権理事会でのアピール(2018年)にも、これを引用している。
また、森松さんは国際法にある「国内避難民」の概念を用いて、裁判をたたかっている。これは内戦などによる避難民に適用される人権に関する権利。原発事故は内戦ではないが、住民が「平和に生きる権利」として、当然にも適用されるべきだ。国家が国策として原発を推進しているのだから、反原発の闘いはまさに「内戦」なのだ。
森松さんは、福島第一原発事故を「放射能バラマキ事件」といっている。まさにそのとおり。事故をおこした東京電力は、殺人犯罪をおかしたにもかかわらず、その責任を取ろうとしないばかりか、罰せられることもない。国家の保護をうけて、のうのうと生き延びている。個人は人を故意に傷つければ罰せられるが、国家がおこなう戦争においては何百人もの人を殺せば英雄となるのだ。国家がおこなう原発政策においても、おなじ論理がまかりとおっている。はたしてこれでよいのだろうか。
森松さんの闘いは、基本的人権のひとつに「避難の権利」を確立することだ。しかし、森松さんはこれを一般的に主張しているわけではない。「放射能バラマキ事件」の被害者(当事者)として、原子力災害は「命に関する権利」の問題だといっている。本書の題名が示すように、森松さんの主張の核心はこの点にある。
森松さんは、原子力時代を認めたうえで、その事故に備えて「避難の権利」を求めているのではない。原発が存在するから「放射能バラマキ事件」がおきる。ヒバクシャとして「避難の権利」を獲得することによって、原発のない世界をつくろうとしている。
本書において、森松さんは「わたしはマイノリティに目覚めた」と述べている。この指摘はきわめて重要だ。福島原発事故によって、さまざまな差別がおきた。特に、区域外避難者(「自主避難者」)に女性が多いことから、差別や中傷がおきている。家族崩壊、生活破壊、健康被害などもある。これらの責任はすべて国と東電にあるにもかかわらず、被害当事者が苦しめられている。また、学校においては、避難者の子どもにたいして、さまざまな形で「いじめ」がおきているのだ。これらの矛盾は、闘いによって解決する以外にない。あきらめてはならない。被ばく問題は、被ばく者だけではなく、全人類の問題なのだ。これを自分の事として受け止めてほしい、森松さんはこのように訴えている。
理不尽な世の中にたいする怒りを大切にしたい。この怒りをばねにして、「人間の命が大切にされる社会」を建設するために闘っていくのだ。読者はきっと森松さんの闘いに共鳴し、ともに立ち上がるだろう。本書が出版されたことによって、その共鳴がおおきくなることを確信している。また、そのように本書を活用していきたい。(津田保夫)

8・3兵庫訴訟 判決前に集会
優生思想の残る社会を変えよう

7月4日、神戸市総合福祉センターで「優生保護法被害兵庫訴訟の勝利判決をめざす決起集会」はオンライン参加を含め、247人が参加した意義深い集会であった。
はじめに、藤井克徳さん(JD代表)の講演「ナチス・ドイツのT4作戦と優生思想〜日本の優生政策の源流をたどる…今、私たちに問われていること〜」がオンラインでおこなわれた。今でもまだ根強く残っている優生思想を見逃すことができないと危機感が強く出された講演であった。
明石市長・泉房穂さんは明石市優生保護法被害者支援条例を制定していると語り、最後に原告の小林さん夫婦に支援金を渡した。
支援者からは全日本ろうあ連盟・石野富志三郎さんが「優生思想を根絶する運動を強化する特別決議」を出したと報告。2018年2月1日に、大阪府立聴覚支援学校の児童が下校中、校門前の交差点で重機にはねられて死亡した事件での損害賠償を求める民事裁判で、一般女性の40%で計算すべきという不当な判決に対して怒りを込めて、障害を持つすべての人の尊厳を傷つけるものと弾劾し、優生保護法の被害者への支援をおこなっていくと力強い発言があった。
最後に、弁護団長の藤原精吾さんが8・3判決勝利にむけて闘うとともに、優生思想がまだまだ残っている社会を変えなければと語った。私たちも本当に優生思想がまだまだ残っている社会を変えなければと強く感じた1日であった。
判決は8月3日、午後2時、神戸地方裁判所。(東 和子)

(カンパアピール)

事務所ビル修理と『未来』8ページ化へ
300万円の特別カンパを訴えます
革命的共産主義者同盟再建協議会

外壁修理後の事務所ビル(西側部分)

2021年夏、日本帝国主義政治委員会・菅政権は、コロナ感染症対策失政でかつてない危機にあります。東京五輪の高揚を使い解散・総選挙に勝利しようとしましたが、その目論見は完全に失敗しました。格差・貧困、原発再稼働、沖縄圧殺に対する怒りは充満しています。
この時にあたり、わが革命的共産主義運動は、小なりとはいえ自己の飛躍をかけて、今夏・今秋、新自由主義強行の菅政権打倒の先頭に立つ決意です。そのためには膨大な資金が必要です。特に今回は、長年の懸案であった革共同再建協事務所ビル(前進社関西支社)の修理・修繕をおこないました。また機関紙『未来』の8ページ化に向け、パソコン機器の充実、資料収集も必要です。すでに事務所ビル修理には200万円を拠出しました。今後のカンパは、パソコン機器・図書充実や、事務所内部の改装などに使います。
今夏・今秋のたたかいの出撃拠点として、『未来』による情宣活動強化のため、通常の夏期カンパに合わせて、300万円の特別カンパをお願いします。ともにたたかいましょう。

郵便振替
  口座番号 00970―9―151298
加入者名 前進社関西支社
郵送  〒532―0002
大阪市淀川区東三国 6―23―16
前進社関西支社

お知らせ

次号から『未来』は文字を大きくし、8頁になります。値段は据置き。