「都構想」は3度づけ禁止
2月25日大阪市役所を450人が包囲
都構想反対の民意をじゅうりんする松井・吉村・大阪維新に怒り(2月25日、大阪市役所前) |
2月25日、「大阪市の財産を吸い上げて、夢洲でカジノあかん! 2・25大阪市役所包囲ヒューマンチェーン!」が、〈大阪カジノに反対する団体懇談会〉の呼びかけでおこなわれた。平日11時からの行動であったが、450人が集まった。
「都構想」と同じ
二度の住民投票で大阪市廃止=「都構想」に反対の民意が示された。ところが維新は、これを踏みにじる広域行政一元化条例案を2月25日府議会に、3月4日に市議会に提出し、両議会で3月中の成立をめざしている。条例は、大阪市がもつ都市計画の7分野の権限と財源を大阪府に移管するもので「都構想」と同じ。自治権はく奪の「大阪市乗っ取り計画」だ。
市役所の周囲には、のぼり旗や横断幕、バナーを持った人たちがぞくぞくと集まるなか、11時から街宣行動がおこなわれた。
桜田照雄さん(カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表)は市民に訴えた。「自分たちの思うがままに行政を動かす。議会を黙らせる。長年に渡って築いてきた戦後地方自治における民主主義を根底からくつがえそうというのが広域行政一元化条例の最大の問題だ。この条例は、行政の権限を立法の権限に優先させるもの。絶対に成立させてはならない」「副首都なるものを基本理念として掲げている。こんな言葉は地方自治法にはない。副首都という考え方、大阪が東京と並び立つ街でなければならないということが初めて唱えられたのは、60年も70年も前のはるか昔。カビにまみれた考えを、今コロナ禍で苦しんでいる大阪府民・市民に押しつけていいのか。悪名高い副首都推進局が勝手に作り上げた作文だ。詐欺的でミスリードな条例は許されない」。
正午、距離約477mの市役所のまわりを包囲した450人がつながりヒューマンチェーンが完成した(コロナ対策のため手はつながず)。みんなで「広域行政一元化条例廃案」「住民投票の結果を守れ」「カジノはやめてコロナ対策」の大コールとウェーブ。
松井市長は即退陣
この後、市役所南側に集まって抗議集会。呼びかけ人の大垣さなゑさんは「住民投票で議決したことを守らないばかりか、全く同じものを多数で制することができる議会の中に持ち込んで思うがままにすることに腹が立つ。選挙は行かないが住民投票には行った10%の人たちの力が私たちの勝利をもたらした。この人たちを味方にして次の選挙で大阪市長の首を取ろう」。 学校潰しに反対する生野区の住民は「私は74才だが、昨年11月の住民投票は、今までの中で一番声を上げ動き回り二度目の勝利を果たした。ここで本来なら松井市長は即退陣です。のうのうと広域行政一元化なるものを持ち出してきて、私たちを愚弄している」。
大阪市をよくする会からは「1月から取り組んできた『松井市長、住民投票の結果を守れ』という請願署名はのべ2万9千人にのぼる。条例案の先に狙っているのはカジノと夢洲の大型開発だ」。
1月末に条例案骨子が公表されて、市民の怒りはまたたくまにひろがっている。反対行動を起こし、大阪市議会での広域行政一元化条例案の成立をとめよう。(花本 香)
再稼働強行の関電
3・20 高浜現地で抗議を
2月12日、福井県の杉本知事と関電森本社長、資源エネルギー庁長官、梶山経産大臣(リモート参加)の会談が開かれた。2023年末までに中間貯蔵施設の候補地を見つける関電の空手形に、国としても全面的に協力するとし、杉本知事はそれまでの「使用済み核燃料の県外搬出先を示すのが同意の前提」という態度を一変させ、開会中の3月県議会の冒頭に検討を求める要請をおこなった。この知事の豹変には与党会派からも疑問が出され、県議会は紛糾。
被害者、避難者を踏みにじる
また関西電力は、停止していた高浜3号機を3月7日に再稼働した。「3・11」から10年を迎えるこのとき、福島の人々の思い、願いを真っ向から踏みにじる行為だ。そもそも特重施設未完成で止まっていた高浜4号機で蒸気発生器の伝熱管が損傷しているという重大事故が発見された。同じ発生器、部品を使用している3号機も停止していたのである。それが、関電の対策を規制委員会が了承したのを受けて、「3・11」から10年というこの時期にあわせたかのように再稼働したのである。4号機は4月上旬再稼働を計画している。これは福島を踏みにじり、人倫の道を踏みはずすことである。関電は、あえて、福島を思い、福島とつながろうという人々の思いに真っ向から挑戦してきたということである。関電、政府、原発推進派の暴挙は許せない。3・20高浜に集まろう。「老朽原発うごかすな」の大きな叫びをあげよう。
と き:3月20日(土休)
午後2時〜3時すぎ
※集会後デモ(午後4時半終了)
ところ:高浜町文化会館(福井県高浜町)
主催:老朽原発うごかすな! 実行委員会
福島原発事故から10年
さよなら原発関西アクション
3・11十周年で、原発はいらないと大阪市内でデモ行進(3月7日) |
2011年3月11日、福島第一原発事故から10年目のこの3月、「原発はいらない」という決意をあらたに、全国で反原発集会がおこなわれている。「2021さよなら原発関西アクション」が3月7日、大阪市内で開かれた。コロナ禍、会場の席が半分に制約されるなかで、550人が参加。主催は、さよなら原発関西アクション実行委員会。
集会では、樋口英明さん(元・福井地裁裁判長)が講演、福島から武藤類子さん(福島原発告訴団・団長)、青森から佐原若子さん(歯科医師)、福井から宮下正一さん(原発反対福井県民会議事務局長)が現地の情況を報告した。関西在住の福島原発事故避難者からもアピールがあった。
原発を止める責任
樋口英明さんは、「原発を止める責任」というテーマで、原発問題についてわかりやすく講演。「裁判長として裁判をおこなうなかで、危険だと判断したから原発を止めただけ。危険という概念は、@事故発生確率が高い、A事故時の被害が大きい、このいずれかの場合で使われる。本来、Aであれば事故発生確率は限りなく低くなるはずだが、福島原発ではそうはなっていなかった。だから、事故がおきたのだ」「福島第一原発事故はいくつかの奇跡が重なって、何とか現状レベルにおさまった。本来ならば関東以北が壊滅していた」「現在、われわれは福島事故を知っている。再び原発事故をおこさないために、原発をなくすこと。これにはみなさんの責任がおおきい」と語った。
福島の今
武藤類子さんは、「フクシマの今」と題して報告した。原発事故から10年目の福島の現状について、次のような内容。@原発敷地内で廃炉作業がおこなわれているが、廃炉とは何か、この定義が未だに決められていない、A避難地域の解除が進むなかで、帰還者の現状について、BALPS処理汚染水を海洋に流そうとしている問題、C除染による汚染土を再利用しようしていること、D森林除染で生じる木材チップを木質バイオマス発電に使おうとしていること、E小児甲状腺がんの現状、F「東日本大震災・原子力災害伝承館」の問題点、G「イノベーション・コースト構想」の一環として、核政策推進のための国際教育研究拠点が作られようとしていること、H東電刑事裁判の現状について。
六ヶ所再処理の中止を
コロナ禍に550人が参加 |
佐原若子さんは、「六ヶ所再処理の中止を」というテーマで、核燃料サイクルに反対し、核そのものをなくしていくたたかいを訴えた。再処理工場の問題点、日本原燃の再処理工場はアクティブ試験で施設が汚染されていること、自然環境や土地は子孫から借りているものであり未来のために汚してはならないこと、国や行政などに頼むのではなく私たちの力で原発をなくしていくこと、などを熱く語った。
老朽原発うごかすな
宮下正一さんは、「3・11(10周年)がせまるなかで、関西電力は高浜原発3号機を7日にも再起動させるといっている。人道をふみにじる関電を断じて許すことができない」と弾劾した。また、老朽原発再稼働にたいして福井県知事の対応を糾弾し、老朽原発再稼働に反対するたたかいを要請した。
集会後、参加者は西梅田までデモをおこなった。デモ隊は春が近くまでせまった大阪市街を行進し「原発はいらない」と訴えた。
2面
〈寄稿〉68歳のおっちゃんの反骨心
或る生活保護利用者の闘い
堰立夫
私が生活保護基準引き下げ違憲訴訟の原告になったのは70年安保闘争をたたかった古い友人から勧められたからです。
私の父は15年前に亡くなり、母は私が15歳のときに亡くなりました(両親ともに病死)。そんな時代の中で私は高校を中退し、18歳から働き続けて59歳の夏に腰が悪くなり仕事ができない状態に。そして貯えも一カ月で底を尽き、生活保護申請に至った次第です。
下請労働者として
なぜ貯えがないのか。下請け労働者には夏冬のボーナス金は出ません。冬は餅代といわれる程度の金しか出ず、貯えができるはずもありません。今でいう非正規雇用労働者だったのです。連合傘下の正規雇用労働者にはボーナス金が支給され、雇用が保障されます。下請の非正規雇用労働者にその二つの保障はありません。
仕事が暇になりそうになれば1年か半年前に首切り予告がおこなわれます。首切りになり仕事を探しても仕事がなく、道路工事のガードマンを2カ月ほどしたこともありました。やっと見つけた重量鉄骨橋梁を扱う鉄骨建設会社の工場で働くことになりましたが、その工場が私の現役最後の仕事場になるとは思ってもいませんでした。こんな最低の環境の工場があるのかと驚いたことを覚えています。私が52歳の時です。
造船所の下請労働者として
元々中堅の造船所に18歳で溶接工として就職し、中途採用は一年間、無遅刻無欠勤でないと正規採用されない厳しい条件で働きました。1年が経ち、正規採用されましたが未成年なので残業できず、本給では生活がままならない少ない給料でした。今でいうブラック企業だったのです。6年後のオイルショックで希望退職を勧められたため、そこを辞め、さきほどの鉄骨建設会社に下請労働者として59歳の夏まで働いたのです。こんな私の人生間違っていますか。
鉄骨建設会社で
親方は厚生年金に加入させず国民年金のまま。税金だけは引きました。そこが不況で閉鎖されるとき、欲望だけの親方は元請から補償金をもらっても、働いていた俺たちには1円の金も渡さずトンズラ。
生活保護申請
東北三陸沖大地震の2011年は忘れられない年でした。仕事をリタイアした年であり、生活保護申請した年でした。2年後の2013年、私は引き下げ違憲訴訟の原告になりました。
バッシングは許せない
私たち生活保護利用者がどれだけ贅沢な生活をしているというのですか。バッシングする国会議員は利用者の生活内容を見たことあるのですか。社会的に貧しき人たちから保護費を引き下げて金を奪うのが正義ですか。どんな社会を築こうとしているのですか。そんな社会に未来はないでしょう。
発射する必要のないミサイル、いつ墜落するか分からないオスプレイ、F35戦闘機、この3つは非常に高価。この金を利用者に回せば良いだけのことです。
一番困ること
利用者の生活で一番困るのは電気製品が壊れた時に買い換えることができないことです。貯金できない生活だから冷蔵庫、洗濯機は高価で買えません。でもテレビは壊れても構いません。ラジオで情報は入ってくるし暇つぶしになるからです。
引き下げ前も人らしく生きられない
引き下げ前も後も利用者の生活内容はそんなに変わっていません。こんなことを書けば「だったらいいじゃないの」と言われるかもしれませんが、言いたいことは、引き下げ前も人らしく生きられる状態ではなかったということです。違いは引き下げ後には札など残らず、小銭入れに残る硬貨が少なくなるということです。
引き下げ前も後も、食事はいつもよく似たものを食べます。しかし引き下げ後は食パン6枚切を半分に切り、12枚にして食べます。野菜が不作で高値の時はモヤシや玉葱。米はカリフォルニア米か、5s1400円から1600円の混合米。100g60円位の切り落しの安い外国産豚肉。これらが私の食生活の一部です。
孤独とのたたかい
生活保護で生きることは孤独とのたたかいであるともいえます。働けた時は孤独を感じているよりも、悪徳親方やボウシン(番頭)との葛藤や軋轢があり、弱気になっていられない日々だったのです。
しかし利用者になってからも友人ができるわけもなく、あるのは引き下げ違憲訴訟の公判にいくことかも。孤独を噛み締める今の生活。外食する金銭的余裕もない。自炊することが楽しみの一つ。
諦めから始めるな
シベリア抑留兵で4年間を生き抜き、帰国した父が言っていたことがあります。それは「諦めから始めるな」ということです。日本に帰還できないと諦めている兵は気力を失い、敗戦のその年の冬に何人もの兵士が、今でいう低体温症だろうと思われる状態で食事を与えられず死んでいきました。スターリンが、労働しない者には食事を与えるなという通達を出していたためです。
私がガキの頃、勉強ができない、分からない、解けないと父に言うと「諦めるな、考えろ」と。
私は叫ぶ
富める者が富み、貧しき者が苦しみ、足掻く格差社会、貧しき者が黙っていてはいけない。黙っていたら格差を認めたことになる。 叫ぶよ、私は。
諦めるな、諦めから始めるなと。
昨年の名古屋地裁判決はやっぱりかと思いましたが、これでたたかいが終わった訳じゃありません。まだこれからやないの。
2月22日の大阪地裁の法廷は、傍聴席も柵の中の弁護士も原告も、不安感を顔に漂わせてまるで判決を聞きたくないような感じでした。
しかし裁判長が主文を読み始めて「あっ、えっ、勝ったやないの!」。これで良いのです。でも、これですべてが決着した訳ではありません。高裁から最高裁へ私はたたかい続けます。(せきたつお 生活保護基準引き下げ違憲訴訟原告)
3月28日に総会
雨宮処凛さんが講演
3月28日、午後1時から此花会館梅花殿ホールで〈引き下げアカン! 大阪の会〉第7回総会と雨宮処凛さんの記念講演があります。テーマは「今の社会の生きにくさと大阪判決に見える希望」。
2012年末、政権復帰した第二次安倍政権が真っ先におこなったのが「生活保護基準引き下げ」でした。今回の大阪地裁での勝訴判決は引き下げの不当性をだれの目にも明らかにしました。判決当日、朝日放送(ABC)は生活保護特集を放映。勝訴判決を聞いた原告の小寺アイ子さんは「涙が止まらない思いです。この勝訴が全国的な大きな力になるのではないかと本当に誇りに思います」。新垣敏夫さんは「本当に判決がうれしくて涙があふれてきました。国は控訴をすると思いますけど、誰一人欠けることなく控訴審に臨む」と話した。
雨宮さんは「人と人との関係を断ち切る貧困」を問題にします。多くの生活保護利用者が、この引き下げで社会参加を拒まれ、孤立していきます。小寺さんは番組の中で「4人の孫と遊ぶこと、いっしょに出かけることができないことが一番つらい」という。
原告の堰立夫さんは「生活保護を利用するとき、食費等をギリギリまで削ることを強制されるだけでなく、人と人との関係が断ち切られ、孤独とのたたかいになる」と指摘しています。人間は社会的存在で生活保護基準は「人と人との関係」を断ち切ることのないような「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しなければならないのです。
日時:3月28日(日) 第7回総会 13時開始 場所:此花会館梅花殿ホール(JR環状線「西九条」駅下車)
原発賠償千葉訴訟・第一陣
2月19日高裁で逆転勝訴
福島第一原発事故で福島県から千葉県に避難した住民・17世帯43人が、国と東電を相手に損害賠償を求めた「福島原発損害賠償請求千葉訴訟・第一陣」の控訴審判決が2月19日にあり、東京高裁(白井幸夫裁判長)は、東電と国の責任を認め、原告住民が逆転勝訴した。第一審の千葉地裁は、国の責任を認めず、住民側が控訴していた。
国の責任を問う原発避難者訴訟の控訴審判決は、昨年9月の「生業訴訟(『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟)仙台高裁判決、今年1月の「群馬訴訟」東京高裁判決につづく3例目。右記のうち、生業訴訟と千葉訴訟(第一陣)で国の責任を認める判決が出た。全国では東電の責任を問う裁判と、東電・国の双方の責任を問う裁判があり、後者は地裁レベルで14の判決が出ており、国の責任を認める判決が7、国の責任を認めずの判決が7と分かれている。
規制権限行使は国の責任
今回、東京高裁判決は、「長期評価(=国の地震調査研究推進本部が2002年7月に公表した地震予測)」について、「相応の科学的信頼性のある知見」と指摘。長期評価の見解に基づけば、国は15メートル以上の津波の危険性を認識できた。防潮堤や原発の重要機器を浸水させない水密化など事前対策は可能で、国は想定すべきだった。対策が講じられれば津波の影響は相当程度軽減され、事故と同様の全電源喪失には至らなかったとし、規制権限不行使と事故との間に因果関係があったと認定した。事故の結果回避可能性について昨年9月の仙台高裁判決よりも踏み込んだ判断だ。
3面
3・1朝鮮独立運動で新宿街宣
差別・排外主義を許さない
東京のどまんなかで差別・排外主義を許すなと街頭宣伝(3月1日) |
3・1朝鮮独立運動から102周年、150人が参加して新宿街宣がおこなわれた。日朝協会、沖縄反戦地主会関東ブロック、戦争させない9条壊すな総がかり行動など、多くの団体からアピールがあった。
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の梁澄子さんは、「日本軍『慰安婦』問題解決の道は、事実を心から認め、心からの謝罪を繰り返すこと。被害者たちが納得できるまで、心からの謝罪を繰り返すことです。しかし、日本政府は今起きている歴史的事実までも捻じ曲げ否定している。1月8日、韓国で、慰安婦被害者たちが日本政府を被告として起こした裁判の判決が出た。日本政府に賠償を求めるこの判決に対して菅首相は、主権国家が他国の裁判権に服さないのは決まりですからと言った。19世紀末にできたこの国際慣習法がその後続々と例外を呼び、認められてきている。この日本においても、主権免除という他国の政府を被告にして裁判ができるという例外規定を設けた法律もある。これは、日本の市民もだましていることなのだ。この判決はアジアで初の判決であり、私たちはこれをこそ称えるべきではないか」と訴えた。
〈強制動員問題解決と過去清算のための共同行動〉の矢野さんは、「強制動員問題の解決は、待ったなしと言いたい。今年は2001年に南アフリカのダーバンで、国連主催の反人種主義世界大会・ダーバン宣言から20年に当たる。この宣言では、奴隷制度と奴隷取引は人道に対する罪、植民地主義も繰り返されてはならないと確認された。その時、アメリカやイスラエルは退席した。昨年、独立60周年を迎えたコンゴの大統領に、宗主国だったベルギー国王が植民地支配を謝罪する手紙を送った。フランス・マクロン大統領は、今や植民地主義は人道に反する罪だと明言している。
日本はどうか。2018年に韓国最高裁は、元徴用工が起こした訴訟を認め、日本政府に賠償を命じた。これに対して日本の政府もメディアも、国際法違反、65年で解決済みと非難の大合唱です。しかし、65年時点で日本政府は植民地支配に対して謝罪も反省もしていない。多大な損害を与えたその事実すら認めていない。『徴用工ではない。出稼ぎに来ただけ』とすら言っている。解決に向けて全力を尽くそう」と訴えた。
〈朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会〉の長谷川さんは、ご自身の体験をカミングアウトしながら、差別と向き合い対決しようと訴えた。「全国5カ所でたたかわれている高校無償化の裁判も厳しい状況にあり、さらに一昨年10月からの幼保無償化からも朝鮮幼稚園が排除された。朝鮮大学校の学生にだけ支援金は渡されない。こんな差別が日本の現状です。差別と徹底的にたたかうことが、日本と日本の教育を良くすることに繋がる」と呼びかけた。
6・15共同宣言実践日本地域委員会代表・韓統連議長の孫さんは、「今、朝鮮半島は緊張が再び激化するのか否かの岐路にある。平和と統一を約束した共同宣言発表直後、米国が反対し、共同宣言は白紙のままストップしている。そればかりかこの3月、韓米軍事合同演習が強行されようとしている。これが強行されると、南北関係・朝米関係は完全に破綻してしまうでしょう。日本は、朝鮮半島の軍事緊張を利用して敵核基地攻撃に一歩踏み出した。これは、先制攻撃を意味する極めて危険な武器といわざるをえません。私たちは、日米が朝鮮半島の平和と統一の流れを妨害することに断固反対する」と決意を述べた。
途中から押しかけてきた排外主義グループによるヘイトスピーチに抗しながら貫徹された発言に大きな拍手が起こり、この日の街宣を終えた。(青木 隆)
主張 女性差別と縁故政治
五輪中止・菅政権倒せ
菅政権によるコロナ無策=緊急事態宣言延長・再延長で、労働者・市民は前途不明の危機感の中にある。感染者数は下げ止まりでリバウンドは必至、3月末の最大級の倒産・解雇は不可避だ。
これはすべて安倍=菅政権による五輪強行=政権延命のため、医療・検査体制を整えず、不十分な休業補償で自粛=自己責任にしたことが原因だ。4月の高齢者ワクチンは間に合わず、第4波とあと1年続くコロナ禍。五輪強行と女性差別と縁故政治への怒りは爆発寸前だ。
菅は3・25聖火リレーまでの緊急事態宣言解除に賭けているが、人々の健康と生命より政治日程優先の政治に、広範な人々の不信感が募っている。
アベ政治の悪業受け継ぐスガ政治
「やってる感」だけのアベ政治はコロナ禍に対応できず、病気辞任に追い込まれた。「世襲でない、たたき上げの苦労人」で自民党総裁選に圧勝した菅義偉。コロナ無策・演説棒読み・逆切れ=統治能力欠如で一気に信頼感を喪失した。さらに人流拡大のGoToキャンペーン、医療・検査充実の放棄で第3波が急速に拡大した。
他方危機にたつ支配階級の常とう手段=差別・排外主義の鼓吹は、対韓国・対中国強硬姿勢で一定奏功しているが、逆に内への差別・分断支配が脆くも破産した。安倍内閣時の「女性活躍」も何のその、五輪憲章違反の女性差別で、森喜朗五輪組織委会長は辞任に追い込まれた。「わきまえない女」たちの決起は持続し、国際世論も離れ、橋本聖子新会長、丸川珠代五輪担当大臣での乗り切りも、セクハラ・男女共同参画逆行で危機状態が続いている。
安倍政権の森友・加計、桜の悪業を引き継ぐ官僚統制・縁故政治が露呈し、息子の総務省饗応は安倍昭恵同様に政権のアキレス腱と化した。国民には自助を求めながら、親族にはコネへの怒りは充満している。
五輪中止・菅政権打倒の直接行動を
八方ふさがりの菅政権は、綱渡りでの五輪開催に命運をかけている。しかし1年を超すコロナ耐乏生活で、弱者に犠牲が集中(高齢者の罹患と死亡、大学生は1年間のリモート授業、シングルマザーの自殺の急増)で、誰も五輪開催に希望を持たない。コロナ倒産・解雇がこの3月急増し、景気は低落し、さらに深刻な雇用危機が深まる。
他方で政治的な攻撃はやめず、福井県知事と経産省が一体で40年超え老朽原発再稼働を進め、沖縄辺野古工事はやめない。森辞任に懲りず、男女平等・選択制夫婦別姓に反対の丸川珠代・高市早苗・杉田水脈らが跋扈している。医療・検査を充実させコロナ対策の抜本的強化と医療従事者へのリスペクトを。280万都市に一カ所の保健所しかない維新の大阪は、全国最多のコロナ死亡者だった。
インバウンドに未来を求めるのでなく、医療・保健所・検査体制、学校・図書館・芸術などの公共を充実させよう。コロナを政治的駆け引きに使う小池に感染源徹底縮小の施策をとらせよう。
仕事をよこせ、給付金よこせ。安倍政治から始まった生活保護引き下げを止めよう。時給1500円の最低賃金を実現しよう。五輪は感染拡大の源、感染拡大・危険な五輪は中止しかない。五輪に投入する金を生活給付金に回せ。
国会と全国各地で、五輪は中止・菅はやめろの大衆行動を。4・25補欠選挙、各種選挙(千葉県知事選など)で自民候補を敗北へ。今こそ声を上げ、行動しよう!(岸本耕志)
本の紹介
『福島が沈黙した日 ―原発事故と甲状腺被ばく』
榊原崇仁 著 集英社新書 2021年1月発行
東電の電力で生活などしていない福島及び近在の人々が、2011年3月11日の東電福島原発の事故で、なぜ一生を棒に振られるどころではなく、生命さえ奪われることになったのか。まずは、人権蹂躙である。
戦争の堕落は、空軍からといわれる。例えば、ヒトラー・ドイツ軍のスペインの片田舎ゲルニカ(非軍事基地)への攻撃。無辜の住民が虐殺された。ドイツはスペイン・フランコ独裁政府から協力を要請され、最新鋭の攻撃機を世界に誇示した。この戦争は、世界市民戦争ともいわれた。しかし、国軍の勢威=武器を世界に喧伝する(国家独占社会資本主義)体制の宣伝政策の嚆矢ともいわれる。ピカソは、告発の絵画をパリ万国博で公開した。情報戦争の始まりともなった。ヒトラー・ドイツの同盟国=天皇・日本には、世界最新鋭の究極兵器=原爆が、ウラン型は広島、プルトニウム型は長崎に落とされた。中性子は遺伝子を破壊する。ヒトラー政権より進んだジェノサイド(遺伝子への攻撃)を米軍は敢行した。これによって、世界制覇の頂点に立ったことの顕示のためであった。現在、国連では、核兵器禁止条約が発効した。この条約の中心にいたはずの日本は、「脱退」している。
この一冊の書籍は、核戦争とは何かを考えさせる。また現在の問題としては日本の原発推進派が起こした福島一帯への人権蹂躙への告発という視点に読者を立たせる。無辜の住民への介護する誠意の権力の不全であるから、ほかの民衆に世界に知られたくない。チェルノブイリ事故では、ソヴィエト戦士が事故の処理に突っ込んで亡くなっていった。もちろん、当該の東電も戦後原発政策を遂行した日本政府なども責任逃れに終始する。原子力研究施設で一生研究生活を送った専門家は、超えてはいけない被ばく線量20ミリSv/年を上限とするのと同じ環境に帰還せよという命令は被害者への棄民政策だとしている。小出裕章さんは、世界のオリンピック委員会に、そう発信している。この本は、胸の奥深くしまい、政府、医学界の原発事故における甲状腺検査・治療について、呵責なく、忖度なく、その実態を追及したドキュメンタリーであり、世界都市、東京から発信された真摯なジャーナリスト、コスモポリタンの存在の証明ともなっている。
政府が隠していることをあばくということが、主意ではなく、なぜ、甲状腺検査・治療は遅れたのかという疑問の解決のために、政府、当該責任者が残している記録・事実を掘り起こした結果、政府、関係者は、この甲状腺検査の実態と報告に関して、「歪曲」と「工作」をしていることが明らかになった。東電福島第一原発事故の被害者は、東電と国家から二重の刑事的人権侵害にあっていることが、白日の下にさらされた。(南方史郎)
4面
連載 #Me Too運動に学ぼう
党内性暴力事件 真の謝罪のためにE
男性読者から「差別で成立しているのが資本主義社会です。筆者は愛がなければ、セックスはダメだと言っているのか? 勿論暴力によるセックスは当然ダメだと考えます。男女互いに合意があれば、私は良いと考えますが。」というお手紙をいただいた。ありがとうございます。
今回と次回はその返事として「性的同意」について書いていきたいと思う。これはこの間の刑法の改正運動の核心である。つまり男性は「合意のもとだった」といい、女性は「合意していなかった」というケースがどれほど多いかということだ。
本当の合意か
そもそもこの社会には女性差別が厳然として存在するので、男女の出会いは対等ではない場合が多い。職場における女性と男性の関係を見れば明らかだ。契約社員やパートの女性と正社員の男性は年齢には関係なく対等ではない。正社員同士であっても女性は若年の間しか正規雇用でない場合が多いから、職場の部下・上司あるいは後輩・先輩という関係が多く成り立つ。大学の学生と教授の関係はどうだ。教授は権威だ。病院では医師は男性が多く、看護師は女性が多い。つまり男性から見ると「自然に成立した男女の関係である」と思っていても、女性の側からは無意識のうちであれ「権威や抑圧」を感じているのだ。ここに男性の認知のゆがみが生じ、本来の関係が疎外される。
例えばセクハラで訴えられた男性上司は「彼女はいつも自分のほうを見てニコニコしているので自分に気があると思っていた」と主張し、女性部下は「上司がいつも自分のほうを見ているので監視されていると思い、楽しく仕事をしているふりをしていた」と主張することはよくあることだ。これが更新を目前にした契約社員の女性だったらどうだろう。彼女の笑顔はきっと凍りついていたに違いない。それでも男性上司は「自分に気がある」と錯誤してしまう度し難い「俺様目線」なのだ。もしかしたら契約更新をちらつかせて「食事に行こう」と誘う確信犯もいるだろう。こちらのほうが多いのではないか。
男性のほうが親元を離れ自立生活できる賃金を得ている場合が多い。女性はその賃金が得られず実家から離れられない人が多いので、親と離れたいとき、男性を頼る以外にない。こうした女性たちを餌食にするネット上の「出会い」はあとを絶たない。不均等な関係の中での「合意」ははたして本当の「合意」なのか。
カップル間の合意
今回はまず愛情を確認したカップル間の「性的合意」について述べたい。
スウェーデンではたとえ夫婦であっても「イエス」と積極的な合意がないセックスはすべてレイプとなる。それでは手を握るのもキスをするのもすべて、かつ毎回合意を確認しなければならないのか? 法的にはそうなる。「それでは雰囲気が壊れてしまうのではないか? 恋愛が成立しないのではないか?」とフランスの女優カトリーヌ・ドヌーブらが反論し炎上した。しかし日本では積極的な「イエス」どころか「ノー」すら発信することは難しい。なぜならカップル間では常に女性は「イエス」と男性を受け入れなければならないと考えられているからだ。
「夜のおつとめ」という言葉が女性にのみ適用されるように、女性にはセックスは苦痛を伴うことがあり楽しめてこなかった歴史がある。妻の労働は家事、育児、介護ともう一つ重要なことは「夜のおつとめ」だ。男性の気分に合わせていつも「イエス」と言わなければならないから苦痛になる。さらにこれまでに述べたように男性が女性支配の道具としてセックスを利用する場合もある。性的搾取となってしまっている。男性のほうは基本的に「イエス」も「ノー」も自分のペースだ。この落差があるからこそ「性的合意」は重要なのだ。たとえカップル間であっても日によって、あるいは場所によって、さらには行為の最中であっても「ノー」と発信でき、受け入れられてこそ相互が主体的にセックスに参加できる。こうした関係性こそが愛情をはぐぐむ。カップルだからと女性の意思を無視すればそれはレイプだ。女性が楽しんでいるかどうか気にも留めない心情は確実にレイプ犯と同じものだ。
つまり「性的合意」の確認が文化として定着し、「合意」のないセックスは男性も楽しめない存在に飛躍すれば、レイプは確実に減るだろう。
レイプ犯から痴漢・盗撮犯に至るまで「普通の人物」なのだ。女性の立場からすると人間の顔を持たないモンスターにしてしまいがちだが、普通の労働者たちなのだ。彼らは性差別意識による認知のゆがみを内在化している。人間は類的存在としてあるはずだ。性的関係性は人間の持っている関係の確認の最たるもののひとつだ。愛を基盤にしないセックスは人間と人間の関係の疎外形態のひとつの表れである。だから性的合意は大事にされなければならない。(つづく)
ウィメンズマーチ大阪開催
3・8国際女性デー当日に
3月8日、国際女性デーの夕刻、ウィメンズマーチ大阪が開催された。大学生たちが急きょ決定し準備し、SNS等で知った女性たち60人余りが難波の元町中公園に集まった(写真)。
コロナ禍なのでコールはなかったが、参加者は交代でマイクを握り自分の怒りを語りながら、主催者が準備したバナーをもって難波の街を行進。おおきな注目を浴びた。この日は東京や熊本など全国各地でウィメンズマーチがおこなわれた。
読者の声
東電福島原発事故から10年
危機便乗の自民党の闇 @
熊野忠志
福島県で事故を経験した住民の方の証言として、オリンピック開催(2020年から1年延長予定)に奔走した体制が組織されてから、建築、土木の作業員・労働者、建築・土木資材が消えていったと語られている。
熊取・京都大学原子炉実験所におられた小出裕章さんは、世界各国のオリンピック委員会に、東電福島原発事故の現状とその回復のため、一刻の一銭の時間と財政の無駄なく、放射能漏洩の阻止、地域住民の在留、避難を問わず、健康管理に集中せねばならず、オリンピックに参加しないよう訴えてきた。
現在、アメリカの調査では、コロナ禍で、6カ国国民の内5カ国の大半が、オリンピック開催に反対しているという調査結果を発表している。一位は、日本、それに、独英仏、北欧の国が続く。しかし、50%を切って、オリンピック開催は、やるべしと考えている国が米国である。
英国のロイター通信は、ワクチンが投与されても、オリンピックが済んでしばらくしないと、日本の集団免疫(人口の一定以上の割合が免疫を保持している状態)は、完了しないだろうと伝えている。現在、首都圏1都3県で、コロナ禍緊急事態宣言が延長された。そして、未だ解除されないのが、原子力緊急事態宣言(2011年3月11日発出)なのである。
2011年3月11日21時23分に発動された避難指示は、様々な理由で、住民すべてに通告できなかったといえる。この緊急事態宣言がどのように発動されるかといえば、つまるところ、全権は総理大臣にある。世が世ならば元帥格となる。そして、この時の総理大臣は、菅直人であった。彼自身がこう記している。「水素爆発で1号機の原子炉格納容器が壊れ、放射線量が上昇して作業員が撤退したとの想定で、注水による冷却ができなくなった2号機、3号機の原子炉や、1号機から4号機の使用済み核燃料プールから放射性物質が放出されると、強制移転区域は、半径170キロ以上、希望者の移転を認める区域が東京都を含む250キロに及ぶ可能性がある。…あまりにもことは重大であるため、言葉にするのも慎重でなくてはならないと考えた」。
この事故の発生点から、政府は専門家に尋ねていた、何が起こっているのか。その一つが、届いたのが、原子力委員会委員長・近藤駿介からの「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの粗描」の文書。それを根拠として彼は、処置なしの判断のもとに「慎重にな」らざるを得なかった。(菅直人著 『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』)
原発事故発生から、2週間後に届いた手紙であった。エネルギーは、重量×光速の2乗である。原子力の世界の時間の単位から比べれば、この2週間とはなんなのであろう。そして、緊急事態宣言の内実とはなんなのか、さらに、総理大臣は、関東一円にまで及ぶ避難問題にどう対処すべきなのか、まさに、答えは風の中だった。これが、原発のシヴィアアクシデントの本質なのだ。そしてこの10年間、なにができたというのか。国民、世界の関心を、オリンピックにずらそうとすることが、どれだけ犯罪的なことなのか。(つづく)
「君が代」不起立処分取り消し
根津さん判決 最高裁で確定
東京都の元教員=根津公子さんが2009年「君が代」不起立で停職6カ月処分を受け、裁判で取り消しを求めていたが、昨年3月、東京高裁は以下の3点を根拠に、処分を取り消した。(1)停職6カ月処分の次の処分量定は免職のみであり、被処分者への心理的圧迫の程度が強い、(2)過去に懲戒処分や訓告処分の対象になった根津さんのいくつかの行為は、2006年3月の懲戒処分において考慮されている(から、同一の件で処分を加重してはならない)、(3)根津さんの不起立は河原井さん不起立と同じ消極的不起立行為。
都教委は高裁判決を不服とし最高裁に上告していた。根津さんも、処分は取り消されたものの、損害賠償請求が認められなかったため上告していた。
最高裁は2月17日、第2小法廷裁判官全員一致の意見で「都の上告受理申し立てを受理しない」と決定した。これにより昨年3月の「東京高裁判決=停職6カ月処分を取り消す」が確定した。根津さんは、いままで停職3カ月以上の処分を4回受けているが、2007年「不起立」処分=停職6カ月は最高裁で取り消しが確定しており、今回、2009年「不起立」処分=停職6カ月取り消しも確定したことで「大阪の職員基本条例(職務命令に違反する行為の内容が同じ場合にあっては、3回で…免職)が完全に破綻したことがとっても嬉しい」と語る。
5面
焦点 大阪維新追撃・打倒のために B
感染爆発招いた大阪維新
剛田 力
コロナを放置し、三度づけ「都構想」を策動する松井維新の大阪市役所を包囲(2月25日) |
昨年10月10日以降「第3波」で感染が拡大するなか、維新は住民投票を強行し、コロナ対策を府まかせにし、大阪市は独自対策をしなかった。大阪府の死者は東京都と全国最多を争う水準で推移している。
(1)大阪の惨状
不要不急の住民投票をおこなった代償として、大阪ではいち早くコロナ第3波が到来した。人口880万人の大阪府が人口1400万人の東京都の死者数を抜くような事態となった。1月13日には東京を上回り、1月31日には東京が886人、大阪は926人の死者数であった。その後、首都圏で感染者、死亡者が急増したが、しかし3月4日の段階でも人口比では大阪が最悪だ。
大阪府は重症患者も多い。11月1日〜1月27日で、東京では6万5千425人の感染者中372人が重症。同じ期間に大阪では2万9千674人の感染者、重症者は638人。3月になっても全国の重症者の約2割が大阪府、人口比で全国平均の3倍になった。
また重症でも重症病床を望まない患者は通常病床に入るので、重症者にカウントされない。重症でも通常病床に入院し死亡する患者も多い。10月10日〜11月19日に5317人の陽性者、41人の死亡。うち重症病床はわずか6人。約85%の35人は、軽症・中等症患者が入院する通常病床で死亡している。第2波(6月14日〜10月9日)でも、140人の死者中、通常病床の死者は102人と圧倒的だった。第1波の死因は肺炎が多かったが、第2波以降の死因は心臓の筋肉の炎症や脳卒中など多様化。通常病床、宿泊施設、自宅にいる軽症者が急変して死に至ることがある。
(2)医療崩壊
大阪市立総合医療センターでは、高度専門医療にしわ寄せが出て、思春期から30代までのがん患者を受け入れる「AYA世代専用病棟」を閉鎖。
大阪急性期・総合医療センターは、コロナ重症患者への対応を優先するとして、11月から重篤な一般患者を受け入れる「3次救急」を制限した。「3次救急」は「救急医療の最後のとりで」で、大阪急性期・総合医療センターは、市内に6つある「3次救急」を担う病院の中でも特に高度な医療を提供する医療機関だ。病院によると、一般患者の受け入れ要請は最初の16日間で70件、うち41件を断ったという。
吉村肝いりの大阪コロナ重症センターは60床になるはずが、看護師がまったく足りず、自衛隊と各都道府県から看護師を借りても5床で発足。
医療崩壊が発生し自衛隊や近隣の府県に支援を要請せざるをえなかった。
大阪市内では、なみはやリハビリテーション病院(生野区)での130人感染、大阪府済生会泉尾病院(大正区)、第二大阪警察病院(天王寺区)、吹田市の大和病院、枚方市市立ひらかた病院、松原市明治橋病院など院内感染が多発した。住吉区の大阪急性期・総合医療センターでクラスターが発生した。
(3)維新市政による医療破壊
これは2008年の橋下登場以来10年余の医療と福祉の破壊の結果だ。また大阪市廃止住民投票に明け暮れ、肝心のコロナ禍対策に対しては「やってる感」だけであった。
維新による「二重行政解消」の新自由主義による医療合理化政策で、松井は知事時代に「僕と橋下市長でも解消できない二重行政がある。港の維持管理運営、大学、研究所、3次医療を受け持つ病院等々です」と発言し、3次救急医療体制潰しに奔走した。
公立病院の統廃合を進め、住吉市民病院を閉鎖。関西で学生数トップの大阪府医師会看護専門学校を補助金削減で閉鎖、保健所の職員リストラを断行した。千里救命救急センター・大阪赤十字病院の補助金廃止、府立健康科学センターの廃止など、「医療費適正化計画」による徹底した医療費削減と病床削減がおこなわれた。特に、大阪市南部の地域医療を幅広く担い、小児医療・周産期医療の充実に力点をおいていた住吉市民病院の廃院のダメージは大きい。
維新の橋下徹は昨年3月に本人が検査を受けるまでPCR検査不要論を唱えていた。時間も相談から検査までに最長10日間。当時、府内では大阪健康安全基盤研究所(大阪市)や医療機関などで1日当たり計約420件の検査能力(時事2020・5・4)。ちなみに人口76万人の福井県でも3台の機器を所有し、1日最大196件の検査が可能で、明らかに大阪府の検査能力は不足していた。
(4)松井の「雨がっぱ」、吉村の「イソジン迷走」
松井は昨年4月、医療現場の防護服不足に対し、雨合羽やレインコートの寄付を市民に呼びかけた。結果30万着の雨合羽やレインコートが大阪市役所玄関ホールに長い間放置された。
「大阪モデル」は、大阪府が5月5日に開いた「新型コロナウイルス対策本部会議」で、感染拡大や収束状況を判断する独自の指標・基準として作成。が、5月23日には基準を変更した。7月3日、基準を修正。7月28日には、イエローステージ(警戒)2、黄信号2が設定された。基準の修正は、黄信号にならないよう、赤信号を絶対に灯さない政治的意図で恣意的に修正されたものだ。12月になると1日当たりの感染確認が約300〜400人台まで急増し、同3日には感染者増加に伴う重症者向け病床は逼迫。吉村は基準を無視し初の赤信号を点灯させた。
吉村は4月に、大阪大学発の創薬ベンチャー「アンジェス」が開発中のワクチンにふれ、めどがついていないのに、「実用化されれば10万〜20万人単位で接種が可能」「7月に治験開始、9月に実用化」などと繰り返していた。8月には「ウソみたいな本当の話」と、市販のうがい薬「ポビドンヨード(商品名・イソジンなど)で、コロナの重症化などを防げる」と嘘の主張。薬局を大混乱させた。
(5)居直る松井
今年2月26日に松井大阪市長は「確かにこのコロナに対峙して保健所の職員も非常に疲れも見えてきてるし、大変な状況だと思うけども、……100年に一度のウイルスに対応するために平時の間も、……余裕があり過ぎるような職場環境をつくるのか」と居直った。このままではさらに悲惨な「第4波」ということになりかねない。(おわり)
『展望』26号紹介
菅政権との対決、圧巻の反原発論文
▼巻頭論文では、菅政権の本質を暴きだした。前政権での陰の存在から表に出てきた菅政治の本性がより明らかになった。総務省接待事件に明らかなように、菅政権と前政権の政治の私物化は共通している。さらに新自由主義推進、警察支配、官邸独裁を継承し、平気で嘘をつき続ける。コロナ対策は後手後手で格差貧困の拡大に有効な手を打たない。安全と健康を犠牲にして、オリンピック強行へ舵を切ろうとしている。
▼津田論文は反原発・反核闘争の全体を網羅する力作だ。改めて、反原発・反核闘争の課題の大きさを痛感する。福島の現状や原発ゼロへ向かってとりくむべきたたかい・課題はたくさんある。トリチウム汚染水の海洋放出、中間貯蔵施設、汚染土処分問題、被ばくデータ不正使用、貯蔵プールからの使用済み核燃料取り出しや燃料デブリ取り出しなど廃炉作業等々。この大きさは、核政策が戦後の帝国主義とスターリン主義の存立をかけたものであるが故に、電力業界・経済界だけでなく国家権力の全体重がかかっているからだ。経産省の諮問機関などが国と経済界を背景に「原発は脱炭素の重大電源」などと原発に固執している。スリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故にもかかわらず原発をストップできなかったことを教訓化し、今こそ全原発廃止・核廃絶へ。特に、老朽原発再稼働阻止を水路にしたたたかいの方向性や3・11以後、反原発闘争を変えたものとして被ばく問題がすえられたことを指摘しているのは重要だ。
▼コザ暴動座談会では、本土(ヤマト)の沖縄闘争・自主的決起としてのコザ暴動・全軍労と沖大闘争・沖闘委と沖青委などが語られた。1970年のコザ暴動を引き継いでたたかい抜いてきた仲間がいるということは貴重なことだ。辺野古新基地建設反対闘争にその意義を引き継いでたたかっていかなくてはならない。
▼日本ナショナリズム論批判は、前号を引き継いで、今日のナショナリズムを掘り下げている。戦争こそがナショナリズムの最大の索源地で、反動にとっては天皇制ナショナリズムしかない。また領土ナショナリズムについての言及で、EEZ(排他的経済水域)をめぐっての対北朝鮮排外主義へのNHK・マスコミや水産庁、海保、自衛隊をも動員した攻撃の虚偽性と反動性の暴露は、東海(日本海)への関心が低いことをつく論及である。
東大阪における育鵬社教科書不採択を勝ち取った地道な勝利の報告と課題(教育基本法改悪から教育の独立をめぐる攻防)もぜひ読んで欲しい。
▼「資本論」論評では、エコ社会主義から脱成長コミュニズムへの経過をたどり、意義と疑問点を提起。労働分配率が欧米に比して特に低い(搾取率が高い)日本では、資本は生産性が上昇しても賃金を抑え続けており、労働時間の短縮の実現は極めて切実な課題だ。マルクスの言及を掘り起こした新MEGAの成果をも使い、労働の解放を実現していこう。欧米の若者の間での社会主義への関心の高さが我々に力を与える。搾取・収奪、戦争を退治できればもっとよい未来を創造できる。(杉田)
6面
投稿 差別・抑圧・戦争の道具
東京オリンピック粉砕(上)
西川雄二
森喜朗オリンピック・パラリンピック組織委員会会長が「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります。女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」など女性差別、そして時間をかけて討議する「民主主義」否定の発言をおこない、辞任した。だが森が辞任したことで、差別や抑圧とは無縁の「きれいなオリンピック」が開かれるのか。
創始者クーベルタン
近代オリンピックの創始者クーベルタン(1863〜1937年)は「オリンピズムとは第一に宗教である」と明言していた。キリスト教の力が弱ってきた近代に、貴族制に替わる新たなエリート集団が社会を導く、知育・徳育・体育の三位一体の鍛錬で、「生まれは平等なエリート集団」が作り出せるという思想から、近代オリンピックは誕生した。
またクーベルタンは女性がオリンピックに参加することはまったく考えていない女性差別主義者でもあった。1896年第1回のアテネ大会では女性の参加は認められず、第2回のパリ大会もオープン参加のような形でしか参加が認められていなかった。正式に参加が認められたのは1908年第4回ロンドン大会から…女性選手にはメダルは送られず、賞状だけで済まされたという…今日のようにオリンピックに女性が参加できるようになったのは、フェミニストや女性アスリートたちのたたかいの結果であるが、IOCの組織そのものに女性委員が選出されるのは1981年になってからである。オリンピズムは長らく「男性エリート」のためのものだったのだ。
「参加することに意義がある」とされながら、オリンピック本番に参加するためのハードルはすごく高い。単純にそのスポーツ種目で好成績・高得点をあげればいいわけだが、それが出来るのは一部の恵まれた「スポーツエリート」だけである。そしてそのエリートを輩出するのは、これまた一部の「先進国」である。カネと余裕のある階級しか、オリンピックに「参加」できないのだ。
そして銅メダル>銀メダル>金メダルと、勝者のみが称えられる。そして称える時には、「国旗」が掲げられ「国歌」が流される(いちおうオリンピックでは、「国旗」「国歌」は「ナショナルチーム」の旗や歌という位置づけらしい)。なぜ個人やチームの偉業≠ェ国家に収斂されるのか。そして日本での報道は典型的だが、自国が獲得したメダルの数が競われる…これでは代理戦争ではないか。
聖火リレー
オリンピックには「聖火リレー」がつきものだ。だがこれが始まったのは第11回1936年ベルリン大会からで、もちろんナチスドイツのプロパガンダのためである。ベルリン大会組織委員会事務総長でスポーツ学者のカール・ディームは、古代ギリシャの「たいまつ競走」を再現するという歴史的意味、国を越えて協力することのすばらしさ、オリンピックの芸術的意義をアピールする、などさまざまな意義を掲げていたが、「自分たちがギリシャ人と同様、優れた民族であるアーリア人の末裔である」ことを強く印象付ける狙いがあったのだ。その後オリンピックは1940年東京大会、1944年ロンドン大会は戦争のため中止され、1948年ロンドン大会で「復活」するが、議論の末に「平和のため」のイベントとして取り入れられる。ギリシャの軍人が銃を置き、軍服を脱いでスポーツウェア姿になってから聖火を持って走り出すというパフォーマンスがおこなわれたようだ。
その後の大会で聖火リレーは平和のイベントとして、世界中を回ることが繰り返されるが、海を越えて長距離運ばれる際には、軍用機が使われたりもする(今回の東京オリンピックも宮城の自衛隊基地に聖火が運ばれている)。(つづく/見出し・小見出しは本紙編集委員会)
シネマ案内
『天国にちがいない』
監督:エリア・スレイマン 2019年
映画監督スレイマンの私小説的な映画で、実体験にもとづく寓話。テーマは「世界のパレスチナ化」。「私はパレスチナが世界の縮図だと考えようとしてきた。しかし、多分、世界がパレスチナの縮図なのだ」と。彼はイスラエルに住むパレスチナ人でキリスト教徒で「私は国家というものを信じてはいない。だからパレスチナ国家があるべきだとは考えない。すべての権力が絶対的に腐敗するとなれば、パレスチナも」。映画で「黙示録の世界をどう生きるのか」と語る。終末論や、黙示録はわからないが、「新自由主義が世の中を作り上げ、私たちの多くがこれに喘いでいる」と言われれば、ピンとくる。映画を売るために、パリにニューヨークに向かう。これが映画の時間的な流れだ。ここでのエピソードが、寓話として描かれ、せりふすべてがモノローグで、説明はない。
▼キリスト教復活祭 信者を引き連れ司教が地下聖堂へ向かう。司祭は「扉を開けよ」と指示するが、中の男は扉を開けない。司教は裏戸を蹴破り何もなかったかのように、扉を内側から開けて、人々を内部へ入れる。パレスチナとイスラエルの関係を想起させる。
▼ナザレ 隣にすむ若者がスレイマンの住居に勝手に入り込み、レモンを取っている。「隣人よ、わたしはレモンを盗んでいるのではない。ノックしたけれども、返事がなかっただけだ」と。パレスチナに多く住むムスリム、昔のままの生活をしている。オリーブ畑のなか、ベドウィン(遊牧民)の女性が頭に水桶をのせて、ひたすら飲料水を運んでいる。
▼パリ 街中は、まるでファッションショー。カフェにすわり、女性に見惚れている。他方で外国人が働き、困窮者が街にあふれている。街は警察が管理する軍事国家に。
▼ニューヨーク ここでは、みんな小銃を携帯して買い物。アメリカでもイスラエルでも同様だ。公園にいる人たちは無関心だ。占い師は「パレスチナは消滅しない。しかし、この問題はわれわれが生きている内には解決しない」。
▼ナザレ 旅を終えて我が家に戻る。ベドウィンの女性はあいかわらず水を運ぶ。都市では若者がクラブでダンスを。ひとり腰をかけて、酒をのむスレイマン。この若者たちにパレスチナの未来を託す。ある登場人物が「人は忘れるために酒をのむ。かたやパレスチナ人は、忘れないために酒をのむ」と語る。
住居を奪われ、故郷を奪われたことは原発避難者に重なる。「他人事ではない」という当事者性が希望と展望をあたえる。(鹿田健三)
本の紹介 小説『沖縄の祈り』
実践しながら考え続ける
インパクト出版会 1800円
面白い小説です。そして大変読みやすい小説です。しかし中身は濃くて深いものが缶詰め状態です。作者の大城貞俊は1949年生まれ、元琉球大学教授で詩人・作家。
主な登場人物は、沖縄にある大学の大学院生たちで、韓国やアメリカからの留学生もいます。彼・彼女らは、それぞれ異なる関心から沖縄戦の実際の姿を知ろうと、体験者からヒアリングします。
苛烈な戦争で生き残った人びとが語る話のなかで、一番多いフレーズは共通して〈奇跡〉です。つまり、いくつかの奇跡が偶然重なり合って、ようやく生き延びたということです。そして、ほとんどの人が親や兄弟姉妹のむごい死に立ち会った経験の持ち主です。
ヒアリングのなかで語られた言葉や、それを聞いた大学院生たちのやりとりのうち、印象深い言葉をいくつかを紹介しましょう。
「ぼくたちは、死者の証言を聞くことはできない…」「もっとも辛い体験をしたのは、死者たちだ」
「日本政府も沖縄の孤児のことについては関わろうとしなかった」「ここ(辺野古)に座り込んでいる人々こそが最もよき人々ではないかと。皺寄った老いた顔。決意を滲ませた優しい顔、だれもが人間の尊厳を高く掲げている。言葉が顔に、その存在に刻まれている」「沖縄は、日本か?」「日本だと考えない方がいい。ここに座っていると、このことがよく分かる。沖縄は日本の楯になる植民地だ。ワッター(私たち)にとって沖縄の痛みを感じることのできない日本は祖国ではない」「沖縄は日本でないと考えると、ここで起こっていることは、みんな辻褄が合うんだ」
「20年後には辺野古も与那国も日本政府の基地になるはずだ。ぼくは反基地闘争は反国家闘争だと思っているよ」「沖縄の人は基地問題で負けたことはないですよ。今も闘っているんだから負けたことにはならないですよ」「広島や長崎の復興が国家の支援なしに行えただろうか。沖縄では亡国の民として、国家の支援なしで戦後の復興がなされたのだ」
「私の大先輩の一人がおっしゃった言葉があります。沖縄こそが成長の起爆剤になりえると。それはどういうことかというと、沖縄らしさを大切にし、美しい風土を守り、人を大事にして、決して無理をしないこと、そう言うんですね。この沖縄の気風がこれからの時代に相応しい発展を遂げていく起爆剤になると言うんです」
まだ他にも、珠玉のような言葉、そして深く考えさせられる発言が沢山あります。
そして、ヒアリングや辺野古を訪れた大学院生たちは、率直に意見を出し合い、ときにはケンカもします。そして、沖縄の現状を「乗り越えるためにはどうしたらいいと思う?」という彼・彼女らの問いに、ゼミの指導教授は「考え続けることに意義がある。揺れ続けることでねじれた思想を転生させる。ここから沖縄のダイナミックな思想が生まれてくるはずだ。対立を拒否するためだといって、話し合うことも考え続けることも拒否すると、権力の思うつぼだ」と答えています。
実践しながら考え続ける―当たり前の、そして素晴らしい言葉ではないでしょうか。(静岡/一読者)