未来・第313号


            未来第313号目次(2021年3月4日発行)

 1面  3・11福島原発事故から10年
     老朽原発 うごかすな

     生活保護 基準引下げは違法
     2月22日 大阪地裁が判決

     2月15日 関電に緊急抗議行動
     3・20 高浜全国集会へ

 2面  スガも維新もいらない
     2・11 纐纈厚さんが講演

     「白バス」でっち上げ弾圧
     大阪高裁で逆転勝利
     2月4日

     優生保護法問題は終ってない
     兵庫訴訟の勝利めざして

     沖縄報告 連日監視行動
     工事車両搬入許さない

 3面  〈寄稿〉 優生保護法による「脳性マヒと不妊手術」
     脳性まひ者の生活と健康を考える会・古井正代

     旧優生保護法違憲訴訟
     2月4日 札幌地裁が差別判決
     木々 繁     

 4面  焦点 大阪維新追撃・打倒のために A
     パソナやアソウが大阪を食い物に
     剛田 力

 5面  連載 #Me Too運動に学ぼう
     党内性暴力事件 真の謝罪のために D
     石川由子

     開始されたいのちの選別・切り捨て
     関東障害者解放委員会 松浦 淳

 6面  投稿 2つの「資本論」(上)

     読者の声
     総務省官僚を首相の息子が接待
     民衆の納得のいく処分を

     84歳の独り言ーー出会った人びとG
     大資本に命を狙われても
     大庭伸介

     冬期カンパのお礼

       

3・11福島原発事故から10年
老朽原発 うごかすな

2011年3・11福島原発事故から10年になる。福島原発事故は終わっていない。にもかかわらず、もう原発はいらないの声を無視して政府は執拗に原発の再稼働を狙う。とりわけ最大の焦点が、運転開始以来46年を超えた高浜1号機、45年を超えた高浜2号機、44年を超えた美浜3号機の「40年超え原発」をうごかす動きだ。老朽原発許さず廃炉に追い込もう。そうすれば全ての原発を廃炉に追いやる展望がひらかれる。

福井県知事と関電社長が猿芝居

2月12日、森本孝関西電力社長は、杉本達治福井県知事と会談し、使用済み核燃料の搬出先候補地を2023年末までに決めるとし、もし候補地を見つけられない場合はたとえ運転中であっても運転は止めるとし、老朽原発の再稼働に向けて地元同意を求めた。その場には、資源エネルギー庁長官も同席し、経産大臣もオンラインで参加している。杉本知事は、2023年末までに候補地を見つけるという空手形を受けて、「同意の前提が整った」とし、県議会に対し、老朽原発再稼働について議論を始めるよう求めるとした。関電は、これまで、約束破りを繰り返してきて、候補地を見つけることはできなかった。2018年3〜5月、大飯原発3、4号機の再稼働にあたり、2018年末までに、候補地を見つけるという事を条件にして県に再稼働を認めさせた。しかし、候補地を示すことができず、2020年末までに、と時期を延長したが、その約束も破った。
今回の「2023年末まで」という約束もなんら具体的展望があるものではない。その念頭にあるのは、青森県むつ市の日本原電と東電の中間貯蔵施設の共同利用であるが、むつ市長は共同利用を拒否し、猛反発している。2023年末までに候補地を見つけるという約束も破る可能性が極めて高いといわざるをえない。こういう空手形を受けて態度を豹変させた杉本知事の県民に対する背信行為を許してはならない。

政府・福井県、美浜町・高浜町が一体

美浜町の戸嶋秀樹町長は2月15日、「美浜3号機の再稼働同意」を表明した。すでに高浜町長・議会が同意をしている。それに先立って、2月10日松村孝夫・関電原子力事業本部長は美浜町役場を訪問し戸嶋町長と会談した。その席で、「地元企業の活用を」という美浜町長の要望に対し松村は、「特命受注で地元企業を支援する」と約束した。原発マネー不正還流問題では、高浜町の吉田開発に対し、「特命受注」で工事を垂れ流し、その「一部」が関電の会長や社長、役員に流れていたことが明らかになっており、関電はそのことを反省し、役員人事を一新したとしてきた。しかし、旧来と何一つ変わらない関電の体質を示している。そういう関電に原発を運転する資格があるのか。原発はヤミの世界、汚いカネでしか成立しない。それが、原発に依存する構造を作り出し、町の自立的な発展を阻害してきたのだ。
経産省や資源エネルギー庁は、一民間企業の営利行為に全面的に介入してきた。地元同意をめぐる過程でも、経産省や資源エネルギー庁は、突出して推進を働きかけてきた。むつの中間貯蔵施設共同利用も政府が全面的に推進することを表明している。

老朽原発うごかすな! のうねりを

仮に高浜1、2号機、美浜3号機を動かすことができても、高浜1、2号機は6月9日に、美浜3号機は10月に特重施設(特定重大事故等対処施設)の設置期限を迎える。この時点で特重施設が完成していなければ原発は止めざるをえない。にもかかわらず、老朽原発の再稼働を推し進めるのは、老朽原発が1日でも動いたという実績が必要という政府の意志である。日本の原発は今後次々40年超え運転をむかえるが、高浜1、2号、美浜3号機が実際に動いたことが政府=原発推進勢力にとって決定的に重要なのだ。逆に老朽原発高浜1、2号、美浜3号機の再稼働を阻止すれば、全ての原発の廃炉を勝ち取る展望が切り開かれる。
このなかで迎える高浜現地全国集会は極めて重大だ。開会中の福井県議会では保守系からも疑義が出されている。関電の約束破りを許すな! 県知事の背信を許すな! の声を上げ、3・20高浜全国集会を成功させよう。反原発闘争の今後を決する正念場だ。

生活保護 基準引下げは違法
2月22日 大阪地裁が判決

判決後「勝訴」の文字をかかげる弁護団(2月22日、大阪地裁前 撮影は本紙記者)

大阪地裁第2民事部(森鍵一裁判長)は2月22日、国がおこなった生活保護基準引き下げの違法性を認め、引き下げ処分を取り消す判決を出した。今、全国29都道府県で1000人近くの生活保護利用者が原告となっているが、この判決は昨年6月の最悪の名古屋地裁判決を「克服」(弁護団声明)した初の勝訴判決である。原告の国家賠償請求こそ認めなかったが、原告たちの生活実態を真摯に受けとめ、国の保護基準引き下げに裁量の逸脱があると認めた歴史的な判決である。

判断の過程及び手続に過誤、欠落

コロナ禍の下、いま多くの人たちが解雇や、収入の大幅減など生活の困窮は日増しに拡大している。この時期に「保護基準引き下げは違法」という判決が出たことは生存権保障の観点からきわめて重大である。
判決要旨をみるとほぼ完全勝利だ。国は物価下落を根拠に保護基準を引き下げたが、判決は物価下落の起点を2008年にしたことを問題にした。08年は「世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品をはじめ、多くの食料品目の物価が上昇したことにより消費者物価指数が11年ぶりに1%を超える上昇となった年であり」、この「特異な物価上昇」が起きた年を起点にすれば「物価の下落率が大きくなる」ことは明らかだ。これを起点にした厚労大臣の判断は「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くもの」で、「その判断の過程及び手続に過誤、欠落がある」と認定した。さらに判決は、総務省の指数でなく厚労省独自の数値を使用し「過誤、欠落がある」とした。 大阪地裁判決の争点は全国の裁判の争点と共通である。したがって大阪地裁の勝訴判決は全国に波及する可能性が大きい。次は札幌、福岡で判決だ。
勝利報告集会では、小久保哲郎弁護士が冒頭「勝利したぞ」と右手を高くあげ、原告は口々に喜びを伝え、名古屋地裁判決を打ち破った弁護団、傍聴をつづけ宣伝行動を積み重ねてきた支援に感謝し、これからの控訴審をがんばる決意を表明した。
原告、弁護団、支援のさらなる団結と行動が世論を動かす。判決翌日には、全国の弁護団による判決の分析・研究会が、2月24日には厚労省交渉がおこなわれた。国は保護基準引き下げを謝罪し、保護基準を元に戻せ。人らしく生きる権利を保障しろ。(三船二郎)

2月15日 関電に緊急抗議行動
3・20 高浜全国集会へ

2月15日、「約束やぶりの関電ゆるすな!緊急行動」が関電本店前でおこなわれた。2月12日の4者会談への怒りの行動だ。老朽原発うごかすな! 実行委員会の緊急呼びかけに、35人が雨をついて集った(写真上)
 2月12日、福井県庁で県知事、関電社長、資源エネルギー庁長官、経産相が会談(経産相はリモート)。関電は「使用済核燃料中間貯蔵施設の県外候補地を2023年末までに確定させる」と提案し、県知事は「県議会に再稼働に向けた議論を促したい」と応じた。
 大飯原発3・4号機の2018年3〜5月再稼働が迫る中、2017年11月に西川福井県知事(当時)は、関西電力に大飯原発再稼働の条件として、「中間貯蔵施設の県外候補地を示せ」と迫り、関電は「2018年末までに候補地を提示する」と約束した。それを担保に大飯原発3、4号機は再稼働した。ところが18年末までに候補地は示されず、大飯原発は止まらず、その後「20年末までに県外候補地を示す」と再度約束。しかし関電はまたも約束を破った。
杉本福井県知事は、本年2月11日までに県外候補地が示されないなら議論は開始できないと何度も表明していた。ところが何の保証もなく「2023年末まで」という関電の3回目の口約束に「理解」を示した。杉本知事と関電を弾劾し、3月20日高浜現地に総結集し反撃していこう。

2面

スガも維新もいらない
2・11 纐纈厚さんが講演

講演する纐纈厚さん(2月11日、大阪)

「2・11『建国記念の日』反対! スガも維新もいらない! 競争・強制でなく、命と人権を守る教育を!」集会が大阪市内でひらかれた。集会では、纐纈厚さんの講演と、「日の丸・君が代」被処分者の報告・連帯アピールを受け、決議を確認し、終了後、難波までデモ。
はじめに、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク事務局長の山田光一さんが、@菅内閣の本質は新自由主義と強権で戦争する国だ。一刻も早く打倒を。A大阪都構想が破綻したが、維新は府・市一元化条例を策動。コロナ対応で自民党政権と民意の隙間に入り込み自民党を補完してゆく役割。B卒業式で、今回も「君が代」清聴・斉唱へ職務命令を出した。これの撤回要求、卒業式ビラ配布などの意義をのべた。

警視庁特高課長

元警視庁特高課長・纐纈彌三の国会発言から、「建国記念の日」制定の経緯を検証。彌三は田中義一内閣の指示で1928年「3・15」弾圧、29年「4・16」弾圧を陣頭指揮した。社会主義・共産主義を徹底抹殺しないと侵略戦争はできない。「建国記念の日」は、戦後も、戦争に反対する人たちを抹殺しないと戦争を遂行できないとするものだ。3・15―4・16弾圧は今も生きている。安倍・菅内閣は国権主義者、国家の下に国民がある。菅の背中に安倍が張り付いている。安倍政権が7年半も続いたのは戦前・戦後は連続し、この国に国権主義がばっこしているからだ。アベは騒々しいファシズム、スガは冷たい陰鬱なファシズム。菅は、語りを自分の言葉で堂々と答弁できない。意に沿う者は引き上げ、沿わない官僚は飛ばす。国権主義は官僚主義と一枚岩で、国民を動員・統制・管理しようとする。日本はすでに戦前型の帝国になっている。安倍の国会答弁は、「もう一つの真実がある」とはぐらかす。ファシズムは嘘も百回言えば真実になる。嘘も千回言えば、嘘か真実かどうでもよくなる。安倍イズムはそれだ。菅もくりかえし嘘をつき続ける。自民党の自由はオオカミの自由。私たちは羊。憲法・平和主義を武器に狼に立ち向かおう。

植民地支配を反省しない天皇制はいらないと、2・11反「紀元節」デモがおこなわれた(東京)

すべての処分撤回を

報告ではグループZAZAから「日の丸・君が代」被処分者4人が登壇した。東京からは、10・23通達以後に490名の処分。簡素化された今年の卒入学式でも国旗・国歌は譲らない。退かず、処分撤回の第5次訴訟を準備中、7月に「日の君」ネット全国集会を予定と報告。連帯アピールの後、「卒・入学式での『君が代』清聴・斉唱の通達・全ての不起立処分撤回要求決議」を確認した。

「白バス」でっち上げ弾圧
大阪高裁で逆転勝利
2月4日

京都府京丹後市に建設された近畿初の米軍基地(Xバンドレーダー基地)に反対する現地全国集会が2014年9月に開かれた。この集会にむけて、ある活動家所有のバスを使用し参加者が燃料代や高速料金を頭割りしたことを、翌年に大阪府警が「無許可で運賃を集めて営業行為をした」から「白バス」だと強弁して事件化した。
 15年6月4日、大阪府警本部警備部公安三課は、「道路運送法違反」容疑で、反戦・市民運動の活動家3人を逮捕した。さらに、4日、5日の両日で全国10数カ所の個人宅、事務所などに家宅捜索。全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、関生)にも不当捜索がおこなわれた。しかしそもそも関生は、当日は組合の行事があり、ひとりも参加せず、組合所有の車も一切参加していない。事件そのものがでっち上げで、かつ何の関係もない関生にガサ入れという不当弾圧であった。

損害賠償を提訴

 関生は、大阪府警がおこなった「捜索令状請求」が違法として損害賠償訴訟に踏み切った。争点は@道路運送法には違反していない、A家宅捜索の際に関係ない組合員の顔を撮影したのは肖像権の侵害、B「罪証隠滅してるんや」との警察官の発言は名誉失墜行為、C大阪府警西署が請願書を受け取らなかったのは違法、である。
 1審大阪地裁は請求棄却で敗訴。ところが、本年2月4日、大阪高裁はABCについては主張を認めず請求を棄却したが、@については認め、原告一部勝訴となった。
 高裁判決では「道路運送法四条一項の一般旅客自動車運送事業の『経営』とは、常時他人の需要に応じて反復継続して運送行為を行う行為であり、一時的運送は含まれない。今回の事案は、年に1・2回開催する集会の参加者の便宜のために、一般旅客自動車運送事業の許可を得ていないバスを運行しているにすぎない」と判示し、道路運送法四条一項違反の具体的な嫌疑が存在するとした大阪府警察の警察官の判断は、「証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により導き出されたものとはいえないから、本件捜索差押許可状の請求は、その余の点について検討するまでもなく、違法であり、かつ、判断について解釈が分かれ得るものでもないから、上記請求をした大阪府警察の警察官には、過失がある」とした。つまり事件でないことを府警が勝手に「事件だ」としておこなった弾圧だと断罪したのである。2月18日、大阪府(府警)は、判決を不服として上告した。

優生保護法問題は終ってない
兵庫訴訟の勝利めざして

2月21日に神戸市で「優生保護法問題はまだ終わっていない」集会が開かれた。
兵庫優生保護法被害弁護団長の藤原精吾さんが、「去年亡くなった高尾さんは、お金が欲しいのではない、障害者が差別を受ける社会を変えるためと語った。法律で不良な子孫と決めつけられ、子どもを作ることが出来なくされ、障害があることをわきまえることを求められた。差別されてきた障害者が社会を変えるための裁判なのです」と語った。
弁護団の吉山裕さんの報告のあと、原告の聴覚障害者の小林喜美子さんがオンラインで、「3歳の時、病気で耳が聞こえなくなり、いじめられて育った。大人になって縫製の職人になり結婚し、やっと妊娠して2人で喜んだ。ある日、母と病院に連れて行かれ堕胎させられた」と涙を流し語った。原告の脳性麻痺者の鈴木由美さんも無理やり不妊手術を受けた被害者。言葉では言いあらわせない悲しみの経験だと思う。
支援者から挨拶のあと、手話を交えてシュプレヒコール。終わりに司会をつとめた嘉田眞典さんは「裁判は、仙台、東京、大阪、札幌と連敗、何故か。強制不妊手術は重大な憲法違反だと認めたが、20年の除斥期間で被害者の権利は消滅したとされた。裁判官が政府の意向に反する結論を出すには勇気がいる。勇気を与え背中を押す運動が必要」とまとめた。(大北健三 集会の写真は3面)

沖縄報告 連日監視行動
工事車両搬入許さない

キャンプ・シュワブゲート前で搬入する工事車両を監視する市民(2月19日)

2月4日 沖縄県は、2月7日までを期限としていた新型コロナウイルス感染拡大防止のための県独自の緊急事態宣言を、28日まで3週間延長と発表した。
5日 〈オール沖縄会議〉は、県独自の緊急事態宣言を受け、抗議活動中止を3月1日まで延長すると決定。これを受け、監視活動を続けている市民もそれぞれの場所での活動の延長を決めた。しかし監視活動をしている市民からは、県の緊急事態宣言下でも工事を続行している防衛局に怒りの声が上がった。
7日 任期満了に伴う浦添市長選は7日投開票され、現職の松本哲治氏=自民、公明推薦が当選した。〈オール沖縄〉候補の伊礼悠記氏は健闘したが及ばなかった。今回の選挙は、アメリカ軍那覇軍港の浦添市沖への移設の是非が最大の争点となり、市民の関心は高く投票率は前回を上回った。那覇軍港の浦添移設について、松本氏は「容認」、伊礼氏は「反対」を掲げ選挙戦をたたかった。松本氏は8年前、軍港移設反対を掲げて初当選したが、その後、県と那覇市が受け入れを認めているとして受け入れを表明。4年前の公約では「浦添案」を掲げ当選したが、国や県、那覇市の了解を得られないとして撤回した。今回「容認」を掲げ、前回に続き、自民、公明の推薦を受けた。伊礼氏は松本氏の2度の公約撤回を批判し「市民の思いは軍港移設反対だ」として軍港移設の中止を公約したが及ばなかった。しかし伊礼氏に寄せられた2万票を超える市民の声は必ず市政に反映される。
9日 沖縄防衛局は、辺野古の新基地建設をめぐり、現在埋め立てが海面から3・1mまで進んでいる工区「2―1」と呼ばれている区域に関し、海面から4mまでかさあげする追加工事を3月29日から始める予定を県に通知した。工事は7月31日までを見込んでいる。工区「2―1」は昨年9月末に3・1mに達していた。辺野古側の埋め立て区域は最終的には5・7m〜10mの高さまで積み上げる計画だ。
12日 名護市安和の琉球セメント桟橋と本部町塩川港で土砂搬出がおこなわれた。監視団によると、塩川港からの1日の土砂搬出量が昨年12月は10トンダンプ500台だったが、今年に入って増加している。2月は700台となっているとのことだ。防衛局は、工区「2」の埋め立て作業を加速させ、工区「2―1」の作業に移るようだ。
19日 キャンプ・シュワブゲート前では監視団が工事車両の搬入を確認。県の緊急事態宣言下でもシュワブゲートからはミキサー車などの工事車両が連日200台。辺野古海上でも「K8護岸」「K9護岸」から土砂が連日投入されている。護岸のコンクリートブロックも工事が進んでいる。(杉山)

3面

〈寄稿〉 優生保護法による「脳性マヒと不妊手術」

脳性まひ者の生活と健康を考える会・古井正代

結審を前にした兵庫集会(2月21日、神戸)

障害を理由にした不妊手術はアメリカでは現在もいくつかの州で合法だそうです。実際聞いた話では、たとえ非合法でも闇では、親が連れて行って本人の人権を無視してやっているようです。 私たち脳性マヒ者の仲間の中には「自分で自分の仕末が出来ない者に月経はいらない」と何の説明もせず、介護者の立場だけを優先して、12歳で月経の始まる前に手術されてしまった仲間もいます。手術される前までは座って食事も食べていたそうです。手術後は、彼女自身で身体がだるく起こせない状態になって、30歳頃まで寝たきりになっていたそうです。
この脳性マヒの彼女は鈴木由美さんという、署名をお願いしている神戸地裁の原告で、ただひとり本名で闘っている人です。
日本で最初に本名で不妊手術をされたと問題提起した佐々木千津子さんも脳性マヒでしたが、裁判を起こす前に残念ながら亡くなりました。彼女も鈴木由美さんも、教育を受ける権利を奪われ、学校にも行けず子どもたちの仲間に入ることを拒否され、家から出ることもなく育つことを強要されて育ちました。
佐々木千津子さんは、現在の広島市で産まれたのです。お父さんが原爆投下直後に降った放射能たっぷりの黒い雨の中、彼の妹さん(千津子さんの叔母さん)を爆心地近くまで探しに行って被ばくされ、その後に産まれたのが千津子さんです。
やがて、彼女のお姉さんが何度見合いしても破談になって、家の中がギクシャクし初めたといいます。破談ばかりになる原因は、「被爆したお父さんの子どもに脳性マヒの子どもが出来ているせいだ。」と言われ、針のむしろに座らされたようで家に居づらくなったと言っていました。自分さえ家から出て行けば、お姉さんは幸せになれると思い、家族も揉め事がなくなれば幸せになると信じて、家から出て行く決意をしたそうです。
これは彼女の家族へのいたわりや自己犠牲の現れでしょうか? そのままでは人としての尊厳はズタズタで、彼女の居場所のない苦しさはどうなるのでしょうか?あくまで上から目線で、障害者の生存自体を哀れとし「あなたのために」と「慈悲殺」におよぶ発想、いわば優生思想の安楽死と同じで救われません。
佐々木さんは、教育権を剥奪され、当時は社会性も奪われていたのです。小さな家の中に産まれてから閉じ込められ、その中で「千鶴子さえいなければ」と責められれば、出て行かざるを得ないでしょう。この発想こそが、当時頻繁にマスコミを賑わしていた、親による障害児殺し、そしてマスコミも煽って子殺しの親の減刑嘆願運動が社会通念とされていたことと同じなのです。
その頃の彼女には家を出ることは施設に入るしかないと思っていたそうです。ところが、障害者収容の施設では「生理の仕末が自分で出来ない者は入る事が出来ない」と言われて「痛くも痒くもない方法がある」とも言うので、それで家から出られるのならと思ったそうです。結果、よりによって原爆で広島市民が大勢被爆させられた広島で、1968年に社会保険広島市民病院がコバルトを健康な卵巣や子宮に何日も当てて被ばくさせたのです。 その後、ホルモンのバランスを崩して体が起こせなくなり、気分も悪いこともあって、寝ている事が多くなったら、施設内では甘えていると職員や収容されている仲間たちからいじめられて、良いことは何もなかったそうです。彼女の一生は、被ばくさせられたことによって薬づけだったのです。
後に、障害者解放運動と出会い、施設から出てアパート暮らしをして、やっと社会性を彼女は身につけることが出来たのです。そして、初めて自分に何をされたかを知って、情けなく憤りを覚えるとともに、優生保護法によって優生思想が蔓延した結果、人権が自分にあることをも知らされないまま生殖を失った自分の存在を伝えることを、彼女は「一生涯の自分の生きた証」にしました。彼女は手術について「子どもが出来なくなる」と説明してくれていたら拒否していたのにと、私たち脳性マヒの仲間が子どもを産んで育てているのを見て、一生悔しがっていました。

兵庫訴訟が結審

「旧優生保護法違憲国賠兵庫訴訟において公正な判決を求める要請署名」にご賛同お願いします!
旧優生保護法違憲国賠兵庫訴訟は、予定通りいけば、本年3月25日に結審しその後、数か月で判決を迎える見込みです。皆さんのご賛同が判決に向けての大きな力になります!
これまで裁判所は、各地の訴訟において、それぞれ憲法違反を認めながら、除斥期間の経過すなわち「時間切れ」という理由から国の責任を認めないという判決を出してきました。兵庫訴訟では、この流れを何とか止めないといけないと思っています。
障害を有することを理由に「劣った」ものとしてその命・存在を否定するという法律を作り政策を実行してきたということは、国の重大で明白かつ残酷な過ちです。我々は、このような過ちが、時間の経過により濯がれて良いものではないという確信のもとに、この裁判を原告らとともに闘ってきました。
障害があっても、皆大切な命であり、守られるべき尊厳があり、国がそれを奪うことなど後にも先にも許されない、裁判所にはそのことを明言させなければなりません。
そのためには、皆様のお力添えをいただくことが何よりも効果的です。第一次署名の〆切は、3月10日となっております。何卒、ご協力よろしくお願いいたします!

旧優生保護法違憲訴訟
2月4日 札幌地裁が差別判決

木々 繁

札幌地裁(高木勝己裁判長)は2月4日、旧優生保護法(以下、旧法)下で不妊と人工妊娠中絶の手術を強制された道央の女性(77)と夫(19年8月に82歳で死去)が国に損害賠償を求めた訴訟で、旧法に基づく不妊手術自体を証拠上認められない、また中絶手術についても旧法に基づき強制されたとは認めがたいとして請求を棄却した。全国9地裁・支部で起こされた国賠訴訟13件(原告25人)のうち5件目の判決。旧法下の手術自体を認定しなかったのは初めて。さらに、「旧法」の違憲性の判断も回避した(昨年6月の東京地裁に続き2例目)。提訴理由に中絶を加え、手術を受けていない夫も被害者と位置付けた訴訟は全国で初めてだった。これに対する判決は、極めて不当かつ障がい者への差別と偏見が際立つ許しがたいものだ。

逆流に道開く政治的判決

判決は、この2年余相次いだ各地裁における違憲判決(18年5月の仙台、20年11月の大阪、本年1月の札幌)の流れに歯止めをかけ、国賠訴訟運動の解体、被害当事者の「一時金支給法」による分断の促進を企図するものだ。国家の下僕に成り下がった反動司法による政治的判決である。
判決の論理は、国の意思を色濃く反映した「支給法」のそれに対応している。「支給法」は、旧法の違憲性の認否を回避し、事実上違憲性を否定した。支給の対象から配偶者を排除し、中絶手術を支給の適用外とした等々。

障がい者差別の判決

「女性が中絶手術を受けた後に妊娠しなかったとしても、不妊手術以外に原因が考えられないというものではない」。女性が妊娠しなかったのは、強制不妊手術をされたからとはいえないと、女性や夫の主張をまっこうから否定したのだ。知的障がい者に対する司法の差別的偏見を露呈したものと考えざるをえない。
「原告側は女性が同意を求められておらず、旧法の知的障がい者らを対象にした規定に基づき手術が行なわれたと主張する。しかし、女性が同意を求められなかったかどうかは定かでない」、「同意しなかった」という知的障がい者の主張の当否は「定かでない」と言っている。あからさまな障がい者差別だ。
「81年当時、夫婦が毎月金銭を借りていたとする証人の話は信用性を疑う事情がなく、女性が受けた手術が旧法の経済的理由の規定に基づくものだった可能性も否定できない。中絶手術が旧法の知的障がいがある者を対象にした規定に基づくものであったとは認めるに足りない」。司法は知的障がいを持つ原告が中絶手術を強制されたとの訴えにはいっさい耳を貸さず、一方「健常者」の証言は信用できると言っている。これが障がい者差別でなくて何であろうか。
何が原因の借金かも問うことなく、知的障がいを持つ者は経済的な問題を抱えているはずだという、差別的偏見に基づき、のみならずさらに短絡して「手術は旧法の経済的規定に基づくもの」と事実上恣意的に断定している。こうして、判決は中絶手術が旧法の規定に基づいて知的障がい者を差別的に選別して実施されたものであることを否定し、差別に基づく手術を正当化しているのである。
夫妻は18年6月28日に提訴した。その直後、報道各社に寄せた手記で夫は語った。「私たちの子どもを奪ったのは、優生保護法です。この法律がなければ、私たちの子が奪われることも、妻に子どもが望めなくなることもなかった。わが子を奪われた悔しさ、悲しさを裁判で問いたいのです」。第1回口頭弁論(18年11月12日)で、小野寺弁護士が夫妻のコメントを紹介した。「私たち夫婦の胸には生涯大きな悲しみと憎しみが消えることはないでしょう」
夫が他界したのちの2020年、妻は「朝日」記者の取材で中絶させられたことへの思いを尋ねられ、「悔しい」と声をあげたという。この一言がすべてを語っている。旧法と強制不妊・中絶手術に対する人間存在をかけた満身の糾弾だ。優生思想と私たち一人ひとりを問う糾弾である。

原告、弁護団の声

◇小島喜久夫さん(79。北海道)「なぜ裁判所は真剣に自分たちの苦しみを考えてくれないのか」
◇渡辺数美さん(76。熊本)「不妊手術を受けたこと自体が認められず、原告の無念さを思うと言葉もない」
◇〈被害者・家族の会〉共同代表・北三郎さん(77。仮名。東京都)「裁判官が頼りで訴えているのに、本当にひどい。死ぬまで闘っていく」
◇原告弁護団の声明「最低最悪の判決。旧法の違憲性を判断しないという結論ありきだ。門前払いで非常識極まりない」◇西村武彦弁護団長「勇気を出して提訴した2人への冒涜だ」
◇小野寺信勝弁護団事務局長「一連の全国訴訟の中で最もひどい判決。旧法に基づく手術を認めず門前払いした」

障がい者差別と不屈にたたかう原告、被害当事者の人生とたたかいに学び、連帯し、「国は謝罪と補償を!」国賠訴訟運動のさらなる前進を。

4面

焦点 大阪維新追撃・打倒のために A

パソナやアソウが大阪を食い物に

剛田 力

(1)大阪を食い漁る新自由主義

昨年12月28日、第21回副首都推進本部会議がおよそ11か月ぶりに開催された。この会議は、住民投票に敗れ動揺する維新に対し、「広域行政一元化条例」の制定に突っ走れと、てこ入れするものだった。参加者も異様で、この5年間上山信一を除いてはほとんど参加していなかった特別顧問が5人もオンライン参加している。名だたる新自由主義者たちが口々に「条例を急げ」とたきつけている。

第21回 副首都推進本部会議 出席者名簿

本部長 吉村 洋文 大阪府知事
副本部長 松井 一郎 大阪市長
本部員
山口 信彦 大阪府副知事
朝川 晋 大阪市副市長
手向 健二 副首都推進本部事務局長
田中 義浩 副首都推進本部事務局次長
本屋 和宏 副首都推進本部事務局次長

特別顧問
※上山 信一 慶應義塾大学総合政策学部教授
※岸 博幸 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授
※佐々木 信夫 中央大学名誉教授(法学博士)
※田中 大輔 東京女子大学非常勤講師・ 前東京都中野区長
※土居 丈朗 慶應義塾大学経済学部教授 ※印はオンライン参加

会議では条例の骨格が示され、総合区については言及がなかった。特別顧問が次々発言した。(以下要旨)

佐々木信夫:都構想の住民投票では、広域行政への理解は進んだ。
上山信一:住民投票があったことをベースに次のステージに。府の43市町村の見直し、行政サービス見直しの時期。ICT(情報通信技術)による市町村事務の統合。従来の府と大阪市の統合に加えて、都構想2・0又はデジタル都構想。広域事業推進の見直しの時期。 岸博幸:国のスーパーシティ特区。現状、大阪以外は大胆なものは出てきてない。一番牽引してくださったのが大阪。よりデジタルな、大胆な提案を。そのための条例を早めに出していただいて。これは国の観点からも重要。とにかく条例を早く議会に提出してこの3月にも決定を。
土居丈朗:広域一元化の条例制定は早期に必要。大阪が先んじて金融都市構想を。起爆剤として広域一元化重要。
上山信一:2012年に作られた大都市法は、いわば大阪のために作られた法律。現状、人口要件のみで政令市になり、権限が県から市にいく大都市のあり方も検討が要る。国に言うべきことは言う。
田中大輔:各地でのUR、公社が都市計画の執行主体になることは例としてある。府市がまちづくりの事業主体を共同で立ち上げるのは法律上でもあり得るのでは。

松井は「都構想否決になり、全国で、政令市をめぐる議論。政令市が力を持とうという議論もある。東京の隣の横浜は大阪とは違う方向がええんかなとか」と動揺的なことを言っていた。特別顧問たちは、全国の政令市から権限を取り上げる戦略にたち、大阪をその先駆けにしようとしている。国がまだそこに立ちきれないなら、国にものを言っていく、と繰り返す。だから「条例を急げ」と背中を押す。彼らにとっては、すべての地方自治体の行政サービスはリストラする、その過程を民間企業が利益にかえていくエサでしかない。「都市計画」部門も、民営化手法で、執行権を民間企業に乗っ取らせて、国の特区指定による用途制限の開放、制限が解かれた地域を、ゼネコンやカジノ開発業者、万博開発業者、グローバルなサプライチェーン企業によって、好きにむさぼり食わせる。そのためにまず大阪でスーパーシティ、金融都市構想だというのだ。
これを受けて松井は次のように応じた。「副首都推進会議の組織があることが重要。2025年の万博、うめきた、森ノ宮まちづくり。これがあるのに任意の組織なのでルールづくりが要る。都市計画については事務委託、共同設置、様々な検討を事務方に指示。法令は国との協議をスピード感を持って進めてほしい」
民間企業が、地方自治体から公的財産と執行権をむしりとる新自由主義。その先兵として、政令市の権限、財政、自治を差し出す者を市長として認めるわけにはいかない。

(2)すでにパソナの食い物に

コロナ禍でもハイエナのごとく儲けている企業がある。竹中平蔵が会長を務めるパソナグループもその一社だ。パソナが昨年10月に発表した今期(21年5月期)の第1四半期(20年6〜8月)では、本業の儲けを示す営業利益が72億円となり、昨年の同時期より60億円も増えた。パソナは、人材派遣大手だと一般には認識されている。しかし利益の伸びは、派遣業務が順調だったことによるのではない。派遣部門の売り上げは前年よりわずかだが減っている。大きく売り上げを伸ばしたのがBPOサービスという事業だ。BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、外部の業務をパソナが請け負うことを意味している。パソナは、コロナ禍で売り上げを落とした企業・個人事業主に対して政府が支給した「持続化給付金」事業を請け負った。この事業は、まずサービスデザイン推進協議会が769億円で受託、そこから電通に749億円で再委託されたが、ほとんど何の業務もやっていないにもかかわらず、推進協議会が20億円を「中抜き」した。再委託された電通はそれをさらに子会社などに再委託、そのうちの約170億円をパソナが受託した。その結果、パソナの第1四半期にBPOサービスの売り上げは、前年より83億円も増えた
維新市政の下で、このパソナに大阪市は食い物にされている。市の職員を削減する一方で窓口業務を外注化し、その大半をパソナが受注している。今では区役所の窓口で住民対応するのは非正規のパソナ職員になった。だから市民が電話や窓口で相談や交渉しても答えられず、奥から別の職員が出てくる。他人の戸籍謄本を渡すなどのトラブルも増えている。パソナの会長は大阪市の経済顧問をしている竹中平蔵で行政のスリム化≠フ指南役だ。これが維新のいう「市民のための改革」だ。
窓口業務の外注化は大阪市だけでなく、大阪府をはじめ、維新の首長がいる周辺市の役所にも広がっている。競争入札では常にパソナグループ同士が争う「独占市場」になっている。八尾市の窓口業務を委託したパソナ職員による手数料着服事件も発覚するなど、低賃金・非正規雇用を拡大したツケが住民サービスの質にも影響を与えている。

アソウ(麻生財務相の弟が経営)も参入

区役所の窓口だけではない。大阪市が生活保護受給者などを対象におこなう「総合就職サポート事業」は、2011年度に開始。派遣大手パソナなどの民間企業に業務を委託している。委託の特約条項によると、同支援によって、受給者が就職し、生活保護廃止になった場合や保護申請中の人が就職し、生活保護の受給に至らなかった場合に1人当たり6万1111円が委託料に加算される。また、職場に定着した場合は、さらに加算される。逆に、支援を受けた人の就職率が50%未満であれば、基本委託料から割合に応じた減額がある。
大阪市によると、19年度の同事業による就職者数は2732人、保護廃止件数は146件。特約条項に基づく加算額の合計金額は1674万9797円。
委託先は、パソナ、アソウヒューマニーセンター、パーソルテンプスタッフ。基本委託料はそれぞれ2億4785万2720円、2億5717万9464円、8963万700円となっている。
アソウヒューマニーセンターは財務大臣麻生太郎の弟、麻生泰が会長を務める人材派遣会社だ。こうした連中が、大阪をハイエナのように食い漁っているのだ。(つづく)

5面

連載 #Me Too運動に学ぼう
党内性暴力事件 真の謝罪のために D

石川由子

森辞任!

森喜朗オリンピック・パラリンピック大会組織委員会長が女性差別発言により辞任に追い込まれた。権力者による差別発言は引責辞任が当然である。そもそもセクハラ・パワハラが絶えない「体育会系」と揶揄されるスポーツ界を革新するために女性委員を増やそうとしているときに、「女性理事を4割をというのは文科省がうるさく言うんですね。だけど女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と言ったのだ。革新するためなのだから女性が長時間発言するのは当たり前ではないか。つまり文科省ですらオリンピックを前に女性を登用せざるをえないと言っているときに、それを否定したのだ。また「私どもの組織委員会には女性は7人ぐらいおられますが、みんなわきまえておられます」。つまり森が言いたいのは女性は分をわきまえた人物であるべきだ。そうでない人物は「困る」ということなのだ。
森のような男性をホモソーシャルな男性という。ホモセクシャルではないのでことわっておく。彼らは男性間の結びつきを大事にし、女性を嫌悪する。「女性は性の対象、家事育児は女の仕事、男の仕事に女が口出しするな」といったタイプだ。まさに森発言に凝縮されている。
「後任は実力のある人なら男女は問わない」というテレビのコメンテーターがいたが、それは間違っている。橋本聖子のような「森喜朗の娘」と自称する女性では意味がない。女性は社会であらゆる機会を奪われているから周辺に追いやられ、知らず知らずに「わきまえる女性」になって社会との摩擦を小さくするように自己を形成してしまう。それが問題なのだ。橋本聖子のように女性でありながらホモソーシャルな関係の中にいる人物が登用されてもダメなのだ。私はエリートの中に女性を登用せよと要求しているのではない。日本はエリートの中にすら女性が少ない強固なホモソーシャル社会というべきだ。

椿氏はX問題に責任とらず逃亡

椿氏は「(党は)世界中でたたかわれている#MeToo運動に著しく立ち遅れているばかりではなくそれとは反対の存在であることが暴露された」と平然と述べている。これが昨年7月まで関西地方委員会議長であったものの発言だろうか。まるで他人ごとだ。X問題は自分の責任なのに痛みも苦しみもない。私は女性解放戦線の一員としてX問題が起きたことは私の責任だと考え加害者Hを徹底的に糾弾したいと思っている。それがMさんへの真の謝罪だと思っている。しかし元議長はその責任性を共有するどころか、責任を取ろうとする我々に悪罵を投げつけているのだ。

今こそ「政治と暴力の奪還」を

椿氏辞任のあいさつは、初めから党組織の外にいた人間の心象世界だ。椿氏は党と関係あるなしにかかわらず女性解放闘争の中に自分をおいていない。しかも自分がそうなってしまったのは「政治と暴力の奪還」という党の女性解放理論が間違っていたからだと、本末転倒し、これまでの女性党員たちの血を吐くような激しいたたかいの歴史を罵倒しているのだ。

3日に1人 女性が殺されている

今日、「暴力の奪還」は直接的な暴力の奪還だけでは十分ではない。女性たちは差別の中で様々な暴力にさらされている。未曽有のパンデミックの中でまず最初に解雇されているのは女性非正規雇用労働者だ。女性の自殺が増えている!
そもそも前述したように夫や恋人、父からの「愛」という名の、直接的なあるいは間接的な抑圧と支配=家父長制という暴力から自由な女性は一人としていない。逆からいえばこうした暴力を振るわない男性は一人としていない。女性はこの暴力を見抜き、差別を見抜き、暴力に屈服しない力を奪還することが「暴力の奪還」といわずして何なのか。夫が家にいるときは外出できない女たち。家庭内暴力から逃げるために夜の街をさまよう「神待ち少女」。「神」とは自分を泊めてくれる見知らぬ男性のことだ! 当てもなく子どもの手を引き「昼逃げ」し、「仕事と託児、夜寝る部屋をくれたのは風俗だけだった」というDV被害者。朝から晩まで働いても男性の半分にも満たない賃金しかないシングルマザー。世帯ごとの年金制度の犠牲者となった高齢女性の低い年金、無年金。貧困の女性化! この国では3日に1人、女性が男性に殺されている! 女性に対する暴力は減少するどころか増大しているのだ。
女性たちよ! 暴力に屈服するな! あらゆる家父長的暴力から自らを奪還せよ! これは現代的「暴力の奪還」である。そしてこの呼びかけは女性解放の日までやむことはない。
さらに椿氏は「『政治と暴力の奪還』は男社会のもの。女性蔑視の思想であり、女性を男社会に同化させるという反動思想」と語っている。階級闘争を忌避して母性原理主義に陥った一部のフェミニストのような言葉だ。「政治の奪還」は女性の渇望である。「暴力の奪還」は激しい階級闘争の真ん中で女性が主体的にたたかうという決意である。椿氏は自らの差別性を省みることもなく、「女性蔑視」などという言葉を使った。これこそが女性差別なのだ。
椿よ! 革命が怖くなったと正直に言ったらどうなんだ。しかし女性差別を持ち出し、女性を分断・利用した罪は一生消えないだろう。(つづく)

開始されたいのちの選別・切り捨て
関東障害者解放委員会 松浦 淳

なぜこのような状態が起こっているのか

欧米に比して感染者が大幅に少ない日本でなぜ、このような事態が起こっているのだろうか。『週刊現代』2021年1月23日号には興味深いデータが記されている。
感染者が最も多かった時をとって10万人あたりの感染を比較すると、日本が6・2人、イギリスが89・9人、アメリカ84・8人。ベッド数の多さでは、日本は英米を大きく上回っている。「日本全体で約152万9000ある病床のうち、新型コロナの対応をしているのは、約2万7000床。全体の2%以下」。新型コロナウイルス感染症に対応していない200床以下の民間中規模病院では、かなり空床があるともいわれる。しかも、感染を恐れて患者の診療は減っている。
新型コロナウイルス感染者の重症者のための病床は、今年1月6日時点で約3600床。昨年の5月から1200床しか増やされていない。これに対応できるはずのICUなどの体制のある病床は、約1万7千床あるといわれる。日本の場合、全体の病床の7割を民間病院が占めている。新型コロナウイルス感染治療のための報酬が引き上げられてはきたが、今の状態では重症者への治療は儲からず、高額の報酬が得られる手術のほうを選ぶ病院が多いとのことだ。また、県境を超えた広域調整をすれば、重症者に対応する体制も強化される。1月6日時点の数字だが、山梨県の重症用ベッドの使用率は8%、神奈川県の隣の静岡県は16%である。
政府も日本医師会も、こうした状況を調整し、改善しようとはしていない。急性期後の受け入れを民間病院に求めている程度だ。中国は、専門病院を作り、アメリカでは、駐車場や美術館にベッドを入れて医療管理体制を作っている。日本はオリンピック村を入院施設として使えとの声も上がっているが、それもしない。高齢者、持病を持った人、「障害者」が死ぬのを意図的に待っているのではないか、との指摘さえも有識者から上がっている。

いのちの選別基準を作れと主張する杉並区長

1月8日、田中良東京都杉並区長は、小池都知事に対して、「国・都が協力し、重症者に対する人工呼吸器をはじめとした医療機器の装着に関するトリアージガイドラインを策定する必要があります。…知事にこそ医療現場にその方針を示さなければならない責任があります」と、いのちの選別基準を作るように要請した。
文春オンライン1月11日付ではインタビューに応じて、同区長は次のように主張した。「治癒が期待できる人を優先すべきだ、というのがトリアージの考え方です。…きれいごとでは済まない現実が目前に迫っています。…そうした時に『この人から人工呼吸器を外して、あの人に付けないといけない』という判断を現場の医者に押しつけていいのか」。「例えばの話ですが、年齢を5歳刻みなどで、生還率や死亡率を示します。人工呼吸器などを装着して外せるまでの日数も重要なデータではないでしょうか。基礎疾患との関係もあります。これらデータや症例を、一般に分かりやすく公開するのです。…そうすると、人工呼吸器などを付けても延命にしかならないようなケースが見えてくるかもしれません。…これらをたたき台にして、都民の皆で考える材料にします。そうしたうえで、学会や有識者に相談しながらガイドライン化していくのです」。社会をも巻き込んで、いのちの選別のガイドラインを制度として作れ、と言っているのだ。絶対に許すことはできない。
「障害者」団体、市民団体から抗議の声が上がり、区内の「障害者」や関係団体からも批判が起こっている。そして、区議会でも、様々な立場からの批判が起こっている。この発言の撤回を求めて、たたかいは続く。

根本的な変革の
ためのたたかいを

保健所を半分に減らし、公立病院の民営化を進めてきた政府は、さらなる民営化の推進と病床削減を進めている。GoToトラベルなどで感染も拡大してきた。今、こうしている間にも、まともな治療を受けられずに死んでいく人がいるのだ。これこそ、社会の地肌が露出してきたということだ。一人でも多くのいのちを守るとともに、社会を根本的に変革する行動をおこなおう。(おわり)

6面

投稿 2つの「資本論」本 (下)
斎藤幸平 著 人新世の「資本論」

続いて斎藤幸平氏の「人新世の『資本論』」。人類の経済活動が地球に与える影響があまりに大きいことから、ノーベル化学賞受賞者であるパウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新しい年代に突入したとし、それを「人新世」(Anthropocene)と名付けた。斎藤氏は現在進行する「(経済活動に伴う)二酸化炭素排出による地球温暖化」を最大の危機と捉えている。そのため、帝国的生活様式…グローバル・サウス(グローバル化によって被害を受ける領域、人民を指す)からの資源やエネルギーの収奪に基づいた先進国のライフスタイルを批判するとともに、グリーンニューディールや「SDGs(持続可能な開発目標)」をも批判している。そして経済成長を前提とした資本主義システムではなく、「脱成長コミュニズム」に移行することを提言している。
その「脱成長コミュニズム」を提言しているのが、他でもないマルクスなのだそうな。
これまでマルクス主義・「社会主義」「共産主義」は一般的に、進歩史観、経済成長至上主義、生産力至上主義ととらえられており、環境問題解決の思想ではないとされていた。
しかし近年MEGAと呼ばれる著者も含めた世界各国の研究者たちが参加する新しい「マルクス・エンゲルス全集」の刊行事業が進められており、その過程で『資本論』に採用されなかった晩期マルクスのノート研究も進められた結果、新しい『資本論』解釈やマルクスの到達点が明らかになってきた。
マルクスはリービッヒの『農芸化学』第7版(1862年)に展開された「掠奪農業」批判に感銘を受け、『資本論』で物質代謝論を展開する。自然の物質循環過程を学んだだけでなく、資本ができるだけ短期間により多くの価値を得ようとするため、資本主義は自然の物質代謝に「修復不可能な亀裂」を生み出すことになると『資本論』で警告した。だが晩年のマルクスのエコロジー思想≠ヘ、リービッヒの「掠奪農業」の受容だけにとどまらず、『資本論』第一巻発行以降、死ぬまで熱心に自然科学の研究を続けていた。地質学、植物学、化学、鉱物学などについての膨大な研究ノートが残っており、マルクスの知見がリービッヒの「掠奪農業」批判さえも超え、生産力の上昇が自然の支配を可能にし、ひいては資本主義を乗り越えることも可能にするという単純かつ楽観的な見方と決別していたのである。そして資本主義での生産力上昇を追求するのではなく、別の経済システム(社会主義)に移行して、そのもとで持続可能な経済成長を求める「エコ社会主義」のビジョンをいだいていたと著者は断定する。「進歩史観」「ヨーロッパ中心主義」についても、マルクスは非西欧、資本主義以前の共同体社会の研究にも労力を費やした。その集大成が1881年の「ザスーリチ宛の手紙」である。ここでロシアの共同体が資本主義的発展を経ることなく、コミュニズム的発展を西欧より先に開始することができるとはっきり述べ、「ヨーロッパ中心主義」の「進歩史観」は、非西欧を中心とした共同体の積極的評価へと転換したとする。これらの晩期マルクスの到達点…持続可能性と平等を重視する新しい合理性を打ち立てるため、共同体から定常型経済の原理を学び、それを取り入れた変革の理論「脱成長コミュニズム」に到達した…これは誰も提唱したことがない、晩期マルクスの将来社会像の新解釈であるとしている。ここに至るまでの考察を第4章でながながと展開しており、非常に刺激的な本である。
著者は生産(関係)を変革しないとイケナイ、「価値生産」に重きをおくのではなく、「使用価値」に重きを置く社会にしなければならないということ、またその実現のために(直接)民主主義とそれを担保する「社会運動」が大切であると説いている。
「人新世」の危機に立ち向かうため、最晩年のマルクスの資本主義批判の洞察をより発展させ、未完の『資本論』を「脱成長コミュニズム」の理論化として引き継ぐような、大胆な新解釈に今こそ挑まなくてはならないのだ。(P204)(おわり/西川雄二)

「黒い雨」訴訟 控訴審が結審
広島高裁判決は7月14日

2月17日、広島高裁でおこなわれた控訴審第2回口頭弁論は、原告団事務局長の高東征二さんと弁護団事務局長の竹森雅泰弁護士が意見陳述をおこない結審した。判決は7月14日。
20年7月の広島地裁判決は、国が定めた援護区域外で降った雨が住民らに健康被害を及ぼした可能性があるとして全員を被爆者と認定したが、控訴審では国側が1審では提出しなかった80以上の膨大な論文などの証拠を提出した。

広島弁護士会館で報告会

閉廷後、広島弁護士会館で記者会見・報告会がひらかれた。住民側の竹森弁護士は「これらは1審で主張できたはずで、いたずらに訴訟の完結を遅らせようとするものだ」と批判し、原告の高東さんは「私たちに残された時間は少ない。被爆者として認めるべきだ」と訴えた(写真上)。
国が定めた黒い雨の援護区域は爆心地北西側の南北に約19q、東西に約11qの範囲で、区域内で雨を浴びて特定の病気を患った人には被爆者健康手帳が交付されているが、川や路地ひとつ隔てた区域外の人たちの申請は却下され続けて来た。
内部被曝による健康被害の可能性を認め、原告全員を被爆者と認定した1審判決を確定させることは、単に広島や長崎の被爆者のみに関係することではない。福島第一原発事故の被災者、避難者、原発労働者の人々などがこの裁判の帰趨に注目していることを読者の皆さんに訴えたい。(松田 忍)

84歳の独り言―出会った人びとH
ストライキで闘う郵政の仲間

大庭 伸介

私が全逓浜松支部(当時)の森下茂君と知り合ったのは、「労戦統一」が具体的日程にのぼろうとしていた1980年代後半であった。 
私は県評(静岡県労働組合評議会)や地区労の解体を阻止するために、できるだけ多くの賛同を得ようと、いくつかの組合や活動家に働きかけた。そのひとつとして、浜松や静岡・清水・三島などで頑張っている全逓の活動家を結集した。毎月1回集まって情報を交換し、年1回の合宿も2回おこなった。その中心は森下君たち浜松の活動家グループで、彼らは数年前から、毎月1回学習会を持っていた。
私は1988年、昭和天皇の下血騒ぎが始まったとき、森下君に呼びかけて、その定例学習会で天皇制をテーマにした話をする機会を得た。
1989年の暮、県評解散に伴って「労戦統一」に反対した私は県評をクビになった。森下君は浜松の他の組合の活動家にも呼びかけて私を招き、県評解散にいたる経過報告の集会を開いてくれた。
参加者から「どうして正しい主張をした人がクビにされたのか」という素朴な質問が出された。「オッチョコチョイだからクビになったんですよ」と答えたら、質問者は解せない顔をしていた。私は真っ当な労働者の存在に、心暖まる思いがした。
それから10年近く後の1998年10月、森下君たちは浜松を中心に「郵政労働者ユニオン東海地方本部」を立ち上げ、全逓から独立した。正直に言って私は内心、全逓に残って内部で頑張るべきではないかと思った。しかし、その後の経過は彼らの選択が正しかったことを証明している。
郵政ユニオンは毎年3月末に、非正規労働者の正規化と待遇改善の要求をメーンに掲げて時限ストを打っている。昨年10月、そのストを背景にした最高裁の判決で、正社員と同じ有給の病気休暇、夏期および冬期休暇、住居手当、扶養手当、年末年始勤務手当と祝日給をかちとっている。
初めてのスト支援集会のときのことである。私はレーニンが『ストライキについて』で紹介しているプロシャの内務大臣が発した「ストライキの陰から革命のヒドラ(怪物)が顔をのぞかせる」というフレーズを援用して、直接的に具体的成果を期待できないストの意義を訴えた。
集会の後、参加者から「あの演説はよかった」とほめられた。その1人は森下君で、もう1人は初めて知った郵政労働者であった。
森下君はストを打つたびに、実践から身を引いた私に対して、今でも参加を呼びかけてくれる。そして最寄りのJRの駅まで車で迎えに来てくれる。彼は県評当時から現在まで、信頼関係が続いている数少ない労働者の1人である。(つづく)

84歳の独り言―出会った人びと バックナンバー

@白鳥良香さんとキム・ヒロ事件
A清水港に浮かんだ怪死体の忘れ形見
B反戦山猫ストが成功した秘密
C欠番
D少年の志を生涯貫いて生きる
E「国賊」の母の背中を見て育つ
F大資本に命を狙われても(上)
G大資本に命を狙われても(下)



(冬期カンパのお礼)

冬期特別カンパへのご協力ありがとうございました
革命的共産主義同盟再建協議会