未来・第311号


            未来第311号目次(2020年2月4日発行)

 1面  菅退陣こそ最良のコロナ対策
     罰則反対、休業補償・現金給付を

     沖縄報告 1月5日より座り込み
     宮古島市長選でオール沖縄が勝利

 2面  老朽原発うごかすな
     350人が関電包囲と市内デモ
     1月24日

     福島避難者 群馬訴訟
     国の責任を否定
     東京高裁1月21日

     1月15日
     大飯4号機を再稼働
     「設置変更許可取消し」判決無視

     サンケン大阪支店への抗議行動

 3面  三里塚反対同盟旗開き
     破産寸前の空港会社      

     ロックアクション新春街宣
     維新の「広域一元化」許さない     

     旧優生保護法裁判
     3度違憲判決
     国は謝罪と補償を
     木々繁

     日本政府は判決に従え
     ソウル中央地裁判決
     慰安婦問題

 4面  投稿
     弱すぎる市の対応
     川崎市「差別根絶条例」から1年(下)
     深津利樹

     読者の声
     わかりやすい宣伝を
     一読者

     本の紹介
     『京大よ、還せ 琉球人遺骨は訴える』
     松島泰勝、山内小夜子/編著
     耕文社 2020年9月刊 1700円+税

 5面  投稿
     若者のいる街頭で行動を
     11・23 園良太さん講演会から(下)
     西川雄二

     連載
     #MeToo運動に学ぼう
     党内性暴力事件 真の謝罪のためにB
     石川由子

 6面  〈寄稿〉エコ社会主義と労働運動(下)
     富の再分配と労働運動の役割

     今こそ核廃絶の行動を
     松田 忍

     84歳の独り言―出会った人びとF
     大資本に命を狙われても(上)
     大庭 伸介

     (冬期カンパのお願い)

       

菅退陣こそ最良のコロナ対策
罰則反対、休業補償・現金給付を

関電よ、老朽原発うごかすな!

1月24日、関電前に350人 雨中に大阪市内をデモ行進(記事は2面)

国会開会日に闘争 1月18日

 通常国会開会日の1月18日、衆議院第2議員会館前で「いのちをまもれ! 学術会議の任命拒否撤回! 共謀罪廃止! 改憲手続法強行するな! 改憲反対! 1・18国会開会日行動」がおこなわれ450人の市民が集まった。主催は、総がかり行動実行委員会、共謀罪NO! 実行委員会、安倍9条改憲NO! 全国市民アクション(写真下)。 以下発言を紹介する。主催者あいさつとして戦争をさせない千人委員会の藤本泰成さん。「コロナで市民の生活・命が未曽有の危機に陥っている。非正規雇用労働者、一人親、女性一人ひとりの悲鳴が菅政権に届いているのか。菅は何を聞かれても『お答えは差し控える』『問題ありません』」「どうして今、病床不足が起きるのか。昨春からわかっていたことだ。新自由主義政策では私たちの命は守れない。無策な政治には退場を。総選挙で新しい時代・政治を開いていこう」
 社民党党首・福島瑞穂参院議員は、「二〇四通常国会は人々の命を救う国会。菅政権の終わりの国会にしていこう」「人を淘汰する『自助』ではなく社会民主主義、命と雇用を守る政治へ」「(感染症法改正案で感染者が入院拒否したら刑事罰を科すとしているが)入院拒否しているのは国の側」「休業命令違反には過料というが恣意的運用がされるかもしれない」
 共産党・山下芳生参院議員は、「政府の(コロナ対策の)政策は国民への『(自粛)要請』。流行が抑えられなければ『国民の努力が足りないから』となる。今度こそ十分な(休業)補償を」「今の政府の対策は最悪。感染症学会も『国民の理解と協力によるべきだ』と警告している」
 沖縄の風・伊波洋一参院議員は、「昨日(17日)の宮古島市長選挙で4期目を目指した現職が敗れた。オール沖縄と保守の良心的な人々が座喜味氏を押し上げた。宮古の風を沖縄に、全国に吹かせたい」
 共謀罪NO! 実行委員会・宮崎俊郎さんは、「デジタル改革法案が2月9日にも閣議決定のはこび。便利になるのではない。地方自治体で作ってきたシステム・ルールを全て標準化し、民間に使わせるのが狙い。野党の皆さんは絶対に対決法案化してください」
 立憲民主党・近藤昭一衆院議員は、「(コロナ対策が急務な時に)なぜ国会を閉じていたのか。(為政者は)人々の声に耳を傾け、現場を見なければならない」
 改憲問題対策法律家6団体連絡会・吉田健一弁護士は、「国会は改憲手続法を成立させ、改憲議論をすすめようとしている。CMやビッグデータ活用が野放しになる。他方で公務員や教員の言動が規制される。緊急事態にかこつけた改憲などとんでもない」
 民医連の木下興さんは、 「医療がひっ迫している。三多摩地区の病院に港区の救急車が連絡して来て『もう百件断られている』ということがあった。(医療現場は)使命感・責任感だけではできない。保健所はさらに深刻。政府は税金の無駄遣いを自粛せよ。軍事費を削ってコロナ対策へ」
 総がかり行動実行委員会の米山淳子さんが19日の国会前行動を呼びかけ、行動を閉じた。

罰則でなく生活補償を

コロナ特措法と感染症法が改悪されようとしている。休業や時短への補償がないまま、罰則・罰金を科す法改悪を許してはならない。それより、検査体制の拡充、入院・医療の充実、休業・時短の補償こそ求められている。コロナ解雇・休業も非正規雇用労働者・シングルマザーらを直撃し、自殺者も急増している。困窮している人々への生活資金の給付が必要だ。昨年4月〜5月時よりはるかに生活がひっ迫している。困窮者への10万円給付を再度求めていこう。「菅の退陣こそ最良のコロナ対策だ!」の声を巻き起こし、国会と全国をつなぐ行動を起こそう。

沖縄報告 1月5日より座り込み
宮古島市長選でオール沖縄が勝利

コロナ下でも続く辺野古新基地建設(1月23日)

1月5日 2021年沖縄のたたかいは、辺野古新基地建設反対の座り込みから始まった。この日沖縄防衛局は、名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲートから、埋め立て工事に使用する資材などの搬入を続けた。市民30人は早朝より座り込み、「今年こそ工事を阻止するぞ」の決意も固く、「辺野古の海を守ろう」など怒りの声を上げた。また、安和の琉球セメント桟橋でも土砂を積み降ろす作業が確認された。
7日 シュワブゲート前からミキサー車などの工事車両213台が入った。防衛局は工事を本格的に開始した。この日、市民100人が座り込み、抗議の声を上げた。安和の琉球セメント桟橋では10トンダンプ600台の土砂が運びこまれた。
17日 任期満了に伴う宮古島市長選は17日に投開票され、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力と一部保守勢力の共闘による統一候補で、前県議の座喜味一幸氏=社民、社大、共産、立民推薦=が自民、公明推薦の現職に2782票差をつけ当選を果たした。今後の県内の首長選挙や知事選や総選挙に向けて「オール沖縄」にとって弾みとなる大勝利だ。玉城デニー知事は県内11市のうち「オール沖縄」勢力を4市に伸ばした。来年に控える県知事選の前哨戦の一つを制したことで2月の浦添市長選、4月のうるま市長選に弾みをつけた。一方、自民党は玉城知事と対峙する県内7市長でつくる「チーム沖縄」のトップを失ったことで今後の選挙にどう影響するかが注目される。特に保守王国宮古での敗北は衆議院選沖縄4区(現在、沖縄4選挙区のうち唯一自民党が1議席獲得)の選挙に大きく影響する。
今回の選挙で、最大の争点となる陸上自衛隊配備問題は、両陣営とも容認したため論戦は深まらなかった。座喜味氏を支援する保革による「ワンチームみゃーく」は陸自問題について「知事と連帯し国に説明を求めていく」との方針でまとまった。玉城デニー知事も積極的に支援した。コロナ禍のため宮古島入りは1回だけだったが市内3か所で演説。出発式や打ち上げ式にも音声メッセージを寄せ県政との共闘を強調した。
19日 キャンプ・シュワブゲート前では早朝より市民が座り込んだ。18日、菅義偉首相は施政方針演説で「普天間飛行場の1日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進める」と述べ、工事を引き続き推進する考えを強調した。座り込みの市民は、首相発言に「工事をただちに中止しろ」と怒りの声を上げた。
また、「オール沖縄会議」は、コロナウイルスに対する県独自の緊急事態宣言を受け、20日より2月5日まで抗議活動を中止すると発表した。
20日 「オール沖縄会議」の抗議活動中止を受け、キャンプ・シュワブゲート前、安和の琉球セメント桟橋では監視活動、海上行動隊は辺野古海上での監視活動。浜テントは2月7日まで監視活動中止とそれぞれ決定した。
23日 辺野古海上監視団は、県の行動自粛要請にもかかわらず沖縄防衛局が工事を強行しているのを確認した。(杉山)

2面

老朽原発うごかすな
350人が関電包囲と市内デモ
1月24日

雨の中350人が関電本店を包囲した(1月24日)

1月24日、「関電よ☆老朽原発うごかすな! 大集会」が、関西電力本店前(大阪市北区)でおこなわれた。昨年12月に大阪地裁判決で、大飯原発3・4号機の「設置変更許可を取り消す」判断がでている。にもかかわらず、関西電力は定期検査で止まっていた大飯原発4号機を再起動させた(1月15日)。さらに、美浜3号機、高浜1・2号機を再稼働させようとしている。これらは、危険な40年超え老朽原発だ。この日は350人が関電に怒りをたたきつけた。

人の命と尊厳

集会では、中嶌哲演さん(原子力発電に反対する福井県民会議)が、主催者あいさつ。中嶌さんは、「原発ゼロ法案が、国会で論議もされず、放置されたままになっている。われわれ運動体の力で、法案を成立させよう」と述べ、さらに「関西電力が老朽原発を動かすならば、関電と契約をしない運動を強力にすすめていこう」と語った。
老朽原発うごかすな! 実行委員会の木原壯林さんが、集会の基調を提案。木原さんは「今、私たちの運動はコロナの制約を受けていますが、私たちが萎縮すれば、政府や関電に意のままの政策がまかり通ることになります。コロナによって制約された分以上の行動を、創意と工夫によって創造し、老朽原発再稼働を阻止し、それを突破口に、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を実現しましょう」(集会宣言)と訴えた。
老朽原発立地の地元から、河本猛さん(美浜町町会議員)が、次のようなメッセージをよせた。「老朽原発は危険、美浜3号機は廃炉にすべきだ。地元では、12月議会で再稼働合意を出した。地元経済のためという理由であり、はずかしい限り。自分たちの利益だけを考える地元同意は危険だ。電力消費地域住民と原発立地地域住民が団結して、ともに闘っていこう。」

終わりの始まり

井戸謙一弁護士は、原発裁判の現状について、次のように述べた。「大飯3・4号機に関する大阪地裁判決は、重要かつ意義のある判断だ。それは3点ある。@国が被告であること、A基準地震動がでたらめであることを認めた。これはすべての原発に影響する、Bエリート裁判官である大阪地裁行政部の判決であること。これは『終わりの始まり』になるかもしれない。3月には、判決がたくさん出てくる。今後の判決に注目していこう」。
福島から、武藤類子さんがこの集会にメッセージをよせた。武藤さんは、メッセージで「福島原発事故からもうすぐ10年になる。汚染水問題など、放射能汚染は収束するどころか、拡大している。爆発した福島第一原発1号機は老朽原発だった。これを止めていたらと悔やまれる。これからの世代のために、環境リスクは少しでも減らしていくべきだ」と訴えた。
全国各地の反原発運動を代表して、東京から柳田真さん(たんぽぽ舎)が発言。柳田さんは「関西の闘いに学んで、東京でも老朽原発の東海第二原発にむけてリレーデモをおこなう」と述べた。また、労働組合から、フォーラム平和・関西ブロック、全労連近畿ブロック、おおさかユニオンネットワークの代表3人がアピールした。
集会終了後、西梅田公園に移動。ここから、大阪駅前の繁華街までデモ行進をおこなった。小雨の降るなか、街行く人びとに「老朽原発の危険性」と「再稼働反対」を訴えた。

福島避難者 群馬訴訟
国の責任を否定
東京高裁1月21日

東京電力福島第一原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民91人が、国と東電に損害賠償を求めた訴訟(群馬訴訟)の控訴審判決が1月21日、東京高裁であった。
判決は「国の責任を認めた1審判決」を覆し、国の責任を否定。東電の責任のみ認めるという不当判決だった。
東電や国を訴えている福島原発事故にかかわる訴訟は全国で約30あるが、うち国を訴えている訴訟で地裁レベルでは14件の判決が出ている。国の責任を認めたのが7件、認めなかったのが7件と割れている。高裁判決は、昨年9月に生業訴訟の仙台高裁判決が1件目で、仙台高裁は国の責任を認めた。今回の群馬訴訟東京高裁判決でも国の責任をみとめるかどうかが焦点となっていた。
国の地震調査研究推進本部(推本)が2002年7月に公表した地震予測「長期評価」を出した。当時、東電はこの長期評価にふまえた分析をし、福島第一原発の敷地高を大きく上回る高さ15・7メートルの津波が襲来する計算結果を出している。東京高裁は、この長期評価よりも、土木学会が2002年にまとめた「津波評価技術」を根拠に「敷地を越える津波は想定されなかった」とした。
この点で、昨年9月の仙台高裁判決では「(推本は)多数の専門学者が参加した機関であり」「個々の学者や民間団体の一見解(土木学会の「津波評価技術」のこと)とはその意義において格段に異なる重要な見解であり、相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かしがたい」と断じている。原告団や他の訴訟の関係者からは「権力に迎合した判決」「結論ありきの判決」と怒りの声が上がっている。

1月15日
大飯4号機を再稼働
「設置変更許可取消し」判決無視

おおい町大島の町中をデモ行進

、定期点検で停止中の大飯原発4号機の再稼働を強行した。大飯原発は、12月4日、大阪地裁で「大飯3・4号機の設置変更許可取り消し」の判決が出ている。これを無視しての再稼働だ。しかも原告側が、1月14日に「設置変更許可の効力停止(控訴審で判断されるまで、運転を停止すること)」を申し立てた翌日にだ。
この事態に〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉は緊急闘争を呼びかけた。15日12時半、福井県おおい町大島の「しーまいる」駐車場には地元福井や関西から40人以上が駆けつけた。木原壯林さん、中嶌哲演さんが発言し、大飯原発に向かってデモ出発。大飯原発ゲート前に到着後、抗議集会。若狭地方の各自治体議員=猿橋巧さん(おおい町議会議員)、渡邊孝さん(高浜町議会議員)、北原武道さん(若狭町議会議員)が、大飯原発4号機再稼働を弾劾した。福井から大飯原発差し止め訴訟原告の石地優さん(若狭町)が「関電は社会的責任感を何一つ持たない企業」と断罪した。申し入れ行動をはさみ、大阪、京都、滋賀から発言。釜日労の三浦俊一さんは、「コロナ蔓延でも工事を止めないのは原発と沖縄」と語り、怒りを表明した。

約束反故の関電

2018年当時、大飯原発の再稼働をめぐって、福井県知事と関電の間で「使用済み核燃料の県外搬出先を暮れまでに見つける」と約束しながら、その約束を果たさないまま大飯原発3・4号機を再稼働した。そして、今なお候補地を見つけられないまま、点検が終了したから動かすという関電の対応は本当に許せない。このような関電に原発を動かす資格などない。しかも、大飯原発は、蒸気発生器で重大な事故が発生しており、そのため3号機は再稼働が見通せない状況である。
老朽原発の廃炉を突破口に、若狭にあるすべての原発を廃炉に叩き込もう。

サンケン大阪支店に抗議行動

1月21日、サンケン電気大阪支店への抗議行動に、おおさかユニオンネットワークの呼びかけで70人が集まった(写真左)。抗議のシュプレヒコールのあと、大阪支店に向かったが、支店は昨年12月4日の申し入れ書に対して「社内規定に基づいて処理して返事を送った」という不誠実な対応に終始した。

偽装解散

サンケン電気は埼玉県新座市に本社を持ち、北中米、中国、韓国、タイ、ヨーロッパなどに拠点を持つ半導体等を生産する東証一部上場のグローバル企業。韓国サンケンはサンケン電気の100%出資の子会社で馬山自由貿易地域にある。
3年前、サンケン電気は労働組合があることを理由に韓国サンケンを閉鎖し全員解雇攻撃をかけてきた。しかし、韓国サンケン労組は工場前にテントを張り、24時間体制の座り込みに突入。組合役員が組合員の前で髪の毛を剃る「剃髪闘争」で決意を示した。この果敢なたたかいと日本における支援闘争により、現地の地労委、中労委とも「解雇は不当」との裁定が出され、2017年6月、韓国サンケン労組と韓国サンケンとの間に合意書が締結された。会社は整理解雇への遺憾の意を表明し、解雇撤回と全員の復職と、労働協約を維持し労組の活動を保障するとした合意書には、今後重大な雇用問題が発生した際は労働組合と合意の下におこなうという事前協議合意約款が取り決められていた。しかし昨年7月9日、これを破って突然、同社のホームページ上で韓国サンケンの解散決定を発表した。

組合員全員に解雇通告

1月20日、サンケン電気は韓国サンケンの組合員全員の解雇を通告し、電気も水道も止めてきた。これに対し、全国金属労働組合・韓国サンケン支会は昨年7月の通告以来、韓国サンケン前でテントを張り職場を守り続け、「闇は光に勝てない、私たちは決してあきらめない」と決意を表明している。大阪での抗議行動では韓国とネットでつないで現地報告がされた。事前協議合意約款破棄に、韓国サンケンがある慶尚南道昌原市議会が1月18日、「韓国サンケンの廃業中断(撤回)を求める」建議を満場一致で可決し、サンケン電気本社、日本の厚労省と経産省、韓国の大統領秘書室長と国会議長に送るという。
合意書に基づいて組合員は、この3年間、黙々と職場を守ってきた。サンケン電気の回答が再度の首切りだったわけだ。韓国サンケン労組は「我々は虫けらや機械ではない。人間の尊厳をかけて家族を守り、労働者の誇りをかけてたたかう」と決意表明。オ・ヘジン支会長とキム・ウニョン副支会長はこういう決意を込めて再度の「剃髪闘争」をおこなった。問われているのは日本の支援体制だ。

3面

三里塚反対同盟旗開き
破産寸前の空港会社

デモ行進後、団結がんばろう(1月10日)

1月10日、市東孝雄さん宅の敷地で、三里塚反対同盟の新年旗開きがおこなわれ、130人が参加した。最初に市東さんが「空港会社が進める機能強化は、強がりに過ぎない。そんな余裕はない。今年1年、勝利的にたたかっていく」と力強くあいさつ。
萩原富夫さんは、@市東さんの畑を守る=強制執行に反対する署名運動と執行停止の担保保証金カンパ運動への取り組みを訴える、A空港機能強化を粉砕し、廃港に攻勢をかける。第3滑走路粉砕、3・28現地闘争に決起しよう、B戦争と改憲に向かう菅政権を打倒しよう、という闘争宣言を発した。そして、「12・17請求異議審の東京高裁反動判決に対して千葉地裁に執行停止の申し立てをおこない、3月末までの暫定的な執行停止になっている。最高裁の強制執行を巡って厳しく対決し、全力で粉砕しよう」と檄を飛ばした。
顧問弁護団は、「空港会社が倒産寸前だ。2019年と比較して、国際線乗客数はわずか2〜3パーセントにすぎず、空港内の店舗は軒並み閉店か閑古鳥。この3月の決算は1千億円の大赤字。以前の状態に回復することはありえない。今こそ反転攻勢に打って出よう」と呼びかけた。三里塚闘争55年、グラグラの菅政権打倒、大激動情勢に全力で突っ込もう。(常磐 豊)

ロックアクション新春街宣
維新の「広域一元化」許さない

1月6日、午後6時から「戦争あかん!ロックアクション 新春街頭宣伝」が大阪市内北区の南森町交差点でおこなわれた。アピールテーマは「広域行政一元化条例反対、維新は住民投票結果に従え」。Swing Masaさんのサックス演奏、どないする大阪の未来ネット、市民連合豊中の発言が続いた(写真)
 大阪維新は2月の大阪市議会、府議会に「広域行政一元化条例案」を提出するとしている。これは都構想(大阪市廃止)の焼き直しである。「広域行政一元化条例」は、@大阪府と大阪市の広域機能を大阪府に一元化、A都市計画などの大阪市の広域的な事務に必要な人員・財源を大阪府に移管し、約2000億円(大阪市の税収の約1/3)を毎年大阪府に移管する、という内容。つまり2回の住民投票で否決され、すでに決着がついた「都構想(大阪市廃止)」の核心部分を条例制定で強行しようとするものだ。「維新は住民投票結果に従え」の声を大きくあげ、条例案を葬り去ろう。

旧優生保護法裁判
3度違憲判決
国は謝罪と補償を

木々繁

札幌地裁(広瀬孝裁判長)は1月15日、旧優生保護法(以下、旧法)の下で不妊手術を強制されたことを巡って、札幌市の小島喜久夫さん(79歳)が国に損害賠償を求めた訴訟で、旧法を違憲と判断しつつ、手術から20年以上経過したことを理由に賠償請求権が消滅したとして訴えを棄却した。全国9地裁・支部で起こされた国賠訴訟13件(原告25人)のうち4件目の判決。
「旧法=違憲」判決は、19年5月の仙台地裁判決と20年11月の大阪地裁判決に次ぐ3例目。
違憲判断は、幸福追求権(憲法13条)違反を理由とした点で、仙台・大阪に続き3例目。また、法の下の平等(同14条)違反を理由とした点で、大阪に次いで2例目。
今次判決では憲法第24条違反の初判断。「子を産み育てるか否かは、家族の構成に関する事項でもあるが、旧法はそのような意思決定の自由を侵害し、憲法24条2項に違反する」との判断で、違憲性が一層鮮明となった。また、判決は、国会が被害救済の立法を怠ったとする原告の主張についても、国会の裁量権を理由に「違法と断ずるのは困難」と否定した。
さらに、仙台・東京・大阪の3地裁と同様、「除斥期間」を手術時から起算するとして、請求を棄却した。 小島さんは、実名を公表し、計10回の口頭弁論で我が身に受けた心身の被害を、深い傷と屈辱に耐えつつ詳細に証言した。しかし司法は、違憲判断をしながら、被害実態と小島さんの苦しみに向き合わず、除斥期間で請求を切り捨てた。小島さんが「3年間、裁判のことを一日も忘れたことはなかった。裁判長も悩んだというコメントをするくらいなら、(手術を)やられた人間の気持ちを汲んで、国の責任を認めてほしかった」と述べた。
判決に対し、鈴木由美さん(脳性まひのある兵庫訴訟原告。65歳)は糾弾した。「当時の私たちには知るすべはなかった。憲法に反するが救済はしないという判断に、同じ人間としての扱いをされてないと感じる。手術で私たちの人生は失われた。(判決には)全く納得できない」。
また、今次判決は、1980年代から国会で旧法が違憲だという議論がされたにもかかわらず、これを一顧だにせず国の責任をまったく不問に付す不当なものである。
小島さんは佐藤由美さん(仮名。宮城県の知的障がいを持つ70代女性)が18年1月末、全国初の提訴をしたと報道で知り「人生を国によってめちゃくちゃにされた」と気づいた。さらに当時9歳の女の子まで手術を受けさせられたことを知り、許せなかった。その夜、妻・麗子さんに初めて告白した。
しかし、小島さんにとって手術は誰にも語れないつらい記憶だった。心ない中傷を投げつけられたことも少なくなかった。麗子さんは励ました。「あんたは悪くない。途中で投げ出したら駄目だ」。そうしてたたかい続けてきたのは、2016年に19人の知的障がい者が殺害された津久井やまゆり園事件で「障がい者への差別は今でも続いている」との怒りからだと語る。
小島さんは控訴した。「悔しくて悔しくてどうしようもないが、これからも闘っていく」「実名を出したことで『小島さんが励みになる』と言ってくれる原告もいる。本当に国は悪いことをした。妻と二人で元気な限り闘っていきたい」
「まだ声を上げられない人にも起ち上ってほしい」と願って全国で初めて顔と実名を出して提訴した勇気と気高い精神。人生かけて「障がい者差別、優生思想許すまじ」を全身で訴え続ける不屈の姿。原告、被害当事者の人生に学び連帯し、「国の謝罪と補償を!」国賠訴訟運動の勝利へともに前進しよう。

日本政府は判決に従え
―ソウル中央地裁判決
「軍隊慰安婦」裁判

ソウル中央地裁は強制と暴力により「軍隊慰安婦」にされた原告たちの損害賠償請求を認め、1人あたり1億ウォン、日本円で960万円の支払いを日本政府に命じた。

主権免除は適用できない

それに対し日本政府は「主権免除」をタテにこの判決を拒否している。判決は「日本政府による組織的、反人道的行為であり主権免除は適用できない」とした。この判決を受けて一月一三日、韓国市民団体・日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)は、定例のソウル日本大使館前での「水曜集会」で抗議声明を発し、断固闘いを継続していくことを表明した。
そもそも「軍隊慰安婦」とは、天皇制軍隊首脳部が緻密な発案・計画・実行により朝鮮半島をはじめアジア各地から、まだ年端のいかぬ少女たちを騙して連れ去ったり、強制的に連行したりして、中国戦線をはじめアジア各地の各戦線に「分散配置」した戦争犯罪である。人道に反する犯罪に時効はありえない。日本政府は戦後一貫して、国策上なかったものとしてきた。

心から謝罪を

今日私たち日本人民が心から彼女たちの痛みを感じられるか否か、その感性・想像力が問われている。彼女たちの80年以上にわたる身もだえする苦しみをどう癒すことができるのか。いまだ実現できていない現在、私たちは心から謝罪する。同時に帝国主義の危機=新自由主義のあがきのなかにある日本社会を根底から変えていくことを決意する。
一九九一年、金学順さんの告発から始まった「軍隊慰安婦」問題解決の運動はすでに30年以上の時間を刻んできた。その後アジア各地から、またオランダからも被害女性たちが声を上げた。
彼女たちの願い、要求は以下の5項目に集約される。そのひとつでも欠けたら彼女たちを再び三度愚弄することになる。
一、責任者処罰 二、真相究明 三、謝罪 四、賠償 五、歴史教育 の五点であった。
過去において河野談話、村山談話にあった一時しのぎの「謝罪」と、その結果出てきたのが「アジア女性基金運動」であり、人間の尊厳を踏みにじるこの運動で終息をはかろうとした。それは多くの人たちの抗議で破綻した。同様に二〇一五年十二月の安倍晋三と朴槿恵による日韓合意によって創設された「和解・癒し財団」も破綻した。すなわち五項目にわたる彼女たちの要求は「金ではない。心からの謝罪とひとりの女性として生きさせてくれ」だ。

五項目の要求の意味

当初掲げられた五項目の一、責任者処罰は、20年前に東京で開催された「国際女性戦犯法廷」に世界各地からの参加を得て、その総意によって天皇ヒロヒトに戦争責任はあると判決は断罪した。統帥権のあった最高責任者ヒロヒトが免罪などありえない。
二、真相究明については吉見義明さんをはじめ多くの研究者たちにより軍の直接関与が明らかになっている。鈴木隆史さんはインドネシアの南スラウェシにおいて被害女性たちの聞き取り調査などした。
三、四、謝罪と賠償は言うまでもなく日本政府による、これまでの対応を反省し心からの謝罪をもって彼女たちの尊厳を回復することにある。それを拒否しての金銭での解決はありえないし彼女たち自身も拒否している。
五、歴史教育とは日本の歴史教科書から「軍隊慰安婦」の記述の削除と、19世紀末からの朝鮮半島への侵略行為、台湾の植民地化、一九一〇年以降の朝鮮半島全域の植民地支配、一九四五年八月十五日の敗戦まで日本の「皇軍」の全アジアでの蛮行などをはっきりさせ、まっとうな歴史認識、歴史観を次世代の人につなげることだ。これを「自虐史観」だと主張する人が今も跋扈しているが、事実に基づいた歴史認識を持ち得ない人が、どうしてアジアと世界の人たちとの共感・信頼関係を築きえよう。
彼女たちが訴えてきた五項目の要求は、日本にはびこる歴史観、歴史認識、国家観をするどく問うものだ。

4面

投稿

弱すぎる市の対応
川崎市「差別根絶条例」から1年(下)

深津利樹

ヘイト集団に対抗する川崎の市民

遅すぎ、弱腰のネット規制

さらに重要なのがインターネット上でのヘイトスピーチだ。被害当事者などが市に通報した数は約300件超という多さだ。事実経過はこうだ。
被害当事者の在日3世が5月15日、条例8条(ネット利用の不当な差別での被害の救済)に基づいて、差別書き込みについて、ただちに削除を市に要請、7件を例示。
6月19日ヘイトリストを提出。ツイート288件、ブログと掲示板44件、計332件。10月9日、市が審査会に諮問した9件についてヘイトスピーチと認定、16日に答申という具合。
これでは対応が遅すぎる。結局これまで、市がネット運営会社に削除要請したのはたったの47件、あとはそのヘイトスピーチが放置されたままになっている。これはネット上でのヘイトスピーチについての規制を厳格にしたため、事実上対策が後手後手となっており、かつ差別主義者のヘイト言動にしばりがかかっていない。
被害があったと申し出があったうち8割以上が削除要請もされないまま放置されてしまっている。
削除したもの47件も削除まで時間がかかりすぎ、その間にヘイト言動がドンドンとリツイートされたりコピーされたりして拡散されてしまい、元のヘイトを消しても無駄になっているありさまだ。
せっかく「画期的」とされた条例がありながら、「表現の自由との関連」云々と言う川崎市当局の姿勢が毅然としていないのが現状だ。

再度の署名運動の成功を/首都圏でのさらに強い取り組みを

在日朝鮮人・中国人などに対して、根拠もない、悪質なデマに基づいた誹謗と中傷を繰り返す差別表現や行動に、「表現の自由」などありえない。川崎市の毅然としない姿勢がヘイト団体をいっそうのさばらせてしまっている。〈市民NW(ネットワーク)〉は、条例成立1年を機に、「街宣対策の強化を 差別的言動に対しての啓発を 差別防止対策審査会の活用を ネット上でのヘイト対策と被害者支援を」などを川崎市に求めて、「条例の実効性ある迅速な執行を求める要請書」として再度署名運動に取り組んでいる。署名運動に協力しよう。
川崎で行動している改憲NO、脱原発、沖縄連帯、「慰安婦」問題などを取り組む各市民団体もいっそうの取り組みの強化が必要だ。もとより、条例があるからといってヘイトがなくなるはずもない。右派と言われる市長、自公で過半数の市議会という状況のなかでは在日当事者と市民の取り組みだけがその力だ。今後もヘイト行動に対しての〈市民NW〉の呼びかけに応えて、首都圏のわれわれもさらに強く取り組んでいこう。
まったくの蛇足ながら、かの「利用主義者=安田派(革共同中央派)」は、2015年川崎駅周辺で集会をやったあと、なんと当該地域の「桜本」に向かってデモをかけるというヘイト団体と同じことをやって、当該地域に「迷惑をかけた」ことは忘れることはできない。

読者の声

わかりやすい宣伝を
一読者

私が小学生のとき若い男の先生がウツになって、代わりに定年退職した女の先生がピンチヒッターで来ました。ちょうどアメリカがイラクに戦争を仕掛けた時期で、その先生はその背景や狙いを分かりやすく情熱を込めて話してくれました。
私はアメリカの兵隊がイラクの子どもの命を奪うことが許せませんでした。私の住んでいる町でもイラク戦争反対の集会がおこなわれていたので、友達とプラカードを作って集会に参加しました。その姿が新聞の地方版に写真付きで報道されて、大変うれしかったです。
今は社会人になって仕事に追われていて、通勤の往復にJRの駅前広場(地下)を通ります。そこでは沖縄の辺野古新基地建設反対の宣伝をよく見かけます。しかしマイクを使ったアピールが広い地下街の空間にむなしく反響するばかりで、何を訴えているのかよく聞きとれません。注意して聞いていると、一般の市民にはなじまない業界用語≠ェテンコ盛りです。
「NO BASE OKINAWA」というボードを掲げていましたが、「BASE」をアメリカ軍の基地のことだとすぐに理解する人がどれだけいるのか、疑問です。これではせっかく一生懸命にアピールしているつもりでも、あまり効果がないと思います。
あるとき、イラク戦争について教えてくれた先生がそのボードを掲げているのを見かけました。そして、いつも感じていることを伝えました。
そしたら次に出くわしたとき、「BASE」の上に「基地」と別の色で目立つように描いた紙が張り付けてありました。私は何でも言ってみるものだなと思いました。
当たり前の話ですが、宣伝はそれを見る人や聞く人の気持ちをキャッチしなくてはダメです。反対運動をする人は一般の通行人の目線を意識して、もっと工夫してほしいです。
今、私はそのときに先生からもらった『未来』を読んで勉強中です。大阪維新の会の「大阪都構想」の野望をこわした活動の記事がよかったです。しかし、この新聞も業界用語≠ェ多くて運動家でも何でもない私にはシンドイです。
支持率が減ったといっても、菅内閣や自民党は「民意」に支えられてるのが現状ではないでしょうか。その「民意」を変えていくために、フツーの人の感覚にピタッとくる宣伝を希望します。

本の紹介

『京大よ、還せ 琉球人遺骨は訴える』
松島泰勝、山内小夜子/編著

耕文社 2020年9月刊 1700円+税

琉球人遺骨返還請求訴訟は、「学知における植民地主義」を問う裁判としておこなわれている。裁判で原告が訴えているのは、@被告は、原告らに対し、別紙遺骨目録記載の遺骨を引き渡せ、A被告は、原告らに対し、各金10万円及び遅延損害金を支払え、ということだ。
裁判は2018年12月4日にはじまり、第7回弁論(2020年11月19日)まですすんでいる。原告5人(亀谷正子、玉城毅、金城實、照屋寛徳、松島泰勝さん)の意見陳述がおわり、また研究者3人(伊佐眞一、波平恒男、板垣竜太さん)の意見書が提出された。これらの内容が、この本におさめられている。さらに、この訴訟に関心をいだいている研究者・活動家が、いろいろな角度からこの本に論考をよせている。

居丈高な京都大学

 京都大学側はいっかんして傲慢で、居丈高で、原告の主張に真摯に向き合おうとしていない。京大関係者はいまだに公判に姿を現したことがない。裁判に至る過程でも同様だ。それは駒込武さんの論考にくわしく記録されている。京都大学の姿勢は、日本政府が日本軍「慰安婦」問題や「徴用工」問題における朝鮮人民にたいする対応とまったく同じだ。これは植民地主義が克服されていないことを示している。なぜ、こういうことがおきるのだろうか。
 第2次世界大戦とは、連合国、枢軸国にかかわらず、この戦争は植民地支配をめぐる帝国主義の侵略戦争であった。戦後においても、欧米帝国主義は自らの存在を暴かれないために植民地主義の問題を隠蔽してきた。
日本政府の対応も同様だ。戦後においても、朝鮮における植民地支配を反省していない。京都大学の側も、自らがおこなってきた学問について、その植民地主義を総括しようとしていない。日本人民にとっても同様だ。だから、政府や大学にたいして、植民地主義の問題について追及できないできた。このことが裁判で突き出されている。

琉球民族は先住民族で自己決定権が

 原告は「遺骨」と言っているが、被告(京都大学)は「人骨」と呼んでいる。この呼称の違いは、この裁判の本質をよく表している。「遺骨」とはなにか。これは本書に納められている原井一郎さんの論考を読んでいただきたい。原告5人の意見陳述は、「祖先の遺骨として、その風習にならって葬らしてほしい」ということ。京都大学は「人骨は人類学の貴重な研究対象であり、返還できない」と言っている。琉球民族は先住民族であり、自己決定権がある。「自分たちのことは自分たちで決める」と言っている。京都大学に決定権はないのだ。
 板垣竜太さんの論考は、次のことを明らかにしている。形質人類学は、体質の違いによって集団を分類し、その集団の「優秀性」を示す目的をもっていた。京都大学の形質人類学者は統計学を取り入れて分析したため、広範囲に「人骨」を集める必要があった。日本の各地からも集めたが、琉球の場合は違っていた。そこにはあきらかに差別があった。
 わたしは琉球人遺骨返還請求訴訟を支援している。それは植民地主義の問題が他人事ではなく、自らの課題としてあるからだ。資本主義にかわる新たな社会をつくるには、この問題と向き合い、克服していくことが必要だ。その導きの糸にして、本書をさまざまなところで活用していきたい。(河本悠二)

5面

投稿

若者のいる街頭で行動を
11・23 園良太さん講演会から(下)

西川雄二

バナーを持つ園さん(左、21年1月24日)

なぜ園さんは、反戦・戦争責任・反天皇の「原則的」な運動に取り組んだのか。90年代前半、冷戦・バブル・55年体制・「昭和」が崩壊し、アジアから戦争責任が問われる時空が開けた。日本社会がこれに正面から向き合っていれば、今と全く違う社会になっていたであろう。しかし日本が経済的自信をなくし、阪神大震災やオウム事件で社会不安が高まった中、バックラッシュが起きていく。社会も本格的不況に突入し、新自由主義「構造改革」も推し進められようとしていた。
そこに登場したのが「小林よしのり」「戦争論」他であった。社会の「底抜け感」の原因を、個人の権利ばかり主張し、自分勝手な消費社会に行きついた結果であり、侵略戦争を否定せずに戦前の価値観を見直せば良くなると強引に結びつけたのだが、社会が不安定化して社会問題に関心を持つ同世代の青年層がそこに流れ込んだのである。だが彼は小林には論理と歴史の飛躍があると思い、それが明確に「日の丸、君が代」や天皇制に反対するきっかけとなったそうだ(もっとも、小林がインチキであることを見抜くには、その前段に、例えば小中学校での教育とかなにかバックボーンがあるハズなので、そのへんも語ってもらえばよかったと思うのだが)。とにかく彼は、日本がおこなった戦争は明らかに間違った侵略戦争であり、アジアの人びとを支配・大虐殺した。その最高責任者である天皇が免責されたから、日本は総無責任社会になった。豊かさをもたらした高度成長は、戦後賠償を逃れた結果であり、戦争責任が問題の1個目の根本であると考えている。
ひるがえって労働組合などの中間集団がなくなった今、個人の思いや生きづらさから運動に参加する人も多く、潜在的数も多いだろう。戦前―戦後の国家主義や資本主義の問題であると理解して左に行くか、小林のようにニセの物語に飲み込まれて右へ行くのか、前者を増やすため、私たちの思想と呼びかけ方、行動が問われていると語った。
それでは今の運動の現在地点と問題点は何か? 3・11後も運動は盛り上がったが、街頭直接行動は集まっては散るということをくり返し、人と経験が蓄積されなかった。15年の9・19「安保法制」以降の「野党共闘」路線は、政党優先で統制がかかる。また選挙待機主義に陥り、自発性や原則性が後退した。中間集団の消滅で若者も、中年も少ない。
このままだと高齢化であと10年もすれば運動参加者は9割減るだろう、このことをもっと深刻に考えないといけない。
そのためには、大勢の若者がいる街頭で行動すること、梅田解放区のようにオールテーマで誰でも発言できる場を増やすことで、若手から中年の活動家を育てる。そのために司会や重要な役もやってもらう…梅田解放区では「解放区ユース」という若手メンバーにいろいろやってもらっている。また労働者協同組合、労働組合の専従、カンパの拡充、生活保護の拡充、場の提供など、運動しながら生活できる道を増やすこと。90年代以降は右翼がうまくネットやサブカルを活用したから、こちらでもしっかり活用すること、そして国家が無くても社会は回るとか、社会主義を目指すとか言い切ることに躊躇する傾向があるが、社会変革の構想を打ち出すことが大切だと訴えた。
東京から見た関西・大阪の良さとかについて、原発事故の放射能被害から西へ避難することを考えた時、関西は最大の受け皿であり、地方分権と同時にそうした意義を持つ場所であるとした上で、大阪の良さは地域商店街と人とのつながりが残っていると指摘された。東京の地元では隅々までチェーン店とコンビニしかなくて泣きたくなるし、小学校の同級生の米屋や食堂も潰されてきた。大阪にはまだアーケードと個人商店があり、物を落としたら拾ってくれて話しかけてくれる、そんな大阪の良さとは正反対の都構想。
大阪や全国の衰退は、地場産業の育成をやめ、USJ等の国外や東京の大資本に投げたから起きた。地域単位で産業、商店街、会話を再構築すれば復活できる。それがポストコロナ、ポスト気候変動の経済政策だ。仮に都構想が実現しても、非正規から正社員まで99%におこぼれは来ないし、来たとしても汚い利権に魂と未来を売るだけだ。汚い吉村や維新の口だけのモブ議員に、あなた達の代表をさせるのをやめましょう。自分の住んでいる地域と人間関係に目を戻し、そこから出発しましょう。そうすれば性懲りもない大阪市廃止の繰り返しは終わり、未来が拓けますと述べられた。
その後、15分ほど質疑応答した後、集会は終了した。(おわり)

連載
#MeToo運動に学ぼう
党内性暴力事件 真の謝罪のためにB

石川由子

今回は男性の女性への暴力のうち、とりわけ夫婦間、恋人間の暴力について分析したい。

DV・モラハラなどの女性に対する暴力

DVは常に振るわれるのではなく、まるでマグマのように蓄積期→爆発期→ハネムーン期を繰り返す。ハネムーン期には、土下座し涙を流しながら自分の暴力を謝ることも平気でする。これは常に暴力をふるっていては関係はいずれ崩壊するため、女性を翻弄することを目的として優しく善良な夫を装うのだ。まさにハネムーンのようにセックスも利用して「自分は愛されている」と女性を錯覚させるのだ。これらの男性にとってセックスは本来の愛の証ではなく、支配の道具である。
モラルハラスメントをする男性(ネット用語でモラ夫)は直接の暴力はあえて振るわない。しかし@言葉の暴力=言葉の暴力によって女性をコントロールする。指示・命令をするだけではなく、わざと一貫しない命令を与えて混乱させ、常に自分に意識を集中させ、疲弊させる、A経済的暴力=家計にお金を入れない、あるいは極端に少額にして妻を苦しめる。逆に通称ヒモと呼ばれる女性からお金を奪うタイプもいる。女性が財産を持っていることを知ってわざと接近し、女性に生活費を出させる、B社会的暴力=妻がその実家や友人と付き合う機会を奪う一方、自分の実家や友人とは如才なく付き合うよう要求する。夫が家にいる時、妻が必ず家にいるように強要する。など妻が社会的に孤立し、夫以外の人間関係を持てないようにしむける暴力をふるう、Cネグレクト=気に入らないことがあると妻が存在しないかのように、透明人間になったかのように無視する。しかし料理が用意されていないなど自分が無視されると、無視からDVに転化する場合がある。多くの被害女性はこのネグレクトが最もつらいと言っている。 
日本では恒常的なDV男は10%。何年かに一度のDV男は30%、モラハラをする夫は程度の差はあれ100%に近い。さらに欧米では家事・育児・介護をしない男も暴力に含む場合があるようだ。そう考えると日本男性はほぼ100%がモラ夫となる。
ただし欧米ではナニーと呼ばれる子守り、お手伝いさんなどの家内労働に従事する移民や黒人女性がいることを忘れてはならない。彼女たちがキャリアウーマンを支えている。欧米の女性の「社会進出」にはこうした女性間の格差があるのだ。

アンペイドワーク

では女性がなぜこのような暴力に耐え、いつまでも結婚生活を続けているのか不思議に思うだろう。それは性別役割分業にある。
『ドイツイデオロギー』において人間の歴史的行為は、@物質的生活そのものの生産、A欲望の産出、B他の人間を作り出す=繁殖、C協同、とされている。資本主義社会では子産み子育ては私的領域とされているため、子産みのために仕事を中断させることのない男性労働者は「良質な」労働力なのである。さらに子育てを家庭=女性に一方的に押し付けることで資本は、Bの行為である子産み子育てに一切責任を持たずに済ませることができる。
日本は子産み子育ての領域をとことん私的な領域に閉じ込めてしまった典型のような資本主義だ。20年前までは男性のみの終身雇用制がとられていた。男性のみ終身雇用制とは表の姿で、その裏には女性のみに強いられた若年解雇制がある。これはコインの裏表であって切り離すことはできない。こうして驚異的な結婚率が成立していた。男性には過労死するまでの強労働、女性には子産み子育て、疲れた夫の労働力としての回復、労働者として「使えない」老人・病者・「障害者」等の介護など、労働力の再生産の一切を家庭の中で解決するよう強いてきたのである。
性別役割分業は言葉だけならあたかも両性が対等であるかのように見えるが、一方は賃金を受け、他方は一切の賃金を受けていないアンペイドワークなのである。ここに男性の優位性が生じ暴力が起こるのだ。またヘルパーや保育士などの地位が低く低賃金の根拠は、本来アンペイドワークであるものを社会化したと考えられているからだ。
日本では100%に近い男性が家庭内で暴力をふるっている。彼らは資本からの搾取という激しい暴力を受けている。その代償として家庭内において女性や子どもに暴力をふるうことが許されていると思い込まされている。
男たちよ! 家庭の中に、差別・暴力という分断をやすやすと持ち込んでいいのか! あなたたちの階級のイメージに女性はいないのか? そんなことで革命は勝利できるのか! 私は男性たちに問いたいのだ。(つづく)

6面

〈寄稿〉エコ社会主義と労働運動(下)
富の再分配と労働運動の役割

(四)エコ社会主義と労働運動

(1)富の再分配の問題は、エコ社会主義・脱成長の核心的なテーマのひとつ。

20世紀後半以降、先進国・帝国主義の中産階級の拡大が地球環境に大きな負荷をかけるようになったことから、労働者の経済的地位の向上は環境に負荷をかけるというベクトルで(のみ)考えがちである。しかし、資本主義の原理からすれば、労働者階級からの収奪=剰余価値が投資に回されて資本の拡大を実現していく。したがって、本来は労働者階級全体の経済的な地位の向上は投資を抑制し、経済成長を抑止するベクトルに働くはずだ。
スイス金融大手UBSの報告によると、2020年、世界の富豪の資産は4月〜7月の間で27・5%増え、10兆2千億ドル(約1081兆2千3百億円)に達した。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、世界中の富豪の資産が過去最高を記録している。とくにテクノロジー分野や産業界の最高幹部らが最も収入を得ている。他方、アマゾン倉庫やウーバー配達員、世界のiPhoneの部品工場やコンピュータ用のレアメタルの採掘現場では低賃金労働が強制されている。富の公正な再分配を求める労働運動の介入は、資本の無際限な拡大再生産への重大なブレーキになり得るはずだ。
因みに、中産階級にとってエコロジーは「帝国的な生活様式」への自省であるかもしれない。しかし、下層階級にとってそれは、「買い物依存症」や「債務依存症」などから脱却して生活を再建する道でもある。下層階級の生活破綻は、消費の強迫観念を作り出す資本の攻撃的な広告と、現実の惨めな収入のギャップによって生み出されてもいるのだ。

(2)労働現場と環境

環境破壊を重大要因に21世紀はパンデミックの世紀となっているが、医療・福祉の現場労働者は労働強化と低賃金の二重の攻撃にさらされている。小売業の販売員や運送業の労働者たちも危険な現場にたち続けている。そうした中で、今や、エッセンシャルワーカーからの反撃が開始されつつある。
私たちのユニオンでは、今夏、いくつかの職場で企業に「熱中症対策」を申し入れた。気温が体温を超えると屋外での仕事は生命の危険を伴う。気候変動に対する具体的なたたかいが必要だ。

関西生コン弾圧許すな!と1月1日大阪府警本部前で抗議行動する労働組合員

(3)関西生コン弾圧を許さず、労働運動を守り、創造しよう

関西生コン労組の産業政策運動は、労働組合が使用者たる中小企業に協同組合を作ることを促し、もって、大資本たるゼネコンによる生コンの買い叩きとセメントメーカーの「拡販政策」に対抗するものだ。
特に関西生コン労組が取り組んできた「生コンプラント新増設阻止闘争」「計画的集約化事業」は、過当競争による中小企業の経営悪化と労働者の労働条件の切り下げを起こさないため、外部からの新規参入に反対し、さらに需要総体が落ち込む中でも「清算される企業」の商権とそれに伴う雇用責任を協同組合が引き継ぎ、「競争から共存へ」を掲げ、「会社は潰れても労働者は残る」「不況業種であっても安定した労働条件」を作り出してきた。企業内労組の「成果配分論」の真逆に位置する「脱成長理論」に立った労働運動と言える。
だが、今年から裁判が始まる関生弾圧京都三事件では、権力がこの取り組みを「事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与える」(組織犯罪対策法第1条)として、倒産解雇解決金の支払いやミキサー車の委譲を恐喝や強要として弾圧している。許すことはできない。
新しい理念を提起することは勇気が必要だが、さらに、それを実践するには既得権益を防衛しようとする権力の弾圧に打ち勝たなければならないのだ。
(1月10日/終わり)
愛知連帯ユニオン 佐藤 隆

今こそ核廃絶の行動を
松田 忍

核兵器禁止条約が発効

1月22日、核兵器の使用や開発などを一切禁止する核兵器禁止条約が批准各国で発効した。被爆地広島では、コロナ禍で様々な制限がある中で被爆者団体や市民団体が声明の発表や原爆ドーム前や原爆の子の像前などでのイベントをおこない、核廃絶への行動を訴えた。また、インターネットでのリモートイベントも多く開催された。
広島市役所で記者会見をした原爆小頭症被爆者と家族の会「きのこ会」はメッセージを発表した。会は小頭症被爆者とその家族の生活支援を中心に活動してきたが、今回の核禁条約の発効は核廃絶への大きな一歩と評価して、「もし母親のおなかの中で被爆することさえなかったら、彼らはまったく別の人生を歩んでいたはず」「核兵器は放射線によっておなかの中の小さな命をも傷つける」「『唯一の被爆国』と言う日本政府が条約に背を向けてどうするのか」と異例の訴えをおこない国に対して署名・批准を求めた。
広島県被爆者団体協議会(坪井直理事長)の箕牧智之理事長代行は「被爆者だけではなく、世界の人たちにとって歴史的な出来事。希望の光が見えたようだ」と感想を述べた。
「原爆の子の像」の前では、小学生から20代の若い人たちが創作劇を上演して、被爆地の若い世代が思いを表現した。「核のない世界の実現はまだこれから。手放しで喜んでいるわけではない」という被爆者の言葉を受け止め、核廃絶へのさらなる行動を起こそう。

伊方原発差止広島訴訟
第21回口頭弁論

1月20日、広島地裁において伊方原発運転差止広島裁判本訴の第21回口頭弁論がおこなわれた。コロナ禍のため、裁判は感染対策を終始徹底しながらおこなわれた。午後1時45分、広島地裁前に集合した弁護団、原告団、応援団の代表らが集まり、「私たちは内部被曝の強制を拒否する〜低線量被曝は安全ではない〜」と書かれた横断幕を掲げて記録撮影をおこなった。 

原告側意見陳述は延期

弁護団から今回期日に向けての準備書面の提出はなく、四国電力側から、直前の1月13日付けで準備書面の提出はあったものの、弁護側からの反論は次回期日以降となった。また、弁護側から意見陳述が予定されていたが、陳述予定者が京都府在住のため、緊急事態宣言下の地域からの移動するリスクは避けた方がよいとの判断から次回期日以降に延期となった。次回口頭弁論期日は3月24日。

84歳の独り言―出会った人びとF
大資本に命を狙われても(上)

大庭 伸介

武建一さんは今までに5回以上も、大資本差し回しのヤクザに殺されかけた。国家権力の弾圧で、合計数年間も勾留生活を送った。しかし笑顔を絶やさず運動に打ち込んでいる。
武さんは1942年、鹿児島県の徳之島に生まれた。中学を卒業して土木会社や商店などで働き、19歳で大阪に出た。業界最大手の生コン会社で日雇いで働き、決められた休日は正月3箇日だけで、毎月240時間の残業。梅雨期は収入ゼロ。6畳間に3人も押し込められ、忙しいときは会社のベッドで2時間程仮眠し、あとは働きづめだった。
Kさんという人が若手を中心に社会主義の学習会を組織し、武さんも加わった。それまで味わったことのない独特の熱さを感じた。Kさんは会社推薦の候補を破って労組の委員長に。全自運という産別組織に入って、「殺人的長時間労働を許すな」と訴えるビラを配った。会社はヤクザを雇い、彼らはジャックナイフを手に組合員に脱退を迫った。
Kさんがヤクザを前にして一歩も引かないのはなぜかと、武さんは労働運動に興味がわいた。
Kさんは突然解雇され、構内に入ろうとしたら小突きまわされ、罵倒され、力づくで排除された。武さんはその姿を見て、労働運動の活動家になった。
1965年、全自運関西地区生コン支部が5分会183人で結成され、23歳の武さんが委員長になった。
武さんたちは話し合いを重ね、@個別企業を相手にするだけでなく背景資本とのたたかいを強化する、A個人加盟を原則とし、外に開かれた多数派をめざす、B要求・交渉・行動を統一するための司令部を作ることを申し合わせた。
1973年、オイルショックのなかで生コン全企業と初めて集団交渉をおこない、月額1万8000円の賃上げと、未組織(非正規)の運転手に10万円の最低保障を設ける大勝利をかちとった。
以来毎年100社を超える経営側と集団交渉を重ね、組合員も増大した。武さんの首に高額の懸賞金がつき、ヤクザに拉致されたりするようになった。
日経連(当時)会長でセメント協会会長の大槻文平は、「関西生コンの運動は資本主義の根幹にかかわる運動である」と警鐘を乱打した。大阪府警は50人程の専従捜査班を設けて弾圧に乗り出した。
上部団体の運輸一般(全自運の後身)にガサ入れがおこなわれた1983年12月、共産党は「関西生コンの運動は社会通念に反する」として猛然として、組織介入を始めた。
共産党との組織戦に勝利し運輸一般から独立した1年後、私は武さんを静岡に招いて、仲間といっしょに話を聞く機会を持った。(つづく)

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