未来・第310号


            未来第310号目次(2021年1月21日発行)

 1面  感染拡大 政治の責任
     コロナ無策の菅政権は退陣を

     緊急事態 菅の宣言に即反撃

     関生弾圧
     反転攻勢 無罪獲得へ
     元旦行動に400人

     老朽原発を廃炉へ
     1・24関電前 3・20高浜へ

 2面  大阪地裁 12月24日
     生活保護裁判 結審
     判決へ向け署名を全力で

     君が代不起立
     都教委が再処分
     裁判で違法確定も

 3面  焦点 命脈つきた菅政権
     安倍・トランプ継承許さない
     落合薫      

     クウェートで重傷の池田三曹
     2月25日に名古屋高裁で判決     

 4面  投稿
     増大するヘイト街宣
     川崎市「差別根絶条例」から1年(上)
     深津利樹

     右翼ポピュリストの台頭
     背景を森原康仁さんが講演

 5面  投稿
     運動の継承には何が必要か
     11・23 園良太さん講演会から(上)

     連載
     #Me Too運動に学ぼうA
     歪んだ支配欲=性暴力
     石川由子

 6面  〈寄稿〉
     エコ社会主義と労働運動(上)
     独占的世界支配が崩壊し始めた

     伊方原発3号機仮処分異議審
     第一回で即日結審
     松田 忍

     84歳の独り言―出会った人びとE
     「国賊」の母の背中を見て育つ

     (冬期カンパのお願い)

       

感染拡大 政治の責任
コロナ無策の菅政権は退陣を

 コロナ感染の急拡大がとまらない。連日最高値を記録する都府県が続出。東京は連日2000人規模、神奈川も999人(1月9日)。大阪は一時高止まりだったがここに来てまた600人台と急増。北海道だけがわずかに減少だが、全都道府県で感染者ゼロがなくなってしまった。
菅の会見中に新宿アルタ前で街宣(1月7日、東京)

GoToが感染拡大

これもそれもすべては政治の責任である。7月に人々の移動と会食を促進するGoToトラベルを前倒しで始めたのは安倍首相・菅官房長官・二階自民党幹事長だった。9月に菅政権が成立し「コロナ対策第一」と言いながら、医療・検査の拡充はおこなわず、学術会議問題で強権性を示し、GoToはトラベルにつづきイートも満展開。11月に入り北海道・大阪の感染急拡大に一定対応したものの、感染源である首都・東京に対して菅首相・小池都知事が責任を回避し、さらに感染を全国に拡大させた。
12月に入り支持率急落を目の当たりにし赤信号がともったが、それでも12月28日まではGoToトラベルをやめなかった。大みそかに東京が1300人を超し、首都圏4都県知事が自己の責任逃れも含め緊急事態宣言を政府に要請。そして1月7日の宣言となった。しかしその特措法改正は18日開会の通常国会で、休業・時短補償より罰則・罰金がメインだという。既に首都圏では感染しても入院できず自宅待機の患者が数千人に及ぶ。すべて後手後手で医療崩壊過程に突入しており、菅政権下で人々の「命の選別」がおこなわれようとしている。

菅の無策

ここまで感染が拡大したのはまぎれもなく政治の責任=コロナ対策無策にあることはあまりにも明らかだ。宣言下の休業・時短に対しての補償は極めて不十分で、社会的困窮者に対する手当はなく、さらに医療・検査ではPCRは未だ不十分、市中感染を検査するシステムも整備されない。どうやって感染拡大を止めるというのだ! もはやこの政権では市民の「命とくらし」は守ることはできない。野党は国会議員が病院に収容される前に死亡した現実にたいし、怒りの行動をとろうともしない。

各地で行動

こんななか、1月7日、夕刻に首都圏で緊急事態宣言が出されようとする前に、神戸・三宮マルイ前では、「感染拡大、政治の責任 菅政権は退陣を」を掲げて木曜行動がおこなわれた。9日には〈市民デモHYOGO〉が「いのちとくらし」を守る行動や、反原発運動を強めることを確認した。午後は辺野古神戸行動。この冬一番の寒波の中、道行く人にチラシが撒かれ、署名に応じる人も多かった。3時半からは大阪の辺野古行動がJR大阪駅南で展開された。
 午後5時半からは阪急ヘップ5前での〈梅田解放区〉。若者や音楽家を中心に20人がアピール行動に参加。「感染拡大、政治の責任」「菅はやめろ」「吉村、松井もやめろ」のコールがヘップ5前を通行する人々に響き、スマホで写真を撮る人や、こぶしを一緒にあげる若者も目立った。こうして新年早々、とまらない感染拡大を前に、「もうスガは要らない」がこだました。(関連記事・写真3面)

緊急事態 菅の宣言に即反撃

首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言が出た1月7日当日、新宿・アルタ前で、都教委包囲首都圏ネットワーク有志が呼びかけ、「緊急事態宣言反対」の街宣がおこなわれた。発言者はこぞって、「必要なのは強制や罰則より休業補償。生活できる給付金を出せ」と訴えた。
菅首相は、18日開会の通常国会に、感染症法改定、特措法改定(罰則付き)を上程しようとしている。医療費削減のために、病床数、医師・看護師の数を減らし続け、医療崩壊に追いやってきたのは自公政権であり、場当たり的なGoToトラベルで感染を拡大してきたのも自公政権である。今や、菅政権にたいする抗議の声はますます強まっている。(大木民雄)

関生弾圧
反転攻勢 無罪獲得へ
元旦行動に400人

大阪府警本部をとり囲み、400人がシュプレヒコール(1月1日)

1月1日、大阪府警本部前で全日建連帯労組関西地区生コン支部(以下、関生支部)への弾圧を許さない行動がおこなわれ、400人が集まった。熱のこもった発言やシュプレヒコール、歌などで参加者の思いはどんどん強くなっていった。
冒頭、司会から「国家権力による不当判決がいくつも出され、労働運動そのものを否定し、私たちが声を上げる権利そのものが奪われていくような弾圧が警察、検察、裁判所が一体となって襲いかかっている。私たちはひるむことなく、声をあげ、たたかう政治を広げ、私たちの権利をとりもどす、そうした一年にするための元旦行動にしたい」と提起があった。
目の前の大阪府警に対する怒りのシュプレヒコールが開始された。関生支部への不当弾圧糾弾! 大阪府警は労働運動への弾圧をやめろ! 大阪府警は不当弾圧を謝罪しろ!民主主義を破壊する不当弾圧を許さないぞ! 不当弾圧を続ける菅を打倒するぞ! 松井、吉村をひきずりおろすぞ! すべてのたたか(2面下段へつづく)
(1面からのつづき)
う人々への弾圧を許さないぞ! 等と400人の声が大阪府警に叩きつけられた。
最初に、京都地裁で就労証明書を会社に要求したことが強要未遂になるという不当判決を受けた加茂生コンの安井執行委員が昨年12月17日に出された懲役1年、執行猶予3年の判決を弾劾した。無罪なのにこんな判決を出して労働三権をふみにじることは許せない、高裁に控訴し、すべての人たちのために、労働三権を守るためにたたかうと決意を述べた。
同じく加茂生コン事件で有罪判決を受けたY組合員は、「懲役8月、執行猶予3年という不当判決は許せない。高裁で無罪判決をかちとりたい」と決意を述べた。
次に、関生支部執行委員の西山直洋さんが発言。「2年前、ストライキに対して威力業務妨害という名前の不当な弾圧をかけられ勾留されてきたが、私は今日この場に立って大阪府警弾劾の声を上げている。労働三権は何のためにあるのか。安倍政権から菅政権になり、ドンドン悪い資本家どもが増え、労働者を抑圧して自分たちの思い通りの社会をつくろうとしている。みなさんとともに反撃していく1年が今日、始まった。仲間を奪還した今、態勢をととのえ、ありえない弾圧をしかける権力に対し、動じずたたかおう。憲法も法律も変わっていないのに不当判決を出し続ける裁判官の意識も変えていかなくてはならない」と決意を述べた。
れいわ新選組の大石あきこさんは、十三市民病院で勝利をかちとったことを報告。
おおさかユニオンネットワークは、韓国サンケン労組との連帯を訴え、1月21日、サンケン電気大阪支店に抗議の声をあげると提起。港合同・中村吉政委員長の発言の後、関西合同労組の佐々木伸良委員長は労働三権を否定する不当判決を弾劾し、21春闘をたたかうと表明した。
最後に集会のまとめを反弾圧実行委員会・小林勝彦さん(全港湾大阪支部)が「2年間かけて仲間を奪還したが、これで終わりではない。ここからが新しいスタートだ。この判決が間違いだったということを絶対わからせなくてはならない。仲間を広げてほしい、不当判決をくつがえし、判決が間違っていたことを裁判官にわからせよう」と提起した。

老朽原発を廃炉へ
1・24関電前 3・20高浜へ

関西電力は老朽原発美浜3号機を1月に、高浜1号機を3月に再稼働せんと、美浜町、高浜町、福井県の同意を得るため全力を尽くしてきた。すでに、美浜町議会、高浜町議会は、再稼働に同意を決めた。美浜町長、高浜町長も、まもなく同意を表明しようとしている。
福井県は、地元同意の前提として、「関電が、使用済み核燃料の県外搬出先候補地を2020年中に県に示すこと」を求めてきた。しかし関電は12月25日、「年内には決められなかった。引き続いて全力を挙げる」ことを福井県に報告。杉本知事は、「これは同意の前提条件で、これでは判断できない」と、あくまで候補地を提示することを強く求めている。電気事業連合会(電事連)が、青森県むつ市の中間貯蔵施設の共同利用案を打ち出したが、むつ市長が反対しているため、候補地を言えなかった。
しかし、福井県の対応は、中間貯蔵の候補地を示すことを求めるものでしかなく、一気呵成に決着する可能性がある。福井県原子力安全専門委員会での議論は実質的には終わっており、後は報告書を提出するのみだ。依然として地元同意をめぐって、激しい攻防がたたかわれている。
美浜3号機の1月再稼働は不可能という報道もあり、この時間をフルに使って、「老朽原発うごかすな!、地元同意をするな!」の声を大きく上げよう。
「1・24関電よ☆老朽原発うごかすな! 大集会」はきわめて重要なたたかいになった。1月24日、大阪・関電本店前に集まろう。集会後は大阪駅前(梅田)に向かってのデモ行進で市民に訴えよう。

2面

大阪地裁 12月24日
生活保護裁判 結審
判決へ向け署名を全力で

1月7日、大阪地裁前でビラまきをする<引き下げアカン!大阪の会>の仲間

大阪地裁で丸6年取り組まれてきた生活保護基準引き下げ違憲訴訟が、昨年12月24日結審した。判決は2月22日、午後3時と決まった。
喜田崇之弁護士と小久保哲郎弁護士が最終弁論をおこない、弁護団長の丹羽雅雄弁護士が口頭で弁論を締めくくった。喜田弁護士は原告の生活実態をふまえた弁論をおこない、傍聴者の胸を打った。

「名古屋地裁判決」批判が核心

昨年6月、全国で最初に判決を出した名古屋地裁は原告の請求を棄却し、国の主張を丸飲みする最悪の反動判決を出した。同地裁判決は、「原告らは」「不自由を感じながら生活していることは認められるものの」「1日3食取っており」「許容し難い程度に乏しいものとまでは認められない」という。しかし、3食取れているかどうかは後述するように憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」ではない。名古屋地裁判決の感覚は人らしく生きるための原告の人間性を根底から否定するものである。
さらに保護規準引き下げは「自民党の政策の影響を受けていた可能性を否定することはできない」が、「自民党の政策は、国民感情や国の財政事情を踏まえたものであって」「当時の自民党の影響を受けたものであるとしても、そのことをもって本件各告示による生活扶助基準の改定が違法であることはできない」として、自民党や総資本による引き下げに免罪符を与えている。 全国の原告、弁護団は名古屋地裁判決批判に全力を挙げている。

発展してきた貧困概念

最初の弁論に立った喜田弁護士は、本件の争点は憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」とは何か≠ナあると積極的に問題の所在を明らかにした。そのためには戦後発展してきた貧困概念を理解することが重要であると訴え、敗戦直後の飢餓状態から今日に至るまでいくつかの段階を経てきた貧困概念の発展を示した。
池田内閣は1960年12月、所得倍増計画を定め、この中で敗戦直後のような「肉体的生存を維持できない困窮状態」を貧困とみなす絶対的貧困概念を明確に否定した。いわゆる戦後の終わりである。これに対応して日本における生活保護基準は「その社会で当たり前とされる生活ができない困窮状態」を指す相対的貧困概念に発展してきた。
さらに今日においては貧困概念は「自分の生活と将来は自分で決めていくための、社会参加のあり方が阻害されている状態」を貧困とみなす社会的排除概念にまで発展してきている。喜田弁護士は、名古屋地裁判決は半世紀以上前の敗戦直後のような時代遅れの絶対的貧困概念を基に判断していると弾劾した。

人間性を取りもどすために

重い病気があったり空腹でも、それでも数百円、数十円と食費を切り詰めて生活しなければならない生活保護利用者は「健康で文化的な最低限度の生活」をしているのか。猛暑でも、凍えそうな冬でも、光熱費を節約するため部屋でじっと過ごすことが「健康で文化的な最低限度の生活」なのか。大切な人の葬儀や結婚式を断らざるをえなくなり、人間関係を残酷に切断しなければならないような生活が「健康で文化的な最低限度の生活」なのか。喜田弁護士は証言に立った6人の原告の生々しい現実を示して訴えた。

生存権の原点から

人間は社会的存在である。社会的存在とは人と人とのつながりであり、これが今日、最低限度の生活として保障されなければならない。しかし国と総資本は、2013年からの生活保護規準の引き下げによってこれを全面的に否定してきた。われわれは人らしく生きる権利を求め、すべての人々の生活を向上させるために生存権の原点からたたかっていかなくてはならない。

負けられない

大阪地裁判決は予想より早く2月22日となり、名古屋地裁に次ぐ全国で2番目の判決となる。私たちの責任は重大である。
本裁判を担当している森鍵一裁判長は昨年12月4日、大飯原発の設置許可を取り消したが、他方では、那覇地裁で2018年3月、辺野古の新基地建設をめぐり、埋め立て工事の差し止めを求めた沖縄県の請求を却下した裁判官でもある。
勝敗を決するのは私たちの運動である。裁判官の資質に依拠するのは間違っている。運動をさらに強めよう。

勝利のための行動

大阪地裁前の宣伝行動と署名の集中が決定された。宣伝行動は4回おこない、署名は一人でも多くの人たちに呼びかけ、集めよう。集まっている署名は12月24日現在で1600筆。署名の締め切りは1月28日である。
◇大阪地裁前宣伝行動
1月21日(木)、2月4日(木)、18日(木) いずれも8時20分、大阪地裁東門集合、8時半から9時まで宣伝とビラまき。
◇署名提出行動
1月29日(金)午前、大阪地裁に署名提出。その前段で中之島公会堂で集会をおこなう。宣伝行動や署名提出行動に参加できる人は、ともに怒りの声をあげよう。
◇2月22日の判決後、報告集会と記者会見が予定されている。

貧困は自己責任ではない

貧困は国と総資本の責任である。だから憲法25条は国に責任を義務づけているのだ。保護規準引き下げの根幹にある思想は「貧困は自己責任」というゆがんだ価値観である。 戦後70年間、歴代内閣は生活保護規準には一切触れようとしてこなかった。しかし、安倍政権はこれに手をつけ、「貧困は自己責任」であるとして憲法25条の定める「健康で文化的な最低限度の生活」を破壊することを開始した。菅政権はこれを全面的にひきついでいる。
さらに、国は保護規準引き下げだけでなく、生活保護におけるケースワーク業務を外部委託しようとしている。生活保護の基本原理は「国家責任」である。これを外部委託することは国の責任を限りなく縮小していく攻撃である。
私たちの生活を守るために、社会保障の運動や労働組合だけでなく、すべての人たちがスクラムを組んでこの攻撃を押し返していこう。(三船二郎)

三里塚反対同盟が旗開き

1月10日、市東孝雄さんの敷地で130人が参加し、2021年新年旗開きがおこなわれた(詳報次号)

君が代不起立
都教委が再処分
裁判で違法確定も

「最高裁で減給処分の取り消しが確定」している現職の都立特別支援学校教員のTさんに対して、都教委は12月25日、新たに戒告処分を発令した。この件は8年も前の件で、2013年3月卒業式、4月入学式で「君が代」斉唱時、Tさんが起立しなかったことを理由にした処分だ。 都教委は不起立の回数を理由に、より重い処分を科すことをくり返してきたが、裁判で「累積・加重処分(減給、停職)は違法」として取り消されてきた。Tさんも東京地裁が処分を取り消し、都教委が控訴するも東京高裁で控訴棄却、さらに都教委が上告するも最高裁では不受理とした。これにより、Tさんの減給処分の取り消しが確定していたのである。
裁判でTさんへの減給処分が違法であると断罪された都教委は、Tさんに謝ることもなく、あろうことか「戒告」というかたちで再度の処分を科してきたのである。

くりかえされる事情聴取なしの再処分

2013年「都教委10・23通達」にもとづく懲戒処分の数はこれで延べ484人となった(被処分者の会、調べ)。
裁判に負けた都教委が新たに処分をやり直す「再処分」は、これで19人にのぼる。
この日は終業式で、Tさんは昼前に児童を無事に下校させ、疲れきった体で教室の掃除と消毒をしている最中に校長室に来るよう呼び出された。校長室には都教委職員2人と校長がおり、処分が発令された。
Tさんは「新型コロナウイルスの影響で教育史上最も長かった2学期を終え、教育行政からねぎらいの言葉のひとつくらいかけられてもよい時に、抜き打ちのように再処分とは、腹が立つよりむしろ呆れました」と語った。

3面

焦点 命脈つきた菅政権
安倍・トランプ継承許さない

落合薫

「スガやめろ!」の横断幕をひろげ、街行く人にアピールする梅田解放区の参加者(1月9日、大阪)

コロナ危機に無能・無策

菅義偉首相は、年頭所感(1月1日発表)で、「ポストコロナの新しい社会をつくる」と述べた。これはコロナとの闘いに対する敗北宣言に他ならない。労働者人民に犠牲を強いるだけで、「新しい社会」とはなにごとか。「感染症拡大阻止と経済回復の両立」を掲げるが、その目標は、もはやまともに開催できるとは誰も信じていない「オリンピック・パラリンピックの開催」である。国威発揚の自己目的化は許せない。
菅首相の言うことは欺瞞と虚偽に満ちている。「2050年カーボン・ニュートラル」は「原子力政策」と一体であったし、2月に予定する米新大統領バイデンとの日米首脳会談では、共同声明に、米国の核兵器で日本を防衛することを明記することを求めるという。核兵器禁止条約が発効するとき、核政策や原発推進と一体で「グリーン」や「経済成長」もないものだ。
菅政権の支持率は昨年9月発足以来30〜40ポイント急落し、『毎日』につづき各メディアでも不支持率と逆転した。その要因は、コロナ対策での「迷走」、学術会議の任命拒否、政治とカネ(安倍・桜、河井元法相夫妻、吉川貴盛元農水相の受託収賄)である。そのうえ、首相が頼りとする大阪維新が2度目の住民投票で敗北した。菅が描いた改憲のための「自公維構想」は破産をとげた。

新自由主義と治安強化

菅首相は、自著『政治家の覚悟』で、「アベノミクスを継承し…集中的に改革し、必要な投資を行い、再び力強い成長を実現したい」と述べている。コロナ拡大を抑えることができていない中でこんなことを言う「非常識さ」が菅義偉という人間である。
安倍首相を引き継ぐ第1は、「景気浮揚の切り札」と位置づけるオリンピック・パラリンピックの開催である。世論は、「中止」「再延長」という意見が多くなったが、強行の構えだ。しかしまともに開く展望はなくなった。
第2は、官房長官就任以来、音頭を取ってきたカジノの推進である。
第3は、コロナで航空需要がゼロ化している中で、昨年3月29日に羽田都心ルートをスタートさせた。国際競争力とか、羽田が便利になると言って、騒音・落下物・大気汚染・降下角度が増える危険と、ごうごうたる反対を押し切った。首都圏4空港で年間100万回の離着陸を保障する(うち成田は30万回)などという、空論的計画を一番強力に推進したのが菅である。
菅政権は「警察支配内閣」であり、警察官僚が突出して重要な役割を果たしている。官房副長官の杉田和博と国家安全保障局長の北村滋が双璧である。ともに警備公安畑出身の警察官僚で、杉田は各省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局のトップを兼任し、学術会議の6人の任命拒否を主導した。

「影の総理」が表に

菅義偉は官房長官として「安倍一強」を支えてきた。特定秘密保護法、安全保障関連法(戦争法)、共謀罪について、2012年、第二次安倍政権発足の時から目標とした。コロナ禍で「安倍一強」が破綻する過程もすべて菅が主導した。第1次緊急事態宣言(4月7日)、アベノマスク、外出自粛の動画の失敗、一律10万円支給を決めるプロセスの迷走、検察庁法改定案から…森友・加計・桜・河井元法相問題まで、菅は、共犯以上の役割を果たした。
河井克行を法務大臣にしたのも菅、同じく選挙違反で経産大臣を辞めざるをえなかった菅原一秀も実質的に菅派である。河井の妻・案里を岸田派の溝手顕正を落とすため立候補させたのも菅。河井夫妻の捜査の手が安倍・菅に伸びるのを防ぐため、黒川弘務を検事総長にしようとしたのも菅。馬毛島疑惑にも菅が絡んでいる。立石勲が4億円で買った馬毛島を、2019年1月に沖縄基地負担軽減担当大臣である菅が米艦載機訓練施設の移転先として160憶円で買い取った。
このように、菅の手法は官邸の人事権と決定権を一手に掌握し、「バレなければ」「捕まらなければ」という手法で強行するやり方である。

総貧困化と暗黒の独裁政治

菅は、雪深い東北の農村出身を売りにしているが、実はゴリゴリの新自由主義者である。グローバル大資本の利益のためには手段を選ばず何でもする。これをある人は「究極の合理主義者」というが、資本主義そのものが成長できない時代にあって「合理主義」を押し通すのはそもそも無理である。
昨秋の臨時国会で打ち出した「新たな人の流れをつくる」(所信表明演説第3章見出し)と称するグローバル大企業のための労働力のリストラ計画である。これは「不要な労働力」の切り捨てと、より安価な労働力への切り替え(女性・外国人・中途採用者)を意味する
マスコミ支配についてはどの政権よりも徹底している。NHKを実質国営放送化するために、会長に籾井勝人を任命したのをはじめ、新内閣発足にあたって異例にも、メディア対策の首相補佐官に共同通信の柿崎明二を任命した。
菅はまた、隠すこともない原発推進派である。政府の「グリーン成長戦略」では、2050年時点のCO2の回収機能を付けた化石燃料による火力発電+原発で、電力の30〜40%をまかなうとしている。何のことはない。30年先にも現在よりはるかに多い発電量を原発に頼る方針なのである。
沖縄政策で典型的な「アメとムチ」でやってきたが、翁長知事に徹底断罪され、許しがたいことに、展望のない辺野古工事をひたすら進めている。
朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)との関係では、万景峰号の入港を禁止する法律をつくり、安倍とともに対DPRK制裁法を議員立法で成立させた。
農村出身を自称する菅が標榜する地方創生とは実は、地方と農業の破壊である。その典型が、先の臨時国会で成立した改正種苗法である。「競争力の強化」と「育成者の権利保護」を名目に、「登録品種」の収穫作物から取れた種を再度植えることを禁止する。アグリビジネスと大企業を優遇し、家族農業を破綻に追い込むものである。
全世界の労働者人民と連帯し、パンデミックを収束させよう。
戦争と貧困と困窮をまき散らす菅政権を、怒りの輪で包囲しよう。

クウェートで重傷の池田三曹
2月25日に名古屋高裁で判決

12月9日、名古屋高裁で池田裁判がひらかれ、本裁判の最重要の証拠採用ともいうべき池田さんの新潟救難隊時代に同僚隊員であったS氏の「陳述書」が提出された。
自衛隊を相手にした裁判では毎度のことであるが、すべての証拠が加害者である被告=自衛隊に握られているため立証が非常に困難である。S氏の証言(陳述書)はこの状況を打開するものであった。

池田三曹がクウェートから帰国後、自衛隊は原隊の小牧基地では十分な治療も受けさせずに、また転属先の新潟救難隊では、勤務中に暴行までふるうなど組織ぐるみで退職を強要したのである。
同救難隊で居室が隣室であったSさんの存在と証言は、密室に空気穴を開けて新鮮な空気を送り届けたかのように池田さんを支えたと言える。
Sさんは、池田さんが暴行された直後に隊内で証拠写真を撮影し、また警務隊の事情聴取においても勇気をもって池田さんの置かれた状況を証言するなど、組織的に孤立・迫害されている池田さんの支えになった唯一の人物である。
自衛隊、しかも営内生活(職務上の先輩・上官などとの同室共同生活であり、プライバシーのかけらもない)という閉鎖社会において、組織ぐるみの圧力に屈せず正義を貫き、真実を証言することの困難さははかり知れない。池田さんとSさんは、隊内においても裁判の場においてもそれぞれの立場でこの信念を貫いたのである。
このような人物であるから、Sさんにたいする「証人調べの拒否」は、自衛隊、法務省、さらに裁判所までもが自衛隊の組織ぐるみの犯罪の露呈を恐れ、その隠蔽を画策したということの証明でもあった。
しかし、池田さんと代理人弁護団の粘り強いたたかいの前に、ついに「陳述書」という形での証拠採用を認めざるを得なかったのである。
提出された陳述書にたいして被控訴人=自衛隊は、文字通り一言の反論もできず、裁判所の判決による救済にすべてを託すしかなかったのである。
裁判後に開かれた報告集会で池田さんは、「たとえどんな判決になろうとも事実は事実なのだから、どこまでもたたかっていく」と決意を語った。
「敵基地攻撃」が検討され、自衛官の命の危険はいやおうなく高まっている今だからこそ、イラク戦争の米軍戦闘地域に派兵された空自隊員=池田三曹の身に起こったことと、それにたいする自衛隊の対応を明らかにしなければならない。
かつて負傷兵に治療も受けさせず青酸カリや手榴弾を握らせて置き去りにし見殺しにしてきた日本軍のやり方が、再び海外派兵の最前線で繰り返されはじめているのだから。
判決は2月25日、名古屋高裁で午後3時から。全国から結集して、池田さんと共にたたかおう。【以上『反軍通信』321号より転載】

事件のあらまし



池田頼将三等空曹は、航空自衛隊小牧基地に勤務していたが、2006年「イラク復興支援」でクウェートに派兵された。
米空軍アリ・アル・サム基地で開催されたマラソン大会への参加要請に応じ出場した池田三曹は、競技中に米軍雇用軍事企業の大型バスに追突され重傷を負った。
自衛隊は、クウェートで適切な治療をおこなわなかったばかりか、治療のための日本への帰国も認めなかった。帰国後も公務災害の認定手続きを遅らせ、さらに療養補償給付を打ち切るなど陰に陽に治療を妨害し続けた。
自衛隊は、池田三曹を知人の多い原隊(小牧基地)から切り離し、知人のいない新潟の救難隊へ転属させ孤立化させ、そこで組織ぐるみ・パワハラの退職強要をおこなった。本控訴審でSさんが陳述書で証言したのはその氷山の一角である。(小多基実夫)

4面

投稿
増大するヘイト街宣
川崎市「差別根絶条例」から1年(上)

深津利樹

ヘイト集団にたいしプラカードをかかげ抗議する市民(9月20日、神奈川県川崎市)

2019年12月12日の川崎市議会で、出席全議員の賛成で成立した「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(差別根絶条例)」。昨年1月、本紙に「川崎市で差別根絶条例〜在日と市民が勝ち取った! 差別に初めて刑事規制」と題しての私の投稿文を掲載していただいた。
川崎市のこの条例については、各新聞やNHKの「クローズアップ現代」などテレビでも報道され、全国からも多くの支持と共感を得てきた。また今、同じ神奈川県内の相模原市でも、同様な条例をつくろうという具体的動きが活発になってきている。
在日被害当事者と市民が集まる〈ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク〉(以下「市民NW」)などによる、3万、4万と2度の署名運動や、駅頭行動、講演や集会、各訴訟などの諸行動によって、在日朝鮮人など外国人多住地域である「桜本」へのヘイトデモ接近禁止の判決が勝ちとられた。国会では「ヘイトスピーチ解消法」がつくられ、川崎市は差別的言動を繰り返すものに対して、「勧告・中止命令・公表を踏まえた上で告発を行い、50万円以下の罰金を科す」という全国初の条例を成立させた。これは確かに画期的であった。成立したこの条例は2020年7月に完全施行となった。
条例成立1年を記念して昨年12月12日に開かれた市民NW主催の集会には市民80人ほどが参加、全国初の刑事罰付きの条例の意義を再確認する一方で、「差別が止まっていない。市に実効性ある執行を求める」として3度目の署名運動を始めるとした。
成立して1年を経過した今、実際の状況はどうなったのか?

以前より多くなったヘイト街宣

成立して1年たった12月の日曜、多くの通行人が往来する川崎駅前ではあいかわらず、「日の丸街宣倶楽部」と称するヘイト団体が旭日旗と日の丸を振り回し、大音響で朝鮮人を敵として差別をあおりたてていた。この団体は、元「在特会」の桜井誠が党首である日本第一党の党員でつくられた差別扇動の団体だ。
実は、川崎駅前でのヘイト街宣は、残念ながら条例制定前より逆に多くなっているのが現実だ。この川崎市差別根絶条例施行の7月、それ以来5カ月で10回以上にもわたって川崎駅前を中心にしてヘイト街宣が強行されている。こうしたヘイト街宣は2カ月に1回程度告知されておこなわれている。他は無告知で強行。
ヘイト街宣が告知されるや市民NWが即対応して、多くの市民に呼びかけ、同時刻に抗議行動を実施、「ヘイトスピーチを許さない」とのチラシ配布とマイクアピールをおこなっている。警察も阻止線を張って警備、ヘイト団体の罵声とカウンターの対応、私たちのチラシ配布とマイク、そこに多数の警察官が入り混じり、川崎駅前の通行路の半分が通行できないという状況がつくられる。
ヘイト団体は、「条例に違反はしない」として、「殺せ」とか「死ね」と言った罰則付きの差別的な発言を表向きには「セーブ」し、条例での規制をかいくぐりながら、実際には差別そのものをマイクで怒鳴り続けている。
「長年にわたって地域一帯に不法のまま住んでいる」「外国人の特権を見直せ」「外国人は生活保護で優先されている」などと、一見「民族」を特定しないようにしながら、実際には大うそのヘイトスピーチを続けている。その掲げているノボリに「朝鮮学校は国家保安法違反」というものもあった。これは条例に違反していないように装っているが(国家保安法は韓国の法)、もちろん朝鮮学校が違法なものであるように見せかけるデマゴギーそのもので、悪質な差別表現、ヘイトそのものだ。
一方、ヘイト団体が告知した行動にたいしては、規制すべき市は担当職員をヘイトスピーチの現場に派遣、差別的言動を監視している。その職員に対しても、暴言と恫喝がふりかかっている。
しかしながら、川崎市の福田市長は、この日の街宣について、「罰則の対象になるような条例違反に該当する差別的言動はなかった」と発言したのだ。在日被害当事者や市民、弁護士、そして条例をつくった市の担当者のこれまでの努力をどう考えているのか。
そうしたヘイト街宣のほか、各所には差別的落書きも目だってきている。 (つづく)

右翼ポピュリストの台頭
背景を森原康仁さんが講演

12月13日、「差別・排外主義にNO! 12・13講演集会」が都内でひらかれた。主催は差別・排外主義に反対する連絡会。
専修大学経済学部准教授の森原康仁さんが「グローバル化・デジタル化・所得格差 〜右翼ポピュリスト台頭の背景を考える〜」と題して講演した。以下、その内容を紹介する。〔文責/見出し・小見出しとも本紙編集委員会〕

排外主義者に対するカウンター行動に一個人として細々と参加してきた。これまでたたかってこられた皆さんに敬意を表する。
近年、アメリカを中心に排外主義的・右翼的ポピュリストが台頭してきた。要因の一つに所得格差がある。

小泉「構造改革」ひきつぐ菅政権

(ハーバー・ビジネス・オンライン11月1日配信記事で)ジャーナリスト・佐々木実氏が竹中平蔵の政策を紹介していて、竹中のベーシック・インカム論について触れている。ベーシック・インカム論は右からと左からと2つあって、竹中は典型的な右から。ミルトン・フリードマンが言った政策でもある。米ニューディール政策以降「大きな政府」が当たり前だった。70年代以降、社会保障の削減が図られたがなかなかできなかった。社会保障の代わりに金を配って後は個々人に委ねるのが竹中のいうベーシック・インカム。医療・福祉は「現物給付」であり、金を配ることでカットできる(その方が少ない費用で済む)ということ。これを「平等」という大義名分でやろうとしている。
菅政権は全体としては小泉「構造改革」を引き継ぎたいとしている。国家の「大きな手」も必要とする。新幹線や街の(デジタル化等の)システムを産業政策とし、所得格差の容認・国家産業政策の合わせ技が菅政権の特徴。

労働による社会的分断

2019年3月の米民主党の連邦下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテスの「自動化で仕事を失うという妖怪を怖がるべきではない。自動化は、むしろ喜ぶべきだ。でも、それを喜べないのは、私たちが、仕事がなければ死ぬという社会に生きているからだ。そして、そのことの中核にあるものこそが、私たちの本当の問題だ」という発言は注目に値する。マルクスの著作を読んでいると思われる。技術革新が豊かな生活のためではなく利潤の追求のためにおこなわれているのが問題の核心だと言っている。本来の意味での「ラディカル」なスタンスだ。
英『エコノミスト』シニア・エディターで記者のライアン・エイヴェントが著作『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』の中で現在の産業の特徴を言っている。20世紀前半の技術革新は「職人」を解体し、手に職がなくても仕事ができるようになることで大衆社会が発展した。現代の技術革新はIT等の技術を持つハイタレントしかできない。そこから所得格差が拡大し、分断が激しくなっている。
クラウド・ワーキング・プラットフォーム(※アマゾンのようなプラットフォーム企業が複雑な業務を細分化して労働者に割り当てること)はデジタル版パソナだ。政府が「副業」と言っているが、30〜50年後を見据えて「打診」的にやっている。これが一般化すれば長期的な雇用はなくなる。仕事の掛け持ちが当たり前になるような状態にするのを慣れさせる意図がある。パソナは労働者に1日8時間仕事をさせるがクラウド・ワーキング・プラットフォームは1時間ごとや仕事一つずつの単位。資本家にとっては嬉しく、労働者にとっては競争激化になる。
グローバル化で「上位」の労働者(アメリカだと白人男性、日本だと日本国籍の男性)の権利がなくなっている。アジアに生産が移され、「上位」だった労働者が被害意識を持っている。
従来、雇用と経済成長は補完的関係と考えられていた。雇用が増えれば消費が拡大して経済も拡大するとされたが、それも機械が機械を生み出すようになったら雇用も不必要になる。

再配分めぐり、社会主義求める人々と右翼ポピュリズムが分岐

(2017年のIMFの報告書で)再配分なくして成長なし、と言われている。理論的にはあり得る。どちらを選ぶのかは政治とたたかいによって決まる。アメリカの若者には「社会主義」の方が資本主義より人気が高い。日本の我々が思い描く社会主義とは違うが、こうした考えが出て来るのは当然。
こうしたものに反作用もある。それが反動や右翼ポピュリズム。(これまで上位にいた人々の)相対的な剥奪感が重要。特権をもっていた人々が、(日本で言えば)「韓国人にいじめられている」という感情を抱くのをうまくつかみ取って上昇しようとする連中が反動。ポピュリスト的背景を持っているので影響が大きい。
「リベラル」は20世紀的社会構造を前提に論理を組み立てているので反感を持たれる。剥脱感を持っている人たちには訴求力がない。それを奇貨として出て来るのがファシズムや反動勢力。
現在の株価の高騰は低金利で起きている。金利は企業の利潤率と同義。資本が利潤を生みだせなくなっていることを低金利が示している。米の金利が0%台というのはかつてなかったこと。それで資金が株やビットコインに流れた。
インフレというのは低金利と物不足で起きる。物不足のインフレはまだ起きないが金融資産では起きている。こんなことはいつまでも続けられない。これが崩壊する時、本当の危機が到来する。

5面

投稿
運動の継承には何が必要か
11・23 園良太さん講演会から(上)

梅田解放区をたたかう園良太さん(横断幕の中央を持つ)

11月23日、高槻市民会館でおこなわれた「園良太さんが語る!」講演会に参加してきた。本集会は〈高槻「日の丸」「君が代」の強制に反対する会〉主催なのだが、司会あいさつ等から、主催団体は日の丸、君が代の強制に反対したために再任用されなかった教師のたたかいに取り組んできた〈山田さんを支える会〉が改組して発足したもので、本日はその第一回目の「学習会」という位置づけであるそうな。あいさつに続いて、「君が代」不起立処分とたたかうZAZAメンバーからの発言ということで、松田さんらが発言した…学校現場ではほとんど組合が組織されておらず、松田さんの職場も正規・非正規合わせて70人ぐらいのところで、組合に結集している人は4人しかいないそうだ。たたかいによって若い人も「声をあげていいのだ」ということにはなるが、「自分がやろう」ということにはなかなかならないと述べられた。
そして園さんの講演である。@自己紹介 Aなぜ右傾化や「リベラル」が主流の時代に、反戦・戦争責任・反天皇に取り組んだか、どう考えているか B3・11以降〜運動の現在地点と、運動の継承に何が必要か C東京から見た大阪・関西の良さと、都構想はいらないということ。この4つのテーマでレジュメをまとめており、それに沿って話をされた。
園さんは1981年生まれ、友人や先輩とサッカーをして育ったが、中2の時先輩たちに暴力を受け始め、そのせいで5年間、他者との会話ができなくなった。ただ「ひきこもり」をしていたわけではなく、渋谷等の街に出ることは可能だった。工業高校から定時制高校に転入し、図書室の司書さんから文章執筆を進められ、文章表現から自己解放が始まった。大学の夜間部では社会学を学んだとのこと。2002年、アフガン反戦の渋谷「ピースウォーク」に参加し、そこから一気に社会運動への道を進む。03年のイラク反戦運動では、東京でも5万人が結集し「日本の街頭でもこれだけ出来る」ということを学んだ。その後、フリーター全般労組に加入、年越し派遣村でも学ぶ。
08年に「麻生邸リアリティーツアー」で不当逮捕。09年に〈ヘイトスピーチに反対する会〉を立ち上げ、反天皇制、5・15デモ、在特会への抗議をおこなって来た。11年の3・11、東日本大震災と福島原発事故が起こる…「今は国や東電を批判せず祈ろう」という挙国一致ムードに反対し、3月18日から「東電前アクション」を開始する。コロナでもそうだが、危機の時に支配層のやることは変わっていないし、それに同調・追従してしまう日本人のメンタリティーも変わっていないとのこと。脱原発、東電追及の運動が広がる中、3回不当逮捕されている。14年に辺野古新基地建設工事が開始された直後は〈辺野古リレー〉を立ち上げ、現地に行き、東京でデモもおこなっている。
ところが15年の夏に不整脈が起きて倒れる。このへんは〈ゴーウエスト〉なんかの集会でも話されており、「非常に大きな話なので別途話ができる機会を求めている」とのことだが、東京の仲間にも考えられない病気や死亡者が多発したため、悩んだ末に知人が多く、仕事も見つかった大阪に16年の末に避難し、心臓病は回復した。
17年3月に〈ゴーウエスト〉開始、5月に「共謀罪」反対運動から、「長時間・オールテーマで・誰でも話し・抗議する場・反天皇制や戦争責任など原則的な事を言う場」=梅田解放区を開始…当初はヨドバシ前でおこなっていたのだが、高架の上を歩かせる「車中心」の場になっていることから、ヘップファイブ前に変更した。あそこは人をショッピングモール内で歩かせるように仕向けた街づくり(阪急のコンセプト?)がおこなわれており、歩行者天国に近い非常にいい場所。また渋谷のような街頭ビジョンがないのも理想的なのだそうな。20年3月から〈コロナ生活補償を求める大阪行動〉開始。5月にたまたま十三市民病院の労働者と松井市長の会見を「直撃」し、「(雨ガッパは)ないよりマシです!」発言を引き出したのは記憶に新しいところである。(つづく/西川雄二)

連載
#Me?Too運動に学ぼうA
歪んだ支配欲=性暴力

石川由子

コロナ禍の中で多くの労働者が解雇されている。その多くが非正規、さらに女性労働者であることは間違いない。またDVも増えているという。災害時ですら男性の中には女性と助けあうことができず、暴力をふるうものがいるのだ。

性加害者の認知のゆがみ

性加害者は、もちろん女性もいるだろうがほとんどは男性だ。加害者は女性に対する差別意識から女性が一人の人間として生きていることに思いいたらない。
「男性は誘惑する性、女性は常に男性の誘惑を待っている」「女性のイヤはOKの意味」などと認知がゆがみ、女性の「NO」のサインが全く感知できなくなってしまうのだ。世界で「NO means NO」の運動が広がっている。

性犯罪加害者は厳罰で「治る」のか

性犯罪者に対して世間にあふれている言葉は「一生刑務所に入っておけ」だ。権力は加害者を懲罰しているのであって、自己批判を求める意思もなければ能力もない。そもそも労働者が権力に懲らしめてくれと願うことそのものは間違いではあるが、被害者からすれば切実な問題だろう。アメリカのカリフォルニアには性犯罪者専用、いったん入ったら最後一生出られない「病院」という名の予防拘禁刑務所が本当にある。5000人が収容されてきた。それでも足りないそうだ。カリフォルニア州は「患者」一人当たり年間2000万円使っているという。それでも性犯罪者は一向に減少しない。
日本の司法制度においては性犯罪は他の犯罪に比べて極端に罪が軽い。父親の娘へのレイプですら無罪にしてしまったほどだ。その後有罪になったが。アメリカの例を見るまでもなく、「入ったら最後、どんな模範囚になっても一生出られない」鉄壁の監獄を作り厳罰化したところで抑止力には全くなっていない。
一方でフィンランドでは刑期は長いが自由な刑務所を作り、その中で加害者は「STOP」というプログラムを受ける。難しい座学ではなくコーヒーを飲みながら語り合うグループミーティング。はたから見ると単なるおしゃべりに見えるそうだ。自分の暴力のトリガー(引き金)や生い立ちなどを語り合う。そしてこちらは再犯率20%、厳しい懲罰的刑務所を持つイギリスの再犯率は70%だ。

性暴力の本質は歪んだ支配欲

「男は本来性欲の塊」という言葉はそもそも性暴力の本質からはずれている。性暴力を犯すものは本質的な性欲にかられて犯すのではない。本人は性欲ととらえているが、脳の錯覚だという説があるほどだ。相手を傷つけ、追い詰め、支配し、それによって自分が優位に立っていることを確認したいのだ。だからその暴力は必ず強いものから弱いものに向けられる。男から女へ。さらなる完全な支配を求めて子ども・障害者へと向かっていく。同性愛のカップルにおいても同じ構図がある。性暴力の根源は主として女性差別があり、それにその他の差別意識が複雑に絡み合う。

男性による女性の「性」の支配

日本では女性の「性」は男性が支配するものであるという差別意識が根強い。だから明治憲法下の刑法であっても強姦罪は明記されている。が、これは女性の「性」の自己決定権の侵害ではなく、男性が所有する「妻や娘の性」に対して他の男性が侵害する罪なのである。これは今も根強く残っており、「もし自分の彼女がそんな目にあったら許せない」という意識はよく聞く話だ。女性の怒りをそのままストレートに感じているのではなく、本来、男である自分が占有するべき女性の「性」をほかの男にとられたことに怒っているのだ。男意識と女性の怒りを混同してはならない。一見この男意識はあたかも被害者と同じ怒りを感じているように見えるが、内実は差別意識なのだ。

支配の道具としてのセックス

もう一つ女性の「性」を男性が支配する証として、夫や恋人からセックスを要求されたとき女性は断ってはならないとされている。とりわけ婚姻上の夫婦であればなおさらだ。
DV男やモラルハラスメントをする男性(ネット用語でモラ夫。内容は後述)は激しい暴力をふるったあと、妻をレイプすることが多いという統計がある。これはDVやモラハラの結果として妻が自分に服従しているかどうかを確認するためだ。妻にはあたかも仲直りのしるしにみえるように。ちなみに日本の離婚の理由のほとんどはDVとモラハラだ。
妻を「モノ」として扱っているという言い方もある。「性欲のはけ口にしている」という言い方もある。しかし男性の女性に対する暴力の究極の目的は、女性の服従、自分に対する恐怖、恭順が主なのである。それを態度に示すようセックスを利用しているのだ。そのため暴力をふるう男性はセックスそのものに対する満足度が極めて低いそうだ。性そのものを楽しめていないのだ。愛情を基盤とする本来的な性ではなく、女性を差別しているので人間的な関係を結ぶことができず、貧困な性生活しかできないのだ。(つづく)

6面

〈寄稿〉
エコ社会主義と労働運動(上)
独占的世界支配が崩壊し始めた

昨今、世界の左派の理論で「エコ社会主義」及び「脱成長論」が注目を集めている。日本でも斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』がベストセラーと言っていい売り上げを示している。『人新世の「資本論」』はやや雑駁なところがあるものの、若い筆者が欧米の最先端の議論を簡潔にまとめ、誰もが読める新書版でそれを発行したことの意義はとてつもなく大きい。是非、多くの方に読んでもらいたいと思う。
この論考では、斎藤氏の提起を前提としつつ、「エコ社会主義」「脱成長論」とわれわれの現実の労働運動の関係を考察してみたい。

 (一)エコ社会主義とは

例えば、ミシェル・レヴィは、以下の13点を指摘している。
1.環境的危機はすでに21世紀の最も重大な社会的かつ政治的な問題になっている。
2.IPCCが説明するように、(2050年までに)平均気温が前産業革命期を一・五度C超えれば、不可逆的な気候変動プロセスを始動させる危険がある。
3.これらは人類史上前例のない破局の危険だ。
4.差し迫った破局における資本主義システムの責任は広く認められている。
5.資本主義政府は、資本蓄積、多国籍企業、化石燃料寡頭支配者、全般的商品化と自由貿易の役に立つように行動中だ。
6.「グリーン資本主義」「炭素市場」「相殺メカニズム」といわゆる「持続可能な市場経済」に関する他の操作はほとんど役立たずであることが明らかになった。(注『人新世の資本論』P68〜69にデータあり)
7.破局を避けることができる唯一の有効なオルタナティブは、急進的なオルタナティブ・反資本主義、エコロジカルな社会主義だ。
8.エコソーシャリズムは、マルクスに依拠していると主張するものの、生産力主義モデルとははっきりと決別する。集団的収用は不可欠だが、生産力それ自身もまた転換されなければならない。すなわち(a)そのエネルギー資源の変更(化石燃料に代えて再生可能なものに)によって、(b)世界のエネルギー消費の削減によって、(c)商品生産の削減(「脱成長」)によって、また無益な活動(広告)と有害な商品(殺虫剤、戦争の兵器類)の除去によって、(d)計画的な旧式化に終止符を打つことによって、だ。
9.エコソーシャリズムに向けた移行の達成は、二つの基準、つまり現実にある必要を満たすこと、および地球の環境的均衡に対する尊重、に導かれた民主的計画化を必要とする。
10.これは真の社会革命を必要とする。
11.エコソーシャリズムは未来のための構想であると同時に、今ここにある闘争に向けた一つの戦略だ。
12.この闘争の主体は誰か? 前世紀の労働者主義的/工業主義的教条はもはや通用しない。衝突の最前線に今いる勢力は、若者、女性、先住民衆、農民だ。諸労組もまたそこここで関わり始めつつある。
13.われわれは、「崩壊主義者」とは異なり、われわれは、未来は決まっていないと考える。「闘う者は負けるかもしれない。しかし闘わない者ははじめから負けている」のだ。

(二)脱成長論とは

脱成長論は、フランス等ではかなり議論の的になっている理論であるが、その主張には幅があり、ポストモダン的な近代的経済成長を全否定する主張から左派エコロジストの主張まで存在し、エコ社会主義派からは、「剰余価値から使用価値への生産成長の質の転換」が唱えられている。
ここでは入口としては、「脱成長論」を資本主義の経済成長への依存からの脱却として考えたい。

(三)エコ社会主義と脱成長が注目される時代背景

ポストモダン的な響きが強かった「脱成長論」が俄然注目を浴びた根拠は、1989年以降、あるいは2008年リーマンショック以降、帝国主義の独占的世界支配が崩壊し始めたことによるのではないか、と思う。そもそも先進国(帝国主義国)の生活様式は、従属国(グローバル・サウス、新植民地)の犠牲の上に成立し、地球全体では分かち合うことが不可能な文明であった。先進国の独占支配の崩壊が、その問題を現実のテーマとして浮上させたのである。
他方、かつてエコロジーと言えば、現在は生活に困窮していない中間層が、将来の地球環境の破滅を心配しているような印象があった。ところが、実際に地球環境の破壊による影響が現実化すると、Covid-19パンデミックや異常気象による自然災害が示すように、甚大な被害を受けるのは従属国や低所得層の民衆であった。ここに現在、多数の人々が環境に対してラジカルな問題意識を共有し始めた根拠があると思われる。
(1月10日/つづく)

愛知連帯ユニオン
佐藤 隆

伊方原発3号機仮処分異議審
第一回で即日結審

松田 忍

伊方原子力発電所(愛媛県)3号機の運転を認めない判断をした広島高等裁判所の仮処分決定について、広島高裁の別の裁判長が住民と電力会社の双方から意見を聴く「審尋」という非公開の手続きが12月24日、おこなわれた。
四国電力の伊方原発3号機をめぐっては、昨年1月17日、広島高等裁判所が地震や火山の噴火によって住民の生命に具体的な危険があるなどとして、山口県の住民の申し立てを認め、運転を認めない仮処分の決定を出したが、これにたいして四国電力は広島高等裁判所に異議申し立てをしていた。
四国電力は仮処分の決定で、原発の敷地近くに活断層がある可能性が否定できないと判断されたことについて「決定は誤りで、科学的見解を踏まえ、原発近くに活断層はない」と主張した。
一方、住民側は物理探査に詳しい専門家などを呼び、@得られるデータの量が極めて少ないAデータの精度が低く不正確であるBその結果としてデータの解釈が容易でなく、異なった解釈や誤った解釈をしてしまう危険があるなどと、四国電力の主張の根拠となった調査には重大な欠陥があると主張した。

決定の交付は3月18日

審尋の手続きは、12月24日の1回で即日終了し、裁判所は今年3月18日に判断を示すとした。
仮処分はすぐに効力が生じるため、仮に四国電力の主張が認められて決定が取り消されれば、伊方原発3号機は法律上、運転できるようになる。がしかし逆に住民の主張が認められれば、運転できない状態が続くことになる。
広島高裁は四国電力の異議申し立てを却下せよと、強く求めていこう。

84歳の独り言―出会った人びとE
「国賊」の母の背中を見て育つ

大庭伸介

1928年3月、14歳になったばかりの少女が母親と共に札幌警察署に連行され、壁1つ隔てた別々の部屋で拷問を受けた。少女は住所と名前しかしゃべらず、大声で泣いて抵抗した。母親は上半身を裸にされて下ばきが真っ赤に染まり、全身が腐ったカボチャのようにブクブクになった。しかし何を尋ねられても「知らない」「忘れた」でとおした。
 特高警察は娘の泣き声が母親の耳に、母親の呻き声が娘に聞こえるように仕組んだのである。母親の名は九津見房子、娘の名は一燈子。
 労働農民党の代議士山本宣治は札幌裁判所の公判を傍聴し、房子に面会した。彼は治安維持法の改悪(死刑と目的遂行罪の導入)を審議する場で、官憲の残虐ぶりを暴露し糾弾した。そして右翼の凶刃に倒れた。
 一燈子は幼い頃から労働組合の幹部である両親の生活基盤が安定せず、争議の指導で家をあけることが少なくなかったので、知人に預けられて転々として暮らしていた。小学校も4年間しか通えず将来に不安を抱き、自分で働いて収入を得たいと思った。そのために日本共産党の合法機関紙『無産者新聞』を、阪神電車野田駅前で販売したりしていた。
 やがて房子は連れ合いの三田村四郎と東京で地下生活に入った。一燈子は母親を「おばさん」と呼ぶように指示され、近所の子どもと口をきくことを禁じられた。
 1928年の初頭、三田村は共産党北海道地方委員長として同地に赴いた。母娘もそれに続き、間もなく囚われの身となった。
 私が大竹一燈子(結婚して大竹姓)さんと初めて顔をあわせたのは1984年、『母と私 九津見房子との日々』(築地書館)の出版記念会の席上である。同書は子どもの目に映った戦前の革命運動史であり、苦難を生き抜いた少女の成長物語である。  2012年に発行した拙著『レフト 資本主義と対決する労働者たち』を最も喜んでくれたのは、99歳の大竹さんであった。
 彼女はかねてから「新左翼」も含む戦後の運動が、戦前の運動の失敗から何も学ぼうとしていないことを嘆いていた。同書がそうした問題意識にもとづいて書かれたことを知っていたのである。
 その頃、大竹さんは足を骨折して退院した直後で、次女の家に寄寓していた。深夜大きな音がしたので目を覚ましたら大竹さんが900グラムもする同書をトイレの中で手から滑り落とした音であったと、次女の方が言っていた。
 誰にも優しく、そして鋭い観察眼を備えた大竹さんは、革命のために地を這うような苦しみも厭わない「国賊」の忘れ形見にふさわしい存在であった。(つづく)

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