未来・第309号


            未来第309号目次(2021年1月7日発行)

 1面  反貧困・沖縄・原発で菅政権を倒そう

     「地元合意」を許さない
     老朽原発廃炉 1・24関電本店前へ

     関生弾圧 加茂生コン事件判決
     裁判長はまちがっている

     辺野古埋めたては違法
     海上抗議行動で果敢に訴え

 2面  2020年教科書採択
     育鵬社教科書が激減
     草の根保守、維新、安倍・菅に打撃

 3面  「骨格提言」の完全実施求める
     2020大フォーラムが全国ネット集会
     10月23日      

     市東さんの請求異議控訴審
     控訴棄却の反動判決
     12月17日 東京高裁     

 4面  人民主体の共産主義運動を
     革共同首都圏委員会からの訴え

     #Me Too運動に学ぼう
     党内性暴力事件 真の謝罪のために@
     石川由子

 5面  優生保護法裁判
     仙台・大阪地裁の違憲判決土台に「除斥期間」適用を打ち砕き、
     国賠訴訟運動の新たな前進を

     狭山市民のつどいin 関西のよびかけ

 6面  維新の「広域行政一元化」を追及
     住民投票反対運動が継続

     コロナ禍の教育問題は社会の問題
     桜井智恵子関学大教授が講演

     84歳の独り言―出会った人びとD
     少年の志を生涯貫いて生きる
     大庭 伸介

     (冬期カンパのお願い)

     訂正とおわび

       

反貧困・沖縄・原発で菅政権を倒そう

「地元合意」を許さない
老朽原発廃炉 1・24関電本店前へ

コロナ対策を放棄し人々の命を危険にさらす菅政権の支持率が急落している。他方で学術会議問題での強権的手法、辺野古土砂投入、原発再稼働への動き。菅政権の新自由主義攻撃を、反貧困・沖縄・原発のたたかいで打ち砕き、政権打倒を早期に実現しよう。

原子力事業本部、町役場に向けデモ行進(12月9日 美浜町)

11月23日、関電本店前を出発した「老朽原発うごかすな! 大阪・関電本店前〜美浜町役場・関西電力原子力事業本部200qリレーデモ」は大阪〜京都〜滋賀〜福井とつなぎ、12月9日、美浜町に到着した。このリレーデモには、のべ千数百の人が参加し、いく先々で「老朽原発うごかすな!」の声を大きくあげた。そして、わざわざ家の前に出てデモ隊を歓迎する人や、通行する車から手を振ったり、クラクションを鳴らしたりしてエールを送る人など多数あり、また、カンパや差し入れもあった。デモ隊への妨害などほとんどなかった。本当に「老朽原発うごかすな!」は圧倒的な人々の声であることを実感した。
美浜町は、この関西・福井全域にひろがる「老朽原発うごかすな!」の声を無視し、挑戦するかのように12月9日美浜町議会の原子力発電所特別委員会の開催をぶつけてきた。この原特委で、再稼働推進の2件の請願と反対の10件の審査をおこない、再稼働同意に一歩踏み出すというのだ。老朽原発うごかすな! 実行委員会や東京からの人たちが現地に泊り込んで、抗議闘争にたった。
午前8時過ぎに町役場前に集まり、ただちに抗議闘争を開始。あろうことか町当局は、本日の原特委は傍聴は12名で、請願の紹介議員4名と報道関係者8名で一般の傍聴は認めないという。こうした理不尽な対応に対して抗議し、一般傍聴を認めさせた。やがて福井県内からや、伊方原発反対運動をたたかう人も集まり、傍聴闘争と役場前での抗議闘争を同時並行でおこなった。11時30分ごろ傍聴闘争に参加した仲間が帰ってきて、原特委の報告をおこなった。「2件の再稼働推進の請願と10件の再稼働反対の請願を原特委で審査したが、合計12件の請願をわずか90分で審査するという、結論ありきの態度だ。原発推進・原発のおこぼれを得るためには何も考えないという姿勢に終始し、2件の再稼働推進の請願を採択し、10件の再稼働反対、慎重審議を求める請願を不採択とすることを賛成多数で採択した。本当に許せない」という報告に怒りが燃え上がった。

町役場へデモ

午後1時、JR美浜駅前にバスや、車、JRを使って、福井や関西一円などから続々と参加者が集まり、その数200人以上。ただちに町内デモで町役場に向かう。狭い路地のため長蛇のデモになった。美浜町当局は、役場前の広場の使用を認めず、役場前の道路でひときわ大きな怒りのコールをあげた。
代表者が庁舎内に入り、町長に申し入れ。その間、中嶌哲演さん、若狭町の石地優さん、反対派請願の紹介議員を務めた河本猛さんが発言した。特に石地さんは12月4日の大阪地裁で大飯原発3・4号機の(2面につづく)

1面から続く

設置許可取り消しを勝ち取った裁判の福井からの原告。石地さんは、「美浜町議会は12・4判決を受け、原告側からの説明の機会も設けず、被告=国(規制委員会)からだけ説明を受けている。こんなことは許せない」と弾劾した。
その後、関電原子力事業本部に向けてデモを再開。原子力事業本部こそ、関電の原発推進の総本山であり、関電の原発マネー不正還流に関係した人物の多くはこの事業本部の関係者だ。
この日の行動には多くの美浜町住民が、案内ビラを見て参加していた。また、われわれのバスの運転手に「原発反対だ」と声をかけてくれる人まで現れた。

美浜町議会

美浜町議会に抗議(12月15日)

12月15日、美浜町議会は定例会を開催。9日の原特委での2件の再稼働賛成、10件の反対の請願の採決状況が報告され、1件ずつ討論・採決がおこなわれた。老朽原発うごかすな! 実行委員会は、この日も抗議闘争にたった。
この冬一番の寒波の襲来のなか、朝8時過ぎに町役場に到着、傍聴券を獲得した。9時前から役場前で抗議闘争。木原壯林さんが、マイクを取って、徹底的に美浜町、町議会を弾劾。参加者が口々に老朽原発うごかすな! とアピールした。時折吹く突風と雪に悩まされながら、それを吹き飛ばす熱気あふれるアピールが続いた。役場前にある郵便局にきた女性が「動かしたらあかん。原発反対や」と声をかけてくる一幕もあった。
10時から議会傍聴に入り、残った人が外で抗議闘争を続行した。議会内では紹介議員を務めた河本猛議員、松下照幸議員が、理路整然と老朽原発再稼働に反対する理由を述べた。再稼働賛成派の論拠は、とおり一辺倒の「原発は国策」、「世界一厳しい規制基準に合格した」、「町の経済を考えれば再稼働しかない」というものである。河本、松下議員の討論など関係ないかのように、2件の再稼働に賛成の立場の請願については、賛成多数で採択した。許せない。 老朽原発再稼働の問題は、ひとたび大事故を起こした場合、美浜町だけでなく若狭一帯、関西全域、中京地方の人々の人生を大きく左右する問題であり、わずか10数人の議員が決められることではない。
議会終了後、松下議員、河本議員から本会議の報告を受け、最後に大きな怒りのコールをあげ、この日の行動を終えた。
美浜町議会は18日に、全員協議会を開き、賛成多数で町議会として再稼働に同意することを決め、美浜町長にその旨報告した。
高浜町議会に続いて、美浜町議会も、再稼働に同意したことになるが、われわれは絶対あきらめないし、屈しない。

1〜3月方針を決定

老朽原発うごかすな! 実行委員会はリレーデモの成功を受けて、12月13日第9回実行委員会を開催し、リレーデモを総括し、地元同意をめぐる重大な情勢に対して、来年1〜3月過程の、闘争方針を確認した。
関電は来年1月に美浜3号機、3月高浜1号機の再稼働を狙っている。福井県が再稼働の前提条件としている「使用済み核燃料の県外搬出先候補を提示」について、青森県むつ市にある東京電力ホールディングスと日本原電の中間貯蔵施設を共同利用する案が浮上している。国=経産省もそれを後押しすることを明らかにしている。むつ市長は、今のところその動きに対して、不快感を表明している。いずれにしても予断を許さない状況である。
それに対して、1月大阪、3月高浜で、「関電よ、老朽原発うごかすな!」を掲げて大集会が準備されている。
1月24日(日)、「関電よ、老朽原発うごかすな! 大集会」を大阪・関電本店前でおこない、その後梅田方向へのデモで、広く訴えようというもの。また、3月20日ないし21日に福井県高浜町内で全国集会が準備されている。
情勢は、待ったなしの行動を求めている。なんとしても老朽原発の再稼働を止めるために、今こそ行動に立ち上がろう。
「老朽原発うごかすな!」を掲げてこの1年間たたかい抜いてきた総決算である。全力で1・24関電本店前に結集しよう。(仰木)

関生弾圧 加茂生コン事件判決
裁判長はまちがっている

12月17日、加茂生コン第1事件の判決があり京都地裁(柴山智裁判長)は執行委員のAさんに懲役1年、組合員のBさんに懲役8月、いずれも執行猶予3年という不当判決をくだした。この弾圧は一連の関生弾圧の一環で、正当な組合活動を強要未遂として関生の役員や組合員を逮捕・起訴した事件。2017年10月、加茂生コン(京都府木津川市)で常用的な日々雇用として働いていたミキサー運転手が組合に加入して団交を申し入れたところ会社はこれを拒否、さらに子どもの保育園入園に必要な就労証明書の交付も拒んだ。これらを関生は不当労働行為として抗議し、偽装閉鎖をたくらむ会社の監視活動を始めたというのが経過である。
判決は、正当な組合活動を「脅迫の実行行為だ」と決め付け、一連の会社による不当労働行為を不問に付した。関生は「憲法28条、労働基本権保障と労組法1条2項刑事免責を侵害する暴挙だ」と弾劾。組合員のBさんは「裁判長はまちがっている」と語った。

辺野古埋めたては違法
海上抗議行動で果敢に訴え

名護市辺野古の浜より「12・14海上抗議行動」に向かうカヌーチーム

11月27日 名護市辺野古の新基地建設を巡り、県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法として、県が裁判の取り消しを求めた「抗告訴訟」の判決が那覇地裁(山口和弘裁判長)であった。裁判長は「訴えは法律上の訴訟に該当せず、不適法で許されない」として県側の訴えを却下した。国交省裁決が違法か適法かの判断をせず、裁判の入り口を巡る論争で門前払いした。
県は控訴する見通し(12月11日、県は福岡高裁那覇支部に控訴した)。玉城デニー知事は「地方自治の尊厳はなきものに等しいと司法が示しているものだ」と批判した。
12月8日 沖縄防衛局は、辺野古新基地建設の埋め立て現場北側の「K9護岸」にスパット台船を設置した。これにより土砂を積載・運搬するランプウェイ台船が従来の1隻から2隻まで接岸できるようになった。台船設置について市民からは「名護市安和からの土砂搬出の量が現場に投入する量を上回っているための対応だろう。やりたい放題だ。絶対に許せない」と怒りの声が上がった。
9日 キャンプ・シュワブゲート前で、「辺野古障がい者のつどい」実行委員会のメンバーが辺野古新基地建設断念を求めるアピール文を読み上げた。3日からの「障害者週間」に合わせて集会を5日に開く予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止とし、規模を縮小した形でアピールした。同実行委員長で視覚障がいがある渡嘉敷とかしき綏秀すいしゅうさんは「戦争で真っ先に犠牲になるのは障がい者だ。新たな障がい者を生む戦争は最大の暴力だ」と訴えた。参加者70人は連帯の拍手で応えた。
11日 名護市辺野古の大浦湾に、洋上で土砂を積載するための大型船「デッキバージ」(全長141m、最大幅36m)が設置された。9千立方mの土砂の積載が可能で、土砂運搬船が来れない日でも作業を継続できる。(土砂運搬船8〜9隻分の土砂の積載が可能) 
14日 沖縄防衛局が辺野古の海へ土砂投入開始して2年となったこの日、ヘリ基地反対協は辺野古沖の「K8護岸」前で「12・14辺野古海上抗議行動」をおこなった。50人が抗議船6隻、カヌー27艇、ゴムボート1隻で、プラカードを掲げ、埋め立て工事中止を訴えた。シュワブゲート前でも市民が座り込み、抗議の声を上げた。
また、「K8護岸」にも新たなスパット台船が設置されているのが確認され、「デッキバージ」でも土砂を積み込む作業が確認された。2年間で土砂投入の状況は、工区「2―1」が埋め立てられ、工区「2」で6割程度埋め立てが進んでいる。(杉山)

2面

2020年教科書採択

育鵬社教科書が激減
草の根保守、維新、安倍・菅に打撃

12月12日、「育鵬社激減 全国報告集会2020」(主催「戦争教科書」はいらない! 大阪連絡会)がエルおおさかでズームを含めて120名を超える参加で開催された。育鵬社を激減に追い込んだ全国の仲間といっしょに勝利の喜びをコロナ禍がなければわかちあえたのだがしかたがない。次の機会に期待したい(写真左)

全国シェアが激減した育鵬社

15年には育鵬社の歴史教科書は全国シェアが6・3%で採算ラインとされる10%をうかがう勢いだった。しかし、全国各地のたたかいによって2020年にはわずか1・1%にまで激減した。公民は15年に5・7%だったが、20年には0・4%にまで激減した。歴史的大勝利である。

大都市圏で敗退

育鵬社は、2001年以来採択し続けてきた東京の都立校、武蔵村山市、小笠原市、同じく愛媛県の県立校、松山市、新居浜市、四国中央市、上島町で全滅した。生徒数の多い神奈川県の横浜市、藤沢市でも全滅。大阪府下は大阪市、東大阪市、四条畷市、河内長野市で全滅したが、泉佐野市だけ公民が採択された。採択制度の民主化を裁判闘争をとおして進めていた広島県呉市でも不採択に追い込んだ。名古屋市の攻防は激しかった。名古屋市に初めて育鵬社を採択させようとする河村市長の政治介入に対して市民が続々と決起して採択させなかった。これらは全国各地の地道なたたかいの成果である。

草の根保守とのたたかいが全国で

11年7月、大阪府内で唯一、東大阪で育鵬社の採択がクーデターのように強行され、15年には大阪市でも育鵬社の採択が強行されていった。

東大阪市

東大阪ではこれとたたかうためにオール東大阪市民の会が結成され、育鵬社不採択にむけてのたたかいが開始された。12年、政治的に批判するだけではダメであり、育鵬社教科書を実際に読んで批判することからたたかいは始まった。読んでみると意外に抵抗なくすっと読めてしまうことに気がついた。これでは子どもたちに育鵬社の内容がすりこまれてしまうと2年以上、育鵬社教科書を読む会を続け、それは11回に及んだ。その間、育鵬社教科書に反対する署名運動は6500筆に積み上がった。この蓄積のうえに15年から行動を開始した。
東大阪市役所前でのビラまきは猛暑や厳寒のなかでも続けられ、東大阪市教育委員会や市長公室等との交渉も数えきれないくらいだった。
また、情報開示請求も開始した。当初、東大阪市は教科書採択に関する情報をほとんど開示せず、選定委員会当日にならないと、誰が選定委員なのかもわからないありさまだった。これではいけないと情報開示について東大阪市と争い、情報開示審査会で勝利し、以後、東大阪市は採択前の全資料を開示してくるようになり、東大阪は全国でも最先端の透明性となった。これらのたたかいのなかで地域にねざした運動が生まれ、今、息づいている。
このたたかいは『オール東大阪教科書運動報告集 教育の独立を取りもどすまで 2011年〜2020年 育鵬社不採択への共闘の軌跡』として刊行されている(1冊500円)。これは全144ページの東大阪での活動の全記録である。ぜひ一読を。

大阪市

大阪市でも悔しさをバネに育鵬社不採択にむけてのたたかいが開始された。「子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会」(以下、大阪の会)はフジ住宅による教科書アンケート水増し事件の追及に取り組むことで状況を変えていき、大阪市教育委員会の不適切な採択過程をあばいていった。このなかで採択区分を元に戻していくたたかいもおこなわれた。大阪市は元々8ブロックで採択されていたが、14年に橋下市長(当時)が1ブロックにしてしまい、15年の育鵬社総取りを許したのである。大阪の会は採択区分の分割を求める陳情書を提出し、大阪市議会で採択させることができた。この結果、吉村市長(当時)は、分割を認めざるをえなくなり、19年から4ブロックに分割することができた。 さらに、学校現場が明確に育鵬社にNO!を突き付けたことである。育鵬社の教科書を使わされてきた現場の教員たちが育鵬社の問題点を多数、学校調査に書き込んでいった。そのため育鵬社は歴史も公民も低い評価となり、批判のコメントも多数書き込まれるにいたったことも大きい。

全国からの報告

教科書闘争は横浜市、藤沢市、石川県、滋賀県、広島県呉市、愛媛・新居浜市、香川県、山口県防府市、岩国市、下関市、北九州、熊本のたたかい等々全国でたたかわれている。集会ではこれらの一部が各地からズームで報告された。詳細は『中学校教科書採択全国報告集2020 育鵬社を激減に追い込んだ市民のたたかい』(編集・発行 大阪の会)に詳しい(1冊1000円)。これは全156ページで育鵬社を激減に追い込んだ全国の活動記録である。これもお読みいただければ幸甚である。

草の根保守を後退に追い込む

全国各地の草の根保守とのたたかいが進む中、草の根保守の運動は15年以後、急速に衰えていった。現在、日本会議の強い影響下にある日本教育再生機構の機関誌『教育再生』は刊行が停止し、ホームページの更新もストップし、日本教育再生機構・大阪は昨年、正式に解散した。
日本教育再生機構は一般財団法人だが、これを財政的に支えたのが「教育再生首長会議」(以下、首長会議)である。「首長会議」には18年現在で131の自治体の首長が参加している。現在の会長は東大阪の野田市長である。
情報公開で、14年度から3年間で計1220万円が事務局委託費として「首長会議」から日本教育再生機構に流れていたことが判明した。これは首長会議の年間収入の実に7割に相当する額である。東大阪市などの各自治体で特定の教科書を支持することが許されるのかと議会質問され、首長会議から日本教育再生機構への資金の流れは事実上止められたといえる。草の根保守とのたたかいはこれ以外にさまざまな領域で進んでいる。その詳細は上記2つの報告集に記載されている。

菅政権とのたたかい

菅政権は安倍政治をひきつぐと表明している。育鵬社とのたたかいはとりあえず勝利したが、たたかいはこれからである。地域に根ざした運動にさらに命を吹き込み、より多くの人たちと連帯して勝利への道をきりひらいていこう。(三船二郎)

3面

「骨格提言」の完全実施求める
2020大フォーラムが全国ネット集会
10月23日

「『骨格提言』の完全実現を求める2020大フォーラム」は、10月23日に東京2カ所、埼玉、群馬、兵庫の5カ所の会場と個人や事業所をインターネットのzoomでつないでおこなわれました(写真)。コロナウイルス感染の恐れのため集まりにくいのであれば、いっそ全国をネットでつないでしまおうという発想です。
メッセージも含めた連帯のあいさつが多くの方々からおこなわれました。(左下一覧)
また、緊急アピールとして、関西在住の難病の方から、24時間人工呼吸器をつけているにもかかわらず、行政から夜間の介助が保障されていない、という悲痛な訴えがありました。

いのちの選別を許さない!

北海道から発言を予定していた堀さんは、ヘルパーが新型コロナウイルスに感染し、「濃厚接触者」として入院させられたため、メッセージを寄せられました。
多くの発言の中で、命の選別の危険性が語られました。新型コロナウイルスパンデミックのなかで、医療崩壊対策として治療すべき対象の選別が語られ、他方、京都でのALS女性の嘱託殺人事件が明らかになるという状況があるからです。
京都で「安楽死」報道問題にも取り組んでこられた小泉さんは、「医者・医療は、人の命を救うことを全うしてください。報道は、生きる可能性をみいだせる報道をしてください。国は人が生きるための手助けをするような法制度を作ってください。これ以上、私たちを『死』へと追いやらないでください」と語られました。
精神科病院や入所施設での虐待についても、多くの方から発言がありました。兵庫県では、今年になって、神出病院をはじめ五カ所での事件が明らかになっていると報告されました。津久井やまゆり園事件に取り組んでこられた神奈川県の鈴木さんは、「今、新型コロナウイルスが原因で、権利擁護活動として施設に出向いて面談をするオンブズマンによる訪問相談会も中止となっている状況」があり、虐待の危険性が高まっていることを指摘されています。
特別支援教育へとふるい分けられていく子どもたちの増加。通所施設は増えるのに街中を歩く障害者は増えない。病院や施設で長い年月隔離される状況の問題が語られる一方、地域ではヘルパー不足が深刻になっていることも語られました。
介護保険制度では労働基準法で定める労働条件が保障されないということで、ヘルパー訴訟を起こした伊藤さんからは、訪問介護のヘルパーは15人募集しても1人未満しか応募のない状況、ヘルパーの平均年齢が58歳、65歳以上が39%という深刻な状態が語られました。
65歳(特定疾病の場合40歳)をもって、介護保険を「障碍者」に優先適用させる政策とたたかっている方々の発言も力強くおこなわれました。千葉市により、65歳で障害福祉による介助を打ち切られた天海さんの裁判闘争は、大詰めを迎えています。大阪の古井さんは「この政策は障害者の人権をはく奪するもの」と語られました。
大阪の尾下さんは、難病者への支援を保障しない制度に対して、「診断名ではなく、その人の日常生活上の障壁自体により、支援は組み立てられるべきです」と批判されました。 東京の李さんからは、在日無年金の問題を放置し続ける政府への怒りが語られ、沖縄の高橋さんからは米軍基地によって被害を受けてきた沖縄が新型コロナウイルスについても米軍が感染の大きな原因になっていることを指摘されました。
国連のキム・ミヨンさんは、メッセージの中で、「人間の歴史を振り返れば、障害者は絶えず困難と闘ってきました。困難がもたらすのは絶望ではありません。危機の中に創造的知恵を見出し、新たな時代を拓くことができるはずです。危機に直面する時、何にも増して大切なのが連帯の精神です。逆境に立ち向かう私達を絶望から救うもの、それが連帯です。希望を見失ってはいけません。希望あるところに敗北はありません」と檄を飛ばされました。
(柳川和夫)

2020大フォーラム 発言者一覧

連帯のあいさつは次の方々から
・反貧困ネットワーク代表世話人 宇都宮健児さん
・国連障害者の権利に関する委員会委員 キム・ミヨンさん
・旧優生保護法被害者・東京訴訟原告 北三郎さん
・65歳問題訴訟原告 天海正克さん
・日本障害者協議会常務理事 増田一世さん
・病棟転換型居住系施設について考える会代表・杏林大学教授 長谷川利夫さん
・障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会事務局長 太田修平さん
・介護福祉士・ホームヘルパー国賠訴訟原告 伊藤みどりさん
・介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット共同代表・弁護士 藤岡毅さん
・れいわ新選組参議院議員 木村英子さん
・れいわ新選組参議院議員 舩後靖彦さん
・立憲民主党参議院議員 横澤高徳さん
・日本共産党参議院議員 倉林明子さん(衆議院議員 宮本徹さんと登壇)
・社会民主党参議院議員 福島みずほさん

リレートークは次の方々から
・全国公的介護保障要求者組合福岡支部 山岸久美江さん
・インクルネットほっかいどう 堀楓香さん
・あいえるの会(福島) 白石清春さん、橋本広芳さん
・障害者自立生活センターほっとたいむ(群馬)
・埼玉障害者市民ネットワーク
・年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会代表 李幸宏さん
・神奈川県障害者自立生活支援センター理事長 鈴木治郎さん
・日本自立生活センター(京都)自立支援事業所所長 小泉浩子さん
・兵庫県精神障害者連絡会 高見元博さん
・脳性まひ者の生活と健康を考える会 古井正代さん(大阪)
・線維筋痛症友の会 尾下葉子さん(大阪)
・ピープルファーストヒロシマ 近藤竜治さん
・ぐっどらいふ(愛媛) 森井正基さん
・沖縄県自立生活センター・イルカ
・沖縄県精神保健福祉会連合会事務局長 高橋年男さん



市東さんの請求異議控訴審
控訴棄却の反動判決
12月17日 東京高裁

12月17日、東京高裁は市東孝雄さんの請求異議控訴審で、控訴棄却の不当判決を下した。しかも、これまでに市東さんが勝ち取ってきた強制執行停止決定までをも取り消し、強制収用に道を開く強硬姿勢を示した。
そもそも本裁判は、2016年の最高裁による市東さんへの土地明け渡し命令のあまりの不当性を司法自らが否定し得ない点に根拠を置く、異例の裁判であった。にもかかわらず、2018年の千葉地裁の不当判決に続き、今回も不当性を開き直って見せたのである。
不在地主であるNAA(成田空港会社)に買収権がないこと、NAAによる書類の偽造、強制的手段を二度と取らないという社会的な誓約、今日的な空港需要の激減。これら一切を無視し、司法が法律を踏みにじったのである。
この日は150人の人々が東京高裁に集まり、公判前の情宣とデモ・傍聴・報告集会がおこなわれた。参加者は上告・強制執行停止申し立てを通してたたかい続ける市東さんと共に歩み続ける決意を固めた。

4面

人民主体の共産主義運動を

革共同首都圏委員会からの訴え

11月の総会呼びかけ文にもありますように、世界、そして、国内の情勢は、私たち共産主義者と自覚する者にとって、一時の猶予も与えていません。人民が苦しみ、必死でたたかっているのです。人民に対して向き合い、責任を持った運動が必要なことは、論をまたないでしょう。
私たちは2019年末、男性同志の中から「精神障害者」でもある女性に対する性暴力を生み出してしまいました。被害者への謝罪とともに、被害者の精神的ショックに向き合い、彼女との信頼関係を作り出すためには、数年、あるいは、それ以上の年月を必要とするかもしれません。加害者が私たちとの討論を拒まない限り、私たちは何年かけようとも、彼の自己変革を勝ち取るための努力をおこなわなければなりません。この加害者との討論が、私たち自身の人間観を問い直させ、私たち自身の自己変革ともなるでしょう。そしてこの過程は、同時に、これまでも党の中で起こり続けてきた性暴力と、それに党がどのように対応してきたのかを総括しなければならない過程です。この問題の解決のためにも、継続して責任を持つ体制が必要であることもまた、論をまたないところでしょう。
にもかかわらず、なんらの責任体制も作ることなく辞任を推し進めた旧関西地方委員会執行部の人々は、今回の性暴力事件から逃亡したということです。また、なんらの運動の方向性をも示さない彼らの態度は、世界の人民の苦闘にも背を向けるものです。

責任を放棄した旧革共同関西地方委

私たち首都圏委員会は、7月の臨時総会に対して、中止を要請し、当日にも質問状を提出し、彼らの姿勢を問いただしました。彼らは、私たちの問いかけを、ことごとく無視する態度に終始しました。
この過程で私たちが提出した文章の中で、T前議長をはじめとする人々に対して、背教者という言葉を使いました。それは、性暴力について、金銭解決を進めたり、裁判という国家の司法官僚に判断をゆだねようとする志向があったことを知るに及んでのことでした。
T前議長の7月末の辞任の言葉の中で、彼は革共同の一切を否定し、「革命は纂奪される」との文章では革命そのものを否定しました。この文章の中で彼は、「本多の暴力論は、人間がその長い歴史のなかで形成してきたさまざまな価値観や倫理観が共同体に果たしている役割をさしおいて、暴力こそが共同体形成の重要な契機であると断定するところにその特徴がある」と記しています。
人民は、自らと仲間のいのちと生活、そして、人民にとっての倫理観を追求するがゆえに、階級社会を暴力的に変革しなければなりません。これは、『共産党宣言』にも明記された提起です。
では、彼の倫理観とは、いかなるものなのでしょうか。
● 革共同、そして革共同再建協議会を支持した人々の金を使って、専従として活動してきたことについて、一言の総括もしない。
● 今回の性暴力を起こした加害者について、デマや憶測を加えた文章をばらまき、党員の処罰感情を操ろうとしたこと。
● 自らの脱落のために、性暴力事件を利用したこと。
● 上述したことをおこなっておきながら、『未来』編集や財政を握り続けてきたこと。 近代倫理の基本として言われるのは、人間を手段として用いてはならず、目的としなければならない、というカントの提起です。彼のおこなったことは、人民をただただ手段として用いているだけのことではないですか。

 

「精神障害」をもつ女性への性暴力

「障害者」である女性は、性暴力の被害者となる危険性が高いことが指摘されてきましたし、事実だと思います。この現実については、「障害者」である男性も、しっかりと受け止めなければならないことです。
性暴力被害の当事者は、あくまでも被害を受けた女性です。家族ではありません。当たり前のことを言っているように思われるかもしれませんが、「障害者」である女性は、この当然のことが無視されがちになるのです。
ですから私たちは、被害者女性に向き合い続けなければなりません。私たちの少ない経験からしても、性暴力を受けた女性との信頼関係を作り、その人の精神的な回復のためには、少なくとも数年以上のかかわりを必要とすると思います。これをやりぬかなければならないのです。

人民を主体とした共産主義運動を

共産主義とは、人民にとって、実質的な自由と平等を作り出す思想、運動として生み出されてきたはずです。今は、その対極として語られてしまっていますが。
能力に応じて働き、必要に応じて受け取る社会とは、人々がお互いに向き合い、何を必要としているのかを共有する社会でしょう。
こうした社会・世界を目指している人々が共産主義者であり、また人々からそのように受け止められなければ共産主義者としては失格である、と自ら考えなければなりません。


  ロシア革命において、ボリシェビキは、工場委員会を解体し、労働者自主管理を否定してしまいました。これがスターリン主義を生み出していく大きな契機となります。スターリンと対立して、独自に国家建設を行ったユーゴスラビアは、労働者自主管理を実質的に作り出しました。しかし、民族間の加害・被害の歴史を不問に付して社会を作り上げてきた結果、経済の低迷と帝国主義の側からの干渉も受けて、内戦となって崩壊しました。 こうした人類史が刻んだ歴史、そして、革共同から再建協に至るまでの主体的在り方を総括し、人民を主体とした共産主義運動を作り上げていきましょう。これは待ったなしです。プロジェクトを作り、年限を切って報告書を作成し、様々な人民の意見をも聞きながら、創造していきましょう。

#Me Too運動に学ぼう
党内性暴力事件 真の謝罪のために @

石川由子

私たちが1970年に、華僑青年闘争委員会の糾弾を受けてから50年が過ぎた。たたかうアジア人民と連帯できてきたのか。我々は血債を本当に償うことができたのか。その道筋として築き上げた7・7自己批判の思想は今錆びついていないだろうか。もう一度検証されねばならない。

いや7・7思想は錆びつき風化しそうな現実の中で、2019年末党内女性差別事件が起こった。深刻な女性差別、「障害者」差別事件だ。私は初めてこの話を聞いたとき、最も厳しい糾弾と自己批判を要求されるのは私たち女性解放戦線だと思った。その後の展開は違っていたが、今でもこの考えは変わっていない。
女性解放戦線の一員として私は被害者Aさんに心から謝罪します。もうずいぶん長い間私たち女性解放戦線は開店休業状態でした。党内外の女性差別を正面から見据え、それと全力でたたかってはきませんでした。党内の男性たちを教育することを怠ってきました。
加害者Xは許せるものではないが、私は「同じ女性としてただあなたと共に怒る」ことですませることができる立場ではありません。あなたの糾弾は私に向けられているのだと受け止めます。

女性解放闘争の再確立を

これまで革共同では女性の政治課題が並べられることはあったが、男性の差別意識の切開、男性にとっての女性解放闘争課題、「女性への血債」が提起されることは皆無だった。男性による女性差別、とりわけ暴力に焦点をあててシリーズで書いていきたい。ここで分析を試みることで被害者への謝罪の内実としたい。
男性による暴力を論述する際、暴力をふるう男性をモンスターにしてしまい、その内面を全く顧みない傾向があるように思う。彼らは普通の労働者であることを忘れてはならない。同じ階級の中にある差別への糾弾は、連帯の熱い呼びかけとして男性にこそ読んでもらいたい。

性暴力の告発がようやく始まった!

#MeToo運動が今、世界中で起こっている。これは2007年、家庭内で性的虐待を受けた黒人女性を支援するために始まった運動だ。黒人女性は奴隷時代より、白人男性によるレイプは日常だった。この状態は今でも続いており、差別と貧困による家庭の崩壊、家庭内暴力にさいなまれている。黒人女性にとって黒人男性の家庭内性暴力を告発することは並大抵のことではない。「犯人は父、兄弟、親族だから経済的にも精神的にも家庭が崩壊する」など、女性ならではの恐怖のために告発できないことも当然ある。さらには黒人コミュニティの問題を白日の下にさらし、家庭はおろかコミュニティの崩壊を避けたいという気持ちが強くはたらくため、その困難さは私たちの想像を絶するものだ。
メンタル支援から始まった地道な#MeToo運動は、10数年後ハリウッド女優の目に留まり一気に拡散した。数百人が集まり互いにケアしあっていた場が、著名な女優たちにのっとられる形になってしまった。もちろんハリウッドの女性たちの勇気ある行動を貶めるつもりは毛頭ない。彼女らの勇気が世界中に拡散したのは事実であり、女性たちが性暴力を告発することができるようになった意味は巨大だ。それでも後に女優たちはこの場に集まっていた黒人女性たちに謝罪したそうだ。ハリウッドの怒りの対象は超ド級の権力型性犯罪、もともとの#MeToo運動の住人の怒りの対象は黒人内部の性暴力に対して。ハリウッドは権力者を排除することで勝利とすることができるかもしれないが、黒人たちはそうはいかない。ともにBLM運動に代表される黒人解放運動の中での差別の告発であるからだ。女優たちもそのことは判ったのだろう。
#MeToo運動の真の創始者であるタラナ・バーグはヴォーグの取材に対して「性暴力に対処するということは、個々の加害者を罰することではありません。性暴力の温床となる権力や特権のシステムを解体することなのです」と言っている。別の所では#MeToo運動が「魔女狩り」のように誤解されることを危惧している。
「魂の殺人」と言われる性暴力は最も被害者を苦しめるものの一つであることは間違いない。「性」の自己決定権を侵害されることは自分自身=自我の侵害だ。自分が引き裂かれることだ。体の傷よりも深くいつまでも癒えることなく、ナイフのように体に突き刺さる。女たちは血を流しながらもその傷を「痛い」「苦しい」と声をあげて泣き叫ぶことさえできなかった。外に向けることのできない苦しみの刃を自分に向けて内罰的に心を病むしかできなかった女たち。ようやく「痛い」と叫ぶことができた! 外に向かって声を上げ怒りに転化できる! 人との連帯を求める#MeToo運動は世界中の女たちの共感をえた。

今のところ、この共感は女性の中の共感である。これはもちろん最も大事なことだ。それを受けて男性たちがどう自己変革できるかが問われている。この自己変革はきわめて意識的自覚的な行為である。(続く)

5面

優生保護法裁判
仙台・大阪地裁の違憲判決土台に「除斥期間」適用を打ち砕き、国賠訴訟運動の新たな前進を

大阪地裁(林潤裁判長)は昨年11月30日、旧優生保護法(以下、旧法)に基づいて不妊手術を強制されたとして聴覚障がいのある夫妻(70代の野村花子さん、80代の夫・太朗さん―いずれも仮名)と知的障がいのある空ひばりさん(77歳、仮名)が国に損害賠償を求めて提訴した訴訟の判決で、旧法を「違憲」と判断しながらも、手術から提訴まで20年の除斥期間が経過したことを理由に、賠償請求権は消滅したとして、請求を棄却した。
除斥期間に関し、原告側は「障がいなどで手術時に提訴することは不可能で、重大な人権侵害に対し、機械的な適用をすべきではない」と主張。これに対し判決は、「提訴できない状況を国が意図的、積極的に作り出したとはいえない」などとし、適用するのが相当と退けた。また、国と国会の立法不作為についても、「違法性が認められない」と理由を明示せぬまま断定した。
なお、違憲判断は、幸福追求権(憲法13条)への違反を理由とした点で、19年5月の仙台地裁判決に続き2例目。また、法の下の平等(同14条)への違反を理由とした点では初(19年6月の東京地裁判決は、違憲性に言及せず)。また、「除斥期間」の適用による請求棄却は、仙台地裁、東京地裁に続き3件目。

(1)原告・家族、障がい者団体の声

●野村花子さん「時間が過ぎたからというのは納得できない。苦しみはいつまでも消えない。旧法は差別的な法律。もう誰にも(望まない)手術をしてはいけない。もう一度、私たちの訴えを司法の場で考えてもらう機会がほしい。控訴したい」
野村太朗さん「判決で障がい者は司法へのアクセスに制約があったと認めたのに、20年の除斥期間を優先したのはおかしい。判決は障がい者差別だ。夢を全て奪われた。手術されたかどうかを調べる方法もなく、ずっと苦しんできた。裁判所は、障がいや長年の苦しみを理解していない」(昨年4月17日の第一回口頭弁論で)
花子さん「こんなことになってとても悔しい。私たちの赤ちゃんに会いたかった」、太朗さん(涙を流して)「何も分からないままことが進められてしまった。苦しいことがいっぱいあった」(昨年7月19日の最終口頭弁論=結審で)
花子さん「子を育て、楽しい家庭を築きたかった。知らないうちに手術された怒りは今でも抑えられない」
●空ひばりさん(77歳、仮名)の姉(弁護団を通じてコメント)「妹は長い間苦しんできた。請求が認められず大変残念に思う」
15歳の時患った日本脳炎の後遺症による知的障がいがある空さんは、65年頃、母に連れられて入院し、何も知らされずに手術を受けさせられた。92年に死別した夫にも真実を告げられないままだった。口頭弁論では、「身体を元に戻してほしい」と訴えてきた。
●障がい者団体DPI日本会議・尾上浩二副議長「司法アクセスの制約を認めておいて、結局は一律にブレーキを踏む。何度、障がい者をないがしろにするのか」
●全国被害弁護団共同代表・新里宏二弁護士(不当判決に憤りをあらわにしつつ語った)「やはり2度目の違憲判決は重い。違憲判決を積み重ね、さらに除斥期間を越える一歩を踏み出す。亡くなった人のためにもたたかう」
●大阪訴訟弁護団長・辻川圭乃弁護士「判決が旧法の違憲性を認めるのは当然で、人道的問題があるとしながら、賠償責任を認めない判決には強い憤りを感じる」

(2)「除斥期間」適用の不当性は全面的に明らか

▼野村太朗さん「除斥期間適用の判決は障がい者差別だ」
本質を端的に指摘した発言だ。知的障がいや聴覚障がいのある原告の方々が、国策の旧法下で自分が不妊手術を受けさせられたことさえ認識できなかったという実態を考えれば、健常者に対するのと同じ物差しで除斥期間を適用するのは明白な障がい者差別である。
▼「除斥期間適用」は今次判決の矛盾と破綻を露呈した。
今次判決は、「手術は生殖能力の喪失という重大な結果をもたらすのに、本人の同意を要しないという規定に合理性は認められず、幸福追求権(憲法13条)や法の下の平等(同14条)に照らし違憲」と判断した。ところが、判決は「手術から提訴まで20年の除斥期間を経過した」ことを理由に、賠償請求権は消滅したとして、請求を棄却した。
野村花子さんが手術を同意なく受けさせられたのは帝王切開した1974年であり、提訴したのは、その45年後の2019年12月だ。45年>20年である。
このように、判決は「20年」よりもはるか以前の、手術が実施された時点を除斥期間の起算点とした。これは、明らかに手術を正当化していることを意味し、「強制不妊手術=違憲」の判断と矛盾する。被害当事者が被害を受けたと認識できた時点を起算点とすべきなのにそれを否定したためだ。
「除斥期間適用」は、判決自体の自家撞着と破綻を自己暴露している。
▼判決の除斥期間適用は、「国による国民の権利侵害」と「国民同士の損害賠償」とを同一に論じる暴挙によって新たな人権侵害を生みだしている。
19年5月の仙台地裁判決における「除斥期間」適用について、市川清文弁護士は当時、次のように批判した。
国やその機関が国民に損害を与えた場合に適用される国家賠償法の訴訟に、「除斥期間」という国民同士の関係を定める民法の規定をそのままあてはめることには、違和感を覚える。国民の権利を国が侵害するという局面には、例えば交通事故のような国民同士の損害賠償などとは同一視できない、特別な状況がある。法律の規定によって人権が侵害されている時、四面楚歌の状態にある被害者がこれを覆して声を上げること自体に無理がある。
▼「除斥期間」適用は、最高裁判例に違反している。
すべての事実から明らかなように、被害当事者が、旧法を違憲・違法だと認識し、国を提訴することは客観的に不可能であった。これに対し、加害者である国は「除斥期間によって責任がない」と主張してきた。これが、著しく正義・公平の理念に反することは、議論の余地がない。
最高裁は2004年、粉塵を吸い込んだ時から時間が経って症状が現れる塵肺症の裁判で、「加害行為時から20年を数えるのではなく、被害が発生した時、すなわち症状が認められた時から20年を数える」と判断した。
そして、民法724条後段の20年の期間が経過する前に被害者の請求権行使が不可能であるか、著しく困難である事案においては、被害者救済の必要性から「正義・公平の理念」を根拠に、「20年の期間が経過しても権利消滅の効果が生じない」とした。このように、今次判決は「正義・公平の理念に反する場合は除斥期間を適用できない」とする最高裁判例に違反している。仙台・東京の地裁判決も同様である。

(3)支援の輪をさらに広げ、国賠訴訟運動の前進と勝利へ

3人の原告は、不当判決の逆流に抗して控訴を表明した。
2019年4月「一時金支給法」が成立したが、夫妻はあくまで国の謝罪を求めて申請せず、同年12月13日国賠提訴した。記者会見で花子さんは手話で訴えた。「これから結婚して子育てをしていく聴覚障害者の方々に、二度と同じ苦しみを味わってほしくない」
「支給法」による訴訟運動解体と被害者分断の策動、そして仙台・東京・大阪と続く敗訴という幾重もの困難をはね返し、今また控訴してたたかうという、国家犯罪を告発してやまない不屈の戦闘精神、「障がい者自己解放・人間解放」の叫びが私たちの胸を打つ。
原告、被害当事者の人生とたたかいに学び連帯し、大阪・仙台・東京の控訴審、神戸はじめ全国8地裁・地裁支部における裁判の傍聴応援など支援運動をさらに広げ、「国の謝罪と補償を」の勝利に向かい前進しよう。(木々 繁)

狭山市民のつどいin 関西のよびかけ

一人でも多くの市民と石川一雄さんとの出会いの場を設けようとはじめられた「狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西」も5回目を迎えます。
12月21日に開かれた第45回三者協議の報告(部落解放同盟中央本部)では、「弁護団は来年(2021年)には鑑定人尋問の請求をする」ことが明記されています。これまでの再審請求審では、多くの場合、鑑定人尋問等の証人調べがおこなわれれば再審が開始され、証人調べがおこなわれなければ棄却されてきました。2021年は、57年の長きにわたる狭山再審闘争において、1974年寺尾判決に至る控訴審闘争以来の極めて重大な山場となります。
ここでは多岐にわたる無実の新証拠を述べることができませんが、証拠を調べれば、石川さんの無実は必ず明らかになります。どうか、皆さん、石川さんの無実を共に知らせてください。第5回市民のつどいに、家族や友人をお誘いください。大きな世論で裁判所を動かすために、ご支援、ご協力のほどを何卒お願いいたします。

《第5回狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西 要項》

■とき:2021年1月31日(日)12時開場 13時開会
■ところ:大阪市北区民センターホール(JR環状線「天満」駅又は地下鉄堺筋線「扇町」駅すぐ)
■プログラム
 冤罪アピール:石川一雄さん・石川早智子さん(ビデオメッセージ)、袴田巌さん・袴田ひで子さん(ビデオメッセージ)、青木惠子さん(登壇)
 狭山弁護団報告:河村健夫弁護士(登壇)
 各地のアピール:リモート中継
 ライブ:カオリンズ、アカリトバリ、スィングマサ
 集会終了後パレード
■参加方法:会場参加(350名)/リモート参加(ZOOM使用)
 ※要予約
 ※会場参加については、ホームページ、電話、FAX、メール等、いずれかの方法でご予約下さい。
 ※リモート参加については、ホームページ(sayamakansai.com)から予約をお願いいたします。
■資料代:500円(会場・リモート共)
■感染症対策:マスク着用等、感染症予防に留意し、ご無理のない範囲でご来場ください。会場では、手指消毒のよびかけおよび検温をさせていただきます。
■賛同のお願い:賛同金1口1000円×何口でも。郵便振替口座にて受付中。
【口座番号】00990-6-333303
【口座名義】狭山再審実現しよう市民のつどい関西実行委

狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西実行委員会
【連絡先】〒653-0004神戸市長田区四番町3丁目4-32 
090-3624-8270/FAX078-576-6095

6面

維新の「広域行政一元化」を追及
住民投票反対運動が継続

12月14日、どないする大阪の未来ネット(どないネット)とSTOP! カジノ大阪の共催で、「『都構想』否決の意義と課題を考える討論集会〜万博・インフラへの大型開発投資と『広域一元化条例を問う!』〜」が開催された(写真上)
初めにどないネット事務局の馬場徳夫さんが、住民投票運動の総括を提起し、勝利を呼び込んだ無数の市民の草の根活動を継続した運動につなごう、維新が総合区と広域一元化条例で動き出したが、これにも市民パワーで対抗していこうと訴えた。次いで、夢洲懇談会の武田かおりさんからの「夢洲万博をはじめとする大型開発の莫大な資金投入への問題提起」がおこなわれた。武田さんは「大企業や一部下請けだけが喜ぶ大型開発が予定され、貴重な市民の税金が湯水のようにつぎ込まれようとしており、そのための広域一元化条例が位置付けられている。大阪市民の負担だけで3000億円にのぼり、府民も同様の負担を強いられる」と弾劾した。さらに大阪・市民交流会の平松邦夫元大阪市長が、都構想で大阪市を解体し、資産と財源を奪おうとしたが失敗した知事と市長は、その反省もなく今度は「条例」で都構想の焼き直しをたくらんでいる。住民の命と暮らしを守らない首長は、首長の資格なし、と怒りをあらわにした。
住民投票で否決された、市財産を奪い取る策動が、コロナ禍のどさくさの中で進められている。大阪市議会は12月9日、市立高等学校など21校を2022年4月に大阪府に移管する条例案を賛成多数で可決した。1500億円相当の土地や学校施設も府に無償譲渡する方針。
市民の強い憤りを背景に、当面の行動提起として、大阪・市民交流会が活動を継続し、幅広い参加ができるようにテーマ設定をおこない、街宣活動やビラ配布で問題点を訴える、大阪府の「大阪の再生・成長新戦略(案)」に対するパブリックコメントを集中させる等が確認された。
行動の第一弾として、12月19日、南森町で30人近くの参加で「広域行政一元化」に反対する街頭宣伝がおこなわれた。(剛田 力)

コロナ禍の教育問題は社会の問題
桜井智恵子関学大教授が講演

12月6日に元川西市子どもオンブズパースン室長で、現在は関西学院大学社会学部教授の桜井智恵子さんを迎えて「コロナ禍の子どもと学校教育」と題する講演会が川西市であり、感染慢延の中、会場定員の約70人が参加した。
まず桜井さんは新自由主義政策が満展開される中で、格差と全体主義が益々色濃くなる現状について幾つかの例を挙げて説明した。2012年の統計だが、子どもの貧困率は16%、卒業後は3人に1人は非正規雇用という現実がある。この中で子どもたちは強い経済のための自己責任モデルや、分ち合いより競争原理に取り込まれている。また学校教育がこれを批判できず、ますます競争社会に拍車をかけているとした。
勤務している関西学院大学はオンライン授業を続けているが、パソコンを持っていない学生が数人いた。今の学生はスマホは皆持ってるが、パソコンは無いか、あってもネットが接続できない学生がいる。スマホでは画面が小さ過ぎて授業にならない。昔の関学生はある程度裕福だったが、今は必死でバイトしてる苦学生が多い。
この日一番印象に残った話はコロナ禍、埼玉市立の全小中学校10万人が教室で、医療従事者に「感謝の意を示す」として全員で30秒拍手することになった事の報告であった。「なぜ医療従事者は困難な状況なのか」を考えるなかで、コロナ禍での医療従事者にたいする「リスペクト」も生まれるわけで、それぬきで技術的マニュアル的な授業で、「子どもの心を育てる教育活動」を真面目に考えている教育委員会には呆れ果てた。桜井さんは、子どもや教育の問題を個々の救済ではなく、社会や貧困の問題として捉えることが、問題解決の端緒であると訴えた。
後半では川西・猪名川選出の北上あきひと兵庫県会議員から、学校現場でなぜ正規教職員ではなく臨時教職員が多いのか、児童相談所でも正規職員やベテラン職員が少なく、経験のない若い職員や臨時職員が多くいるのか、そもそも全職員が少な過ぎると県当局を追及していることが報告された。
毎年秋におこなわれる連続市民講座は、テーマの一つとして子どもや教育の問題を取り上げてきたが、新自由主義政策とコロナ感染蔓延のなかで、子どもを巡る問題はますます極限化し山積みであり、社会全体で取り組まないと子どもにさらに負担を押し付けることになると実感できる講演会だった。
(大北健三)

84歳の独り言―出会った人びとD
少年の志を生涯貫いて生きる

大庭 伸介

 「労働運動をやることによって新しい世界が開けた。この中で、本当に人間らしい人生を生きていくんだ。だからどんなに苦しいことがあっても、一生かけてやり抜くんだと。自分がつかんだ新しい世界観を仲間に広めていくんだ」。
 1920年代初め、13歳で労働運動に「志願」して入った横井亀夫さんの言葉である。2001年、91歳で亡くなるまでその志を貫いた。
 横井さんは1909年東京に生まれ、小学4年から街工場で働き始めた。1924年に日本光学大井工場に入り、翌年労働組合を結成して組合事務所に寝起きするようになった。賃金の引き上げを要求し、2週間くらい工場に籠城して勝利した。
 この年、左翼労働組合の全国組織として日本労働組合評議会(評議会)が結成された。評議会の指導部はいずれも20代であった。しかし職場で運動を推進したのは、それよりも、さらに若い横井さんたちの世代であった。評議会は労働戦線を2分する勢力を誇り、日の出の勢いで発展した。
 そこに国家権力が集中的に弾圧を加えた。1928年3月、日本共産党に対する全国一斉検挙で活動家が根こそぎ奪われ、翌月には評議会も解散させられた。その前年に共産党に入っていた横井さんも逮捕され、最年少の被告となった。しかし未成年であったので、2年余の未決生活の後に保釈された。
 その頃、評議会の後身として結成された日本労働組合全国協議会(全協)は、共産党を支持する活動家だけで街頭行動に終始していた。全協をマトモな労働組合組織にすることを求めた全協刷新同盟は排撃された。それに加わった横井さんは共産党から除名された。
 以後、横井さんは山代巴の大作『囚われの女たち』(径書房)に実名で登場するように巴の連れ合いや巴の弟をはじめとする人たちを1人前の機械工に育てるために、ときには厳しく、ときにはやさしく指導した。
 戦後、横井さんは水を得た魚のように労働運動や平和運動に邁進した。1959〜60年、原水爆禁止を訴える「平和大行進」で、東京〜広島間往復1万キロ以上の全行程を歩き通したのは、50歳を過ぎた横井さん唯一人である。
 私が横井さんと知り合ったのは1977年、石堂清倫氏らが主宰する運動史研究会の席上である。後に彼を静岡に招いて、戦前の労働運動の体験を語ってもらった。
 革共同の政治局員で反戦派労働運動を組織した陶山健一さんは横井さんと親しく、横井さんも陶山さんを「非凡な革命家」と言っていた。横井さんのような誠実な労働者革命家を1人でも多く生み出すことが、人間解放をめざす労働運動を前進させる途である。 (事情によりCは欠番とします)

冬期特別カンパにご協力をお願いします

読者・支持者の皆さん。前号の『未来』で明らかにしたように、私たち革命的共産主義者同盟再建協議会は、11月下旬、全国および関西の党員総会を開催し、7月の関西臨時党員総会で「総辞任」した前関西地方委員を「解任」し、全国共同代表と関西地方委員を選出したたかう執行部を確立しました。
菅政権は「安倍政権の継承」として成立しましたが、GoToキャンペーンを展開して新型コロナ・ウイルスの感染拡大をまねき、日本学術会議会員の任命拒否やマイナンバー・カードの押し付けによる民衆監視の政策など安倍政権以上に強権的で、資本の方だけを見て民衆の生活と生命(安全)をまったく考えていない新自由主義的極悪政権です。
私たちは、菅政権の打倒とともに、すべての原発の廃炉や辺野古新基地建設阻止・改憲阻止を、大阪では維新との対決を今後とも皆さんとともにたたかう決意です。
たたかう党の「再出発」にあたり、読者・支持者の皆さんに冬期カンパとともに特別カンパのご協力をお願いします。

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訂正とおわび

◆『未来』308号1面左下写真の日付は29日ではなく30日です。おわびして訂正します。
◆『未来』308号からの再出発にあたり、記事を依頼したところ多くの原稿が集まり、309号には掲載しきれませんでした。次号以降に掲載することでご了承願います。
『未来』編集委員会