高浜町議会に抗議
老朽原発 再稼働阻止の正念場
「老朽原発うごかすな!」高浜町議会に向かってシュプレヒコールをあげる市民ら(11月6日、福井県高浜町) |
老朽原発高浜1号機を来年3月にも再稼動したいという関電、原発推進勢力の闇雲な攻撃が激化している。
高浜町は、10月30日に町主催で、「意見交換会」なるものを開いた。参加者は、内閣府、資源エネルギー庁と町内の各種団体(ほとんどが原発に群がる推進勢力)の代表だけであり、広く町民の意見を聞くという当然の姿勢もない。〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉は、このような町のやり方、欺瞞的な「意見交換会」の開催を弾劾し、抗議闘争にたちあがった。
関西一円や福井から駆けつけた人々が、口々にアピール。会場内の参加者からも、老朽原発に対する懸念や、慎重な意見が多く述べられた。町は、この意見交換会を地元のケーブルTVで流し、11月9日までに質問や意見があれば出してもらうとしている。これで、住民に対して説明を尽くしたとしようとしている。
翌10月31日、美浜町で、町主催の住民説明会が開かれた。内閣府、資源エネルギー庁、原子力規制庁、関電が出席。参加を希望する町民に対して、町が参加証を郵送し、それを持参するという形をとっており、一応町民に対して「開かれた説明会」としておこなわれた。会場前で、〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉は参加する美浜町民に、老朽原発をうごかすな! というアピール行動をした。
請願採択を強行
11月6日、高浜町議会は、継続審査になっていた「自民党高浜支部」などから出されていた「再稼動推進を求める請願」を審議するために、原子力対策特別委員会を開催した。
〈老朽原発うごかすな! 実行委員会〉は、「今日にも老朽原発について、議会としての重大な判断が出されるかもしれない」というという緊張感を持って、正午、町役場前に集まった。
この日の特別委員会は本会議場でおこなわれたにもかかわらず、「密を避ける」を口実に4人しか傍聴枠がない。うち2人はすでに関電社員が入っており、残り2人しか認めないという。私たちは、傍聴の2人を送り出したあと、その場でマイクアピールを続けた。マイクを握った一人一人が、口々に思いのたけをぶつけ、町民の意思を踏みにじり、関西一円の住民の怒りを無視する高浜町議会を弾劾した。
午後1時半に始まった特別委員会では、反対派議員が闇雲に結論を出そうとする賛成派議員と対峙し、慎重な審議を求め、継続審査を求めてたたかったが、採択が強行された。賛成多数(賛成8、反対4)で、再稼動推進を求める請願が採択された。絶対に許せない。
リレーデモの成功を
老朽原発再稼動の地元同意をめぐる正念場である。11月12日には高浜町議会本会議が予定されており、それを受けて、高浜町長は町として、正式に同意をしようとしている。地元同意を許すなの声を大きく上げよう。
なお福井県知事は、再稼動同意の前提として、使用済み核燃料の県外搬出先(候補地)の提示を関電に求めている。老朽原発再稼働をめぐる正念場である。11・23関電本店前〜12・9美浜町・関電原子力事業本部へのリレーデモを成功させ、老朽原発うごかすな! の声をひろげよう。11月23日、午後1時、関電本店前に集まろう。(仰木 明)
超危険 老朽原発うごかすな!リレーデモ
〜関電本店から美浜町の原子力事業本部まで〜
期 間:11月23日(月休)〜12月9日(水)
リレーデモ出発日 関電包囲大集会
とき:11月23日(月休) 午後1時
※集会後、梅田までデモ
ところ:関電本店前(大阪市北区)
主催:老朽原発うごかすな! 実行委員会
任命拒否は重大問題
京都の憲法集会に千人
11月3日
憲法集会in京都に1000人が集まった(11月3日、京都市内) |
1月3日、「憲法集会in京都」が円山野音でおこなわれ1000人が参加。細胞生物学者の永田和宏さんが講演した。永田さんは、菅首相による「任命拒否」は、単に科学者の問題でなく人類にとって重大問題だと話した。
学術会議法では、会員は優れた研究と実績に基づいて推薦されるとあり、判断基準は専門領域での優れた研究と実績のみであり、総合的俯瞰的というのは違法である。科学者は自分も含めて「総合的」には問題があっても専門領域では責任をとっている。
菅は学問の自由に挑戦しているというよりも学問そのものを冒涜している。学術会議は6人の任命について、徹底的にたたかうべきで、一切妥協してはいけないと強く訴えた。
大逆転で大阪市廃止阻む
ルポ 住民投票 奇跡を生んだ市民の闘い(上)
剛田 力
賛成 67万5829票(49・4%)、反対 69万2996票(50・6%)反対が賛成を1万7167票上回り、大阪市存続が決まった。政党の枠にこだわらない市民の力が下から盛り上がっていったことが勝利の最大の要因だった。「成長」をうたう維新政治のうさん臭さが暴かれた。中身のない宣伝を物量で押しとおそうとしたが、市民がたちあがってそれを阻止した。「反対」の政党もそれに背中を押され、一部は懸命に動いた。(3回連載)
「賛成」の圧倒的優位からはじまった住民投票
「議員(運動員)の数、お金、マスコミ…圧倒的物量の違いをはねのけた大阪市民の力は、本当に奇跡。」これがたたかったものの実感だ。維新の会は、極めて戦略的に政治闘争に取り組んできた。組織、広報、運動、戦力どれをとっても他の勢力とは雲泥の差がある。
5年前(2015年)の住民投票では、否決しながら、その後は維新に有利な状況が続いた。19年の統一地方選挙(知事・市長のダブル選挙も圧勝)でも、維新が議席を増やした。維新の恫喝に屈した公明党幹部が、公約の「反対」から「賛成」に転向した。
5年前にあった民主党(立憲民主)の大阪市内の議席はなくなった。菅体制の自民党本部は、反対運動に資金も人員も投入せず、府議団まで賛成になびき、市議団だけが孤立無援状態にあった。中央は支援せず、事実上市議団単独のたたかいとなった。
今回の住民投票は上から仕掛けた住民投票で、仕掛けた権力者が、圧倒的に有利。推進派には圧倒的物量がある。賛成派の維新の会と公明党は地方議員の数も多い。一方、反対派の大阪自民党、共産党、立憲の地方議員は少なく、頼りはボランティアだ。
投入した金は、「維新が投じた広報宣伝費は約4億円に上り、反対派の自民党約5000万円、共産党約6000万円と比べて突出していた」(11月1日付 読売新聞)。「大阪都構想関連に公金100億円超 府市13年以降に 人件費や選挙など」(11月1日付毎日新聞)
住民投票に関しては、テレビのCM規制がないので、維新の党は、億単位でCMを出した。大阪市は100億円を使って大阪都構想の宣伝をした。
メリットばかりでデメリットを伝えていないと批判されたように、パンフレットや説明会でも維新は、一方的に宣伝できた。その上に、マスコミも連日維新を持ち上げた。松井一郎・大阪市長、吉村洋文・大阪府知事をテレビに流すだけで、「二人ががんばっている」ように見える、橋下徹が連日援護射撃をおこなった。(2面につづく)
2面
大逆転で大阪市廃止阻む
ルポ 住民投票 奇跡を生んだ市民の闘い(上)
(1面からつづく)
(1面からつづく)
「反対多数」の情勢では、維新は住民投票自体を実施しなかった。ボールは維新の側が握っていた。橋下が「公明党が衆議院選挙で対抗馬立ててほしくないから都構想賛成するというので、衆院選より前の時期にしなきゃ意味がなかった」などネタばらししていた。維新はコロナ禍と公明の支持と「吉村人気」があれば勝てると踏んだ。
こうして、初期の世論調査の結果は約15ポイントの差で「賛成多数」。かなり絶望的な数字からのスタートだった。だから、11月1日、テレビの開票速報が22時半に「反対多数確定」を出しても、実際に反対票が賛成票を上回るまではまだ信じられないような気持だった。
投票された票の分析
今回の住民投票の大きな特徴は、投票率が下がったにもかかわらず、反対の割合が増えたことだ。前回賛成を入れた人たちが離れたといえる。全体で約1割の人が前回とは反対の票を入れた。
年齢別の比較では、「高齢者が反対し改革を止めた」とはいえない。反対多数となった結果について、いまだに「若い層は賛成が多いのに投票に行かなかったから」「高齢者が反対し改革を止めた」などとマスコミは流している。たしかに投票所でスタンディングしていても、多くの高齢者が反対票を投じていた。しかし、「若い層は賛成が多い」というのは、明らかに間違いだ。
前回の出口調査と比較すると、30代、40代の反対が増えている。20代は反対が多数になった。全世代で反対が増えたが、唯一70代以上で賛成の割合が増えた。支持政党別に比較すると、前回と比べても、政党支持率は変わっていない。維新が第一勢力で、自民が続く。民主系が衰退している。
その中で、「維新支持だが、大阪市廃止には反対」という層が増えた。自民は、支持層の反対の割合を固めた。一方、無党派の反対割合が11%増と急増した。一番大きな変動は公明党だ。公明が「賛成」に転向したことから、公明支持者の賛成が増えた。それでも反対が多数を占めた。
地域別にみると、確かに前回同様、市の北と南でくっきりと賛成・反対に分かれた。しかし 単純に南北対立ということはできない。反対票が増えたのは北部に多い。基本的には前回と変わらず、北区、西区、福島区、淀川区など、財政的に豊かとイメージされる地域での賛成が多いが、そこでも反対が増えたのが特徴。目立つのは港区の反対の急増だ。「淀川と関係ないのになぜ淀川区」という区割りの問題が大きかったとも考えられる。現職の公明党国会議員を選出しているエリアなので、賛成票はその分増えたはずだが、それ以上に反対票が増えた。
「大阪市をなくすな!」をかかげ御堂筋パレードがおこなわれた(10月10日、大阪市内) |
市民はどう対抗したか
圧倒的な宣伝物量をもつ維新に、市民が勝った。その力は、市民の危機感、熱量をもった行動だ。吉村知事に、「市民の思いのほうが強かった」「都構想は間違いだった」と言わせたように、市民の大阪市存続の思いが強く、大阪市廃止は否決された。
市民が自発的に行動を始め、工夫を凝らして「都構想」の内実をチラシにして配ったり、SNSで発信したり、街頭でのチラシ撒きやスタンディングに参加する人の数が終盤に向かって増えていった。街頭では、おばあちゃんが「一緒にやらせてもらえませんか」といって手製のプラカードを持ってスタンディングに加わってきた。終盤にかけて、この無名の市民の本気度が、情勢を大きく動かしていった。
「投票日まで1週間を切った10月27日夕刻、阪急上新庄駅(東淀川区)南口で、ケアマネジャーの真辺明彦さん(53)が行きかう人たちにチラシを差し出していた。オレンジ色のウインドブレーカーの背中には『大阪市廃止反対 地域と介護を守ろう』の文字が浮かぶ。 9月半ばから一人、路上に立った。『大阪市が廃止されたら介護保険制度は崩壊する』。やむに已まれぬ思いに突き動かされた真辺さんのような介護関係者が、市内各地の街頭で行動している」(「新聞うずみ火」より)。
平松元市長らが立ち上げた大阪・市民交流会が作ったチラシのポスティング、デザイナーがボランティアで作った1人スタンディング用ボードを持ち歩く人。手作りの横断幕を張った車が市内を走る。工夫された各自のお手製グッズ。反対の帽子被る女性が自転車で走る。他にも、それぞれがやれることをやり抜いた。
今回、学者・知識人が果たした役割も大きい。関西を中心にして130人をこえる学者が反対意見を発表、シンポジウムや記者会見、ネットやSNSでもわかりやすく発信し続けた。
国会議員がハンドマイクを抱え、自転車で走り回った。国会との間をピストン移動しながら街頭に立った。
市外の人々も続々と駆け付けた。堺からのアピール・市民1000人委員会の呼びかけに応えて、8日間で実に203人が延べ547回、西成区路地裏宣伝行動などに参加した。とりわけ投票日の投票所前でのスタンディング行動には118人が延べ202回参加。「お子さんを抱っこしたお母さんや、こうしたことを初めて体験される方が目立ちます」と報告されている。
市民連合北摂も東淀川区を中心に投票日の午後8時まで入り続けた。こうして縦横にたたかう市民に対し、維新は対応できなくなっていった。前回はすべての投票所の前に一日中張り付いた維新の運動員が、今回は一人も姿を現さなかった。維新の当日の方針は「都構想号はじめ、議員街宣車も動かす。投票所周辺のスポットをする。反対派は投票所に張り付いているだろうが、挑発に乗らずに500メートル以内の範囲を徹底して呼びかけ活動を行う。1時間に1度くらいは投票所でスポットするとか様子を見るのはあり。お城で言うと外堀を徹底的にまわるようなイメージ。反対派の挑発には一切のるな」だったという。勝負ありだった。
効いたファクトチェック
維新は他者の意見を攻撃すればするほど、自らの欺瞞や虚偽や虚構がうやむやになり支持が上がることをよく知っている。この手法を戦略的に使い、「信者」を生み出しているので、話し合いでは納得させようと思っても簡単にはいかない。ていねいに「ファクトチェック」するしかない。
マスコミや大阪市役所が、「大阪市廃止」と関係ない「大阪の成長」「二重行政の解消」を宣伝しまくった。維新のキャッチフレーズは、「大阪の成長を止めるな!」だが、大石あき子氏(れいわ新選組衆院大阪5区予定候補)は山本太郎代表と一緒のゲリラ街宣で、「大阪は全国平均と比べても他都市と比べても成長していないし、(家計消費は)低迷しています」と明らかにした。
「反対派がデマを流している」と維新は繰り返すが、告示日の取材で「反対派は『(維新府政・市政)10年間で大阪は成長していない。府のGDPも家計消費も落ちている』と言っているが、これもデマなのか」と聞かれ、松井は次のように答えた。「デマですよ。(11年に)われわれが府市一体で行政を受け持ってからは、(成長率は)確実に伸びています」。「何%ぐらい伸びて、どこの出典を見れば、書いてあるのか」という再質問に「大阪府のホームページに載せていますから見てください」と。
確かに、大阪府のホームページにある「データで見る『大阪府の成長戦略』」(19年12月版)では、維新府市一体行政が始まった11年から16年の大阪府のGDP成長率は+0・58%だ。しかし同時期の全国平均は+0・95%なのだ。大阪府の成長率は全国平均を下回っているのだ。二重行政を解消した府市一体行政(バーチャル都構想)の効果があるのならば、他府県より大阪府の成長率のほうが高くなるはずだが、結果は逆だ。
さらに、毎日新聞などが「218億円のコスト増」と報じたことが効いた。これに松井が職員を恫喝して「捏造」とまで言わせた。この常軌を逸したもみ消し″s為が報道され、「維新政治の強権性」が白日の下に晒された。(つづく)
任命拒否撤回求めデモ
これが民主主義だ
神戸
神戸・三宮センター街の中をデモ行進する市民ら(11月12日) |
日本学術会議会員6人の任命拒否での菅首相の支離滅裂な国会答弁に怒りが高まっている。12日神戸市内で、「日本学術会議任命拒否の撤回を求める市民デモ」が〈こわすな憲法! いのちとくらし! 市民デモHYOGO〉と、〈憲法改悪ストップ兵庫共同センター〉の共催でおこなわれた。
夕方6時すっかり暗くなった東遊園地に続々と人が集まる。最初に和田進神戸大名誉教授が、今回の任命拒否が学術会議の独立性を侵すものであると弾劾した。3人の大学人のメッセージでは、日本ジェンダー学会初代副会長だった上杉孝實京都大名誉教授(兵庫県在住)が、「会員構成が多様性に欠けるかの発言があったが、女性の比率は30%を超えている。学問の自由を阻むことが全体主義、戦争への道になった。民主主義の危機としてとりくもう」と訴えた。
集会宣言採択ののち、神戸一の繁華街・三宮センター街から元町駅前まで、おもいおもいのプラカードをかかげ元気よくデモ行進。コロナ禍で行動が少なくなっておりかつ緊急の取り組みだったが、予想を超える180人が結集し参加者の意気は上がった。6人の任命拒否撤回までがんばるぞ。(岸本耕志)
3面
女性国際戦犯法廷から20年
そこから学ぶもの〜国際シンポジウムに参加を
水島 良
今年12月は「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」(以下、法廷)の20周年にあたる。これを記念して12月12日、オンライン国際シンポジウムが開催される。「女性国際戦犯法廷の判決/証言を未来にどう活かすか〜いまこそ性暴力不処罰と植民地主義を断ち切るために」というタイトルが示すものは、あらためて国際的な連帯で女性への暴力の根絶と、差別・排外主義、植民地主義から世界を解放しようというよびかけである。
女性国際戦犯法廷のロゴマーク |
「法廷」が開かれるまで
1990年韓国挺対協の発足、91年金学順さんに続く各国の被害者たちの告発、それに触発されたように旧ユーゴなどの各地の武力紛争下での凄惨な性暴力に対して被害当事者たちと支援者のたたかいが始まった。96年、国連人権委員会「クマラスワミ勧告」は「慰安婦」問題の日本政府の法的責任を認め、賠償、真相糾明、謝罪、教育、責任者処罰を求めるものであった。戦時性暴力に対しての「賠償、責任者処罰」は、国際的な世論となっていった。一方、日本政府は「慰安婦」問題解決をネグレクトし、「国民基金」による分断策動を強めていた。女性たちの国際的な連帯であらたな地平を開こうと、故松井やよりさんを中心に「女性戦犯法廷」の構想が生まれ、98年始めから3年にわたり世界をかけまわる準備がはじまった。これに関わった女性たちの命がけとも言える奮闘に、心から敬意を表する。
2000年「法廷」―沈黙の歴史を破った被害者たち
同年12月8日より東京で開催され、3日間の審理と国際公聴会、最終日の12日が判決だった。会場の九段会館には右翼が押しかけたが、参加者は海外も含めのべ4855人と、熱気であふれた。海外からも多数のメディアが来日し、国際的な関心の高さを示していた。一方で、日本のメディアは一部を除いて報道しなかったばかりか、NHKの番組改ざん問題も起きた。
主催は加害国日本(VAWWーNETジャパン、現在VAWWRAC)、被害国(韓国挺対協他5カ国)、国際諮問委員会の三者からなる国際実行委員会。
判事団には旧ユーゴ戦犯法廷の判事を務めたガブリエル・マクドナルドさん、フェミニズム法学者クリスチーヌ・チンキンさん、首席検事にオーストラリアの国際法学者ウスティニア・ドルゴポルさん、旧ユーゴとルワンダの戦犯法廷でジェンダー犯罪法律顧問を務めたパトリシア・セラーズさんなど、女性の国際法の専門家が集まった。
「法廷」の中心は何よりも被害者証言にあった。8カ国(韓国、朝鮮、中国、台湾、フィリピン、オランダ、インドネシア、東ティモール)64人の被害者の壮絶な記憶が歴史に刻まれ、性奴隷制の正体が暴かれていった。専門家・研究者からは、昭和天皇が「軍の最高統帥者」として主体的に関与できた事実と戦後訴追を免れた経緯、また日本人「慰安婦」の存在の隠蔽とその背景なども証言された。2人の元兵士による加害者証言もあった。
最終日、被害者証言で始まる判決文「歴史の沈黙を破って」が2時間半をかけて読みあげられた。最後にマクドナルド主席判事が「天皇ヒロヒト、『人道に対する罪』で有罪、日本国家、有罪」と読み上げると、傍聴席は総立ち、拍手の続く中、被害者たちは涙を流し、壇上に上がり喜び合った。判事は沈黙の歴史を破った被害者の勇気を称え、正義の実現と性暴力の不処罰の連鎖を断ち切らねばと言明した。
翌01年12月にオランダ・ハーグで最終判決が下され、昭和天皇をはじめ軍司令官ら10人の被告人に対して「強かん及び性奴隷に関する非人道的犯罪」が認定された。
判決文は、未曾有の規模の戦時性暴力がなぜ起こったのか、「国家、軍国主義、ジェンダー」の項目をたてて、女性たちを天皇の戦争の手段とした日本の軍国主義と家父長制の結びつきをえぐり出した。さらに、日本政府に対しては犯罪の認定や謝罪と賠償、教育などについて、連合国に対しては、東京裁判でなぜ「慰安婦」制度が問われず、昭和天皇が訴追されなかったのかに関する機密資料の公開を求めた。
「法廷」の意義
@ ジェンダーの視点から国際法を見直す
戦時性暴力は「戦争につきもの」とされ、被害者は沈黙を強いられてきた。東京裁判では「慰安婦」被害者、植民地の女性たちへの犯罪はほとんど無視され、日本軍の法的責任も問われなかった。 ベトナム戦争の住民虐殺を裁いた「ラッセル法廷」でさえ、女性に対する性暴力は対象外だった。「法廷」は、国家中心、男性中心の国際法を「ジェンダー」の視点から見直し、そこから「罪」の有無を判断したことにある。前述のように法廷判事、検事は多くが経験と深い見識を持った女性たちであった。
A 国際法とは民衆のものである
「法廷」は、「民衆法廷」として開催された。これをもって「正式ではない」、「人民裁判だ」と否定する人々も多い。「国際法は本来主権を持つ民衆のものであり、国家や政府が義務を果たさない時に民衆が直接行動を起こすことができる。民衆法廷は国際法を市民の手に取り戻す行為」(日本検事団・阿部浩巳さん)であって、「法廷」はまさにそれを実践したものであった。
B 天皇を断罪したことの意味
何よりも重大なのは、「天皇ヒロヒト有罪」と断定したことである。東京裁判では天皇の戦争責任は問われなかった。東条など28人が戦犯として処罰されたが、その後日本政府はただの一人も裁かず、むしろ戦後政治の中心に復活した者も数多い(中曽根、岸など)。戦後の民衆の運動の中でも天皇問題は意識的、無意識的に棚上げされていた。「法廷」を準備した人々は日本国内で「タブー」ともされる「天皇の戦争責任」を国際法に基づいて厳正に認定するために何が必要か、悩み、苦闘したという。
女性たちの「戦争と暴力、性暴力不処罰」の世紀から、「平和と人権」の21世紀に変えようとした強い意志と希望の込められた「法廷」から20年。今を生きたたかう私たちにとって、そこから学ぶものは広く、深いもののはずだ。
シンポジウムでは「法廷」ドキュメンタリー、当時の判事、検事団、正義連等の講演と報告、「慰安婦」・戦時性暴力サバイバーの過去と現在の証言などがある。注目し、期待するのは、フィリピン、台湾、韓国、日本の若い世代が登場する「未来へつなぐ〜次世代の活動と提言」である。一人でも多くの参加を。
シンポジウムの内容、参加方法等は〈主催〉女性国際戦犯法廷20周年実行委員会
www.facebook.com/joseihoutei20
「2000年法廷」に関する詳細についてはVAWW RACのサイトhttp://vawwrac.org/
【国際シンポジウムの主な内容】
〈第1部〉
●2000年法廷のドキュメンタリー上映、
●基調講演・法廷主席検事ウスティニア・ドルコポルさん
●日本・阿部浩己さん(日本検事団、明治学院大学教授)
「2000年法廷から日本の植民地主義を問い直す」
●韓国・李娜榮(イ・ナヨン)さん(正義連理事長、韓国・中央大学教授)
「2000年法廷から性暴力を処罰した韓国#MeToo運動へ」
●法廷関係者メッセージ
〈第2部〉
●日本軍「慰安婦」・戦時性暴力サバイバーの証言を聴く(南北コリア・中国・台湾・フィリピン・インドネシア・東チモールのサバイバーたち)
●次世代からの提言〜未来へつなぐ(フィリピン、台湾、韓国、日本の次世代の現在の活動と討論
人びとの自由奪う菅政権
前川喜平さんが奈良市で講演
10月25日、「立憲野党共闘で政権交代を求める集会」が奈良市内の奈良県文化会館でひらかれた。集会は奈良市民連合、奈良1区市民連合、奈良2区市民連合、市民連合中南和が共催。集会では、前川喜平さん(元文部科学省事務次官)が「こどもたちの未来のために私達は何ができるか」というテーマで講演した。ここでは、日本学術会議問題に焦点をあて、前川さんの講演を以下紹介する。
日本学術会議法では内閣総理大臣は任命を拒否できない構造になっている。だから、今回の解釈変更は明らかに違憲。しかし、10月13日に、萩生田光一文部科学相は、「国立大学法人から申し出があった学長候補を任命しないことがあるか」と問われて、「ないとは言えない」と答弁している。これは危険だ。
日本学術会議の独立性・自律性は、「学問の自由」を守るために必要なことだ。洪水を起こさないため、堤防によって住民の命が守られているように、この独立性によって学問の自由が守られている。ここで言う学問とは、大学における高度な学術研究という意味ではなく、「学ぶこと」一般をさしている。だれもが「学問の自由」をもっており、これはすべての人びとにたいする問題だ。だから、今回の日本学術会議問題は、われわれ自身の問題としてとらえるべきだ。
6人を任命しなかった理由はいっさい明らかにされていない。しかし、理由は明らか。この6人は、政権にとって気にくわない人物だったからだ。
私自身も同じようなことを経験した。16年8月、文化審議会・文化功労者選考分科会の委員を推薦するために名簿を提出したが、杉田和博官房副長官(当時)に2人だけ拒否された。この2人は政権にとって気に食わない人物だったからだろう。審議会の委員でさえ、こういうことをおこなっているのだ。今回の事件は、単にこの延長線上では考えられない。今回は明らかに違憲行為だ。
昨年、あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」では、文化庁は補助金をいったん全額不交付にした。手続き上の問題といっていたが、理由は展示の中身がけしからんということ。これは「表現の自由」にたいする侵害だ。
去年の参院選では、安倍首相の街頭演説にたいしてヤジをとばしただけで、警察官に拘束されるということがおきた。政権に抗う人を弾圧し、人びとの自由を奪っていく事態が進行している。
現在、コロナ禍のなかで、自殺者が増加している。なかでも、女性の自殺者が多くなっている。子どもの自殺者も増えている。自殺しないようにするのが政治の役割だ。現状では、生存権さえも保障されていない。こんな政治を変えていく必要がある。
4面
投稿
学校ですすむICT戦略
生徒、教員、教育内容を管理下に
佐野 裕子
11月7日、大阪市内で「日の丸・君が代」強制反対、不起立処分を撤回させる大阪ネットワークの第4回総会・学習会が開催されました(写真)。
あいさつに立った黒田伊彦代表は次のように話しました。
「アメリカと日本においてデモクラシー・民主主義・人権を破壊する大きな動きがある。アメリカではトランプ大統領による投票する権利すなわち主権をないがしろにする行為だ。日本では日本学術会議の会員に推薦された6人が政府にたてつく意見を述べていたため首相が任命しないという問題だ。学問の自由に対する政治介入はとんでもないデモクラシー破壊だ。この6人の任命拒否は、『日の丸・君が代』強制に反対する私たちのような権力にまつろわぬものを黙らせ、放逐するのと同じで、思想弾圧の構造と同じだ。6人のなかの加藤陽子さんは立憲デモクラシーの会の呼びかけ人の一人で、日本はなぜ戦争を選択したのかということを発表し、大嘗祭に際しては歴史学会の代表の一人として天皇制の歴史の編集をしていた。岡田正則さんは、大阪にも来て、裁判の絶望性を話してもらい、意見書も書いていただいた。辺野古における基地建設は憲法違反であり法令違反であるということを明言した人。他の人も政権の意に沿わないことで任命拒否されたことは明らかだ。戦前への回帰と言われている。大阪ネットワークとして10月7日付で内閣総理大臣あてに抗議文を送付した。今日学習するGIGAスクール構想では、19年と20年でタブレット端末に6600億円使うという。カリキュラム・授業計画も教育産業によってつくられる。企業の価値観による人材養成がおこなわれる。一人ひとりを金儲けの対象として労働力商品として、可視化し点数化される」。
民間企業が参入
続いて府立高校教員Aさんより「政界と財界が描くGIGAスクール構想とICT(情報通信技術)戦略」というテーマで次のようなお話がありました。
GIGAスクールとは児童1人につきパソコン1台を導入し、それを取り巻く環境を整備する計画で、第1次安倍内閣から始まっています。「未来再興戦略から未来投資戦略」へとも言われています。「再興」というのは東日本大震災からの復興という意味と、「民主党政権が破壊した日本からの再興」という意味で言っているようです。アベノミクスの第2ステージとして、「未来への投資・生産性革命」という3つの政策分野(11のシステムと5つの開発)がプログラム化されます。3つの政策分野とは、@未来産業創造、A地方創生、B2020東京オリンピックです。
未来産業創造の中で打ち出された「スーパーシティー構想」の実現に向けた法律が今年5月、可決されました。社会全体のICT化で莫大な投資と大規模な規制緩和、産業の育成がはかられます。この中に教育のICT化が入っています。
文科省・経産省・総務省のタッグチームで教育のICT化を実行することになっています。2017年に経産省が先行して教育産業室を立ち上げました。経産省の主導で「未来の教室」実証事業や「未来の教室プラットフォーム」を設立し、全国の小・中・高等学校で実験をおこなっています。実験チームには民間企業も入っています。
すべての児童や生徒にコンピューターを与え、高速大容量の通信ネットワークを完備することで、「誰一人取り残されることない、個別最適化された学びを実現する」とうたっています。そのため、全国の自治体や学校がより効率的、効果的に機器や設備の調達ができるように学校と民間教育と産業界が共同で進めていこうというものです。
幼児期から高校までの基本情報、生活情報、学習情報などの基礎データや、思考過程や個別の学習の履歴を集積し、いずれはそれを入試にもリンクさせようとしています。菅政権が打ち出したデジタル庁の動きとどうからんでくるのかわかりませんが、大きなお金が動くのはまちがいありません。
最後に、「コロナ禍でオンライン授業が実施されましたが、現場がいま一番実現してほしいのは、一日も早く少人数学級を実現することです」とまとめられました。
生きづらい学校に
教育現場では、目の前の子どもたち一人ひとりの顔を見ながら、お互い助け合っていく「共育」だと思っていました。それがICTの活用の波にのまれてしまうと、教育格差が開いていきます。これから、生きづらい学校になっていくのではと心配になりました。
コロナで延期 第5回大逆事件サミット
「明らかにする兵庫の会」立ちあげ
本来なら10月に神戸市で開催の「第5回大逆事件サミット」が、コロナ禍で来年に延期となった。これまでの活動の上に、改めて「大逆事件を明らかにする兵庫の会」の立ちあげ総会が10月31日に開催された(写真)。
大逆事件サミットは2011年9月、事件の首謀者とされる幸徳秋水の故郷・四万十市に東京、和歌山・新宮(大石誠之助ら)、大阪・堺(菅野須賀子)など事件犠牲者の関係者・研究者が集まり開催。その後福岡・豊津(堺枯川)、大阪、新宮で開かれてきた。第5回神戸開催の理由は、田中伸尚『大逆事件―死と生の群像』(岩波現代文庫)でわずかに触れられた神戸の2人の犠牲者、岡林寅松、小松丑次による。高知出身で『平民新聞』の読者会開催が事件に連座の原因。無期懲役で1931年に仮出獄、その後の足跡はほぼ不明だったが、第1回サミット以降関心が寄せられ、高知の岡林と小松の墓地も整備された。神戸では19年4月に第1回サミットを開催した田中全さん(当時四万十市市長)の講演会を開催。その後隔月の学習会。その中で岡林、小松の足跡が徐々に明らかになってきた。特に小松は出獄後、兵庫区平野で養鶏業を営む妻・はるに支えられ45年10月に栄養失調で死亡。はるはその後「多聞教会」に世話になりながら1967年に死去した。その足跡が教会関係者の手によって少しずつ明らかになってきた。また2人の研究が大谷大の上山慧研究員の手でなされてきた。
こうして「大逆事件と神戸」の関心が高まり、今年1月に岡林寅松と小松丑次の墓参と秋水の墓前祭に8人が参加。その後、大阪や岡山(森近運平)の関係者と連携しながら準備を進めてきたが、コロナ禍で延期となった。総会では田中全さん、上山慧さんのあいさつのあと、津野公男事務局長、飛田雄一共同代表らが「兵庫の会」役員として選出され、山泉進さん(大逆事件の真実を明らかにする会事務局長・明治大名誉教授)が記念講演をした。
山泉さんは、大逆事件を、明治天皇制下の山県有朋や桂太郎らの政治支配のための「社会防衛論」(思想統制)とした。その上で、戦後の復権・顕彰運動が、敗戦後の出獄者・親族らの復権運動、坂本清馬らの「再審請求」(1961年〜67年棄却)、研究者の出版活動での思想的復権、記念碑・顕彰碑の建立、宗門内復権・市民的復権、サミット開催と連綿と続いている事をたどった。埋もれていた地域での顕彰(熊本など)や、関係する文化人(石川啄木、石上露子など)の研究にもふれた。安倍政権下で政治反動が進み、運動的にはきびしい面もあるが、「共謀罪」への抗議声明を出すなど、基本的人権の侵害に対しては、今の問題としての大逆事件として語っていきたいと結んだ。(松田耕典)
何ガルの地震で壊れるのか
伊方3号機広島裁判
広島地裁前には「3号機プラント重要施設は何ガルで壊れるのか、はっきりしんさい(しなさい)」と書かれた横断幕。河合弘之弁護団長、弁護団、原告団、応援団、支援者らが地裁前へ向かった(写真左)。10月30日、伊方原発3号機の運転差し止めを求める広島裁判、新規仮処分第2回審尋(広島地裁・藤澤孝彦裁判長)が開かれた。仮処分の審尋は非公開のため参加者の他は広島弁護士会館に移動し、リモートも含め「ここが変だよ四電さん」と題する学習会をおこなった。仮処分申立書に対する四国電力側の答弁書、準備書面の要旨を読み込みながら、今回の新規仮処分の争点、「基準地震動」の不合理性を批判し、質疑応答でさらに理解を深めた。
その後、記者会見と報告会。四国電力側は「再度、同程度の地震を発生させようとすれば、地震の発生によりいったん解放されたエネルギーや歪みが改めて蓄積される必要があり、そのためには膨大な時間が必要となることから、短期間に基準地震動の余震が繰り返し発生することは、まず考えられない」(答弁書)などと主張している。河合弁護団長らが「稀ではない。東日本大震災地震の11年3月11日は、1日のうちM6を超える地震が12回も起こっている(強震観測網K―NET)。16年熊本地震では4月14日に最大地震動1579ガルの地震が起こり、2日後16日に最大地震動1796ガル(地震研本部地震調査委員会)の地震が起こった」と事実をもって批判した。14年に関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止め判決、15年には高浜原発3・4号機の再稼働差し止め仮処分決定を出した樋口英明元裁判長も駆け付け、原発の危険性を訴えた。
11月18日は「黒い雨」訴訟控訴審第1回口頭弁論が、12月24日は伊方原発の運転を止めている伊方山口裁判仮処分の広島高裁決定にたいする第1回異議審が、それぞれ広島高裁で予定されている。(江田 宏)
5面
スーパーシティー構想とは何か
情報技術が支配する未来都市?
11月6日、「スーパーシティ構想とは何か?〜住民投票後の大阪を考える」と題する講演会が開かれた(写真左)。主催は〈戦争あかん! ロックアクション〉。講師は奈良女子大学教授・中山徹さん。中山さんは都市計画学、地域計画学、自治体政策学分野を研究している。この講演で中山さんは「わずかな利便性と引き換えに大事な個人情報を渡してもいいのか」という問題提起をおこなった。以下、紹介する。
維新の狙い
スーパーシティ構想は今年9月の国家戦略特別区域法改正施行によって実現が可能になった。そこへ大阪市、池田市、河内長野市が応募した。なぜ大阪市は応募したのだろうか、狙いは何だろうか。
11月1日、住民投票で大阪市廃止、特別区設置が否決された。この影響は大阪市民だけにとどまらない。市を廃止して特別区にするなんてことは地方自治上ありえない。大阪市廃止を住民投票で二度も止めたことは、日本の地方政治上特筆すべきことだ。
しかし住民投票翌日に日本維新の会・東とおる参議院議員が「必ず3度目の挑戦をする時が来ます」とツィートしたように維新はあきらめない。23年4月に大阪府知事選挙、大阪市長選挙がある。ここで維新が圧勝すると日程的には24年の秋ごろに三度目が可能。ただ維新の思惑として25年の万博、カジノ(破綻しているが)を成功させ、27年4月の大阪府知事選挙、大阪市長選挙でもう一度圧勝できれば、その後三度目の住民投票ということではないか。
万博とカジノ、スーパーシティは夢洲で検討されている。維新は、これを実現していくことで、今までとは違う最先端の万博・カジノを維新が誘導したというふうにしたいのではないか。
ビッグデータ
ではスーパーシティとは何か。技術情報とビッグデータを地域単位で連携させた未来都市ということだが、AIやビッグデータを活用した個別分野での取り組みは見られるものの「まるごと未来都市」はまだ実現していない。カナダ・トロント郊外ではヒト・モノの動きをセンサーで把握、ビッグデータで街をコントロールする提案をグーグルがおこない、住民に否決されている。一方でスペイン・バルセロナ市では、センサーで検知しWiFiを経由して渋滞緩和や駐車場の空き状況を提供したりしている。中国・杭州市ではアリババ系列会社が行政と連携し、交通違反や渋滞対策にカメラ映像のAI分析を活用、道路ライブカメラ映像をAIが自動収集し、異常を認めた場合に警察へ自動通報している。無人コンビニも展開中でスマホアプリも不要の顔認証でのキャッシュレス支払いが可能になっている。
ビジネスモデル
日本でのスーパーシティは、移動、物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全のうち5種類以上をカバーする。2030年ごろの実現を目指している。
スーパーシティの狙いは情報技術とビッグデータを組み合わせることで、大手企業の新たなビジネスモデルを作りだすことである。スーパーシティで地域問題が解決するというのは幻想だ。スーパーシティで提供されるサービスは情報技術を活用したものであり、情報技術が利用できなければ、サービスも利用できない。情報格差がサービスの利用格差を引き起こす危険性がある。また、スーパーシティは企業主導で進められるので、対価が払えない層はサービス利用から排除される。
実施に当たっては様々な懸念がある。住民の意向をどう判断するのか。参加しない権利は補償されるのか、参加したくなければ出て行けとなるのではないか、個人情報は保護されるのか、情報流失の危険性は…。監視社会に繋がるのではないか。
コロナ以前の話
大阪では「うめきた」2期で試行、万博での実証実験・実装を経て、夢洲まちづくりで実現する予定だが、これはあくまでコロナウイルスの感染拡大以前の話だ。コロナで巨大カジノ誘致も万博も破綻している。カジノは今や収益が悪化し、1兆円以上の投資をできる事業者はいない。カジノ自体、オンライン型に変わっているので巨大な施設はいらない。
万博を夢洲で開催するというのは、万博関連事業としてカジノ誘致に必要な夢洲の整備をおこなうためだった。夢洲へのアクセスである地下鉄中央線延伸費用202億5000万円は、カジノ事業者が負担することになっていた。カジノ誘致の破綻が時間の問題となっている今、誰がこれを負担するのか。万博が必要かどうか、見直すべきだ。大阪市、大阪府は万博、カジノの失敗を覆い隠すため、あたかも未来都市が誕生したかのようにみせようとしてスーパーシティを進めるだろう。しかし、住民がいないところに多額の税金を投入するのは避けるべきである。
情報技術と個人情報を結び付け、企業の新たな収益源にしようとするスーパーシティの仕組みが問題なのであって、情報技術の発展を否定しているのではない。情報技術の発展を生活の向上につなげる仕組みづくりが重要である。
この後、参加者との質疑応答があったが、質問が次から次へと続き、参加者の関心の高さがうかがえた。(池内慶子)
84歳の独り言―出会った人びとA
清水港に浮かんだ怪死体の忘れ形見
20年程前、埼玉県に住むAさんという女性から、清水市(現・静岡市清水区)の宮崎さんに1通の手紙が届いた。宮崎さんは敗戦直後の日立製作所清水工場労組青年部長を振り出しに活動してきた人で、私の尊敬する先輩であった。
手紙には「母が亡くなって遺品を整理したら、貴方からの手紙が出てきた。お墓参りを兼ねてそちらに行くので、お会いしていろいろと話を聞かせてほしい」と書いてあった。
Aさんの父親堀さんは1949年、日本軽金属蒲原工場をレッド・パージされ、共産党から清水地区で働く失業者を労働組合に組織せよと指示された。堀さんが委員長、浅野さん(当時22歳)が書記長の清水一般自由労組が誕生した。
私は浅野さんに誘われて、Aさんと宮崎さんの話合いに同席した。
1950年1月、共産党はコミンフォルム(スターリン支配下の国際機関)に、アメリカ占領下でも平和的に革命ができるという方針を批判されて分裂し、党内抗争が始まった。堀さんも宮崎さんも浅野さんも反主流派として除名された。
そんなとき、共産党関西地方委員会(反主流派の拠点)議長山田六左衛門の名で一枚のビラが届いた。「大阪港で朝鮮戦争反対の無期限ストが始まり、神戸や名古屋などの各港にも広がっている。全国の港湾労働者は立ち上がれ!」という内容だった。堀さんたちは不毛な党内抗争にウンザリしていたので、「よし、オレたちもやろう!」と決意した。
しかし清水港は次郎長のパトロンだった鈴与という海運業者が代々支配し続け、全港湾清水支部は当てにできなかった。そこで清水一般自由労組が山猫ストで闘うことになった。宮崎さんが戦術を練り、突然「腹が痛くなった」とか「葬式ができた」などと言って仕事を休み、全港湾労組の仲間たちも巻き込んで、米軍用物資の積み込みを丸1日ストップさせた。
しばらくして、堀さんの水死体が清水港に浮かんでいるのが発見された。堀さんは酒を一滴も飲まないし、自死するような内向的性格ではなかった。堀さんの死は新聞のベタ記事で報道されただけで、謎は闇に葬り去られた。その時、堀さんは20代半ばの若さであった。
その頃Aさんは生まれて間もなく、成人してからも母親から詳しいことは聞かされていなかった。ただ「共産党の人と一緒に活動してもいいが、党に入ってはいけない」と言われていた。Aさんは母の遺品の中にあったと言って、共産党の主流派が山猫ストを挑発的暴挙と非難したビラを見せてくれた。
現在Aさんは福祉の仕事に携わり、素人劇団を結成して埼玉県内の施設を慰安のために移動訪問している。Aさんの年賀状には毎年、移動劇団で楽しそうに活躍しているカラー写真が印刷されている。堀さんの遺志をそこに見る思いである。(つづく)
6面
国民優生法、旧優生保護法が私たちを「あってはならない存在」とした結果
わたしたちの内なる優生思想を考える会・古井正代
私たち障害者は自分たちの権限を知らされない社会で、自分自身をも否定せざるを得ない状況の中、どの様な差別、偏見にあっても静かに息を潜めて生きざるを得なかったのです。
だから、障害者の人権侵害はなかなか深いところまでは解りづらいのです。当事者も酷い差別を受けた人ほど、自身で出せる言葉や、何が人権なのかを知る機会や、表現力を失っています。
裁判で手話通訳の人々の協力
兵庫の弁護団の方々が時間をかけて何日も何日も手話通訳の方とチームを組んで、まず信頼関係を築き、丁寧に幼い時からの記憶の掘り起こしから聞きとってくださっています。そして、やっと聞き出せた話を、ご本人の陳述として、質問形式でやっと法廷の場で明かるみに聞き出すことが出来たのです。
一般の陳述では聞き出すことが出来ない状態を、長い年月の間を経て、聾唖者の方へのコミュニケーションへの圧力と、彼 彼女たちの会話の場を踏みにじって来た社会が作り出してきたのです。
いかに、生まれた時からの人権侵害を、ご本人から裁判官に伝えていただけるかを、随分弁護団の方々は検討されたことでしょう。それでも、口惜しいことと思われたこともあったと想像しますが、障害者に向けられた、否定されたところからの人生を、法廷の場に出していただいた兵庫弁護団の方々には、深く感謝しています。
国賠裁判での意見陳述
兵庫優生保護法被害国賠訴訟の傍聴に9月24日に行って、原告の方の意見陳述を聞きました。
旧優生保護法の前、戦前には国民優生法がありました。すべての女性に兵士になる子どもを産み育てることがもとめられていた社会でした。そんな時代に生まれた、現在80歳後半の聴覚障害のあるご夫婦の意見陳述です。
原告の方たちが生まれた時代には国が手話を認めていなかったので、親と手話で話すことはなく、当然手話通訳もなく、誰とも共感することもなく、孤独なだけの幼少期だったそうです。
男の方にはご兄弟の内、何人か聴覚障害の方がおられ、親は聴覚障害の子どもには1度も笑ったりしたことはなく、いつも殴ったり、つねったり、叩いたり、親は子どもには笑わないものだと思っていたそうです。しかし、障害のない兄弟には笑って楽しそうにしていたので、いつも辛くて寂しくて悲しかった思い出しかなかったそうです。家庭内でさえも、どれだけ深く傷ついて育ったことか。
聾学校に行けば、授業は一般のスピードで普通に教師は喋って、その口の動きから言葉を読み取らなければなりません。しかし、生まれてから音や声を聞いたことのない原告には、想像すらできません。その上、手話はいっさい禁止されて、何も解らない状態で、全ての授業が終わっていったそうです。
聾学校の中でも、友達どうしで手話をしているのが見つかろうものなら、教師からひどく叩かれたり、食事をもらえなかったりしたそうです。手話で友達と話すのも隠れまわらなければならなかったそうです。この事からも、国、社会、教師、親から拒否された聴覚障害者としての人生が見えます。
社会に出て仕事に行けば、仕事の内容を理解しているか確認もなく、説明もないので、見よう見真似で仕事を覚えるしかなかったようです。人並み以上に努力して他の人より仕事ができるようになっても、給料には凄く健全者との差があって当たり前だった。自分の方が多く仕事ができるので、おかしいと言ってもとりあってもらえなかったり、置いてやっているのに、ありがたいと思わないなら辞めろと言われ、意見を言っても仕方がない、言えば言う程悪いようになる、意見は言わない方が良いと思ったと意見陳述されていました。
主張をすると酷い仕打ち
子どもの頃から、要らない存在として育ち、何か主張をするとかえって酷い仕打ちを受け、まともにとりあってもらった経験がないまま、人生を長く過ごされてきたのです。疎外感と絶望しかない、誰からも大事にされたことがない聴覚障害のご夫婦が、長年おふたりがおふたりだけで泣き寝入りしていたことと同じ思いをした人が、仙台で原告となって裁判をしているのを知って、自分たちの苦しみも言ってもいいんだとやっとこの度、重い口を開いて強制不妊手術の被害者として原告になられたのです。
子どもの時代の虐待がどうして起こったのか、どのようにして、何が根拠にあって幼少期、成長期の大事な時期の人権が奪われたのか。その結果、自分の意見を出せなくなるほどの境遇を強要させられたのか。
凄く楽しみにしていた我が子を、知らない間に堕胎させられ、不妊手術まで闇の内にされた。その傷の深さを考えるとき、国民優生法、旧優生保護法が親や人々に与えた影響は、過去のことであっても、時効で許される問題ではないと考えます。
皆さん、判決の前に拡散してください。判決を勝利判決にするため、お願い致します。
(「フェイスブック古井正代」から本人の了解を得て転載/小見出しは編集委員会)
連載
命をみつめて見えてきたもの?
やめて! ワクチン強制と税のムダ使い
有野 まるこ
前号で高見さんからフラースら「自然学派」と晩期マルクスの研究について、参考になる指摘をいただいた。それにしても、地道で献身的な有機無農薬農法と消費者運動の取組みは優に半世紀を越える。長らくこれに無関心できた「革命的左翼」。三里塚闘争と新型コロナは、その思想的根拠を探れと促しているようだ。
さて、ア谷医師の著書(2012年刊)によると、最も薬の消費量が多い国はアメリカで、19歳〜64歳で毎年平均12種類、64歳以上では31種類以上を服用しているという。薬には副作用があるが、胃を荒らす鎮痛剤には胃薬がセットされるなど、副作用自体が収益を更に増やす源となる。また長中期的服用による副作用・薬害の因果関係を立証する疫学的調査はさまざまな困難を伴うため、慢性病に処方されつづける薬は製薬大手のドル箱となってきた。数十年後に薬害が明らかになっても、すでに有り余る利益が企業の懐に入っている寸法だ。次のような一例もある。05年ロックフェラーが所有するファイザーは不法なマーケティングによる有罪判決が出されたため消炎鎮痛剤「ベクストラ」を市場から引き上げた。しかしここで罪をかぶったのはペーパーカンパニーだった。米検察当局は「あまりにも巨大な会社だから潰せない」と露骨にコメントした。また深刻な薬害問題に発展する場合、最後は国が税金で被害補償をおこなう。かくて、副作用や薬害があったとしても巨大製薬資本は巨額の利潤を貪ることができるシステムが構築されてきたのだ。
次のドル箱ワクチン
とはいえ、出回り過ぎたために副作用が顕在化、多くの訴訟と多額の賠償金によって利益が見込めなくなったドル箱商品も多い。そこで彼らがシフトしたのが「訴訟を起こされず、確実に利益を生みだす商品」、ワクチンだ。それを象徴するのが「GAVIアライアンス」(世界ワクチン免疫連盟)の結成。ダボス世界経済フォーラムの2000年次総会で結成された官民事業体だ。
「発展途上国」、「先進国」政府、ワクチン製造会社、NGO、研究機関、ユニセフ、WHO、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(マイクロソフト社元会長のビル・ゲイツ夫妻が創設した世界最大の慈善基金団体)、世界銀行などで構成。目的は「予防接種の普及により人々の、特に途上国の子ども達の命と健康を守ること」。財源は、ドナー国からの直接支援とワクチン債の発行。同時に「途上国に安くワクチンを提供するため」、ワクチン事前買取制度を創設した。これは製薬会社のワクチン販売と利益を確実に保障するものだ。11年ワクチン債の主幹事を務めたのは製薬大手ファイザーとメルクに役員をおくるJPモルガン。「世界的規模での社会貢献ができて光栄」とのたまっている。「貧しい国の子どもたちを救う」との美名を隠れ蓑に、巨大なグローバル資本と国際機関が、巨万の富を生みだし貪り喰うシステムを構築したことが浮き彫りになってくる。「途上国」に最も必要かつ有効な感染症対策はワクチンではない。きれいな水と衛生環境、十分な食料と栄養だ。それがワクチンよりはるかに長期的コストもかからないことを、多くの関係者は知っている。
犠牲の強要
新型コロナで改めて脚光を浴びてきたワクチン。まるで救世主扱い。が、案の定、苛烈を極める開発競争で副作用や死者が出ている。詳細が隠されていることが恐い。そんな中、ファイザーは安全性も有効性も未確定なまま、11月3週以降にも、米当局に緊急使用の許可申請を出すと発表した。日本政府は来年6月末までに、6000万人分の供給を受けることで基本合意している。国会では、接種費用を全額、国が負担し、健康被害が確認された場合は、医療費を支給することなどを盛り込んだ予防接種法改定案が審議入りした。菅政権の「切り札」の一つだが、何を勝手なことを! と怒りで一杯だ。健康被害を前提にしており、事実上の接種強制となり、犠牲者が出ることもいとわないということ、そのリスクを冒して多額の血税を米の巨大資本に差しだすというのだから…とんでもない話だ。断じて認められない。(つづく)