改憲にしがみつく安倍首相
もはや政権末期 検事長の定年延長
”ウソとごまかしは許さない!”2月19日におこなわれた国会議員会館前行動には1800人が集まった |
新型肺炎を利用
「新型コロナウイルスの感染拡大は非常に良いお手本になる。」
これは1月28日の予算委員会における日本維新の会幹事長・馬場伸幸の発言だ。馬場は続けて安倍晋三首相に「緊急事態条項について国民の理解を深めていく努力が必要だ」と迫った。これを受けて、自民党の伊吹文明元衆院議長は、1月30日の二階派の会合で、感染拡大は「憲法改正の大きな一つの実験台。緊急事態の一つの例」と述べた。「良いお手本」「実験台」とは何たる言い草か。
感染拡大で広がる不安に乗じて、改憲を進める態度は許されるものではない。
党大会で改憲に拍車
3月8日に予定していたが暫時延期を決めた今年の自民党大会で安倍自民党は、「国会発議に向けた環境を整えるべく力を尽くす」と発議を直接目標に打ちだす。今年は本文の冒頭に「新たな時代にふさわしい憲法へ」と題する1章を取って、「未来に向けた国づくりに責任を果たすため憲法改正を目指す決意である」とうたう。そのうえで、組織活動の3本柱に「党員拡大」「選挙対応」とともに「憲法改正」を据える。また全国での憲法改正集会の開催や首相の動画メッセージ配信などに取り組むことを盛り込んでいる。自民党内を締め付け、自らの権力維持のため改憲を何とか前に進めようと必死になっている。
追い詰められ強権化
安倍政権のデタラメぶりが次々暴露されてきた。森友・加計問題、防衛省の南スーダンPKO派遣部隊の日報隠蔽、毎月勤労統計の統計偽装、桜を見る会での公文書廃棄・隠蔽、IR汚職に、検察官の不法な定年延長と延々と続いている。
「桜を見る会」問題で、「募っているが募集はしていない」「合意はしたが契約ではない」などという安倍の答弁に怒りを感じない人はいない。しかも財政法違反・公職選挙法違反・政治資金法違反・公文書管理法違反の不法行為を隠蔽することをたくらんでいる。それが、「安倍政権の守護神」「官邸の用心棒」と呼ばれる東京高検の黒川弘務検事長(63)の定年延長である。
安倍政権で不祥事を起こした小渕優子、松島みどり、甘利明、下村博文らや、森友学園事件の財務省幹部ら38人は全員不起訴になっている。こうした政権と検察のゆ着ぶりは目に余る。
安倍が検察支配に躍起となるのは、「桜」で検察がホテルニューオータニやANAホテルを捜索して関連文書を押収すれば、即アウトになるからだ。
政権の最大の弱点
安倍首相は、改憲論議が進まなければ解散・総選挙に打って出ると、野党を恫喝している。これは改憲攻撃に固執せざるをえないことが安倍首相・安倍政権の最大の弱点であることを示している。
ここを突いて改憲を阻止し、安倍政権を打倒しよう。全原発の廃炉を実現しよう。沖縄新基地建設を阻止し、沖縄への軍事的差別分断政策を撤廃しよう。沖縄県民の自己決定権を断固支持しよう。全世代型社会保障改革の名による戦後社会保障の切り捨て攻撃を許してはならない。
安倍9条改憲NO! 全国市民アクションは、今年から新たな「改憲発議に反対する全国緊急署名」を開始した。自衛隊の中東派遣に反対し、どん詰まりの安倍政権を打倒しよう。
声を上げ、政治を変える
高村薫さん 青木理さんが訴え
2月22日
会場を埋めつくした参加者。ロビーにも人があふれた(2月22日大阪府豊中市) |
2月22日午後、大阪府豊中市で「モリ・カケ・サクラ・・・政治の底割れと社会の劣化」集会がひらかれ、ロビーまであふれる600人余が参加。
集会では作家の高村薫さんとジャーナリストの青木理さんがトーク。高村さんは、「一介の物書きで言葉を大切にしてきたが、小泉政権以降、言葉が通じなくなった。どんなに安倍政権がうそをついてもこの政権を支持する人が半分以上いる中では、まずは少数派ということから言葉を紡いでいかなくてはならない」と語った。
青木さんは「自分の立ち位置は岸井成格(元毎日新聞主筆/故人)のような保守リベラルと思ってきたが、いつの間にか極左・過激派とみなされている。拉致問題以降、この国は『戦争加害者』から『拉致被害者』に社会の位相が変わってきた」、「定年延長問題で検察内部から異論がもれてくる。声を上げれば事態が変わる可能性がある」と訴えた。
計画変更で死の海≠ノ
大浦湾 護岸で囲わず、土砂を投入
2月20日、キャンプ・シュワブゲート前にすわり込んで抗議する市民ら(名護市辺野古) |
2月1日 名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で、第1土曜日の県民大行動に市民800人が参加。オール沖縄会議共同代表の大城紀夫さんが「オール沖縄のたたかいを力強く取り組み、辺野古新基地建設阻止しよう」と訴えた。
5日 塩川桟橋と安和の琉球セメント桟橋で市民60人が「赤土入れるな」などのプラカードを掲げ抗議の声を上げた。安和桟橋海上では、カヌー11艇とゴムボート1隻が運搬船付近で抗議した。またキャンプ・シュワブゲート前では50人が座り込んだ。
8日 辺野古新基地建設予定地に軟弱地盤が存在する問題で、これまで防衛省が実施していないとしていた水面下70メートルより深い地点の地盤の強度試験について、同省の委託業者が土質が軟弱であることをまとめていたことが分かった。それによると、軟弱地盤が水面下90メートルに達すると指摘される地点「B27」で70メートルより深い地層で、地盤工学会が示す指標で6段階中2番目の柔らかさに相当する結果が出ている。
防衛省は「試料の信頼性が低い」として結果をその後の設計に反映させず、他の地点で得たデーターを基に地盤の安定性を確保できると説明していた。河野太郎防衛大臣はデーターを採用しないことについて、「船上でおこなう簡易で信頼性が低い試料を用いた試験であり、試料に使われることはない」と説明し、計画への影響もない考えを示した。
抗議船船長で土木技師の北上田毅さんは「都合の悪いデーターが排除されており、別の地点から類推して問題ないとした防衛省の説明は成り立たなくなる」と指摘した。
14日 防衛省は、軟弱地盤の改良工事を進めるための計画変更を3月にも県に申請する方向で調整に入った。変更計画では大浦湾側の軟弱地盤(約66・2ヘクタール)を固めるため約7万1千本の砂ぐいを打ち込む工法が検討される。また、護岸設計も見直し、護岸で囲う前に土砂を投入する先行埋め立てを実施する。現在、辺野古側は護岸で囲われ土砂投入がおこなわれている。護岸で囲わなければ、土砂の汚濁が大浦湾に広がり死の海≠ニ化す。(杉山)
2面
関生弾圧
組合活動を刑事犯罪に
東京・大阪で検証シンポ
「検証シンポジウム・関西生コン事件を考える」(主催:関西生コンを支援する会)が、2月15日東京、16日大阪で開催された。「関西生コン事件」の問題点を、労働法、国際人権法、ジャーナリズムの観点から明らかにするもの。大阪でのシンポを報告する。
弾圧の中心である大阪では会場から参加者があふれ、その関心の高さが示された。関西生コン弾圧では、2月時点でのべ89人(組合員81人)が逮捕され、のべ72名(組合員67人)が起訴された。戦後最大規模の労働組合弾圧事件だ。委員長と副委員長の勾留が530日をこえるという異常な状態が続いている。なぜこのような弾圧が起きているのか。その問題点は何か。これにどう反撃するのか。これらをテーマにシンポジウムが進められた。パネリストは吉田美喜夫さん(立命館大名誉教授)、申惠ぼんさん(青山学院大教授・国際人権法)、竹信三恵子さん(ジャーナリスト)。コーディネーターを海渡雄一さん(弁護士・関西生コンを支援する会共同代表)が務めた(写真上)。
司会は平和フォーラム共同代表の藤本泰成さん、主催者あいさつで評論家佐高信さんは「人権のたたかいなしに安倍打倒はない。反弾圧の新たなたたかいの糸口を」と話した。
弁護団の位田浩さんは関生支部に対する「不当弾圧の現状」を報告。この弾圧の背景に、「関生支部の組合活動の特徴」があると強調。それは「産業別(業種別)労働組合、産業政策運動(一面闘争・一面共闘)、団体行動権行使の力(産業ストライキ)」である。その破壊をねらった弾圧が数年越しでかけられているのだ。具体的には@コンプライアンス活動(滋賀県警組対)、A経済諸要求活動(京都府警組対)、B産業ストライキ(大阪府警公安)、C組合抗議活動(和歌山県警公安)である。そこでは不当な長期勾留や異常な保釈条件(組合事務所出入りと組合員接触禁止など)などを行使し、「関生支部がつくりあげた活動を根こそぎ『犯罪』とし、組織の壊滅をねらうものだ」とその不当性を訴えた。
労働基本権と弾圧
労働法を専門とする吉田美喜夫さんは労働法の歴史を「組合をつくることが犯罪(刑事罰)だったことからの解放の歴史」として示した。「争議行為は『業務の妨害』にあたり、嫌がる使用者側と団体交渉をすれば『強要』になる。しかし、こうした行為を『違法性がないもの』と認めているのが憲法28条の労働基本権である。これは世界的にも最高水準のものであり、日本の労働法の大前提となっている」と話し、ここに国家権力が介入してきたことの異常性を訴えた。そして「企業をこえる産業別の組合こそ基本」とし、関生支部による産別ストライキを高く評価した。そして「関生支部への弾圧は歴史を100年逆行させるもの」と警鐘を鳴らした。
メディア状況の転換
ジャーナリストの竹信三恵子さんは、関生弾圧関連では警察発表以外は報道されないという『報道の真空地帯』が作られていると指摘。こうした状況を打破したいとネットでの情報配信や、雑誌『世界』で「ルポ 労組破壊―関西生コン事件とは何か―」の連載を始めた。特に女性から反響が大きい。過去2回の関生弾圧(82年と05年)と今回の弾圧を比較して、その報道のしかたの変化を明らかにし、「こうしたメディア状況を変えなければ勝てない。発信のジャンルを警察問題から労働問題へ移さなければならない。その流れを自治体議員声明や労働法学者声明がつくった」と評価した。
国際的な人権問題
申惠ぼんさんは「国際人権法を研究している私たちにとっても未曽有の事件」と切り出し、2014年と15年に大阪地裁と大阪高裁が、関生支部のコンプラ活動を威力業務妨害で訴えた星山事件でいずれも無罪判決を下していたことを指摘した。「国際人権規約判例集を調べると、関西生コン事件にあてはまる例がいくつもある。関生弾圧は社会権規約8条1項『労働組合権』『同盟罷業する権利』に抵触し、自由権規約9条の『恣意的拘束』に当たる。10月ジュネーブで開かれる国連人権理事会や国際労働機関(ILO)にも積極的にアピールしていくべきだ」と述べた。
コーディネーターの海渡雄一さんは「今日のシンポで関生弾圧が、@なぜおきているのか、Aどのようにして克服できるのかを示すことができた。これを材料に今後もがんばっていきたい」とまとめた。
最後に全日本建設運輸連帯労働組合中央執行委員長の菊池進さんが「今回のシンポの成果を反映できるような運動を全国各地につくりだしたい。2人の仲間を取りもどし、組合活動を禁止する不当な保釈条件を撤回させ、無罪判決を獲得する」と発言した。
今後の展望示す
このシンポでは「労働と国際人権問題へのチェンジ」や「SNSの活用」などのキーワードによって関生弾圧を粉砕する展望が示された。「関生問題は社会のリトマス試験紙だ。国家権力が今後進めていきたいことを、関生弾圧で試しているかのようだ、市民運動と労働運動がどう連帯していくのか問われている」(東京シンポでの安田浩一さんの発言)。まさにそうだ。このたたかいは労働運動にとどまらず、日本の社会運動全体の未来をかけたたたかいなのである。(森川数馬)
オリンピックと天皇制
「国家」への忠誠がねらい
2月11日、『「建国記念日」反対! 天皇&オリンピックによる「国民統合」NO!―「日の丸・君が代」強制もごめんだ―』集会が大阪市内でひらかれ、300人が参加した。集会後、大阪駅近くの繁華街までデモ行進をおこなった(写真)。主催は「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク。
冒頭、大阪ネットワーク代表の黒田伊彦さんが主催者あいさつで基調的な内容を報告した。その後、高嶋伸欣さん(元・琉球大学教授)が講演した。高嶋さんは天皇制と「日の丸・君が代」とオリンピックの関係について語った。その後、「日の丸・君が代」に反対する教育労働者のたたかいなど、全国から集まったさまざまな団体が発言した。
「元首」として登場
黒田さんは「天皇制は、〈万世一系による血の連続性〉の観念を国民に受け入れさせることによって成り立っている。国民統合とは国民に忠誠をつくさせることだ。東京オリンピックは、ナルヒト天皇が〈国家元首〉として開会宣言をし、はじめて国際舞台にデビューする。オリンピックは天皇制とかたく結びついている。また、このオリンピックはフクシマを終わらせるためにおこなわれる」と話した。
憲法9条と天皇制
高嶋さんは講演で次のように述べた。 「1980年に、文部省(当時)は教科書検定で侵略を進出に書き換えた。これには82年にアジアからはげしい批判がおきた。このとき文部省は『歴代天皇すべてに丁寧な表現を用い、敬愛の念をもって記述する』よう検定意見を出している。教育勅語によって天皇制教育をおこない、国民をマインドコントロールすることによって、あの侵略戦争が可能になった。戦後、ヒロヒト天皇は和歌で『国民を守るために自分はどうなってもよい』と歌っているが、これはとんでもないウソだ。天皇の『遅すぎた聖断』は、天皇制を守るためにおこなわれた。憲法9条は天皇制を存続させるために、その取引として入れられた。この点はしっかり認識するべきだ。沖縄県民は、自らのたたかい(復帰闘争)で憲法を手に入れた。われわれは沖縄の人たちに学ぶ必要がある。『辺野古に学びにいく』という心構えが必要だ」。
オリンピック動員
集会では全国各地のたたかいが報告された。@「君が代」不起立者にたいして、再任用が認められない事例。これは国の方針に従わない者にたいする報復だ。A大阪市・府の職員基本条例では3回処分を受けたら免職になるとしているが憲法違反だ。教職員を屈服させための恫喝にすぎない。B教員免許更新制導入ははスキルアップが理由だったが、ほとんど意味がない。「国定教師づくり」の施策だ。C中学校教科書に育鵬社の教科書を採択させてはならない。D「東京では夏休み中、児童・生徒を学校単位でオリンピック観戦動員しようとしている。戦前の練成教育だ。「強制動員反対」の声をあげよう。E広島では8・6ヒロシマをたたかいではなく追悼の日にするために、拡声器規制条例をつくろうとする動きがおきている。これは広島だけのことではない。F森友学園問題の原点は教育勅語を讃美する学校をつくるということ。森友問題を忘れてはいけない。
関電役員の起訴を求める
大阪地検前で行動
2月26日
2月26日、〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉が呼びかけ、大阪地検前で「起訴を求める地検前行動」がおこなわれた(写真)。
昨年12月、関電役員12人に特別背任罪、背任罪、贈収賄罪、所得税法違反の疑いがあるとして、3272人が告発状を大阪地検に提出。さらに、今年1月31日には、追加の告発委任状を提出し、告発人数は全国47都道府県からもれなく3371人にのぼっている。
大阪地検は告発状を受け取ったものの、受理せず、告発にもとづく捜査は未だ開始していない。同会は、先月27日にも「起訴を求める地検前行動」をおこなったが、今回はそれに続く行動。
3面
新基地を押しつける「安保」
稲嶺進さん 辺野古の今を語る
2月23日 神戸市
沖縄・辺野古をめぐる現状と今後の展望を、神戸市会に求める署名運動スタートアップ集会で稲嶺進前名護市長が話した。要約を掲載する(文責/本紙編集委員会)
スタートアップ集会に先だち記者会見する稲嶺進さん(2月23日 神戸市) |
1年前の2月、沖縄は県民投票をおこない72%が「辺野古に新基地を建設するべきでない」という、強い意志を示した。しかし政府は、その民意を無視し「沖縄には沖縄の民主主義、国には国の民主主義」と言い放ち工事を強行している。こんな民主主義の理解は恥ずかしいし、みっともない。国民はもっと怒るべき。
主権国家とも言えない。沖縄には多くの米軍基地があるが、基地内はまったく憲法も主権も及ばない。何が起こっても地位協定に遮断される。米兵による多くの事故、事件も軍事裁判ではほとんど無罪。有罪になっても被告は本国に帰ってしまう。被害者に補償もされず、事後の経過もわからない。それが当たり前になっている。もうこれ以上、基地はいらない。当然だ。
全国の知事に「県民投票の結果を尊重するべきか」と質問をしたところ、「尊重するべき」は2県のみ。他の多くは回答しなかった。「国防は、国の専管事項」と、よく言われる。それは問題から逃げている。「民意を尊重するかどうか」は、国の専管事項ではない。地方の議会にも、そういう影響や態度があるのではないか。
反対があって当然
基地の運用にたいしては、国はアメリカに一言も言えない。実際、どんなことが起こっているか。普天間の傍の保育所にヘリの部品が落ちた、小学校の運動場に窓枠が落ちた。国は、米軍に飛行の自粛などもまったく言わない、できない。子どもたちの命、学習権を守らない。それどころか運動場の端っこにシェルターをつくり、ヘリ、飛行機が来たら逃げなさいと。1日、多いときは20数回も避難指示が出る。米軍は昼も夜も早朝も、やりたい放題だ。みなさんの所で米軍や自衛隊の基地が作られるとなれば、言いなりですか。反対、運動が起こって当然。
沖縄は知事、衆参などおもな選挙で「辺野古新基地はいらない」という候補を当選させてきた。すると菅官房長官は、「選挙は辺野古だけが争点ではない」と開き直る。それではと「辺野古」だけをかかげ、県民投票をおこなった。その内容を全国にわかってもらおうと、玉城知事は全国行脚もおこなっている。憲法95条は、「1つの地方公共団体に適用される特別法は、その住民の投票で過半数の同意を得なければ制定できない」としている。地方の問題、課題は地方が判断できるというのが地方自治の本質。軍用地運用等のため特措法が作られたが、復帰前は憲法が適用されず憲法違反ではない。軍用地特措法の適用は復帰後も沖縄に集中し、引き継がれている。
変わらない地位協定
1952年、サンフランシスコ条約で日本は「主権」を取り戻した。同時に安保条約、地位協定が結ばれ、「米(軍)が望むだけの軍隊を、望む場所・期間駐留する権利を確保する」とされた。「米軍基地を置く」ということ。それから68年が過ぎても、まったく改善されない。
「安保を容認する」人は全国80%とされる。それなら平等な負担が必要ではないか。なぜ沖縄だけが「国の専管事項」を押し付けられるのか。「遠く」に置いておけば、自分たちは安心だからなのか。そういう安全、安心であっていいのか。
辺野古ゲート前の座り込みは2000日を超え、海岸のテントは6000日近く抗議、抵抗を続けている。沖縄だけではない、全国から来てもらっている。加えて安和桟橋、塩川港でも土砂搬出を遅らせなければならない。安和の琉球セメント桟橋は、原料や製品の搬出入のため。土砂搬出は目的外使用ですよ。これにも防衛省は「適切な運用」と。モリ・カケ、桜、検察庁人事もすべて「適切」の一言で終わり。沖縄・辺野古も、まさにそれが問われている。辺野古が「民主主義、地方自治、人権が見える、わかる学校だ」と言われる所以ですね。ぜひ来てください。何が真実か、何が起こっているのか、やはり現場に行くことが大事だ。
前例ない地盤改良
土木の専門家が防衛省の資料から分析し、軟弱地盤があることを突きとめた。70〜90メートルという深い軟弱地盤改良の前例がない。技術的にも出来ないという状況だ。防衛省は固い部分がある、150〜700メートル離れた地点でボーリング調査し、そこから類推して固い粘土質があるとした。現場のポイント調査はしていない。埋め立てても不均等沈下は不可避。沈下しない陸上部分と埋め立て部分との落差もできる。
先端が下りになっている滑走路から飛び立てるのか。政府は、「米軍からの了解は得ている」というが本当か。明らかな嘘。あるドラマで官僚の「国民は複雑な真実よりも、わかりやすい嘘を信じる」という台詞を聞き、言い得て妙と思った。
大浦湾にはおおよそ5800種の多様な生物が棲息している。262は絶滅危惧種だ。世界遺産にも匹敵するような場所を埋め立てている。無謀きわまりない。滑走路から近い国立高専等、建物の高さ制限も無視している。米軍と協議し「対象から外す」という。対象から外せば危険ではないのか。これも日本政府の得意技の一つだ。
次の社会を残す責任
私たちは、子どもたちに次の社会を残す責任がある。時間もかかる。しかし、何もしないで待っているわけにはいかない。いまできることやる。勝つために、諦めない。
安倍首相は、歴史を知らない、学ばない。沖縄の歴史は「知りません」、ポツダム宣言は「読んでいません」。こういう人に、いつまでも政権を任せていてはいけない。
生保保護基準引きさげ
弾圧粉砕し進む裁判
2月6日、生活保護規準引き下げ違憲訴訟(以下、引き下げ違憲訴訟)の第19回弁論が大阪地裁大法廷でおこなわれた。その前に私たちは淀屋橋でノボリ旗を立てビラまきと街宣をおこなった。
弾圧を粉砕
最初に報告したいのは〈全大阪生活と健康を守る会〉(以下、大生連)への弾圧をみんなで力をあわせて粉砕したことである。引き下げ違憲訴訟の中心を担ってきたのが大生連である。弁論がおこなわれた2月6日の二日前の2月4日早朝、大阪府警警備部総務課と公安一課計9人が〈大正生活と健康を守る会〉(以下、大正生健会)に家宅捜索に入り、同会の会員2人を逮捕し、事務所の組織資料とパソコン2台を押収していくというと許しがたい弾圧をおこなった。しかし、激しい抗議のなか、2人のうち1人は逮捕当日に釈放され、残る1名も2月21日、処分保留で釈放された。
大阪府警は引き下げ違憲訴訟に打撃を与えるために大生連への弾圧の機会をねらっていたのだ。大阪府警は携帯電話を友人に貸したことが詐欺罪にあたるとしたが、実は3年以上も前からこのことを把握しており、その携帯電話が特殊詐欺の犯罪に一切使われていないことを百も承知で弾圧のための弾圧を強行したのである。
大生連と大正生健会は2月13日、大阪府警に対する抗議声明を出し、2月19日、大阪地裁令状部に対する勾留理由開示公判をおこなった。こうした連続した反撃によって弾圧を打ち破ったのだ。
わかりやすい弁論
さて、2月6日の弁論では、弁護団はパワーポイントを使って厚労省方式のインチキ性を裁判所、さらに原告や傍聴者にわかりやすく説明した。厚労省は物価が下落したから保護規準を引き下げたと主張しているが、物価下落の数値に生活保護受給者がほとんど買うことのないパソコンやデジタルカメラの物価下落が大きく影響するように恣意的にデータ操作していたのだ。
今や、厚労省の数値改ざんは恒常化している。さまざまな統計資料の基礎となる大切な毎月勤労統計のデータまで改ざんしていたことは周知のことである。保護規準引き下げでも恣意的に数値操作をしていたことが明らかになっている。傍聴していて、こんなことで保護規準が引き下げられてたまるかと怒りがわいてきた。
全国最初の判決
全国で1000人を超える原告がこの裁判をたたかって8年になる。各地でたたかわれている裁判の進行は遅いところもあれば早いところもある。今、全国でもっとも進んでいるのが名古屋地裁である。名古屋地裁の裁判長は朝鮮学校の裁判で全国で唯一勝利判決を出したときの大阪地裁の右陪席である。名古屋地裁は裁判資料をもっとも真摯に読み込み、日本女子大名誉教授で厚労省の社会保障審議会の部会長代理だった岩田正美氏を証人採用し、同氏の証言で厚労省の内部の事情も暴露され、国側の主張がでたらめだったことが名古屋地裁で明らかになってきた。
いずれにしても、この引き下げ違憲訴訟は歴史に残る裁判になることは間違いない。今、私たちはすべての争点で勝っているが、だからといって裁判で勝つとはかぎらない。勝つために公正裁判を求める署名が全国でよびかけられている。私たちも微力だが署名を集めて送ったところである。
ぬか喜びは禁物だが、勝訴すれば、安倍政治に対する痛打となることはまちがいない。
大阪地裁の進行状況は名古屋地裁の約1年遅れである。この夏か秋には証人尋問が始まる。大阪地裁の裁判長は、名古屋地裁判決が6月25日になったことについて弁護団からいわれる前にすでに知っていた。同裁判長は書類をなかなか出さない国に対して早く出すようにと強く命じている。大阪地裁の判決も名古屋地裁のそれが大きく影響することはまちがいない。
大阪市解体構想
昨年4月の統一地方選挙での維新の「圧勝」と公明党の裏切りで住民投票は今年11月1日になるといわれている。「大阪市解体構想」は生活保護受給者にさらに劣悪な環境を強制していく。「大阪市解体構想」とたたかうためにもより多くの生活保護受給者、貧困に苦しむ人たちとともにこの裁判に勝利したい。
次回期日は5月19日、午後3時から大阪地裁大法廷でひらかれる。多くの人たちの傍聴を呼びかけたい。(三船二郎)
カンパのお礼
冬期特別カンパへのご協力ありがとうございました
4面
シネマ案内
「彼らは生きていた」
(監督 ピーター・ジャクソン 2018年制作)
1914年6月、サラエボ事件をきっかけに第一次大戦が始まった。イギリスは8月に参戦し、フランス北部のソンム河流域(西部戦線)に派兵する。このドキュメンタリーは、英帝国戦争博物館が所蔵する膨大な記録フィルムのなかから、西部戦線の歩兵に焦点をあて、その姿と表情を追い、ひとつの物語に編集したものだ。
戦場のシーンは最新のデジタル技術を用いて彩色され、3D技術で立体感をだしている。当時のフィルムに音声は入っていないが、爆弾の破裂音や兵士の会話などが復元されている。また、ナレーションにながれる声は退役軍人のインタビューを用いている。
過酷な戦場の実態
戦争とともに、世界中でナショナリズムがあおられていく。イギリスでも兵士の募集が始まる。当時、兵役は19歳からで、まだ志願制であった。しかし、17歳の青年も年をいつわって応募している。理由は、仕事がなかったから、生きがいがほしかったから、女性から弱虫と軽蔑されたことなどが語られる。
兵士は国内で1カ月半の簡単な訓練を受けて、西部戦線へ。行進する兵隊には黒人兵やインド兵も見受けられる。植民地国からイギリス兵として動員されているのだ。
当時の戦法は塹壕戦。夏になれば大地はぬかるみ、塹壕のなかは水路のように。兵士はこの水に悩まされた。トラックが使えず、馬車で大砲や物資を運ぶ。砲弾が目の前で破裂するなかでの生活。食事はパンやビスケットとジャム、コンビーフなど。時間があれば塹壕内で仮眠。トイレ事情は最悪。ノミとネズミに悩まされつづける。
使い捨ての兵士
榴弾砲のごう音がいつともなく襲ってくる。この炸裂音が兵士に精神的なストレスをあたえる。技術の進歩とともに、砲弾の飛距離と破壊力は大きくなり、直撃すれば人間の肉体はひと固まりの肉片と化してしまう。この戦争では塩素ガスなどの毒ガスも登場。また菱形をしたタンク(戦車)がイギリス軍にはじめて登場した。
戦場では仲間どうしに連帯感があった。故郷での生活など、うちとけあって話す。前線にいる兵士は、ひとときの休暇で後方基地にもどり、ここで休息をとる。「慰安所」にむかうことなどが、あけすけに語られる。
突撃作戦が開始される。塹壕のなかで突撃を待つ兵士。銃剣を装着する。不安感と緊張。けたたましい砲火のなかで戦場に突撃する。機関銃の炸裂音とともに、つぎつぎに倒れていく。こうして、大砲の弾と同じように、兵士の命は使い捨てられていった。ドイツ側からみた状況は、レマルクの『西部戦線異状なし』に描かれている。
1918年11月、膨大な犠牲者を出して戦争は終結した。兵士は帰国する。「やっと終わった」という感慨だけで、その表情には勝利感はない。帰国しても英雄ではなかった。逆に従軍したことがうとんじられ、差別をうけた。同じ戦場を体験した戦友同士しかわかりあえなかった。
今日においても、この戦場の本質は変わっていない。2月に、海上自衛隊がアラビア海域に派兵された。いつの時代も、兵士を戦場に送るのは戦場に行くことのない特権階級の支配者たちなのだ。(鹿田研三)
〈連載〉まっちゃん、これでええかな(5)
生理をなくすための手術
元関西青い芝の会連合会会長 古井正代さん
今までの優生保護法にもとづく強制不妊手術はたいていの場合、「子どもができたらあかん」いうて手術をさせられるけど、ほとんどの脳性マヒの人にされとるのは違うねん。脳性マヒが子どもをつくるなんて、世間は思ってないわけ。
なら、なんで不妊手術させられるかというと、不妊ではなくて介護上の問題で、介護するにあたって生理は邪魔やいうて、周りの都合のええようにされる。当の本人は子どもを産む教育なんて受けてない。だからマスコミがいうところの強制不妊手術で、脳性マヒ者の場合はもっと悲惨。不妊が目的だとパイプカットでもいいけど、生理をなくそうとすると子宮を取るとか、子宮の機能をなくさなければならないでしょう。だから一生涯薬漬けや。
脳性まひ者の立場で
裁判してる人のほとんどが、「聾」の方が多いでしょ。知的障害者の方も家族が裁判してはるけど。「聾」の方同士で結婚したら、その親御さんによってだまして手術させられたとかね。でも脳性マヒ者はそこへ行きつくまでに生理をなくさなあかんいうて、介護上の健全者がいややからという立場でやられとるから。そのことに兵庫県の神戸で初めて脳性マヒの人が出てきはって実名で顔も出して原告になってん。「私は生理が邪魔やさかいやられた」って。脳性マヒの場合は、千津子さんもそうやったけど、この社会では立場がないから、実名で顔も出せるねん。
まっちゃんがそういうことに非常に敏感で、そういうメチャクチャやられる話を脳性マヒ者は自身の立場で公表せなあかんと思って、奈良で「青い芝の会」をつくってん。今日、会場に来てるHさんも親の家から出てくるようになったし、Nさんの奥さんも人生変わったしね。
それから、まっちゃんが奈良で「青い芝の会」をつくったあと広島へ来て、「広島青い芝の会」をつくって、皆さんがこうして集まる事になったと思う。Sさんも自身の立場が解って立ち上がることが出来たと思うねん。優生思想への疑問を投げかけたまっちゃんのことをこれからも思い出す時には、一般の人が言うてない、そういう「脳性マヒならではの優生思想」を考えてやっていって欲しいと思う。
あとは、何か聞きたいことあったら何でもしゃべります。質問して下さい。(つづく)
連載 命をみつめて見えてきたもの G
抹殺された映像
有野 まるこ
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前回紹介した、ケリー・ターナー博士が深堀したガンの「劇的寛解」(自然退縮)という「逸脱した事例」。日本でも、30年前、逸脱事例を探しまわり『NHK教育テレビスペシャル 人間はなぜ治るのか』というドキュメント番組を制作した人がいる。当時、NHKのテレビディレクターとして激務に明け暮れ、右腎臓ガンで全摘手術を受けた川竹文夫さんだ。上司や先輩たちも相次いでガンを発病。彼らは全国でも屈指の名医を選び治療を受けられる社会的地位とコネクションを持っていた。にも関わらず結果は期待を裏切るもの。川竹さんは心底、衝撃を受けたという。治った人はいるのか? ガンを治す方法は? 生きる希望の光を必死で探し求める思いで制作に挑んだ。
すると次々と舞い込んできた自然退縮の報告。再発・転移、末期胃ガン、末期膵臓ガン、余命1週間の肝臓ガン … 現代ガン医療からサジを投げられ、自分で治した20数人を取材した。全員が生きる強い執念と希望をもち、たゆまぬ努力を重ねて治癒に至っていた。その喜びに満ちた証言を各1時間3本シリーズで描いた。@ガンからの生還、A心がガンを治した、Bアメリカ編イメージの治癒力、という編集。患者さんの体験談、アメリカの心理療法、それによる治癒事例、逆に患者の強い思いがガンを悪化させた臨床報告などが紹介されている。人間にはガンを自然退縮させる免疫力、自然治癒力が備わっていること、体験者は皆、その力を発現させる様々な療法に取り組んできたこと、さらに心やイメージがとても大きな影響を及ぼしていることを伝える内容だ。
放映は、視聴者に希望をもたらし大反響を巻き起こした。他方、週刊誌、マスコミからは「余命数カ月のガンが治るはずがない」「詐欺だ」と轟々たる非難。再放送は中止され、映像は保存されず、存在自体が抹殺される運命に。(ガン患者会の知人がNHKに問い合わせるも「無い」の回答)その後、川竹さんはガンを再発したが自然退縮させて治癒。NHKは退職し、97年ガン患者の会を設立、今も活動を続けている。
安保さんや川竹さんのように、食事、睡眠、運動、働き方、環境、心身のストレスがガン発症に大きく影響しており、人間の免疫力・自然治癒力がガンを治癒にも導くと主張してきた人々、治療してきた医師らは医学・医療界やマスコミから叩かれてきた。しかし今日、免疫細胞がガンをアポトーシス(自死)に導くシステムが解明され、「免疫療法」は第四の治療法として注目されている。さらに本庶佑氏は、その作用を促して治癒を期待する薬・オプジーボを開発しノーベル賞を受賞した。両者とも、絶対の効果があるわけではなく副作用もあり、保険適用も限定的で高額の難点があるが…。ただガンへの知見が劇的に変わってきたことだけは確かだ。(つづく)
5面
トリチウム汚染水の海洋放出を阻止しよう
津田保夫
福島第一原発のトリチウム汚染水の処分について、国と東電は「汚染水の貯蔵タンクが満杯になり、海洋放出以外にない」といい、「海洋放出はしかたない」という方向に世論を誘導している。ここでは、経産省と原子力規制庁と東京電力は一体になっている。この論議はうそで塗り固められている。
本稿では、このウソをあばき、問題の所在をさぐっていきたい。福島の漁業関係者は海洋放出に反対している。人民の力で海洋放出を断固として阻止しよう。
増え続ける汚染水
福島第一原発では、サブドレン(井戸)や凍土壁の運用によって敷地に流入する地下水はかなり減少しているが、現在でも1日に約100〜150トンの水が敷地内に流れ込んでおり、汚染水が日々増加しつづけている。現在、汚染水貯蔵タンクは1000基に近づき、約120万トンの汚染水がタンクに貯蔵されている。
東京電力は、「22年夏ごろまでに現在建設予定のタンクの容量が満杯になる。現行計画以上のタンク増設は無理だから、汚染水を海洋放出する以外にない」(ウソ@)と言っている。しかし、「土地がないから、これ以上タンクが造れない」というのはうそだ。東電は7・8号機建設予定地に広大な土地を所有している(5・6号機の北側)。タンクを造る土地はある。東電は出費を減らすために、これ以上タンクを造りたくないのだ。
汚染水を作り出す原因は福島第一原発事故にあり、その責任は東電にある。東電がほんとうに責任をとるのであれば、汚染水を永久に貯蔵する以外にない。無責任な海洋放出を許してはならない。
資源エネルギー庁(経産省)は、2016年11月から「多核種除去施設等処理水の取扱いに関する小委員会」を設置して、汚染水の処理方法を審議してきた。2018年8月には、福島県(2カ所)と東京で公聴会を開いた。この公聴会では、市民から海洋放出にたいして反対意見が続出した。国は海洋放出に集約しようとしていたが、そのもくろみはくずれてしまった。その後、国と東電は「社会的受容を求める活動」を進めていると言っているが、これは金と権力によって漁業関係者の反対をおさえて、国の決めた方針に従わせるということ。このようにして原発がつくられてきた。このやり方は福島第一原発事故以前のやり方となんら変わっていない。
今年1月31日に、「小委員会」は海洋放出を有力視する内容で「取りまとめ(案)」をだした。ここでは、5つの選択肢を検討し、海洋放出を最適としている。この議論で問題なのは、中長期ロードマップで廃炉作業を終えることになっている30〜40年後に、汚染水がなくなっていることを前提にしていることだ。この条件のもとで、汚染水をどうするかを議論している。初めから汚染水を永久保存する選択肢は排除されているのだ。東電と経産省は一体になって、世論を海洋放出に誘導している。また、原子力規制委員会は、規制をするどころか海洋放出に積極的な態度を示している。
すでに、福島第一原発では2015年9月から汚染水の海洋放出をおこなっている。現在、サブドレン(井戸)でくみ上げている地下水は浄化した後に海洋に放出されているのだ。この汲み上げ水にもトリチウムが含まれており、1日に110×(10の9乗)Bq程度のトリチウムが海洋に放出されている。これを始めるとき、漁業関係者は「苦渋の選択」という形で海洋放出を認めざるをえなかった。国と東電は、同じことをもう一度繰り返そうとしている。こんなことを許してはならない。
放射性多核種汚染水
東京電力は、多核種除去装置(ALPS)で処理した水を「トリチウム水」と呼んでいる。東電は「測定している62種類の放射性物質は、多核種除去装置によって告知濃度限度以下まで除去でき、残るはトリチウムだけである」(ウソA)と説明し、トリチウム以外の核種はすべて取り除かれているかのように言ってきた。しかし、2018年8月に「河北新報」と木野龍逸氏(ジャーナリスト)の報道によって、ウソであることがわかった。トリチウム以外の核種がかなりの高濃度で残っているのだ。東電はこの事実を認めている。
東電の発表によれば、「トリチウム水」には、ヨウ素129(129I)、ストロンチウム90(90St)、ルテニウム106(106Ru)、テクネチウム99(99Th)、炭素14(14C)などが高濃度で含まれている。だから、正確には「トリチウム水」ではなく、「放射性多核種汚染水」なのだ。
ALPSは2013年から導入された。2015年までは操作方法を試行錯誤しており、安定的に運用できるようになったのは2016年になってからだ。このように、その時の情況によって含有核種の汚染度はバラバラなのだ。この汚染水は永久に貯蔵すること以外にない。東電はこの汚染水を薄めて、海洋放出することを企んでいる。この行為は足尾銅山で古河鉱業がおこなった公害事件と同じではないか。
トリチウムの危険性
ここでトリチウムについて見ておきたい。陽子1個からできている水素(1H)原子には、陽子1個と中性子1個からなる重水素(2D)と、陽子1個と中性子2個からなる三重水素(3T)がある。この3重水素のことをトリチウムと呼んでいる。トリチウムは半減期12・3年でβ線を出して、ヘリウム3(3He)にかわっている。トリチウムが出すβ線のエネルギーは0・02MeV程度であり、ストロンチウム90が出すβ線のエネルギーよりも1ケタ小さい。
福島原発の汚染水に含まれるトリチウムは、水(H22O)分子の水素原子1個がトリチウムに置き換わったものと考えてよい。1H原子が3T原子に置き換わった水がトリチウム水だ。いずれも化学的・物理的性質は水と同じなので、トリチウム水だけを分離することはきわめて難しい。
原子炉のなかで様々な核反応がおこっており、その際にトリチウムが作り出されている。稼働中の原子炉では、冷却水の水分子の水素(H)原子核が中性子を捕獲して〈1H→2D→3T〉のメカニズムで、トリチウム(3T)が作り出されている。事故をおこした福島第一原発では、溶融炉心デブリ(瓦礫)を冷却している水とそれに含まれるホウ素(B)が中性子照射されることによって発生している。溶融炉心を水で冷却するかぎり、トリチウムは発生しつづけるのだ。
トリチウムは「β線のエネルギーが低いから安全」、「生体内に取り込まれても、水と同じだからすぐに排出されるので、毒性は低い」とか「トリチウムはどこの原発でも捨てている」など、トリチウム安全論(ウソB)が叫ばれる。β線のエネルギーについて言えば、外部被ばくの影響は無視できるが、内部被ばくについてはそうはいかない。分子の結合エネルギーは4〜5eV程度だから、その1万倍はあるのだ。分子鎖は簡単に切断されてしまう。また、トリチウムは安全だから海に放出しているのではない。処理できないから、そのまま海に流しているだけなのだ。騙されてはいけない。トリチウムはけっして安全ではない。
汚染水放出に反対の声を
ALPS処理水の海洋放出は、放射性物質を世界中の海にばらまくことになる。放射能ばらまき行為はまさしく公害だ。これは国際的にも批判されている。とりわけ韓国の文在寅政権は、日本政府の対応にはげしく反対している。
これにたいして、海洋放出に賛成し、「大阪にひきとって、大阪湾で放出したい」(2019年9月)と言っているのは、大阪市長の松井一郎だ。
われわれはもう騙されてはいけない。2度も騙されるのは、騙される側にも責任がある。国や東電に反省を期待することはできない。福島の漁業関係者は反対の声をあげている。貯蔵タンクを造るための土地はある。恒久的貯蔵タンクの建設は可能だ。トリチウム汚染水の海洋放出に反対の声をあげよう。
6面
被爆後 救護所になった被服支廠
原爆ドーム以来の保存運動
県が2棟解体方針
昨年12月、広島県は「安全対策や財政負担」を理由に、県が所有する旧陸軍被服支廠3棟のうち「1棟を外観のみ保存し、残る2棟を解体する」との方針を県議会に示した。国が所有し広島市が管理する1棟も、国は「解体も含めて検討する」としている。
保存を求め活用策も提言してきた被爆者団体や市民団体は、いっせいに解体反対の声をあげ、現地調査、講演会、シンポジウム、署名運動を開始した。若い人たちがSNSを使いネット署名運動などで関心を拡げ、県のホームページへのパブリック・コメントにも保存の要望を出し、これまでのパブコメ史上最多のコメントが集まった。
県は今年度の予算に解体費用の計上を断念し、自民党の一部会派や公明党なども全棟保存の意見を表明し始めた。注目すべきは、被爆三世を中心にした広島の若者たちの積極的で素早い動きである。得意のSNSを駆使した声は、若い世代に広く浸透しつつある。
広島陸軍被服支廠
全国にはあまり知られていないかもしれない。広島の旧陸軍被服支廠は、爆心地の南東2・7qにある。1905年(明治38年)に陸軍被服廠広島出張所として開設され、2年後に支廠に昇格した。おもに兵員の軍服や軍靴などを製造していた。敗戦前には、戦地から送られてきた軍服の洗濯や修理にも使われた。
加害と被害を証言
広島市南区にある県立広島皆実高校、県立広島工業高校がある広い街区は、その旧被服支廠の跡地である。南西に500m続く赤レンガ4棟の建物が旧被服支廠の元倉庫である。広島では「出汐倉庫」とも呼ばれ、現在保存運動が高まっている。建物は軍人・軍馬の検疫所があった似島や、大陸へ出兵の拠点だった宇品港に鉄道で直結しており、当時の軍事施設の重要な一角を占めていた。
後の反戦画家・四國五郎さん(故人)は召集前に、昨年「8・6平和の夕べ」で被爆を証言した切明千枝子さんのお母さんも、この被服廠で働いていた。幼少の切明さんは、付設の保育施設に預けられていたという。
戦争末期には、多くの旧制中学や女学校の生徒たちの勤労動員先となった。8月6日、彼ら彼女らは、そこで被爆した。かろうじて倒壊を免れた倉庫は、臨時救護所になった。多くの傷ついた被爆者が、苦しみながら亡くなった場所である。峠三吉の『原爆詩集』のなかに、「倉庫の記録」として悲惨な様子が書かれている。
原爆ドーム保存運動
被爆75年の「8月6日、9日」が、「東京オリンピックの喧騒」に埋没しかねないと懸念する人は多い。「被爆の証人」である旧被服支廠の保存は、この時期に正念場となる。
原爆ドーム保存をめぐる運動を知る人は、少なくなってきた。もう一度思い起こし、知らない人はぜひ学び直してほしい。被爆後、原爆ドームは「悲惨な被爆を思い起こす」と取り壊しを望む声、「歴史の証人として保存すべき」という声が交錯した。取り壊しと保存の方針が決まらないまま、周辺に雑草が生い茂り、建物には亀裂や崩落が続く危険な状態だった。
1歳のときに被爆し15年後に白血病で亡くなった楮山ヒロ子さんが、「あの痛々しい産業奨励館だけが、いつまでも、おそるべき原爆のことを後世に訴えかけてくれるだろう」と書いた日記に心を動かされた女子高生たちが中心になり、保存の署名や募金運動を開始した。それが大きなうねりとなり、保存が決まった。
反戦・反核の継承へ
被服廠保存には、保守系議員らの一部も動こうとしている。保存とその意味、運動にもさまざま意見がある。解体に対する左翼反対派≠ノとどまらずに、被爆の実相、歴史、その意味を持つ旧被服支廠の保存にむけ、反戦・反核運動を継承し今後の方向を示しながら、運動を拡げることが求められる。
旧陸軍広島被服支廠の保存のための、「広島からの呼びかけ」に応え、署名や募金にも協力してほしい。(透)
大逆事件サミット神戸で(下)
秋水墓前祭から10月開催へ
松田耕典労働ニュース
中村で墓前祭
高知から幸徳秋水の生地中村は高速道路を使っても2時間かかる四国西南端で、高知とは言葉も違う別の文化圏の幡多郡の中心地。幡多郡は明治の自由民権運動の足跡が各地にあり、先般、小沢一郎が秋水の墓、宿毛の林有造(明治自由民権運動)・譲治(吉田内閣副総理)の墓を参ったという。1月23日午後6時半ころに中村に着き、幸徳秋水を顕彰する会の皆さんが歓迎会をおこなってくれた。
翌日は12時半からの墓前祭に先立ち、「最後の清流」・四万十川の沈下橋を観光した後、市役所図書館の大逆事件コーナー(坂本清馬蔵書など)と、為松公園の幸徳秋水絶筆記念碑を訪れた。市役所2階フロアー全部の図書館の一角に大逆事件のコーナーがある。そこには坂本清馬の膨大な蔵書・裁判関係資料などが保存されている。坂本清馬は大逆事件の刑に服し27年後に釈放された。戦後は父の故郷の中村に住み、1960年代、無罪を訴えて再審裁判を起こす。この裁判を、大河内一男東大教授(後に東大総長)や坂本昭(衆議院議員)らが支え、明治の暗黒裁判のデッチアゲ性が広く社会的に知られるようになった。ちなみに事務局長を務めた坂本昭は医師として60年安保闘争で亡くなった樺美智子の遺体の検分に立ち会っている。
為松公園の絶句碑は、秋水が刑執行前に看守に託した漢詩で、生誕100年の1961年に建立された。詩の現代文訳は中国文学者の一海知義(神戸大名誉教授)で、解説は塩田庄兵衛(東京都立大名誉教授)。その時代の碩学が支援したことがわかる。
午後から幸徳秋水と坂本清馬の墓前祭。毎年の墓前祭はいつも冷え込むが、今年は暖冬。またこの墓地を管理する隣接の正福寺に昨年から住職が着任し、今後墓を見守るという。関西や熊本はじめ全国から80人余りが参加。司会は田中全さん、顕彰する会の宮本博行会長は、秋水が日露戦争に反対した気骨のジャーナリストであり思想家であったことをたたえた。その後秋水の係累の方や四万十市の副市長や教育委員会、第5回サミット実行委(神戸)の津野公男さんなどが代表献花。その後「自由は土佐の山野から」の旗を持った自由民権会館友の会などの参列者全員が献花した(写真)。
午後からは近くで「坂本清馬を語る会」が尾崎清顕彰する会副会長の1時間弱の話と質疑応答、清馬さんを知る人々の証言がなされた。
4月にプレ企画
こうして、刑死109年墓前祭を終えた。2月1日には大逆事件の映画『百年の谺』が神戸で上映され、120人が参加した。4月には大逆事件の真相を明らかにする会事務局長の山泉進さん(明治大名誉教授)を迎え、サミットプレ集会が開かれる。昨年から隔月の研究会も開催され、岡林寅松・小松丑治の研究も進んだ。大阪の菅野須賀子と岡山の森近運平の顕彰運動とも連携し、10月の第5回大逆事件サミットの成功に向けて取り組みが進んでいる。
明治天皇制と長州閥支配の時代に、日露戦争に反対し自由と博愛を求めたがゆえに「大逆罪」で刑死した幸徳秋水と「連座」した人々。刑死前に秋水は「小さなことでくよくよしてはならない、百年後の人々のことを考えよう」とのメッセージを残している。100年後の今、権力の暴虐は無くなり自由と博愛は満ちているのか。そう私たちに大逆事件は問いかけているのではないかと思う。関心のある方の参加をもとめたい。(おわり)