辺野古新基地
埋め立て全体のわずか1%
工事中止し、普天間返還を
安和海上大行動で安和桟橋近くの海岸から海上行動隊にエールを送る参加者たち(12月3日 名護市内) |
12月3日 名護市安和の琉球セメント安和桟橋から土砂が搬出されて1年目のこの日、「安和海上大行動」がおこなわれ230人が参加。(詳細前号) 7日 キャンプ・シュワブゲート前で、毎月第1土曜日の「県民大行動」に市民800人が参加。午後からは「第3回障がい者辺野古のつどい」が開かれ全国から250人が参加。参加者は「健常者と同じように辺野古には来られないが、基地建設反対の気持ちは同じ」と連帯を訴えた。実行委員長の渡嘉敷綏秀さんは「戦争につながる辺野古新基地建設を日米両政府があきらめるまでがんばります」と決意。加藤登紀子さんらのメッセージが紹介された。 14日 政府が埋め立て区域への土砂投入を始めてから1年となったこの日、辺野古の海上とキャンプ・シュワブゲート前で抗議行動。海上では市民80人がカヌー31艇、抗議船9隻に乗って「違法工事中止せよ」「美ら海をまもれ」などの横断幕やプラカードを掲げた。抗議行動は午前10時過ぎに開始。船上でマイクを握った市民は「軟弱地盤のある大浦湾に新基地を造ることは無理だ」「土砂投入による埋め立てはわずか1%だ、わたしたちはあきらめない」と訴え、ゲート前と海上で抗議。 19日 「第3木曜日大行動」に市民230人が参加。
工期に大幅の遅れ
22日 名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府が埋め立てに必要な工程を10年程度と見積もっていることが明らかになった。軟弱地盤の存在が発覚し、当初予定の5年から2倍の時間がかかることになった。埋め立て完了後、滑走路整備などに3年の工程を含めると、当初計画の2022年度とされていた米軍普天間飛行場の返還が2030年代にずれ込む。 県はこの間、独自の試算で地盤改良5年、埋め立て5年、施設設備3年を含め13年以上かかると主張し問題視していた。政府はこれまで工期を明確に示していないが、県の主張が裏付けられる形で基地建設の長期化が現実味を帯びている。 しかし、工事は大幅に遅れ、18年12月に浅瀬部分から埋め立て土砂の投入が始まったが、現在も大浦湾側の軟弱地盤がある一帯は手つかずのままだ。軟弱地盤の工事に入るためには設計変更が必要。しかし、県の玉城デニー知事は防衛省の申請に応じない構え。変更承認を巡る対立が法廷闘争に発展する可能性もはらんでいる。
原発マネー不正還流
関西電力を刑事告発
47都道府県で告発人3千超
大阪地検に集まって告発状の提出行動をする市民ら(12月13日 大阪市内) |
12月13日、〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉は、関電の役員ら12人にたいする告発状を大阪地検特捜部に提出した。内容は、会社法の特別背任や収賄罪などにあたるとするもの。告発人は全国47都道府県から、3272人。
この日、地検前に約100人があつまり、河合弘之弁護士は「今回、原発マネーが経営陣に還流していることが明らかになった。関電が工事費を高値発注していたのだ。これは原発の本質的問題をあらわにしている。原発がある限り、この構造はなくならない。われわれの運動は究極的には原発をなくすことだ。この行動をバネにして、市民の力で原発をやめさせよう」と述べた。午後1時、代表団が地検に入り、告発状を提出した。
その後、場所を移して報告集会がひらかれ、河合弘之弁護士が、関電の原発マネー全体の構造と告発の意義を次のように説明した。
原発全廃が目標
原発は迷惑施設であり、反対運動をつぶすためにも金にたよる以外なかった。関係者は利権にまみれ、金を湯水のように使うことをしなければ、原発は動かせない。
関電から吉田開発に工事費が払われ、吉田開発が毒まんじゅうを森山栄治に渡していた。森山に渡った金の一部が関電の経営陣に還流されていた。この資金は、実際にかかる工事費よりも高値発注されたものだ。
高値発注された工事費は、市民の電気料金から出ている。3・11以降、関電は2回にわたり電気料金を値上げした際、「原発を稼働できないので、発電費用が高くついている。だから、やむをえない」と説明してきたが、こんな不正な資金に回っていた。
当面は告発によって関電の腐敗をただしていくが、究極的な目標は原発をなくすこと。この運動をバネに市民の力で原発のない社会を作っていこう。(津田保夫)
(定点観測)
安倍政権の改憲動向(12月)
12月14、15日に実施した産経とFNNの合同世論調査で、憲法改正について「賛成」が11月調査から約10ポイント減の42・6%に、「反対」が7ポイント増の42・2%となった。また安倍首相が「自らの手で憲法改正を成し遂げたい」と発言したことについて、「評価する」が37・4%、「評価しない」が50・9%となった。安倍政権に対する支持が急速に低下し始めた。 各種世論調査で内閣支持率が2カ月累計10ポイント超減るものが出始めた(共同通信の12月14、15日の調査で2カ月累計11・4ポイント減)。また安倍首相の地元選挙区(山口4区)の長門市長選で反安倍派が安倍支持の現職に勝利した。 そして政権と自民党内の吸引力の低下である。次の首相に一番ふさわしいのは誰かを調査した多くの世論調査で、石破茂が安倍首相や小泉環境相を抜きトップに。また二階幹事長につづき、麻生太郎副総理・財務相が、今総裁任期内の改憲をあきらめた発言をした。加えて、安倍忖度官僚・議員・メディアの総瓦解である。
改憲の巻き直し
この安倍政権への不信と怒りの爆発に対し、安倍首相は臨時国会終了後、改憲のネジを巻く発言を連発した。そこで安倍は改憲の目玉として、9条改憲を強調し、自民党を締め付け発破をかけ、 「改憲を私の手で成し遂げる」という違憲発言をしている。そして時が来れば、衆院解散・総選挙を断行することにちゅうちょしない」と、野党を恫喝しているのだ。 また安倍首相は実質改憲に拍車をかけている。そのひとつは、昨年末に閣議決定した中東への自衛隊派兵だ。オマーンに自衛隊の新たな拠点を設ける計画を打ち出した。 もうひとつは、社会保障解体攻撃である。「攻めの社会保障」の名の下、社会保障破壊のかじを切ろうとしている。厚労省は全国424の公立病院を名指しして再編統合を促すことや、75歳以上の高齢者の医療の窓口負担を2割にすることを提起した。そこに貫かれているのは、格差・貧困も、差別・排除も自己責任とする新自由主義の思想だ。
新署名で発議阻止を
安倍9条改憲阻止の新方針が提起された。「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」は2020年1月から新しい請願署名「安倍9条改憲NO! 改憲発議に反対する全国緊急署名」を開始する。新たな決意で緊急署名に取り組み、安倍改憲に断を下そう。
2面
関生弾圧
大阪府労委で勝利命令
全国から反撃が始まった
労働法学会有志が声明
吉田美喜夫・立命館大学名誉教授や毛塚勝利・中央大学名誉教授ら「日本労働法学会」(研究者や弁護士ら約700人でつくる)の24人が呼びかけ、全国の大学や研究機関に属する研究者54人が賛同した関生弾圧への抗議声明が昨年12月9日発表され、厚生労働省内で記者会見が開かれた(写真)。 声明では一連の関生弾圧を「正当な組合活動が違法行為として刑事処罰されており、憲法に規定された労働基本権が保障されていない」とし、「警察・検察当局の憲法を無視した恣意的な法執行に強く抗議」し、「戦後積み上げられてきた組合活動保障を意図的に無視している」と弾劾した(3面に全文)。記者会見に出席した吉田さんや毛塚さんは「子どもの保育園に提出する就労証明を経営者に出してほしいと求めたことが強要容疑にされるなど、労組の日常活動が処罰されている。労働基本権を無視した、過去にない異常事態で労働法研究者として見過ごせない」と指摘。各紙が報道した。
不当労働行為を認定
12月10日京都・加茂生コン事件で大阪府労働委員会が不当労働行為を認定して命令を出した。これは刑事事件として裁判中でもある。事件の経過は、組合が大阪府労委に申し立てて証人尋問もおこなわれ、昨年6月に和解調査が予定されていた件について、調査前日の6月19日、京都府警組織犯罪対策課が「正社員として雇用するよう不当に要求した疑い」(京都新聞)などとして組合役員と組合員を5人、さらに生コン業者団体の理事長ら2人を強要未遂と恐喝未遂容疑で逮捕し5人を起訴したものである。一連の「関西生コン事件」のなかでもひときわ悪辣な弾圧である。京都地検は起訴事実のなかで、請負なのに組合が労働者として「正社員要求」して会社を脅したとしていた。府労委命令は厚労省指針(「労働組合法上の労働者性の判断基準について」)にもとづいて、組合員は労働組合法上の労働者であると認定し、団交拒否などは労働組合法が禁じる不当労働行為にあたるとした。これによって刑事弾圧の前提が崩れた。 10月21日には、大阪市内の生コン輸送会社・株式会社徳島の不当労働行為事件で、大阪府労働委員会が勝利命令を出し、陳謝文的内容を労働委員会の指定する場所に掲示するよう会社に命じた。この事件は、会社が昨年3月以降、大阪広域協組の「関生支部排除」方針に従って関生支部の日々雇用労働者を就労させず、団体交渉を拒否していたもの。加茂生コン事件の勝利命令は徳島事件に続く勝利である。同様の不当労働行為事件は十数件にのぼり、年末から年明けにかけて順次命令が下される見込みだ。2件の府労委勝利命令は権力と大阪広域協組が一体となった関生弾圧の一角を突き崩した。
マスコミに衝撃
11月7日に発表された府県議9人、市区町議112人が賛同する自治体議員声明は、警察情報を鵜呑みにして関生弾圧を暴力事件のように扱ってきたマスコミに衝撃を与えた。11月16日には平和フォーラム共同代表の藤本泰成さん、甲南大学名誉教授の熊沢誠さん、ジャーナリストの竹信三恵子さんらが呼びかけた「声を上げよう! 弾圧許すな! 全国集会」が大阪で開かれ1200人を超える参加をかちとり、市内をデモ行進し大阪地裁を包囲した(既報)。関生弾圧への反撃は、全国の労働運動、市民運動の中に確実に広がっている。今年はこの流れを全国的な大きな渦にしていこう。全国各地に「関生反弾圧」「支援する会」運動を作ろう。(森川数馬)
「関生弾圧を許さない会」が発足
100人ほどが参加 静岡
12月14日、「関西生コン労組への弾圧を許さない静岡の会」が結成総会を開催した。 県平和・国民運動センターや県労組共闘会議、さらに数人の弁護士などの呼びかけで、全県下から労働組合や市民団体の活動家を中心に90人が参加。 まず共同代表の塩沢忠和弁護士(自由法曹団県支部長)があいさつ。続いて中央からの報告として、勝島一博・平和フォーラム事務局長が「このたたかいは真実を広めるたたかいである」と訴えた。 次に本集会のメインである「多様な働き方と労働者の団結」と題す講演が、静岡大学の笹沼弘志教授からおこなわれた。フロアから、11月16日の全国集会に参加した立憲民主党の県会議員が発言したのが目立った。最後に、全日建の菊池中央執行委員長が「国策弾圧は絶対に許さない。勾留中の2人の早期保釈をかちとる」と力強く発言。なお55000円の会場カンパが集まった。 『朝日新聞』静岡版が、この集会を写真入りで報道した。『静岡新聞』もカラー写真入りで100人ほどが参加したと報じた。
川崎市で「差別根絶条例」(上)
在日と市民が勝ち取った!
深津 利樹
12月12日、川崎市議会は「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(差別根絶条例)」を成立させました。2議員が退席したあと、自民・共産・公明・みらい(旧・民主系)の全会派、満場一致での成立でした。 それまで、自民党など右からの反対意見、また「表現の自由の規制は治安維持法につながる」という野党の一部、さらに「人権派」内部からの「法規制反対」、とりわけ「刑事罰反対」という大きな壁もあった上での歴史的な成立でした。もちろん、「差別はダメ」という市条例ができたからと言って、それだけで差別がなくなるはずもありません。 しかし、この条例の成立に対して、4年間がんばってきた日常的に「ヘイトスピーチ」を浴びせ続けられてきた当該の在日当事者たちは涙を流してこれを迎えました。この条例の成立のために先頭にたってきた在日三世の崔江以子さんたちは、しっかりとこの議会を見守りました。 成立後の会見で、一世のハルモニは「ヘイトスピーチが激しくなるなかで、憤りや不安があった。だけどこれで守られているといううれしい思いがしている」と語っています。
800メートルデモ
「在日は出ていけ!チョーセン殺せ!」を叫ぶ「日本浄化デモ」が、具体的に在日朝鮮人が多く住むこの川崎市内桜本に向けて始まったのは2015年11月でした。この年の夏、「戦争法ができるかもしれない」として、川崎市内桜本でたたかわれた「せんそうはんたい」の800メートルデモ。足が痛くて国会周辺までは行けない80歳以上の在日一世が9月5日、地元の商店街でおこなった思い思いのバナーを作っての「ほんの小さなデモ」でした。それを伝え聞いたヘイトグループが、「生意気だ」として悪辣な行動に出たのでした。ハルモニたちの住む桜本までの「ヘイトデモ」の強行。それは何とかデモコースを変更させましたが、まさに「襲撃」でした。
接近禁止処分
翌年1月の再度の「桜本デモ」に対し市民は路上に寝転んでようやく桜本への侵入を阻止したのでした。 その後も、近くの公園や市の施設内での「ヘイト集会」の数々。これらヘイトを批判してたたかう「カウンター」の人々には警官隊が割って入り、ヘイトグループを「防衛」するという状況が続きました。 こうしたヘイトグループの行動に対してカンイジャさんたちを中心にした「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」が取り組みを強化、多くの署名を集め、また司法の場で人権侵害被害を訴えて「桜本周辺500メートル以内の接近禁止の仮処分」を勝ち取りました。国会では16年6月、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」を施行させました。 しかし、この法は、主に理念法であり罰則もなく、対処を自治体に丸投げするだけで実効性が乏しいものでした。確かにヘイトデモは少なくなりましたが、ヘイトスピーチはやり放題でしかありません。 当初「何がヘイトかわからない」などと誠意のない対応をしていた川崎市当局でしたが、それでも「ヘイトスピーチの公的施設利用に関するガイドライン」を作りました。しかし効果がありません。直接の桜本デモや公然とした集会はできなくなりましたが、別の地域に場所を移してのヘイトデモ、「ヘイトスピーチを考える集会だ」などと言ってヘイト集会が強行され、抗議した市民が逮捕されるありさまでした。 川崎駅前でのヘイト集会は事実上継続され、毎回、ヘイトスピーチの強行とそれを阻止するカウンターの人々で騒然とした状況が続いてきました。
条例をつくろう
こうなればこの市条例をつくろうと、弁護士も協力して川崎市当局へ、市議会へと取り組みが続きました。市の作った反ヘイト条例の素案に対してのパブリックコメントには賛成と反対が入り乱れました。ヘイトグループは猛然とこのパブコメに乱入し、「日本人への差別条例だ」などメチャクチャな「意見」を入れてきましたが、私たち市民も賛成や修正の意見を集中して、数においても圧倒できました。 また市の担当課も、ヘイトからの膨大な嫌がらせ電話に必死に対応、ときには1時間以上もの粘る電話に「ていねい」に応えたとのことでした。(つづく)
3面
『教育の自由』は手放せへん
侵略・加害の事実から学ぶ
12月22日、シンポジウム「『教育の自由』は手放せへん!」が、大阪市内でひらかれた。大阪の新自由主義教育に危機感を持つ市民が集まり企画され、主催は12・22シンポ実行委員会。現場教員や保護者など130人が参加し会場は人であふれた。 集会は、平井美津子さん(中学校教員)と斉加尚代さん(毎日放送ディレクター)の講演と、2人の話を中心にしておこなわれた。 2018年10月に共同通信社の報道で、平井さんは紹介された。記事は「慰安婦」問題を中学社会科の授業で取り上げ、生徒とともに考えているという内容。報道は好意的なものであったが、これをきっかけに大阪府議会で平井さんの教育実践が問題にされ、19年3月に不当にも文書訓告「処分」を受けた。府議の対応は、その授業の中身ではなく、もっぱら「慰安婦」問題を授業で取り上げることを批判するものであった。また、府教委の対応は処分ありきで、非常に反動的なものであった。
侵略と加害の事実を
講演で、平井さんは自分がどういう人間なのかを平明に語った。歴史が好きで、生徒に付き合いのよい先生で、生徒と同じ目線で語りあう。テストでいい点をとる授業ではなく、生徒に考えさせる授業を心がけている。「慰安婦」問題を初めて授業で取り上げたのは、キム・ハクスンさんが名乗り出たことだ。平井さんは「戦争で苦労した話だけでは戦争の実相をつかむことはできない。アジア・中国の人たちにとってはどうだったのか。侵略と加害の事実を話さなければ、戦争の本質はわからない。戦争を知らない世代にも、戦争の始末をつける責任がある」と述べた。 2012年2月、「教育再生民間タウンミーティングin大阪」の開催を機に、大阪は「教育改革の実験場」にされてきた。「グローバル社会に対応できる人材育成」(維新の会)の名のもとに、競争原理に立った教育がおこなわれてきた。かつての人権教育は道徳教育に転換されてしまった。教育委員会は教育現場を守るのではなく、政治家の側に与する行政にかわった。
正しい事を教える
MBS放送でドキュメンタリーを制作している斉加さんは、次のように述べた。 「日本ではすでに経済成長の夢がなくなり、新しい展望が見えなくなっている。こういうなかで、現状に希望をもてなくなった人たちがそのひずみをヘイトという形で発現させている。ヘイト集団は他人を委縮させることを喜びとしている。こういう雰囲気は、現代社会の中で醸成されており、安倍政権が垣根を低くしている」。 シンポジウムでは、現場の教員と保護者がともに話し合いながら教育を作っていき、教育を市民の手に取りもどすことを確認しあった。また、政治主導ではなく、子どもたちのために市民の力で「正しい事を教える自由」を勝ち取っていこうという提案がなされた。
読者の声
安倍政権に忖度する判決はゴメンだ
戦争法は違憲、大阪訴訟28日に判決
12月21日、望月衣塑子さんが講演する集会に参加した。私も原告の1人で、安保関連法違憲大阪訴訟の判決(1月28日)を前に、断固勝利しようという集会には300人が参加した。さて、どんな判決を出すだろうか。 望月さんは、伊藤詩織さんのことから話し始めた。伊藤さんは、ジャーナリストの山口氏から性的暴行を受けたと裁判に訴えていた。困難と中傷を乗りこえながら、東京地裁で賠償命令、勝訴をかちとった。 マスコミの体たらくの中にあって、心ある記者やジャーナリストはいる。沖縄、原発、安倍政権の戦争政策、政治の私物化に対し、声をあげ行動することが肝要だ。 腹立たしいのは、安倍首相が山口氏を擁護したこと。首相のお友だち、宣伝マンだからだ。そのためこの訴訟は権力を撃つ場になった。安倍首相の「女性活用」の中味は政権、自民中枢を見ればわかる。高市、丸川、片山、稲田、山谷、島尻、三原と、いずれ劣らぬ極右思想の持ち主たちだ。
圧巻だった意見陳述
2015年9月19日は忘れられない。安保関連法・戦争法が強行された日だ。国会前に10万人規模で何度も集まり、全国で安保関連法反対の運動が広がった。戦争法は先に閣議決定した集団的自衛権行使という憲法違反を基に、すべての法令を準じさせた。それまでの周辺事態法を超え、完全に軍事同盟国・アメリカと一体になり、戦争をするために自衛隊を世界中に派遣できることになった。 いま全国22の地域で25の裁判が提起され、原告総数7704人(大阪1010人)により戦争法違憲訴訟がたたかわれている。札幌、東京地裁では「憲法判断をせず」退けられたが、控訴審に向う。 大阪訴訟は1月28日が判決。口頭弁論12回と最終準備書面まで3年余、19年4月23日の15人の意見陳述は圧巻だった。広島原爆の被爆者、京都]バンドレーダー基地反対住民、自衛隊基地に「海外派兵をするな」と申し入れている人、基地の近くに住み軍事訓練を目の当たりにしている人、台湾人として日本の侵略戦争の恐怖を語った人。次々と陳述し画期的な裁判となった。 望月衣塑子さんの講演会で政権の追い詰め方を学んだ。安倍政権は武器購入などトランプの言いなりだ。安倍政権に忖度する判決など出させてはならない。(戦争法違憲大阪訴訟原告・梶原義行)
『展望』24号
安倍政権の退陣へ
天皇制問題を特集
今号は、最末期安倍政権との対決として、改憲・天皇制・反原発・維新政治とのたたかいを主に特集した。 巻頭論文は、安倍改憲・戦争国家化とのたたかいを軸にして、政治テーマを網羅したうえで、我々=人民の運動の戦略目標をめぐって問題提起をおこなった。ヨーロッパやアメリカなどで「社会主義の復権」を唱えて「資本主義NO!」の声が巻き起こっている。そうした中で日本の左翼運動がどう展望を開くべきかを訴えている。 安倍の先兵として成り立ってきた維新政治は、ここにきて官邸・自民本部との距離感や日程問題や人民の反対との関係で、目玉であった都構想(11月に住民投票)とカジノ・IRと大阪万博が並行的に成り立つかどうかの瀬戸際にある。阪田論文は、維新政治とのたたかいを大阪府・市近辺の住民運動がどうたたかうべきかの素材を提出した。早急に2020年の闘争のイメージを作り上げる必要がある。 高浜原発から関電本店までの「老朽原発うごかすな! リレーデモ」は壮大な取り組みであった。この過程は諸集会を積み重ね、デモコースの道すがら十数人単位で次々とデモに参加し、200キロのデモをやり抜いた。反原発をたたかう無数の個人・市民運動団体、労組、政党・党派がこの取り組みに参加し、関電と政府の原発政策を追い詰めるものとなった。その内容をけん引する木原壯林さんの反原発論文をぜひ読んでもらいたい。 天皇代替わりは4月の「立皇嗣の礼」で天皇代替わり攻撃は区切りを迎える。戦後天皇制においても神権性と象徴性の一体性は隠しようもない。新自由主義と新保守主義が結合した安倍政治では、天皇制をさらに強化するたくらみを隠していない。人民の手で廃止しないかぎり天皇制はなくならない。憲法闘争とともに、新たな天皇制論で武装しなければならない。 沖縄では政府は現地・全国の人民の反対の声を無視して辺野古建設工事・埋め立てを強行し続けている。しかし、埋め立て土砂総量はまだ1%しかない。既成事実で沖縄の民意をくじこうとする日米両政府の攻撃を許してはならない。安保法制=戦争法や秘密保護法に続いて国会審議も抜きに自衛隊の中東派兵等々を積み重ね、実質改憲を狙う安倍政権の改憲・戦争国家化攻撃と対決してたたかおう。(O)
『展望』24号訂正
・102頁の年表
1846→1946
・170頁〜177頁
2行目の19○○を18○○に
(労働法学会有志声明)
組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない
関西生コン事件についての労働法学会有志声明
昨年から今年にかけ大阪・滋賀・京都等の関西地区で、労働組合の委員長を筆頭に、副委員長、書記長、一般組合員などが相次いで逮捕、起訴される事件が発生しています。本年12月9日現在で、組合員の逮捕者数は延べ81名、起訴者数は延べ69名にのぼっています。委員長は6度、副委員長は8度逮捕され、両者とも勾留期間は1年3カ月(460日)を超えています。一般メディアではほとんど報じられていませんが、本件は、連帯労組(全日本建設運輸連帯労働組合)の関生支部(関西地区生コン支部)の組合活動をめぐる事件であり、労働組合運動を理由とする刑事事件としては、戦後最大規模といえます。
本件で威力業務妨害と恐喝未遂の公訴事実とされているのは、1 年以上前の日常的な組合活動です。運転手等の組合員が建設現場で法令の遵守を求める「コンプライアンス活動」も、産業別労働組合や職業別労働組合に見られる一般的な組合活動です。連帯労組は、労働組合法上の労働組合として認められている適格組合ですから、何よりも労働組合の組合活動の正当性の有無の観点から、関生支部の組合活動を判断して対応すべきものです。
現在の警察や検察は、組合活動としての正当性の有無を具体的に検証することなく、連帯労組の活動を「軽微な違反に因縁をつける」反社会的集団による妨害行為と捉えて対応しているとしか思えません。県によっては、「組織犯罪対策課」が捜査主体となり、一部の裁判所が傍聴人席に遮蔽板まで設置するあり様です。労働者の労働条件の改善を求める行為や、法令無視による不公正な競争を防止しようとする組合活動が、当該組合活動の正当性を判断されることもなく、違法行為とされ刑事処罰されるならば、憲法28条の労働基本権保障も、労働組合法による組合活動保障も絵にかいた餅になってしまいます。
また、公訴理由では組合役員や組合員の共謀が強調され、当該組合活動に参加していない者も逮捕、起訴されています。19世紀初頭、コンスピラシー(共謀)を理由に、労働組合運動を弾圧した労働基本権成立史の一コマをみるようでもあります。組織犯罪対策課が捜査主体となって、共謀立証を理由に長期にわたり身柄を拘束するという手法からみると、先に成立した共謀罪法(組織犯罪処罰法)が直接間接に影響を与えているのではないかとも危惧しています。
私たちは、労働法を研究する者として、今回の事件において、警察・検察当局の憲法を無視した恣意的な法執行に強く抗議するとともに、戦後積み上げられてきた組合活動保障を意図的に無視するものとして重大な懸念を表明するものです。警察官や検察官には、憲法遵守義務を負っている公務員として、憲法28条の団結権・団体行動権の保障、その確認としての労組法1条2項の組合活動の刑事免責を踏まえて、適正な法執行に努めることを強く求めるとともに、裁判官には、労組法上の適格組合に対して、「反社会的集団」との予断をもつことなく、組合活動の正当性の有無を真摯に判断することを求めます。
4面
身近な貧困との対決
映画と湯浅誠講演会
神戸
湯浅さんの説得力ある講演に聞き入る参加者(12月15日 神戸) |
12月15日、神戸市内で開かれた「いのちとくらしの映画祭with湯浅誠U」には220人が参加した。主催は、こわすな憲法! いのちとくらし! 市民デモHYOGOやコープ自然派兵庫やコープこうべなど5団体による実行委員会。湯浅誠さんの講演会は昨年に続いて2回目。
「1945年の精神」
前半はケン・ローチ監督の映画『1945年の精神』(2013年作)。第二次世界大戦でナチスドイツに勝利したイギリスだが、空爆による甚大な被害からの復興に必要な物資の製造にあたり、戦争の英雄・チャーチル(保守党)に代わって労働党のアトリー内閣が誕生した。映画はその過程を担ったサウスウェールズ、リバプールやロンドンの炭鉱労働者、鉄道労働者、看護師、地方議員、ジャーナリストたちの証言である。労働党の勝利の根底には、製品やサービスは国民に平等に分け与えねばならないとする「誰もが共有できる社会」がある。それが「1945年の精神」だ。
1980年代、サッチャー政権によって労働組合と地域社会が破壊され、新自由主義が席捲した。新自由主義とのたたかいは今日も持続している。改めて「1945年の精神」を捉え直すことの重要性を映画は説得力を持って訴えている。
住宅政策と貧困
休憩をはさんで湯浅誠さんの講演。「身近にある貧困から目をそらさない事」から語り始めた。自らの家庭がたどった住宅事情に触れ、戦後日本の住宅政策が公営住宅を柱にするのでなく、企業への長年勤続を前提にした住宅ローンよる持ち家制度に偏っていたことから貧困問題を解き明かした。終身雇用が崩れたから貧困が具現化したのである。
長時間労働、過労死、非正規、子どもの貧困は年々深刻化している。その根底にあるのが60年代から80年代までの日本型「雇用による包摂モデル」の傘がどんどん小さくなったことにある。1999年頃を境にこの国の「社会の底が抜け」た。一気にホームレスや路上生活者が社会問題化した。それは敗戦後10年余の貧困とは違う性質ものである。
ホームレスを支援する湯浅さんたちの活動が始まった。食料提供のフードバンク。路上生活から抜け出るためにアパートの保証人提供。子どもの貧困にたいして「子ども食堂」が開設された。時間の関係で「子ども食堂」には十分触れられなかったが、現在、子ども食堂は地域交流や子どもの貧困対策の重要な拠点となっている。最後に湯浅さんは、これからは地域インフラの整備、持続可能な地域づくりが必要であることを訴えた。
集会実行委を形成する5団体とブース展示の9団体は、「身近な貧困」に具体的行動を通じて立ち向かうため、無農薬野菜の提供や各種展示・販売をおこなった。(岸本耕志)
伊方原発差止広島裁判
温排水で海水温7度上昇
伊方原発運転差止広島裁判の本訴第17回口頭弁論がおこなわれた(11月20日、広島地裁)。「被爆地ヒロシマが被曝を拒否する」と書かれた横断幕を持って乗り込み行進(写真)。
原告側は、水蒸気爆発にかんする求釈明申立書、「震源を特定せず策定する基準地震動」の準備書面を提出していることを確認した。次回は3月4日。
報告会と記者会見では、伊方原発から瀬戸内海に流される温排水について愛媛県の原告は「伊方原発は一級河川吉野川の2・22倍量の海水を瀬戸内海から取り入れ、海水中の生物を除去する薬剤などを用い、水温を約7度も高くし放流している」と述べた。
山形・群馬??国主張に怒りの声
福島原発ひろしま訴訟
12月18日、福島原発ひろしま訴訟(広島地裁、賠償請求)の審理がおこなわれた。次回4月22日は、責任論について双方から意見提出すると確認した。
裁判前の交流会と後の報告会では、国の責任を認めない山形地裁判決(17日)への批判と、群馬訴訟控訴審(9月17日)で、国側が「自主避難者の損害を認めるのは、避難しなかった住民がいることから不当である」と主張し、「居住する住民の心情を害し、我が国の国土への不当な評価となり、容認できない」としたことに批判が続出した。
(江田 宏)
アウシュヴィッツへのひとり旅(最終回) クラコフからアウシュヴィッツへ 山路 道夫
「働けば自由に」とかかげられた収容所正門 |
5日目の朝、ワルシャワ駅から特急列車でクラコフ駅へ。2時間強で到着。現地の若いカップルが親切にも、一緒に歩いてホテルを探して見つけてくれた。本当に感謝の気持ちで一杯で熱い握手を交わした。ホテルが建っている通りは、古い年月の歴史を感じさせる住居とお店が入る5層くらいの建物がぎっしり並んでいて、違う世界に出会ったようでまさにサプライズだった。チェックインには間があるので、フロントで「おいしい」からと教えてもらったレストランでポーランド料理を注文し満足した。
そのあと、近辺の散策へ。ここにもバルバカン(古い要塞)があった。中央広場へ行くと、まさに、文化と歴史が織り交ぜられたような建物群に囲まれた、独特の雰囲気漂う空間だった。やはり、ここは、ヨーロッパ・ポーランドの古都なのだ。大勢の人達が休日を楽しんでいた。
6日目の雨の朝、バスでアウシュビッツへ。80分くらいで着いた。かなりの数の入場者。入場料を払い博物館内へ。妨害者の入場阻止チェック体制もひかれていた。収容者の遺品が目に入る。旅行鞄、松葉づえや義足、眼鏡、髪の毛、金歯など。最も印象に残ったのは、殺された人たちの靴の山だった。子どもたちだけの靴の小山を入れて、4つの靴の山。
ガス室に追い立てた人達を殺すのに使われた、チクロンという有毒ガスの空き缶。ガス室と焼却炉も目にした。あとで知ったのだが、母親にしっかり抱きかかえられて奇跡的に生き延びた赤ん坊もその後、生きたまま焼却炉に放り込まれたとのことだ。
雨が降ったら、室内が水浸しになる構造の独房。処刑台。「ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)」という文字が掲げられている収容所入口のゲートも目にした。帰国して知ったのだが、収容所から逃亡者が出た場合、みせしめで10人が選別され餓死させられたという。共産主義者、ポーランドの政治家や知識人、ロマ民族、「障害」者、ソ連兵捕虜などもここで殺されたとのこと。
強制収容所の数は、驚くことにドイツ・ポーランド・周辺国を合わせて1000カ所という。ヒトラーとナチスは、ユダヤ人をこの地上から一人残らず抹殺するつもりだったのだ。こうして見ると、ナチスの反ユダヤ主義はこの世界に存在する誰にとっても、絶対に許すことができないのだ。これは将来においても私達が向き合わなければならない問題なのだと思う。
8日間の行程での体験は、めったに出来ない貴重な体験で、これからも私の記憶に残り続けるだろう。特に、人々とのちょっとした触れ合いは、心温まる人間らしい旅となった。(おわり)
(コラム)
私と天皇制 (最終回)
天皇制は差別の象徴・歴史修正主義の典型
それを支える精神的土壌を突き崩す努力を
安倍内閣とメディアによる韓国へのレイシズムは、とどまるところを知らない。
さらに最近インターネット上で、被差別部落の人たちをさげすむ書き込みが急増しているという。
「貴族あれば賎民あり」――部落解放運動の父≠ニ呼ばれた松本治一郎の名言である。「貴族」の頂点に位置するのは天皇である。
天皇を崇拝する人にその理由を尋ねると、「皇室は何千年も同じ血筋が続き万世一系だから」と答える人が多い。
私は軍国ガキのころ、旧制中学生の兄から「百何十歳も生きた天皇が何人もいたなんて絶対ウソだ」と聞かされていた。だから万世一系神話に洗脳されなかった。
5世紀から6世紀にかけて継体天皇という珍奇な名前の人物がいた。「応神天皇5世の孫」と『日本書紀』に記されている。天皇家の血筋が絶えたので、越前(現福井県)の大豪族を皇位継承者として迎え入れようとしたのである。
慎重な彼は北摂地方(現大阪府北部)を20年間も転々として、中央の政情を伺い根回しをしてから都があった大和(現奈良県)に入った。「万世一系」は歴史の偽造に過ぎない。
昨年末死んだ中曽根元首相は「日本は優秀な大和民族の単一民族国家である」とか「天皇は中空に輝く太陽のような存在である」などの迷言を吐いた。
彼の功績とされる国鉄民営化で、200人近い労働者が自死に追いこまれ、何万人もの労働者が職場を追われ路頭に迷った。
天皇はその中曽根に、大勲位菊花大綬章を授けた。
そもそも民族の純粋性や優秀性を主張するのは、ナチズムと同列である。
被差別部落の人たちや「在日」の仲間を見下す心根と、天皇を崇める気持ちはコインの裏と表である。ほとんどの日本人はさまざまな矛盾を感じ、安倍内閣の不様な姿にあきれ果て、苦しい生活を味わっている。しかし、国家権力や大資本に向けて怒りを爆発させることなく生きている。なぜか?
上記のような精神的風土に身をおくことで、一定の満足感と心の平安を得て、そこから抜け出たくないと思っているからではないだろうか。
こうした精神構造をぶち破らない限り、日本社会の根本的変革はありえない。
お互いに、そのための努力を日々の生活のなかで、意識的に遂行していきたい。(拙いコラムに長い間お付き合いいただき、ありがとうございました)(Q生)
5面
論考 ナショナリズムと主体性(上) 請戸耕市
歴史問題と日韓対立から考える
「未成年状態」
本紙283号請戸論文で紹介したハンギョレ新聞・論説を再掲する。
「安倍の暴走は韓国には経済的脅威だが、日本国民にははるかに根本的な脅威である。日本国民が目覚めなければ、日本は安倍の妄想とともに永遠の未成年の孤立状態に閉じ込められるしかない。韓国国民の安倍反対闘争が持つ超国家的意義がここにある。一斉不買運動を軸とした韓国の反安倍闘争が日本国民の覚醒を促し、韓日の市民社会の共闘に上昇すれば、この闘争は東アジアに新しい平和秩序を創出する原点になれるだろう」(コ・ミョンスプ論説委員 8月22日)
本稿ではこの提起に応答したい。「未成年状態」および「韓国の反安倍闘争の超国家的意義」の2点である。
まず、「未成年状態」から。これは恐らくカントの「未成年とは、他人の指導がなければ、自分自身の悟性を使用し得ない状態」を念頭に置いている。つまり、歴史問題(日本の侵略戦争・植民地支配の被害と責任をはじめとする問題)が韓国の民衆運動の側から提起されているが、それにたいして日本の民衆が、問題解決の主体として立ちあがっておらず、どこかで指導的な誰かに判断を預け、結果、安倍政治を支えている現状を指している。忸怩たるものがあるが、正鵠を得た指摘である。
なぜそうなっているのか、何が問われているのか。
【T】天皇と朝鮮侵略
問題の原点は、天皇制とその下での近代国家の形成という明治維新そのものにあると考える。
(一)天皇と朝鮮服属
明治維新とは、封建制国家から近代国家への変革であったわけだが、〈朝鮮を服属させて天皇を復古させ、神州国家としての国体を確立する〉という日本のナショナリズムが、その推進力であったことを見る必要がある。
幕末・明治の代表的な知識層・指導層の言説によく表れている。
吉田松陰「朝鮮は昔、日本に服属していたのに、今はおごっている。本来の関係に戻さないといけない」「軍備が整ったら、蝦夷を開墾し、カムチャッカ・オホーツクを奪い、琉球を屈服させ、天皇に拝謁させ、朝鮮を攻めて昔の服属関係に戻し、さらに満洲・台湾・フィリピンを手に入れる」(『幽囚録』1854年 現代語訳・要旨)
福沢諭吉「朝鮮国は未開なので(文明に)導こう。朝鮮人が頑迷に抵抗するならば、武力を用いてその進歩を助けよう」(時事新報「社説」1882年 現代語訳・要旨)
「天皇」という称号
「天皇」号は7世紀後半頃に成立するが、『日本書紀』の〈天皇が、朝鮮半島の諸国を服属させている〉という作り話の上に成り立ち、中国皇帝を意識し、中華帝国のミニチュア版を志向したものだ。古代に形成された〈天皇とは、朝鮮を服属させるべきもの〉〈朝鮮は、天皇に服属すべき蕃(ばん)国(こく)〉という見方が、中世・近世の歴史に一貫して伏在し、近代に復古する。
王政復古としての明治維新とは、〈朝鮮を服属させている天皇〉の復古。だから、復古すべき古代の理想として、天皇の浮上とともに征韓論が台頭する。そして、韓国併合=朝鮮の植民地支配は、天皇が名実ともに天皇になったということを意味する。このように、〈天皇と朝鮮服属〉は、国体の核心問題として不可分なのだ。
日本のナショナリズム
ところで、ナショナリズムとは、国内的な統一と対外的な独立を追求することで、近代国家(国民国家、民族国家)を形成・強化する思想・政策・運動だ。ナショナリズムの推進構造は、自己に対して他者を人為的に創出し、その他者を蔑んで、他者に対する自己の優越意識を醸成するところにある。そのことによって、民衆自身が、自己を〈大きなもの=支配的な人種、国家、民族〉に同一化させ、もって「国民」として結集していく。
自己に日本、他者に朝鮮を代入すれば、日本のナショナリズムである。そして、天皇制を軸とした近代国家の形成過程を端的に整理すると―内外する危機への強い危機意識を動機に、(1)朝鮮を服属する天皇、朝鮮に対する強い蔑視、(2)「万世一系」という荒唐無稽な優越意識、(3)文明や国家、イエやムラなどの疑似的な普遍の押し出しと反対者の排除、(4)文明と野蛮という二分法による侵略の正当化―とできるだろう。
内外する危機
外から列強の脅威があり、それが内なる秩序の動揺と結びついて、日本社会の秩序が瓦解するのではないかという強い不安と恐怖。自由・平等などの普遍的価値を掲げる西洋の近代文明が日本に流入すれば、身分制的な秩序が瓦解することへの恐れ。そこには、民衆への蔑視と恐怖がある。
幕末・明治の知識層・指導層―政府、在野、民権派を問わず―の共通の問題意識は、社会秩序の崩壊は絶対に回避しつつ、近代化を達成するにはどうするかということであった。そこから、様々な思想家・知識層が百家争鳴する中で、上記の(1)〜(4)のイデオロギーが選び取られて行った。(1)「朝鮮服属」は上で見た。
万世一系
「万世一系」とは、〈皇統が途絶えることなく続いてきた〉というフィクションだが、それは、何よりも、〈社会秩序は絶対不変。変わらないし、変えてはならない〉と強く迫るものである。同時に、中国では易姓革命によって支配秩序が転覆されるが、〈秩序転覆がなく「万世一系」の天皇が続く日本は素晴らしい〉という優越意識の根拠とされた。
疑似的普遍
文明や国家という時代の普遍的価値をまとう。あるいは、通俗的な道徳、イエやムラの共同性・紐帯などの民衆の常識的な規範を回収し、天皇こそ「公」「無私」の体現者として押し出される。単純なむき出しの階級権力ではなく、一見反駁しがたい疑似的な普遍を振りかざし、もって反対・抵抗を異端として排除・弾圧する。
野蛮を駆逐する文明化
加えて、福沢諭吉などの脱亜論的な「文明化」の主張であった。侵略戦争も植民地支配も、「野蛮」を駆逐する「文明化」の戦いとして肯定される。そして、天皇こそ、近代化=文明化の指導者として押し出される。
以上が、日本のナショナリズムであり、歴史問題の原点である。
(二)戦後体制への継続
次に、戦後について。明治以来の侵略と戦争の末に、日本は完膚なきまでに敗北した。そこで日本のあり方を総括・清算すべきだった。総括・清算するとは、〈天皇と朝鮮服属〉という国体の核心問題をえぐりだすことだ。
多くの人は、敗戦をもって「暗い戦前」から解放され、「明るい戦後」になったと断絶性をもって語ってきた。しかし、事実は断絶ではなく継続である。「天皇は役に立つ」「天皇を排除すれば、日本は瓦解する」(マッカーサー)という米占領軍の対日政策によって、天皇は、戦争責任・植民地支配責任の追及を免れる。そして、〈天皇と朝鮮服属〉という国体の核心問題は、なんら総括・清算されることなく、戦後憲法と65年日韓条約をはじめとする戦後体制に継続され、戦後民主主義の土台をなしてきたのである。
@戦後憲法とA日韓条約について、〈天皇と朝鮮服属〉という国体の核心問題の継続を確認する。
天皇制民主主義
現行の日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3点を基本原理とし、その点で大日本帝国憲法から転換していると言われる。本当なのか。実態は「天皇制民主主義」(ジョン・ダワー)である。
現行憲法の公布に際して、帝国憲法で「主権者」「元首」「統治の総覧者」「大元帥」と規定されている天皇の言葉「上諭」が、帝国憲法下の規定により、現行憲法に付されている。「朕(ちん)が…裁可しこれを公布せしめる」、「(日本国憲法は)帝国憲法の改正」であると。
国民主権をうたう憲法が、旧憲法の天皇によって「裁可」「公布」され、しかも「帝国憲法の改正」、つまり継続であると宣明している。
憲法の第1条から8条までは天皇に関わる条項になっている。「主権は国民に」と言いながら、国民に優先して天皇が規定されている。「すべての国民が法の下に平等」といいながら、国民の上に天皇を置いている。
「国家及び国民の統合」が、天皇によってなされると規定している。また、天皇は「国民の総意」と規定するが、これは言い換えれば、「国民」たる要件は天皇を認める者、そうでないものは「非国民」という意味になる。
このことは、現行憲法施行の前日、帝国憲法下最後の勅令・外国人登録令によって、朝鮮・台湾の旧植民地出身者を「国民」から排除し、もって憲法を施行したことと一体である。
天皇は、旧憲法の「元首」から「象徴」に転換したと言うが、公式見解では、「外交関係においては国を代表するから、現行憲法のもとでも元首である」(88年 内閣法制局)
旧憲法と同名かつ骨格も継承した「皇室典範」が、憲法にあらかじめ書き込まれている。その皇室典範では、皇位継承に関して、露骨な身分差別・女性差別・障害者差別が規定されている。
以上のように、日本国憲法は、国民主権や民主主義を謳っているが、それが天皇を軸に構成されているまさに「天皇制民主主義」。天皇制と民主主義という相矛盾する概念が併存している。そして、「上諭」が示している通り、誰が憲法を制定したのかという憲法制定権力についていえば、歴史的な経過としても、理論的な解釈としても、人民が自らの意志と力でかちとったとはいえない。
65年日韓体制
日韓基本条約は、〈植民地支配は正当・合法〉という立場を確認し、憲法と一体で、〈天皇制と不可分の朝鮮服属〉という国体の核心問題を護持した。(つづく)
(冬期カンパのお願い)
郵便振替
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前進社関西支社
6面
まっちゃん、これでええかな(上)
特殊学級のこどもたち
脳性まひ者の生活と健康を考える会
元関西青い芝の会連合会会長
古井正代さん
昨年5月12日、全国青い芝の会副会長で広島青い芝の会副会長でもあった故松本孝信さんの1周忌の集いが広島県尾道市で開かれた。この時の古井正代さんのお話を許可を得て再掲する。古井さんと松本さんとは兵庫県姫路市で小学生時代の同級生だった。おふたりの歩みは日本における脳性まひ者の解放闘争史そのものである。(6回連載)
松本孝信さん。2018年4月18日、腸閉塞の悪化のため亡くなった。松本さんを青い芝の会運動に誘い込んだのは古井さんだった。 |
そんで、まっちゃんの学校ではね、特殊学級の子は正門から入ったらいけなかったんですって。正門から入るのは健全児の子どもだけ。特殊学級の子は裏門からしか行かせへんいうことやったらしい。
そういうことで、まっちゃんと小2の時出会ったんやけど、そこの養護学校の中にも特殊学級をつくりおった。1960年6月1日に開校したんやけど、姫路におった特殊学級の子や普通学級の中の障害児を全部かき集めてつくったんや。田舎の方の廃校にした古い要らないような建物を養護学校にした。町の中においとかれんいうて、嫌がられて。廃校いうてわかるように、トイレはぽっとん便所、二階もあるし段もある。皆が思うとるような養護学校と全然違う。二階の教室に行く時には、まっちゃんは走ってるからトコトコっと行くんやけど、私ら歩けんから親が背負て上がるとかや。校舎もボロやから、窓を触るだけで手にとげが何本も刺さる。冬になると教室の真ん中に石炭ストーブがあって、毎朝学校にいったら、「寒い寒い」といいながら障害児が自分らでバケツに石炭くんできて火をつける。火が切れかけたら、まっちゃんは「わしが行ったる」というて、ようバケツもって走って行ってくれよった。養護学校というても皆さんが想像するようなものは一つもない。
私なんか、ぽっとん便所に足落としてクサイクサイ! そんな状態の養護学校。こんな話を聞いただけでもわかるように、障害児のためなんて全くない。排除するためだけの目的でしかない。わかるでしょ? 出来た経緯聞いたら、皆の目の届かない所に追いやっただけの話。
その養護学校の中に特殊学級つくってね、まっちゃんのクラスは特殊クラスやってん。私は普通クラス。おかしいでしょ? なんで養護学校に特殊学級つくるねん。一学年一クラスを真ん中で分けて特殊学級を作っていたんや。まっちゃん、もともと勉強嫌いやし、宿題もして行かへん、私の学年の脳性マヒのほとんどが特殊学級。片っ端から集めてるから、脳性マヒでも木の車イスに体を帯紐でくくりつけなあかん寝たきりの子もおれば、左手の指が3本ないだけのような子もいてんねん。ソーセージが喉に詰まっただけで死んだ子もいてた。一日中、学校の中を飛びながら走り回って楽しそうに歌を歌っている子、みんな放置していて色んな子が勝手に好きなことしとった。壁に頭突きしとる子もおれば、要するに障害持ったあらゆる子を集めたのが養護学校やねん。教師も、他の学校で暴力沙汰を起こしたような教師が集まって、よその学校におられんような奴が養護学校に来てた。そんなごっちゃまぜ、寄せ集めの中で、まっちゃんは反抗するから、目つけられて、ようどつかれとった。だから養護学校反対は、まっちゃんの得意分野やった。(つづく)
連載
命をみつめて見えてきたもの C
ガンは「先祖がえり」?
有野 まるこ
免疫学者・安保徹さんは、長時間労働や悩みで過度のストレスがかかると《低酸素・低体温》の状態になりガンなどの病気を発症すると警鐘を鳴らしてきた。そしてガンは過酷な環境下で生き延びようとする細胞の「先祖がえり」で「敵」ではないという。
細胞内には「解糖系」と「ミトコンドリア系」という性質の異なる二つのエネルギー工場がある。解糖系は酸素を使わずに瞬時にエネルギーを生みだし、エネルギー量は少なく、瞬時に消費される。例えば全力疾走するとき呼吸はしてない。使う筋肉はミトコンドリアの少ない細胞で構成された白筋、短時間で燃料切れになる。他方ミトコンドリア系は瞬発力・即効性はないが膨大なエネルギーを生み出す。長距離走の時に働くミトコンドリアの多い赤筋や内臓筋などを使う。ミトコンドリアは一つのブドウ糖分子をもとに解糖系の18倍のエネルギーを生み出し、一つの細胞内で数百から数千が活動。この膨大なエネルギー生産によって人間のような進化し巨大化した生物たちの生命活動を支えている。
ガン細胞はミトコンドリアが極端に少なく、解糖系のみを働かせて分裂・増殖をくり返し、正常な細胞のようにアポトーシス(自然死)しない。安保さんは細胞のガン化について、生命の進化の過程を遡り、次のように解き明かしている。
生命体が誕生した28億年前、地球の大気には酸素がなかった。初期の原始生物は無酸素の世界で糖を分解してエネルギーをつくり分裂しながら繁殖する「不老不死」の単細胞生物。その中から、20億年くらい前になると光合成菌が出てくる。太陽エネルギーを利用して水と二酸化炭素から糖質を合成し、老廃物として酸素を出す菌。それで大気中に酸素が含まれるようになる。無酸素の世界で生きてきた従来の原始生物は生命の危機に陥り、そこで出現したのが酸素を使って効率よくエネルギーを作る細菌。これが初期の原始生物に寄生して細胞内の小器官であるミトコンドリアに変化していった。この寄生=合体の過程は8億年くらい不安定な状態が続いたあと一体化したと考えられる。原始生命は細胞内にミトコンドリアを抱えることで多細胞化できるようになり、成長・変化・死の過程で遺伝によって子孫を残すという世界に入る。一方で合体せず生き延びた細菌たちは今でも分裂をくり返し、不老不死の世界に生きている。(つづく)
生活保護基準引き下げ違憲訴訟勝利のための署名の訴え
2012年、生活保護基準引き下げを公約にして政権復帰した安倍政権は翌13年、最大10%の生活保護基準引下げを強行した。保護基準は最低賃金や就学援助など日本の最低生活保障の参照基準となっている。保護基準引き下げはさらに下方にむかって日本社会の格差拡大をつくり出す。
一昨年10月からは3度目の保護基準の引下げが強行されている。65歳以上の高齢世帯は月額5770円〜6600円の減額となり、母子加算は月額2万1000円が1万円と半額以下になった。そもそも最低限度の額とされているのにそこからさらに引き下げることは人らしく生きる権利を否定することである。
こういう安倍政権に対し全国で1000人を超える生活保護利用者が原告となって生活保護基準引き下げ違憲訴訟を全国29地裁で起こし、この8年間、闘われてきた。その裁判が今、ヤマ場を迎えている。全国で最初に判決が予定されているのは名古屋地裁である。名古屋地裁は証人尋問が終了し、4月初めころに判決の予定だ。
あまりにひどい国のやり方に、社会保障審議会の部会長代理だった日本女子大名誉教授の岩田正美氏が原告側の証人として立つなど、多くの論点で弁護側は事実に基づいて国を追いつめてきた。朝鮮学校の訴訟で全国で唯一勝訴判決を大阪地裁が出したことは記憶している方も多いだろう。このときの右陪席が名古屋地裁で本件の裁判長になっている。原告の意見をきちんと聞き、訴訟指揮も誠実におこなわれている。
全ての論点で勝っていても裁判で勝つとは限らない。名古屋で裁判闘争を支えている〈生活保護基準引き下げ反対愛知連絡会〉から署名の訴えが出されている。この歴史的裁判に勝利し、安倍政権に痛打を与えよう。
署名用紙は「いのちのとりで裁判」と検索すると、ホームページからダウンロードできる。1月20日が第一次締め切り、2月末が第二次締め切りとなっている。全国から署名の集中を。