未来・第284号


            未来第284号目次(2019年12月19日発行)

 1面  来年は老朽原発を廃炉へ
     関電の不正環流金に怒り

     辺野古新基地
     不屈の闘いが工事を阻む
     土砂投入1年目の大行動

 2面  東大阪で反原発市民デモ
     奈良からリレーでつなぐ
     12月1日

     関電に申し入れとデモ 

     兵庫コース、94`を踏破
     市民団体の連携で成功

 3面  琉球遺骨返還裁判
     京都大学が組織的に盗骨
     原告弁護団が事実明らかに      

     アイヌ民族の遺骨を郷土へ
     「民族共生象徴空間」反対!
     11月24日     

     『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯』
     ドキュメンタリー映画 監督:佐古忠彦(2019年制作)

 4面  焦点
     『反日種族主義』の思想
     実証主義による嫌韓ヘイト
     請戸耕市

     12カ国44団体が良心宣言
     「文喜相案」の破棄求める

 5面  大阪府下で採択撤回を
     育鵬社などの教科書 来年は正念場
     11月30日全国集会

     読者の声
     「やっぱりそうか」
     75歳以上の医療費2割負担

     アウシュヴィッツへのひとり旅 (第3回)
     ユダヤ人歴史博物館
     山路 道夫

 6面  加害の歴史を忘れない
     「南京の記憶をつなぐ2019」
     12月1日 大阪

     連載
     命をみつめて見えてきたもの B
     自然治癒力を発揮
     有野まるこ

       

来年は老朽原発を廃炉へ
関電の不正環流金に怒り

青森、福島、東京、大阪、四国、鹿児島から1人1分アピール(12月8日 大阪市内)

12月8日、「老朽原発うごかすな! 関電包囲大集会」が、大阪市北区にある関西電力本店前でおこなわれた。11月23日に高浜を出発したリレーデモは、この日に関電本店前に到着した。関西各地でリレーデモをたたかった人、原発マネー還流に怒る人など、全国から関電前に1100人が集まった。
集会は、@関西各地でおこなわれたリレーデモの報告、A全国の原発訴訟団からの報告、B老朽原発立地地域からの報告、C福島原発事故による避難者からの報告、D原発に反対する市民団体からのアピール、E労働組合からのアピールなど、もりだくさん。
まず、関西各地で取り組まれたリレーデモの様子が生き生きと報告された。今回、デモにたいする反応が非常によく、住民は関電の原発不正マネーに怒っている。各地域で、あらたな広がりを作り出すことができた。
次に、〈福井原発訴訟(滋賀)〉弁護団長の井戸謙一さんは「原発の安全性の考え方が変わった。国は絶対的安全性をすて、相対的安全性が確保されていれば、原発を稼働してもよいと言っている。こんなことを許してはならない」と警鐘をならした。〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉は、「告発人が3000人を超えた」と報告。

原発と共存できない

3・11福島原発事故からの避難者を代表して、森松明希子さんが次のように訴えた。「福島原発事故から8年8カ月。わたしの家族は未だにバラバラに生活している。原発は一度事故を起こせば、取り返しがつかない。事故によって、幸福に生きる権利が奪われてしまうのだ。しかし、関西電力は今も原発にしがみついている。わたしたちのたたかいは、この原発を認めるかどうかだ。原発とは共存できない」。
また、福島に住む女性は「フクシマが忘れ去られ、利権にまみれるオリンピックなどはいらない。関電は、不正還流をする金があるのならば、わたしたちにまわせ」と怒りをぶつけた。
原発に反対する市民団体からは、次のような発言があった。再処理工場―核燃料サイクルがいまだ生き残っており、これを粉砕する必要があること。来年4月からおこなわれる「新検査制度」は電力会社のフリーハンドを許すものであること。原発は気候温暖化を解決するのではなく、むしろ推進するものであること。また、古井正代さん(脳性まひ者の生活と健康を考える会)は、「福島原発事故で出生前診断が持ち出され、生まれる前に殺されている。障がい者が殺される社会になっている。こんな社会を変えるには、原発をなくすことが必要だ」とアピールした。
労働組合からは、「電力会社は40歳以上の非正規雇用労働者を被ばく労働に従事させようとしている」と、被ばく労働の実態が報告され、「原発に反対する集会に、労働組合の参加が少ない。これは電力総連が連合を押さえているからだ。ここが課題でもある」とアピール。
最後に、木原壯林さんがまとめのアピール。「本日の行動で、関西電力は怒りの鉄鎚にふるえている。来年は、老朽原発を廃炉にする年としよう」と述べた。来年は、老朽原発の再稼働阻止にむけ、大行動が準備されている。この力で、関西電力と安倍政権にノーを突き付けていくことを全体で確認した。

解説

多彩な企画、思いを一つに
4コースでリレーデモ実施

11月23日、関西電力高浜原発前(福井県高浜町)を出発した「老朽原発うごかすな! 高浜〜関電本店リレーデモ」は、12月8日関電本店前に到着した。
高浜原発前、高浜町、おおい町、小浜市、若狭町、滋賀県高島市、大津市、京都市、向日市、長岡京市、大山崎町、高槻市、茨木市、吹田市をつないだリレーデモは12月7日大阪市に入った。そして12月8日、天神橋8丁目の関電営業所前を出発したリレーデモ隊は午後1時すぎ関電本店前に到着した。
16日間にわたって「老朽原発うごかすな」の声を上げ続けたデモは、大津、京都、大阪に入るとともに参加人員も増え、連日100人以上の人が参加した。また、今回のリレーデモには多くの激励や励ましの声が寄せられた。連日『リレーデモニュース』が発行され、毎日の行動が、参加者によって報告された。高浜からつないできた「老朽原発うごかすな」の思いや直接表にあらわれていない多くの人々の思いをひとつにして、リレーデモは貫徹された。
また今回は、福井県あわら市を出発し福井県内を結ぶリレーデモ、姫路―神戸―尼崎―関電本店を結ぶ兵庫リレーデモ、奈良―東大阪の行動など多彩な企画が繰り広げられた。
12月8日の「老朽原発うごかすな! 関電包囲大集会」には関電本店前を埋めつくす1100人が参加して成功を収めた。この成果の上に、なんとしても老朽原発再稼働の策動を打ち破ろう。老朽原発=高浜1、2号機、美浜3号機の廃炉を勝ち取り、原発全廃の展望を切り開こう。

辺野古新基地
不屈の闘いが工事を阻む
土砂投入1年目の大行動

カヌー66艇、抗議船4隻80人で海上行動を展開(3日 名護市安和沖)

昨年12月3日、名護市安和の琉球セメント安和桟橋から辺野古埋め立てのための土砂が初めて搬出され、同月14日から辺野古の海への土砂投入が始まった。それから1年、琉球セメント・安和桟橋をめぐって陸と海からの抗議行動が不屈にたたかわれている。初搬出から1年目となる12月3日、安和海上大行動がおこなわれた。私は兵庫のカヌーチーム仲間と、ガット船(土砂運搬船)の出港を阻止するために参加した。
12月2日、抗議船・平和丸に乗って工事の進捗状況を見た。今年7月に来た時と比べて工事が進んでいるという印象はなかった。
この日の午後はキャンプ・シュワブゲート前で抗議行動に同行した神戸の仲間が、「神戸市議会に辺野古をめぐる意見書を採択させるための請願署名を始めた。沖縄と本土の仲間の協力を」とアピールした。
3日早朝、テント村2に集合し、安和へ向かった。安和桟橋には、石炭運搬船が接岸し作業していた。この日はカヌー66艇と抗議船4隻、80人で海上行動をおこなった。安和桟橋沿岸に集まった150人とともに陸海一体となった集会を開いた。

埋め立ては1%

集会では、ヘリ基地反対協共同代表の安次富浩さんが「いま工事は辺野古埋め立てに必要な土砂総量の1・1%しかできていない、あきらめることなく不屈にたたかい続けよう」と呼びかけた。オール沖縄会議共同代表の稲嶺進さんは「一人ひとりがさらに輪を大きくすることで勝利をつかむことができる」と発言。12月2日から4日にかけた行動で、ガット船への土砂積み込みと出港を阻止した。(高)

(お知らせ)

2020年1月の発行日変更のお知らせ
2020年1月の発行日は、1月9日(木)、1月23日(木)になります。2月以降は通常通り第1、第3木曜日発行です。

2面

東大阪で反原発市民デモ
奈良からリレーでつなぐ
12月1日

「老朽原発うごかすな!高浜原発から関電本店まで200キロリレーデモ」の一環として、12月1日、東大阪市内で原発再稼働反対「市民デモ」がおこなわれ100人が参加した。主催はオール東大阪市民デモ実行委員会。リレーデモへの関心が着実に高まっている。デモは中小阪公園から小阪商店街、布施商店街を通って布施駅前までおこなわれた。
11月23日のリレーデモの出発式(高浜町)にはオール東大阪市民実行委員会から3人が参加した。代表して村上周成さんが現地の様子を報告。若狭の地元の人たちが応援する姿を生き生きと伝えた。
東大阪市に隣接する奈良県から、さよなら原発なら県ネットの堀田みえこさんが発言。奈良県では地域に入っていけるグループをつくろうということで労働組合やその他で奈良市、生駒市、桜井市など7つの地域で反原発のグループをつくって7年になる。奈良市では若い人たちが中心になって毎週、反原発の金曜デモを雨の日も雪の日もおこなっている。JR奈良駅から関電奈良支社まで歩道を歩いてデモをしていると、取材しているカメラマンから「歩道を歩くデモなのに警察官がつくというのはめずらしい」と言われた。私たちの申し入れにたいし、社屋の外でしか会わないという関電の対応に、代表が激しく抗議しロビーで受け取るところまで押しこんだことも報告された。
金剛山のふもと、大阪府河内長野市からの参加者は、同市では12月11日のデモが32回目のデモになると報告。平日の朝10時にデモをおこなうが、高齢者が多く50〜60人、多いときは100人くらいが集まる。同市ではデモに対するアレルギーがなく小学生や中学生がコールをマネして手を振ってくれたりするとのことだった。
東大阪市内の安藤真一牧師は、日本を訪問したバチカンのフランチェスコ教皇の言葉を紹介した。教皇は「核による抑止はまちがっている。それはけっして人々を幸福にしない」と述べただけでなく、帰る飛行機の中で「原発はやめるべきだ。事故は絶対防げない」と原発にたいしてはっきりとした姿勢を示したことを紹介した。さらに安藤さんは原子力規制委員会が女川原発の規制基準審査で合格証を出したのはその翌日であることを指摘し、こんな政治的対応は許せないと怒りを込めて弾劾した。「さよなら原発」ではなく、「さよなら安倍」ですよねと言うと、会場から大きな拍手が起こった。
集会後、市内をデモ行進。駐輪場にいた男性は、外に出てきてデモに注目。スーパーの前では、うなづきながらデモに注目する人も。張り子の「牛」と「怒 再稼働モウゆるさない!」と書かれたむしろ旗も登場して沿道にアピールした。

関電に申し入れとデモ 奈良

11月29日、「老朽原発うごかすな 奈良実行委員会」は、奈良市で関西電力にたいする申し入れとデモをおこなった。この日午後4時から、実行委員会代表13人が関電奈良支社にたいして抗議の「申し入れ書」を提出した。
申し入れの内容は、「1.関西電力の 不透明かつ不正な原発マネーの流れの中で 貴社及びその役員の私的利益のために進めた原発の建設再稼働に強く抗議します。2.関西電力のコンプライアンス体制が地に落ちていることが明らかになった今、貴社が所有するすべての原発の即時停止と廃炉を求めます」というもの。
その後、JR奈良駅前広場に集合(写真)。毎週金曜日に再稼働に反対して関電奈良支社前までデモをおこなっている「脱原発―奈良でも行動」の仲間と合流して、50人で「再稼働反対」「老朽原発動かすな」を叫びながら、関電奈良支社へ抗議のデモ行進をおこなった。

兵庫コース、94`を踏破
市民団体の連携で成功

リレーデモ最終日、兵庫県下9区間のリレーデモに参加した人々が阪神尼崎駅前に集合

老朽原発うごかすな! リレーデモ兵庫コースは、最終日の12月8日、阪神尼崎駅前に集まり、大阪関電本店前まで9キロのコースを歩ききった。11月2日に姫路を出発し、11月中旬には神戸3区間、そして阪神間3区間の最後がこの日。94キロ・9区間を9日で兵庫県南部を横断し、各地の反原発・脱原発運動と市民運動・社会運動がひとつに繋がった。2人の仲間が全区間を踏破した。
この日午前10時の阪神尼崎駅前には、地元尼崎・阪神間だけでなく、神戸・明石・加古川・姫路からも集まりその数85人は最終日ならではの最高数。これまで8区間が合計が320人だから、総計400人を突破したことになる。集会では、「さいなら原発尼崎住民の会」が司会をし、参加の丸尾牧県議や4人の尼崎市議や尼崎共同行動などから挨拶を受けたのち、全員で記念撮影。
10時半、デモはアルカイックホールから国道2号線に入り、大阪との境の左門殿川までは南側の歩道を2列で。川を越え大阪市に入り、佃公園から西梅田公園までは国号2号線車道を3列でデモ行進。天気も良く並行して宣伝カーがリレーデモを宣伝。車から手をふる人も多く、野球大会に参加の中学生からも声援が飛ぶ。1時半に無事、西梅田公園に到着。
関電本店前には既に、福井をはじめ鹿児島川内、愛媛伊方、東京、名古屋をはじめ全国の仲間が結集、2時から集会が始まった。司会はさよなら原発神戸アクションの小橋かおるさんが務めた。この日関電本店前には兵庫から100人以上の仲間が参加したが、大阪での闘争に地域・団体をこえて100人以上が一塊りになって参加するのは画期的出来事。老朽原発うごかすな! のリレーデモは、市民団体の団結力を大いに高めた。

8回目の反原発集会
福島支援、関電告発を一体で
兵庫県伊丹市

毎年いたみホールで開かれる「さようなら原発1000人集会」は、今年は「老朽原発うごかすな!リレーデモ」と連携し、12月1日に560人が参加し開かれた(写真)。メインは元福井地裁裁判長の樋口英明さんと、「東電刑事裁判」告訴団長・武藤類子さんの講演。
樋口さんは「私が大飯原発を止めたわけ」を、原子力発電の構造・仕組みの話から始め、福島原発事故の具体的内容に立ち入り、大規模な事故の危険性のある原発・新幹線などは、その危険性を除去する方策が必要。地震は予測不能だから耐震強度が必要と訴え、最後に原発に対する責任に言及した。それは前の世代より今の世代こそが重大で、かつては「死の灰」は科学が解決できるとしたが、解決できないことが判明。福島原発事故を経験した世代の責任は重い。原発を止める5つの責任者(首相・県知事……裁判官)の1人でも決断すれば止められるが、最終的には住民・国民の力にかかっている。脱原発の人が過半数を超える今こそ力をあわせて原発を無くそうとまとめた。

「東北の鬼」になる

武藤類子さんは、9月19日の東京地裁判決への怒りを表明。福島原発事故で住み慣れた故郷を捨て避難した各地の人々が東京電力の責任を問うた。37回の公判で多くの証言があり、さまざまな事実が明らかとなった。経営最高責任者が決断すれば、あそこまで大きな被害は十分回避できた。しかしそれをしなかった3人の責任者に対して裁判所は無罪の判決。それへの怒りを胸に秘め「静かに怒りを燃やす東北の鬼」になると結んだ。
清水忠史衆議院議員と桜井周衆議院議員の報告をはさみ、3団体・個人のアピール。まずは関東から避難している「ゴーウェスト、カムウェスト」の下澤陽子さん。ついで関電不正還流マネーを告発する末田一秀さん(はんげんぱつ新聞)。最後に「老朽原発うごかすな! 兵庫リレーデモ」参加者が壇上にあがり発言。11月2日に姫路を出発、27日には西宮に到着。このあと12月4日、8日に西宮―尼崎―大阪関電本店まで総計94キロを踏破する。兵庫の反原発運動と市民運動が繋がり、今一度反原発のうねりを大きくしていこうと訴えた。
休憩時には10個の各種ブースの販売にたくさんの人が並び、反原発や保養キャンプと、沖縄や狭山や関生弾圧反対の運動との交流が進んだ。(安藤陽一)

オスプレイを飛ばすな
日米合同軍事演習に抗議
あいば野

11月30日、「オスプレイ飛ばすな! 日米合同軍事演習反対! 憲法改悪阻止! 11・30あいば野集会」が、陸上自衛隊あいば野演習場がある滋賀県高島市で200人の参加で開かれた。主催は平和フォーラム関西ブロックと2019あいば野に平和を! 近畿ネットワーク。今回の日米合同演習は12月1日から13日まで、陸上自衛隊は第8普通科連隊(鳥取県)の約450人、米軍は沖縄のキャンプ・シュワブと普天間飛行場の海兵隊約300人とオスプレイ4機が参加。国分台演習場(香川県)、日本原演習場(岡山県)、明野駐屯地(三重県)でもおこなわれる。
集会では近畿ネットワーク代表の野坂昭生さんが、「今年の2月に続いて、年に2回もあいば野で日米合同軍事演習がおこなわれるのは初めて。あいば野ではこの4年間に3度も周辺の民家等に被害をもたらす事故がおきている。演習を強行し、沖縄や京丹後では基地建設の強行等、安倍政権が進める米軍と一体となった戦争ができる国への道は許してはならない」と訴えた。米軍Xバンドレーダー基地がある京丹後市から参加した〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉永井友昭事務局長は、11月に米軍Xバンドレーダー基地に隣接する航空自衛隊経ヶ岬分屯基地内であった日米合同警護訓練の模様を報告。米軍と防衛省の約束破りの事態は許されない、安倍政権を倒そうと結んだ。

3面

琉球遺骨返還裁判
京都大学が組織的に盗骨
原告弁護団が事実明らかに

戦前、京都大学医学部助教授が沖縄で盗掘した遺骨の返還を求める裁判が11月29日、京都地裁101号法廷で開かれた。裁判はこの日で、4回目。原告の衆院議員・照屋寛徳さんが意見陳述した。照屋さんは、琉球遺骨の返還を求める原告適格は、琉球・沖縄人全体にあることを強調した。また原告弁護団は、当時京都大学は遺骨の盗掘を組織的におこなっていたことを明らかにする準備書面を提出した。照屋さんの意見陳述の冒頭部分は、裁判長が「本件と関係ない」として陳述を禁止した。その部分を含めて意見陳述全文を再録する。

裁判後の報告集会で発言する照屋寛徳さん(11月29日 京都市内)

大学による差別、人権無視
衆院議員 照屋寛徳さん 意見陳述

サリ ウートゥトゥ ウートゥトゥ。(供養の言葉)
百按司墓から旧京都帝国大学の金関丈夫助教授によって、盗骨されたウチナーヌ ウヤファーフジ(沖縄・琉球のご先祖)の神々よ。ウートゥトゥ ウートゥトゥ。
原告の照屋寛徳です。裁判長、意見陳述の冒頭にウヤファーフジの神々に一点だけ報告をお許しください。
去る10月31日、首里城が火災で焼失しました。神々よ、ビックリしたでしょう。首里城は琉球王朝時代の政治・外交・文化の拠点であり、ウチナーンチュの魂そのものでしたね。でも、神々よ、心配はいりません。世界中のウチナーンチュが直ぐに首里城再建に立ち上がりましたよ。首里城は、ウチナーウマンチュ(沖縄・琉球人御万人)が主体となり、再建します。
さて、私と原告金城實は、同じ易氏の門中で第2尚氏の末裔です。易氏門中は、今でも毎年「今帰仁御回ぃ」の聖地巡礼と百按司墓での供養を続けています。裁判官、本件訴訟における原告適格は、第1尚氏の末裔だけでなく、広く琉球・沖縄人全体が原告適格を有することを申し上げます。もちろん、原告5人も全員です。
私は、1945年7月にサイパン島の米軍捕虜収容所で誕生しました。「捕虜が生んだ捕虜」であります。私と同年に沖縄で生れた者の中には、お墓の中で生れた者がたくさんおります。死んでから入る墓の中で、なぜ新しい命が誕生したのか、裁判官の想像を絶することでしょう。
軍民混在の戦場となり、「ありったけの地獄を集めた」沖縄戦で、幾多の住民は防空壕やガマ(自然洞窟)に避難しておりました。旧日本軍は、住民を砲煙弾雨の中に追い払い、自分たちが隠れたのです。日本軍は住民を守りませんでしたが、亀甲墓、門中墓、フィンチャー墓(掘り込み墓)は、住民の命を守り、安置されている骨神と共に新しい生命の誕生の場となりました。
裁判官、私は衆議院議員として、本件に関連し、2017年8月、国政調査権を発動し、文部科学省を介して京都大学に照会しました。
京都大学は、百按司墓から金関が盗掘した琉球人遺骨を同大総合博物館に収蔵していることを初めて認めました。同時に、遺骨はプラスチック製の直方体に収納されていること、「人骨目録」は作成していないこと、京大研究者の「人骨標本」に基づく研究成果発表の記録がないこと等を明らかにしましたが、遺骨返還の意思については明確な回答がありませんでした。
その後、私は18年3月、同年4月に京都大学山極総長に公開質問状を発出し、早期の遺骨返還を求めましたが、京都大学の態度は不誠実極まりなく、傲岸不遜、盗人猛々しい植民地時代の宗主国の態度です。本件訴訟における原告らの訴えは、憲法、関係法令、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」等の国際法に照らしても正当です。明治いらいの近現代史の中で、常に国策の犠牲を強いられ、今なお日米の軍事植民地として扱われ、人間としての誇りと尊厳を否定されている琉球・沖縄人。原告松島は、著書や論文等で、本訴での被告の態度は学知の植民地主義だと断罪し、大学による差別と人権無視だと強く批判しております。
裁判官、私は72年に弁護士登録し、現在に至っております。その後、1995年に参議院議員に初当選し、1期務めた後、2003年に衆議院議員に当選し、現在6期目です。
私は、参議院議員時代から「ウチナーの未来はウチナーンチュが決める」との政治的信念で、「無憲法」下の米軍直接占領時代、そして日本復帰から今日に至る「反憲法」下のウチナーに生きる政治家、法律家、一人のウチナーンチュとして、国策の犠牲の強要と闘ってきました。私が本訴の原告に加わったのは、憲法第13条、第14条の精神をウチナーの今に具現化したい、との願いからです。
裁判官におかれましては、法と良心に照らし、原告らの訴えを認容し、被告の理不尽を排するとともに、原告ら琉球・沖縄人が一日も早くウヤファーフジの神々(骨神)を百按司墓に再埋葬し、供養できますようお願い申し上げ、意見陳述とします。

アイヌ民族の遺骨を郷土へ
「民族共生象徴空間」反対!
11月24日

11月24日、東京・渋谷勤労福祉会館で「11・24アイヌ民族の遺骨を郷土へ! 『民族共生象徴空間』開設反対! 関東集会」(主催・ピリカ全国実関東グループ、協賛・東大のアイヌ民族遺骨を返還させる会)が開催された(写真左)。旭川アイヌ協議会の川村シンリツ・エオリパック・アイヌ会長が講演を行い、来年4月に北海道白老町に開設されようとしている「民族共生象徴空間」(愛称「ウポポイ」)を批判した。
「大学等が『研究させろ』と言えば自分の先祖や仲間の骨をレンタルすることになる。国立博物館を作る代わりに、自由に研究してもいいよ、ということ。白老町は家賃が入るから万々歳。札幌のアイヌ文化財団が主導権を握って着々と準備している。あちこちでウポポイの宣伝ばかり。アイヌに対する差別は今もある。白老の慰霊施設に入ると取り返すのは難しい。北海道教育大学で『アイヌ語教育をやりなさい』という方針になっているが、やっているのは旭川だけ。学長が日本会議のメンバーに代わったら、学内のアイヌ語表記のプレートが全部なくなった」と話した。
ピリカ全国実関東グループは基調報告で、安倍政権が2020年4月24日「民族共生象徴空間」開設をもって遺骨問題に「決着」をつけようとすることに反対すること、すでにおこなわれている遺骨移送を弾劾すること、遺骨を返そうとしない東大を追及すること、琉球民族遺骨返還の闘いに連帯すること、アイヌ施策推進法を弾劾し真のアイヌ民族法を勝ち取ることを訴えた。
釧路出身の「レラの会」平田幸さんは「釧路の遺骨を取り返すために内閣府の人と話した。『あなたがアイヌである証拠がないと話せない』と言っていた。私はアイヌとしていじめられてきたのに、ふざけるなと言いたい。東大にも話したが、全然返事をよこさない。京大も『関係ありません』と言っている。24時間の座り込みをしたい」と報告した。

『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯』
ドキュメンタリー映画 監督:佐古忠彦(2019年制作)

瀬長亀次郎の闘いを描くドキュメンタリー映画が公開されている。この作品は、『米軍が最も恐れた男その名は、カメジロー』(2017年)の続編として制作されたものだ。
1952年、瀬長は第1回立法院議員選挙で最高得票数で当選を果たす。1954年、「人民党事件」によって逮捕される。1956年に瀬長は那覇市長に当選するが、すぐに市長から追放され、被選挙権も剥奪される。しかし、瀬長は不屈に闘い続ける。1966年、瀬長は被選挙権を勝ち取った。1970年、戦後はじめて沖縄で衆議院議員になった。
1971年、国会(衆院・沖縄北方特別委員会)で、佐藤首相にむけた瀬長の質問が圧巻だ。瀬長の演説は、沖縄民衆の思いと怒りを代弁していた。
「佐藤総理の口から言ったでしょう。今国会の冒頭の所信表明の、沖縄問題に対するあの結語は、軍事基地の継続使用は返還の前提ともなる。覚えておられるでしょう。返還が目的ではなくて、基地の維持が目的である。ですから、この協定は、決して沖縄県民が26年間血の叫びで要求した返還協定ではない。この沖縄の大地は、再び戦場となることを拒否する、基地となることを拒否する。」
瀬長亀次郎の怒りは、ガジュマルのように大地にしっかりと根をおろし、時の権力者にむけられていた。
瀬長のたたかいとともに、映画では1972年沖縄「返還」にいたる沖縄民衆の闘いが映し出される。教公2法阻止闘争や1970年のコザ騒動のシーンなど、当時の民衆の怒りがなまなましく記録された貴重なフィルムだ。
沖縄民衆が求めたものは、「自分たちのことは自分たちで決める」という自己決定権であり、自治権であった。「祖国復帰」にかけた思いも同じであった。1963年、キャラウェイ高等弁務官は「(沖縄住民の)自治は神話である」と述べた。この言葉のなかに、民衆の要求が明白に示されている。しかし、この要求は実現されていないのだ。今日において、これは「オール沖縄」で辺野古の新基地建設に反対するたたかいに継続されている。 日本政府は、米軍の利益を擁護し、沖縄住民の人権と生活を無視した。沖縄をアメリカに売りわたし、「本土」の米軍基地を沖縄に押しつけた。日本政府は、戦後も一貫して沖縄を「植民地」扱いしている。
アメリカの沖縄政策は、あくまでも「沖縄基地の自由使用」にあった。沖縄返還以後においても、この事は変わっていない。
1879年「琉球併合」以降、沖縄では中央政府による「植民地」支配がおこなわれ、これが沖縄戦にいきついた。戦後も、復帰後も、この歴史は何も変わっていない。自己決定権を確立し、米軍基地と自衛隊基地をなくすまで、沖縄民衆のたたかいは続いていく。

4面

焦点
『反日種族主義』の思想
実証主義による嫌韓ヘイト
請戸耕市

李栄薫(元ソウル大教授)編著『反日種族主義―日韓危機の根源』という書籍が日韓でヒットしている。韓国で7月に発売以来、各種ランキングで1位を記録、日本でも11月に発売し、アマゾンなどで1位となっている。 韓国の研究者らによる本だが、内容は嫌韓ヘイト本である。

徴用工はロマン!?

主な主張は以下― 〈徴用工は強制連行ではなく、志願ないし動員された労働者。日本人と同じ待遇を受けていた〉〈朝鮮人青年にとって日本はロマンであった〉
〈日本軍「慰安婦」は公娼制度。高賃金を受け取っており、性奴隷ではなかった〉
〈朝鮮半島から日本への米の搬出は、収奪ではなく、輸出〉
〈日本による土地調査事業は、収奪ではなく、所有権の確定作業〉
〈日本の植民地支配は、域内経済を開放・統合し、資本移動を促進、経済成長に貢献した〉
〈徴用工裁判の大法院判決は、基本的事実関係が事実ではなく、嘘の判決だ〉
要するに、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を肯定的に評価し、戦争責任・植民地支配責任は一切問う必要なし、という主張だ。
そして、日本の植民地支配責任を問う韓国民衆の声にたいしては、〈嘘をつく国民、嘘つきの学問〉と自虐的に罵る。

フェイク

共著の6人は、ソウル大などで経済史を専攻し博士の肩書きなどを持つ。また、実証主義(事実とデータに基づいて論証する)を標榜している。
しかし、その手法は、膨大な公開資料や研究成果に踏まえず、論争的には既に決着している知見を無視し、都合よく取捨選択した資料に依拠して、歴史をねつ造するやり方。学術的な装いを取っており、手は込んでいるが、百田尚樹や産経新聞と同類のフェイク。

種族主義?

「種族主義」という言葉は著者の造語。「民族主義」ではなく「種族主義」。「種族tribe」には、近代的西洋的な意味での民族と異なり、未開で固陋という蔑視観が込められている。つまり〈何の知性もなく、集団心理で嘘を広め、「反日」を騒いでいる〉という意味で「反日種族主義」と規定している。
「韓国の知識人が韓国民衆を蔑む」―これが本書の特徴である。
本書は、韓国での出版前から日本語版の出版が計画されていた。韓国・李承晩学堂(親米反共独裁の李承晩大統領の思想を称揚する機関)で行われたオンライン講義がもとになっている。この講義の映像には製作当初から日本語字幕が付けられていた。
そして、日本語版の版元が文芸春秋社、産経新聞編集委員の久保田るり子(安倍政権擁護、韓国叩きのプロパー)や拉致問題の「救う会」会長・西岡力が編集協力するなど、嫌韓ヘイトの安倍応援団と連携して出版されている。

「文明と野蛮の対決」

それにしても、何で韓国の研究者が?そして、なんでいまこんな本が?編著者である李栄薫の日本記者クラブでの来日講演(11月21日)がその疑問に答えている。〔傍線は引用者〕
「韓国はその歴史に原因がある重い病を患っています。個人、自由、競争、開放という先進的な文明要素を抑圧し、駆逐しようとする集団的、閉鎖的、共同体主義が病気の原因です。一言で言えば、文明と野蛮の対決です」「この国の自由民主主義体制は解体されるかもしれません。本『反日種族主義』は、そのような危機感から書かれました」

近代化論

「個人、自由、競争、開放」が「先進的な文明」であり、これに反対するのは「野蛮」であるという。典型的な近代化論、植民地近代化論というイデオロギー。
〈近代的個人、国民国家、産業と資本〉が成立し、社会が合理的に構成されて行くのが社会発展=近代化の方向であると信じ、それこそが「文明」であると全面肯定する考え方。
だから、帝国主義も、植民地支配、侵略戦争、資本攻勢も、「野蛮」を駆逐する「文明」の闘争として肯定される。そして、そこで流される血は、「文明」のための闘争という価値基準からすれば、些末なこととして切り捨てられる。

愚民観

このイデオロギーのポイントは、〈民衆は「愚昧」である〉という見方にある。〈愚昧な民衆には「先進的な文明」は理解できない。だから抵抗するが、そういう愚民には、「文明」化のための矯正・調教が必要である〉というのだ。
しかし、同時に、そういう見方の深層には、民衆の抵抗運動の中に「文明」を超える力が孕まれていることを直感した恐怖と敵意の心理がある。
このようなイデオロギーは新しくない。例えば、明治日本の支配層・知識人は、近代化論と民衆蔑視・敵視を基本としており、その下で天皇制支配、侵略戦争と植民地支配を正当化し、破壊と破局に突き進んだ。
今日、韓国の親日派と日本の支配層が、またぞろ近代化論と民衆蔑視・敵視で意気投合しているというわけだ。

文明の虚構

しかし、残念ながら彼らの信じる「文明」こそが虚構であり終焉であることを、「文明」世界のチャンピオン米国の現実とトランプという人格を通して、世界に知らしめている。
そして、韓国の民衆運動の中から、虚構の「文明」を突き破り、自主的な意志と力で、新しい社会と国際関係を構想する動きが始まっている。それがロウソク革命とその継続としての積弊清算のうねりである。まさに「この国の自由民主主義体制は解体される」のである。そのことへの恐怖と反動こそ、『反日種族主義』に他ならない。

戦争責任の再審を

戦後日本は、その再出発点において、戦争責任・植民地支配責任という重大問題を不問に付した。そのことによって、明治以来の天皇制と朝鮮侵略という日本の「国体」の問題を、本質的なところで、戦後体制に継続させてきた。また、そのことが、戦後の社会と運動の問題性・限界性(とりわけ主体性に関わる問題)を規定してきたと言える。そして、そういう諸問題の行き着いた先が、現在の安倍政治である。
換言すれば、ロウソク革命、徴用工裁判の大法院判決、日韓対立の激化、韓国における反安倍闘争という現下の展開は、戦後の再出発点において不問に付した問題を、国際階級闘争場裏に引きずり出し再審にかける絶好のチャンスである。
極右の側は、『反日種族主義』発刊を「歴史戦の武器」などと雀躍しているが、むしろ『反日種族主義』批判の言論戦をもテコに、日韓の反安倍闘争がようやく本格的に連携し、戦後日本の社会と運動の問題性・限界性を突破していくのである。

12カ国44団体が良心宣言
「文喜相案」の破棄求める

元徴用工や日本軍「慰安婦」被害者の問題を「解決」するとして文喜相韓国国会議長から「解決案」なるものが出されていることにたいし12月4日、韓国で日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)をはじめ、12カ国(韓国、日本、米国、カナダ、ドイツ、イギリス、アイルランド、スイス、オーストリア、ニュージーランド、オーストラリア、インドネシア)、44団体による「文喜相案」の即時破棄と被害者中心主義原則に合致した日本政府の公式謝罪と賠償を求める世界市民の宣言文が発表された。以下、宣言文を掲載する。連名団体は『未来』ウェブサイトに掲載(kakukyodo.jp)。

「文喜相案」の即時破棄と被害者中心主義の原則に則った日本軍性奴隷制問題の解決を求める世界良心宣言

 日本軍「慰安婦」被害者の人権と名誉回復のため世界各地で活動している私たちは、「文喜相案」に関する報道に接して怒りを禁じ得ない。
 「文喜相案」は、強制動員および日本軍性奴隷制問題のような反人道的な戦争犯罪を、政治的・外交的な立場にのみ基づいて、問題解決をするという美名の下に、日韓政府の財源、日韓の企業と国民の募金で財団を作り、見舞い金のみを支給しようとするものである。
 さらに「文喜相案」が懸念されるのは、文在寅政府が2018年1月に、手続き上も、内容的にも、被害者中心主義の原則に背く重大な欠陥があると明らかにした2015日韓合意が有効であることを確認するという内容が包含されている点だ。
 国連人権機関は、日本軍性奴隷制のような反人道的な犯罪の解決は被害者中心主義の原則に基づく国際人権原則に則って被害者の人権救済のため、加害者の犯罪事実の認定、被害者の全過程への参加と意見の反映を経た公式謝罪と金銭賠償を含む賠償の履行、再発防止の対策づくり等の法的責任の履行によってのみ解決することができると明確に述べており、このような原則に基づいて日本軍性奴隷制問題も解決されなければならない。
 私たちは30年間、正義の解決を求めて「1000億ウォンをくれるとしても、見舞い金を受け取ることはできない」と言った金福童ハルモニをはじめとする被害者たちの名誉を毀損し、加害国に免罪符を与える「文喜相案」が解決策であるかのように議論される現在の状況をこれ以上、座視することはできない。
 今、大韓民国の国会と政府がなすべきことは、見舞い金の支給による対日過去史問題の一括妥結という低級な方式の妥協案の提示ではなく、被害者中心主義の原則に則った犯罪の認定、公式謝罪と法的賠償の履行による問題解決のために2018年7月、性平等基金の予算で策定した日本政府の見舞い金10億円に相応する103億ウォンを返還措置し、日本軍「慰安婦」被害者たちの人権と名誉回復のために「日本政府に犯罪の認定と責任の履行を求めること」である。
 日本軍性奴隷制問題の正義の解決のために世界各地で活動している私たちは、「文喜相案」の即時破棄を求め、文在寅大統領と大韓民国政府が2015日韓合意の後続措置として日本軍「慰安婦」被害者たちと約束した通りに、被害者中心主義の原則に沿って問題を解決するよう要求する。
 日本政府もまた、政治的・外交的利益のために日本軍性奴隷制問題を含む過去の人権侵害犯罪の認定と責任を回避するためのあらゆる試みを即時中断し、国際人権原則に則って問題を解決するよう要求する。 2019年12月4日

日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯 <8ヵ国ネットワーク> S.P.Ring Worldwide citizens network(スプリング市民連帯) <日本>日本軍「慰安婦」問題解決全国行動、フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター、台湾のもと「慰安婦」裁判を支援する会、日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク、フィリピン人元「従軍慰安婦」を支援する会、過去と現在を考えるネットワーク北海道、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク、山西省における日本軍性暴力の実態を明らかにし、大娘たちと共に歩む会、日本軍「慰安婦」問題解決のために行動する会・北九州、川崎から日本軍「慰安婦」問題の解決を求める市民の会、「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク、日本軍「慰安婦」問題を考える会・福山
Houston Sewol HAMBI.Education for Social Justice Foundation(ESJF). Chicago KAN-WIN. Peace 21.Coalition of Koreans in America.LA Nabi.Seattle Evergreen Coalition.International Non Government Organization World Green Climate Culture & Art Institute
Washington Butterfly for Hope.Washington Coalition for Comfort Women Issues, Inc.Washington Friends of Statue of Peace.416 Seattle.
Sewol Wild Flower of Washington DC.One Heart for Justice. Sewol416Chicago.
The Toronto Coalition of Concerned People.NABI Toronto
Aktionsgruppe ?Trostfrauen“ im Korea Verband Berlin.KOWIN Germany.Verein der Koreanischen Min-Jung Kultur e.V.,Solidarity of Korean People in Europe, Koreanische Arbeiter Berlin (Nodong Gyoshil)
Justice for “Comfort Women” UK
Ireland Candlelight Action
Korean New Zealanders for a Better Future
Friends of "Comfort Women" in Sydney.Friends of "Comfort Women" in Australia(FCWA) 4.16 Jarkarta Candlelight Peace Action

5面

大阪府下で採択撤回を
育鵬社などの教科書 来年は正念場
11月30日全国集会

11月30日、「2019年小学校教科書採択 道徳と社会科の実態」全国集会が大阪市内で開催され、110人が参加した(写真)。主催は、「戦争教科書」はいらない! 大阪連絡会。
来年はいよいよ中学校の教科書採択で育鵬社等を押し返せるかどうかの正念場になる。育鵬社等の「戦争教科書」は各自治体の首長の意向によって採択されてきた。大阪府下の維新首長は大阪市や堺市など12市町、維新に近い首長は4市である。さらに「教育再生首長会議」には同会議の会長である野田義和・東大阪市長をはじめ7市長がおり、これは全国で2番目に多い。15年の採択によって今、育鵬社教科書は大阪府下の中学生の約20%で使われているが、万一、維新首長や維新に近い首長のところで育鵬社等が採択されていけば中学生の実に約67%が「戦争教科書」を使うことになる。

たたかえば勝てる

19年は小学校の道徳と社会科の教科書採択がおこなわれたが、道徳教科書では名古屋市、沖縄県那覇地区、東京都武蔵村山市が日本会議系の貝塚茂樹等が作成している教育出版の採択をやめたことが報告された。大阪市は橋下市長の時代に採択区が1つにされてしまったが、15年以降の運動によって4区にすることを勝ち取った。

市民アンケート

また吹田市、島本町、摂津市などの採択会議では市民アンケートが教育委員の判断に大きな影響を与えた。
育鵬社等の教科書採択を強く推進してきたモラロジー研究会への教育委員会の関与を大きく後退させてきた。柏原市では19年から初めて教育長の講演が、大阪市では教育委員会の来賓参加が、松原市では教育委員会の後援が、藤井寺市では教育長のあいさつがなくなった。モラロジー研究会とはどういうものかを各地の教育委員会に粘り強く説明していく中で、上記のような対応を各教育委員会がおこなった。
特別報告としてヘイトハラスメント裁判の報告がおこなわれた。教科書闘争の根底にはヘイトハラスメントとのたたかいがある。

日韓関係のいま

〈アジアの平和と歴史教育連帯〉国際協力委員長カン・ヘジョンさんが、「日韓関係の今を考える」と題して特別報告をおこなった。カンさんは18年10月の韓国大法院の元徴用工判決から19年11月のGSOMIA終了の条件付き留保に至る過程にふまえて多岐にわたる報告をおこなった。
今、韓国の市民の間では「ホワイト国」からの韓国の排除は安倍政権による大法院判決に対する報復という評価がほぼ共有されている。韓国では政治意識が高まった幅広い覚醒した市民が今の日韓関係に真っ先に反応し、初期の流れを主導している。このようなネット上での「集団的知性形成」は16〜17年のキャンドル革命で訓練されたおかげである。最後に日本人と日本政府は違うことを指摘し、今の日韓情勢にふまえ、日韓の市民は互いに国家を背負って行動するのではなく市民的価値を持って行動することが大切であると締めくくった。

読者の声 「やっぱりそうか」 75歳以上の医療費2割負担

消費税10%に続き、「やっぱりか」と思った。75歳以上の医療費2割負担への引き上げ案である。1945年生まれの私は、来年75歳となる。敗戦直前年で、最も出生数が少ない年齢である。47年から団塊の世代となる。私の同級生たちは中学校を卒業すると多くが就職し、紡績や中小の製造部門の産業を支えた。高校進学率は30%台だった。
「やっぱりそうか」というのは、諸制度が改悪されるとき私の年齢から始まることだ。そして団塊の世代に大きく被せられる。私は35年間働いたが、賃金は公務員(県職員)準拠だった(70年当時の公務員は安かったし、後のバブル等も無縁だった)。定年前に国家公務員の退職金支給率が4%、3%と2年連続計7%カットされ、地方公務員も連動。年金給付開始が順次延長され、私の場合は63歳からとなった。諸般の事情で再雇用に就かず雇用保険300日で1年乗り切ろうと思っていると、突然180日に短縮され目算は大きく外れた。
高齢者医療費は、以前の自民党政権が「70歳(当時は1割)から2割」に改悪。確か第1次安倍政権時だったが、高齢者の不評、選挙への影響から実施を先送り。第2次安倍政権になり、またも私が70歳直前で2割を実施した。そして今回、75歳からやっと1割になると思っていた矢先に2割案だ。新しく75歳になる人からか、75歳以上一律か、高額または低所得層はどうするのか。
人口構成比の歪みは、侵略と戦争に走った日本の責任と結果であり、かつ何10年も前からわかっていた。その後、団塊世代の子ども世代は就職氷河期、非正規社員化を強いられ収奪されてきた。財源を言いながら、持続可能な社会施策、政策転換を考えたことがあるのか。自らの「新自由主義」破綻のツケではないか。「いまだけ、金だけ、自分だけ」の安倍や麻生(この男が財務相だ)に言われたくはない。高齢者、少なくとも2000万人は暮らしに不安いっぱいの人々だろう。国会答弁の奇妙な日本語を聞いていると、次の総選挙は思い知らせてやらなければと思うこと、しきりである。(俊)

アウシュヴィッツへのひとり旅 (第3回)
ユダヤ人歴史博物館
山路 道夫

ワルシャワ・ゲットー記念碑に刻まれた彫像(筆者写す)

滞在3日目の午前、ベルリンから特急列車2等席で出発。車窓からのながめは、農地や農家や森が途切れ途切れに遠ざかって行く。ここは、もうドイツではなくポーランドなのだ。ポーランドの語源は平原を意味するのではなかったか? 私の隣の座席のポーランド人男性はとても親切だった。今でも心に残っている。
6時間余りでワルシャワ駅に到着。駅の正面には、芸術的な尖塔を頂く背の高い建物がそびえ立っていたので圧倒された。早速、ホテル探し。多くの人のお世話になりながら苦労して見つけることができた。しかし、またもや部屋のアクシデント発生。ホテルスタッフになんとか理解してもらい問題解決となった。すぐに近所の両替所で現地通貨ズオチをゲット。地元のおばちゃんの商店とコンビニで夕食を調達した。言葉は分からないが、これがポーランド流なのだろうと思われるテレビ番組を見ながら食事をして就寝。

ワルシャワ・ゲットー

翌朝は小雨のち曇り、昼間は晴れ。歩いてサスキ公園へ。静かで清楚なたたずまい。そこに配置された石像や噴水には文化が感じられる。次に、ユダヤ人が強制隔離されたゲットー跡地へ向かう。ワルシャワ・ゲットー記念碑の写真を撮り、ユダヤ人歴史博物館へ入場。入口では、入場者チェックがきちんとおこなわれていた。
館内の展示では、ナチス親衛隊高級将校(医者も含む)の説明書きが付いた写真が並べられていた。説明では、各人の罪状が明らかにされていたようだった。ユダヤ人をナチスが銃で追い立て迫害している現場写真とおぼしきものも多数あった。これも写真撮影した。
その後、旧市街地に向かいバルバカン(古い時代に、外敵との闘いのために作られた建造物=要塞)を一望し、小規模だがワルシャワ歴史博物館ものぞいてみた。これらの通りには歴史的建造物が連なり、多くの観光客が屋外のテントで飲食しながら会話を楽しんでいた。

人びとの優しさ

さて、ショパンは省略して最後の目的地を目指して方向転換。途中、市街電車に乗って小銭が足りないので困っていたら、ある青年が自分の小銭を出して助けてくれた。それをそばで見ていた若い女性が私に自分の切符をくれた。とても心温まる経験ができた。これ以外にも同様のことがあり、ポーランドの人達の優しさが今もなお心に沁みている。ポーランドは以前は社会主義国だったのだ。ワレサ大統領は有名だ。
最後に、気合を入れてワルシャワ蜂起博物館を見つけた。館内には多くの展示物があったが、多すぎて受け止め切れないほどだ。侵略軍に対して必死の反撃、命がけの戦闘が展開されたことが伝わってくる。
夕食は、味の素のカップラーメンが華を添えた。商品名は『OYAKATA』。たぶん親方の意味かな? 違うかもしれないが笑ってしまう。この日のスタディ・ツアー(自称)はポーランドビールで締めくくった。(つづく)

6面

加害の歴史を忘れない
「南京の記憶をつなぐ2019」
12月1日 大阪

12月1日、「南京の記憶をつなぐ2019」(主催:南京の記憶をつなぐ会)が、大阪市内でひらかれた。この集会は日本軍がおこなった南京大虐殺を忘れないために毎年12月におこなわれており、会場は人であふれた。
集会の意義について、松岡環さん(銘心会南京・代表)は次のように挨拶した。
「日本とアジアでは、歴史認識におおきな隔たりがある。安倍政権と歴史修正主義者は、中国でおこなった侵略戦争にたいして日本の加害性を否定し、南京大虐殺をなかったことにしようとしている。このため、日本政府は当時者(被害者と加害者の双方)が亡くなるのを待っている。加害の事実を忘れてはならない。日本がおこなった南京大虐殺の事実を記憶にとどめるために、わたしたちは1988年から活動している。歴史の記憶をつないでいくために、ともに一歩を進めてください。」
その後、ドキュメンタリー『マギー牧師が見た南京大虐殺』が上映された。1937年当時、マギー牧師は南京難民区に宣教師として滞在しており、16ミリフィルムで虐殺現場を撮影している。これはすでに「マギー・フィルム」として知られている。1991年、そのオリジナル・フィルムが米国の自宅で発見された。しかし、38年2月に撮影されたフィルムはいまだに見つかっていない。上映したドキュメンタリー映像は、中国のテレビ局(江蘇電視台)が制作した作品。マギー牧師が撮影した未知の映像を探しもとめる研究者に密着しながら、マギー牧師がなぜこのフィルムを撮影したのかに迫っている。
マギー牧師は難民救援活動をするなかで、南京大虐殺を目撃した。この事実を映像と日記で記録にとどめ、虐殺の事実を世界に知らせた。日本軍に見つからないように、撮影は命がけでおこなわれ、そのフィルムは秘密裏に海外に持ち出された。マギー牧師は東京裁判でも証言している。ナチスによるユダヤ人の虐殺でもそうだが、こうした命がけの記録が戦後に発掘され、人びとの歴史に刻まれていくのだ。

戦前の翼賛報道

集会では下地毅さん(朝日新聞記者)が講演。戦前の朝日新聞の報道について、下地さんは当時の新聞記事を読みながら、「軍部や政府からの圧力によって従わざるをえなかったのではなく、記者がみずから進んで記事を書いたのだ。そうでなければ、こんな美文調の文章にはならない」「今日、メディアの状況はこれによく似ている」と述べた。「上」からの圧力だけではなく、「下」が忖度し自主規制することによって、当時の戦争翼賛報道はその双方の側から作りあげていったのだ。
では、現場記者の忖度はどうして起きるのか。下地さんは「記者は出世を望んで自主規制をするのではなく、今の居心地よい現状を変えないためにおこなうのだ。同時に、仲間に迷惑をかけるのは心苦しいという心情もはたらく」と語った。
取材対象をどのように選ぶのか。これに関して、下地さんは「社会性と歴史性の交わるところで判断する」「新聞には、内容にふみこまないところ、ブラックボックスがいくつか存在する。それは書く事を禁止されているからではなく、記者が自主規制しているからだ。このことに、わたしは我慢ならない」と述べた。(津田保夫)

連載
命をみつめて見えてきたもの B
自然治癒力を発揮
有野まるこ労働ニュース

今の日本社会の病の多くが精神的・身体的ストレスに起因していることを理論的に明らかにしたのが世界的な免疫学者・安保徹さん(新潟大学名誉教授)だ。残念なことに2016年12月、69歳で亡くなった。温かい人柄、青森弁でユーモアたっぷりに語る講演は大人気だった。多くの論文・著書を残したが『免疫革命』(講談社インターナショナル2003年 写真下)は大ベストセラーに。
病気の成り立ちを自律神経(交感神経と副交感神経)・白血球(免疫力の中心)・体温・エネルギー生成系から明らかにしたが、それを一般の人にも理解してもらえるように説明することに尽力した。人々が自分の病気と身体について理解し、その主人公となって最期まで幸せに生きられることを願って―。
彼は28億年の生命の感動的な歴史について触れ、「病気になることも含め、そこには深い知恵が宿っている。この深い知恵の本質を知り、人生のなかで活かす― これまでの医療にはそうした視点がなく、症状ばかりに着目し、肝心の生命の世界が置き去りにされていた」と述べている。

白血球の自律神経支配の法則

96年に到達したのが「白血球の自律神経支配の法則」。
60兆個(今は40兆とも言われる)もの人間の細胞の働きを調整しているのが自律神経。交感神経は運動時や昼間の活動時に優位になり、アドレナリンを分泌して心拍数を高め、血管を収縮して血圧をあげ、消化管の働きを止める。副交感神経は食事や休息時に優位になり、アセチルコリンを分泌して反対の働きをする。各々が活動モードとリラックスモードを担って自律神経のバランスが保たれている。更に自律神経は、人間の身体に備わっている「免疫」という自己防御システムで重要な働きをしている白血球の数と働きも調整している。
自律神経がバランスよく働いているときは病気に負けない免疫力を保てるが、働き過ぎ・睡眠不足・心の悩みなどで交感神経の緊張状態が続くと副交感神経の働きが低下して白血球内のリンパ球が減少、免疫低下がおきる。
例えばガン―ふたりに一人どころか、誰でも毎日1万個くらいのガン細胞が発生している。夜、休養している間にリンパ球がそれを処理しているので、リンパ球が減少すると処理できなくなり、ガンの芽が育ち始めるというわけだ。

解糖系とミトコンドリア系

その後、彼が注目したのが生命活動のエネルギーを作りだす細胞の働き。細胞の中に@酸素を使わない「解糖系」(ブドウ糖を分解)とA酸素が必要な「ミトコンドリア系」という二つのエネルギー工場がある。
@はすぐに作られ、瞬発力などを特徴とし、生成するエネルギーは少ない。Aは複雑な工程で、解糖系とは比較にならない膨大なエネルギーをゆっくり生み出す。両者をうまく使いわけることで人間は進化してきたという。
ところが長時間労働や悩みで過度のストレスがかかると人間は低体温・低酸素の状態になり、ミトコンドリア系が働きにくく、解糖系優位の状態に陥る。そして酸素を使わない「解糖系」ばかりが稼働するようになったとき、ガン細胞が発生しやすくなるという。

まじめは危険!

安保さんは語りかける。「多くの人は病気になると自分の身体が悪いと思ってしまうが、病気は身体に負担をかけることから始まっていることが多いので100パーセント医療機関に頼るのは行き過ぎ。働き過ぎをやめて十分な睡眠をとるなど生活習慣を整え、考え方を変えて身体への負担を軽くして自然治癒力を発揮していくことが大切」「まじめで我慢強くて、自分がつらい目にあったのを自覚できない人もいる。そういう人たちは危険! まじめは危険なのです」と。
病気を生み出す過酷な働き方、生き方を強要する現代社会、それを不問に付す医療・医学界への根底的批判に貫かれた彼の理論と実践は、資本・権力には疎まれ、強い逆風を受けてきたと思うが、社会と医療変革の力強い支えとなる。(つづく)