もう言い逃れはできない
桜を見る会¢I挙対策に税金使う
安倍政権の即時退陣を求めて国会議員会館前で集会(11月19日) |
11月19日、午後6時半から国会議員会館前を中心に15回目の19日行動が開かれ、2600人が集まった。
「憲政史上最長の政権」と喧伝される一方で、愛知トリエンナーレへの補助金カットをはじめとする言論・表現に対する弾圧、徴用工問題をめぐる侵略の歴史の開き直りと韓国への排外主義の扇動など、安倍政権は悪政の限りを尽くしてきた。そして、「桜を見る会」を自らの選挙対策・政権維持のために悪用していたことが明らかになるに及んで、人民の怒りに火をつけるものとなっている。
今回の19日行動は、そうした情勢の中で行われた。多くの発言者が、安倍政権による政治の私物化と腐敗に対する怒りと糾弾の声を上げた。今こそ安倍政権を即時退陣に追い込まなければならない。
主催者あいさつ、国会議員の連帯あいさつに続いて、英語民間試験・記述式問題導入反対の文科省行動を呼びかけた田中真美さん、ジャーナリストの志葉玲さん、東海大学教授の永山茂樹さん、「止めよう! 辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会の木村辰彦さん、自由学園の高校生が発言した。
高校生は口々に「憲法99条を私たちも守っていきたいと思います」「日本は唯一の(戦争)被爆国であるにも関わらず、核兵器禁止条約に背を向けていていいのでしょうか」「原子力ではなく、平和を軸とした日本をみんなで作り上げていきましょう」などと訴えた。最後に、主催者からの行動提起を受け、安倍政権への怒りのコールをおこない、行動を終えた。(2面に関連記事)
地元の熱い声援受け出発
老朽原発うごかすな 200キロのリレーデモ
11月23日
11月23日、高浜原発から大阪・関電本店まで歩いて結ぶ「老朽原発うごかすな! リレーデモ」がスタートした(写真)。
23日正午、高浜原発直近の展望所に次々と参加者が車で乗り付けてくる。福井、関西、伊方原発反対闘争をたたかう四国や首都圏から120人が集まった。
主催者からあいさつがあり、すぐ高浜原発に向けてスタート。高浜原発北ゲートで抗議集会と関電への申入れをおこなった。地元高浜町の町議会議員・渡辺孝さんをはじめ、地元の方が口々に関電に対する怒りを表明、老朽原発を廃炉にたたき込もうと訴えた。〈関電の原発マネー不正還流を告発する会〉宮下正一さんは、「目標を超えて告発人が1600人を超え、まだ増えている」と報告した。関電に対し、申し入れをおこない、ゲート前は怒りに包まれ、大きなコールが響き渡った。北ゲートでの抗議・申し入れ行動後、高浜町内に向けてデモ行進。
4年前にも高浜原発3、4号機再稼動反対を訴えたリレーデモがおこなわれたが、そのときに比しても地元住民の反応はもっと熱いものが感じられた。地元住民の反応があきらかに変わってきている。「原発運転は40年」という約束を踏みにじり、40年超えの延長運転をたくらむ関電や政府に対する怒り、またその原発が、汚いマネーにまみれていた事実に対する怒りが顕在化している。このかんの〈若狭の原発を考える会〉による地道なアメーバデモ(ポスティング)行動などが 地元住民の意識に響いていることが感じられた。
「高浜原発〜 大阪・関電本店」までのリレーデモは、今後、おおい町→小浜市→若狭町→滋賀県高島市→大津市→京都市→大阪市と続く。「老朽原発うごかすな!」の固い決意を強めながら、また新たな出会いと人々の思いに触れることを願って、リレーデモは続き、関電本店前に到着する。リレーデモに合流しよう。12・8関電包囲大集会に集まろう。
憲法破壊の弾圧に怒り
関生だけの問題ではない
11月16日
弾圧やめろのボテッカーを一斉にかかげる集会参加者(11月16日) |
11月16日、大阪市内で全日建連帯労組関西地区生コン支部(関生)弾圧に反対する「声をあげよう! 弾圧許すな 全国集会」が開かれた。「この弾圧は関生だけの問題ではない」と全国から1200人超が参加。大阪市の中心部をデモ行進して市民に訴えた。集会では呼びかけ人を代表して集会実行委員長の藤本泰成さん(フォーラム平和・人権・環境共同代表)が主催者あいさつ。
府労委で勝利
続いて関西生コン支部の弾圧当該2人と全日建連帯中央本部・菊池進委員長が経過を報告し決意をのべた。そこでは大阪府労働委員会が10月21日、日々雇用労働者組合員の就労排除を不当労働行為と認定したことを報告された。
沖縄平和運動センター・山城博治議長は関西生コン支部の沖縄支援にお礼を述べた後「辺野古でも、立っていれば公務執行妨害で逮捕。どうなっているのか。沖縄戦では20万人の沖縄の命が犠牲になった。われわれはたたかい続ける」と決意を表明した。「表現の不自由展・その後」をつなげる愛知の会の高橋良平さんは「表現の自由」さえ侵される日本の現状とのたたかいを報告した。
川口真由美さんのミニコンサートを挟んで、大阪労働者弁護団・中井雅人弁護士は、「正当な労働組合の取り組みが犯罪とされ、のべ89人が逮捕され、のべ73人が起訴されている。勾留の長さも異様だ。また組合事務所出入りを禁止し、組合員と会ってはならないなどの不当な保釈条件がつけられている」と弾圧の不当性を訴えた。
124人の連名で関西生コン支部弾圧に抗議した各地の自治体議員が登壇し連帯の意思とたたかう決意を表明した。集会カンパは52万円をこえた。
反撃の大きな一歩
11・16の取り組みは大弾圧への反撃の大きな一歩を記し、新しい運動の姿を示した。まさに「声をあげよう」を実現した。労働組合活動を対象にした事件としては未曽有の弾圧が関生に集中している。これを憲法破壊(労働三権破壊)、民主主義の危機ととらえ、労働界だけでなく、沖縄のたたかい、表現の自由への侵害とたたかう市民運動などが合流した。和歌山県警は、集会直前の14日、関西生コン支部の副委員長と執行委員を「強要未遂」「指揮命令した共謀」でデッチ上げ逮捕した。集会破壊を狙った弾圧だがそれをはね返すたたかいとなった。全日建、全港湾、全労協の全国からの結集、各労組、争議組合の結集、平和フォーラムの全国的な取り組みの開始などそれが総結集した。
「すばらしい体験」
「市民社会・市民運動と労働組合・労働運動がつながり、安倍政治が牛耳る政治・社会に真の民主主義をよみがえらせる新しい一歩」(集会決議)が始まった。呼びかけ人の一人である熊沢誠さんはそのブログで「権力の弾圧と民主主議の破壊にどこまでも抗う11・16―この参加はすばらしい体験だった。すべてのたたかいに感動した。ここになお不屈にたたかう人びとがいる、久しぶりにそう確信できたことの喜びは大きい。ちなみに今、自由と民主主議の名において決して負けることのできないたたかいは、沖縄辺野古、関西生コン、そして香港である」とつづった。
獄中3名の仲間を取り戻すために2020年元旦、大阪府警包囲デモに立つ。
(森川数馬)
(発行日変更のお知らせ)
2020年1月の発行日変更のお知らせ
2020年1月の発行日は、1月9日(木)、1月23日(木)になります。2月以降は通常通り第1、第3木曜日発行です。
2面
大嘗祭
憲法違反の神道儀礼
全国各地で抗議集会・デモ
【東京】
皇居直近の東京駅前で、終わりにしよう天皇制!をアピール(11月14日) |
11月14日、全国各地で大嘗祭に反対する行動が取り組まれた。東京では、「大嘗祭反対ナイトイベント 大嘗祭反対@トーキョー・ステーション」(おわてんねっと主催)が東京駅前で開かれた。参加した200人は、差別の元凶であり人民支配の道具である天皇制を莫大な予算をかけて維持する行事を弾劾した。
【大阪】
大阪市内では「憲法違反の宗教儀式11・14大嘗祭抗議デモ」の集会がひらかれ、150人が参加した。主催は、〈天皇代替わりに異議あり! 関西連絡会〉。大嘗祭が始まるとされる時刻に合わせたこの集会とデモは、天皇徳仁が神と一体になるというおぞましい大嘗祭儀礼を切り裂くものとなった(写真)。
集会では多くの人がマイクを握り、大嘗祭や天皇制に反対する発言をした。グループZAZA、参戦と天皇制に反対する連続行動、ピリカ全国実・関西、労働組合への大弾圧を許さない実行委員会、反天皇制市民1700ネットワーク、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク、9条改憲阻止共同行動などである。
グループZAZAは、学校はすべて元号になり、あらゆるところで「日の丸」が掲げられ、天皇制にからめとられているが、天皇の対極にいるのが個人であり、個人としての価値観を大切にしてたたかっていくと表明した。
南西諸島への自衛隊配備に反対する会は、「奄美大島に自衛隊のミサイル配備がおこなわれ、宮古島では弾薬庫建設に対して地元から反対決議があげられ、連日、工事阻止のたたかいが繰り広げられている」と報告し、自衛隊の皇軍化は絶対許してはならないと訴えた。>
大嘗祭は11月14日午後6時すぎから始まり翌15日未明まで続き、大嘗祭がおこなわれる神殿の前には安倍首相をはじめ三権の長や全国の知事など510人がそこにすわる。
大嘗祭は一連の即位儀式の中でもクライマックスとされている。それは神殿の奥でおこなわれ、新たな天皇となる徳仁はそこにある布団にくるまり女神であるアマテラスと一体となるという荒唐無稽な儀式である。
集会後、寒さを吹き飛ばし弾圧や強制を打ち破っていく力強いデモがおこなわれた。
「天皇即位に反対しよう」「憲法違反の大嘗祭を許すな」「憲法違反の神道儀礼を許すな」「祝いの気持ちを強制するな」等々の大きなシュプレヒコールが西梅田公園まで続いた。
【京都】
「『象徴天皇制』を問う パートU11・14京都集会」が、京都市内でひらかれ70人が参加した(写真)。講演は、東京大学大学院生の塩野谷恭輔さん。塩野谷さんは、「戦後民主主義というユートピアは冷戦下のアメリカリベラリズムの反復でしかない。かつては丸山真男でさえ戦後民主主義を『虚妄』と看破していた。しかし現在の戦後民主主義は透明化しつつある。平和な戦後日本を享受したのはごく一部の人のみにすぎなかった。また戦後民主主義にはつねに象徴天皇制が組み込まれていた。戦後民主主義をユートピア的に憧れることは過去の人々のたたかいを貶めることになる。革命的ユートピアとはつねに未来に見出ださなくてはならない」と述べた。
主張
政治の私物化、もはや末期
民衆の力で安倍退陣へ
今年の「桜を見る会」(4月)は、安倍首相と自民党が7月参院選の必勝に向けて、後援会組織や芸能人・スポーツ選手などを総動員した一大事前運動であった。国家予算を使い、選挙違反(公選法、政治資金規正法)そのものの1万8000人参加のイベント内容がいま暴露されている。
「桜を見る会」は、「社会的功労者の顕彰」とは全く違う、5300万円の税金を使った自民党の政治パーティーであった。参加者は首相枠1000人、官邸枠1000人、自民党枠6000人。首相・官邸枠は3400人とも言われる。森友事件で「私人」と閣議決定した安倍昭恵にも「枠」が与えられ友人が参加。芸能人・スポーツ選手や、安倍のちょうちん持ち文化人、議員の家族なども多数参加した。まさに税金を使った供応で、公職選挙法違反だ。また安倍後援会が主催した前夜祭ではその経費も不明朗で、「桜を見る会」とのセットで選挙民に便宜供与しているは明白だ。安倍首相は何度辞任してもすまない大罪を犯している。
参加者名簿破棄や国会答弁もデタラメだ。「子どもでもわかるウソ」をくり返し、さらに疑惑が深まっている。
2015年の招待客の中には、悪質なマルチ商法で家宅捜索を受けたジャパンライフの山口隆祥会長も首相枠で入っていた。
安倍政権は首相自身の「桜を見る会」で末期症状を呈している。「官邸の守護神」といわれてきた菅官房長官の答弁も支離滅裂の極みだ。最高権力者である首相が、モリ・カケ事件、文書改ざん事件に続いて、今度は国政選挙がらみで大規模な不正を働いていたのである。政治の腐敗もここにきわまったというべきであり、またこれは氷山の一角にすぎない。こんな政府を許してはならない。
安倍の7年間の任期で、日本社会の格差・貧困が深刻化している。萩生田文科相の「身の丈」発言は政権のおごりの現れだ。「富める者はますます富み、一度困窮すればはいあがることができないすべり台社会」。これが今の日本の現状だ。
その一方で権力者とその取り巻き連中は、「今だけ、金だけ、自分だけ」とばかりに安倍政権の下で生み出された利権(「国家戦略特区」はその典型)に群がっている。こうした政治の私物化・縁故主義のまん延にたいして、人民の怒りは充満している。沖縄では民意を無視して、新基地建設を強行し、福島事故を忘れたかのごとく原発再稼働を推進する。このおごり高ぶった政権を民衆決起で倒す時だ。(岸本耕志)
辺野古新基地
承認撤回復活へ 県が訴訟
玉城知事 「実体審理で正しい判断を」
11月2日、キャンプ・シュワブ前の県民大行動に1000人が参加(名護市内) |
大行動に千人
11月2日 名護市のキャンプ・シュワブゲート前で、毎月第1土曜日におこなわれる「県民大行動」に1000人の市民が参加。集会では、10月31日に焼失した首里城再建への言及も相次いだ。ヘリ基地反対協共同代表の安次富浩さんが「辺野古の新基地建設の予算を首里城再建、全国の災害被災地への復興に充ててほしい」と訴えると参加者から大きな拍手が起きた。また、れいわ新選組代表の山本太郎さんもマイクを握り、新基地建設反対を訴えた。集会では今月から毎月第3木曜日にシュワブのゲート前で500人規模の座り込みの抗議行動を取り組むことも決めた。
5日 連休明けから工事が再開。安和桟橋と塩川桟橋で土砂が搬出された。この日は2カ所で10トントラック1000台以上が運搬船に土砂を積み込んだ。海上では「K9護岸」から埋め立て区域に土砂が投入された。
16日 キャンプ・シュワブ第1ゲート前を中心に約3キロにわたってUターン禁止の標識が取り付けられた。この間、地元の市民は座り込みの市民を送迎するためにゲート前で人を降ろし、その場所からUターンして次の送迎に向かっていた。防衛局は、この送迎を遅らせるためにUターン禁止の標識を取り付けた。市民の抗議行動の妨害以外何物でもない。
21日 キャンプ・シュワブゲート前で、今月から始まった「第3木曜日大行動」に最大320人(累計640人)の市民が参加。市民は早朝から座り込み、1日行動を貫徹した。
防衛局は、この日通常より警備体制を強化し、機動隊を増加した。市民は機動隊の強制排除に屈することなく、スクラムを組みゴボウ抜きに備えた。機動隊はこの間、市民を閉じ込めておく柵を用いていなかったが、この日は何度も柵を用いて市民の行動を封じ込めた。
しかし、市民は3回の搬入阻止行動で、数時間にわたり搬入を遅らせた。この日の工事車両は通常の半分の106台しか搬入できなかった。市民からは「やった」の声が上がった。そして、この日の抗議行動の最後に「これからも続けよう」と勝利の拳を突き上げた。
国の違法性を問う
26日 名護市辺野古の新基地建設を巡り、県による埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして県が国を相手に起こした抗告訴訟の第1回口頭弁論が那覇地裁で開かれた。
県は工事を止めるために承認撤回の効力を復活させようと2つの訴訟を起こしている。10月に福岡高裁那覇支部が県の請求を却下し、県が同月末に上告した「関与取り消し訴訟」は沖縄防衛局の行審法利用の是非が争点になっているが、今回の抗告訴訟は国交相の裁決の適法性そのものを争う。抗告訴訟は数カ月以上、長ければ1年以上かかるとみられる。
玉城デニー知事は、意見陳述に出廷する前、裁判所前の集会で決意を表明した。市民200人は知事の決意に「デニー」コールで送り出した。知事は意見陳述で「法の番人として、実体的な審理をおこない、正しい判断を示すことを希望する」と訴えた。次回は来年3月9日に開かれる。(杉山)
3面
焦点
GSOMIA延期をどう見る
韓国民衆の選択と挑戦
請戸耕市
T 条件付きの延期
文在寅政権は、8月23日に破棄を通告していたGSOMIA(軍事情報の漏洩防止と交換円滑化の協定)について、
(1)11月22日、その終了を当面延期すると発表。同時に、
(2)日本の半導体関連3品の対韓輸出規制にたいするWTO(世界貿易機関)提訴の手続きを、当面停止させるとした。
安倍政権は、輸出規制は当面継続した上で、韓国の「ホワイト国」(輸出優遇対象国、現在はグループA)復帰と輸出規制解除に向けて日韓対話を再開する方針を発表した。
その意味するものは
@ 韓国政府の終了延期は「いつでも効力を終了させられる」という条件付きであり、あくまでも「破棄通告」が基礎になっている。日韓両国の対立・攻防が、そういう段階に入ったことを意味する。
A その基礎の上で、韓国のグループA復帰と輸出規制解除に向けて、日韓の対話再開に持ち込まれた。これは安倍政権の側の譲歩である。
B 以上の結果は、韓国にとってまず一歩を踏み出したことを意味する。同時に、大きな課題も見えており、また、文在寅政権の下では、この課題のこれ以上の前進は望めないという限界もまた明らかになってきた(後述)。
C このことは、文在寅政権が「屈服した」という評価にはならない。事態は、米国の圧力の前面化であり、米・日という大きな敵との攻防が、押したり引いたりの持久戦になるのは必定だからだ。
D ところで、GSOMIA終了の延期について、安倍政権が、「一切妥協していない」「完全勝利」などと強弁しているが、これは、得意の大本営発表であり、安倍外交の低水準さを示すもの。
韓国側が、条件つきで延期に応じたのは、安倍政権の外交的勝利でもなんでもなく、米国からの圧力があっただけのこと。その圧力は安倍政権にも加えられた。
しかも、安倍政権は、韓国のGSOMIA破棄通告という事態の意味をほとんど理解していない。安倍政権は、韓国叩きで支持浮揚を図る以上の戦略も大義も持ち合わせていない。そういう安倍政権に危機感を募らせた米国に迫られて、「対話再開」の方針を出したに過ぎない。
U 米国の必死さの理由
日韓対立が、歴史認識問題から安保問題へと拡大し、GSOMIA終了目前まで進みながら、ひとまず調整局面に入った。その直接的要因は、米国による必死の圧力である。
この間、米政府の安全保障担当チームが、異例の激しさで入れ代わり訪韓し、文在寅政権に翻意を迫った。同時に、日本にも立ち寄って、安倍政権にも圧力をかけていた。
米国の必死さの理由は、韓国のGSOMIA破棄が、米国の覇権戦略と秩序構想を挫折させるからだ。
米国の「インド太平洋戦略」である。そこでは、台頭する中国を脅威と見なし、米国の西海岸からインド洋の西岸地域の支配をもって、中国の「一帯一路」構想(中国から欧州に連なる経済・外交圏の構想)に対抗するとしている。
この戦略では、追随する日本を「土台」とし、さらに韓国を「核心軸」として組み込むとしている。日韓のGSOMIAはその布石に他ならない。日韓の軍事情報の共有をもって日米韓ミサイル防御体制を構築し、米国のための地域同盟に発展させようという狙いだ。
だから、韓国のGSOMIA破棄は、その「核心軸」の脱落を意味する。しかも、文在寅政権にGSOMIA破棄を促したのは民衆の運動の力であり、それは、後述のように、米国の覇権戦略と秩序構想に抗して、民衆の側から対抗戦略を模索する動きとしてある。このことが米国を恐怖させているのだ。
V 米国への幻想の破壊
韓国の民衆は、米国の対中国包囲に動員されることが、民衆の利益だとは考えていない。ろうそく革命を経た韓国民衆の大勢はGSOMIA破棄だ。(韓国世論調査 破棄支持51%反対29%/11月22日韓国ギャラップ)
そもそも、GSOMIAは、李明博政権の下で日本との秘密交渉が進められていたが、締結直前の12年に強い反対運動でとん挫。朴槿恵政権の下で16年に締結にこぎつけたが、ろうそく革命によって朴槿恵は打倒された。そして文在寅政権の下で、19年8月23日に破棄通告、11月22日に終了延期となっている。したがって、GSOMIA破棄は韓国の民衆にとって既定方針なのだ。
では、GSOMIA破棄過程で、大きな課題と文在寅政権の限界が見えてきたと述べたが、その課題とは何か。列挙すると3点―
@.米国の覇権戦略と秩序構想に抗することへの米国の激甚な対応
A.日本の歴史認識・植民地主義問題に切り込んだことへの日本の激甚な対応
B.韓国の親日派・保守派・財閥による支配の「積弊」を突き破り、新しい社会を構想し実践することへの激しい抵抗
いうまでもなく、これらは、単に文在寅政権が直面しただけではなく、韓国の社会と運動の全体が直面している大きな課題である。
米中対立下の活路
課題の中でも、とりわけ、韓国にとって対米関係の問題は歴史的に極めて大きい。その米国の没落が進行し、台頭する中国との間で覇権争いを演じている。グローバリズム下の米中対立という情勢は、韓国の活路をますます難しくしている。
しかも、グローバリズム下の米中対立という情勢は、米中のどちらが勝つかというものではなく、もはや、資本のシステムと近代国家のシステムそのものの限界と終焉として進展しつつあると見た方がいいだろう。
だからこそ、韓国の民衆にとって、米中のどちらかを選択するという問題ではなく、民衆の自主的な意志と力で、対抗戦略を構想することが求められている。そういう容易ならざる挑戦である。
文在寅政権の限界
ここで文在寅政権が露見した限界とは、対米関係についての伝統的な思考を引きずりながら、朝鮮半島と東アジアの関係に変化をもたらせると幻想したことであった。それが、GSOMIA破棄に踏み込みながら、米国の圧力を一蹴するに至らなかった理由である。
(文在寅政権の今一つの限界は「積弊清算」を、自由主義的な経済思想と上からの改革で推進する点。そのために、財閥を利し、労働改悪を推進している)
しかし、文在寅政権の限界は、民衆の運動が乗り越えていく。
GSOMIA破棄過程で韓国民衆がつかんだ事柄の第一も、対米関係こそカギだということだ。
韓国社会にとって長らく、米国は羨望の的であり、正義であり、世界の守護者であった。
しかし、この間のトランプの政治と、GSOMIAをめぐる米国の態度を通して、米国の素顔があからさまになってきた。今や米国は、自国の利益だけを貪る一介の覇権国家に過ぎない。もはや米国との同盟を続ける意味はない。そういう機運が高まっている。米国にたいする幻想の崩壊こそ、トランプの最大の「功績」だ。
自主的な意思と力
もはや米国に期待してはならない。GSOMIA破棄にたいする民衆の支持は、そういう意志の表明である。しかも、それは単なる反対ではない。民衆の自主的な意志と力による朝鮮半島と東アジアの平和を模索しようという意志である。
またGSOMIA終了延期の判断への韓国民衆の反応も、グローバリズム下の米中対立という困難と展望を理解した賢明かつ高度なものになっている。
(韓国世論調査 GSOMIA終了の延期は 良い決定70・7% 良くない決定17・5%/日本が今後輸出規制を撤回しない場合は GSOMIA終了すべき53% 維持すべき41・5% 11月25日 韓国MBC)
W 韓国の反安倍闘争の威力
韓国民衆がつかんだ事柄の第二は、歴史認識問題を不問にした日本のあり方が、東アジアの危機の元凶であり、また米国の覇権戦略の破綻点をなしているということだ。日本は〈植民地支配は正当・合法〉という歴史認識に固執しており、改憲と軍事大国化に進んでいる。そういう日本と韓国との「安保協力」はそもそも成立しようがない。
「超国家的意義」
韓国民衆がつかんだ事柄の第三は、反安倍闘争の大きな意義と威力である。
朴槿恵政権を倒したろうそく革命の第二ステージは反安倍闘争であり、65年日韓条約体制の打破であり、それは「積弊清算」および対米関係再編と一体である。
65年日韓条約体制とは、日本による植民地主義の継続、日本の支配層と韓国の親日派の結託による抑圧・特権・腐敗の「積弊」である。「積弊清算」とは、そういう抑圧・特権・腐敗の構造を打破するたたかいであるが、それは、韓国の親日派の「清算」であるとともに、不可避に日本の側の岸信介―安倍晋三の系譜による植民主義と歴史認識を打倒・一掃するたたかいとならざるをえない。
韓国の民衆の反安倍闘争がいかなる地平でたたかれているかをハンギョレ新聞の論説から確認したい。
「安倍の暴走は韓国には経済的脅威だが、日本国民にははるかに根本的な脅威である。日本国民が目覚めなければ、日本は安倍の妄想とともに永遠の未成年の孤立状態に閉じ込められるしかない。韓国国民の安倍反対闘争が持つ超国家的意義がここにある。一斉不買運動(注)を軸とした韓国の反安倍闘争が日本国民の覚醒を促し、韓日の市民社会の共闘に上昇すれば、この闘争は東アジアに新しい平和秩序を創出する原点になれるだろう」(コ・ミョンスプ論説委員8月22日)
(注)韓国世論調査によると「日本製品不買運動に参加している」 77・6%(11月11日MBC)
暴走する安倍を支えている日本の現状への厳しい見方が表明されている。と同時に、その現状を、韓国民衆からの「超国家的」な連帯と援助をテコに、日本の運動の飛躍と転換をもって、東アジアのレベルで突き崩していこうと呼びかけられている。
4面
投稿
〈朝鮮〉を抜きに日本人の存在と歴史・文化を語ることはできない
大庭 伸介
本紙280号に「近代知識人の朝鮮観 蔑視論から征韓論へ」と題して、仲尾宏氏の講演要旨が紹介されていた。現内閣の韓国敵視政策とメディアの嫌韓キャンペーンがエスカレートするなかで、時宜を得た記事である。私自身も乳井貢については名前すら知らず、浅学を思い知らされた。
この記事に触発されて、日本と朝鮮との歴史的関係に関わる私のささやかな知見を述べてみたい。
私はかつて戦前の労働争議について調べていたとき、全虎岩(日本名・立花春吉のち貞治)さんにヒアリングしたことがある。彼は渡辺政之輔が指導する東京の南葛労働協会に加わり、後に大阪一般労働者組合で活躍した「在日一世」の人気者の闘士であった。
全さんは奈良県の法隆寺から北東に少し離れた地に住んでいた。私に「泊まっていけ」としきりに誘ってくれたが、すでに友人宅に宿泊することを約束していたので、丁重に断った。そしたら国鉄(現JR)関西本線の最寄りの大和小泉駅まで小一時間、具合の悪い片方の足を引きずりながら、同行して見送ってくれた。その折、全さんは「この辺りの寺や仏さんは全部わしらの祖先が作ったもんなんや」と力説していた。
私も古代における日本と朝鮮とのかかわりについて、一応生かじりの知識を持っていたが、全さんの言葉は今も耳にこびりついている。
古代の日朝関係史についての私のネタモトは、かつて京都で発行されていた雑誌『日本のなかの朝鮮文化』に連載された座談会記事を収録した4冊の書である(『日本の朝鮮文化』『古代日本と朝鮮』『日本の渡来文化』『朝鮮と古代日本文化』。いずれも中公文庫)。
上田正昭や李進熙・直木孝次郎・森浩一などの学者や、金達寿や司馬遼太郎らの発言は斬新な視点を提起し、埋もれていた史実を次々と明らかにして、目のさめるような思いで読んだ記憶がある。そのうちのホンの一部をアトランダムに挙げると―
「日本列島の歴史が日本史ではない」
朝鮮半島から伝わった文化・技術
朝鮮からの渡来人は稲作に欠かせない灌漑技術をもたらし、沖積平野を開拓した
製鉄技術を伝え、鉄製農具で農業を飛躍的に発展させた
文字を伝え、その使用を担った
活版印刷は朝鮮が世界で最初に開発(この史実は一時日本の教科書に採用、のち消去)した
日本最初の寺・飛鳥寺は百済から渡来した工人の手による
百済から渡来した鬼室集斯は学頭職(文部大臣兼大学総長)に任じられ、退官後は琵琶湖の東に領地を与えられて住み、村人は太平洋戦争の最中も鬼室神社の祭りを絶やさなかった
「正倉院の御物」と称するものを東大寺に納めたのは高麗福信で、彼は平城京(奈良)の造営卿であった
高句麗から聖徳太子の教育掛として派遣された僧慈慧は太子の教養や学問に決定的な影響を与えた
聖徳太子のパトロンであった新羅出身の秦氏の一族は、奈良時代に三代にわたって主計頭を勤めて国家財政を司り、平安遷都は秦氏の財力にのっかって実現した
行基や最澄、山上憶良、坂上田村麻呂などは渡来人またはその子孫である
律令制度(古代国家の基本システム)は高句麗からもたらされた
初めての武家政権である鎌倉幕府を打ち立てた関東武士団は、5世紀頃に武蔵国狛江(現東京都狛江市)に渡来した、良馬の飼育と騎射に長じた高句麗人の末裔であった
要するに、朝鮮半島から幾度も多くの人の群れが渡来し、日本は朝鮮独自(中国文明の単なる中継ではない)の文化や技術を学び摂取することによって成立し、発展してきたのである。
「日本列島の歴史が日本史だというのは、とんでもない錯覚である」という上田正昭の指摘は、極めて含蓄に富んだ至言である。
洛中洛外図に描かれた、江戸時代の朝鮮通信使一行を迎える民衆の表情は喜びに満ちている。江戸後期に興った国学の影響と、幕末の黒船来航によってかきたてられたナショナリズムによって、朝鮮蔑視の考え方が頭をもたげたが、たかだか百数十年前のことに過ぎない。
琵琶湖の東岸を走るJR北陸本線の高月駅(長浜市)から東に向かうと雨森芳洲旧宅跡があり、その近くに、「東アジア交流ハウス」がある。芳洲の遺品や遺墨などを展示している小さな施設である。韓国からの修学旅行生がよく訪れる。しかし、ほとんどの日本人はその存在すら知らない。
大陸=中国のイメージの誤り
古代の遺跡や出土品などが発見されると、メディアは決まって「大陸からの伝来」とか「大陸の影響」と報道する。それを大半の日本人は〈大陸=中国〉というイメージで受けとめる。しかし実際には朝鮮がルーツか、朝鮮からの渡来人の手による場合が少なくない。
私たちが生まれ育ち生活している日本の文化と歴史、否、日本という社会の存立そのものが朝鮮半島と分かち難く結びついているのである。東アジアの平和と解放を追求するうえで、日本(人)にとって〈朝鮮〉とは何であったのか、そして今、何であるのかを問い続けることは絶対に欠かせない問題である。
36年間に及ぶ植民地支配と、そこから派生した諸問題の自己批判的な総括が、その核心を占めていることは言うまでもない。
「底が抜けた」ヘイト社会を撃つ
10月27日 新宿アクション
安倍政権が先頭にたった韓国叩き、メディアの追随・翼賛、ネトウヨの跋扈…今のこの国のレイシズム状況は、底が抜けたと言えるほどの危険水域に突入しています。
そんな中、10月27日に新宿・新大久保地域をデモ行進する「差別・排外主義を許すな 10・21新宿ACTION 安倍政権の韓国叩きはおかしいぞ!」をおこないました。
今年の韓国へのヘイトは、日本軍性奴隷と徴用工への謝罪・賠償問題を水路として激化しました。天皇代替わりの今年、韓国国会議長からの「天皇は(日本軍性奴隷の)被害者に謝罪しろ」という発言に象徴される韓国からの謝罪・根本解決要求、徴用工問題での韓国大法院(最高裁判所)による日本企業への損害賠償命令。それに対して、安倍政権およびそれに追従する右派メディア・ネトウヨ的部分が激甚な反応を示して、猛烈な韓国たたきに出ました。
その象徴が、「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」の中止事件でした。日本軍性奴隷問題を象徴する「平和の少女像」と天皇を題材にした展示に対して、抗議と脅迫を集中させて展示会を中止に追い込んだのです。また、マスコミでは地上波テレビの番組でコリアンへのヘイトクライムが公然と扇動される事態さえ現れました。
そのようなヘイト状況を打破して、コリアンを始めとするさまざまな国の人々と共につながり暮らしていける社会を作ろうというメッセージを新宿・新大久保地域の人々に届けるデモ行進になりました。
「あいちトリエンナーレへの交付金中止を撤回せよ」「行政権力による表現弾圧を許すな」「メディアはコリアンへの差別扇動をやめろ」「日本政府は韓国人徴用工への補償をおこなえ」「日本政府は日本軍性奴隷への謝罪をおこなえ」「レイシストの議会への進出を阻止するぞ」「最高裁の朝鮮高校無償化(除外)判決を弾劾するぞ」…今年新しく作ったプラカードです。これだけ多くのスローガンを新しく追加しなければならない現実に怒りを新たにします。
新宿アルタ前を出発して、新宿西口・靖国通り・新宿区役所・職安通りを通って柏木公園に戻るというコースでした。参加者は120人で、昨年の85人から大幅に増えました。
出発地点での連帯アピールは、「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」「終わりにしよう天皇制!『代替わり』反対ネットワーク」「川崎から日本軍『慰安婦』問題の解決を求める市民の会」「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」「ヘイトスピーチを許さない練馬」、そして墨田地域で反差別の闘いに長年取り組んできた仲間の5団体1個人のリレーアピールでした。
この日の5日前の10月22日に天皇の即位式があり、500人の参加で反対デモ(主催は、上記「終わりにしよう天皇制! ネットワーク」)があったのですが、この時に3人が不当逮捕されるという弾圧がかけられました。そのことへの抗議のアピールが特に強く訴えられました。
なぜ、日本軍性奴隷や徴用工の問題が解決されず、それどころか逆に韓国への排外主義があおられるのか。それは、天皇制のもとに朝鮮を侵略し植民地化した日本が、その歴史の事実をきちんと認めず、責任をあいまいにしているからです。その歴史的な責任をきちんと清算して、韓国やコリアンと本当に対等な関係で生きられる社会を作ること。それが、私たちに求められています。(差別・排外主義に反対する連絡会)
各地の反基地運動が交流
11月16〜17日 岩国行動2019
11月16日、17日、「安倍をたおそう! 東アジアの平和を創ろう!2019岩国行動」が、山口県岩国市内でおこなわれ100人を超える人々が参加した(写真)。主催は、アジア共同行動日本連絡会議、岩国・労働者反戦交流集会実行委員会。
16日の午後に開催された労働者反戦交流集会では、関生弾圧に抗議する決議や報告があり、また全港湾から産別指定賃金交渉で、経営側が独占禁止法に抵触するおそれを理由に拒否するという事態が報告され、この闘いに連帯することが確認された。
同日夜の全国反基地運動交流会や、翌日の国際連帯集会では、岩国や沖縄に加えて、阿武や上関、築城などから住民運動の活動家が参加し交流が深められた。阿武のように、元々「平成の大合併」に反対し、地域の共同体運動を意識的に進めてきたところは、保守系の人も含めて、「国の金を積んで住民を無視する政策に反対してたたかうのは当然である」ことが確認された。
5面
アウシュヴィッツへのひとり旅 第2回
テロのトポグラフィー
山路道夫
到着日の翌日の午前中は、電車とバスを乗り継いでプレッツエンゼー記念館に向かう。「プレッツエンゼー監獄には、1933〜45年まで反ヒトラー抵抗運動に参加していた市民が幽閉され、ここで2000人以上が処刑された。当時の処刑室の一部が残されている。……『ヒトラー独裁の犠牲者たち』が語り掛けてくる場所だ。」(地球の歩き方・ドイツ編)至近まで行き、周辺にいた人たちに訊いてまわったが、ついに発見できなかった。
断念して次を目指す。
午後からは「テロのトポグラフィー」だ。「ここはゲシュタポと親衛隊本部があった場所で、恐怖政治によるテロがおこなわれていた。当時、この住所への出頭命令は「死」を意味した。戦後は北側の通りに面してベルリンの壁が築かれた。」(地球の歩き方) 屋外には70枚ほどの写真パネル(英語の解説文)が展示されていた(写真上)。特に、ナチスに迫害されるワルシャワ市民の様子が目についた。すぐそばの小さな建物では、爆撃で焼け野原になったワルシャワを上空から撮影した映画が上映されていた。道路側にはベルリンの壁が残されていた。記念館では、ナチス関係の写真を多数展示。この日は、大型バスなどで来所した人達が引率者から説明を聞いている場面がいくつも見受けられた。
ドイツでは、自国がおこなった差別と抑圧の歴史的事実を絶やさず伝えていこうという強い意志を持ち続けているのが感じられた。
次に、ブランデンブルク門へ。「ドイツ古典主義建築の傑作」と言われているようだが、芸術に一家言も持っていない私でも「ドイツの芸術性」というものを感じざるをえなかった。最後に、文化フォーラム内の絵画館へ。絵画のことは分からないが、イタリア・ルネッサンスの絵画の模造品をかつて見たことがあり、ドイツの絵画も劣らず「グレイト(すごい)」なのが伝わってきた。
帰りは、道に迷いつつ、人に訊きまくって前夜のホテルへ。夕食は、他国の、居酒屋兼レストランで酩酊することになっては大変と安全コース。親父さんが一人で切り盛りする、スパゲティとピザの店でドイツビールを飲む。やはりうまい。その一方で、早々と米が恋しい。翌日、ベルリン中央駅駅中で、コメの上に肉と野菜をトッピングした「ライスボウル」を食べたら、元気が出た。ドイツ名産はついに食べず。ドイツの物価は日本と同じくらいか? もう一言付け足せば、路上駐車がやたらと多い。それに、タトゥー(いれずみ)が市民権を得ている模様で、ホテルで見かけた警察官も腕に彫り込んでいた。(つづく)
投稿
「骨格提言」の完全実現へ
全ての人に必要な福祉を
木村栄子さんが国会議員として壇上から決意表明(10月30日 日比谷野外音楽堂) |
10月30日、「『骨格提言』の完全実現を求める10・30大フォーラム」が日比谷野外音楽堂で開かれ500人が参加した。優生思想や介護保険統合に反対する発言などがあった。国会議員になった大フォーラム実行委員の木村英子さんが元気に決意表明。船後靖彦議員は「れいわ新選組」を代表して発言した。立憲民主党、共産党の国会議員も発言した。
DPI女性障害者ネットワーク代表の藤原久美子さんは、障害をもつ前はまわりから「早く子どもをつくれ」と言われたのに、障害をもつと「やめたほうが良い」と反対された。「優生保護法が廃止された後も、『障害者は子どもをもつべきではない』という考えは根強い」と現状を批判した。
優生保護法の被害者で裁判の原告の北三郎さんは自らの経験と裁判で国に責任を問いたいと述べた。透析を受ける視覚障害者の有馬さんは、透析再開を要求した女性が、医師に受け入れられず死に至った公立福生病院事件にふれ、「医療人は生きることを支援する人であってほしい」と述べた。
全国公的介護保障要求者組合の三井絹子さんは「障害者が実質的に介護保険にどんどんはめられている」と障害者介助の介護保険との統合を批判した。
基調報告では障害者介助を介護保険に統合する動きに反対の声をあげるとともに、高齢者を不幸にする介護保険の廃止と、新たな「骨格提言」に基づく介助制度を全世代にわたって創設する要求を挙げようと提案された。
集会後、大フォーラム参加者は厚生労働省前に移動し「介護保険ではなく、憲法に則り政府の責任で年齢にかかわりなく全ての人に必要な福祉、介助を保障し地域での暮らしを保障する制度をつくるべきだ」とする集会決議を厚生労働大臣にわたしに行った。厚労省は初めは警備課が対応して受け取りを拒否したが、抗議の末、障がい福祉課が受け取り、高齢者を担当する部局にも渡すと約束した。(高見元博)
(定点観測)
安倍政権の改憲動向
(11月18日〜20日)
11月18日 自民党は広島市で憲法問題など地方政調会を開催。約600人が参加し、9条への自衛隊明記に賛否両論が出された。地元選出の岸田政調会長は「(書き込んでも)戦争放棄、専守防衛、平和主義は変わらない。自衛隊違憲論の解消のため」と述べたが、改憲に積極的な意見が出る一方、「被爆地広島では反対の意見が多い」という声も上がった。政調会は和歌山での開催に続き2回目。自民党は12月に福島県でも開催、来年以降も継続する。
11月20日 自民党は国民投票法改正案の今国会での成立を事実上見送った。衆院憲法審査会の幹事会で「21日審議、採決」の日程が調整できなかった。「9条への自衛隊明記」など自民党4項目改憲案の国会提示はもちろん、国民民主が「憲法論議は積極的におこなう」と提出している、「テレビCM禁止、衆院解散権の制約」などの改正案も次期国会へ持ち越しとなった。一方で自民、立憲民主の国対委員長は「憲法審での議論は続ける」としている。
11月14日の衆院憲法審自由討議では、「そもそも政党として改憲案を出すべきではないというのが、これまでの(憲法審の)議論だ」(山花郁夫・衆院議員、立憲民主)、「9条の非軍事、平和主義は憲法体系の根幹。崩してはならない」(本村伸子・衆院議員、共産)などの意見が出された。一方、閣僚辞任で実質審議が中止になった10月末には、与党委員から「国民投票法を改正しなくても国民投票はできる」という発言もあった。
テレビCMは否応なく家庭や人々に入ってくる。国民投票法のCM扱いを、簡単に見ておこう。非常に自由度が高く資金や寄付金の規正がない。いくらでも資金を集め広告を出すことができる青天井。「改憲派、護憲派」のどちらに有利かは言うまでもない。企業や推進団体からの資金と庶民の財布やカンパは、およそ桁が違う。テレビCMは二通りある。@「賛成、反対」を呼びかける、A個人や企業、団体が「私(たち)は賛成(反対)です」と意見を表明する。@は投票2週間前から禁止、Aは投票日当日まで可能。有名人やタレントを起用する力、ノウハウ、何よりも資金力がある改憲派が圧倒的に有利だ。
その意味では、国民投票法改正は必要だろう。しかし、9条改憲や緊急事態条項の新設そのものが「…国務大臣、国会議員らの憲法尊重、擁護義務」に反する違憲行為である。憲法審査会は、安倍首相の「議論するのか、職務を放棄するのか」などの詭弁に弄されてはならない。
(コラム)
私と天皇制 J
「国民に寄り添う」は階級矛盾を隠すイチジクの葉
大災害のたびに前天皇夫妻は、被災地を訪れた。膝を交えんばかりにして「大変でしょうが頑張ってくださいね」と、「やさしいお言葉」をかけるシーンが、その都度テレビで放映された。
「国民と痛みを分かち合い、その気持ちに寄り添う御仁慈」を示すことで、彼らは点数を稼いだ。
そうした行為は、人びとの不満や怒りが政府や大資本に向かって爆発することを未然に防いでいる。東電福島第一原発が爆発して5日後、明仁はビデオ・メッセージを発し、「秩序ある行動」を呼びかけている。
彼らは自分たちの役割を十分にわきまえて、「国民統合の象徴」を演じているのだ。
かつて昭和天皇一家は皇太子明仁が学習院の夏休みになると、浜名湖で過ごした時期があった。
彼らは国鉄(現JR)浜松駅から信号無視のフルスピードで、奥浜名湖の静岡銀行頭取の別荘に赴いた。そこで明仁は地元の漁師たちが多くの小舟を浮かべて、大きな網を湖底に張り巡らせたうえで、水泳を楽しんだ。私が漁師の息子から聞いた話である。
美智子は2001年、1300人もの宮内庁の随員を従え、スイスのバーゼルを訪れた。同市で開催された国際児童図書展で、名誉総裁として記念講演をぶつためである。
講演会の入場料は食事代も含め、何と700フラン(約6万円)。一般庶民の参加防止策であることは言うまでもない。
こんな環境で暮らしている人間が「国民と痛みを分かち合う」なんて、チャンチャラおかしい。
自分の地位を守るために沖縄を売り渡すことをマッカーサーに申し出た昭和天皇裕仁。裕仁の戦争責任には一言も触れなかった平成天皇明仁。そして「象徴天皇としての務めを立派に果たした」明仁と美智子の敷いた路線を踏襲すると誓う新天皇夫妻。
彼らの言動は、安倍政権による貧困と格差の拡大、戦争政策の強行、改憲策動を覆い隠すためのイチジクの葉である。
天皇や皇后の就任パレードを、前日から場所取りまでして、大勢の国民が見物した。「日の丸」を掲げる家やオフィスが目立たなかったのが、せめてもの救いである。
一連の天皇交代劇をめぐって、「この人までが」とあきれる程に、ほとんどの「知識人」が天皇制肯定の発言をした。
私たちは、物事や人物の真贋を見抜く心眼を磨くことが求められている。(Q生)
6面
連載
命をみつめて見えてきたもの A
患者は症例でなく一人の人間
有野まるこ
死亡率は百%だが…
6年近く前、ガンの診断が確定すると、まるでベルトコンベアーに乗せられたように検査の予約、手術日まで矢継ぎ早に決められていった。医師にとっては定番だが、私の方は自分の身体の主人公が自分ではなくなり置いてきぼりをくらっているような喪失感。ガンを敵とみなしてやっつける三大療法(手術・抗がん剤・放射線)は、勿論それで治って何年も健在の人々もいる。でも私には抵抗感が強く病院から逃げたかった。
「まだ初期」という甘い認識や自分でガンを治した親友の存在に背中を押され、手術はしない選択をした。大病院の治療方針を拒否するリスクもあるし、医師への通告は勇気も決断もいるが早い方がいい。医師は驚き、憐れむような目で私を見た。
自分を取り戻せた安堵感。後悔はなかった。開業医で経過をみながら療養することにした。
1年目、調子は良好。2年目つい無理をし、療養のキモを怠る。その後も仕事・活動は軽減どころかハードに。5年目に入り想定外のストレスも重なり、ヤバイヤバイと自覚しつつ、6年目泌尿器系も痛めついに動けなくなった。「ブレーキ障害」の状態が招いた結果だった。
2月、泌尿器への緊急処置が必要となり、主治医の紹介状と検査データをもって老舗の某病院を受診した。すると医師は慌てたように「絶対治らない」「来月だってどうなるかわからない」「(最初に手術を拒否してるから)触れない」と連発するのだ。あからさまな診療拒否。そのくせ何の説明もなく検査までしていたことが後で請求書を見てわかった。後日、電話で抗議、主治医宛に検査結果を送付させた。
人間の死亡率は百パーセントだが、我が事として死を考えてはこなかった私。この医師のお陰で初めて「余命通告」を受けたガン患者の気持ちに近づけたし、死に向き合い始める。
4月、私は内部障がいで4級の身体障がい者手帳の交付を受けた。
患者とは「故障した機械」でも「症例」でもなく「一人の人間」であることを深く認識している医師がどのくらいいるだろう。
「医は仁術」というが、今や、患者の心音も脈も顔色も診ることができず、患者の訴えを聞き出そうともしない医師が多い。患者の顔さえ見ずにキーボードを打ち続けて1分で終わる診察、検査結果が出なければ何も始まらない医療。漫然と同じ薬を出し続け、患者は大量の飲み残しを医師に伝えることもできない関係。仕事上、時々高齢者の受診に同行したが、自分の病状や治療内容を理解できてない人が多い。それを分かっていない医師はさらに多い気がする。
『患者が治すがん治療』の著者、小井戸一光さんはガンの最先端医療から統合医療(※注)のクリニック開設へと転換した札幌の医師だが、大きなきっかけについて、こんな事を自戒的に紹介している。自分が診ていたガン患者の講演会に行った時、彼女は「私の主治医は『私』には興味がない、『すい臓がん』という病気にしか興味をもっていない」と語った。誠心誠意やってきたつもりが患者の受けとめは違っていたのだとショックを受けた。更に、つれあいがガンになり、主治医から明日の天気でも伝えるように「余命1年です」と宣告された時の衝撃と憤り。自分が患者家族の立場になったとき、初めて医師としてやってきたことの無神経さや残酷さに気づいたと。
今、お医者さんは大変だ。過酷な状況は想像を超える。医療・健康保険制度は矛盾と問題点がテンコ盛り。その変革と表裏の問題として、医療内容そのもの、医療者と患者・家族の関係の変革の課題があると思う。(つづく)
(※注)統合医療 近代西洋医学のみならず、中国医学・インド医学など各国の伝統医学、心理療法、自然療法、食事療法、手技療法、運動療法、植物療法、芸術療法など等、さまざまな治療法・健康法を統合して行う療法。患者を中心に据え、生活の質(QOL)の向上、心と体の関係、社会的・自然的環境や関係性を重視する。
私たちの介護≠守るために
生の終末に伴走する介護
11月9日「みんな集まろう! 私たちの介護を守るために!」(主催 介護・福祉総がかり行動)が大阪市内でおこなわれ、介護労働者、介護保険利用者、事業者など130人近い結集(写真)。
「必要な介護の切捨てにSTOP!」「その人らしい生と終末に伴走する介護を守りたい!」。この取り組みは安倍政権の進める介護保険の改悪は介護崩壊という現実になっていることへの危機感から呼びかけられたもの。集会冒頭でも「介護がどうあるべきか原点にたって反転攻勢に転じる」と述べられた。
メイン講師には介護業界で受講希望が殺到している三好春樹さん(生活とリハビリ研究所所長・広島生まれの介護・リハビリ専門家)。問題提起として「次期介護保険制度改定の動きと狙われる内容」を日下部雅喜さん(大阪社保協介護保険対策委員)。各介護現場からも報告があった。
国が介護を放棄
問題提起では2021年から予定されている「次期介護保険改定」(19年度内結論、20年法改正)がまさに「全面再編への踏み出しである」として4つの改悪を指摘。@いま無料のケアプランの有料化、A利用者負担の拡大、B要介護2以下の総合事業移行(保険はずし)、C介護を「卒業」(自立支援・介護予防)させるインセンティブ交付金。いずれも保険料や利用者負担を増やしてサービス切りを競わせ、介護を抑制し社会的介護を国が放棄するものでまさに「介護崩壊」であることが明らかにされた。
三好さんの講演は「私たちがめざした介護とは何か」として題しておこなわれ。自分の高校時代の反戦闘争から介護現場での30年近い現場経験からのエピソードとユーモア溢れ、全体が「介護」の哲学=原点にふれる内容だった。介護保険制度はその社会化といいつつ「資本主義社会化―堂々たる金儲け」だ。それは「倫理・正義・義務」が支配し、いまの介護を崩壊させているといい、「介護とは素晴らしいいい仕事」―最首悟が語る「二者性」という言葉をまさに編んでいるのが介護現場だ。老化に伴う人間の変化と付き合う創造ある3K(感動、健康、工夫)に溢れ、芸術・農業と並ぶ新たな価値観(金より命が支配するパラレルワールド)の現場なのだと自己の実践例を引きながら介護の本質を展開し会場をひきつけた。
労働条件の改善
もう一つ重要なのが介護労働者の低賃金・労働条件問題である。
介護職の慢性的な人員不足を解消として政府は「特定処遇改善加算」を出してきた。勤続10年の職場のリーダー的な存在の介護福祉士に8万円の賃上げをするというもの。介護職あるいは、これから介護の仕事に就こうとしている人に「仕事を辞めずに10年頑張れば8万円の賃上げがありますよ」と。職場の労働者間に分断を持ち込むものであり、財務省は格差をつけることが狙いだと露骨に言っている。介護・福祉総がかり行動は11月1日に大阪府交渉をおこない「労使の話し合いによる平等配分は可能である」という確認を取った。そして11月25日に厚生労働省と財務省交渉をおこなう方針を提案した。項目は
1.介護労働者の賃金・労働条件の抜本的改善のため、@介護従事者全員対象、A全産業平均の賃金額を保障、B全額国庫負担の実効ある処遇改善策をおこなうこと。
2.「介護職員等特定処遇改善加算」は介護現場に新たな格差と分断を持ち込み、混乱を引き起こしているので、事業者の裁量と労使自治による公平・一律配分ができる制度運用へと改めること。
3.介護事業所・施設の人員配置基準と報酬を改善し、労働条件と利用者に対するサービスの向上を図ること。
4.ヘルパーの移動時間の賃金未払いなど介護職場から労働基準法違反を一掃し、ハラスメントなどをなくすための総合的な措置を講じること。
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