未来・第252号


            未来第252号目次(2018年8月16日発行)

 1面  辺野古埋立て止めよう
     8月11日 県民大会に7万人

     翁長沖縄県知事 逝く
     命を懸け新基地阻止貫く

     三里塚・請求異議裁判
     7月17日 千葉地裁

 2面  シリーズ 韓国はいま(1)
     最賃などをめぐって緊迫
     文在寅とろうそく革命”の現局面

     朝鮮戦争終結へ願い込め
     PEACE≠フ人文字
     大阪

     投稿
     武庫川ユニオンが30周年

 3面  外来種を辺野古に運ぶな
     土砂搬出に反対し集会
     7月25日 東京      

     若狭3町に公開質問
     原発の現状・将来どうする
     7月18日     

     相模原殺傷事件忘れない
     しょうがい者ら150人がデモ
     神戸

     投稿
     福祉が再犯防止*レ的に
     「社会内処遇」の問題点

 4面 争点
     志賀原発をただちに廃炉へ(上)
     原発建屋の直下に活断層
     田端 登美雄

     強権破る「あたりまえ」の民主主義を
     「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会

 5面 (直撃インタビュー)
     第35弾
     憲法カフェとミナセンで走った3年(下)
     声をあげれば社会は変わる
     弁護士 弘川欣絵さんに聞く

 6面  不正義と闘い 人間を取り戻す
     狭山事件再審に向け『獄友』上映
     7月29日 奈良

     故井田一郎さんの一周忌にあたって
     石川一雄さんの信頼厚く

     山本善偉さんの逝去を悼む
     人間の尊厳 求め続けた

     読者の声
     安倍を 逃がさない!
     兵庫県 梶原 義行

     夏期特別カンパのお願い

       

辺野古埋立て止めよう
8月11日 県民大会に7万人

「辺野古新基地建設のための埋め立て」承認撤回に向けて病床から陣頭指揮をとっていた翁長雄志沖縄県知事が8日、急逝した。その命がけのたたかいに深く敬意を表し、心からご冥福を祈る。沖縄防衛局による土砂投入開始をめぐって新基地反対闘争は、重大な局面を迎えた。11日、那覇市の奥武山公園で開かれた沖縄県民大会には7万人が参加した。大会では翁長知事の遺志を受け継ぎ、土砂投入を許さず、新基地計画を撤回させるまでたたかいぬく決意を示した。沖縄県民と心を一つにして、埋め立て阻止へたちあがろう。

土砂投入阻止へ

7月27日 翁長雄志知事は27日午前10時30分、県庁で記者会見を開き、名護市辺野古の新基地建設について、前知事による埋め立て承認を撤回することを表明した。 会見では「防衛局が基地全体の実施設計や環境保全対策について、県と事前に協議していないことや、サンゴ類を移植する前に護岸工事に着手したことが、埋め立て承認時の留意事項に違反している」と説明。また、護岸倒壊の危険性がある軟弱地盤の存在や、学校校舎などが飛行場周辺の高さ制限に抵触することなど承認時に明らかにされなかった事実が判明したことも撤回の根拠にあげた。

撤回表明に歓声

米軍キャンプ・シュワブゲート前では、埋め立て撤回を表明する知事の声がラジオから流れると、参加者から大きな拍手や指笛、万歳の声がわき起こり、カチャーシーで喜びを表した。海上でもネット中継で様子を見守っていたが、撤回が表明されると抗議船やカヌーの上で喜びの声が上がった。
また、オール沖縄会議は正午から那覇市の県民広場で緊急集会を開いた。300人以上が参加し、「翁長知事がんばれ」「県民がついているぞ」とシュプレヒコールを上げた。各地で号外が配られ、市民は食い入るように目を通した。
8月2日 海上の護岸工事では「K4護岸」の砕石投下が続けられ、開口部が閉じられ、同護岸が1本につながった。これにより「埋め立て区域2」が「K1」「K2」「K3」「K4」「N5」の各護岸によって囲われた。護岸が既定の高さになれば、土砂投入が可能になる。
4日 「土砂投入を許さない8・4辺野古海上大行動」が早朝よりおこなわれた。カヌー43艇、船8隻に100人が乗り込み抗議行動に参加。一方ゲート前では第1土曜行動に600人が参加。計700人が決起した。工事車両の搬入はなかった。
午後1時30分から辺野古の浜で連帯集会がおこなわれ310人が参加(写真)。これからも粘り強くたたかうことを決意する場となった。

海と陸で連日決起

6日 オール沖縄会議現地闘争本部主催の「辺野古新基地建設阻止! ゲート前連続集中行動」がおこなわれた。8月6日から10日と8月16日から18日に連日午前8時よりおこなわれる。この日は250人が参加。ゲート前に座り込み、抗議の声を上げた。車両搬入はなかった。
集中行動には、7日150人、8日200人と連続決起している。両日とも車両搬入はなかったが、海上では土砂投入が可能になる既定の高さまで護岸をかさ上げする作業がおこなわれている。県は防衛局に「聴聞」の日を9日と通知。防衛局は9月3日と延期を要求したが、県は拒否。9日、「聴聞」がおこなわれた。(杉山)
(3面に関連記事)

翁長沖縄県知事 逝く
命を懸け新基地阻止貫く

沖縄県の翁長雄志知事が8日、死去した。67歳だった。翁長氏は4月に膵臓がんの手術を受け、闘病中だった。7月27日には、辺野古新基地建設のための埋め立て承認を撤回することを表明したばかりだった。記者会見では、日本政府の対米従属姿勢をきびしく批判し、「沖縄を日本とアジアの平和の架け橋」とするという熱い思いを語った。6日には、沖縄防衛局に対して聴聞期日の延期を認めないとする文書を病室で自ら決裁した。まさに命を懸けて、辺野古新基地建設反対を貫き通した。あまりにも早すぎる死である。本当に残念でならない。沖縄の自己決定権を求め続けた翁長氏の不屈の闘志を受け継ぎ、辺野古新基地建設を必ず阻止することを誓う。

三里塚・請求異議裁判
強制執行は許されない
7月17日 千葉地裁

市東孝雄さん(写真中央)を先頭に千葉地裁に向けてデモ行進(7月17日)

7月17日、市東孝雄さんの農地強制収用をめぐる請求異議裁判が、結審をめぐる緊迫した状況のなか、千葉地裁で開かれた。裁判に先立ち三里塚反対同盟と支援者は、千葉中央公園から千葉地裁までのデモをたたかい抜いた。 前2回の口頭弁論で、50年に及ぶ三里塚闘争、農地強制収用による空港建設とのたたかいの当事者から、営農の現場からの証言として、強制執行の不当・不法性が明らかにされた。

学者2人が陳述

それに続いて、この日の法廷では、農地取り上げと強制執行の問題を、農業経済学、憲法学という学問的立場から補強する2人の陳述がおこなわれた。
農業経済学の立場から石原健二さん、憲法学の立場から内藤光博さんの陳述である。
石原さんは、日本農業が危機に瀕するなかで、市東さんらの農業が、有機農業と産直型協同性(提携)という意義をもち、日本農業の再生の方向を示唆するものであり、何ものにも代えがたいものであること。この農業をつぶして企業に手渡すことは、農業者の生活を立ち行かなくさせるばかりでなく、農業者としての生きがい、誇りまで奪いとることになり、到底許されないと述べた。
内藤さんは冒頭、農業を営む権利、「営農権」を憲法的人権として位置づけるべきだと陳述。その立場から、強制執行は過酷執行であり権利の濫用だと断じた。また空港会社の強制執行が学説上の権利濫用の5つの類型に、ことごとく当てはまると指摘。空港会社側はぐうの音もでなかった。
また2人の陳述後、弁護団は「黙して語らぬ」NAAに対して、この間の証言・補強意見に対する認否・反証を強く求めた。しかしNAAは不誠実な態度・対応に終始。最後に、弁護団が最終弁論の骨子を陳述した。
次回裁判は9月27日。弁護団の最終弁論と市東さんの意見陳述が予定されている。
昨年末から証人、証言活動に制限・制動を加えようとした千葉地裁・高瀬裁判長に対して、市東さん、弁護団、反対同盟、支援・傍聴者の粘り強いたたかいによって、最低限の証言を勝ちとることができた。千葉地裁における市東さんの農地をめぐる請求異議裁判は、いよいよ最終盤を迎えている。当日は、署名の提出がおこなわれる。「強制執行は許されない」というおおきな流れを作り出そう。

2面

シリーズ 韓国はいま(1)
最賃などをめぐって緊迫
文在寅とろうそく革命”の現局面

韓国の労働運動は目下、最低賃金、労働時間短縮、全教組の法外労組通告といった問題をめぐって、文在寅政権と間で、緊迫した状況に入っている。中村猛さん(民主労総全北地域本部名誉指導委員、日韓民主労働者連帯)に、現在も進行中のろうそく革命の現局面について話を聞いた。(見出しは本紙編集委員会)

最低賃金

文在寅政権は、看板政策の一つとして、「2020年 最低賃金1万ウォン(約1000円)」を掲げてきた。そこに向かって、17年度6470ウォンから18年度7530ウォンへの大幅な引き上げをやった。今年もそのぐらい上げないと目標が達成できない。だから、これまでの「労使政委員会」(注1)を、二大労組(民主労総と韓国労総)や非正規職などの代表も参加する「経済社会労働委員会」に改変し、新たな「社会的対話機構」の下で、最低賃金問題も議論しようということになった。韓国労総と民主労総も、また経営者総連合会も、それでいいだろうという話になっていた。
ところが、文在寅政権は、そういう社会的対話ではなく、国会での最低賃金法改正の手続きで、ことを進めようと動き出した。それにたいして、そんな勝手なことをするならと、民主労総も韓国労総も社会的対話から脱退する。その後、韓国労総は復帰するが。
対立点は、最低賃金に何を含めるかの話。これまでの韓国の賃金体系は基本給の割合を低く抑えて、各種の手当てや賞与の割合を高くするという構造。それを、定期賞与金として1カ月を超える単位で支給していたものを1カ月単位に分けて支給したり、福利厚生費(食費・交通費・宿泊費など)などこれまで基本給に入れてこなかったものを算入しようというもの。この変更で、見せかけの最低賃金は上がっても(19年度8350ウォン)、労働者の手取りの実質は下がってしまう。要するに、数字のごまかしで、「最賃1万ウォン」の目標は骨抜きにされてしまった。

労働時間短縮

今年2月に、週当たりの労働時間の上限を68時間から52時間に引き下げる勤労基準法改正案が成立。7月1日から実施されている。
この法律には罰則規定があるのだが、文在寅政権は、財界の要求を受けて、「6カ月、取り締まりや処罰をしない猶予期間を置く」とした。適用の先送りだ。こういうことをすれば、法律は単なる理念法、努力目標でしかなくなり、労働時間は従来のままでいいことになってしまう。

法外労組

一方で、全教組(全国教職員労働組合)の法外労組の問題がある。「法外労組」とは要するに非合法ということ。〈解雇者を組合員とする労働組合は認めない〉として、朴槿恵政権が、全教組や公務員労組などに対して「法外労組」通告をした。
ろうそく革命を経て成立した文在寅政権は、大統領選の公約で、法外労組問題を解決するとしていた。ところが、この間、「最高裁の判決(注2)を見てから」といい、さらに、「教員労働法を変えればいいじゃないか」ということを言い出している。いまの国会の勢力配置で全教組を合法化するような教員労組法が通るはずがないから、結局、これも先送りだ。
こうして、最賃、労働時間短縮、全教組の問題などをめぐって、文在寅政権と労働界、とりわけ民主労総との関係が緊迫してきている。

サムスンと握手 

そこに、文在寅大統領がサムスン電子副会長と握手するというとんでもないニュースが飛び込んできた。7月9日のことだ。
文在寅大統領がインドを国賓として訪問し、サムソン電子の新たなスマートフォン工場の竣工式に出席した。そこに、李在鎔サムスン電子副会長も来ていて握手し、挙句に、文在寅大統領の方から、「韓国でも雇用創出をお願いする」などと言ったと。
李在鎔といえば、崔順実ゲートで有罪判決を受けて2月に釈放されて上告中の身。そういう人物に、ろうそく革命の力で政権についた大統領が、会ってお願いまでするとは何事か。「労働尊重社会」を標榜した文在寅大統領が、「親企業社会」に立場を変えたのか、労働尊重社会というのは単なる票目当てだったのか、という批判が出て、不信感が広がってきている。
大統領府はキム・ドンヨン副首相に、8月6日にサムスン電子半導体平澤工場を訪問する際、サムスンの投資・雇用拡大計画を発表するのは望ましくないという考えを伝えた。「まるで政府が財閥に圧力をかけたり物乞いしているかのように国民が誤解しかねないから」というのが理由で、不信感の払拭に努めている。

革命は現在進行形

結局、ろうそく革命の力で文在寅政権ができて、「積弊清算」(注3)が進められているけど、積弊を除こうとしたら、当然いろんなところで軋轢が起こる。その軋轢に対して、押したり引いたりしながら前進するということなるわけだけれども、文在寅政権が、何かブレーキをかけているという感じになってきている。そういう意味でろうそく革命は未完。
旧来の革命では、断頭台に送って積弊は一掃できた。でも近代的な革命はもっと社会の根底から変えていく作業が必要になる。現在はそういうもみ合いの中にあると思う。
そういう中で、文在寅の正体もはっきりしてきたということだろう。もともと文在寅は経済優先、経済が発展する中で労働者の生活も改善していくという賃金主導成長論。企業の成長を中心に据えたトリクルダウン論とは確かに違う。だけど、賃金主導型成長というのであれば、なんで最低賃金を思いっきり上げないのかということだ。
そういう意味で、本当に「経済中心から人間中心へ」という転換できるかどうか。労働運動の中で、そういう議論が始まっているし、そういう空気が出てきているのも確かだけど、それを全体で本当に確信をもって押し貫くところまでは、まだ時間がかかるということだろう。
でも逆にいうと、ろうそく革命の中で、政治的な次元だけでなく、社会を根底から変革するということが大きく始まったということが大きい。大衆が半歩出るということはすごいことだ。その半歩を一歩にするのにものすごい軋轢がある。だから、ろうそく革命が現在進行中だということだ。そしてこれまで通り現場のたたかいがすべての原動力だ。

(注1)金大中政権時代の98年、政府、企業、労働組合の代表が集まる「社会的対話機構」として発足。しかし労働者に一方的に譲歩を迫るため、99年に民主労総が脱退、16年には韓国労総も脱退。
注2)法的地位の確認を求め、裁判で係争中。一審、二審では全教組側が敗訴。最高裁の判決を控えている。
注3)文在寅が大統領選で掲げたスローガン。保守政権下で、権力機関や経済社会に染み付いた慣行・制度・政策などの悪弊を一掃するという意味。

朝鮮戦争終結へ願い込め
PEACE≠フ人文字
大阪

朝鮮戦争休戦から65周年に当たる7月27日、「東アジアに平和を7・27キャンドル行動」が大阪・靭公園で開かれ1500人が参加した。「休戦協定を平和協定に! 日朝の対話を!」と幅広い共闘が呼びかけられての開催。呼びかけ人を代表して水野直樹さん(京大名誉教授)と平良仁志さん(牧師)があいさつ。野党各党の連帯あいさつ。朝鮮総連、在日韓国良心囚同友会の李哲さん、正義記憶連帯理事長の尹美香さんから力強い発言があった。その後、参加者はろうそく革命のソウルから贈られたろうそくを灯し「P・E・A・C・E」の人文字を描く。上空から撮影された灯りの文字を後から見ると、くっきりとPEACE。大成功だ。ソウル市民から送られたろうそくを持ち、「北東アジアに平和の光を」と御堂筋をパレード。川口真由美さんの指導で「アリランの歌」を歌った。(大石)

投稿
武庫川ユニオンが30周年
地域の組合 意義大きい
関西合同労働組合 石田勝啓

7月29日、武庫川ユニオンの結成30周年集会に参加しました。原則的なたたかいを粘り強く続けてきた30年を振り返るビデオは圧巻でした。争議の大小にかかわりなく、小さな勝利も楽しく祝う仲間たちの姿に感心させられました。幅広い共闘の輪をつくってきたことが、地区労、全国コミュニティ・ユニオン、各地域ユニオンなどはもとより、尼崎市長や各政党議員ほかの連帯と祝意の発言にも示されていました。
組合員には三線同好会の人たちもいて、「楽しい組合活動」の様子がわかりました。後半のエイサーや琉球太鼓の迫力・力強さに度肝をぬかれました(写真)。その中心が組合分会代表とのこと。ユニオンの結集力がさまざまな技術や芸術・文化にもおよび、力の多様さの発揮を見ることができました。
関西合同労組からは、震災で組合結成時から武庫川ユニオンのみなさんにアドバイスをもらいながら活動してきたことのお礼と、お祝いの言葉を述べました。ユニオンの役割、その存在意義はますます重要であることをあらためて確認しました。

3面

外来種を辺野古に運ぶな
土砂搬出に反対し集会
7月25日 東京

7月25日、「土砂で辺野古に運ぶな! 本土からの特定外来生物/8月土砂ストップ! 首都圏集会」が都内で開かれ200人を超える人びとが参加した。主催は辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会および辺野古土砂搬出反対! 首都圏グループ。辺野古の海を土砂で埋めるな! 首都圏連絡会が共催。
辺野古新基地建設が既成事実を積み重ねるかたちで進行している。7月19日には一部の工区で外周護岸がつながった。実態は規定の高さを満たしていないやっつけ仕事だが、手続き上も物理的にも可能になったとして、沖縄防衛局は8月17日から土砂投入を開始すると宣言した。そうした情勢で開かれた集会には危機感をもつ多くの人たちが集まった。
投入される土砂の75%が県外19カ所から運ばれる。特定外来生物について、事業者からの届出書では「確認されていない」となっているが、県による立入調査が入った全箇所(採石場3、搬出港3)で発見されている。それは辺野古周辺の自然環境破壊に直結する。生物多様性(辺野古の自然環境の独自性)の維持が国家戦略として位置づけられているのに、軍事優先でないがしろにされている。まさに沖縄差別の構造だ。
沖縄県は2015年11月に土砂条例を施行しているが、罰則がないなどの不十分さがある。改正の働きかけをさらに強めたい。搬出側自治体との交渉では数カ所で「沖縄県からの要請があれば前向きに」との言質を引き出した。防衛省は除去対策を示せておらず、追及を強めたい。新たな署名活動にも取り組む、等々が語られた。
また、そもそも米軍基地が日本に存在しているとことの是非を問うことを忘れてはならないという、原点的な提起もなされた。新基地などもってのほかであり、各地で進行する自衛隊の基地拡張にも目を向けなければならない。戦争法・戦争問題と一体であり、基地は要らないという運動を首都圏で作ろうと、呼びかけられた。
知事がサンゴ移植の採取許可を出したことを受けて、座り込みなど県への働きかけを開始したことが報告された。(北浦和夫)

若狭3町に公開質問
原発の現状・将来どうする
7月18日

〈原発うごかすな!実行委員会@関西・福井〉(注)は、若狭の原発立地地元の高浜町、おおい町、美浜町に対して、原発の現状と将来にかかわる公開質問状を提出した(写真はおおい町)。
7月18日、地元住民を初め関西から十数人が参加して、美浜町・山口治太郎町長、高浜町・野瀬豊町長、おおい町・中塚寛町長にたいし質問状を提出し、8月15日までに回答を寄せることを強く申し入れた。この公開質問は、原発に対して大きな影響力を持つ立地地元の行政の長にたいして、「原発の現状と将来」に対してどう考えているのか問いただすとともに、住民一人ひとりが、原発の現状と町の将来を考える契機になればという思いでおこなった。
公開質問状の提出のあと、若狭全域、関西一円、全国に公開質問状をチラシにして、広めている。すでに高浜、おおい、美浜の3町などにはアメーバーデモで、全戸配布を終えた。地元住民からは大きな反響が返ってきている。
公開質問に対する回答が得られた時点で、「立地地元の行政の長はこのように考えている」と広く知らせていく予定。住民自身が原発について考え、町の将来を考えていく一歩を作り出していこう。原発のない町を自分たちの手で作り出していこう。
(仰木明)

(注)同実行委員会は、〈オール福井反原発連絡会〉、〈若狭の原発を考える会〉、〈ふるさとを守る高浜・おおいの会〉が呼びかけて結成された〈大飯原発うごかすな! 実行委員会〉を改称したもの。福井県嶺南地方での原発反対闘争を担うため6月に改称した。

相模原殺傷事件忘れない
しょうがい者ら150人がデモ
神戸

一昨年の7月26日に相模原市の津久井やまゆり園でしょうがい者19人が殺された事件から2年を迎える7月22日、リメンバー7・26神戸アクションが呼びかけた「障害者を殺すな7・22神戸デモ〜やまゆり園事件を忘れない」にしょうがい者ら150人が参加した(写真)
神戸市の元町商店街と三ノ宮センター街という兵庫県下最大の繁華街をデモ行進。兵庫ピープルファーストと大阪のパンジーの知的しょうがい者団体を先頭に「障害者と健常者を分けるな、19人の名前を出せ、精神病院に入れるな、同じ学校に通いたい、地域で暮らしたい、障害者は不幸じゃない」とシュプレヒコールをあげ、道行く人々の注目を浴びた。
デモの解散集会でパンジーの仲間は「施設はだめ。しょうがい者を施設から助けだそう」「二度とこのような事件を繰り返してはならない」と声をあげた。世間が事件を忘れていき、被害者のうち3人の遺族が名前を出すのを嫌がるためだと言って未だに19人の名前も公表されていない。この流れに抗する今年で2回目の神戸デモだった。

投稿
福祉が再犯防止*レ的に
「社会内処遇」の問題点

7月29日東京都内で、心神喪失者等医療観察法廃止全国集会がおこなわれ92人が参加しました。心神喪失者等医療観察法をなくす会/国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会/認定NPO大阪精神医療人権センター/心神喪失者と医療観察法(予防拘禁法)を許すな! ネットワークの共催です。新しい視点による良い集会で、「健常者」の再犯防止策を正面から批判しました。
講演は「法制審の『社会内処遇』の問題点とリーガルソーシャルワークの在りあ方を考える」と題し、社会福祉士・精神保健福祉士・NPO法人サマリア理事長の黒田和代さんがおこないました。
講師は、本人のための福祉が、事件を繰り返して本人が苦しむことも結果として防ぐという実践をしている人。この場合は、福祉が事件を防ぐというのは結果であり、防犯が目的ではない。目的はあくまで本人が日々を過ごしやすいように補助することです。
ところが政府は「健常者」や知的しょうがい者の再犯が多いと言って、抜本的に再犯防止策を展開しようとしている。政府がやろうとしているのは「社会内処遇」といって福祉の目的を再犯防止に転換すること。「福祉的支援を受ける事」を起訴猶予の条件とし、「逆らったら起訴するぞ」という脅しで「福祉」の「指導・監督」に従わせるというものです。それは福祉を司法の枠内に取り込み、専門職を再犯防止の手先にする。本人のための福祉から転換して「国民のため」、社会防衛のための「福祉」になる。原理が転換すれば手段も変わる。方法も変わる。マジョリティの「安心」のためにマイノリティの人権を否定する。福祉専門職が再犯防止を目的として管理監督のために動くことの怖さ。大きな転換が始まろうとしている。
今は福祉専門職は「本人のため」を原理原則にしている。テレビドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」という生活保護のケースワーカーの職場を描いたものがありますが、その場面を考えてみたら良いのです。福祉職が再犯防止のためにマイノリティに接し始めたらどんな恐ろしいことになるか。医療観察法で事件を起こした精神しょうがい者に対しておこなわれていることが、マイノリティ全体に襲い掛かるのです。無関心であってはなりません。
集会では、私も発言しました。国立精神・神経医療センターの研究部長藤井千代氏とひょうせいれんの意見交換会での「『病者』の症状が社会が偏見を持つ原因」という趣旨の藤井氏の発言を批判、また、医療観察法病棟での自殺者の多さを批判しました。観察法の下での自殺者は入院者で13人、通院者で自殺と推定される者46人に上ります。「本人のための医療」という表看板とは裏腹にいかに酷いことがおこなわれているかの証左です。
陣形を広げ医療観察法の廃止と「健常者」や知的しょうがい者に対する「社会内処遇」を許さずにたたかいましょう。(高見元博)

4面

争点
志賀原発をただちに廃炉へ(上)
原発建屋の直下に活断層
田端 登美雄

2012年に提訴された「志賀原発を廃炉に! 訴訟」がいよいよ大詰めを迎えている。福井の大飯、高浜原発訴訟は全国的にも大きなニュースとなってきたが、志賀原発訴訟(石川県)はあまり注目されてこなかった。志賀原発訴訟の原告側からの弁論は終わっているが、北陸電力(北電)は見苦しく引き延ばしをはかっている。裁判所は北電の意を受けて、結審を引きのばし、規制委員会の判断を待っている状態だ。結審・判決が何年先

志賀原発反対運動

今から50年前となる1967年11月、能登半島の富来町福浦地区と志賀町赤住地区にまたがる山林(10万坪)に能登原発(現志賀原発)を建設するという計画(50万キロワット、75年運転開始)が発表された。
福浦地区には、古来から大陸と交易のある福浦港があり、開明的な文化風土があった。原発計画が発表されるや、新聞記者出身の室源三さんたちは福浦原発反対同盟会を組織した。 会の原則では@生活の手段である農地の大半を自分の意志に反して喪失する、A良心的な科学者の説による放射能公害問題の未解決、B予測される炉の増設とそれに伴う莫大な廃棄物の処理、C最も恐るべき核燃料再処理工場の出現、D建設工事に伴う長い年月の社会的保安問題、E魚介類の食物連鎖現象による公害不安、及び漁業の衰退の6点をあげている。
予定地の一部が福浦住民の共有林であったため、強固な反対派が形成され、1970年10月には福浦側の山林買収を断念させた。北電は赤住側の用地買収をおこなったが、原発建屋建設には不十分な広さだった。1971年には第2次買収案(8万坪)を発表したが、ここでも反対派地主40人(3万坪)が土地不買同盟を結成した。

志賀原発廃炉提訴

能登(志賀)原発建設発表から20年目の1988年8月に原子炉設置許可、11月工事計画認可、12月着工が強行された(志賀原発に名称変更)。同月石川・富山の住民は1号機の運転差し止め訴訟を起こしたが、2000年に最高裁で敗訴が確定した。98年に2号機の訴訟を起こし、06年井戸謙一裁判長は運転の差し止め判決を下した。しかし、高裁で逆転され、10年に最高裁で敗訴が確定している。
11年3月11日に、東日本大震災が発生し、福島原発がメルトダウンを起こし、翌年6月、120人の原告が志賀原発(1、2号機)の廃炉を求めて提訴した。
訴状では、福島原発事故から教訓を学び、志賀原発の危険性を訴えている。止める機能、冷やす機能、冷却材喪失、電源喪失、配管損傷、非常用炉心冷却装置、冷却用ポンプの機能、放射能を閉じ込める機能、使用済み核燃料プール、耐震性の欠如などについて言及。志賀原発事故の被害を予測し、防災対策の不備を指摘して、志賀原発の再稼働の必要性を否定している。

原子炉直下に活断層

12年5月の学会で、渡辺満久さん(東洋大学・変動地形学)は「志賀原発9km北にある富来川南岸断層が13〜12万年前以降に動いた可能性」を指摘した。同年7月に、経産省原子力安全・保安院の専門家会議が「1号機の直下にあるS1断層は活断層の可能性が高い」と発表し、北電に調査を指示している。
保安院の発表を受けて、2012年9月原告弁護団は第1準備書面(請求原因の補充)で、「志賀原発直下に活断層が存在する」、「活断層上に原発を設置することが禁止されている」、「志賀原発は活断層が動くことによって過酷事故が発生する危険性がある」と主張した。
2013年6月に、北電は@S1断層は耐震設計上考慮すべき活断層ではない、AS1断層や上の地層に変形などの形跡がなく、13〜12万年前以降の活動はない、B1号機の設計許可時に見つかったS1断層の岩盤の段差は波の浸食作用が原因とする「最終報告書」を規制委員会に提出した。

有識者現地調査

北電の最終報告を受けて、原子力規制委員会有識者調査団は2014年2月22から23日にかけて現地調査をおこなった。
22日は、1号機原子炉建屋近くに掘った地下40mの調査坑からトンネルに入り、S1断層を直接確認し、敷地内外の試掘坑や表土を除去した「のり面」でS1断層の形状を観察した。23日は福浦断層南端部の試掘坑や原発西側の海岸部にある断層を観察し、敷地内の2号機北側のS6断層を調べた。
2014年3月、原子力規制委員会有識者調査団による評価会合が開かれ、専門家から「現状では(S1断層は)活断層ではないと判断できない」との見立てが続出したが、北電は「私たちの調査で判断してほしい」と泣きついた。
藤本光一郎さん(東京学芸大学)は「能登半島地震の震源域にある海底断層も重要」、「海底断層も視野に入れた検討が必要」と指摘し、重松紀生さん(産業技術総合研究所)は「タービン建屋直下のS6断層の方向が、能登半島地震の断層の動きと似ている」と指摘した。
同年7月、第2回評価会合が開かれた。北電は追加調査の結果を報告し、「敷地内の断層は活断層ではない」と主張したが、有識者からはデータ不足などの厳しい指摘が相次いだ。(つづく)

強権破る「あたりまえ」の民主主義を
「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会

7月22日、第8回「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会が大阪市内で開かれ、東京・千葉・愛知・福岡・長崎など、各地で安倍政権の教育攻撃とたたかっている人びと100人以上が参加。熱い意見・交流がおこなわれた(写真)
開会のあいさつで、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワークの黒田伊彦代表は、政府が今年は明治150年だと言って「明治の精神に学び日本の強さを再認識する」と言っている。だが明治150年史観は侵略と差別の帝国主義を国運の拡大と是認するものだ。森友学園問題から、教育勅語を是認する閣議決定は、「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉シ」する日本人の理想形を自衛隊に求める世論作りと結びついている。それは自衛隊の存在を憲法9条の3項に入れて違憲性をなくし、第2項の交戦権の否認を無効にする改憲策動と連動している。
安倍総理の言う「戦後レジームからの脱却」は戦後の憲法理念の解体である。この時代閉塞の現状、安倍の強権政治を打破する真の民主主義を作り出すため力を合わせようと語った。

共感と思いやり

続いて関西大学教授の高作正博さんが「アベ政治・改憲に抗していかなる社会を目指すべきか」と題して講演。安倍政治の特徴を、@森友・加計に見られる利権政治、A「あるもの」を「ない」と言い、「ない」ものを「ある」という「欺瞞」政治だ、とおさえたうえで、安倍政治の目指すものは、異論を認めず「イエスマン」を求める国家だと断定。そのために文科省による教育への介入がおこなわれている。国立大学法人における「日の丸・君が代の義務化」、道徳の教科化、「教育勅語」の正当化、前川前事務次官の名古屋市・公立中学校での授業に対して自民党議員による照会、文科省の調査・録音データの提出要求など、意に沿わない者を黙らせるものだ。また経済界の要求を押し付ける国家として大学教育に介入してきている。「人づくり革命」「高等教育の無償化」と言って、支援措置の対象となる大学の要件は、産業界のニーズを踏まえ急速に変わりゆく社会で活躍する人材を育成しなければならないとしている。また教師・教育の「自立性」が守られなければならないが、この間の「君が代」不起立裁判の様子を見ても、司法は自立の必要性に向き合っていない。結論として「全体主義的傾向」と「利己主義」で権力者と権力者にすり寄る勢力が、少数者を「敵」「非市民」「非国民」として批判する傾向にある。この状況のなかで、国民の不断の努力で人権を守る感覚が必要で、立場を変えて考えてみること、相手への「共感」「思いやり」を根付かせていくことが大事だと結んだ。

現場のたたかいから

午後は、各地から「君が代」不起立裁判、再雇用裁判などの報告。
千葉ではまだ「君が代」不起立処分はないが、今年から人事評価が本格実施され来年度の賃金に反映されることと、全高校教職員に一人一台のパソコンが配布されたが、事前説明や同意なしに静脈認証を義務付けられたことが報告された。
東京からは7月19日、再雇用の最高裁不当判決について報告。一審二審ともに、非常に緻密な論理で勝訴した。それにたいして最高裁の逆転敗訴は、一審二審の中身について一切触れていない。裁判官の山口厚は安倍が任命した者、木澤克之は加計学園の監事をしていた者でほとんど忖度判決だ。暴力行為やセクハラ行為で処分された教員も再雇用されているのに、「君が代」不起立者だけは「採用した場合に被上告人らが同様の非違行為に及ぶ恐れがあることを否定し難いものとみることも必ずしも不合理であるということはできない」としている。また、都教委の2003年「10・23通達」は国連の自由権規約に適合しているか、2017年11月に事前質問として政府に突き付けていることを報告。大阪の府条例の強制での国旗・国歌問題も国際人権規約に適合するかどう問われるべきで、国際社会に訴えてはどうかと呼びかけた。
各地の報告の後、大阪の状況が報告された。〈子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会〉は来年度から中学校で使用される道徳教科書の採択へ向けて、「日本教科書」と教育再生首長会議の癒着、「日本教科書」と「教育出版」の人権侵害・差別助長の中身の暴露。よりましな道徳教科書の採択のために採択会議の傍聴を訴えた。最後に集会決議を採択し、大阪駅前まで繁華街をデモ行進した。
(佐野裕子)

5面

(直撃インタビュー)
第35弾
憲法カフェとミナセンで走った3年(下)
声をあげれば社会は変わる
弁護士 弘川欣絵さんに聞く

―安倍首相は昨年5月3日のビデオメッセージと新聞で、憲法に自衛隊を書き込むと発言しました

安倍政権は、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪の制定をしてきました。振り返ると第1次の時には、教育基本法の改悪や国民投票の制定もしてきました。どれも「憲法の価値を実現する」という本来の政治と真逆です。しかも、十分な議論を尽くさず、うそやごまかしの大義名分を掲げて、数の論理で強行採決してきました。数々の成功体験を得た安倍政権は、同じ手法で、いよいよ本星の9条に手を着けようとしています。改憲派は「ありがとう自衛隊」というフワッとしたイメージ戦略で、世界の至宝である憲法9条を、国民自らの手で手放させようとしています。
9条に自衛隊が書き込まれると、2015年の安保法制制定で集団的自衛権行使が可能になった自衛隊が憲法上承認されることになります。そうすると9条2項「戦力は持たない」という規定と矛盾し、「後法は前法を否定する」という法則のもと、9条2項は実質的に無効化のおそれがあります。安保法制では一応、9条2項との関係から「存立危機事態」という限定付きで必要最小限の集団的自衛権の行使容認にとどまっていますが、加憲されれば集団的自衛権がフルスペックで行使される可能性があります。 現行憲法には国家の機関として三権である国会や内閣や裁判所、そして会計検査院のみが書かれています。自衛隊が書き込まれれば、国家における自衛隊の存在感はいや応なく増し、軍事的な要素が日常生活に入り込み、社会の全分野に影響してくると思います。

―これまでもさまざまな解釈改憲がなされましたが、それでも憲法9条は「戦争をする国」への歯止めになってきました

憲法9条は日本国憲法の持つ平和主義を前文と一体で体現したものです。前文で「平和を愛する世界中の人々の、その(平和を愛しているという)気持ちを信頼して、私たちは(武器を手放し)私たちの安全と生存を保持しようと決意した」と規定され、その崇高な理念を具体化したものが9条ということになります。
自民党は、上で述べた前文の箇所を「特に問題だ」「ユートピア的発想による自衛権の放棄」と殊更に敵視しています(2012年自民党改憲草案Q&A)。今年初め、アメリカでは高校生たちがフロリダ高校での乱射事件を受けて、銃規制のための大きなムーブメントを起こしました。「武器を持ってるから武器を使う」というのは子どもでも分かります。ユートピア的発想でも何でもないと思います。
1950年の朝鮮戦争のさ中に警察予備隊として発足した自衛隊は、どんどん肥大化しました。裁判においては、多くの場合「統治行為論」で政府を忖度し判断が避けられてきました。しかし長沼事件での福島判決や、イラク派兵時の名古屋高裁判決など、自衛隊やその活動は9条違反だとの判断もあります。裁判所がまともに判断したら今の自衛隊が9条違反であることは明白だと思います。
政府は9条があったからこそ、従来「自然権(正当防衛)としての個別的自衛権」「必要最小限」「専守防衛」という歯止めをかけてきました。今回の加憲は、集団的自衛権が行使できる自衛隊を憲法に書きこむわけで、もはや「戦争をする国へ」の歯止めにはならなくなります。

―他方で国を守るには軍備は必要の意見もあります

この国では、安全保障において、力一辺倒の抑止力の施策、際限のない日米軍事一体化が進んでいます。2016年に国連で採択された「平和への権利宣言」(日本は反対)、2017年に採択された「核兵器禁止条約」(日本は反対)という世界の動きと全く真逆です。抑止力つまり、軍事的パワーバランスを保つことで相手を恐れさせ、軍事的攻撃を防ぐという理屈は、軍備拡大の一途をたどり、緊張関係は高まるばかりです。元防衛官僚の柳澤協二さんは、「平和とは戦争のない状態か、戦争の恐怖からの解放か」という問いを投げかけています。抑止力では、永遠に戦争の恐怖から解放されることはありません。 またこの国は紛争解決と称して中東・アフリカなどに自衛隊のPKO(国連平和維持活動)派兵をくり返してきましたが、他方で難民の受け入れに極めて消極的です。紛争地から日本まで自分の力で逃げてきた人々を少しも受け入れずに、わざわざ紛争地帯で自衛隊に危険な任務を負わせることはおかしいと思います。
日本が直面する戦争の危険性としては、@朝鮮半島を巡る危機、A「尖閣を取られないように」と中国と対立、B対テロ戦争が考えられますが、果たしてこれらのことで本当に血を流さなくてはならないのでしょうか。朝鮮半島は南北・米朝会談がおこなわれ平和に向かって進みはじめました。「尖閣」は、どの隣国同士でもある領域をめぐる小競り合いで、中国にも十分な理由があります。こんなことで戦争が回避できないならば、外交の意味は無いと思います。また、現在のテロの多くは「反米・反連合軍意識」によるものとされ、日本がこれに関われば、テロの標的になる可能性が極めて高くなります。この三つとも血を流す必要はないと思います。日本が憲法9条を堅持し「非戦」を貫くことは、安全保障戦略でも有効ではないでしょうか。

―暮らしの中に憲法を広めるため、あすわか制作の「憲法ビンゴ」を活用しています

少し前までは今年中にも「国民投票」になるかもしれないと焦っていました。他方、本当は対症療法的な行動ではなく、普通の暮らしの中で憲法が認識され、浸透することが最も重要だとも思ってきました。憲法には前文や9条や13条(個人の尊厳)だけでなく、21条(表現の自由)、25条(健康で文化的な生活の保障)、28条(団結権・団体交渉権)などすばらしい条文がたくさんあります。
コスタリカでは小学校で「あなたが社会から愛されていないと感じたら、憲法違反だと憲法裁判所に訴えることができる」と教えられるそうです。本来、憲法とはそのくらい日常的で、シンプルで力強いものです。私たちはもっと憲法を市民の手に獲得し直さないといけないと思います。
そんな思いから「あすわか」は、憲法の条文を分かりやすく解説した「文字ふだ」を引く「憲法ビンゴ」を作りました。今まで憲法カフェで、弁護士が憲法について解説する形で憲法を広めてきましたが、この「憲法ビンゴ」を活用して、多くの人が気軽に憲法を広めていただけたらと思います。学校の先生にも公民や道徳の授業の教材として活用してほしい。「憲法ってすてきだな、楽しいな」という原体験をたくさんの子どもたちが持ってくれれば、20年後社会は変わるのではないかと思うのです。

 

―地域での運動も忙しいようです

5月4日の山尾志桜里さん(衆議院議員)がゲストの憲法フェスタで、「待機児童問題」のコーディネート役をさせていただきました。山尾さんからは保育の基準が敗戦直後の1948年から変わっていないことが提起されました。また伊丹市ではママたちが2万2千の署名を集め、行政の保育園・幼稚園の統廃合に一部ストップをかけたと報告がありました。本来、政治とは「憲法の価値を実現していくもの」であるのに、今まで、女性や子どもの問題が政治課題のメインになることはありませんでした。私たちが声を上げていくことは、本来の政治を取り戻すために重要であることを、この憲法フェスタで感じることができました。
また尼崎市では、今年1月17日の震災メモリアルデーの防災訓練にミサイル避難訓練が実施され、多くの小学生もこれに参加しました。ミサイル避難訓練が全く無意味で、北朝鮮に対する恐怖をあおるための国策で、それをまだ判断のつかない子どもたちにやらせることの恐ろしさを感じました。私も含め多くの市民が、市役所に抗議のFAXや電話をし、当日メイン会場の小学校に直接抗議に行った人もいました。
6月に市長を囲む会があり、市民が「小学生を参加させることの問題性」を追及すると、市長はその問題性を認め、今後はミサイル訓練はしないと約束しました。この問題を通じて、国家権力の暴走から子どもたちを守るために、地方自治体がストッパーとなり得るか、市政においても憲法の価値を広めるために活動をする必要性を感じました。
やりたいことはどんどん出てきますが、皆さんと一緒に、憲法を広め、憲法の価値を実現する社会を作っていけたらと思います。(編集・構成は本紙編集委員会)

6面

不正義と闘い 人間を取り戻す
狭山事件再審に向け『獄友』上映
7月29日 奈良

7月29日、「狭山事件の再審に向けた映画『獄友』上映会」が、奈良県人権センターであった。主催は部落解放同盟奈良県連合会とNPO法人市民ひろば なら小草。

「獄友」たちの絆

5人の冤罪被害者がいる。石川一雄さん(獄中31年7カ月)、袴田巖さん(獄中48年)、桜井昌司さん(獄中29年)、杉山卓男さん(獄中29年)、菅家利和さん(獄中17年6カ月)。映画『獄友』(監督:金聖雄は、この5人の交流を追いつつ、それぞれの内面にせまっていく。かれらは見えない絆で結ばれている。この絆とは何か。
殺人犯という濡れ衣を着せられて獄中に閉じ込められたことにより、人間として生きる道を見いだすことができたという意味で、彼らは「獄中に入ってよかった」と言う。桜井さんは、皮肉を込めてだが「警察に感謝する」とも言っている。
袴田さんは、出獄しても自分の世界に閉じこもったままだ。姉の秀子さんは「巖を家に閉じ込めておこうとは思わない。むしろ巖が街に出ていって、人びとにこの姿を見てもらいたい」と語る。
国家権力によって、かれらは殺人犯に仕立て上げられた。この非人間的扱いにたいして、激しい怒りが言葉の内に込められている。人はこの不正義とたたかうことによってこそ、人間を取り戻すことができる。『獄友』は、こんなことを考えさせる映画だった。
映画上映後、石川一雄さんが登壇し、アピールした。石川さんの決意は鮮明だ。再審を実現し、一日も早く石川さんの無実をかちとろう。(鹿田)

故井田一郎さんの一周忌にあたって
石川一雄さんの信頼厚く

井田一郎さんと初めて会ったのは1978年です。彼は、いつも穏やかに、いろいろ丁寧に教えてくれました。いまも感謝しています。目を細める笑顔に特徴があり、目に焼きついています。
一緒にアジト生活をしたこともあります。優しくて面倒見がいい。おおらかで、活動家にありがちなガツガツしたところがなく、どことなく安心感がありました。当時は、私自身にあまり余裕がない状況だったので、そのありがたみを懐かしく思い出します。
私はその後、阪神大震災の救援活動に入りました。あらためて彼を尊敬するようになったのは、埼玉県狭山市で全国連の活動を始めてから、石川一雄さんの信頼を一身に受けていたことです。石川さんとの話をするときの顔が、まぶしくさえ思いました。
東京での集会後などに、何度か一緒に居酒屋に行きました。私は学生解放研出身で、部落出身学生とともに狭山闘争、石川一雄さんのたたかいと部落解放運動のなかで自己を形成してきたという思いが強烈にありました。彼のお父さんが画家であり部落出身であったことを話したことも聞きました。彼は高専出身で、器用に何でも自分で作り、チャレンジするのが好きでした。私はその姿勢を学ぼうと努力しました。
石川一雄さん宅が火事になり大切な「鴨居」がなくなり、狭山現地調査が困難になってどんなに一雄さんが困ったろうかと思うのですが、彼はその復元を行なったことなどを話してくれました。以前に奈良現業労組の集会で、石川一雄さんが「自分の人生は素晴らしい人生、後悔はしていない」と発言、胸が熱くなりました。井田さんの思い出は不思議にいつも石川一雄さんの話とかぶります。
06年ころ井田さんと会ったとき、私が革共同中央が広島差別事件を居直り、同時に7・7自己批判の清算を始めたことを激しく批判しました。井田さんはのちに「あのときの君は厳しかったな」と笑顔で言っていました。
彼が胃がんで闘病中と聞き狭山に見舞いに行ったとき、彼やお連れ合いと3時間くらい話しました。「兵庫の仲間が大変心配し、みんなで治療費にとカンパ集めた」と渡したとき、一人ひとりの名前を見て、本当に懐かしそうに喜んでくれました。その時は抗がん剤投与が苦しくてもう横になったまま。お連れ合いが、少しでも楽にしてあげようと足の裏を指圧しマッサージしながら、私に対応してくれました。井田さんはやはり穏やかな語り口で、久しぶりなのに数年のブランクを忘れるくらいでした。
お連れ合いの気丈夫な話しと彼にそそぐ愛情に触れ、彼は幸福なんだなあと思いました。お連れ合いはソウル出身、歯に衣を着せない核心を直截に言う話しぶり。いやな気がしないどころか心地よく、井田さんも本当に頼りきっているようでした。
彼はちょっとエエかっこしいの兄貴分ですが、素晴らしい同志でもあり友人でした。残念です。(梅田香三)

山本善偉さんの逝去を悼む
人間の尊厳 求め続けた

ありし日の山本善偉さん

山本善偉さんが8月2日、亡くなりました。97歳でした。三里塚、部落解放、沖縄、人間の命と尊厳を追い求め生きぬいた97年9カ月でした。三里塚現地はもとより、さまざまの集まりや闘争の現場で山本先生とお会いしたことがなかった人はないでしょう。
1943年11月、兵庫県の学徒出陣壮行会。大学3年生だった山本さんは「出陣、送る学生」1万人を前に、学徒代表として決意の答辞を読みあげました。戦後アメリカに留学した際、アジアからの留学生に「日本がアジアで何をしたのか」と問われ答えられず、何も考えず答辞を読んだことは慙愧の念に耐えないと話してもらったことがあります。1970年、結核で入院治療中、毎日のように新聞で三里塚農民の農地死守のたたかいと機動隊の激しい暴虐を目の当たりにし、以後50年にわたる三里塚闘争は山本先生の人生そのものでした。三里塚決戦勝利関西実行委員会が発足し終身世話人を務め、数年前には「もう最後になるかも知れない」と沖縄・辺野古のテントへ。毎年のように猛暑の8・6ヒロシマを訪れました。
「三里塚を見てほしい。国は暴虐の限りを尽くし、裁判所は違法を合法とし、市東さんの農地を奪おうとしている」「あの(学徒動員の)時代にもどし、戦争を繰り返す道に進んではならない。杖をついてでも、私はたたかう」(本紙第46号、09年12月1日)。心からお悔やみ申し上げるとともに、山本善偉さんの意志を引き継ぐ所存です。

読者の声
安倍を 逃がさない!
兵庫県 梶原 義行

8月3日、「安倍改憲NO! 3000万人署名」を100筆、東京に送りました。私の集約分は、合計1509筆になりました。8月3日は、「アベ政治を許さない」毎月のスタンディングの日。猛暑のなか6人が神戸市三宮のマルイ前で約1時間、「安倍を逃がすな! このまま続けさせるな!」とアピールしました(写真)
国会が閉会して安倍首相は逃げおおせたと思っています。そうはさせないぞ。これまで安倍政権がやってきたことはなにか。教育基本法の改悪。憲法を変えるためのむちゃくちゃな国民投票法。特定秘密保護法、安保関連法=戦争法、共謀罪。ことごとく戦争ができる国づくりです。
東アジアが平和な地域に変わろうとするときにこの姿勢。許せないことです。さらに原発を推進し、沖縄に差別的に基地建設を強行しています。森友・加計問題に表れている政権、政治の私物化。国民主権の政治にまったく逆行し、とどのつまりが、カジノ法の強行可決です。
このまま安倍政治を続けさせては、社会も私たちの身も心も腐ってしまうでしょう。差別はいいんだ、格差はいいんだ、貧困オーケーという社会になってしまいます。安倍首相を「逃がさない」ために、小さくても狼煙を上げ続けましょう。

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