未来・第249号


            未来第249号目次(2018年7月5日発行)

 1面  許せない! 過労死法強行
     高プロ”導入 審議尽くさず

     会期延長を弾劾
     大阪市内でデモ
     6月24日

     大阪
     “ノーパサラン!”やつらを通すな
     ヘイト使った労組潰しに反撃

 2面  寄稿
     福島スタディツアーに参加して(上)蒲牟田 宏
     なぜ今、福島に行くのか

     安倍やめろ! デモ第2弾
     兵庫県下で共闘広がる
     6月16日

     6月23日
     辺野古に基地を作るな
     神戸 フラッシュモブ

     平和な沖縄と日本を
     参院議員 伊波洋一さんが講演
     6月17日 京都

 3面  焦点
     米朝会談とトランプ政治(上) 請戸 耕市      

     【定点観測】(6月21日〜27日)
     安倍政権の改憲動向     

 4面  対米従属構造からの決別へ
     白井聡さん(『国体論』)が大阪で講演

     ろうそく革命と現代韓国(上)
     急進運動から異議申し立へ
     文京洙さん(立命館大学国際関係学部教授)

 5面  袴田事件 再審取り消しを弾劾する
     無辜の救済”道を閉ざす

     投稿
     性暴力根絶へ 玉本英子さんが講演
     「慰安婦」から続く「#MeToo」

     夏期特別カンパアピール

 6面  原発と戦争進める愚かな国
     今年も8・6ヒロシマ 小出裕章さんら

     核への不信と怒り¢iえ
     伊方原発広島裁判 原告の被爆者が陳述

     (シネマ案内)
     沖縄戦最大の激戦地・前田高地
     『ハクソー・リッジ』(のこぎり崖)
     監督:メル・ギブソン

       

許せない! 過労死法強行
高プロ”導入 審議尽くさず

6月29日、安倍政権は参院本会議で「働き方改革」関連法の成立を強行した。この法案を検討した労働政策審議会に厚労省がねつ造したデータを提出していたことが明らかになり、法律の正当性を根拠づける立法事実が失われていた。にもかからず労働時間規制撤廃の突破口を開く「高プロ制度」導入を強行した。この暴挙を断じて許すわけにはいかない。

「高度プロフェッショナル制度の導入許すな」国会前で行動(6月19日)

6月19日、午後6時半から19日行動がおこなわれ、国会議員会館前を中心に2200人が集まった。はじめに、日本共産党、社会民主党、立憲民主党が連帯のあいさつ。
主催者あいさつに続いて、〈安保関連法に反対するママの会〉高岡直子さんは「みんなの持っている心配事や不安と政治を結びつける人が必要です。私たち一人一人が政治を広めていく。この日本をいい方向に進めていこうではありませんか」と草の根の運動の重要性を訴えた。〈雇用共同アクション〉柚木康子さんは「高度プロフェッショナル制度は、審議するたびに問題点が出てきます。年間104日の休日を与えれば、あとは働かせ放題です。『健康管理時間』も、どうやって把握するのか?今でさえ労働時間の把握は、企業側の非協力もあって困難です。何千時間働いていようと労災にはならないと労働監督官が言っています」「1月と5月にやったとされるヒアリングでも、高度プロフェッショナルについては一言も聞いていない。加藤厚労相は『高プロは労働時間削減とは関係ない』と開き直っています。こんな法律は絶対に通してはなりません」と働き方改革法案の危険性を訴えた。
最後に、行動提起を受け、昨年朴槿恵大統領を退陣に追い込んだ韓国の人たちから譲り受けたキャンドルを全員で掲げ、国会に怒りのコールを叩きつけた。

会期延長を弾劾
大阪市内でデモ
6月24日

天王寺から難波まで元気にデモ行進

安倍政権が国会を7月22日まで延期したことに抗議し、6月24日、大阪市内で抗議デモがおこなわれ、沿道の市民に「安倍を倒そう」呼びかけた。(4面に関連記事)

大阪
“ノーパサラン!”やつらを通すな
ヘイト使った労組潰しに反撃

ヘイト集団による労働組合つぶしに反撃が開始された。6月23日、大阪市中央公会堂で開かれた「差別・排外主義者を利用し労働組合潰しをおこなう資本・権力の弾圧に抗議する6・23総決起集会」には、この間の全日建連帯労組・関西地区生コン支部(関生)に集中している攻撃への怒りが結集し、1000人が参加した。また集会には当日までに個人169、団体310の賛同が寄せられた。主催は、あらゆるヘイトを跳ね除ける実行委員会。
集会の冒頭、「労組つぶし許さんぞ」「ヘイト集団許さんぞ」のシュプレヒコールに参加者が唱和。戦闘的な雰囲気のなかで集会が始まった。主催者あいさつは実行委員長をつとめる全港湾大阪支部の樋口万浩さん。「威力業務妨害罪を使った労働組合とストライキへの攻撃のために10億円の資金を投入し、ヘイト集団を使っている。こんなことを絶対に許してならない。6・23を反撃の日にする。共に頑張ろう」と訴えた。

憲法28条違反

その後、ヘイト集団と大阪広域生コンクリート協同組合が一体となった組合本部や争議現場への襲撃の様子や警察の強制捜索の映像を上映。そのあくどいやり方に参加者は怒りを共有した。闘争報告は、関生支部の武建一委員長がおこなった。武委員長は関生支部が労働運動によって業界の改善に取組んできた歩みを紹介。
「生コン価格の値上がりを運賃や賃金に反映させず、協同組合の一部経営者がばく大な利益を独占していたことにたいして、昨年12月のストライキに踏み切った。これにたいして経営者側は労働組合つぶしのために、元検事など33人を雇い、ついにはヘイト集団を使うところまできた。これは労働組合の団結権、団体行動権を保障した憲法28条をなきものにする攻撃だ。また労働組合法、協同組合法、独占禁止法、刑法に違反する不法行為だ。絶対に屈しない。6月21日、大阪地裁は、TKY高槻が連帯労組と連携したことを理由に大阪広域協組がおこなった除名と仕事を回さない不当割付(仕事を回さないこと)を無効とする仮処分命令を出した。たたかう労働組合の団結を」と力強く訴えた。

朝鮮学校襲撃と一体

続いて朝鮮総聯大阪府本部前国際統一部長姜賢さんが連帯のアピール。「南北会談、朝米会談によって世界の構図が転換した。朝鮮半島の対立が終わり、平和への道に入った。これには日本の労働組合の朝日友好運動の力もあった。この友好労組への今回の暴挙は許されない。こうしたゴロツキ集団の襲撃は朝鮮学校へもあった。私たちは住民税や所得税を払っているのに、朝鮮学校は補助金を打ち切られ、高校無償化から除外されたままだ」と弾劾した。
沖縄から参加した沖縄平和運動センター議長の山城博治さんは「8月17日から辺野古への土砂投入を強行しようとしている。身体を張ってたたかう」と決意を語った。

新たな組合つぶし

関生支部弁護団の永嶋靖久弁護士は「これは80年代から続く裁判を使った労働組合つぶしとは違う新しい組合つぶしの手法だ。関生支部が進めている企業をこえた生コン産業政策運動を広域協同組合が攻撃していること。威力業務妨害など刑法犯罪を適用していること。ヘイト集団をつかっているとことなどだ。共謀罪をこれと一体で適用してくる。これにたいして6月21日に大阪地裁が出した仮処分命令は大きい。労働運動だけでなく社会運動すべてがテロ対策の名のもと攻撃されるという認識が必要だ」と訴えた。

業界歪める広域協組

良心的な経営者を代表して、大阪兵庫生コン経営者会の門田哲朗会長が報告。「大阪地裁の仮処分裁判の勝利に多くの良心的経営者から喜びの声が寄せられている。大阪広域協組の不公正な割付差別が会社存続の危機をつくり出し、業界をゆがめている。労使は車の両輪だ」と産業政策運動を進めていく決意をあきらかにした。
最後に司会が集会決議案を読み上げ、あらゆるヘイト攻撃にたいして「行動と総反撃・包囲」を呼びかけた。そしてスペイン内戦時の反ファシストのスローガン、「ノーパサラン!(やつらを通すな)」が高らかに響いた。実行委員会からまとめの提起がおこなわれ、再度、大きなシュプレヒコールが公会堂に渦巻いた。(森川数馬)

6・23総決起集会決議(抄) 
    本日われわれは関西で始まったヘイト集団を使った資本・警察権力による大規模な労働組合つぶしを絶対にゆるさない抗議・反撃を決意した。
大阪広域生コン協同組合一部執行部らがヘイト差別・排外主義集団と結託して今年1月から組合事務所への乱入、暴行、争議現場への襲撃などをくり返している。大阪府警、奈良・和歌山県警はヘイト集団の犯罪を放置し組合事務所への強制捜査さえ強行した。これは格差・貧困に取り組む労働組合運動の破壊をねらったものだ。在日の仲間たちなどすべてのマイノリテイに向けられた攻撃であり、安倍政権の進める改憲・排外主義的政策と一体だ。「あらゆるヘイトを跳ね除ける」行動と総反撃を関西・全国に広げよう!



2面

寄稿
福島スタディツアーに参加して(上)蒲牟田 宏
なぜ今、福島に行くのか

たかつき保養キャンプ・プロジェクトの方に誘われ、4月に福島スタディ・ツアーに参加した。宝塚保養キャンプにかかわり福島へは何度も行っているが、あらためて人々の生の声を聞きたいと思ったからだ。参加者は9人。3日間の短い旅だったが、放射線と向き合い、子どもたちと暮らしを守ろうとしている人たちに心を揺り動かされた。

コミュタン福島

三春町 「コミュタン福島」。人間の歴史・自然とか防災について学ぶ展示施設。ほとんど国の予算で建てられた。小中学生の学習コースになっているそうだ。「放射能は自然放射能もあって、現在の福島県は『安心・安全』です」と、強調するような展示が多かった。
三春町で有機栽培野菜をつくるEさんの話。郡山市などに100軒ほどの得意先がある。野菜を放射能検査したところ25ベクレルだ。それを告知したところ、顧客は3分の1になった。お盆に、おばあちゃんたちが帰省した息子に米や野菜を持たせる。その野菜を高速道路、首都圏手前のパーキングエリアのゴミ箱に捨てていく。ゴミ箱が満杯になって周辺の土手にも捨てられていた。このままではいけない。なんとか元気を取り戻さなければと思い、放射線検査をした野菜を売る店を作ろうと提案したが、誰も賛同しない。自分たちでやろうと借金をして「E」を立ち上げた。

人形劇

夫婦で、原発の危険性についての人形劇をやっている。過去・現在・未来の三部作。上演時間は全部で1時間ぐらい。今年の12月に関西に来てもらい上演することになった。
葛尾村 田村市ではフレコンバッグを積み上げている光景はほとんど見なかったのに、葛尾村に入るとフレコンバッグの山が目立つ。自治体間でこうも違うのかと思った。葛尾村の人口は1430人で、帰村者は239人となっている(18年5月1日現在・葛尾村ホームページ)

キノコが出荷禁止

葛尾村議・Mさんに案内してもらう。葛尾摩崖仏のところで0・3マイクロシーベルト/時(以下、単位略)だったのが、上葛尾集会所のモニタリングポストでは0・1。葛尾村ではキノコの「こうだけ」が昨年大豊作だったが、キノコの出荷は禁止されている。村営キャンプ場付近は除染をしているが、使用する人はいないそうだ。ワナを仕掛けてあったので何のためかと聞くとイノシシだと。1匹捕まえると村から1万円が出る。
Mさんは37年間、消防の仕事をしてきた。救助隊にも所属し、署長もやった。東日本大震災のときは退職していた。地震の被害はそれほどなく、避難して帰ってきていた。3月14日に親類を自宅に受け入れ、寝ようというときに防災無線が鳴って避難になった。原発は消防法では非特定防火対象物(非特防)という。特定防火対象物の店舗や百貨店などよりも基準が緩い。防火点検で何度も福島第一原発敷地内に入ったが、芝生もきれいに整備され、消防法的には何の問題もないと思っていた。肝心のポンプが地下にあったとは知らなかった。

若者が帰ってこない

16年6月に、避難解除で自分1人だけ帰ってきた。住民票を移したのが8月。現在も家族はバラバラに住んでいる。奥さん、息子夫婦、お孫さんは三春町の仮設住宅や郡山に在住。小さいお孫さんに「じっちゃん」と言われた記憶があるが、今は離れ離れ。何とか葛尾村を再生したい。しかし若者が帰ってこない。
小中学生は隣の三春町からバスで1時間かけて通ってくる。葛尾村在住の子どもは5人。避難先の三春町の学校に通っている子どもたちは住民票を移していない。住民票を移してくださいと、三春町から言われているそうだ。
田んぼは環境省にフレコンバッグ置き場として提供している。借り上げ料は2ヘクタール年間130万円。米を作れば年間150万円。置き場の田んぼでフレコンバッグを撤収した後の線量は0・4。立ち入り禁止の表札が出ている。

バリケードで封鎖

県道50号(葛尾村から浪江町・南相馬市への道) 4月19日から通れるようになった。線量が相当高くて3・0以上。県道には日本語・英語・韓国語・中国語で「停車してはいけない。早く通り過ぎるように」との表示があった。居住制限地域なので県道に面した家はバリケードで封鎖されていた。
浪江町 1万8千人の人口だったが、現在帰還者700人。「希望の牧場」では牛たちが草やパイナップルの皮を食んでいた。
浪江町のコンビニ。線量は1・10(モニタリングポスト0・459)。営業は午後6時で終了。来客は、ほとんどが作業員。店員さんは地区外から通っている。

請戸地区

線量が高かったため整備できず、いまも倒れたままの墓地(浪江町・請戸港近く、2018年4月22日)

請戸港近くの墓地では、ほとんどの墓石が倒れたままだった。ほかの地区では除去が終わっているのに、線量が高かったために現在も整備されていない。以前は請戸港には入れなかったが、最近入れるようになった。漁船が数10隻係留されていた。午前出港したと思われる漁師さんが作業していた。
請戸小学校。3・11地震直後に教職員の判断で1q離れた山に避難して全員無事だった。
国道6号を南下。浪江町から双葉町、大熊町と南下した。放射線量は0・4→0・5→0・6→0・7→2・75→3・21(福島第1原発真横付近)と推移した。(つづく)

安倍やめろ! デモ第2弾
兵庫県下で共闘広がる
6月16日

「6月も、やるぞ」。こわすな憲法! いのちとくらし! 市民デモHYOGO(43団体)は4月5月に続き、6月16日「安倍やめろ!デモ」をおこなった(神戸市内、三宮花時計から元町商店街へ=写真)
今回は、「安倍さんやめて! デモinひょうご」と、ややソフトな表現に。しかし表現はソフトだが、怒りはますます増大だ。NHK問題を考える会兵庫、兵庫県平和委員会も合流した。
花時計前で「南北関係の改善、軍事的緊張の緩和と解消、朝鮮戦争の終結と半島の完全な非核化を共同目標とするという、板門店宣言に基づくアジア、日本の平和構築を。改憲をやめること」「森友、加計問題に、誰も納得できない」「米軍Xバンドレーダー基地反対で3日に現地行動に行った。レーダー電磁波のため救急ヘリの運行にも支障が出ている」などがリレースピーチで報告された。
歌でのスピーチ2つ、それぞれ女性が自作の歌を披露した。『憲法の歌』は、「憲法は私たちのもの〜9条変わるとどうなるの〜13条、みんなちがってみんないい」。『森友・加計の歌』は「もう終わりだねウソがバレる〜さよならさよなら安倍政権〜」とみんなで歌った。
デモのコールは若い人。「隠ぺい改ざんもうやめて! 政治にウソはいりません! 安倍政権は、さようなら!」。コールは、いつもより好評。商店街を歩く人たちが手をあげ振ってくれる。みんなの工夫でアピール力が増した。集会とデモは4月、5月から増え、150人が声を上げた。(神戸 津島)

6月23日
辺野古に基地を作るな
神戸 フラッシュモブ

毎週土曜日、神戸市三宮の繁華街でおこなわれている辺野古の海に基地をつくらせない神戸行動。沖縄の慰霊の日である6月23日は、黒服に身を包み無言で抗議するマネキンフラッシュモブの人たちも(写真)。各地から参加したミュージシャンによるカンカラ三線とギターによる歌と演奏が注目を集めた。雨模様のなか40人が参加し、「辺野古新基地建設反対、沖縄に犠牲を押し付けるな」と訴えた。

平和な沖縄と日本を
参院議員 伊波洋一さんが講演
6月17日 京都

6月17日、「基地のない平和な沖縄・日本・東アジアを!6・17京都集会」が円山野外音楽堂で開かれ、470人が参加した(写真)。沖縄から伊波洋一さん、と泰真実さんが講演。京丹後市の米軍Xバンドレーダー基地の地元から永井友昭さんが発言した。またミュージシャンの川口真由美さんが沖縄のたたかいを歌った。
伊波さんは、「米軍は日本を守るためにいるのではない、アメリカの戦略で日本を戦場にしようとしている、そんなアメリカを忖度するのではなく、東アジアの平和と日本の安全保障を主体的に考えるべきだ」と話した。泰さんは沖縄にたいするヘイトスピーチの現状を説明し、これとたたかう意思を表明した。
永井さんは、米軍が二期工事で基地の外側を無断で掘削したことや、交通事故のケガ人を搬送中のドクターヘリが基地にレーダー停波の緊急要請をしたにもかかわらず米軍がこれを無視したため、搬送に遅れが生じたことなどを報告。住民の怒りはもとより、京丹後市や京都府も米軍に強く抗議している。こうした米軍のやりたい放題を許している日米地位協定に怒りをあらわにした。集会後、京都市の繁華街、四条河原町から京都市役所前までデモ行進した。

3面

焦点
米朝会談とトランプ政治(上) 請戸 耕市

米朝会談―戦争終結の一歩

6月の米朝首脳会談は、直面する戦争危機を回避し、70年にわたる戦争状態の終結へ踏み出す大きな一歩である。そして、分断を強いられてきた朝鮮の人びとの再会・再統合・和解への一歩を切り開くものである。
国内建設の行き詰まりと米日韓の軍事重圧によって、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は軍事対抗路線を強いられてきた。米朝首脳会談をもって、朝鮮は、軍事対抗路線から経済開放・開発路線に踏み出した。
それはアメリカや中国の思惑でもある。経済開放・開発とは、大国と資本の介入であり、新たな危機と混乱を伴う。しかしまた南北朝鮮の人びとが手を携えて、新しい社会と経済の建設に踏み出す展望も開かれている。

「非核化」について

核兵器が存在するのは戦争状態だからだ。だから戦争状態を終わらせることが非核化の大前提である。そもそも圧倒的に強大な核軍事大国が、自らの核には手をつけず、相手にだけ放棄を迫るのは不公平だろう。批判すべきはこの点である。
日本政府がこだわった「CIVD(完全かつ検証可能で不可逆な非核化)」は、イラクを戦争で転覆したやり方であり、相手を永久に許さず追い込む作戦である。声明において、CIVDが確認されなかったことがむしろ重要である。

ろうそく革命

後述のように、国際政治の大変動という背景がある。また、米・中・露などのプレイヤーが朝鮮情勢に関与している。
しかし根本的に事態を引き寄せたのは、トランプや大国の政治ではない。4・27板門店宣言を実現した南北朝鮮の政府の行動であり、文在寅や金正恩の階級的な評価はさて置き、国際情勢の大変動をとらえた政治判断である。そういう流れにトランプは乗せられ、安倍は蚊帳の外に置かれた。
そして、このような事態を引き寄せたのは、トランプ・安倍・朴槿恵の戦争同盟の一角を突き崩したろうそく革命に他ならない。

トランプと国際政治の大変動

トランプ政権の関税発動で、6月8日のG7が決裂、米欧・米中の貿易戦争の様相を呈している。また、トランプ政権が、駐イスラエル大使館のエルサレム移転を強行している。朝鮮情勢の展開は、これらの動向と軌を一にした事態である。
自由貿易とは資本主義体制における大国間の国際的なルール。大国や大資本の利害に沿ったものだ。その中心国であるアメリカが、そのルールに公然と違反し破壊しはじめた。 中東・イスラエル問題は、資本主義体制の世界秩序の要、アメリカの世界支配の柱。そこにおいてアメリカは、タテマエとしては仲介者・調停者として振る舞ってきた。トランプは、そういう振る舞いをかなぐり捨て、パレスチナ・中東の人びとへの公然たる敵対者として登場した。

覇権の投げ出し

戦後のアメリカは、世界大の軍事力・政治力・経済力を基礎に、〈人権、法の支配、自由、民主主義〉〈市場経済、経済成長、繁栄〉などの擬制的な普遍性を唱導し、世界をアメリカ的に秩序づける覇権国であった。そうやってアメリカを中心とした大国間の秩序が形成され、世界経済のシステムが機能してきた。そして、そういう秩序・覇権を維持するために、アメリカが、覇権国・中心国として振る舞い、その負担をしてきた。そのことによって、国家としてのアメリカとその巨大資本は、他を圧倒して利益を独占してきた。つまり〈アメリカの利益=アメリカの覇権=世界の秩序〉である。
アメリカの支配階級(エスタブリッシュメント)は、保守であれリベラルであれ、〈アメリカの利益=アメリカの覇権=世界の秩序〉という考え方を共有してきた。

トランプ政治

ところがトランプは、〈秩序維持の負担を引き受けるのはおかしい〉と言い出し、代わってディール(取引)というやり方で行くという。トランプには、アメリカが覇権国・中心国として振る舞うという考え方が、政治的にも経済的にも全くない。国際問題にたいして、覇権の観点から包括的・戦略的に対処するのではなく、目先の利害で動いている。これまでの多国間の枠組みではなく、1対1の交渉で自らに有利に事を運ぼうとしている。
グローバリゼーションとアメリカの覇権と世界の秩序を、覇権国・中心国であるアメリカが破壊していくという事態である。 トランプ政治がアメリカの支配階級の総意ではないという確認は重要である。覇権国・中心国として振る舞ってきたアメリカ支配階級の主流にとって、トランプの政治は重大な背反であり、彼らは危機感を募らせている。

中間選挙

トランプの政治行動の動因は、支持層の要求への対応である。経済や外交の合理性や、戦略的な構想からの行動ではなく、中間選挙という内政的事情に起因している。
しかし「中間選挙が終われば収束する」といった一過性の問題ではなく、もっと根本的な事態である。なぜなら、トランプの政治動向を規定する根本的な背景は、グローバリゼーションの行き詰まり、その底辺からの破綻である。グローバリゼーションが格差・貧困・分断を生み出し、それにたいして、一方で反グローバリズム運動が広がり、しかし他方でポピュリズムが静かに広がり、トランプを大統領に押し上げたという問題だからである。

トランプの保護主義

トランプ「米国は巨額の貿易赤字を抱えている。何十年も不公正に扱われてきたんだ」。
しかしこのトランプの「不公正」という主張は事実に反する。米国と英仏独の平均関税率は全く同じ1・6%、日本は1・4%。また、中国の対米黒字は大きいが、その46%が外資系企業による輸出だ。
しかも、関税引き上げでアメリカで雇用は増えないし、アメリカの鉄鋼業は復活しない。「アメリカ第一主義」というが、保護主義はむしろアメリカにとって打撃である。
貿易赤字の原因は他国の「不公正」ではない。貿易赤字も、雇用の喪失も、アメリカ自身が推進してきたグローバリゼーションの結果に他ならない。

貿易赤字

アメリカの資本は、資本の蓄積構造を大きく再編した。国内の製造業をスクラップ、製造過程をオフショア化(海外委託)して自らはファブレス化(自社工場を持たない)、グローバル・バリュー・チェーン(グローバルな請負システム)をつくりあげた。
このような蓄積構造のもとでは、例えば、グローバル企業が、中国の工場で電子製品を生産し、それをアメリカ国内で販売すれば、アメリカの貿易赤字にカウントされるということになっている。
しかも、国際通貨特権があるアメリカは、さしあたり信用創造でいくらでもドルを供給できる。だから貿易赤字を無視して大量輸入を続けることができる。そして、消費ローンなどを用意して、アメリカの労働者・消費者に大量消費をさせる。
このようにアメリカは、他国には不可能な方法で、グローバル企業の巨大な独占利潤の獲得を支えてきた。
つまり、貿易赤字は、資本がグローバルに展開し、国際通貨特権を最大限に活用し、アメリカ国内で大量消費するというグローバルな蓄積構造から必然なのである。

雇用の喪失

アメリカ国内の雇用を奪ったのは中国でも移民でもない。国内の製造業をスクラップ、製造過程をアウトソース・オフショア化して自らはファブレス化しているグローバル企業である。さらに、ITやAIやロボットが労働を限りなく単純化している。
しかも、アメリカの労働者は、消費のためや学費や医療費のために借金を重ねており、生活苦に喘いでいる。
ところが、グローバル企業は、税金を払わず、社会的な負担をほとんどしていない。そのくせ、政府に自由・優遇・特権を要求している。中央の予算の削減と独自の収入の減少で、地方の行政は、社会的なサービスを削減、教育・医療・福祉の崩壊が進んでいる。
「不公正」というトランプの主張はデマゴギーであり、グローバリゼーションこそが原因であるという真実を覆い隠している。(つづく)

【定点観測】(6月21日〜27日)
安倍政権の改憲動向

6月21日 憲法改正にかかわる国民投票年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられた。14年6月20日に施行された改正国民投票法は、投票年齢が20歳以上とされ「4年後に18歳以上に引き下げる」としていた。選挙権は16年6月施行の改正公選法で既に18歳以上に変更されている。発議、国民投票となった場合、若者層の動向がいっそう注目されることになる。

国民投票法の問題点

(公務員・教育者の運動)原則自由、地位利用は禁止 「…他の法令(禁止項目等)にかかわらず、発議した日から国民投票の期日までの間、国民投票運動(改憲賛成反対、投票する、しないの勧誘、および憲法改正に関する意見表明)をすることができる」。ただし「地位による影響力行使、便益利用はできない」(100条2項)
(メディア規制)無規制「…投票の期日前14日から投票の期日までは…投票運動のための広告放送はできない」(14日間以前は自由、「投票運動」に当たらない行為、例えば有名人・アイドルなどによる「私は賛成です」など自由)。 
(投票期日)国会発議後60日〜180日以内に国会が決めた日。投票は18歳以上。
(国民投票広報協議会)両院議員各10人で構成。公報(新旧対照表など)を作製する。
(投票方式)改正案に賛成「賛成に 〇」、改正案に反対「反対に 〇」。 (最低投票率)規定なし。低投票率でも成立。投票総数は「賛成」「反対」のみを集計。白紙、無効は除外する。
6月21日 自民、公明、日本維新の会は国民投票改正案を衆院へ提出する方針を確認した。自公維は、立憲民主などの協力が得られなくても提出し、7月22日までの会期中に成立させる構え。改正案は航海中の実習生その他の船上からのファックス投票などを可とした16年12月の公選法の一部改正を反映させるなどとしている。
6月27日 自民、公明、日本維新の会、希望の党の4党が憲法改正のための国民投票法改正案を衆院に提出した。

4面

対米従属構造からの決別へ
白井聡さん(『国体論』)が大阪で講演

6月24日、「安倍政権を倒せ! 9条改憲を阻止しよう! 6・24講演集会」(主催 同実行委員会)が、大阪市内でひらかれ160人が参加した。白井聡さん(京都精華大学専任講師)が「安倍政権の不正・腐敗の本質を暴く」というテーマで講演した(写真)
仲尾宏さん(反戦・反貧困・反差別共同行動 in 京都・代表世話人)が主催者あいさつ。仲尾さんは「大衆運動によって時の政権を打倒したたたかいは、米騒動と60年安保であった。安倍政権を打倒するために、このような状況を作りだそう」と述べた。
白井さんの講演は、天皇制の問題に切り込む重要な視点を提示した。来年、天皇の代替わりがおこなわれる。現代天皇制について、革命運動の側は大衆的な論議を巻き起こせていない。象徴天皇制とは何なのか。この質問にたいする回答は、革命運動の側に求められている。
最後に、三浦俊一さん(釜ヶ崎日雇労働組合副委員長)が、沖縄・辺野古のたたかいの報告と集会まとめをおこなった。三浦さんは「沖縄(辺野古)には、国家が暴力もいとわず、全体重をかけて襲いかかっている。かつてない危機だ。一分でも工事を遅らせることが、われわれにとってたたかえる時間となる。安保法の実体化が沖縄にある。だから、われわれは沖縄で勝たねばならない。沖縄の民意はひとつ、辺野古に基地はいらない。この軍事基地を造らせないたたかいは、沖縄の未来、日本の未来をかけたたたかいだ」と訴えた。
集会後、難波まで国会の会期延長を弾劾してデモをおこなった。「安倍の9条改憲に反対」「国家の私物化を許すな」など、街ゆく人々にアピールした。

講演要旨



フルモデルチェンジした国体”

安倍政権は、近代史をみても最悪の政権だ。官僚は官邸トップの言いなりになっている。民衆の力不足から、この政権をのさばらせている。日本社会は根底から変わらなければならない。国体(天皇を中心とする国家体制)をキーワードにして、われわれはどういう社会に生きているのかを考えていきたい。
戦前の国体は、天皇を現人神とする天皇制であった。西欧は対立・闘争の社会、日本は和合・調和の社会などと、対立的に図式化しつつ、支配者は天皇の慈愛による家族国家観をつくりあげていった。ここでは、支配の現実を否認している。また、権利とは対立を前提にした思想だから、この国家観から権利の思想は生まれてこない。
敗戦の決断は、どうしてあの時期になされたのだろうか。支配者は、本土決戦になれば死者がたくさん出ることを考えて決断したのではない。ドイツ敗戦の教訓から、本土決戦をおこなった場合、国体が護持できないと考えたからだ。
このようにして戦後も国体は護持され、生きのびた。しかし、日本は敗戦国として、世界にたいして国体の変更を表明する必要があった。国体はフルモデルチェンジを強いられた。国体は「天皇」に代わって「アメリカ」の支配体制になった。
1990年代、冷戦構造の崩壊とともに、アメリカは日本を仲間に囲い込む必要はなくなった。この時、経済成長するアジア諸国のなかで、日本はアジアに向き合う必要があった。しかし、日本は依然として対米従属構造を維持している。
2016年8月、天皇の「おことば」が出された。ここでは「国民統合の象徴」が強調されている。安倍政権と水面下で対立しており、象徴天皇制にたいする危機感がにじみ出ている。ずいぶん思い切った行動にでたものだと思う。
この間、米朝会談にいたる過程をみれば、安倍政権は朝鮮戦争が終結することに危機感を持っているようだ。この政権は朝鮮戦争を望んでいるのだ。支配者は、国民の命や財産を守ることなど考えていない。
今日、国体は2度目の死をむかえている。マルクスは「一度目は悲劇として、二度目は茶番」と語った。何でこんなことがおきるのか。マルクスは「ほがらかに笑いながら、過去と決別するためだ」と言っている。今は苦しくても、われわれは笑いながら過去と決別していこうではないか。

ろうそく革命と現代韓国(上)
急進運動から異議申し立へ
文京洙さん(立命館大学国際関係学部教授)

社会運動の大きな流れのなかで韓国の歴史を捉えた『新・韓国現代史』の著者・文京洙さん(立命館大学国際関係学部教授)が、キャンドル革命と文在寅政権について講演をおこなった。(主催は反戦・反貧困・反差別共同行動in京都 5月23日 京都市内)
それは、ろうそく革命に至るまでの経緯を、市民社会という次元から捉え直すものであった。以下に講演要旨を掲載する。 (文責・小見出しとも本紙編集委員会)

社会の変容と運動の変化

大きく俯瞰すると、1987年6月民主化抗争があり、それを前後して韓国社会が、中産層を中心とした安定的な社会に大きく転換する。そういう中産層を中心とした安定的な社会が、90年代末から2000年代のグローバル化、競争社会化のなかで崩壊する。現在のろうそく革命はそういう背景のもとで起こっているということができる。そのような大きな変化のもとで、社会運動のあり方もまた大きく変化していく。@80年代は運動圏(注1)の時代であったが、A90年代には市民運動の時代に替わり、B00年代には市民運動の危機から社会的連帯経済と地域づくりへと展開していく。
80年代の学生運動は一般の人びとから大きな支持を受けており、労働運動も200万程度の組合員を擁する運動に成長する。しかし90年を前後して運動圏の急進的な社会運動は衰退していく。

91年5月闘争の敗北

その転機となったのが91年5月闘争であった。民主化したものの盧泰愚政権のもとで「公安政局」という反動があり、91年5月闘争はそれにたいする闘争で、20万から30万人が参加したが、80年代の学生運動と違って、一般の人びとからは孤立してしまう。
この91年5月闘争をピークに、「巨大言論」―マルクス主義を中心としたグランド・セオリー―が社会変革をリードする時代が終わっていく。
運動圏の急進的社会運動の挫折と衰退が、90年代初めの大きな変化であった。

市民運動の台頭

衰退する運動圏の急進的な社会運動に代わって台頭するのが、「経済正義実践市民連合(経実連)」、や「参与連帯」といった「百貨店型」、総合型の市民運動であった。
その運動のスタイルは異議申し立て。市民社会の立場から、地方・中央の行政や、企業などの監視と異議申し立てをする。企業の監視は、一株運動や小株主運動を展開して、大財閥に食い込んで大きな力を発揮した。2000年4月の選挙では市民運動が落選運動を展開し、相当な威力を発揮した。

グローバリゼーション

80年代末から90年代の政権の推移を俯瞰すると、金大中と金泳三が分裂しその漁夫の利を得る形で87年の選挙で盧泰愚が大統領になる。その後、盧泰愚と金泳三と金鍾泌の3つの勢力が合同する。これが現在の保守政党の出発点。そして、92年の選挙では金泳三が大統領になる。
金泳三の時代に、グローバリゼーションが大きく進展し、中産層を中心とした安定した市民社会の構造が崩れはじめていく。その後、保守のなかでのパワーゲームがあって、97年の選挙では金大中が僅差で勝利する。さらに02年の選挙で廬武鉉が辛勝して、10年間、進歩派の時代が続く。

市民運動の危機

進歩派政権の成立によって、市民運動は00年前後をピークに大きく停滞する。なぜなのか。2つのことがあるだろう。
1つは、進歩派政権の成立だった。進歩派政権が、それまで市民運動のやってきたことを進んでやるようになり、そのことで、国民を大きく動員できるような政治的なイッシューがなくなってしまった。参与連帯は、会員数が1万人から5千人に減った。
もう1つは、グローバル化の進展である。ろうそく革命を考えるときにこの点は非常に重要だ。97年のIMF危機以降、グローバル化を急速に進展させることによって、中産層中心の安定的な市民社会の構造が一気に崩れて、失業、非正規雇用、若者の就職難、少子高齢化などが起こる。こういう課題は、90年代の市民運動の異議申し立てや監視では解決できない。

社会的連帯経済

そこで、市民運動自身が、ときには行政と協力して、場合によっては企業とも協力して、市民社会が直面している課題を解決する主体になっていくことになる。協同組合、労働者協同組合、消費者協同組合、社会的企業、地域おこしということが重要な課題になっていく。廬武鉉政権のときに社会的企業育成法(08年)ができる。
社会運動をやってきた386世代が、結婚し地域で生活してみて、拳を上げて「反対、反対」というだけでなく、地域をつくるという課題に直面。2000年代にはじまるソウルのソンミサン・マウルの街づくりもその一例である。
そういう流れをもっとも代表的に推進した人物が、いまソウル市長の朴元淳だ。朴元淳は、90年代、異議申し立て型の市民運動のトップランナーとして活躍してきたが、2000年代に入ると、「美し財団」(注2)「美しい店」(注3)を展開。06年には「希望製作所」(注4)をつくっている。朴元淳市長のもとで、行政と市民運動が協力しながら、グローバル化のもとでおこる課題に取り組んでいる。(つづく)

(注1)「運動圏」とは、学生運動、労働運動などの急進的な社会運動の世界
(注2)分かち合いの精神のもと、社会活動の資金を集める団体
(注3)リサイクルショップ
(注4)市民参加型のシンクタンク

5面

袴田事件 再審取り消しを弾劾する
無辜の救済”道を閉ざす

6月11日、東京高裁刑事第8部・大島隆明裁判長は、静岡地裁による袴田事件の再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をおこなった。無辜の救済という再審制度の趣旨をねじ曲げ、真実究明の道を閉ざすこの決定を断じて許さない。弁護団は最高裁に特別抗告をおこなったが、棄却されれば、袴田巌さんは再収監される。阻止しよう。

えん罪の構造

現行の刑事訴訟法における再審開始事由は、「無罪を言い渡すべき新規明白な証拠」の発見とされている。白鳥・財田川決定はその趣旨を「仮に確定審でそれらの証拠があったとしたら」という視点で新旧証拠を総合的に評価し、「疑わしきは被告人の利益に」との原則が再審請求審でも貫かれるべきであるとした。
こうした判例に従えば、静岡地裁が再審開始決定を出した時点で、袴田さんの犯人性に重大な疑義が生じていることは明らかなのである。無辜の救済という再審制度の趣旨からいっても検察の即時抗告自体が許されるものではなかったはずだ。
ましてや上級審が即時抗告審で事実調べをやり直し、再審開始決定の根拠となった証拠を判断し直すことがまかり通るなら、再審制度はあってなきがごときものとなる。
しかも、このたびの大島決定は「まず再審開始取り消しありき」で、検察側の理屈にもならない主張を丸呑みしたとしか思えないずさんなものなのだ。

本田鑑定

静岡地裁による再審開始決定の論点は多岐にわたるが、検察と東京高裁は本田克也・筑波大教授によるDNA鑑定の手法に固執し、弁護団の抗議と反対を押し切って、検察側が推薦した鈴木広一・大阪医科大教授に検証実験を委託した。
本田教授の手法とは「選択的抽出法」と呼ばれている。45年前に味噌樽のなかから発見された「袴田さんが犯行時に着用していた」とされる白シャツの血痕からDNAを抽出するとき、第三者の唾液などの汚染による誤鑑定を回避するために、本田教授が開発した手法だ。具体的には、血液だけを凝集する作用のあるレクチンという薬品を使って血液を分離し、そこからDNAを抽出することに本田教授は成功した。そうして取り出されたDNA型は袴田さんのものでも、被害者のものでもなかった。
ところが、即時抗告審で高裁が委任し鈴木教授がおこなった実験は、本田教授がDNAを取り出した同じシャツの布片から本田教授と同じ手法でDNAを取り出すという本来の検証実験では全くなかった。鈴木教授は、布ではなく紙に血液と唾液を混ぜたものをしみ込ませ、本田鑑定とは異なる手順や器具を用いて実験をおこなった。そして「レクチンにDNAを分解する酵素が含まれ、DNA型の検出量が格段に少なくなる」として不適切と指摘。検察側は実験の結果から「地裁決定の誤りは明らか」と主張したのである。
だが、実は鈴木教授の実験でも、少量ながらDNAは検出されていた。何よりも鈴木鑑定は本田鑑定では別人のDNAが検出されたという事実を否定するものではありえない。シャツの血痕から袴田さんや被害者のDNAが検出されず、別人のDNAが検出されたという事実は微動だにしてない。そしてそれこそが袴田さんの無実の証明であり、「無罪を言い渡すべき新規明白な証拠」なのである。

本末転倒

ところが、東京高裁・大島裁判長は、「本田教授の手法(選択的抽出法)は一般的に確立された科学的手法とはいえない」とし、「本田鑑定の信用性に関する審理を(これ以上)おこなうことは不可能」だとして、静岡地裁の再審開始決定を取り消してしまった。
では「45年前に味噌樽から発見されたシャツの血痕から血液由来のDNAを取り出す」ための一般的手法なるものが学界にあるとでもいうのか。レクチンを使った血液凝集も、DNA抽出も、今やありふれた手法であり、本田教授は具体的ケースに応じてそれらを組み合わせただけではないのか。ましてや「本田鑑定の信用性」に関して、「即時抗告審ではこれ以上できないから再審を棄却する」というのはあまりに本末転倒だ。裁判所は手法の問題にすり替えることなく、血痕のDNAが何故別人のものだったのかを説明しなければならない。それができない以上、事実審理は公開の再審裁判に任せられるべきなのだ。

袴田さんの決意

再審棄却の知らせを記者から受けた袴田巌さんは「そんなのウソなんだよ」と一蹴したという。また、姉の秀子さん(85歳)は「3年や5年は私も大丈夫」「50年戦ってきたから、100年に向かって戦っていきたい。百年戦争だ」と語った。
弁護団は18日に特別抗告をおこなったが、最高裁でそれが棄却されれば再収監となることがこのたびの大島決定にも明記されている。このままであれば、袴田さんにはあまりに過酷な未来ではないか。
「百年戦争だ」という秀子さんの覚悟に我々も連なろう。死を賭してたたかう袴田巌さんと共に再収監を阻止するためにたたかいぬこう。
現在、袴田さん、石川一雄さんらを主人公にしたドキュメンタリー映画『獄友』(金聖雄監督)が全国で上映されている。袴田さんらえん罪被害者を身近に感じてもらえる格好の映画である。自主上映は誰にでもできる袴田・狭山再審運動だ(詳しくは『獄友』公式ホームページ参照)。袴田再審・狭山再審の声をあげていこう。(深谷耕三)

投稿
性暴力根絶へ 玉本英子さんが講演
「慰安婦」から続く「#MeToo」

6月19日、「紛争地における性的暴力根絶のための国際デー」の日、大阪市内で、「取材映像で見る紛争地における性暴力 イラク・アフガニスタンの女性たちから考える」をテーマに、玉本英子さんの講演会が開かれました。玉本さんは、アジアプレス所属のジャーナリスト。アフガニスタンの性暴力の実態を明らかにした映像とイラクのヤズディ教徒の女性達への性暴力について話しました。

アフガニスタン

2004年、アフガニスタンの首都カブール。ハマム(女性専用浴場)で、玉本さんが、偶然に出会った女性たち。13〜14歳で結婚し、夫を戦闘などで失い、子どもを養うためには、売春しかない。男の相手をした後、ハマムに来ます。そのなかの1人ムルザルは未婚の16歳。妊娠6カ月。客の子を身籠もっています。
玉本さんは、その後、彼女の自宅を訪れました。父と兄は仕事がなく、弟や妹の7人兄弟を養うために売春をしており、母だけはそれを知っています。父に知られたら殺されるから言わないでと。痛ましい現実のなかで、生きている女性達のことが明らかにされました。

ヤズディ教徒

次にイラクについて。イラクの人口は3000万人で9割がイスラム教徒です。ヤズディ教徒はイラク人の1・4%。クルド語を話します。クルド人もほとんどイスラム教徒なので、そのなかでも差別されています。
イスラム国の兵士たちはヤズディ教徒にイスラム教への改宗を迫り、受け入れないと男性のすべてを銃殺します。そして、女・子どもは人間ではなく、戦利品として、大都市モスルに連行されます。女性を奴隷として兵士たちと強制結婚させるのです。イスラム教では妻としか性的関係を持てないため、兵士達は好みの女性を選んで結婚します。妻は4人まで持てます。結婚の翌日に離婚することも。
その後、玉本さんが見せてくれたイスラム国の兵士たちの動画はがく然とするものでした。その内容の醜さに「うその動画」という説もありますが、玉本さんはそこに出てくる兵士の1人に出会ったことがあり、事実と思われるそうです。
動画では若い兵士達が口々に「明日はヤズディの女を買う。俺の奴隷にする。楽しみだ」と繰り返しています。しかし、玉本さんは「みんな普通の人たちですよ」と。それは、「慰安所へ通った日本軍兵士も普通の人だった」のと同じです。イスラム国がこのような動画を流すのは、若者に見せて兵士に勧誘するのに使うのではと説明しました。

アムシャさんの場合

アムシャさんは当時19歳。夫を殺され、夫の子供を身籠もったまま、幼い子どもと連行され、50代の兵士と強制結婚させられました。その後、脱出に成功し、お腹の子どもも無事生まれました。しかし、その子に「壊れた心」という名前をつけたそうです。それは自分の身に起きた事を忘れたくないからと言います。これこそイラクの「#MeToo」運動なのだと思いました。アムシャさんは義母を連れて、ドイツに移住します。しかし、兵士のような大きな男を見ると叫んでしまうPTSDに苦しめられています。
イラクでは、夫以外の男性と性的関係を持った女性は、汚れた人間として蔑まれます。そのなかで、同じ難民キャンプにいたイラクの若者が、犠牲になったヤズディの女性に一目惚れして、女性がドイツに逃げたら、追いかけて移住し、結婚したという素敵な話もありました。ドイツでは、ヤズディの女性と子どもを2000人受け入れているそうです。日本では考えられません。

わたしたちの課題

この話は、遠い国の話ではありません。戦争はいろんな目的で起こっています。国家が国民を被害者と加害者にさせるものです。「慰安婦」問題でもそう。我々が加害者になることがあります。これは現在進行形の話です。戦争は一度起こると、こういうことが頻繁に起きます。他人ごとではないと思います。そのためにも取材を続けていきたいと締めくくりました。
私たちにも大きな課題を提起してくれたと思います。

夏期特別カンパにご協力をお願いします

6月12日の米朝首脳会談は、朝鮮戦争の終結と朝鮮半島の非核化に向けて大きな一歩を踏みだしました。米政府が米韓合同軍事演習の中止を発表するなか、安倍政権は2000億円以上をかけてイージスアショア2基の設置をやめようとしません。改憲へ進む安倍政権を打倒しましょう。夏期特別カンパへのご協力をお願いします。

郵便振替  
口座番号 00970―9―151298
加入者名 前進社関西支社
郵 送 
〒532―0002 大阪市淀川区東三国 6―23―16
前進社関西支社

6面

原発と戦争進める愚かな国
今年も8・6ヒロシマ 小出裕章さんら

被爆73年、「8・6ヒロシマ〜平和の夕べ〜」が開かれる。案内状から要旨を紹介する。案内、呼びかけには、「甲状腺がん、避難解除、避難者支援打ち切り。原発と憲法、沖縄。朝鮮半島をめぐる核兵器。今の状況のもと心してみなさんのお話を聞き、核なき世界へ道を確かめ合いましょう」とある。
朝鮮戦争の休戦から平和条約へという動きが始まった。そこに「アメリカ・ファースト」の利害があるにせよ、60年余の事態を変える一歩が始まった。昨年、被爆者の核廃絶への必死の訴えをはじめ多くの国々、非政府組織NGOのねばり強い活動によって核兵器禁止条約が採択された。この条約会議に異議を唱え欠席した日本、朝鮮半島の非核化に難癖をつけ続けた安倍政権。
原発廃止とともに、全世界に実戦配備されている1万5千発の保有国の核をどうするのか。韓国民衆のろうそく革命のように世界の人々とともに、とりわけ日本の私たちは、その声と行動を拡げていきたい。

平和講演

小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教・原子核工学)の平和講演は、「原発・核と戦争を推し進める愚かな国・日本」。小出さんは「福島はいまも原子力緊急事態宣言が解除できない状況下にある。何もなかったことにして五輪開催とは。朝鮮半島の分断と『休戦協定のまま』に、日本と日本人こそ大きな責任がある。他国に核を持つなと言うなら、自分が持ってはいけない。傘に入ってもいけない」と述べる。

被爆証言

 李鐘根さんは国民学校時代に差別され、卒業後は在日を隠して広島鉄道局に就職。出勤途中に被爆した。15歳だった。4カ月間の病症と死の恐怖。ようやく生きることができたが、在日を隠すつらさと「原爆がうつる」という二重の差別に苦しめられた。その後、「被爆したのは日本人だけではない」と、証言を続けている。87歳。
安次富浩さん、ヘリ基地反対協共同代表。「沖縄は基地・核・原発を止める。辺野古をめぐる困難な状況に屈しない。東アジアの平和の島を展望し、したたかに抵抗する」。

福島からの避難者

 渡部美和さん。福島から広島へ避難。「福島事故は、みんなが当事者と伝えたい」。入市被爆の祖母を持つ広島市生まれの被爆3世。福島原発ひろしま訴訟原告団代表。

特別アピール 

 『ヒロシマの有る国で』ほか数曲を、“松浦美喜とnancy channel with friends”のみなさんが歌う。
 伊方原発広島裁判原告団、原発賠償関西訴訟原告団・森松明希子さんから特別アピール。電車内被爆者・米澤鐡志さんがまとめる。

8月6日(月)広島YMCA国際文化ホール12時半開場、1時開会
  参加費1000円(高校生以下・原発避難者無料) 
主催/8・6ヒロシマ平和の夕べ

E-mail:
86h@heiwayube.org

核への不信と怒り¢iえ
伊方原発広島裁判 原告の被爆者が陳述

裁判終了後の報告集会(6月18日 広島市内)

四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求める訴訟の口頭弁論が6月18日、広島地裁で開かれた。
原告団は、被爆者をはじめ246人。原告、弁護団、支援者らは「被爆地ヒロシマが被曝を拒否する」と大書された横断幕を持ち、広島弁護士会館から広島地裁への乗り込み行進をおこなった。
昨年12月の広島高裁決定による3号機運転差止仮処分命令との関係で動向が注目されている本案訴訟(本訴)は、裁判長異動のため今回口頭弁論期日から新たな高島義行裁判長で展開されることになった。
口頭弁論では原告側弁護団が、@水蒸気爆発における実機条件、A繰り返し地震のリスク、B設計基準事故及び過酷事故対策の3点と関連した証拠書類を提出。四国電力側は火山事象と関連した書類を提出した。次回以降の住民側反論が注目される。
被爆者原告の免田裕子さんが意見陳述をおこなった。免田さんは「5歳の時、広島原爆に遭遇し弟と一緒に黒い雨も見た。被爆時、体を壊し入院中だった母親が約2週間で亡くなった。低線量被曝の影響を実感した。原爆同様に危険性がある原発にも反対してきた。福島原発事故の衝撃から伊方原発広島裁判原告団に参加した」と核への不信と怒りを話し、伊方原発の運転を認めないよう訴えた。次回、第12回口頭弁論は8月6日に開かれる。

新たな仮処分

今回の口頭弁論期日に先立ち、5月18日、3号機運転差止仮処分事件の申立人4人は、広島高裁による同機運転差止命令の期限(9月30日)後も運転を差し止め続けることを求め、広島地裁に仮処分命令を申し立てた(新仮処分)。
6月14日、広島地裁で開かれた新仮処分事件の進行協議は、仮処分事件のため一般に非公開であるが、広島地裁は本訴原告に限り進行協議傍聴を認め、12人が参加傍聴した。四国電力側も同数が参加した。審理の今後の予定、争点の確認、双方提出書面の確認や今後の書面提出期限の設定などが協議された。
新仮処分事件進行協議の後、記者会見を開き河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会・共同代表)らが進行協議の概要について説明した後、記者団の質問に答えた。第1回審尋期日は8月3日に決定。裁判長の提案により申立人・相手方それぞれプレゼンテーションをおこない、同日終審する。
原発めぐる全国各地のたたかいに勝利するために反核、反原発の世論を巻き起こしていくことが求められる。原発にしがみつき、プルトニウムを貯めこむ安倍政権を一刻も早く倒さなければならない。(田島 宏)

(シネマ案内)
沖縄戦最大の激戦地・前田高地
『ハクソー・リッジ』(のこぎり崖)
監督:メル・ギブソン

監督はメル・ギブソン。第89回アカデミー賞で録音、編集賞を受賞した。撮影はオーストラリアでおこなわれた。
時は1945年4月〜5月の1カ月間におきた実話の映画化である。実在した主人公の衛生兵、デズモンド・ドスは敬虔なクリスチャンで「汝、殺すなかれ」の教えを頑なに守り軍隊に入隊する。そして訓練中は銃を持つ事に良心的兵役拒否者として貫き通す。
「戦争の常識=殺し合い」をふりかざす上官から必要以上な苛めといびりを受けたうえに、仲間の隊員からは臆病者呼ばわりされる。そして、ついに軍法会議にかけられるが、そこでも信念は曲げない彼に軍部は、衛生兵に就役することを認めた。ドスは自らを「良心的協力者」と呼んで沖縄攻略作戦に参戦した。
平和への信念を貫く主人公の衛生兵の活躍を通して、映画は悲惨な戦争、命の尊さと軽さを見事に描きだしている。
デズモンド・ドス氏は2006年3月23日87歳でこの世を去った。彼は戦後2回、沖縄に来て、当時の戦場を訪れている。
彼の存命中に映画化の話があったが彼はそれを断り続け、「自分が死んだあとなら」という条件で映画化を許可した。そして「彼の行為は語り継がれるべきだ」という周囲の声におされてメル・ギブソンが監督を務め、今回の映画化にこぎつけたのである。
一昨年11月、米国で上映。日本では昨年6月24日に封切りされた。これは沖縄全戦没者慰霊の日、6月23日に因んでのことだと思われる。
いま安倍政権は琉球諸島を舞台に「離島奪回の上陸作戦」を推し進めようとしている。73年前の沖縄戦を描いたこの映画は、上陸・地上戦がいかに凄惨なものであるかを伝えている。多くの人にぜひ見て欲しい作品である。全国のレンタル・ショップにて入手可能である。(多幸山源治)