過労死法案を衆院強行
働く者の命を守ろう
「高プロ制度」はいらない!議員面会所で国会請願デモとエール交換する立憲、社民、共産、国民の国会議員(5月22日 東京) |
5月31日午後2時、安倍政権は衆院本会議で「働き方改革」関連法案の採決を強行した。政府はこの法案で高度プロフェッショナル制度を導入し、すべての労働者にたいする労働時間規制撤廃の突破口にしようとしている。過労死遺族の声を踏みにじり、働く者の命を奪う悪法を断じて成立させてはならない。廃案に向けて全力でたたかおう。
5月22日、国会周辺では、政府の「働き方改革推進法案」に反対するたたかいが展開された。翌日の衆院厚生労働委員会で与党と日本維新の会による、定額働かせ放題の「高度プロフェッショナル制度」を含む労働基準法の大改悪法案の採決強行をさせないためだ。 「全国過労死を考える家族の会」(以下、家族の会)は、首相に面会を求め、官邸前での座り込みを開始した。夜になっても、官邸前では多くの市民が抗議を続けた。
午後6時半から、日比谷野外音楽堂で、日本労働弁護団主催の集会が開かれ、1800人が集まった。また、札幌・名古屋の集会、大阪・北九州の街頭宣伝をインターネットで結んだ。高プロは過労死を助長すると口々に批判し、企業が労働時間を把握しないために過労死させられても認定されなくなる恐れも語られた。与党は、高プロを適用された労働者がこの制度から解除されるための修正案を提出しているが、個々の労働者が企業の意向に反して離脱することの困難さも指摘された。
高プロを適用される労働者は、労働者全体の平均年収の3倍(1075万円とされる)を超える賃金を得ている者とされているが、経団連は年収400万円を超える者までを対象としたいと述べている。労働者派遣が13業種から始められ現在はほとんどの業種に拡大されたように、高プロも拡大されかねない。
集会では、日本労働弁護団、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社民党、自由党、連合、全労協、全労連の発言が続いた。
〈労働法制改悪阻止! 全国キャラバン〉は、安倍政権を倒し、8時間働けば生活できる社会のための労働法制を作ろう、とアピール。〈かえせ☆生活時間プロジェクト〉の浅倉むつ子さん(早稲田大学大学院法務研究科教授)は、「人間の生活は1日を単位としており、労働時間は1日を単位に規制されなければならない。高プロ絶対反対」と発言した。
座り込みを開始した家族の会の寺西笑子代表は、「過労死で家族を奪われた立場から、首相に面会を求めています。16日にファックスで要請しましたが未だに返事がありません。働く人の命を奪う法律を絶対に作らないでください。強行採決の暴挙は許さない。明日も座り込みを続行します」と発言。集会アピールを採択し、国会デモに出発した。
23日の衆院厚生労働委員会では、野党が加藤厚労相に不信任決議案を提出。25日の同委員会で、与党と維新の会は、不信任決議案を否決した上で、野党の抗議と、傍聴し遺影を掲げる家族の会の前で、強行採決をおこなった。
最高裁 格差是正へ
非正規雇用差別で初の判断
1日、最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)は、物流会社「ハマキョウレックス」(浜松市)の契約社員が、同じ仕事をしている正社員と待遇に差があるのは、労働契約法が禁じる「不合理な格差」にあたると訴えた裁判の判決を出した。判決では、正社員に支給されている無事故手当や通勤手当などを契約社員に支給しないのは不合理と判断。会社側に支払いを命じた二審判決を支持した。最高裁が非正規雇用差別で初めて判断を示した。
また運送会社「長沢運輸」(横浜市)で定年退職後、再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が、給与が引き下げられたのは「不合理な格差」として訴えた裁判の判決も同日、同じ第二小法廷で言い渡された。判決は、精勤手当と超勤手当について正社員と嘱託社員に差があるのは「不合理」と判断。審理を二審・東京高裁に差し戻した。しかしそれ以外の住宅手当や家族手当などで差があるのは「不合理ではない」という不当な判断のもと、原告側の訴えを退けた。
土砂で埋めるな!
辺野古国会包囲に1万人
5月26日
5月26日、「美ら海 壊すな 土砂で埋めるな 5・26 国会包囲行動」が、国会周辺でおこなわれ1万人が参加した。主催は、基地の県内移設に反対する県民会議、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会、総がかり行動実行委員会。
集会冒頭、主催者が「基地建設予定地の軟弱地盤と活断層の存在をできるかぎり拡散して政府を追い詰めよう」と呼びかけた。地盤が軟弱であることが判明したため、工法変更が不可避となっている。そのためには県知事の承認が必要だ。
また防衛省側は建設予定地に活断層が存在しているという疑いを持っていたにもかかわらず、「(活断層は)認識していない」という国会答弁をしていた。ここにも安倍政権の隠ぺい体質があらわれている。
主催者あいさつのなかで「内閣支持率が30%台に下がってもなお安倍の暴走が止まらないのは、沖縄に比べて本土のたたかいが弱いから」と参加者の奮起をうながした。
オール沖縄会議の代表は、「窓枠を落とされた小学校では米軍機の接近のたびに授業を中断して避難体制を取らなければならなくなっている」ことや、「安全対策対象となる高さ制限に学校校舎が抵触しているにもかかわらず放置されている」ことを報告。現在もなお米軍政時代と同じように、県民の命がないがしろにされていることに怒りと悔しさをにじませた。
参加した国会議員らは「安倍政権を打倒して辺野古新基地建設と9条改憲を阻止しよう」と発言。その後、国会正門前、首相官邸前、国会議員会館前、国会図書館前の4つのエリアに分かれて行動を継続。辺野古に投入される土砂の8割が沖縄県外で採取される。各地で土砂採取に反対する運動に取り組むことが確認された。
2面
大飯原発4号機
民意踏みにじり再稼働
若狭で広がる反原発の声
大飯原発4号機の再稼働に反対し、ゲート前で抗議の声をあげる(5月9日 福井県おおい町) |
5月9日、関西電力は「再稼動反対」「原発いらない」の圧倒的な民意を踏みにじって、大飯原発4号機の再稼動を強行した。同機は、再稼動の翌日、警報機が誤作動するというトラブルを引き起こしている。地元住民と関西一円の人々の安全・安心を奪い、塗炭の苦しみに追いやる関西電力の再稼動を心の底から弾劾する。
〈大飯原発うごかすな! 実行委員会〉は、「大飯原発うごかすな! 5・9おおい町現地行動」を呼びかけ、4号機再稼動にたいして全力でたたかった。地元福井を始め、関西各地や、川内、伊方、東京などから、マイクロバスや乗用車を使って、おおい町現地に100人が結集した。
正午、大飯原発真下の「塩浜海水浴場シーサイド・ファミリーパーク」でデモ出発集会。実行委員会を代表して、木原壯林さんが発言。直ちに、大飯原発ゲート前に向かって、デモ行進。到着後、ゲート前に布陣して、再稼動反対行動を展開した。
冒頭、小浜市の中嶌哲演さん(原子力発電に反対する福井県民会議)が発言、続いて高浜町、おおい町の住民が発言。午後1時半、関電にたいして「再稼働中止」の申し入れをおこなった。その後も抗議行動は続き、次々と発言や歌、コールなどが続いた。
再稼動予定時刻の午後5時が迫るなか、参加者全員でスクラムを組み「今すぐ原発止めろ!」を歌い、ゲート前に「再稼動反対」「大飯原発うごかすな」と怒りの声が響き渡るなかで、5時に再稼動されたことが伝わった。直ちに「大飯原発ただちに止めろ」「原発反対」の怒りのコールがたたきつけられた。
最後に、実行委員会から「本当に悔しい。けれども、決して屈せず、あきらめることなく原発全廃までたたかい抜こう。再稼動を許したが、本日のたたかいで勝利の確かなてごたえを得ることができた。本日の地平を何倍にも拡大して、私達の力で再稼動を止めよう。そのために明日からまた、着実に原発反対を訴えて、たたかい抜こう」と呼びかけがあり、行動を終了した。
〈大飯原発うごかすな! 実行委員会〉は昨年来全力でたたかい抜いてきた。10・15関電包囲全国集会から、12・3おおい町現地総決起集会、今年に入って、2・25〜26若狭湾沿岸一斉チラシ配布(拡大アメーバーデモ)、3・13〜14大飯原発3号機再稼動反対行動、4・22関電包囲全国集会と、若狭現地と関電本店前=関西各地を結びつけてたたかってきた。これらの取り組みを通して、若狭一円に大きな反原発、再稼動反対の流れを作り出してきた。この流れをさらに大きく、確かなものにしていこう。再稼動を許さず、原発全廃を勝ちとろう。
声あげれば社会は変わる
ママたち、山尾議員と語る
子育てや憲法問題で熱いトーク(5月4日 伊丹市) |
子育て世代がトーク
5月4日、兵庫県伊丹市で5・4憲法フェスタ(@いたみホール)が開かれた。
メインゲストは衆院議員の山尾志桜里さん。山尾さんは「声を上げることで社会は変えられる」をテーマに講演した。
休憩後、弘川欣絵弁護士をコーディネーターに山尾さんと母親や保育士たちが、待機児童問題、子育て問題と憲法と政治の関係でトークセッション。
尼崎の福祉系NPO法人で働く中山さんは「今年も職場の複数の同僚が保育所に落ち、『預けられない、働けない』の困難は変わってない」と発言。
〈伊丹の子どもの未来を考える会〉高橋さんは、昨年から「幼児教育無償化」の名のもとに幼稚園、保育園をつぶし大規模な認定こども園を作ろうとした伊丹市の実態を報告。
川西市の民間保育士・池田さんは、「待機児童問題解決には数合わせではなく、保育士の待遇改善と子どもに寄り添える専門性や経験が必要」と訴えた。
こうした意見や報告に山尾さんは、「保育には1948年に定められた児童数や面積の基準がある。基礎自治体はその改善をおこなってきた。しかし安倍政権はそれを元の水準に引き下げることで待機児童数を表面的に解消しようとしている。母親たちが声を上げて政治問題化したが、引き続き運動が必要だ。伊丹市で署名を集めて市長に届け、付帯決議につなげたことは今後の運動にとっても意義が大きい」
「保育士の処遇改善のために給与の一律5万円アップを要求したが、政府はベテランだけを改善の対象にした。これではベテランになる前に辞めてしまう。また親とは別に子どもに責任を持つものとして保育士の社会的地位を保証することが必要だ。これは本当の意味での働き方改革とつながるし、子育て全般の改善になる」と話した。
憲法は国民のもの
トークの後半は〈いのちでつながるママと仲間たち〉で活動する株本さん(宝塚市)が「『自己責任』ばかり言われる世の中で、憲法13条の幸福追求権や25条の福祉における国の責任について考えた。憲法どおりの社会にするにはどうすればよいか」と質問。
山尾さんは「橋下徹が『デモは無駄、政治をやるなら選挙』と言っていたがそれはちがう。政治家に任せたらダメだが政治家は必要だ。戦後一貫して10人に1人だった女性国会議員が、10人に3人になれば、子育て、原発、安全保障問題は必ず変えられる」と回答。
弘川弁護士が「いてもたってもいられなくなり、ママたちは声をあげた。憲法の価値を実現するのが政治ではないか」と問うと、山尾さんは「99条にはあえて書いてないが憲法は国民のもの。守らせるべき相手は権力。安倍首相は主人公ではない」と応え、大きな拍手が起こった。
9条改憲に反対し憲法を活かすため、トークを軸に映画や音楽、地元国会議員や弁護士などが訴える憲法フェスタは、750人が参加し充実した一日となった。(久保井健二)
学校・社会に人権の風を
「君が代」処分は思想差別
5月18日、「学校・社会に人権の風を5・18集会 『君が代』裁判と卒・入学式から考える」が大阪市内で開かれ、教育労働者ら60人が参加した(写真)。
集会冒頭、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク事務局が、今年の卒業式、入学式の状況を報告。大阪府教委は、卒業式での「君が代」斉唱時不起立を理由に府立高校3校の教員3人に戒告処分をおこなった(3月29日、5月18日付)。
入学式をめぐっては処分は出ていない。
定年後の再任用については、2012年以降、「君が代」不起立による被処分者は、個別案件として審査の俎上にあげられ、不合格や内定取り消しになっている。その際、口実とされたのが「国歌斉唱時の起立斉唱を含む職務命令に従うか」という踏み絵であった。大阪ネットは、この文言は思想調査、思想差別であるとして、粘り強く抗議のたたかいをくり広げてきた。特に、昨年の再任用拒否撤回闘争の取り組みのなかで、大阪府商工労働部から「国歌斉唱時の起立斉唱を含む」が思想信条による差別選考になるという改善要求を引き出し、府教委はこっそり、「国歌斉唱時の起立斉唱を含む」を意向確認書から削除した。
その結果、今年度は「君が代」不起立処分歴を理由とした再任用拒否・思想差別をうちやぶる突破口をひらいた。この間のたたかいの成果である。
次に、戒告処分取り消し共同訴訟(原告7人)の三輪弁護士が報告。今年3月26日に大阪地裁で全員敗訴。判決は最高裁反動判決丸写しで「職務命令は合憲」と強弁。東京と異なる大阪の特殊な事情(国旗国歌条例)に触れずに、「思想信条の自由を侵害しない」と判断できるのか。今、控訴審の準備をしている。
続いて、「再任用拒否・取り消し」撤回裁判について谷弁護士が報告。今年3月28日に控訴審判決が出された。1審に引き続き3人の主張を認めない敗訴。現在上告の理由書を作成している。
さらに、別の「戒告・減給」めぐる裁判を担当している宮沢弁護士からの報告があった。
最後に被処分者のグループ(ZAZA)各人からの報告があり、あきらめずに頑張りぬこうと確認して集会を終えた。
安倍を退陣に追い込むぞ
5月19日に国会前行動
5月19日午後2時から、衆議院第2議員会館前を中心に「19日行動」がおこなわれ、2500人が抗議の声をあげた。
安全保障関連法に反対する学者の会の横湯園子さんは「今度こそ、安倍がどんなにがんばろうと、私たちはそれ以上にがんばって、解散に追い込むという決意で私はここに立っています」と決意を述べた。「止めよう! 辺野古埋立て」国会包囲実行委員会の野平晋作さんは「私たちはあきらめない。土砂投入は絶対に許さない。目に見える形で抗議行動をおこないたい」と訴えた。日本労働弁護団の棗一郎さんは、労働法制改悪反対の国会行動への結集を訴え、それぞれの課題で安倍退陣を求めて高揚した。
3面
子どもを被ばくから守る
福島で小児甲状腺がん多発
5月20日 西日本集会
「子どものいのちを守る」西日本集会(「子ども脱被ばく裁判」を支える会・西日本の総会と学習会)が、5月20日に神戸市内でおこなわれた。集会には、福島をはじめ全国から100人が参加した。この集会には、西日本に避難している原告(親子)が集まった。事故から7年がたち、事故時に中学3年生だった子はすでに大学を卒業しているのだ。しかし、このような事情を考慮することなく、裁判は今も続いている。
集会では、裁判報告を田辺保雄弁護士がおこなった。また、放射線物理研究者の山内知也さん(神戸大学教授)が、「国際機関を巻き込んだ東電福島原発事故後の小児甲状腺がん隠し」というテーマで講演した。
国の必死さ
裁判の争点について、田辺弁護士は次のように述べた。「原告は無用な被ばくを強いられたことを主張している。いっぽう、国は@100ミリシーベルトを超えないかぎり大丈夫、A低線量被ばくでは健康に影響を与えるという知見は得られていないと反論している。裁判所は@危険性が科学的に実証されていなければ、権利侵害は認めない、A低線量被ばくの危険性は科学的に立証されていないと考えているようだ。リスクが実証されなければ救済しないのであれば、実際に被害が出るまで我慢しろということだ」。また、田辺弁護士は「避難者訴訟判決で、裁判所は国の責任を認める傾向になっているが、国はこれを覆すことに全力をあげている。国の必死さを甘く見てはいけない」と警鐘をならした。
山内さんの講演は、現象をどのように解明していくべきか、科学の本質を問う内容であった。疫学で用いる統計学について基本事項を確認したうえで、「福島で小児甲状腺がんが多発している。津田敏秀(岡山大学教授)論文の意義は、疫学の知識を駆使して、このことを数字で示したことだ。公害病では、被害の拡大をおさえるために迅速さが求められる。多くの専門家はこの事を理解していない」と述べた。
早急に対策を
福島県民健康調査では小児甲状腺がんが増加しているにもかかわらず、国連科学委員会の『2013年報告書』では「福島第一原発事故後の甲状腺吸収線量がチェルノブイリ事故後の線量よりも大幅に低いため、福島県でチェルノブイリの時のように多数の放射線誘発性甲状腺がんが発生するというように考える必要はない」と書いている。
これを根拠に、国は「小児甲状腺がんの多発は原発事故によるものではなく、過剰診断が原因だ」と主張している。山内さんは、国(行政)の対応について「チェルノブイリ事故でも同じような論争がおこなわれたが、すでに決着している。現実を無視して、あれやこれや議論している場合ではない。早急に対応をとるべきだ」と訴えた。
加害者に責任を
集会では、関西で避難者集団訴訟をたたかっている原告からアピールがあった。大阪在住の避難者は、「自分は避難を選んだが、福島に残っている人にたいして後ろめたい思いがあった。この思いは今後も消えないだろう。分断を乗り越えて、自分で考えて正しいと思うことを行動していきたい」と語った。
最後に、今野寿美雄・原告代表が「かならず加害者に責任を取らせる」と力強くまとめた。(郡山司郎)
とめよう東海第二原発
今年11月で運転40年
5月21日、参議院議員会館でおこなわれた「とめよう! 東海第二原発 首都圏連絡会」結成集会に100人を超える人が参加した。 集会に先立って、元東海村村長の村上達也さん、ルポライターの鎌田慧さん、脱原発・東電株主運動世話人の木村結さん、再稼働阻止全国ネットワークの柳田真さん(司会)が記者会見をおこなった。
集会では、東海第二原発現地行動の責任者や、足立区や我孫子市など各地の運動体が発言した。また運営体制として「情報伝達を速やかにおこなうために各地域に連絡担当者(世話人)を設ける」「『世話人会議』は原則公開制とし、会員の積極的提案を協議する」と提起された。
原子力規制委員会は、11月で稼働期間が40年となる東海第二原発の運転期間20年延長を認可しようとしている。その阻止をめざしていこう。
投稿
「慰安婦」像の撤去要求!?
吉村市長は“恥を知れ”
大阪
5月16日、大阪市役所前で、サンフランシスコ「慰安婦」像の暴力的撤去を求める吉村洋文大阪市長への抗議行動がおこなわれ、30人を超える人々が参加しました(写真)。
吉村市長はツイッターで、マニラの像が撤去されたようにサンフランシスコの「慰安婦」像も撤去すべきと発信し、しかもその下にマニラでのブルドーザーで掘り起こした後の残虐な写真を付けたのです。
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの呼びかけで集まった人々は大阪市役所を訪れ、「吉村市長の行動は行政のトップとして恥ずかしい。市長の勝手な考えで人権侵害をしないでほしい」と抗議しました。
その後、市役所前で集会を開催し、抗議文提出の報告とサンフランシスコ市民の抗議声明を紹介。〈おんな・こどもをなめんなよ! の会〉が、本来なら被害者に謝罪して、歴史的事実を直視する「慰安婦」像を国会前やこの市役所前に設置すべきだ。私たちはその日まで、「#MeToo」「#WithYou」の声をあげ続ける。
次に〈朝鮮学校無償化連絡会・大阪〉が無認可の保育園を無償化の対象にするのに、朝鮮学校の幼児教育は排除するなど、露骨な差別・排外の背景には、ゆがんだ歴史認識があると訴えました。〈コードピンク大阪〉は、13歳で「慰安婦」にさせられたフィリピンのトマサ・サリノグさんを紹介し、歴史的事実は隠すことはできない、人間の尊厳を回復してほしいと訴えました。
関西ネットは「加害国である日本がすべきことは謝罪であり、歴史の記憶、教育であり、像を建てるのもそのひとつ。しかし吉村市長は否決された大阪都構想を持ち出し、朝鮮学校の補助金を停止したままだ。歴史認識のない大阪の行政に怒りの声をあげよう。最後まで諦めないでたたかう」と決意を表明。改めて歴史事実を否定し、女性の人権を踏みにじる吉村市長への怒りがこみ上げる集会となりました。(村野良子)
京丹後市 米軍基地
ずさんな工事に怒り
市 米軍に原状回復命じる
5月19日、「京都に米軍基地はいらない!戦争のない未来へ!5・19京都のつどい」が、米軍Xバンドレーダー基地反対京都連絡会の主催で開かれ、50数人が参加した。集会では「米軍Xバンドレーダー基地とは何か、その役割とは?」で共同代表の大湾宗則さんから、「基地の現状および住民の声と想い」で宇川憂う会の永井友昭さんから、「基地撤去に向けたたたかいを」で事務局長の山本純さんからそれぞれ提起があった。
4月前から始まっている米軍基地二期工事の状況についての永井さんの報告に参加者は、何でも許されると思っている米軍と、何の主体性もない近畿中部防衛局に怒りを覚えた。施工業者は基地外の京丹後市が管理する里道を勝手に掘削。永井さんらが訴えても防衛局は「基地内と米軍は言ってる」と。国会議員が防衛省を追及すると、米軍が京丹後市に直接謝罪に来た。京丹後市は現状回復命令を出し、さらに緊急の申し入れもおこなった。
工事は月曜から金曜と説明していたのに、土曜もおこなわれた。京丹後市が緊急の申し入れで問題にしていたが、この日5月19日(土)も工事がおこなわれていると永井さんは怒って報告。参加者は6月3日の京丹後現地集会に駆けつけようと確認した。
集会後、市役所前までデモ行進し「19行動」に合流した(写真上)。
「19行動」には、国民民主党の泉健太衆議院議員と共産党の倉林明子参議院議員が参加し、550人が安倍政権の退陣を求めてデモ行進した。(多賀信介)
【定点観測】(5月3日〜)
安倍政権の改憲動向
5月3日 改憲をめざす「日本会議」が事務局を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」と「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会共催の集会に約1200人(主催者発表)参加。安倍首相はビデオメッセージを寄せて、「憲法に我が国の独立と平和を守る自衛隊をしっかりと明記し、違憲論争に終止符を打たなければならない」と述べた。ただし昨年と異なり、改憲の時期については触れず。公明党の遠山清彦憲法調査会事務局長は「国民投票が万が一否決されるリスクを考えざるをえない」と早期発議を牽制した。
5月9日 参院改革協議会の選挙制度専門委員会は「1票の格差」是正に関する報告書をまとめた。自民党は各都道府県で1人以上を選出できる憲法改正を主張したが、これに賛同する会派はなかった。
5月11日 衆院憲法審査会は幹事懇談会を開き、国民民主党結党に伴う幹事を選出するため、今国会初の審査会を17日に開くことを決めた。質疑は実施しない。
5月17日 衆院憲法審査会は国民投票法の改正を検討することを決めた。投票環境を向上させる与党提案に共産を除く野党は賛成。野党が求めたテレビCM規制は自民が拒否。
5月18日 自民党は憲法改正推進本部などの合同会議を開き、国民投票法の改正案を了承した。8項目のなかには公選法でもまだ適用されていない要介護者などの郵便投票法の対象拡大を含み、自公両党は月内にも国会提出をめざす。
5月24日 自民・公明両党は衆院憲法審査会の幹事懇談会で、投票の利便性向上に向けた国民投票法の改正案のうち、立民党など野党の賛成を得やすい7項目に絞り今国会での成立をめざす。しかし自民がめざす審査会での改憲論議に野党を巻き込むことは難しい状態。
5月29日 自民党の吉田博美参院幹事長は、今国会で憲法改正の発議が難しくなったとして、来年の参院選に向けて公職選挙法改正に真剣に取り組むと表明。改憲によらず、合区で立候補できない県の候補の「救済」を狙う。
4面
柳本飛行場説明板再設置を
4月27日 考える会総会と学習会
奈良県天理市にある柳本飛行場跡説明板が撤去されて、まる4年が経った。この間、「天理・柳本飛行場跡の説明板撤去について考える会」は、天理市に抗議し再設置を求めてたたかってきた。その総会と学習会が、4月27日に市内でおこなわれた。
2014年4月に、天理市は朝鮮人労働者の強制連行を明記した説明板を撤去した。市の説明によると、説明板に記された内容について、在特会の人物から抗議があった。このことを理由に、市は説明板を撤去した。市民に知らせることなく、秘密裏に撤去したのだ。
日韓プロジェクト
総会では次のことが報告・決定された。@天理市の並河健市長は、依然として市民との話し合いを拒否し続けている。A今後、並河市長にたいする説明板の再設置を要求していきつつ、市民の手で新たな説明板を設ける運動をおこなう。B韓国忠清南道瑞山市の市民グループと共同で、同じ内容の説明板を日韓両市に設置する。C「天理・柳本飛行場跡の説明板日韓同時設置プロジェクト(注)」をたちあげており、説明板設置に必要な30万円を市民からカンパで集める。D説明板の文案は、日韓両国ですでに検討している。
学習会では、橋本徹さん(大阪府高槻市「タチソ」戦跡保存の会・事務局長)が、タチソ地下壕について講演した。要旨は以下のとおり。
高槻地下倉庫
「タチソ」地下壕は、高槻市中心部から少し北にいった北摂山麓の成合地区にある。「タチソ」とは、高槻のタ、地下のチ、倉庫のソの頭文字からとったもので、日本軍が暗号名として用いていた。
本土決戦にそなえて地下指令所を造るために、1944年10月から工事が始まった。45年、米軍の空襲がはげしくなり、航空機工場の地下移設が必要になった。このため、「タチソ」は飛行機のエンジンを作る地下工場になった。この地下工場は、8月20日に操業する予定になっていた。しかし、15日に敗戦になったため、稼働しなかった。
地下壕の規模は長野県の松代大本営跡に匹敵する。トンネルの掘削は、おもに朝鮮人労働者によっておこなわれた。米軍調査団の資料によって、3500人の朝鮮人労働者がいたことがわかっている。敗戦後、軍関係資料はすべて焼却されてしまった。ここで働いていた人の名前や正確な人数などはわかっていない。帰るところのない朝鮮人労働者はここに住みつづけ、今日に至っている。
戦跡に関する銘板は、96年3月に立てられた。「強制連行された朝鮮人労働者」の文言は入っているが、われわれは「侵略戦争」と「植民地支配」の2つの文言をどうしても入れたかった。しかし、大阪府はこの文言を入れることを認めなかった。われわれは苦渋の思いで妥協し、これを立てた。不十分な説明板ではあるが、今日では作っておいて良かったと思っている。
記憶を消さないために
14年、橋下徹が大阪市長をしていた時に、大阪府茨木市の戦跡でも「朝鮮人強制連行を記した説明板を撤去せよ」という声がおきている。大阪府はこの圧力に屈しなかったので、今でも銘板は残っている。戦争の記憶を消さないために、強制連行の事実を記した説明板をともに守っていこう。(津田)
(注)同プロジェクトでは、「説明板日韓同時設置基金」を募集している。
個人:1口千円、団体:1口5千円。
郵便口座:00940―3―311450
加入者名:天理・柳本飛行場跡の説明板日韓同時設置プロジェクト。問い合わせは、高野眞幸(0743―66―0963)まで。
狭山事件 新証拠で意見広告
4月 14・15日 部落解放同盟全国連が大会
4月14日〜15日、部落解放同盟全国連合会の定期大会が東大阪市で開かれた。大会の基調は「狭山意見広告運動の成功」におかれ、各地のとりくみの報告などがおこなわれた。2006年に提訴された狭山事件の第三次再審請求審では、2009年12月の東京高裁による証拠開示勧告以来、これまでに191点の新証拠が開示されてきた。
なかでも、2016年に東京高裁に提出された下山進博士による万年筆のインキ鑑定、2018年1月に提出された東海大・福江潔也教授によるコンピューター解析による筆跡鑑定は、有罪確定判決の事実認定の根幹を覆すものとして重要だ。特に下山鑑定は、石川一雄さん宅から発見された万年筆が被害者のものではない偽物であったことを科学的に明らかにすることを通して、決め手の証拠がねつ造であったことを暴露した。下山鑑定は、権力犯罪の動かぬ証拠でもあるのだ。
ただし、従来の再審判断の事例から言えば、鑑定人尋問などの裁判所による事実調べがおこなわれなければ再審決定の扉は開かない。逆に、事実調べがおこなわれた場合には必ず再審決定がおこなわれている。つまり、狭山再審の可否もひとえに、下山・福江鑑定をはじめとした新証拠の事実調べがおこなわれるか否かにかかっている。今年79歳になる石川一雄さんはここを最後のチャンスとして支援を訴えている。
昨年末から、多くの人士・労組などの呼びかけにより、下山・福江両鑑定人の鑑定人尋問を求める新聞意見広告の掲載をめざす「狭山意見広告運動」が始動し、全国連はこの運動の成功のために全力をあげてきた。大会では、この意見広告への賛同が「予想をも超えて」急速な広がりをみせ、目標をほぼ達成しつつあることが報告された。全国連は、この意見広告運動を通して、組織の垣根を超えた全人民的な運動の端緒を開こうと奮闘している。意見広告は5月18日の毎日新聞朝刊全国版に掲載された。東京高裁に事実調べ・鑑定人尋問を求める声を大きく広げよう。(深谷耕三)
(シネマ案内)
「タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜」
チャン・フン監督(韓国映画 2017年)
1980年5月に起きた光州民衆蜂起の実話にもとづいて、この映画は作られている。光州事件を取材するために、ドイツテレビ局の記者がタクシーをチャーターして光州市に潜入する。タクシー運転手とドイツ人記者が光州市で体験した2日間(5月20〜21日)の出来事とふたりの交流が、アクション場面を交えつつ情感豊かに描かれていく。
キム・マンソプ(実在の金砂福をモデルにしている)は、ソウル市でタクシー運転手をしている。妻を病気でなくし、娘との2人生活。妻をなくした寂しさから稼いだ金も酒で使いはたし、家賃も滞納するような貧乏生活だ。ソウル市街で遭遇する学生デモにも、「親のすねをかじっていながらデモなんかしやがって」と批判的だ。そのとき、「光州まで行けば10万ウォン出す」との話を聞きつける。彼は金の魅力に魅せられて、これを仲間から横取りして引き受ける。当然、光州でなにが起きているのかは知らない。
ピーター(ユルゲン・ヒンツペーター記者がモデル)は、ドイツ公共放送の東京特派員をしている。毎日、平凡な記者生活をしていたが、記者仲間から「韓国の光州で市民が蜂起し、死者が出ているらしい」との話を聞く。彼は何かスクープをあげたいという野心から、光州に潜入ルポを決意する。
光州市に着くと、マンソプは現実の前にたじろぐ。市街でおきている事態は、彼が理解できる範囲をこえていた。いっぽう、光州市民は解放感につつまれて、人間味あふれた人々ばかりであった。この市街戦を体験するなかで、ふたりの人生観がおおきく変わっていく。
映画では、マンソプの目からみた光州市街戦の様相が写し出される。無防備で投石する市民に、軍は容赦なく銃撃していく。逃げる市民。病院に担ぎこまれる人々。映画ではここが圧巻だ(市街戦を体験した人によれば、このシーンは事実だと言っている)。
光州市ではきびしい報道管制が敷かれていた。新聞やテレビ報道では、「一部の学生が暴動をおこし、軍に死者がでている」というウソの報道だけが流されていた。テレビや新聞では、真実は報じられなかった。光州市民は、テレビのニュース報道に「うそをつきやがって」と憤り、テレビを消してしまう。
一部ではあるが、市民の側に立ち、真実を報道しようとする記者や報道関係者もいる。新聞労働者は真実を伝える新聞を出そうとする。しかし、会社経営者と軍の力によって、新聞の輪転機が破壊される。学生は「光州で何がおきているのか、世界に真実を伝えてくれ」とピーターに叫ぶ。
ふたりは光州を何とか脱出し、ソウルにもどる。ピーターは写したビデオテープを隠し持って、無事に韓国を離れることができた。この映像によって、光州で起きている事実が世界に知られることになった(5月23日)。それ以降、彼らは別々の人生を歩んでいく。ふたりは再会することはなかった。しかし、光州の体験はふたりの心に刻まれ、心の交流は生涯において変わらなかった。
韓国では、2017年8月2日に公開されて、9月9日までに1200万人(人口は5150万人)を超える人々がこの映画を見ている。その背景には、2016年ろうそくデモからパク・クネ政権を打倒したたたかいがあるからだろう。人々は、光州のたたかいがあったがゆえに、今日のたたかいがあることを知っている。
光州市民のたたかいがタクシー運転手と新聞記者の人生を変えていったように、ろうそくデモでもおなじことが起きている。たたかいがどのような形でおこなわれても、そのたたかいはたたかいのなかで人々を変革していくのだ。(鹿田研三)
5面
(直撃インタビュー)
第34弾
ろうそく革命から南北朝鮮の平和と統一へ(上)
中村 猛さん(日韓民主労働連帯)に聞く
1989年、アジアスワニーの女性労働者が開始した解雇撤回闘争を支援し、96年の民主労総全北地域本部の結成とともに交流に尽力してきた中村猛さん(民主労総全北地域本部名誉指導委員、日韓民主労働者連帯)に、韓国ろうそく革命以降の動きと南北朝鮮情勢の展開について話を聞いた。(インタビューは5月9日。見出しは本紙編集委員会)
「経済中心」から「人間中心」に
韓国の3つの大きな産業別労働組合(金属労組、公共運輸労組、保健医療労組)が、ろうそく革命の後の状況を受けて、それぞれ“2018年の戦略と課題”に関する文書を出した。一言でいうと、労働組合が、「経済中心」から「人間中心」に舵を切ったということだ。李明博政権、朴槿恵政権の新自由主義政策の結果、社会を勝者・敗者に二極化する事態を生み出した。そういう経済中心のあり方への強い反省から、それを乗り越えて、人間中心に変えようというのである。
今回のろうそく革命が革命であったという評価は、韓国の人びとも、労働組合も、知識人もそう呼んでいるので間違いないだろう。もちろん革命にもいろいろあるが、少なくとも、ナショナルセンターを名乗る労働組合、大産別労組―もちろん組織率は1割という問題はあるけれども―が、人間の生き方として“経済中心から人間中心に変えよう”ということを言い出したのを見て、これは革命だなということを僕は確信した。人間自体が変わらないのであれば、それは革命ではなく単なる政権交代だが、そういう表面の変化ではなくもっと土台の部分で、少なくとも方針を書く人たちが、「人間中心」なんて言い出したということに、僕は本気で革命だと感じた。
「積弊清算」
もちろん困難はまだまだある。ろうそく革命は平和革命だった。朴槿恵とか李在鎔(サムスン総帥)は逮捕されたが保守勢力は残っている。僕たちの知っている革命というのは、やはり旧悪一掃、断頭台だろう。しかし今回は断頭台が準備されなかった。だから、過去の韓国資本主義、李明博と朴槿恵の10年間、それらの悪弊が積もりに積もっている。それを清算すること、つまり「積弊清算」ができるかどうかが来る6月13日の地方選挙の最大の争点になっている。
文在寅は依然として勢いがある。直近で支持率83%という数字も出ている(「韓国ギャラップ」5月第1週)。だからこの地方選挙で保守勢力が盛り返すというのはかなり厳しいだろう。その次が2020年の国会議員選挙になるが、そこでも保守勢力が盛り返せなければ彼らにとって致命的だ。だから保守勢力は2020年の国会議員選挙にかけている。つまり、2020年の選挙に向けて、各勢力の力比べが始まっており、国民大衆のレベルでこれからどう動くのかが事態を決していくということになる。
指導性の問題
そこで、問題は大衆がどういうところにいるのかだ。冒頭、産別労働組合が経済中心から人間中心への転換を打ち出したと述べたが、それは、幹部のリーダーシップの話だと思う。下からそういう声が上がってきて、その声を幹部が受け止めて方針化したということではないと思う。時代状況を見た指導者が、今までのあり方を見直そうと働きかけをしているところだと思うが、まさに指導性が問われていると思う。
南北統一への大きな動き
日本の民衆の意識はやはりマスコミに流されている。そして、マスコミなどは、朝鮮半島の危機で飯を食っていて、平和になると困る連中がたくさんいるわけだから。情勢は確かに一筋縄では行かないし、日々動いているわけだけど、マスコミの目というのは、その表面の動きを追っているだけだ。しかしその底流にはしっかりとした流れがある。でもそこはなかなか見えないので、やはり議論は目先の動きに流されている。
焼けぼっくいに火が
僕が韓国に行き始めて30年になるが、その頃は、“私たちは元々一つなんだから、分断で利益を得ている連中がどんなに策動しても所詮は一つに戻るんだよ”という雰囲気や発言が多かった。しかしそれがだんだん薄れてきて、もちろん世代が変わるし、また言葉や文化の違いも少しずつ出てきて、この10年ぐらいは“南北統一なあ”みたいな感じもあった。しかし、文在寅になったらまさに焼けぼっくいに再び火が付いた。つまり、統一の夢ということが表面的に語られなくなっていたが、焼けぼっくいのように消えることなく、底流に脈々とあって、それに再び火が付いたということだ。
だから、南北統一ということが現実味を帯びてきたと思う。
大変化が始まる
では具体的にはどうなるのか。連邦制統一だとか、EUの経験とか、という議論が始まるだろう。
ところで、5月5日から南北で時差をなくした。30分の時差だけど、これはかなり大きなことだ。というのは、韓国の標準時は日帝支配の時代からのもので、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の30分の時差は日帝との距離だった。それを押して韓国標準時に合わせたわけだからね。
とすると、一気呵成になにか、韓国人にはイメージできても、僕たちにはイメージできないような大変化が始まっているのではないか。韓国・朝鮮の人びとにはイメージできている、統一国家というのはあるんじゃないのかと思うのだ。かつて金日成主席が、「高麗民主連邦共和国」(1980年10月)ということを提案している。これは、一国家・二制度・二政府の下で連邦制による統一というものだったが。
今回、EUがモデルなるのか。南北で社会経済体制がかなり違う。ドイツの場合は吸収合併。連邦型の合併というのはあまり先行例がない。ないのであれば自分たちで研究していけばいいということだろう。
とりあえず人間の往来だろう。通貨の統一は難しいと思うけど、とにかく人間が往来することが一番。それをしながら、そこで生じる様々な支障について具体的な議論が始まれば、統一の姿がだんだん見えて来るのではないかという気がする。
70年の分断の歴史
もともと一つだったということが再び一つになるパワーになるのか。そういう問いはあると思うけど、朝鮮の長い歴史で見たら、70年というのはたぶん決して長くないだろう。
日本人の感覚ではなかなかそういう長いスパンで歴史を見ないけど、何千年の往来の歴史、さまざまな支配や抑圧の歴史のなかでの70年。しかも明らかに人為的に分断されてきたわけだから。そして、離散家族がおり、朝、橋を渡ったら戦争が始まって帰れなくなったという人がいる。そういう70年なのであって、だから、再び一つになりたいという感情は強いだろう。(つづく)
韓半島平和の時代を開いた板門店宣言
論評 韓国・参与連帯平和軍縮センター
(翻訳は本紙編集委員会)
2018年4月27日南北は韓半島平和の時代を宣言し新しい歴史のページを開いた。全世界が注目するなかで南北首脳はわずか数カ月前には想像できなかった胸いっぱいの感動と希望を伝えてくれた。11年ぶりに成し遂げた首脳会談で南北は「韓半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」を発表して、これを通じて長い間の分断と対決の歳月を終息して韓半島平和を主導的に導いて行くという意志を明確にした。参与連帯は今日首脳会談と板門店宣言を大いに歓迎する。
南北は今日、宣言を通じて、南北関係の全面的・画期的な改善と発展、軍事的緊張状態緩和と戦争危険解消のための共同努力、韓半島の恒久的な平和体制構築のために積極的に協力することを合意した。特に私たちは今年中に終戦を宣言して停戦協定を平和協定に転換し、南・北・米3者または、南・北・米・中4者会談を推進することにするなど、南と北が韓半島平和体制構築のための主導的な役割と努力を表明したことを高く評価する。
また、今回の宣言で南北首脳が完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共同の目標を確認して、このために努力することに合意したのは、歓迎すべきことだ。今後韓米、北米、北中間の首脳会談で取り上げられる韓半島平和体制と核のない韓半島のための議論を進展させるのに重大な第一歩になるだろうと信じる。核のない韓半島は東北アジア非核地帯建設という展望のなかで推進されるべきであり、進んで核のない社会ための努力につながらなければならない。
また、南北は板門店宣言を通じて民族自主の原則を確認して、以前に採択された南北宣言の履行と南北関係の全面的、画期的改善と発展、韓半島緊張緩和のために、当面のこととはいえ有意な措置に踏みだすことに合意した。特に私たちは南北が韓半島の戦争の危険と軍事的緊張状態を緩和するために一切の敵対行為の全面中断と西海北方限界線一帯における平和水域の設置、軍事当局者会談の随時開催などに合意したことを非常に歓迎する。これは既存の南北合意によって履行されるべきだった懸案事項であり、南北間の不必要な軍事的衝突を防ぐために必要な措置だ。南北が軍事的緊張解消と軍事的信頼構築を進めることによって、段階的に軍縮をおこなうという前向きな立場を明らかにしたのは、心が躍ることである。
南北関係改善と発展にかんしても南北は緊急な課題を話し合った。高位級会談をはじめとする分野別対話と交渉を早期に開催することとし、開城に南北共同連絡事務所を設置して南北当局と民間の交流協力を保障して活性化するとした。8・15を契機に離散した家族と親戚の対面を進め、10・4宣言で合意した事業を積極的に推進し、その一環として東海線および京義線鉄道と道路を連結することに合意した。私たちは文在寅大統領の平壌訪問をはじめとして分野別の交渉が成立するように、南北の交流協力が今後大幅に拡大しなければならないと考える。
韓半島の新しい平和の時代を明らかにした今日、板門店宣言は決して過去と同じ轍を踏んではならない。合意を徹底的に履行し、具体化しなければならない。さらに頻繁に対話をしなければならない。その過程を通じて南北関係の発展はもちろん平和体制と核のない韓半島を必ず実現していかなければならない。それこそ平和と正義のために広場でロウソクのあかりを持っていた市民たちが念願して共に作ろうとした道であるからだ。私たちは今韓半島で芽生えて広がる平和が東アジアと世界平和にも寄与するものだということを信じて疑わない。(2018年4月27日)
6面
寄稿
オスプレイの横田基地配備(下)
夜間・高速・超低空飛行の危険性
小多 基実夫
空軍輸送機オスプレイCV22の横田基地配備について「沖縄での基地負担軽減のためである」とか、「否! 沖縄での反対運動に押されて本土配備とするが、実際には訓練は沖縄でやるのではないか」との見解がある。私は日米政府はもっと攻撃的に考えているのではないかと思う。
CV22は、特殊部隊の輸送を担い、潜入〜活動〜脱出の全行程の秘匿が要求されるため、夜間・闇夜の高速超低空飛行が原則である。レーダーマスクというのであるが、敵の対空レーダーをかい潜り、渓谷や山肌を縫うように低空飛行して、防空レーダー網を突破するのだ。「地形追随・地形回避用レーダー」を活用して、夜間でも30m単位で地表との間隔を維持して低空飛行すると言われるが、さらに高性能のサイレント・ナイト・レーダーも開発中である。このように危険な任務―作戦のためには、当然にも日頃からの十分な訓練を必要とする。
CV22と同時に450人規模の空軍特殊部隊の軍人・軍属が配備されることから、横田基地がCV22と空軍特殊部隊の本格的な訓練基地〜出撃拠点になるのは確実である。上記のように横田基地への配備決定のタイミングで中谷防衛大臣(当時)が「通常の飛行訓練に加え、低空飛行、夜間飛行を実施する」と発言したのはそういう意味である。
そう考えると、CV22を沖縄ではなく横田基地への配備を決めた理由がハッキリしてくる。沖縄は地形がほぼ平地に近く、陸地(特に東西)が狭いため、山岳地・渓谷訓練に使用できる空域が狭く訓練に不向きである。それに比べて横田基地は日本アルプスなど中部〜北関東地方にかけての広い山岳地に隣接しており、密度の高い訓練ができるということではないか(長野〜新潟県にかけての飛行訓練経路「ブルールート」、また富士演習場も近い)。さらに、実戦での出撃基地として考えると、横田基地は沖縄と比べて朝鮮民主主義人民共和国に近いことは重要なポイントである。
また、米軍にとって密かに他国に侵入し、要人の殺害・拉致・破壊などをおこなうこの無法の特殊作戦部隊を日本の首都・東京のしかも「航空総隊」という空自の最高指揮中枢の置かれた横田基地に展開させ、最前線基地、出撃と訓練の拠点とすることの対日的な政治的意味はとてつもなく大きいものがある。まさに首根っこを押さえる「ビンの蓋」である。ロンドンにもベルリンにもソウルにも、どの同盟国の首都にもこのような外国軍の侵略特殊部隊の基地はない。
校庭にパラシュート
各種の報道でも明らかなように、飛行するだけでもあまりに危険なオスプレイは、米国内では広大な演習場を除いてはほとんどのところで飛行禁止である。しかし沖縄を始め日本全国では、米軍機は法律に一切縛られないばかりか、日米政府間での取り決めすら無視して、市街地・病院の上空を含め無制限の空域で昼夜を問わず、しかも低空飛行も含めて自由に飛行している。全国全土の上空が米軍にとっては演習場であり戦闘空域なのである。
CV22の横田基地配備を機に確認せねばならないことがある。横田には日米地位協定によって首都圏の空を米軍が一元的に管理する「横田管制ラプコン」が設定されており、厚木・座間・入間等の米日軍事基地は言うまでもなく、羽田や成田など民間国際空港もその管制下に置かれており、首都圏の空すべてに米軍の支配が行きわたっている。
「嘉手納ラプコン」が支配する沖縄や「岩国ラプコン」も同じである。民間機も自衛隊機も米軍の許可した範囲(コース、高度)でしか飛行できないのである。あくまで米軍の都合が最優先なのである。沖縄をはじめ飛行ルートの下で暮らす全国の人民にとって欠陥機オスプレイの問題は「騒音」だけではなく、いつ墜落してくるかという命懸けの問題である。そもそも平時から四六時中、睡眠と健康を妨害し「生命・財産」を破壊の危険にさらして平然としている日本政府と米軍が、有事=戦時に「国民の生命・財産を守る」ことなど有り得ない。
4月10日午後4時半、横田基地の西700mにある東京都羽村市立第3中学校のテニスコートに米軍のパラシュートが落ちるという事件が起きた。C130輸送機からの降下訓練中にパラシュートが絡まったため兵隊が切り離したものだという。幸いけが人はいなかったものの、中学校では放課後の部活の時間帯である。もし絡まったパラシュートの切り離しに失敗して、絡まった状態で兵士や兵器が落下していたら、下で部活中の中学生には大惨事である。また、もし切り離されたパラシュートが風にあおられて車道や鉄道上に落下していればどのような交通事故が生じていたことか。
兵士の命は
他方、この欠陥機に搭乗させられる兵士にとってはどうだろうか。
作戦が最優先する戦時は言うまでもないが、平時の訓練でも墜落事故を繰り返すオスプレイでは常に命懸けである。さらに最も危険な低空飛行では、オートローテーションが効かないばかりか、パラシュートも使えないなどあらゆるセーフティー機能が欠落しており、陸上・海上・山林どこでアクシデントがあっても即、死に直結するのである。
軍隊と兵士について考える場合に重要なことだが、70年前までの日本や現在までの米国を見るまでもなく、戦争国家においては軍隊が幅をきかすが、それとは逆比例して兵士は人としての尊厳も生命も奪い尽くされる。「国を守る」と言っても、その方法は基本的に殺戮と破壊の戦争によってであり、兵士の生命はそのために消費される「人的資源」に過ぎない。兵士はあくまで「兵力」としてのみ評価される世界、それが軍隊である。
改憲と戦争国家化へ突き進む安倍政治を打ち破ろう。(おわり)
読者の声
自衛隊員の人権を守ろう
第3師団申し入れ、来月160回目に
5月27日の申し入れ |
イラクPKOの時から毎月続けられてきた陸上自衛隊第3師団(兵庫県伊丹市)申し入れ行動が、6月24日で159回となります。安保関連法が施行され、自衛隊法76条が変えられ、米軍が「攻撃を受ける」と、政府の判断でどこでも武力行使ができることになっています。それゆえ今、訓練がより実戦的に激しくなり、自衛隊員の自死も増えています。さらに深刻なのは、自死が出ても問題にされていないことです。
南スーダンに駆け付け警護につかせるときも、紛争真っ只中へ道路を造りに行くこと自体がおかしい。安倍政権は、工事半ばでウソをついて引き上げさせた。道路は赤土のまま、橋も完成させずに帰るなど、普通の感覚ではおかしいでしょう。
ある自衛隊員の母親が「反対です」と札幌で裁判に訴えました。しかし、息子さんは嫌がらせもあり、周りに遠慮し裁判に賛成せず、母親単独での訴訟にしたそうです。普通の仕事ではないのですから、嫌なものは嫌と言うのは当然です。
日本人の人権感覚は鈍すぎます。もっと自分を大切にするべきです。私は20年間、職場で「日の丸・君が代」に抗議し不起立でたたかいました。嫌がらせも受け、校長からはパワハラを受けました。だけど、南京虐殺の後、中国に出兵させられ、中国の人たちを殺して罪の意識に苦しんだ父を思えば、こんな仕打ちに負けてなるかと頑張りました。
今、国会議員の半数は「南京虐殺はなかった」と言っているそうです。そんな歴史認識だから、憲法を壊すのにも平気なのでしょう。そういう議員たちに好き放題されては堪りません。2000万人のアジアの人々の血を流した侵略戦争を反省し、戦争放棄を決めた憲法です。「戦争は嫌だ」と、はっきり言いましょう。強行採決された安保関連法の下、ウソの情報で海外に派遣されてはなりません。自衛隊員の皆さんとともに、「戦争放棄」の憲法を守りましょう。自衛隊申し入れ行動に参加してください。(石川豊子)
6月申し入れ行動
6月24日(日)午前10時30分 陸上自衛隊・第3師団 西門前(伊丹市千僧、阪急伊丹駅から市バス11系統、第3師団前下車)