安倍打倒へ 全勢力の結集を
共謀罪廃止、格差・貧困なくせ
国会前で共謀罪法の施行に抗議する人びと(7月11日) |
共謀罪施行日の11日、衆議院第2議員会館前に800人が集まり抗議の声を上げた。
正午に始まった集会は、抗議のシュプレヒコールに続いて、海渡雄一弁護士が主催者あいさつ。「共謀罪が成立したからといって運動を止めるわけにはいかない。法廃止の署名活動に取り組みたい。これからも運動を広げよう」「政府は、次の段階で必ず盗聴法の改悪・拡大を狙ってくる。共謀罪廃止とともに、共謀罪を対象とした通信傍受法は絶対に認めないたたかいが重要」「さらに警察組織の監視。警察にたいする監視組織を作るべきだと、ジョセフ・ケナタッチ国連特別報告者も日本政府に勧告している」と訴えた。
都議選で自民が惨敗
私たちの課題は何か
安倍政権への怒りが爆発している。2日投開票の東京都議選で自民党は告示前57の半分以下の23議席という惨敗を喫した。共謀罪法の強行採決、森友学園、加計学園事件で明らかになった国政の私物化、暴言・失言を繰り返して恥じるところのない閣僚らの傲岸不遜な態度。これらにたいする都民の回答だ。
国会内で安倍政権は、絶対多数をかさに着て「少数野党」を嘲笑し愚弄してきた。しかし国会の一歩外に出れば、それは圧倒的多数の民衆にたいする許しがたい侮辱であった。その怒りがうなりを上げて噴き出しはじめたのである。それはまた安倍政権発足から4年半余りで急速に戦後憲法体制が空洞化してきたことにたいする危機感の表れだ。
民衆による政権交代
いま必要なのは、怒りを結集して安倍政権を打倒することである。そして民衆の手による政権交代の展望を示すことだ。このたたかいの成否は「下からのイニシアチブ」の発揮にかかっている。それは、いま直ちに着手すべき政策とは何かを明確にすることだ。それが既成政党の再編を促し、政権交代の新たな陣形を形成する。翁長県政を生み出した「オール沖縄」に学ぼう。
それでは直ちに着手すべき政策とは何か。
日米同盟からの転換
第1に、日米同盟路線からの転換を打ち出すことだ。「集団的自衛権の行使」を容認した14年7月の閣議決定を撤回し、戦争法廃止の手続きに入る。特定秘密保護法、共謀罪法も速やかに廃止する。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設を直ちに中止する。普天間基地の即時返還と日米地位協定の見直しを求めて対米交渉に入る。武器輸出を解禁した14年4月の閣議決定を撤回する。日本版軍産複合体の登場を許してはならない。
米軍事力に依存した安全保障政策が破滅的な結果を招く。それはアフガン、イラク、シリアの惨状を見れば明らかだ。東アジアの平和に必要なのは、域内問題への米軍の直接介入を阻止することであり、決してこれに協力することではない。
核兵器の廃絶を
第2に、稼働中の全原発を即時停止し、「原発ゼロ」にむけたプロセスに直ちに着手する。福島原発事故の被害者の救済と原発事故の収束を最優先課題とする。また日本政府として核兵器廃絶の意志をはっきりと表明し、7日国連で採択された核兵器禁止条約に参加する。
法人税の引上げ
第3に、格差と貧困にあえぐ民衆の上にアグラをかいて巨利を貪ってきた大企業にたいする優遇税制を直ちに改める。同時に、タックスヘイブンを利用した税逃れにたいして厳しい規制を加える。医療、福祉、介護、教育、保育に必要な財源は、法人税引き上げで確保する。現在国会に提出されている労基法改悪案は撤回。派遣労働にたいする規制を強化する。労働者の権利が保障されなければ、貧困問題は解決しない。国家戦略特区は廃止。人びとの健康で文化的な生活を守るためには企業活動への法的規制は不可欠だ。
まずは、安倍政権の4年半余りで奪われたものを奪い返そう。
福島原発刑事裁判始まる
東電幹部の加害責任は明白
6月30日 東京地裁
強制起訴を市民の力で勝ち取った15年7月から2年。6月30日、ついに東京地裁で東電元幹部3人を被告とする裁判が始まった。
被告3人は「予見不可能」「想定外」を繰り返した。また、代理人は「原発のことはよく知らない」「権限外だった」など、とんでもないことまで言い出した。検察官役の指定弁護士は、社員の手帳やメールを示し、地震や津波の影響が社内で深く検討されていたことを暴露。対策を取らずに漫然と原発を稼動し続けたことを断罪した。
裁判終了後、参議院議員会館講堂で報告会が開かれ、福島から30人が参加した。参加者から「小さな声で謝罪もあったが、聞きたい内容ではなかった。この人たちがきちんと対策をとっていてくれれば、事故による苦しみは生まれなかった」という声があがった。
弁護士は「検察庁が放置していた膨大な証拠から、指定弁護士が重大な証拠を掘り出してくれた」と発言。今後も市民が主体的に裁判を推進していくことを確認した。(島田秀夫)
大飯原発差止訴訟
裁判長が全証人を却下
弁護団が裁判官3人を忌避
名古屋高裁金沢支部に入る原告団、弁護団(7月5日) |
5日、名古屋高裁金沢支部で、大飯原発差し止め訴訟控訴審が開かれた。前回の口頭弁論で証言した元規制委員会委員長代理・島崎邦彦さんは、大飯原発の地震想定は過小評価になっており、見直す必要があると明言し、裁判所がこの証言を受けて、今後どのような審理をおこなうのかが注目されていた。
島崎証言に完敗
裁判長は双方の提出書証の確認作業をおこなった。関電側からは島崎証言への反論がないことに、原告弁護人から「島崎証言に反論すると言っていたのに、どうなったのか」と質問が突きつけられ、関電は蚊の鳴くような小声で「反論書はありません」と答えた。関電は島崎証言に完敗し、反論も出来なかったのだ。
とすれば、裁判所は島崎証言を基調にして判決を書くのは当然である。そのために、弁護団は東大地震学研究所の纐纈一起さん、京都大学防災研究所の赤松純平さんなどの証人、現場検証を申請しており、裁判所はこれらを採用して判決執筆に入るのがスジである。
ところが、10分間の休憩を挟んで、裁判長は「福井地裁で2年間審理し、控訴審でも3年間、前回は島崎さんの尋問をおこない、甲号証は480点あまり、乙号証は260点あまりが提出された。これ以上の証人は必要としない」と言い、裁判を終結させようとした。
すかさず弁護人が、「裁判官3人を忌避する。真実を明らかにすることを回避し、裁判の公正を妨げる。3日以内に申立書を送る」と発言。今後、当該裁判体以外の裁判体で判断されるが、決定までには数カ月かかる。(田端富美雄)
2面
安倍政権の「働き方」改革を斬る 最終回
労働運動の新しい姿を創る
森川 数馬
本連載第3回で、労働時間の8時間規制を突破することに連合が合意した「3・13労使合意」は「時限爆弾」だと警告したが、早速それが現実となっている。13日、連合の神津会長は安倍首相と会談し、残業代ゼロ法案(高度プロフッショナル制度)への協力を表明した。支持率が急落する安倍政権に「助け舟」を出したのだ。この大裏切りに衝撃と怒りが広がっている。今こそ労働運動のあり方を根本的に再提起し、それを連合傘下の労働者たちにも届けていかなければならない。
厚生労働省は毎年、保健、医療、福祉、年金、所得などにかんする国民生活基礎調査をおこなっている。昨年は3年毎の大規模調査がおこなわれ、その結果が今年6月27日に発表された。この調査で「生活が苦しい」と回答したのは全体の56・5%にのぼる。実はこの数字は07年から10年間にわたって50%を超え続けている。
これを母子世帯でみると、「生活が苦しい」と回答したのはなんと82・7%だ。これは何を意味しているだろうか。まず言えるのは、日本に住む大半の人びとが、人間らしい生活を営むことが困難になっていることだ。その大きな原因は、人びとが収入を得るための労働の現場が激変していることにある。前回この連載で、総合労働相談コーナーに年間100万件以上の相談があることを報告したが、これは多くの労働者が労働現場で、人間としての尊厳を傷つけられ、経営者の下に隷属を余儀なくされる状況にあることを示している。
監獄化する職場
今日の労働現場においては、「労働者を人間として尊重する」という考え方が急速に失われている。そこでは、「適者生存」「優勝劣敗」という生存競争の原理が支配する。使用者にとって労働者は「監視・強制・制裁」の対象でしかない。それはまさに労働者にたいして、資本への「従順な身体」を強制する監獄といっていいだろう。
そこで使用者は、労働者どうしを競争に駆り立て、「不適合者」をふるい落とし、それを「悪者扱い」にして全人格を否定する。総合労働相談コーナーに寄せられる相談のトップは5年連続で「いじめ・嫌がらせ」となっているが、これは監獄と化した労働現場の状況を正確に反映している。まさにそこでもがき苦しむ労働者のうめき声なのである。
労働者のおかれている状況が激変しているのだ。その影響が社会全体におよんでいる。何か劇的なことが起こり始めている。それは人間の労働や仕事、生活のあり方の大きな転換点となろうとしている。
労働問題の社会化
このように考えると、労働問題を「職場における労働者と使用者の対立」という単純な構図でとらえるだけでは決定的に不十分である。これからの労働運動をこうした枠組みに収めることはできない。いま必要なのは、労働組合が労働問題を社会全体の問題として積極的に取り上げていくことである。ある職場で起こっている問題は、その職場が存在する地域にとって深刻な問題なのだ。労働問題にかかわる場を、労働組合・労働運動の側から広げること―地域のなかに、社会のなかに積極的に持ち込んでいくということである。
「アベ政治許すな!」「新たな社会めざそう!」を掲げる運動が、〈3・11〉以後、鳴動を開始している。日本における新自由主義とグローバリズムに抗する社会運動のなかで、この労働問題をどのように提起していくのか。そのあり方が問われている。
労働運動が自らの持ち場である職場・生産点における攻防を踏まえながら、反グローバリズム運動の現場にどんどん出ていくこと。そして反グローバリズム運動のうねりを労働運動に還流すること。こうした拡大する循環をつくりだすことに活路があるのではないだろうか。
「労働運動の可塑性」
労働運動の展望は「旧来の労働運動の総結集」といった発想だけでは開けない。必要なのは、職種別・産別の運動の模索という重要な取り組みと一体で、数万、数十万規模の反グローバリズム運動へ飛び込み、そこで労働問題をどんどん課題にし、運動の軸に押し上げていくことではないだろうか。その中でかつて「年越し派遣村」を生み出したような新しい発想やさまざまなイメージも出てくる。そういうダイナミズムが労働運動の新しい姿を生み出すのだ。
歴史をふり返ればそれが労働運動の本来の姿であるはずだ。これが「労働運動の可塑性」といわれるものである(これについては森川数馬「問われる労働運動の再構築」(『展望』12号所収を参照されたい)。
ロウソク革命の衝撃
さて、こうした観点から韓国で朴槿恵を打倒し、文在寅大統領を無血革命よって生み出したロウソク市民革命に注目したい。この革命に、のべ2千万人の市民がたちあがった。ピークとなった昨年12月3日の第6次ロウソク行動には、250万人が参加した。1500余の市民団体や労働団体が6カ月間にわたる「朴退陣非常国民行動」を継続した。
これが支配勢力の秩序を崩壊させ、朴槿恵の支持率を4%までたたき落とした。政治権力の後退とともに資本権力も弱体化し、社会勢力の力関係を逆転させた。いま韓国は新自由主義とはちがう「もう一つの社会」の建設に進みつつある。
市民運動のスローガンは「主権在民」(韓国憲法1条)だったという。分裂していた進歩政治勢力や労働運動勢力も、運動の危機の打開を市民運動にかけたという。そして「その土台ができた」と総括している。
韓国の闘いに学ぶ
「ロウソク闘争の過程で、潜伏していた失業問題、青年達のきちんとした働き場所、財閥独占資本の暴力、両極化(非正規・格差)」などが提起され、共感を呼んだ。「最低賃金・労働時間・非正規・元請下請け・中小零細の非正規疎外階層の要求を前面に掲げてたたかう勇気が必要」(※)と元民主労総委員長で平等社会労働教育院代表の段炳浩氏は語っている。
韓国の左翼運動、労働運動のリーダーたちは日本の左翼運動、労働運動を徹底的に学び、教訓化した。しかし、彼らは「今の日本の運動には学べない」という。
日本の労働基準法制定から70年。いま労基法の根本を破壊する攻撃に直面している。このような日本の労働運動の体たらくのなかで、この韓国のたたかいに深く謙虚に学ぶ必要を感じる。
(※)段炳浩「ロウソク抗争の精神で市民革命を完成しよう」(共にする「なかま」第25号)
関西合同労組が第24回大会
労働組合らしい闘い進める
関西合同労働組合の第24回定期大会が7月2日西宮市内で開かれ、50人の組合員・来賓が参加した。
連帯ユニオントラック支部の柳生和美副委員長と、エム・ケイ分会長から、「4年の争議、暴力団による分会長襲撃を跳ね返し、無期限ストライキは現在200日超。11人の団結を維持し、負けない確信をつかんだ」と報告が。辺野古闘争参加の緊迫した現地報告もあり、争議分会の仲間が檄布を贈呈した。
大豊運輸倉庫、細見鉄工、神戸ヤマトの各分会からは、労働委員会命令をかち取った報告があった。琵琶湖ユニオンは、北ビワコホテルのたたかいの訴え。三里塚関西実行委、被災地雇用と生活要求者組合、労働者企業組合から連帯のあいさつ。
全日建連帯労組関生支部、全港湾大阪支部、全国金属機械港合同、港合同南労会支部、釜ヶ崎日雇労働組合、釜ヶ崎地域合同労組、きょうとユニオン、市民デモHYOGO、JAL不当解雇撤回原告団、ユニオン東京合同、部落解放同盟全国連など友誼各団体から心のこもったメッセージが寄せられた。
総括、情勢、方針案を提案。討議、採択した。@「駆け込み寺」型から「組合定着」型へ、A2ケタ分会を2ケタ、Bすべての争議に勝利をという、昨年からの3つの提起へ一歩進んだ。安倍政権は労働法を大きく変えようとしている。他方で民衆が社会を取り戻す新しい運動が韓国で、日本で、沖縄で始まっている。非正規雇用労働者によるストライキ、労契法20条、介護、運輸での職種別のたたかいがつづく。「安倍倒せ」の声の中で、労働組合らしいたたかいをめざそう。
新執行部体制、スト権成立を確認し、「団結ガンバロー」で締めくくった。交流会には30人以上が残り、さまざまな現場からの発言が飛びかった。(岩田)
共謀罪廃止まで闘おう
“ロックアクション”市内デモ
大阪
6日、中之島公園水上ステージで共謀罪を必ず廃止にしようという熱気のこもったロックアクションがおこなわれた(写真)。
「沈黙は国を滅ぼす」
集会では、『新聞うずみ火』の矢野宏さんが元海軍兵瀧本邦慶さんの戦争体験を紹介。瀧本さんは、ミッドウェー海戦で生き残ったあと、最前線のトラック諸島に送られた。それはミッドウェーで空母が4隻も沈められ1000人が死亡したことを秘密にするためだった。そこで国にだまされたと気づいた。「『沈黙は国を亡ぼす。国民を亡ぼす』と訴える瀧本さんの思いを受け止め、戦争のない社会を次世代にわたそう」と訴えた。
廃止までたたかおう
つづいて発言に立った永嶋靖久弁護士は、60年前、破壊活動防止法が強行採決された直後の法学者・末川博の文章を紹介した。それは「廃止させるまでたたかいを続けよう、総選挙で、法律の成立に賛成した者は落とし、この廃止に賛成する者に票を入れよう。この法律の運営について絶えず監視し国民自らが自由と人権を守りぬくため官憲のなすところを監視し、一致団結して自由を守るためにたたかわねばならない」というもの。永嶋さんは、「共謀罪を廃止させる。それまで共謀罪を適用させない。そういうたたかいに取り組んでいきたい」とむすんだ。集会後、参加者たちは市内デモに出た。(池内慶子)
3面
兵庫県丹波市
共謀罪反対の意見書採択
市民の思いが市議会動かす
兵庫県丹波市(兵庫県北部、人口約7万人)で「共謀罪の慎重審議を求める意見書」が6月12日採択された。
平和運動に集まる人たちが、安倍政権による共謀罪審議が強行された5月から、「実質的共謀罪であるテロ等準備罪法案の慎重審議を求める意見書」を市議会での採択を求める、請願のとりくみを進めた。当時、全国的には57の地方議会で反対、または慎重審議を求める意見書が採択されていた(宮崎、三重は県議会)が、兵庫県ではゼロだった。
5月15日に「共謀罪反対」の請願書を提出。このとき市議会は休会中で「このままでは国会審議に間に合わない」と、議会側が日程を早めて総務常任委員会を開くことを決めた。定数20の市議会で同委員会は7人。まず委員会で採択が必要、手分けして保革を問わず理解を求め要請をおこなった。
6月6日に委員会が開催され、請願者代表らが「法案は不備、審議にごまかしもある。施行されれば不安な社会になる」と意見を陳述。議長を除く6人中5人の賛成(維新の1人が反対)で、「憲法が保障する思想、信条、表現の自由に鑑み、十分議論を尽くし『テロ等準備罪法案』の慎重審議を行なうこと」と採択された。傍聴席は平日の午前にもかかわらず満席。子ども連れのお母さんの姿も。請願書を受け取った議長は、10人の新人(1期目)議員に委員会を傍聴するよう「指示」を出したという。
この結果を受け、6月12日に全議員による本会議が開かれ、議長を除く19人中16人の賛成で意見書は採択された。反対の3人は維新、公明2人。請願者と70人をこえる賛同者、市民の願いが伝わり、市議会も重要案件として迅速な議会運営をおこない、意見書を国会に届けることができた。 請願代表者の藤尾周作さんは「法案は強行され施行されたが、基本的人権を保障する憲法、一般法より憲法上位という原理は変えられていない。憲法は大きな力を持っている。市議会は誠意をもって民主主義の基本を守った」と話している。
丹波市は全国の地方市と同様に人口減が続き、過疎化が進む。町の将来、町興しをどう考えるかは住民による民主主義ともつながる。9月には、市いちばんの大ホールで「木村草太さん講演会」も企画され、地域、住民に根ざした運動が始まっている。
(取材/文責 本紙編集委員会)
緊急事態条項は必要か
“賛成”“反対”で真っ向討論
7月8日、兵庫県弁護士会主催の憲法市民集会が開かれた(写真)。「憲法改正で白熱討論!『緊急事態条項』」に反対派から日本弁護士会の永井幸寿・弁護士、賛成派から奥村文男・大阪国際大学名誉教授(日本会議推薦)の討論である。多くの論点があったが、とくに感じたところを報告する。
永井弁護士は「緊急事態とされる事態には、すでに対処対応する法整備がおこなわれており(それへの賛否もあるが)、あえて憲法に明文化する必要はない。憲法に明文化することは権力集中、人権保障の制限と濫用の懸念が強まるだけ」と。奥村さんは、憲法―基本法―法の「三段論法」で緊急事態により的確な対応が可能となるという。
永井さんが「これまでの大規模災害などの緊急事態で、憲法に明文化されていないことで不都合があったことはない。あれば明示してほしい」と述べた。奥村さんは、これに答えることができず(そんな事例は存在しない)、「予測を超えた自然災害の多発」や、安倍政権が多用する「我が国を取りまく安全保障の厳しさ」云々を持ち出してきた。国がいかなる安全保障政策をとるかは政策上の問題であって、憲法で云々することではあるまい。行政権力の都合にあわせて憲法を裁量するなどとんでもないことだ。奥村さんは憲法学が専門らしいが、安倍自民党と同じく立憲主義さえ本当に理解しているのか疑わしい。会場の空気を読んでか、「安全保障環境の厳しさ」については、それ以上述べなかったが、本当に話したかったのはこの点ではないかと感じた。
この企画は、「緊急事態条項」に限定しての討論会であったが、改憲案の取りまとめを明言する安倍政権にたいし、全面的、論理的・運動的にも圧倒するたたかいが求められる。(津島)
市民が日本会議の実態暴く
オール東大阪で取り組み
6月30日
6月30日、日本会議と対峙する集会「守ろう憲法! 誰をも戦場に送らないために! 東大阪で日本会議を考えよう」が東大阪市内でひらかれた。主催は、オール東大阪市民大集会実行委員会。会場には参加者が次々と集まり満席。
講演する俵義文さん(6月30日) |
報告に驚きの声
司会を実行委員会の丁章さんがおこない、代表の胡桃沢伸さんが主催者あいさつ。
東京からかけつけた俵義文さん(『日本会議の全貌』著者)が講演した。俵さんが、日本会議の広告塔に神津カンナや舞の海がなっていることを紹介すると会場からは「えーっ」というどよめきが起こった。こんな人たちまでがという驚きの声である。
上杉總さん(『日本会議とは何か』著者)は東大阪にひきつけて報告した。とくに日本会議の最大支部が東大阪の中河内支部であること、その所在地が有名な枚岡神社におかれていること、同神社の宮司が支部長であることを明らかにすると驚きの声があがった。「東大阪の日本会議の実態が思っていた以上でびっくりした」という声もあった。日本会議に関する2人の講師の話に多くの人がメモをとった。
日本会議に打撃
この集会を成功させた取り組みが日本会議に与えた打撃は小さくない。とくに俵さんと上杉さんの2人が壇上に並び、日本会議について報告したことは大きな意義がある。
この集会の準備は昨年10月から始まった。各駅頭でのビラまき、ポスティング、大学前でのビラまき、周囲へのさまざまな働きかけをおこなってきた。まいたビラは総計4万5千枚。その手ごたえは大きい。「郵便受けにチラシが入っていたから来た」、「ビラを見て来た」という人が少なからずいた。
ちょうど安倍首相の改憲発言、森友問題、加計学園問題で情勢が揺れ動き連日ニュースで取り上げられているころで関心が高かったのか、駅頭でのビラまきはかつてないほどの人たちが受け取っていった。大学前では「憲法改悪を狙う最大の右派勢力、日本会議と対峙する集会です」と言いながらビラを出すとしっかり受け取っていく学生が多くいた。
日本会議は草の根的な右派運動ともいわれている。私たちの知らないうちに最大の支部となっていた東大阪の日本会議勢力。日本会議中河内支部に名を連ねる東大阪商工会議所の正副会頭や青年会議所(JC)だけでなく、こういった草の根的右派運動と対峙する左からの地域にねざした運動が始まった。
新たな地平を開く
今回の集会は立場の違いを超えて準備された。予想を超える参加があったことについて、いわゆる野党共闘は選挙のためのものではないこと、こんなこともできるんだ、自分たちの従来の運動や集会とは違うことができることへの新鮮な驚きも感想として表明された。
自分たちの知らない人たちが大勢きていたという感想もあった。これはなんとかしたいと本気で思っている人たちが大勢いたこと、それらの人たちが自主的に自分の周囲に、駅頭などで働きかけた結果である。いわゆるかつての政党などによる組織動員とは違う、自主的に動く生きた地域運動が生まれたのである。
国策に対抗する地域の生きた運動がどういうものなのかを小さいながらも東大阪から発信できたということではないだろうか。
東大阪では息つぐまもなく次の8・10平和祈念集会が企画されている。昨年に続く2回目である。今回もと思っている人たちが自主的に参加しておこなうものである。
東大阪市役所前には平和の女神像があり、そこには広島と長崎の平和公園から分けてもらった平和の灯が燃え続けている。「その東大阪で育ったさまざまな市民運動が一同に協力し、人々の生活を守り、豊かにするために大切な平和を祈念」する集会だ。
すでに東大阪市の後援も決定した。6・30集会で始まった地域運動を大きくしていこう。(布施三郎)
共謀罪廃止安倍やめろ
7月11日 大阪 神戸
【大阪】共謀罪法が施行された11日、大阪駅前(梅田)の繁華街HEP5前では、夕方から〈共謀罪あかんやろ!オール大阪〉と〈みんなで選挙☆ミナセン大阪〉がよびかけ、合同街宣「市民と野党で共に闘う☆共謀罪を廃止へ!」がおこなわれ、仕事帰りの多くの市民が集まった。市民団体、6野党が次々と発言にたち、共謀罪法廃止までたたかうことを訴えた。その後、同所で若者らによる抗議行動「共謀祭」がおこなわれ、アピール、ライブ演奏などがくりひろげられた(写真)。
【神戸】繁華街の三宮で午後から抗議のスタンディング、その後3時から「安倍やめろ」の大横断幕を立てて、共謀罪法廃止を求める抗議行動がおこなわれた。若者がスピーチに立ち、「日本は一見暮らしやすいようで、実は格差、貧困などがあり、そうではない。息苦しい社会なんだ。共謀罪が実施されれば監視社会、声を上げられなくなる。そんなんじゃダメでしょ」と訴えた。「安倍は、やめた方がいいね」と声をかけて行く人も。女性2人で連日回っているカラフルな軽の宣伝カー、「凶暴罪は廃止!」号も合流した。
4面
生活保護引き下げ違憲訴訟
貧困が社会的交流を阻害
6月16日 大阪地裁
6月16日、生活保護基準引き下げ違憲訴訟第9回口頭弁論が大阪地裁大法廷でおこなわれた。今回も傍聴は抽選となり傍聴席は満杯になった。
裁判の前に淀屋橋で街頭宣伝を行う原告の人たち |
原告の意見陳述
今回の原告意見陳述は最高齢82歳の女性Aさん。彼女は資産家の家に生まれたが、夫が手形の不渡りを出し、数千万円の負債を抱えた。連日おしかける取り立て人に気丈に対応したが、結局、無一文になり、生活保護を利用するようになった。
Aさんは保護基準引き下げ後、食事も切り詰め、夏はシャワー。秋冬は湯船にお湯をはっても残り水はトイレに流す。エアコンは夏も冬もまったく使わない。冬は電気毛布で暖をとっているが、すきま風がひどく体にこたえるという。
Aさんは「節約に節約を重ねてギリギリの生活をしている」のに、「その保護費でも高いとして引き下げることは本当に正しいことなのでしょうか」と国を弾劾した。その陳述に裁判官は聞き入っていた。
原告アンケート分析
牧野弁護士が陳述し、原告604人のアンケートの分析結果を報告した。一番ショッキングだったのは「近隣・親族」との付き合いの激減である。孫らが来たときに何かを買ってあげるかという問いに、2010年の「一般世帯」では75・9%ができているが、同年の生活保護世帯では31%にすぎなかった。引き下げ後の2015年では生活保護世帯の10・6%に激減した。
引き下げによって社会的交流が大きく阻害されている実態が浮かび上がった。
次に「新鮮な食材で調理しているか」という質問では2010年の「一般世帯」では85・5%がおこなっているが、同年の生活保護世帯では71・7%だった。しかし、引き下げ後の2015年になると生活保護世帯は41・4%に下がっている。引き下げ以前では「新鮮な食材」でかろうじて調理できていたのにそれもできなくされているのだ。
客観的モノサシ
「食えればいいってわけじゃない」。これは若手研究者の志賀信夫さん(大谷大学文学部社会学科助教)の見解だ。
「貧困」の客観的モノサシにはさまざまな見解がある。しかし、志賀さんは貧困について「社会が変われば貧困の内容はさまざまに変わる。しかし、特定の1つの社会の中では『その社会であってはならないもの』ということで決まってくる」という。
「劣悪な状態でも最低限動物的に生きていければいいじゃないか、ぜいたくいうな」という国の本音を志賀さんは真っ向から弾劾する。
生活保護法の改悪も
休眠していた厚労省の保護基準部会が次の引き下げに向けて昨年5月から動き始めている。年末には生活保護法の改悪案が上程されるといわれている。最低賃金引き上げと保護基準引き下げを阻止するたたかいは一体のものである。
次回口頭弁論は9月7日(木)午後3時から大阪地裁大法廷でおこなわれる。多くの人たちの傍聴を訴えたい。(矢田 肇)
エム・ケイ運輸分会との交流集会
“団結の力で負ける気しない”
7月8日 奈良
昨年12月1日からたたかわれているエム・ケイ運輸分会(全日本建設運輸連帯労働組合近畿地区トラック支部)のストライキは、すでに220日をこえた。
8日、奈良市内でエム・ケイ運輸分会との交流集会がひらかれた。主催は〈市民ひろば なら小草〉。
エム・ケイ運輸は奈良県大和郡山市池沢町に所在し、社員は50人弱。大手物流会社の小会社として長距離輸送をおこなっている。労働条件は劣悪で、賃金は歩合制。労働条件を少しでもよくするために、2013年に労働組合を結成。喜多社長はワンマン経営者で組合を嫌悪する暴言が続いていた。
ストで反撃開始
15年6月、会社は暴力団を使って、分会長に「組合をやめろ」と脅迫。ただちに第1弾ストを決行。分会の反撃が始まった。
会社の責任者は団体交渉の場には出てこず、小谷依弘という自称経営コンサルタントの悪徳労務屋に対応させた。そのため話し合いはまったく進展しなかった。
16年10月、不誠実団交を続ける会社にたいして、4日間の第2弾ストライキを決行。これにたいして、喜多社長は組合員に仕事を与えず兵糧攻めに出た。分会長は「きつかったが、家族の団結で乗り越えた」と述べる。
分会長を襲撃
16年11月、分会長にたいする傷害事件が起きた。11月30日の早朝4時、分会長が仕事から帰社したとき、何者かに襲撃されたのだ。分会長はろっ骨3本骨折・全身打撲、全治2カ月の重傷。「仕事から帰る時間は外部の人間にはわからない。トラックのGPSを見ることができるのは一部の経営者と配車係だけだ」という。
この事件をきっかけに、12月1日、エム・ケイ運輸分会は、すべての問題が解決し、会社が正常化するまで無期限ストライキ(第3弾)にはいった。会社の労働条件は依然として改善されておらず、現在もストライキは続けられている。
家族、組合の団結で
ここまでたたかいを継続できるのは、団結の力だ。組合員のひとりは「家族がたたかいを理解して、支えてくれているからだ」と言う。分会長は「負けたら、こういう会社が全国に波及してしまう。労働組合としての存在意義がかかっているたたかいだ」「全国の労働組合が支援してくれるから、ストライキが継続できている。家族も一体でたたかっている。負ける気がしない」と述べる。
エム・ケイ運輸分会のストを支援し、ともにたたかおう。(津田)
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都心に一般勤労者住宅
ピョンヤン訪問記 4月29日〜5月4日 その2
兵庫 SK生
嘘だらけの日本の報道
米韓31万人戦争演習がおこなわれ、原子力空母と戦略爆撃機が朝鮮半島に向かっていた。アメリカ軍が本気出したら朝鮮など一たまりもないと言われていた。中国は石油もピョンヤン行きの飛行機も止めたからガソリンがなくて、車も走ってないに違いない。ピョンヤン市民はさぞ怯えているだろう。そんな危ないところへよく行くな、と何人もの人から言われた。
ところが街には以前よりたくさんの車が走り、ガソリンスタンドは全て開店。通常運行の高麗航空に加えて、中国便も連休中には運航再開した。日本では高層住宅が張りぼてだなどと言っていたが、総数5千世帯近い「黎明通り」なる勤労者巨大住宅街は最高70階。実際に歩いて見学したが張りぼてなどどこにもないし、高さ100メートルの張りぼてを建てる技術のほうが難しい。
レストランでの料理の数々 |
勤労者の生活優先
都心のど真ん中に一般勤労者住宅があるのは日本でも欧米でも考えられない。中国でも大金もちでないと買えない。朝鮮ではピョンヤン駅前にそれがある。家賃はタダ。光熱費が少しだけ徴収される。
医療も教育も無料だから可処分所得が多いので、数千円の給料でも貯金ができるらしい。朝鮮は、遅れて貧しいイメージが植えつけられているが、そういう日本の報道は米韓のCIA経由のデマと見てさしつかえない。さらにピョンヤンをモデルに地方都市にも広げようとするのが現在の朝鮮だ。
さて料理は、日本の安い居酒屋で出てくるものと大違いのごちそうと、名物のおいしい生ビール、冷麺、果ては、うな重まで出てきた。初めて訪朝した日本人3人は揃って「おいしい!」を連発。特別にごちそうを出してるのだろうと意地悪な突っ込みがあるかもしれないが、レストランはどこにも現地一般市民が家族・カップル・職場単位で来ていて同じように飲食している。
日本の偏見報道で言われる「喜び組のサービス」などは一切ない。しかし浴場にアカスリ、マッサージがあったりするが日本での何分の1かの値段だ。
サーカスはヨーロッパでおこなわれるコンクールで世界グランプリに輝くぐらいグレードが高いものだ。芸術とスポーツに大きな精力を注いでいる。1人1楽器・スポーツを子どもの時から推奨しており、レストランの従業員さんが普通に楽器演奏がうまかったりする。
日本は公務員が窃盗
かくしてあっと言う間の1週間が過ぎて、帰国となった。帰りも北京まで飛び、4時間以上乗り継ぎを待って、日本へ帰るのだが、朝鮮・中国ともあっさり通過で荷物検査で引っかかる人はいない。
ところが関西空港へ帰り着くや、税関カウンターで「テロ対策してますので、ちょっとお荷物を」と言われる。しかしそんな事を言われている人は他にはいない。訪朝者対象の嫌がらせなのだ。我々全員が開けさせられ、1人の参加者は世界的朝鮮人参産地・開城で買い求めた金1万数千円の人参粉末を「所有権放棄」させられた。朝鮮製の製品は禁制品という時代錯誤。しかし放棄しないと預かり処分となり、月に数万円の預かり手数料が発生すると脅される。世界のどこに、正当に買い物した普通の品物を没収される空港があるというのか。しかし、これが日本政府によるチンケな経済制裁の1つなのだ。
5面
核燃サイクルは撤退のとき
日仏政府が、いまだに推進
6月25日「核燃サイクル撤退のとき 議員と市民の学習討論会in関西」という集会が、脱原発政策実現全国ネットワーク・関西ブロック主催、原子力発電に反対する福井県民会議共催、〈大阪平和人権センター〉・〈しないさせない! 戦争協力! 関西ネットワーク〉協賛でおこなわれた。
この集会は先に東京でおこなわれ、関西が2回目だ。「もんじゅ」の廃炉を決定しながら、新高速炉計画により核燃サイクル政策を続けるという国との直接討論を企図したものである。ところが、東京では出席した省庁が今回は出席せず、近畿経済産業局・資源エネルギー環境部長永山純弘さん1人の出席となった。そのため討論時間を縮小し学習に当てるという形式に変更を余儀なくされた。
省庁との十分な討論はできなかったが、宿題として持ち帰り担当部署に伝えて回答するという約束は得られた。
アストリッド計画
まず、『未来無き原子力産業、しがみつく日仏ロビー』が上映された。フランスに調査団を派遣し、原子力物理学者であるベルナール・ラポンシュさん、ラ・アーグ再処理工場反対運動の中心人物であるディディェ・アンジェさんら6人を訪ね、仏原子力の危機的状況を浮き彫りにしたインタビュー記録だ。
インタビューで、仏国民議会下院議員でヨーロッパ緑の党のノエル・マメールさんは次のように語った。
「エロー首相の所信表明演説の際(2012年)、私は政権側にいて、アストリッド計画を撤回するよう迫った。この計画は緑の党との合意のもと撤回・中止されるはずだったからだ。しかし約束は守られず、計画が進められている」
「日本政府はフランスにたいしてもっと慎重になるべき。例えばアレバは問題だらけの企業で、福島事故後に介入してきたが失策ばかり。日仏両政府は常軌を逸した形でアストリッド計画に介入している。やめろと言いたい」
討論と講演
次に近畿経済産業局資源エネルギー環境部長・永山純弘さんと中嶌哲演さん、服部良一さんらが用意した質問内容にそって討論した。
質問内容は@核燃サイクル政策について、A新高速計画について、Bもんじゅ廃炉の諸問題、C余剰プルトニウム問題、D再処理の諸問題についてである。
このなかで日本が共同開発するといわれているアストリッド高速実証炉は、耐震性に問題があるタンク型の容器であるのに、なぜ開発するのかが質問された。このような問題のある実証炉の開発に約50億ユーロ(約5700億円)かかるとフランスは試算し、その半額の負担を日本に求めているのだ。
討論終了後、中嶌哲演さん(福井県民会議)、宮崎寛さん(ストップ・ザ・もんじゅ)、服部良一さん(元衆議院議員)、山田清彦さん(核燃阻止1万人訴訟原告団)がそれぞれ講演をおこなった。
最後に、「一刻も早く核燃サイクル政策から撤退してください」という内閣総理大臣、文部科学大臣、経済産業大臣あての要請文を拍手で採択した。(香山佳子)
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67年10・8羽田闘争から50年
戦争反対の意思を継承
山ア博昭プロジェクト
発言しているのは発起人で歌人の道浦母都子さん |
8日、大阪で開かれた10・8山ア博昭プロジェクト主催の集会に参加した。まずこのプロジェクトについて紹介しておきたい。
1967年10月8日、当時の佐藤首相がベトナム戦争に加担するために南ベトナムに向かうことに抗議し、多くの学生や労働者、市民が羽田周辺で機動隊と激しく衝突した。その中で京都大学1回生山ア博昭さんの命が奪われた。
2014年3月8日、羽田・弁天橋に、山ア博昭さんの兄建夫さんや、作家の三田誠広さん、詩人の佐々木幹郎さん、元衆議院議員の辻恵さん、弁護士の北本修二さんなど大手前高校や京都大学の同期生、同窓生たちが集まり、橋に向かって献花。ここに、山アさんの名を刻んだ記念碑を作りたいと、「10・8山ア博昭プロジェクト」が結成されることになった。
ベトナムで企画展
集会ではまずプロジェクトの事業の進行状況が報告された。
6月17日、東京都大田区の福泉寺でついに完成したモニュメントの建碑式をおこなった。お寺の住職は、当時、逃げてきた学生たちを匿ったこともあり、山ア博昭さんの名前を知っていた。今年10月8日に一般公開する。
第1巻が10月1日発行予定の記念誌は羽田闘争の記録(新聞・雑誌などのデータ及び写真など)と、山ア博昭さんの死因の追及経過報告、闘争参加者へのインタビュー、50年をふり返る手記などで構成される。3月に締め切ったが60人ほどから原稿が寄せられた。
2巻に分けて発刊する。第1巻は文集編で予価4千円。第2巻は記録編で来年6月1日発行予定。
ベトナム展企画については、当初、10・8羽田闘争と山ア博昭に係る資料類の展示と考えていたが、ホーチミン市「戦争証跡博物館」の館長からの強い要望があり、企画を拡充した。同館長は、60年代・ 70年代のベトナム戦争当時、日本の若者たちが果敢にたたかった反戦闘争の現実を、現在のベトナムの若者たち に知らせて欲しいと希望している。「戦争証跡博物館」は毎年70万人以上の参観者が訪れる。うち半数以上が海外から。最も多いのがアメリカ人だ。
展示会企画は、17年8月20日から2カ月間、当プロジェクトと戦争証跡博物館との共催で、「ベトナム反戦闘争とその時代」と題し展示会を開催することとなった。オープニング・セレモニーの参加日に合わせて、戦争と平和を考えるツアーを実施する。
若手研究者が報告
「50年を経て今、世代を超えて語り合おう!」と題されたこの日の集会は、司会を含めて5人の20代、30代の若手研究者で、次のようなテーマで問題提起した。
@米軍ジェット燃料輸送列車(米タン)阻止闘争の記録から10・8後の運動の質的・量的広がりを見る。A東大闘争参加者の聞き取りから70年闘争の思想的背景を考える。B三里塚闘争支援から生まれた80年代関西の女性労働運動の経験から学ぶ。C韓国民主化運動における「烈士」を考える。
運動の転換点としての10・8の歴史的意義をとらえ返し、現代史を72年の連合赤軍事件で終わりとしない現代史の語りをめざして、とまとめられた。
「山ア君がそうであったように、70年闘争は一人でも世の中をよくするために行動する思いの集まりだった。この思いを今からのたたかいに生かしていくことが必要だ」というまとめに拍手がわいた。60年闘争、70年闘争世代の参加者は、若い研究者の報告に戦争反対の意思が継承されるているのを確認したのではないだろうか。
今年の10月8日には羽田弁天橋での献花と黙祷、モニュメント一般公開、「山ア博昭追悼50周年記念集会」が予定されている。(原田 匡)
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ヨドバシカメラ前の水曜集会
吉元玉ハルモニが参加
7月5日 大阪
7月5日の第131回目のヨドバシカメラ前での水曜集会は、韓国から平和ナビの学生たち、尹美香さん、吉元玉ハルモニら19人が参加しました。全体で120人も集まり、かってない参加者で水曜集会は盛り上がりました。
冒頭、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークからアピール。吉元玉ハルモニが最初に大阪で証言集会をした時のことを思いだし、ハルモニたちの思いを実現出来てないこと、日本政府が未だに被害者の尊厳を踏みにじり続けていることに怒りを表明しました。
続いて、平和ナビ(※編集部注)のアピール。平和ナビの学生たちは昨年も参加し、日本の運動との交流を実現してきました。今回は、7月3日に関空に到着してから、コリアタウン、釜ヶ崎、朝鮮学校、立命館大学、同志社大学と交流し、この日の水曜集会に参加しました。
日韓の強固な連帯を
学生代表は、「私たちは日本の多くの活動家たちと連帯するためやってきた。ハルモニは『子ども達に同じ痛みを味あわせたくない』と言ったが、私たちはその声を受けて立ち上がった。日本の皆さんからさまざまなことを学び連帯し、韓国に帰って多くの人たちに伝えたい」とアピールし、素敵なダンスを披露してくれました。
吉元玉ハルモニは、皆さんにたいして訴えたいのでなく、日本政府に言いたい。間違いを認めて謝罪すること。嘘は長く続きません。日本政府は謝るべきと訴えました。
そして、尹美香さんは「26年間街頭で過ごし、26年目をここで過ごし、26年目の冬を過ぎても街頭にいる。何年経っても諦められない。痛みを記憶しなければならない。戦争を起こしてはならない。2度と被害者を生み出してはならない。ハルモニ達に続いて、私たちが世界の平和を作っていこう」と力強くアピールしました。
次に、日本の若者から、日本はこれからどうなるのか不安だが、韓国を見習って、楽しく周囲を巻き込みながら、運動をしていきたいと締めくくりました。最後は皆で元気よくシュプレヒコール。韓国の若者たちと日本の運動が大きく繋がり、力をもらいました。
(※編集部注)平和ナビとは、梨花女子大や高麗大など20あまりの大学に200人ほどが集う、日本軍「慰安婦」問題の解決のために集まった学生サークル。(村田和子)
6面
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宝塚市で静かに進んでいること
協働のまちづくりへ
葉室 健二
(4月宝塚市長選勝利の中軸を担った葉室健二さんからの投稿です。小見出しは編集委員会)
国政では、自民党の安倍政権が森友学園や加計学園問題にみられる公権力の私物化や相次ぐ劣化議員のトンデモ言動なども相まって内閣支持率の急落を見ている。内閣改造などで目先を変えることにより、延命を図ろうとしているが、国民の不信感は根強く、いま、国政選挙が実施されれば、自民党が大きく議席を減らすことは必至の情勢といえる。
一方、地方に目を転じると、未来への希望を抱かせてくれる首長のもと、健全な地方自治への歩みが地道に取り組まれている所も確かにあるのだ。元社民党の国会議員であった中川智子さんが市長をつとめる兵庫県宝塚市が、その1つである。ことし4月16日投開票の宝塚市長選挙で、みごと3期目の当選を果たした。
告示日、野党国会議員や秋葉忠利前広島市長らの応援をうけ、1000人の市民を前に決意を語る中川智子市長(4月9日) |
誕生のいきさつ
その中川市長が、そもそも宝塚市に誕生することになったいきさつ、1期目、2期目の市長選を振り返り、市民協働の意義や今後の課題について触れてみたい。
2009年2月、「兵庫県宝塚市で、市長が2代続けて汚職事件で逮捕」というニュースが全国に流れた。このニュースで一番恥ずかしい思いをしたのは、他ならぬ宝塚市民であった。
2006年に宝塚市では、前々市長がパチンコ店出店の便宜を図る見返りに、約800万円相当の高級乗用車を受け取ったとして収賄容疑で逮捕され、市長を辞職した。「二度とこんな不祥事はご免だ」として、当時の宝塚市議会の中で、一部の社民党市議、共産党市議、市民派市議と市民運動にかかわっている人たちが協議、清新なイメージの女性市長候補を擁立しようとした動きがあった。このとき白羽の矢がたった女性候補は、立候補直前になって「民主党の応援が得られない」ことを理由にドタキャン。結果として、2代目の汚職市長が市政を担うことになった。この市長選の過程で「清新なイメージの女性候補を」と求めたグループの存在が、2代目汚職市長の逮捕後、「宝塚にクリーンな女性市長を!」をキャッチコピーに、中川智子さんを市長候補に擁立することに継がっていったのだ。
2009年4月投開票の中川市長1期目の市長選は、当時、勢いのあった民主党の県会議員から転出した男性候補とのたたかい、2013年4月投開票の2期目は、もっと勢いのあった橋下大阪維新の若手候補とのたたかいだった。
1期目は、民主党候補優勢というおおかたのマスコミの予想をくつがえして中川さんが辛勝。2期目は「維新には絶対負けられない」との危機感から、政権与党である自公の支持者をも巻き込む形で維新包囲網が形成、ダブルスコアでの勝利だった。
ことし4月16日投開票の3期目は、保守系無所属の現職市議(1期目の民主党候補)と、自民党の現職女性市議が中川さんの対抗馬。中川さんは、当日有権者数19万0047人、39・13%の投票率(前回45・94%)の中で4万2222票を得、次点候補に倍以上の差をつけて当選した。
支えあいのまち
3期目市長選の勝因は、何よりも2期8年間の豊富な市政の実績が正当に評価されたことである。「いのちと暮らしを大切に」「支えあいのまちづくり」を基本に、市立病院の再生、健康・福祉や子ども・子育て施策に積極的に取り組んだこと。財政も実質単年度収支6年連続黒字を達成、借金を89億円減らしたこと。再生可能エネルギーの推進や文化・スポーツの振興、反戦・平和の訴えなど各方面での実績が信任を得たといえる。
勝因の第2は、前回の市長選の際、形成した共同戦線の陣型を踏襲し、今回も広汎な共同を実現できたことだ。大規模な寄り合い所帯の勝利といえる。党派を超えるにとどまらず、保守系を含め各界各層の多様な取り組みの推進の結果、無党派層にまで支持が広がった。神戸新聞の出口調査の結果をみても、10代、30代の投票者の60%以上が中川さんに投票。若者から子育て世代、高齢者まで多くの有権者の支持を得た。
こんごの課題は、この4年間を中川市政の集大成にするとともに、50年、100年と中川路線が継承され続ける上での基礎づくりに力を入れることであろう。
また、平和・民主・人権という日本国憲法の理念を宝塚の地に活かし、定着させていくことでもある。
さらに、市民・行政・事業者という垣根にとらわれない、みんなでおこなう協働のまちづくりのお手本になることが求められる。
閉そく状況にあるといわれる日本社会。労働が疎外された資本主義の社会状況の中でも、本来の共同(協働)性のあり方が、隠れた形で働いている。次なる社会への産みの苦しみのただ中にあるこの世の中。こうした状況の下で人間的に価値あるものを、人間らしく生きることのできる共同(協働)性をしっかり見出していく探求が、兵庫県の1地方都市宝塚で、静かに、着実に進んでいる。
関西・沖縄戦を考える会 講演会
沖縄差別の根源は天皇制
6月16日大阪市内で、関西・沖縄戦を考える会の第6回総会と記念講演が開催された。
総会は世話人の垣沼陽輔さんの司会ではじまり、代表世話人の小牧薫さんが代表あいさつをした。小牧さんは冒頭、12日に死去した元沖縄県知事の大田昌秀さんに哀悼の意を表した。次いで「共謀罪」法案の強行採決を弾劾し、廃止に向けてさらにたたかっていこうと訴えた。続いて、松浦茂事務局長が経過報告と今後の活動方針を提起し、会計報告と会計監査報告がおこなわれ、新役員体制を含めて全体が拍手で承認・確認された。
総会後の記念講演の演題は“沖縄差別と闘う” 講師は『沖縄少数派―その思想的遺言』『沖縄差別と闘う―悠久の自立を求めて』『聞け! 沖縄の声』などの著書がある元裁判官で、うるま市具志川9条の会代表、およびうるま市島ぐるみ会議共同代表を務めている仲宗根勇さん。
講演の冒頭、ビデオが上映された。ビデオは琉球民謡をバックにしたサイレント映像で、新基地建設阻止をめぐる辺野古の現在の攻防をリアルに映し出していた。機動隊や海上保安庁の卑劣極まりない非人道的な弾圧と暴力、それにも屈せず歯をくいしばって粘り強くたたかう人びと―見るものの心を鋭くかつ激しく揺さぶる内容だった。
講演は、大阪府警の機動隊による『土人』発言や、それにたいする松井大阪府知事の激励を皮肉たっぷりに批判することから始まった。ついで、琉球の歴史を古代史から説きおこし、15世紀半ばに統一国家を形成した琉球が、1609年の薩摩の侵攻による琉球の差別支配と、日中両属形態下における過酷な収奪を語った。そして明治政府による1879年の琉球併合以後、沖縄戦を経て現在に至るまで沖縄差別に虐げられてきたことを明らかにした。
さらに天皇メッセージによる沖縄切り捨て、米軍支配、「復帰」後の今日に至るまで日本による沖縄差別が貫かれており、辺野古新基地建設の強行・凶暴性は沖縄差別の現在における最大の象徴なのだということを強調した。
仲宗根さんは、「沖縄差別の根源が天皇制を頂点とした日本だ」と鋭く指摘し、今後も辺野古新基地建設を国家権力を使って暴力的に強行するなら、独立運動や、「コザ暴動」のような事態も含めて、何が起こっても不思議ではないと、日本政府を弾劾した。
ゆっくりとした仲宗根さんの口調の中に、沖縄差別にたいする激しい怒りが感じられる講演内容だった。(武島徹雄)
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