基地なくせ 韓国、沖縄と共に
京丹後市 米軍レーダー基地撤去訴え
6月24日京都
エイサー隊を先頭に元気よく市内デモにくりだす集会参加者 |
6月24日、京都市の円山野外音楽堂で「基地の無い平和な沖縄・日本・東アジアを!6・24京都集会」が開かれ、600人が参加した。主催は京都沖縄連帯集会実行委員会。
集会のメイン企画は、沖縄選出の衆院議員・仲里利信さんの講演(左に要旨)。仲里さんは1937年生まれ。93年から08年まで県議会議員で、県議会議長も務めた。14年12月の衆院選挙で、オール沖縄の候補者として沖縄4区から立候補。かつて仲里さんが後援会長をしていた自民党の西銘恒三郎を破って当選をかちとった。
仲里さんは講演で、1609年の薩摩の琉球侵入から説き起こし、1879年の「琉球処分」、沖縄戦、そして現在にいたる苦難の歴史を訴えた。ユーモアを交えながらも、戦争を憎み平和を希求するそのひたむきな姿勢は参加者に感銘を与えた。
続いて、米軍基地建設を憂う宇川有志の会の永井友昭さんが発言。
「沖縄の負担軽減ということで京丹後市・経ヶ岬に米軍のXバンドレーダー基地がつくられた。北朝鮮のミサイル発射にかんする情報を米軍はつかんでいるはずだ。自衛隊の情報は100%米軍に取られているが、車力(青森県)でも経ヶ岬でもXバンドレーダーの情報は自衛隊にもたらされていない。こんなものはまったく不必要であり、百害あって一利なしだ。政府は高度警戒態勢といいながら、基地のある自治体や周辺住民にはなんの対策も取っていない」と住民の安全や安心を軽視する政府や自衛隊の姿勢を批判。米軍基地撤去への支援を訴えた。
集会の最後は、沖縄唄三線の大城敏信さんと〈がじまるの会〉のエイサー。「沖縄、韓国と連帯し、東アジアの平和を実現しよう」という集会宣言を採択した後、京都市役所までデモ行進。沿道の市民の大きな注目を集めた。
“沖縄の心を伝えたい”
衆院議員 仲里利信さんの講演要旨
今日は沖縄の心を少しでもわかっていただいたらと思います。私は80歳になりますが、戦争を体験したものとして、「君は足腰の立つ間は沖縄の悲惨な戦争を伝えなさい」ということではないかと思いながら、全国各地をまわっています。
自民党から除名
私は2014年1月の名護市長選のとき、なんとしても新基地反対の市長を当選させなければと思いました。そこで自分の車に大型スピーカーを積み、私が住んでいる南風原町から名護市まで70キロの道のりを毎日通い、名護市内で辻立ちをして稲嶺市長への支持を訴えました。私は稲嶺市長には会ったことがなかったのですが、自分勝手に応援しました。「辺野古の陸にも海にも基地を作らせない」というだけで十分だったのです。
すると自民党は私を除名処分にしました。公約違反をしている人たちが、まじめにやっている私を除名するのはおかしい。自由民主党というのは昔から地域を大事にする政党だと思っています。だからどこに行っても「私は自由民主党だ」といっていますが、自民党系から「講演してくれ」という話しは、いまだ一回もありません。
オール沖縄の原点
07年9月、教科書検定意見撤回を求める県民大会がありました。高校教科書に「沖縄の集団自決は軍の命令によって発生した」という記述があったのが、安倍政権になって「軍命」という文言が削除された。これに怒った沖縄の41市町村が全会一致で検定意見の撤回決議をあげ、県議会で県民大会を開くことになりました。県議会では自民党の右派の4名が「大江・岩波裁判の結果を見ないとわからん」と反対しました。私が議長でしたから、これを強引におさえ込んで、「もし君たちが反対ならば、大会には来るな。そのかわり何万人の前で、県議会の誰それは反対して来なかったということを言うぞ。君たちの政治生命はなくなるぞ」と言いましたら、なんと4名とも、ちゃっかりと参加しておりました。
大会では各政党がのぼりを立てていましたが、「あくまでオール沖縄でやるんだから、政党は表に出すな」ということでのぼりを倒させました。
当時安倍政権は、「南京大虐殺はあんな数字じゃなかった」とか、「慰安婦」問題をうやむやにしようとしていました。残ったのは「沖縄の集団自決」。これをないことすれば、「美しい国」、「戦争できる国」ができると、あの時から安倍は踏んでいたと思います。ですから今の日本の状況は、06年ころから安倍がもくろんできたことだと思います。おそらく次は緊急事態法が出てくると思います。
いま沖縄は大変な状況におかれています。ぜひ辺野古のすわり込みに来て、応援して下さい。よろしくお願いします。
沖縄県、工事差し止め訴訟へ
護岸工事に海上パレードで抗議
高江ヘリパッド崩壊
6月16日 辺野古新基地建設は「K9護岸」で砕石投下が繰り返され、海中まで数十メートル護岸が伸びている。キャンプ・シュワブゲートから、これまで最大180台の砕石を積んだダンプなど工事車両が基地に入った。市民は大雨の中、搬入阻止行動。
一方、高江では、ヘリパッド周辺から赤土が流出。沖縄本島北部で14日降り出した大雨の影響で、東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場に建設中の新たなヘリパッドH地区の周辺から赤土が流出した。東村高江沖合の海が赤茶色に濁る。地元住民からは「欠陥工事は許せない」「赤土で海が濁るのは初めてだ。自然破壊だ」「ヘリパッドは全部撤去だ」と怒りの声が上がった。
大雨の中 抗議行動
17日 ゲート前で抗議行動の市民が、大雨のなか1時間にわたって機動隊の車両の間に閉じ込められた。市民は雨に打たれ、体が冷えて、お互い身を寄せあった。大雨のなか、行動の自由を奪う機動隊に市民の怒りが爆発した。
20日 オール沖縄会議は、翁長知事が辺野古新基地建設工事差し止め訴訟の関連議案を県議会6月定例会に提出したことを受け、那覇市の県民広場で緊急支援集会を開いた。市民200人が参加。「翁長知事を支え裁判に勝利しよう」と声を上げた。
24日 辺野古新基地建設護岸工事着工2カ月を迎え、ヘリ基地反対協と県民会議は抗議の海上パレードを大浦湾・瀬嵩の浜で開いた。大浦湾には、抗議船4隻(約30人乗船)カヌー22艇が海上パレード(写真)。瀬嵩の浜には市民150人。キャンプ・シュワブゲート前には150人が座り込み、総計350人が参加。
午前10時、瀬嵩の浜で集会が始まった。瀬嵩の浜からは、「K9護岸」がはるかに見える。海上から、連帯のあいさつが船上よりおこなわれる。それにこたえ陸上では安次富浩ヘリ基地反対協共同代表があいさつ。カヌー隊から代表が力強い決意を表明。「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク会議in Okinawa 2017」に参加している各国の女性が船上からエールを送る。〈基地・軍隊を許さない行動する女たちの会〉共同代表の高里鈴代さんが陸からあいさつ。最後に再び海上パレードがおこなわれた。
一方、シュワブゲート前では、同じ時刻に慰霊祭がおこなわれた。シュワブゲート前での慰霊祭は今年で3度目。150人の市民は、米軍キャンプ・シュワブ周辺にあった大浦崎収容所地区で亡くなった人たちを悼んだ。
26日 「K9護岸」の工事が全長約320メートルのうち100メートルまで作業が進んでいることが確認された。また、新たに「K1護岸」に砕石が投入されたのを確認。
8月12日に県民大会
オール沖縄会議は、辺野古新基地建設の中止を訴える県民大会を8月12日に開催する方針を決定した。那覇市の奥武山公園陸上競技場で午後2時から開催予定で、3万人以上の参加をめざす。
28日 「K1護岸」は辺野古テント村からも確認できる。カヌー隊は作業現場に最接近し抗議の声を上げた。昼過ぎ「K1護岸」付近よりフロートがおろされる。カヌー隊の抗議のボルテージが上がる。テント村からは数人が作業が見える辺野古の浜に駆けつけ抗議の声を上げた。(杉山)
2面
沖縄意見広告報告集会
6月24日大阪
ヒロジさん迎え熱気あふれる
立ち見の参加者も出た報告会と壇上で歌う山城・川口さん |
第8期沖縄意見広告報告関西集会は、6月24日夜に大阪市内に山城博治さんを迎え、会場をあふれる300人以上の人が参加する大盛況となった。
まず初めに、沖縄意見広告運動代表世話人の武建一さん(連帯労組関生支部委員長)が、自らの不当逮捕・長期勾留にふれながら、山城さんの長期獄中闘争をねぎらった。また共謀罪を制定した国家権力の不当性と安倍政権の沖縄にたいする差別的仕打ちを弾劾し、沖縄意見広告運動の意義を語った。
つづいて拍手のなか、山城博治沖縄平和運動センター議長が登壇。5カ月の不当勾留と全国を飛び回る忙しさの中で幾分痩せて見えたが、舞台では熱烈発言。
絶対に屈しない
山城さんは、「逮捕・勾留時の取り調べは、新基地建設反対闘争をやめろという恫喝だけで、罪を認めないなら釈放しないというのは、国家権力の沖縄にたいする仕打ちそのものだ」と弾劾した。そして「5カ月で保釈されたのは、沖縄と全国の人々の声、10万筆近い署名、さらにはアムネスティや海外メディアの力による」と感謝の意を表した。「沖縄現地のたたかいは日々悔しい思いをしながら続いており、絶対に屈することはない。これまで高江・辺野古を軸にたたかってきたが、今後は南西諸島=宮古・八重山への自衛隊配備ともたたかう。翁長知事の新たな工事差し止め訴訟とも一体で、辺野古新基地建設工事を止める。共謀罪も最初に適用されるのは沖縄だろう。先日、国連人権委(ジュネーブ)に行ってきたが、国際的世論は、日本政府の人権抑圧に厳しい視線を向けている」と語った。最後に「このたたかいを潰すため、安倍政権は来年1月の名護市長選に全力を挙げてくるが、絶対勝たなければならない」と結んだ。
後半は川口真由美さんの歌。山城さんもマイクを握り、デュエット。最後は第9期にむけての西山直洋さん(意見広告運動・関西事務所)の訴えと、山元一英全港湾大阪支部顧問のまとめで集会を終了した。
主張
稲田発言 撤回ではすまされない
憲法無視のアベ政治に断を
6月27日、東京都議選の応援演説で稲田朋美防衛相は、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と自民党候補者への投票を求める発言をした。同日深夜、急きょ記者会見をおこなった稲田は、その場で発言を撤回したが、辞任の意思はないことを表明した。この発言を重大視した民進、共産、自由、社民の野党4党は安倍首相による稲田の罷免、首相の任命責任を問うための臨時国会の早期召集、予算委員会の閉会中審査を要求した。これにたいして安倍政権は稲田罷免は明確に拒否。国会の早期召集などについては態度を明らかにしていない。
稲田の発言は、一閣僚の「失言」ですむ話ではない。法律上においても、この発言は公職選挙法が定めた「公務員等の地位利用による選挙運動の禁止」に違反する明確な違法行為である。発言を「撤回」しても、違法行為の事実を消すことはできない。
さらに重大なのは、軍隊の政治介入を防ぐための「シビリアンコントロール」(文民統制)を防衛大臣自らが否定していることだ。稲田の発言は与党を支持するよう自衛隊にたいして政治介入を積極的に促している。とんでもない話しである。
戦前の日本の政党政治は、軍部の介入によって解体され、戦争拡大方針にたいするあらゆる批判は圧殺されていった。こうした歴史にたいする苦痛な反省の上に成り立っているのが戦後憲法である。安倍政権はそれをまったく無視している。
民衆の怒りと闘いで
安倍は6月24日、神戸市内で産経新聞が主催する「正論」懇話会の設立記念特別講演会で、「9条1項、2項を残して自衛隊を書き込む」という持論を述べ、今秋の臨時国会に自民党改憲原案を提出すると発言した。重大な国政問題を国会ではなく、「身内」の会合で発表するという手法は、安倍の国会無視の政治姿勢をよく示している。
同じ講演では安倍は小泉改革を「反対するものはすべて抵抗勢力、一切の妥協を許さず、最後は解散総選挙」「そのおかげで抵抗はなりをひそめた」と絶賛した上で、「この国会では抵抗勢力の亡霊が息を吹き返すのではないかと強い危機感を抱いている」「私は絶対に屈しない」と発言している。
これは、「異論・反論にはいっさい耳を貸さない」、「国会審議は単なる手続きにすぎない」と公言しているのと同じである。
このおごり高ぶった安倍とその政権に巣食う取りまきたちにたいして、たとえ国会を愚弄し、無視することができたとしても、愚弄された民衆の怒りとそのたたかいを無視することはけっしてできないことを思い知らせなければならない。
今こそアベ政治に断を下すときだ。
夏期特別カンパのお願い
安倍一強打倒へ「数の力」示そう
『未来』読者のみなさん。支持者、協力者のみなさん。安倍は6月の国会で共謀罪法を強行採決したのに続いて、今度は秋の臨時国会に自民党改憲原案を提出すると発言しました。すべての人びとに安倍政権打倒の一点に力を集中してたちあがることを呼びかけます。そしてこのたたかいを勝利に導くために夏期特別カンパへのご協力をお願いします。
第2次安倍政権が登場してわずか4年半。その間に戦後憲法体制の空洞化が急速に進行しています。人びとから「知る権利」を奪う特定秘密保護法、憲法で禁止された集団的自衛権の行使を容認する戦争法(安全保障関連法)、共謀罪法。いずれも戦後憲法の3本柱である「主権在民」「基本的人権の尊重」「平和主義」に反する重要法案が、国会でまともな審議もされずに強行採決されました。
日本の戦後政治は、「決して再び戦争に踏みださない」ということを大前提としてきました。歴代の内閣は、曲がりなりにもこの大前提を尊重する姿勢を取ってきました。ところが安倍晋三は、そのような姿勢を微塵も持ち合わせていません。
9条改憲を明言
今年の5月3日、安倍は2020年までに「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という改憲方針を明らかにしました。「戦争の放棄」を実現するために「戦力の不保持」「交戦権の放棄」をうたった憲法9条に戦力である自衛隊を書き込めば、9条が法文としての整合性を失います。それは9条が死文と化すことを意味します。
これまで政府は、自衛隊の存在と9条との整合性を保つために「専守防衛」をかかげてきました。この「解釈」が自衛隊の活動に実質的な歯止めをかけてきました。自衛隊の海外派兵は1991年から始まり、四半世紀にわたって海外に派兵された自衛隊が戦闘に参加しなかったのは、この「歯止め」があったからです。
安倍首相は「違憲かもしれないが命を張ってくれというのは余りにも無責任だ」と、情緒的な説明をしています。これは自衛隊員にたいして「憲法に自衛隊を明記するから命を捨てろ」というのと同じです。自衛隊員一人一人のことなど本当は何も考えていません。
歴史の岐路
日本の民衆は、いま、大きな歴史的試練に立たされています。安倍政権は、「日米同盟」を錦の御旗に掲げ、トランプ大統領とともに中国や朝鮮民主主義人民共和国の脅威を煽り立てながら軍事大国の道を突き進んでいます。この日米同盟こそが東アジアにおける危機の元凶であることをアジアの民衆はしっかりと見ぬいています。
今年5月、韓国の民衆は、朴槿恵政権を打倒して、北朝鮮との対話路線を追求する文在寅政権を登場させました。昨年5月、フィリピン民衆が選出したドゥテルテ大統領は、それまでの親米一辺倒の外交政策を転換し、中国との対話を重視しています。2014年末の沖縄県知事選では、辺野古新基地建設反対を掲げる翁長雄志現知事が、オール沖縄の力で勝利しました。東アジアでは米軍支配と対決する民衆のたたかいが政治的トレンドとなっています。沖縄にたいして憎悪むき出しに弾圧を加える日本政府の孤立は不可避です。
国内政治でも安倍政権の破綻はあきらかです。「株高」を維持するだけで、武器輸出と原発再稼働を景気対策とする安倍政権の「一億総活躍社会」に未来があるでしょうか。先日発表された、自殺対策白書は日本の「若い世代の自殺は深刻な状況にある」と警告しています。若者が生きる希望を持てない社会の一体どこが「豊か」だと言えるでしょうか。
安倍一強に終止符を
「安倍一強」といわれるその独裁的な政治手法のほころびが次々とあらわになっています。森友学園や加計学園問題に見られる公権力の私物化、それを告発した文科省の職員にたいする処分恫喝や前事務次官への個人攻撃をおこなう政権への不信感が高まっています。国会閉会直後、内閣支持率は急落しました。あわてた安倍は急遽、記者会見を開きましたが、その内容は自分の責任を棚に上げて野党批判を繰り返すというものでした。
いまや「数の力」を頼みにした安倍の強権的な政治姿勢が裁かれるときが来ています。過去の歴史に真摯に向きあうことなく、平然と憲法を踏みにじる独裁者を権力の座から引きずり降ろすのは民衆の権利です。東アジアで米軍支配とたたかう人びとと連なり、9条改悪に反対するすべての人びとが一つとなって、その圧倒的な「数の力」で安倍政権を打倒しましょう。
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前進社関西支社
3面
安倍政権の「働き方」改革を斬る 第4回
“社会の安定帯”担うゼンセン
森川 数馬
これまでの連載で安倍政権が進める「働き方改革」の全体像とその問題点を明らかにしてきた。あわせて戦後の労働政策や労働法制の反動的転換が官邸独裁政治の形成と表裏一体であることを暴露した。またそこに連合というナショナルセンターの「同意」を取り付けるという新たな事態が進行していることに注意を喚起した。この連載の締めくくりとして、こうした状況に対応する労働運動の課題について、2回にわたって問題提起したい。
100万件の労働相談
6月16日、厚労省は「個別労働紛争解決制度の施行状況」を報告した。これは全国に380カ所ある総合労働相談コーナーに寄せられた相談を対象にしたものだ。それによると16年度の相談件数は113万741件で、「9年連続100万件を超えている」という。そのうち労基法違反の疑いは21万件。07年度の相談件数が99万7千件なので、「10年連続100万件」といっても差し支えのない数字である。
相談の内容は、「いじめ・嫌がらせ」が5年連続トップで、約7万1千件。昨年から7%近くアップしている。「自己都合退職」が4万件。「解雇」が3万7千件と続いている。そのほか、「労働条件引き下げ」が2万8千件。「退職勧奨」が2万2千件となっている。
日本における新自由主義攻撃というと「総評解体」や「民営化攻撃」に目を奪われがちだが、これと一体で集団的労使関係を解体する「個別労働紛争処理システム」構築が進められていたのである。
「トラブルの未然防止」、「早期解決」とは「労働組合に相談に行かせない」、「労使紛争にさせない」ということが目的だったのだ。その狙いについては『展望12号』(13年4月)所収の拙論「問われる労働運動の再構築―社会運動的労働運動へ」を参照していただきたい。
さてこの「10年連続100万件」という数字は何を表しているのだろうか。相談件数が年間100万件ということは、概ね年間100万人が個別労働紛争解決制度を利用したということである。連合の組合員は現在674万人だが、その17%に匹敵する労働者がこの制度を利用しているのだ。年間100万人をこえる労働者が労働問題の解決を、労働組合ではなく公的制度に求めるという事態が10年間続いている。これをどう考えるべきだろうか。
筆者が4年前に『展望12号』で論じた時から事態は変わってきているように思われる。すなわち労働者が「労働組合には相談しない」、「期待しない」、「個人で解決する」という態度をより明確にしているのではないかということだ。この連載の第2回で明らかにした「若年層の自殺の深刻化」と合わせて考えると、労働環境の悪化をめぐる問題はいっそう複雑化している。
今の労働運動・労働組合がこうした事態に全く対応できずにいる。安倍政権はこうした事態を逆手に取って、「労働政策」に踏み込んできている。それが「働き方改革実行計画」だ。あたかも安倍が「労働者の味方」のように振舞うことを労働運動・労働組合が許してしまっているのだ。この問題を考える上で、連合のなかのUAゼンセンの動向に注目する必要がある。
UAゼンセンの位置
連合のなかではUAゼンセンだけが組織を伸ばしている。流通商業サービスなど第三次産業の非正規雇用労働者を企業丸ごと組織化することを方針として拡大を実現している。
UAゼンセンの組織人員164万2千人。自治労85万、自動車総連77万、電機58万を抜いて連合トップを続けている。高木剛前会長はじめ会長も2期出しており、連合内での発言力も大きい。
その組織実態は、男性40・4%、女性59・6%。正規職43・8%、非正規職56・2%。日本の就業者全体では、4月統計で男性55・6%、女性44・4%、非正規職40%。この数字を見ればUAゼンセンの組織実態が、日本の就労構造に対応しており、とくに非正規、女性の組織化に成功していることがわかる。
UAゼンセンは02年に「パートタイム労働者組織化に向けて」を発表し、06年から09年にかけて大手スーパーのパート労働者の組合員化に成功し、大きく組合員数を増加させた。そこでは一定の「処遇改善」もあったが、非正規雇用労働者を最低賃金ラインで企業に定着化させるものだった。これを労働組合の名でおこなったのだ。まさに95年日経連路線の柱のひとつの、労使による社会の「安定帯」としての労働組合の役割を、忠実に実践した組織拡大だったのだ。
実際UAゼンセンは、会社側と対峙して成果を挙げている地域合同労組にたいする対策を買って出た。大阪府労委は「会社は組合(天六ユニオン)の弱体化を図るため、社外労組(ゼンセン)に支援を求めて、新たな労働組合の結成に関与した」として不当労働行為を認定したことがある。こうしたやり方でUAゼンセンは非正規雇用の女性労働者たちを組織していった。それは労働運動の歴史的変質を示すものであった。(つづく)
西谷修講演会 トランプと安倍の本質を解明
戦争の危機あおり、国家を私物化
6月25日、「西谷修講演集会/“戦争の危機”の時代を問う」(主催:同集会実行委員会)が大阪市内でひらかれ210人が参加した(写真右下)。
冒頭、仲尾宏さん(反戦・反貧困・反差別共同行動in 京都・代表世話人)が主催者あいさつ。仲尾さんは「世界史は大きな転換点を迎えている。民衆のたたかいで、安倍政権に天罰をくだそう」と述べた。
つづいて西谷修さん(立教大学特任教授)が講演した。テーマは、「戦争の危機の時代」を問う〜「世界統治構造」の破綻と安倍政権〜という内容。その講演は刺激的だった。西谷さんは、今日においても「北大西洋条約機構(NATO)が世界を軍事的に支配しており、NATOの戦略はロシアを軍事的に封じ込めることだ。アメリカの喫緊の課題は石油をめぐる中東問題であり、ロシアをめぐるウクライナ問題だ」と述べた。
欧米大国によるこの戦争政策のなかで、ムスリム人民同士、ウクライナ民族同士が血を流す。われわれはこの事をひと時も忘れてはならない。また、われわれは近代化=西欧主義(=資本主義)を根本的に問い直す必要があるだろう。日本においては、さしあたり「明治維新」以降の歴史が問題になる。現在においても、植民地主義は帝国主義国において生き続けているのだ。歴史修正主義はここに根ざしている。
アメリカでは、今年1月にトランプ政権が発足した。西谷さんは「トランプの掲げるアメリカ第一主義は、アメリカはもう世界の面倒を見ない」ということ、「国家を私物化する人物が大統領になった」と述べた。また、「アメリカ合州国の成り立ちは不動産屋と弁護士によって、先住民から土地を取り上げて作られた」とも述べた。
日本では、すでにトランプと同じタイプの人間が首相になっている。安倍晋三だ。西谷さんは「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)や中国とのあいだに戦争の危機はない。北朝鮮が問題にしているのはアメリカだ。むしろ、安倍政権は戦争の危機をあおりつつ、戦争ができる国家体制(戦争体制)をつくろうとしている。こちらの方が危険だ。権力を握る人間が国を思うように動かすことができるようになる」と述べ、この点を強調した。今日、政府は北朝鮮の弾道ミサイル危機をあおり、政府広報で避難キャンペーンをしている。一方、森友学園問題や加計学園問題をみれば、国家のためではなく、自分たち仲間の利益のために、権力を私物化している。
これにたいして、われわれはどのようにたたかえばよいのか。西谷さんは次のように述べる。「居直る権力側の理屈を徹底して壊すこと。そして、我々が主人公だと言って、民衆が国会前に出ていくこと、この力の対決しかない」と。いつか来た道が再び繰り返されようとしている。西谷さんは、「一度目は悲劇として、二度目は茶番として歴史は繰り返される」(カール ・マルクス)という言葉で講演を締めくくった。
西谷さんの講演をうけて、9条改憲阻止共同行動から「独裁者を権力の座から引き降ろすのは民衆の権利だ」とする〈安倍改憲阻止のアピール〉が発せられた。沖縄民衆のスローガン「勝つまであきらめない」を合言葉に、安倍政権を打倒しよう。(津田)
4面
寄稿
原子力機構 プルトニウム被ばく事故
傲慢ずさんな体質を露呈
木原壯林(若狭の原発を考える会)
高浜原発3号機が再稼働された6月6日、茨城県の日本原子力研究開発機構(原子力機構)大洗研究所で、ウラン(U)やプルトニウム(Pu)の酸化物粉末(U・Pu粉末と略記)による汚染事故が発生した。
U・Pu粉末は、ビニール袋に密閉されてステンレス製円筒容器に保管されていたが、容器を開けた途端に、ビニール袋が破裂して、U・Pu粉末が飛び散り、作業していた5人が被曝したという。最悪の内部被曝で、発癌のリスクが高く、被曝された方には大変お気の毒な事態である。
杜撰な管理・取扱い
問題のU・Pu粉末は1991年に封入されたが、内部の点検は26年間されていなかった。同じものが入った保管容器は20個残っているという。今回開封した容器に保管されていたU・Pu粉末の量は、合計300グラムとされる。これは尋常な量ではない。
このU・Pu粉末入り容器をフード(ドラフト)内で開封したと発表された。フードは、内部の空気をフィルターを通して吸い出す換気装置を備えた箱状(大型冷蔵庫大)の実験台で、学校の化学実験室などで見かけるものと類似している。前面の窓は、作業時にはある程度開放されている。したがって、U・Pu粉末の密閉が何らかの手違いで破壊されれば、U・Pu粉末はフード外にも飛散する。
本来、極めて危険なPuはグローブボックスと言われる完全密閉の手袋のついた箱内で扱わなければならない。しかも、今回のPuの量はフードでの取り扱いが許されている量に比べると、けた違いに多い。
非常識な原子力機構
今回の事故の原因について原子力機構は「同様な事故はなく、想定外」と説明した。Pu239は、アルファ粒子(ヘリウムの原子核:放出されれば、ヘリウムガスになる)を放射する。したがって、多量のPuを長期保管していれば、ヘリウムが蓄積し、これにビニールなどの放射線分解によるガスが加われば、密閉容器の内圧が上昇することは、プルトニウム取扱い経験者なら常識だ。上記の説明は、原子力機構がこのような常識すら忘れ去っていることを示している。
なお、原子力機構は、22日になって、放射性物質の粉末を固定するためにエポキシ樹脂を用いていたことを明らかにし(木原注:Puを吸入して内部被曝しているので、粉末が完全に固定されていたとは考えられない)、「この樹脂が放射線分解されてガスを出す可能性は否定できない」と発表した。
原子力機構の事故やトラブル、その隠蔽は枚挙にいとまがない。日本最大の研究機関・原子力機構のような巨大組織にも、知識不足、安全軽視の傲慢体質が蔓延している。原子力を安全に利用できる筈がない。
隠ぺい体質
なお、6月6日の原子力機構の発表(同日のテレビや翌日の朝刊の報道)には、「作業者5人に核物質付着」、「体調に異常がない」、「鼻腔内から最大24ベクレルの放射性物質」、「この程度なら健康に影響はない」、「外部への影響はない」 など、事故を過小評価する言辞が目立つ。
さらに、その後、被曝者の搬送先・放射線医学総合研究所は、あたかもPuの内部被曝は無かったかのような発表をしている。Puと共存するアメリシウムが検出されているので、Puも吸収されたと考えるのが当然だが、知識不足あるいは隠蔽のためだ。
6月19日には、被曝者の尿からPuが検出されたことを「微量である」というコメント付きで発表し、Puの内部被曝を認めたが、尿に出てくるほどの被曝は相当深刻だ。事故を深刻に受け止める姿勢を欠いた「原子力ムラ」体質が、福島事故を拡大したことへの反省が全く感じられない。
原発全廃の行動に
この事故と、一昨年再稼働した川内原発1号機での復水器冷却細管破損、昨年の高浜原発4号機での1次冷却系での水漏れ、発電機と送電設備の接続不具合による原子炉が緊急停止、伊方原発3号機での1次冷却水系ポンプでの水漏れなどの事故、関電の関連企業が、昨年、運搬中の鉄塔工事用の資材1トン近くをヘリコプターから落下させた2度の事故、今年1月の高浜原発でのクレーン倒壊事故などを考え合わせるとき、「原子力ムラ」に原発を安全運転する能力、資格、体質が無いことは明らかだ。
重大事故が起ってからでは遅すぎる。原発全廃の行動に今すぐ起ちあがろう。(6月22日)
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精神保健法改悪案を阻止した
6月8日 院内集会 パターナリズムを批判
6月8日、衆院第一議員会館に150人の参加で、精神保健福祉法改悪案を許さない第3回院内集会がおこなわれました。私が注目したのは精神医療審査会の内情を暴露した弁護士の発言、措置入院の体験談、薬物依存症の当該の発言でした。
強制入院追認機関
日本医師会の組織内候補である自見はなこ議員〈自民党〉は「監督されているという妄想は病気の症状だ」という差別発言をしたのみならず、改悪案では措置入院時に精神医療審査会の審査を義務付けるから、患者のためになる制度改革だと居直っています。
精神医療審査会の委員を務める弁護士は審査会の内情を、極めて事務的に判子を押すだけの強制入院追認機関に過ぎないと実態暴露しました。3時間に150通の書類に目を通し、事務局は承認の判子を押せと圧力をかける。おかしいと思い不承認と書けばその理由をただ働きで書くことを要求された。自見はなこに顕著な「パターナリスティックな制約」こそが今回の改悪案の本質だと弾劾しました。
措置入院経験者は、てんかんの発作が起きたから自分で救急車を呼んだが、運ばれた先の精神病院で措置入院にされ、数日間、首、手足を縛られて保護室に放り込まれたのです。てんかんの発作で「自傷他害の恐れ」があったでしょうか。東京では救急で運ばれた人を措置入院にして拘束することが多く見られます。
ダルク女性ハウス(注)のメンバーは警察が精神医療に関われば薬物依存者は警察に知られることを怖れ、ますます医療から遠ざかり、マイナスが大きいと述べました。
私は兵庫県では役人は「患者のための良い事をしているのになぜ反対するのか」と言っていること、自見はなこの差別暴言に抗議する共同声明に賛同をと訴えました。
法案は継続審議に
3月24日(130人)、4月25日(250人)、6月8日(150人)と短期間に3回の院内集会や国会前に座り込み、参議院厚労委員会の傍聴には延べ800人近い精神しょうがい者、しょうがい者、支援者、国会議員や秘書が参加し、精神保健福祉法改悪案の成立を阻止しました。最初は議論なく成立すると言われていたものを約36時間の参議院における審議の上に、衆議院では審議入りを阻止したのです。
6月16日に残念ながら自公維新の賛成、民進党は出席拒否、共産党は反対(社民党は衆院厚労委員会に委員がいない)によって継続審議となり、廃案にはできませんでした。次国会では衆議院のみの審議となります。しかし、参議院での「修正」で医療保護入院にまで対象者を広げるなど、実現可能性が疑われる法案になっています。さらなる追撃で廃案を勝ち取ろう。(高見元博)
【解説】パターナリズムとインフォームド・コンセントの衝突:パターナリズムは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益になるようにと、本人の意志に反して行動に介入・干渉することです。日本語では家父長主義、父権主義と訳されます。
自見に典型的な「患者のためにしてあげる」強制こそがパターナリズムです。パターナリズムの立場からは「インフォームド・コンセントは幻想だ」と主張されます。また、日本精神科救急学会ガイドライン(2015年版)では、「自発的入院と非自発的入院の分水嶺はインフォームド・コンセントが成立するか否かだ」とされています。精神しょうがいの状態の人には事理を分別できない人がいるという前提に立っています。
しかし強制入院に反対する立場からは、一旦落ち着いた状態の時に話して分からない人はいないということが主張されています。障害者権利条約12条にラディカルに提示されている、誰もが精神的「能力」と無関係に法的能力を持つことの確認、すなわちインフォームド・コンセントができない状況自体を変える、ということがより重要です。
3月24日におこなわれた院内集会で内田博文九州大学名誉教授は、警察の行動規範では対象者に不信で接し、医療機関や福祉機関などの本来の指導理念は信頼であり正反対である。支援策としては逆効果であり対象者を監視する社会を作り出すと「してあげる」強制=パターナリズムのもたらすものを指摘しました。
(注)ダルク女性ハウス:薬物依存症からの回復を望む女性たちのための日本で最初の民間施設。
関電会長地元で反原発パレード
6月24日高槻市
6月28日の関西電力株主総会をひかえ、24日、八木誠関電会長が住んでいる大阪府高槻市上牧で「関電八木会長 原発やめてくださいパレード」がおこなわれた(写真)。毎年、この時期に地元の住民が中心となって呼びかけられ、今回で3回目。
集会では冒頭、主催団体の原発ゼロ上牧行動、脱原発高槻アクション、とめよう原発!! 関西ネットワークが発言。つづいて若狭連帯行動ネットワーク、滋賀から参加した仲間などが発言。八木会長への申入れ書を代表団が読み上げ、拍手で3人を送り出した。今年も、昨年同様、八木会長は逃亡した。
集会後、町内をにぎやかにパレードした。
5面
8・6ヒロシマ平和の夕べ(8月6日 広島市)
ヒロシマを伝え続ける
福島をなかったことにはしない
被爆72年―「8・6ヒロシマ平和の夕べ 2017」を紹介する。
福島第1原発事故から6年余、避難解除が強行された。事故を「なかったこと」にしようとするもの。茨城・原子力機構の事故は核の保管・処分の不可能性、核と人間が共存できないことを明らかにした。安倍政権は共謀罪法を強行し、明文改憲へ公然と踏み出す。核兵器禁止条約会議を拒否、欠席する被爆国日本の政府。ヒロシマ・ナガサキと、その72年は何を教示するか。私たちは核と原発の廃絶への途を進む。8月6日、広島に集いたい。
平和公園南西隅にある全滅した廣島二中の教員・生徒名を刻んだ碑 |
帰らなかった人びと
「8・6ヒロシマ平和の夕べ」は、次のように呼びかけている。
憲法が変えられようとし、辺野古の海を壊し、新たな米軍基地が作られようとしています。原発再稼働がもくろまれています。日本政府は核兵器禁止条約に反対し、核廃絶を悲願としてきた被爆者を傷つけました。平和講演は『ヒロシマを伝える』の著者、元NHKプロデューサーの永田浩三さん。
被爆証言は小野瑛子さん(全滅した廣島二中1年生を引率した教師、山本信雄先生の遺児)。「子らは地獄の川に浮かぶ。手を差しのべる先生、『私はもう歩けない。さあ、握手して。(きみは)帰るんだ』」(レクイエム『川の中で』)。しかし、生徒も先生も、誰ひとり帰らなかった。
福島と避難者の現状、原発について大塚愛さん(岡山に避難、保養キャンプなどにかかわる)に話してもらいます。平和を願う「歌とトーク」は、シンガー・ソングライターの川口真由美さんです。誘い合わせてご参加ください。核なき明日へ、その意志と展望を考え確かめ合いましょう(要旨)。
ヒロシマを伝える
「あのときの光景、声が聞こえますけーね」。『ヒロシマを伝える』の著者・永田浩三さん(被爆2世)が平和講演をおこなう。永田さんは「NHKスペシャル」などを手がけた元プロデューサー。ETV2001『問われる戦時性暴力』では、政府による番組改編の圧力に抵抗した。経緯は自著『NHK、鉄の沈黙はだれのために』にくわしい。
1974年、NHK広島放送局に1枚の絵を持った年配の男性が訪れた。「どうしても、あの日の体験を残したい」。酷い火傷の女性、遺体の山が画用紙に黒いサインペンで描かれていた。スタッフは衝撃を受ける。絵による被爆証言を募集すると、2千枚(その後4千枚余)が集まった。(思い出すことも苦痛だった)「市民が描いた原爆の絵」である。マジック、鉛筆、クレヨン…、画用紙もあったが大半はカレンダーや広告の裏紙に描かれていた。番組放送の後、4千点余の絵は平和記念資料館に収蔵された。
『ヒロシマを伝える』には、「…丸裸で水を求める人は、60〜70人もおられました。たまげたんです。顔を水際に突っ込んだ人。そのときの声が響きますけーね」などとある。占領下、米軍のプレスコードから逃れながら原爆被害の実相を伝え続けた四國五郎、峠三吉、大田洋子、正田篠枝、原民喜、栗原貞子、山代巴、そして無名の人々のことが綴られている。文中、四國五郎は、「今、ここにあることを残すことが大事なんだ」と。「伝え続ける。なかったこと」にしてはならない。著者・永田浩三さんの話を、聞いてほしい。
広島と福島を結ぶ
被爆を証言する小野瑛子さんのお父さんは、「全滅した廣島二中」の教師として生徒たち321人を引率し、自身も生徒とともに被爆死した。6歳だった小野さんも被爆、避難中に「黒い雨」を浴び、急性放射能症を発症。その後も甲状腺を全摘出し、現在肺がんで闘病中。16年、映画『いしぶみ』(綾瀬はるか出演)に協力出演した。
大塚愛さんは99年、農業研修のため福島県に移住。農業と大工仕事を修行。福島原発事故の後、郷里の岡山に避難し、避難者支援、保養受け入れに奔走している。
(竹田雅博)
と き:8月6日(日) 午後1時30分〜4時
ところ:広島YMCA国際文化ホール(路面電車「立町」下車北7分)
参加費1000円(高校生以下、福島避難者無料)手話通訳あり
ますます原発に依存
関電株主総会に抗議
6月28日
6月28日、関西電力株主総会が神戸市内でおこなわれた。高浜原発3、4号機の再稼働などに抗議、早朝から約100人の仲間が、参加する株主(660人)にビラ、横断幕、プラカード、トラメガで「高浜原発を止めろ」「脱原発エネルギーへの転換」などを訴えた(写真)。行動参加の何人かは株主として会場に入った。
岩根茂樹社長は、「高浜営業運転を踏まえ電気料金を値下げする」「(秋に再稼働めざす)大飯3、4号機運転後はさらに値下げ」など原発強化を打ち上げた。門川大作・京都市長が「脱原発を経営方針に明確に据えて欲しい」と提案するも、社長は「再稼働に取りくむ」と答弁。脱原発を求める株主からの22議案と会社提出の3議案が審議された。
福島の子どもたち190人が甲状腺がんを発症している。大津地裁が「関電は高浜3、4号機を動かしてはならない」とした決定を、大阪高裁がひっくり返し、関電はただちに高浜原発3、4号機を再稼働した。福島原発事故の究明も、事故の収束も何一つ進んでいない。甲状腺がんやさまざまな病気を発症する子どもたちが増えているのに。高浜原発3、4号機をただちにとめろ。大飯3、4号機を再稼働するな。
読者の声
沖縄の民意に 本土の行動で応えたい
兵庫県 石塚 健
6月の3日間、地域の仲間、平均年齢73歳というシニアグループで沖縄を訪問した。
1日目 那覇空港で現地のガイドさんと落ち合う。まず元日本軍トーチカのあった高台から、世界一危険な空港=普天間基地を遠望。この日はオスプレイは見あたらず。
沖縄国際大学ヘリ墜落現場を見て嘉手納基地へ。広大な基地を展望台から見た。3500mの滑走路が2本とれる端から端まで5qの広大な面積。先日もここで空挺部隊の降下訓練があったとか。
夕方、名護で共同センターの学習会に参加。本土の各地からさまざまなグループが参加していた。講師による沖縄の基地問題のわかりやすい説明をうける。名護泊。
崩れるヘリパッド
2日目 前日までの激しい雨が上がり、沖縄は梅雨明け。早朝辺野古へ。キャンプ・シュワブゲート前の座り込みに参加。機動隊の無表情な壁を前に島内、本土各地から来た人たちがエールの交換。本土のマスコミはほとんど報道しないが、たたかいは日々続いている。
高江へ移動。途中、オスプレイが墜落した海岸を見る。高江へ到着。いまは若者1人が常駐しているテントで説明をうける。ここにも本土から来た他団体の人がいた。梅雨の大雨で急造したヘリパッドは一部壊れ、使えないらしい。ゲート前にはアルソックのガードマンが10人余、不動の姿勢で整列していた。1時間ごとに交代している。全員サングラス、何を見ているのだろうか。那覇へもどり泊。
72枚の黒い凧
3日目 沖縄慰霊の日。朝、全員黒っぽい服装に着替え、ガイドの案内で糸満市摩文仁の平和祈念公園へ向かう。この日沖縄県は、市町村の役所や学校も休日、休校。沖縄は全島あげて喪に服し、沖縄戦の犠牲者を追悼する。
私たちは公園広場で連凧をあげた。72枚の黒い凧。72枚はもちろん沖縄戦72年、黒い色は追悼の気持ちを表す。凧は風に乗り、梅雨明けの沖縄の空に龍のようにうねる。続いて「平和の礎」へ。広い敷地一杯に家族連れや若者が集っている。そこかしこで礎に語りかけたり、刻まれた文字をなでたり。花や線香を供え、三線を引いている人もいた。20万人を超える刻まれた名前の後ろには、その何倍、何十倍もの人々の悲しみや怒りがある。戦争は絶対嫌だという沖縄県民の心が伝わってくる。「命どう宝」と言い続け、礎の建立に力を尽くした元知事・太田昌秀さんが92歳で亡くなったのは2週間前だった。
翁長さんの決意
最後に沖縄全戦没者追悼式の会場へ。1時間前には広いテント会場はもう一杯。入れなかった大勢の人たちが木陰や芝生に腰を下ろしている。さまざまなグループ。団扇太鼓を打つ宗教者、平和行進の遺族会。やはり一番多いのは礎へお参りを済ませた家族連れ。その雰囲気に沖縄の人々の一体性を感じる。私たちも会場外の芝生に腰を下ろす。正午の黙祷に会場内外のすべての人が立ち上がる。
翁長知事は平和への不退転の決意をのべた。スピーチの随所で大きな拍手が起きる。「私たちは沖縄に暮らす者として、礎に込められた平和の尊さを大切にする想いを次世代へ継承する…いつまでも子どもたちの笑顔が絶えない豊かな沖縄の実現に向け、絶え間ない努力を続ける」と述べた。
私たちの前に若い7人家族がすわっていた。若いパパとママ、小学生の兄を頭に姉妹4人、一番下は2歳ぐらいか、子ども同士はふざけたり喧嘩したり。それを見守る両親。翁長さんのスピーチが終わったとき、彼らは懸命に拍手していた。翁長さんは本当に沖縄の人から慕われている。私たちは飛行機の時間がせまり会場を離れたが、安倍首相のあいさつは沖縄の民意とかけ離れ、会場は白けムードだったとか。
わずか3日間だったが、沖縄の人々からもらったものは大きい。行動でお返しをしなければ。そうでなければ沖縄の人たちに愛想をつかされる。
6面
サバルタンは全世界の解放をめざす
高見元博『サバルタンは語るか』を読んで
大伴 一人
グラムシの読み方
『未来』紙上に、高見元博さんの『サバルタンは語る』(218号)、『サバルタンは語るか その2』(221号)、『サバルタンは語るか その3』(223号)が掲載されました(以下、『語るか』と略記)。『語るか』は、サバルタン論を主体的にとらえ返した点で正しいと思います。しかし、グラムシの革命論を理解するには、その思想の全体像から各項目を理解しなければなりません。
サバルタン論、陣地戦・機動戦論、ヘゲモニー論、ソチエタ・レゴラータ(自己統治社会)、国家論などの概念は内容的に深く関連しています。それぞれを全体の中の一つとして論じなければ、その個別性の持つ、固有の性格の強烈さにひきずられて、革命論としてゆがんだものになってしまいます。『語るか』を読んで第一に感じたのはそのことです。
グラムシ論の中で最も重要だと思うのは、国家論とそれに対応した陣地戦論・機動戦論です。「革命」の問題は「権力」の問題です。サバルタンの闘いは国家権力の問題と、社会全体の差別抑圧の構造を全面的に変革してゆく闘いとの関連で論じられべきなのです。
今日、世界の人民が国際金融資本の経済的・政治的・軍事的支配による抑圧に苦しみ、闘いに立ち上がっています。世界の人民が国際金融資本のもとでサバルタン化しているといってもいい。サバルタンの闘いは、世界の階級闘争の基礎をなし、その基軸となる闘いです。
国内的には、国家主義や排外主義との闘い、また女性差別や「障害者」差別、部落差別、少数民族への差別、格差の拡大による労働者間の差別などがあります。国際的には、新植民地主義体制諸国で闘われている民族解放闘争です。グローバリゼーションの結果、世界の人民は経済的破局と世界戦争の危機に直面しています。
われわれはこれにどう対応してゆくのか。それはサバルタンを基礎に持つ陣地戦です。陣地戦による全人民の生命・生活・権利を守る闘い以外にはないのです。
革命党の必要性
『未来』223号では次のように述べています。
「阪神教育闘争・花岡蜂起の結論として、これらの闘争は、生存的欲求の論理でとらえる以外にないと思います。『日本プロレタリア革命』の脈絡に無理やりむすびつけることや、プロレタリア革命を究極的にはめざすものなどとしてしまうことはできないことは誰でも承認できると思います」
「このような即自的民族的欲求そのものの承認を可能にする論理こそがサバルタン論です。民族的闘いをそれ自体としてとことん推進すること、その目的は生存であり、民族の独立であり自立(自律)であること、それ自体を承認できない共産主義論なら止めてしまったほうがよい」
この文章は、民族自決権や人民側の自立的意識性を尊重していますが、一方で、サバルタンを重要な基礎とする労働者人民のもつ限りないエネルギーすなわち国家権力を奪取していく力や社会を建設してゆく能力に対する「不信」があるように感じられます。つまり労働者階級人民がその自然発生性を乗り越えることを自覚し、目的意識性や組織的に団結することの重要性が押さえられていないのではないかということです。
サバルタンというあり方そのものが階級社会がつくり出した存在です。サバルタン自身が対象化され、変革されなければならないあり方なのです。ところが『語るか』では、サバルタンそのものの変革の道すじが示されていません。サバルタンの自然発生的闘いに身を委ねてしまっています。これでは革命党不要論になってしまうのは必然だと思います。
革命党は、労働者人民が持っている「権力を奪取する力」や「共産主義社会を建設する力」を信頼し、その自立性や創造性や自由で平等な精神に依拠しなければなりません。、革命党の経験や思想や政治軍事路線は、労働者人民によって検証されることを通して、革命の水先案内人としての役割を果たすことができるのです。
世界のサバルタン化
アントニオ・グラムシは、サバルタンという概念をイタリアの北部社会と南部社会の間の格差と差別の構造が、北部の資本家や富農による南部の農民に対する収奪と支配という「植民地支配」と同じ構造になっているということから、その問題意識を出発させています。つまり、サバルタンとはイタリアの社会構造を対象化した概念なのです。「抑圧された人間の集団」であるサバルタンは、生きている地域や時代、あるいは「女性」や「ムスリム」などその属性によって異なる多様な存在です。
新自由主義的グローバリゼーションは、国際金融資本による世界支配を可能にしました。その政治的経済的な支配と抑圧の下で、全世界の人民は搾取・収奪され、その生活と権利を奪われ、社会そのものの崩壊が進んでいます。私たちが目の当たりにしているのは、全世界のサバルタン化という事態です。
国際金融資本の手先となった国民国家が戦争へと向かうなか、現代社会は政治的・経済的・軍事的破局に直面しています。サバルタンを重要な構成要素とする全世界人民の帝国主義に対する反乱が求められています。そのたたかいの具体的な目標は、それぞれの国民国家の権力奪取です。
多様な存在であるサバルタンの闘争は、その多様性に応じた個々別々の重要な闘い方があります。権力闘争が重要だとしても、個々別々の実体がなければ無です。だからその多様な闘争を地域における陣地戦の重要な要素として位置づけて闘うことが大事なのです。
私見では「サバルタン」という概念は、国家や社会構成体全体を対象とした概念です。だから国家権力による社会の分断支配という基本的な視点が抜け落ちると、サバルタンの闘いは、それ自身が持っている全世界の解放を要求する壮大でダイナミックなイメージから離れてしまい、ちっぽけな、個別的でみすぼらしい運動になってしまうのではないかと思います。
地球規模の環境破壊や第3次世界大戦突入の危機に直面するなかで、サバルタンを基礎的構成要素とする全世界の労働者人民が自分自身の生活と権利、尊厳、文化、平和を守り闘うこと、すなわち陣地戦(防衛戦)に成功しなければ、人類や地球上の生物は破局を迎えることになります。『語るか』の文面からそうした危機感が感じられないのが残念です。なお陣地戦については機会を改めて論じたいと思います。
戦争する国づくりに反撃
「君が代」処分と共謀罪
6月2日 大阪
大阪府立学校では今春、「君が代」不起立で戒告処分1名、再任用拒否2名。卒業式・入学式をめぐる闘争報告を大阪ネットがおこなった |
6月2日、「教育勅語、『日の丸・君が代』は森友学園への道〜『君が代』不起立でクビ?!集会」が大阪市内でひらかれた。主催は「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク。
冒頭、同ネットワーク事務局長が、この春の取り組みを報告。大阪府立高校教員Uさんの定年退職後の再任用が拒否されたことにたいして、大阪府教育委員会・再任用審査会へ大阪ネットや本人から要請・質問書の申し入れをおこない、交渉を繰り返してきたことを報告した。
再任用を拒否されたUさんは、「君が代」不起立と処分後の「意向確認」をめぐるやり取りを理由に再任用不合格の決定をされたことは、「教員としての全人格を否定された」と怒りをあらわにした。
共謀罪、治安維持法
つづいて「『君が代』処分と共謀罪」と題して、永嶋靖久弁護士が講演。国会で強行採決を目論む安倍政権の狙いがどこにあるかを明確にした。
「共謀罪がめざすのは政府に都合の悪いおしゃべりをさせないことだ。コミュニケーションの統制であり人間の内心・良心そのものへの介入である。内心に介入する『君が代』処分は、教員を統制し子どもたちの内心に介入することだ。自分の頭で考えるな。黙って従えということだ。政府にたいして、あらゆるところで声をあげること、一日でも伸ばして採決させなかったら共謀罪を廃案にできる」と提起した。
集会では「共謀罪」も森友・加計問題も根源には安倍の「戦争する国」づくりがあることを暴露し、これに抗うすべての勢力が共闘してたたかおうと確認した。(佐野裕子)