改憲許すな 安倍政権打倒へ
5・3憲法集会に5万5千人
東京・有明防災公園でおこなわれた憲法集会には昨年を上回る5万5千人が参加(3日) |
憲法記念日の5月3日、東京で「施行70年いいね! 日本国憲法5・3憲法集会」が開かれ、5万5千人が参加した(写真上)。
参加者から「70年間変える必要がなかった憲法。これがなぜ作られたのか。かつて民衆には平和も人権もなく国の道具にさせられていた。それを一人ひとりの幸せのために国があるとし、人々の生活を支えるものとして憲法を作った」などの発言があり、社会情勢の変化に左右されない憲法の普遍的な意義を訴えた。
そして、「今の政治家は憲法を守る義務を放棄し改憲をめざしている。秘密保護法、安保法制、共謀罪等が憲法をねじ曲げる形で出てきている。もはや戦争をできる国に変えるためには改憲を待つまでもないという危機的状況である」と、憲法を守る運動を通して力関係を変えていこうと訴えた。共謀罪阻止の連日闘争や、「憲法があったからこそ独立ではなく日本を選んだ」沖縄のたたかいの支援が呼びかけられた。従来を超える「総がかり」の陣形を作り上げて安倍打倒へ突き進むことを確認してデモへ出発した。(2面に関連記事)
共謀罪法案
衆院委強行採決弾劾
廃案めざし大衆行動を
19日午後、自民、公明、維新の3党は衆院法務委員会で共謀罪法案を強行採決した。
国会審議では政府が主張してきた「テロ対策」に根拠がないことが明らかになった。そして警察の監視が強化されることに多くの人びとが気づき反対世論が広がっている。大衆行動で共謀罪を廃案に追い込むことは可能だ。
共謀罪のリアル
5月12日、「共謀罪のリアル」と題して集会が大阪市内でひらかれ、180人が参加した。主催は、〈明日の自由を守る若手弁護士の会・大阪〉と〈共謀罪あかんやろ! オール大阪〉。
集会では、沖縄弁護士会の小口幸人弁護士が、共謀罪が先行的に適用されつつある沖縄の弾圧の現実から、今国会で制定されようとしている共謀罪の恐ろしさを全面的に語った。まず、共謀罪はテロ対策ともパレルモ条約とも関係ないこと。それより沖縄に典型の、政府に気に入らない人々の行動を一網打尽にするための、行為以前から監視し逮捕するものであること。沖縄の人々が基地撤去の意志を持ち、そのために集会をし、ゲート前に座り込み、海上で行動したり、仲間の奪還のため警察署長に面会を求めたり、市町村長への面会を求めるなどの行動がすべて「事前の相談」段階で犯罪とされるものであることを暴露した。
小口弁護士は、日頃から警察がいかにウソをつき、自ら「犯罪の絵を画き」、それにむかって「証拠」を集めているかを明らかにし、共謀罪ができれば、警察の行動に歯止めがなくなることに警鐘を鳴らした。
ついで亀石倫子弁護士は、最高裁でGPS捜査の違法判決をかちとった主任弁護人として、この事件における警察の捜査の違法ぶりを暴露した。180キロで高速を走行してもその行動をつかまれていたこと、車をラブホテルにとめていたこと交際相手の行動まで監視されていたという事実は、警察の捜査の恐ろしさを実感させた。
福島みずほ参議院議員は、国会内外でのたたかいの必要性を語り「戦争に反対する行動を萎縮するならその地点で負けだ。ともにたたかおう」と訴えた。
高浜原発
4号機再稼働に徹底抗議
関電は原発を動かすな
17日午後5時、関西電力は高浜原発4号機の再稼働を強行した。この日は正午過ぎから、若狭の原発を考える会の呼びかけで現地緊急行動が取り組まれた。高浜原発北ゲート前には100人が駆け付け、再稼働に抗議の声をあげた(写真)。またこの日、関電本店前でも終日抗議闘争がおこなわれた。関電は6月上旬にも高浜3号機を再稼働しようとしている。全国から関電に抗議を集中しよう。
高浜町内をデモ
これに先立つ7日、高浜原発の地元、福井県高浜町で「高浜原発うごかすな! 現地集会が」ひらかれ400人が参加。主催は〈高浜原発うごかすな! 実行委員会〉。
正午前、高浜原発を一望できる展望所に、福井、関西、全国からバスや自家用車などで続々と集まった。
正午すぎ、高浜原発北ゲート前までのデモスタート。北ゲートに到着したデモ隊は、「高浜原発うごかすな!」の大コールをたたきつけた。代表団が関電に申し入れをおこない、再度大コールで関電に再稼働をやめるよう訴えた。
ゲート前行動終了後、高浜町文化会館に移動、午後2時から「高浜原発うごかすな! 現地集会」がひらかれた。
冒頭、主催者を代表して〈若狭の原発を考える会〉木原壯林さんがあいさつ。全国各地から報告を受けた。つづいて原発地元の若狭から発言。原子力発電に反対する福井県民会議の中嶌哲演さんが閉会のあいさつをおこない、ただちに高浜町内デモに出発。デモは町内を練り歩き、JR若狭高浜駅前まで。昨年1月の町内デモに比して地元住民の反応は熱かった。(3面に関連記事)
高浜から福井へリレーデモ
“原発反対”に地元の熱い支援
8日〜12日
5月8日午前9時、高浜町にたいする申し入れ行動から、高浜〜福井リレーデモが始まった。高浜町役場には、100人を超える人々が参加。代表団が高浜町にたいして申し入れして、福井までのリレーデモに出発した。
12日までのリレーデモでおおい町、小浜市若狭町、美浜町、美浜にある関電原子力事業本部、敦賀市にある原子力規制委員会、敦賀市、南越前町、越前市、池田町、鯖江市、越前町、福井市、福井県に申し入れをおこなった。
このリレーデモにはのべ400人が参加。毎日、ニュースを発行して行動を広めた。
デモ隊への宿舎の提供、差し入れなど多くの人の協力・支援があった。また原発推進の西川一誠福井県知事にたいする怒りを表明したりデモ隊を追いかけてきてカンパをする人など福井県の多くの住民が原発に反対していることを実感させた。
5・12福井集会
12日、午後6時「高浜原発うごかすな! 福井集会」が福井市中央公園でひらかれ120人が参加。〈原子力発電に反対する福井県民会議〉事務局長の宮下正一さんが司会。中嶌哲演さんがリレーデモにお礼を述べ、「高浜原発再稼働に反対の意思を示すために、大阪の関西電力本店前で、15、16、17日の3日間、断食をします」と宣言した。
地元福井からも生き生きとした報告があった。全国からの参加者も発言。若狭の原発を考える会が「高浜原発4号機再稼働は認めない」と現地緊急行動を呼びかけた。集会後、福井県庁前を通る市内デモに出発、再稼働反対を訴えた。
(お知らせ)
6月の『未来』の発行日が変わります
6月は8日(木)と22日(木)です。 7月以降は第1・第3木曜発行に戻ります。
2面
寄稿
憲法施行70年の「現実」 関西大学教授 高作正博
内側から破壊される憲法秩序(上)
5月4日「憲法フェスタ@いたみホール」(兵庫県伊丹市)でおこなわれた高作正博さんの講演を編集部の責任でまとめた。
「軍事の論理」の優先
安倍政権になって法律・政策レベルで軍事の論理が優先されている。それは2013年末の特定秘密保護法、15年の安保法制の制定、14年4月には武器輸出3原則が防衛装備移転3原則へ変わったことなどだ。その上でトランプが大統領になり国際環境が変わり、日本の防衛費の大幅増が求められてくる。現状はGDPの1%で約5兆円だが、NATO諸国並みの2%が求められると予算も倍増し、軍事の論理がますます増大してくる。
大学による軍事研究解禁が問題だ。防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」をつくって3年目。予算が15年は3億円から16年には6億円になり、3年目には概算要求で110億円に急増した。
文科省からの研究予算は削られ、研究費を防衛省が出すようになる。これは偶然ではなく安倍政権や自民党国防部会提言(16年5月)が進める政策だ。研究者の代表機関である日本学術会議では1950年と1967年に「軍事目的のための科学研究を行わない」声明を出してきた。この見直しに、学術会議の会長が「自衛のための軍事研究はいい」という考えを出してきた。最終的には「過去2回の声明を継承し、軍事研究を容認しない」(3月24日)と決めたが、これは倫理的な方針で大学を拘束せず、制裁もない。継続の論議対象で警戒が必要だ。
もう一つは米軍基地の問題だ。トランプ大統領が駐留米軍経費の負担増を求めてくる。これと一体で沖縄の基地機能強化、辺野古新基地の早期実現がある。
そして東アジア情勢の緊迫化だ。シリアへのアメリカのミサイル攻撃を安倍首相がいち早く支持表明した。安全保障関連法(戦争法)が、南スーダンPKOでの「駆けつけ警護」や4月の「米艦防護」として発動された。
自民党から敵基地攻撃能力保有が出されている。攻撃される前に先制的攻撃をという動きだ。
北朝鮮のミサイル発射実験に際し、東京メトロ(地下鉄)とJR西日本が一時運行を停止するという過剰反応まで起きている。政府が外交交渉で解決しようとするのではなく、住民にたいして「避難せよ」と煽っている。これに反対する国民は「非国民」と言われかねない状況を作り出そうとしている。このような動きにたいして注意が必要だ。
安倍政権下で進む「憲法秩序」の破壊
教育現場〜「日の丸・君が代」強制の問題
「日の丸・君が代」をめぐり教職員への内心の強制と精神的自由の破壊が進んでいる。不起立処分撤回を求める訴訟にたいし、「立って歌え」という校長の命令は憲法違反ではないという判決が続いた。
他方最高裁で「減給処分」は違法という裁量論(最高裁12年1月16日判決)も出た。しかし15年12月の大阪地裁内藤判決では、「原告の不起立行為により、平成24年度卒業式の進行が妨げられるなど…ない」「積極的に式典の進行を妨害したものではない」と認定しながら、結論だけは「処分は適法」となった。残念ながらこの判断が確定している。
「教育勅語」のある日常へ!?
森友学園問題では小学校設置認可、国有地売却問題、政治家・首相夫人の関与などが発覚したが、「教育勅語」を唱和させる教育こそ大問題だ。園児に「日本を悪者として扱っている中国・韓国が心改め、歴史教科書でうそを教えないよう」と言わせ、これを首相や夫人が賛美した。
教育勅語の核心は「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」である。非常時には天皇のために戦えという意味だ。教育勅語は戦後すぐ国会で排除された。この教育勅語を閣議決定で「使っても良い」とした。
道徳の教科化が始まった。学習指導要領の新版に「銃剣道」が取り入れられた。現場の先生はなじみがなく指導できるのは自衛隊員だ。自衛隊が学校の中に入って来る。(つづく)
5・3ヒロシマ憲法集会
市民と野党でアベを止め
「施行70年、いいね!日本国憲法―5・3ヒロシマ憲法集会」が開かれ約1500人が集まった(広島市中区・写真)。広島県平和運動センターの佐古さんが開会あいさつ。浄土真宗本願寺派僧侶、シンガー・ソングライターの二階堂和美さんが8月6日を歌う「一本の鉛筆」でアピールした。清水雅彦・日体大教授が記念講演、「市民と野党共闘で安倍政権を止める!」と、総がかり行動の意義を明らかにした。広島県民文化センターで広島憲法集会実行委員会、広島高校生平和ゼミナール共催による「2017広島憲法集会、マイライフ・マイ憲法」も開催された。
工事をやめろ 大浦湾を守れ
14日 名護市瀬嵩海岸で県民大会
「この海に新しい基地はつくらせない」名護市で県民大会(5月14日) |
「海を汚すな」
5月8日 沖縄防衛局は連休明けのこの日から「K9護岸」の作業を開始。これまでは網袋に入った砕石を護岸に並べていたが、今度は砕石が直接投下され海水が白く濁った。抗議行動の市民らは「海を汚すな」と声を張り上げた。キャンプ・シュワブゲート前では市民100人が座り込んだ。
9日 護岸工事では砕石投下が断続的に続けられた。海上では抗議船4隻とカヌー17艇で「工事を止めろ」「大浦湾の海を守れ」と抗議の声を上げた。ゲート前では座り込みの市民が4度にわたって排除され、ダンプなど65台が基地に入った。市民は「『K9護岸』だけで、ダンプ9千台以上の砕石が必要だ。長期戦になることを見据えがんばろう」と拳を突き上げた。
12日 大浦湾の瀬嵩周辺の海域で、県と名護市が文化財潜水調査をおこなった。これまでもおこなっているが文化財は発見できていない。
「信念をつらぬく」
14日 名護市の瀬嵩海岸で「復帰45年、5・15平和とくらしを守る県民大会」(主催・5・15平和行進実行委員会、沖縄平和運動センター)が開かれ、県内外から2200人が参加(写真)。
今回の平和行進は、12日、南部コース、中部コースから始まり、新基地建設が進められている辺野古・大浦湾をめざして進んだ。多くの労働者が続々と瀬嵩の海岸に結集した。海上ではカヌー15艇と抗議船1隻が海上パレードで集会参加者と連帯のエールを交換。
集会では山城博治実行委員長が「辺野古新基地建設、南西諸島の基地強化が進められている。戦争への道を許さないたたかいを強めていきたい」と力強く訴えた。稲嶺進名護市長は「われわれはこの海に新しい基地は造らせないと頑張ってきた。これからも信念を貫きたい」と宣言した。
ヘリ基地反対協共同代表安次富浩さんは「昨年この近くの安部海岸にオスプレイが墜落した。オスプレイは訓練で全国の空を飛び回っている。全国の皆さんのたたかいが本当の連帯だ」。高江住民の会の伊佐真次さんは「昨年高江は悪夢のような毎日が続いた。やんばるの世界遺産登録は米軍基地があってはありえない。全面返還しかない」と力を込めた。韓国から40人が参加。平和行進団の代表も決意表明。
機動隊が刃物
15日 ゲート前に130人が座り込んだ。機動隊の排除にそなえ市民数人が腰にひもを巻き付け隣の人と結んで座り込んだ。やがて、機動隊のごぼう抜きが始まった。市民は徹底抗戦した。機動隊は、腰のひもをハサミで切断した。市民は「刃物で人が傷ついたらどうするんだ」「危ないではないか」と機動隊に詰め寄った。
16日 雨の中「K9護岸」では砕石を固める作業が続いた。雷雨のため海上行動は中止。雨中に関わらず、ゲート前では70人の市民が座り込み。(杉山)
安倍政権は“戦後最低レベル”
5月3日 大津市で孫崎享さんが講演
3日、「いのち・くらし・憲法をまもる5・3市民集会in 滋賀」が、「戦争をさせない1000人委員会・しが」の主催で大津市内でひらかれ200人が参加した(写真)。
孫崎享さんが、質疑応答を含め2時間を超える講演をおこなった。孫崎さんは「戦後の歴代政権で、ここまで平気で嘘を言って国民を騙して国を戦争に導こうとしている政権はない。ここまで知性のない首相はなかったが、まわりにもっと知性のない人間を集めてこいつしかいないと思わせようとしている。国境なき記者団の報道の自由度のランキングで日本は72位。韓国は64位だ。韓国は汚職の大統領を大衆運動で追放したが、日本は国民の財産10億円分を平気で日本会議に渡した首相の支持率が50%を越えている。韓国より下なのは当然だ」。
「ミサイル防衛は嘘。核の傘も嘘だ。それはキッシンジャーが言っていること。平和外交で隣国との善隣関係を作らないといけない」と提起した。
3面
第88回メーデー
労働運動の現状打破へ
従来の枠組みこえ共闘実現
全日建連帯労組関生支部の組合員による和太鼓の演奏ではじまった中之島メーデー(1日 大阪市内) |
5月1日、第88回中之島メーデーが大阪市内の中之島公園・剣先ひろばで開かれ、800人が参加した。集会後のデモは、関西電力本店前を通り、大阪駅西側の西梅田公園まで行進。多くの市民の注目をあつめた。
ことしの中之島メーデーでは「安倍政権打倒」「共謀罪廃案」「格差社会・新自由主義反対」のスローガンが大きく掲げられた。また各争議の報告は新自由主義攻撃とのし烈なたたかいの現状と展望を示すものとなった。
働き方改革・共謀罪
司会は大阪全労協の女性2人。冒頭、連帯ユニオン近畿地本垣沼陽輔委員長があいさつ。2本の特別報告は、大阪労働者弁護団代表幹事の中島光孝弁護士が「働き方改革問題」、豊中市議の木村真さんが「森友学園問題」について報告をした。
垣沼さんは、世界と東アジアでの戦争の危機と対応して共謀罪という大変な法案が出され、それと一体で労働法制改悪がでてきている。反対の声を大きく上げ、安倍政権打倒の流れをつくろうとアピール。
木村さんは「安倍の幕引きを許さない。安倍昭恵と松井・大阪府知事を追及し、安倍政権と維新政治打倒の流れにする」と発言。
「しないさせない!戦争協力」関西ネットワークの中北龍太郎弁護士、社民党などの各政党、市民派議員の発言の後、音楽ライブは「はるまきちまき」。労働と生活感に根ざした「ちいさきものたち」などの熱唱が会場を包んだ。
暴力支配・貧困格差
争議報告がJALをはじめに、職場暴力支配と150日ストをたたかう全日建連帯MK運輸、非正規労働者差別とたたかい3月全国ストをおこなった郵政ユニオン、府の不当労働行為と新たなたたかいを報告した教育合同、ECCで25年働いて25%もの賃金カットとたたかうゼネラルユニオンなどが続いた。さらに介護保険の改悪、劣悪職場の現状とたたかい、「5・12介護福祉総がかり」を訴えたケアワーカーズユニオン、ダンボール会社(神戸)フクオカの低賃金青年労働者の雇止め解雇を職場11人の団結でたたかう関西合同労組、大阪市の入れ墨処分とのたたかいをなかまユニオンが報告し、会場からは大きな激励と連帯の拍手。
閉会あいさつを全港湾大阪支部の新委員長・樋口万浩さんがおこない、安倍政治を変えてゆく起点になろうとまとめた。参加者はそれぞれの組合旗や横断幕をもって市内デモにうってでた。
5月1日に大阪市内では港地域メーデー(港合同など)、釜ヶ崎メーデー(地域3団体毎に開催)がたたかわれた。また、「格差・貧困NO! 許すな過労死促進法 MAY DAYあまがさき2017」(阪神尼崎駅前)、京都地域メーデー(鴨川の三条河川敷)がたたかわれた。
東京・日比谷メーデーは7千人でたたかわれ、労働現場から女性・非正規・外国人労働者が発言。練馬区の図書館で働く非常勤職員は「有給の病気休暇を!」など人間として生きるあたりまえの権利を掲げていた。デモ後、東部労組は「非正規差別なくせ」と都庁行動をおこなった。
今年の第88回メーデーは全国で16万を超える人びとの結集でたたかわれた。
総かかり行動として
安倍「働き方改革」は月残業100時間過労死を合法化する法案を準備し、さらに「残業代ゼロ」(高度プロ制度)の労基法改悪早期成立、解雇自由金銭解決法も準備している。しかし、現状はすでに進行している。電通の高橋まつりさんの死亡、「金銭」さえ払われず解雇・雇い止めの派遣労働者、非正規雇用労働者の大群が日本に生まれている。失業率2・8%(17年3月)は現状を表してない、日本では非正規雇用ということは半失業状態である。それが就労者の40%を越えている。「労働運動の現状打破」とは、この問題との対決・解決が喫緊の課題であることを示している。
中之島メーデーでも「19才の青年を雇い止めにしました。1カ月の給料が11万4千円という低賃金」「若い世代の人を育てていく社会であってほしい」「世の中全体が格差社会」(関西合同労組フクオカ分会発言)という告発。社会を支える介護職賃金が平均より10万円低い格差処遇、「こんなことがあっていいのか」と「介護総がかり行動をスタートさせる」(ケアワーカーズユニオン)との訴え。そしてこの現状とのたたかいの方向が、いままでの労働組合・労働運動の枠をこえた「総がかり」という発想の提起である。それは新しい跳躍だ。MK運輸闘争での労組共闘のひろがり、介護労働運動での実践はその始まりである。今年のメーデーはそのことを発信したのである。(森川数馬)
高浜原発再稼働に抗議
中嶌哲演さんが断食
5月17日の高浜原発再稼働に抗議して、中嶌哲演さんが関西電力本店前(大阪市北区)で15日から17日まで3日間、断食をおこなった(写真)。連日、多くの支援者が駆けつけ、「再稼働するな」の声をあげた。
福島原発被ばく労災を告発
“あらかぶさんを支える会”を結成
4月26日
福島原発事故の収束作業などに携わり白血病を発症し、その後うつ病にも至った原発労働者が、東京電力を相手に損害賠償請求を提訴した。
第2回口頭弁論を翌日に控えた4月26日に、「福島原発被ばく労災 あらかぶさんを支える会 結成集会」が東京で開かれた。
劣悪な労働環境
鍛冶職人のあらかぶさん(ニックネーム)は義侠心から福島へ向かった。しかしそこは、鳴動するアラームを止めて作業を続けたり、数が足りないからと必要なマスクや鉛ベストなしで作業が強行されるといった、およそ「劣悪」などという言葉では言い表せないような労働環境だった。
そして3年前(当時39歳)に白血病と診断。3人の息子(小学生と幼稚園児)をかかえ絶望感と過酷な治療の副作用で、うつ病に悩まされるようになった。労災認定を受けたが、「コメントする立場にない」と公言する東電。今も原発で働いている労働者のためにも東電の責任を追及するため裁判に踏み切った。
集会では、福島原発はそもそも稼働直後から事故続きで、隠ぺい工作もなされていたことなどが話された。
ハードルは高いが
また、27日の裁判後の報告集会では、損害賠償は労災と異なりハードルが高いが、原爆による被ばく・アスベスト・過労死などの問題はすべて運動の力で法律や制度の運用を変えてきた、裁判で勝利する初めてのケースにしよう、と呼びかけられた。
次回は大法廷に移る。自社の不始末を労働者にぬぐわせたあげく、感謝するどころか使い捨てにして恬として恥じず、再稼働まで目論んでいる東電の責任を徹底追及しよう。(北浦和夫)
4面
介護保険法
改悪で“生きる力”が奪われる
12日 大阪で介護・福祉総がかり行動
介護保険法改悪案が衆議院で強行可決され参議院に送られているなか、5月12日、大阪市内で「介護の切り捨てアカン! みんなの大集会」が開かれた。
2015年は介護保険制度はじまって以来の大改悪=制度解体の始まりの年となった。昨年、反対運動は各地で広がり、政府の「要介護2」までを切り捨てる方針を先送りさせた。この成果を押し広げようと、関西では「立場や組織を越えた介護・福祉総かがり行動」が呼びかけられ、この日が「スタート集会」となった。370人が参加、福島瑞穂・辰巳孝太郎議員もかけつけた。
介護保険の目的変更
講演は日本ケアマネジメント学会副理事長の服部万里子さん。改悪法案の問題点、医療・介護一体で進む改悪の全体像、公的介護・医療を縮小し民間大手資本の営利事業へ移行する目論見、ケアマネジメントに「標準化」を強要し給付抑制=サービス切り捨てを狙っていることなど、全面的で詳細な報告がおこなわれた。メディアが報じず皆が知らないままにとんでもない改悪が進んでいる、利用者の安心と未来を拓くために様々な職種が連携して声をあげようと締めくくった。
今回の介護保険法改悪では、「自立支援」の成果を市町村ごとに比較・公表・評価し、交付金に差をつける制度を導入している。ここで言う「自立」は介護を要しない状態のこと。アメとムチで、「自立」に向けて「介護度改善」を市町村に競わせるのだ。
2016年11月「未来投資会議」での議論が元になっている。服部さんは「これでは介護保険の目的変更だ」と批判。「介護度改善は介護保険制度の目的ではない。要介護状態と認定された人が能力に応じた自立した日常生活を営めるようにするのが介護保険の目的だ」と断罪。
自立―介護度改善の強制は要介護認定を厳しくし、利用者を事故の危険にさらし、「生きる力」を奪いかねないと警告した。3割負担導入について「必要に応じた給付が理念。所得に応じた給付は妥当性を欠く」と批判した。
大阪府内の実情
要支援者への通所・訪問介護が市町村事業に移行され、日下部雅喜さん(大阪社保協介護保険対策委員長)は大阪府内の実情を報告。中でも最悪モデルが大阪府大東市。当事者から介護切り捨ての実情が報告された。
訪問介護の現場から、認知症介護をめぐる運動について、地域での改悪反対運動の取り組みなどの報告があった。最後に署名・学習会・介護相談など具体的取り組みが提案された。
地域で、職場で総がかり行動を具体的に実践し、政府を揺るがす運動に発展させていこう。(土田花子)
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狭山再審へ全人民運動を
全国連第26回全国大会に参加
4月15日から16日にかけて東大阪市内で、「戦時融和主義の台頭を許さず、団結して戦争・差別と闘おう」をかかげ部落解放同盟全国連合会第26回大会が開催された。
大会の運動方針案で中田潔中央本部書記長は「下山鑑定の事実調べがこの1〜2年の勝負になる。この5年で、狭山闘争の歴史的勝利をかちとろう」と提起した。
さらに、昨年12月に成立した部落差別解消推進法」について、「過去の運動団体の行き過ぎた言動が、差別解消を阻害したことに対策を講じる」「教育・啓発、実態調査が、新たな差別を生むことにならないように留意する」との付帯決議があることを指摘し、差別糾弾闘争の解体・戦時融和主義の台頭に警鐘を鳴らした。
つづいて「共謀罪ができたらどうなるのか」をテーマに永嶋靖久弁護士が特別講演。永嶋弁護士は、自身が担当した全国連寝屋川支部弾圧を例にとり「寝屋川弾圧の判決では、多少激しいもの言いがあったとしても、問題がある会社に解雇予告手当を請求したことは恐喝にはあたらないとして、無罪判決が出された。ところが、共謀罪というのは、会社に交渉に行く前に、『行こうか』と相談しただけで逮捕することができる法律だ」とその危険性をわかりやすく説明し、共謀罪反対のたたかいへの結集をよびかけた。
大会方針では、差別・排外主義の激化に抗して、戦争を阻止するために全力でたたかうことや、沖縄・辺野古の新基地建設阻止のために現地闘争に取り組むことなどがよびかけられた。(深谷耕三)
森友学園 5・13集会
安倍と昭恵の責任は明らか
白井聡さん“今こそ市民革命を”
5月13日、大阪府豊中市で「森友学園問題の本質に迫る!」集会が開かれた(写真)。「国有地の不正取得」「塚本幼稚園の愛国教育」、そして首相夫人・安倍昭恵の長期にわたる全面関与が明らかとなった。
主役は安倍昭恵
集会の第一部では山本一徳豊中市議の経過報告と辰巳孝太郎衆議院議員の国会報告。
山本議員は小学校の設立認可の過程での松井一郎大阪府知事と大阪維新の会の関与。土地取得をめぐる近畿財務局と安倍昭恵の動きとゴミ売却問題を詳しく報告。
辰巳衆院議員は「籠池泰典の国会喚問以降、安倍首相と籠池と松井は互いに責任をなすりつけ合っているが、彼らは塚本幼稚園教育を賛美してきた同じ穴のムジナ。安倍昭恵は、『棟上げ式で餅投げをする主役』だ」とし、今後も国会で追及すると表明した。その後2人の弁護士の裁判報告と、木村真市議のまとめがなされた。
「日本は封建時代」
集会後半の二部では白井聡さん(京都精華大教員)が講演。安倍や日本維新の会の動きに注目してきた白井さんは、「昨秋から彼らの動きに危惧を抱いていたが、木村さんらによって4月開校を阻止した。この問題は安倍が自らギロチンに首を突っ込んできたようなもの」と話した。
そして「教育勅語の賛美」が起こる理由を「日本が近代市民革命を経ていないからで、封建時代を壊す市民革命が必要」と強調した。(野田 章)
“これでいいのか日本外交”
東アジアの緊張緩和へ講演会
5月6日 大阪
6日、大阪市内で孫崎享さんと金光男さんの講演会がおこなわれた。主催は戦争あかん! ロックアクション。東アジア青年交流プロジェクトが共催。会場は満員の盛況だった。
孫崎さん(写真)は、「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の脅威を煽っているのは、アメリカと安倍政権にとって都合が良いから」と指摘し、東アジアの緊張を緩和するためには対話が重要だと話した(下段に講演要旨)。
金光男さんは韓国青年同盟大阪府本部委員長、中央本部委員長を歴任。現在は在日韓国研究所代表として韓日の労働・市民社会交流につとめる。金さんは「市民の力によって朴槿恵大統領を政権の座から引きずりおろした。新政権が北朝鮮の体制変更を望まないと表明すれば対話の道が開けるだろう」と話した。
質疑応答では「1953年以降、南北朝鮮は停戦状態のままである。平和条約を締結しアメリカと日本との国交を回復することが重要」「北朝鮮ほど核に脅かされてきた国はない。それが核開発を進める原因。アメリカが核攻撃しないと約束しない限り、北朝鮮が核開発をやめることはない」ことなどが話された。(池内慶子)
軍事ではなく対話が重要だ
孫崎享さんの講演要旨
日米同盟の幻想
弾道ミサイルを防ぐことはできない。避難訓練は無意味だ。なぜならミサイルは秒速2000〜3000メートルで飛んでくる。一方で、日本で流される警告は読み上げるだけで25秒もかかる。しかも、日本はミサイルが発射されたかどうかを把握できない。アメリカから情報を得るしかないが、アメリカは日本が共同して戦争する場合しか情報を共有しない。「警告」のための情報を日本に流すことはない。
迎撃用ミサイルPAC3は秒速1800メートルで、これでミサイルを迎撃するのは不可能だ。核の傘も存在しない。アメリカが日本を守るために自国を危険にさらすことはない。沖縄の嘉手納基地をミサイル攻撃されたら、米空軍は動けなくなる。日米同盟があるから日本の安全が保たれるという時代はもう終わった。
「軍事緊張」の正体
軍事力で日本を守れる時代ではない。尖閣諸島では、かつて田中角栄と周恩来の間で、「棚上げ」にするという合意があった。この問題を隣家どうしの敷地になぞらえて、「棚上げが一番よい」となったのだ。
朝鮮半島の緊張は、日米によって意図的に作られている。ソ連崩壊以降、アメリカはその軍事力を維持する理由として、イラン、イラク、北朝鮮など不安定な国が大量破壊兵器を持っており、これに対抗する必要があるためだと言ってきた。しかし、これらの国が自分からアメリカに戦争を仕掛けることはない。むしろ「大量破壊兵器を持っている」と決めつけた国にたいしてアメリカが攻撃している。イラク戦争がそうだ。
これは当時の国際秩序をまったく無視した戦争だった。それまでは国連憲章にもとづいて国連加盟国の主張を尊重し、「軍事で威嚇しない」「唯一、軍事行動するのは相手が攻撃してきたとき」という約束だった。ではなぜアメリカは攻撃したのか。緊張を高めるためだ。それがアメリカにとって望ましい戦略だったからだ。
米国のための改憲
アメリカは日本が軍事行動に参加しやすいようにするために今の憲法を変えてようとしている。改憲が簡単でないことはアメリカも分かっている。安倍総理がやろうとしているのはアメリカと共に戦争するための改憲である。そのために緊急事態条項を入れようとしている。
中小国が核兵器を持ったとき、核兵器を使わせないようにするにはどうすればいいか。一番いい方法は「軍事で体制を打倒しない」と約束することだ。アメリカが北朝鮮に本当に脅威を感じているなら、挑発ではなく対話を始めることで核兵器を使わせないよう努力するはずだ。同じことが中国にも言える。アメリカは北朝鮮が脅威でないから、挑発しているのだ。
5面
論考
2017年朝鮮(韓国)情勢とわれわれの課題
米日帝国主義による戦争挑発に、日・韓・朝人民の連帯の力で反撃しよう(上)
須磨 明
(1)はじめに
@ 安倍の暴言
5月9日、韓国大統領選挙の投開票がおこなわれ、文在寅が41%を超える票を集めて当選した。5月11日の電話会談で、安倍は文在寅新大統領に面と向かって「韓国は日本にとって戦略的利益を共有する隣国」と言い放った。かつて、山県有朋は「朝鮮は日本の利益線」(『外交政略論』1890年)といい、その後台湾(1895年)、朝鮮(1910年)を植民地化し、満州(中国東北部)を盗り、アジア各国への侵略戦争に撃って出たことを忘れてはならない。
ヒトラーは『わが闘争』(1925年)で、「東方生存圏」を主張しており、1933年政権獲得後の侵略と掠奪の根拠にした。まさに、「利益線」も「生存圏」も侵略の論理以外の何ものでもなく、安倍が「戦略的利益」という言葉を使用したことに、危機感を禁じ得ない。
A 始まったばかり
5月11日付け「レイバーネット・ニュース」で、キム・ヘジン(全国不安定労働撤廃連帯常任活動家)は、「この選挙は、昨年末に始まったキャンドル革命のひとつの過程として理解している。キャンドル革命が実現しようとしたのは、単に大統領一人を変えることではなく、人生を変えることだったと信じているためだ。したがって、文在寅大統領が任期を始めた今、われわれは相変らずキャンドルが日常に拡大して行くことを夢見ている」と記している。
昨年の崔順実ゲートから始まった朴槿恵弾劾・退陣を求めるキャンドル運動は未だ未完であり、この論考では、文在寅当選をめぐる朝鮮(韓国)情勢と日米帝国主義の動向をどう理解し、どう応えていかねばならないのかについて考察する。
(2)韓国経済情勢
@ 2016年韓国経済
「韓国経済速報」の「2016年産業界10大ニュース」によれば、韓国経済はここ数年主力産業が不振だという。造船業では大規模な構造調整を強いられ、韓進海運と現代商船の経営も行き詰まり、韓国の造船と海運が没落しているという。鉄鋼業界は世界的な保護貿易主義のなかで、米国と中国、欧州連合など主要国から反ダンピング規制を受け、中国の非関税障壁(関税以外の方法によって貿易を制限すること)に産業界は打撃を受けている。
現代自動車・起亜自動車は韓国国内市場を国内競合会社と輸入車に奪われ、売上・営業益・占有率を下落させた。精油と化学企業各社は、原油安とウォン安、低成長基調の中でも非製油部門の好実績をもとにアーニング・サプライズ(予想されていなかった情報にたいする株価の反応)を出して「一人好況」を続けた。
また、サムスンは崔順実ゲートとGalaxy Note7発火など韓国内外の悪材料の中で、米国オーディオ機器メーカーのハーマンを80億ドルで買収し、次世代事業に賭けている。
A 保護貿易障壁
米国と中国、欧州連合(EU)など世界各国がますます保護貿易障壁を高めており、韓国産業界が最大の被害者になっている。現在、韓国を相手に進行中の輸入規制は反ダンピング関税規制(調査中の件数を含む)132件を含め、計182件だ。品目別では、鉄鋼金属が88件で全体の48・4%で半分に迫る。韓国を相手に昨年(2016年)新たに輸入規制が始まった件数は11月までに計39件だった。
2017も世界経済の低成長の持続と米トランプ新政権の保護貿易主義政策の拡散が懸念される。米国は今後の「公正貿易」の必要性を強調して、中国を主なターゲットとしている輸入規制措置を強化する可能性が高い。
韓国銀行・企業の外資比率 |
B 開城工業団地閉鎖
2016年2月に開城工業団地が閉鎖された。閉鎖に伴う進出企業の被害総額は8252億ウォン(約815億円)規模に上っており、今後さらに拡大するとみられている。
ムーディーズは「南北和解の最後の象徴として残っていた開城工業団地の閉鎖は(朝鮮半島の)地政学的危険を高めるもので、韓国の信用度に否定的」「2010年4月の北朝鮮による韓国軍艦(天安艦)沈没事件以後、韓国は北朝鮮にたいして種々の貿易と投資関連制裁を実施してきた」「(だが)開城工業団地の閉鎖は…38度線一帯に深刻な緊張を呼び起こしている」と発表した(「ハンギョレ新聞」)。
C 中韓貿易の危機
2015年11月3日の韓国「聯合ニュース」は「中国の成長率鈍化に伴う輸出不振の懸念が大きくなる状況で、韓国貿易の中国傾斜が深刻化している」と伝えている。2016年の韓国の輸出は前年比5・9%減の約4955億ドル(2年連続の減少)、輸入は7・0%減の約4061億ドルとなった。世界経済・貿易の伸び悩み、主力製品の単価下落、自動車業界のストライキなどで、主要輸出品目の大半が減少した。
同年7月8日韓国国防省と在韓米軍は高高度領域防衛(THAAD)ミサイル及びXバンドレーダー配備を正式に発表した。中国はレーダーの探知距離が自国に及ぶことに強く反発し、中韓貿易のマイナス要因となった。
2017年3月、THAADミサイルの配備先をロッテが所有する星州郡のゴルフ場に決定し、それを受けて中国は自国の旅行代理店に団体韓国ツアーの販売自粛を指示した。韓国の観光業は外国人観光者(1720万人)のうち、中国人観光客は47%の804万人を占めている。中国の国営メディアなどが韓国製品のボイコットを呼びかけ、現代自動車製の車を破壊する映像がソーシャルメディアや国内ニュースサイトに掲載されている。
ここ数年間韓国ウォン高によって輸出額は減少し、それでも中韓貿易は順調に推移してきたが、THAAD配備によって中韓貿易に暗雲が立ちこめている。
D 韓国経済の構造的問題
韓国は1997年にIMF管理下におかれ、海外資本が浸透し、大手製造業と銀行のほとんどが外国資本の支配下に入った(資料1、2)。
韓国の直接投資受入額(1962〜2009年累計)のシェアは米国が27・0%で、日本が15・0%であり、以下オランダ、ドイツ、英国、マレーシア、フランス、シンガポール、カナダと続いている。
韓国の対日米欧輸出額は全体の26%(対中国26%)で、対日米欧輸入額は31%(対中国16%)である(2013年)。日本以外での貿易は黒字だが、日本にたいしては赤字である。
韓国は自動車や電機の生産・輸出に力を入れてきたが、これらを作る(組み立てる)ための部品や素材(中間財)、設備や工作機械類(資本財)などは主に日本からの輸入に頼っているので、輸出が増えると、比例して対日赤字が増加するという構造的な問題がある。韓国は輸出で稼いだ外貨を日本に支払うので、韓国経済全体の利潤率が抑制されている。
資料1に見るとおり、韓国の大手銀行10行のうち9行までが海外資本が大株主で、配当比率は70〜85%で、その利益のほとんどが海外に持ち出されている。ポスコ(製鉄)、現代自動車、SKテレコム(韓国最大の通信会社)、サムスン、LG(韓国の財閥)の外資比率は50〜60%も占め、利益配当は40〜60%も出され、韓国の富が日米欧に吸い上げられている。
2010年4月には、約29億ドルが配当として海外に流出した。韓国経済は利益を上げても海外に吸い上げられる構図になっており、その中で利益を確保しようとすれば、韓国人民に犠牲を転嫁(セウォル号事件など)せざるを得ないのだ。
(3)朝鮮半島をめぐる政治・軍事
@ 在韓米軍情勢
米韓軍事演習
3月1日から4月末まで、米韓軍事演習「フォールイーグル」が実施された。3月13日からは米韓指揮所演習「キー・リゾルブ」も始まった。これまでの「フォールイーグル」には、米陸・海・空軍などの特殊部隊から約1000人が参加していたが、今回は参加する部隊がさらに多様化し兵力も増え、過去最大規模になった。米海軍の原子力空母とF35ステルス戦闘機、米海軍特殊部隊シールズ(SEALs)が参加した。
「キー・リゾルブ」では地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を活用した訓練や北朝鮮の軍事施設を事前に破壊する作戦も展開したという。3月15日には米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」が釜山港に入港した(4月末に再び朝鮮半島海域に遊弋)。
今回の演習にはレンジャー、デルタフォース、DEVGRU(海軍特殊戦開発グループ)、グリーンベレーなど米国の代表的な特殊部隊がそろって出動した。特にDEVGRUは「特殊部隊中の特殊部隊」に挙げられる最精鋭部隊で、ウサマ・ビン・ラディンを暗殺した。商業新聞は「米韓は金正恩委員長ら北朝鮮高官の暗殺や誘拐も含む作戦計画を策定している」と報じた。
THAADミサイル配備
昨年7月には、「北朝鮮のミサイル脅威にたいする防御システム」として、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム(THAAD)を2017年中に慶尚北道星州郡に配備して運用することを確認した。7月13日、THAAD配置に抗議し慶尚北道星州郡の住民5000人がデモに参加した。参加者たちは「自分たちの土地に米国のミサイルを配置する計画は…違法である」と訴えている。(『聯合ニュース』)。
THAAD配備を進めてきた朴槿恵政権が打倒されたにもかかわらず、3月17日の米韓会談で、ティラーソンは「(軍事力行使を含む)すべてのオプションを検討する」として、当初予定(2017年中)を前倒しした。そして、配備反対の声を押しつぶして、2017年4月26日にTHAADミサイルを強行配備した。(つづく)
6面
「日朝関係―制裁と対立からの脱却」
康宗憲さんの講座から 最終回
日朝関係の正常化にむけて
連続講座の最終回「日朝関係の正常化にむけて」を紹介する。(文責・編集委員会)
今年の朝鮮の新年辞は「北南関係の改善は平和と統一に向かう出発点であり、民族の切実な要求」と述べ、72年の南北共同声明から45周年にも言及、軍事衝突と戦争危機の解消を強調している。「いつまで米といっしょになって敵対政策をおこなうのか」という言い方である。
核・ミサイルの凍結交渉を
半官半民のアメリカ外交協会が昨年9月に、「まず核・ミサイルの凍結交渉を」と報告書を出した。いっきょに核廃絶は非現実的である。北の核施設を見学したことがあるハッカー博士は「当面、ミサイル・核を増やさない、性能を高めない、技術を他国に移転しないことを条件に交渉するべき」と提言している。米情報長官も「核開発は朝鮮にとって体制存続へのチケットだ。体制保全が保障されない限り、自ら放棄しない」と繰り返し述べている。
日本は、米に比べても客観的な分析や論調が希少である。政府レベルでもそうだが、その結果、市民世論も眠ったまま、メディアも視聴率のみに走る。数に負けないで正しい声を上げなければならない。
難しい問題だが、日本政府は対朝鮮制裁外交から日朝国交交渉へ、もう一度02年ピョンヤン宣言の視点に戻るべきだ。ピョンヤン宣言は根本問題(植民地支配の歴史清算)と懸案問題(日本の安全保障)を同時に解決しようという包括的交渉をめざした。しかしながら日本政府は「核、ミサイル、拉致の3点セット」を掲げ、後者にだけ執着している。その結果、いまは拉致問題と独自制裁だけになった。
拉致問題だけに固執していては、残念ながら国際的な支持も進展しないだろう。
戦争状態の終結は南北、米日の共同の責任
朝鮮民族の課題は何か。朴槿恵政権は米の圧力に屈し、「慰安婦」問題で日本と原則ぬきに妥協した。外交における主権を放棄してまで「南北の敵対関係」で優位に立とうとするのは、浅はかというしかない。
「斬首作戦」などに与しては、相手も拳を振り上げるに決まっている。分断状態が長く続き、お互いに相手が10投げれば20投げ返すという応酬になる。韓国新政権は、南北関係の改善に向かわざるを得ない。
開城工団の再稼働、金剛山観光の再開、交流往来の拡大など双方が努力すれば、朝鮮半島をトータルに見た民族経済が発展する可能性は無限にある。戦争状態を終わらせ平和を回復する、それは双方とも民族にたいする責任としてある。
過去を記憶し未来の平和につなぐ
そういう状況にたいし、日本(人)がどういう態度をとるのか。「慰安婦」問題の合意を例にすると、「これで不可逆的な解決」というのは外交としても、とくに歴史問題への対処としては正しくない。
韓国と日本では時間の認識が違う。日本では「過去を水に流す」というが、時間は現在だけではない。大使館前に置かれた像は「平和の像」であり、記憶にとどめるためのものだ。ナチスの行為へのドイツの対応を見てほしい。植民地支配の歴史を反省し、アジアの平和をめざす責任は、いまの日本にもある。「像」は朝鮮民族のためでもあるし、同時に日本のみなさんのためでもある。
日本のみなさんに、その前に跪けといっているのではない。過去の痛みをともに癒すために像はある、と私は考えている。過去を忘れるためではなく過去を記憶し、未来の平和へつなぐ。過去を封じ込めて未来はない。過去、現在、未来はつながっている。(おわり)
サバルタンは語るか(その3)
花岡蜂起、阪神教育闘争から考える
高見 元博
もっと言えば、花岡蜂起や、阪神教育闘争をどうとらえるのでしょうか。旧来の「7・7自己批判」の脈絡では、このような、日本プロレタリア革命をめざしたものではない、生存のためのたたかいは位置づかないのではないでしょうか。無理に位置づけようとすれば、インドの思想家のラナジット・グハが「サバルタンの歴史」の中で批判している「マルクス主義者による『弁証法的に進歩する歴史』という叙述の中で、本来の意味を奪われ歪曲的に『位置づけられた』サバルタンの反乱の歴史的事実」に陥るのではないでしょうか。グハは少数民族の宗教的な理由による蜂起を、「民族独立運動が前進した」という脈絡に位置づけてしまうマルクス主義歴史観による歪曲を糾弾しています。
花岡蜂起とは、「1945年6月30日に秋田県北秋田郡花岡町(現・大館市)の花岡鉱山で中国人労務者(ママ)が蜂起しその後鎮圧された事件。戦後、過酷な労働環境について損害賠償請求裁判が提訴された。国民党将校耿諄の指揮のもと800人が蜂起し、日本人補導員4人などを殺害し逃亡を図った。獅子ヶ森に籠っていた多数の労働者も捕らえられ拷問などを受け、総計419人が死亡した。」
阪神教育闘争とは、「1947年10月、連合国軍最高司令部総司令官ダグラス・マッカーサーが、日本政府にたいして、『在日朝鮮人を日本の教育基本法、学校教育法に従わせるよう』に指令した。1948年1月24日、文部省学校局長は各都道府県知事にたいして、『朝鮮人設立学校の取扱いについて』という通達を出し、朝鮮人学校の閉鎖と生徒の日本人学校への編入を指示した(朝鮮学校閉鎖令)。同年1月27日、朝連(在日本朝鮮人連盟)は朝鮮学校閉鎖令に反対を表明した。さらに、『三・一独立運動闘争記念日』に合わせて、『民族教育を守る闘争』を全国で展開するように訴えた。大阪府と兵庫県ではこの通達に基づき、朝鮮学校の閉鎖を命じた。数万人のデモンストレーションがたたかわれ、阪神地区では、朝連の宋性Kが闘争の指導に当たった。日本共産党関西地方委員会も闘争に加わっていた。在日朝鮮人で当時16歳であった金太一が闘争中に警官に射殺され、数千人が検挙された。同年5月5日、朝連教育対策委員長と文部大臣との間で、『教育基本法と学校教育法を遵守する』『私立学校の自主性の範囲の中で朝鮮人独自の教育を認め、朝鮮人学校を私立学校として認可する』との覚書が交わされた。」(ウィキペディアより)
生存的・民族的欲求
これらの闘争は生存的欲求、民族的欲求の論理でとらえる以外ないと思います。「日本プロレタリア革命」の脈絡に無理やり結びつけることや、プロレタリア革命を究極的にはめざすものなどとしてしまうことはできないことは、誰でも承認できると思います。(利用主義的にしか関われない安田派とその思想に囚われた人たち以外はですが。)このように日本人の私が語ること自体が利用主義になるのではないかとさえも思えるのです。このような即自的民族的欲求そのものの承認を可能にする論理こそが、サバルタン論です。
「7・7自己批判」では、日本プロレタリア革命をめざすものと位置付けられなければ、価値なしとなってしまうのではないか。民族的たたかいをそれ自体としてとことん推進すること、その目的は生存であり、民族の独立であり、自立(自律)であること、それ自体を承認できないような共産主義論なら止めてしまった方が良い。「7・7自己批判」では、そこがおさえられないのではないでしょうか。なぜなら、あくまで「日本プロレタリア革命」と「結合」「内在化」しないようなたたかいは位置づかないという「理屈を述べている」からです。
直観的な豊かさ
感覚的にとらえられることを、共産主義の言葉に「翻訳」してしまうのが旧来の共産主義論でした。心当たりのある人は多いと思います。自分の心をそのものとして述べるのではなく、共産主義論の高みから「捉え返し」「理論化」しないと気持ちを述べられない。そんなことはもう止めにしませんか。サバルタンによるヘゲモニー(知的・モラル的指導)の確立ということの豊富さ、感覚的な、直観的な豊かさを一度研究してみませんか。(おわり)
(短信)
福島原発事故関連費と原発コストを「電気の託送料金」に転嫁
原子力損害賠償・廃炉等支援機構法改定案が、5月10日の参議院で可決成立した。自・公・民進・維新が賛成。これは、福島原発廃炉費6兆円を、電気の託送料金に転嫁し、電力消費者全般から無差別に徴収するというもの。託送料金に転嫁することで、原発から作った電気を拒否する新電力の利用者からも徴収する仕組み。今後、廃炉費用が増えても、そのまま転嫁される。
東電を破たん処理せず、金融機関の債権放棄もさせないでおいて、原発と関係ない電力の消費者にまで福島原発廃炉費を負担させるというとんでもない仕組みである。