共謀罪廃案へ国会デモ
警察国家・監視社会を許さない
4月6日
野党の反対を押し切って共謀罪審議入りが強行された4月6日、東京・日比谷野外音楽堂で「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会」(主催:共謀罪NO! 実行委員会/戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会)が開かれ、3700人が参加した(写真)。開始20分後には入場制限がかかり、市民の関心の高さが示された。
「テロ等準備罪」と称しているが当初の法案では「テロ」の文字さえなかった。現法案でもテロの定義はなく、おまけに「等」はテロ以外の全てだという。「テロリズム集団等」についても指定や限定はなく法律によるのではなく、警察や検察が勝手に決められる構造で、そもそも「準備行為」まで「その他」付きになっている。国際条約やオリンピックとの関係を口にするが法律的関係も法文的内容も関係が見られない。野党質問のうち40項目が回答不能など、法案自体のでたらめさが発言者から明かされた。
また、治安維持法や国旗国歌法などを例に、一旦法律が成立すると必ず適用対象が拡大されると警鐘を鳴らした。秘密保護法・安保法制の成立を許した上での本法案があり、さらに家庭教育支援法なるものが控えている。森友問題に典型的に現れているように、権力者による国家の私物化が横行し、官僚は自民党の召使といえるほど堕落し、マスコミは政府の主張を垂れ流すだけ。安倍政権打倒と結びつけて共謀罪法案廃止を勝ち取ろうと、署名運動・国会前集会・国会包囲行動が提起された。
集会の後、参加者は、日比谷公園から国会にむけてデモをおこない、「共謀罪NO!」のプラカードを掲げ、「憲法違反の共謀罪を許さない」とコールを繰り返した。衆議院議員面会所と参議院議員面会所の前では、野党各党の国会議員に、「共謀罪法案を廃案に!」と請願をおこなった。
米軍のシリア空爆を弾劾する
朝鮮戦争を挑発する米日
米トランプ政権は6日、巡航ミサイル「トマホーク」59発で、シリア空軍基地を攻撃した。シリアのアサド政権が「化学兵器を使用した」ことを理由にしているが、その具体的な証拠は示されていない。まさに国際法を無視した暴挙である。
今日のイラクとシリアの惨状を生みだしたのは、03年3月、米ブッシュ政権が、存在しない「大量破壊兵器」を理由にイラク戦争に突入したことによる。米国は再び中東諸国を際限のない戦火のなかに投げ込もうとしている。
トランプ大統領は今回のシリア空爆が、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)にたいする「警告」であると公言し、現在、原子力空母カールビンソンを主力とする第1空母打撃群を朝鮮半島沖に向けて航行させている。力づくで北朝鮮・金正恩政権ををねじ伏せようとしているのだ。こうした米国の軍事的な突出の背景にトランプ政権の政策的行き詰まりがあることは明らかだ。「ムスリム入国禁止」「オバマケアの廃止」「メキシコ国境の壁建設」などの主要な公約が次々と頓挫している。政権発足からわずか4カ月で対外的な軍事行動に打開の道を求めるしかなくなっているのだ。
北朝鮮の「核開発」問題は、米国の極東戦略が生み出したものだ。朝鮮戦争(50〜53年)以降、米国は朝鮮半島を準戦時態勢におくことで極東における米軍のプレゼンスを正当化してきた。北朝鮮側が一貫して朝鮮半島の非核化と平和条約の締結を求めてきたことを無視し続けてきた。その上、76年から世界有数規模の米韓合同軍事演習をおこなって北朝鮮への軍事的圧力を加え続けてきた。その結果、北朝鮮の「核開発」を促進することになった。問題解決の道は、朝鮮半島の準戦時態勢を解消するために北朝鮮との平和条約の締結に向けた取り組みを開始することだ。
にもかかわらず安倍政権はトランプ政権への積極的支持を表明して、危機を促進する役割をかってでて、朝鮮半島に向けて北上中の米空母カールビンソンと海上自衛隊との合同演習をおこなおうとしている。これは日米両軍による重大な北朝鮮にたいする戦争挑発行為であり、東アジアを戦火に引きずり込むものだ。米日両政府の戦争挑発を断じて許してはならない。
「期限切れ」でも工事を強行
辺野古新基地 市民が連日抗議 県も行政指導
キャンプシュワブゲート前の座り込みは1000日目を迎えた(1日 名護市内) |
諦めなければ勝てる
3月31日 名護市辺野古の新基地建設をめぐり、沖縄防衛局が2014年8月に仲井真弘多前知事から得た県の岩礁破砕許可が31日、期限切れを迎えた。沖縄防衛局は汚濁防止膜を固定する大型コンクリートブロック228個の投下をすべて終えた。
防衛局は今後、県にたいし許可の前提となる漁業権が消滅したとして許可を申請せず、工事を続ける方針。県は4月1日から現場に監視船を派遣し、防衛局の作業状況を監視する。岩礁破壊行為に及んだ場合は刑事告訴などを検討している。
4月1日 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で、新基地建設に抗議する市民が座り込みを始めて1000日を迎えた。ゲート前では「基地の県内移設に反対する県民会議」の呼びかけで「1000日集会」が開かれ、600人の市民が参加した。
集会開始前に、山城博治沖縄平和運動センター議長が姿を見せ「私たちは諦めずに座り込むことが大事。勝つまで諦めない。諦めなければ必ず勝てる」と訴えた。
集会では、高里鈴代共同代表の「今日も明日もあさっても一日一日を重ねて、確実に工事を止めていこう」の発言に大きな拍手が起こった。国会議員や県議は「絶対に新基地は造らせない」と決意を述べた。参加者は、1日も休むことなく続けられてきた座り込みを続けることを決意し「最後まで諦めない」と拳を突き上げた。
県はこの日、漁業取締船「はやて」で3時間にわたって大浦湾の現場を確認。防衛局の作業はなかった。
期限切れの作業再開
3日 沖縄防衛局は、海底を掘削するボーリング調査を実施。1日に岩礁破砕許可が切れて以降初めての海上作業。県は、漁業取締船「はやて」を派遣し作業を確認した。また、防衛局は護岸工事に向けた、仮設道路の整備にも着手した。汚濁防止膜の設置を終え次第護岸工事を始めると見られる。この日、ゲート前では石などを積んだ工事車両50台が基地に入った。
4日 キャンプ・シュワブ基地内に防衛局が整備した「作業ヤード」で、護岸工事で使うとみられる消波ブロック(テトラポッド)が確認された。海上でのボーリング調査もおこなわれた。
5日 県水産課の担当者が沖縄防衛局を訪ね、「許可なく作業が続けられている」ことにたいし「許可申請するよう」行政指導した。
ゲート前では、統一行動に190人が座り込んだ。通常より参加者が多く、機動隊は手出しができず資材搬入もなかった。
6日 ゲート前に120人が座り込んだ。しかし、午前9時と午後3時に強制排除がおこなわれ、工事車両55台が基地に入った。この時の攻防で女性2人が不当逮捕された。1人は公務執行妨害と傷害。一人は刑特法。それとは別に、普天間基地・野嵩ゲート前でも男性1人が刑特法で不当逮捕された。刑特法の2人はイエローラインをわずかに超えただけだ。米軍の苛立ちが垣間見える。3人は7日夜、釈放。
8日 ゲート前に180人が座り込んだ。資材の搬入はなかった。しかし、海上では汚濁防止膜を張る作業が確認された。海上行動隊は抗議船3隻とカヌー14艇で抗議。(杉山)
(お知らせ)
5〜6月の『未来』の発行日が変わります
5月は11日(木)と25日(木)です。6月は8日(木)と22日(木)です。7月以降は第1・第3木曜発行に戻ります。
2面
安倍政権の「働き方」改革を斬る 第1回
過労死100時間残業の合法化
森川 数馬
2015年度の過労死・過労自殺は、労災認定されただけでも189件にのぼり、2日に1回の割合で過労死事案が起きている。「過労死」という用語は1970年代の後半に登場した。87年の国鉄分割・民営化と85年の労働者派遣法および男女雇用機会均等法の成立による労働法制改悪の開始から30年。日本の労働環境は大きく変わろうとしている。この連載では、3月28日に決定された「働き方改革実行計画」(以下、実行計画)批判と新たな労働運動の方向性について報告する。
2015年12月25日、過労自殺した電通の高橋まつりさん(当時24)の母、幸美さん(54)は「月100時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか」と「実行計画」をきびしく批判した。遺族の代理人を務める川人博弁護士も「耳を疑った、月100時間残業しなければ倒産するような会社があるのか」と弾劾した。
3月28日、働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)の最終会合を開き、残業時間の罰則付き上限規制などを盛り込んだ「働き方改革実行計画」を決定した。今秋の臨時国会で関連法の改正案を成立させ、19年度の施行をめざすとしている。
実行計画は、経済再生のため「生産性の向上と労働参加の向上が必要」として「多様で柔軟な働き方」を強調。「同一労働同一賃金」「長時間労働」「柔軟な働き方」など11項目にわたる。時間外労働の上限では「2〜6月の平均で月80時間以内」、繁忙期では「月100時間未満」(99時間でもOK)として、年720時間とした。しかし休日労働を含めれば毎月80時間、年960時間まで可能となるもので、「抜け穴だらけ」とただちに批判されている。年720時間、月100時間まで残業を合法化するものである。厚生労働省認定基準では過労死ラインを、月80時間が2〜6カ月、月20日出勤とすると1日4時間以上の残業としているが、これを容認したものである。
年720時間の残業は、休日を除けば1日3時間程度に相当するから「1日11時間労働」を「合法化」するようなものだ。また運送業と建設業については、規制の適用を5年間猶予し、5年後に運送業は「年960時間(月平均80時間)」、建設業は原則として一般の業種と同じ規制とするとし、これも過労死ラインを合法化した。
さらに、次の始業まで休息時間を保障する「勤務間インターバル」(ヨーロッパでは11時間が基本)は時間を明記せず努力規定にする一方で、裁量労働制や「高度プロセッショナル制度」(残業代ゼロ)法案の早期成立を明記した。このことは残業100時間を合法化したうえで、それを残業として認めないと考えている。これは8時間労働制を消滅させるものであり、奴隷労働地獄の出現である。
「同一労働同一賃金」では、基本給や一時金について、企業が判断する「能力」や「貢献度」に応じた支給額の違いを容認した。これではとうてい同一賃金とはいえない。 また、最低賃金は1000円をめざすとしたものの「年3%程度の上昇」として数年後に先送りにし、地域格差の是正を放棄した。
「非雇用型テレワーク」などの請負自宅労働という労働法が適用されない低賃金労働者をつくりだすことや、大企業のリストラを勧める転職・再就職支援や、「高度人材」の名で外国人労働者の受け入れ拡大なども打ち出した。
労働基準と政策の根本を破壊
3月28日の働き方改革実現会議で安倍は「実現計画」について「戦後日本の労働法制史上の大改革」とのべたがまさにそのとおりだ。「残業月100時間未満」に注目が集まったが、問題の核心は8時間労働制の解体にある。まがりなりにも現行の労基法では、労働者代表の合意なき残業は違法だ。「8時間労働制」が形式的に残っており、それをもって労働者は争うことができる。
ところが、実行計画が法になるということは、「8時間を越えて労働させてはならない」(労基法32条)という規定が消え去るのである。このことの持つ意味はとてつもなく大きい。まさに「奴隷労働」への逆転である。ところがこの点に警鐘を鳴らす声が余りに小さい。声を大にしてくり返しアピールしなくてはいけない。
また今回の実行計画は、労働条件決定の労使自治・労使対等原則(ILO宣言)を破棄するものだ。労働政策審議会(労政審)を形がい化させ、政府主導で労働政策を決める「働き方改革実現会議」をつくったことがそのあらわれだ。
16人の会議メンバーのうち労働者側は神津里季生連合会長ただ一人。使用者側も2人だけだ。残りは安倍首相ら閣僚が8人と学者ら5人で構成されている。公労使3者が同数の労政審と比べると労働者側は4〜5人少ない計算になる。労働政策を公労使3者の合意を得て進めるという「3者構成原則」を骨抜きにして、政府主導で決定するねらいが鮮明だ。労政審では事務局を厚労省が務めているが、「働き方改革実現会議」では労働政策を所管する厚労省を排除し、官邸サイドでメンバーを占めている。この点でも従来の労働政策を根本的に破壊するものである。(つづく)
投稿
共謀罪は社会を一変させる
永嶋 靖久(大阪弁護士会)
共謀罪のある社会
そもそも論の話をします。「悪いことをしたらおまわりさんに捕まるけど、悪いことを考えたり喋ったりしただけではおまわりさんに捕まらへん。おまわりさんに捕まるような悪いこというのんは誰が見ても分かるように法律にキチンと書いたある」
これは、漠然とかもしれへんけど、みんな誰でも毎日の暮らしの前提にしてることで、この前提があって初めて、毎日、普通に安心して暮らせます。
けど、あんまり当たり前すぎて、その大事さがみんな、なかなかわからへん。その当たり前のことがなくなってしまうとか想像でけへん。「おまわりさんが、どこで誰が何を喋ってるか、考えているか一生懸命見張ってる。悪いことを喋っただけで、考えただけでおまわりさんが捕まえに来る。けど、何が、喋ったり考えたりしたらあかん悪いことか、ようわからん」。そういう社会、つまり共謀罪がある社会が、どんなもんか、なかなか想像でけへん。
国家の歯止めを失う
国家とは暴力を正当に独占する装置やと有名な社会学者が言いました。警察とか軍隊、市民を捕まえて、刑務所とかに閉じ込めとける力を持ってる、鉄砲とか大砲もってて、抵抗する人間を殺す力を持ってる。考えてみたら、死刑と戦争いうのんは、間違いなく究極の暴力なわけです。ただ、暴力やけども正当な暴力やいうことになってて、その正統性、「それやったらその暴力もかまへんかな」という理由のひとつに、さっきの「悪いことをしたらおまわりさんに捕まるけど、悪いことを考えたり喋ったりしただけではおまわりさんに捕まらない。おまわりさんに捕まるような悪いことというのは誰が見ても分かるように法律にキチンと書いたある」というのがある。
これを難しい言葉で言うと、「既遂を処罰する原則」とか犯罪と刑罰はキチンと法律で決めとく「罪刑法定主義」という言葉になると思うんですけど、この原理原則があることが国家がふるう暴力の正統性のひとつの根拠やったはずです。
国家のこの暴力の発動について、この原理原則が失われたときに、暴力の歯止めがなくなったときに、普通の人の普通の暮らしがどう変わってしまうか。その変化はすぐには目に見えへんやろうけど、何年か経ったときには、普通の人の普通の暮らしいうのんは、今とは全然違う、破壊的に姿が変わると思います。
自民党改憲草案は、「明治憲法への逆戻りではなく慶安の御触書への逆戻りだ」と憲法学者は言うらしいですけど、共謀罪も「現代の治安維持法」とか「戦前への逆戻り」とかいうよりは、江戸時代とあんまり変わらへんようになってしまう。しかも、完ぺきな監視社会で。
運動の力で止める
公明党が夏の都議選も近いからと、あんだけ共謀罪の審議入りを先延ばししたがってたのに、最後は折れてしまった。それだけ自民党が本気で、公明党がなんぼグチャグチャ言うても許してくれなかった。片一方で、民進党の方は本気で止める、本気で喧嘩をする気があるようには見えへん。その気があったら、もっとできることは一杯あったはずやから。
総理大臣は、法案についてていねいに説明しますとはいうけど、議論しますとは言わない。説明するだけで説明が済んだら強行採決。与党は衆院は審議30時間で上がり、連休前には衆院を通して、5月中には参院を通して成立させる、とかいう勝手なスケジュールを作ってるみたいです。
自民党や公明党、維新に「強行するとマズイ」と思わせる、野党には「とことん反対せんとあかん」そう思わせなあかん。
「共謀罪はとてつもなく怖い法律や」「政府の言うてることはとんでもない大嘘や」ということをもっと大勢の人に知ってもらって、大勢の人の運動の力で与党や野党を動かしていかなあかんと思います。がんばりましょう。
3面
「修身」の復活ねらう安倍政権
戦争への道、「教育勅語」閣議決定
須磨 明
3月24日、文部科学省は2018年度から教科化される小学校の道徳教科書の検定結果を公表した。8社から24点(66冊)の申請があり、244件の検定意見が付き、各社が修正し、合格した。同時に高校教科書も7教科196点の申請があり、すべてが合格した。
第2次安倍政権下で教育再生実行会議が道徳の教科化を提言し(13年)、中央教育審議会が「特別の教科道徳」を答申し(14年)、文部科学省は道徳教科書の検定基準を告示した(15年)。小学生用道徳教科書は17年検定・翌年から使用され、中学生用は18年検定・翌年から使用される。
加えて、3月31日、安倍内閣は「教育勅語を教材として用いることまでは否定しない」と閣議決定した。その階級的目的は敗戦で解体された修身教育(教育勅語)の復活にある。
学習指導要領の役割
「学習内容の項目を学習指導要領などで細かく定めた結果、…教科書の内容が画一的で、考える道徳からは程遠い」(3月25日付北陸中日新聞」)、「ふつうの教科では諸科学がものさしとなるが、道徳では国が指定した徳目がよりどころである。戦前、皇国の臣民が守るべき徳目として、明治天皇の教育勅語をトップダウンで強いた構図をほうふつとさせる」(3月25日付「東京新聞」)、「法的拘束力のある指導要領で教える内容を縛ることで、教科書会社に抑制が働いた」(3月26日付「神戸新聞」)、「学習指導要領の内容に従っているか、細部に至るまで検定意見を付けた」(3月25日、「ライブドアーニュース」小宮山洋子)、「学習指導要領が示している内容をすべて満たしていなければクリアとならない」(3月24日、NHK時論公論)などと報じられている。
これらのコメントに見られるように、多くのメディアは文科省が強権を振るって、道徳内容を押しつけ、国定教科書化されようとしていることに危機感を表明している。「読売新聞」でさえも、「(教科書の内容が)画一的な印象は否めない」「(道徳教育は)特定の考えの押しつけになる」と懸念している。
他方「産経新聞」は「思いやりや公共心、生命の尊さなど人々が暮らす上で欠かせない徳目を、子供たちが考えながら学べるよう工夫されている」とべた褒めである。
郷土愛不足
文科省は学習指導要領にある「正直、誠実」「家族愛」「畏敬の念」「感謝」「礼儀」「公共の精神」など22の徳目にしたがって、教科書会社に強力なタガはめをおこなった。
たとえば、「感謝」では、東日本大震災の復旧作業にあたる自衛隊員や警察官に地元の児童が紙に書いた感謝の言葉を毎日掲げ、礼を言わせる場面を掲載している。これは森友学園で「安倍首相ガンバレ」と叫ばせている洗脳教育と寸分違わない。
「国や郷土を愛する」「伝統と文化の尊重」の徳目があり、郷土愛不足と指摘された教科書会社が「パン屋」を「和菓子屋」(東京書籍、小4)にしたり、子どもたちが遊ぶ「アスレチック公園」を「琴と三味線の店」(学研教育みらい、小1)に変更させている。
東京書籍は少年が監督のバント指示を守らずにヒットを打った話を採用したが、「規則の尊重」に合致しないという検定意見が付いたので、別の教材に差し替えたという。
「規律」を強調し、背景にある事情(たとえば「発達障害」があるとか、家庭的な貧困状態にあること)を無視して、授業がおこなわれると、子どもたちの間に、かえって差別的な感情を生むことになると指摘されている。
体制順応型の人材
斎藤美奈子さんは「4つの視点に基づく22項目を掲げている。…人権についての規定はなし。個人の権利は教えない。差別問題にも触れない。全体に従順で主張しない個を求めている印象だ」(3・29「北陸中日」)と手厳しく道徳教科書の検定基準を批判している。
総じて道徳教育は子どもたちが自分で考え・判断することを禁じ、国にとって望ましい人間像や生き方の枠組みを示し、体制順応を求める教育勅語の世界ではないか。
教育勅語復活許すな
教育勅語を暗唱させるという森友学園の教育方針が社会的に大きな波紋を投げている。稲田朋美防衛相は「教育勅語の中の親孝行とか、私は非常にいい面だと思います」(2・23)、「教育勅語の精神、日本が道義国家をめざすという精神は今も取り戻すべきと考えています。教育勅語自体がまったく誤っているというのは、私は違うと思います」と発言し、3月31日には、安倍内閣は「教育勅語を教材として用いることまでは否定しない」と閣議決定した。
しかし、教育勅語の本質は「一旦緩急あれば義勇公に奉じ以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし(国の非常時には天皇のために命をかけよ)」にあり、1948年に国会で排除・失効が決議されている。
藤田昌士さん(立教大学元教授)は「教育勅語は政治上の君主の名において道徳を命令するというもの。すべては天皇にたいする忠義に従属し、その一点に収斂するという価値体系、価値構造」「閣議決定で学校の教材にまで踏み込み、教育勅語復活への道を開くもの」と強く批判している(TBS報道特集)。
以上のように、道徳教科書の検定(検閲)と教育勅語に関する閣議決定は一体となって、日本の戦争への道を掃き清めようとしている。猛然と反対に立ち上がらねばならない。
森友学園 国有地不正払い下げ
市民が近畿財務局を告発
大阪地検に近畿財務局職員らを刑事告発する豊中市民・弁護士ら(3月22日) |
森友学園による「瑞穂の國記念小學院」建設にかかわる国有地の不正払い下げ疑惑は、地元豊中市の木村真市議らの市民運動によって暴かれた。
木村市議らは今年2月8日、森友学園の小学校建設に疑問を持ち、国有地の払い下げ価格に関する公文書開示を要求した。これによって森友学園が本来の価格から8億円も値引きして払い下げを受けていたことが明らかになった。この追及があと半月遅れていたら、不正は隠されたままで、この4月には国粋主義教育推進のモデル校として「瑞穂の國記念小學院」が開校するところだった。
3月、森友学園事件にかんする2度の市民集会が開かれ多くの市民が参加した。3月22日には230人が近畿財務局職員らを背任の疑いで刑事告発し、4月6日に大阪地検はこれを受理した。
4月8日には大阪市内で「検証!『瑞穂の國記念小學院』問題市民集会」が開かれた。そこで大川一夫弁護士は「森友事件と共謀罪はメダルの裏表」であるとし、安倍政権打倒を訴えた。
5月13日には豊中市のアクア文化ホールでで「『森友学園問題』の本質に迫る!!」大集会が開かれ政治学者の白井聡さんが講演する。真相究明と幕引きを許さない運動を続けていこう。(野田章)
米韓合同軍事演習に抗議
京都市内で集会とデモ
4月1日
4月1日、「米韓合同軍事演習反対! 東アジアの平和をめざす4・1京都集会」が、京都市内でおこなわれ、100人が参加した(写真)。主催は集会実行委。同実行委は、米軍Xバンドレーダー基地反対京都連絡会をはじめ、在日韓国青年同盟京都府本部や在日本朝鮮青年同盟京都府本部、関西合同労組など多くの団体が呼びかけてつくられた。
冒頭、米韓合同軍事演習(3月1日〜4月30日)や、サードミサイル配備に反対する韓国民衆のたたかいの映像を上映。実行委を代表して大湾宗則さんがあいさつした。
元在日韓国人政治犯で韓国問題研究所代表の康宗憲さんが講演し、米韓合同軍事演習の内容を説明。米軍1万人余、韓国軍30万人余、3兆円の予算を使った世界最大規模の軍事演習であり、朝鮮民主主義人民共和国の指導部殺害を目的とした演習を、周辺地域で大規模におこなうという軍事挑発である。米韓合同軍事演習と言っても、実態は日米韓の合同演習であると解説。
参加者はこの大規模な戦争挑発(戦争行為)に反対し、東アジアの平和のために何が問われているのかの理解を深めた。
呼びかけ団体のうち6団体があいさつしたあと、集会決議を採択しデモに出発。観光客や買い物客で賑わう四条通り、河原町通りを通って市役所前までデモ行進した。
大阪にカジノはいらない
3月25日 市民団体が集会開く
大阪府や大阪市などがカジノを含むIR・統合型リゾート施設の誘致を進める中、これに反対する大阪の市民団体が3月25日、エルシアターで「カジノあかん3・25大阪集会」を開き960人が参加した。集会実行委員長桜田照雄阪南大学教授が開会あいさつ。「安倍がカジノ業者トランプを忖度し、わざわざ国会を延長してカジノ法を成立させた。しかし具体的なルール作りはこれから。法ができたからといってすぐに賭博場ができるわけではない。とくに夢洲はゴミの島、豊洲と同じ問題がきっと起こる。カジノが開かれればギャンブル依存症の問題は深刻になり、地域社会を崩壊させる」と訴えた。
全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会代表新里宏二弁護士は「韓国やシンガポールではカジノによる借金が原因で自殺する人も出ている。カジノは人の不幸に乗った『成長戦略』だ。日本では絶対に認めてはいけない」と話した。
依存症患者家族の女性は、「昔の私のように泣く子どもを作ってはいけない」と切実に訴えた。日本最大級の競艇場がある大阪市住之江区の住民は、負けた人間によるピストルの撃ち合いまであったと発言。ほかの発言者も自分の経験に引き寄せてギャンブルが社会を崩壊させるものだとリアルに語った。集会後、扇町公園までデモ行進した。
4面
サバルタンは語るか(その2)
1970年「7・7自己批判」とは
高見 元博
少し長くなりますが、革共同の「7・7自己批判」とは何であったかを振り返ってみます。(「7・7思想」と入管闘争―70年7・7自己批判以来の「7・7思想」と入管闘争の検証と総括について―中沢慎一郎(『展望』6号)より)
「わが革共同をはじめとする革命的左翼は、1970年7月7日に華僑青年闘争委員会に結集する在日中国人青年から告発・糾弾を受け『7・7自己批判』をおこなった。(略)70年7月7日に革命的左翼と華僑青年闘争委員会に結集する在日中国人の共同のとり組みとして7・7入管集会が準備されていた。(略)しかしこの7・7集会の開催をめぐって、日本の革命的左翼の側の消極的かかわりや没主体的あり方にたいして華青闘からきびしい批判が出され、集会の2日前の7月5日の実行委員会において華青闘は抗議し、実行委員会の席上から退場する事態に立ちいたった。しかしわが革共同の同志は、華青闘の抗議退場の意味を真剣にとらえようとせず、華青闘の抗議退場に、『(出ていっても)いいじゃないか』という差別的敵対的暴言を浴びせたのである。華青闘は、革共同をはじめとする日本の革命的左翼のあり方をきびしく糾弾した上で『決別宣言』を発し、日本の革命的左翼と華青闘との共同のたたかいは失われてしまったのである。(略)
在日人民をプロレタリア革命の主体的存在として措定したこと。そして、在日人民にとって日帝打倒・日本プロレタリア革命とは、帝国主義本国における民族解放・革命戦争の貫徹の形態である。
日本の労働者人民がプロレタリア革命の主体として自己を形成する上で、差別・抑圧とのたたかいを不可欠のものとして措定したこと。(略)この資本主義社会は、帝国主義の段階に到達する中で、あらゆる差別・抑圧を支配の柱として組みこみ、労働者階級を絶えず差別主義と排外主義のもとに屈服させ、あるいは加担させることで成立している。したがって労働者階級は、この差別・抑圧とのたたかいを極めて自覚的・目的意識的に自己の課題としてすえてたたかうこと抜きに、自己の階級性を形成することはできないのである。
この入管闘争の日常的実践的闘いによって、差別と抑圧をうち砕くことを通して在日人民との分断をのりこえ信頼関係を回復し、ともに日本プロレタリア革命を共同でかちとることを確認してきた。総じて、差別・抑圧の課題を、プロレタリア革命の正面課題としてすえきったということである。」
上から目線
「7・7自己批判」というのは上のようなことだそうです。自己批判だから、抑圧民族、差別する側からの目線なのですね。これを被抑圧、被差別の側からの言葉にする必要を感じます。
「在日人民にとって日帝打倒・日本プロレタリア革命とは、帝国主義本国における民族解放・革命戦争の貫徹の形態である」とされており、プロレタリアの革命に「合流する」「内在化する」ことだとされているのかと思います。それでは在日人民(被差別・被抑圧人民)の自己主張はどこへ行くのかなという疑問がわきます。在日人民はプロレタリア革命に「内在化」しないと自己解放できない、自己主張できないという理屈のように読めるからです。在日人民との関係では「不十分な」共産主義者の党に「内在化せよ」というのでは「不十分な者に従えというのか」と捉える人がいても当たり前のことではないでしょうか。
革共同(全国委)のように指導部絶対主義の党のなかでは、入党しようとする被差別・被抑圧人民は不十分な指導部に「屈服」せねばならなかったのではないでしょうか。
なぜ「日本プロレタリア革命」を媒介させるのか
なぜ「在日人民にとって日帝打倒とは、帝国主義本国における民族解放・革命戦争の貫徹の形態である」と書かずに「=日本プロレタリア革命」という言葉を介在させるのかという疑問です。「在日人民との分断をのりこえ信頼関係を回復し、ともに日本プロレタリア革命を共同でかちとることを確認してきた」(いずれも傍線は引用者)ともされています。「日本革命」ではなくわざわざ「プロレタリア」と書いています。おそらくこれが旧来の共産主義論の限界ギリギリの延長なのであり、サバルタン論を媒介にしないと乗り越えられない「へり」なのでしょう。
共産主義をプロレタリア革命と等置するのが旧来の共産主義論です。はたして、「プロレタリア革命」以外には共産主義社会は建設不可能なんでしょうか。植民地革命によって社会主義・共産主義を打ち立てることは不可能だというのでしょうか。農民を主体としては共産主義革命は不可能なことでしょうか。「共産主義は世界革命でないと実現できない」としたら、その担い手の多くはプロレタリアではない被抑圧民族人民なのではないでしょうか。被抑圧民族人民という場合、そのなかのプロレタリアを抽出するのではなく、農民や被差別人民を含むことは言うまでもありません。
イタリアの革命史の主体を研究したグラムシは、その多くが非プロレタリア人民によって担われたものであったことから、サバルタンによるヘゲモニー(知的・モラル的指導)の確立という結論に至ったのです。
サバルタン論の可能性
サバルタン論はその「へり」を乗り越える論理を内包しているのです。『未来』3月2日号に書いたことですが、繰り返すと、「サバルタンとはプロレタリアであり農民であり、被差別・被抑圧人民であるからです。あるがままの農民が指導者であり被差別・被抑圧人民が指導者であるわけです。農民の原則による指導、被差別・被抑圧人民の原則による指導という考えが、プロレタリアの原則による指導に等値されます。
三里塚農民の農民運動的原則による指導であり、沖縄人民の自治要求による指導性の承認、しょうがい者、『精神病者』、部落民、被抑圧民族、女性の自己解放の指導性の承認が、マルクス主義として成立するという理屈なのです。
共産主義者ではないサバルタンがいかにして自己のヘゲモニー(知的モラル的指導)を確立していくのか、共産主義(論)を媒介にしたプロレタリアの指導性の承認としてではなく、自らの自律的(自立的)論理を発展させて、自らの利害を発展させることのなかで、一つの結社を形成するというイメージです。沖縄人民の自己決定権の要求それ自体をプロレタリアと共通の一つの結社の路線とするというイメージです。(松田博さんがそういう言葉を使うのか、グラムシがそうだったのか分かりませんが、『党』という言葉を使わず『結社』(アソシエーション)という言葉を使っています)」ということです(3月2日号では一部略されています)。
とことんの自己主張
これは「プロレタリアへの不信」といった脈絡のことではありません。なぜとことんの自己主張が自己解放とはならないのかという次元のことなのです。プロレタリアにおいてはとことんの自己主張は自己解放に至るとされます。ではなぜ在日人民(被差別・被抑圧人民)は、とことんの自己主張すなわち日帝打倒イコール自己解放という論理にはならないのでしょうか。在日人民はとことん自己主張することが許されないのかという疑問がわくわけです。「プロレタリア革命の承認という論理性」、「共産主義という高み」を媒介にしないと、自分の気持ちを表すことができない存在だと規定されてしまうように思えます。
「被差別・被抑圧人民や農民単独での共産主義革命は不可能なんだから仕方ないのではないか」という理屈が考えられます。もしプロレタリアがそう言うならそれこそ驕りです。被差別の側が言うなら「屈従」です。安田派内の被差別人民が言いそうなことです。先ほども述べたように「世界革命の担い手の多くは被抑圧民族人民」なのではないですか。その理屈の限界を乗り越えるものこそサバルタン論なのです。「従属的社会集団」(サバルタン集団)による革命すなわちヘゲモニー(知的モラル的指導)の確立という論を立てれば、サバルタンの自己主張は知的モラル的指導である限りにおいて、自己解放に至るという必然性があるのです。
三里塚闘争50年集会
今年の2・12三里塚50年関西集会は、農民運動としての三里塚闘争を再構築する試みとして、実体的にも北原派、熱田派の対立の枠を超えたものとして実現しました。その内実を、共産主義者はどう受け止めるのか、自らの論理としうるのかが問われています。
食(生ごみ)と農との循環ということが提起されました。市東孝雄さんが農民として生きていくのが三里塚闘争だと提起されました。安田派が言うような「市東さんが共産主義者になることが三里塚闘争の目的だ」というような倒錯した論理を媒介にしないと三里塚農民を支援しえないというのではないのです。
旧来の共産主義論からする、「三里塚闘争は国家権力打倒闘争だ」という論理を媒介にしないとたたかえないということではなく、農民運動それ自体、すなわち「農民が農民として生きていくこと」を共産主義論の豊富化として受容できるのかということです。
『未来』の同じ3月2日号に掲載された、「安芸さん」の文章からはそのような内容において受け止めたことが読み取れました。グラムシのサバルタン論は安芸さんの提起を共産主義論に高める論理を内包しているのではないかと思えます。
参考文献
『サバルタンノート注解』『知識人ノート注解』いずれもグラムシ著 松田博訳編 明石書店
『グラムシ思想の探求』松田博著 新泉社
『グラムシを読む』松田博編 法律文化社
『グラムシ入門』イタリア共産党編松田博等訳 合同叢書
『グラムシ研究の新展開』松田博著 御茶の水書房
5面
国立ハンセン病療養所 長島愛生園見学記
差別と闘った歴史から学ぶ
稲村 活生
3月のある1日、岡山県にある国立療養所・長島愛生園を見学しました。ハンセン病者とその治癒者、入所者への差別とそのたたかいの歴史を学びました。瀬戸内海に浮かぶ島の広大な敷地に隔離収容された人々の訴えが、切々と伝わってきました。
家族捨て、名を隠す
長島に行くには、邑久長島大橋を渡ります。外界から終生隔離を強制された入所者が、外に開かれた象徴として17年間、完成を待ちに待った橋です。1988年に完成したとき、入所者は「人間回復の橋」と名づけたそうです。
さっそく歴史館に入って、展示物を見学したあと、学芸員の方から説明をうかがいました。入所者自治会が編集発行したパンフの説明とあわせて、長島愛生園が国立の第1号の療養所として1930年に開設されて以降の歴史が浮き彫りになります。
現在の長島愛生園
説明によると、現在の入所者全員がハンセン病は治っており、正確にはハンセン病の後遺症をもつ「障害者」と呼ぶべきであるそうです。現在の入所者は190人、平均年齢85歳、平均在園期間は60年といいます。
ハンセン病とは、昔は「らい病」と呼ばれて、怖いイメージをもたれた細菌感染症です。しかし感染力が非常に弱く、感染しても発病するまでに数年かかること、発症しないで治癒してしまう人も多いといいます。1947年にプロミンという特効薬が初めて使われ、今は飲み薬で簡単に治るそうです。
それにもかかわらず、1931年に制定された「らい予防法」によって終生隔離が決められ、1996年に法が廃止されるまで続きました。その間、「患者作業」や「断種・堕胎」の強制など、ひどい「人権侵害」がおこなわれたといいます。それにたいして、入所者自身が立ちあがって、改良をかちとったことが語られました。
収容桟橋・納骨堂
園内を案内されるなかで最初に目についたのが収容桟橋です。現在は使われていませんが、強制隔離、生涯隔離がおこなわれたときには、ここが入所者にとっては、家族や社会との永遠の別れの場となったそうです。ここから上陸した入所者は、回春寮という収容所に入れられ、持ち物を全部取り上げられてクレゾールの風呂に入れられたといいます。
次に目についたのが監房です。1931年から53年まで実際に使われたそうです。逃亡を企てた入所者や秩序を犯したとされた入所者が園長の権限で裁判もなしに1週間ほど入れられました。処分件数75件、人数は158人で、なかには監房に収容中に亡くなった人もいるそうです。
最後に見たのが「万霊山」という納骨堂です。ふつう病院には納骨堂はありません。ところが全国に13カ所あるハンセン病の療養所には、差別の中で家族の引き取り手がない人が入れられる納骨堂があるそうです。愛生園の納骨堂には3641柱が入っており、そのうち半数は無名であるといいます(没後も名を明らかにできなかったということ)。
入所者のアピール
最後に、80歳になる入所者自治会の方が実名で講演されるのをお聞きした。次のようなお話でした。
らい予防法が90年間われわれを管理してきた。われわれを人間的に認めず施設側の言うことが絶対だった。軍国主義の中で「民族浄化」をモットーに血統的に優れた人だけを必要とする政策が取られた。「カタワ(ママ)」と言われた人は必要のない者とされ、完全隔離された。村の人に通告されると強制的に隔離された。収容所には火葬場と監房が最初から設置され、死ぬまで出さない。火葬された後でも元の場所に帰れない人が多い。
2001年に熊本地裁の判決で国が敗訴、当時の小泉首相が隔離政策の誤りを認め、それ以降国は支援を始めたが、もう遅すぎた。現在の入所者190人中、90歳以上が50人近く、100歳超が7人、平均年齢は85歳を超えている。解放されても行き場がない人がここにいる。
「らい予防法」下で家族自身が行方を隠したり、収容者自ら本籍地を移したり、偽名で暮らす人も多かった。裁判で勝訴して名前を戻した人も多いが、まだ3分の1が偽名・園名で暮らしている。
この話を聞いて、社会的差別の苛酷さに私たち参加者は身が引き締まる思いで聞き入りました。最後に、「らい予防法」廃止のたたかいの過程で、医療者がどういう役割を果たしたかという質問があり、医師・宗教者・弁護士もほとんど反対運動に立ち上がった人はいないと、痛苦の思いを込めた告発がなされました。穏やかに、しかし厳しい提起に参加者は粛然として聞き入りました。
優生思想との闘い
この見学を通して強く感じたことは、ハンセン病患者にたいする厳しい差別、抹殺攻撃が社会的差別を基礎にしていることです。民衆自身のなかにある差別意識が行政や権力に徹底的に利用されました。
それに基づく「無らい県運動」や「らい予防法」が世界に類を見ない国家的犯罪としての隔離・抹殺攻撃となって21世紀まで続きました。否、「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟で原告が勝利した2001年の熊本地裁判決以降も続いていることを知りました。また政府がこの裁判を受けて制定した法律でも、死没者、非入所者、朝鮮・台湾などの旧植民地や占領地の人びとは対象に入っておらず、賠償でなく補償とした問題があるようです。
しかも断種や堕胎などの強制は「らい予防法」下でもおこなわれていましたが、戦後1948年に成立した優生保護法でそれを追認強化しました。「不良な子孫の出生を防止する」ことを明文で謳ったこの法律により、ハンセン病患者にたいする「断種」「堕胎」が強制されました。この法律が1995年まで残っていたことは驚くべきことです。「障害者」抹殺でナチスを批判することは当然ですが、自国の優生思想と優生保護法とたたかえなかったことを日本の労働者人民は厳しく反省する必要があると感じました。
最後に、ハンセン病患者の解放が患者自身のたたかいによって勝ち取られたことを学びました。1951年に各療養所の自治会を基礎に患者協議会を結成、1953年には全患協が国会裏や厚生省前に抗議の座り込み、多摩全生園から国会に向け入所者がデモを敢行するなど、文字通り「自己解放」の思想が差別を打ち破るカギを握りました。こういう歴史を学ばなければならないと思います。
3月20日 小出裕章講演会
脱原発の道筋 100年後の人々へ
3月20日、奈良県生駒市で「小出裕章講演会」がひらかれ、会場に入りきれない400人が参加した。主催は、同実行委員会で、脱原発をめざす奈良県議会議員連盟が共催。
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)は、「脱原発の道筋を考える」〜100年後の人々へ〜というテーマで講演し、原発問題の全体像をわかりやすく、説得力をもって語った。以下、小出さんの講演を紹介する。
私が小さい頃に抱いていた原子力の夢は、今日ではすべてウソであることが証明されてしまった。@原子力発電はウランの原子核分裂を利用する湯沸かし装置にすぎない、A100万キロワットの原発1基が1年間で1000キログラム(広島原発1000発分)の核分裂生成物(死の灰)を生み出す、Bウランは石油よりも早く枯渇してしまう、C事故が起きなくても電気料金は火力発電より高い。
次に、福島第一原発事故について述べる。@4号機の中にあった使用済み燃料プールの水がなくなれば、東京が壊滅してしまう危険性があった。これはなんとか回避できたが、政府はこの危険性を住民に知らせていなかった。A大気中に放出した放射性物資(セシウム137など)で、広大な地域が「放射線管理区域」となり、人々は今もその中で生活をさせられ続けている。B「原子力緊急事態宣言」は今後何十年も解除できないだろう。融け出た核燃料をつかみ出すことは不可能で、石棺にするしかない。C大地を汚染させてしまったことに何の責任もない子どもが、放射線にいちばん敏感である。おとなはこのことへの責任がある。
福島第一原発事故の責任は東京電力と政府にある。しかし彼らは誰も責任を取っていない。犯罪者が処罰されていない。その犯罪者たちが、今では原発再稼働を進めている。こんなことを許してはならない。
100万年も管理しなければならない膨大な量の“死の灰”ができてしまった。これをどうするのか、その処理方法さえわかっていない。われわれは、未来の世代にこのゴミを押しつけてしまった。この責任はわれわれにもある。
エネルギーを浪費しているのは、高度工業化社会の国々。日本は、これらの国の一員だ。こんな社会をなくして、エネルギーを浪費しない社会体制を作る必要がある。100年後に生きる人々のために、こんな世の中を作り変えよう。
6面
投稿
辺野古に座り込む(下)
普天間「代替」どころか巨大な半永久基地
大浦湾はジュゴンも生息する、世界的にも貴重な豊かな自然に恵まれた海です。そこを土砂で埋め1600メートル2本の滑走路を持つ半海上基地をつくろうと。埋め立て土砂の総量は2100万トン、うち県外から1700万トンを予定。10トンダンプ換算で320万台、県外250万台分という途方もない量です。本土でも反対運動が起きています。計画では完成予定は2020年10月。大浦湾は水深が深く大型艦が接岸可能、強襲揚陸艦「ボノムリシャール」の母港化がねらわれています。普天間の代替どころか、嘉手納と並ぶ大軍事拠点になります。
弾圧と差別
2日目、午後は高江に。昨年の参院選(沖縄は自民現職大臣が落選)の翌日に、150人の村へ800人の機動隊を投入し住民を暴力で排除。直径75メートルのオスプレイ・パッドが建設されました。けが人続出、逮捕者も出る激しい弾圧。大阪府警による「土人、シナ人」という差別・ヘイト発言もありました。突貫工事のヘリパッドは土台部の手直しが必要とか。N1ゲート前テントでSさんは弾圧の酷さ、突貫工事の異様さ、騒音被害を語ってくれました。とくに「オスプレイは騒音が大きく、低周波騒音の不快さも酷い。野鳥が驚き民家のガラスにぶつかり、鶏は卵を産まなくなる。地区から出て行く人もある」と。ヤンバルの森を破壊して作られたヘリパッドです。N1ゲート前には15〜6人のアルソック警備員が24時間交代で立っています。住民の暮らしの敵対物そのものです。
天井知らずの予算増
その日の『沖縄タイムス』は、「2つの基地の建設費が大幅増加」と報じました。辺野古では、契約したゼネコン大成建設が契約変更を10回も繰り返し、当初の60億円から140億円と2・3倍。ヘリパッドも5〜6倍化。社説は、「警備費の増大、地元理解が得られないまま工事を強引に進めた結果が予算面でも露呈」と批判していました。
辺野古は、3月末で岩礁破砕許可が期限切れ。キャンプ・シュワブ内の陸地部分の整備が終わり、5月から護岸工事に取りかかるとされています。汚濁防止フェンス用のブロックは、大半が設置されたもよう。2015年10月の翁長知事による「埋め立て承認取り消し」後の、政府との攻防は昨年12月の最高裁判決で国側「勝利」。和解勧告にも、国は何一つまともな協議をおこなわず、最高裁判決を錦の御旗にゴリ押しです。
昨年10月、山城博治さんが不当に逮捕されました。長期勾留、接見禁止が続き、保釈を求める署名は短期間で4万筆を突破しました(3月18日、保釈!)。
「オール沖縄」から学ぶ
今回の沖縄行きには、「オール沖縄を肌で感じたい」という、もう一つの目的、関心がありました。
私の地域でも昨年の参議院選を契機に「野党共闘」の運動にとり組みましたが、結果は惨敗。オールド会員の頑張りで、困難な事態を何とか持ちこたえています。今年9月には木村草太さんの集会をおこない、その集会を力に市民の共闘、野党共闘をもっと進めたい、「オール沖縄」を地元でも実践したいと思っています。
帰ってから、1月の『未来』、安次富さん知花さん対談を読み返し「目からウロコ」の思いでした。安倍の改憲、戦争国家化とたたかうために示唆に富んだ、豊かな内容が提起されていることに、本当にビックリしました。『未来』読者のみなさん! 辺野古は埋め立て承認撤回、護岸工事とのたたかいなどが重大な情勢となっています。安倍の改憲、戦争国家化との最前線=辺野古を全力で支援しましょう。可能な人は駆けつけましょう。そして翁長知事を、現場のたたかいを支えましょう。
(写真は3月3日キャンプ・シュワブゲート前)
兵庫県 青木 守
安倍政権の社会保障破壊
生活保護基準引き下げは違憲
3月26日、大阪市内で生活保護基準引き下げ違憲訴訟大阪の会の第3回総会が原告を中心に76人が参加して開かれた。弁護団から小久保哲郎弁護士が経過報告をし、和田信也弁護士が国の主張の現状と問題点を提起した。さらに原告、全日本年金者組合、阪南支える会から発言があった。
違憲訴訟は今回新たに奈良県が加わり28都道府県、原告数は900人を超えた。昨年11月にはこれを支える全国組織である「いのちのとりで裁判全国アクション」も結成された。また大阪でも各地域の支える会ができている。
社会保障の「岩盤」
生活保護はさまざまな社会保障制度の根幹をなしており、戦後、ここに手をつける政権はなかった。しかし、安倍政権はこれを「岩盤」として位置づけ、この破壊に全力をあげてきている。これは労基法を労働法制の「岩盤」として位置づけ、労基法破壊を通して労働法制を大改悪しようとしているのと同じである。生活保護制度は貧困と格差の拡大のなかで、貧困に苦しむ人たちの命に直接かかわるものである。立場の違いを超えて押し返していくたたかいが死活的に求められている。
生活保護の解体へ
2013年夏、保護基準を最大10%引き下げる非人間的な攻撃が始まり、それにたいし全国で引き下げ違憲訴訟が開始され、原告、弁護団、支援のたたかいよって国の引き下げ理由のでたらめさが次々と暴露され、勝訴の可能性を積み上げてきている。
しかし、国の生活保護制度破壊の攻撃は止まらない。保護基準引き下げに続き、2015年7月から住宅扶助の大幅引き下げ、同年10月から北海道や東北などの寒冷地の冬季加算の大幅引き下げが強行された。
それだけではない。昨年5月、休眠状態だった生活保護基準部会が再開された。厚労省の強いヘゲモニーのもと、同部会でさらなる見直しが始まっている。見直し内容として、申請者を残酷な自死に追いやるような就労指導のさらなる強化、級地区分の再検討として驚くべきことに大阪の物価水準が神奈川などと比較して低いとして1級地の大阪を2級地に格下げすることや、母子加算を再度廃止することなどが検討され、さらには今年の年末には生活保護法の再度の改悪案の上程が予定されているといわれている。
社会を変える運動へ
総会では稲葉剛さんの記念講演がおこなわれた。稲葉さんは派遣村村長の湯浅誠さんとともに1994年から新宿を中心に路上生活者の支援活動をおこない、3千人以上の生活保護申請をおこなってきた人である。講演ではケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』というイギリス映画を紹介した。映画は心臓病によって医者から働くことを止められ傷病手当の支給を受け始めた男性が、医者でもない福祉当局から「働ける」として傷病手当を無慈悲に打ち切られてしまうところから話が始まる。残忍な国家にたいする怒りを持ち、貧困に苦しむ主人公を撮った同映画はカンヌ映画祭でコンペティション部門の最高賞を受賞した。
稲葉さんは、かつて社会保障の「先進」国だったイギリスが今や真逆となり、社会保障の解体=生存権否定が残酷な結果を招くことをわかったうえで、敢えてやっていると指摘し、「政府がそうであれば私たちは変化を求めるべきだ」というケン・ローチ監督の言葉を紹介した。
保護基準引き下げ違憲訴訟に関わって3年が経つが、この裁判闘争をたたかう原告には国にたいする怒りがある。原告を中心にともに進み、社会保障解体、労働法制解体の攻撃を立場の違いを超えて押し返し、原告が社会を変えていく主体へと一歩一歩前進していることを感じた総会だった。(矢田 肇)
第8期沖縄意見広告
6月4日掲載
毎年5〜6月に沖縄2紙と本土1紙への沖縄米軍基地の撤去を求める意見広告運動が今年も取り組まれています。 今年は政府・裁判所・警察権力が一体となった沖縄の新基地建設反対運動の圧殺を許すかどうかが問われています。「沖縄県知事に対する損害賠償」を示唆して恫喝する安倍政権の動きにたいし、翁長雄志知事は3月25日のキャンプ・シュワブゲート前集会で、辺野古沖の埋め立て承認の撤回を初めて表明しました。沖縄の訴えに全国から応えましょう。過去7回の沖縄意見広告運動は回を重ねるごとに賛同者が増え、昨年は1万人を突破し、世論を喚起する重要な取り組みとなっています。今年は6月5日の朝日新聞、琉球新報、沖縄タイムスの3紙に見開き2面にわたり掲載されます。締め切りは5月15日。ご協力よろしくお願いします。 郵便振替:口座番号 00920―3―281870 加入者名:意見広告