みんなが尊重される社会を
2・19東京 格差・貧困にノー
「格差・貧困にノー!!」総がかり行動に4000人が 参加(2月19日 東京・日比谷野音) |
総がかり行動実行委員会による主催で「2・19総がかり行動―格差・貧困にノー!! みんなが尊重される社会を!―」が東京・日比谷野外音楽堂で開かれ、会場を埋めつくす4000人が参加した。
主催者あいさつした藤本奉成さん(戦争をさせない1000人委員会)は、60年代高度経済成長の時代を振り返り、「貧しかった庶民の生活は物質的に豊になっていった。経済が悪化した際に、国は格差を拡大し、大きな貧困層を作り出す政策をとってきた」と現状を批判した。
メインスピーチの本田由紀さん(東京大学教授)は、「非正規雇用・貧困率・社会保障・女性の権利・教育の保障など、世界的な比較で悪い指標がゴロゴロしている。アベノミクスなるものも結局は格差と貧困を拡大しただけ。富裕層へ増税せず、史上最高の内部留保を得ている企業を減税している」と安倍政権を断罪した。
民進党、日本共産党、社民党、自由党の野党各党が発言。野党共闘の内容を深め、安倍政権を打倒しようと呼びかけた。
元シールズの諏訪原健さん(筑波大学大学院生)は「現在の若者は、自己責任バッシングがはびこるなか、自分の人生を貧困事例として人前にさらすつらさを乗り越え、語るべきことを語って希望につなげたい」と決意を述べた。集会後、銀座に向けて「パレード」に出発した。(島田)
原発事故
自主避難者 住宅支援の継続を
3月末打ち切りに緊急集会
原発事故の自主避難者から切実な声があがった(2月18日 都内) |
自主避難者への住宅支援が3月末にも打ち切られようとしているなか、「原発事故自主避難者の住まいを奪うな! 2・18さようなら原発緊急集会」が都内で開かれた。主催は、さようなら原発1000万人アクション実行委員会。参加者は250人(写真右)。
理念法はできたが
「原発事故子ども・被災者支援法」という理念法はできたものの、それに沿った具体的支援は何もない。既存の「災害救助法」を通して避難先自治体に丸投げした住宅支援が唯一。国・福島県・東電は何も支援しない。唯一の支援は、家賃など補助が最大で月3万円。しかも収入要件(月収21・4万円以上でアウト)がある。
福島県による調査では7割が、4月以降の住居が未確定。不動産会社・家主と再契約の必要が生じ、多額の出費となる。継続拒否の態度を取る不動産会社もある。ささやかな援助を打ち切る不当性が弾劾された。
当事者の声、声、声
当事者からは避難の決断・継続の厳しさや生活を維持する困難さが具体的に語られた。
「そもそも自分達は汚染によって避難させられたのであって『自主』ではない」円。しかも収入要件(月収21・4万円以上でアウト)がある。
「当時0歳だった子どもは父親との生活を経験していない。それでも子どもを被曝させないことを選択した」
「子どもの鼻血・下痢を機に避難を決断したが、それでも過剰反応とバッシングされる。『福島』を理由に入居拒否された」
「ろくな支援もないなかで、福島の父親との2世帯維持は経済的にも厳しい。6年間社会から無視され続けたという思いだ」
主催者のまとめで、避難の継続を断念した人も福島にずっと残っている人も同じ被害者であること、加害者である国・福島県・東電の責任を問わなければならないことが確認された。
辺野古 大型ブロックの投下続く
「美ら海まもれ」海と陸で抗議
2月16日 辺野古埋め立て工事はコンクリートブロックの投下が続いており、抗議の声は一段と強まっている。海上行動隊は連日決起している。この日カヌー隊は臨時制限区域を示すフロートを越えて、中に入った。直ちに海上保安官に拘束され、辺野古の浜で解放された。しかし、カヌー隊はフロートめがけ海上に繰り出した。カヌー隊は何度も拘束されるが、決してひるまない。
陸上ではキャンプ・シュワブゲート前に早朝より多くの市民が結集。この日ダンプカーなど10台が基地内に入った。140人の市民は機動隊のごぼう抜きにあいながらも何度も座り込んだ。
17日 沖縄防衛局は、米軍キャンプ・シュワブ陸上部に生コンクリートプラント(製造機)の建設に着手した。防衛局は、陸上工事に使うもので、埋め立て工事には転用しないと言っている。
防衛局は、ゲート前での抗議行動で、生コン車の出入りが進まず、生コンが固まって使えなくなったからと説明。市民からは「埋め立てに転用される」と抗議の声が上がった。
450人で陸海抗議
18日 「コンクリートブロック投下許すな、美ら海まもれ、海上抗議パレード」(主催・ヘリ基地反対協、共催・県民会議)が名護市瀬嵩の浜と大浦湾でおこなわれた。大浦湾には抗議船10隻(約80人乗船)とカヌー22艇が海上パレード。瀬嵩の浜には市民300人が参加。キャンプ・シュワブゲート前には50人が座り込み、総計450人が参加。
午前10時過ぎ、海上の大型クレーンからコンクリートブロックが投下されると、海上と陸上から「ブロック投下やめろ」「美ら海を守れ」「新基地建設を許さないぞ」とシュプレヒコールが上がった。陸上では沖縄平和運動センター事務局長大城悟さんの進行で集会が進められた。国会議員や県議などが連日のコンクリートブロック投下に怒りの発言。海上からも連帯のあいさつが船上よりおこなわれた。カヌー隊は代表が浜に上陸して発言。カヌー隊の力強い決意の言葉に、参加者からはこの日一番の拍手と指笛が鳴り響いた。最後に再び海上パレードがおこなわれ、浜の参加者がシュプレヒコールで送り出した。陸と海、心を一つにして力強く拳を突き上げた。
ゲート前で不当逮捕
20日 キャンプ・シュワブゲート前の抗議行動で男性1人が不当逮捕。午前9時半頃、機動隊が工事車両搬入のためごぼう抜きを始め、市民はスクラムを組み抗議行動。この攻防で逮捕されたもの。昨年末の工事再開以来、市民の不当逮捕は初めて(21日釈放)。
この日、基地には工事車両など18台が入った。投下されたコンクリートブロックは総計50個を超えた。
22日 統一行動の日、早朝より市民が結集、この日最大300人に達した。連日のコンクリートブロック投下に抗議の声は徐々に高まっており、全国各地からの参加者が増えている。工事車両の搬入はなく、海上は時化のため工事は中止になった。市民からは「人が多いと止められる」と声が上がった。(杉山)
2面
投稿
「未来をめざす」集まり
三里塚50年 〜2・12集会に参加して
兵庫・安芸一夫
壇上は左から市東孝雄さん、萩原富夫さん、市東さんの会の山口千春さん (2月12日大阪市内) |
三里塚の土の豊かさ
この集まり(2月12日、大阪市内)は40団体、230人が賛同、参加者は250人とのことだった。集会開催には大野和興さん、菅野芳秀さん、福島の松本操さん、米澤鐡志さん、全港湾関西地本大阪支部、全日建運輸連帯近畿地方本部など労働組合の賛同協力など力を合わせて準備されたと聞く。三里塚50年をふりかえりながら、今後の方向性を力強く提起する内容だった。
過去をおもに語る集会ではなく、未来を語る集会だったと感じた。菅野さんや安次富浩さん、米澤さん、みなさんが三里闘争に関わってきた人たち。今、それぞれの立場で各自の運動の推進者として多くの人々と呼吸し合いながら日々闘っている。「三里塚の土」は、こんなにも豊かであったのだ。この土から新しい種をまき、育てていくのが三里塚の運動だろう。
この日の集会で、私の印象に残った発言を要約して紹介したい。
国家超える民衆連帯
大野和興さん
(農業ジャーナリスト)
「グローバリズムのもとで人権と民主主義が無視され、排外主義がまかり通っている。一方でアメリカにも沖縄に連帯する先住民たちがいる。抑圧されながら闘う人たちは、世界でつながっている。自分たちの世界をどうつくっていくのか。創造する運動が必要だ。土地を守る闘いであり、経済を自分たちでつくっていく闘いだ。三里塚の50年にあたって、国家を超えた『民衆のグローバリゼーション』をつくっていく原点を模索する、そんな集会にしたい」
土こそ農業の根本
菅野芳秀さん(山形、コメ農家・置賜自給圏推進機構常務理事)
「若いとき田舎がいやで東京へ出たが、逃げたいと思っていた地域から逃げなくてもいいと気づいた。帰ってから農業を中心とする地域づくりに取り組んだ。米1俵の生産に1万4千円から1万5千円かかる。売り値は1万3千円で2千円の赤字だ。その背景にはグローバリズムがある。『TPP反対』というだけでは農業も運動も成り立たない。そのためには地域住民の合意が必要だった。私が頼ったのは女性たち。一度理解したら女性は、男性よりも積極的だ。どんどんまわりに働きかけてくれた。『食』からはじめて、できる限りの自給自足ができる社会をめざしている。『学び』も自給すべきだ。自分の地域で育ち、自分の地域で働く。その源泉となるのが土だ。土には何世代もの動植物の『遺体』が堆積し、循環している。私たちはそこで育つ作物を食べ、膨大な命をつないでいる。やがて自分も土となり未来とかかわる。それが農業の根本だ」
垣根を取り払って
市東孝雄さん
(三里塚芝山連合空港反対同盟)
「親子3代が耕してきた土地。土地収用法で取れなかったものを、農地法でとりあげようとは。空港会社や国は、農民、個人の財産を根本から否定することをやっている。公団(国策会社)は耕作者に断りもなく、父の偽造文書までつくり農地強奪にきている。土は私たちの命そのもの。沖縄、福島とともに闘い続ける」
萩原富夫さん
(三里塚芝山連合空港反対同盟)
「50周年を迎え、今後の運動を自分たちの手でどう作っていくのか考えてきた。この50年間、三里塚闘争をたたかってきた人たちはすべて、尊敬すべき先輩方だと思う。それがばらばらにされてきた。農家にはいろんな事情がある。闘い続けている人だって家族の同意や協力がなければできない。これまでの垣根をとっぱらってやっていきたい。こんなに広く多くのみなさんが集まり、うれしい。三里塚の農民として、より広く運動と支援を訴えていきたい」
米澤鐵志さん(原爆被爆証言者)
「ヒロシマ・ナガサキ、沖縄、三里塚、福島は一つになって闘っていこう。今日、いろんな話があったが本当に勉強になった。うれしかった。戦後の運動はセクトによってだめにされてきたが、みんなが違いを乗越えいっしょにやっていこう」
気持ちを新たに
共産主義が実現すれば世のあらゆる矛盾はなくなる。そうしてこれまでやってきたが、果たして自分の描いてきた未来が、今日の集会のように生き生きとしていただろうか。話ではなく、現実を歩んでいる人に出会った思いがした。マルクスの「社会を変革する現実の運動」という言葉。気持ちを新たに、3・26三里塚全国集会に行きたい。
強制収用許さず、3・26全国集会へ
保証金 緊急カンパを
千葉地裁デモの先頭に立つ反対同盟(2月14日) |
市東孝雄さんの農地・耕作地を守るたたかいは、いよいよ正念場を迎えた。
昨年10月25日、最高裁は市東さんの農地法・行政訴訟において、市東さんの訴えを全面的に退け農地強奪を認める決定(上告棄却)をおこなった。そして成田空港会社(NAA)は、11月「農地明け渡し」を求める手紙を弁護団に送り付け、強制執行=強制収用にむけて動きを開始した。
市東さんと弁護団は、ただちに千葉地裁に、NAAから強制執行の申し立てがおこなわれてもこれを認めないよう「請求異議申し立て」と「執行停止」の訴えを起こした。千葉地裁は「執行停止」の審尋(非公開)を2月14日に、請求異議の裁判を3月2日に開くと決定した。この2つの裁判は、審尋や審理・口頭弁論を開かなくても決定を出すことができる裁判だが、市東さんの農地取り上げの政治的・社会的影響の大きさを千葉地裁が考慮せざるをえなかった結果である。
2月14日、千葉地裁で市東さん側、NAAの双方から審尋がおこなわれた。弁護団は「執行を止めたとしても空港会社に損害は生じないから保証金は不要だ」と主張し、NAA側は何ら反論もできなかった。しかし千葉地裁は、@異議申し立て裁判の一審が終了するまでの執行停止、A200万円という高額の保証金を納めることを決定した。しかも1週間以内に納めよというものだ。
強制執行をひとまず喰い止めたとはいえ、事態は切迫している。3月2日から始まる請求異議裁判が正念場である。早期結審を許さずNAAの強制収用を何としても押し返さなければならない。現地は連日の臨戦態勢でたたかっている。
また反対同盟は、「200万円」という高額保証金にたいして、ただちにカンパを呼びかけた。三里塚に心をよせるすべての人たちに保証金カンパへの協力を訴える。
市東さんの農地強奪が切迫するなかで、3月26日(日)、成田市・赤坂公園で全国総決起集会が開催される。市東さんと心をひとつに、そして反対同盟、全国の仲間とともに強制収用を阻止するために総結集しよう。
カンパ送付先
郵便振替00130―0―562987
三里塚芝山連合空港反対同盟
市民が大阪の展望ひらく
2月13日 「どないネット」が発足
2月13日「いま大阪のあり方を問う学習集会」が同実行委員会の主催で開かれた。 奈良女子大の中山徹教授は講演で次のように語った(写真右)。
維新の3つの施策
維新は3つの施策を進めようとしている。ひとつは都構想・総合区だ。大阪に二重行政は基本的にない。だから最近はあまり言わなくなったが、大阪都構想はこれを口実にしていた。
大阪市の予算と権限をかすめ取り、大阪府に大型開発、経済対策の権限、財源を集中させるものだ。
ふたつにはカジノ。経済対策というがカジノは金が動くだけで生産性はなく、経済対策とはならない。
みっつめは市政改革プラン2・0に示されている地下鉄の民営化をはじめとする、市民向け施策の切り捨て、公共施設の閉鎖、利用料金の値上げ。これらをまとめるのが「副首都ビジョン」だが中身のない空論で読んでもよくわからない。
総合区とカジノ
これは複雑すぎて市民はよくわからない。もともと都構想は維新の延命策以外のものではない。
住民投票の結果を無視するのは前代未聞だ。維新の案が通るまで住民投票を繰り返すのか。総合区も公明党は合区するという。組織いじりでなく、いまの構造でなにを改革すればいいのか考えるのが先だ。それを議会だけで決めるのはおかしい。
カジノの経済効果は机上の空論。行政が示す経済効果ほどいい加減なものはない。
カジノで雇用を生んでも、地域周辺の雇用は減る。金を集中させるので、周辺はさびれる。カジノ・万博の巨大開発で大阪はいくら使うのか予想すらできない。
夢洲の環境、防災問題も深刻だ。カジノがもたらす負の影響も懸念されている通り。
大阪の展望は
まず格差是正と社会保障の拡充の経済対策が必要だ。それが大阪の展望をひらく。市民参加と自治意識の向上が市政改革のポイントになる。問題は行政が市民の意向を受け止めるかどうかだ。
防災と環境を軸にした大阪の再生を。競争でなく共生のまちづくりをめざさなくてはならない。そのためには、立場の違いをこえ、住民投票のときを上回る大運動が必要だ。
どないネットが発足
集会の最後に 実行委員会事務局の馬場徳夫さんが、公務労働者と市民を分断してきた維新政治を終わらせるため、双方の連携を追求し、よい市民社会をつくろうと報告。この日を期して、交流・連携のネットワーク「どないする大阪の未来ネット」(略称・どないネット)を発足した。(剛田力)
3面
森友学園
9億の土地を200万で取得
“安倍晋三記念”で資金集め
大阪府豊中市に4月開校予定の「瑞穂の國記念小學院(学校法人・森友学園)」が国有地をタダ同然で払い下げられたことが大問題となっている。
この小学校は安倍昭恵首相夫人が名誉校長であり、また籠池泰典理事長が日本会議大阪の役員であることも重なり、安倍首相や側近が国有地払下げに絡んでいるのではないかという疑いが持たれているからである。
この問題が4月開校の既成事実でうやむやにされようとしていたが、この用地買収に疑問を持って調査してきた木村真・豊中市議らが行政文書公開請求をおこない、それをきっかけに価格が公開され大問題化した。
タダ同然で払い下げ
元々この地域は、公園予定の国有地として確保されていた。
豊中市は都市整備計画の公園用地として全区画を買い上げようとしていたが、道路を挟んで東区域が14億2300万円。西区域が9億5600万と高額なため、予算の折り合いがつかず西区域の購入を断念していた(2008年)。
その後西区域を、ある学校法人が7億円で取得を要望したが、近畿財務局は「安すぎる」と難色を示し、取得を断念(12年7月)。
13年6月〜8月、近畿財務局が買い主を公募し、森友学園が応募。その際の鑑定評価額は9億5600万円。
ところが学校予定地から「木くずや靴下や長靴」などのゴミが出てきたからということで、近畿財務局はゴミ撤去処理費8億1900万円および撤去による事業の長期化にともなう損失を差し引き、わずか1億3400万円で森友学園に売却したのだ(契約成立16年6月)。
処理費8億円というのは、ダンプカー4千台分のゴミに匹敵する。しかし、それだけの車両が出入りしたのを近隣住民は誰も見ていない。また産廃業者の契約書や事業履行の記録などは一切出てきていない。
売却額は表面上1億3400万円となっているが、これも数字のごまかしである。
その後、森友学園は「ゴミの撤去に要した費用」として大阪財務局より1億3200万円を受け取っている。つまり森友学園が土地取得に要した費用はわずか200万円だったのである。
理事長は日本会議
森友学園の籠池理事長は日本会議大阪の役員である。森友学園が経営する塚本幼稚園(大阪市)は、幼稚園児に教育勅語を集団で暗唱させる特異な学校である。この教育方針に賛同する安倍昭恵首相夫人が何度も訪れ講演をおこない、「瑞穂の國記念小學院」開設にあたっては名誉校長に就任している。
12年に同学園がおこなった小学校設立募金の郵便振替用紙には設立小学校名を「安倍晋三記念小学校」と明記していた。募金に応じれば「名前が銘板に刻まれる」とうたい、募金活動をしていた。12年9月に安倍晋三が自民党総裁に就任して以降は、「安倍晋三記念小学校」名は使用していないと籠池理事長は弁解している。
教育勅語強制
園児たちに教育勅語を暗唱させる塚本幼稚園は映像でも紹介されている。幼稚園生たちが意味も分からず教育勅語を、「朕惟フニ、我ガ皇祖皇宗國ヲ肇ルコト宏遠ニ」などと集団で暗唱する様は不気味だ。
籠池理事長夫妻は、幼稚園児に旭日旗をふらせたり、自衛隊訪問など私的カリキュラムで幼稚園を運営してきた。そのため園の「教育方針」になじめない子どもや父母が続出した。
また子どもたちが小学校に入るといかに特異な教育を受けて来たかが判り、子どもと父母の離反もあったという。このため幼児教育だけの限界を感じ小学校設立を構想したとされる。
この学校は4月開校予定ながら、校地の整備は進んでおらず、まだ学校として認可されていない。審議する大阪府にも抗議の声が届き始めている。土地不正取得と、現憲法下で廃棄が確認された教育勅語を軸とする教育内容と、近隣住民との約束(公園になる)を反故にする「森友学園・瑞穂の國記念小學院」の開校を認めてはならない。 (野田 章)
(この記事を書くにあたり、木村真・豊中市議にご協力いただきました)
8時間労働で生活できる賃金を
関西合同労組が17春闘行動
大阪・兵庫
大阪労働局前でシュプレヒコールをあげる組合員たち(2月14日 大阪市内) |
関西合同労働組合は1月22日、旗開きと春闘討論集会を開催、2017春闘の方針、スケジュールを討議し確認した。2月13日〜14日には春闘行動、統一要求書を提出。横断幕、組合旗を掲げ、力強くシュプレヒコール。行きかう人々に見える春闘をアピールした。
がまんの限界
昨年春闘では実質賃金が微増したとはいえ、5年連続の低水準が続いている。中小零細で働く多くの組合員は、残業を精一杯やって家計を必死にやりくりし、かつかつの生活である。17春闘では「1日8時間労働の賃金で家族を養って、生きていける」賃金を掲げ、がまんの限界からの要求をもって全力でたたかう。
昨年末に組合に結集してきた19歳の青年は、1月の賃金(日給月給)が手取りで11万円そこそこという実態。職場の仲間たちは、「本当にこのままでいいのか」と、11人で組合を立ちあげた。大企業は313兆円という過去最高の内部留保をため込み、一方では電通などが新入女性社員のパワハラ、過労自殺事件を引き起こし、他方で、下請け単価を切り下げ、中小零細で働く仲間に低賃金、過重労働を強いている。「中小零細企業での大幅賃上げ春闘」にしなければならない。
最賃1500円を
2月13日は兵庫支部の仲間が、A社(ダンボール製造、神戸)、B社(運送、ポーアイ)、C社(運送、六甲アイランド)、D社(運送、六甲アイランド)、E社(産業廃棄物、尼崎)5社と、兵庫労働局を回った。14日は大阪支部がF社(運送、貝塚)、G社(運送、堺および大東)、H社(製鉄、泉大津)、I社(電線製造、大阪谷町)などの5カ所と大阪労働局を回り、春闘要求書を提出した。争議分会は、社前で抗議行動をおこなった。延べ30人の参加。その他、2社に要求書を送付した。
大阪労働局には、最低賃金の1500円要求、ダーティ(ブラック)企業対策、介護労働現場の待遇改善、運輸労働現場の改善問題を、兵庫労働局では最低賃金のほかにサービス残業、長時間労働、雇用保険の退職理由問題、固定残業問題など交渉議題を要求書として提出した。
産廃事業所の労働者にアピール(2月13日尼崎市内) |
不当配転とたたかう
6人が初めて参加した組合員だったが、A社で不当配転を受けて労働委員会で頑張っている当該は、他の職場の仲間からの支援に元気づけられ、「楽しく、闘争心がかきたてられました」と笑顔で感想を述べていた。E社で働く仲間は、60歳以上の継続雇用における大幅賃下げとのたたかい(労働契約法20条問題)を訴えた。F社、G社前では分会長への激しい不当労働行為を弾劾し、「裁判・労働委員会闘争に勝ち抜くぞ」とシュプレヒコールをあげた。
各職場で、賃上げを絶対に実現しよう。3月山場の春闘行動に、全力でたちあがろう。
4面
緊急事態法〜濫用の危険性大きい
災害時にも役に立たず
300人が参加した改憲反対集会(2月18日大阪市内) |
2月18日、エルおおさか南館5階ホールで、戦争をさせない1000人委員会・大阪の講演集会が開かれた。タイトルは「〜理不尽な改憲を許さない〜憲法改悪に反対する講演集会」で、永井幸寿弁護士の緊急事態法と、辻元清美議員の国会報告に300人が熱心に聞き入った。
緊急事態法は不要
永井弁護士は、国家緊急権の定義を「人権保障と権力分立を停止する、国家のための制度で、国民のための制度ではない」と批判した。また大災害のために必要との意見にたいしても阪神大震災経験者で、この22年間この課題に取り組んできた者として、災害時に必要ないことを明言した。
緊急事態法はしかも濫用の危険や、期間の延長や司法の遠慮など多々あることを指摘。
ナチス・ドイツはワイマール憲法の48条(大統領緊急令)を使い、そのあと全権委任法を制定したが、自民党案の場合はこの2つを一挙にやるものだと弾劾した。
人権停止が目的
また「国会解散・選挙の時に大災害がおこったら」や「災害対策の法律の整備は必要」という意見には、現行法で十分とした。基礎自治体に権限とモノとカネを与えて、それぞれの災害(関東大震災は火災、阪神は圧死、東日本は津波)にあった対策と救援をすることが命を救うことになると指摘した。
こうして自民党改憲草案が、災害時には役に立たたないだけでなく、むしろ人権を停止することに本質があることを明らかにした。
そもそも日本国憲法は戦前の大日本帝国憲法の緊急勅令などの反省から、憲法前文と国の交戦権を認めない9条を設け、緊急事態法体系が憲法の中に入れない構造になっていると説明し、あらゆる意味で緊急事態条項が必要のないことを力説した。
憲法審査会でバトル
続いて辻元議員は、自らが委員である憲法審査会の模様と、連日の国会論戦を紹介しながら、「安倍政権が憲法改悪に向かいあらゆる策動を強めている。国会では圧倒的少数で、質問・追及にも命がけでないと出来ない」と、激しい政治攻防の模様を語った。
憲法審査会は2回開かれたが、自民党議員たちの非立憲性は「語るに落ちる」という水準。それを一つひとつ、「モグラたたき」のように潰していると報告した。
また「維新」が政治を悪い方に引っ張っていったことを指摘。そしてこの種の集会が開かれることに感謝しながらも、「講演会に集まるだけでなく、地域においても草の根の運動をしてほしい。また市民運動は選挙を嫌がる傾向があるが、もうそんなことは言っておれない。自民党と大阪維新を落とすために野党共闘を進めていこう」と訴えた。
会場からの質問に応え、維新が野党・改革派のふりをして、教育無償化を口実にした改憲攻撃や、カジノ誘致をおこなおうとしていることを批判した。
アベ政治に危機感
集会は開会時には田淵直大阪平和人権センター理事長が、沖縄や共謀罪や維新批判など、この集会に求められる課題を提起した。
また3団体からの決意表明の後、1000人委員会大阪の山元一英さんがアベ政治と憲法改悪を許さず頑張ろうと締めくった。
会場は立ち見も出る盛況で、アベ政治にたいする危機感で、講演者の訴えと一体となる集会となった。(酒井)
米軍人・軍属の実弾演習
福知山市は市民の安全優先を
京都府経ヶ岬通信所(米軍Xバンドレーダー基地)の軍人・軍属による陸上自衛隊福知山射撃場での実弾演習について、2月19日、〈自衛隊員の命と人権をまもる京都の会〉が京都市内で集会を開き、40人が参加した。講師は福知山平和委員会の水谷徳夫代表(写真)。
水谷さんによれば、同射撃場での実弾演習は、昨年11月29日に初めて実施。それ以降おこなわれていない。
米軍人・軍属の実弾演習は、実施日時を一切発表しない。昨年の11月29日の時も、平和委員会が監視していて、米軍人・軍属の車が来たのを確認してマスコミに知らせ、ようやく大きく報道された。
半年ごとの警備資格の審査のための演習ということから、この2月後半から3月はじめには、再度の実弾演習をすることになるだろう。平和委員会としても監視を強めている。
福知山市は、「近畿中部防衛局に聞いてくれ」と、住民に安全上必要なことを知らせようという姿勢がない。市議会は12月26日、全会一致で市に、「必要なことを市民に知らせるよう」決議をあげたことなどが紹介された。
京都の総がかり行動に700人
19日行動 これからも続ける
2月19日、京都の総がかり行動は、今回は持ち回りの3者のうち1000人委員会の主催で700人が参加した(写真)。
市役所前のリレートークでは、主催者を代表して、部落解放同盟京都府連の西島委員長が発言し、続いて解放共闘議長で京水労の村井書記長、さらにきょうと教組の大江さんが発言した。共謀罪に関して自由法曹団の岩佐弁護士が発言し、沖縄から帰ってきたばかりの小松千代子さんが沖縄の報告をした。
集会終了後、四条河原町交差点の先までデモ行進。今後も、毎月の19行動を総がかり行動として続けていくことを確認した。
教育の場で愛国心強要
戦争する国はゴメンだ! 2・11集会
2月11日、「建国記念の日反対! 『日の丸・君が代』処分撤回! 『戦争する国』はゴメンだ! 今、教育に問われるもの2・11集会」が大阪市内でひらかれ、350人が参加した(写真右)。
安倍政権は「戦争する国」作りの柱として教育内容、教育制度全般にわたる攻撃を強めている。大阪ではおおさか維新の会が安倍に先行する教育破壊を進めている。「日の丸・君が代」強制条例、職員基本条例が制定され2012年以来60人を超える教職員への「不起立」処分が強行されてきた。これへの反撃として毎年2月11日に大阪で集会が開かれている。
国民精神総動員
〈「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネット〉代表の黒田伊彦さんが「建国神話と『明治』への回帰へのたたかいを」と題して集会の意義を次のように提起した。
明治天皇の誕生日(11月3日)、現在では「文化の日」を「明治の日」にしようという動きがある。天皇生前退位をめぐって自民党安藤裕衆議院議員は「皇室の方々でお決めいただき、国民はそれに従う」と主張した。安倍は南スーダンへの自衛隊派遣を強行し、戦死者が出たら靖国への合祀と天皇の参拝をやろうと企んでいる。教育を教育勅語的体制に再編しようとしている。それは改憲への国民精神総動員運動ともいえるものだ。
最高裁判決は、「日の丸・君が代」起立斉唱は思想・良心の間接的制約になるが、慣例上の儀礼的所作で、起立斉唱の職務命令は合憲であるとした。しかし大阪の国旗国歌条例は「慣例上の儀礼的所作」ではなく「国と郷土を愛する意識の高揚に資する」ことを服務として命じている。そのほかにも憲法違反や最高裁判決との違いがあり、新しいたたかいの法理を創り出す必要がある。子どもたちには「起つ起たない・歌う歌わない」は内心の自由として自己決定の権利があるとの告知が必要であり、教員は専門職として教育の自由を有し、且つ子どもの人権を侵すことへの抗命の義務があることを教育行政当局に認めさせるたたかいが要請されている。建国記念の日に際し、歴史から明日の希望のためのたたかいの道筋を見出そう、と結んだ。
五輪と愛国心教育
続いてティーチイン第一部として高嶋伸欣琉球大学名誉教授が「オリンピック・愛国心教育と『戦争をする国』」と題し講演した。はじめに沖縄のある県立高校で「校門一礼運動」がおこなわれている写真を示し、これが行政からの要請ではなく「自発的」取り組みであることの危険性を訴えた。講演では森喜朗東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長が壮行会で「国歌も歌えないような選手は日本の代表ではない」「声を大きくあげて、表彰台に立ったら国歌を歌ってほしい」と発言したことにたいし、この発言はオリンピック憲章に違反していると弾劾した。同憲章は1980年に改訂され表彰式で使われる旗や歌は国際オリンピック委員会が承認した国内オリンピック委員会(NOC)の旗・歌つまり選手団旗・歌となっている。94年の広島でのアジア競技大会では中国新聞も繰り返しNOC旗・歌と報道し、大会の公式ガイドブックにも明記されていた。
都教委版『オリンピック・パラリンピック学習読本』は「開会式で選手たちが自国の国旗を先頭に行進します。表彰式では、優勝した選手の国の国旗をかかげ、国歌を演奏します」とし、これが世界のマナーだとする悪辣なものだ。安倍政権は家庭教育にまで口出しを始めた。こうした「教育勅語体制」復活をめぐる攻防を共にたたかおう、と訴えた。
後半はティーチイン第2部。高嶋さんや元教員など4人が問題提起し議論がおこなわれた。(鳥井信弘)
5面
書評
サバルタンは語る
『グラムシ「獄中ノート」著作集Z 歴史の周辺にて 「サバルタンノート」注解』
アントニオ・グラムシ著 松田博編訳 明石書店 2700円
7・7自己批判
かつて分裂前の革共同全国委の指導者・安田が「『血債の思想』というのは文学的表現でマルクス主義の言葉ではないから止めるべきだ」と主張し、現在は再建協になっている人たちを含めて承認したということがありました。安田の言いたかったことは、「中国人ごときがプロレタリアに指導的なことを言うな」ということだったのでしょう。何か変なことを言っているなという感覚はありましたが、私はその含意には気がつきませんでした。「血債の思想」が硬直的な上意下達の指導部無謬論の絶対的権威主義と結びついていたこともあり、大方の受け取りは「重石が取れてホッとした」ということではなかったかと思います。
その後全国委が「7・7自己批判」を全否定したことは反面教師となっています。しかし、再建協でも「7・7自己批判」的な「立場性」のおさえは薄れています。
一方で、被差別人民の中から共産主義者が幾人も生まれており、共産主義的な差別解放論の試みもおこなわれています。そのことで相対化されているのが、共産主義者の側から共産主義論の中に差別解放論を位置づける努力です。
革共同再建協議会はいまだに「レーニン主義」(レーニンの革共同的解釈ですが)を否定していませんから、その路線は「労農同盟に基づくプロレタリア独裁」なのでしょう。これは「農民はプロレタリアに指導されないと革命的にはなれない」という立場ではないでしょうか。被差別に引き付けて言えば「被差別人民はプロレタリアの主導性(指導性)の中でしか革命的ではない」という理屈です。「農民は共産主義者にならないとプロレタリアを指導できない」という「レーニン主義」には立脚しているわけです。
レーニンの乗り越え
この「レーニン主義」を乗り越える共産主義論はないのかということがこの数年来の私の関心事でした。「7・7自己批判」をマルクス主義の言葉化するという問題意識です。結論から言うと「有った」のです。グラムシの思想です。
グラムシは1910〜30年代のイタリア共産党の指導者の一人ですが、ファシストに捕えられて獄死しています。膨大な「獄中ノート」が残されています。グラムシというと右派のトリアッティと結びつけられることが多く右派構造改革論者という定説がありました。イタリアで1975年にジェルラターナ編集による「獄中ノート」校訂版が発行され、それまでのトリアッティ編集版が歪曲されたものだと分かったそうです。トリアッティが自説を正当化するために歪曲的に編集していたのです。日本で新版を紹介しているのは松田博です。松田版グラムシを知ることで、レーニンを内的に乗り越えるというのは、グラムシは晩年のレーニンから大きな影響を受け、それを内的に乗り越えた人だからなのですが、マルクス主義の歴史的復権の論理だと思いました。
グラムシを特徴づけるものは西欧における国家論の構築であり、そこから導き出される陣地戦の思想です。支配と被支配の間におけるヘゲモニー戦ということでもあります。
その国家論とイタリア史の研究から、「サバルタン」による革命という結論を導き出します。グラムシは自身の初期の「プロレタリア階級の指導する労農同盟による革命」という論を大きく超えて、「社会的従属集団(サバルタン)によるヘゲモニー(知的モラル的指導)の確立」という結論に至っているのです。松田はその論をさらに進めてスピヴァクの「サバルタンは語ることができるか」という提起に答えるものへと、グラムシのサバルタン論を進めようとします。これはインドの下層の女性の解放という立場にマルクス主義は立てるのかという立論です。
サバルタンの党
松田はそこまでは言っていませんがその論を延長すれば、「プロレタリアの指導性」という大原則を乗り越えているのです。サバルタンとはプロレタリアであり農民であり、被差別・被抑圧人民であるからです。あるがままの農民が指導者であり被差別・被抑圧人民が指導者である訳です。農民の原則による指導、被差別・被抑圧人民の原則による指導という考えが、プロレタリアの原則による指導に等値されます。三里塚農民の農民運動的原則による指導であり、沖縄人民の自治要求による指導性の承認、しょうがい者、「精神病者」、部落民、被抑圧民族、女性の自己解放の指導性の承認が、マルクス主義として成立するという理屈なのです。
共産主義者ではないサバルタンがいかにして自己のヘゲモニー(知的モラル的指導)を確立していくのか、共産主義を媒介にしたプロレタリアの指導性の承認としてではなく、自らの自律的(自立的)論理を発展させて、自らの利害を発展させることの中で、一つの結社を形成するというイメージです。沖縄人民の自己決定権の要求それ自体をプロレタリアと共通の一つの結社の路線とするというイメージです。
共産主義論を媒介にせずに、サバルタン諸集団の自律的論理を持って一つの結社を成すことがサバルタン論です。サバルタン諸集団の自律的動きが問題なのであって、それをプロレタリアが受容できるのかという立論です。
グラムシのサバルタン論は共産主義党の発展の論理、その豊富化であり、再建協の考えている革命論を論理的に再編するものとなりうるのではないかと思います。 (高見元博)
参考文献
「グラムシ思想の探求」松田博著 新泉社
「グラムシを読む」松田博編 法律文化社
「グラムシ入門」イタリア共産党編松田博訳 合同叢書
「グラムシ研究の新展開」松田博著 御茶の水書房
えん罪救済センター、日本でも
甲南大教授 笹倉香奈さんが講演
昨年4月に発足した、えん罪救済センター(イノセンス・プロジェクト・ジャパン)副代表の笹倉香奈さん(甲南大法学部教授)の講演会が2月18日、神戸市内で開かれた(写真左)。石川一雄さんの無罪・再審をとりくむ〈狭山再審を求める市民の会・こうべ〉が主催。笹倉さんの講演と、狭山事件の新証拠(万年筆)に関するアピールを要約する。
えん罪はなぜ起きる
イノセンス・プロジェクトは1992年にアメリカで始まった、えん罪救済運動。この25年間にDNA鑑定により死刑確定囚の20人を含む350人の再審無罪を実現してきた。DNA鑑定以外の人を含めると、実に1800人以上の無実を晴らしたという。この運動は「イノセンス革命」といわれるアメリカの司法制度改革をもたらすとともに世界各国に広がり、日本でも立命館大学を拠点に、日本版に当たる「えん罪救済センター」が昨年、活動を開始した。
イノセンス・プロジェクトは、DNA鑑定などの科学鑑定を駆使して無辜の人々を救済するとともに、なぜ無実の人が有罪を宣告されてきたのかを検証してきた。これにより雪冤(無実を明らかにする)を果たした250件の事例を詳細に分析したブランドン・L・ギャレット教授(バージニア大学ロースクール)によれば、「それらの72%では目撃証人による誤った犯人識別が行われており、71%では科学的証拠によって当初の有罪判決が根拠づけられており、21%の事件では虚偽自白があった」という。雪冤を果たした多くの人々はアフリカ系アメリカ人であり、えん罪の背景には狭山事件とも通底する社会的差別が存在している。
イノセンス革命
かつてアメリカでは、法曹でも一般でも「えん罪はありえない」とされていた。しかし、イノセンス・プロジェクトによる雪冤の積み重ねは、人々の意識を変え政府をも動かしていった。09年には連邦政府の依頼を受けた全米科学アカデミーが「DNA鑑定以外の法科学の分野については、ある証拠がある個人由来のものであるということを示すことができる能力を持つ鑑定方法は存在しない」との報告書をまとめるに至った。えん罪を防止するための捜査手法の改善や、えん罪が明らかになった人々への補償、えん罪究明のための法的な制度設計などの改革がおこなわれ、死刑制度への疑問が投げかけられるようになった。90年代以降の20年間に死刑宣告数および執行する州は激減した。
会場からの意見に笹倉さんは「25年後の日本の司法がどうなっているか。1件でも2件でも正義をもたらし、制度の変革につなげたい」と述べ、講演を締めくくった。
「万年筆はまったく別」という新鑑定
集会では、主催者から狭山事件の万年筆のインクに関する下山進博士の新鑑定について報告された。
もともと石川さんの自白では、脅迫状はボールペンで書かれたことになっていた。控訴審の途中で脅迫状の訂正部分が万年筆またはペンで書かれていることが判明した。この時はじめて科学警察研究所の荏原秀介技官のペーパークロマトグラフィー法による、発見された万年筆等のインク鑑定の存在が明らかになった。
荏原技官は「石川さん宅から発見された万年筆のインクはブルーブラックであり、被害者が事件当日のペン習字の授業まで使っていた万年筆のライトブルーのインクとは異なる」との鑑定結果を出していた(第1鑑定)。それが、検察が荏原鑑定の存在を隠していた理由である。同時に荏原鑑定は「発見万年筆のインクは、被害者の級友及び郵便局備え付けのインクと類似する」(第2鑑定)としていた。
裁判所は荏原第2鑑定に依拠して「インクが異なるという事実から直ちに本件万年筆が被害者の万年筆ではない疑いがあるということはできない。本件当日午前のペン習字の後に、本件万年筆にブルーブラックのインクが補充された可能性がないわけではない」(99年東京高裁・第2次再審請求棄却決定)などと、裁判にあるまじき推論で有罪認定をゴリ押ししてきた。
ところが荏原鑑定を検証した下山進博士の新鑑定は、発見万年筆のインクには「補充された可能性はない」と結論付けた。なぜなら、ライトブルーのインクが充填されていた万年筆にブルーブラックのインクを補充した場合、ライトブルーのインクがどれほど微量でもその成分が混入し、ペーパークロマトグラフィー上に現れざるをえないからである。
今年に入って、脅迫状の訂正部分が実はペン先が中太字の万年筆またはペンで書かれており、細字のペン先である発見万年筆とは異なるとの新証拠が東京高裁に提出された(川窪鑑定)。万年筆をめぐる確定判決の事実認定は、完全に崩壊した。狭山闘争の歴史的勝利を実現しよう。(深谷耕三)
6面
康宗憲さんの講座から @
「日朝関係―制裁と対立からの脱却」
東北アジア・朝鮮半島の平和と統一へ
本紙210号(昨年11月)に、康宗憲さんの講座から「朝鮮半島の平和と統一」について紹介した。
連続講座として3回目、まとめ「日朝関係―制裁と対立からの脱却」(1月)がおこなわれた。「北朝鮮の脅威、独裁国、拉致、何をするかわからない国」などを政府、メディアが垂れ流すなか、歴史認識、日朝の現状、日本(人)は何をおこなうべきかなど、示唆に富む講演だった。「日朝関係の経緯」「ピョンヤン宣言の意義」「拉致問題の衝撃」「日韓関係の正常化に向けて」の4回連載(予定)で紹介する。康さんには掲載に快諾をいただいた。ご好意に感謝したい。
(文責・編集委員会)
戦後、最近の日朝関係
日本は第2次安倍内閣のもとで、戦争に参加する政策を進めている。日本で中国、朝鮮の脅威が毎日のように喧伝される。中国と日本は国交があり、話し合う機会もある。しかし朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮と略記)とは国交がない。朝鮮戦争当事国のアメリカも国交がなく、休戦協定状態が60数年続いている。
90年代に入り、朝鮮の核開発疑惑がとり沙汰されたときに、アメリカは3つの選択肢を考えた。第1は、軍事的に核開発施設を破壊する。しかし、朝鮮半島は狭い地域に南北、米の軍事力が集中。仮に核施設を破壊しても韓国も在韓米軍も無傷ではすまないだろう。第2は、経済封鎖による孤立化。同時に、直近で大規模な軍事演習を展開し圧迫する。国内から反乱が起こり金体制は崩壊する。しかし体制は崩壊しない。アメリカのシンクタンクでは「制裁は有効か」という分析も始まっている。残念ながら日本、韓国にはアメリカ以上に「制裁あるのみ」という偏狭な強硬論が多い。
軍事オプションも制裁もだめ。では第3の選択肢は。気に入らない体制であっても、現実にある政権と交渉する。対話と交渉、外交解決をめざすしかない。私は、この選択肢をみなさんといっしょに考えてみたい。
ピョンヤン宣言
最近30年の日朝関係を簡単に振り返ってみる。91年1月から日朝国交正常化への交渉が始まった(92年11月まで8回)。これは核開発疑惑などで中断、米政府からの牽制もあった。長い中断のあと02年9月、小泉首相が電撃訪朝した。日朝首脳会談(小泉―金正日)で「ピョンヤン宣言」を採択。朝鮮当局はそれまで否定してきた拉致問題の存在を認め謝罪し、再発防止を約束。生存者には帰国の便宜をはかるとした。これを契機に拉致問題という大きな障害がありながら、国交正常化に向かうはずだった。10月、拉致被害者の一部が帰国。しかし、日本国内は大変な衝撃をうけた。拉致問題は小泉・自民党政権が予測したレベルをはるかに超えた。アメリカはブッシュ政権となり、9・11から「対テロ戦争」を世界に宣言した。朝鮮が関与したという根拠はないが、ブッシュ政権はイラン、イラク、そして朝鮮を「悪の枢軸」に加え先制攻撃の対象とした。国交正常化に向けた日朝交渉は、大きく後退する。
米朝関係が緊張する中、朝鮮は06年、ロケット(ミサイル)発射と最初の地下核実験をおこなう。国連安保理の制裁決議がおこなわれ、日本も独自の経済制裁を実施。06年いっさいの輸出を禁止。09年輸入禁止。いまも解除されておらず、日朝間貿易は途絶えている。08年に福田内閣のもとで日朝実務者協議がおこなわれ、拉致問題の再調査と経済制裁の一部解除が合意されたが、福田首相の退陣で中断。12年、民主党・野田政権のとき局長級の政府間協議が開かれるも、民主党政権の弱体のため推進力にはならなかった。
安倍政権の強硬策
第2次安倍政権になり14年5月に政府間協議、両政府がストックホルム合意を発表した。朝鮮側は「拉致被害者を含むすべての日本人の包括的かつ全面的な調査をおこなう」、日本側は「調査が始まった時点で、制裁の一部を解除する」というもの。しかし、米朝関係や拉致問題の調査に新しい進展がない状況が足かせとなる。日本政府にとっても、日本国民の拉致問題にたいする認識が「すべての行方不明者は、北朝鮮による拉致だ」などとなり、問題の解決を促す方向とはかけ離れた方向になってしまった。朝鮮側にすれば、「どのような報告を出しても日本側は評価しないだろう」という認識、判断になる。
私が強調したいのは、本来、ピョンヤン宣言はそのようなものではなかった。日本人の生命と安全にかかわる、日本政府もよく言う「拉致、ミサイル、核」のセット問題。その懸案事項とともに過去の歴史、植民地支配による根本問題を解決することが宣言の原則だった。ところが前述のことから、日本政府の要求は拉致問題だけに絞られてしまった。
安倍政権は、「かつてないほど脅威は高まっている」と繰り返し、独自制裁を更新し拡大するという閣議決定をおこなっている。昨年9月、安倍首相が国連で演説した約18分のうち半分近くを「北朝鮮の脅威」に費やし、1月の衆議院予算委では「核・ミサイルの脅威が現実化すれば、先制攻撃能力を高める必要がある」と答弁した。現行憲法のもとではでき得ないことを、集団的自衛権も口実にしながら国会で表明する。実際には非現実的なオプションだが、圧迫手段としては有効、かつエスカレートする。朝鮮のロケット、核開発の動機については後段で述べる。この項では、国交交渉の開始からすでに26年になること、日韓条約(65年)は14年の交渉でまとめられたが、それは過去の歴史問題を封印した妥結であったことを指摘しておきたい。(つづく),/b.
カン ジョンホンさん
1975年、軍事独裁政権下の韓国留学中にスパイ容疑の冤罪で逮捕、投獄。死刑判決を受け13年間の投獄。2015年、無罪確定。現在、大阪大、同志社大など非常勤講師。
投稿
こんな政治でよいのか
2月6日 ロックアクション
大阪・池内慶子
2月6日、大阪市役所横で開かれた「戦争あかん! ロックアクション」に参加しました。カジノ問題を考える大阪ネットワークの新川眞一さんは「カジノ候補地の夢洲は産業廃棄物の島。そんなところに世界中から人を集めてよいのか。地震対策、防災政策こそ必要で、南海トラフ地震が起こればひとたまりもない」と問題点を指摘しました。
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの方清子さんは、日本軍「慰安婦」問題について、「日韓合意は過去の戦争においてアジアの女性たちを性奴隷にした歴史をなかったことにしたいためだ。被害者が願っているのは、お金ではなく、公式の謝罪。女性にたいする性暴力、人権侵害をしないという日本を求めている。日本政府に抗議の声を上げ続ける」とアピールしました。
(短信)
川内原発2号機再稼働を強行
九州電力は、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)2号機を、2月23日午後9時半、再稼働させた。昨年12月16日に運転を止め、定期検査に入っていたもの。これで、稼働中の原発は、伊方原発3号機、川内原発1号機とあわせて合計3基となった。
川内原発をめぐっては、昨年の鹿児島県知事選で再稼働に慎重な姿勢を示した新人候補(三反園訓=現知事)が8万票の差をつけて現職を破ったが、その後の1号機、2号機をめぐる「定期検査→再稼働」では容認する姿勢を示し、県民から批判がおこっていた。
再稼働が強行された翌朝、24日早朝から川内原発ゲート前では、ストップ川内原発!3・11鹿児島実行員会がよびかけ、抗議集会がおこなわれた。