未来・第217号


            未来第217号目次(2017年2月16日発行)

 1面  辺野古新基地
     「海上工事」強行に怒り
     座り込みで搬入を阻止

     原発のない福井をつくろう
     1月29日 敦賀市内でデモと集会

     福島原発刑事訴訟
     支援団が発足1周年
     一日も早く裁判開始を

 2面  焦点
     「維新政治」とは何か(下)
     剛田 力

     大阪市の統合、民営化に反撃
     「維新」と対決する労働者、市民

 3面  共謀罪 4つのペテンを暴く
     永嶋靖久弁護士 国会提出は阻止できる      

     挙国一致体制を担う共謀罪           

     米軍レーダー基地撤去へ
     総会、旗開きでスタート

     投稿
     京丹後市で米軍に抗議

 4面  朝鮮学校
     府市の補助金打切りを追認
     大阪地裁 請求棄却の不当判決

     「慰安婦」問題
     性暴力をなくすために
     体験を聞くことの重要さ

     (短信)
     大飯原発控訴審
     島崎邦彦さん証人に

 5面  石川一雄さんの新年メッセージ
     今年こそ、えん罪を晴らす

     投稿
     “憲法を使いきろう”
     木村草太講演会に450人
     1月15日 西宮

     (労働ニュース)

 6面  追悼 佐藤昭夫先生
     団結権を大切にし、戦争を憎む

     (シネマ案内)
     『スノーデン』の衝撃
     オリバー・ストーンの渾身作      

       

辺野古新基地
「海上工事」強行に怒り
座り込みで搬入を阻止

キャンプ・シュワブゲート前の抗議集会。右側でマイクを握っているのは安次富浩ヘリ基地反対協共同代表(7日 名護市内)

6日、沖縄防衛局は辺野古新基地建設のための「埋め立て本体工事に着手した」と発表し、翌7日から、汚濁防止膜を固定するコンクリートブロックの投下をはじめた。新基地に反対する市民らは連日、キャンプ・シュワブゲート前に座り込み、工事阻止行動を続けている。稲嶺進名護市長は「市長の権力を市民のために行使する」と建設阻止への決意を語った。沖縄県も「埋め立て承認撤回」に向け準備を進めている。

「ポセイドン1」

2月5日 辺野古新基地埋め立て本体工事を前に、ボーリング調査を担う大型掘削調査船「ポセイドン1」が大浦湾に到着した。大型コンクリートブロックを積んだ台船2隻と、ブロックを海中に投下するためのクレーンを載せた作業船2隻も臨時制限水域内に。
臨時制限水域は突起物のついたフロートとネット付きの「海上フェンス」で囲われた。沖縄防衛局は工事に伴い発生する汚濁を外洋に流出させないための膜を張るため、膜を固定する大型コンクリートブロック(11〜14トン)228個を海底へ投下する予定。海底のボーリング調査も1カ所残っており、作業を開始する予定。抗議船2隻とカヌー8艇で抗議行動をおこなう。

稲嶺市長が抗議

6日 キャンプ・シュワブゲート前には、早朝より抗議の市民が続々と集まった。8時過ぎには稲嶺進名護市長も駆けつけ、政府の一方的なやり方を批判し、市長としての権限で建設を阻止することを再度表明し、結集した市民を激励した。海上では抗議船6隻とカヌー16艇で「ただちに作業をやめろ」「海をこわすな」と抗議の声を上げた。
午前9時半前、名護方面から10トントラック4台が、シュワブゲートに向かっているとの報が入る。120人の市民は、第1ゲートと第2ゲート、新ゲートの3カ所に分かれトラックを待ち受ける。機動隊は警備を分断され右往左往。第2ゲート前に到着したトラックの前に市民が抗議のプラカードを掲げ立ちはだかる。
第1ゲートで排除にあたっていた機動隊は慌てて第2ゲートに走っていく。第1ゲートに機動隊がいなくなり排除された市民は再結集し固いスクラムを組む。トラックは第1ゲートに到着したが、密集した市民のスクラムの前に立ち往生。機動隊はいつもの人数しか警備しておらず、いつもより多い市民を排除できない。
機動隊はあきらめ増援の部隊を待つ。11時過ぎ増援部隊が到着し排除にあたる。トラックは11時45分に基地に入る。実に2時間半も搬入を阻止した。市民は「仲間を増やせば工事は止められる」と笑顔で手を取り合った。

ブロック投下始まる

7日 早朝より、陸上と海上で抗議行動が始まる。ゲート前では、午前9時ころダンプなど5台が基地内に入る。海上では、午前9時半頃コンクリートブロック1個が大浦湾に投下された。抗議船2隻とカヌー17艇にのりこんだ市民から抗議の声が上がる。
ブロック投下は、シュワブゲート前の市民にも伝えられ、怒りの声が上がる。ヘリ基地反対協共同代表の安次富浩さんは「私たちは、コンクリートブロックが1個や2個投下されようとめげるものではない。非暴力のたたかいで最後まであきらめない」と宣言した。その後、大浦湾が見える第3ゲート前で抗議の声を上げた。
午後4時までに、この日投下されたコンクリートブロックは4個。また、午後4時ころ、大型掘削調査船「ポセイドン1」が掘削を開始した。ボーリング調査は残り1カ所のほか、施工計画のため、新たに13地点を掘削し、調査する予定。

市民の関心高く

8日 統一行動の日に、シュワブゲート前には250人の市民が結集。3カ所のゲート前に分かれ抗議行動を展開。県議や市町村議員も駆けつけ座り込む。市民の多さに機動隊は何もできない。車両の搬入もなかった。
市民の関心は高く、抗議行動終了までに、この日最大300人が結集した。しかし、海上ではコンクリートブロックの投下が繰り返された。

原発のない福井をつくろう
1月29日 敦賀市内でデモと集会

1月29日、福井県敦賀市で、「再稼働反対!原発のない福井をつくろう! 福井県集会」がひらかれ150人が集まった。サヨナラ原発福井ネットワークが主催。
集会に先立って、会場の福祉総合センターから、敦賀駅を経由して会場に戻ってくるコースでデモがおこなわれた。
午後2時からはじまった集会では、〈原子力発電に反対する福井県民会議〉中嶌哲演さんが「福井からのメッセージ」と題して発言した。福井原発訴訟(滋賀)弁護団長の井戸謙一弁護士は、3・11以降司法の場でも大きな変化が生まれていると報告した。
「高浜原発の現状」と題して、高浜町在住の東山幸弘さんが発言。昨年暮、高浜原発の地元、高浜町音海地区が地区総会で「運転延長反対」の意見書を採択し、3カ所に看板を立てたことで、大きな反響を呼んでいると報告した。
1月20日には、高浜原発でクレーンが倒れ、原子力建屋を損壊するという一歩間違えば重大事態を引き起こす事故が発生した。高浜原発は700ガルの基準地震動を設定しているがそれ以下の地震でも大きな被害が出る可能性があり、絶対動かしてはならないと強調した。
集会はその後、若狭の原発を考える会、美浜町在住の松下照幸さん、越前市在住の山崎隆敏さんなどの発言が続いた。

福島原発刑事訴訟
支援団が発足1周年
一日も早く裁判開始を

福島原発事故の東電幹部らの刑事責任を追及する「福島原発刑事訴訟支援団」が発足して1年目を迎えた1月29日、「1日も早く裁判を! 支援団結成1周年集会」が都内で開かれた(写真上)。支援団加入者は3300人にのぼる。
佐藤和良団長は「オリンピックまでに避難者ゼロとみせかける魂胆で帰還政策が強められている。当初からあった避難者の子どもへのいじめ問題が今になって報道されるようになったのも、これと無関係ではない。被害者が苦しみ続けているなかで、加害者がのうのうとしていることなど許されることではない。脱原発の第一歩を切り開く裁判だ」と裁判の意義を語った。
弁護団は「この裁判が始まれば世間の耳目が集まり、原発への嫌悪が高まって脱原発への流れができる。そもそも世界的には、すでに自然エネルギーによる発電量は原発の2倍に達している」と発言。
裁判は、3月中に第1回の期日を決める方向で臨んでいる。
原発事故被害者の3人からは、避難住宅を7回も引越し、終の住処を定められないなどの生活上の苦闘、事故以前の生活を失った悲しみ、将来への不安、福島をもはや「安全」とする世論形成への憤りなどが涙ながらに語られた。

2面

焦点
「維新政治」とは何か(下)
剛田 力

安倍、維新と業界の癒着

別働隊?補完勢力?

安倍が強引に進める裏にはセガサミーとの緊密な関係がある。セガサミーはパチスロ機などの製造会社サミーと娯楽機のセガが合併してできた。韓国カジノ最大手パラダイスグループと合弁で仁川国際空港の近くに大規模IRを建設し、この4月から営業を開始する。日本ではできないカジノIRの運営ノウハウを手に入れる目的だという。
セガサミーホールディングスの里見治会長の次女と経産省官僚鈴木隼人の結婚式に安倍が出席、「うちから選挙に出てくれ」と発言。実際に14年の総選挙で鈴木は東京ブロック比例上位にあげられ当選している。安倍の外交・安保のブレーンといわれ、2014年に国家安全保障局初代局長となった谷内正太郎もセガサミーの顧問をしていた。里見会長から安倍への5000万円をはじめとして、多額の献金がおこなわれている。
維新との関係も深い。象徴的なのは橋下の盟友中原徹。パワハラ問題などで大阪府の教育長を辞任せざるをえなかったが、辞任後ひと月ほどでセガサミーの上席執行役員におさまっている。

カジノのための大阪万博

バブル時に計画されたテクノポート大阪計画は、バブル崩壊でほぼ全てが破綻し、現在も大阪の厳しい財政に重くのしかかっている。これらのハコモノ行政の失敗を挽回するため2008年オリンピックを大阪で開催しようと招致した。そのメイン会場が舞洲であり、選手村が夢洲だったのだ。結局2008年に開かれたのは北京オリンピックであった。現在、夢洲、舞洲は当初の計画から大きく逸れて、ほとんどその一部が物流倉庫として使われるだけという状況になっている。そこに「3度目の正直」として出してきたのが、夢洲での大阪万博とIRだ。
10月28日に、大阪府より「2025日本万国博覧会」基本構想(府案)が示された。府案では、「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマとして、2025年に夢洲での開催を目指すとしている。そこでは夢洲の埋立をすすめ、カジノ型リゾート施設をつくり、万博誘致と合わせたまちづくりをするとしている。カジノ誘致のためのインフラ整備のための万博に他ならない。
関西経済連合会・森詳介会長曰く「ベイエリアの開発や、インフラ整備などを限られた時間でやろうとすれば、現実的には万博とIRをセットにしてやるしか方法がない、と考えた。万博は誘致できるか分からないが、せっかくやるんだから、誘致できる前提で考えなければならない」。しかし、1991年から事業を開始したにもかかわらず、いまだに人も住まない、企業も立地していない場所に投資する意味などそれこそ税金の無駄使いというものであろう。
大阪府財政は、公債残高が6兆円を超え、2011年度決算で起債許可団体に指定されるなど、厳しい状況にある。多くの大型プロジェクトが失敗し、維新政治が傷口を広げた。甘い予算見積りと過剰な期待による計画は大資本の一時的な利益と府民の一層の貧困を生み出すだけだ。
府案では、総工事費について、会場建設費および関連事業費で総額2千億円程度と見積もり、この投資にたいする経済効果を約6兆円と見積もっている。それは、3千万人という入場者数予測をはじめ、甘い予測になっている。
2005年の愛知万博が総工事費3460億円、入場者数2200万人、そして経済効果約3兆円と言われていたのと比較すると、見積もりの根拠が疑われる。
この8年間の維新政治は、結局のところ、財政再建を理由とした市民向け施策の削減と民営化をすすめ、そして大手企業の収益を確保することだった。これでは大阪の閉塞感は打開できない。目玉にした「大阪都構想」も住民投票によって否決。カジノも反対の声が強くなかなか進まない。新たな府民世論誘導策が万博だ。

「都構想」の復活ねらう

住民投票で否決された「都構想」だが、維新はペテン的手口で逆転を狙っている。吉村大阪市長は、公明党が提案している「総合区」を踏み台にして、任期中に再度の住民投票を実現しようと躍起になっている。総合区とは、大阪市を残したまま現行の24行政区が持つ予算、執行などの権限を拡大するものだ。場合によっては区の再編もある。
総合区の実現にはまず市長が提案し、その後、市議会で可決すれば実現する。住民投票は必要ない。都構想は大阪市を廃止し、代わりに基礎自治体もどきの特別区を設置する。こちらの導入には住民投票が必要である。
吉村市長は総合区を受け入れる代わりに、今年2月の市議会で提案予定の法定協議会設置条例案に賛成してもらおうと公明党に働きかけている。
吉村は就任1年目の各紙インタビューで「住民投票で総合区と都構想、どちらがベストかを市民に選んでもらう」などと語っているが、そもそも都構想の根拠法である大都市法が規定する住民投票とは「特別区を設置することに賛成か反対か」というものであり、特別区と総合区のどちらかを選ぶものではない。公明党と取り引きしペテン的手口で「都構想」を復活させるなどとうてい許されない。

維新政治に断を

大阪市では地下鉄・バスの分割民営化、水道、衛生研究所の独立行政法人化など、市民生活を犠牲にする公共事業の民営化が推し進められている。維新の議員や首長による不祥事も後を絶たない。「身を切る改革」の宣伝文句、「野党」ポーズからくる「改革者幻想」はまだまだ根深い。
実態をつぶさに暴いていき、広めることが大切だ。
1月22日投開票の茨木市会議員選挙で維新は9人の候補者のうち現職2人を含む4人が落選、現有勢力を2人減らした。1月29日投開票の北九州市議選では、全7選挙区に現職3人を含む7人を立てたが、全員落選した。
この流れに注目していこう。

大阪市の統合、民営化に反撃
「維新」と対決する労働者、市民

入れ墨調査拒否処分の撤回を求めた裁判の当該が発言(2月3日)

大阪府と大阪市の公営事業の統合・民営化は、松井知事と吉村市長のもとで、新たな都構想戦略と一体で進めれてきた。大阪市の2・3月議会が大きな焦点になっている。2018年の住民投票をねらう「法定協議会」設置議案、市営地下鉄・市バス廃止条例が提案される。水道の民営化についても継続審議となっている。
こうしたなか、大阪市内で「入れ墨調査上告棄却糾弾! 市民生活の破壊許すな! 2・3集会」が、「懲戒処分を許さない南大阪の会」など橋下市長による処分攻撃とたたかってきた諸グループの連携によって開催された。

デマで処分認める

集会は2部構成で、1部が入れ墨処分とのたたかいの現状と今後について。2部が大阪市の統合・民営化とたたかう5団体からの報告で構成された。
1部では入れ墨調査拒否処分撤回を求めて裁判闘争をたたかった交通局の安田匡さんと病院局の森厚子さんが発言した。
橋下前市長が就任直後におこなった市職労働者、労働組合への攻撃の一つが全職員への入れ墨調査だった。調査拒否を理由とする処分の撤回を求める裁判では一審の大阪地裁では勝利したが、二審の大阪高裁では逆転の処分正当の判決。そして最高裁は原告の上告を棄却した。安田さんは「入れ墨で脅された子どもがいる」というデマを報道したマスコミや、橋下市長に頭を下げた労働組合のあり方を弾劾した。そして上告棄却を「市民に公務で応えない労働者づくり」と断じた。
安田さんは大阪市による報復的な配転攻撃を撤回させる裁判で、最高裁で勝利し、昨年12月、運転職場に復帰したことを報告した。そして「市交通の私鉄への売り渡しが離職者を多発させ、市民の貴重な足が奪われる」と訴えた。
懲戒処分にたいして人事委員会闘争をたたかっている当該が決意表明。弁護団の在間弁護士は、公務労働者の基本的権利と司法の危機の2点で最高裁の上告棄却を批判した。

ホーム柵設置拒否

2部では、衛生研の統合問題について「市民の健康を危機にさらすもの」と報告された。
また視覚「障害者」からはホーム転落事故の経験が語られ、すでに決まっていた地下鉄のホーム柵設置(御堂筋線全駅)を橋下前市長が見直したことにふれて、「安全がまともに届かない市政だ」と怒った。それぞれの報告によって市民生活破壊の深刻な実態が浮き彫りになった。「安心できる介護を! 懇談会」からは、職種別による諸団体や零細事業者との共闘などの取り組みが報告された。

維新政治とたたかう

全港湾大阪支部の山元一英さんは主催者として「次から次に公共的なものを民営化する。公務員攻撃は、こうした全面民営化のためだった。命である水まで民営、これでいいのか。これが問われている。声をあげる必要がある」と発言した。まさに「都市や自治体はどうあるべきか」を問う声が、維新政治とのたかいのなかから生み出されている。2・3集会は「都構想」攻撃にストップをかけた2015年5月の住民投票の勝利を引き継ぎ、公務員と民間の労働者、地域市民が一体となって維新政治とたたかう陣形の展望を示すものとなった。(森川数馬)

3面

共謀罪 4つのペテンを暴く
永嶋靖久弁護士 国会提出は阻止できる

2月6日、大阪市内でひらかれた「戦争あかん! ロックアクション」での永嶋靖久弁護士の発言を紹介する。(文責、見出しとも本紙編集委員会)

条文が秘密のまま

『日刊ゲンダイ』が共謀罪について「壮大なペテンだ」と書いています。国会で毎日、共謀罪について審議していますが、日々その壮大なペテンが明らかになっています。
一つめのペテン。みなさんはテロ等準備罪=共謀罪の条文を見たことがありますか。政府は条文をまったく明らかにしないで議論しています。
法律というのは条文があってはじめて、どのような場合にその法律が適用され、それがどのような影響をあたえるのかがわかるのです。それがいまだに明らかにされていない。
過去3回も廃案になった問題だらけの法律を通そうというのに、いまだに法律の条文を明らかにしない。そして今年の夏には都議選があるから「早期成立を」などと言っているわけです。これが一つめのペテンです。

話しただけで罪に

二つめのペテン。政府は「今度の法律で対象となるのは組織的犯罪集団だけだ。しかも準備行為があって初めて処罰するもので、共謀罪とは全然ちがう。一般人には関係ない」と言っています。
しかし「組織的犯罪集団」とは、2人以上が共謀した時点でそれが「組織的犯罪集団」になるのです。だから「テロ組織だとか暴力団に入っていないから関係ありません」ということにはなりません。
それから「準備行為」について。人を殺したら殺人罪、物を盗んだら窃盗罪、通貨偽造を準備したら通貨偽造準備罪です。人を殺すとか、物を盗むとか、通貨偽造を準備するという「それをおこなったら罪になる」ことを構成要件といいます。
そこで、国会で福島みずほさんや民進党の議員が「準備行為が構成要件になるのか」と質問すると、政府はそれに答えない。福島さんが「構成要件だと言いなさいよ」と詰めよったけれども、法務大臣は「今はそれは明らかにする段階ではない」というのです。
つまり、準備行為というのは犯罪行為の部分ではないのです。あくまで、準備行為よりも手前の時点でおこなわれた共謀・計画が犯罪になるのです。だから今回の法案はこれまでの共謀罪法案のままなのです。
だから「一般人に共謀罪は関係ない」のではありません。共謀した時点で、その人は「一般人」ではなくなるのです。

条約締結とは無関係

三つめのペテン。政府は「テロ防止関連条約を締結するために共謀罪が必要」と言っています。
しかし、少し前の外務省のホームページの「テロ防止関連条約」というページでは、「国連その他の国際機関では、これまでに13本のテロ防止関連諸条約が作成され、…我が国は、2015年8月現在、下記の13条約の締結を完了しました。」とはっきり書いてありました。
外務省は「テロ防止関連条約の締結は完了した」と言ってきたのです。それが現在の外務省ホームページでは、その部分が「我が国は、これまでに13本のテロ防止関連諸条約を締結しています。」と書きかえられました。「完了」の文字を消しています。1月27日に書き換えました。こんな姑息なことをしています。
四つめのペテン。「テロ対策が不十分。このままでは東京オリンピック、パラリンピックができないといっても過言ではない」と安倍首相は言いました。
しかしこの国には十分すぎるほどテロ対策の法律があります。そもそも安倍首相はオリンピック招致演説で「東京は世界で一番安全な街です」と言っているのです。それがいまになってこんなことを言い出している。
このように「ペテンにペテンを重ね、市民の政治的自由を奪おうとしている安倍政権こそ組織的詐欺の犯罪集団だ」、と言っていいと思います。

国会提出阻止へ

6日の日経新聞の社説は「政府のやっていることが理解に苦しむ。何をしたいのかわからない。条約に便乗していっぺんにいろんなことしようとしている」と言ってます。そこまで日経の社説で書かれているのです。
いままでは、どういうことかわからなかったから反対の声も広がりにくかったけれども、テロ等準備罪=共謀罪の正体が何なのかということが多くの人にわかるようになれば、国会提出は阻止できると思います。
大阪弁護士会が3月10日夜、民主党政権時代の法務大臣・平岡秀夫さんを呼んで集会を開きます。3月13日には、お昼の12時に、大阪弁護士会館前からデモをおこないます。多くのみなさんのご参加を呼びかけます。がんばりましょう。

挙国一致体制を担う共謀罪

1月28日、大阪市内で「だれが・なぜ共謀罪を必要としているのか」と題しての小倉利丸さん(経済学者)の講演会がひらかれた(写真)。主催は、共謀罪に反対する市民連絡会・大阪。
この講演会の目的は、共謀罪の法律的な批判ではなく、なぜ共謀罪法案がしつように国会に提出され、その法制化をめざされているのかについて、社会的・政治的背景を考えることだと、主催者あいさつで説明された。

画餅と化した憲法

講演の冒頭で小倉さんは、現行憲法が「絵に描いた餅」になっていることを指摘した。
だから、憲法の存在をあてにして反対運動をおこなうことはできない。共謀罪攻撃の本質的な問題は、「共謀の犯罪化を広範に認めることは、憲法を逸脱し、刑法に想定されている基本的な前提を根底から転換させる」ことになる点にある。「対象犯罪数ではなく、共謀罪という犯罪類型を作ることが、最大の問題である」。したがって法案修正ではなく、廃案にするいがいにないとし、「この点は一歩も譲ってはならない」と強調した。

「戦時」という認識

法案にかんする政府説明では、立法事実らしきものが2020年の東京オリンピックにたいするテロの脅威であるとされている。オリンピック反対の政党が存在しない国会では、オリンピックのためのテロ対策を持ち出す政府を効果的に批判できていない。
戦争法制や秘密保護法の成立によって、今日本は「戦時である」という認識が必要である。「政府は戦時の挙国一致の体制を構築しようとしており、共謀罪はその一環を担う。政府にたいする異論や批判を、社会的な秩序を乱す行為として取り締ろうとするだろう」と危機的な現状を指摘した。

「自白」のみで処罰

小倉さんは講演の最後に、共謀罪の危険性に警鐘を鳴らした。
共謀罪の場合、いかなる意味においても物証はない。あるのはコミュニケーションだけである。コミュニケーションをある種の「自白」に準ずることであるとしても、未だ実行行為には至らない以上、その「自白」の信憑性を証明する客観的な事実は存在しない。
自白の偏重どころか自白のみで、その信憑性の証明も実行行為の有無も抜きにして犯罪として処罰できる。こうした共謀罪の本質が、既遂や未遂のこれまでの犯罪取調べや裁判に逆作用する危険性があり、ますます自白偏重、疑わしきは被告人の不利益へと転換してしまうきっかけを与えてしまう。
「私たちが自覚しなければならないのは、現在の日本が確実に対テロ戦争の一方の当事者として『戦時体制』のなかにあるということだ」と指摘した。
そして「私たちはもっと大胆に、近代の国家や民主主義がもたらした悲劇に目を向け、これを覆すに足る想像/創造力を獲得しなければならないのではないか。これまでにない人間の集団性の規範を構想する開かれた可能性を持つことができさえすれば、左翼運動はその存在感を失うことはないだろう。私はまだその可能性は十分あると考えている」と述べて講演を締めくくった。(粟倉)

米軍レーダー基地撤去へ
総会、旗開きでスタート

2月4日、米軍Xバンドレーダー基地反対近畿連絡会の旗開きが、用意した60席を超す参加者でにぎやかにおこなわれた。
開会あいさつの後、〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉事務局長・永井友昭さんからの連帯メッセージが読み上げられた。
次に、「映像でふり返る2016年の闘いと内灘・砂川闘争」と題する映像を上映。2017年にむけた提起を代表世話人の大湾宗則さんがおこなった。つづいて大阪、兵庫、奈良、滋賀、京都の各府県から発言があった。
その後〈川口真由美とおもちゃ楽団〉のミニライブで交流を深めた(写真上)。最後に代表世話人・服部良一さんによる閉会のあいさつがおこなわれ、2017年も共に頑張ろうと確認した。

投稿
京丹後市で米軍に抗議

1月31日、米軍Xバンドレーダー基地反対京都連絡会の毎月2回の京丹後現地行動に車2台11人が参加した。
地元の袖志、尾和、中浜、上野、平、井上、中野の各集落にビラを500枚配布した。途中、米軍Xバンドレーダー基地前での抗議行動と、隣接する航空自衛隊経ヶ岬分屯基地前での抗議行動も今回初めておこなった(写真上)
米軍基地がある宇川に、今回初めて来た人もいたので、基地や間人の立岩、島津の米軍属住宅前の「Xバンドレーダー基地反対」の看板も見てまわった。(米原幹男)

4面

朝鮮学校
府市の補助金打切りを追認
大阪地裁 請求棄却の不当判決

朝鮮学校(学校法人大阪朝鮮学園)が、大阪府と大阪市を相手に、2011年度分補助金の不交付決定取り消しと交付の義務づけ、ならびに被交付者としての地位確認、国家賠償等を求めていた裁判で、1月26日、大阪地裁(山田明裁判長)は請求を棄却する反動判決を出した。

大阪府市の助成

大阪府は1974年度から40年間にわたり府下の朝鮮学校に助成金を交付してきた。大阪市も90年度から「義務教育に準ずる教育を実施する各種学校」として補助金を交付してきた。
なぜ補助金なのか。
日本政府は日本国内における朝鮮学校を一切認めず、在日朝鮮人民による民族教育を否定している。朝鮮学校には学校教育法が適用されない。つまり日本政府は公式かつ法的に「朝鮮学校は学校ではない」と宣言しているのである。
09年12月、京都朝鮮第一初級学校(日本では小学校にあたる)を在特会などの集団が襲撃した際に「こんなもの学校ではない」と罵声を浴びせたが、その罵声の源は上記の日本政府の差別政策にある。日本政府が実際におこなっている差別行政を在特会は公然とメガホンで叫んだのであって、日本政府の差別政策を下品に叫んだにすぎない。
たとえば日本の学校をみてみると、土地取得、校舎の建設、教員の賃金など、児童・生徒の親から資金を集めて運営しているわけではない。そんな金を請求された親はいない。当然、税金でまかなわれている。
ところが朝鮮学校は、法的に「学校ではない」と規定されているため、在日朝鮮人民は、みずからが資金を工面して民族学校(朝鮮学校)を建設し、教員の賃金も工面して運営することを強いられている。在日朝鮮人民は、日本人と同じく税金をとられているにもかかわらず。
戦後、朝鮮人民は子弟に朝鮮人としての教育をするために各地に朝鮮学校を建設した。ところが、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)と文部省(当時)は閉鎖命令を出し、国家権力の暴力で潰していった。その後、建設された今の朝鮮学校については、日本政府の対応は、「やりたければ勝手にやればよい。ただし学校扱いしないから、税金は一切投入しませんよ」という許しがたいものである。
そういう事態のなかで、地方自治体が独自の判断で「補助金」を交付して、運営の足しにしてきたのが実情である。「日本の学校に補助金が支給されていないのに、なぜ朝鮮学校だけに支給されるのか」と在特会などが非難するが、そもそも税金が投入されていれば、補助金など不要なわけである。

橋下が補助金停止

ところが、10年、橋下府知事(当時)は、大阪朝鮮学園にたいし、特定の政治団体と一線を画すこと、特定の政治指導者の肖像画を教室からはずすこと、などのいわゆる「4要件」を補助金交付の条件として突然提示。
教室の肖像画をはずさなかった高級学校(日本では高校にあたる)以外の初中級学校(小学校、中学校にあたる)には10年度分の補助金は交付された。11年度にはいると、教室だけでなく、職員室からも肖像画を外すよう要求。さらに、12年3月、恒例の平壌での迎春公演に朝鮮学校の児童生徒が参加していることが報道されると、府は、「これが学校行事ではないと確証が得られない」からとして、11年度分の補助金は交付しないと決定した。 続いて、橋下は11年11月市長選で大阪市長に転身、大阪市の補助金も打ち切った。
大阪府・市の対応が引き金となって、各地で同様の動きがひろまるという事態となったのである。

歴史的経過を無視

今回の判決について原告代理人の丹羽雅雄弁護団長は「支給要件について形式的な判断をしただけ。学習権や学校の歴史的、社会的役割に一切触れなかった不当判決」と憤る。
今の日本社会に多くの在日朝鮮人民が生活しているのは、日本が朝鮮を植民地支配してきた結果である。当時、強制連行されたり、だまして連れてこられたり、朝鮮での生活基盤を支配者=日本政府に破壊され生活できなくなりやむを得ず日本に渡航したり、さまざまな事情で朝鮮人民が日本にやってきた。
歴史的事情を考慮すれば、日本社会は在日朝鮮人民の民族教育を無条件に認め、必要な施策を実施する義務がある。
国連人種差別撤廃委員会は14年9月、朝鮮学校への「高校無償化」制度の適用とともに、地方自治体に「補助金再開・維持」を要請するよう日本政府に勧告した。 
不当判決の日、大阪朝鮮学園は「朝鮮学校だけを公的助成制度から排除することは、民族教育の権利を否定する、不当な差別であるばかりか、『在日朝鮮人は差別されて当然』という風潮を煽るものです。なぜ、自国の言葉や文化、歴史を学ぶことが否定されなければならないのでしょうか。… ただちに控訴し、最後まで、そして、勝利する日までたたかい続けます。」との声明文を発表した。(宇佐美 武)

「慰安婦」問題
性暴力をなくすために
体験を聞くことの重要さ

1月29日、「女性への性暴力をなくすための連続学習会」(主催:アムネスティ・インターナショナル日本・北摂グループ、「慰安婦」問題の解決を求める北摂ネットワーク豊中)が、豊中市の男女共同参画センターであった(写真上)。今回は、日本軍の「慰安婦」にされた女性たちの声に耳を傾ける―インドネシア、スラウェシ島、南スラウェシ州での聞き取り調査から―というテーマで、鈴木隆史さん(桃山学院大学兼任講師)が講演をした。
鈴木さんはインドネシア漁業経済の専門家。1985年から6年間、インドネシアの大学に留学している。この時、日本軍によって「慰安婦」にされたインドネシア人女性がいることを知った。
いま記録しておかなければ、その存在が消えてしまうとの危機感をいだき、2013年から被害女性とその家族の聞き取り調査をしてきた。

強いられた沈黙

インドネシア社会では、日本軍占領期を体験した人たちは「慰安婦」の存在を知っていた。しかし、日本政府や企業との関係もあり、公然と語る者はいなかった。当然、被害女性は自らの体験を語ることもなかった。鈴木さんが調査した南スラウェシ地方では「シリ」という恥の文化が強くあり、家族にたいしても黙らざるを得なかった。
鈴木さんは「慰安婦問題では、歴史資料で軍の関与があった・なかったかという論議がなされているが、被害の当事者に会って話を聞き、声をきくことがなによりも重要だ」「当事者からその体験を聞きとるだけではなく、その後70年という人生をどのような思いで、どのように生きてきたのか。この事にわれわれは思いを馳せなければならない」と語る。
鈴木さんが聞き取りした女性は29人に及ぶが、ここではヌラ(nura)さん(写真右)の証言を紹介する。ヌラさんは、自分の体験を恥ずかしいことだと考えてきたので、これまで誰にも話すことはなかった。(2013年にインタビュー、この時85歳くらい。)

ヌラさんの証言

友人と一緒に学校から歩いて帰る途中、トラックに乗った軍人に銃を突きつけられて捕まり、トラックへ荷物のように放り込まれた。荷台には幌がかぶされていたので、どこに連れていかれたのかはわからなかったが、泣くと「うるさい、バキャロウ」と怒鳴られた。降ろされた場所は竹でできた建物がたくさんあった。入れられた建物にはいくつもの部屋があった。床も竹でつくられ、一枚のゴザが敷かれているだけだった。そこで強姦され、何人もの相手をさせられた。
部屋から外を覗くことも許されず、泣いた。隣の部屋からは女性たちの泣き声が聞こえた。とても寒かったが、服は与えられなかった。8カ月近く慰安所で兵士たちの相手をさせられた。「飯ごう持ってこい」といったゴトウ班長はやさしかった。軍医はモチダだといったが、強姦した軍人の名前は覚えていない。軍医には注射や、薬をもらった。
解放時には、お金や食料などなにも与えられず、ひとりで歩いて家に戻った。ひもじかったが、村人が食べ物をくれた。家に帰ると「日本人とセックスした女は汚いのでいらない」と両親に言われて、家から追い出された。しかたなく、農作業の手伝いなどをしながら、ひとりで暮らした。両親の死に目にも会えていない。その後、遠い親戚の娘の面倒をみるようになり、この子を養女にもらった。

消せない真実

ヌラさんはこの女性に面倒を見てもらっている。彼女は野菜を売ったりしながら、ヌラさんの生活を手伝ってきた。「貧しかったので、高校にはいけなかった。友だちがうらやましかったが、母の事情を知っていたので諦めた」と語る。ヌラさんはイスラムの礼拝を欠かさず、正直で礼儀正しく生きる事を信条としている。彼女もヌラさんから教えられ、これを信条に生きている。ヌラさんは膝が悪く、歩くのが困難だ。ヌラさんは「お金があれば医者にかかれるのに」と言う。
2016年3月、ヌラさんは亡くなった。ヌラさんの証言は、日本軍性奴隷としての「慰安婦」の存在を明らかにしている。歴史の事実を消し去ることはできない。(津田)

(短信)
大飯原発控訴審
島崎邦彦さん証人に

1月30日、名古屋高裁金沢支部で、大飯原発控訴審が開かれた。
原告木田節子さん(福島県富岡町から水戸市に避難)と代理人弁護士の意見陳述のあと、裁判長から、4月24日に島崎邦彦さん(元規制委員会委員長代理)の証人尋問が正式に決定したことが伝えられ、傍聴席にはどよめきが起こった。
原告側からの主尋問は60分以内で、反対尋問も60分以内であること、主尋問と反対尋問の間に30分の休憩を挟むことなどを決めた。
裁判長は「(島崎証人は)この裁判で最も重要」と言い、この尋問の成否が大飯裁判だけではなく、その他の原発訴訟にも大きな影響を与えることになる。記者会見で弁護団は、島崎証人採用の背景には、大飯原発の地震動の過小評価の疑いが出され、マスコミも大きく報道したので、裁判所としても島崎さんの話を聞かずに判決を書くことができなくなったと、裁判所の決定を高く評価した。

5面

石川一雄さんの新年メッセージ
今年こそ、えん罪を晴らす

1963年5月23日のデッチあげ逮捕から54年。狭山差別裁判の再審無罪を求めてたたかう石川一雄さんが、新年のメッセージを発表した。昨年8月に出された下山鑑定を武器に、今年こそ再審の扉をこじ開けよう。石川さんのメッセージを全文紹介する。

満月にベランダいでて佇めば
月は急いで雲を駆け抜け

仮出獄ながら、社会に出て、23回目の正月を迎えることになってしまいましたが、全国の支援者の皆さん方は如何なる方針、決意を秘めて越年されたでしょうか。
新年明けましておめでとうございます。
日々恙無く過ごせているとはいうものの、殺人犯の汚名も拭えず、54年という途方もない永い年月を送り、然も刑事裁判の鉄則を踏まえれば、私の無実を示す証拠は沢山存在しており、再審を行ってもいい筈なのに、司法の姿勢は変わらないままなのかとすら感じます。
言及する迄もなく、戦前の憲法の悲惨な人権蹂躙の反省の上に作られたのが現憲法であり、だとすれば、弁護団から提出された数多の証拠上からみても冤罪性は明らかであり、即座に再審の門を開けるべきであるにも関わらず、司法は結論を出さないまま、30回の三者協議を重ねる結果となってしまいました。しかし、昨年8月に出された下山鑑定によって警察当局の犯人デッチ上げの真相が公になり、最早、警察、検察当局を逃がさないところまで追いつめています。私自身、今日まで、幾度となく繰り返してきた「今年こそ」が本当に「今年こそ」となりそうであり、又、そうしなければならないと肝に銘じ越年致しました。
思えば、時の国家公安委員長の「…生きた犯人を…」の声に端を発し、そして何が何でも犯人をと焦った警察は、憲法の精神を無視し、被差別部落民で無学な私を生贄にすべく別件逮捕し、代用監獄の中で、甘言、脅し等で自白を強要、また証拠を改ざん、捏造したり、隠蔽することによって人権を蹂躙したのであります。
現在でも冤罪が後を絶たないのは、憲法を順守し、人権を擁護する立場にある筈の検察庁、法務省が、人権蹂躙の犯罪行為を行い、証拠の隠蔽を静観していることこそ問題であり、責任も重大であると指弾しなければなりません。
何れにせよ、下山鑑定書が、このような司法の闇にメスを入れ、真実を明らかにして下さる事でしょう。万年筆に関しては第一審当初から一貫して、発見経過がおかしい事、被害者が使っていたインクと異なるインクが入っていたことなどもあって、贋物ではないかと指摘していたのに対し、これまでの再審を棄却した決定では「級友から借りる、乃至は郵便局に立ち寄った際にインクを補充した可能性」で結論付け、その後、第一次、第二次の再審請求審の2人の最高裁裁判長迄もが、一回、二回目に家宅捜索を行った元捜査官が、「三回目に発見された場所はすでに探したところであり、万年筆はなかった」旨の証言にも謙虚に耳を傾けることなく、ただ年数が経っているから信用できないと確定判決を追認、踏襲したのであります。
何故確定判決の認定を是認する前に、一、二回目の家宅捜索時の捜索官の証言や、三回目の捜索で万年筆が発見された「鴨居」の下に脚立が写っていることに思いを馳せなかったのか。私は2人の最高裁裁判長として資質を問うというより、弾劾する必要性を強く抱いているのであります。
また、秘密の暴露の一つとされた、鎌倉街道での、自動三輪車の一件を含め、被害者宅の前方に車が停車していたとの時間帯についても、未開示の証拠が開示されたことによって、当時の捜査当局が如何に焦って証拠を見繕い、その事により裁判官が誤審し、冤罪を作り出してきたかも、国民の前に驚愕を持って明らかにされることによって、警察、検察、司法全体の権力犯罪を知ることになるでしょう。
今年は2月上旬に三者協議が予定されており、下山鑑定について検察側はどのように反論するのか、多分突拍子もない事を持ち出し、躍起となって誤魔化すに違いありませんので、決して楽観することなく厳しく対峙して参る所存です。
高裁前アピール行動は1月中旬から行いますが、私自身、検察官に隠し持っている証拠の開示を強く迫って参りますが、なかでも高検以外の隠し持っている証拠物リストの開示や、高裁に下山鑑定書等の鑑定や鑑定人尋問、事実調べをさせることを強く訴えたいと思います。
元より支援者皆さん方も裁判官も下山鑑定に因って狭山事件の虚構と、その根底から突き崩す科学の力の確かさを存じあげている筈であり、裁判官も今までの判決、判断に予断を抱くことなく司法的抑制の理念の上に立って弁護団が指摘した諸々の論点、事実に就いて虚心にそして真摯に精査され、大局的見地に立ち検討して頂ければ、最早司法が正義の姿勢を見せ、法廷の場で真相を究明する以外の結論は無いと確信しております。
皆さん方が例年同様に私の無実を信じ、再審闘争に理解し、応援して下さることは取りも直さず裁判上に大きく反映されるはずであり、私自身も今年こそ冤罪を晴らすべく、最大限取り組んで参る所存であります。
最後の最後まで皆さん方にご迷惑をおかけし、誠に申し訳なく思いますが、どうか一刻も早く、私、石川一雄が自由の身になれますようご協力を切にお願い申し上げ、新年の第一歩に当たり、心からお願い申し上げて私のご挨拶と致します。
末尾になりましたが、皆様方も一年を通してご多幸でありますよう狭山の地から念じつつ失礼いたします。
2017年1月
    石川 一雄

(上記歌を詠む切っ掛けになったのは下山鑑定書の提出後、胸に閊えていたものが取れ、外に出てみると月が煌々と私を照らしてくれているように感じました。強風によって雲を吹き飛ばしてくれたのですが、多分来年は良い年になりそうだと思い詠んだ歌です)

投稿
“憲法を使いきろう”
木村草太講演会に450人
1月15日 西宮

新年まだ日も浅い1月15日、西宮勤労会館ホールで「憲法は元気か―改憲を論じる前に憲法の可能性を想像してみよう」と題する木村草太首都大学東京教授の講演会が開かれた(写真左)。主催は、〈市民の力で社会を変えよう! 連続市民講座実行委員会〉。木村さんは、まず改憲派が唱える「押し付け憲法」論のデタラメさを「現行憲法の制定過程」を通して詳しく説明した。
それは@ポツダム宣言受諾とバーンズ回答(1945年7〜8月)A松本委員会の起草作業(45年10月〜46年2月)BGHQ決断(46年2月)の経緯を事実に即して追うものであった。「押し付け」派は通例GHQが46年2月3日にマッカーサーがホイットニー民政局長にたいし「憲法改正三原則」を提示したことをもって押し付けとする。
しかしここで提示されたものは、(@)天皇制は維持するが、国民にたいする責任を設ける、(A)戦争を放棄し、日本の防衛・保護を「世界をうごかしつつある高次の理想」にゆだねる、(B)封建制度を打破する、とする普遍的なものであった。このもとに2月12日にGHQ案が成立し、2月13日に吉田外相・松本国務相ら日本政府に提示される。これ以降憲法改正の具体的手続きに入りGHQと日本政府が折衝し、3月6日に「憲法改正草案」を閣議決定し、4月17日に法務局チェックと口語化を施した「憲法改正草案」を閣議決定したのだ。
講演の今一つの重要ポイントは憲法24条であった。戦前の憲法・民法の家族制度が婚姻において「戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス」とあるように、個人の尊厳も男女平等も認められないもので、これをめぐってGHQは案を提示し、その論議の上に現行憲法24条の「婚姻は、両性の合意にのみ基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本とする」という、画期的で極めて当然のものとなったと説明した。
そしてこれだけでなく至極当然で普遍的な価値が現行憲法にはあり、「この憲法変えるという論議の前に、ボロ雑巾になるまで憲法を使い切ろう」と提起した。
9条問題にたいしては現行憲法では軍隊は持てないとしたうえで、ただ他国が攻めて来て「生命、自由及び幸福追求にたいする権利」が侵される時には、これを守る権利は当然にもあるとした。 木村さんはこれ以外にも、沖縄県にたいする安倍政権の「全国の7割以上の米軍基地押しつけ」と新基地建設にたいしては、憲法95条の「一の地方公共団体にのみ適用される特別法は」「住民の投票においてその過半数の同意」が必要との条項を適用すべきと、現行憲法をもっともっと使いきろうと訴えている。
最後に連続市民講座代表の小柳久嗣さん(元尼崎市議)が、「市民の力を信じて憲法改悪とたたかおう」とまとめた。(久保井健二)

(労働ニュース)

●国内で働く外国人が100万人を突破

就職情報会社の調査によると全国約360社中、2016年度に外国人留学生を雇用した企業は予定を含め38・1%、17年度採用見込みは59・8%と半数を超える。専門的分野に限ってきた外国人労働者の正規就労範囲を、農業や建設業に広げるかどうか議論があるが、与党内には「移民問題につながりかねない」との意見がある。また労働側の連合も外国人労働者の権利保護を訴える一方で、国内の雇用状況への影響を懸念し、安易な拡大に反対している。(1月28日)

●肥満などのリスクあっても、会社側責任

ミスタードーナツのフランチャイズ店(三重県)の男性店長(12年当時50)が死亡したのは過重な業務が原因として、遺族が、経営する会社と社長らに約9500万円の損害賠償を求めていた訴訟で1月30日、津地裁は計4600万円の支払いを命じた。「長時間労働により心身に負荷がかかり死亡に至ったと考えるのが相当。会社側は業務軽減の措置をとっていない」と指摘。肥満などの健康上のリスクを持っていたが、死亡前6カ月の時間外労働の月平均は112時間だった。遺族は「太りすぎを理由に賠償額を減らされるのは納得できない」と話している。(1月31日)

●大手旅行会社HIS(エイチ・アイ・エス)も長時間労働

大手旅行会社HISが従業員に違法な長時間労働をさせていたとして、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)が労基法違反の疑いで同社を強制捜査していた。HISは労使協定で定めた上限を上回る違法な残業をさせた疑い。同社は格安航空券や低価格の海外ツアーなどで業績を伸ばし、昨年10月期の売上高は約5200億円、グループ全体の従業員は約1万4千人。(2月1日)

6面

追悼 佐藤昭夫先生
団結権を大切にし、戦争を憎む

労働運動の再生をめざして

1月8日、佐藤昭夫先生が永眠されました。享年88。
私が佐藤先生と初めてお会いしたのは2003年3月、国労5・27臨大闘争弾圧裁判の裁判事務局として東京に派遣されたときでした。先生と同じ時間を過ごせたのはわずか7年ですが思い出は尽きません。
先生は1928年、札幌に生まれました。小学校1年のとき2・26事件、翌年7月には盧溝橋事件が起こり、日本が軍国主義一色に染まりだしていました。真珠湾攻撃の翌年、13歳で自ら進んで仙台陸軍幼年学校に入校し、陸軍予科士官学校を終えた1945年、死ぬとわかっていながら「神」としてのヒロヒトに命を捧げるため敢えて特攻隊を志願しました。天皇を「神」とする絶対の価値観による教育を受けていたからです。

天皇は品性下劣

「聖戦」意識、「天皇崇拝の教育に染め上げられていた」先生はそれと3年にわたって格闘し、もっとも根底的なところから問題をえぐり出し、労働法の道に進みました。それは自分のためではなく、二度と戦争をする社会を作ってはならないという思いからです。
天皇を「神」とし、絶対とする価値観で多くの人たちを死においやった侵略戦争と天皇ヒロヒトにたいして先生は激しい怒りをもっていました。侵略戦争突入を自ら決定し、2千万人を超すアジア民衆、310万人を超す国民を殺しておきながら、敗戦に際しては自分が助かるために沖縄を売って命乞いをするような人物だったヒロヒト。さらに在位50年の記者会見で戦争責任を追及されたとき「言葉のあや」として逃げ回ったヒロヒトにたいして、「品性下劣な人間」(『「武力信仰」悪夢再現を憂える』悠々社)と徹底弾劾しました。ヒロヒトの「股肱の臣」として自ら命をささげようとした先生でないとできない弾劾の言葉です。

野村平爾から労働法受けつぐ

先生が師とあおいだ野村平爾は戦前ドイツに留学し、下宿にレーニン全集を置いていたときナチス・ゲシュタポに襲撃されましたがタッチの差で助かったという経験を持っている人です。先生はこうした人たちと接し、マルクス主義や共産主義に触れる中、人間としてどう生きるべきかをつかみとっていったのです。野村平爾は帰国後、日本労働法の草分けとなりましたが、先生はその一番弟子でした。団結権を大切にし、戦争は絶対許さないという思いは師の野村平爾から受け継いだものでもあります。

改憲阻止への思い

先生はよく集会などで「犬死でなかった証拠にゃ 新憲法のどこかにあの子の血が通う」という都都逸を紹介していました。これは東京新聞(2012年12月5日)に掲載されたものです。先生はこれにふまえ「憲法は血であがなった歴史の教訓であり、これを生かさず空手形に終わらせたら、戦争の犠牲者は本当に犬死となる」と改憲阻止のたたかいにも力を入れていました。
先生は教科書問題にも取り組み、都教委が実教出版の日本史教科書を排除した事件の証人として東京地裁で証言もしました。また、中学校の教育現場に講師として呼ばれることもあり、そこで自らの体験を語り、「権力による意識の支配の恐ろしさ」を語り、「歴史の事実を知ることの大切さ」、「自分の頭で考えることの大切さ」を訴えていました。

困難に立ち向う

先生は困難であればあるほどファイトを燃やすタイプで、5・27裁判もその一つでした。5・27裁判は被告、弁護団、支援が団結して国家権力と国労本部を追い詰めていましたが、周知のとおり2007年暮、中核派が分裂し、それに起因する党派闘争が5・27裁判闘争に持ち込まれ、大きな危機にみまわれました。このとき先生は、弾圧を打ち破るためには、立場に違いが生じてもそれをのり超えてたたかうべきという原則を絶対曲げませんでした。それは戦争を憎み、団結権を大切にする先生の生き方をかけたものだったと思います。

先生の意思を継いで

告別式で棺にふたをするとき「二度と戦争を起こさない社会にするにはどうしたらよいかを最後まで考えていました」というおつれあいからの言葉がありました。私は先生の意思を継いで、多くの人たちとともに、二度と戦争をしない社会をつくるためにたたかうことをあらためて決意し、追悼の言葉とします。(元国労5・27裁判事務局 米村泰輔)

(シネマ案内)
『スノーデン』の衝撃
オリバー・ストーンの渾身作

米支配階級と巨大資本の戦争と差別抑圧の政治に映画芸術をもって果敢にたたかうオリバー・ストーン監督作である。この映画は改憲や共謀罪攻撃とたたかう武器となる。

スノーデンショック

2013年6月5日、米大手電話会社ベライゾンが加入者数千万人の通話履歴を毎日、NSA(米国家安全保障局)に提出している事実がメディアに暴露された。連続して、NSAが大手電話会社、IT企業を通じて、1日に世界で数十億件のEメールと通話データを入手し、分析していることが暴かれる。暴露者はエドワード・ジョセフ・スノーデン。2004年「愛国者」として米陸軍に志願し、特殊部隊に編入されるが、訓練中に両足を骨折、再起不能となる。コンピューター技術者の能力を買われ、NSAやCIAやその請負会社に勤務し、スイスのジュネーブ→日本(横田基地)→ハワイ・オアフ島などに赴任してきた。暴露を決断したのは、自分の開発したプログラムが、無人機による攻撃に使われ、子どもや家族を全員殺戮する画面を見たためであった。
2013年6月9日、スノーデンは本名を名乗って、声明を出した、「自分は人生が台無しになってもこの事実を暴露する」。米治安当局は即時に、香港にいたスノーデンの身柄ひきわたしを要求する。映画では、彼の逗留する香港のホテルや道路に民衆が押し寄せ、身をもって彼を防衛する。たった1人の反乱で巨大な国家的監視・抑圧装置を無力化することが示された。

敵はNSA

NSAの実体と活動は秘匿されてきた。現在推定で、職員3万人と民間業務契約者6万人を擁し、外国情報政府機関や民間IT企業とも提携し、1カ月に970億以上のメール、1240億件以上の電話通信を盗聴している。
その手法は「底引き網手法」と称するグローバルな「大量監視」にある。同盟国の政府・企業や自国の一般市民までを対象に、インターネット、携帯電話、ソーシャルメディアを監視する。米政府の監視リストには、アメリカ人だけで「120万人が載せられている」。インターネット最大手9社はすべてNSAに協力している。テロリストを摘発するためと称し、人種・思想・宗教・政治的見解で対象を分類して監視する。普通の労働者人民が、携帯電話やソーシャルメディアの利用などを通して、無意識に監視の担い手にされている。

監視・抑圧との闘い

NSAは、「9・11」後に制定された愛国者法215条に基づき、外国諜報活動監視裁判所の許可を得て、「合法的に」数千万人の米国人の通信記録を収集している。収集された膨大な個人情報は、分析され、ターゲットが絞り込まれる。すべての人が「潜在的テロリスト」と見なされる。
スノーデンによれば、NSAの日本における情報戦の主要な拠点は、5カ所の米軍基地と米大使館内にある。在日の要員は合わせて約1000人、米諜報機関にとって日本は世界第3位か4位の拠点であるという。
オリバー・ストーンは言う。日本は「憲法9条をなくそうとしたり、『共謀罪』を通そうとしているのではないか」と。
すでに日本は警察の監視カメラが世界一の密度で設置されている。最近では、顔認証システムやデジタル監視システムが組み合わされ、ターゲットを絞り込む装置が全社会的に蔓延している。
また、「マイナンバー制度」が本格的に稼働しようとしている。2013年秘密保護法、2016年通信傍受法(盗聴法)改悪。今通常国会では共謀罪を強行成立させようとしている。憲法改悪により非常事態条項ができたら、秘密保護法によって「国家を揺るがす事由」の全部または一部が労働者人民から隠される可能性がある。非常事態条項が発動され、労働者人民は理由も分からないまま、あらゆる人権が停止され、集会も言論も内心の自由すら奪われる。(剣持 勇)