未来・第214号


            未来第214号目次(2017年1月5日発行)

 1面  名護市で抗議集会
     「オスプレイは即時撤去」
     沖縄の怒り頂点に

     最高裁判決、墜落事故
     首都で抗議闘争
     12月20日

     川内原発 “再稼働は待って”
     3日間、抗議の座り込み

 2面〜4面
     新年特別インタビュー
     基地はとめる 沖縄は自立する
     安次富浩さん×知花昌一さん対談

 4面  国をあげての違法、無法
     高江・辺野古反対 東京集会
     12月10日

     県民の民意を尊重せよ
     12・10 おおさか総がかり行動

 5面  投稿
     「オリンピック・ファシズムと闘う」
     鵜飼哲さんの講演を聞いて      

     投稿
     極東最大の航空基地
     労働者反戦交流集会に参加

     陸自福知山射撃場で米軍が実弾演習
     市民団体が抗議申し入れ

     普通の高校生活ができる社会
     朝鮮高校生「無償化」裁判

     京都で「19日行動」

 6面  投稿
     いいの??その“民営化”つくろう! 大阪モデル

     (シネマ案内)
     日本軍「慰安婦」問題を描いた初めての劇映画
     『鬼郷』(クィヒャン)      

     (冬期カンパのお願い)

       

名護市で抗議集会
「オスプレイは即時撤去」
沖縄の怒り頂点に

キャンプ・シュワヴ前で発言する
稲嶺進名護市長(12月17日)

12月13日 午後9時半ごろ、米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイが、名護市安部の海岸に墜落した。機体は岬付近の陸地から80メートル沖の浅瀬で大破。ほとんどの市民は翌朝のニュースや新聞で事態を知った。

墜落現場へ

14日 辺野古テント村では事態の対応に緊急の対策をとる。早朝より海上行動隊が抗議船を準備、マスコミや稲嶺進名護市長を乗せ現場に向かうことを決定。稲嶺市長は公務のため乗船できず、安部の浜から視察した。
9時過ぎ、テント村では安次富浩さんをはじめ数人が現場に向かう。安次富さんは、現場に向かう前にキャンプ・シュワブゲート前で、早朝より抗議行動をしている市民と合流。シュワブゲートには、高江から大型バス7台の機動隊が到着し、弾圧体制をとっている。抗議集会が始まると機動隊がすぐに接近し、マイクでがなり立てて集会を妨害する。この間にない激しい反応だ。安次富さんは機動隊を一喝し「腹の底から怒りがわいてくる。現実に落ちたではないか。これが危険でないと言い切れるのか」と抗議を続けた。
その後、安部の現場に向かう。現場の浜にはマスコミや市民が結集していた。墜落現場付近は、警察がロープで阻止線を2重に張っている。墜落現場では米兵が動いている。その手前に阻止線があり、そこまではマスコミのみが入れる。それから20メートル手前にも阻止線があり、それより先は一般の人は入れない。稲嶺市長もここで止められた。警察は、米兵以外は市長さえも墜落現場に入れなかった。
私たちは、遠くからではあるが墜落現場を確認した。まず、マストのような2本の棒状のものが見えた。ローターだ。その先にあるはずのプロペラは吹き飛んで見えない。ローターの右翼と左翼の距離は50メートルくらい離れている。そこから50メートルくらい陸地側の岩の上に白い破片が見える。機体は100メートル四方に飛散した模様だ。潮が引いてくると右翼側の機体が現れ、操縦席が見えてきた。窓は吹き飛び、翼の部分が引きちぎられ穴がぽっかりと開いている。墜落の衝撃がはっきりと見て取れた。誰が見ても墜落だ。

「感謝せよ」とは

政府は米軍の発表に追随し、「不時着だ」と強弁した。在沖米軍のローレンス・ニコルソン四軍調整官は、安慶田光男副知事の抗議に「住宅や県民に被害が出なかったことは感謝されるべきだ」「パイロットは沖縄の人を守るために、海に降りたのは良いことだ。表彰されるべきだ」と述べた。県民は植民地意識丸出しのこの発言に心の底から怒っている。
また、同じ13日に別のオスプレイが普天間飛行場で胴体着陸したと、在沖米軍が14日発表した。同じ日に2機のオスプレイの事故が起こったのだ。
この日、高江では250人の市民がオスプレイ墜落と高江ヘリパッド建設に抗議の声を上げた。
15日 沖縄防衛局はキャンプ・シュワブ陸上部の工事のうち、隊舎2棟の建設工事を再開した。防衛局は辺野古新基地工事とは直接関係ないとし、県も容認している。県は搬入が内容通りにおこなわれているかを確認。市民は搬入を監視した。

墜落糾弾緊急集会

17日 午後1時、キャンプ・シュワブゲート前で、「オスプレイ墜落事故糾弾! 飛行停止と配備撤回、海兵隊の撤退を求める緊急集会」(基地の県内移設に反対する県民会議主催)が開かれ、900人の市民が参加した。国会議員、県会議員、稲嶺市長、ヘリ基地反対協、高江住民の会などが発言。「同様な事故はこれからも起こる可能性がある。欠陥機オスプレイは配備撤回だ」「米軍は『不時着』などと言っているが、現場を見て誰一人として『不時着』と思っている人はいない」「米軍はオスプレイの飛行再開を日本政府に通告している。ふざけるな」と怒りの発言が続いた。
19日 午後2時、米軍はオスプレイの飛行を再開した。日本政府は米軍の説明のままにオスプレイ飛行再開を容認した。

最高裁が不当判決

20日 辺野古埋め立て承認をめぐり国がおこした「不作為の違法確認訴訟」で最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は県の上告を棄却し、県の訴えを退けた。県は敗訴を受け26日に承認取り消しを取り消した。沖縄防衛局は埋め立て承認の効力が戻ったことを理由に27日、埋め立て工事を再開した。
翁長知事は「今後も不退転の決意で公約実現に向けて頑張っていく」と決意を新たにし、22日名護市で開催された「オスプレイ墜落に抗議する県民大会」に参加した。(杉山)

最高裁判決、墜落事故
首都で抗議闘争
12月20日



12月20日、午後5時半から衆議院第一議員会館で辺野古最高裁判決緊急報告集会(写真上)が開かれた。
6時半からは首相官邸前で北部訓練場返還式典とオスプレイの墜落事故への弾劾行動(写真下)に350人が参加。伊波洋一参院議員も発言した。


















川内原発 “再稼働は待って”
3日間、抗議の座り込み

原発ゲート前で再稼働に抗議
(12月8日 薩摩川内市内)

12月8日午後9時半、九州電力は、川内原発1号機の再稼働を強行した。
12月5日から7日まで、鹿児島県庁前で、3日間連続の再稼働反対座り込みがおこなわれた。11月13日の全国集会のときに集めた7万筆を超える反対署名に、7日さらに1万1千筆が加わり、知事室に届けられた。
県庁前抗議集会後、座り込み3日目、〈ストップ川内原発! 3・11鹿児島実行委員会〉〈脱原発川内テント〉などのひとびとは夕方5時過ぎまで40人が座り込みをした。鹿児島実行委員会の向原事務局長は、三反園新知事に「再稼働はちょっと待て、と言ってほしい。全国が注目している」と呼びかけた。
8日午前8時から原発ゲート前で集会が始まった。「自分の子どもに、嘘をつかないことを教えてきた父親として、曖昧に済ますわけにはいかない」と参加者のひとりは訴えた。夜9時半、再稼働が強行されたという報が入るまで、シュプレヒコールの声をやむことなくあげつづけた。

2面

新年特別インタビュー

基地はとめる 沖縄は自立する
安次富浩さん×知花昌一さん対談

安次富浩さん

昨年12月20日、最高裁は沖縄県の「辺野古埋立承認取り消し処分」を違法とする判決を下した。翁長雄志沖縄県知事は26日、「取り消し処分」を取り消したが、会見で今後も辺野古新基地建設をあらゆる手段で止める考えには変わりがないと改めて強調した。13日には、米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイが名護市安部の海岸に墜落した。米軍は19日にオスプレイの飛行を全面再開した。これからの沖縄の闘いについて、安次富浩さん(ヘリ基地反対協共同代表)と知花昌一さん(真宗大谷派僧侶)に語ってもらった。(インタビューは、昨年11月〜12月読谷村で)

―辺野古の埋め立て承認を沖縄県が取り消したことをめぐる裁判で、12月20日、最高裁が県側の上告を退けました

安次富 代執行裁判では、三里塚の市東さんの農地取り上げの判決を出した多見谷裁判長が福岡高裁那覇支部で和解協議を始めたよね。代執行裁判を続けて行くと国は負ける。多見谷はそういう判決を出したくなかったのだな。それで「和解しなさい」となった。
国と地方自治体の関係は、2000年の地方自治法一括法案成立によって対等の関係になった。それまでは上下関係だった「機関委任事務制度」が廃止され「法定受託事務」にかわった。だから法律に則って判断すれば、代執行では国が負けるんだよ。それを避けるために和解勧告をやったわけだ。
違法確認裁判は代執行ではなく、国の是正指示に従うかどうかの裁判だから、多見谷は国の言うとおりの判決を下した。「沖縄はノドンの対象距離外だから、沖縄に基地をおくのは当たり前」と、国も言っていないことまで判決文に書いていた。
3月に和解協議が開始されて以降、海上のボーリング調査は止まった。海上のフロートは撤去したけど、40トンから50トンあるコンクリートの重石は海底に沈めたままで引き上げていない。
一方、6月の県議選挙ではオール沖縄会議が推薦する候補が圧勝し、7月の参議院選挙で伊波洋一さんが圧倒的な得票で現職の沖縄担当大臣(島尻安伊子)を引きずり下ろした。これは県民の民意であり、底力だ。ところがその翌日に高江に全国からの機動隊員800人をどっと入れて、ヘリパッド建設工事を始めた。政府は当初から「島尻は落ちる」と想定し、高江に全国から機動隊を投入する計画だったと思う。もう電光石火のごとくやったね。
もう一つは辺野古の陸上工事のための兵舎の解体。これは少し工事はやったが、高江に丸ごと機動隊を派遣したから、やりきれない。とりあえず高江の工事を至上命題にしているのがわかる。

―今後の動きをどう見ますか

安次富 最高裁の判決が出たから、辺野古埋め立て工事に戻る。弾圧しながら辺野古の工事を進めていく。翁長知事の苦しさもある。「高江のヘリパッドでオスプレイの運用はダメ」というのが公約で、ヘリパッド建設に反対とは言っていなかったからね。だけど高江は完全にオスプレイパッドだ。

―12月13日、名護市の海岸にオスプレイが墜落しました

知花 オスプレイの墜落、最高裁の上告棄却、米軍北部訓練場の返還式典強行。とても認められないよ。
安次富 オスプレイが墜落した翌朝、現場に行った。怒りをおさえきれない。北部訓練場の半分返還で「負担軽減」と言いながら、オスプレイパッドの建設だ。政府は翁長知事の政治的な限界を突いている。県側も新たに騒音問題でのアセスメント調査をやるとか抵抗しているが、半分返還というのは県民の分断がねらいだ。それは間違いなくある。ぼくらは、そこを批判していく。
世界自然遺産候補にしようとしているヤンバルの森の側に、米軍の訓練場があるというのはおかしい。グランド・キャニオンの隣に米空軍基地がありますか。北部訓練場の一部が返還されても、ヤンバルの森でオスプレイの訓練をする。伊江島と高江と普天間がトライアングルで訓練が激しくなる。
F35やCV22オスプレイが来年から岩国や横田に配備される。その訓練はどこでやるのか。岩国から全部、伊江島にくるのだよ。この前、ハリアー戦闘機が沖縄の海で訓練中に落ちた。ハリアーは普天間から岩国に移転した。「負担軽減の一環」として移駐したけど、演習は沖縄の空でやっている。何も変わらないわけさ。
伊江島は反対運動が弱いから着陸帯を強固にし、駐機場、格納庫と新たな工事が始まっている。伊江島と高江の北部訓練場のヘリパッドとは連動します。いずれは辺野古とのトライアングル演習をねらっている。これからはそういうことも想定して闘う必要がある。
知花 知事との関係からいうと、行政は運動体ではない。だからいくら知事がみんなから支持され、知事として何かやろうとしても行政の長だからね。行政手続的な範囲でしか動けない面があるよ。確かにもどかしい面がいっぱいあるよね。安次富さんなども、そこをどう乗り越えようかと頑張っている。それが現場、現地の闘いだと思うわけさ。
それによって知事は激励され、発言もできるんだよ。現場がなければ言えないよ。お互いがそこを認識しながらやっていかないとね。翁長知事だって厳しいよ。そこを現場の闘い、そして沖縄の闘いがギリギリやっているわけよ。
安次富 県と運動体の連携を崩すために、高江ではものすごい弾圧がおこなわれています。高江の区民たちは反対なのです。高江の区民と、現場で闘っている人たちとの接点を強めることが大事だね。地域と結びついた運動しないと外からの運動になっちゃう。「反対派、支援者が区民の車を止めている」というようなキャンペーンもされる。
知花 されるんだよね。警察が「運動側がいるから区民に迷惑かけてる。警察はちゃんとやっている」と。じつは区民の車を全部警察が止めているのにね。
安次富 こちら側の行き過ぎたところを、うまく悪用されるわけさ。そこを注意しないといけないよ。現場の闘いでは状況次第で激しく抵抗するときもある。そこをリーダーがしっかりと見極め、引くときには引くのも大切。沖縄の闘いは非暴力と長期的にわたる抵抗運動が成功させてきている。それが翁長知事の発言力を高めていく。県民はこんなに反対しているんだと。内部に亀裂をつくってはいけないわけだ。イデオロギーじゃなく沖縄のアイデンティティーだというのは、そういうところにもあると思う。

オール沖縄の強さ

知花昌一さん
安次富 今こんなに機動隊が沖縄に弾圧に来て、沖縄の声を聞こうともしない。かつての琉球処分、琉球併合のときと変わらないよ。こんなことを許していくと沖縄の未来はない、政府やその政策に翻弄される未来しか残されない。だから団結して闘っていく必要がありますね。それがみんなの共通認識です。細かい運動の違いを表に出す必要はない。
保守系の議員と私たちとやっぱり違うところはあるわけだ。「翁長支持」と言っていても根本的に違うところもあるよ。だけどいまは「どう一緒にやっていくか」だよ。「新しい基地を作らせない」ということで大同団結してやっているからね。
企業だって辺野古の座り込みに職員研修で来るんだよ。ヤマトでそんな例があるかな。金秀グループは4月以降の職員研修に、毎日、那覇から島ぐるみ会議のバスに乗ってくる。彼らはゲート前の激しい抵抗運動には参加できないさ。それでいいんだ。それが大衆運動の強みだよ。
知花 やっぱりイデオロギーよりアイデンティティーということだな。沖縄の将来どうするかということを考えると、「基地を止めよう」という当たり前のことが出てくると思うんだよ。あいつらは200年耐用の基地を作ろうとしている。沖縄は基地の中でずっと暮せというのかよ。いまやらんと、どうするんだ。保守の人たちも沖縄の生きざまを考えるよ。金秀、かりゆしグループ、オキハム(沖縄ハム総合食品)、あと建築関係もある。
安次富 あまり表に名前を出さない大きな企業もある。それでなけりゃ翁長知事が、あれだけ強気でできないさ。ぼくらがオール沖縄でつながっていることを大事にしないとだめなんだ。知花さんは村議だったし、ぼくは県職員だったから行政の限界はわかってるわけだよ。その限界を現場の闘いと沖縄の大衆の熱意で動かす。知事を動かしていく。それが大事なんだ。
知事のブレーンもしっかりしているね。例えば、県民に「埋め立てしたら公有水面というのは国有地になる。民有地と国有地が混在したら二度と返してもらえませんよ。国有地になる前に今止めないといけない」と説明するんだね。本当にわかりやすい。
知花 わかりやすかったね。選挙のとき、翁長知事は言っていたよ。「埋め立てする土地は全部国有地になる。県は一言も口をはさめなくなる」とね。だから止めないといけないと。みんなそうだと思ったよ。
安次富 翁長知事の強みは、経済界もバックにして「基地こそ沖縄経済発展の阻害物だ」と言いきるところだね。
知花 まともに言っているよね。「基地は沖縄発展の阻害物だ」と。
安次富 いままでの保守系の知事には言えなかったことだ。革新系もそこまで言わなかった。そこは経済界で事業展開して成功している部分が翁長知事をバックアップしているからね。将来は「東アジア共同体」みたいに。「東アジアが沖縄の経済発展を広げていく大きな基盤になる」と彼らは見据えているよ。だから簡単に腰くだけになるような企業連合体じゃない。そこは従来の保守層とのちがいだと思う。
知花 沖縄は日本政府による威圧的な弾圧のもとで、「保守とか革新とか隔たりを作ってどうするんだ」と、それをとっぱらった形で進んでいるわけ。それがオール沖縄という形だ。全国でそういう形にしないと、安倍の動きを変えることはできないよ。
やっと沖縄で少し道筋がわかってきた気がする。敵は誰か一目瞭然なのに、仲間内や地域住民で喧嘩したりさ。「何をしているんだ。もっと大きな敵は誰か」とぼくは思う。

ヤマトの地元で闘いを

安次富 大衆の目には、これまで敵はアメリカだった。それが「敵はアメリカだけじゃない。沖縄を窒息させ、閉塞状況を作っているのは日本政府だ」ということがわかり始めたというか、わかったんだ。
ぼくらがヤマトの中に連帯を求めるときに言うのは、「やっぱり地元でも闘ってほしい」ということ。沖縄に来て支援するのは大歓迎だけど、そこで終わらないでほしい。「自分の出自のところに帰って、新たな沖縄と連帯する運動を作ってほしい」とずっと言ってきた。
今、少しずつわかりかけてきたのかな。ぼくは参議院選挙前に福島に呼ばれた。野党統一の動きがあってね。そこで「沖縄は現職の大臣を落選させます。それは島尻安伊子ならぬ『島売アイ子』だから。原発事故でみなさん苦しんでいるんだから、その張本人たる自民党の大臣を落選させる闘いをしたほうがいいんじゃないですか。『反自民』というだけではなくて、そういうわかりやすい闘いをした方がいいんじゃないですか」と話した。そしたら福島でも落としたでしょ。新潟もね。
知花 参議院選で福島が勝った。すごいなと思ったよ。みんなあきらめてない。いちばん世の中が見えている所は、やっぱり変革が起こるよ。
安次富 TPPの問題でもそうだね。今回の参議院選で地方で勝っているところの多くは農業県。山梨、長野も農業県だね。農協も含めて自民党を押せないというところが農民の中にあると思うんだよね。「反原発」「反TPP」、ぼくはヤマトに講演で呼ばれたらそういう言い方をしてきたけど、それが参院選で具現化した。世の中の変革がはじまったというかね、革命までいかなくてもね。
問題は大都市。大阪とか東京だよ。いつまで橋下や小池に牛耳られているの。地方から反乱の火柱が上がり、中央に進んでいく。明治維新がいいかどうかは別にして、江戸で反乱したんじゃない。地方、末端からじゃないの。

民意と民主主義

―民衆の意見にまったく耳を貸さないという政府に対し、どう闘っていくか。いま沖縄の闘いが、そのことに対する一つの手がかりを提示しているというお話でした

安次富 参議院選挙で勝ったところはもっと裾野を広げていくことを考えていかなければならない。福島だけでは窒息させられる。全国の問題として鹿児島からも新潟からも、福島に波及するような反原発運動が起こり得るだろうなと、ぼくは思う。安倍はインドと原子力協定を結んだけどベトナムでは頓挫した。被爆国が原発を推進するとは何事か。日本人民としては恥ずかしい話だよね。被曝者だけじゃなく国民がもっと気づくべきだ。福島の放射能は東京都民も浴びているんだよ。そのことに無自覚ではね。そこをどう撃って出るのか。
世界的に見ても安倍は安泰じゃないよ。イギリスがEUから抜けるとか、まさかトランプが大統領に当選するとは。これも民主主義かと思うけどね。また韓国をはじめ、ものすごい変動が国際的に起きている。
トランプが大統領になってから沖縄はどう闘うのか。これからの課題でもあるし、安倍政権も右往左往しているわけだ。沖縄としては稲嶺名護市長、翁長知事を支え、どうアメリカや日本政府とぶつかっていくのか。沖縄をどうアピールしていくのか。
ぼくは翁長さんが、わずか4分という時間だったけど、国連でアピールしたことは正しいと思う。これからもっとやってもらう。アメリカ市民の大半は沖縄なんか誰も知らないのだよ。オリバー・ストーンとかいろんな知識人たちが沖縄に注目し、アメリカで支援運動を始めてくれたというのも1つの成果だ。退役軍人のグループも、わずかな人数だけど動き出している。大事なことだ。そういう積み重ねをこれからもやっていかなくちゃならない。
アメリカ市民も混乱しているわけでしょ。大統領選挙が終わってから「トランプはおれたちの大統領じゃない」というデモをやっている。いままでのアメリカにないことだよ。
知花 選挙制度が悪いといったってトランプは選挙で勝った。それに対し、「おまえはおれたちの大統領じゃあない」と民衆が否定する。もう、そういう時代じゃなければいけないという状態。安倍も「民主主義だ」と言っているんだ。自分たちの方が数多いから、辺野古に基地を作るのが当然だと、日本全体としてそうなっているというわけだ。そりゃおかしいじゃないかと、ぼくらはぶつかっている。「民主主義」と言うだけでは問題は解決しないと思うよ。
安次富 民主主義という言い方もあるが、やっぱり民意だよ。琉球処分、琉球併合以降、沖縄は国策に翻弄されっぱなし。植民地的支配を受けてきた歴史だ。それにたいして選挙で沖縄の意思を示した。その民意は大きい。
知花 戦前の天皇制から、戦後も国益中心でやってきたわけよ。国益中心で戦争をし、経済発展をやり、その反動がもろもろ出てきている。それでいちばん潰されてきたのは沖縄の民権であるわけさ。
国権と民権ということについて言うとね、かつて明治時代に民権運動があったように、沖縄で謝花昇とかがやったように、日本全体で民権運動みたいなもの起こさんといかんよ。福島もそうだ。民衆の権利、生きる権利、そういう主張を出していくということが大事だと思うよ。
安次富 日本では「政治に無関心」というのが当たり前のごとく定着している。麻生が「ナチスの手法を学べ」と言ったが、10年、20年前だったらクビですよ。そうならないのは日本の民意の低さというか、「主権者は自分たちだ」ということがわからないのだね。支配者にとってはそれがいいわけだ。
知花 支配者はそうなるように仕向けてきたんだ、ずっとね。
安次富 だから彼らも民主主義と言うわけ。今の状態の方がいいからね。われわれが言う民主主義とは、「民意を守れ、民意を守らないものは民主主義ではない」ということだ。その区別化はしないと。権力側についている大手メデイアの壁を突破するには、われわれの民意を押し出すことだ。

独立論を考える

―日本と沖縄との関係、とくに最近の政府のやり方。沖縄の人たちの間で、敵は日本政府だと見えてきたというお話でした

知花 沖縄の基地をなくするチャンスは何回かあった。アメリカは引いてもいいと。だけど日本政府の意向によって沖縄に基地が固定化されてきた。ヤマト政府の沖縄に対する構造的差別的政策だ。そこへの反発としての「独立」ということに、ぼくもシンパシーを持つよ。だけど具体的な運動としては、まだあまりわからん。
安次富 オール沖縄と琉球独立運動というのは違うからね。考え方が違うわけだ。だからオール沖縄に琉球独立の話は持ち込まないようにしている。別にそういう規約があるわけでもないけど、みんながわかって団結している。ぼくは、自己決定権というのは独立と通ずるところがあると認識している。独立はいずれあるべきだろうと思っている。どういう形態かは、これからいろいろ切磋琢磨されていくだろう。いろんな考えがあっていいわけ。あまり独立論の違いを批判する必要はないと思う。
沖縄の歴史を見ると、日本政府との係わりでは絶えず捨て駒にされてきた。琉球併合、そのあとはうちーなーぐちと琉球文化を潰すことを明治政府がやった。師範学校の教師はほとんどヤマトンチュだった。そこで日本語を教える。卒業した生徒たちが教師として沖縄県内に赴任し、方言を使わせない教育をする。もちろん師範学校では皇民化教育がおこなわれた。沖縄は朝鮮支配などの試金石として植民地化されていった。
薩摩は琉球王朝を残すことによって経済的収奪をしたけれど、明治政権は植民地としての併合だった。琉球処分のときに、熊本鎮台の歩兵が400人、警察官も160人くらいが派遣されて、武力鎮圧した。沖縄戦もヤマト=国体維持の捨て石だった。「もう1回、アメリカに打撃を与えてから和平交渉を」というのが資料に残っている。広島に、さらに長崎に原爆が投下された。
その後の和平交渉で近衛首相が昭和天皇と協議し、沖縄を分断した。日本の国土は北海道、九州、四国、本州、この4つだと。奄美も琉球も、小笠原も入ってない。要するに植民地だったから。それが支配層の考え方だ。次に日本政府がとったのは、日本独立の代わりに奄美・沖縄をアメリカの植民地にしてもいいという天皇メッセージだ。そこから沖縄は過酷な米軍植民地支配を受けていく。そのつど日本の権力は沖縄に対する差別と分離・分断を発動してきた。そのことを沖縄側は歴史的事実として認識できてこなかった。最近は「沖縄は日本政府の国策によって絶えず利用されっぱなしだ」とわかってきた。
ぼくは「自治州」だと思っている。北海道もアイヌ自治州を作るべきだと思う。日本は単一民族国家じゃない、多民族国家だということを国民が認識しないと、権力側の策動に負けてしまう。日本は多民族国家として成り立っているのだと、反戦・平和運動などの中で広げていかないといけない。

多民族国家としての認識

安次富 ぼくはスコットランドみたいに住民投票で将来の沖縄を問うべきだと思う。「日本との関係がなければ沖縄は経済的に自立できない」というのは、作られた嘘っぱちだ。沖縄の経済界は東アジアとの経済交流をどんどんやっていけば成り立つと思っている。
今も観光客が東アジアから大勢来る。そこに米軍基地があること自体が異様だ。一度になくすことができなければ「まず普天間を返させる」、そして「次はどこだ」とやっていけばいい。アメリカは国家財政がピンチだから、「基地は持って帰りなさい。派遣費用も大変でしょう」と言ってやればいい。
知花 トランプは米軍駐留経費を日本はもっと負担せよと言ってくるだろう。いま「思いやり予算」は6700億円ほどだけど、それ以上の金額を彼らは請求してくるよ。それにたいする民衆の意識の問題だね。
安次富 だから多民族国家として認識が必要なわけだ。われわれは植民地人だというね。
知花 沖縄は圧倒的多数の自民党・安倍政権の言うことを聞かない唯一の場所だ。そこから「土人発言」が出てくる。眠っている差別意識が大阪の若い機動隊員にある。現場でぶつかるなかでストレスがたまって、ああいう言葉が出るわけだ。

安次富 そのヘイト・スピーチを大阪の知事が黙認し「ご苦労さん」と激励する。差別発言については無視だ。鶴保(沖縄担当相)も含めて、「差別用語ではない」とは論外だ。
知花 旧土人法は廃止したはずなのに根っこには残っている。
安次富 われわれは開き直っていい。「そうだ、オレたちはヤマトンチュじゃない。ウチナーンチュ」だと。
知花 この前、金城実と2人で大阪の部落解放センターに行った。「沖縄からきた土人です」と言うと笑っていたよ。差別の根っこは根強いものがある。これ(「土人」発言)を聞いたとき、ぼくは個人的には差別されたことがないが、日本と沖縄の関係には差別的な根っこが根強く残っていると痛感した。すさまじいなと思った。そういう話をした。

「誇りある豊かさ」

―先ほど沖縄の経済が東アジアとの関係で広がっているというお話でした。安倍政権の中国敵視政策によって緊張が高まるなかで、東アジアとの交流で発展する沖縄は重要な位置を持っています

安次富 当面は観光産業でしょうね。観光産業の基盤を広げていくことだね。それには沖縄の遠浅の海やサンゴ礁などの貴重な自然を大切に残していくことだ。観光業界と手を結び、大浦湾の自然を残し、ジュゴンを増やす。そして地産地消型のエコツーリズムだね。長寿になると言われるウチナー野菜を食べ、大浦湾や周辺で獲れる魚介類を食べてもらう。自然を生かした観光産業を追求していく。そこに文化がある。お土産の陶器、琉球紬、農産物などだね。トータルに見れば、それは東アジアだけじゃなくヤマトにも向かって言えるわけだ。沖縄をコンパスの中心にすれば、東アジアも大阪も東京も入っている。琉球王朝の時代はそうだった。そういう発想をもって将来の沖縄経済を見ていく。沖縄には生産工場がないと言っているが、別になくてもいいわけさ。
知花 知事選のスローガンは「イデオロギーよりもアイデンティティー」と、もう1つあった。「誇りある豊かさ」だ。自分たちの自立を守っていくんだ。選挙のとき、いつも自民党が「カスミを食って生きられるのか」と経済問題を主張してきた。それを翁長さんは、「保守は基地反対を言わなかった。『誇り』ということをかかげていなかった」「革新も経済のことを考えていなかった」と批判した。そこから「誇りある豊かさ」だと。それが翁長知事が言ってきたことですよ。これはいい言葉だと思ったね。それがオール沖縄のひとつだと思うよ。
1972年の観光は45万人くらい。今は約700万人、5千億円規模になっている。基地に頼る必要はないんだ。もちろん日本政府の交付金はあるよ。それは3千億円でしょ。だから、かりゆしビーチホテル、金秀、オキハムなどの経済人たちは胸を張って「基地反対」「基地は阻害要因だ」と言えるわけだよ。観光といえばアジアですよ。いまどんどん来ている。中国はまだまだだけど、香港、台湾からはいっぱい来るよ。

辺野古が正念場

キャンプ・シュワヴゲート前で抗議する人びと(12月17日 名護市内)

―最後に、今後の闘いに向けて一言お願いします

知花 辺野古や高江に基地を作らせるのか、それとも止められるのか。辺野古については、高江以上の広がりや質と深さをもった闘いができると思う。ぼくらも決意しているし、沖縄全体そうだと思う。これから沖縄はどう生きていくかということだから。基地のない沖縄を作っていくという、後世に恥じない、後世に残す今を生きていく。そういう闘いが問われていると思う。
安次富 辺野古が正念場になるのは間違いないですね。トランプ政権もでき、どういう正念場になるか、今はっきりは見えないけど、非暴力・不服従の抵抗、原則的な闘いは変わらない。現場で翁長県政を支えるような闘いをしていきたいということが一つ。それからトランプ政権が誕生し、2月以降に翁長知事も沖縄のメッセージを持って訪米すると言っている。われわれも同行し、別の場面で発言し行動する。そういう集会や闘いをどれだけアメリカ国内で作れるか。沖縄の思い、民意を伝える。アメリカに対して「普天間引き取ってほしい、雇用が生まれますよ」というような「大胆な展開」だってあり得るよ。
知花 そうだね。

東アジアに平和を

安次富 ぼくは去年ハワイのホノルルでIUCN(国際自然保護連合)の総会に参加した。沖縄県から安慶田副知事が参加した。韓国の済州島の知事やハワイ州知事も参加するシンポジウムを傍聴した。「自然を大事にする観光産業を作っていこう」「環境が大事だ」という趣旨でした。安慶田副知事も「辺野古に絶対基地を作らせない」と発言した。一つひとつの闘う核をつくって、もっと大きな輪にできる1年にしていきたいね。
沖縄の基地反対運動は地球的な規模の広がりをもって闘った方がいい。ぼくらは、「基地をグァムに持って行け」という立場にはないさ。そういう沖縄であるわけだ。やっぱり南太平洋の島々は、基地のない島々、非武装な島々をともに自らの手で創造していく。済州島もそうだね。そういう国際社会、東アジアの連帯、平和外交というのも課題としてある。
沖縄から米軍が引き揚げるとき、かわりに自衛隊の移駐を容認するのか。われわれは自衛隊もダメだという運動を作りきれるのかどうか。安倍政権は島嶼奪回作戦と称して、石垣、宮古、奄美、徳之島も含め自衛隊基地を作ろうとしている。琉球弧全体へ、全沖縄的な大規模な反基地・平和運動へつながっていくことが必要じゃないか。戦争(戦場)の対置にあるのは観光だと思います。
政府は、それを見ているから弾圧も激しくなる。高江はその先例だよ。弾圧に抗する運動、また弾圧を許さない大衆運動をどう作りあげるのか。これからの辺野古の課題でもある。東アジアに平和を、そういうメッセージを沖縄からどんどん発信する。世界規模の混乱の時期、どういう思想性が生まれてくるのか。これはわからんけど、必ず生まれてくるよね。動乱に対し平和、ぼくら沖縄の闘いが国際規模で結びつく。そういう兆しを作れるならいいね。

―長時間、ありがとうございました。

                                        

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国をあげての違法、無法
高江・辺野古反対 東京集会
12月10日

3900人が抗議の声をあげた(12月10日 東京・日比谷野音)

12月10日、日比谷野外音楽堂で「高江オスプレイ・パッド、辺野古新基地の建設を許さない東京集会」が開かれ、3900人が集まった。主催は、基地の県内移設に反対する県民会議、国会包囲実行委員会、総がかり行動の3団体。
県民会議事務局次長の仲本興真さんから「SACO合意から20年です。負担軽減に名を借りた米軍基地の固定化、機能強化に断固抗議しようではありませんか」「東村高江では、オスプレイ・パッド年内完成に向けて突貫工事がおこなわれています。機動隊を本土から派遣し、人権を侵害し、自衛隊ヘリコプターまで使った資材搬入など、あらゆる違法、無法がまかり通っています」「辺野古、高江での逮捕者は50人を超えています。現在も、5人の仲間が勾留されています。これは、県民運動の萎縮を狙った攻撃です」「機動隊は沖縄から帰れ! 安倍内閣は、民主主義と民意を尊重せよ! 安倍内閣は退陣せよ!」「(埋め立て承認取り消しを違法とした)高裁判決は司法の堕落です。最高裁判所は、歴史に耐えうる見識を示してほしい」と切実な訴えがおこなわれた。
国会包囲行動、総がかり行動からのアピールに続いて国会議員から、民進党・初鹿明博、日本共産党・笠井亮、社民党・又市征治、沖縄の風・糸数慶子の各議員から挨拶がおこなわれた。

福岡高裁判決の誤り

次に、成蹊大学の武田真一郎さんが福岡高裁判決の不当性を暴露する解説をおこなった。武田さんはまず、「高裁判決には、ふたつの重大な誤りがある」として「ひとつ目の誤りは、翁長知事がおこなった埋め立て承認取り消しの適否を判断すべきところ、仲井真前知事の埋め立て承認が適法かどうかを審査しています。しかし、本来の争点は、翁長知事の取り消し処分の適法性です。これは、行政の裁量権の問題であり、現行の裁判では、この裁量権が広く認められています。裁量権の逸脱、乱用が認められない限り翁長知事の判断は取り消せません。したがって、本来の争点をきちんと審査していれば、結論は逆になるということです」「ふたつ目の誤りは、普天間基地の危険除去のためには辺野古埋め立てしかないと断言したことです。裁判所はどのような証拠に基づいて判断したのか」「あまり裁判所に頼らないほうがよいと思います。私たち、一人ひとりが声を上げることが必要です。その上で、最高裁判所には、このような誤りを正して、正しい判決を出すことを強く要望します」と福岡高裁判決の不当性を明らかにした。
さらに、評論家の佐高信さん、横田基地公害訴訟団長の福本道夫さん、木更津の〈オスプレイくるな・いらない住民の会〉佐藤奈美子さんの発言が続いた。最後に、沖縄・辺野古・高江の基地建設反対運動への弾圧に強く抗議する緊急アピール、集会決議を採択し、寒風吹きすさぶ中、東京駅近くの鍛冶橋までのデモをおこなった。(島田秀夫)

県民の民意を尊重せよ
12・10 おおさか総がかり行動

デモに出発(12月10日 大阪市内)

12月10日、「沖縄県民の民意尊重、基地の押しつけ撤回 沖縄に基地はいらない! 12・10おおさか総がかり集会」が大阪市北区の扇町公園でおこなわれ4000人が集まった。
沖縄から伊波洋一参院議員が発言。また、自由、社民、共産、民進の各政党があいさつをおこなった。「ストップ! 辺野古新基地建設! 大阪アクション」の仲間は「沖縄で民主主義を学んだ。民主主義が壊されようとしている今、行動しなければ未来はない。いっしょに声をあげよう」と訴えた。

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「オリンピック・ファシズムと闘う」
鵜飼哲さんの講演を聞いて

オリンピックとファシズムの関係の深さを明らかにした鵜飼さんの講演(12月11日 大阪市内)

12月11日、大阪市内で鵜飼哲講演会「オリンピック・ファシズムと闘う」がひらかれた(写真)。 2012年3月の「福島支援弾圧」とたたかうための反弾圧集会として年2回講演会が開催されてきたが、今回で10回目。会場の天王寺区民センターホールは、220人の参加者で熱気につつまれ、濃い内容の集会だった。

オリンピックの正体

集会のトップバッターはおなじみのナオユキによるスタンダップ・コメディ。笑いで肩をほぐして、2番手のおしどりマコ・ケンは福島原発事故特別報告。福島原発事故をとりまく今の状況をとても分かり易く説明する様子はさすがプロの漫才師。
〈米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会〉大湾宗則さんが沖縄報告。名護市辺野古と東村高江で今起きている状況と沖縄のたたかいを語った。
前半の最後はこの集会までに計64回訪問した仲間の福島報告。映像を交えながらの報告は今なお原発被害に苦しむ福島の現実をリアルに見せた。この福島報告は7月、関西から福島県葛尾村に移住したIさん、「福島支援弾圧」当該のFさん、64回福島訪問を貫徹したTさんの3人がおこなった。
後半は、鵜飼哲さんによる講演「オリンピック・ファシズムと闘う」がおこなわれた。世界中でオリンピック反対の運動が存在している事実や、オリンピックの持つファシズム性、そして歴史的には支配階級のイベントであり支配の道具としてのオリンピックなのだと。そもそもクーベルタンが提唱したオリンピックに労働者階級は入っていなかったという点、反階級性・差別性を鋭く語った。
いつものことながら盛り沢山で濃い内容、5時間があっという間にすぎた。鵜飼哲さんの講演内容は近々講演録としてパンフレット化するそうだ。2020年に向けてオリンピック反対運動をたたかいぬくために是非とも読んでください。

5年間で10回

この5年間で10回の集会を打ちぬく過程で、集会実行委員会に多くの仲間たちが集まった。コラボ玉造[TAMAZO]を中心に、後援は新聞「うずみ火」、(財)ワンコリア・フェスティバル、抗路舎など。運動として着実に発展してきた。
この過程で64回におよぶ福島訪問は、福島と三里塚を結ぶ中軸を担っていると言える。今回も三里塚から野菜が、福島からうるち米(ベクレル検査済み)が届き、会場内で販売した。コラボ玉造の友人として三里塚反対同盟の萩原富夫さんも参加。
集会協力団体から多数ブースが出店され、書籍の販売など盛況だった。とりわけ新刊の『抗路3号』は好調な売上げ。今回初めてブースへ出店した「10・8山ア博昭プロジェクト」には故山ア博昭さんのお兄さん山ア建夫さんが座り、集会で発言もした。(筧篤三)

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極東最大の航空基地
労働者反戦交流集会に参加

岩国労働者反戦交流集会実行委員会がよびかけた岩国現地行動が、12月10日から11日におこなわれ、関西合同労組から2人が参加した。
10日は、岩国希望の祭(写真)、岩国国際連帯集会、労働者反戦交流集会実行委主催の懇親会に参加した。国際連帯集会では、岩国市議の田村順玄さんが岩国基地の強化される現状をくわしく報告。来年は厚木から空母艦載機59機やF35Bステルス戦闘機が配備され、米軍関係者が1万人住む極東最大の航空基地になろうとしていることが報告された。沖縄から安次富浩さん、京丹後市から永井友昭さんが報告。韓国のホ・ヨングさんが、市民革命で大きく変わろうとしている現状を報告した。フィリピンからも報告があった。
11日は労働者反戦交流集会と米軍基地までのデモ(130人)。首都圏や九州で労働組合の地域での共闘や、少数派でなく多数派になろうとしている闘いが報告され、交流を深めた。沖縄の金治明さんや北九州ユニオンの方々とも交流を深めた意義深い行動だった。(関西合同労組 塚本)

陸自福知山射撃場で米軍が実弾演習
市民団体が抗議申し入れ

米軍の実弾演習中止を福知山市に申し入れ(12月12日)

京都府京丹後市に新設された米軍Xバンドレーダー基地の米軍人・軍属が、いままで米軍キャンプ富士でおこなっていた実弾射撃演習を、今後、陸自福知山射撃場を使用しておこなうと発表し、11月29日には実弾射撃演習が強行された。この方針は、地元住民がまったく知らない状態で、11月8日の日米合同委員会で決定されていた。
12月12日、米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会は、福知山市内で緊急行動を実施。福知山市への申し入れをおこなった。申し入れでは、自衛隊射撃場で米軍が演習をおこなうことを、京都府や福知山市の合意のないまま決定したことにたいして、地方自治法に基づいて福知山市は市民の安全安心を守る立場で実弾演習の中止を申し入れるよう求めた。

普通の高校生活ができる社会
朝鮮高校生「無償化」裁判

12月13日、東京朝鮮高校生「無償化」裁判の第12回口頭弁論が東京地裁でおこなわれた。この日、当時の学生2人のほかに文科省の実務担当者2人の証人尋問が実現した。
朝鮮高校の無償化除外措置は、自民党による民主党政権時の政府統一見解(教育の場に政治外交判断を持ち込まない)の廃止と、下村文科相(当時)や安倍首相の意向(拉致問題の進展がないなどが理由と明言)を受けて決定された。

建て前の崩壊

しかしながら証人は、行政官としてこのような理不尽な行為を認めるわけにはいかない。さりとて閣僚の言動を間違いと否定するわけにもいかない。証人は「文科省内や審査会では政権交代前から排除の結論に流れていた」だの、「大臣発言は法的理由ではなく国民への分かり易い説明だった」と、見苦しい言い訳を並べ立てた。
これにたいして、審査会の議事録はそんな流れが伺われるどころか証言を完全に否定する内容であること、パブリックコメントへの説明が政治外交問題に触れていることなど、原告側弁護人は卑劣な建前論を突き崩し、被告の本音を暴露していった。
一方、当時学生だったふたりは、学生としての普通の姿、この問題に取り組まなければならなかった姿、普通の高校生が普通の生活を送れる社会が実現することへの希望などを語り、日本はどういう社会を作っていくつもりなのか、この裁判は何なのかという問いかけを突きつけた。
この問いかけは裁判所や行政だけでなく、日本人民にも向けられていることは言うまでもない。連帯や支援という問題ではなく、未来を作るのは私たちだということを肝に銘じなければならない。
裁判後の報告会には300人が結集。当時高校生だった自分が朝鮮高校の教職に就くまでに、どれほどの時間が奪われたかを語る教師らの発言があった。
東京の裁判は次回4月11日が結審となった。全国各地でこの問題に取り組もう。(北浦)

京都で「19日行動」

12月19日、毎月19日の京都総がかり行動は、3団体が順番の主催で、今回は憲法共同センター主催でおこなわれ、570人が参加した(写真)。午後7時、京都市役所前からデモ出発、四条河原町の南側まで行進した。リレートークでは、戦争をさせない京都1000人委員会を代表して仲尾宏さんが発言。沖縄での高江オスプレイパッド工事強行や、オスプレイ事故後の飛行再開強行、京丹後市や福知山市での事態は米軍の戦争戦略にのっとった、沖縄や地元住民を無視した安倍政権の戦争政策であり、沖縄と連帯して京都で共にたたかおう、「19日行動」に集まろうと訴えた。

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いいの??その“民営化”つくろう! 大阪モデル

大阪府と大阪市が進める公営事業の「統合」「民営化」が重大な局面に入った。
大阪府と大阪市の衛生研究所の統合・独立行政法人化は、9月議会で、維新と公明の賛成(自民は反対)により議会的な手続きをすべて終了、国の認可を残すのみとなっている。また、大阪市営交通、水道事業の民営化に関する条例も引き続き焦点になっている。そういう中で、都構想を否決した2015年5月の住民投票の流れを引き継ぎつつ、「12・4緊急市民集会いいの? その“民営化”つくりましょう! 大阪モデル」がもたれた。「市営交通」「水道」「衛生研究所」の三つのテーマを焦点に、現場に精通した人たちから報告と問題提起がおこなわれた。主催は大阪を知り・考える市民の会。170人が集まった。

生活脅かす独法化

民営化・独法化が市民生活を脅かすという点について具体的に指摘された。
「バス・地下鉄の事業を分割すればバス路線の多数が廃止になる。地下鉄とバスが一体で運営されてきたから成り立ってきた。経営の効率化の話ばかりで、民営化すれば、すべてが解決するような話になっている。しかし民営化したら投資ファンドのマネーゲームの対象になる。そうなったら安全を守れるのか。交通政策が成り立つのか」(NPO法人KOALA・池田さん)
「大阪市の水道は2%の大口・企業よりも、98%の一般家庭を大切にしている。しかも全国でいちばん安く、20年間値上げをしていない。人口減少・需要減少が予想されているが民営化は何の解決にもならない。そもそも水は公共財。民営化では水がお金のあるところに行く。貧乏な人が水を使えなくなる。公営のまま問題は解決できる」(NPO法人AMネット・石坂さん)
「衛生研究所の統合では、独立行政法人化が問題。行政が衛生問題について、責任を持たなくなるということ。衛生研究所はパンデミック(感染症の爆発的感染)や結核、食中毒などの対策を平時からおこなっている。しかし独法化によってそれに対応できない脆弱な状況になる。維新の進める改革は、現場の人が誇りをもって大事にしてきた技術を軽んじている。しかも経済的合理性から言っても破綻している」(環科研・公衛研まもれネットワーク・大石さん)

民営化は時代遅れ

さらに、興味深かったのは、世界の流れは「民営化はもはや時代遅れ」という認識で、「再公営化が進んでいる」ということだ。
例えば、仏・パリ市やアルゼンチン・ブエノスアイレス市の水道事業は民営化された結果、むしろ財政が不透明化したり、必要な設備投資がされなかったり、サービスが低下したため、再度公営に戻された。世界では235の自治体が水道事業の再公営化をおこなっている。イギリスの鉄道も、民営化によって施設や機能の維持、向上のための投資がなされず、重大事故が多発し、民営からの修正がおこなわれている。またイギリスの衛生研究所も独法化によって公衆衛生が大幅後退し、再公営化された。
80年代以降、「効率」や「技術革新」をかたって民営化が推進されたが、いま世界中で「民営化は失敗だった」と再公営化の動きが加速しているという。

“大阪モデル”

今回の議論でもっとも重要なのは、オルタナティブ(対案)を市民の側からつくろうという提起だろう。
「現状のままでいいのではない。新しい公営が必要。市民が参加して議論するべき」(石坂さん)、「“あるべき街”“めざすべき都市の姿”という議論が必要。その中で都市交通がどうあるべきかという政策の議論がなされるべき。市民、事業者、行政が一体で議論を」(池田さん)。
大阪経済を支えてきた製造業が疲弊し、同時に高齢化や貧困が広がっている。地域公共交通の衰退、水道管の老朽化、地震や感染症の危険など待ったなしの問題が山積みだ。これにたいして、民営化という「改革」ではなく、市民の生活を守るための本当の改革が求められている。そういうオルタナティブな“大阪モデル”を、現場の労働者、市民、事業者、行政が一体で作り上げていく。そういう方向性が提起された。
たしかに議会攻防では条例が押し通される流れにあるが、陣形の広がりとともに、その流れを大きく転換するような包括的な議論が提起されている。アメリカでのトランプ現象と、大阪で起こっていることとは通底している。それだけに、この取り組みは重要だろう。 (森山 健)

(シネマ案内)
日本軍「慰安婦」問題を描いた初めての劇映画
『鬼郷』(クィヒャン)
監督 趙正来(チョ・ジョンレ) 制作:2015年 127分

16年夏から日本で自主上映されている『鬼郷』を観た。現在、「ナヌムの家」(日本軍慰安婦被害者の共同の住まい)で暮らす姜日出(カン・イルチュル)さんは、16歳のとき、工場で働けるからとだまされて中国・牡丹江の慰安所に連れて行かれ、日本の敗戦後も置き去りにされて、2004年にようやく故国に帰ってきた。その姜ハルモニの実話を背景にしてつくられた作品だ。
監督の趙正来(チョ・ジョンレ)さんは、02年にナヌムの家でボランティアをしていたが、ハルモニたちに「私たちのことを忘れずに記憶して、みんなに知ってもらうよう力を貸して」と頼まれた。その言葉を胸に、10年を越える歳月をかけて作り上げた。

魂になって帰る

物語は、1943年、山奥の貧しいけれど両親と穏やかに暮らしていた14歳の少女ジョンミンが、わけの分からぬまま日本軍の手で貨車に乗せられ、見知らぬ中国に連れて行かれるところからストーリーは展開する。70数年前の少女たちと、今の時代に生きている少女が交互に描かれ、現代のクッ(巫)を通して、異国で死んでいった少女たちの魂がようやく故国に戻ってくる。「鬼」には魂魄(こんぱく)の意味もあり、「鬼郷」は、死んで魂になって帰ってくるという意味が込められている。
少女たちがどれだけ不安で辛くて悲しくて、どんなに故郷が恋しかっただろうか、誰が何の権利があってこんなことができたのか、そう思わない人はいないはずだ。エンディングロールには製作費12億ウォン(約1億1千万円)に達したクラウドファンディング協力者7万人余りの名前と共に、「ナヌムの家」のハルモニたちが描いた絵が浮かび上がる。何度も見てきた絵だが、「ああ、この絵は、本当に少女たちの血と涙で描かれたのだ」と胸に迫る。

反日映画か?

韓国では16年2月に初公開され、累積観客数は、360万人にのぼった。米国や英国、カナダで公開されたが、なんと、日本の映画配給会社はどこも妨害をおそれて引き受けようとはしなかった。趙正来監督は、反日映画だという誹謗にたいして、「映画が平和の道具になり、戦争のない世の中が来ることを願う気持ちで作った」と語っているにもかかわらず。 15年12月28日の被害者不在の日韓「合意」によって「最終的、不可逆的」に「慰安婦」問題は解決したとうそぶく安倍政権が、今、韓国全土を揺るがす朴槿恵打倒の奔流に不安を隠せない。朴政権あっての「合意」だったからだ。日韓政府の「癒やしと和解の財団」にたいし、16年夏には広範な市民の手による「正義記憶財団」が設立され、1周年にあたる12月28日には被害者・遺族らが韓国の裁判所に日本政府にたいする損害賠償請求訴訟を提起する計画を立てている。そしてこの日はまた、16年最後のソウル日本大使館前の水曜デモの日にもあたる。少女像を囲んで数え切れない人々が正義を求めて集まるだろう。

真の解決のために

1991年の金学順さん以来、韓国で被害を届けたハルモニの数は236人。今年もまた6人が故人となり、今や生存者は40人になった。数万から20万人ともいわれるアジア諸国の、カウントさえされない被害者もまた次々と世を去っているだろう。真の解決のための日本側の真剣なとり組みが切実に求められている。趙監督のいうように「この映画を道具として」上映運動を広めよう。(水島良)

(冬期カンパのお願い)
 冬期特別カンパにご協力をお願いします

12月13日のオスプレイ墜落から1週間をおかず飛行が再開されました。20日には県の上告を最高裁が棄却。22日には県知事不参加で北部訓練場の一部「返還式典」が強行されました。そして27日からの辺野古埋め立て工事再開です。
わずか半月あまりの間の沖縄にたいする暴虐の数々。これが「基地負担軽減」を唱える安倍政権の正体です。この中で山城博治さんらは獄中で正月を迎えました。この暴虐を許してはなりません。
沖縄からの新たな安倍政権とのたたかいに呼応し、2017年をたたかいましょう。憲法改悪と格差貧困の拡大を許さないたたかいをつくりだしましょう。
そのためには膨大な資金が必要です。旧来に倍する冬期特別カンパをお願いします。

カンパ送り先
郵便振替  
口座番号 00970―9―151298
加入者名 前進社関西支社
郵 送  〒532―0002  
大阪市淀川区東三国 6―23―16
前進社関西支社