南スーダンPKO派兵
自衛隊は戦地に行くな
11月19日 全国各地で抗議行動
安倍政権は、11月20日、「駆け付け警護」などの新任務を付与した陸上自衛隊第9師団(青森)を中心とする第11次隊の高齢の被害者の証言を聞く機会はもうそんなにないだろう。証言を聞いた者として責任を果たさねばならない。日韓「合意」からまもなく1年、破棄と真の解決に向かって安倍との対決をあらためて決意しよう。(水島良)南スーダン派兵を開始した。前日の19日は、各9師団(青森)を中心とする第11次隊の南スーダン派兵を開始した。前日の19日は、各地で総がかり行動が取り組まれ、全国で抗議の声があがった。東京では「安倍政権の暴走を止めよう! 自衛隊は戦地に行くな! 国会議員会館前行動」に3800人が参加した。(5面に関連記事)
小雨が降る中、国会前に3800人が結集して自衛隊の南スーダン派兵に反対の声をあげた(11月19日) |
大阪 駆け付け警護反対
11月19日、〈戦争あかん! ロックアクション〉と〈「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク〉の主催で、「11・19戦争法廃止! おおさかサウンドデモ」がおこなわれ150人が集まった。大阪市内の公園で集会を開いた後、御堂筋デモをおこない、午後4時からナンバ高島屋前でおこなわれる「おおさか総がかり なんば大街宣行動」に合流した。
集会では、「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク共同代表の中北龍太郎さんが主催者あいさつ。中北さんは、明日から青森の自衛隊が南スーダンに出兵するが政府軍と国連軍はたびたび衝突している。断固「駆けつけ警護」を許さず、撤退を呼びかけよう。戦争の危機が強まる度、平和への希求が強まると挨拶した。
大阪総がかり行動実行委員の一人である山元一英さんは、「いったん取りやめるとしたおおさか総がかり行動は、今後も継続していく」と発言。憲法を改悪させない、戦争法廃止、沖縄のたたかいを本土でも支えようと呼びかけ、韓国情勢に触れて、韓国でできることが日本でできないはずがないと鼓舞した。
憲法改悪に反対する〈大阪憲法会議・共同センター〉、大阪府警の沖縄高江派遣の住民監査請求を進める〈STOP! 辺野古新基地建設! 大阪アクション〉、高江の現状を訴える〈辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動〉、韓国のサードミサイル配備問題について〈韓闘連大阪本部〉、戦争法違憲訴訟の進捗について〈「戦争法」違憲訴訟の会〉からそれぞれ発言があった。
終わりの主催者あいさつを、〈戦争あかん!ロックアクション〉共同代表の服部良一さんがおこなった。
集会後、サウンドカーを先頭に、ドラム、サキソホン、ギターの演奏、歌で元気よく、多くの人で賑わう御堂筋をデモ行進した。
神戸 市民デモに注目
「他国民を殺すな、殺させるな」沿道の市民に訴え(11月19日 神戸市内) |
市民デモHYOGO(こわすな憲法! いのちとくらし! 市民デモHYOGO=34団体)は、自衛隊派兵前日の11月19日、「PKO派兵、高江ヘリ基地、TPP」に反対する集会、デモをおこなった。
〈自衛隊員の命と人権を守る京都の会〉の大伴一人さんは「PKO5原則が崩壊している南スーダンへ、撤退ではなく、なぜ新任務派兵か。安倍政権の目的は『死を覚悟し、相手を殺す』命令に従う軍制改革の総仕上げにある。入隊宣誓には『憲法遵守』と書かれている。私たちが起ち上がらなければ。隊員、家族を孤立させてはならない」と、派兵反対を強く訴えた。
『駆け付け警護に反対、自衛官は他国民を殺すな、殺されるな。日本は非軍事で貢献できる。自衛隊は南スーダンからの撤退を』の決議案を拍手で採択。決議は、23日におこなわれた140回目の陸自第3師団(伊丹市)申し入れで手渡し、安倍首相、稲田防衛相にも届けた。
〈「戦争法」違憲訴訟の会〉の冠木克彦さん(弁護士)は、「20日、『駆け付け警護』の新任務を付与され、自衛隊が南スーダンに派兵される。武器使用を認める安保関連法・戦争法は、明確に憲法9条に違反する。違憲訴訟提訴は1次、2次で原告は1000人を超えた。21日に第2次提訴をおこなう。あらゆる方法でとめよう」と話した。
10日から沖縄・高江に行ってきた2人が現地の様子を報告。「毎日のようにダンプ数十台で工事を強行している。住民、支援の座り込みは強制排除されながら負けていない。1日でも長くとめよう」「沖縄のたたかいは安倍政権には目の上のたんこぶ。いちばん憲法から遠ざけられている沖縄が、憲法をいちばん守ろうとしている」「本土では心が折れるようなニュースばかり。でも現地に行けば違うとわかる。ともに、新基地に反対しよう」
市民デモHYOGO世話人の高橋秀典さんは、「改憲、PKO派兵、沖縄新基地、TPPに反対。TPPは単なる貿易協定ではない。グローバル企業の利益最優先、生活を守るあらゆる規制をなくしてしまう。安倍政権は国民に内容を知らせないまま批准、成立させようとしている」と訴えた。
デモには約100人が参加。土曜日で賑わう三宮センター街では多くの市民の注目を集めた。
京都 市役所前でアピール
京都の19行動は、陸上自衛隊の南スーダン派遣を前に650人が参加した(写真左)。今回は京都1000人委員会の呼びかけ。
京都市役所のアピール行動では、主催者を代表して、大湾宗則さんが沖縄・高江の報告など。福知山の平和委員会は、京丹後の米軍兵士・軍属が、陸上自衛隊福知山射撃場で実弾演習をおこなおうとしていることについて、事件事故への不安を語った。アピール行動後、繁華街の河原町通りを南下するデモ行進をおこなった。
官邸前で緊急行動
「戦争法の発動反対」(11月15日 首相官邸前) |
安倍政権は、南スーダンPKOに派遣する陸上自衛隊に新任務「駆けつけ警護」を付与することを盛り込んだ実施計画を11月15日、閣議決定した。
この日、首相官邸前では早朝からの緊急行動に350人が参加。主催は「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」。「自衛隊は南スーダンからただちに撤退を」、「戦争法の発動と『新任務付与』に反対」を国会に向けアピール。野党各党の国会議員も駆けつけた。
2面
2度と動かすな 川内原発
全国集会に2千人が参加
鹿児島
11月13日、鹿児島市内で「川内原発は2度と動かさない!『さよなら原発! 11・13全国集会』」が開かれ、会場の鹿児島中央駅前には全国から2千人が集まった(写真下)。主催は、〈ストップ川内原発! 3・11鹿児島実行委員会〉、〈原発いらない! 九州実行委員会〉。
集会では、基調提案、全国各地からの報告・7団体代表スピーチ、メッセージでの参加、ステージ参加の国会議員、県・市議会議員のアピール、集会アピールの提案・採択があり、集会後パレードへ。
パレードは、鹿児島中央駅東口から天文館を経て、朝日通り交差点までおこなわれた。
鹿児島中央駅前に2000人が集まって全国集会がおこなわれた(11月13日 鹿児島市内) |
倒壊する家屋
〈熊本・原発止めたい女たちの会〉は、「いつ終わるともしれぬ地震の揺れの不安におののきながら、屋内待避を命じられ、結局、そのあとに本震がきた。倒壊する家屋の下敷きになった多くの人を思って、原発の深刻事故のとき屋内待避することは万全ではない。限界状況では、なにがおこるかわからないのではないか」と、地震避難と原発事故屋内退避は両立しないことを訴えた。
〈玄海原発対策住民会議〉は、「原発立地の玄海町・隣接の唐津市などは、『佐賀新聞』によれば50%近くの県民が原発に反対しており、町長・県には高レベル放射性廃棄物の最終処理施設など受け入れぬよう要請する」と発言。
不都合な真実
再稼働阻止全国ネットワークから福島の女性が発言。「3・11から5年以上を経過して、良きにつけ悪しきにつけ、角の立つ議論が回避されてしまい、ごくごく普通の私のようなものがあちこちでお話をしなければならなくなっています。とにかく2020年までの復興ということで、不都合な真実はおおっぴらにできないということでしょうか」と安倍政権による被災者見殺し政策を批判した。
集会アピール「許されざるもの、原発」を喝采で採択、こう結んでいる。「安倍政権の原発政策は崩れ始めています。この鹿児島で、そして新潟で脱原発知事が誕生しました。それがなによりの証拠です。皆さん! 私たちが力を合わせ、行くところ必ず道が開けます。再稼働反対! がんばりましょう!」(南方史郎)
現地報告
“沖縄の未来は私達が決める”
高江で連日の工事阻止闘争
「最高裁は中立・公正な審理を!」(11月21日 那覇市内) |
11月7日 政府は、高江ヘリパッド工事を12月中旬に終了し、北部訓練場の返還式を12月20日頃におこなうことを決定した。
8日 鶴保庸介沖縄担当相は参院内閣委員会で、大阪府警機動隊員の「土人」発言について「これが差別であるというふうには断じることは到底できない」との見解を示した。高江で抗議行動をする市民からは「許されない発言だ」「県民の気持ちを配慮していない」「沖縄担当相を務める資格はない」と怒りの声があがった。またこの日、8月25日の公務執行妨害と傷害の容疑でさらに男性3人が不当逮捕された。
11日 那覇地検は、8月25日の公務執行妨害と傷害の容疑で、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんと神奈川の男性を起訴した。また、山城博治さんは、10月17日の器物損壊容疑でも起訴。
14日 沖縄防衛局は、民間ヘリでG地区から宇嘉川河口付近に資材を空輸。ヘリを使った資材の空輸は3度目。市民は宇嘉川河口付近に集まり抗議した。また、N1ゲートからは10トントラック55台が入った。
15日 ヘリ空輸が続く。市民は、N1ゲート前と宇嘉川河口付近とに分かれ抗議した。
16日 砂利を積んだトラックを未明に搬入していることが、高江住民から明らかにされた。東村議の伊佐真次さんは「午前3時半に騒音で目を覚まし眠れなかった。10トントラックの未明の搬入は11月に入ってから続いている」と語った。
17日 10トントラック108台がN1より入った。この間最大。未明から作業をおこなうなど、工事完成に向けて急ピッチで作業がおこなわれている。12月20日の返還式に向けて、なりふり構わず工事を強行している。またこの日、8月25日の公務執行妨害と傷害の容疑で男性が不当逮捕された。一連の事件での逮捕者は6人目。
21日正午、那覇市の福岡高裁那覇支部前の城岳公園で「最高裁に中立・公正な審理を求める集会」(主催・辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)を開いた。900人の市民が参加。稲嶺進名護市長や国会議員、県議、オール沖縄会議の各支部からの発言があった。同日東京の最高裁前でも同じ趣旨の集会が取り組まれた。
稲嶺進名護市長は「高裁での議論は不十分だった。最高裁では中立・公正な立場でしっかり議論してほしい」と訴えた。照屋寛徳衆議院議員は「日本の憲法は三権分立を掲げているが安倍晋三首相の下では行政独裁になっている」と指摘。「裁判所は司法と良心に従って判決を」と要求。「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギスとあるが、われわれも辺野古の新基地反対で、聞かぬなら聞くまで声を上げよう」と力強い大衆運動を呼びかけた。オール沖縄の各支部代表は「沖縄の未来を決めるのは裁判所でも判決でもない私たちだ」と最高裁判決にかかわらず反対していく決意を語った。
またこの日、菅官房長官は衆議院決算行政監視委員会で、機動隊員の「土人」発言に「差別と断定できないというのは政府の一致した見解だ」と述べた。
学校に思想・信条の自由を
「君が代」処分撤回で集会
大阪
11月18日、大阪市内で「取り戻そう! 学校に思想・信条の自由を!!」集会がひらかれた(写真左)。主催は、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク(大阪ネット)。
高裁不当判決
10月24日、府立支援学校教員・奥野泰孝さんの「君が代不起立『減給処分』取り消し裁判」の大阪高裁判決があり、担当主任である重村達郎弁護士が次のように報告した。
「控訴棄却されたが、すでに上告および上告受理申し立ての手続きを済ませている。11月14日付けで受理されたので50日以内に理由書を作成する。
高裁判決は評価できるところは何もない。一審(大阪地裁)よりひどい。いま弁護団は、教師の教育の自由の観点から主張できないか、教育の在り方として一律に規制することがいいことなのかを展開することも考えている。あくまでも少数者の人権の保障にかかわる問題として厳格に憲法違反かどうか判断すべきだということを崩してはいけない」
続いて原告の奥野さんが発言。
「あきらめない限り負けはありません。信仰の自由についてはゆずれなく、『君が代』斉唱時には立てない。少数者の意見を反映すべき。教育委員会や裁判所は私の内心を勝手に推測している。府教委や管理職の内心はどうなのかをはっきりさせたい。支援学校での立てない生徒の教育を放棄して立っていいのかという奥野の考えを、府教委は子どもをダシに使っていると誤った判断をしているが、学校が子どもを人質にとり、子どもを使って愛国ということを広めようとしている。最後までがんばる」と決意を述べた。
奥野さんを支援する団体は、「昨年12月の一審判決では、奥野さんの心の中をかってに想像した判決理由に驚いた。司法にたいしてかろうじて残っている信頼をも揺るがす判決だ。戦争政策の強行に直結した『君が代』強制に穴をあけ、切り崩すため取り組む。大阪府教育委員会への要請行動、府教委前でのビラ配布活動、1月14日の総会と講演集会への参加を」と訴えた。
弁護士会の勧告
続いて大阪弁護士会勧告を広める取り組みの報告がおこなわれた。
「大阪府立芦間高校教員梅原さん他4人からの『人権救済の申し立て』に対して大阪弁護士会は、今年3月18日、大阪府教育委員会及び芦間高校校長に対し『勧告』を発した」
「それは@今後、『君が代』の起立斉唱を教職員および生徒に強制してその思想良心の自由を侵害することがないよう、A今後、教職員が勤務時間外かつ学校外においておこなうビラの配布につき、当該ビラの内容が国、大阪府および教育委員会の考えと異なる内容になっていることを理由に制限することのないようというもの」
「今回の勧告は、@大阪府国旗国歌条例は、思想良心の自由、教職員の教育の自由を侵害し、さらに憲法94条、教育基本法第16条第1項に抵触する違憲・違法なものであること、A懲戒処分を通じて教職員個々人が有する思想良心の自由を侵害すること、B生徒・保護者にも起立斉唱を実質的に強制し敬意の表明を求め、思想良心の自由を間接的に制約すること、Cビラまき行為は、生徒の教育や福祉に重大な影響を与えるといった事情がない限り表現の自由行使の内容として保障されるべき、といった日本国憲法下では当然の内容ばかり。今後は大阪府教育委員会に『日の丸・君が代』の強制を直ちにやめろと迫っていきたい」
最後のまとめで、「大阪ネットは前身の『日の丸・君が代』ホットラインから16年になる。東京では10年以上かかって処分を撤回させた。私たちもめげずにどこかでひっくり返すという思いでたたかっていこう」と締めくくった。(佐野裕子)
3面
「いますぐ高江に行こう」
大阪市内をチャンプルウォーク
11月13日、大阪市中央区民センターで「チャンプルウォークと上映会」が開催され70人が参加した。主催は〈STOP! 辺野古新基地! 大阪アクション〉(写真下)。
集会では、沖縄に派遣されている大阪府警機動隊の暴言を弾劾し、派遣を中止させるための住民監査請求人募集の呼びかけがおこなわれた。
また高江や辺野古の現地に行った人たちが「いま私達たちにできることは高江に行くこと」「高江で起こっている事実を自分の目で確かめて欲しい」と訴えた。さらに「機動隊の派遣が終わるまで大阪府警前の抗議を続けよう」「高江で頑張っている人たちに少しでも勇気と希望を与えるために、私たちもがんばろう」という発言があった。
最後に沖縄の島唄、三線の演奏があり、参加者全員で合唱した。
冬期特別カンパアピール
時代の転換点をいかに闘うか
トランプはなぜ勝利したのか
私たちはいま、40年来拡大を続けてきた新自由主義グローバリゼーションからの転換期に直面しています。そのことを紛れもなく示したのが、11月8日に実施されたアメリカ合衆国大統領選挙における、共和党のドナルド・トランプの勝利です。
「不法入国を防ぐためにメキシコ国境に万里の長城を築く」など民族排外主義を煽動する過激な発言を繰り返してきたトランプの勝利は世界を震撼させています。今年6月のイギリスの国民投票でEU離脱を決定したのにつづく衝撃的な事件です。アメリカとイギリスは、第2次大戦後の資本主義世界体制を構築した2大国です。また今日の新自由主義グローバリゼーションを推進してきたのもアメリカとイギリスです。この新旧の覇権国のなかで、グローバリゼーションに背を向け、「自国第一主義」のスローガンを支持する国民の声が他を圧倒し始めたのです。
こうした事態は一体何を物語っているのでしょうか。それは70年代半ばから擡頭しはじめた新自由主義グローバリゼーションという金融資本の専制的な支配が、もはや先進諸国の人びとにとっても耐え難いものになっているということです。
金融資本の自己破壊的メカニズム
今日、世界の金融資産はGDP(生産力)の5〜6倍に膨れあがっているといわれています。このように巨大化した金融資本が資本として自己増殖を続けていくためには、「企業生産」だけに依存するわけにいかなくなっています。今や金融システムは「家計消費」へとそのシフトを大きく移行させ、世界中で民衆からの略奪と収奪を繰り広げ、深刻な格差と貧困、飢餓と難民を拡大し続けているのです。それがアメリカ、イギリス、EUという先進諸国においても深刻な社会問題を生み出しています。日本においても同じです。
人間が人間らしく生きていくためには、歴史的に培ってきた社会的な共有財産の存在が不可欠です。ところが新自由主義を標榜する者たちは、社会のあらゆる場面に「市場の競争原理」を持ち込み、社会的な共有財産を次から次へと破壊してきました。80年代、彼らがもっぱら標的としたのは労働組合でしたが、それだけではありませんでした。
例えば地域の商店や商店街。中小・零細な企業を中心とする地場産業。農村や山村、漁村。そこで生活を営む人びとによって維持されてきた自然環境。また地域の経済活動を支えてきた協同組合組織。医療機関、公共交通、学校・公教育。コミュニティにとって不可欠な公共施設、文化施設や文化団体。そして地域住民と直結した地方公共団体。さらには労働法制やさまざまな社会保障制度です。
これらを今日の金融グローバリズムは根こそぎにしようとしています。それが南欧諸国の社会的基盤を破壊しているEUの「緊縮策」であり、「自由貿易協定」の名のもとで進められているグローバル資本による社会的な共有財産の略奪です。それは人間の生存条件そのものの破壊です。
イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙でのトランプの勝利は、こうした事態にたいする民衆の強い危機感の現れです。それはかつてない広さと深さを持って地球上に拡大している民衆の防衛的なグローバル資本市場への対抗運動の世界的なうねりが始まっていることを衝撃的に告げ知らせています。
新自由主義にたいするレジスタンス
先述したさまざまな社会的な共有財産は、新自由主義グローバリゼーションにかわる新たな世界を構築していくうえで、欠くことのできない陣地であり文化的資産です。これらをグローバル資本市場の自己破壊的なメカニズムから防衛するたたかいは、資本主義を乗り越えるグローバルなレジスタンスです。
アメリカやイギリスで、そしてフィリピンや韓国で民衆がこうしたレジスタンスに起ち上がっています。沖縄のたたかいや反TPP、反原発のたたかいはこれらに連なるものです。
このような防衛的で自然成長的なレジスタンスを糾合できる政治的枠組みはどのようなものでしょうか。それは、狭い経済的な利害(金銭的利害)の枠組みを超えた人びとの社会的連合体です。狭い経済的な利害を超えることによって、より鋭い体制批判が運動の基調として浮かび上がってくるのです。
このように多様性を包括するグローバルなレジスタンスは、排外主義や人種主義による住民の分断をのりこえて前進しようとしています。全米でまき起こっている反トランプのデモンストレーションはその証左です。
いまこそ確信を持ってレジスタンスを拡大し、窮地に陥っている安倍政権を打倒するたたかいを推し進めましょう。そして新自由主義グローバリゼーションに終止符をうち、すべての人々が人間らしく生きていくことのできる世界に向けて展望を切り拓きましょう。この歴史的な事業のための資金カンパをお願いします。
カンパ送り先
郵便振替
口座番号 00970―9―151298
加入者名 前進社関西支社
郵 送 〒532―0002
大阪市淀川区東三国 6―23―16
前進社関西支社
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響きあう反ヘイトの声
差別・排外主義に反対する会が新宿デモ
「生きる権利に国境はない!」「私たちの仲間に手を出すな!」。この言葉を、単なるスローガンではなく、実際の社会のあり方として実現していかなければならないと考えさせる事態が続いています。
今年4月に起きた熊本地震では、「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」なるデマがネットで流されました。10月18日に、沖縄・高江のヘリパッド建設阻止行動の現場では、機動隊員が抗議する市民にたいして「土人」「シナ人」と差別暴言を浴びせるという事件も起きています。
そして7月26日、相模原市の「障害者」施設で「(障害者抹殺が)全人類のために必要」と公言する犯人によって46人が殺傷されるという衝撃的な事件が起きました。
6年目のデモ
そのような状況を撃つものとして、私たちは今年の新宿デモを企画しました。題して「生きる権利に国境はない! 差別・排外主義を許すな! 10・16ACTION」。130人の参加を得て、新宿駅西口・南口から靖国通りへ、そして職安通りを2時間で歩きました(写真)。毎年秋この地区を歩く定例デモになっていますが、今年で6年目になります。昨年あたりから沿道の反応が良くなってきていますが、今年はさらに好感度がアップしている感じです。
連帯の広がり
区役所前を曲がったときに、私たちのビラを受け取ってくれた20代の女性が、デモの様子をスマホで撮影し始めました。そこから職安通りの途中までずっと歩道を並んで歩いているので、職安通りに出たところで声をかけると、留学生だということでした。彼女は笑顔で小さく手を振ってくれます。また沿道のコンビニから出てきた若いカップルが、手をつなぎ私たちの朝鮮語のメッセージを何度も唱和してくれました。
職安通りでは、先導車から私たちの用意した朝鮮語のコールや参加者の在日の方の朝鮮語のメッセージに、沿道の両側から沢山の笑顔があふれました。朝鮮語のシュプレヒコールに、反対側の歩道で朝鮮語で唱和する方もいました。
教会のバザーに参加していた人が隊列に手をふっています。お店の人が仕事の手を止め店先に出てきて笑顔で手を振っています。ビルの上の階から窓を開け手を振ってくれる方もいます。
デモで歩きながら朝鮮語のコールで街の人々に訴えるという上記の試みは、数年前からおこなっていますし、デモの1週間前に地元商店街に事前の告知ビラを配布することは最初の年から継続しています。それらの取り組みが実を結び始めた感触があります。
政治を変えること
デモ開始にあたっては、6つの団体・個人の方から連帯アピールをいただきました。〈『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会〉〈『国連・人権勧告の実現を!』実行委員会〉〈全国『精神病』者集団会員〉〈辺野古リレー〉〈DA直接行動〉〈反天皇制運動連絡会〉です。
「(在日コリアンの生徒を)日本の学校に入れているから差別はない」とする、あるいは「知的障害者」や「精神障害者」を「何も理解できない人間」と規定して「人権擁護」という衣のもとに権利を制限するなど、黒を白と言いくるめるようなウソの論理をもって差別政策が推し進められています。さらに、「駆けつけ警護」で自衛官が海外で人を殺すことも予想されるところまで事態は来ています。
ヘイトがなくならず強まっている状況を変えるには、国家の政治のあり方を変える必要があることが浮き彫りになりました。アピールの中にあった「あらゆる人の命を守る」という言葉が、参加されたすべての人に共通する想いではないかと感じました。 (三崎 薫)
4面
焦点
反米親中国のドゥテルテ政権
フィリピンはどこへ向かう
落合 薫
ドゥテルテ大統領とは何者か?
「人権など忘れろ」、「麻薬常用者は殺す」と暴言を発する。オバマ米大統領とローマ法王を「このくそ野郎」と罵倒する。また、「外国軍(米軍をさす)部隊は2年ほどで出ていってほしい」「軍事も経済も米国と決別する」などと反米の言辞をまき散らす。しかしフィリピン国内では支持率はいずれの調査でも80%代後半を維持している。それはなぜであろうか。
『Newsweek』誌(11月1日付)は、ドゥテルテを共産主義者またはその関係者として描く。同誌がその理由として挙げるのは、マルコス大統領時代に学生活動家として「ピープル・パワー革命」に参加したこと、大学では、フィリピン共産党(CPP)の創始者、ホセ・マリア・シソンの下で政治学を学んだこと、ドゥテルテ政権には共産主義者と目される閣僚が2、3人いる(労働雇用相が最低賃金制の導入を主張したことが共産主義者の証拠!)。
米誌が挙げる「根拠」からは共産主義者ないしその支持者とは判断できない。ただ対米親和性をまったくもたない民族主義者と見られる。彼の反米・親中国路線の背後にはフィリピンの民衆の永年の闘いと怒りの歴史がある。
新植民地主義支配に苦しむフィリピン
列島の自然的状況
フィリピンは天然資源に富む多島海国家である。鉱物資源は、金鉱床が南アメリカに次ぐ規模を誇り、銅鉱床も世界規模、ニッケル・クロム・亜鉛なども豊富である。海洋資源は、魚類が2400種、サンゴが500種もある。森林は、戦後は国土の70%を覆っていたが、ラワン材などの乱獲で現在は40%を切った。これらの豊かな自然が新植民地主義支配により収奪されてきた。
2014年7月に人口が1億人を突破。第2次大戦後の1700万人から70年ほどで6倍になった。すさまじい人口爆発である。
フィリピンは英語使用人口が国民の70%以上に達し、使用人口で世界第3位(1位はインド、2位アメリカ)である。この英語使用人口の多さと高等教育機関の普及により、フィリピンは世界的に労働力の供給拠点となっている。海外での出稼ぎ人口が940万人を超え、その送金(フィリピンの年間GDPの11%に当たる200億米ドル)がフィリピン経済を支えている。アメリカにはフィリピンの移民労働者が250万人以上おり、日本の海運業界でも今や船員の約8割以上がフィリピン人という。
経済的現状
IMFによると、フィリピンの2013年GDPは2720億jで、1人当たりのGDPは2790j、世界平均のおよそ25%にとどまる。世界銀行の分類でも発展途上国に属し、ASEAN諸国の中でも貧しい方である。2011年、アジア開発銀行の公表によると、1日2ドル未満で暮らす貧困層は3842万人と推定され、国民の40%以上を占める。
産業的には、農業国であり、全人口の約40%が第1次産業に従事している。サトウキビやココナッツ、コプラ、マニラ麻、タバコ、バナナなどの商品作物が米系大規模農園で生産されている。主食はコメ、トウモロコシで、とくにコメは年約1500万dも産出する世界第8位のコメ生産国であるが、自給率は低く、世界最大のコメ輸入国でもある。その原因は、外貨を得るために輸出作物の栽培に頼っていることなどが指摘される。かつては、米国「援助」による「緑の革命」で、70〜80年代にコメの大増産に成功し、自給率100%を達成したが、90年代以降、「緑の革命」は頭打ちとなり、生産量の減少が起こった。「緑の革命」で「改良」された種子は、大量の化学肥料の連続的投入や機械耕作を必要とし、しかも種子が米アグリビジネスに独占されて、貧しい農民には手が出ない。土地収奪も甚だしく、結局、自給農業を破壊するものとなった。
工業は軽工業を軸にした輸入代替が主であるが、停滞している。製造業で働く人口は15%に過ぎず、1次産業と3次産業が大きく歪んだ構造になっている。
フィリピン人民の歴史とたたかい
階級関係
アメリカによる植民地支配のもとで、スペイン時代のプランテーション農業に基づく地主と小作人の関係は逆に拡大して現在に至る。全国で数十家族の大地主が国土の半分以上の土地を支配する一方、農村部では半数以上が1日1j以下の生活をする最貧層で、南部イスラム地域ではさらに75%以上が最貧層とされる(スペイン・アメリカ時代を通じて、イスラム教徒の土地をキリスト教徒のスペイン系大地主が奪い取ってきた)。
植民地時代のアシエンダ制(大農園)の影響が残っており、財閥による寡占状態にある。スペイン系大土地貴族、華僑系財閥が大土地所有を基礎に、財閥を形成し、これが政治的にも支配している。
フィリピン共産党(CPP)は68年に、中国派として再建された。都市部での労働組合運動と農民運動から生まれ、非合法化された結果、新人民軍(NPA)を組織し、武装抵抗を続けている。ピープル・パワー革命以降は合法面にも進出している。南部ミンダナオ島では先祖伝来のムスリムの土地を収奪されたことで抵抗運動が起こり、モロ民族解放戦線(MNLF)、それから分離したモロ・イスラム解放戦線(MILF)に加え、最近では、イスラム国に合流するグループも出現している。
民族的抵抗の歴史
フィリピン人民は、16世紀から1899年までのスペイン植民地時代、1902年から1946年までの米植民地支配の時代、1942年から1945年の日本の軍事支配の時代と3つの植民地支配、軍事支配とたたかってきた。
この間、1899年には独立宣言をおこない、アギナルドを大統領とする独立共和国を樹立している(1901年までの2年間)。米国は、1898年のパリ条約でフィリピンの統治権をスペインから「買い取って」、フィリピンの独立の約束を反故にした。これにたいして、フィリピン労働者人民は、60万人の死者を出して徹底的にたたかった。抵抗は米支配下でも30年代まで続いた。
第2次大戦において日本軍は対米開戦と同時に米軍を放逐し、マニラ市に上陸し、上半期には日本軍はフィリピン全土を制圧し、カイライ「独立」政府を樹立する。しかしこの政府をして、大東亜共栄圏に加入させることも、対米宣戦布告をさせることもできなかった。フィリピンの労働者人民は米比両国軍人が中心となったユサッフェ・ゲリラと共産系のフクバラハップ(抗日人民軍)に結集し、対日ゲリラ戦争を戦った。1944年末には米軍が反攻上陸し、全土が戦場となり、最後のマニラ市街戦ではマニラは焦土と化した。フィリピン政府の公式発表によれば、抗日戦争におけるフィリピン人の死者は111万人。戦前に1600万人であったフィリピンの全人口の7%に達する。
フィリピン人民は、歴史的に民族的誇りが高い。アジアで最初に独立革命によって共和制を打ち立て(トルコ、中国の共和制革命に先行する)、スペイン・アメリカ・日本の3つの帝国主義の植民地支配と軍事支配に屈することなくたたかってきた。ドゥテルテの政治的背景が何であれ、このような歴史を抜きにはとらえることはできない。
ドゥテルテ路線と日米両帝国主義
ドゥテルテ路線によって、TPPは破産が運命づけられた。すでにフィリピンは前アキノ政権時代にTPP不参加を表明している。知財条項やISDS条項など、新植民地主義支配の被害を一番受けたフィリピンはどの政権担当者にとっても到底飲めない。そのうえ、米日によって、ASEANの分断(10カ国のうち4カ国だけを米日が囲い込む)と対中国包囲網の形成に利用されることなど認められない。インドネシアも同調すればASEANは反対で固まる。
2点目に軍事的・政治的中国包囲網の形成も破綻する。対米関係では、合同軍事演習を中止し、相互防衛条約も破棄しようとしている。もともとフィリピンは、米比相互防衛条約を結ぶなど米国・米軍との関係が深かったが、1986年のエドゥサ革命(ピープル・パワー革命)でマルコス政権を倒してからは、憲法で外国基地の国内設置を認めないこととなっていた。南部のイスラムゲリラ討伐を名目として、合同軍事演習などを再開し、米軍テロ対策部隊の駐屯を許可してきたが、常駐は求めず、「訪問」軍の建前となっていた。
安倍の改憲、大国化とたたかう日本の労働者人民にとって、フィリピン人民は重要な味方である。日本軍軍隊「慰安婦」問題など、フィリピン人民にたいする反省と歴史の教訓を自らのものとし、日帝・政府の謝罪と賠償を実現しよう。
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5面
軍事力の限界―憲法9条の可能性
殺すな、自衛官を死なせるな
元自衛官 泥 憲和さんに聞く(下)
PKO協力法も武器の使用を制限
政府は「ちょっとした衝突、散発的な銃撃であり安全」という。しかし、8月に『産経』が「弔慰金を増額。これまでの1・5倍の9千万円に」と書いている。弔慰金というのは戦死手当ですよ。こうでもしなければ、自衛官の士気にかかわるということだろう。みなさん9千万もらえれば、死ぬ所へ行きますか。
法律的問題もある。交戦権を持たない自衛隊が海外で殺傷行為をおこなう、それは許されるのか。政府もこれに答えられない。PKO協力法でも武器の使用を制限している。25条「武器の使用に際しては刑法36条、37条に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない」。つまり正当防衛の場合を除いては撃ってはいけないということ。この縛りは、どうしようもなく自衛官を危機にさらすことになる。正当防衛か過剰防衛か、どうやって判断するのか。今年の4月、他国のPKO部隊の駐屯地に逃げてきた市民に、政府軍が追いかけてきて発砲、殺傷した。7月の戦闘のときも、自衛隊宿営地に市民が逃げ込んできた。自衛隊は食糧を提供し、ケアした。今後も起こるだろう。それを追いかけて政府軍が市民に発砲したら、どうするのか。
「市民を守るために」戦っていいのか。戦わなければ、目の前で殺されていく。自分たちが狙われていなければ、正当防衛で戦うことはできない。それでも「戦え」と命令を受け相手軍を撃てば、市民に当たることもある。誤って撃ったら業務上過失致死か。車による自動車爆弾というのもある。宿営地に車が近づいてきたらどうするか。爆発すれば自分たちが死ぬ。ドライバーを射殺したら、道に迷った一般車だった。そういうことがイラクで何回も起こった。こういう誤認殺傷は、罰せられるのか。撃たなければ自分が死ぬかもしれない。
一般の兵士は命令に従うことを徹底し教育、訓練されているから命令に従うだけ。しかし現場の指揮官、下士官はそういう厳しい決断におかれる。彼らはこれまでの自衛隊の任務と、今回の新任務をもっとも深刻、真剣に受けとめ考えている。こういうことは国会で1度も議論もされていない。それで任務だけは与える。
7月の戦闘の際、「エチオピアや中国のPKO部隊に駆け付け警護を要請するも、出動しなかった」というニュースがあった。外電でみると「暴走南スーダン兵士が、NGO女性救援活動家に銃を突きつけ、レイプされるか頭を撃ちぬかれるか」「彼女に選ぶ権利はなかった」と書いている。1マイルも離れていない国連PKO部隊は、命がけの救援要請を拒否した。アメリカ大使館なども同様だった。誰も助けに行かなかった。行けないですよ。南スーダン政府軍と戦力が違い過ぎて太刀打ちできないから、完全武装のPKO部隊だって行けない。安保関連法のとき、こんなことを含めまったく議論はなかった。
非軍事、「別の道」はある
まとめていうと、「駆け付け警護」というのは市民を守るものではない。他国軍を守る。それは、米軍でさえ失敗した。自衛隊は、市民を防護する権限もなければ装備、能力も持っていない。さらに自衛隊は自分自身も守れない。他国のPKO部隊も出動を拒否したくらい。そういう「駆け付け警護」任務を与えるのは机上の空論、絵空事だ。できないことをやれといっている。やらされれば死者が出る。
確かに南スーダンは人道的危機に陥っており市民は大変な状態にある。人道的義務は尊い。何とか助けてあげたいと誰もが思う。だから、「指をくわえて見ているのか。無責任だ」と言われると私もよく分かる。
別の道は選択できないのか。非軍事で貢献できる道はないのか。内戦の背景は何に、どこにあるのか。NHK・BSの世界のドキュメンタリー「中東からアフリカへ〜拡大するアメリカの石油戦略」という、いい番組があった。いまのNHKではない、2005年の番組。アメリカは石油戦略や利権のために、気にいらない国、政権にたいし抵抗勢力をつくり武器を援助する。アフガニスタン、イラクでもそういうことがずっとおこなわれてきた。それがスーダンから南スーダンを分離させ、いまの内戦の元をつくった。
くわしく話すのは別の機会にしたいが、いいたいことは、「別の道」はあるということ。
いま南スーダンに武器を売ってはいけない。ところがイスラエルは偵察用装備という名目ですり抜け、さらにウガンダを経由し売っていた。国連は武器の密輸を監視している。調査していると、そういうことが分かった。イスラエルを非難し、抜け道を防ぐ措置をどこかの国が呼びかけなければならない。それは日本がふさわしい。なぜかといえば、イスラエルの背信行為を暴く手段を作ったのが日本だからだ。1991年に国連が大型武器を管理する協定ができた。2014年に小型武器に関する協定もできた。各国は輸出入とも報告義務がある。これは日本がホスト国となって、ほとんど総会満場一致で成立させた。他国ができなかったことが、なぜ日本ができたのか。当時の外務省高官だった人が「日本が武器輸出をしない国だったから」といっている。武器を輸出する国がいくら言っても信頼されない。
私たちの政府をつくらねば
憲法前文、9条とはそういうものです。武器輸出をしないということは、こんな力を発揮できる。こういうことは、ほとんど報道されない。しかし、いま安倍政権は方向転換してしまった。やっぱり私たちの政府をつくらなければならない。
日本は平和憲法を持つがゆえに、武力に代わる平和貢献ができる。軍事、武器で介入する国では信頼されない。他にも日本が非武装的アプローチで紛争を終わらせた例はインドネシア内戦終結への努力、アフガニスタンでの中村哲さんたちの緑化による暮らしの再建など少なくない。憲法9条が支える、武力に変わる平和ミッション、日本だからこそできることがある。誇張される「中国、北朝鮮の挑発」に、冷静な視点も必要だ。
私は15歳から自衛隊に入隊した。「日本を、市民を守る専守防衛の自衛隊」は好きです。知人も多い。「理不尽な任務を与え、自衛官を死なせるな」と声をあげたい。(おわり)
投稿
原発再稼働NO!
東大阪で市民がデモ
11月20日、東大阪市内で、原発再稼働に反対する人たちによって集会とデモがおこなわれました(写真左)。
公園を出発した120人のデモ隊は、市内中心街を3キロ近くを歩いて、東大阪市民に原発再稼働反対を訴えました。
途中、沿道の若い青年たちが配られたビラをかざして大きくうなずいたり、高齢の男性が声をかけてきたり、スマホでデモの写真を撮るなどし、大きな注目を集めました。
今回の集会とデモは実行委員会形式で超党派の参加を呼びかけた初めての取り組み。8月に東大阪市役所前での平和の集いに続いてさまざまな住民運動が再度結集しました。
集会では、〈若狭の原発を考える会〉木原壯林さん、〈関西市民連合〉塩田潤さん、〈放射能からいのちを守る東大阪の会〉、〈原発ゼロ上牧行動〉、〈なくせ原発! 河内長野デモ実行委員会〉、〈医療生協かわち野はなぞの生協診療所 原発ゼロの会〉が発言。
自分たちの住んでいる地域で生活感覚で原発や放射能の危険を訴えることは大切で、すばらしいという発言がありました。福島からのメッセージもありました。日本中が放射能まみれにされようとしている、再稼働反対、原発輸出反対、核燃サイクルはやめろなど具体的な課題が提起されました。(布施三郎)
短信
新電力契約者にも原発関連費用を請求
原発の廃炉積み立て不足金1・3兆円、福島事故損害賠償金(一般負担金)3兆円、福島事故処理・廃炉費4兆円の合計8・3兆円を、大手9電力・電気事業連合会(電事連)と安倍政権は、「託送料金」に転嫁することを狙っている。
電力自由化で登場した新電力会社は自力で発電しても、送電線網を保有していないので、託送料金を大手電力会社に支払っている。原発の建設・運転・事故などによって生じた費用を託送料金に上乗せして、原発とは関係ない新電力会社に負担させるということ。新電力に移行した消費者にも原発関連費用を負担させるという方式だ。
来年の通常国会で関連法を成立させ、新電力契約者からも自動的に、原発にともなう費用を取り続けようとしている。
6面
貧困で殺されない社会を
生活保護違憲訴訟 全国アクションを設立
11月7日、衆議院第一議員会館大ホールで「いのちのとりで裁判全国アクション」が結成され、その設立を記念する集会が同ホールを満杯にしておこなわれた(写真)。
違憲訴訟をたたかう
社会保障解体・労働法制解体の攻撃にたいし、いま全国27都道府県で900人を超す原告で生活保護基準引き下げ違憲訴訟がたたかわれているが、同アクションはこの違憲訴訟を支える運動を全国的な幅広い運動としていくために結成されたものである。待ちに待った全国組織がついに立ち上がったのだ。
集会では、井上英夫・金沢大学名誉教授の開会あいさつに続き、小久保哲郎弁護士が基調報告をおこなった。
第1次の保護基準引き下げの突破口となったのは、覚えている人も多いと思うが2012年4月から始まった有名お笑いタレントの母親が生活保護を受けていることにたいする異常なバッシングである。その1カ月後の5月には謝罪会見が全国に生中継され、6月には民進党、自民党、公明党で社会保障制度改革推進法が国会に上程され、8月には同法が成立した。バッシングからわずか4カ月で可決されるという異常なものだった。同法は、憲法25条が定めている「社会保障は国の責任」という大原則を破壊し、これを自己責任に転嫁し、さらに給付を抑制していくものである。
同年末の衆議院選挙で政権復帰した自民党・安倍政権は翌2013年2月、保護基準引き下げを決定し、同年8月から今回の最大10%の保護基準引き下げ攻撃が始まったのである。
第1次の削減額670億円のうち、生活保護基準部会の検証を一応踏まえた削減額はわずかに90億円に過ぎなかった。削減の87%を占める残りの580億円は厚労省が勝手にデータを操作して物価が下がったとして減額したものである。しかし、裁判の中で厚労省のデータ操作が明らかとなってきただけでなく、今年6月には基準部会の出した数値までも厚労省が勝手に2分の1にしていたことも明らかになり、今回の引き下げについて違憲判決=勝利判決が出ることもゼロではない局面を切り開いている。
生活保護の解体へ
しかし、国・資本による社会保障解体攻撃はこれにとどまらない。保護基準は5年ごとに見直すことになっているため、今年5月、生活保護基準部会が再開された。厚労省によると2018年度に保護基準の2度目の引き下げとそのための生活保護法の改正を予定しているという。生活保護制度は5年毎の見直しにより底なしに解体されていく危機に直面している。
自民党の改憲草案24条は「家族は、互いに助け合わなければならない」としている。これは「社会保障は国の責任」という大原則を解体し、責任を家族におしつけるもので現行憲法25条の実質的解釈改憲であり、その先取りである。
次に「いのちのとりで裁判」の名付け親の雨宮処凛さんの司会でシンポジウムがおこなわれた。自立生活サポートセンター・もやいの稲葉さんや最低賃金1500円を要求してデモをしているエキタス(AEQUITAS)の若い女性や劣悪な労働環境で働くホームヘルパーなどの方々が発言した。とくにエキタスの女性は保護費の引き下げは労働条件の地盤沈下をもたらすもので許せない、最低賃金1500円を要求しているのは憲法25条が保障している生存権を保障しろという要求であり、自分たちが要求することによって、あらゆるところから要求が出やすくするためでもあると発言した。
殺されない社会を
いま貧困によって、自殺を含め多くの人たちが殺されている。こんな非人間的な社会を作り出しているのは国と資本である。
最低賃金法が成立した1959年当時、総評は最低賃金法を成立させるために全力でたたかったが、同時に生存権裁判として有名な朝日訴訟も全力で応援した。朝日訴訟をたたかっている運動も自分の問題として最低賃金法の成立のためにたたかった。労働運動と社会保障の運動がしっかりスクラムを組むことで最低賃金法も朝日訴訟の1審勝利もかちとったのだ。
いま、「誰一人、貧困によって殺されない社会を」(集会アピール)を作り出すことは死活的だ。労働運動と社会保障運動のスクラムを組むためにさらにたたかっていこう。(矢田 肇)
アジアの「慰安婦」被害者たちは訴える
「日本の市民が声をあげて」
11月2日、大阪市内で、フィリピンとインドネシアの「慰安婦」被害者を招いた「日韓『合意』は解決ではない アジアの『慰安婦』被害者たちは訴える!」集会が開かれ、平日夜にもかかわらず300人の市民が参加、日韓「合意」をめぐる関心の高さを示した。5日には同趣旨の集会が東京でも開催された。
事実は隠せない
フィリピンから来られたロラ・エステリータさんが辛い被害体験を語った。
「ネグロス島の市場で日本兵に拉致され、日本軍の駐屯地に監禁、米軍が来るまで3週間レイプされ続けた。日本軍が山に逃げ解放されると、母は迎えてくれたが、人々の非難のまなざしのなかで、逃れるようにマニラに移らねばならなかった。中国人男性と結婚し、子ども5人をもうけたがその後離婚。子どもを育てながら生きていくためにさまざまな仕事をした。年老いて、同じ被害者マリア・ロサ・ヘンソンさんが、名乗り出るようテレビで呼びかけているのを見ても、自分が名乗り出るまでには1年間もかかった」。
そして最後に、「事実を隠すことはできないのだと日本政府に訴えたい」と。
日本政府の謝罪を
初来日で、人前で初めての証言をしたインドネシアのチンダさんの話。
「南スラウェシで綿摘み中に、日本軍将校オケダに捕まり、兵舎に監禁され、オケダと部下に連日何度も強かんされ続けた。日本軍が去って家に帰ったが、『お前は汚れている』と家を追い出されてしまった。その後、手伝いなどをして暮らした。言い寄る男性もいたが汚れてしまった自分は決して結婚はできなかった。菓子を作って売り歩き、少しずつお金を貯めて、たったひとりで生きてきた。私には未来がない。年老いて膝も痛いし、じきに歩けなくなるだろう。そうなれば菓子を売り歩くこともできない。私にはなにもない」。
つぶやくように訥々と語るチンダさんは、最後に「オケダに責任を取ってほしい。ここに来て、謝ってほしい。もしオケダが生きていないのであれば、日本政府に賠償してほしい」。
ふたりの証言に共通するのは、イスラム社会では(儒教社会でも同じだが)被害者であっても「強かん」されたことは、社会生活そのものから排除されることを意味している。人生の最晩年ともいえるときにこのように訴えねばならない彼女たちの積もり積もった怒りや悲しみを、しっかりと胸に刻もうと耳を傾けた。
日韓合意の欺瞞
集会ではフィリピンで「慰安婦」問題にとりくむリラ・ピリピーナのレチェルダ・エクストレマドゥーラさんが現状を報告。「174人名乗り出た被害者のうち105人が亡くなり、多くの人は居所さえつかめない。公式の場で証言できるのもロラ・エステリータさんだけになってしまった。ドゥテルテ大統領訪日に合わせて10月26日に抗議行動のために被害者と被害者の遺族を組織したが、みな貧困の中にあり、集まることができず中止せざるをえなかった。私たちの運動も資金的に限界。日本の市民のみなさんが不正義を正す声をあげてほしい。
日韓『合意』は強制性を認めないことを前提にしているが、フィリピンの被害者からしてみれば強制そのものだ。被害者を欺き、また日本市民も欺いている日韓『合意』を許すわけにはいかない」と。
集会では来日中の「日本軍『慰安婦』被害を記憶するメモリアル運動 inアメリカ」の活動家からも連帯のあいさつがあり、国際連帯の力で早急に真の解決を勝ち取ろうと心をひとつにした。
高齢の被害者の証言を聞く機会はもうそんなにないだろう。証言を聞いた者として責任を果たさねばならない。日韓「合意」からまもなく1年、破棄と真の解決に向かって安倍との対決をあらためて決意しよう。(水島良)