未来・第205号


            未来第205号目次(2016年8月18日発行)

 1面  高江ヘリパッド
     工事阻止 現地に結集を
     全国各地で沖縄連帯行動

     “機動隊はすぐ帰って来い”
     大阪府警本部に抗議

     高江、辺野古と連帯
     戦争あかん! ロックアクション
     大阪

 2面  被爆71年、核と戦争の廃絶へ
     “8・6ヒロシマ平和の夕べ”に参加して

     最高裁が上告棄却
     経産省前テント撤去命じる

 3面  「日の丸・君が代」“強制は戦争への道”
     大阪 全国学習交流集会開く      

     反基地闘争の現場から
     沖縄平和運動センター 大城悟さんが講演
     奈良  

 4面  相模原事件についての声明
     私たちは優生思想による殺害を許さない
     「精神病者」を保安処分から守るために闘う

 5面  投稿
     川崎ヘイトデモ 10メートルも進めず!
     在日当事者のたたかいが阻む      

     投稿
     7月26日、相模原で起きた19人の「障害者」殺害について

     投稿
     『自衛隊の闇』を読んで
     大島千佳とNNNドキュメント取材班 著 河出書房新社 (2016年)
     元自衛官 山田三男

 6面  本の紹介
     強制労働から自由求め脱走
     『生きる 劉連仁の物語』

     改憲・福祉破壊とたたかう
     『展望』18号の紹介      

     夏期カンパのお願い

       

高江ヘリパッド
工事阻止 現地に結集を
全国各地で沖縄連帯行動

辺野古・高江に基地をつくるな

憲法、労働運動、生物多様性、地方自治などさまざまな観点から辺野古基地建設に反対する議論が提起された全国交流集会(7月31日 都内)

沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド工事強行をめぐって連日、激しい攻防が続いている。インターネットの動画サイトなどで、市民にたいして機動隊がすさまじい暴力を加えている場面を目の当たりにした人たちが全国から高江に続々と駆けつけ、座り込みに参加している。また各地で、高江のたたかいに連帯する行動が取り組まれている。現地に結集し、工事を阻止しよう。(3面に関連記事)

7月31日、東京・全電通会館ホールで「辺野古新基地建設断念を求める全国交流集会」がおこなわれた。主な発言を紹介する。

新たな段階へ

木村辰彦さん
(沖縄・一坪地主会関東ブロック)

県民のたたかいは新たな段階に入った。6月の県議選での翁長与党の勝利、参議院議員選挙での伊波さん勝利で沖縄の民意を示した。政府は大きな攻撃を仕掛けている。参院選翌日に高江に重機の搬入を強行し、500人の機動隊を導入した。1879年に1000人の軍隊を派遣しておこなわれた「琉球処分」、米占領下の「銃剣とブルドーザー」による軍用地強制接収を想起した。現地の行動の参加者はどんどん増えている。1972年以来の全国的なたたかいになっている。本日を出発点として大きなたたかいを作っていこう。

介入しないアメリカ

高野孟さん
(ジャーナリスト)

アメリカは日本政府に下駄を預けて(辺野古の)反対運動を蹴散らすのを待っている。「尖閣」周辺に中国公船が月3回程度行っていることについて海上保安庁に聞くと「頻繁なんです」と答える。中国側はその都度海上保安庁に通知している。中国側が防空識別圏を設定したことに、米側は「民間航空機もこの識別圏を通過する時は必ず中国側に通知せよ」としたことに怒っているだけだ。日本側とは防空識別圏の扱いについてルール作りの直前までいっていた。
2014年2月の日本記者クラブインタビューで在日米軍アンジェレラ司令官は「中国が尖閣を占領したら米軍は?」と問われ、「そのような事態を発生させないことが重要だ。もし発生したら、まずは早期の日米首脳会談を促す。次に自衛隊の能力を信ずる」と答えている。要するに米軍は何もしない。先島諸島の自衛隊駐屯地建設について、森本敏さん(元防衛大臣)は「実は、ソ連軍の機甲化師団が北海道に上陸するのを迎え撃って原野で戦車戦を展開する、というシナリオがなくなって陸上自衛隊にやることがなくなってしまって南西諸島にシフトした」と言っていた。辺野古基地建設を推進したのは実は米側ではなく陸上自衛隊。後で基地をいただくということだ。

埋め立ての法的瑕疵

桜井国俊さん
(沖縄大学名誉教授)

仲井真前知事が公約を裏切って埋め立てを承認したのにたいし、法的瑕疵を探すために第3者委員会をやっている。4点の瑕疵があることがわかった。政府は「公平な申し立てでない」というが、国は埋め立ての「必要性」を証明できなければいけない。県の海岸防災課にヒアリングしたところ、「必要性」についての証明がなかった。

沖縄からの訴え

仲村善幸さん
(名護市議会議員)

7月21日に高江の道路封鎖の報道があり、22日に強行してきた。ある人が「緊急事態条項の先取り」と言っていた。その通りだと思う。本土ナンバーの車両が並び、数百人の機動隊が並ぶなかで強行された。沖縄に戦争を仕掛けてきた。既に完成している「N4」で2年前からオスプレイが飛んでいる。「著しい影響はない」と環境アセスメントで言っていたが、防衛省の調査でも38回の騒音が発生している。夜間も2年前の24倍の騒音になっている。ある家族は国頭村に避難した。米海兵隊の「戦略展望2025」では、「沖縄北部が目まぐるしく変化する」「使用不能基地を返還し、新たな基地が使える。理想の訓練場になる」と書かれている。候補地の選定理由が「米軍の運用上必要だから」とされている。国はテントの撤去は法的に不備だったと認めている。裁判だけに頼るわけにはいかない面がある。決めるのは現場のたたかいと全国のたたかいだ。

伊波洋一さん
(参議院議員)

私も皆さんとともに頑張る。辺野古移転計画にかつては県知事・県議会ともに推進の立場だったが、私は市長の立場で反対してきた。参院選で現職大臣を破ったのは皆さんのおかげだ。糸数さんと新会派「沖縄の風」を立ち上げた。私は外交防衛委員会でたたかう。 そもそも普天間の危険性を作ったのは誰なのか。終戦後に2800メートルに延長されたが、航空法上の飛行場ではない。作った根拠を聞きたい。私が市長在職中は国側から普天間の危険性など一言もなかった。政府はフェンスの内側にいて私達と対峙している。

“機動隊はすぐ帰って来い”
大阪府警本部に抗議

沖縄の高江で「N1ゲート裏テント」の強制撤去が6日以降狙われるなか、現地では5日夕方から総決起集会が開かれた。このたたかいと連動して同日同時刻「府警は沖縄からすぐ帰って来い! 緊急行動」が大阪府警本部前でおこなわれ、40人を超える人々が声をあげた(写真)。呼びかけは〈STOP! 辺野古新基地建設! 大阪アクション〉。

高江、辺野古と連帯
戦争あかん! ロックアクション
大阪

8月6日午後4時、大阪市内で「戦争あかん! ロックアクション」の集会が開かれ、終了後、難波に向かって御堂筋をデモ行進した(写真)。集会では広島・長崎の原爆犠牲者に黙とうをささげた。

野党共闘を強固に

主催者あいさつでロックアクション共同代表の古かく荘八さんが「戦後71年、平和憲法ができても、いまだに米軍基地がある。沖縄では辺野古新基地、高江ではヘリパッドの建設工事が強行され、いよいよ憲法を変えようとしている。憲法改悪阻止のたたかいを強めよう」と発言。
全港湾大阪支部委員長の山元一英さんは「参議院選は、大阪では負けたが全国の1人区で野党共闘は勝利した。TPPはアメリカ国内でさえ、農民、労働者に反対の動きが強まっている。9月にTPP反対の集会を準備している。安保法制強行成立から1周年になる9月19日、靭公園で5千人規模の大集会を総がかり行動として準備している」と運動の展望を語った。

沖縄と京丹後の連帯

続いて沖縄の高江、辺野古についてジュゴン保護キャンペーンセンターが報告した。 京丹後Xバンドレーダー基地反対運動の報告につづいて、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークから方清子さんが発言。8・14日本軍「慰安婦」メモリアルデー集会への参加を訴えた。
最後に大阪市の水道民営化問題について、水政策研究所から発言。橋下徹が府知事のときに「水道の府市統合」案が出て頓挫するや、今度は「水道の民営化」という話が突然出てきた。大阪市議会で継続審議中。

2面

被爆71年、核と戦争の廃絶へ
“8・6ヒロシマ平和の夕べ”に参加して

250人が全国から集まった(8月6日 広島市内)

8月6日の広島は暑い。空を見上げると灼熱の太陽。被爆者の1人は、「あの日、2つの太陽を見た」という。
今回で9回目の「8・6ヒロシマ平和の夕べ」。今年は、原爆の体験、被爆証言が重なった。敗戦後71年、体験の語り手は高齢化し、その証言はますます貴重になっている。私自身、学生時代に原爆の語りに衝撃を受け、生き方考え方の方向転換があった。語ってくれた女性は、「真夏なのに毛布を被っても、高熱が出て寒さに苦しんだ。その後も熱が出るたび、もがき苦しんで死んでいった多くの人と同じように自分も死ぬのだという恐怖にさいなまれる。若い人がたくさん私の話を聴きにきてくれる。熱をおして話にきた。話すことが私の使命なのです。聞いてほしい」と …。
集会は中沢啓治さん作詞の『広島愛の川』の歌で始まり、古川悦子さんのピアノに重ねられ、怒り、悲しみ、優しさがヒロシマから世界へ流れ、語り伝えられ、強まるイメージに会場が包まれ開幕した。

しかし、私は生きている
池田精子さん

池田精子さんは、12歳で被爆した。顔や身体に大けがを負い、皮膚移植など10数回の手術を受けた。原爆で家族と健康を失い、顔を損ない、女性としていわれない差別を受ける。生きる希望を失うまでに追いつめられる。しかし彼女は、自分と向かい合う。その体験を多くの人に知ってもらい、再びこのような惨事を招くことのない世の中をつくる。それが自分の使命と自覚する。そしてアメリカへ。
アメリカの講演で、若者の反応は感動的であったという。「知らなかった」「米国民としてお詫びする」。涙を流して自分のブレスレットを彼女の手にかけてくれる人もいた。その経験で米国にたいする憎しみを乗り越えることができた。原爆による巨大な負の遺産。「しかし、私は生きている」「被爆者自身が原爆を語り、核のない世界の実現をめざすのだ」という。

福島の現実と向き合う
森松明希子さん

森松明希子さんは東日本大震災、そして福島第一原発の大事故のとき、1歳にならない女の子、3歳の男の子、夫と福島県の郡山市に暮らしていた。医療従事者で現地に残る夫と離れ、子どもといっしょに関西に避難する道を選んだ。森松さんは、8月6日の広島で訴えた。
「原発事故に対する政府の姿勢に疑問が膨らむ。『直ちに健康に影響はない』というが、水道水の汚染が明らかとなり、それを飲む母親からの授乳で赤ちゃんが体内被曝する。政府の定めた汚染区域は避難が認められるが、区域外の者が自分の判断で避難しても、単なる転居の扱いにしかならない。生活や子育てもすべて『自己責任』」。
森松さんはたまたま実家が関西、親戚もいる。避難場所を関西に選ぶことができたが、福島が地元、県外にツテのない人たちは避難したいと思っても、避難するところがない、決断ができない。「火事や洪水、津波など危険が迫れば避難するのは市民の当然の行動、権利でもあるのに、目に見えない放射能の危険から避難ができないのは基本的人権の侵害だ」。
「放射能の影響を受けやすい子どもに、汚染されているのがわかっている土地に戻れとは言えない。避難した人たちに、『風評被害を煽る』などと非難する者が後を絶たない。避難したくてもできない人たちが多数いるのに、何の手も打たずに放置している責任を東電や政府に問わず、矛先をこちらにもってきて分断する。許せない」。
「私たちはヒロシマ・ナガサキの被爆者の存在、運動が大きな支えとなっている。ヒロシマ・ナガサキの被爆者のみなさんが伝え、訴え、苦闘されてきたことに励まされている。池田さんは『しかし、私は生きている』と言われた。私も、福島の現実と向かい合っていく」。

原爆を子どもたちに伝える
那須正幹さん

平和講演は児童文学作家の那須正幹さん。広島で被爆。3歳のときでよく憶えていないが、と言いながら思い出すことを話した。中学生のとき集団検診で「精密検査を要す」と言われ、初めて自分が被爆者だということを自覚した。児童文学の道に進んだが、原爆が文学になるとはなかなか思えず、被爆を題材にすることを考えていなかった。広島を離れ、自分の子どもができて原爆を書こうと思い始めた。
平和の折り鶴で知られる佐々木禎子さんのノンフィクションを手がけようと友人に取材すると、口々に「大人たちにだまされた」「ワシはあんなものつくらせとうなかった」など言っていた。真実を書けるのは被爆者である私だ。そう思い、2年間かけて書き上げた。書き進めていくにつれ、いかに自分が原爆を知らなかったか痛感した。
福島の学校へ話しに行ったとき、生徒代表に「私は30歳ころまでには死ぬと思っていたけど、那須さんは70を超えても元気。私たちは勇気づけられました」と言われた。年端のいかない子どもたちが30歳まで生きられないと思っている現実に、胸がしめつけられた。福島で起きていることは、ただ事ではない。
原爆の語りを聴き、かわいそうだと泣いた児童が「自分は元気だから幸せだ」という。そうじゃないんだ。原爆は地震や台風ではない。人がやったこと。再来年は明治150年。何が素晴らしいもんか。最初の80年は戦争に次ぐ戦争。物語ではかわいそうな子どもたちが描かれるが、「すすんで戦争へ行きたがった子どもたち」の実像を書かなくてはならない。「もちろん重い話ばかりじゃ売れやせんから、おもしろい話もところどころ入れてね(笑)」。事実を飾ることなく率直な語り口で話す那須さんの話に引き込まれた。

生かされた命で

米澤鐡志さん(写真右)が「まとめ」のあいさつ。最初の集まりに、被爆電車の話をさせてもらってから9回目。毎年、実践にもとづく人たちの話を聞いてきた。私はいま、丹後半島の米軍基地反対にとりくんでいる。広島、沖縄と連帯し、この運動を継承していかなくてはならない。爆心750メートルの電車内で被爆し生きている人間は、私以外に誰もいなくなった。私は生かされていると思う。生かされた命で世の中を変えていく。
最後に、ピアノとフルートによる「東日本大震災のための追悼曲」。津波に飲み込まれるかのような不安感から、静けさへと導かれた。参加したある人に聞くと、「広島の原爆と、福島の被曝が深く表現されていた」という。(藤谷弘)

最高裁が上告棄却
経産省前テント撤去命じる

国が経産省前の脱原発テント撤去を求めていた裁判で、最高裁は7月28日、市民側の上告を棄却。テント撤去を命じた判決が確定した。経産省前テントひろばは8月2日、声明を発表した。(以下、声明全文)

テントひろばが声明

7月28日最高裁小法廷(大谷直人裁判長)は、私たちの上告に対する棄却決定を行いました(8月1日に送達)。
私たちのささやかな願いを踏みにじり、テント撤去と損害賠償を認めたということです。これは、誠に残念ながら、最高裁もまた、司法の厳正なる立場を放棄して、経産省・国の政治的な意向を全面的に追認したことになります。
私たちにとって、この決定は想定された範囲とはいえ、断じて認めることができないものです。私たちは改めて大きな怒りと抗議の意志を表明すると共に、経産省前テントを守り、脱原発の闘いを引き続いて推し進める決意です。私たちが自らの意志で経産省前テントを撤去することはありません。
しかし、この最高裁決定によって、経産省・国の側は、法的には一切の憂いはなくなったということになるのでありましょうか。東京高裁が控訴棄却をしたのは2015年10月26日でした。少なくともそれ以降、経産省・国側はいつでもテントの撤去等の強制的執行ができたはずです。現に損害賠償については被告の預金口座の差し押さえなどを行っています。
にもかかわらず、今日まで及んだのは、判決の内容にも仮執行についても、そのような判決を得たにしても、テント撤去を強制するいささかの自信も持ち得なかったからではないでしょうか。これは最高裁決定が出たからと言って直ちに大きく変わるものではありません。
もとより経産省前テントをめぐる私たちと国との争いは、決して司法的場面に限られたものではなく、また、脱原発の問題だけに関わっていたのではなく、極めて深刻な政治的争いを抱えていたものだったからです。
先だっての参議院選挙の結果や、都知事選の結果で、国の側は多少の自信を持ったかも知れません。今、国は米軍基地をめぐる沖縄県高江へのなりふりをかまわぬ攻撃に出ていますが、これに対して沖縄の人々は命をはった闘いを繰り広げています。
他方、鹿児島県知事選では脱原発の知事が誕生し、川内原発の停止の申し入れが行われる予定であり、また、川内原発に続いて再稼働をさせた関西電力高浜原発は大津地裁の仮処分によって再び停止し、その後の関西電力の異議申し立ても認められなかったのです。再稼働を目前にした伊方原発においても、初歩的なポンプトラブルが露呈し、決して予定通りに進んでいません。
私たちは、7月28日の最高裁決定をもって経産省・国側がどうしようと、いささかもたじろがず、粛々とテントを守り、脱原発の旗を高く掲げて闘い続けることを表明するとともに、あらためて全国の皆さまに闘いの継続を呼びかけるものです。

3面

「日の丸・君が代」“強制は戦争への道”
大阪 全国学習交流集会開く

7月24日、『日の丸・君が代』問題等全国学習交流集会が大阪市内でひらかれ、全国から150人が集まった。毎年8月に開催されるこの交流集会は昨年まで東京で開かれてきたが、第6回目となる今回、はじめて大阪での開催となった。題して、「たたかいを全国から大阪へ、大阪から全国へ」。主催は集会実行委員会。

「たたかいを全国から大阪へ、大阪から全国へ」天神祭の中をデモ行進(7月24日 大阪市内)

停職6カ月を取り消し

午前中の第T部は、各地からたたかいの報告がおこなわれた。
神奈川、千葉、東京、兵庫、福岡、宮城から報告。さらに、昨夏結成された〈許すな! 「日の丸・君が代」強制 止めよう! 安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク(ひのきみ全国ネット)〉が発言。
東京からは6本の報告があった。根津公子さんは「6カ月停職処分を取り消した東京高裁判決」が最高裁で確定した画期的勝利を報告。昨年5月東京高裁(須藤典明裁判長)は、2007年「君が代」不起立処分取り消しと損害賠償を求めた事件で、河原井純子さんの停職3カ月処分取り消しだけでなく、根津さんの停職6カ月処分の取り消しと河原井・根津さんの損害賠償(各10万円)を認める判決をだした。敗訴した都は、根津さん停職6カ月処分(河原井さんの処分取り消しについては上告せず)と2人の損害賠償について、上告及び上告受理申し立てをしていたが、最高裁第3小法廷は今年5月31日付けで、都の上告を棄却し、上告審として受理しないことを裁判官全員一致の意見で決定した。

『オリンピック読本』

第T部の最後は、特別報告「都教委『オリンピック読本』(以下、『読本』)と『君が代』強制教育」を高島伸欣さん(琉球大学名誉教授)がおこなった。
『読本(小学校編、中学校編、高校編)』は、公私を問わず都内のすべての生徒に配布され、費用は1億円かかっている。この『読本』にはウソが書いてある。IOC(国際オリンピック委員会)憲章は1980年に改正され、「日の丸・君が代」は、あくまでも「選手団の旗・曲」とされ、それまでの「国旗・国歌」としていた規定はオリンピック精神に反すると認識されている。したがって、世界の大半の選手団がそれぞれの国旗や国歌とほぼ同じものを組織委員会に登録したうえで使用していても、それらはオリンピックの場ではあくまでも「選手団の旗・曲」にすぎない。
ところが都教委作成の『読本』には「開会式で選手たちが自国の国旗を先頭に行進します。表彰式では、優勝した選手の国の国旗をかかげ、国歌を演奏します」と書いてある。さらに表彰式の写真説明でも「国歌とともに国旗がけいようされる。表彰式の国旗けいようでは、国歌が流されます」と繰り返し記述している。これらは一般の人びとが気づいていないのをいいことに、明らかにIOC憲章違反、オリンピックの基本精神を歪め、ウソの知識を児童・生徒に植え付けることで、「国旗・国歌」を強調し、誤った「愛国心」を植え付けるのに、オリンピックを利用するものだ。

憲法9条がなくても

午後のパネルディスカッションは、「『戦争法廃止』とむすび、地域・学校から『日の丸・君が代』強制に抗う」と題して、弁護士、高校教員、保護者、元高校生、元教員が登壇しおこなわれた。永嶋靖久弁護士は、裁判というものは、あくまで憲法・法律のわく内で争っている。「日の丸・君が代」強制は明らかに憲法違反であり、人権侵害であるが、憲法違反だから「君が代」不起立するわけではない。教え子を戦場へ送らないために、「日の丸・君が代」強制が戦争への道だからたたかっているのであり、仮に憲法9条がなくてもこのたたかいは重要であり正しいと提起した。
第V部は、大阪からの報告。処分撤回をたたかう大阪市の教員、戒告処分撤回共同裁判(原告7人)、再任用拒否撤回裁判(原告3人)、処分撤回をたたかう府立支援学校教員・奥野泰孝さんら3人の教員、高槻市「日の丸」常時掲揚反対闘争、育鵬社教科書の不正採択(大阪市)撤回の取り組み、などが報告された。

運動が理論をつくる

「まとめと課題提起」として、以下5点が提起された。 1、たたかいの成果を全国にひろめる。特に、東京の須藤判決(河原井・根津裁判)と大阪の弁護士会の勧告書を。
2、大衆運動と裁判闘争の結合。大衆運動が、裁判闘争に勝ち人権を確立する新しい切り口や理論を創り出す回路である
3、慣例上の儀礼的所作は国家神道を引きずった宗教行為であり、憲法違反である。
4、東京都のオリンピック・パラリンピック副読本における国旗国歌の扱い方の批判
5、これからの課題
▽道徳の教科化、高校の「公民科」「総合歴史」問題
▽高校生らへの「政治教育・政治活動」と教師の「政治的中立性」、密告制度批判
▽陸上自衛隊の新しいエンブレムと高校生の自衛隊リクルート、経済的徴兵制批判
▽各地の課題の集約と文科省交渉
▽全国各地での生徒・教職員・住民へのビラまきと教育委員会交渉
▽情報と全国交流

天神祭の中をデモ

集会アピールを採択してデモへ。デモ行進は、会場(エルおおさか)から天神橋を渡り、米領事館を経て大阪市役所まで。沿道は天神祭の宵宮で多くの屋台・出店で人波ができ、家族連れや観光客の注目を浴びた。米領事館にたいしては「辺野古新基地、高江のヘリパッド建設強行をやめろ」とシュプレヒコールを浴びせた。

反基地闘争の現場から
沖縄平和運動センター 大城悟さんが講演
奈良

7月31日、「沖縄を他人事だと思っていませんか! 沖縄の思いをつなぐ奈良集会」が奈良県人権センターでひらかれた(主催:奈良沖縄連帯委員会、沖縄の高江・辺野古につながる奈良の会)。沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さんが講演した。
大城さんはキャンプ・シュワブのゲート前でたたかっている。日々の攻防を運動家の眼で冷静に見すえ、切り開いたたたかいに確信をもって、その意義を語った。大城さんは、@高江のたたかい、A辺野古のたたかい、B法廷でのたたかい、C今後のたたかいについて、つぎのように語った。

高江のたたかい

高江のヘリパッド建設は、1996年〈SACO合意〉(注1)のなかで北部訓練場の返還条件として出てきた。政府は隠しているが、このヘリパッド(直径75m)はオスプレイの訓練場として作られる。米軍は不要になった地域を返すかわりに、訓練に必要な新たなヘリパッドの建設を要求している。まさに基地の強化そのものだ。日本政府は米軍の要求どおりに、このヘリパッドを作ろうとしている。
マスコミでも報道されているように、7月11日から高江で工事が始まった。すでにN4地区の2つのヘリパッドは作られている(注2)が、さらに4つのヘリパッド建設が計画されている。自然がいっぱい残っている森を切り開いて作ろうとしている。

辺野古のたたかい

辺野古のたたかいについては、2014年7月からキャンプ・シュワブのゲート前で、すわりこみが始まっている。また、海上でも激しくたたかわれている。このたたかいによって、工事は計画どおりに進んでいない。
辺野古は普天間基地の代替ではなく、新基地建設だということだ。けっして移設ではない。新たな基地は作らせないということを、われわれは実力行動のなかで示してきた。

法廷でのたたかい

法廷闘争については、2015年10月に翁長沖縄県知事が埋め立て承認を取り消したことから始まった。2016年3月に国と県は暫定的和解をしたが、この7月22日に国は違法確認訴訟をおこした。
8月5日に、この裁判の第1回口頭弁論が開かれる。国はこれで結審し、秋に判決というプランを考えている。司法に判断を出させて、「判決に従え」と工事を強行したいのだ。裁判の和解条項は埋め立て承認に関するものであり、たとえ裁判に負けたからといって、われわれは新基地建設反対を諦めるわけではない。

今後のたたかい

参議院選挙で伊波洋一さんを国会に選出した翌日、国は工事を開始した。沖縄の民意を無視した国のやり方はほんとうに許しがたい。7月19日には、高江に500人の機動隊を全国から動員した。この人数を考えると、高江だけではなく辺野古の工事再開も狙っているようだ。国は「三正面戦略」を考えている。高江、辺野古、法廷で、同時並行的に突破しようとしているのだ。
これくらいの事で私たちの決意を止めることはできない。きびしい状況にはなってくるが、あきらめたら負け。国も簡単には工事を進めることはできないのだ。現場の攻防では、われわれは落ち着いて対応していく。工事を止めるためには、人数が決定的だ。一人でも多くの方が高江、辺野古に来てほしい。自分たちの未来を自分たちの力で作っていく。全国のさまざまな運動と連携して、安倍政治を止めよう。
以上が、大城さんの講演内容。大城さんの訴えに応え、沖縄現地に駆けつけ、各地で沖縄のたたかいに連帯した行動を起こしていこう。

(注1)沖縄基地に関する日米特別行動委員会(SACO)の合意。
(注2)N4の2つのヘリパッドは、2007年7月に工事を開始し、2014年3月に完成した。

4面

相模原事件についての声明
私たちは優生思想による殺害を許さない
「精神病者」を保安処分から守るために闘う

私の所属する患者会が、7月26日未明に発生した、相模原市の「津久井やまゆり園」で、しょうがい者19人を殺害した事件についての声明を出した。その全文を紹介する。(高見元博)

事件で亡くなられ方々の御冥福をお祈りし、傷ついた方たちの回復を願う。
事件についての情報は警察等によって小出しにされており、十分に解明されていない。その中で「精神病者」が追い詰められた気持ちになっている状況を、何としても打開したい。
事件は差別される者を狙った「優生思想」の確信犯による許し難い凶行だ。追随犯が「精神病者」を狙うかもしれない。それにも拘らず政権や、東京新聞等を除くマスメディアの多くは措置入院制度の強化に話をすり替え、連日の池田小事件を連想させる「『措置入院患者』=『精神病者』は危険」という差別キャンペーンだ。措置入院制度を保安処分的強化に利用しようとしている。このようなヘイトの確信犯が生まれた背景には、維新の会の議員が当選し、改憲派が衆参両院で3分の2を超え、東京都知事に右翼の小池が当選するという社会全体の右傾化があるのではないか。政府関係者からは殺害の動機になった優生思想への怒りの声は一言も聞こえてこない。「歪んだ考えに基づくテロリズム」に対する怒りの表明も一切ない。石原慎太郎は東京都知事時代に知的しょうがい者に対して「この人達に人格はあるのかね」と、財務大臣の麻生太郎は「ナチスの手口に学んだらどうか」「政府のお金で(高額医療を)やってもらっていると思うと、ますます寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろ考えないと解決しない」と発言。「安楽死」を進める連中と全く同じ思想なのだ。

事実経過と事件の特徴

@ 7月26日午前2時ごろ、相模原市の神奈川県立津久井やまゆり園に侵入したU(26歳・男性)が刃物を使い、入所者の知的などの「重複障害者」で「意思疎通できない」とみなした男女を19人殺害、26人に重軽傷を負わせた。施設職員を結束バンドで縛り、2人がケガをした。職員は刃物では傷つけられていない。
AUは2012年から2016年2月まで同施設で働いていた元職員。「障害者は安楽死させなければならない」などと主張し同施設を退職していた。
BUはノルウェーで、2011年7月22日政府庁舎を爆破し、また社会主義者を銃撃して77人を殺害したナチス信奉者のタイプの思想的確信犯であると思われる。
C計画的に準備し、計画通りに犯行を行っている。いかに大量に殺すかを計算している。深夜2時という寝静まった時間帯の犯行、結束バンドで職員を縛る、ハンマーやナイフ・刃物を5本用意するという準備周到さと計画性。しかも、2月の衆院議長宛て文書でその計画を明らかにしている。4月に知人をしょうがい者殺害の共犯となるように誘っている。
D「意思疎通できない重複障害者は安楽死をさせなければならない」という思想的確信のもと犯行を行った。その施設の職員であった時期にも入所者への暴行を繰り返していた。施設職員であった時に衆院議長に「障害者を安楽死させる法律を作れ」という文書を渡した。施設で「障害者は安楽死」と発言し、「ヒトラーと同じ思想だ」と批判され、退職させられた。
E「心神喪失」と診断されれば2年で自由になれると思っていた。(衆院議長宛て文書)
Fこのような大量殺人が可能になった背景には、しょうがい者が地域社会の中で暮らせず施設に集められていたという事情もある。
Gそれにも拘らず、警察は精神医療で対応しようとした。精神医療の保安処分的利用である。2月18日、衆院議長あて手紙の一件で、「他害のおそれあり」として、北里大学東病院に緊急措置入院(医師1人による診断で72時間拘禁できる)させた。入院後の尿検査で大麻反応が出たので、措置入院(医師2人の診断により期間の定めのない拘禁ができる)とし「大麻精神病」「妄想性障害」等という病名をつけた。しかし、Uの計画性や犯行の準備性は「精神病」による犯行とは結び付かない。「心神喪失」状態下での犯行ではない。Uは知人にこの強制入院(13日間)のことを「いやぁきつかったっす」「医者を騙して出た」と語っている。
H3月2日、大麻反応が消えたことと、「反省の言葉があった」ことで措置は解除された。Uはその後2回同病院に通院したが、3回目の予約には来なかった。相模原市は市外の親と同居すると聞いて、保健所、警察、同施設等には退院を知らせなかった。
I精神病ではない者を精神医療で解決しようとした根本的・本質的無理さから、精神保健福祉法を保安処分的に使うことは破綻した。

政府はどう動こうとしているのか

「事件を受け、厚生労働省は27日、…『措置入院』の制度や運用について、見直しを検討する方針を固めた。厚労省は容疑者の入院後、関係機関の情報共有や連携が十分だったか検証した上で、有識者検討会などをつくることも視野に入れている。塩崎恭久厚労相は27日、事件現場を視察後、措置入院を巡る対応について『警察、自治体、施設の連携が適切だったか、検証しなければいけない』と指摘した。」(共同通信 7・28)
「安倍晋三首相は28日、…事件に関する関係閣僚会議を官邸で開き、事件の真相究明や施設の安全対策強化、措置入院後のフォローアップを早急に実施するよう指示した。 首相は会議で…塩崎恭久厚生労働相、河野太郎国家公安委員長らに『さまざまな観点から必要な対策を早急に検討し、できるところから速やかに実行に移していくように』と指示した。厚労省などは今後、施設の安全対策や精神疾患によって『自傷他害の恐れ』がある場合、本人や家族の意思にかかわらず強制的に入院させる『措置入院』のあり方などを見直す。河野氏は会議後、記者団に「措置入院などのあり方を厚労省中心にしっかり再検討する必要がある。警察もしっかりとそれに対応をしていきたい』と語った。」(産経新聞 7・28)

精神科医に意見を求めた

@ A医師の意見 「妄想性障害」は統合失調症性のものと、パーソナリティ、性格性のものがある。今回のケースは統合失調症とは思えない。パーソナリティ性のものは薬は効かず副作用ばかり出る。精神科医は対応するが「反省」があれば治療を止めるのは当たり前。今回のケースは、もともと措置入院にしたことに無理があったのではないか。反省したら出すのは当然。
AB医師の意見
「狂信者」と精神しょうがい者を混同しないことが必要だ。彼の行動をしょうがいを持つ仲間の行動のように感じてしまう傾向は否定しておく必要がある。今の時点では、薬物の力を借りて「狂信」を実行に移したとんでもない奴に過ぎない。
彼が「日本国のために」と言って事件を起こしているので、国は彼の「狂信」を明確に否定するメッセージを発しておく必要があるのでないか。臨時国会の冒頭で超党派的に、しょうがい者の生きる権利を擁護することを明確にする声明を議決していいのではないか。
B C医師の意見
「しょうがい者は死んだ方が良い」という社会にある差別意識・優生思想を実行に移したということで許し難い事件だ。同時に、犯した犯行で「精神しょうがい者を取り締まれ」という攻撃も、精神しょうがい者に対する締め付けが、池田小事件の時のように行なわれていることもしょうがい者に対する攻撃だ。措置後の取り締まりを強化する方向に向いているのは危険だ。

しょうがい者には2つの問題が投げかけられている

@「安楽死」を実行し大量殺人する人物が日本でも現れた。ナチス・ヒトラー以来のこと。「ビューティフルジャパン」という思想は国粋主義者であることを匂わせている。「革命家」を自称しているが、体系的な思想を持ったファシストであるかどうかは情報がない。日本で計画されている「尊厳死」・「安楽死」法制化の先取りだ。欧米では「安楽死」法がすでに実施されているところがある。「在特会」等差別思想で被差別民衆を「殺す」と言っている連中は他にもおり、追随犯が現れる可能性がある。反「安楽死」「尊厳死」運動、反優生思想を強めないといけない。
A計画的確信犯を精福法で対応しようとして破綻したことをどう見るか。政権は精福法を保安処分法として強化しようとしている。東京新聞等一部を除き、NHK、朝日社説など大部分のマスメディアは、措置入院後の警察の介入を制度化すべきという論調だ。精福法の改悪による警察との連携強化、措置解除後も監視と管理を強化するという方向に世論を誘導しようとしている。しかし、池田小事件を口実にして、事件を起こした「精神病者」に適切な治療を施すと称して作られた「心神喪失者等医療観察法」は、何らの治療的効果をあげることもなく、多くの自殺者と長期入院者を生みだし、収容者に不必要な苦痛を与える保安処分法として運用されている。思想的確信犯を「治療する」ことなど不可能なのだが、精神医療を「思想改造」に使おうというのだろうか。
また、今の精神医療の現場には、「措置入院後の対応の強化」が可能な余力があるだろうか。年間数千人の措置解除後の対応の強化など今の体制では不可能だ。結局は、精福法を保安処分体制、犯罪予防に特化させる方向に大きく転換するのではないか。ますます地域自立生活に使われる予算が削られて、「精神病者」にとっては隔離・収容・抹殺の攻撃が強められることになる。今でさえ地域自立生活に使われる予算と、隔離・収容に使われる予算の割合は5対95だ。しかも、「医療観察法」には他の精神医療全般に比して異常に高額な予算が配分されている。
私たちは優生思想にも保安処分にも反対する。私たちは徹底的にしょうがい者、「精神病者」に寄り添い、優生思想による襲撃と保安処分から守り抜く。
8月31日(水)16時〜18時、厚労省前行動が提起されている。全国各地で共に闘おう。

5面

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川崎ヘイトデモ 10メートルも進めず!
在日当事者のたたかいが阻む

「デモは中止になりました。速やかに歩道に上がってください」と、6月5日午後1時すぎ警察車両からアナウンスが流れ、沿道を埋めた抗議の人々から大きな拍手がわき起こりました。
在日の街「桜本」にあって、ヘイトデモに抗議してきた在日3世の崔江以子さんは、
「絶望が今日、希望で上書きされました。これまで、もう子どもたちやハルモニをヘイトスピーチに触れさせない、根絶すると約束してたたかってきました。桜本の思いが国会に届き、法整備がされ、私たちの尊厳が初めて大切にされました」と語っていました。

在日一世のデモ

昨年(2015年)の夏、「戦争法はだめ」として川崎市川崎区桜本に住む在日一世のハルモニたちが「自分たちもデモに行きたいが足が痛いから行けない。それならこの街でデモをしよう」と、ほんとうの手作りの800メートルのデモを呼びかけ、多くの市民もかけつけ200人のデモとなりました。こうした取り組みがこのたたかいにつながったのです。

川崎最初のヘイトデモ

2013年5月に「在日特権を許さない市民の会」系の差別団体がおこなったのが、川崎の最初の集会とデモでした。その時は川崎駅の近くでのデモでしたが、昨年11月と今年2月には、居住地である「桜本」を直接ねらったまさに襲撃とも言えるものでした。
「ゴキブリ朝鮮人は出ていけ」「じわじわ真綿で首を絞めてやる」などの差別暴言! そうした事態にもかかわらず、市当局は「人権侵害が頻発しているとは思わない」「規制するルールがない」として差別集会を許可し、警官隊もデモをカウンター行動から守る形となり、2月のデモの際には、デモコースに桜本地域への進入を認めてしまいました。その時は、多くの人々が桜本につながる交差点に寝ころび、身を挺して、実力で桜本への進入をやっと阻止したのでした。

市民ネット結成

こうした状況を一転させたのが、江以子さんたち桜本を中心とする在日当事者たちのたたかいでした。中学1年の息子さんも発言し続けています。そして多くの川崎市民が加わり「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」が形成されたのでした。
集会や3万筆以上の署名運動を取り組み、参議院法務委員会での参考人陳述、同委員らの桜本訪問、川崎市との話し合い、横浜地方法務局川崎支局への切実な申告など、在日当事者自身が先頭に立って、こうした行動を取り組んできました。そしてついに5月24日「ヘイトスピーチ解消法」が不充分ながらも制定されたのです。これをもとに、川崎市が公園の使用を許可せず、横浜地裁川崎支部が、ヘイトスピーチを「不法行為」と規定、桜本地域への「接近禁止」を決定しました。

座り込みで阻止

しかし、ヘイト団体は、6月5日のデモを川崎区から中原区内に変更して申請、県公安委員会が許可してしまったのです。当日になって、デモの出発を阻止しようとデモ隊の前に座り込んで反対行動。これに県警は対応できず、デモはついに「中止」となったのでした。
しかし、「市民ネットワーク」は、「ヘイトスピーチ根絶のたたかいは、これからです」と言っています。
「法ができた」といっても、ヘイトスピーチやヘイトデモはなくなりません。実際、この法は「国際人権条約」の基準にも達していないのです。これだけで解決などできません。市民立法として「川崎市外国人人権差別解消条例(仮称)」を成立させる取り組みを軸に、私たち市民運動のさらなる推進が「かぎ」となると思います。全国のたたかいに学んで、さらに進んでいきましょう。(深津利樹)

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7月26日、相模原で起きた19人の「障害者」殺害について

この事件は介護を職業とする私にかぶる、かぶさってくる。
この事件はALS(筋萎縮性側索硬化症)を生き抜く人の介護中に、ラジオのFM放送で知った。「テレビ、つけますね」と言って、ニュース番組をふたりで見た。テレビ画面では、居並ぶ者たちが口々に「理解できません」「ひどいことを」「許せません」と語気強く言う。無性に悔しい。やはり、「障害者」「病者」の介護にかかわる者に、この事件、殺されたひとたち、殺した者がかぶる。かぶさってくる。

事件の翌日、介護車両を回送しながら、同僚と話し合った。
同僚「他人ごとではない」。
私「自分が介護で関係する人たち、介護現場、殺害した者までが、自分と、かぶる」。
同僚「かぶりますね。だがそう言うとまわりの友人たちは、『あいつをかばうのか』 と言います」。
私「俺は、奴をかばわない。擁護しない」。
同僚と私「だが一方で批判して、それですまされない」「何より、『障害者』を殺さない。虐待しない。介護の中でも、外でも、いっしょに生きる」「続きはまた皆で話しましょう」。と別れた。
8年前、ALSを生きる人を知り、希望し、受けいれられて、私は介護を職業とするようになった。その時かよった専門学校の先生が言った。「介護の世界は戦場です。ヘルパーがばたばた倒れます。そのような場所にあなたがたを行かせるために、私は授業をやります」あまりに激しい比喩だった。あれから8年間の介護現場で、多くの同僚が体をこわし、精神をこわし、介護の「戦場」を去った。いなくなった。
介護は元来、この社会の人と人とのあり方そのものだと思う。本人の近親者や仲間による介護であれ、介護職によるものであれ、またその場が施設であれ、「在宅」であれ、社会の在り方だと思う。その社会の在り方が、この国の政策に与する者によって、攻撃され、破砕された。この国の政策である「障害者」「病者」にたいする、差別―生命の選別、分断・隔離、虐待・抹殺が、破砕された介護の場からあふれ、のしかかってきている。
今、やろうと思うこと―日々、仕事の中でも、外でも、「障害者」「病者」とともに生き抜いてゆく。「障害者」「病者」の全人格、すべてのありかたと自分自身のそれをともに実現する。
いちど、介護を担うもの、「障害者」「病者」、皆で集って話をしてみたい。この事件を「理解できません」「ひどいことを」「許せません」と言う身近な人々と話をしてみたい。そこから始めていきたい。
2016年7月27日
唐住 日出男

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『自衛隊の闇』を読んで
大島千佳とNNNドキュメント取材班 著 河出書房新社 (2016年) 元自衛官 山田三男

2004年10月27日、ミサイル護衛艦「たちかぜ」(2007年の退役まで護衛艦隊の旗艦)の乗員、T一等海士は電車に飛び込み自殺した。本人は遺書でいじめを書き連ねていた。

隠された真実

しかし、自衛隊側は自殺した原因を捻じ曲げて、いじめ、艦内の規律の乱れを押し隠し、「あくまで本人が風俗通いした挙句の借金苦」と、死んだ後まで本人を侮辱した。これにたいし遺族は怒り、2006年裁判に訴えた。
自衛隊側は、請求された関連する証拠類を「破棄した」などと嘘をついて隠し、その結果2001年の第1審では自殺といじめの因果関係を認めなかった。家族は、納得せず控訴した。2012年4月、当初被告(自衛隊側)代理人だった海上自衛隊3等海佐が一身に降りかかる自衛隊からの重圧に抗して、「自衛隊側は重要な文書を隠している」と証言した。これにより、2014年4月、控訴審は逆転勝訴した。
「たちかぜ」裁判について、強い関心を寄せていたこの本の著者大島千佳さんは、番組製作会社に入社して間もない新米ディレクターとしてNNNのドキュメント番組を執念をもって製作した。
NNNドキュメント「自殺多発…自衛隊の闇 沈黙を破った遺族の戦い」は、第1審直後に放送された。また、2014年第2審直前に、証言した3佐を扱ったドキュメント「自衛隊の闇 不正を暴いた現役自衛官」を放送した。その経過をまとめたのが、『自衛隊の闇』である。

希望をもらった

この本のあとがきに、著者は次のように書いている。「3佐に出会えたことは、私の人生を大きく変えました。間違っていることを間違っていると指摘する当たり前のことが難しくなっている今の世の中で、3佐が示した道筋は、社会に勇気を与えてくれました。私は、この先の未来に、生きる希望をもらいました。その生きざまを、胸に刻みます。」
現在、日本ではファシズムがすぐ目の前まで近づいている。「組織に逆らうな、長いものに巻かれろ」という理不尽な風潮(ファシズムの萌芽だ)がどんどんひどくなっている。平気で嘘をついて平然とする社会(安部政権そのものだ)。現在の日本は、一見平和で民主的に見える。しかし、秘密保護法、戦争法制と進んでいる。更に憲法の改悪を突き進めば、ナチスの暴虐が目の前に迫っている。陰に隠れて平然と「障害者」、ユダヤ人、ロマを虐殺し去ったナチス。命令されたことについては、何も考えない世界。何より日本の現在は、少なからぬ大衆が、何も考えようとしなくなっている。薄っぺらなデマゴキーに容易に便乗する人間の何と多いことか。そんな、絶望的な状況の中で著者は希望を見出した。
この本は、裁判の記録というノンフィクションである以上に、何にもましてドラマチックな物語である。映画よりももっとドラマチックな現実が描かれている。著者の、心からの思いがつづられている。多くの皆さんに推薦します。

6面

本の紹介
強制労働から自由求め脱走
『生きる 劉連仁の物語』

また、涙なしには読めない本に巡り会った。第62回青少年読書感想文全国コンクール・中学校部門の課題図書『生きる 劉連仁の物語』である。
全国の中学生たちが、図書館で順番を待っているのに、私たちが読まないで過ごすわけにはいかないだろう。

強制労働で

事件の発端は1944年9月の中国山東省。劉連仁さんは日本軍によって拉致され、北海道・昭和炭坑明治鉱業所に連行された。劉連仁さんたち200人は苛酷な労働を強いられ、敗戦までの1年に満たない間に、9人が死亡し、179人がけがを負い、280人が病気に罹った。敗戦を迎え186人が生きて帰ることができた。
余りに過酷で不当な強制労働に、逃亡者が続出したが、いつも捉まっては連れ戻され、見せしめのリンチを受けた。劉連仁さんは雪解けを待ち、7月に脱走し、故郷をめざした。すでに脱走していた4人と合流し、つらい逃亡生活が始まった。
食べ物といえば、野ニラ(のびる)と山白菜だけであり、「空腹に目がくらみ、獣に怯え、雨に凍え、このままではどこかに行き着くどころか、その前にのたれ死ぬかもしれない」と劉連仁さんは覚悟していた。

道がある限り前へ

13日目に5人は山を下りて、畑の作物を食べたために、捜索隊が組織され、2人が捉まってしまった。3人での逃亡生活が始まり、「道がある限り前へ」と心を固めて、留萌の海岸から北上して、2カ月目には稚内にたどり着いた。
2度目の冬を迎える前に、3人は山腹に穴を掘り、食べ物を貯えた。雪が降り、すべてが凍り付く北海道の冬。1日1人あたり、大根1片、ジャガイモ1個、昆布少々で、冬眠するように長い冬を耐えた。
1946年4月、再び発見され2人が捉まり、劉連仁さんだけが残された。農作業小屋から火(マッチ)と鍋を盗み、村を離れ、山に向かった。「たぶんここには二度と来ることはないだろう。生きのびるためには、決して同じ道を戻ってはならない。決して同じところにとどまってはならない」と心に決めて、それから12年間、孤独な山の生活は1958年2月に発見されるまでつづいた。

日本政府の態度

雪におおわれた穴のなかで、息絶え絶えの劉連仁さんが発見された。著者は「長い苦しみが終わったばかりの劉さんをもう一度傷つけることが起こりました。それは苛酷な強制労働に耐えかねて炭坑を逃げ出し、逃亡し続けた劉さんを、日本政府は『不法入国者』『不法残留』の疑いのある者と見なしたことでした」と、怒りに震えている。官房長官は「劉連仁は労工協会の契約で日本に来た」などと言って、強制連行の事実を認めようとしなかった。
1996年劉連仁さんは東京地裁に提訴し、勝訴を勝ち取ったが、東京高裁は「国家無答責の法理」を適用して、逆転敗訴し、2007年最高裁は上告を棄却した。何という理不尽な対応だろう。2000年9月に劉連仁さんは87歳で亡くなった。

学ぶべきこと

『生きる 劉連仁の物語』からなにを学ぶべきか。著者は「戦争は人間に『ほんとうの自分』というものを、無理やり捨てさせる。別の皮を被らされ、心にある良心も、誰かに向けるやさしさも、人間らしさのすべてを、自分という存在そのものを捨てさせる。そして、そのことをいったん受け入れてしまったら、最後、濁流に押し流されたように引き返せなくなる」と書いている。
安倍内閣は特定秘密保護法、集団的自衛権、戦争法を手にしている。そして両院で3分の2を占めた改憲派は憲法9条を改正して、まさに戦争をする国に衣替えしようとしている。私たちには、劉連仁さんのような決意と実行が問われているのではないか。
 (須磨)
森越智子(作)、谷口広樹(絵)童心社 2015年刊 (本体1600円+税)

改憲・福祉破壊とたたかう
『展望』18号の紹介

第3次安倍再改造内閣は、選挙直後の沖縄・高江の米軍ヘリパッド工事強行、憲法調査会の再開言明、南スーダンPKOにむけた「駆けつけ警護」の訓練開始表明、極右・稲田の防衛相任命など、戦争をめざす政権といわねばならない。また「働き方改革」と銘打って長時間労働の是正、非正規労働改革のための同一労働同一賃金と言っているが、労働組合を無視したでたらめだ。
巻頭論文は、安倍自民党が今日やっきとなっている緊急事態条項改憲攻撃との全面対決にむけた提起である。
また三船論文では、安倍の極反動性を支える「日本会議」の正体暴露に挑戦したものである。
須磨論文は教育改革を「日本再生」の環に位置づける安倍・自民党の道徳教科化とのたたかいをいち早くとりくむべきとの思いから準備したものである。
戦後資本主義は、社会保障を資本主義発展に組み込んで成立してきた。それが今日破綻に直面している。
社会保障は、医療や教育、保育・介護・年金・生活保護などがあるが、日本では社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生、医療、加えて住宅、雇用、教育などの諸施策が関連制度として位置付けられている。国家予算の3分の1以上を占めるもので、人民の生活、生存権にとってとてつもなく大きく重要な分野である。運動においては「障害者」解放運動などで政府とたたかい、いくつかの地平を開いてきた。いかに反動的な政権といえどもこれに手をつければ人民の総反乱に直結する。にもかかわらず、社会保障の削減・解体に手をつけようというのは許されない。経団連などの意を受けて、新自由主義のレールに乗せて社会保障を解体しようというのだ。
また、ヨーロッパの「高福祉」を唱える国家が他方で「安楽死」を推奨しているという現実は、資本主義・帝国主義には社会保障をまかせられないということを示している。土本論文はこのような過程で生れた。
「グローバリズムと国民国家」に関連しては、『展望』16号、17号の掲載箇所を改めて読み返してほしい。なかなか重大なことを提起している。この分野は今後さらなる追求が求められる。
「沖縄日誌」は、白熱の現地攻防を伝える。 革命的共産主義運動は、60年代以降、階級闘争において一定の地歩を占めてきたが、他方において、歴史を総括する立場に立って見ると、その歴史を正面からみすえることはなかなか苦痛を伴う。しかし、ここを、次のために総括するという視点が問われる。『革共同私史』は単なる個人史をこえて広く全体へ高める手掛かりとしての問題提起と思う。
2015年戦争法反対闘争の中で、70年闘争は消し去って60年闘争をクローズアップする論調がジャーナリズム等で強かった。あるいは70年闘争の武装闘争を清算主義的に語る元ブンドの諸氏の意見などには賛同できない。その上で、問題は80年代以降の革共同の党としてのたたかいの総括ではないか。(杉田)

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7月参院選では、改憲勢力が改憲発議可能な3分の2議席を得ました。しかし市民と野党の共同行動は、沖縄・東北などで勝利し、今後の安倍政権とのたたかいの道を示しました。これにたいし安倍政権は、高江ヘリパッド工事の強行や伊方原発再稼動など、まるで憲法などなきがごとき攻撃を強めています。
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