心を一つに 沖縄は訴える
海兵隊と基地は出て行け
6月19日 県民大会
6万5千人が参加した沖縄県民大会。強い日差しのなか、参加者は一人ひとりの発言にじっと耳を傾けた(6月19日那覇市内) |
6月19日、米軍属による女性暴行殺人事件に抗議する「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」(主催・辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)が那覇市の奥武山陸上競技場でひらかれ、6万5千人が集まった。
悲しみをこらえて
午後2時の大会に、黒い服や帽子、傘などを身につけ、哀悼の意を示した参加者が集まり始めた。梅雨明けの強い日差しが照りつけるなか、演壇を中心に木陰のなかまで人があふれた。大会は、追悼の思いを込めた古謝美佐子さんの「童神」の歌で始まった。古謝さんの歌に、涙を流す若い女性や、ほとんどの人は目をつむりじっと、歌に聴き入った。歌い終えた古謝さんは涙を流し「今回の県民大会を機に基地はなくしてほしい」と訴えた。
そのあと、全員が起立し1分間の黙とう。静かに手を合わせ被害女性を追悼した。そして、被害女性の父親からのメッセージが紹介された。遺族の「次の被害者を出さないためにも全基地撤去。辺野古新基地建設に反対。県民が一つに」のメッセージに参加者は深くうなずいた。
“第2の加害者”
オール沖縄会議共同代表のあいさつがおこなわれた。稲嶺進名護市長は「二度とこのような事件を起こさないことを誓い、行動を起こし、みんなの心を一つにして頑張っていきたい」。呉屋守将さんは「安倍総理は遺族、県民に真剣に向き合って、心から謝罪すべきではないか」。高里鈴代さんは「声を上げることのできない女性の声を呼び起こし、新たな基地の建設や海兵隊の駐留をこれ以上認めないという思いにつなげていきたい」。玉城愛さん(シールズ琉球)は「被害にあわれた女性へ。あなたのことを思い、多くの県民が涙し、怒り、悲しみ、言葉にならない重くのしかかるものを抱いていることを絶対に忘れないでください」「安倍晋三さん、日本本土にお住いのみなさん。今回の事件の『第2の加害者』はあなたたちです」と訴えた。
二度と繰り返さない
若者世代から4人が登壇。「二度と事件を繰り返させてはならない」と訴え、国会議員、県議会議員などが紹介された。
翁長知事は「非人間的で凶暴な事件が明るみに出たあと、安倍首相は日米地位協定の見直しに言及せず、辺野古移設が唯一の解決策と言っている。私たちは心を一つにして、この壁を突き破っていかなければならない」「政府は県民の怒りが限界に達しつつあること、これ以上の基地負担に県民の犠牲は許されないことを理解すべきだ。日米地位協定の抜本的な見直し、海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理・縮小、辺野古新基地建設阻止に取り組んでいく決意をここに表明する」と。そして、沖縄言葉で「みなさん負けてはいけませんよ。私たち県民の子や孫を守っていきましょう。頑張っていきましょう」と結んだ。
限界を超えた怒り
決議文「@日米政府は、遺族及び県民にたいして改めて謝罪し完全な補償をおこなうこと、A在沖米海兵隊の撤退及び米軍基地の大幅な整理・縮小、県内移設によらない普天間飛行場の閉鎖・撤去をおこなうこと、B日米地位協定の抜本的改定をおこなうこと」を採択したあと、全員で「怒りは限界を超えた」「海兵隊は撤退を」のプラカードを掲げ、メッセージを発信した。最後に海勢頭豊さんの「月桃」を全員で合唱し、会場に歌声が響き渡った。
沖縄の怒りに連なり
1万人が国会を包囲
沖縄現地の県民大会と同時刻に1万人が国会を包囲(6月19日) |
元米海兵隊員による20歳の女性殺害に抗議する沖縄県民大会に呼応し、19日午後2時から、『命と平和のための6・19大行動』が国会周辺でおこなわれ、1万人が集まった。
集会では、沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さんが「沖縄では、米軍族による女性殺害に抗議し、海兵隊の撤退を求めて県民大会がおこなわれています」「1955年に6歳の少女が米軍人によって拉致され、殺害され、ゴミ捨て場に放置される悲しい事件が起こりました。戦後、そして、復帰後も変わらない沖縄の現状。私たち県民の怒りは頂点に達し、抑えることができません」「戦後71年、米軍による凶悪事件は571件あったという報告は皆さんご承知のとおりだと思います」「そうした中でも、日米両政府は新基地建設を強行しようとしています。安倍政権は、いまだに、沖縄県民の声をないがしろにし、沖縄差別、更なる過重な基地負担を押しつけようとしています」「私たちは、沖縄の未来のため、子どもたちのため、基地のない平和な沖縄を作るため、全国の皆さんと連帯を強めながら、安倍政権としっかり対峙してまいります」と悲しみと怒りをこめて訴えた。
集会では、他に、沖縄一坪反戦地主会、民進、共産、社民の各党、落合恵子さん、日弁連の山岸弁護士などからの発言がおこなわれた。そして、沖縄現地から翁長知事の発言が同時中継された。「日米地位協定見直し、海兵隊撤退、米軍基地の整理・縮小、辺野古新基地阻止に取り組む不退転の決意を申し上げます」との発言に、国会周辺は拍手がわきおこった。
最後に、総がかり行動を構成する3団体から発言と今後の行動提起がおこなわれた。(2面に関連記事)
原発稼働は“ギャンブル”
6月28日 関電株主総会に抗議
【神戸】関電株主総会が6月28日、神戸市ポートアイランドでおこなわれた。株主たちの参加は昨年より少ないようだ。抗議行動は約100人。さよなら原発神戸アクションや抗議する人たちがビラ配布とパフォーマンス。大きな横断幕や旗。大阪の関電本店前での関電包囲行動の人たち。上牧行動の人たち。株主はその間を通り会場へと入っていく(写真)。「原発稼働はギャンブルだ」と、大きなサイコロを転がしながら訴えるパフォーマンスが印象的だ。
老朽化した原発の再稼働に対する危険の訴え、放射能汚染による子どもや女性への被害。原子炉圧力容器が放射能を浴び劣化する。原発やめて自然エネルギーへの転換を訴える提案など次々にアピールがあった。
関電の申立て却下
今年の3月9日、関西電力高浜原発3・4号機の運転を差し止めた「仮処分決定」について、関電が「仮処分の執行停止」を申し立てていた件で、大津地裁(山本善彦裁判長)は関電の訴えを退け、6月17日、「執行停止申立却下」の決定を下した。この決定により、法的には高浜3・4号機は依然として運転できない状態が続くことになった。 (6面に関連記事)
2面
“憲法をなめてるのか”
映画監督 井筒和幸さん 安倍政権をメッタ斬り
6月12日、「戦争法廃止! アベ政権を倒そう! 6・12講演集会」(主催:同実行委員会)が、大阪市北区民センターでおこなわれた。「パッチギ!」で知られる映画監督・井筒和幸さんの講演に320人が集まった。
仲尾宏さん(反戦・反貧困・反差別共同行動in京都・代表世話人)が主催者あいさつ。仲尾さんは「安倍政権によって、憲法が危機にさらされている。安倍政権とたたかっていこう。民主主義はたたかいながら勝ち取っていくものだ」と述べた。
井筒和幸さんの講演は、質問に応えるという形でおこなわれた。井筒さんは、「安倍政権のやっていることは言語道断だ。憲法をなめているのか」と怒り、安倍政治にたいする弾劾は広範囲に及んだ。
憲法は権力者、為政者をしばるものだ。かれらに憲法を守れと強制している。これが立憲主義というものだ。庶民に課せられている義務は納税、教育、勤労の3つだけ。なかには「押しつけ憲法」という者がいるが、庶民はこれを積極的に受け入れたのだ。
憲法9条と戦争
9条には、絶対に戦争をしてはならないと書いてある。非武装中立がいちばんよい。武力を持たなければ戦争はできない。
安倍は「抑止力によって戦争はなくなる」と言っているが、これはウソだ。抑止力というものはない。安倍は「小型の核であれば憲法上保持(使用)できる」(2002年、早稲田大学での講演)と言っている。安倍(権力者)が戦争をしたがっているのだ。
1920年代に、デンマークの軍人が「戦争絶滅受合法案」というのを作っている。この法案では最初に権力者が戦場にいかなくてはならない。こうすれば戦争はおきないと言っている。
消費税、少子化問題、東京オリンピック問題などに斬り込んだ。
朝鮮学校の排除
高校無償化からの朝鮮学校排除はとんでもない差別だ。在日朝鮮人は外国人であっても日本に住み、ここで働き、税金を払っている。憲法は日本に住んでいる人々のためにある。
民主主義について
今の議員は庶民の代表ではない。選挙に際して投票する人物はだれもいない、これが現状だ。直接民主主義がいちばんよいと思うが、少なくとも庶民が議員を監視できるように、選挙制度の在り方そのものをもう一度考え直していくべきだ。
ジャーナリズムとは
ジャーナリズムの使命は権力にたいしてもの申すこと、反権力でなくてはならない。マスコミの報道を信用してはだめだ。庶民はマスコミを監視する必要がある。
戦前について言えば、1931年くらいまではジャーナリズムもけっこう健全であったが、日中戦争が始まってからダメになった。これは必ずしも過去の事とはいえない。今日もその危険性はあるように思う。
沖縄に関する映画
沖縄の映画は絶対に作りたい。それは1972年沖縄返還に至る過程のもので、おそらくヤクザ映画になると思う。われわれは、沖縄戦後史を知っているようで、あまり知らないのだ。沖縄にたいする差別はある。
自民党改憲草案
最後に、自民党改憲草案(緊急事態条項、家族条項など)について、立憲主義を否定し、権力者が国民に押し付けるものであることに怒りを喚起して、講演を締めくくった。
安倍政権打倒へ
井筒さんの講演に続いて、2団体から連帯のあいさつがあった。服部良一さん(戦争あかん!ロックアクション・共同代表)はロックアクションへの参加を訴えた。中北龍太郎さん(「しないさせない! 戦争協力」関西ネットワーク・共同代表)は緊急事態法制にたいするたたかいと集会への参加をアピールした。
集会のまとめで、三浦俊一さん(釜ヶ崎日雇労働組合)は「人民のたたかいの前進によってのみ安倍政権を打倒できる。今回の参院選挙を、その前進のためにたたかおう」と訴えた。
集会後、参加者は大阪駅前までデモをした。
沖縄に連帯 各地で行動
米軍属による女性殺害に抗議
【京都】
演説会の司会は〈NO BASE沖縄とつながる京都の会〉の橋田さん。沖縄からは映画「圧殺の海・辺野古」を監督した影山あさ子さんが発言した。1000人委員会京都連絡会からは仲尾宏さん。そのほか学者の会、市民アクション@きょうと、京都おんなのレッドアクションが発言。デモには喪服を着て参加する人や、黒い蝶々のプラカードを掲げる人も。「政府は基地建設を諦めろ」「集団的自衛権いらない」などと声を上げながら河原町通を行進した。
【広島】
抗議活動には、「憲法ミュージカル」も合流して『月桃』、『ヒロシマの有る国で』などを歌いながら市内をデモ行進をした。
デモ終了後、広島YMCA2号館で広島・沖縄をむすぶつどいが主催して、「『6・23沖縄慰霊の日』を考え『6・19沖縄県民大会』に連帯するつどい」がおこなわれた。ひろしま三線クラブ有志による沖縄戦や基地被害の犠牲者を追悼する演奏の後、沖縄出身者が今回の事件に対する悲痛な思いを語った。
今回の主催者の一人で広島で弁護士をしている沖縄出身の儀保唯さんは、10歳の時に両親に連れられて沖縄の県民大会に参加した。あれから20年、再びこのような悲惨な事件が起きてしまったことに涙をこらえながらその無念さを訴えた。
集会では沖縄県民大会のライブ放送をプロジェクターで上映し、参加者がともに黙祷を捧げた。県民大会の玉城愛さんの痛切な訴えに、ハンカチを目に当てながら聞き入る人が目立った。
沖縄2紙と朝日に掲載
第7期 沖縄意見広告が成功
第7期沖縄意見広告運動は、過去最高の9002件の賛同を得て、6月5日、沖縄タイムス、琉球新報、朝日新聞の3紙に掲載された。今期の活動は、昨年の戦争法反対闘争の高揚をうけついで、これまでの1・4倍の賛同者を集めて成功した。沖縄県議選の投開票日に沖縄2紙に掲載された全面広告は、基地撤去を求める沖縄県民への力強いエールとなった。
こうした成果を受けて、6月12日、大阪市内で沖縄意見広告報告集会が開かれた。主催者として沖縄意見広告運動呼びかけ人の武建一さん(連帯労組関西生コン支部委員長)があいさつ。参議院議員候補の伊波洋一さん(元宜野湾市長)のビデオメッセージが上映された。また意見広告運動の「全国キャラバン」に参加した川口真由美さんとはるまげんさんによる歌と演奏もおこなわれた。アメリカ陸軍元大佐アン・ライトさんの講演も注目をひき、盛りだくさんの内容だったが終始緊張感あふれる集会に、200人以上が参加した。
米退役軍人が講演
沖縄からヘリ基地反対協共同代表の安次富浩さんが発言。安次富さんは元米海兵隊員による女性殺害事件を強く弾劾するとともに、その後おこなわれた沖縄県議選における翁長与党の勝利を報告した。そして7月参議院選で、沖縄北方担当大臣の島尻安伊子を落とそうと呼びかけた。
集会のメイン企画は米陸軍元大佐のアン・ライトさんの講演。ライトさんはイラク戦争に反対して米陸軍を辞職。その後、退役軍人で作るアメリカの平和団体・ベテランズ・フォー・ピースのメンバーとして全世界を駆け回っている。
今回は沖縄、関西、東京をめぐる反戦ツアーの最中とのこと。沖縄訪問は元米海兵隊員による女性殺害事件の直後となった。ライトさんは被害女性への謝罪と哀悼の意を表し、犯罪の温床となっている米軍基地と日米地位協定の問題性を強く批判した。さらに世界中に展開する米軍基地に反対する各地の反戦団体と連携が必要と訴えた。
ライトさんの講演は、ここ数年の米紙ウェブ版への意見広告掲載が米国内で世論を喚起するうえで重要であることを浮き彫りにした。次の第8期ではアメリカ、韓国など世界の反戦運動との連携を追求していくことを確認した。(久保井)
3面
「一億総活躍」って、なに?
介護保険制度の大改悪 B
土田 花子
介護保険法の大改悪
昨年4月、改悪介護保険法の施行が段階的にはじまった。同時に、過去最大の介護報酬切下げが強行された。2008年以来の「税と社会保障の一体改革」路線の具体化である。
この間、介護事業所はどこも慢性的人手不足にあえぎ続けてきた。訪問介護を依頼されてもヘルパーがいない、箱モノはあるが職員がいない。高級な有料老人ホームでもナースコールは鳴りっぱなし。利用者が放置され、虐待が日常化している現実さえある。
賃金は保育労働者と同じく、全産業平均より月額11万円も低い。労働基準法違反、長時間労働とサービス残業が蔓延している。過酷な重労働であると同時にストレスの多い精神労働、みな疲弊しきって退職者はあとをたたず、労災も急増。過酷な労働条件・職場環境と人手不足の悪循環は深まるばかりだ。
法改悪と報酬切下げは、この厳しい現実に拍車をかけた。半年後の昨年9月、福祉・介護事業所の倒産件数は過去最多を記録した。7割が在宅介護を担ってきた小規模事業所である。「介護職員の処遇改善」どころか労働の過密化、賃下げや失業が労働者を襲い、介護難民が生み出されている。国は医療費と介護給付抑制のために、「川上から川下へ」と称し、「病院・施設から住みなれた地域へ、在宅へ」を推進し、受け皿として「医療と介護が連携し地域包括ケアシステムを構築する」との方針を掲げてきたが、自ら地域の介護体制を崩壊させる改悪を進めているのだ。
最低でも平均的な賃金、8時間労働、研修の機会が保障され、誇りとやりがいをもてる働き易い職場がつくられなければ、社会が必要とする介護労働者と介護の質を確保することはできない。
「要支援切り」
昨年の法改悪の特徴は、介護保険法始まって以来の抜本改悪(4大改悪と呼ぶ)である。従来の介護サービスは、@要介護認定(要支援1〜2、要介護1〜5の7段階)を受ければサービスが利用できる。A要介護1〜5の人は、特別養護老人ホームなどの施設に入れる。B利用料は所得に関係なく1割負担。C低所得者(非課税世帯)には、施設の食費・部屋代の補助がある。
しかし4大改悪は以上のすべてをいじった。
第一に、要支援1〜2の訪問介護とデイサービス(利用者150万人)を介護保険給付から外し、市町村の新総合事業へ移行するとした。全市町村が2017年4月までに開始する。やるやらないも含め、サービス内容や価格、利用者負担は市町村の裁量で決める。ただし従来サービスを上回ってはならない。厚労省は無資格者、ボランティア、高齢者を中心にした住民主体による「多様なサービス」モデルを例示し、いわば「無資格者による安上がりサービス」を推奨・誘導している。まさに「要支援切り」だ。多くの自治体が受け皿づくりに戸惑い、窮し、最終年度に実施を先送りしてきた。
ちなみに大阪市は来年4月実施を決定、無資格者による報酬25%削減の「基準緩和型訪問サービス」の導入を狙っており、介護現場から抗議の声があいついでいる。
第二に、特別養護老人ホームへの入所を原則「要介護3」以上に限るとした(昨年4月実施)。当時、待機者は約52万人、その中の34%を占める要介護1、2を切りすてるものである。現場の声、実情により「特例措置」はあるものの多くの高齢者と家族を介護難民に追いやるものである。
第三に、所得により介護保険の利用料を2割に引き上げるとした(昨年8月実施)。自己負担の2倍化であり、介護サービス利用の抑制につながる。ひとたび導入すれば、所得基準は行政が勝手に決められので、対象者は容易に拡大できる。案の定、次期改悪で大幅拡大がねらわれている。
第四に、低所得でも預金などがあれば施設の居住費・食費の補助を打ち切るという内容だ(昨年8月実施)。自治体の指示で事業者やケアマネージャーが利用者に通帳のコピーを求め、財布の中まで広げさせる人権侵害がおき、現場は大混乱におちいった。
公的保険に初めて「資産要件」が導入されたことは見過ごせない大転換だ。今後、健康保険や年金、その他社会保障全般に拡大する突破口を開いたといえる。個人番号制度と結合される時、その攻撃性があらわとなる。
介護報酬大幅切り下げ
介護報酬とは国が決める介護サービスの公定価格で3年ごとに改定される。制度発足以来、さまざまな改悪が積み上げられてきたが、昨年4月改定は過去に例をみない大幅切下げであった。
介護報酬は基本報酬とさまざまな加算で構成されている。切下げは基本報酬が平均で4・48%減であった。特に小規模デイサービスが9・8%減、訪問介護の生活支援は4・7%減、要支援者へのサービスは20〜25%減、特別養護老人ホームは6・3%減と狙い撃ちにされた。主に在宅介護を担ってきた小さな事業所、特養などの施設をつぶしていく、要支援者を切捨てるという国の決断と方向転換を露骨に示すものだった。確かに処遇改善加算を含む幾つかの加算が新設されたがそれを入れても全体で2・27%減なのだから意味がない。
そもそも介護報酬の水準は極めて低い。例えば家事援助は45分以上何時間やっても2500円あるかどうか。3分間の往診でも1回3〜4万円という保険診療報酬とは桁がまるで違う。その上の大幅切り下げである。小規模事業所は賃下げで経営を守るか、閉鎖・倒産しかないところへ追い込まれた。当初、厚労省は「対策を講じる必要はない」と涼しい顔で対応に終始していたが、直後に安倍は「介護離職ゼロ」をぶちあげた。
処遇改善のペテン
昨年「処遇改善加算アップで1万2千円の賃上げ」が大宣伝されたが、現実は違う。事業所が「処遇改善加算」を取得するためにはさまざまな要件をクリアし煩雑な手続きをおこなって行政に認められなければならない。小規模事業所ほど難しい。加算金は各サービスの報酬単価に、決められた係数(0・88%〜8・6%)をかけた額で、他の報酬と併せて事業所に支給される。原資は税金ではないので保険料に跳ね返る。ランクの低い加算、単価の低いサービス、利用者が少ないとなれば加算金は微々たるものだ。賃金として誰にいくら分配するかを経営者が決めることができ、不正も簡単にできるし、大幅減収により実際に支払えない事業所もある。
賃上げ実現のためには介護報酬を元に戻し、税金のみを原資とし、直接労働者に渡るシステムをつくり、賃上げ目標額を月額11万円とすることを要求していかなければならない。
「軽度者切り」許すな
そもそも介護保険制度は保険料と給付が連動するという根本的問題を抱えている。この仕組みは限界に達しており、大幅な税投入へと方向転換しなければ必要な介護を保障する道はない。市町村は、介護の需要増に応じてサービスを充実させれば保険料をあげなければならず、保険料を抑えようとすれば給付を削減しなければならないなか、おのずと後者に傾く。介護認定は次第に厳しくなり(国が主導)、手間もかかり、大阪市では法の規定を越えて手続きにも時間がかかる。必要な時に必要なサービスが受けられないのが実態である。自己負担が払えない人、保険料滞納者も事実上サービスを受けられない。月額15000円の年金から無慈悲に天引きされ、無収入でも免除されない保険料負担に多くの高齢者が苦しみ、差し押さえ処分も増えている。
「要支援切り」を進めている国は、「要介護1、2」までの「軽度者」を切る大改悪案を来年通常国会に出そうと狙っている。@生活援助・福祉用具・住宅改修の原則自費化。Aその他の軽度者むけサービスを市町村事業に移行。B2割負担の対象者の拡大などである。例えば通所介護利用者では「軽度者」が75%を占める。まさに「保険料あって介護なし」の由々しき事態となってしまう。介護保険制度をつくってきた元厚生省高官・堤修三氏が「介護保険は詐欺」と批判しているほどである。
世論調査でも多くの人々がもっとも望むことの一つが社会保障の充実だ。昨年の介護報酬切り下げで国が減らした支出は600億円にすぎない。財源はある。大企業と富裕層から税金を取れ! 介護保険制度に税を投入せよ! 保険料を引き下げろ! 進行する要支援切りを押し返していく運動が次期大改悪の動向を左右する。介護労働者、事業者、利用者と家族、被保険者が連帯して声をあげ行動を起こそう。(おわり)
戦争法下の労働力動員 労働者と市民が集会
業務命令は拒否できるのか
6月16日、大阪市内で「戦争に協力したくない! 労働者と市民の集会」が開かれた。主催は大阪労働者弁護団などを中心とする実行委員会。労働者は、戦争に「巻き込まれる」単なる受け身の被害者ではない。自分の労働を通じて戦争に協力・加担させられる立場にある。その角度から戦争の歴史と戦争法をとらえ返し、どう抵抗していけるのかが提起された。
会場は港湾・運輸をはじめとする労働者や弁護士で埋まった。
基調講演は、大阪大学大学院文学研究科の北泊謙太郎さんが「戦時下日本の労働力動員政策と『徴用』制度」を、吹田事件元被告の上田理さんが「戦後の日米関係と反戦への思い」を講演。
良心的拒否は可能
北泊さんは、1937年7月から1945年の敗戦までを4期に分け、各期の労働力動員政策の目的、特徴、変遷などを報告。1939年7月制定の国民徴用令は「自発性」に基づく労働力動員という形をとっており拒否できることになっていたが、実際に賃金が6割くらいに減らされるので拒否した人もいた。また鉄鋼・航空機製造関係企業の欠勤率は12〜18%(41年と43年の統計)に上っていたことなど、「国民の消極的抵抗」を示す史実が紹介された。戦争末期には形式的な「自発性」も否定されていくのだが。
続いて、「いま有事が発生したら?」と題して谷次郎弁護士が報告。安保法制の下で戦争協力を強いる業務命令に対して、「労働者は良心的拒否ができるのか」がテーマ。対象となる労働者は自治体、医療、建設、運輸、港湾、鉄道、電気、ガス、通信、ITなど。
法的な検討および「全電通千代田丸事件」の判決を引いた結論は「良心的拒否はできる」というものだ。ただし「国民業務計画」に記載された場合、それが労働契約の範囲内なのかどうかは検討課題であるとした。
4面
ドキュメント自衛隊裁判
反戦自衛官 小多 基実夫
陸自・島田一尉の不屈のたたかい(上)
戦争国家化が進むなかで変質を遂げる自衛隊にあって、自衛官の中に大きな分岐と流動が起こっている。海外派兵と過酷な訓練のエスカレートに比例していじめや自殺が多発し、疑問を持つ隊員の除隊も増加している。しかし、それでも就職難の中で多くの若者が職を求めて自衛隊に導かれているというのが昨今の現実である。そういう自衛隊にあってもさまざまなたたかいが巻き起こっている。その一つとして、小多基実夫さんが『反軍通信』に連載した陸上自衛隊の現職幹部自衛官、島田雄一・一尉の不屈のたたかいを紹介する。
褒章制度の不正運用を告発した島田一尉に不当判決! 東京地裁
『反軍通信』298号 2014年10月
9月11日、陸上自衛隊で不正業務を拒否しその改善のために尽力したことを理由に懲戒処分を受け、その処分取り消しと真相解明を求めて起こされた島田雄一・一等陸尉(44歳)の裁判で判決が言い渡された。自衛隊の主張をそのまま追認しただけの不当判決であった。(東京地裁民事19部 古久保正人裁判長)
事件の概要は、07年3月転勤を命じられた埼玉地本で島田一尉が直面した自衛官募集業務に対する民間協力者(募集相談員)の功績をたたえる藍綬褒章の授与をめぐる自衛隊の組織を挙げた不正をめぐる事件である。
島田一尉は、1989年二等陸士として入隊以来25年間を勤め上げてきた人物であるが、その全てを削り落とす覚悟で、自らの職場でおこなわれている不正を糾すために、上層部への意見具申、東部方面総監人事部への公益通報、マスコミへと訴えてきた。
それに対する自衛隊の回答は、自衛隊法46条1号1項(上官に対する反抗不服従)を理由とした「重処分」=停職6日間の懲戒処分であった。
努力の全てが踏みにじられる中で、最後の砦として訴えたのがこの裁判なのである。
しかし、下された判決は、「藍綬褒章上申行為の職務執行の適正化を図る目的があるとしても」「原告の無断押印行為は確信的であり」「上官に対する反抗不服従である」などと、自衛隊の言い分を追認しお墨付きを与えるだけのお粗末な内容であった。
「どのような制度、政策、行動も不正組織が実施する限り、いずれ失敗する」「そのような組織では、国家・国民の安全保障は担保できない。80年前と同じように、崩壊・暴走する。」という危機感と信念で島田一尉は闘っている。
控訴審に支援を!
判決後の記者会見で、直ちに控訴を宣言した島田一尉に一審を振り返っての感想を語ってもらった。
法廷でも平気で嘘をつく自衛隊と、それに与する裁判所の現実を前に、「こんな状況で、有事に自衛官の犯罪を裁けるのか」「ランソン事件(日本軍によるフランス軍捕虜の虐殺)のような戦争犯罪に対して対応できるのか」「日本兵が戦犯として裁かれた『私は貝になりたい』のようなことにならないか」、どこまでも自衛隊・裁判所・日本社会のゆく末を心配する島田一尉である。
さらに、上級審を闘う意義・目標を聞いた。「国家機関による不正をなくすこと、これが最高の目的。最低でも公益通報制度の正しい運用の実現です」ときっぱり。
そして、「敵の戦車でなく上部の不正との戦いですが、今後も逃げずに戦っていく」と決意を語った。(島田一尉は戦車部隊の幹部)
企業でも学校でも地域社会でもどのような組織であれ、その内部でただひとりで自らの組織の不正に立ち向かうというのは並大抵のことではない。しかも自衛隊という閉鎖社会において既に5年という歳月を配転攻撃と仕事の取り上げなど組織を挙げたパワハラを受けながら戦っているのである。
公開の場に自衛隊の不正を引きずり出して闘っている島田一尉をもし裁判の場ですら守れないとするならば、「秘密保護法の廃止」など論外となってしまうであろう。
島田一尉の闘いは自民党改憲案が通って軍法会議が復活すれば重刑は間違いないし、自衛隊を公開の裁判に訴えるなどというのも夢の夢になってしまう。ここが正念場だ。控訴審では多くの人々の支援をお願いします。
[注]
褒章制度は、1873年(明治6年)徴兵令が施行されてから8年後の81年に太政官布告63号として制定されたものであり、本格的な侵略戦争の開始となった日清戦争へ向かう水路をなしたといえる。
明治憲法制定以前の制度が天皇の国事行為として今日に至るまで継承され、自衛官の募集業務にまで活用されているというのだから驚きであるが、さらにそれが集団的自衛権の名の下に戦地派兵が強化される自衛隊で不正運用されているのだから一層看過できない。
高校無償化と朝鮮高校除外
大阪で田中宏さん(一橋大学名誉教授)が講演
6月11日、大阪市の東成区民センター大ホールにおいて、一橋大名誉教授・田中宏さん(写真)の講演会がおこなわれた。主催は、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪。
高校無償化裁判と大阪府・市補助金裁判がいよいよ大詰めを迎えるなかで、「朝鮮外し」の本質を明らかにする集会に保護者や卒業生、支援者など約400人が参加した。
集会の冒頭、韓国語で「集める」、英語で「もっと」という意味の思いを込めた朝鮮学校応援ソング「モア」を全員で合唱。続いて大阪朝鮮高級学校舞踊部の「小太鼓の舞」が披露された。
黒々と指紋
田中さんの講演では、初めに本人が朝鮮問題にかかわるようになった原点を話した。
田中さんが外国人留学生の世話団体で働いていた1963年、千円札の肖像が聖徳太子から伊藤博文に変わった時、中国系留学生から「どうして朝鮮民族の恨みを買ってハルピンで殺された伊藤博文を戦後日本で登場させるの? この千円札で毎日買い物することになる在日朝鮮人のことも少しは考えてみたら」と言われたという。
また、入管の手続きに同行したベトナム人留学生と道すがら交わしたやり取りで、「田中さん、日本人は字で書くときは外国人と書くけれども、内心では国に害になる人、害国人と思っているのではないですか」と言われたとき、彼らが写真の下に黒々と指紋を押した外国人登録証を肌身離さず携帯しなければならないことを初めて知った。指紋は犯罪捜査と関係する。外国人を犯罪者予備軍と見なさないとこういう制度は成り立たない。外国人が日本人とは全くちがう立場におかれていることを知った。
国籍差別禁止指令
そして「『朝鮮人って悪いことなん?』と子どもに聞かれたとき、どうこたえるのか」というこの日の本題につながる原点は、かつて日本が朝鮮を植民地にしていたことにある。
日本がポツダム宣言を受諾して戦争が終わった。そこには「カイロ宣言の条項は履行されるべき」と明記されていた。カイロ宣言には「朝鮮の人民の奴隷状態に留意しやがて朝鮮を自由独立のものたらしむる」と書かれている。これを日本は受け入れた。
アメリカ占領下でマッカーサー司令が国籍差別条項禁止指令(1945年12月)を出した。厚生年金保険法(1941年)で帝国臣民だけが対象となっているのは「差別だ」ということで削除された。現在の厚生年金法には国籍条項はない。同じ時期にできた労基法・職安法にも国籍差別禁止が書かれている。
マッカーサー憲法草案には「すべて自然人は法の前に平等である」(13条)、「外国人は法の平等な保護を受ける」(16条)と書かれていた。これで日本がいかに外国人を差別してきたかがわかる。
しかし、占領改革は未完に終わった。その後、GHQの影響がなくなり、すべて「国民は」という表現になった。現行憲法が「国民」という言葉を多用したことによって外国人の人権が保障されなくなった。外国人は無権利状態におかれた。権利からは排除しておきながら、税金だけは「居住者は」としてしっかり取る。
朝鮮学校を守ろう
このかんの朝鮮学校支援の運動の中で、国連社会権規約委員会は「高校無償化からの朝鮮学校外しは植民地主義に基づく差別である」と懸念を表明して、朝鮮学校にも適用されるように要求した。国連人種差別撤廃委員会は「朝鮮学校に対する地方自治体の補助金の提供の再開あるいは維持を要請することを奨励する」と勧告を出した。
長い歴史のスパンと広い国際社会との関連でみると、「朝鮮人って悪い」ということでは決してない。韓国で「朝鮮学校を守れ」の支援の輪も広がっている。日本政府が国際社会からずれているのだと話した。
レイシズムに抗う
講演のあと、保護者アンケートの報告、補助金裁判や無償化裁判の報告がおこなわれた。最後に丹羽雅雄弁護団長が、「安倍、下村、馳しかり。国そのものがレイシズム的政策を行っている。また橋下維新政治が安倍と連動して補助金をカットした。さらに在特会をはじめとする差別排外主義者の暴力的な排外主義が全部連動している。レイシズムに抗う裁判でもある。子どもたちの民族教育を受ける権利を守るためにたたかう。普通教育を学ぶと同時に民族的文化的アイデンティティーを固有の権利として学ぶ権利がある。この権利を侵害し差別し解体しようとすることを絶対許してはいけない。歴史修正主義を許さない。当事者・連絡会・弁護団三位一体になって最後まで頑張ろう」と締めくくった。(山藤)
日米韓合同演習を中止せよ
6月26日、「東アジアに平和を! 日米韓合同ミサイル防衛演習の中止を求める6・26緊急集会・デモ」が京都市内でおこなわれ、50人が参加した(写真)。主催は〈米軍Xバンドレーダー基地反対京都連絡会〉。
6月30日からのリムパックに先だって、6月28日、日米韓3国の合同ミサイル防衛演習が、それぞれがイージス艦を出して、初めておこなわれる。これまでは日米の合同演習だったが、今回初めて韓国も参加し、表向きは対北朝鮮と言いつつ、実際は韓国へのサードミサイル配備や日本へのXバンドレーダーの配備とも関係する対中国ミサイル防衛作戦だ。中国・ロシアは激しく反発している。この日の集会・デモは抗議行動を続ける韓国の市民団体と連帯しておこなわれた。
5面
「軍隊は私たちを守らない」
6月5日 東大阪 中山千夏さんが講演
家族と国家
6月5日、中山千夏さんを講師とする「止めよう戦争の道、生かそう平和憲法! 東大阪の集い」が布施駅前市民プラザでおこなわれ、用意した資料がすべてなくなり満席となった。
第1部は千夏さんの講演で始まった(写真)。布施で小学校時代を過ごした千夏さんは、最近、世論調査をすると「家族が大切」という人が40%以上と多くなっているが、「これは危ない。家族と国をつなげたら絶対あかん」と訴えた。マスコミなどによって、国が攻められたら家族が危ないというようにつながるようにされてしまっていることに強い危機感を持つことが必要だと指摘した。
戦前の軍国主義教育が“国民は天皇の赤子”であるとして国家に家族のイメージを与えてしまい、そこにはまり込んでしまうと“天皇の赤子として国のために死ね”といわれたら抵抗できないものが作られてきているからなおさらである。
しかし、千夏さんは“国家は幻想”だという。「国の軍隊は国体を守るものだから私たちや家族、ふるさとは絶対守らない。福島の家族はどうなったのですか。福島のふるさとをなくしたのは国ですよ」「戦争を体験した私の父と母が言っていたが、軍隊は危険になったら真っ先に逃げる。絶対私たちを守らない」「天安門事件をみても国に反対するものを軍隊がボカスカやっている」「だから国に軍備を持たせたらあかんのです」と家族と国をつなげる宣伝に負けないことが大切と訴えた。
東大阪市歌
第2部は東大阪市歌の合唱から始まった。東大阪の市歌をこの集会でなぜ歌うのかを丁章さんが参加者に説明した。
東大阪市は1967年、布施市、枚岡市、河内市の3つが合併してできた。そのとき作られた市歌には「自治と平和の鐘ひびく」と当時の高い理想と平和への思いが込められており、きな臭い時代になりつつある今だからこそ、当時の東大阪市民の熱い思いをもう一度見つめなおすという思いで歌いたいという。
源氏ケ丘教会の高須さんがピアノを演奏し、姜錫子さんと実行委員会の人たちが合唱した。演壇中央には、広島と長崎の平和公園から東大阪市が分けてもらった平和の灯とそこに凛として立つ平和の女神像の写真が映し出された。
沖縄から
冒頭、沖縄で起きた残虐な事件に全員で黙とうし、辺野古に基地を作らせない東大阪の会は三線の演奏と沖縄民謡を歌い、1970年のコザ暴動以来46年も経つのに同じことが繰り返されている、本当に怒りに堪えない、一人でも辺野古現地に行き、座り込みやカヌー隊になってたたかおうと訴えた。再び起きた残虐な事件に声を出さずにおれない沖縄出身者の怒りが伝わってきた。
若者(男性)から
シールズ関西から東大阪の青年が発言した。彼はこの1年間、「そんなことをやっても何も変わらないよ」と言われ続けてきたという。しかし、彼は「10年前には原発が全部止まるなんて誰が想像できただろうか。政治や社会は市民の行動によって必ず変えることができる」「しかし、こういう状況を生み出すことができたのはこれまで長年反原発、脱原発を訴えて抗議してきた市民の行動があったからこそと思っている」と訴えた。さらに「誹謗中傷は毎日のようにくるがそれと日々たたかっている。それは譲れないからであり、こんな社会でいいのかと自分に問いかけ続けており、自分たちを含めた市民の行動がきっと社会を変える」と訴えた。
若者(女性)から
龍谷大学の在日3世も発言した。布施で生まれ育った彼女は昨年6月、布施駅前で2週間にわたっておこなわれたヘイトスピーチについて話した。自分の地元でヘイトスピーチがおこなわれるのは本当につらかったという。家からもバイト先からもヘイトスピーチが聞こえる。相手の放った暴言にたいして自分も暴言ではね返したり、それにあらがう言葉を発していたが、その姿を知り合いに見られるのがすごくいやだったという。
しかし、布施は在日コリアンが多い地域であり、朝鮮学校もあり、そこに通う生徒もいる。それを考えたら、自分もちゃんと意思表示しないといけないと思い、カウンター行動の場所に立ったという。川崎ではヘイトスピーチのデモが中止になったが、法律だけに頼らず、ちゃんと自分たちの方から差別に反対する、東大阪の街は差別を許さないということを意思表明していきたいと訴えた。
無国籍者の立場から
丁章さんは朝鮮半島で平和的に統一国家が建国されるまで南北どちらの国籍もとらない。日本の平和憲法は天皇条項がなければ日本国籍を取りたいと思うほどキラキラ輝いているという。しかし、これが破壊され、日本が戦争をできる国になったら無国籍者の自分と家族はどうなるのか。兵隊として取られないかもしれないが、非国民として収容所に入れられるのか、家族や土地の財産は没収されるのか、日本人の妻と私の子は引き裂かれるのか。戦争ができる国になることは、無国籍者の自分と家族にきっと危害を加えるものになると指摘した。
自分が暮らす東大阪で育鵬社の戦争教科書が使われるなんて絶対許せない、そう思って4年前から教科書運動を始めるなか、東大阪で平和を求める多くの人たちと新たに出会い、今日の東大阪の集いにつながった。これからも東大阪が平和の街でありつづけるために皆さんとともにたたかっていきたいと訴えた。
さまざまな立場から
育鵬社教科書を採択させないためにたたかっている人、ヘイトスピーチとたたかう李信恵さん、部落解放同盟全国連合会荒本支部から池本秀美さん、戦争法に反対する人たち、「日の丸君が代」強制とたたかう人、主義主張や組織を超えて活動している在日青年の人たち、在日1世、2世の介護の仕事をしている鄭貴美さん、律動と平和のパフォーマンスをおこなったオ・ウギョンさんから提起があり、最後に松平要・東大阪市議からまとめのあいさつがあった。
東大阪から平和を
今回の集会の準備をしていて感じたことは、東大阪には“なんとかしたい”と思っている人たちが本当に大勢いるということである。主義主張や組織の違い、さまざまな立場の違いを超えてひとつにつながる運動が多くの人たちの力で始まったのだ。
8月5日にはこれを超えていく大きなイベントが企画されている。今回始まった流れをさらに大きくしていければと思う。(三船二郎)
教科書採択の不正糾す
大阪・呉でやり直し求める
6月25日、暴かれた大阪市・呉市の育鵬社教科書採択の不正! 採択のやり直しを求める全国交流集会(主催 「戦争教科書」はいらない! 大阪連絡会)が大阪市内でおこなわれた。
育鵬社教科書との闘い
安倍政権は子どもたちを戦争の尖兵にしていく育鵬社教科書採択を強引に広めようとしているが、全国で激しい抵抗闘争が取り組まれている。
とりわけ、大阪ではフジ住宅ヘイトハラスメント裁判支援運動と連携するなか、弁護団から提供を受けた同裁判資料により、大阪市での市民アンケートのうち7割を占めた育鵬社賛成意見はフジ住宅の会社ぐるみの多重投票であったことが明確になった。そのため、大阪市議会で共産党、公明党、さらに自民党議員からも質問が相次ぎ、ついに第三者委員会を設置することが決まった。調査の結果は9月の大阪市議会で報告させる予定だ。
大阪・呉の不正
〈子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会〉はプロジェクターを使って大阪市の教科書採択は育鵬社、フジ住宅、大阪市教委の3者の結託によっておこなわれたことを詳細に明らかにした。フジ住宅の関与を明らかにするリアルな証拠には戦りつする思いがした。
〈教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま〉は呉市での育鵬社不正採択の現状について報告した。
公正取引委員会への提訴や「採択の公正性を疑わせるような教科書会社の不適切な行為が判明した場合、市町村教育委員会が採択をやり直せる」ように文科省令を改正することなどについて高嶋伸欣さんが報告した後、上杉聰さんから大阪市議会を活用した新たな取り組みの意義について提起があった。
日本会議の会員も
上杉聰さんからは、今回、大阪市議会で質問してくれた自民党議員は日本会議のメンバーだったこと、日本会議の議員懇談会の会費は1万円/年であり、つきあいで入っていることもあり、日本会議の議員懇談会の会員が多いからといって過大評価するのは誤りであること、敵の中にも味方を作っていくべきであり、いわゆる左派政党だけでなく超党派の運動が必要だとの指摘があった。
さらに、横浜市、藤沢市、東大阪市のたたかいの報告、平和フォーラム・藤本泰成さんの発言があった。
韓国から特別報告
最後に、韓国からの特別報告として韓国史教科書の国定化問題についてアジアの平和と歴史教育連帯常任共同代表の安秉佑さんから報告があった。
韓国でも「ニューライト」が出現し、韓国史の記述を変更しようとしているとのことである。植民地近代化論を主張したり、現在の教科書は偏っているとして「肯定の歴史」を教えるべきなどというものである。「ニューライト」は政府の全面バックアップを受けながらも全国で1校が採択したのみで採択率は事実上ゼロであること、そのため朴大統領が教科書の国定化に方針転換したことが報告された。
しかし、国定教科書を執筆する全国の700人余りの教授たちが執筆を拒否、歴史教師2万人が反対し、大学では4万人が反対、中高校生は毎週デモをおこなっているとのことである。
全国から仲間が
首都圏、名古屋、関西、中国、四国、九州など全国各地から育鵬社採択に反対する人たちが集まった。みんなの思いは、次の採択(2019年)まで待っていられない、なんとしても採択のやり直しをさせようというものである。
2017年には小学校道徳の採択、2018年には中学校道徳の採択がおこなわれる。育鵬社教科書を採択させないためにさらにたたかっていきたい。(矢田)
6面
2016参院選
安倍政治に終止符をうとう
改憲3分の2議席阻止
野党共闘の前進
参議院選挙が終盤に入った。マスコミは自公の優勢を伝えているが、1人区では全選挙区で野党共闘が成立し激しい攻防が繰り広げられている。複数区でも改憲派に3分の2議席をわたさないたたかいが続いている。昨年来の「アベ政治を許さない運動」が発展することを恐れる安倍は、「民共共闘は野合」「共産党は暴力革命めざす」などと反共攻撃を強めている。野党共闘が安倍打倒闘争として継続することへの危機感のあらわれだ。
沖縄では、自公は6月県議選で敗北を喫し、参議院選でも現職の沖縄北方担当大臣・島尻安伊子が落選の危機にある
争点は改憲と貧困
参院選の最大の争点は、改憲勢力の3分の2議席を阻止することである。安倍の宿願は「戦後レジームからの脱却」すなわち改憲である。アベノミクスは、この改憲攻撃をスムースにおこなうための装置だ。第一次政権での教育基本法改悪と防衛庁の省昇格、2013年末の秘密保護法制定、15年9月の安保関連法強行と、戦争国家化を激しく進めてきた安倍は、あとは明文改憲へ改憲発議・国民同意取り付けを最終課題としているのだ。今次選挙で改憲勢力が3分の2議席を確保するなら、安倍は一気に「テロ・大災害対策には緊急事態条項が必要」と、明文改憲に進んでくる。改憲勢力に参議院3分の2の議席を与えてはならない。
もう一つの争点は、アベノミクス3年間で深刻化した格差・貧困問題だ。豊かになったのは輸出関連大企業だけであり、労働者の実質賃金は下がる一方だ。トリクルダウン(富がしたたり落ちる)効果のウソをごまかすために打ち出されたのが「一億総活躍社会」である。こんなものにだまされてはならない。
戦争国家と格差・貧困社会は表裏一体である。アベ政治がこのまま続けば、政治(戦争国家化)と経済(貧困拡大)の両面で、民衆は生きていくこと(生存権)が否定されることになる。
新自由主義の打破へ
イギリスのEU離脱決定が世界に衝撃を与えている。アメリカ大統領候補のトランプやイギリスのEU離脱派・ジョンソン(前ロンドン市長)に見られるように、露骨な排外主義煽動が跋扈している。安倍政権は「強い日本をとり戻す」をかかげた独裁政治をめざしている。
今次参議院選挙は、戦争と格差・貧困を作りだす新自由主義攻撃とのたたかいである。戦争法反対闘争や反原発闘争、あるいは反貧困の闘いなど、現実の闘いの中で結びついた野党候補の勝利のために奮闘しよう。野党共闘の中身を強化し、真にアベ政治を打倒する内容に発展させていこう。特に沖縄選挙区のイハ洋一さん、山口選挙区のこうけつ厚さん、比例区(全国区)の福島みずほさんらの勝利を実現しよう。改憲勢力に3分の2議席を与えず、アベ政治に終止符を打とう。(城戸健二)
美浜を原発のない町へ
6月11日 集会とデモに300人
若狭湾一帯から集まった300人が美浜町をデモ行進(6月11日) |
6月11日、関西電力・美浜原発がある福井県美浜町で、「美浜を原発のない町へ―原発のない町づくりを考えよう」という集会が開かれ、美浜町をはじめ隣の敦賀市や若狭一帯から300人が集まった。
美浜原発の1・2号機はすでに廃炉が決定しているが、1976年に運転開始した3号機は40年超えの運転を認めるのか、それとも廃炉かが焦点になっている。規制委員会は「美浜3号機の再稼働にむけて、審査の主要部分を終えた」と5月に発表している。
豊かになれるか?
集会は、〈若狭の原発を考える会〉木原壯林さんによる「老朽美浜原発3号機の再稼働を許さず、原発のない町づくりを進めよう」と題した報告で開始された。木原さんはとりわけ老朽原発の危険性を述べ、原発再稼働を企む電力会社、規制委、政府、財界は倫理的に腐朽化し、人々をいかに愚弄しているか弾劾した。その上で、原発は地域を豊かにするか? と設問し、原発が地域を決して豊かにしないことを述べた。
そして、四国電力の窪川原発反対運動のリーダーだった人の「窪川町には農業と畜産で80億円、林業で30億円、加工産業は150億円近くの収入があった。たかだか20〜30億円の税収に目がくらみ、耐用年数数十年程度の原発のために2000年続いてきた農業を捨てるのは愚の骨頂」という発言を紹介し、原発のない町づくりを進めようと呼びかけた。
市民が決める
福井原発訴訟滋賀弁護団長の井戸謙一弁護士は「司法の力で原発のない若狭へ」と題して講演。福島第一原発事故の衝撃をのべ、「原発は、過酷事故を起こし得ることが前提」と語り、若狭湾や敦賀半島の活断層の問題や、大津波の恐れを述べた。その上で国際的な基準である「深層防護」の考え方に照らすならば、避難計画を審査しない新規制基準は、確立した国際基準に抵触しており、原子力基本法、原子力規制委員会設置法に違反していると喝破した。そして、原発の許容性は専門家が判断すべきことなのかを問い直し、社会が受け入れることができるリスクの限度を決めることができるのは市民であり、判断権を専門家から市民が取り返さなければならないと述べた。「そして、一つ一つの原発の再稼働に徹底的に反対しよう。仮に、再稼働を防ぎえなかったとしても可能な限り遅らせよう。」「原発は人々の間に分断を持ち込む。この国のありようを決めるのは市民である!」と呼びかけた。
美浜の魅力を疎外
最後に本集会共同代表の河本たけしさん(美浜町議)が閉会のあいさつに立ち、「今日、会場に足を運んでいただいた皆さんと一緒に『原発のない町づくり』の実現を目指したい」、「今日をそのスタートにしたい。スタートの準備段階で、必ずやらなければならないことがあります。美浜の魅力を疎外している『原発をなくす』ことです」、「皆さん、今日の行動を力に、すべての原発を廃炉に追い込みましょう」と呼びかけた。
集会後、関電原子力事業本部前を経て、JR美浜駅まで町内をめぐるデモがおこなわれた。
町始まって以来
この集会は、町議の河本たけしさんが中心になり、「住民の力で3号機の廃炉を勝ち取り、美浜を原発のない町へ、原発のない街づくりを考えよう」と呼びかけ、「美浜を原発のない町へ! 実行委員会」を立ち上げ、準備をしてきた。
美浜町には、若狭にある美浜、大飯、高浜原発を統括している関西電力原子力事業本部がある。いままで関電の支配が行き届いており、少なくとも美浜原発が完成して以降、原発反対を掲げた集会やデモは一度もおこなわれてこなかった町という。町民は原発に不安を抱きながらも、関電や原発に対してものを言えない状態においやられてきた。3・11フクシマ以降もその状態が続いてきた。そのような美浜の町で公然と反原発を訴える集会とデモが300人の結集で勝ち取られた。町始まって以来の出来事といっても過言ではない。
夏期特別カンパにご協力をお願いします
改憲、戦争、新自由主義の安倍政権によって格差・貧困が拡大し、このままでは生きていけない時代になろうとしています。いまこそ安倍政権打倒のために、持てる力のすべてを出してたたかう時です。そのための闘争資金が必要です。『未来』読者のみなさんにカンパを心から訴えます。
郵便振替
口座番号 00970―9―151298
加入者名 前進社関西支社
郵 送
〒532―0002 大阪市淀川区東三国 6―23―16
前進社関西支社