未来・第201号


            未来第201号目次(2016年6月16日発行)

 1面  とめろ アベ暴走政治
     全国で総がかり行動

     沖縄県議選 翁長与党が圧勝
     日米地位協定の改定求める

     「戦争法」は違憲
     713人が提訴

     伊勢志摩
     G7サミットに抗議
     アジア各国から闘争に参加

 2面  京丹後市
     住民の自治と安全守れ
     米軍レーダー基地の撤去を

     戦争法廃止 安倍退陣へ
     6政党が共闘アピール
     京都

     6・5総がかり行動広島
     原爆ドーム前で集会

     検証
     オバマ大統領の広島演説
     安保強化と核保持の宣言

 3面  主張
     社会保障の解体を許さない
     7月参院選の重大争点      

     大飯控訴審 第8回口頭弁論
     関電の態度は非科学的   

     5・22金時鐘講演会
     詩は時代の予兆を表現

 4面  “思想・良心の自由を侵害”
     最高裁決定 根津さんの勝利が確定

     日本軍「慰安婦」
     吉見裁判 控訴審はじまる
     前衆院議員 桜内文城を追及

     戦争法下の「君が代」処分
     教員が率先して愛国心育成

 5面  地域に根ざした憲法集会
     アベ政治に怒り充満      

     座り込みに 若い世代が署名
     5・15 狭山再審を求める市民の会

     読者の声
     電力自由化、もう一つの視点

 6面  安倍政治を終わらせよう
     伊丹市で国政報告      

     「一億総活躍」って、なに?
     介護保険制度の大改悪A
     土田花子

     夏期カンパのお願い

             

とめろ アベ暴走政治
全国で総がかり行動

国会周辺でおこなわれた総がかり行動に4万人が参加、安倍政権をきびしく批判(5日)


戦争法廃止!貧困・格差是正、参院選野党勝利、安倍政権退陣おおさか総がかり統一宣伝行動(5日 大阪駅北)


沖縄県議選 翁長与党が圧勝
日米地位協定の改定求める

6月5日、国会周辺で「明日を決めるのは私たち―政治を変えよう6・5全国総がかり行動」が、全国100カ所以上で同様の行動がおこなわれた。また同日投開票の沖縄県議会議員選挙では、翁長雄志沖縄県知事の与党が定数48のうち27議席を獲得し圧勝した。辺野古新基地反対派は31議席となり、「普天間基地撤去・新基地建設反対」という沖縄県民の意志はゆるぎないことが示された。オール沖縄会議は6月19日に那覇市の奥武山(おうのやま)陸上競技場などで米元海兵隊員による女性殺害事件に抗議する県民大会開催を決めた。沖縄県民の闘いと連帯し、安倍政権打倒に向けてたたかおう。(2面に関連記事)

【東京】5日、国会周辺で「明日を決めるのは私たち―政治を変えよう! 6・5全国総がかり大行動」(実行委員会主催)が開かれた。会場は、国会前、農水省前、日比谷公園の3カ所に設けられ、4万人が参加した。
各会場での発言者は、戦争法を強行し憲法改悪へと突き進む安倍独裁政治をきびしく批判した。7月10日投開票の参議院選挙は32の1人区すべてで野党共闘が実現した。民進党、社民党、共産党の発言者は、市民の力によって共闘が実現し、その政策も一致が進んでいることを報告した。 この日は会場となった3カ所にたいして右翼の街宣車十数台が妨害をはたらいたが、これをはね返して総がかり行動の成功が勝ちとられた。

【大阪】5日、大阪駅前の総がかり行動では、野党4党と市民による共同演説会が開かれ1000人が参加した。 共産党の渡辺ゆいさん、民進党の尾立源幸さんと、社民党と生活の党の代表が発言。「憲法改悪をめざす安倍政権に3分の2議席を与えるな」「大阪都構想反対から転向した元自民党のおおさか維新候補を落とそう」と呼びかけた。後半は安保関連法に反対するママの会が「選挙に行って政治を変えよう」と訴えた。

7日、〈安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合〉は、民進、共産、社民、生活の4野党との間で、参議院選にむけて政策要望書を交した。(6面関連記事)

「戦争法」は違憲
713人が提訴

原告先頭に大阪地裁へ(8日)

集団的自衛権の行使を容認した安保関連法は憲法違反であり、平和的生存権が侵害されたとして、自衛隊の海外派兵の差し止めと1人1万円の国家賠償を求める訴訟が、8日、大阪地裁に提訴された。提訴したのは713人。
戦争法を違憲とする集団訴訟は、これまで東京、福島、高知でおこなわれており、計700人超が訴訟に参加している。この日、単独では最大の原告団が生れた。
提訴後、弁護士、宗教家、戦争体験者やその家族ら100人が違憲訴訟の勝利にむけて中央公会堂で集会を開催した。

伊勢志摩
G7サミットに抗議
アジア各国から闘争に参加

サミット粉砕かかげ津市内でデモ

5月26日、伊勢志摩サミットの初日、三重県津市内で「G7サミット反対5・26津集会」が開かれ、全国各地から100人が集まった。集会は〈「対テロ戦争」と天皇制賛美のG7伊勢志摩サミット粉砕実行委員会(反サミット実)〉が呼びかけた。
集会は冒頭、反サミット実が基調的発言をおこない、続いて〈伊勢志摩サミットを考える会・三重〉など地元から発言。
休憩をはさんで後半は、外国からのたたかう仲間の発言で始まった。まずAWC韓国委員会からビデオメッセージ、つづいて民主労総解雇者復職闘争特別委員会(全解闘)から2人が発言。その後、BAYAN(フィリピン新民族主義者同盟)日本支部、つくば弾圧(後述)の報告、アイヌ民族、兵庫、大阪、名古屋、東京などの発言が続いた。
最後に、翌日の集会で採択する2本の決議案が提案された。
集会終了後、デモに出発。会場の津市勤労者福祉センター(サン・ワーク津)からJR津駅へ、警視庁機動隊の不当な規制をうちやぶり意気軒昂とやりぬいた。
翌27日は、反サミット実の呼びかけで、志摩市・木場公園でサミット抗議集会がおこなわれた。集会後、市内約5キロをデモ行進し、デモ終了地点で内閣府に抗議申し入れをおこなった。

予防拘禁(逮捕)

サミット開催を前に、全国で予防拘禁=サミット抗議行動をやらせない弾圧があいついだ。 関西では、5月2日、大阪府警公安三課が16カ所の不当捜索、19日には3人を逮捕。さらに20人近い人びとにたいして電話や文書で「府警本部などへの出頭」を強要している。
関東では、茨城県警が24日1人を逮捕。これは3月18日のG7大使館職員への抗議行動(プラカード掲示)を誰でもが通行している場所でおこなったことを2カ月以上もたってから「建造物侵入」だとしてでっち上げたもの。サミット抗議のため三重県に向かう前日の逮捕だという。

地元の声

5月7日に津市内でひらかれた集会「サミットってなんだ」での発言を紹介する。
「サミット会場がある志摩市では、2カ月前から志摩市内に警察官が入ってきて、1カ月半前からは2万人近い警察官が集中し、市内の風景が一変した。あちこちに警察官が立ち、市民は息苦しい、窮屈な生活を強いられている。ホテルは警察官の宿舎となり、市民は日帰り温泉も利用できなくなった。」
「サミット期間は3日間学校を休校にするというニュースを耳にして、呆気にとられた。おそらく学校現場は大わらわであろう。」

2面

京丹後市
住民の自治と安全守れ
米軍レーダー基地の撤去を

米軍Xバンドレーダー基地がある京丹後市宇川地区でおこなわれたデモ(5日)

6月5日、「米軍Xバンドレーダー基地撤去!京丹後市は住民の自治と安全安心を守れ! 6・5京丹後現地総決起集会」が、宇川農業会館であり、350人が結集した。今回の集会は、米軍Xバンドレーダー基地反対近畿連絡会だけの主催ではなく、実行委の主催として、フォーラム平和関西ブロックが実行委に参加。地元では「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」が協賛した。

沖縄と韓国から

また今回の行動には、沖縄から県議選の真っただ中で、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんと、映画「戦場ぬ止み」監督の三上智恵さんが参加し、沖縄の熱いたたかいと連帯が持ち込まれた。
韓国からは、「平和と統一を開く人々」のオ・ヘランさんが参加。前日夜の京都市内での連帯交流集会 では、韓国にXバンドレーダーと一体で開発されたサードミサイルが配備されようとしていて、それがオ・ヘランさんの出身地である大邱に配備されようとしていると説明した。 神奈川からは、「基地撤去を目指す県央共闘会議事務局長の越川好明さんが参加。越川さんも前夜の京都集会で、神奈川の米軍基地について、原子力空母の母港横須賀とその艦載機の発着訓練をする厚木基地と、在日米陸軍の中枢である座間と、先日爆発事故のあった相模原などの基地について説明した。こうした全国の反基地闘争と連帯して、京都での米軍基地の撤去を求めるたたかいを推し進めることを確認した。

地元住民の決意

集会では、地元宇川「憂う会」からは長老の増田光男さんが発言し、「老体にむち打って基地撤去まで頑張ります」と挨拶した。
同会の永井事務局長は、この間の現地情勢を詳しく説明した。
4月24日の京丹後市長選で現職だった中山市長が破れ、三崎市長になったことに関して、事前の反対派の運動によって、三崎さんが「米軍基地へのあらゆる不安を解消する、新たな仕組みをつくる」と公約したことで、今回の選挙では革新系が候補を出さなかった。同じ自民党であり、基地に賛成しているとはいえ、反対派を無視する中山とは違う三崎さんに、革新系の票が入ったことで市長の交代が可能になった。三崎新市長に公約を実現させるために、今も続く騒音問題や、解消されない交通事故の不安や、米軍属の住宅建設で問題になったことなどの解決をめざし、さらに運動を推し進める、と話した。(今津)

戦争法廃止 安倍退陣へ
6政党が共闘アピール
京都
6政党の代表が壇上からあいさつ。市民団体とともに参院選の勝利へ共闘をアピールした(4日京都市内)

6月4日京都では、6月5日におこなわれた国会包囲大行動と全国での総がかり大行動に連帯して、「戦争法廃止!安倍内閣退陣! 6・4京都大行動」が、円山野外音楽堂でおこなわれ、2000人を超える人が集まった。この日、関西合同労組を含め、84団体の呼びかけで、京都での総がかりの大行動になった。

安倍退陣を訴え

7月10日の参議院選挙に立候補予定の、民進党の福山哲郎さんと共産党の大河原としたかさんをはじめ、社民党の野崎さん、新社会党の駒井さん、生活の党の豊田さん、緑の党の長谷川さんの、6政党の6人が壇上で、手を取り合い、「戦争法廃止!安倍内閣退陣!」へ共にたたかおうと挨拶した。
6政党の発言に続いて多くの市民団体のスピーチがあったが、冒頭に京都沖縄連帯集会実行委の佐々木真紀さんが沖縄の米軍属による女性殺害遺棄事件を弾劾し、沖縄の6・19県民大会に連帯し、京都で6・7緊急集会をおこない、6・19の総がかり行動を沖縄連帯行動としておこなうことを提起し全体で確認された。

延々と続くデモ

最後にこの行動を最初に呼びかけた京都共同センターと1000人委員会京都連絡会と市民アクション@きょうとの3団体が発言し、集会後、四条河原町を通って、市役所前までの延々と続くデモをおこなった。

6・5総がかり行動広島
原爆ドーム前で集会

5日、広島ではストップ! 戦争法 ヒロシマ実行委員会が「戦争法廃止! 安倍内閣退陣! 6・5ヒロシマ集会」を原爆ドーム前で開いた(写真)
集会には千人をこえる人たちが集まった。
実行委員会共同代表の山田延廣弁護士は「立憲主義と平和憲法の無視は許せない」と。平和団体や労組などの発言に続き、ママの会のメンバーは「だれの子どもも殺させない」と訴えた。
集会後、参加者は本通り商店街から原爆の子の像前までデモ行進。多くの人から拍手や声援があがった。広島県内では三次、三原、尾道、福山でも集会がおこなわれた。

検証
オバマ大統領の広島演説
安保強化と核保持の宣言

日本のマスコミは挙げて賛辞を送っているが、これだけは認めることができない。オバマ米大統領の広島演説は冒頭から被爆者を愚弄している。
「71年前、明るく、雲ひとつない晴れ渡った朝、死が空から降り、世界が変わってしまいました」
これは、原爆を落とした当事者が言う言葉ではない。
演説全体を通じて、戦争を自然災害のように描き、人間の「本能から生まれた」と言う。無責任きわまりない。
「人間の…能力が…とてつもない破壊能力を私たち自身にもたらすのです」
戦争を引き起こすのは、支配階級、帝国主義者、政治家・軍人、官僚と軍事産業である。オバマはその代表ではないのか。その立場からオバマは、こともあろうに広島の地で「核」の「保持」と核兵器を含めた「自衛」の必要性を宣言した。
「人間の悪をなす能力をなくすことはできないかもしれません。だからこそ、国家や私たちが作り上げた同盟は、自衛の手段を持たねばなりません」
現に米国は、世界中の核弾頭の約47%に相当する7100発を保有し、オバマは、プラハ演説でノーベル賞を受賞した後に、核兵器とその運搬手段の最新鋭化のため、今後30年間で1兆ドルの予算を承認している。
直前の朝日新聞の書面インタビュー(以下、「インタビュー」)では、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)にたいする日米韓3カ国の「抑止力と防衛力の強化」のための「協力」を説いている。他方では、私が生きているうちに「核なき世界を達成することはできないかもしれない」などと「絶望」を語る。主体的意思としての核の廃絶、戦争の根絶などはどこにもない。
演説では傲慢にも、原爆を投下したパイロットを許すことを被爆者に説いている。他方、沖縄で20歳の女性を殺害した米軍属について、インタビューで、「この一個人による許しがたい行動」「多くの米軍関係者と家族らを代表しているわけではない」と開き直る。原爆投下も女性殺害も個人の犯罪であると同時に、米国と日本という国家、米軍(と旧日本軍および自衛隊も)という軍隊の犯罪である。それをあいまいにして、謝罪はしないと開き直ることなど許されるものではない。
インタビューでオバマは、安倍とともに広島を訪問する意義について語る。
「かつての敵国同士が同盟国になれる…ことを世界に示す」
帝国主義戦争の戦犯およびその後継者同士が、強盗的な同盟関係の強化と再確立のためにヒロシマを利用したのである。
安倍は、オバマと同時に発した「ステートメント」で、オバマの広島訪問を自分が実現したかのように「歓迎」し、「世界に『希望』を生み出す同盟」などと、日米安保同盟をべたぼめにしている。犯罪的で無責任きわまりない。
インタビューでオバマは、辺野古新基地建設にあくまで固執している。
「米軍(再編)計画が完了すれば…海兵隊の駐留はほぼ半減し…残る駐留米軍は、より人口が少ない地域に集約されることになる」
このことは、日米安保同盟こそ、沖縄人民をはじめ、日本の労働者人民、アジア人民、および米国の労働者人民の共通の最大の打倒目標であることを示す。
安倍は伊勢志摩から広島入りするのに、原爆ドームの真ん前の市民球場跡地に自衛隊の軍用ヘリで降り立った。広島を戦争法の実体化と沖縄新基地建設、原発再稼働のために利用したのである。オバマは、往復とも岩国米軍基地を使い、海兵隊が管理する専用ヘリと空軍が管理する専用機を使い、広島に行く前にまず岩国で米軍兵士を激励した。地位協定ゆえのわがもの顔ぶりではないか。そのうえ広島に、「核のフットボール」と呼ばれる核攻撃命令の暗号を収めたブリーフケースを持って乗り込んだ。反戦、反核を願うすべての労働者人民を逆なでする行為である。 ヒロシマ・ナガサキの怒りで安倍とオバマを追及しよう。(落合 薫)

3面

主張
社会保障の解体を許さない
7月参院選の重大争点

1日、安倍首相は来年4月に予定していた消費税率の10%への引き上げを2019年10月まで2年半再延期することを記者会見で正式に表明した。1年半前、安倍は増税先送りを決めた際、「2017年4月には、確実に10%へ引き上げる」と断言していた。その根拠は、「アベノミクスの実行によって確実に景気が好転する」というものであったが、その予測が見事に外れたということである。もはやアベノミクスの破産は隠しようのない事実となった。安倍は記者会見で「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と息巻いたが、新聞・テレビからは「空ぶかし」と揶揄される始末だ。
今回の増税先送りにともなって安倍政権は、実施予定だった子育て支援、医療、介護、年金などの社会保障の充実策についても先送りするつもりだ。自民党は、赤字国債を代替財源にしないことを参院選の公約に明記することを決めている。あたかもそうすることが、「財政健全化」への取り組みであるかのようにアピールしているのだが、これはとんでもないまやかしである。
そもそも民主党政権時代に決定した「消費税増税分を社会保障充実策の財源とする 」という「税と社会保障の一体改革」が国家による詐欺行為であったということだ。消費税は、それがはじめて導入された1989年から今日まで、その税収分の約8割は、法人税減税の財源にあてられていたのである。「社会保障充実策」というのは本来の目的である法人税減税の隠れ蓑なのだ。 しかも消費税というのは逆進性の高い、極めて不公平な税制である。それは、消費税の滞納額の大きさに示されている。国税庁が発表した2014年度租税滞納状況によれば、消費税の新規発生滞納額は3294億円である。所得税、法人税、相続税などを合わせた全税目の新規発生滞納額は5914億円なので、消費税の滞納は全体の57%を占めている。

極端な大企業優遇

なぜこのような巨額の滞納が発生するのか。それは消費税の納税義務者が事業者だからだ。消費税を価格に転嫁できずに赤字になった事業にも、納税の義務がある。中小零細の事業者ほど、消費税の負担は重くなる。これが滞納の最大の原因である。
一方、消費税には輸出還付金という制度があり、輸出大企業は消費税の税率が上がれば上がるほど還付金が増えるという仕組みになっている。中小零細を叩くだけ叩いておいて、大企業を肥え太らせる。これが消費税なのだ。
安倍政権は昨年末、法人税実効税率を2016年度に29・97%、2018年度に29・74%と2段階で引き下げることを正式決定した。第2次安倍政権が発足する前の2011年度の法人税実効税率は、40・69%だった。わずか5年で10%も引き下げているのだ。これほど大企業を優遇しておいて、社会的な格差が拡大しないほうがむしろ不思議である。

61兆円の課税逃れ

パナマ文書の暴露で明らかになったように、世界の大企業はタックスヘイブン(租税回避地)を利用して巨額の脱税・節税をおこなっている。日本の企業は有名なタックスヘイブンであるイギリス領ケイマン諸島を利用して61兆円もの巨額の課税逃れをしている疑いがある。これに現在の法人税率を適用すれば、約14兆円の税収となる。これは消費税の7%分の税収に匹敵する。
「財政の健全化」をうたうのであれば、真っ先に大企業の課税逃れを徹底的に追及すべきだ。そして昨年末決定した法人税引き下げを撤回すべきである。それをせずして、社会保障を先送りにすることにいったい誰が納得するだろうか。
社会保障問題は7月参院選挙の重大な争点である。アベノミクス破産のツケを社会保障へのしわ寄せで支払わせるというやり方を断じて許してはならない。(汐崎恭介)

大飯控訴審 第8回口頭弁論
関電の態度は非科学的

6月8日、名古屋高裁金沢支部で関西電力大飯原発3、4号機運転差し止め訴訟の第8回口頭弁論が開かれた。傍聴席の定員をこえる傍聴者がつめかけ、抽選がおこなわれた。2時間半の長丁場の裁判だった(写真は裁判所に入る原告団)
前回口頭弁論で、原告は福島県飯舘村での現場検証と大飯原発敷地内で観測した地震動のデータ提出を求めていた。しかし裁判所の態度はこれに消極的だった。
今回はさらに突っ込んで、島崎邦彦さん(元原子力規制委員会委員長代理)の陳述書が提出された。陳述書で島崎さんは「地震モーメントを活断層の情報から推定する場合、入倉・三宅(2001)の式を用いると過小評価となる可能性がある」と指摘した。
報告会で、弁護団は「関西電力は自分に都合のよい計算式を使い、生データを出さずに安全問題をブラックボックスに閉じ込めている。第3者による検証ができない・させないという非常に非科学的な態度である」と、関電側をきびしく批判した。三菱自動車の燃費偽造と同じことをやっていると思った。次回口頭弁論は10月19日におこなわれる。(田端)

5・22金時鐘講演会
詩は時代の予兆を表現

左から趙博さん、金時鐘さん、金洪仙さん

5月22日、「原発あかん・橋下いらん・弾圧やめて! 5・22金時鐘講演会」(主催:同実行委員会)が生野区民センターでおこなわれた。「フクシマと結ぶ 音の力 いのちの言葉」集会は、今回で9回目となる。近隣に住む在日朝鮮人の参加者も多く、会場いっぱい450人が参加した。
笑いと怒り、いつもながら集会は盛り沢山だ。第1部はナオユキさんのコメディーから始まり、川口真由美さんの辺野古現地レポートと歌、おしどりマコ&ケンさんの福島原発事故レポート、金君姫さんのサルプリの舞、菅野みずえさんの福島報告があった。 第2部は金時鐘さんの対談で、聞き手は趙博さんと金洪仙さん。金時鐘さんは、@朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核実験、A詩とはなにか、Bオバマの広島訪問、C今日の状況について、次のように語った。

北朝鮮の核実験

私は少なくとも60年代前半までは朝鮮民主主義人民共和国を信奉していた。私は北朝鮮に人一倍負い目を背負っている。しかし、北朝鮮の核問題に関しては、北朝鮮の言い分に一理も二理もある。今年3月には「斬首作戦」と称する米韓軍事演習が最大規模でおこなわれ、米国は北朝鮮にたいして挑発の限りをつくしている。
日本では、「北朝鮮は何をするかわからない国」という北朝鮮脅威論があおられている。好き嫌いは別にして、われわれは冷静になる必要がある。朝鮮戦争での「休戦協定」は今日も継続している。まず、この現実を何とかしなければならない。なによりも「平和協定」を結ぶ必要があるのだ。北朝鮮はこの事を一貫して主張している。これに反対しているのがアメリカなのだ。「平和協定」が実現し、北朝鮮の中に新たな風がはいれば、北朝鮮の人民はかならず主体的に立ち上がるだろう。

詩とはなにか

詩人は「炭鉱のカナリヤ」で、「言語科学の巫女」と言ってもよい。詩を書く者は社会から逃げることなく、まっすぐに生きる。その中から、詩人は来るべき時代の予兆を感じ、それを言葉で表現する。体験の中から言葉は紡ぎだされるのだ。権力になびかず、権威者におもねらず、体制が存(ながら)えるところにひとりそっぽを向く。このように生きるのが詩人だ。

オバマの広島訪問

原子力は人類が作りだしたもので、地球上に存在してはならない火である。広島・長崎の原爆によって、日本は被害者になってしまった。原爆被害者意識からは、戦争にたいする加害の意識は出てこない。今、オバマの広島訪問で戦後70年にわたる民衆の営みを閉ざしてしまおうとする風潮がある。これは安保関連法ともつながっている。人類の十字架を背負う広島・長崎にしてはならない。強いられた死はみなむごい。

今日の状況

日本の気候はおだやかで、日本人はやさしい。「波風をたてない」「自分が係らなければ、災いはない」という日本人の意識は、生活の知恵でもある。しかし、これだけは知らねばならないという事にたいしては、あまりにも日本人は知らなすぎる。再び戦争をしようとする動きにたいして、抒情に流されることなく、たたかっていかなくてはいけない。歴史をみてもわかるが、軍隊を持たない国はどこからも攻められることはない。国が軍隊を持つから戦争をすることになるのだ。

民主主義が欠落

おしどりマコ&ケンさんは、福島第一原発の現状(地下水問題)と、ドイツで放射性廃棄物処分場を取材してきたことを報告した。マコさんはドイツ政策担当者の発言を紹介した。「我々は未知の領域の問題を解決しなければならない。こういう問題では専門家と政策担当者と市民が話し合い、じゅうぶん論議することが必要だ。これが民主主義だ」と。まさに日本の官僚に欠落しているのはこの認識ではないか。

モルモット以下

菅野みずえさんは、福島県浪江町から兵庫県三木市に避難している。甲状腺ガンが見つかり、今年に手術したとのこと。菅野さんは次のように語った。「福島県民はモルモット以下に扱われている。モルモットならば被ばくした線量くらいは教えてもらえるが、福島県の住民はそれさえ教えてもらえないのです。どうか皆さん、福島のことを自分のこととして考えてください」と訴えた。

明日への活力

サルプリは恨を解く舞。大阪には済州島4・3事件を体験した人が多く住む。金君姫さんの舞は人々を圧倒する迫力と表現力があった。4時間の長い集会であったが、参加者は笑いに身をほぐし、怒りに身をひきしめ、明日への活力を養った。(津田)

4面

“思想・良心の自由を侵害”
最高裁決定 根津さんの勝利が確定

2007年春の卒業式で、「君が代」斉唱時に不起立であったことを口実に、都教委から「職務命令違反」とされ、河原井純子さんが停職3カ月、根津公子さんが停職6カ月の処分をうけた。
一審東京地裁では、河原井さんの「停職3カ月処分」は取り消したものの、根津さんの「停職6カ月処分」は適法とし、両人の損害賠償請求を棄却していた。 ところが昨年5月の控訴審判決で、東京高裁(須藤典明裁判長)は、都教委による2人への処分は「裁量権の逸脱・濫用」で「違法」と認定、それぞれの処分を取り消し、さらに精神的苦痛にたいする慰謝料各10万円の支払いを命じた。原告側の逆転勝訴である。 この高裁判決にたいし、都が上告していたが、最高裁第3小法廷は、本年5月31日付で都の「上告を棄却」し、「上告審として受理しない」ことを「裁判官全員一致の意見で決定した」との「決定」を出した。

12年、最高裁の分断判決

このかんの東京都での処分撤回裁判において、2012年1月16日の最高裁判決で、「職務命令は違法とは言えない」として戒告処分を容認したものの、「戒告を超える重い処分は違法」とし、根津さんを除くすべての人たちの減給以上の処分を取り消した。減給以上の処分を取り消した点は一歩前進であるが、他方、「過去の処分歴等」がある場合は「戒告を超える重い処分」も可とし、根津さんの停職3カ月処分を容認した。
これ以降の裁判は、どれも同じ判決が続き、根津さんだけが敗訴し続ける状態が続いた。分断判決である。

機械的累積過重処分

しかし、昨年5月の須藤判決は、「根津について、2006年処分から2007年処分に至るまでの間に処分を加重する新たな個別具体的な事情はない」として、停職6月処分を取り消した。
「過去に同様の行為が行われた際に停職処分がされていたとしても、懲戒権者において当然に前の停職処分よりも長期の停職期間を選択してよいということにはならない」、「処分の加重を必要とするような特段の事情が認められるか否かという点に加えて、停職処分を過重することによって根津が受けることになる具体的な不利益の内容も十分勘案して、慎重に検討することが必要」とし、同一の「過去の処分歴」を使っての機械的累積過重処分を断罪した。
「停職6月処分を科すことは、…根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失う恐れがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える」と、停職6カ月の意味することを明示したうえで、「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や心情を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と明言し、憲法19条の実質的侵害に言及している。

3回でクビの大阪

都教委は「君が代」不起立をくりかえす教職員を最終的には分限免職にしようと狙っていたが、それは実質違憲違法であるという高裁判断がこの最高裁決定で確定した。
大阪では、大阪府教委が2回目の不起立をした教員に「次に職務命令違反を行えば免職もあり得る」と記した「警告書」を発しているが、上記判決からすれば違法と断定されたも同然で、「同一の職務命令違反3回で免職」という大阪府条例は最高裁からも否定されたに等しい。

日本軍「慰安婦」
吉見裁判 控訴審はじまる
前衆院議員 桜内文城を追及

5月31日、東京高裁で吉見裁判の控訴審が始まった。これは、2013年に桜内文城衆議院議員(当時)が日本軍「慰安婦」に関する発言の中で自著を捏造であるとしたのは名誉毀損にあたると、中央大学教授の吉見義明さんが提訴した民事訴訟である。

不当な1審判決

今年1月に出された地裁判決は、桜内が捏造としたのは著書ではなく著書の中の記述をさし、「捏造」とは「誤り」「不適当」等の意味であって、名誉毀損は論評の表明によるものに過ぎないとして免責した。
これにたいして、原判決は結論ありきで一般常識から外れたロジックを持つ非論理的なものであると控訴したものだ。
法廷では双方の本人と代理人からの陳述があった。吉見側は、原判決の不当性を論理的に指摘した。更に、命をもって抗議するとして自殺者が出た例まであるほどに、「捏造」というものは学者にとっては深刻な規定であると訴えた。

逆転の一歩を

桜内側は奇妙な論をさまざまに駆使しながら、本提訴は裁判所に日本軍「慰安婦」が性奴隷であったことを認めさせることを目的として起こしたものであると主張した。これは、「吉見見解は政府見解から外れている」なる主張と共に、権力に屈服せよという裁判官にたいする恫喝である。
裁判所が権力装置の一部でしかないのは今に始まったことではない。しかし、自らを立法府と称する行政府(5月16日、安倍発言)が独裁権力をふるうなかで、逆転のためにたたかわなければならない場でもある。次回口頭弁論は9月6日。

戦争法下の「君が代」処分
教員が率先して愛国心育成

「君が代」強制は戦争への道です(発言は奥野泰孝さん)

5月14日、「戦争法下の『日の丸・君が代』処分とたたかう集会」が大阪市内で開かれた。春の卒業式、入学式での「日の丸・君が代」強制との攻防を経て、毎年この時期に開かれている。主催は、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク。
冒頭、主催者から、卒業式・入学式過程でのたたかいの経過報告がおこなわれた。その後、たたかいの具体的な報告、弁護団からの報告、「処分撤回」など各裁判の現状報告、全国ネットからの報告をうけ、最後に大阪ネット・黒田伊彦さんがまとめ(以下、要約)を提起した。

「君が代」の解釈

このかんの処分撤回裁判であきらかになったこととして、職務命令による「君が代」起立斉唱の強制が「思想・信条の自由への侵害」であるとの批判をさけるため、府教委は、「『君が代』歌詞の解釈は各自の自由である」との主張を始めた。
戒告処分撤回合同裁判(原告7人)での2015年9月27日付答弁書で府教委は「国歌斉唱時の起立斉唱は、思想・良心の自由の基となる歴史観・世界観と関係のない、専ら服務規律の問題である」、「現在の国歌の『君が代』の題名、及び語句については、戦前と異なり、現憲法下において、国民が各自の考えに従って理解することが可能とされているのであり、国歌である『君が代』が『天皇の国』や『天皇の治世』について歌ったものと解されなければならない理由はない。」と述べている。
しかし実際は、音楽や社会の教科書で「自由に解釈してよい」とはされていない。国旗・国歌法の制定過程で出された政府見解に則った解釈に統一されている。99年6月29日の小渕恵三首相(当時)答弁の「『君』は天皇であり、『代』は本来、時間的概念だが、転じて『国』を表す意味もある」として、政府答弁書では「君が代」の歌詞全体の意味として「日本国憲法の下では、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと理解することが適当であると考える。」としている。
「君が代」起立斉唱の強制は、思想・良心・信条を侵していないと強弁するあまり、府教委は政府見解、教科書検定基準を無視してよいと言い出したのだ。

愛国心教育との関係

府教委は、国旗国歌条例は、服務規律の厳格化の問題であり、愛国心教育とは関係ないと主張する。
だが、同条例は「教職員における国歌斉唱について定めるところにより、府民、とりわけ次代を担う子どもが、伝統と文化を尊重し、それを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと並びに府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図ることを目的とする。」と規定している。 教職員に「君が代」起立斉唱を強制する方法で、「伝統と文化の尊重」「我が国と郷土を愛する意識の高揚」という教育内容を育もうとするものであり、単に職務命令を守れという服務規律の問題ではないのである。教師が模範を示す「率先垂範」行為として一体化しているのだ。
さらに率先垂範だけでなく、不起立者への処分という服務規律の厳格化が、児童生徒の愛国心育成の手段となっていることを看過してはならない。不起立者を処分することで、「不起立は悪いことだから罰せられるのだ、お上(権力)の言うことは正しいのだ。黙って従っておれば良い、従えない者は排除されても当然な『非国民』だ」という心情を刷り込んでいくのである。

慣例上の儀礼的所作?

府教委は、起立斉唱は「慣例上の儀礼的所作である」から「児童生徒、保護者らに対する国籍、人種などを理由とする差別を生み助長することはない」と主張する。
しかし、高等学校指導要領解説特別活動論(P.80)では、卒・入学式での国旗掲揚・国歌斉唱の意義を「日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てる」「国家など集団への帰属感を深めるよい機会」だとし、それに則って大阪府教育長通達でも「日本人の自覚を育て」とされている。在日韓国・朝鮮人や外国籍児童生徒、その保護者に日本国家への帰属感と日本人としての自覚を強いることは、同化の強制であり、人権侵害である。

5面

地域に根ざした憲法集会
アベ政治に怒り充満

5月4日、兵庫県伊丹市で、「戦争法は廃止! 憲法改悪は許さない1000人集会」が開かれ(主催は5・4憲法集会実行委)、午前中の映画と午後の講演会にあわせて1110人が参加した(写真)
三上智恵監督の映画『標的の村』は各地で好評のうちに上映されてきたが、この日は憲法週間に多くの人に見てもらおうと無料上映。近隣の人を中心に250人が映画を鑑賞した。
上映後は関西の辺野古行動をけん引している釜ヶ崎日雇労働組合の三浦俊一さんから、最新の現地報告があった。また三線演奏を戎剛さんがおこない、沖縄への思いが深まった。

与党の過半数割れを

午後2時からの本集会は、大島淡紅子さん(宝塚市議)が司会。高原周治共同代表(前尼崎医師会会長)による開会の挨拶で始まった。
講演Tは東京都世田谷区長の保坂展人さん。今夏から施行される「18歳選挙権」について、自己の中学時代の政治活動から語り始めた。そして90万区民相手の世田谷区長として、青少年にどう向き合ってきたか、また区政全般についても、安倍の中央集権・格差拡大・命の軽視の政治と違う政治を、区民と一緒になって作る過程を縦横無尽に語った。
講演Uは落合恵子さん。連日全国を回りながら、戦後社会は自由にモノが言えるようになったが、それでも女性や子どもや高齢者が大切にされない社会としてあった。とりわけアベ政治はその極致であることを、憲法に繋げながら鋭く解き明かし、参議院選挙では与党の過半数割れが必要と訴えた。

沖縄・原発・戦争

続く4人の市民アピールは、沖縄闘争をたたかう三浦俊一さん。宝塚で30年以上にわたって原発の危険性を訴えてきた田中章子さん。元伊丹駐屯地の自衛隊レンジャー部隊員であった山田清二さん(全港湾大阪支部副委員長)の発言には驚きの声が上がった。若い世代を代表して、ミナセン尼崎の弘川欣絵弁護士が発言し共感をよんだ。
また参議院議員の水岡俊一さんはアベ政治による独裁への道にたいして、民主主義の大切さを説いた。
最後に発言者と集会参加の自治体議員と衆議院選予定候補者が壇上に上がり、坂本三郎共同代表(部落解放同盟兵庫県連委員長)の発声で、「団結がんばろう」を三唱した。
5月の連休のど真ん中、3日には全国各地で大規模な集会が開かれたが、連日の行動ながら地域に根づいた憲法闘争に1110人も参加したことは、憲法改悪とアベ政治への怒りの充満を示している。(久保井)

座り込みに 若い世代が署名
5・15 狭山再審を求める市民の会

5月15日、狭山再審を求める市民の会・こうべの第4回座り込み行動がJR神戸駅前でおこなわれ、参加した(写真)
午前10時〜午後4時までの長時間の取り組みだったが、入れ替わり立ち代わり、30人ほどの人々がテントに詰め、ビラやマイクアピールで狭山再審を訴えた。
テントのまわりには、脅迫状と石川さんの筆跡を並べたボードや、被害者のものとされる万年筆が置かれた石川一雄さん宅の鴨居の原寸大の模型が展示された。筆跡については、「同じだと思うか、違うと思うか」を問うシール投票が呼びかけられたが、「違うと思う」に20を超える投票が集まった。
座り込みでは様々な出会いがある。「自分は石川さんと同じ環境で育った」という男性。「ここに来れば会えると思った」と言ってテントに恩師を訪ねてきてくれた女性は「高校生の時に狭山集会に連れて行ってもらって、『こんなに部落のきょうだいがいるんや』と思って泣いて、石川さんのたたかいにまた泣いて…」と語った。
ほかにも、「初デート」だという若いカップルや、高校生のグループらが、熱心に筆跡を見比べ、署名をしていってくれた。この日集まった署名は29筆。例年参加しているが、今年は特に若い人たちによる署名が増え、心強い思いがした。(神戸 深谷)

読者の声
電力自由化、もう一つの視点

東日本大震災と福島原発事故を機に、電力会社への社会的反発に乗じて電力自由化が実施された。まさに「ショックドクトリン」だ。
電力自由化を主導しているのは新自由主義派の経産省官僚。その目的は電力独占供給体制の破壊と電力料金の所得再分配機能を再編することだ。規制に守られた既得権益と弱者保護の両面を切り捨てて資本の生産コストを下げ、その矛盾を社会全体に押しつけようとしている。まさに新自由主義攻撃である。

大口使用者のために

周知のように電気料金は逆進性の強い三段階料金制度をとっており、電気の大口使用者ほど多額の料金を払っている。これが電力産業労働者の相対的に高い給与の源泉となり、不採算過疎地域に電気を安定供給する原資ともなっている。自由化で新たに参入する新電力会社の大半は、もともと割高な第三段階料金を割引する。つまり一般家庭ではなく資本が得する料金設定で、営業対象も基本は大口使用者だ。
その結果、例えば、一般家庭で停電などの電気トラブルが生じても、これまでのように夜中でも電話一本で電力会社から技術員が来て対応するということはなくなるかもしれない。顧客の設備トラブルが原因で電力会社を呼べば、高額のサービス料がふんだくられる可能性がある。
どんな田舎の一軒家でも契約申し込みがある限り、電柱を何本新設しようが電気を供給してきたこれまでのあり方も通用しない。採算が合わなければ供給を断られる場合も出てくるだろう。「儲からなければ売らない」のも企業の自由で、発電コストが売電価格を上回って起きたカリフォルニア大停電(2000年)のような事態も起きるだろう。

労働条件の低下

さらに、電力が完全な営利企業となれば、JRがそうだったようにまず保全部門が削られる。壊れるまで修理しなくなり、頻繁な停電が日常化する。コスト低下が最優先となり労働条件は切り下げられ、現在でも年間70件前後発生している電力労働者の死傷事故が増加する。
もう一点重要なことは、確実に労働条件が低下し、電力労働者はたたかわなければ生きていけなくなることだ。実際、厚労省の労働政策審議会では、自由化に伴って電力労働者のスト規制法を撤廃すべきかどうか議論が始まっている。
自由化は電力ストへの原点回帰を意味する。電力労働者が生活を守り、電気産業の公共性を回復するためには、反原発運動と合流するしかない。また、ここに原発廃絶の道があると思う。
「電力自由化」はそういう時代の転換点を示している。(中之島二郎)

6面

安倍政治を終わらせよう
伊丹市で国政報告

福島みずほさん(比例区)

5月22日、いたみホール(兵庫県伊丹市)で福島みずほ国政報告会がおこなわれ、1050人が参加した。
いたみホールでは、2011年3月11日の福島原発事故のあと、市民グループと革新政党の手によって毎年秋の原発集会と、2015年からは5月憲法集会が1000人規模でおこなわれてきた。
今回もその枠組みをふまえ、社民党副党首である福島みずほさんの国政報告会を開くことになった。集会の企画にあたって、アベ政治を倒すために運動の側も飛躍が求められており、そのために福島みずほ参議院議員を三たび国政に送り出す必要が確認された。
メイン企画は『「意地悪」化する日本』(岩波書店)の共著者である福島みずほさんと内田樹さん(神戸女学院大名誉教授)の対談。連日、行動が目白押しするなか、関西各地の戦争法に反対してきた人びとなどが多数参加した。

野党共闘の前進実感

北上哲仁川西市議の主催者あいさつにつづき、司会はラジオパーソナリティの小山乃里子さん。連帯のあいさつに立ったのは水岡俊一参議院議員(民進党)、安保関連法に反対するママと有志の会の羽田尚子さん、神戸市会議員の粟原富夫さん(新社会党)、兵庫県会議員の丸尾牧さん(緑の党)、元大阪市長の平松邦夫さん、宝塚市長の中川智子さん、全日建連帯労組関生支部の武健一委員長。このかんの野党共闘の前進を実感できる多士彩々な顔ぶれだった。最後は小さな子どもたちから花束を贈呈され、服部良一元衆議院議員が閉会のあいさつ。
福島さんと内田さんの対談は、沖縄の女性殺害事件と米軍基地問題から始まり、新自由主義のもとで格差・貧困を拡大・強制する安倍政権を縦横無尽に批判した。そして「賞味期限」が切れた安倍政権を参議院選挙の勝利で倒そうとよびかけ、参加者との思いを一つにした。

参院選勝利へ、奮闘を

福島さんは、前日は京都と奈良の集会に参加し、この日の午前中、NHKの日曜討論に参加。集会後は名古屋の集会に向かった。まさに全国を飛び回る活躍ぶりだ。
その福島さんが、戦争法、雇用問題、格差貧困の解消、沖縄辺野古新基地建設、原発再稼働、TPP反対などをめぐり、安倍首相の強敵として活躍することを期待したい。それは全国の労働者・市民の求めるところだ。
参議院比例区(全国区)では、政党名を書くことも個人の名を書くこともできる。政党票と個人票を合わせて、政党別に比例で議席が与えられる。社民党を支持できない人のなかにも、「福島みずほさんは国会にぜひ必要だ」という人はたくさんいる。
安倍政権に改憲発議に必要な3分の2以上の議席を与えてはならない。参議院選勝利、安倍政治を終わらせるために全力でがんばろう。

「一億総活躍」って、なに?
介護保険制度の大改悪A
土田花子

目的は労働力の確保

「一億総活躍社会」の目的は「強い経済」と「あくなき経済成長」、すなわち最大利潤の追求である。その利益をひたすらグローバル企業が牛耳る財界と一握りの富裕層へ集中させようというのである。そのためには安価で「質の高い」労働力の確保が不可欠である。しかし彼らが生み出した「超少子高齢化社会」は「労働力の絶対的不足」という決定的難問を彼らに突きつけてきている。
1990年代初頭のバブル崩壊以降、新自由主義政策のもとで本格化した規制緩和と弱肉強食のグローバル企業の展開は日本社会における貧困と格差を急激に拡大させてきた。雇用破壊・賃金破壊政策、社会保障・教育費などの削減により、全労働者の40%超、女性・若者では過半数が非正規雇用にされ、4人に1人が年収200万円以下となっている。貯蓄ゼロ世帯は3割超、若年層では4割を超え、多くの若者が「奨学金」という多額の借金を負わされている。望んでも結婚・出産できない、産んでも保育所もまともな職もなく貧困の中での子育て…こうした事態が急激な少子化を生みだしてきたのだ。
日本の少子高齢化のスピードは世界でも類を見ない。今や人口減少局面へ突入し、昨年65歳以上人口は全体の27%弱となった。2025年には30%超、2055年には約40%、その前に総人口は一億人を割るというのが国の予測だ。
安倍が言うところの「一億総活躍の根源的課題」とは、人類史上遭遇したことのない超高齢化・人口減少社会の中で、安く酷使できる労働力を海外も含め社会の隅々から如何に狩りだすのか、ということである。

「介護離職ゼロ」

「介護離職ゼロ」もこの脈絡で打ち出されている。介護離職者が年間10万人を超えており、「日本の大黒柱、団塊ジュニア世代が大量離職すれば経済社会は成り立ちません」と危機感をあらわにしている。「経済」が主語であり、労働力確保が目的、そのための「在宅介護の負担軽減」なのだ。高齢者、「障害者」など介護を受ける側が当事者であり主体という観点は全くない。憲法25条の生存権、介護を権利として保障することは国の責務という建前もない。
介護をめぐる過酷で悲惨な実態の現状認識、わずかでも改善をめざすポーズさえ伺えない。後述するが、昨年からの介護保険大改悪は受け皿となる介護事業所を直撃し潰してきた。「介護離職ゼロ」の具体策には、これに対するささやかな手直し策も見受けられない。「介護施設・在宅サービスの50万人分拡充」、「返還免除の奨学金制度」、「再就職準備金の支給などによる25万人の介護人材を確保」、「介護休業の分割取得」などを並べているが、裏付けも実効性もない。
例えば、すくない年金でもかろうじて入れるのは特別養護老人ホームしかないが、昨年介護報酬を大幅に引き下げ、入所対象も制限され、経営が圧迫されている。他方で一定程度の収入と貯蓄がなければ入所できない有料老人ホームや貧困ビジネスは拡大している。これを含めて「介護施設拡充」とごまかしているのだ。「人材確保」策もピント外れ。有資格者は数多くいるが極端な低賃金(全産業平均より月11万円低い)、過酷な長時間労働のために介護職場で働けないのだ。奨学金や再就職準備金で「人材確保」ができるはずがない。税金を投入した大幅な賃上げ保障しかないが、ここには決して踏み込まないのだ。(つづく)

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