日米軍事一体化で戦争
安倍打倒まで闘いは続く
「戦争法反対!」国会前の抗議行動は夜を徹して続けられた(9月16日) |
9月19日未明、安倍政権は参議院本会議で安全保障関連法を可決成立させた。集団的自衛権の行使を法制化し、自衛隊の海外における武力行使を可能にする文字通りの戦争法の成立は、憲法9条を事実上破棄するに等しい事態である。それは「平和主義」を国是としてきた戦後70年にわたる日本政治の重大な転換を意味している。
戦争法に反対する闘いは、60年安保闘争、70年安保・沖縄闘争以来の大規模な大衆闘争となった。多くの民衆が、政府が勝手に憲法解釈を変更して、戦争への道を開こうとしていることに強い危機感を持って立ち上がった。それは同時に、圧倒的な反対意見にまったく耳を貸そうともせず、与党の数の力で強行しようとする安倍政権の姿勢に、「民主主義の危機」を感じ取った民衆の強い怒りと抗議の決起であった。それは、8月30日の12万人が参加した国会包囲闘争や9月12日から19日まで、連日数万人が結集した国会正門前抗議行動として爆発した。
こうした巨大な大衆闘争が大きなうねりとなって国会を飲み尽くそうとしていることに追い詰められた安倍政権は、17日夕方の参院特別委員会で、委員以外の自民党議員まで動員して暴力的に採決を強行するという無様な姿をさらすことになったのである。
17日の強行採決は、誰の目から見ても、戦争法の本質が安倍政権による「改憲クーデター」にほかならないということを暴き出した。そしてこの「クーデター」に対する闘いは、強行採決を期して、本格的に始まったのである。
戦争法の最大の目的は、新自由主義的グローバリゼーションと表裏一体の「対テロ戦争」に自衛隊を参加させることである。90年代半ばから世界経済を席巻してきたグローバリゼーション(地球規模の市場統合)とは、グローバル化した金融資本による収奪と略奪の経済システムである。この経済システムへの統合を拒否する国家(政権)や運動(勢力)の軍事的な粉砕を目的として遂行されているのが「対テロ戦争」である。アフガニスタン戦争(01年)やイラク戦争(03年)、最近ではリビア内戦やシリア内戦への軍事介入などはすべて、中東、北アフリカ地域でのグローバリゼーションの暴力的推進をその本質としている。
現在、この「対テロ戦争」を主導しているのは、アメリカ、イギリス、フランスの3国である。ここに日本がアメリカと同盟を組んで参加しようとしているのである。
これは単純に「日本がアメリカの言いなりになっている」というわけではない。その背景に、グローバリゼーションにおけるアメリカの強固なパートナーをめざす日本の政財界の決断があることを見落としてはならない。その典型的な事例がアジア太平洋地域で、米日主導による市場統合をめざすTPP(環太平洋パートナーシップ)協定である。日本国内でも、TPPによって利益を得るのはメガバンクとトヨタなどのグローバル企業だけであり、それ以外の圧倒的な部分はグローバル資本による「収奪と略奪」の対象とされる。安倍政権がその利害を代表しているのは国内のほんの一部分に過ぎない。彼らが民衆の声にまったく耳を傾けようとしないのも十分うなずけるというものだ。
このように日本の支配層は、積極的にアメリカとの市場統合を推進しているのと同じ脈絡で、軍事一体化を進め、「対テロ戦争」に積極的に参加しようとしているのである。
沖縄の闘いと結合を
戦争法とあわせて重視しておくべきことは安倍政権が昨年4月、武器輸出を解禁したことである。経団連は9月10日、武器輸出を「国家戦略として推進すべき」という提言を発表した。日本における軍需産業の本格的な台頭が始まろうとしている。それは軍部にたいするコントロールを不可能にする日本版軍産複合体の登場を意味する。
また2016年度の防衛予算の概算要求額は、「中国脅威」を前面に押し出すことで過去最大規模となる5兆円超となった。このように中国を「仮想敵」とした大軍拡路線は、東アジアにおける軍事的緊張を高め、戦争の危機を招きかねない。
安倍がことあるごとに「これ以外にない」という新自由主義的グローバリゼーションの道は、おそるべき破滅への道である。戦争法に反対する巨大な大衆運動はこれに真っ向から異を唱えるものであった。この運動が持続的に発展していくためには、グローバリゼーションに代わる「もう一つの道」を提示していくことが不可欠であろう。それは可能である。
14日の翁長雄志沖縄権知事の「辺野古埋め立て承認の取り消し」の表明によって、沖縄の島ぐるみのたたかいは「もう一つの道」へ大きな一歩を踏みだした。戦後日本の階級闘争において歴史を画する事態である。
日本人民が構造的沖縄差別を打破し、この決定的な転機を主体化して、沖縄人民と固く連帯して「アベ政治」に立ち向かうなら、新たな社会への展望を切り拓くことができる。
強行採決に万余の抗議
17日国会
雨の中、強行採決に抗議(9月17日) |
17日午後4時半、参院特別委員会の戦争法案強行採決にたいして国会前や国会周辺には抗議の人が続々と押しかけていた。
総がかり行動の集会が始まる午後6時半には抗議の人波があふれ、正門前道路の車道も人で埋め尽くされた。
国会正門前の集会は、国会議員の報告から始まった。続いて山口二郎、落合恵子、石田純一、室井佑月の各氏が怒りをぶつけた。創価学会会員から公明党への激しい断罪の言葉が飛んだ。その後、SEALDs主催の集会で、「ここからがたたかいの始まりだ」と宣言。「憲法読めない総理はいらない」というコールが繰り返された。
辺野古埋立て
知事が承認取り消し表明
2万2千人が国会を包囲
基地建設の中止を求めて国会を包囲する人びと (9月12日) |
9月12日、辺野古新基地建設に向けたボーリング調査が再開された。これにたいして翁長雄志沖縄県知事は、14日、辺野古の埋め立て承認の取り消しを表明した。12日、辺野古新基地建設阻止の国会包囲行動には2万2千人が集まった。
私たちは負けない
辺野古現地からかけつけたヘリ基地反対協の安次富浩さんは、「今日早朝、沖縄防衛施設局はボーリング調査を再開しました。絶対に私たちは負けません。民意をまったく聞こうとしない政権は、私たちの手で取り替えなければなりません。沖縄はその最先頭でたたかっています。翁長知事の『辺野古に基地は作らせない』という決意は微動だにしません。沖縄の声を無視して、基地を押し付けようとする政治姿勢は、構造的沖縄差別そのもの。民主主義を否定する安倍政権を打倒しよう」と呼びかけた。
もう一つの「日本」を
島ぐるみ会議の玉城義和県議は、「日本政府が、沖縄はいずれあきらめるであろうと考えているならば大きな誤りです。知事が埋め立て承認の取り消しを決定すれば、沖縄は火の玉となってたたかう覚悟です。多くの皆さんが安倍政権の進める軍拡路線ではなく、東アジアの国々と仲良くする国づくり、もうひとつの日本を作り出す道があるのではないかと思っているのではないでしょうか。今の政府のもとでの沖縄問題解決は決してありえません。もうひとつの日本を作り出す闘いの中にこそ解決の道があります」と訴えた。(3面に関連記事)
2面
とめよう戦争法
4700人が結集
京 都9・13
9月13日、止めよう! 戦争法 立ち上がろう! 9・13大集会が円山公園音楽堂でおこなわれ4700人が参加した(写真)。主催は、戦争立法NO! 京都アクション。集会では、主催者あいさつを弁護士の出口治男さん、国会報告を民主党の福山哲郎参議院議員と、共産党の倉林明子参議院議員。京都弁護士会会長の白浜徹朗さん、自由と平和のための京大有志の会の藤原辰史さん、保育士の伊藤未来さん、安保関連法案に反対するママの会@京都の中村あゆみさん、戦争あかん! 京都おんなのレッドアクションの高木野衣さん、戦争をさせない京都1000人委員会の松田國広さんがそれぞれアピール。集会後、四条河原町を通って市役所前までデモ。
強行採決はやめろ
千人が三宮・繁華街をデモ
神 戸9・12
「アベ政治を許さない! 市民デモKOBE(第3弾)」が9月12日、神戸市・東遊園地でおこなわれ、約千人が参加した。主催は兵庫県下の35市民団体。集会ではシールズ関西、ママの会、堀内利文衆議院議員、福島瑞穂参議院議員などが発言。辺野古神戸行動など参加した6団体が「強行採決を許さない」と決意を明らかにした。集会後、神戸市の繁華街をデモ。道行く人に「戦争法反対」を訴えた(写真)。
35団体は、16日に自民党・公明党へ抗議行動をおこない、17日から3日連続で、神戸市三宮で戦争法の採決に反対する宣伝活動をおこなった。多くの市民が駆けつけ、その数はのべ250人になった。採決前後、芦屋・加古川・川西・宝塚などで連日抗議行動がおこなわれた。
7千人が人文字
戦争法反対を訴え
広 島9・13
中国地方でも各地で多くの人が集まった。9月13日には広島市中央公園に7000人。「NO WAR NO ABE」の大きな人文字が描かれ、強行採決前後には緊急行動がおこなわれた。
広島県庄原市議会は20人の議員のうち、公明党議員1人を除く19人の議員が安保法案反対の決議を可決。岡山、山口、鳥取、島根の各県でも創意工夫に満ちた抗議が広がった。どの集会やデモでも、ベビーカーを押すママなどの若い人たち、家族ぐるみの参加が目立った。「鉄砲持つなら、水鉄砲」などのコールも新鮮、沿道の共感を呼んだ。
成田空港
農地強奪、騒音地獄許すな
反対同盟 10・11全国集会呼びかけ
三里塚反対同盟から、10・11三里塚全国総決起集会が呼びかけられている。市東さんの農地取り上げ問題、とりわけ上告審闘争と5万人署名の呼びかけ、そして新たな農地取り上げと周辺地域の騒音地獄化を強いる第3滑走路計画にたいする闘いへの結集のアピールだ。共に参加を訴える。
以下、反対同盟の案内ビラを紹介する。
耕作権裁判の報告会で あいさつする市東孝雄さん(9月14日) |
反対同盟のアピール
国策=成田空港建設に反対して50年、私たちは10月11日、3つのスローガンを掲げて全国集会を開催します。
市東さんの農地を守る
まず、「空港拡張」のために、成田市で有機農業を営む市東孝雄(しとうたかお)さんの畑を奪い、反対運動をつぶそうという攻撃をうち破る闘いです。
国と成田空港会社(NAA)は、「誘導路の直線化のじゃまだ」と市東さんに畑の明け渡しを要求し、民事裁判に訴えました。
東京高裁は、明け渡しを命じる判決を下しました。これは強制的に農地を取り上げる実質的な「強制収用」攻撃です。裁判は最高裁に移りました。10・11集会は、最高裁に対して、「高裁判決を破棄せよ」と迫る決起集会です。
第3滑走路を許さない
さらに、国交省、NAAなどが進める成田の第3滑走路推進策動を打ち砕く集会です。
新滑走路の必要性などみじんもありません。「2030年には空港容量が足りなくなる」という宣伝文句とは裏腹に、現在でも成田空港の発着枠は埋まっていません。もたらされるのはおびただしい強制移転と騒音地獄の拡大です。私たちは第3滑走路建設を地域住民と共に阻止します。
無用な滑走路を急ぐ理由には、安倍政権の戦争・改憲と一体となった成田の軍事転用があります。改定された日米安保ガイドラインでは、成田空港を念頭に「民間空港の軍事使用」が明記され、朝鮮有事の米軍空輸基地に位置づけられているのです。
戦争に向かう安倍政権打倒
10・11集会は、「安保・戦争法制反対」の国会包囲と一体で、「軍事空港反対」を掲げ、戦争に向かう安倍政権と対決する集会です。
開始した「緊急5万人署名運動」を推し進め、全国の労働者・農民・市民の皆さんと力を合わせて、戦争と改憲を阻止するためにたたかいます。ぜひお集まり下さい
第3滑走路計画阻止へ
9月17日、国・国交省、千葉県、成田市など空港周辺9市町、そして成田空港会社(NAA)による「四者協」(=成田空港に関する四者協議会)が開催された。第3滑走路計画の推進機関である四者協の開催で、昨年6月に明らかになった第3滑走路の構想は、具体化へのスタートを切った。
このなかで新たな問題が明らかになってきた。四者協の当面する協議事項は、単に第3滑走路計画だけにとどまらない。@第3滑走路計画(2700m〜3500m)、A現B滑走路の延伸(南・北への延伸)、3500m化、B午後11時〜午前6時の夜間飛行制限の緩和(=24時間空港化)を、ひとつの問題として進めるという。
順序からいえば、B→A→@と進んでいく。激甚騒音で周辺地域から住民を追い出し、家屋・農地を強奪しB滑走路を延伸、併せて第3滑走路を建設するということである。かつての廃村化のレベルをはるかに超える空港予定地と周辺地域の完全な無人化であり、激甚騒音地域の飛躍的な拡大をもたらす。もはや空港周辺地域の人びとは生活できなくなる。
第3滑走路の完成時期は2030年頃とされているが、20年の東京オリンピックにむけて増便策を進め、空港規制策(夜間飛行の制限など)を取っ払い、空港を拡張する攻撃が、今まさに始まろうとしている。
こうした攻撃との闘いの最先端に立つのが、市東さんの農地を守る闘いだ。5万人署名を進め、農地法裁判(最高裁)、そして耕作権裁判(千葉地裁)に勝利しよう。
この間、反対同盟は騒音地域、周辺地域への5万人署名をはじめとした働きかけを強めている。空港周辺地域住民と手を結び、闘いの輪をひろげて第3滑走路計画を粉砕しよう。全国の力でこの闘いを支え抜こう。共に10・11三里塚現地全国闘争に結集しよう。
3面
ルポ辺野古
「知事の決意」を支えよう
警察の弾圧に高まる怒り
不当逮捕で名護署に抗議(9月22日) |
9月11日、県による岩礁破壊潜水調査が終了。翌12日、防衛局は工事を再開した。浮桟橋の設置から始め、フロートを引き直し、オイルフェンスをくまなく張り巡らし始めた。いつでも台船を導入しボーリング調査を再開するためだ。
海上では抗議船とカヌー隊が抗議行動へ。ゲート前では24時間体制を強化し、工事車両の搬入阻止に備えた。早朝より多くの市民が結集し、防衛局の工事再開に抗議の声をあげた。
取り消し表明に大拍手
14日、翁長知事が「辺野古埋め立て承認の取り消し」を表明。前知事仲井真の埋め立て承認に「瑕疵」があるとして、防衛局に意見聴取をおこなう。防衛局が応じなければ取り消しが確定する。防衛局が国交省に不服申し立てをすれば、裁判で争われる。
午前10時におこなわれた翁長知事の会見で「承認取り消し」が発表されると、ゲート前テントから大きな拍手がおこった。安次富浩ヘリ基地反対協共同代表が「これからもきびしいたたかいが続くが、知事を支え頑張ろう」と発言。
海上では防衛局の作業が続いている。海上行動隊は、フロートに接近し「工事をやめろ」と抗議の声をあげた。すると、海上保安庁のゴムボートが突然カヌー隊に襲いかかり、市民を拘束。数時間後には解放された。
島ぐるみ会議やんばる大集会が16日、名護市民会館で開かれ1200人が参加。島ぐるみ会議は、本島の北部地域9市町村に島ぐるみ会議の結成をめざしている。
この日は、未結成のところも含め、やんばるの島ぐるみ会議が一堂に会した。翁長知事の「辺野古埋め立て承認取り消し」表明を受け、「知事を支え、辺野古新基地建設と高江ヘリパッド建設を阻止するために地元が頑張ろう」という決意が表明された。
つづく不当逮捕
17日、キャンプ・シュワブゲート前の抗議行動でAさんが公務執行妨害で逮捕された。このかん、第1ゲート前にもテントを張って車両の阻止行動をおこなっていたが、この日、そのテントが撤去され、機動隊の車両2台がバリケードをつくった。
市民は排除され、機動隊の壁ができた。怒った市民が早朝6時より抗議行動。6時半頃、名護方面より工事車両が入ってきた。市民が車両の前に立ちふさがる。機動隊の排除が始まる。この時、Aさんが、「バリケードの警察車両をけった」として逮捕された。Aさんは18日に釈放。
18日、キャンプ・シュワブゲート前でBさんが逮捕される。ゲート前では早朝6時より抗議行動。座り込みを排除するため機動隊が襲いかかる。7時頃、Bさんが「警察の車両停止に従わず、車を発進させた」として公務執行妨害で逮捕される。Bさんは20日、10日間の勾留が決定。
防衛局は、ボーリング調査を来年3月末まで延長することを発表。防衛局が「残りのボーリング調査は着工に影響しない」といっているように、これは工事の延長ではない。調査を長引かせて、臨時制限区域のフロートやブイの撤去をしないまま本体工事を進めようという魂胆だ。
右翼がテントを襲撃
19日、午後11時半頃、右翼がゲート前テントを破壊。このかん右翼は、街宣車の大音響で集会を妨害していた。これまでもテント前に襲撃をかけていたが、テント防衛隊がはね返していた。この日は夕方からゲート付近で飲酒していた右翼20人が、テントを破壊。看板や椅子などを投げ散らかした。
22日、キャンプ・シュワブゲート前でCさんが逮捕される。ゲート前ではいつも通り6時より抗議行動。座り込みをしていたCさんの妊娠中の連れ合いが機動隊に腕を引っ張られ、危険を感じたCさんが割ってはいったところを公務執行妨害で逮捕された。Cさんが連行された名護署には100人の市民が抗議行動にかけつけた。翁長知事の「埋め立て承認取り消し」発表後の1週間に3人も逮捕した警察の横暴に沖縄県民は怒り心頭に発している。国会議員も抗議行動に参加した。
23日、沖縄の県市町村議員の総行動がおこなわれた。あいつぐ逮捕への怒りから、参加した議員はいつもより多い。市民も合流し200人で抗議集会を持った。
沖縄県議会議員 新里米吉さん
沖縄、闘いの今(下)
オールは『沖縄』だけの問題か
しんざと・よねきちさん(沖縄県議会議員、辺野古基金運営委員会・委員長、県政野党知事選候補者選考委員会・座長ほか) 平和のための市民の集い(8月、神戸市内)での講演から要旨をまとめた(文責は編集委員会)。
オール沖縄の背景
2014年11月県知事選を、どうたたかったか。そして知事選直後の12月に総選挙。全国で自民党が圧勝したが、沖縄では自民党を惨敗させた。全4区で私たちが完全勝利した。「オール沖縄」とは、どのような経緯と背景、基盤があってのことか。私たちが、どのようにたたかったのか。
2010年の県議会決議のあと、4月はオール沖縄で県民大会をおこなった。そのとき共同代表の中心の1人が翁長さん。09年11月のときも保守側にも呼びかけたが、なかなか決まらない。翁長さんが「分かった、いっしょにやりましょう」と。そのときからいっしょ、ぶれずにやってきた。
一方で、いまなぜ安倍政権の暴走を許しているのか。総選挙で自民党に圧勝させたからだ。私は、来年の参議院選挙で与野党逆転をめざすべきだと思う。そうすれば一定の歯止めがかけられる。
沖縄でやったことを全国でやったらどうか。沖縄だってバラバラでたたかったら負ける。1昨年の12月、前の知事が裏切った翌日すぐに、従来の革新共闘「社民、社大、共産」に「枠組みを広げたい」と呼びかけた。生活の党にも声をかけよう。
それから、政党だけでなく県民ネットという会派にも呼びかける。労働組合では、いつも「統一と団結」と言っているところが、渋った。困ったな、と。そこ出身の国会議員が「賛成」というから、「じゃ、まとめてよ」と言うと、まとまった。まとまったらすごいですね、「私たちがやった」と宣伝しますから(笑い)。まあ、いいことですけど。
基本政策で合意
基本政策がだいたいまとまったとき、ある会派の長老が「ノー」と言った。「辺野古反対、一つでいこう」と。この人は翁長さんを推したいと思っていた。翁長さんを推して勝つためにも一つでまとめるのではなく、しっかりした基本政策が必要だった。そのなかに一つくらい賛成できないことがあってもいい。「辺野古反対」だけでは選挙は勝てない。4年前の「対立候補の大将」を担ぐんですよ。納得しない人たちも大勢いる。「辺野古、それから憲法9条、TPP反対、離島の県立病院の存続、財政は大変だけど県民の医療は守る」など、6項目の内容でお互い合意した。
選挙に勝つには、いわゆる革新共闘グループが9割以上まとまらないと勝てない。保守系の人を出しても、自民党は候補を立ててくる。自民党支持者の大半は相手側に行く。われわれが9割以上固まり、相手側から2、3割がきたとき勝てる。保守が割れれば勝てるという甘いものじゃない。自分たちの足下をしっかり固めて相手陣営を崩さないと。
だから1項目で選挙をしようなどと考えない。より幅広くとなると、何項目か一致点をつくらなければ。一致点を多くすれば少々の不一致項目があってもお互いにがんばれる。
最も弱い4区では
前々回の衆院選では、4選挙区のうち勝ったのは照屋寛徳さんだけ。あとは全部負け。1区、3区が比例復活したが4区は比例にも到達しなかった。全区で勝った前回総選挙では「4区とも前回の候補で統一しよう」という提案になったが、比例復活にも遠く届かなかった候補もいる。それでは負けると大変に揉めた。全区に候補を立てるという党もあるなかでの調整は、単なる調整ではない。
知事選直後、まだ翁長知事も就任していないとき。ここで割れたら知事は就任前から少数与党になる。知事は大変な状態に置かれる。保守の側にも、相談してもらった。選挙区は自党を出しておいて、「比例では『全区に候補を出す』という党の党名を書けるのか」と聞いた。「それは、無理」と。それなら、この方法しかないじゃないの。それで「4区は、保守票の取れる無所属」ということで決まった。
各区で各党が違う候補をやるわけですから、難しいことが多々ある。労組や組織に事情もある。「支援の方法については各組織に一任する」という但し書きを付けた。すると「曖昧だから、もっと明確にした方がいい」と言う人もいた。正論ですね。しかし、明確にしたら吹っ飛びますよ。B候補を積極的にやらないところがあっていい。その代わりB候補以外もやれない。そういう合意で結束をした。
来夏参議院選の課題
参院選の構想も考えられている。保守、経済界もそれぞれ意見がある。「憲法9条を守ろう」ということは、幅広く合意してもらえると思う。辺野古反対はもちろん、経済・生活、福祉医療、原発新設・再稼働に反対も入れたい。
国政選挙だから、これくらい言えないとだめ。「支持労組に異論があるから」ということではね。そもそも原発が動かなくて潰れるという電力会社はない。せいぜい収益が下がっている程度。沖縄には原発はないけど、国民の命や財産の問題だから。それができなくては政党や労働組合の役割は果たせない。
知事選では、こういう考え方で候補者とも政策論議をし、翁長知事が勝利した。その後2月、3月の予算県議会を、みんなで結束し支え乗り切った。支えられるのは政策で合意したから。
あれが1行だけだったら、崩れますよ。苦しくても難儀しても、ここをやらないと。「翁長さんありき」ではなく、私たちがどうするか。そこをいいかげんに、「勝てばいい」では崩れるという政権を私たちは見たばかり。私たちは学んだはずだ。
沖縄だけの問題か。そうじゃない。そんなこと言っておれない。安保法制、原発を見てください。日本全国、大変な事態じゃないですか。「オール沖縄とは」と、よく聞かれる。しかし聞くだけではね。ここで結集できないなら、自民党を勝たせてしまう。そうさせないというなら、結束するしかない。 (おわり)
4面
守れ!経産省前テントシリーズP
テントの正義堂々主張
東京高裁 控訴審がついに結審
9月18日
東京高裁前で開かれた集会に「原発いらない福島の女たち」のメンバーがかけつけた(9月18日) |
9月18日午後3時東京高裁102号法廷、第3回口頭弁論。法廷闘争としては最終段階に入った。
裁判官の遅刻で7〜8分遅れて開廷。裁判所側は「結審したい」と言っている。原告・国は控訴理由を明確に提示して、地裁判決を覆す要件を直接、面前で裁判官たちに伝えねばならない。国は「年額800万円に相当する額の損害が発生している」と主張し、被告2人(正清、淵上両氏)に損害金を請求し、地裁判決ののち、テント撤去の強制代執行を停止するため、500万円を巻き上げている。
裁判所のロビーで偶然、双葉町の元町長井戸川さんにお会いした。開口一番、「国は今回の原発事故の発生にたいしては、まず国民に陳謝するのが筋でしょう。それを逆に、被告にまつりあげるとはめちゃくちゃですよ。なんど原発は安全ですと説得されてきたことか。さかさまですよ」と。井戸川さんもまた、国の安全神話に従った結果、逸失したすべてのものごとを賠償させる裁判を起こしている。
これを建てたのは私だ
この日、テントの5人が陳述。先発は第1テント代表の江田さん。陳述の中でも触れているが、江田さんと正清さんを誤認して責任当事者(占有者)を決めたことや、監視カメラによる肖像権侵害を恥ともせず、証拠を誤認して訴追する愚をおかしていることなど、およそ訴訟手続きのいろはを逸脱している。おごり高ぶった原告・国の姿勢があらわれている。恣意的に選択した2人以外の当事者を占有補助者として、切り捨てて裁判を進めてきたことへの反論が以下の弁論でなされた。
江田さんは「これを建てたのは私です」と、住所氏名年齢をはっきりと告げた。続けて、「今日は9月18日です。1931年のこの日は、柳条湖とか柳条溝とかいわれる関東軍の中国侵略の踏み石となった陰謀工作事件が勃発した日です。いま、国会議事堂の周りで抗議している人々は、安倍政権が、あの関東軍と同じことをする、しているかもしれないと立ち上がった人々のように思えてきます」と陳述し、原告・国の「外形的事実」のみを取り上げる姿勢をきびしく批判した。東電福島第一原発事故を歪小化し、国家・企業の犯罪性を隠ぺいする訴訟指揮への糾弾といえる。
第2テントから陳述に立ったのは、寺崎明子さん。スリーマイル島事件から、原発事故に関心を持ち、福一事故の時は三春町の友人を思って、すべてがリアルなものになった。首都圏の電気のために福島の人々が犠牲になったことを訴えるために、第2テントは福島の女性たちが主人公にならなければならない。2011年9・11の経産省包囲ヒューマンチェーンで建ったテントの隣に、福島の女たちの東京での大抗議集会のために、10月27日第2テントは立てられた。女性こそが露営をする必要があったという証の第2号テント。
こうして、第2テントとの寺崎さんの主体的関わりが述べられ、ドイツなどの海外の友人たちとの交友の場となり、種々の映画をはじめとしてのイベント会場となったと語った。
占有者が淵上、正清両氏のみでないことが明々白々となる。
報告集会では、Tシャツ販売を担当したテント当番の女性が、あらゆる人脈をたどりながら、強制執行をまぬかれる示談金カンパとして100万円を集め、淵上さんに渡された。
第3テントは、平和と民主主義をめざす全国交歓会(全交)の高瀬晴久さん。このテントは当初、「オキュパイ霞が関」と名乗った。ニューヨークのウォールストリートの運動が示した、「1パーセントの株主たちのために、世界の99パーセントのひとびとが、右往左往しなければならないのは、許せない」という運動とシンクロしていたのだ。
司法のテロを許さず
次に立ったのは、戦争法関連反対行動で疲労困憊気味の正清さん。お連れ合いが、傍聴席から心配そうに見つめている。
2011年9月11日のテント設立以来、押し寄せてきた若者たちとの夜昼をかえりみない交友を振り返るように、年配のものたちと若者たちとで激しく切り結び、もみほぐしながらやってきた4年間の対話の意義をこれからの若者たちへと受け渡したい。裁判官は、70年にわたる平和主義の民衆の国家と世界への献身を誠実に受け止め、司法の健在をしめされたいと結んだ。
最終の淵上さんは、テント設置の意義や動機や理由を勘案しない審判は、それ自体、民衆への司法のテロル・弾圧に等しい、内容空疎なスラップ訴訟であることを述べ、「この法廷が東電福島第一原発の事故についてまったくふれなかったことは、テントが建てられたことについて一顧だにしていないことの証明である。こうした法廷は、司法の責任をはたしているとはいえない。裁判長は、8分遅刻してきたので私の持ち時間が5分もない。1審以上に意味がない」と憤激を抑えるのがやっとの様子だった。
最後に、河合弁護士が、「原子力ムラの安全・安心神話に、国民の1人である裁判官が与することはあってはならぬ亡国の行為である。福井県の原発銀座にミサイルがうちこまれれば、間違いなく国は終わる。その推進役の経産省こそ亡国の府であることは、東電福一事故を学ぶだけで十分だろう。破壊的冒険主義に司法が歯止めをかけなければ、ほかのだれが止めうるのか」と鋭い警告を発した。
裁判は所定の1時間をこえた。最後に裁判長が「これで審理終了。判決日は追って通知します」と結審を通告。その後、国側の関係者は原告席で車座になって話し合いを始めた。
満員の傍聴席の人々は、次の報告会会場の衆議院第一議員会館から、さらに交流会へ行く者と、国会議事堂正面抗議行動へ向かう者とに分かれた。
交流会では、弁護団は判決の日まで法務局にたいする定例の無罪要請行動をしようと訴えていた。(Q)
秘密保護法を廃止しよう
海渡雄一さん「戦争法と一体」
9月7日院内集会
講演する齊藤豊治弁護士 |
9月7日、正午から1時間、衆院第2議員会館前で、「『秘密保護法』廃止へ! 実行委員会」主催の国会前行動がおこなわれ、特定秘密保護法や共通番号制度反対運動をたたかってきた人々、国会議員や弁護士の発言のあと、シュプレヒコールをあげた。
午後1時半から参院議員会館で開かれた「戦争法案廃案! 秘密保護法廃止! 9・7院内集会」に60人が結集した(秘密保護法対策弁護団及び「『秘密保護法』廃止へ!実行委員会」の共催)。
司会は弁護団の若手、矢崎暁子さん(愛知県弁護士会)がおこない、海渡雄一弁護士が『秘密保護法と戦争法』と題して基調を提起。
海渡さんは「(ここにいる皆さんの多くは)戦争法案をどうやって止めるかで頭がいっぱいだと思います」「戦争法案の問題点は、憲法九条のタガを緩めること」「何より言いたいのは『戦争は秘密から始まる』ということ」「(安保法案が通れば)『存立危機事態なので戦闘を始めさせていただきました。詳細は特定秘密なので言えません』と安倍がやることになる」「秘密保護法と戦争法は一体のもの。戦争法は成立させてはならないし、秘密保護法はいつかなくさなければならない」と話した。
萎縮、自主規制しないこと
共産党の清水忠史衆院議員、社民党の福島瑞穂参院議員のあいさつの後、甲南大学名誉教授で弁護士の齋藤豊治さんが「秘密保護法下での刑事事件の課題」と題して講演した。
齊藤さんは「特定秘密保護法は正確な情報を出さずに『判子を押せ』と強いる悪徳商法と同じ。リスクの説明がない」「この法律は情報を止めることに熱心だが、(実は情報への)アクセスが緩く、『単純漏えい』という(罪の)類型を持っていない。単に漏らしただけでは罪にならない。これが(罪に)できれば全国民が対象になる。かつての軍機保護法(1937年成立)がそうだった。国防保安法(1941年成立)もMDMA秘密保護法(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、1954年成立)もそう。」と危険性を指摘。最後に、報道する側が委縮したり自主規制したりする必要は全くないことを強調した。
会場からはフリージャーナリストや市民からの質問があり、共通番号制度(マイナンバー制度)に反対する運動や出版労連からも連帯発言があった。
日米合同軍事演習反対
滋賀 あいば野で集会・デモ
9月12日、日米合同軍事演習反対! 戦争法案廃案! 9・12あいば野集会が、フォーラム平和関西ブロックと2015あいば野に平和を! 近畿ネットワークの共催で滋賀県高島市でおこなわれ、600人が参加した。
集会に先だって基地への申し入れがおこなわれた。集会では主催者あいさつを、フォーラム平和関西ブロック議長の石子雅章さんと近畿ネットワーク代表の野坂昭生さんがおこなった。沖縄県平和運動センター副議長の福元勇司さんと、京丹後から〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉事務局長永井友昭さんが連帯のあいさつ。集会決議を、〈NO BASE 沖縄とつながる京都の会〉橋田さんが読み上げた。集会後、高島市今津町内をデモ行進した(写真)。
5面
ルポ
汚染の現状と防護をめぐって
木村真三さんと河田昌東さんが南相馬市小高区で講演(下)
請戸 耕一
志田名と二本松の取り組みから
(承前)木村真三さん
9月23日、東京代々木公園で、さようなら原発 さようなら戦争 全国集会が開かれ、2万5000人が参加。福島からも大型バスなどで多数の市民が参加した。(写真は本文と関係ありません) |
賠償の話で分断
志田名地区でも精神的賠償が話になりました。僕は、ゼニカネで問題を解決しない方がいいと言いました。金でまた部落が分断されます。
1人当たりいくらという計算になりますから、5人家族なら5人分、2人家族なら2人分です。それで格差が出てきます。精神的賠償の話が持ち上がったら、まだもらってもいないのに、「あの家は何人家族だから。うちは2人だから」っていう話になってもうまとまらなくなっている。これには非常に胸を痛めています。
内部被ばくの実例
ところで、二本松市では2万数千人の内部被ばくを診ています。内部被ばくの人が見つかったら、検出下限値になるまで毎月ずっと測ります。下がりが悪いときは、自宅を訪問して原因がなにかということを徹底的に調べます。そして低減化を図るということをやっています。
二本松市のある高校生の内部被ばくの問題です。ある高校生が、1年にわたって内部被ばくが続きました。ずっと上昇傾向を示すのだけど、何でなのかが分かりませんでした。
最初は夏に差し掛かる前です。若い大豆の枝豆を彼は多食していたということがわかりました。大豆は放射能を濃縮しやすいのです。しかも二本松では、大豆はあぜ道とか除染していないところで作っていました。
で、枝豆をやめると線量が下がりました。でもまた上がってきました。また自宅に行って調べました。薪ストーブかと思ったのですがそれは違いました。よくよく調べたら、2011年度のコメが原因でした。捨てるのはもったいないと保存していたもの(事故前の収穫だが保存中に汚染)を食べていました。でも測ったら31・5ベクレルです。食品の基準値からいえば食べてもいいことになっています。ただ、この高校生は野球部で1日2升もコメを食べるそうです。これだけ食べると内部被ばくは出てきます。つまり、食品の基準値だけで見ていたら良くないということです。
帰還することが
いい事なのか
こういったことを含めて、帰れるからといってそれがいいのか、そうでないのか、ということもやっぱり考えないといけないということです。
二本松や志田名のように住まざるをえない地域で、あれもダメ、これもダメというのは本当に忍びないです。ではどうするか。こうすれば線量は下がるし、食べられるということを提案していくことだと思います。現に住んでいるのに「ここには住めません」「ここでは我慢しましょう」だけではやはりもたないでしょう。
ただ、小高の場合はこれから住むわけです。そういうところではどうするか。まずは自分が調べて、測ってみる。これが一番大切なことではないかと思います。
参加者との質疑応答
スクリーニング基準
―表面汚染密度のスクリーニング基準の件ですが、今の国の基準は40ベクレル(/平方センチ)ですね。私は35年間原発にいましたが、当時のスクリーニング基準は法律では4ベクレル、原発内の管理区域の管理基準は0・4ベクレル。それがいま40ベクレルのまま一向に下げられない。避難解除してそこに住んでもいいというのであれば、40ベクレルを4ベクレルになぜ下げないのかということが疑問です。
木村:事故とか汚染があれば原発のイメージが悪くなって、原発は怖いということになります。だから、原発事故が起こる前の基準というのは原発のイメージというのがあって、そのために管理基準を厳しくしていたと思います。ところが実際に事故が起きて大量に放射能がまき散らされた結果、そんなイメージ通りに行かなくなってしまったわけです。
河田:事故が起こる前と後で変わってしまったんです。事故前は、それまでの研究や国際的なデータから4ベクレルを基準にしていました。ところが事故が起こってそれを超えてしまう現実が常態化しました。すると政府は、本当は4ベクレル以上あってはいけないはずなのに、そういう現実を当たり前のものとしました。
原発労働者の被曝線量の限度も変えようとしていますね。廃炉作業の都合を人間の安全より優先した考え方です。
そういうことを考えると、それは間違っているんだということを言っていく必要があると私は思います。
内部被ばくと健康被害
―よくチェルノブイリでガン以外にもいろんな健康被害があるといいます。だから福島もいっしょだという方がいます。しかし、今のお話のように内部被ばくについてはずいぶん違いがあると思うんですが、その辺についてどうでしょうか?
河田:恐らく内部被ばくに関して大幅に違うと思います。それでどういう結果が出るかということはまだわかりません。
チェルノブイリの例で言うと一般にはガンが言われますが、実際はガンはいろんな病気の一部です。一番多いのは心臓系や脳血管の病気です。
それが今の福島で起こっているのか、いないのかということについては、医学統計を取る必要があると思います。
木村:日本の場合、医学統計は甲状腺ガン以外取っていないですね。
ただ、広島・長崎で言うと、脳卒中がガンと同じくらいの出現率になっています。100ミリシーベルト被ばくしたら、100人のうち1人は脳卒中になります。ガンも同じです。さらに心筋梗塞が1・5倍の高さです。あとは白内障です。ただこの原発由来の白内障は考えにくいかなと思いますが、心疾患と脳血管障害は気をつけるべきでしょう。
もうひとつ、原発投下から70年になりますが、10年ほど前から骨髄異形成症候群という血液の第2のガンが増え始めています。これは治療法がまだ確立されていません。60年経って出てくるものもあるわけです。だから今大丈夫だから安心だということを言えません。
帰還の考え方
木村:僕は、帰還ということにたいしても、正直なところは反対です。帰還しないでいいのであれば帰還しないでほしいというのが私の願いです。
例えば、二本松の場合、線量が高く避難指示を出さないといけないのに、出されなかった地域です。もう今さら避難するといっても遅いわけです。だからいま対処できることをきちんとやりましょうということです。
しかし、小高の場合、避難ができているわけです。わざわざ帰る必要があるかということはいろんな状況を考えてみるべきだと思います。
例えば、小高でも海沿いの方は運よく線量が低いので、そういう地域での生活は大丈夫です。ただ山や川との関係が切っても切れない生活環境にあります。山や川の環境をきちんと調べてから判断するというのが大切だと思います。
だから、僕としては、避難が続けられるのであれば、まずしっかり測って調べてから、それから、帰るべきかどうかという判断するというぐらいの方がよいのではないかと思います。
小高よりも線量の低い川内村は、7割の方が帰村したということになっていますが、実際は週4日以上住んでいる人を帰村者としており、完全に住んでいる人は3割、600人足らずです。
―今の話を聞いて、私は正直ストレスを感じるんです。震災から4年何カ月経って、それぞれ帰る人、帰らない人と、ある程度分かれているわけです。帰らない人は安全なところに当然行かれるわけで、それはそれです。測れとか線量が危険だとかという話は私ら、4年間、聞いてきました。そういう方面のことは行政とか県とかに働きかけるべきだと。
放射線関係の専門家の方々に望むのは、そういう話ではなくて、現実問題ここで生活しようとする人たちが最低限安全に住むためには、例えば、川で、畑で、田圃でこういうところに注意すればいいといった前向きな指導をお願いしたいわけです。いつまでも危険、危険ばっかり聞いたってしようがないんです。
木村:スタンスが違います。それはあなたの意見であって、私としては被ばくを見ているし、今ある現実の話をしているわけです。その中で私の意見としてどうすべきかということを言っています。あなたの考え方は分かるけれども、僕が、被ばくという現実を放置して、こうすれば住めますよということは違います。帰還論者と僕は考え方が違いますから。
河田:どうすればいいかということについては先ほども農業に関して少しお話ししたんですけども、対策としてはある程度確立したと私自身は思っています。田んぼにしても、畑にしても、そういう意味では、いろんなことが可能です。
参加者:私たちは、放射能の専門家ではないんで、そういう難しい数字だとか基準だとかを言われても、なかなか消化できないわけです。そういうことは専門家の方にいろいろ議論していただけばいいと思います。
われわれ(小高区住民)は1万3千人いて、3千人帰るか4千人帰るかわかりませんが、そういう人たちが、日常生活を送る上で最低限こんなことをすれば、なんにも対策を取らないよりは安全に近い側に少しでも移動するよということを提案していただける方がありがたいし、そういう指導なら受け入れられると思います。
河田:わかりました。この間、ずっと南相馬でいろんな測定をしてきました。それをパンフレットにまとめているところです。これは危険だ、これは安全だ、これはこうすればいいといったことです。それをお配りする予定ですので、そういうものを見て対処できるようにしたいと思っています。(おわり)
6面
寄稿
反戦自衛官 小多基実夫
特殊作戦部隊とオスプレイの横田基地配備、その狙いは何か(上)
米国防総省は5月11日、米空軍新型輸送機オスプレイCV22と特殊作戦部隊400人を横田米空軍基地(東京都)に配備すると発表した。規模は2017年後半に3機、さらに21年までに7機の合計10機である。そして政府は、「通常の飛行訓練に加え、低空飛行、夜間飛行を実施する」(中谷防衛大臣)と早々と夜間飛行制限の無視を宣言した。「400人の空軍特殊作戦部隊」、CV22の「低空飛行」「夜間飛行」とその横田基地配備は何を意味するのか?
以下、新聞報道、防衛省の公表資料、青木謙知著『徹底検証!CV22オスプレイ』、非核市民宣言運動ヨコスカ編集発行『オスプレイに災害救援ができるのか?』、軍事ジャーナリスト田岡俊次氏の論などを参考にしてまとめた。
特殊作戦部隊とは、どういう部隊か
8月12日、沖縄・伊計島沖で米軍ヘリが輸送艦への着艦に失敗して墜落事故を起こし、乗員17人のうち陸自中央即応集団の隊員2人と米兵5人が骨折などの負傷をした。
陸自中央即応集団とは防衛大臣直轄部隊であり、パラシュート部隊の第1空挺団や第1ヘリコプター団、中央即応連隊などを含む約5000人の精鋭即応部隊である。
なかでも今回負傷した2人が所属する特殊作戦群(300〜600人、千葉県・習志野駐屯地)は、米陸軍の特殊部隊グリーンベレーやデルタ・フォースを手本にレンジャー・空挺の有資格者から選抜・編成された対テロ・ゲリラ戦に特化したスペシャリストである。2004年に設立され、07年には中央即応集団に編入されて今日に至っている。
訓練内容
米陸軍の強襲作戦の専門部隊=第1特殊部隊群・グリーンベレー(トリイ通信基地・読谷村)主催による今回の訓練に陸自から特殊作戦群10人を8月1日〜15日の予定で参加させたのであるが、訓練内容と事故原因はおよそ次のようなものであった。
テロリストに占拠された船にヘリコプターからロープなどで降下〜着艦して軍事制圧するという作戦で、降下場所は輸送艦の後方にあるヘリの着艦場所ではなく、コンテナやクレーン等の障害物に囲まれた前部甲板の狭い場所であり、ヘリがクレーンに接触して墜落したということである。
つまり航行し、波で揺れる甲板、しかも障害物の多い常識で想像できない危険な空間への着艦という奇襲・不意打ち攻撃であり、これは現在国会で審議中の戦争法案にも関係する「臨検」の方法でもある。
墜落したヘリ(MH―60ブラックホーク)は、在韓米陸軍の第160特殊作戦航空連隊所属の特殊作戦機であり、7月下旬から4機で嘉手納基地を拠点に訓練中であった。
特殊部隊の実態は徹底的に秘匿されており、不明なことばかりで、とりわけ特殊部隊同士の訓練となると秘密主義が徹底しており自衛隊内部でも実情は全くわからないと言われている。しかし今回の事故で、米軍特殊部隊グリーンベレーと陸自特殊作戦群の強襲作戦の共同訓練の実態が一部明らかになったといえる。
戦争法の先取り
また注目すべきは、米陸軍参謀総長のオディエルノ大将が「いくつかの国との特殊作戦部隊の訓練中だった」と言っていることから、米軍と陸自以外の軍隊、例えば韓国軍などの参加も含んだ訓練であった可能性が伺える。
日本国内において米軍が自衛隊以外の軍隊をも含む共同訓練を実施していたとなれば、日米地位協定違反であることから、政府・自衛隊は「研修」などと発表して共同訓練の事実を誤魔化している。自衛隊は、戦争法を先取りしてここまで米軍との軍事一体化を進めているという現実が明らかになったのである。
米海兵隊の主力航空機として普天間基地に24機配備され大問題となっているMV22オスプレイと同型の陸自への導入(佐賀空港配備計画)も同様に共同作戦の円滑化のためであり、陸自のめざす方向が米海兵隊との一体化であることを物語っている。次にこのオスプレイについて見てみよう。
欠陥機オスプレイの実態
オスプレイは、ティルトローター方式といって飛行機のように水平飛行をし、ヘリコプターのように垂直離着陸やホバリング(空中停止)が可能であり、航続距離はヘリの4倍、速度は2倍という万能の輸送機という位置づけで米軍全軍での採用をめざして開発されてきた。だが、これには軍用機としてもいくつかの致命的な欠陥が指摘されている。
@何よりも輸送機として肝心の輸送力が弱いことだ。米軍や自衛隊が使っている輸送ヘリCH47は兵員55人、車両の積載も可能だが、オスプレイは車両も積めず、兵員は24人と半分以下である。
A積載量は2分の1以下だが、機体価格は2倍以上の高価。ちなみに陸自が輸入するMV22(17機)は付属品・訓練費等を含めると総額3600億円=1機211億円。なんと最新ステルス戦闘機F35Aの202億円よりもさらに高価になる。
B操縦は通常の固定翼機やヘリに較べて格段に高度な技術を要し、パイロットの養成にも多くの時間と費用を要する。
Cさらに構造的欠陥による事故の多発である。
オスプレイは25年をかけた開発過程で4件、計30人の死亡墜落事故を起こしている。その数字は、アポロ計画の2倍以上の歳月を要し、10倍の人命を奪ったという異常さである。
2006年の実戦配備後も点検中・訓練中・作戦中とあらゆる場面で墜落事故・死亡事故・エンジン出火など重大事故を引き起こしている。
相次ぐ事故
◇今年に入ってからもハワイで訓練中の海兵隊機MV22が墜落炎上し乗員2人死亡、重軽傷21人の事故を起こした(5月17日)。原因は、着陸直前に45秒間に渡ってホバリングした際に地上から巻き上がった砂埃を左右のエンジンに吸い込んで左が停止、右エンジンも出力低下を起こしたためと指摘されている。
海兵隊はこの砂埃吸い込みによる出力低下を予め覚悟しており、飛行規則において「巻き上げた砂埃による視界不良等で60秒以内に着陸できない場合は着陸中止」を定めていたが、45秒で墜落した今回の事故を受けて60秒以内を30秒以内に変更したと報じられている。
◇関連事項であるが、高温排気のダウンウオッシュ(自機が巻き起こす下向きの激しい気流)による森林や草地の火災が多発し、着陸予定の演習場などでは事前に草刈りをおこない、消火器を持った隊員を待機させている状況だという。
つまり「どこにでも離着陸できるので災害時の救援に最適」との触れ込みとは裏腹に砂地にも草地にも安全に離着陸できず、コンクリートで耐熱舗装された飛行場や空母の甲板など以外では使い物にならない代物なのである。
◇その他にも編隊飛行時、前機によって引き起こされる後方乱気流によって後続機が墜落した事故も報じられている。軍用機の基本である編隊飛行が墜落を引き起こすというのもまた致命的である。
◇着陸のモード転換時に強い追い風に遭遇した場合も揚力を失って不安定になり、墜落の危険があるといわれている。また着陸時に無風状態だと自機によるダウンウオッシュに入り込み、急に揚力を失って墜落する場合もあるといわれる。
◇さらに死亡者が多い原因として指摘されているのが、オートローテーション(エンジン停止時の軟着陸機能として全てのヘリに備わっている機能)を備えることができない構造だ、という根本的な問題である。
構造上の問題
これらはいずれもオスプレイ機の基本構造上の問題であり解決不可能な欠陥であり、安全に飛行できるようなレベルではないのである。
基地で開かれる航空祭などでは度々公開・展示されているのだが、今回の東北地方の大水害では消防・警察・自衛隊のヘリは総動員状況であるにもかかわらずオスプレイは参加できていない。このような災害派遣はもとより(米軍参加の)防災訓練にすら全く参加していないのである。自衛隊と米軍の日米共同演習でも雨天のため、強風のためという理由で度々参加を中止している。これは、もちろん各地での抗議行動の成果であることは間違いないが、こういう荒天時には安心して投入できるものではないという事である。
こうして見ると、「騒音」という住民市民にとっての大問題は、機体の開発段階においても訓練や実戦においてもおそらく一貫して考慮の対象にすらなっていない、と言わざるを得ない。そもそも安全に飛行ができるレベルには達していない「試作機」「未完の航空機」なのである。
読者の声
次の行動へ
ボトムアップの政治へ
戦争法制が参議院で強行された。国会での「審議」に軸足を置くため、一時休戦にした沖縄県との話し合いも本質は始めから非和解的(つくる×つくらせない)課題であるため、1カ月の期間を過ぎ、さらに根本的な対立が始まった。
アメリカの下請けで中東・アジアでの権益を追求しようという安倍政権。中国の「拡張路線」、内部での経済減速、格差、1党独裁など様々な要素が働き、先々の見通しは難しい。安倍首相は、集団的自衛権の行使(容認)、軍事強化で生き残りに賭けようというのだろうが、それは間違った歴史を顧みないばかりか未来を損なう。
私たちは、福島第1原発の事故を体験し、(フクシマ以後を生きる私たちにとって)命を基盤に据える新たな社会、経済の仕組みを構築していくことが問われている。60年安保の映像などを見聞きし、70年安保・沖縄を一部体験。
その後の左翼は混迷が続いた。今回、国会周辺(私も行った)、そして全国で多数の人々が声を上げプラカードを掲げた。これらが次の選挙、参院選も含め、どういう行動につなげられるか。草の根的な民衆行動を拡げ、ボトムアップの政治をつくる必要性を実感している。(関東在住・佐藤一太)